説明

液晶表示装置

【課題】IPS方式の液晶表示装置において、周辺シール部における有機パッシベーション膜と有機パッシベーション膜の上に配置された低温CVDによって形成された層間絶縁膜の剥離を防止する。
【解決手段】TFT基板100と対向基板200がシール材20を介して接着している。TFT基板100には、有機パッシベーション膜109が形成され、その上に、低温CVDによって形成されたSiN膜による層間絶縁膜111が形成されている。有機パッシベーション膜109の表面には、ハーフ露光によって形成された多数の凹凸が形成されている。有機パッシベーション膜109表面の凹凸によって有機パッシベーション膜109と層間絶縁膜109との接着面積が増加することによって接着力が向上し、液晶表示パネルの信頼性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に係り、特に視野角特性の優れた、かつ、信頼性の高い横電界方式の液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では画素電極および薄膜トランジスタ(TFT)等を有する画素がマトリクス状に形成されたTFT基板と、TFT基板に対向して、TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタ等が形成された対向基板が配置され、TFT基板と対向基板の間に液晶が挟持されている。そして液晶分子による光の透過率を画素毎に制御することによって画像を形成している。
【0003】
液晶表示装置はフラットで軽量であることから、色々な分野で用途が広がっている。携帯電話やDSC(Digital Still Camera)等には、小型の液晶表示装置が広く使用されている。液晶表示装置では視野角特性が問題である。視野角特性は、画面を正面から見た場合と、斜め方向から見た場合に、輝度が変化したり、色度が変化したりする現象である。視野角特性は、液晶分子を水平方向の電界によって動作させるIPS(In Plane Switching)方式が優れた特性を有している。
【0004】
IPS方式も種々存在するが、例えば、コモン電極を平面ベタで形成し、その上に、絶縁膜を挟んで櫛歯状の画素電極を配置し、画素電極とコモン電極の間に発生する電界によって液晶分子を回転させる方式が透過率を大きくすることが出来るので、現在主流となっている。このような方式の液晶表示装置を記載したものとして、「特許文献1」が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−105918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
IPS液晶表示装置は、従来のTN方式等とは構造上異なっており、液晶表示装置を小型化、あるいは薄型化する場合に従来方式の液晶表示装置とは異なった問題点も発生する。TN(Twisted Nematic)方式等では、画素電極がTFT基板に形成され、対向電極は対向基板の全面に渡って形成されている。これに対してIPS方式では、画素電極と対向電極はTFT基板に形成されるので、TFT基板側の構成は従来のTN方式に比べて複雑となる。
【0007】
本発明が対象とするIPS方式では、各画素にTFTを形成した後、無機パッシベーション膜を形成し、さらに表面を平らにするために、有機パッシベーション膜を形成する。そして、有機パッシベーション膜の上に、平面ベタで形成された透明導電膜の上にSiNで形成された層間絶縁膜を形成し、その上に櫛歯状の画素電極を配置する構成である。
【0008】
ここで、有機パッシベーション膜は230℃程度で焼成される。一方、有機パッシベーション膜形成後、有機パッシベーション膜の上に形成されるSiNによる層間絶縁膜は、CVD(Chemical Vapor Veposition)によって形成される。しかし、有機パッシベーション膜の焼成温度が230℃程度であるので、SiN膜は高温CVDによって形成することができず、230℃以下の低温CVDによって形成される。低温CVDによるSiN膜は下地膜である有機パッシベーション膜との接着力が十分でない。特に、液晶表示パネルの周辺シール部における有機パッシベーション膜との接着力は信頼性に対して重要な問題となる。
【0009】
本発明の課題は、特に液晶表示パネルの周辺部における低温CVDで形成されたSiN膜と有機パッシベーション膜との接着性を改良して、製造歩留まりの高い、かつ、信頼性の高い液晶表示パネルを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記問題を克服するものであり、具体的な手段は次のとおりである。
【0011】
(1)画素電極およびTFT等を有する画素がマトリクス状に形成されたTFT基板と、前記TFT基板に対向して、前記TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタが形成された対向基板が周辺のシール部においてシール材を介して接着している液晶表示パネルを有する液晶表示装置であって、前記TFT基板には、前記シール部において、有機パッシベーション膜が形成され、前記有機パッシベーション膜の上に、無機膜による層間絶縁膜が形成され、前記有機パッシベーション膜の表面には、多数の凹部が形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【0012】
(2)前記有機パッシベーション膜の表面に形成された凹部の深さは20nm以上、200nm以下であることを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0013】
(3)画素電極およびTFT等を有する画素がマトリクス状に形成されたTFT基板と、前記TFT基板に対向して、前記TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタが形成された対向基板が周辺のシール部においてシール材を介して接着している液晶表示パネルを有する液晶表示装置であって、前記TFT基板には、前記シール部において、有機パッシベーション膜が形成され、前記有機パッシベーション膜の上に、低温CVDによって形成された無機膜による層間絶縁膜が形成され、前記有機パッシベーション膜の表面は、ハーフ露光による多数の凹部が形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【0014】
(4)前記層間絶縁膜はSiNによって形成されていることを特徴とする(3)に記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、液晶表示パネルのシール部において、コモン電極と画素電極との間の層間絶縁膜としての役割を持つ低温CVDによって形成されたSiN膜と、有機パッシベーション膜との接着力を改善することが出来るので、液晶表示パネルの製造歩留まりを向上させることが出来るとともに、液晶表示パネルの信頼性を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明が適用される液晶表示装置の平面図である。
【図2】液晶表示パネルの表示領域の断面図である。
【図3】画素電極およびコモン電極の平面図である。
【図4】実施例1の液晶表示パネル周辺の断面図である。
【図5】実施例2の液晶表示パネル周辺の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に実施例によって本発明の内容を詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明が適用される製品の例である、携帯電話等に使用される小型の液晶表示装置の平面図である。図1において、TFT基板100の上に対向基板200が配置されている。TFT基板100と対向基板200の間に図示しない液晶層が挟持されている。TFT基板100と対向基板200とは額縁部に形成されたシール材20によって接着している。図1においては、液晶は滴下方式によって封入されるので、封入孔は形成されていない。
【0019】
TFT基板100は対向基板200よりも大きく形成されており、TFT基板100が対向基板200よりも大きくなっている部分には、液晶表示パネルに電源、映像信号、走査信号等を供給するための端子部150が形成されている。
【0020】
また、端子部150には、走査信号線30、映像信号線40等を駆動するためのICドライバ50が設置されている。ICドライバ50は3つの領域に分かれており、中央には映像信号駆動回路52が設置され、両脇には走査信号駆動回路51が設置されている。
【0021】
図1の表示領域10において、横方向には走査信号線30が延在し、縦方向に配列している。また、縦方向には映像信号線40が延在し、横方向に配列している。走査信号線と映像信号線とで囲まれた領域が画素を構成する。走査線信号線は表示領域10の両側から走査線引出し線31によって、ICドライバ50の走査信号駆動回路51と接続している。映像信号線40とICドライバ50を接続する映像信号線引出し線41は画面下側に集められ、ICドライバ50の中央部に配置されている映像信号駆動回路52と接続する。
【0022】
本発明の対象は特に、図1における表示領域10の外側のシール部における、低温CVDによって形成されたSiN膜による層間絶縁膜と有機パッシベーション膜との接着を改良するものであるが、これらの膜は、表示領域10における各層と同時に形成されるので、周辺部分における構成を説明する前に、表示領域10の構成を説明する。
【0023】
図2は図1に示す表示領域10の画素部の構造を示す断面図である。図2は、本発明が適用されるIPS方式液晶表示パネルの構造について説明するものである。図2において、ガラス基板100の上にSiNからなる第1下地膜101およびSiOからなる第2下地膜102がCVD(Chemical Vapor Deposition)によって形成される。第1下地膜101および第2下地膜102の役割はガラス基板10からの不純物が半導体層103を汚染することを防止することである。
【0024】
第2下地膜102の上には半導体層103が形成される。この半導体層103は第2下地膜102の上にCVDによってa−Si膜を形成し、これをレーザアニールすることによってpoly−Si膜に変換したものである。このpoly−Si膜をフォトリソグラフィによってパターニングする。
【0025】
半導体膜の上にはゲート絶縁膜104が形成される。このゲート絶縁膜104はTEOS(テトラエトキシシラン)によるSiO膜である。この膜もCVDによって形成される。その上にゲート電極105が形成される。ゲート電極105は走査信号線30と同層で、同時に形成される。ゲート電極105は例えば、MoW膜によって形成される。ゲート配線105の抵抗を小さくする必要があるときはAl合金が使用される。
【0026】
ゲート電極105はフォトリソグラフィによってパターニングされるが、このパターニングの際に、イオンインプランテーションによって、リンあるいはボロン等の不純物をpoly−Si層にドープしてpoly−Si層にソースSあるいはドレインDを形成する。また、ゲート電極105のパターニングの際のフォトレジストを利用して、poly−Si層のチャネル層と、ソースSあるいはドレインDとの間にLDD(Lightly Doped Drain)層を形成する。
【0027】
その後、ゲート電極105あるいはゲート配線105を覆って層間絶縁膜106をSiOによって形成する。層間絶縁膜106はゲート配線105とソース電極107を絶縁するためである。層間絶縁膜106の上にソース電極107が形成される。ソース電極107は、スルーホール130を介して画素電極112と接続する。図2においては、ソース電極107は広く形成され、TFTを覆う形となっている。一方、TFTのドレインDは、図示しない部分においてドレイン電極と接続している。
【0028】
ソース電極107は映像信号線40と同層で、同時に形成される。ソース電極107あるいは映像信号線40(以後ソース電極107で代表させる)は、抵抗を小さくするために、AlSi合金が使用される。AlSi合金はヒロックを発生したり、Alが他の層に拡散したりするので、MoWによる、バリア層およびキャップ層によってAlSiをサンドイッチする構造がとられている。
【0029】
ソース電極107とTFTのソースSを接続するために、ゲート絶縁膜104と層間絶縁膜106にスルーホール140が形成され、TFTのソースSとソース電極107とが接続される。ソース電極107を覆って無機パッシベーション膜(絶縁膜)108が被覆され、TFT全体を保護する。無機パッシベーション膜108は第1下地膜101と同様にCVDによって形成される。
【0030】
無機パッシベーション膜108を覆って有機パッシベーション膜109が形成される。有機パッシベーション膜109は感光性のアクリル樹脂で形成される。有機パッシベーション膜109は、アクリル樹脂の他、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等でも形成することが出来る。有機パッシベーション膜109は平坦化膜としての役割を持っているので、厚く形成される。有機パッシベーション膜109の膜厚は1〜4μmであるが、多くの場合は2μm程度である。
【0031】
画素電極110とドレイン電極130との導通を取るために、無機パッシベーション膜108および有機パッシベーション膜109にスルーホール130が形成される。有機パッシベーション膜109は感光性の樹脂を使用している。感光性の樹脂を塗付後、この樹脂を露光すると、光が当たった部分のみが特定の現像液に溶解する。すなわち、感光性樹脂を用いることによって、フォトレジストの形成を省略することが出来る。有機パッシベーション膜109にスルーホールを形成したあと、230℃程度で有機パッシベーション膜を焼成することによって有機パッシベーション膜109が完成する。
【0032】
有機パッシベーション膜109をレジストとしてドライエッチングにより無機パッシベーション膜108にスルーホールを形成する。こうして、ドレイン電極130と画素電極110を導通するためのスルーホール130が形成される。有機パッシベーション膜109は厚いので、スルーホール130の上側と下側では、孔の大きさが異なる。
【0033】
このようにして形成された有機パッシベーション膜109の上面は表示領域においては、平坦となっている。有機パッシベーション膜109の上にアモルファスITO(Indium Tin Oxide)をスパッタリングによって被着し、フォトレジストによって、パターニングした後、蓚酸でエッチングし、コモン電極110のパターニングを行う。コモン電極110はスルーホール130を避けて、平面ベタで形成される。その後、230℃で焼成して、ITOを多結晶化して、電気抵抗を低下させる。コモン電極110は透明電極であるITOによって形成され、厚さは例えば、77μmである。
【0034】
その後、コモン電極110を覆って、層間絶縁膜111をCVDによって成膜する。このときのCVDの温度条件は、230℃以下であり、これは低温CVDと呼ばれる。その後、フォトリソグラフィ工程によって、層間絶縁膜111のパターニングを行う。図2において、層間絶縁膜111は、スルーホール130の下側の小孔と同じ大きさの開口となっているが、スルーホールの小孔よりもさらに小さな開口とする場合も多い。
【0035】
ところで、他の膜、例えば、第1下地膜101、無機パッシベーション膜108等をCVDで形成する時は、300℃以上で行われる。一般に、CVD膜等は、高温で形成したほうが、下地膜との接着力は強くすることが出来る。しかし、層間絶縁膜111の下には有機パッシベーション膜109がすでに形成されているので、230℃以上の高温にすると、有機パッシベーション膜109の特性が変化するので、層間絶縁膜111の形成は低温CVDで行われる。低温CVDで層間絶縁膜111を形成することによって、他の膜、特に、有機パッシベーション膜109との接着力が問題となる。この接着力の問題は、後で述べるように、周辺シール部においては、信頼性に影響を与えるので、大きな問題となる。
【0036】
本発明では、後で述べるように、有機パッシベーション膜109を露光する際、表示領域外側における有機パッシベーション膜109に対してハーフ露光を行うことによって、周辺における有機パッシベーション膜109の表面のみを現像液に溶解させることによって、有機パッシベーション膜109の表面に凹凸を形成して、有機パッシベーション膜109と層間絶縁膜111との接着力の向上を図っている。
【0037】
図2において、層間絶縁膜111の上にアモルファスITOをスパッタリングし、フォトリソグラフィ工程によって、櫛歯状の画素電極112を形成する。画素電極112はスルーホール113を介してソース電極107と接続する。画素電極112には信号電圧が印加され、コモン電極110との間に発生する電界によって、液晶分子301を回転させ、画素毎に液晶層の光の透過量を制御し、画像を形成する。画素電極112は透明導電膜であるITOによって形成され、膜厚は、例えば、40nmから70nm程度である。
【0038】
図3は、櫛歯状の画素電極112と平面ベタで形成されたコモン電極110の関係を示す平面図である。図3において、画素電極112は、図示していない層間絶縁膜を挟んでコモン電極110の上に配置されている。画素電極112の櫛歯1121と櫛歯1121の間のスリット1122を通して、画素電極112上面からコモン電極110に電気力線が伸び、この電気力線によって液晶分子を回転させる。
【0039】
図2に戻り、液晶層300を挟んで対向基板が配置されている。対向基板200の内側には、カラーフィルタ201が形成されている。カラーフィルタ201は画素毎に、赤、緑、青のカラーフィルタが形成されており、カラー画像が形成される。カラーフィルタ201とカラーフィルタ201の間にはブラックマトリクス202が形成され、画像のコントラストを向上させている。なお、ブラックマトリクス202はTFTの遮光膜としての役割も有し、TFTに光電流が流れることを防止している。
【0040】
カラーフィルタ201およびブラックマトリクス202を覆ってオーバーコート膜203が形成されている。カラーフィルタ201およびブラックマトリクス202の表面は凹凸となっているために、オーバーコート膜203によって表面を平らにしている。オーバーコート膜203の上には、液晶の初期配向を決めるための配向膜113が形成されている。なお、図2はIPSであるから、対向電極はTFT基板100側に形成されており、対向基板200側には形成されていない。
【0041】
図2において、TFT基板100の画素電極112の上、および、対向基板200のオーバーコート膜203の上に配向膜103が形成されている。配向膜はTFT基板100と対向基板200の間に挟持された液晶層300の液晶分子を初期配向させる役割を有する。但し、配向膜103は、シール部の接着力を低下させるので、シール部には形成されていない。
【0042】
図2に示すように、IPSでは、対向基板200の内側には導電膜が形成されていない。そうすると、対向基板200の電位が不安定になる。また、外部からの電磁ノイズが液晶層300に侵入し、画像に対して影響を与える。このような問題を除去するために、対向基板200の外側に外部導電膜210が形成される。外部導電膜210は、透明導電膜であるITOをスパッタリングすることによって形成される。
【0043】
図4は図1に示す液晶表示パネルの周辺におけるA−A断面図である。図4において、TFT基板100の上には第1下地膜101が形成され、その上には、第2下地膜102が形成されている。第2下地膜102の上には、第1走査線引出し線311が形成され、その上にゲート絶縁膜104が形成されている。ゲート絶縁膜104の上には、第2走査線引出し線312が形成されている。狭いシール部において、多数の走査線引出し線を引き出す必要があるので、走査線引出し線は2層に分けて引き出している。第2走査線引出し線312の上には、層間絶縁膜106が形成されている。
【0044】
層間絶縁膜106の上には無機パッシベーション膜108が形成され、無機パッシベーション膜108の上には有機パッシベーション膜109が形成されている。有機パッシベーション膜109は表示領域においては、平坦化膜の役割を有している。有機パッシベーション膜109は厚く形成されるので、TFT基板100と対向基板200とのギャップを一定にするために、シール部においても有機パッシベーション膜109が形成されている。
【0045】
また、シール部においては、TFT基板100と対向基板200との間隔はグラスファイバ25によって規定されている。TFT基板100と対向基板200を接着するときのグラスファイバ25による圧力によって、シール材20の下部に形成された走査線引出し線311、312が断線あるいはショートを引き起こさないようにするため、有機パッシベーション膜109はバッファーの役割を有している。また、図4等では、シール材20の下には、走査線引出し線のみが形成されているが、製品によって、シール材の下部に走査信号線駆動回路がTFTによって形成される場合もある。この場合は、特に、有機パッシベーション膜109によって、グラスファイバ25等の圧力から走査信号線駆動回路を保護するために、有機パッシベーション膜109は必須となる。
【0046】
有機パッシベーション膜109の上には、低温CVDによる層間絶縁膜111が形成されている。この層間絶縁膜111はCVDによって形成されるが、有機パッシベーション膜109よりも後で形成されるので、温度を高く出来ず、230℃以下である。このような低温CVDSiN膜は、有機パッシベーション膜109との接着力が問題となる。シール部においては、この接着力は特に大きな問題となる。
【0047】
有機パッシベーション膜109は、感光性樹脂を使用している。感光性樹脂を塗布後、表示領域10においてスルーホール130に対応する部分を露光すると、露光された部分が現像液に解け、スルーホール130が形成される。本発明においては、表示領域10にスルーホール130を形成するための露光を行うと同時に周辺シール部において、部分的にハーフ露光を行う。
【0048】
ハーフ露光は、フル露光よりも弱い露光であり、ハーフ露光された部分全てが現像液に溶けるようには変質せず、表面のみが現像液に溶けるように変質する。このように有機パッシベーション膜109に対して表示領域10ではフル露光を行い、シール部において、ハーフ露光を行うと、表示領域には、図2に示すようなスルーホール130が形成されるが、シール部には、図4に示すように、有機パッシベーション膜109の表面のみに凹凸が形成される。
【0049】
図4に示すように、有機パッシベーション膜109の表面には多数の凹部1091がハーフ露光によって形成され、その結果、有機パッシベーション膜109の表面には多数の凹凸が形成されている。有機パッシベーション膜109の表面に多数の凹凸が形成されると、有機パッシベーション膜109と層間絶縁膜111との接着面積が増大するので、有機パッシベーション膜109と層間絶縁膜111との接着力が増大することになる。これによって、層間絶縁膜111を低温で形成したことによる接着力の問題を解決することが出来る。
【0050】
図4において、有機パッシベーション膜109表面の凹部1091の深さは、ハーフ露光の露光量によって調節することが出来る。図4においては、凹部1091の深さは、層間絶縁膜111の厚さとほぼ等しい、200nm程度である。凹部1091の深さは、接着力の向上を考慮すると20nm以上であることが望ましい。この程度の凹部もハーフ露光によって形成することが可能である。
【0051】
図4において、対向基板200には、ブラックマトリクス202が形成され、その上にはオーバーコート膜203が形成されている。TFT基板100と対向基板200とは、シール材20によってシールされている。TFT基板100と対向基板200との間隔はグラスファイバ25によって規定されている。本実施例におけるグラスファイバ25の径は5μm程度である。
【0052】
TFT基板100と対向基板200とをシール材20を介してシールする際、TFT基板100と対向基板200とに、接着のための圧力を加える。この時、グラスファイバ25によって、TFT基板100に形成された走査線引出し線が断線したりショートしたりすることを防止する必要がある。有機パッシベーション膜109はグラスファイバ25の走査線引出し線への圧力を緩和する働きも有している。したがって、凹部1091の深さがが大きすぎると有機パッシベーション膜109の圧力緩和の効果が小さくなるので、凹部1091の深さは層間絶縁膜111の厚さ以下とすることが望ましい。
【0053】
実施例1においては、図4に示すように、有機パッシベーション膜109の表面に形成された凹凸の影響が層間絶縁膜111の表面にも現れており、層間絶縁膜111の表面にも凹凸が形成されている。この場合、シール材20と層間絶縁膜111との接触面積も増大することになり、シール材20と層間絶縁膜111との接着力も向上することになる。したがって、本実施例によれば、液晶表示パネルの周辺における接着力に関する信頼性は大幅に向上する。
【実施例2】
【0054】
図5は本実施例を示す断面図である。図5も図1のA−A断面に相当する図である。図5において、有機パッシベーション膜109の表面に形成された多数の凹部1091およびその上の層間絶縁膜111を除いては図1と同様である。図1において、有機パッシベーション膜109の表面に形成された多数の凹部1091は実施例1の場合に比較して小さくなっている。このような、小さな凹部1091も有機パッシベーション膜109をハーフ露光することによって形成することが出来る。
【0055】
図5において、凹部1091の深さは70nm以下である。凹部1091がこの程度であっても、凹凸が無い場合に比較して、接着力は格段に向上する。有機パッシベーション膜109表面の凹凸が小さいので、有機パッシベーション膜109の上に低温CVDによって形成された層間絶縁膜111の表面には、ほとんど凹凸は生じていない。したがって、TFT基板100と対向基板200との間隔を規定するグラスファイバ25の圧力による、下層に形成された走査線引出し線に対する影響は実施例1の場合よりもさらに緩和される。
【0056】
図1および図5においては、シール材20の下には走査線引出し線311,312のみ形成されている。一方、液晶表示パネルにおけるスペース効率を向上させるために、シール材20の下部にTFTによって、走査線駆動回路を形成する場合がある。このような構成においては、スペーサとしてのグラスファイバ25の圧力の影響が駆動TFTにかかることになり、有機パッシベーション膜109の圧力緩衝効果の役割はより重要になる。したがって、本実施例は、このような、走査線駆動回路を内蔵した液晶表示パネルの場合には、特に有利である。
【符号の説明】
【0057】
10…表示領域、 20…シール材、 25…グラスファイバ、 30…走査信号線、 31…走査信号線引出し線、 40…映像信号線、 41…映像信号線引き出し線、 50…ICドライバ、51…走査信号線駆動回路、52…映像信号線駆動回路、 100…TFT基板、 101…第1下地膜、 102…第2下地膜、 103…半導体層、 104…ゲート絶縁膜、 105…ゲート電極、 106…層間絶縁膜、 107…ソース電極、 108…無機パッシベーション膜、 109…有機パッシベーション膜、 110…コモン電極、 111…層間絶縁膜、 112…画素電極、 113…配向膜、 130…スルーホール、 140…スルーホール、 150…端子部、 200…対向基板、 201…カラーフィルタ、 202…ブラックマトリクス、 203…オーバーコート膜、 210…外部導電膜、 300…液晶層、 301…液晶分子、 311…下部走査線引出し線、 312…上部走査線引出し線、 1091…凹部、 S…ソース部、 D…ドレイン部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素電極およびTFT等を有する画素がマトリクス状に形成されたTFT基板と、前記TFT基板に対向して、前記TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタが形成された対向基板が周辺のシール部においてシール材を介して接着している液晶表示パネルを有する液晶表示装置であって、
前記TFT基板には、前記シール部において、有機パッシベーション膜が形成され、前記有機パッシベーション膜の上に、無機膜による層間絶縁膜が形成され、
前記有機パッシベーション膜の表面には、多数の凹部が形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記有機パッシベーション膜の表面に形成された凹部の深さは20nm以上、200nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
画素電極およびTFT等を有する画素がマトリクス状に形成されたTFT基板と、前記TFT基板に対向して、前記TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタが形成された対向基板が周辺のシール部においてシール材を介して接着している液晶表示パネルを有する液晶表示装置であって、
前記TFT基板には、前記シール部において、有機パッシベーション膜が形成され、前記有機パッシベーション膜の上に、低温CVDによって形成された無機膜による層間絶縁膜が形成され、
前記有機パッシベーション膜の表面は、ハーフ露光による多数の凹部が形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
前記層間絶縁膜はSiNによって形成されていることを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−164199(P2011−164199A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24345(P2010−24345)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】