説明

液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子

【課題】残留電圧がより低い液晶表示素子用の液晶配向剤、それを用いて形成される液晶配向膜、及びそれを具備した液晶表示素子を提供する。
【解決手段】テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体とジアミン又はその誘導体との反応生成物の構成を有するポリアミック酸又はその誘導体と、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物とを含有する液晶配向剤において、前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体に、単結合又はシルセスキオキサン構造を有する二価の基によって二つの脂環型カルボン酸無水物が結合された構造を有するテトラカルボン酸二無水物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応生成物の構造を有するポリアミック酸又はその誘導体とエポキシ化合物とを含有する液晶配向剤、該液晶配向剤から形成される液晶配向膜、及びそれを具備した液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、ノートパソコンやデスクトップパソコンのモニターをはじめ、ビデオカメラのビューファインダー、投写型のディスプレイ等の様々な液晶表示装置に使われており、最近ではテレビとしても用いられるようになってきた。さらに液晶表示素子は、光プリンターヘッド、光フーリエ変換素子、ライトバルブ等のオプトエレクトロニクス関連素子としても利用されている。
【0003】
液晶表示素子は、通常は、1)対向配置されている一対の基板、2)前記一対の基板それぞれの対向している面の一方又は両方に形成されている電極、3)前記一対の基板それぞれの対向している面に形成された液晶配向膜、及び4)前記一対の基板間に形成された液晶層、を有する。
【0004】
従来の液晶表示素子としては、ネマチック液晶を用いた表示素子が主流であり、1)90度ツイストしたTN(Twisted Nematic)型液晶表示素子、2)通常180度以上ツイストしたSTN(Super Twisted Nematic)型液晶表示素子、3)薄膜トランジスタを使用したいわゆるTFT(Thin Film Transistor)型液晶表示素子が実用化されている。これらの液晶表示素子は、画像が適正に視認できる視野角が狭く、斜め方向から見たときに、輝度やコントラストの低下及び中間調での輝度反転を生じるという欠点を有している。
【0005】
近年、この視野角の問題については、1)光学補償フィルムを用いたTN−TFT型液晶表示素子、2)垂直配向と光学補償フィルムを用いたVA(Vertical Alignment)型液晶表示素子、3)垂直配向と突起構造物の技術を併用したMVA(Multi Domain Vertical Alignment)型液晶表示素子、又は4)横電界方式のIPS(In−Plane Switching)型液晶表示素子、5)ECB(Electrically Controlled Birefringence)型液晶表示素子、6)光学補償ベンド(Optically Compensated Bend又はOptically self−Compensated Birefringence:OCB)型液晶表示素子等の技術により改良されており、改良された技術が実用化、又は検討されている。
【0006】
液晶表示素子の技術の発展は、単にこれらの駆動方式や素子構造の改良のみならず、液晶表示素子に使用される構成部材の改良によっても達成されている。液晶表示素子に使用される構成部材のなかでも、特に液晶配向膜は、液晶表示素子の表示品位に係わる重要な要素の一つであり、液晶表示素子の高品質化に伴って液晶配向膜の役割が年々重要になってきている。
【0007】
液晶配向膜は、液晶配向剤より調製される。現在、主として用いられている液晶配向剤とは、ポリアミック酸又は可溶性のポリイミドを有機溶媒に溶解させた溶液である。このような溶液を基板に塗布した後、加熱等の手段により成膜してポリイミド系配向膜を形成する。ポリアミック酸以外の種々の液晶配向剤も検討されているが、耐熱性、耐薬品性(耐液晶性)、塗布性、液晶配向性、電気特性、光学特性、表示特性等の点から、ほとんど
実用化されていない。
【0008】
液晶表示素子の表示品位を向上させるために液晶配向膜に要求される重要な特性として、残留電圧が挙げられる。残留電圧が高いと残像を生じることがある。
【0009】
前記した問題を解決する試みとして、例えばテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体とジアミン又はその誘導体との反応生成物の構成を有するポリアミック酸又はその誘導体と、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物とを含有する液晶配向剤が知られている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0010】
しかしながら、液晶表示素子における表示品位のさらなる向上が求められており、またさらなる高性能の液晶表示素子を提供することができる液晶配向剤の開発が依然として求められている。
【特許文献1】特開平11−119226号公報
【特許文献2】特開2007−286597号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の状況に基づき、残留電圧がより低い液晶表示素子用の液晶配向剤、それを用いて形成される液晶配向膜、及びそれを具備した液晶表示素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、特定の構造を有するテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応生成物であるポリアミック酸と、エポキシ基を二以上有するエポキシ化合物とを含有する組成物が、残留電圧の低い液晶表示素子の製造に用いられる液晶配向剤として有効であることを見出し、本発明を完成させた。本発明は以下の構成からなる。
【0013】
[1] テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体とジアミン又はその誘導体との反応生成物の構成を有するポリアミック酸又はその誘導体と、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物とを含有する液晶配向剤であって、
前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、下記式(I)で表される化合物を含むことを特徴とする液晶配向剤。
【0014】
【化1】

【0015】
式(I)中、−X1−は、単結合、又は下記式(II)で表される2価の基を表す。式(II)中、−Phはフェニル基を表す。
【0016】
【化2】

【0017】
[2] 前記式(I)中、−X1−が単結合であることを特徴とする請求項[1]に記載の液晶配向剤。
【0018】
[3] 前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が下記式(1)及び(14)の化合物の一方又は両方をさらに含むか、又は、前記ジアミン又はその誘導体が下記式(III)〜(IX)からなる群から選ばれる一以上の化合物を含むか、又は、前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が下記式(1)及び(14)の化合物の一方又は両方をさらに含み、かつ前記ジアミン又はその誘導体が下記式(III)〜(IX)からなる群から選ばれる一以上の化合物を含むことを特徴とする[2]に記載の液晶配向剤。
【0019】
【化3】

【0020】
【化4】

【0021】
式(III)及び(IV)中、m及びnはそれぞれ1から12の整数を表し、
式(VI)〜(VIII)中、−Y1、−Y2、及び−Y3はそれぞれ−H又は炭素数1から30のアルキルを表し、
式(IX)中、−X2−は独立して−CH2−又は−O−を表し、−Y4は炭素数1から30のアルキル、下記式(X)、又は下記式(XI)を表す。
【0022】
【化5】

【0023】
式(X)及び(XI)中、−Y5及び−Y6はそれぞれ炭素数1から30のアルキルを表す。
【0024】
[4] 前記ジアミン又はその誘導体が、下記式(III−1)、(III−2)、(IV−1)、(V−1)、(VI−1)、(VII−1)、(VIII−1)、(IX−1)、(X−1)、及び(XI−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする[3]に記載の液晶配向剤。
【0025】
【化6】

【0026】
[5] 前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(III−1)、(III−2)、(IV−1)、及び(V−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする[4]に記載の液晶配向剤。
【0027】
[6] 前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が、前記式(1)及び(14)の一方又は両方の化合物を含み、
前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(III−1)、(III−2)、及び(IV−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする[5]に記載の液晶配向剤。
【0028】
[7] 前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(IX−1)、(X−1)、及び(XI−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする[4]に記載の液晶配向剤。
【0029】
[8] 前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が、前記式(1)及び(14)の一方又は両方の化合物を含み、
前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(IX−1)、(X−1)、及び(XI−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする[7]に記載の液晶配向剤。
【0030】
[9] 前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(III−1)、(VI−1)、(VII−1)、及び(VIII−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であり、かつ前記式(VI−1)又は(VII−1)を含むことを特徴とする[4]に記載の液晶配向剤。
【0031】
[10] 前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が、前記式(14)の化合物を含み、
前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(VII−1)の化合物であることを特徴とする[9]に記載の液晶配向剤。
【0032】
[11] 前記式(I)中、−X1−が前記式(II)で表される2価の基であることを特徴とする[1]に記載の液晶配向剤。
【0033】
[12] 前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が前記式(1)及び(14)の化合物の一方又は両方をさらに含むか、又は、前記ジアミン又はその誘導体が前記式(III)〜(VIII)からなる群から選ばれる一以上の化合物を含むか、又は、前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が前記式(1)及び(14)の化合物の一方又は両方をさらに含み、かつ前記ジアミン又はその誘導体が前記式(III)〜(VIII)からなる群から選ばれる一以上の化合物を含むことを特徴とする[11]に記載の液晶配向剤(ただし、前記式(VI)〜(VIII)中、−Y1、−Y2、及び−Y3はそれぞれ−H又は炭素数1から30のアルキルを表す。)
【0034】
[13] 前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(III−1)、(III−2)、(IV−1)、(V−1)、(VI−1)、(VII−1)、及び(VIII−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする[12]に記載の液晶配向剤。
【0035】
[14] 前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(III−1)、(III−2)、(IV−1)、及び(V−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする[13]に記載の液晶配向剤。
【0036】
[15] 前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が、前記式(1)及び(14)の一方又は両方の化合物を含み、
前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(III−1)、(III−2)、(IV−1)、及び(V−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする[14
]に記載の液晶配向剤。
【0037】
[16] 前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(III−1)、(VI−1)、(VII−1)、及び(VIII−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする[13]に記載の液晶配向剤。
【0038】
[17] 前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が前記式(14)の化合物を含み、
前記ジアミン又はその誘導体が前記式(VII−1)の化合物であることを特徴とする[16]に記載の液晶配向剤。
【0039】
[18] 前記テトラカルボン酸二無水物に、前記式(I)中、−X1−が単結合である化合物と、前記式(I)中、−X1−が前記式(II)で表される2価の基である化合物とが用いられることを特徴とする[1]に記載の液晶配向剤。
【0040】
[19] 前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が前記式(1)及び(14)の化合物の一方又は両方をさらに含むか、又は、前記ジアミン又はその誘導体が前記式(III)〜(VIII)からなる群から選ばれる一以上の化合物を含むか、又は、前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が前記式(1)及び(14)の化合物の一方又は両方をさらに含み、かつ前記ジアミン又はその誘導体が前記式(III)〜(VIII)からなる群から選ばれる一以上の化合物を含むことを特徴とする[18]に記載の液晶配向剤(ただし、前記式(VI)〜(VIII)中、−Y1、−Y2、及び−Y3はそれぞれ−H又は炭素数1から30のアルキルを表す。)
【0041】
[20] 前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(III−1)、(III−2)、(IV−1)、(V−1)、(VI−1)、(VII−1)、及び(VIII−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする[19]に記載の液晶配向剤。
【0042】
[21] 前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(III−1)、(III−2)、(IV−1)、及び(V−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする[20]に記載の液晶配向剤。
【0043】
[22] 前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が、前記式(1)及び(14)の一方又は両方の化合物を含み、
前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(III−1)、(III−2)、(IV−1)、及び(V−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする[21]に記載の液晶配向剤。
【0044】
[23] 前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(III−1)、(VI−1)、(VII−1)、及び(VIII−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする[20]に記載の液晶配向剤。
【0045】
[24] 前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が前記式(14)の化合物を含み、
前記ジアミン又はその誘導体が前記式(VII−1)の化合物であることを特徴とする[23]に記載の液晶配向剤。
【0046】
[25] 前記エポキシ化合物が、グリシジルエーテル、グリシジルエステル、グリシジルアミン、エポキシ基含有アクリル系樹脂、グリシジルアミド、グリシジルイソシアヌレート、鎖状脂肪族型エポキシ化合物、及び環状脂肪族型エポキシ化合物からなる群から選
ばれる一以上であることを特徴とする[1]〜[24]のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【0047】
[26] 前記エポキシ化合物が、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、及びN,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノールからなる群から選ばれる一以上であることを特徴とする[25]に記載の液晶配向剤。
【0048】
[27] [1]〜[26]のいずれか一項に記載の液晶配向剤の膜を焼成して形成される液晶配向膜。
【0049】
[28] 対向配置されている一対の基板と、前記一対の基板それぞれの対向している面の一方又は両方に形成されている電極と、前記一対の基板それぞれの対向している面に形成されている液晶配向膜と、前記一対の基板間に形成されている液晶層とを有する液晶表示素子において、前記液晶配向膜は[27]に記載の液晶配向膜であることを特徴とする液晶表示素子。
【発明の効果】
【0050】
本発明は、種々の駆動方式において残留電圧がより低い液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
本発明の液晶配向剤は、下記式(I)で表される化合物を含むテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体とジアミン又はその誘導体との反応生成物の構成を有するポリアミック酸又はその誘導体と、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物とを含有する。
【0052】
【化7】

【0053】
式(I)中、−X1−は、単結合、又は下記式(II)で表される2価の基を表す。式(II)中、−Phはフェニル基を表す。
【0054】
【化8】

【0055】
前記ポリアミック酸又はその誘導体は、一種でも二種以上でもよい。本発明の液晶配向剤における前記ポリアミック酸又はその誘導体の含有量は、液晶表示素子における残留電圧を低減させる観点から、0.1〜50重量%であることが好ましく、1〜30であることがより好ましい。
【0056】
前記エポキシ化合物は、一種でも二種以上でもよい。本発明の液晶配向剤における前記エポキシ化合物の含有量は、液晶表示素子における残留電圧を低減させる観点から、ポリアミック酸又はその誘導体100重量部に対して0.1〜100重量部であることが好ましく、1〜80重量部であることがより好ましい。
【0057】
前記ポリアミック酸又はその誘導体は、液晶配向剤としたときに溶剤に溶解する成分であり、液晶配向膜としたときに、ポリイミドを主成分とする液晶配向膜を形成する成分である。また、前記ポリアミック酸又はその誘導体は、式(I)で表される化合物を含むテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体とジアミン又はその誘導体との反応生成物の構成を有する。
【0058】
前記ポリアミック酸又はその誘導体を前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体と前記ジアミン又はその誘導体との反応生成物としたときに、前記ポリアミック酸又はその誘導体の全構成単位における前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体と前記ジアミン又はその誘導体とは、モル比で0.8:1.2〜1.2:0.8であることが好ましく、0.9:1.1〜1.1:0.9であることがより好ましい。
【0059】
前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体の一部は、ジカルボン酸に置き換えられていてもよい。前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体に対するジカルボン酸の比率は、10モル%以下であることが好ましい。
【0060】
また、前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体の一部は、カルボン酸無水物に置き換えられていてもよい。テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体の一部をカルボン酸無水物に置き換えることにより、ポリアミック酸又はその誘導体を生成するための重合反応において、重合反応のターミネーションを起こすことができ、それ以上の反応の進行を抑えることができることから、得られる重合体(ポリアミック酸又はその誘導体)の分子量を容易に制御することができる。テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体に対するカルボン酸無水物の比率は、本発明の効果が得られる範囲であればよいが、目安として10モル%以下であることが好ましい。
【0061】
また、前記ジアミン又はその誘導体の一部は、モノアミンに置き換えられていてもよい
。ジアミンの一部をモノアミンに置き換えることにより、ポリアミック酸又はその誘導体を生成するための重合反応において、重合反応のターミネーションを起こすことができ、それ以上の反応の進行を抑えることができることから、得られる重合体(ポリアミック酸又はその誘導体)の分子量を容易に制御することができる。ジアミン又はその誘導体に対するモノアミンの比率は、本発明の効果が得られる範囲であればよいが、目安として10モル%以下にすることが好ましい。
【0062】
前記ポリアミック酸又はその誘導体は、例えばテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることによって生成することができるが、前記の反応生成物と同じ構造が得られる他の原料、例えばテトラカルボン酸誘導体とジアミン誘導体と、による反応によって生成することもできる。
【0063】
前記テトラカルボン酸誘導体としては、例えば下記式(10000)で示される、テトラカルボン酸二無水物をエステル化して得られるジカルボン酸ジエステル化合物が挙げられる。下記式(10000)中、Y100は炭素数1〜4のアルキルを表す。
【0064】
【化9】

【0065】
テトラカルボン酸二無水物をエステル化する1価のアルコール及び1価のアルコール誘導体としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノールが挙げられる。テトラカルボン酸二無水物をエステル化してジカルボン酸ジエステル化合物を得る方法としては、例えば特開昭61−72022号公報に記載された方法及びそれに準ずる方法が挙げられる。
【0066】
ジカルボン酸ジエステル化合物とジアミンからポリイミド誘導体を得る方法としては、例えば、縮合剤としてカルボジイミドを用いる方法(特開昭61−72022号公報)、炭酸ジエステルを用いる方法(特開昭62−72724号公報)、リン系化合物を用いる方法(特開2002−356554号公報)、及びフェノール系溶剤中で加熱する方法(特開昭53−124596号公報)が挙げられる。
【0067】
前記ジアミン誘導体としては、ジアミンをシリル化して得られるシリル化ジアミン化合物が挙げられる。
【0068】
ジアミンのシリル化に用いられるシリル化剤としては、例えば、トリメチルクロロシラン、トリメチルブロモシラン、トリメチルヨードシラン、トリエチルクロロシラン、トリエチルブロモシラン、トリプロピルクロロシラン、トリブチルクロロシラン、トリヘキシルクロロシラン、ジメチルプロピルクロロシラン、ジメチルプロピルクロロシラン、ジメチルオクチルクロロシラン、ジメチルオクタデシルクロロシラン、t−ブチルジメチルクロ
ロシランなどのトリアルキルハロゲン化シラン;ジメチルビニルクロロシランなどのビニル基含有ハロゲン化シラン;ジメチルフェニルクロロシラン、ジフェニルメチルクロロシラン、ジメチルフェニルクロロシラン、ジフェニルメチルクロロシラン、メチルフェニルビニルクロロシランなどのフェニル基含有ハロゲン化シラン;クロロメチルジメチルクロロシラン、3−クロロプロピルジメチルクロロシラン、ジクロロメチルジメチルクロロシランなどのハロゲン化アルキル基含有ハロゲン化シラン;トリメトキシクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、ジメトキシメチルクロロシランなどのアルコキシ基含有ハロゲン化シラン;ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジプロピルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、ジヘキシルジクロロシランなどのアルキル基含有ジハロゲン化シラン;ヘキサメチルジシラン、ヘキサエチルジシラン、ヘキサフェニルジシランなどのジシラン;ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリエチルシリル)アセトアミド、ビス(トリフェニルシリル)アセトアミドなどのシリル化アセトアミド;ヘキサメチルジシラザン等のジシラザン;が挙げられる。
【0069】
ジアミンをシリル化してシリル化ジアミン化合物を得る方法としては、例えば特開平1−217420号公報に記載された方法が挙げられる。
【0070】
このようなポリアミック酸の誘導体としては、例えば可溶性ポリイミド、ポリアミック酸エステル、及びポリアミック酸アミド等が挙げられる。より具体的には、ポリアミック酸の誘導体としては、例えば1)ポリアミック酸の全てのアミノとカルボキシルとが脱水閉環反応したポリイミド、2)部分的に脱水閉環反応した部分ポリイミド、3)ポリアミック酸のカルボキシルがエステルに変換されたポリアミック酸エステル、4)テトラカルボン酸二無水物化合物に含まれる酸二無水物の一部を有機ジカルボン酸に置き換えて反応させて得られたポリアミック酸−ポリアミド共重合体、及び5)該ポリアミック酸−ポリアミド共重合体の一部又は全部を脱水閉環反応させたポリアミドイミドが挙げられる。
【0071】
前記ポリアミック酸又はその誘導体は、任意の重量平均分子量を有していてよい。前記ポリアミック酸又はその誘導体の重量平均分子量は特に限定されないが、液晶配向剤の成分として用いる観点から5×103以上であることが好ましく、1×104以上であることがより好ましい。5×103以上の重量平均分子量を有するポリアミック酸又はその誘導体は、液晶配向膜を焼成するステップにおいて蒸発することがなく、液晶配向剤の成分として好ましい物性を有する。
【0072】
前記ポリアミック酸又はその誘導体の重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定される。例えば、得られたポリアミック酸又はその誘導体をジメチルホルムアミド(DMF)でポリアミック酸濃度が約1重量%になるように希釈し、クロマトパックC−R7A(島津製作所製)を用いて、DMFを展開溶媒としてゲル浸透クロマトグラフ分析(GPC)法により測定し、ポリスチレン換算することにより求められる。さらに、ポリアミック酸やポリアクリル酸等のGPC測定を精度良く行うために、リン酸、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸やリチウムブロミド、リチウムクロリド等の無機塩をDMF溶媒に溶解させた展開溶媒を調製することがある。
【0073】
前記ポリアミック酸又はその誘導体は、式(I)で表される化合物とジアミン又はその誘導体との反応生成物の構成を有する。すなわち前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、式(I)中の−X1−が単結合である下記式(I−1)の化合物、及び式(I)中の−X1−が式(II)で表される基である下記式(I−2)の化合物の一方又は両方を含む。本発明の液晶配向剤が二種以上のポリアミック酸又はその誘導体を含有する場合は、式(I)で表される化合物は、一方のポリアミック酸又はその誘導体のみに用いられていてもよいし、両方のポリアミック酸又はその誘導体に用いられていてもよい。
【0074】
【化10】

【0075】
前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体由来の構造のうち、式(I)で表される化合物の割合は、0.1〜100モル%であることが、液晶表示素子における残留電圧を低減させる観点から好ましく、0.5〜100モル%であることがより好ましく、1〜100モル%であることがさらに好ましい。
【0076】
前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、式(I)で表される化合物以外の化合物を含んでいてもよい。式(I)で表される化合物と併用されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体としては、液晶配向剤に用いられる公知のテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体が挙げられ、より具体的には、例えば芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、及び脂環式テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。前記テトラカルボン酸二無水物は、例えばポリアミック酸又はその誘導体の溶剤への可溶性の観点から選ぶことができる。
【0077】
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば下記式(1)〜(13)で表される酸二無水物が挙げられる。前記芳香族テトラカルボン酸二無水物は、下記式(1)、(2)、(5)、(6)及び(7)で表される酸二無水物であることが好ましく、式(1)で表されるピロメリット酸二無水物であることがより好ましい。
【0078】
【化11】

【0079】
前記脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び前記脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば下記式(14)〜(59)、(61)、及び(62)で表される酸二無水物が挙げられる。
【0080】
【化12】

【0081】
【化13】

【0082】
【化14】

【0083】
前記脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び前記脂環式テトラカルボン酸二無水物は、式(14)〜(29)で表される酸二無水物であることが好ましく、式(14)で表される1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物がより好ましい。
【0084】
またポリアミック酸又はその誘導体を、溶媒に可溶性なポリイミドとする観点から、前記脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び前記脂環式テトラカルボン酸二無水物は、式(19)、(20)、及び(27)〜(29)で表される酸二無水物であることが好ましい。
【0085】
前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物と、前記脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び前記脂環式テトラカルボン酸二無水物と(例えばピロメリット酸二無水物と1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物と)を含むことが、前記ポリアミック酸又はその誘導体を含有する液晶配向剤を用いて形成される液晶配向膜を有する液晶表示素子に良好な電圧保持率を付与する観点から好ましい。
【0086】
さらに、前記テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、側鎖構造を有するテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。前記側鎖構造を有するテトラカルボン酸二無水物は、前記ポリアミック酸又はその誘導体を含有する液晶配向剤を用いて形成される液晶配向膜を
有する液晶表示素子におけるプレチルト角を大きくする観点から好ましい。
【0087】
前記側鎖構造を有するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば下記式(63)及び(64)で表されるステロイド骨格を有する化合物が挙げられる。
【0088】
【化15】

【0089】
前記テトラカルボン酸二無水物は、前述したテトラカルボン酸二無水物に限定されず、本発明の目的が達成される範囲内で、他のテトラカルボン酸二無水物を含み、このような他のテトラカルボン酸二無水物も、前記テトラカルボン酸二無水物として本発明において用いることができる。
【0090】
前記ジアミンとしては、液晶配向剤に用いられる公知のジアミン及びその誘導体が挙げられ、より具体的には、例えば直鎖構造を有するジアミン、側鎖構造を有するジアミン、シロキサン結合を有するシロキサン系ジアミン、ナフタレン構造を有するナフタレン系ジアミン、フルオレン構造を有するフルオレン系ジアミン等が挙げられる。
【0091】
前記直鎖構造を有するジアミンの種類及び使用量は、液晶表示素子としたときの電圧保持率を所望の範囲に調整する観点から決めることができる。前記ジアミン又はその誘導体における前記直鎖構造を有するジアミンの割合は、例えば前記の観点から、1〜100モル%であることが好ましく、5〜80モル%であることがより好ましい。前記直鎖構造を有するジアミンとしては、例えば下記式(X)〜(XVI)で表されるジアミンが挙げられる。
【0092】
【化16】

【0093】
式(X)中、A1は、−(CH2m−を表す。ここでmは1〜12の整数を表す。また式(XII)、(XIV)、(XVI)中、A1は独立して、単結合、−O−、−S−、−S−S−、−SO2−、−CO−、−CONH−、−NHCO−、−C(CH32−、−C(CF32−、−(CH2m−、−O−(CH2m−O−、−S−(CH2m−S−を表す。ここでmは1〜12の整数を表す。
【0094】
また式(XV)及び(XVI)中、A2は、独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−C(CH32−、−C(CF32−又は炭素数1〜3のアルキレンを表す。さらに式(XI)〜(XVI)中のシクロヘキサン環又はベンゼン環に結合している水素は、独立して−F、−CH3、−OH、−COOH、−SO3H、−PO32、ベンジル又は4−ヒドロキシベンジルと置き換えられていてもよい。
【0095】
式(X)で表されるジアミンとしては、例えば式(X−1)〜(X−3)のジアミンが挙げられる。
【0096】
【化17】

【0097】
式(XI)で表されるジアミンとしては、例えば式(XI−1)及び(XI−2)のジアミンが挙げられる。
【0098】
【化18】

【0099】
式(XII)で表されるジアミンとしては、例えば式(XII−1)〜(XII−3)のジアミンが挙げられる。
【0100】
【化19】

【0101】
式(XIII)で表されるジアミンとしては、例えば式(XIII−1)〜(XIII−16)のジアミンが挙げられる。
【0102】
【化20】

【0103】
式(XIV)で表されるジアミンとしては、例えば式(XIV−1)〜(XIV−32)のジアミンが挙げられる。
【0104】
【化21】

【0105】
【化22】

【0106】
式(XV)で表されるジアミンとしては、例えば式(XV−1)〜(XV−6)のジアミンが挙げられる。
【0107】
【化23】

【0108】
式(XVI)で表されるジアミンとしては、例えば式(XVI−1)〜(XVI−12)のジアミンが挙げられる。
【0109】
【化24】

【0110】
前記側鎖構造を有するジアミンは、VA型液晶表示素子、OCB型液晶表示素子、STN型液晶表示素子、TN型液晶表示素子等の大きなプレチルト角が要求されるような用途
において好適に用いることができる。ここで側鎖構造を有するジアミンとは、二つのアミノ基を結ぶ置換基を主鎖としたときに、主鎖から分岐する、所望のプレチルト角を発現させることができる置換基(側鎖)を有するジアミンを意味する。すなわち、側鎖構造を有するジアミンは、テトラカルボン酸二無水物と反応することで、高分子主鎖に対して側鎖基を有するポリアミック酸又はポリイミド(分岐ポリアミック酸又は分岐ポリイミド)を提供することができる。このような高分子主鎖に対して側鎖基を有するポリアミック酸又はポリイミドを含有する液晶配向剤から形成される液晶配向膜は、液晶表示素子におけるプレチルト角を大きくすることができる。このことは、例えば、特開平11−193345号公報に記載されている。
【0111】
従って、側鎖構造を有するジアミンにおける側鎖は、要求されるプレチルト角に応じて適宜選択すればよい。例えば、該側鎖は炭素数3以上の基が好ましく挙げられる。具体的には、
1)置換基を有していてもよいフェニル、置換基を有していてもよいシクロヘキシルフェニレン、置換基を有していてもよいビス(シクロヘキシル)フェニレン、又は炭素数3以上のアルキル、アルケニル若しくはアルキニル、
2)置換基を有していてもよいフェニルオキシ、置換基を有していてもよいシクロヘキシルオキシ、置換基を有していてもよいビス(シクロヘキシル)オキシ、置換基を有していてもよいフェニルシクロヘキシルオキシ、置換基を有していてもよいシクロヘキシルフェニルオキシ、又は炭素数3以上のアルキルオキシ、アルケニルオキシ若しくはアルキニルオキシ、
3)フェニルカルボニル、又は炭素数3以上のアルキルカルボニル、アルケニルカルボニル若しくはアルキニルカルボニル、
4)フェニルカルボニルオキシ、又は炭素数3以上のアルキルカルボニルオキシ、アルケニルカルボニルオキシ若しくはアルキニルカルボニルオキシ、
5)置換基を有していてもよいフェニルオキシカルボニル、置換基を有していてもよいシクロヘキシルオキシカルボニル、置換基を有していてもよいビス(シクロヘキシル)オキシカルボニル、置換基を有していてもよいビス(シクロヘキシル)フェニルオキシカルボニル、置換基を有していてもよいシクロヘキシルビス(フェニル)オキシカルボニル、又は炭素数3以上のアルキルオキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニル若しくはアルキニルオキシカルボニル、
6)フェニルアミノカルボニル、又は炭素数3以上のアルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル若しくはアルキニルアミノカルボニル、
7)炭素数3以上の環状アルキレン、
8)置換基を有していてもよいシクロヘキシルアルキレン、置換基を有していてもよいフェニルアルキレン、置換基を有していてもよいビス(シクロヘキシル)アルキレン、置換基を有していてもよいシクロヘキシルフェニルアルキレン、置換基を有していてもよいビス(シクロヘキシル)フェニルアルキレン、置換基を有していてもよいフェニルアルキルオキシ、アルキルフェニルオキシカルボニル、又はアルキルビフェニリルオキシカルボニル、
9)アルキル、フッ素置換アルキル、又はアルコキシによって置換されたフェニル又はシクロヘキシル、及び、
10)二個以上のベンゼン環又はシクロヘキサン環が単結合し、又は、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−若しくは炭素数1〜3のアルキレンを介して結合した、アルキル、フッ素置換アルキル、又はアルコキシによって置換された環集合基、又はステロイド骨格を有する基等が挙げられるが、これに限定されない。
【0112】
ここで、「置換基」としては、アルキル、アルコキシ、又はアルコキシアルキル等を挙げることができる。
【0113】
また、ビス(シクロヘキシル)、又はビス(フェニル)は、アルキレンによって中断されていてもよい。
【0114】
なお、本明細書において、「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」というときは、線状でもよいし、枝分かれでもよい。
【0115】
前記側鎖構造を有するジアミンの種類及び使用量は、液晶表示素子としたときのプレチルト角を所望の範囲に調整する観点から決めることができる。前記ジアミン又はその誘導体における前記側鎖構造を有するジアミンの割合は、例えば前記の観点から、1〜100モル%であることが好ましく、10〜100モル%であることがより好ましい。前記側鎖構造を有するジアミンとしては、例えば下記式(XVII)、(XIX)〜(XXII)で表されるジアミンが挙げられる。
【0116】
【化25】

【0117】
式(XVII)中、A3は、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−又は−(CH2m−を表す。ここでmは1〜6の整数を表す。R7は、ステロイド骨格を有する基、下記一般式(XVIII)で表される基、又は炭素数1〜30のアルキルを表す。該アルキルにおいては、独立して、任意の−CH2−が−CF2−、−CHF−、−O−、−CH=CH−又は−C≡C−で置き換えられていてもよく、−CH3が−CH2F、−CHF2又は−CF3で置き換えられていてもよい。ただし該アルキルにおいて−O−は隣り合わない。
【0118】
【化26】

【0119】
式(XVIII)において、A4及びA5はそれぞれ独立して、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−又は炭素数1〜20のアルキレンを表す。R8及びR9はそれぞれ独立して、−F又は−CH3を表す。環Sは1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイル又はアントラセン−9,10−ジイルを表す。R10は−F、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−CN、−OCH2F、−OCHF2又は−OCF3を表す。またa及びbはそれぞれ独立して0〜4の整数を表し、a又はbが2〜4であるとき隣り合うA4又はA5は異なる基であり、c、d及びeはそれぞれ独立して0〜3の整数を表し、eが2又は3であるとき複数の環Sは同一の基であっても異なる基であってもよい。f及びgはそれぞれ独立して0〜
2の整数を表し、かつc+d+e≧1である。
【0120】
【化27】

【0121】
式(XIX)中、ステロイド骨格を形成する炭素に結合している水素は、独立して−CH3と置き換えられていてもよい。式(XIX)及び(XX)中、R11はそれぞれ独立して、−H又は−CH3を表し、R12は、−H又は炭素数1〜20のアルキル若しくはアルケニルを表す。A6はそれぞれ独立して、単結合、−C(=O)−又は−CH2−を表す。式(XII)中、R13及びR14はそれぞれ独立して、−H、炭素数1〜20のアルキル又はフェニルを表す。
【0122】
【化28】

【0123】
式(XXI)中、R15は−H又は炭素数1〜30のアルキルを表す。該アルキルのうち炭素数2〜30のアルキルの任意の−CH2−は、独立して−O−、−CH=CH−又は−C≡C−で置き換えられてもよい。ただし該アルキルにおいて−O−は隣り合わない。式(XXI)及び(XXII)中、A7は独立して−O−又は炭素数1〜6のアルキレンを表す。式(XXI)中、A8は単結合又は炭素数1〜3のアルキレンを表す。環Tは1,4−フェニレン又は1,4−シクロヘキシレンを表す。hは0又は1を表す。式(XXII)中、R16は炭素数6〜22のアルキルを表し、R17は−H又は炭素数1〜22のアルキルを表す。
【0124】
式(XVII)で表されるジアミンとしては、例えば下記式(XVII−1)〜(XVII−11)で表されるジアミンが挙げられる。前記式(XVII)において、二つのアミノ基はフェニル環の炭素に結合しているが、好ましくは、二つのアミノ基の結合位置関係は、メタ又はパラであることが好ましい。さらに二つのアミノ基はそれぞれ、「R7−A3−」の結合位置を1位としたときに3位と5位、又は2位と5位に結合していることが好ましい。
【0125】
【化29】

【0126】
式中、R18は炭素数3〜30のアルキル又は炭素数3〜30のアルコキシが好ましく、炭素数5〜25のアルキル又は炭素数5〜25のアルコキシがさらに好ましい。また、R19は炭素数1〜30のアルキル又は炭素数1〜30のアルコキシが好ましく、炭素数3〜25のアルキル又は炭素数3〜25のアルコキシがさらに好ましい。
【0127】
また式(XVII)で表されるジアミンとしては、例えば下記式(XVII−12)〜(XVII−17)で表されるジアミンが挙げられる。
【0128】
【化30】

【0129】
式(XVII−12)〜(XVII−15)においてR20は炭素数4〜30のアルキルが好ましく、炭素数6〜25のアルキルがさらに好ましい。式(XVII−16)及び(XVII−17)においてR21は炭素数6〜30のアルキルが好ましく、炭素数8〜25のアルキルがさらに好ましい。
【0130】
また式(XVII)で表されるジアミンとしては、例えば下記式(XVII−18)〜(XVII−38)で表されるジアミンが挙げられる。
【0131】
【化31】

【0132】
【化32】

【0133】
式(XVII−18)〜(XVII−38)において、R22は炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシが好ましく、炭素数3〜25のアルキル又は炭素数3〜25のアルコキシがさらに好ましい。R23は−H、−F、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−CN、−OCH2F、−OCHF2又は−OCF3が好ましく、炭素数3〜25のアルキル又は炭素数3〜25のアルコキシがさらに好ましい。A9は炭素数1〜20のアルキレンを表す。
【0134】
また式(XVII)で表されるジアミンとしては、例えば下記式(XVII−39)〜(XVII−48)のジアミンが挙げられる。
【0135】
【化33】

【0136】
前記式(XIX)で表されるジアミンとしては、例えば式(XIX−1)〜(XIX−4)のジアミンが挙げられる。式(XIX)において、二つの「NH2−Ph−A6−O−」の一方はステロイド核の3位に結合し、もう一方は6位に結合していることが好ましい。また、二つのアミノ基はそれぞれ、フェニル環炭素に結合しており、A6の結合位置に対して、メタ又はパラに結合していることが好ましい。
【0137】
【化34】

【0138】
前記式(XX)で表されるジアミンとしては、例えば式(XX−1)〜(XX−8)のジアミンが挙げられる。式(XX)において、二つの「NH2−(R14−)Ph−A6−O−」は、それぞれフェニル環の炭素に結合しているが、好ましくはステロイド核が結合している炭素に対してメタ又はパラの炭素に結合している。また、二つのアミノ基はそれぞれフェニル環炭素に結合しているが、A6に対してメタ又はパラに結合していることが好ましい。
【0139】
【化35】

【0140】
前記式(XXI)で表されるジアミンとしては、例えば式(XXI−1)〜(XXI−9)で表されるジアミンが挙げられる。式(XXI)において、二つのアミノ基はそれぞれフェニル環の炭素に結合しているが、A7に対してメタ又はパラに結合していることが好ましい。
【0141】
【化36】

【0142】
式中、R24は−H、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、R25は−H、炭素数1〜20のアルキル基がさらに好ましい。
【0143】
前記式(XXII)で表されるジアミンとしては、例えば式(XXII−1)〜(XXII−3)で表されるジアミンが挙げられる。式(XXII)において、二つのアミノ基はそれぞれフェニル環の炭素に結合しているが、A7に対してメタ又はパラに結合していることが好ましい。
【0144】

【化37】

【0145】
式中、R26は炭素数6〜20のアルキル基が好ましく、R27は−H、炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。
【0146】
前記シロキサン系ジアミンとしては、例えば下記式(XXIII)で表されるジアミンが挙げられる。
【0147】
【化38】

【0148】
式中、R28及びR29は独立して炭素数1〜3のアルキル又はフェニルを表し、A10は独立してメチレン、フェニレン又はアルキル置換されたフェニレンを表す。iは1〜6の整数を表し、jは1〜10の整数を表す。
【0149】
式(XXIII)で表されるジアミンとしては、例えば下記式(XXIII−1)〜(XXIII−7)で表されるジアミンが挙げられる。
【0150】
【化39】

【0151】
さらに、前記ジアミン又はその誘導体には、前述した以外のジアミンを用いることができる。このようなその他のジアミンとしては、例えば下記式(1’)〜(8’)で表されるジアミンが挙げられる。
【0152】
【化40】

【0153】
式中、R30及びR31は独立して炭素数3〜30のアルキル基を表す。
【0154】
前記ジアミン又はその誘導体としては、前記ジアミンに限定されることなく、他にも種々の形態で存在するジアミンが、本発明の目的が達成される範囲内で用いることができることはいうまでもない。
【0155】
前記ジアミンは、ジアミンの種類及びその組み合わせを適宜選択することにより、本発明の液晶配向剤を用いて形成される液晶表示素子に、好適なプレチルト角を付与することができる。
【0156】
例えばVA型液晶表示素子の場合には80〜90°程度の大きなプレチルト角が、OCB型液晶表示素子の場合には7〜20°程度のプレチルト角が、TN型液晶表示素子やSTN型液晶表示素子の場合には3〜10°程度のプレチルト角が、及びIPS型液晶表示素子の場合には0〜3°程度の小さなプレチルト角が要求される場合が多い。従って、側鎖構造を有するジアミンを用いてプレチルト角を適宜調整することができる本発明の液晶配向剤は、任意の種類の液晶表示素子に適用することができる。
【0157】
前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体と前記ジアミン又はその誘導体とは、適用する液晶表示素子の形態に応じて適宜選択することができる。このような観点から好ましい前記ジアミン又はその誘導体としては、特に以下に示すジアミンが挙げられる。
【0158】
【化41】

【0159】
前記式(III)及び(IV)中、m及びnはそれぞれ1から12の整数を表し、前記式(VI)〜(VIII)中、−Y1、−Y2、及び−Y3はそれぞれ−H又は炭素数1から30のアルキルを表し、前記式(IX)中、−X2−は独立して−CH2−又は−O−を表し、−Y4は炭素数1から30のアルキル、下記式(X)、又は下記式(XI)を表す。
【0160】
【化42】

【0161】
前記式(X)及び(XI)中、−Y5及び−Y6はそれぞれ炭素数1から30のアルキルを表す。
【0162】
前記式(III)〜(IX)のジアミンとしては、例えば下記式(III−1)、(III−2)、(IV−1)、(V−1)、(VI−1)、(VII−1)、(VIII−1)、(IX−1)、(X−1)、及び(XI−1)の化合物が挙げられる。
【0163】
【化43】

【0164】
例えば前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体に含まれる前記式(I)のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が前記式(I−1)の化合物である場合では、IPS型液晶表示素子には、前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、前記式(1)及び
(14)の化合物の一方又は両方とをさらに含むことが好ましい。また前記ジアミン又はその誘導体は、前記式(III−1)、(III−2)、(IV−1)、及び(V−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物を含むことが好ましく、前記式(III−1)、(III−2)、及び(IV−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることがより好ましい。
【0165】
また前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体に含まれる前記式(I)のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が前記式(I−1)の化合物である場合では、TN型液晶表示素子には、前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、前記式(1)及び(14)の化合物の一方又は両方をさらに含むことが好ましい。また前記ジアミン又はその誘導体は、前記式(IX−1)、(X−1)、及び(XI−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることが好ましい。
【0166】
また前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体に含まれる前記式(I)のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が前記式(I−1)の化合物である場合では、VA型液晶表示素子には、前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、前記式(1)及び(14)の一方または両方の化合物をさらに含むことが好ましく、式(14)の化合物をさらに含むことがより好ましい。また前記ジアミン又はその誘導体は、前記式(III−1)、(VI−1)、(VII−1)、及び(VIII−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であり、かつ前記式(VI−1)又は(VII−1)を含むことが好ましく、前記式(VII−1)の化合物であることがより好ましい。
【0167】
前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体に含まれる前記式(I)のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が前記式(I−2)の化合物である場合では、IPS型液晶表示素子には、前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、前記式(1)及び(14)の一方または両方の化合物をさらに含むことが好ましい。また前記ジアミン又はその誘導体は、前記式(III−1)、(III−2)、(IV−1)、及び(V−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることが好ましい。
【0168】
また前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体に含まれる前記式(I)のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が前記式(I−2)の化合物である場合では、VA型液晶表示素子には、前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、前記式(1)及び(14)の一方または両方の化合物をさらに含むことが好ましく、式(14)の化合物をさらに含むことがより好ましい。また前記ジアミン又はその誘導体は、前記式(III−1)、(VI−1)、(VII−1)、及び(VIII−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることが好ましく、前記式(VII−1)の化合物であることがより好ましい。
【0169】
前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体に含まれる前記式(I)のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が前記式(I−1)及び(I−2)の両方の化合物である場合では、IPS型液晶表示素子には、前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、前記式(1)及び(14)の一方または両方の化合物をさらに含むことが好ましい。また前記ジアミン又はその誘導体は、前記式(III−1)、(III−2)、(IV−1)、及び(V−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることが好ましい。
【0170】
また前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体に含まれる前記式(I)のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が前記式(I−1)及び(I−2)の両方の化合物である場合では、VA型液晶表示素子には、前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、前記式(1)及び(14)の一方または両方の化合物をさらに含むことが好ましく、式(14)の化合物をさらに含むことがより好ましい。また前記ジアミン又はその誘導体は、
前記式(III−1)、(VI−1)、(VII−1)、及び(VIII−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることが好ましく、前記式(VII−1)の化合物であることがより好ましい。
【0171】
前記ポリアミック酸又はその誘導体は、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、原料投入口、窒素導入口、温度計、攪拌機及びコンデンサーを備えた反応容器に、前記ジアミン、さらに必要に応じてモノアミンの所望量を仕込む。
【0172】
次に、溶媒(例えばアミド系極性溶媒であるN−メチル−2−ピロリドンやジメチルホルムアミド等)及び前記テトラカルボン酸二無水物、さらに必要に応じてカルボン酸無水物を反応容器内に投入する。このときテトラカルボン酸二無水物の総仕込み量は、ジアミンの総モル数とほぼ等モル(モル比0.9〜1.1程度)とすることが好ましい。
【0173】
攪拌下に温度0〜70℃で1〜48時間反応させることによりポリアミック酸の溶液を得ることができる。また、加熱して反応温度を上げる(例えば、50〜80℃)ことにより、分子量の小さいポリアミック酸を得ることもできる。
【0174】
前記ポリアミック酸又はその誘導体は、多量の貧溶媒で沈殿させ、固形分と溶媒とを濾過等により完全に分離し、IR、NMRで分析することにより同定され得る。さらには、KOHやNaOH等の強アルカリの水溶液で固形のポリアミック酸又はその誘導体を分解後、有機溶媒で抽出し、GC、HPLC又はGC−MSで分析することにより、このポリマーの重合に用いられたモノマーを同定することができる。
【0175】
得られたポリアミック酸の溶液は、所望の粘度に調整するために、攪拌し、又は溶媒で希釈して使用することができる。
【0176】
前記ポリアミック酸又はその誘導体を可溶性ポリイミドとする場合には、例えばポリアミック酸の溶液を、脱水剤である無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物、及び脱水閉環触媒であるトリエチルアミン、ピリジン、コリジン等の三級アミンと共に、温度20〜150℃でイミド化反応させて得ることができる。
【0177】
又は、前記ポリアミック酸又はその誘導体を可溶性ポリイミドとする場合には、例えばポリアミック酸の溶液から多量の貧溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒やグリコール系溶媒)を用いてポリアミック酸を析出させ、析出させたポリアミック酸を、トルエン、キシレン等の溶媒中で、前記と同様の脱水剤及び脱水閉環触媒と共に、温度20〜150℃でイミド化反応させて得ることもできる。
【0178】
前記イミド化反応において、脱水剤と脱水閉環触媒の割合は0.1〜10(モル比)であることが好ましい。両者の合計使用量は、使用するテトラカルボン酸二無水物に含まれる酸二無水物のトータルのモル量に対して1.5〜10倍モルであることが好ましい。この化学的イミド化の脱水剤、触媒量、反応温度及び反応時間を調整することによって、イミド化の程度を制御し、部分ポリイミドを得ることができる。
【0179】
さらに、該ポリアミック酸−ポリアミド共重合体を化学的にイミド化することによってポリアミドイミドを製造することができる。
【0180】
得られたポリイミドは、溶媒と分離して、後述するエポキシ化合物と共に再溶解させて液晶配向剤として使用することもできるし、又は溶媒と分離することなくエポキシ化合物を添加して液晶配向剤として使用することもできる。
【0181】
前記エポキシ化合物は、液晶配向剤においてエポキシ化合物と前記ポリアミック酸又はその誘導体との溶液を形成する種類や含有量で用いられる。なお、エポキシ樹脂は、エポキシ基を有する樹脂を意味する。
【0182】
前記エポキシ化合物としては、例えばグリシジルエーテル、グリシジルエステル、グリシジルアミン、エポキシ基含有アクリル系樹脂、グリシジルアミド、グリシジルイソシアヌレート、鎖状脂肪族型エポキシ化合物、及び環状脂肪族型エポキシ化合物が挙げられる。
【0183】
前記グリシジルエーテルとしては、例えばビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ビスフェノール型エポキシ化合物、水素化ビスフェノール−A型エポキシ化合物、水素化ビスフェノール−F型エポキシ化合物、水素化ビスフェノール−S型エポキシ化合物、水素化ビスフェノール型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノール−A型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノール−F型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、臭素化フェノールノボラック型エポキシ化合物、臭素化クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、ナフタレン骨格含有エポキシ化合物、芳香族ポリグリシジルエーテル化合物、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ化合物、脂環式ジグリシジルエーテル化合物、脂肪族ポリグリシジルエーテル化合物、ポリサルファイド型ジグリシジルエーテル化合物、及びビフェノール型エポキシ化合物が挙げられる。
【0184】
前記グリシジルエステルとしては、例えばジグリシジルエステル化合物及びグリシジルエステルエポキシ化合物が挙げられる。
【0185】
前記グリシジルアミンとしては、例えばポリグリシジルアミン化合物及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0186】
前記エポキシ基含有アクリル系化合物としては、例えばオキシラニルを有するモノマーの単独重合体及び共重合体が挙げられる。
【0187】
前記グリシジルアミドとしては、例えばグリシジルアミド型エポキシ化合物が挙げられる。
【0188】
前記鎖状脂肪族型エポキシ化合物としては、例えばアルケン化合物の炭素−炭素二重結合を酸化して得られる、エポキシ基を含有する化合物が挙げられる。
【0189】
前記環状脂肪族型エポキシ化合物としては、例えばシクロアルケン化合物の炭素−炭素二重結合を酸化して得られる、エポキシ基を含有する化合物が挙げられる。
【0190】
前記ビスフェノールA型エポキシ化合物としては、例えば828、1001、1002、1003、1004、1007、1010(いずれもジャパンエポキシレジン製)、エポトートYD−128(東都化成社製)、DER−331、DER−332、DER−324(いずれもダウ・ケミカル社製)、エピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050(いずれも大日本インキ製)、エポミックR−140、エポミックR−301、及びエポミックR−304(いずれも三井化学製)が挙げられる。
【0191】
前記ビスフェノールF型エポキシ化合物としては、例えば806、807、4004P(いずれもジャパンエポキシレジン製)、エポトートYDF−170、エポトートYDF−175S、エポトートYDF−2001(いずれも東都化成社製)、DER−354(
ダウ・ケミカル社製)、エピクロン830、及びエピクロン835(いずれも大日本インキ製)が挙げられる。
【0192】
前記ビスフェノール型エポキシ化合物としては、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンのエポキシ化物が挙げられる。
【0193】
前記水素化ビスフェノール−A型エポキシ化合物としては、例えばサントートST−3000(東都化成社製)、リカレジンHBE−100(新日本理化製)、及びデナコールEX−252(ナガセケムテックス社製)が挙げられる。
【0194】
前記水素化ビスフェノール型エポキシ化合物としては、例えば水素化2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンのエポキシ化物が挙げられる。
【0195】
前記臭素化ビスフェノール−A型エポキシ化合物としては、例えば5050、5051(いずれもジャパンエポキシレジン製)、エポトートYDB−360、エポトートYDB−400(いずれも東都化成社製)、DER−530、DER−538(いずれもダウ・ケミカル社製)、エピクロン152、及びエピクロン153(いずれも大日本インキ製)が挙げられる。
【0196】
前記フェノールノボラック型エポキシ化合物としては、例えば152、154(いずれもジャパンエポキシレジン製)、YDPN−638(東都化成社製)、DEN431、DEN438(いずれもダウ・ケミカル社製)、エピクロンN−770(大日本インキ化学工業(株)製)、EPPN−201、及びEPPN−202(いずれも日本化薬(株)製)が挙げられる。
【0197】
前記クレゾールノボラック型エポキシ化合物としては、例えば180S75(ジャパンエポキシレジン製)、YDCN−701、YDCN−702(いずれも東都化成社製)、エピクロンN−665、エピクロンN−695(いずれも大日本インキ化学工業(株)製)、EOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S、EOCN−1020、EOCN−1025、及びEOCN−1027(いずれも日本化薬(株)製)が挙げられる。
【0198】
前記ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物としては、例えば157S70(ジャパンエポキシレジン(株)製)、及びエピクロンN−880(大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
【0199】
前記ナフタレン骨格含有エポキシ化合物としては、例えばエピクロンHP−4032、エピクロンHP−4700、エピクロンHP−4770(いずれも大日本インキ化学工業(株)製)、及びNC−7000(日本化薬社製)が挙げられる。
【0200】
前記芳香族ポリグリシジルエーテル化合物としては、例えばハイドロキノンジグリシジルエーテル(下記構造式101)、カテコールジグリシジルエーテル(下記構造式102)レゾルシノールジグリシジルエーテル(下記構造式103)、2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−([2,3−エポキシプロポキシ]フェニル)]エチル]フェニル]プロパン(下記構造式104)、トリス(4−グリシジルオキシフェニル)メタン(下記構造式105)、1031S、1032H60(いずれもジャパンエポキシレジン製)、TACTIX−742(ダウ・ケミカル社製)、デナコールEX−201(ナガセケムテックス社製)、DPPN−503、DPP
N−502H、DPPN−501H、NC6000(いずれも日本化薬(株)製)、テクモアVG3101L(三井化学社製)、下記構造式106で表される化合物、及び下記構造式107で表される化合物が挙げられる。
【0201】
【化44】

【0202】
前記ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ化合物としては、例えばTACTIX
−556(ダウ・ケミカル社製)、及びエピクロンHP−7200(大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
【0203】
前記脂環式ジグリシジルエーテル化合物としては、例えばシクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル化合物、及びリカレジンDME−100(新日本理化製)が挙げられる。
【0204】
前記脂肪族ポリグリシジルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル(下記構造式108)、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(下記構造式109)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(下記構造式110)、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(下記構造式111)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(下記構造式112)、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(下記構造式113)、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(下記構造式114)、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(下記構造式115)、デナコールEX−810、デナコールEX−851、デナコールEX−8301、デナコールEX−911、デナコールEX−920、デナコールEX−931、デナコールEX−211、デナコールEX−212、デナコールEX−313(いずれもナガセケムテックス社製)、DD−503(旭電化製)、リカレジンW−100(新日本理化製)、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール(下記構造式116)、グリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、デナコールEX−313、デナコールEX−611、デナコールEX−321、及びデナコールEX−411(いずれもナガセケムテックス社製)が挙げられる。
【0205】
【化45】

【0206】
前記ポリサルファイド型ジグリシジルエーテル化合物としては、例えばFLDP−50、及びFLDP−60(いずれも東レチオコール製)が挙げられる。
【0207】
前記ビフェノール型エポキシ化合物としては、例えばYX−4000、YL−6121H(いずれもジャパンエポキシレジン製)、NC−3000P、及びNC−3000S(いずれも日本化薬(株)製)が挙げられる。
【0208】
前記ジグリシジルエステル化合物としては、例えばジグリシジルテレフタレート(下記構造式117)、ジグリシジルフタレート(下記構造式118)、ビス(2−メチルオキシラニルメチル)フタレート(下記構造式119)、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート(下記構造式120)、下記構造式121で表される化合物、下記構造式122で表される化合物、及び下記構造式123で表される化合物が挙げられる。
【0209】
【化46】

【0210】
前記グリシジルエステルエポキシ化合物としては、例えば871、872(いずれもジャパンエポキシレジン製)、エピクロン200、エピクロン400(いずれも大日本インキ化学工業(株)製)、デナコールEX−711、及びデナコールEX−721(いずれもナガセケムテックス社製)が挙げられる。
【0211】
前記ポリグリシジルアミン化合物としては、例えばN,N−ジグリシジルアニリン(下記構造式124)、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン(下記構造式125)、N,N−ジグリシジル−m−トルイジン(下記構造式126)、N,N−ジグリシジル−2,4,6−トリブロモアニリン(下記構造式127)、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン(下記構造式128)、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール(下記構造式129)、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール(下記構造式130)、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(下記構造式131)、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン(TETRAD−X(三菱ガス化学)、下記構造式132)、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(TETRAD−C(三菱ガス化学)、下記構造式133)、1,4−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメ
チル)シクロヘキサン(下記構造式134)、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン(下記構造式135)、1,4−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン(下記構造式136)、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)ベンゼン(下記構造式137)、1,4−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)ベンゼン(下記構造式138)、2,6−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(下記構造式139)、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(下記構造式140)、2,2’−ジメチル−(N,N,N’,N’−テトラグリシジル)−4,4’−ジアミノビフェニル(下記構造式141)、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(下記構造式142)、1,3,5−トリス(4−(N,N−ジグリシジル)アミノフェノキシ)ベンゼン(下記構造式143)、2,4,4’−トリス(N,N−ジグリシジルアミノ)ジフェニルエーテル(下記構造式144)、トリス(4−(N,N−ジグリシジル)アミノフェニル)メタン(下記構造式145)、3,4,3’,4’−テトラキス(N,N−ジグリシジルアミノ)ビフェニル(下記構造式146)、3,4,3’,4’−テトラキス(N,N−ジグリシジルアミノ)ジフェニルエーテル(下記構造式147)、下記構造式148で表される化合物、及び下記構造式149で表される化合物が挙げられる。
【0212】
【化47】

【0213】
【化48】

【0214】
【化49】

【0215】
前記オキシラニルを有するモノマーの単独重合体としては、例えばポリグリシジルメタクリレートが挙げられる。前記オキシラニルを有するモノマーの共重合体としては、例えばN−フェニルマレイミド−グリシジルメタクリレート共重合体、N−シクロヘキシルマレイミド−グリシジルメタクリレート共重合体、ベンジルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、ブチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、及びスチレン−グリシジルメタクリレート共重合体が挙げられる。
【0216】
前記オキシラニルを有するモノマーとしては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びメチルグリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0217】
前記オキシラニルを有するモノマーの共重合体における前記オキシラニルを有するモノマー以外の他のモノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロルメチルスチレン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルマレイミド、及びN−フェニルマレイミドが挙げられる。
【0218】
前記グリシジルイソシアヌレートとしては、例えば1,3,5−トリグリシジル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン(下記構造式150)、1,3−ジグリシジル−5−アリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン(下記構造式151)、及びグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0219】
【化50】

【0220】
前記鎖状脂肪族型エポキシ化合物としては、例えばエポキシ化ポリブタジエン、及びエポリードPB3600(ダイセル化学工業(株)製)が挙げられる。
【0221】
前記環状脂肪族型エポキシ化合物としては、例えば3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(セロキサイド2021(ダイセル化学工業(株)製)、下記構造式152)、2−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−2’−メチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(下記構造式153)、2,3−エポキシシクロペンタン−2’,3’−エポキシシクロペンタンエーテル(下記構造式154)、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキレート、1,2:8,9−ジエポキシリモネン(セロキサイド3000(ダイセル化学工業(株)製)、下記構造式155)、下記構造式156で表される化合物、CY−175、CY−177、CY−179(いずれもCIBA−GEIGY社製)、EHPD−3150(ダイセル化学工業(株)製)、及び環状脂肪族型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0222】
【化51】

【0223】
前記エポキシ化合物は、グリシジルエーテル、グリシジルエステル、グリシジルアミン、エポキシ基含有アクリル系樹脂、グリシジルアミド、グリシジルイソシアヌレート、鎖状脂肪族型エポキシ化合物、及び環状脂肪族型エポキシ化合物からなる群から選ばれる一以上であることが好ましく、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、及びN,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノールからなる群から選ばれる一以上であることが好ましい。
【0224】
本発明の液晶配向剤におけるポリアミック酸又はその誘導体の含有率は、液晶配向剤の基板への塗布方法によって適宜選択してもよい。例えば、通常の液晶表示素子の製造工程で用いられる印刷機(オフセット印刷機やインクジェット印刷機を含む。以下、「印刷機」と略すことがある。)で使用される液晶配向剤におけるポリアミック酸又はその誘導体の含有率は、0.5〜30重量%であることが好ましく、1〜15重量%であることがより好ましいが、液晶配向剤の粘度との関係で適宜調整される。
【0225】
本発明の液晶配向剤は、前記ポリアミック酸又はその誘導体及びエポキシ化合物以外の他の成分をさらに含有していてもよい。このような他の成分としては、例えば前記ポリアミック酸又はその誘導体及びエポキシ化合物を溶解する溶剤が挙げられる。
【0226】
前記溶剤は、ポリアミック酸、可溶性ポリイミド、及びポリアミドイミド等の高分子成分の製造工程や用途で通常使用されている溶剤を広く含み、使用目的に応じて適宜選択され得る。好ましい前記溶剤としては、例えば、ポリアミック酸や可溶性ポリイミドに対して易溶性である非プロトン性極性有機溶剤、及び、表面張力を変えて塗布性改善等を目的とするその他の溶剤、及びこれらの混合溶剤が挙げられる。
【0227】
前記非プロトン性極性有機溶媒は、一般に、ポリアミック酸や可溶性ポリイミドに対し良溶媒である。このような非プロトン性極性有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンが挙げられる。これらのうち、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、及びγ−バレロラクトンがさらに好ましく例示される。
【0228】
前記表面張力を変えて塗布性改善等を目的とするその他の溶剤としては、例えば、乳酸アルキル、3−メチル−3−メトキシブタノール、テトラリン、イソホロン、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキル又はフェニルアセテート、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル、マロン酸ジエチル等のマロン酸ジアルキル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、これらアセテート類等のエステル化合物が挙げられる。これらのうち、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテル等がさらに好ましく例示される。
【0229】
非プロトン性極性溶剤とその他の溶剤の種類及び割合は、液晶配向剤の印刷性、塗布性、溶解性及び保存安定性等を考慮して、適宜に設定することができる。非プロトン性極性溶剤は、その他の溶剤よりも相対的に溶解性及び保存安定性に優れ、その他の溶剤は印刷性及び塗布性に優れる傾向がある。
【0230】
また本発明の液晶配向剤は各種添加剤をさらに含有していてもよい。各種添加剤としては、ポリアミック酸又はその誘導体以外の高分子化合物、又は低分子化合物が挙げられ、これらはそれぞれの目的に応じて選択して使用することができる。
【0231】
例えば、前記添加剤としては、有機溶媒に可溶性の高分子化合物が挙げられる。この高分子化合物は、形成される液晶配向膜の電気特性や配向性を制御する観点から好ましい。このような高分子化合物としては、例えばポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリエポキサイド、ポリエステルポリオール、シリコーン変性ポリウレタン、及びシリコーン変性ポリエステルが挙げられる。
【0232】
また、前記低分子化合物としては、例えば1)塗布性の向上を望むときにはかかる目的に沿った界面活性剤、2)帯電防止の向上を必要とするときは帯電防止剤、3)基板との密着性や耐ラビング性の向上を望むときにはシランカップリング剤やチタン系のカップリング剤、及び4)低温でイミド化を進行させる場合はイミド化触媒、が挙げられる。
【0233】
前記シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、パラアミノフェニルトリメトキシシラン、パラアミノフェニルトリエトキシシラン、メタアミノフェニルトリメトキシシラン、メタアミノフェニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロピルアミン、及びN,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンが挙げられる。
【0234】
前記イミド化触媒としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族アミン類;N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、メチル置換アニリン、ヒドロキシ置換アニリン等の芳香族アミン類;ピリジン、メチル置換ピリジン、ヒドロキシ置換ピリジン、キノリン、メチル置換キノリン、ヒドロキシ置換キノリン、イソキノリン、メチル置換イソキノリン、ヒドロキシ置
換イソキノリン、イミダゾール、メチル置換イミダゾール、ヒドロキシ置換イミダゾール等の環式アミン類;が挙げられる。特に、N,N−ジメチルアニリン、o−,m−,p−ヒドロキシアニリン、o−,m−,p−ヒドロキシピリジン、及びイソキノリンがより好ましく挙げられる。
【0235】
シランカップリング剤の添加量は、通常、ポリアミック酸又はその誘導体100重量部に対して0〜30重量部であり、0.05〜20重量部であることが好ましい。
【0236】
イミド化触媒の添加量は、通常、ポリアミック酸又はその誘導体のカルボニル基に対して0〜5等量であり、0.05〜3等量であることが好ましい。
【0237】
その他の添加剤の添加量は、その用途に応じて異なるが、通常、ポリアミック酸又はその誘導体100重量部に対して0〜30重量部であり、0.1〜20重量部であることが好ましい。
【0238】
本発明の液晶配向剤の粘度は、塗布する方法、ポリアミック酸又はその誘導体の濃度、使用するポリアミック酸又はその誘導体の種類、溶剤の種類と割合によって多種多様である。例えば、印刷機による塗布の場合は5〜100mPa・s(より好ましくは10〜80mPa・s)であることが好ましい。5mPa・sより小さいと十分な膜厚を得ることが難しくなり、100mPa・sを超えると印刷ムラが大きくなることがある。スピンコートによる塗布の場合は5〜200mPa・s(より好ましくは10〜100mPa・s)が適している。
【0239】
液晶配向剤の粘度は回転粘度測定法により測定され、例えば回転粘度計(東機産業製TVE−20L型)を用いて測定(測定温度:25℃)される。
【0240】
本発明の液晶配向剤は、二種以上のポリアミック酸又はその誘導体を含んでいてもよい。例えば本発明の液晶配向剤は、前記式(I)の化合物を構成単位に含むポリアミック酸とその他のポリアミック酸又はその誘導体を含んでいてもよいし、前記式(I)の化合物を構成単位に含む二種以上のポリアミック酸を含んでいてもよい。例えば、本発明の液晶配向剤は、前記式(I−1)の化合物を構成単位に含むポリアミック酸とその他のポリアミック酸又はその誘導体を含んでいてもよいし、前記式(I−2)の化合物を構成単位に含むポリアミック酸とその他のポリアミック酸又はその誘導体を含んでいてもよいし、前記式(I−1)の化合物を構成単位に含むポリアミック酸と前記式(I−2)の化合物を構成単位に含むポリアミック酸とを含んでいてもよい。
【0241】
本発明の液晶配向剤が二種以上のポリアミック酸又はその誘導体を含む場合では、これらのポリアミック酸又はその誘導体を、所期の特性に応じて配合することができる。例えば、側鎖構造を有するジアミンを構成単位に含まないポリアミック酸Iと、側鎖構造を有するジアミンを構成単位に含むポリアミック酸IIとを用いる場合では、ポリアミック酸I及びIIを、所期のプレチルト角に応じて、例えばI/II=99/1〜50/50、より好ましくは95/5〜80/20の重量比で混合する。ポリアミック酸IIの比率を上げることによってプレチルト角を大きくすることができる。
【0242】
このように、二種以上のポリアミック酸又はその誘導体を組み合わせる(ブレンドする)ことにより、本発明の液晶配向剤として好ましい特性を付与し、また向上させることができる。このような好ましい特性としては、プレチルト角以外には、例えば電圧保持率が挙げられる。
【0243】
本発明の液晶配向膜は、前述した本発明の液晶配向剤の膜を焼成して形成される。
【0244】
前記液晶配向膜は、例えば液晶表示素子用の基板、又はフッ化カルシウムやシリコン等の測定用の基板に本発明の液晶配向剤を塗布し、この液晶配向剤の膜を例えば150〜400℃、好ましくは180〜280℃に加熱することによって形成することができる。ここで液晶配向膜の膜厚は、10〜300nmであることが好ましく、30〜100nmであることがより好ましい。また、液晶配向膜はラビング処理されていることが好ましい。
【0245】
前記液晶配向膜の膜厚は、液晶配向剤の粘度や液晶配向剤の塗布方法によって調整することができる。また液晶配向膜の膜厚は、段差計やエリプソメータ等の公知の膜厚測定装置によって測定することができる。さらに液晶配向膜中の成分は、必要に応じて加水分解等の処理を行い、IRやMS等の通常の分析手段を利用して分析することができる。
【0246】
本発明の液晶表示素子は、対向配置されている一対の基板と、前記一対の基板それぞれの対向している面の一方又は両方に形成されている電極と、前記一対の基板それぞれの対向している面に形成されている、前述した本発明の液晶配向膜と、前記一対の基板間に形成されている液晶層とを有する。
【0247】
前記基板は、表示素子において通常使用される基板を用いることができる。前記基板は、透明基板(例えばガラス基板)であることが好ましい。
【0248】
前記電極は、一対の基板の少なくとも一方又は両方の基板の表面に設けられる。前記電極は、液晶表示素子の形態に応じて設けられることが好ましく、基板の一面に形成される電極であれば特に限定されない。このような電極としては、例えばITO及び金属の蒸着膜が挙げられる。電極は、基板の表面の全体に形成されていてもよいし、例えばパターン化されている所定の形状に形成されていてもよい。本発明の液晶表示素子において、一般に、電極が設けられていない基板には基板の表面上に本発明の液晶配向膜が形成され、電極が設けられている基板には電極の上に本発明の液晶配向膜が形成される。本発明の液晶配向膜の形成については前述したとおりである。
【0249】
前記液晶層は、一対の基板間に形成される。前記液晶層は、所定の距離だけ離間している一対の基板間に液晶組成物を供給し、保持することによって形成することができる。ここで液晶組成物は特に制限はされず、駆動モードに応じて、誘電率異方性が正の液晶組成物及び誘電率異方性が負の液晶組成物のいずれの組成物も用いることができる。
【0250】
誘電率異方性が正である好ましい液晶組成物の例は、特許第3086228号公報、特許第2635435号公報、特表平5−501735号公報、特開平8−157826号公報、特開平8−231960号公報、特開平9−241644号公報(EP885272A1)、特開平9−302346号公報(EP806466A1)、特開平8−199168号公報(EP722998A1)、特開平9−235552号公報、特開平9−255956号公報、特開平9−241643号公報(EP885271A1)、特開平10−204016号公報(EP844229A1)、特開平10−204436号公報、特開平10−231482号公報、特開2000−087040公報、特開2001−48822公報等に開示されている。
【0251】
VA型液晶表示素子において用いられる液晶組成物は、誘電率異方性が負の各種の液晶組成物とすることができる。好ましい液晶組成物の例は、特開昭57−114532号公報、特開平2−4725号公報、特開平4−224885号公報、特開平8−40953号公報、特開平8−104869号公報、特開平10−168076号公報、特開平10−168453号公報、特開平10−236989号公報、特開平10−236990号公報、特開平10−236992号公報、特開平10−236993号公報、特開平10
−236994号公報、特開平10−237000号公報、特開平10−237004号公報、特開平10−237024号公報、特開平10−237035号公報、特開平10−237075号公報、特開平10−237076号公報、特開平10−237448号公報(EP967261A1)、特開平10−287874号公報、特開平10−287875号公報、特開平10−291945号公報、特開平11−029581号公報、特開平11−080049号公報、特開2000−256307公報、特開2001−019965公報、特開2001−072626公報、特開2001−192657公報等に開示されている。
【0252】
前記誘電率異方性が正又は負の液晶組成物に、一つ以上の光学活性化合物を添加して使用することも何ら差し支えない。
【0253】
本発明の液晶表示素子は、もちろんその他の部材を有していてもよい。例えば、薄膜トランジスタを使用したカラー表示のTFT型液晶素子においては、第1の透明基板上に薄膜トランジスタ、絶縁膜、保護膜、信号電極及び画素電極等が形成されており、第2の透明基板上に画素領域以外の光を遮断するブラックマトリクス、カラーフィルター、平坦化膜及び画素電極等を有し得る。
【0254】
また、VA型液晶表示素子、特にMVA型液晶表示素子においては、第1の透明基板上にドメインと称される微小な突起物が形成されている。また、基板間のセルギャップの調整用にスペーサーが形成されていてもよい。
【0255】
本発明の液晶表示素子は任意の方法で製作され得るが、例えば、1)前記二枚の透明基板上に液晶配向剤を塗布する工程、2)塗布された液晶配向剤を乾燥する工程、3)乾燥された液晶配向剤を脱水・閉環反応させるために必要な加熱処理をする工程、4)得られた配向膜を配向処理する工程、5)二枚の基板を張り合わせた後に、基板の間に液晶を封入する工程、又は一方の基板に液晶を滴下させた後に、もう一方の基板と張り合わせる工程を含む方法で製作される。
【0256】
前記液晶配向剤を塗布する工程における塗布方法としては、スピンナー法、印刷法、ディッピング法、滴下法、インクジェット法等が一般に知られている。これらの方法が本発明においても適用可能である。
【0257】
また、前記乾燥工程及び脱水反応に必要な加熱処理を施す工程の方法として、オーブン又は赤外炉の中で加熱処理する方法、ホットプレート上で加熱処理する方法等が一般に知られている。これらの方法が本発明においても適用可能である。乾燥工程は、溶媒の蒸発が可能な範囲内の比較的低温(50〜140℃)で実施することが好ましい。加熱処理の工程は一般に150〜300℃程度の温度で行うことが好ましい。
【0258】
液晶配向膜への配向処理は、IPS型液晶表示素子、OCB型液晶表示素子、TN型液晶表示素子、STN型液晶表示素子では通常ラビング処理を行う。VA型液晶表示素子ではラビング処理を行わないことが多いが行ってもよい。
【0259】
次いで、一方の基板上に接着剤を塗布し貼りあわせ真空中で液晶を注入する。滴下注入法の場合には、貼りあわせる前に液晶を基板上に滴下し、その後もう一方の基板で貼りあわせる。貼りあわせに使用した接着剤を熱又は紫外線で硬化させて本発明の液晶表示素子が作製される。
【0260】
本発明の液晶表示素子には、偏光板(偏光フィルム)、波長板、光散乱フィルム、駆動回路等が実装されてもよい。
【実施例】
【0261】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。実施例において用いる化合物は次の通りである。
【0262】
<テトラカルボン酸二無水物>
化合物:ピロメリット酸二無水物(式(1)):PMDA
化合物:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(式(14)):CBDA
化合物:ブタンテトラカルボン酸二無水物(式(I−1)):BT100
化合物:18,21−ビス(3−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)プロピル)−18,21−ジメチル−1,3,5,7,9,11,13,15−オクタフェニル−ペンタシクロ[10.5.1.25,13.17,11.19,15]デカシロキサン(式(I−2)):PSQ1
【0263】
<ジアミン>
化合物:4,4’−ジアミノジフェニルメタン(式(III−1)):DDM
化合物:4,4’−ジアミノジフェニルエタン(式(III−2)):DDET
化合物:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(式(V−1)):DDE
化合物:1,3−ビス[4−(4−アミノフェニルメチル)フェニル]プロパン(式(IV−1)):BABZP3
化合物:1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−4−(トランス−4−n−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキサン(式(X−1)):5HHBA
化合物:5−[4−(4−n−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル]フェニルメチル−1,3−ジアミノベンゼン(式(VI−1)):5HHP1PDA
化合物:1−フェニルメチル−2,5−ジアミノベンゼン(式(VIII−1)):2,5−P1PDA
化合物:5−[4−(n−ヘキサデシル)フェニルメチル]−1,3−ジアミノベンゼン(式(VII−1)):16P1PDA
【0264】
<エポキシ化合物>
化合物:N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン:TGDDM
化合物:3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート:セロキサイド2021P(商品名、ダイセル化学工業(株)製)
化合物:ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物:157S70(商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)
化合物:クレゾールノボラック型エポキシ化合物:EOCN−104S(商品名、日本化薬(株)製)
化合物:ビスフェノールA型エポキシ化合物:828(商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)
化合物:N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール:TGAP
【0265】
<溶剤>
N−メチル−2−ピロリドン:NMP
γ−ブチロラクトン:GBL
ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル):BC
【0266】
<1.ポリアミック酸の合成>
[合成例1]
温度計、攪拌機、原料投入仕込み口及び窒素ガス導入口を備えた100mLの四つ口フラスコにDDMを2.927g、及び脱水NMP54.0gを入れ、乾燥窒素気流下攪拌溶解した。次いでPMDAを1.610gとBT100を1.463g、及び脱水GBL15.0gを入れ、室温環境下で30時間反応させた。反応中に反応温度が上昇する場合は、反応温度を約70℃以下に抑えて反応させた。得られた溶液に、BC25.0gを加えて、濃度が6重量%のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液をPA1とする。
【0267】
[合成例2〜11]
表1に示したようにテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを変更した以外は、合成例1に準拠してポリアミック酸溶液PA2〜PA11を調製した。合成例1を含めて、結果を表1にまとめた。

【0268】
【表1】

【0269】
<2.液晶表示素子の作製>
[実施例1]
PA1にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて全体をポリアミック酸の濃度が4重量%となるように希釈して得られた溶液に、TGDDMをポリアミック酸100重量部に対して20重量部溶解させて液晶配向剤1を得た。得られた液晶配向剤1を用いて、下記の通り液晶表示素子を作製した。
【0270】
<液晶表示素子の作製方法(実施例1〜5、比較例1〜6)>
液晶配向剤1を、二枚のITO電極付きガラス基板にスピンナーにて塗布し、膜厚70nmの膜を形成した。塗膜後80℃にて約3分間加熱乾燥した後、210℃にて20分間
加熱処理を行い、液晶配向膜を形成した。次いで、液晶配向膜が形成された基板の表面をラビング装置にてラビング処理して配向処理を行った。その後、液晶配向膜を超純水中で5分間超音波洗浄してからオーブン中120℃で30分間乾燥した。
【0271】
一方のガラス基板に7μmのギャップ材を散布し、液晶配向膜を形成した面を内側にしてラビング方向が逆平行になるように対向配置させた後、エポキシ硬化剤でシールし、ギャップ7μmのアンチパラレルセルを作製した。該セルに、下記に示す液晶組成物を注入し、注入口を光硬化剤で封止した。次いで、110℃で30分間加熱処理を行い、液晶表示素子を作製した。
【0272】
【化52】

【0273】
[比較例1]
PA1にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて全体をポリアミック酸の濃度が4重量%となるように希釈して液晶配向剤2を得た。得られた液晶配向剤2を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0274】
[比較例2]
PA2にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて全体をポリアミック酸の濃度が4重量%となるように希釈し、TGDDMをポリアミック酸100重量部に対して20重量部溶解させて液晶配向剤3を得た。得られた液晶配向剤3を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0275】
[実施例2]
PA3にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて全体をポリアミック酸の濃度が4重量%となるように希釈して得られた溶液に、2021Pをポリアミック酸100重量部に対して20重量部溶解させて液晶配向剤4を得た。得られた液晶配向剤4を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0276】
[比較例3]
PA3にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて全体をポリアミック酸の濃度が4重量%となるように希釈して液晶配向剤5を得た。得られた液晶配向剤5を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0277】
[実施例3]
PA4にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて全体をポリアミック酸の濃度が4重量%となるように希釈して得られた溶液に、157S70をポリアミック酸100重量部に対して20重量部溶解させて液晶配向剤6を得た。得られた液晶配向剤6を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0278】
[比較例4]
PA4にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて全体をポリアミック酸の濃度が4重量%となるように希釈して液晶配向剤7を得た。得られた液晶配向剤7を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0279】
[実施例4]
PA5にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて全体をポリアミック酸の濃度が4重量%となるように希釈して得られた溶液に、EOCN104Sをポリアミック酸100重量部に対して20重量部溶解させて液晶配向剤8を得た。得られた液晶配向剤8を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0280】
[比較例5]
PA5にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて全体をポリアミック酸の濃度が4重量%となるように希釈して液晶配向剤9を得た。得られた液晶配向剤9を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0281】
[実施例5]
PA6とPA7とを重量比9/1で混合した。得られた混合物にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて全体をポリアミック酸の濃度が4重量%となるように希釈して得られた溶液に、828をポリアミック酸100重量部に対して20重量部溶解させて液晶配向剤10を得た。得られた液晶配向剤10を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0282】
[比較例6]
PA6とPA7とを重量比9/1で混合した。得られた混合物にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて全体をポリアミック酸の濃度が4重量%となるように希釈
して液晶配向剤11を得た。得られた液晶配向剤11を用いて、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。
【0283】
[実施例6]
PA8とPA9とを重量比9/1で混合し、得られた混合物にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて全体をポリアミック酸の濃度が4重量%となるように希釈して得られた溶液に、TGDDMをポリアミック酸100重量部に対して20重量部溶解させて液晶配向剤12を得た。得られた液晶配向剤12を用いて、下記の通り液晶表示素子を作製した。
【0284】
<液晶表示素子の作製方法(実施例6〜8、比較例7〜10)>
液晶配向剤12を、二枚のITO電極付きガラス基板にスピンナーにて塗布し、膜厚70nmの膜を形成した。塗膜後80℃にて約3分間加熱乾燥した後、210℃にて20分間加熱処理を行い、液晶配向膜を形成した。その後、液晶配向膜を超純水中で5分間超音波洗浄してからオーブン中120℃で30分間乾燥した。
【0285】
一方のガラス基板に7μmのギャップ材を散布し、液晶配向膜を形成した面を内側にして配置させた後、エポキシ硬化剤でシールし、ギャップ7μmのセルを作製した。該セルに、下記に示す液晶組成物を注入し、注入口を光硬化剤で封止した。次いで、110℃で30分間加熱処理を行い、液晶表示素子を作製した。
【0286】
【化53】

【0287】
[実施例7]
PA8とPA9とを重量比9/1で混合し、得られた混合物にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて全体をポリアミック酸の濃度が4重量%となるように希釈して得られた溶液に、TGAPをポリアミック酸100重量部に対して20重量部溶解させて液晶配向剤13を得た。得られた液晶配向剤13を用いて、実施例6と同様に液晶表示素子を作製した。
【0288】
[比較例7]
PA8とPA9とを重量比9/1で混合し、得られた混合物にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて全体をポリアミック酸の濃度が4重量%となるように希釈して液晶配向剤14を得た。得られた液晶配向剤14を用いて、実施例6と同様に液晶表示素子を作製した。
【0289】
[比較例8]
PA10とPA9とを重量比9/1で混合し、得られた混合物にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて全体をポリアミック酸の濃度が4重量%となるように希釈して得られた溶液に、TGDDMをポリアミック酸100重量部に対して20重量部溶解させて液晶配向剤15を得た。得られた液晶配向剤15を用いて、実施例6と同様に液晶表示素子を作製した。
【0290】
[実施例8]
PA8とPA11とを重量比9/1で混合し、得られた混合物にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて全体をポリアミック酸の濃度が4重量%となるように希釈して得られた溶液に、157S70をポリアミック酸100重量部に対して20重量部溶解させて液晶配向剤16を得た。得られた液晶配向剤16を用いて、実施例6と同様に液晶表示素子を作製した。
【0291】
[比較例9]
PA8とPA11とを重量比9/1で混合し、得られた混合物にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて全体をポリアミック酸の濃度が4重量%となるように希釈して液晶配向剤17を得た。得られた液晶配向剤17を用いて、実施例6と同様に液晶表示素子を作製した。
【0292】
[比較例10]
PA2とPA11とを重量比9/1で混合し、得られた混合物にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて全体をポリアミック酸の濃度が4重量%となるように希釈して得られた溶液に、TGDDMをポリアミック酸100重量部に対して20重量部溶解させて液晶配向剤18を得た。得られた液晶配向剤18を用いて、実施例6と同様に液晶表示素子を作製した。
【0293】
<3.残留電圧の評価>
実施例1〜8、比較例1〜10で作製した液晶表示素子について、残留電圧の測定を行った。測定は、液晶表示素子に、実施例1〜5、比較例1〜6では直流3Vをバイアスした30Hz、1.62Vの矩形波を、実施例6〜8、比較例7〜10では直流3Vをバイアスした30Hz、3.20Vの矩形波を30分印加し、直流電圧を切った直後の液晶セル内に残留した電圧をフリッカー消去法により求めた。残留電圧の値が小さいほど焼き付き現象が発生しづらいと言える。結果を表2に示す。
【0294】
【表2】

【0295】
表2に示されたように、BT100、PSQ1のいずれか、もしくは両方を使用したポリアミック酸溶液に、エポキシ化合物を添加した実施例1〜8の液晶配向剤を使用した液晶表示素子では、残留電圧を低減することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体とジアミン又はその誘導体との反応生成物の構成を有するポリアミック酸又はその誘導体と、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物とを含有する液晶配向剤であって、
前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、下記式(I)で表される化合物を含むことを特徴とする液晶配向剤。
【化1】

(式(I)中、−X1−は、単結合、又は下記式(II)で表される2価の基を表す。式(II)中、−Phはフェニル基を表す。)
【化2】

【請求項2】
前記式(I)中、−X1−が単結合であることを特徴とする請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が下記式(1)及び(14)の化合物の一方又は両方をさらに含むか、又は、前記ジアミン又はその誘導体が下記式(III)〜(IX)からなる群から選ばれる一以上の化合物を含むか、又は、前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が下記式(1)及び(14)の化合物の一方又は両方をさらに含み、かつ前記ジアミン又はその誘導体が下記式(III)〜(IX)からなる群から選ばれる一以上の化合物を含むことを特徴とする請求項2に記載の液晶配向剤。
【化3】

【化4】

(式(III)及び(IV)中、m及びnはそれぞれ1から12の整数を表し、
式(VI)〜(VIII)中、−Y1、−Y2、及び−Y3はそれぞれ−H又は炭素数1から30のアルキルを表し、
式(IX)中、−X2−は独立して−CH2−又は−O−を表し、−Y4は炭素数1から30のアルキル、下記式(X)、又は下記式(XI)を表す。)
【化5】

(式(X)及び(XI)中、−Y5及び−Y6はそれぞれ炭素数1から30のアルキルを表す。)
【請求項4】
前記ジアミン又はその誘導体が、下記式(III−1)、(III−2)、(IV−1)、(V−1)、(VI−1)、(VII−1)、(VIII−1)、(IX−1)、(X−1)、及び(XI−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする請求項3に記載の液晶配向剤。
【化6】

【請求項5】
前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(III−1)、(III−2)、(IV−1)、及び(V−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする請求項4に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が、前記式(1)及び(14)の一方又は両方の化合物を含み、
前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(III−1)、(III−2)、及び(IV−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする請求項5に記載の液晶配向剤。
【請求項7】
前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(IX−1)、(X−1)、及び(XI−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする請求項4に記載の液晶配向剤。
【請求項8】
前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が、前記式(1)及び(14)の一方又は両方の化合物を含み、
前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(IX−1)、(X−1)、及び(XI−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする請求項7に記載の液晶配向剤。
【請求項9】
前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(III−1)、(VI−1)、(VII−1)、及び(VIII−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であり、かつ前記式(VI−1)又は(VII−1)を含むことを特徴とする請求項4に記載の液晶配向剤。
【請求項10】
前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が、前記式(14)の化合物を含み、
前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(VII−1)の化合物であることを特徴とする請求項9に記載の液晶配向剤。
【請求項11】
前記式(I)中、−X1−が前記式(II)で表される2価の基であることを特徴とする請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項12】
前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が下記式(1)及び(14)の化合物の一方又は両方をさらに含むか、又は、前記ジアミン又はその誘導体が下記式(III)〜(VIII)からなる群から選ばれる一以上の化合物を含むか、又は、前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が下記式(1)及び(14)の化合物の一方又は両方をさらに含み、かつ前記ジアミン又はその誘導体が下記式(III)〜(VIII)からなる群から選ばれる一以上の化合物を含むことを特徴とする請求項11に記載の液晶配向剤。
【化7】

【化8】

(式(III)及び(IV)中、m及びnはそれぞれ1から12の整数を表し、
式(VI)〜(VIII)中、−Y1、−Y2、及び−Y3はそれぞれ−H又は炭素数1から30のアルキルを表す。)
【請求項13】
前記ジアミン又はその誘導体が、下記式(III−1)、(III−2)、(IV−1)、(V−1)、(VI−1)、(VII−1)、及び(VIII−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする請求項12に記載の液晶配向剤。
【化9】

【請求項14】
前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(III−1)、(III−2)、(IV−1)、及び(V−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする請求項13に記載の液晶配向剤。
【請求項15】
前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が、前記式(1)及び(14)の一方又は両方の化合物を含み、
前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(III−1)、(III−2)、(IV−1)、及び(V−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする請求項14に記載の液晶配向剤。
【請求項16】
前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(III−1)、(VI−1)、(VII−1)、及び(VIII−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする請求項13に記載の液晶配向剤。
【請求項17】
前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が前記式(14)の化合物を含み、
前記ジアミン又はその誘導体が前記式(VII−1)の化合物であることを特徴とする請求項16に記載の液晶配向剤。
【請求項18】
前記テトラカルボン酸二無水物に、前記式(I)中、−X1−が単結合である化合物と、前記式(I)中、−X1−が前記式(II)で表される2価の基である化合物とが用いられることを特徴とする請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項19】
前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が下記式(1)及び(14)の化合物の一方又は両方をさらに含むか、又は、前記ジアミン又はその誘導体が下記式(III)〜(VIII)からなる群から選ばれる一以上の化合物を含むか、又は、前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が下記式(1)及び(14)の化合物の一方又は両方をさらに含み、かつ前記ジアミン又はその誘導体が下記式(III)〜(VIII)からなる群から選ばれる一以上の化合物を含むことを特徴とする請求項18に記載の液晶配向剤。
【化10】

【化11】

(式(III)及び(IV)中、m及びnはそれぞれ1から12の整数を表し、
式(VI)〜(VIII)中、−Y1、−Y2、及び−Y3はそれぞれ−H又は炭素数1から30のアルキルを表す。)
【請求項20】
前記ジアミン又はその誘導体が、下記式(III−1)、(III−2)、(IV−1)、(V−1)、(VI−1)、(VII−1)、及び(VIII−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする請求項19に記載の液晶配向剤。
【化12】

【請求項21】
前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(III−1)、(III−2)、(IV−1)、及び(V−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする請求項20に記載の液晶配向剤。
【請求項22】
前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が、前記式(1)及び(14)の一方又は両方の化合物を含み、
前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(III−1)、(III−2)、(IV−1)、及び(V−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする請求項21に記載の液晶配向剤。
【請求項23】
前記ジアミン又はその誘導体が、前記式(III−1)、(VI−1)、(VII−1)、及び(VIII−1)からなる群から選ばれる一以上の化合物であることを特徴とする請求項20に記載の液晶配向剤。
【請求項24】
前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が前記式(14)の化合物を含み、
前記ジアミン又はその誘導体が前記式(VII−1)の化合物であることを特徴とする請求項23に記載の液晶配向剤。
【請求項25】
前記エポキシ化合物が、グリシジルエーテル、グリシジルエステル、グリシジルアミン、エポキシ基含有アクリル系樹脂、グリシジルアミド、グリシジルイソシアヌレート、鎖状脂肪族型エポキシ化合物、及び環状脂肪族型エポキシ化合物からなる群から選ばれる一以上であることを特徴とする請求項1〜24のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項26】
前記エポキシ化合物が、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、及びN,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノールからなる群から選ばれる一以上であることを特徴とする請求項25に記載の液晶配向剤。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか一項に記載の液晶配向剤の膜を焼成して形成される液晶配向膜。
【請求項28】
対向配置されている一対の基板と、前記一対の基板それぞれの対向している面の一方又は両方に形成されている電極と、前記一対の基板それぞれの対向している面に形成されている液晶配向膜と、前記一対の基板間に形成されている液晶層とを有する液晶表示素子において、前記液晶配向膜は請求項27に記載の液晶配向膜であることを特徴とする液晶表示素子。

【公開番号】特開2010−102159(P2010−102159A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274041(P2008−274041)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】