説明

液晶表示装置

【課題】横電界方式の液晶表示装置において、ゲート引き出し配線からの電界が対向基板に影響を与え、表示領域端に表示ムラが生じる問題を効果的に抑制し、ゲート引き出し配線からの漏れ電界を遮断するシールド電極の腐食を抑制できる構成を提供する。
【解決手段】液晶表示装置のアレイ基板10において、ゲート配線とシール材40の外側の領域に形成された接続端子16とを接続するゲート引き出し配線2a上を、第1の絶縁膜3を介して覆い形成される導電膜90と、少なくともシール材40の外側の領域において導電膜90を覆い形成される第2の絶縁膜7とを有し、導電膜90は対向電極の電位が印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関するものである。詳しくは、横電界方式の液晶表示装置の表示品位と信頼性の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、従来のブラウン管に代わって、液晶、エレクトロルミネッセンス、帯電微粒子等の原理を利用した薄型で平面形状の表示パネルを有する新しい表示装置が多く使用されるようになった。これらの新しい表示装置の代表である液晶表示装置は、薄型、軽量だけでなく、低消費電力で低電圧駆動できる特徴を有している。液晶表示装置は、2枚の基板間に液晶を封入する。片方の基板は、複数の画素がマトリクス状に配置された表示領域を有するアレイ基板であり、もう片方の基板は、カラーフィルタ、ブラックマトリクス(遮光膜)等が形成された対向基板である。アレイ基板と対向基板はシール材で貼り合わされる。
【0003】
特に、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)型液晶表示装置は、アレイ基板上の各画素に、スイッチング素子であるTFTが設けられ、各画素が独立して液晶を駆動する電圧を保持できるので、クロストークの少ない高画質な表示が可能である。また、各画素には、TFTのON、OFFを制御するゲート配線(走査配線)と、これに交差する画像データ入力用のソース配線(信号配線)が設けられている。通常、各画素は、ゲート配線とソース配線に囲まれた領域が対応する。
【0004】
横電界方式のインプレーンスイッチング(IPS:In−Plane Switching)方式の液晶表示装置は、片側のアレイ基板に複数の画素電極と対向電極(共通電極)を、同一層又は異なる層に、平面視で交互に隙間を空けてスリット形状又は櫛歯形状に配置して、基板面に対して略横電界を印加して表示を行う方式である。IPS方式は、従来のTN(Twisted Nematic)方式と比較して、視野角特性に優れている利点がある。しかし、画素電極及び対向電極の電極部分は殆ど表示に寄与しないので、TN方式と比べて、光透過率が小さいという欠点がある。
【0005】
この欠点を改善した横電界方式として、フリンジフィールドスイッチング(FFS:Fringe Field Switching)方式がある(例えば、特許文献1、2。ただし、広義でこれもIPS方式と記載)。FFS方式の液晶表示装置は、画素電極と対向電極は、IPS方式と同様に、片側のアレイ基板上に形成されるが、画素電極と対向電極は絶縁膜を介して上下に重畳して配置される。また、通常、下部電極は板(平面)形状で、上部電極は開口部を有するスリット形状又は櫛歯形状をしている。
【0006】
FFS方式は、画素電極は、下部電極でも上部電極でもどちら側の構成も可能である。FFS方式は、上部電極と下部電極間で、フリンジ電界により液晶を駆動するようにしているため、上部電極の電極部分上の液晶も駆動して表示に寄与することができる。これにより、IPS方式よりも光透過率が向上する利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−265484号公報
【特許文献2】特開2010−49185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2に記載されているように、横電界方式では、対向基板の液晶側の面は、有機樹脂からなるブラックマトリクス、オーバーコート、カラーフィルタ等の絶縁膜で構成され、TN方式のような対向電極(共通電極)の透明導電膜がない。このため、横電界方式では、アレイ基板上のゲート引き出し配線から発生する電界の影響として、対向基板が電位変動を起こしてゲート引き出し配線近傍の表示領域周辺に表示ムラが生じるという課題があった。
【0009】
そこで、特許文献1、2では、この対策として、アレイ基板のゲート引き出し配線上に、絶縁膜を介して電界遮蔽のシールド電極(導電膜)を、表示領域端からシール材の領域まで配置することで表示ムラが解決することが記載されている。しかし、ゲート引き出し配線上のシールド電極をシール材の領域の途中までしか配置していない構成のため、アレイ基板及び対向基板の層構成、部材特性や、駆動条件によっては、ゲート引き出し配線から発生する電界が、シールド電極がない領域で充分に遮蔽できず、対向基板が電位変動を起こしてゲート引き出し配線近傍の表示領域周辺に表示ムラがまだ生じることがあった。
【0010】
また、シールド電極をシール材の外側の領域まで延在して形成した場合、シールド電極が絶縁膜の最上層にある構成は、大気中の湿気に触れるので、シールド電極に腐食が発生することがあった。
【0011】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、横電界方式の液晶表示装置において、ゲート引き出し配線近傍の表示領域周辺に表示ムラが生じることを、従来よりもさらに効果的に抑制でき、かつ、ゲート引き出し配線からの漏れ電界を遮蔽するシールド電極の腐食を抑制できる構成を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の液晶表示装置は、表示領域を有するアレイ基板と、表示領域を囲み形成されるシール材と、シール材に囲まれる領域に封止される液晶を介して、アレイ基板と対向して配置される対向基板とを有し、アレイ基板において、表示領域に配置される複数のゲート配線と複数のソース配線の各交差部に対応して形成される薄膜トランジスタと、薄膜トランジスタに接続される画素電極と、画素電極に対向して形成される対向電極と、ゲート配線とシール材の外側の領域に形成された接続端子とを接続するゲート引き出し配線と、ゲート引き出し配線上を、第1の絶縁膜を介して覆い形成される導電膜と、少なくともシール材の外側の領域において、導電膜を覆い形成される第2の絶縁膜とを有し、導電膜は対向電極の電位が印加されるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ゲート引き出し配線近傍の表示領域に表示ムラが生じることを、従来よりもさらに効果的に抑制でき、かつ、ゲート引き出し配線からの漏れ電界を遮蔽するシールド電極の腐食を抑制できる構成の横電界方式の液晶表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態1の液晶表示装置を模式的に示す平面図である。
【図2】図1のシール材領域近傍Sを拡大して示す平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】実施の形態1の液晶表示装置のアレイ基板の画素を拡大して示す平面図である。
【図5】図4のB−B線断面図である。
【図6】実施の形態2のシール材領域近傍Sを拡大して示す平面図である。
【図7】図6のC−C線断面図である。
【図8】実施の形態3のシール材領域近傍Sを拡大して示す平面図である。
【図9】図8のD−D線断面図である。
【図10】実施の形態4のシール材領域近傍Sを拡大して示す平面図である。
【図11】図10のE−E線断面図である。
【図12】実施の形態5のシール材領域近傍Sを拡大して示す平面図である。
【図13】図12のF−F線断面図である。
【図14】実施の形態6のシール材領域近傍Sを拡大して示す平面図である。
【図15】図14のG−G線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の液晶表示装置についての実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施の形態を説明するための各図において、同一符号は、同一又は相当部分を示しているので、適宜、重複する説明は省略する。
【0016】
実施の形態1.
はじめに、本発明の液晶表示装置の構成を簡単に説明する。図1は、実施の形態1の液晶表示装置を模式的に示す平面図である
【0017】
液晶表示装置100は、表示領域50に複数の画素30がマトリクス状に配置されて構成される。そして、画素30を構成するゲート配線2、ソース配線5、TFT、及び画素電極等(図示せず)や、表示領域50の外側近傍に共通配線9が形成されたアレイ基板10と、アレイ基板10と液晶を介して対向配置され、カラーフィルタやブラックマトリクス22等が形成された対向基板20とを、シール材40で貼り合わせた液晶パネル等から構成される。図示していないが、液晶パネルの両面に偏向板や位相板が貼り付けられ、バックライト、外部回路や筐体等が取り付けられて、液晶表示装置100が完成する。
【0018】
アレイ基板10は、ガラス、プラスチック等の絶縁性基板1上において、表示領域50と、表示領域50の外側の額縁領域55に分けられる。額縁領域55には、COG(Chip On Glass)実装技術により、ゲート配線駆動回路70及びソース配線駆動回路72が複数の接続端子(図示せず)に実装されている。また、絶縁性基板1の端部には、ゲート配線駆動回路70及びソース配線駆動回路72に、制御信号、クロック、画像データ、駆動電圧等を供給する外部回路と接続するフレキシブル基板74、76用の複数の接続端子(図示せず)が設けられている。
【0019】
なお、図1では、表示領域50のゲート配線2又はソース配線5から、シール材40を越えてゲート配線駆動回路70又はソース配線駆動回路72の出力部へ延びるゲート引き出し配線2a又はソース引き出し配線5aや、ゲート配線駆動回路70又はソース配線駆動回路72の入力部と、絶縁性基板1の端部に設けられたフレキシブル基板74、76用の複数の接続端子とを接続する入力配線が多数本あるが、図の簡素化のために一部の配線だけを図示している。また、ゲート引き出し配線2a上には、後述する導電膜90が配置されている。
【0020】
小型パネルでは、配線の総本数が比較的少ないので、ゲート配線用駆動回路70及びソース配線用駆動回路72を一体化した駆動回路が使用されることが多い。同時に、フレキシブル基板74、76も、まとめて1枚にすることが多い。
【0021】
図2は、図1の液晶表示装置のシール材領域近傍Sを拡大して示す平面図である。図3は、図2のA−A線断面図である。
【0022】
なお、図2において、対向基板20の、ブラックマトリクス22、オーバーコート23等については、図の簡素化のために図示を省略している。また、図の右側には点線で示す表示領域50の画素30がマトリクス状に配置されているが、画素30の詳細構成は後述する。
【0023】
ゲート引き出し配線2a上には、第1の絶縁膜であるゲート絶縁膜3が覆い形成されている。そして、ゲート絶縁膜3上には、ソース配線5と同一層からなり、対向電極の電位である共通電位が印加される共通配線9が形成されている。実施の形態1では、共通配線9は、接続端子16側に同一層がそのまま延在して、導電膜90にもなっている。導電膜90は、ゲート引き出し配線2aからの電界を遮蔽するシールド電極として作用する
【0024】
ここで、シール材40の内側の領域では、導電膜90は、ゲート引き出し配線2a上を、表示領域50の端部から殆ど全て覆い形成することが、ゲート引き出し配線2aからの電界を遮蔽する点で望ましい。さらに、導電膜90は、表示領域50の端部近傍から、シール材40の外側の領域まで延在して形成されている点が特徴である。
【0025】
シール材40は、アレイ基板10と対向基板20とを貼り合わせて液晶15を封入するシール機能を持つ。一般に、シール材40は、エポキシ樹脂等からなり、熱硬化型と光硬化型がある。シール材40は、液晶15へ不純物が溶け出さない材料であることが必要である。通常、シール材40の誘電率εは4前後であるので、導電膜90が、シール材40の領域の途中までしか形成されていない場合、シール材40の領域に、ゲート引き出し配線2aからの電界を遮蔽していない導電膜90がない領域があるので、ゲート引き出し配線2aからの電界が対向基板20に与える影響がまだ残ることになる。
【0026】
これに対して、実施の形態1では、導電膜90が、シール材40の外側の領域まで延在して形成されているので、ゲート引き出し配線2a上のシール材40の領域の全てに導電層90が存在し、ゲート引き出し配線2aからの電界が対向基板20に与える影響を殆どなくすことができる。
【0027】
シール材40の外側の領域は、アレイ基板10と対向基板20との間は、通常は大気であり、誘電率εが1であるので、ゲート引き出し配線2aからの電界が対向基板20に与える影響は小さくなるが、導電膜90は、平面視で、ゲート引き出し配線2a側の対向基板の端部20eの位置以上に接続端子16側に延在して形成することがさらに望ましい。これによって、ゲート引き出し配線2aからの電界が対向基板20に与える影響をさらに効果的に抑制できる。
【0028】
そして、少なくともシール材40の外側の領域では、第2の絶縁膜である保護膜7が導電膜90を覆い形成される。これにより、導電膜90は、保護膜7に覆われて大気中の湿気に触れることがないので、導電膜90が耐腐食性に弱い金属膜でも腐食の発生を抑制することができる。
【0029】
また、シール材40は、酸化膜、窒化膜等の無機膜、又は有機樹脂の絶縁膜や、これらの積層膜からなる保護膜7と貼り合わされるので、アレイ基板10との密着力についても、一般に、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明酸化導電膜と貼り合わされる場合よりも優れている。
【0030】
ゲート配線駆動回路70が実装されるアレイ基板10上には、ゲート配線駆動回路70の出力端子とCOG接続される接続端子16が形成されている。接続端子16は、ゲート絶縁膜3及び保護膜7に設けられたコンタクトホールを介してゲート引き出し配線2aと接続されている。接続端子16は、後述する画素30のITO等の透明酸化導電膜からなる上部電極と同一層からなる。
【0031】
また、詳細は後述するが、画素30の上部電極を延在した同一層からなる接続部86と共通配線9とは、保護膜7に設けられたコンタクトホール13を介して接続され、上部電極に共通電位が印加されるようになっている。
【0032】
対向基板20は、ガラス、プラスチック等の絶縁性基板21上に、黒色有機樹脂からなるブラックマトリクス22、透明有機樹脂からなるオーバーコート23、カラーフィルタや配向膜(図示せず)等が形成されている。通常、各画素30は赤青緑の3原色のカラーフィルタのいずれかの色が対応する。色再現性を向上するために4原色以上のカラーフィルタが使用される場合もある。
【0033】
横電界方式の液晶表示装置100では、通常は、対向基板20の液晶15側にITO等の透明酸化導電膜からなる対向電極(共通電極)が形成されないので、液晶15側は誘電体である絶縁膜だけになる。このため、ゲート引き出し配線2aからの漏れ電界を遮蔽するシールド電極がない場合、対向基板20の絶縁性基板21、ブラックマトリクス22、オーバーコート23、カラーフィルタ等が、ゲート引き出し配線2aからの電界で電位変動を起こして、ゲート引き出し配線2a近傍の表示領域50周辺に表示ムラが生じる原因になっている。
【0034】
図4は、実施の形態1の液晶表示装置のアレイ基板の画素を拡大して示す平面図である。図5は、図4のB−B線断面図である。
【0035】
実施の形態1の画素30は、FFS方式の液晶表示装置100で、下部電極6が画素電極で、上部電極8が対向電極である電極構成である。
【0036】
ガラス、プラスチック等の絶縁性基板1上に、Al、Cr、Mo、Ti、Ta、W、Ni、Cu、Au、Ag等の金属や、これらの合金又は積層膜からなるゲート配線2やゲート引き出し配線2a等が形成されている。
【0037】
次に、この上層に酸化膜、窒化膜等の無機膜からなるゲート絶縁膜3が覆い形成されている。さらに、ゲート配線2上の一部分のゲート絶縁膜3上には、半導体膜4と、これに不純物が注入されたオーミックコンタクト膜41が積層して島状に形成されている。
【0038】
次に、ゲート配線2と交差するように、Al、Cr、Mo、Ti、Ta、W、Ni、Cu、Au、Ag等の金属や、これらの合金又は積層膜からなるソース配線5やソース引き出し配線5a等が、ゲート絶縁膜3上に形成されている。
【0039】
このとき、ソース配線5と同一層からなる共通配線9及び導電膜90が、同時に形成されている。
【0040】
また、ソース配線5と同一層からなるソース電極51及びドレイン電極52が、オーミックコンタクト膜41と重なるように形成されている。ソース電極51及びドレイン電極52から露出するオーミックコンタクト膜41は除去される。ソース電極51及びドレイン電極52との間のオーミックコンタクト膜41も除去されて、TFTのチャネル部となる。このチャネル部の下層のゲート配線2は、ゲート電極として作用し、スイッチング素子であるTFTが構成されている。
【0041】
なお、半導体膜4及びオーミックコンタクト膜41は、TFT領域だけでなく、ソース配線5に沿って延在して形成され、ソース配線5の下層に配置される場合がある。また、ソース配線5の断線抑制として、ゲート配線2とソース配線5の交差部に島状に配置される場合もある。
【0042】
板形状の下部電極6は画素電極であり、透過型ではITO等の透明酸化導電膜からなる。反射型では、Al、Ag、Pt等の金属や、これらの合金又は積層膜で、表面が高反射率の導電膜からなる場合もある。下部電極6の一部分は、ドレイン電極52の上に積層して形成され、電気的に接続されている。なお、下部電極6の一部分を、ドレイン電極52の下層に形成して、電気的に接続することもできる。
【0043】
ソース配線5、TFT、及び下部電極6等の上層には、酸化膜、窒化膜等の無機膜、又は有機樹脂の絶縁膜や、これらの積層膜からなる保護膜7が覆い形成されている。
【0044】
保護膜7上には、ITO等の透明酸化導電膜からなる上部電極8が形成されている。上部電極8は、開口部82を有するスリット形状(穴形状)、櫛歯形状(開口部82の片方が開放端)、又はストライプ形状をしている。上部電極8は対向電極であり、共通電位が印加されている。上部電極8は、この開口部82の領域の保護膜7を介して下部電極6との間にフリンジ電界を発生させて液晶15を駆動する。
【0045】
また、実施の形態1では、対向電極の上部電極8を、ソース配線5(上下)方向及びゲート配線2(左右)方向に、隣接する画素30の上部電極8と、それぞれ上部電極8と同一層からなる接続部84、86で接続している。接続部84、86は、ゲート配線2及びソース配線5の略全体を覆い、格子(網目)形状とすることで、上部電極8の低抵抗化と、ゲート配線2及びソース配線5から液晶15への電界の遮蔽を図っている。
【0046】
また、TFT上の上部電極8又は接続部84、86に開口部81を設けている。これは、上部電極8の共通電位が、TFT特性に影響を与えないためである。ただし、開口部81は、ゲート配線2から液晶15への電界漏れの原因にもなるので、開口部81の大きさは最小限とするか、TFT上に開口部81を設けない構成でも良い。
【0047】
また、表示領域50の周囲にある画素30の上部電極8と同一層からなる接続部84、86は、そのまま延在させて、表示領域50端部からシール材40の内側の領域において、保護膜7に設けられたコンタクトホール13を介して共通配線9と接続する。表示領域50端部と共通配線9の間に配置される接続部86は、ゲート引き出し配線2aからの電界を遮蔽する効果も有する。また、コンタクトホール13の大きさ、形状、数や位置は任意に設計できる。例えば、図2では、ゲート引き出し配線2a及び隣接するゲート引き出し配線2aの間の共通配線9上の両方の領域に形成している。これにより、共通配線9から接続部86を介して対向電極の上部電極8に共通電位を印加することができる。
【0048】
また、表示領域50内の接続部84、86は、ゲート配線2及びソース配線5から液晶15への電界を遮蔽する効果を有するので、横電界方式のノーマリブラックモードでは、遮光膜として作用する。この構成により、通常、対向基板20の表示領域50内に形成されるゲート配線2又はソース配線5に沿ったブラックマトリクス22をなくすことができる。
【0049】
なお、表示領域50内の接続部84、86は、ソース配線5(上下)方向又はゲート配線2(左右)方向の一方だけを形成して、隣接する画素30の上部電極8と接続する構成とすることもできる。
【0050】
アレイ基板10と対向基板20は、液晶パネルの組み立て工程において、それぞれにポリイミド等の有機樹脂からなる配向膜(図示せず)を塗布形成した後、ラビング又は光配向等の手法を用いて、液晶15の分子が所定の方向に向くように配向処理を施す。
【0051】
アレイ基板10と対向基板20は、互いの配向膜が対向するように重ね合わせ、有機樹脂等からなるスペーサ材(図示せず)で数μm程度の隙間を設けて、表示領域50を囲むように形成されたシール材40によって貼り合わす。このシール材40の内側の隙間に、液晶15が封入される。
【0052】
このようにして形成された液晶パネルの両面に偏光板、位相板が貼り付けられ、走査線用駆動回路70、信号線用駆動回路72及びフレキシブル基板74、76が実装される。液晶パネルに各種電気信号を供給するための外部回路や、透過型では液晶パネルの背面にバックライトユニットを取り付け、筐体に収納することにより液晶表示装置100が完成する。
【0053】
以上のように、実施の形態1では、少なくともシール材40の外側の領域にも、ゲート引き出し配線2a上に導電膜90を設けたので、従来よりも、ゲート引き出し配線2aから対向基板20に与える電界の影響を抑制できる。
【0054】
そして、導電膜90は、少なくともシール材40の外側の領域では保護膜7に覆われているので、大気中の湿気に触れることがなく、導電膜90の腐食抑制をすることができる。
【0055】
実施の形態2.
図6は、実施の形態2のシール材領域近傍Sを拡大して示す平面図である。図7は、図6のC−C線断面図である。
【0056】
なお、図6において、対向基板20のブラックマトリクス22、オーバーコート23等については、図の簡素化のために図示を省略している。また、図の右側には点線で示す表示領域50の画素30がマトリクス状に配置されているが、画素30の詳細構成は実施の形態1と同等である。
【0057】
実施の形態2は、実施の形態1と同様に1層の導電膜96で構成されているが、導電膜96が、画素30の画素電極の下部電極6と同一層からなるものである。導電膜96は、下部電極6とドレイン電極52との構成と同様に、共通配線9上に積層して形成され。電気的に接続されている。なお、導電膜96の一部分を、共通電極9の下層に形成して、電気的に接続することもできる。
【0058】
下部電極6は、透過型ではITO等の透明酸化導電膜からなるので、共通配線9と同一層からなる金属膜より耐腐食性に優れており、実施の形態1よりもさらに導電膜96の腐食抑制ができる。
【0059】
実施の形態3.
図8は、実施の形態3のシール材領域近傍Sを拡大して示す平面図である。図9は、図8のD−D線断面図である。
【0060】
なお、図8において、対向基板20のブラックマトリクス22、オーバーコート23等については、図の簡素化のために図示を省略している。また、図の右側には点線で示す表示領域50の画素30がマトリクス状に配置されているが、画素30の詳細構成は実施の形態1と同等である。
【0061】
実施の形態1、2は、1層の導電膜90で構成されていたが、実施の形態2は、導電膜は、層の異なる第1の導電膜91及び第2の導電膜92で構成されている。第1の導電膜91は、少なくともシール材40の外側の領域に形成され、第2の絶縁膜である保護膜7に覆われている。第2の導電膜92は、シール材40の内側の領域において、第2の絶縁膜である保護膜7上に形成され、シール材40の外側の領域には形成されていない。また、第1の導電膜91と第2の導電膜92との境界部は、シール材40の領域、又はシール材40より内側の領域で重なり部分を有しているものである。
【0062】
第1の導電膜91は、ソース配線5及び共通配線9と同一層からなり、第2の導電膜92は、保護膜7上に形成された対向電極の上部電極8と同一層からなっている。
【0063】
第1の導電膜91と第2の導電膜92との境界部は、シール材40の領域、又はシール材40より内側の領域で重なり部分を有しており、保護膜7に設けられたコンタクトホール11を介して接続されている。この構成によって、シール材40の内側の領域において、ゲート引き出し配線2a上に、第2の導電膜92が形成されるので、第1の導電膜91は、シール材40の内側の領域では、シール材40近傍領域以外は形成しなくても良い。
【0064】
また、第2の導電膜92は、共通配線9と、保護膜7に設けられたコンタクトホール12を介して接続されている。これにより、第1の導電膜91及び第2の導電膜92に、共通電位が印加される構成になっている。
【0065】
なお、図8では、保護膜7に設けられたコンタクトホール11、12は、ゲート引き出し配線2a、及び隣接するゲート引き出し配線2aの間の共通配線9上の両方の領域に形成されているが、電気的な接続がとれるのであれば、コンタクトホール11、12は、どちらか一方の領域に設ける構成で構わない。また、コンタクトホール11、12の大きさ、形状や数は任意に設計することができる。
【0066】
また、第1の導電膜91と第2の導電膜92との境界部は、重なり部分を有するので、平面視で、ゲート引き出し配線2a上の導電膜が途中で途切れた領域がない構成になっている。この構成によって、ゲート引き出し配線2aから発生する電界を略遮蔽することができる。
【0067】
次に、導電膜を2層にする作用、効果について説明する。第1の導電膜91は、少なくともシール材40の外側の領域に形成して、ゲート引き出し配線2aからの電界をより確実に遮蔽するが、少なくともシール材40の外側に形成される領域は、大気中の湿気による腐食抑制のために、保護膜7で覆っている。第2の導電膜92は、シール材40の領域又は内側の領域なので、大気中の湿気に触れないので、腐食が起き難い。そこで、第2の導電膜92は、保護膜7上に形成して、ゲート引き出し配線2aと第2の導電膜92との間の絶縁膜厚を大きくしている。これによって、第2の導電膜92は、ゲート引き出し配線2aからの電界を遮蔽すると共に、ゲート配線2を駆動するゲート引き出し配線2aの負荷容量を、実施の形態1、2よりも小さくすることができる。
【0068】
実施の形態4.
図10は、実施の形態4のシール材領域近傍Sを拡大して示す平面図である。図11は、図10のE−E線断面図である。
【0069】
なお、図10において、対向基板20のブラックマトリクス22、オーバーコート23等については、図の簡素化のために図示を省略している。また、図の右側には点線で示す表示領域50の画素30がマトリクス状に配置されているが、画素30の詳細構成は実施の形態1と同等である。
【0070】
実施の形態4は、導電膜が2層である構成は、実施の形態3と基本的に同等である。異なるのは、実施の形態3では、第1の導電膜91は、ソース配線5及び共通配線9と同一層からなっていたが、実施の形態4では、第1の導電膜91は、画素30の下部電極6と同一層からなっていることである。ただし、第1の導電膜91は、下部電極6の画素電極の電位ではなく、上部電極8の対向電極と同一の共通電位が印加される構成となっている。
【0071】
第2の導電膜92は、保護膜7上に形成された対向電極の上部電極8と同一層からなっている。第2の導電膜92は、シール材40より外側の領域には形成されていない。第2の導電膜92は、シール材40に一部が重なるか、又は重なっておらず、シール材40の領域又は内側の領域で、第1の導電膜91とコンタクトホール11を介して接続されている。
【0072】
また、第2の導電膜92は、表示領域50内の上部電極8を延在した同一層からなる接続部86と接続されている。第2の導電膜92は、共通配線9とコンタクトホール12を介して接続されているので、接続部86を介して上部電極8に、共通電位が印加される構成になっている。
【0073】
第1の導電膜91は、下部電極6と同一層であり、透過型ではITO等の透明酸化導電膜からなるので、ソース配線5及び共通配線9と同一層からなる金属膜より耐腐食性に優れているので、実施の形態3よりもさらに腐食抑制ができる。
【0074】
実施の形態5.
図12は、実施の形態5のシール材領域近傍Sを拡大して示す平面図である。図13は、図12のF−F線断面図である。
【0075】
なお、図12において、対向基板20のオーバーコート23等については、図の簡素化のために図示を省略している。ただし、ブラックマトリクスの端部22eは、実施の形態5の構成の特徴に関するので図示している。また、図の右側には点線で示す表示領域50の画素30がマトリクス状に配置されているが、画素30の詳細構成は実施の形態1と同等である。
【0076】
実施の形態5は、導電膜が2層である構成は、実施の形態3と基本的に同等である。異なるのは、対向基板20のブラックマトリクス22が、シール材40の領域全体に形成されておらず、ブラックマトリクスの端部22eがシール材40の一部分だけに重なるか、全く重ならないように構成されていることである。
【0077】
これは、第1の導電膜91が、ソース配線5及び共通配線9と同一層からなる不透明な導電膜で構成されている領域では、ブラックマトリクス22と同等の遮光膜としても作用するためである。
【0078】
黒色有機樹脂からなるブラックマトリクス22は、帯電を生じやすい部材なので、対向基板20が電位変動を起こして表示領域50周辺に表示ムラが生じる原因の一つになっている。よって、不透明な導電膜で構成されている領域に対向する対向基板20上のブラックマトリクス22はなるべく形成せず、その面積を小さくすることにより、実施の形態3よりも、ゲート引き出し配線2aから発生する電界が、対向基板20の電位変動を起こしにくくできる。
【0079】
なお、実施の形態1のように、1層からなる導電膜90がソース配線5及び共通配線9と同一層からなる不透明な金属膜の場合にも、本構成を適用でき、シール材40の内側の領域にある共通配線9近傍までブラックマトリクスの端部22eを配置でき、ブラックマトリクス22の面積をさらに小さくすることができる。
【0080】
実施の形態6.
図14は、実施の形態5のシール材領域近傍Sを拡大して示す平面図である。図15は、図14のG−G線断面図である。G−G線は、ゲート引き出し配線2a上でない領域にある。
【0081】
なお、図14において、対向基板20のブラックマトリクス22、オーバーコート23等については、図の簡素化のために図示を省略している。また、図の右側には点線で示す表示領域50の画素30がマトリクス状に配置されているが、画素30の詳細構成は実施の形態1と同等である。
【0082】
実施の形態6は、導電膜が1層又は2層である構成は、実施の形態1〜5と基本的に同等である。異なるのは、ゲート引き出し配線2a上でない導電膜の領域に開口部93が設けられていることである。ここでは、実施の形態3に、ゲート引き出し配線2a上でない領域のシール材40の外側及び内側の領域において、第1の導電膜91に開口部93を設けた場合を示している。開口部93は、シール材40の外側又は内側の領域の一方だけでも良い。また、シール材40の領域に設けても良い。
【0083】
開口部93の領域では、保護膜7が導電膜を介さずにゲート絶縁膜3上に積層されるので、保護膜7の下地との密着力が、導電膜上に形成されるよりも向上して、保護膜7の剥離が起きにくくなり、さらなる信頼性の向上を図ることができる。
【0084】
なお、導電膜がゲート引き出し配線2aからの電界を充分に遮蔽できる範囲であれば、開口部93の大きさ、形状や数は任意に設計できる。
【0085】
以上の実施の形態では、画素30は、下部電極6が画素電極で、上部電極8が対向電極の構成を示したが、下部電極6が対向電極で、上部電極8が画素電極の構成の横電界方式の液晶表示装置にも適用できる。この場合、上部電極8と同一層からなる第2の導電膜92は、表示領域50の端部近傍で、画素電極の上部電極8と電気的に分離されており、第2の導電膜92に共通電位が印加される構成とすればよい。
【0086】
また、以上の実施の形態では、画素30は、下部電極6が画素電極で、上部電極8が対向電極のFFS方式の場合を示したが、下部電極6がスリット形状又は櫛歯形状のIPS方式の液晶表示装置にも適用できる。
【0087】
また、画素電極と対向電極が最上層の同一層に形成される構成のIPS方式の液晶表示装置の場合は、共通電位が印加される対向電極の方のパターンを、表示領域50の端部近傍で、シールド電極である導電膜と電気的に接続する構成とすればよい。
【0088】
また、以上の実施の形態では、TFTはチャネルエッチ逆スタガ型構造の場合を示したが、エッチストッパ逆スタガ型、トップゲート型等のTFTを使用した横電界方式の液晶表示装置にも適用できる。
【0089】
また、以上の実施の形態では、駆動回路がCOG実装の場合を示したが、シール材40の外側の領域にゲート引き出し配線2aが形成される構成であれば、TAB(Tape Automated Bonding)実装や、アレイ基板10上に駆動回路をTFTで形成した駆動回路内蔵の横電界方式の液晶表示装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0090】
1 絶縁性基板
2 ゲート配線
2a ゲート引き出し配線
3 ゲート絶縁膜
4 半導体膜
5 ソース配線
5a ソース引き出し配線
6 下部電極
7 保護膜
8 上部電極
9 共通配線
10 アレイ基板
11、12、13 コンタクトホール
15 液晶
16 接続端子
20 対向基板
20e 対向基板の端部
21 絶縁性基板
22 ブラックマトリクス
22e ブラックマトリクスの端部
23 オーバーコート
30 画素
40 シール材
50 表示領域
82 開口部
84、86 接続部
90 導電膜
91 第1の導電膜
92 第2の導電膜
93 開口部
96 導電膜
100 液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域を有するアレイ基板と、
前記表示領域を囲み形成されるシール材と、
前記シール材に囲まれる領域に封止される液晶を介して、前記アレイ基板と対向して配置される対向基板とを有し、
前記アレイ基板において、
前記表示領域に配置される複数のゲート配線と複数のソース配線の各交差部に対応して形成される薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタに接続される画素電極と、
前記画素電極に対向して形成される対向電極と、
前記ゲート配線と前記シール材の外側の領域に形成された接続端子とを接続するゲート引き出し配線と、
前記ゲート引き出し配線上を、第1の絶縁膜を介して覆い形成される導電膜と、
少なくとも前記シール材の外側の領域において、前記導電膜を覆い形成される第2の絶縁膜と、を有し、
前記導電膜は、前記対向電極の電位が印加されることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記導電膜は、第1の導電膜と第2の導電膜とを有し、
前記第1の導電膜は、少なくとも前記シール材の外側の領域において、前記第2の絶縁膜より下層に形成され、
前記第2の導電膜は、少なくとも前記シール材の内側の領域において、前記第2の絶縁膜より上層に形成され、前記シール材の外側の領域には形成されず、
前記第1の導電膜と前記第2の導電膜の境界部は、重なり部分を有することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記第1の導電膜は、前記ソース配線と同一層からなり、
前記第2の導電膜は、前記画素電極又は前記対向電極の上層側にある層と同一層からなることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記第1の導電膜は、前記画素電極又は前記対向電極の下層側にある層と同一層からなり、
前記第2の導電膜は、前記画素電極又は前記対向電極の上層側にある層と同一層からなることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第1の導電膜と前記第2の導電膜とは、前記シール材の領域、又は前記シール材より内側の領域で接続されることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記導電膜は、前記シール材の外側の領域において、平面視で、前記ゲート引き出し配線側の前記対向基板の端部の位置以上に前記接続端子側に延在して形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記導電膜は、少なくとも不透明導電膜を有し、前記不透明導電膜の領域に対向する前記対向基板上のブラックマトリクスが形成されていない領域を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記導電膜は、前記ゲート引き出し配線上でない領域において、開口部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記導電膜は、前記ゲート引き出し配線上の前記シール材の領域において、全て前記第2の絶縁膜により覆われていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記導電膜は、前記ゲート引き出し配線側の前記表示領域の端部近傍において、前記対向電極を延在した同一層と接続されることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−203348(P2012−203348A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70423(P2011−70423)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】