説明

液晶除去用洗浄剤組成物及び液晶パネルの洗浄方法

【課題】液晶汚れに対する洗浄力が高く、かつ、環境への排水負荷を低減できる液晶除去用洗浄剤組成物及び液晶パネルの洗浄方法を提供すること。
【解決手段】一般式(1)[式中、RはOCH又はCHOCHを示し、RはCH、OCH又はCHOCHを示す。]で表される芳香族化合物を含有することを特徴とする液晶除去用洗浄剤組成物;前記液晶除去用洗浄剤組成物を用いることを特徴とする液晶パネルの洗浄方法。前記液晶除去用洗浄剤組成物は、一般式(1)で表される芳香族化合物と水とを混合してなるものであることが好ましい。
[化1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶除去用洗浄剤組成物及び液晶パネルの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルは、通常、電極及び配向膜が形成された一対のガラス基板を、一部開口を残して接着剤により貼り合わせて液晶室を作り、当該液晶室に液晶を注入し、前記開口部を封止剤により封止した後、洗浄を行い、前記一対のガラス基板表面に偏向板をそれぞれ貼着して製造される。
【0003】
かかる製造においては、一対のガラス基板同士の接着部の外側(液晶室側とは反対側)に、対向するガラス基板の狭いギャップによって空隙部(狭部)を生じることが避けられない。そして、液晶室に液晶を注入する際、液晶が、毛細管現象により前記狭部に入り込んで付着してしまう。
前記狭部に付着した液晶(以下「液晶汚れ」という。)をそのまま放置しておくと、当該液晶汚れの残渣が離型剤として作用することにより、その後の製造工程において、偏向板の剥がれ、ドライバー端子の接続不備、ドライバーアンダーフィル界面の不具合、基板の薄型化工法に用いる可剥離性塗膜の剥がれ等の種々のトラブル発生に繋がるおそれがある。
そのため、液晶パネルの製造における洗浄では、前記液晶汚れを、高い清浄度で洗浄・除去する必要がある。
【0004】
前記液晶汚れは、一般に、分極化合物であり、分子間の相互作用が強く、高い疎水性を示すことから、水系溶媒への分散性又は溶解性がいずれも低いことが知られている。
この液晶汚れを洗浄・除去するため、従来、炭化水素系溶剤と、特定のポリオキシアルキレンジアルキルエーテル化合物と、
11−C−C2p−O−(C2qO)−H
[式中、R11は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基または炭素数2もしくは3のアルケニル基、pは0または1〜2の整数、qは2〜4の整数、rは0または1〜4の整数を示し、r個のC2qOはそれぞれ同一であってもよくまたは異なっていてもよい]
で表される芳香族単環化合物とを含有してなる洗浄剤組成物が提案されている(特許文献1参照)。
また、炭素数8〜20の炭化水素化合物と、特定の中鎖分岐第1級アルコールのアルキレンオキシド付加体と、
12O(AO)13
[式中、R12は炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基もしくはベンジル基、R13は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、kは1〜5の数、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示す]
で表されるアルキレンオキシド付加体と、所定量の水とを含む液晶パネル用水系液体洗浄剤組成物が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−114899号公報
【特許文献2】特開2004−2691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載された洗浄剤組成物においては、液晶パネルの一対のガラス基板間の2〜5μmというような狭いギャップ(狭部)に付着した液晶汚れに対する洗浄力は、未だ充分ではなかった。
また、特許文献1に記載された発明においては、脂肪族炭化水素が主剤として用いられた洗浄剤組成物、及び当該洗浄剤組成物の原液中に直接、被洗浄物を浸漬して洗浄を行う方法がそれぞれ開示されている。しかし、当該洗浄剤組成物を用いた方法では、脂肪族炭化水素などの有機溶剤を多量に使用することになり、環境への排水負荷が高い等の問題がある。
また、特許文献2に記載された洗浄剤組成物においては、水の配合割合が77質量%以下の例が開示されているものの、有機溶剤などの水以外の成分の配合割合をさらに低減して環境への排水負荷を抑えるとともに、液晶汚れに対する洗浄力のさらなる向上が求められる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、液晶汚れに対する洗浄力が高く、かつ、環境への排水負荷を低減できる液晶除去用洗浄剤組成物及び液晶パネルの洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、上記課題を解決するために、以下の手段を提供する。
すなわち、本発明の液晶除去用洗浄剤組成物は、下記一般式(1)で表される芳香族化合物を含有することを特徴とする。
【0009】
【化1】

[式中、RはOCH又はCHOCHを示し、RはCH、OCH又はCHOCHを示す。]
【0010】
本発明の液晶除去用洗浄剤組成物は、前記一般式(1)で表される芳香族化合物と水とを混合してなるものであることが好ましい。
また、本発明の液晶除去用洗浄剤組成物は、前記一般式(1)で表される芳香族化合物と水に加えて、下記一般式(2)で表される化合物、HLBが11以上のノニオン界面活性剤及び非プロトン性極性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも一種をさらに混合してなるものであることが好ましい。
【0011】
【化2】

[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はベンジル基であり、nは0〜50の数である。]
【0012】
また、本発明の液晶パネルの洗浄方法は、前記本発明の液晶除去用洗浄剤組成物を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の液晶除去用洗浄剤組成物によれば、液晶汚れに対する洗浄力が高く、かつ、環境への排水負荷を低減できる。
また、本発明の液晶パネルの洗浄方法によれば、液晶パネルのギャップ(狭部)に付着した液晶汚れを充分に除去することができ、かつ、環境への排水負荷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施例で用いた、液晶材料が注入される前の空の液晶パネルを示し、図1(a)は液晶パネルを示す概略斜視図であり、図1(b)は、図1(a)におけるガラス基板1bの端部1b1側からの液晶パネルの一部側面図である。
【図2】本実施例の評価基準に対応する、液晶パネルの所定の領域(図1中のX)におけるギャップ(狭部)内の液晶材料残りの状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪液晶除去用洗浄剤組成物≫
本発明の液晶除去用洗浄剤組成物は、前記一般式(1)で表される芳香族化合物(以下「(Sa1)成分」という。)を含有するものである。
【0016】
<(Sa1)成分>
前記一般式(1)中、Rは、OCH又はCHOCHを示す。
は、CH、OCH又はCHOCHを示す。
の結合位置は、ベンゼン環のo−位、m−位、又はp−位のいずれでもよく、液晶汚れに対する洗浄力がより向上すること及び工業的に容易に入手可能であることから、p−位が好ましい。
(Sa1)成分として具体的には、たとえば、o−メトキシトルエン、m−メトキシトルエン、p−メトキシトルエン、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,4−ジメトキシベンゼン、o−メトキシ−α−メトキシトルエン、m−メトキシ−α−メトキシトルエン、p−メトキシ−α−メトキシトルエン、α−メトキシ−o−キシレン、α−メトキシ−m−キシレン、α−メトキシ−p−キシレン、o−キシレングリコールジメチルエーテル、m−キシレングリコールジメチルエーテル、p−キシレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
【0017】
(Sa1)成分は、前記Rと前記Rの2つの置換基を有するものであればよく、なかでも液晶汚れに対する洗浄力がより向上することから、水への溶解度(25℃)が1g/100g水溶液以下であるものが好ましく、0.5g/100g水溶液以下であるものがより好ましく、0.1〜0.5g/100g水溶液であるものがさらに好ましい。
【0018】
(Sa1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の液晶除去用洗浄剤組成物における(Sa1)成分の含有割合は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。(Sa1)成分の含有割合が下限値以上であると、液晶汚れに対する洗浄力がより向上する。
一方、(Sa1)成分の含有割合の上限値は、100質量%であってもよく、90質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。(Sa1)成分の含有割合が好ましくは90質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下であると、環境への排水負荷をより低減でき、特に好ましくは20質量%以下の低濃度であると、液晶汚れに対する洗浄力が充分に得られ、かつ、環境への排水負荷をさらに低減できる。
【0019】
<任意成分>
本発明の液晶除去用洗浄剤組成物は、上記(Sa1)成分以外の他の成分を含有していてもよい。
(Sa1)成分以外の他の成分としては、たとえば水、界面活性剤、有機溶剤が挙げられる。
なお、本発明において「界面活性剤」とは、純水で1質量%に希釈したときの25℃における表面張力が50mN/m以下である化合物をいう。表面張力は、表面張力計を使用し、Wilhelmy法に基づき、白金プレートを用いて測定される値である。
本発明において「純水」とは、水から物理的処理または化学的処理によって不純物を除去したものをいう。純水としては、例えば、脱イオン水や蒸留水などが挙げられる。
【0020】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、たとえばノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤を用いることができる。
なかでも、(Sa1)成分と水との相溶性が高まり、夏場などの高温保存の条件下で(Sa1)成分と水とを混合してなるものが白濁するのを防止する効果が得られやすいこと、液晶パネルへの通電による電極の腐蝕が起こりにくくなること等から、ノニオン界面活性剤が好ましい。そのなかでも、(Sa1)成分と水とを混合してなるものの曇点を高める効果が特に得られやすいことから、HLBが11以上のノニオン界面活性剤がより好ましく、HLBが12以上のノニオン界面活性剤がさらに好ましく、HLBが14〜20のノニオン界面活性剤が特に好ましい。
具体的には、HLBが11以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。
【0021】
なお、本発明において「HLB」とは、界面活性剤の分子がもつ親水性と親油性の相対的な強さのことを意味し、その親水親油バランスを数量的に表したものをいう。Griffinの方法により求められた値である(吉田、進藤、大垣、山中共編、「新版界面活性剤ハンドブック」,工業図書株式会社,1991年,第234頁参照)。
(Sa1)成分と水とを混合してなるものの曇点は、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましい。曇点が下限値以上であると、均一で透明な外観を呈する洗浄剤組成物が調製されやすくなる。
本発明において「曇点」は、所定量の洗浄剤組成物の配合を0〜30℃の温度範囲で行い、均一透明な溶液を調製した後、当該溶液を、所定の容器に収容して水浴に浸漬し、水浴の温度を上昇させ、当該溶液が白く濁り始めた時点の水浴の温度(℃)をいう。水浴の温度は、たとえば標準温度計の目盛を読み取ることにより測定することができる。
【0022】
(有機溶剤)
有機溶剤としては、極性有機溶媒を用いてもよく、無極性有機溶媒を用いてもよい。なかでも、(Sa1)成分と水との相溶性が高まり、(Sa1)成分と水とを混合してなるものの液安定性(均一性、透明性)が向上することから、極性有機溶媒を用いることが好ましい。
【0023】
極性有機溶媒は、プロトン性極性有機溶媒であってもよく、非プロトン性極性有機溶媒であってもよい。なかでも、(Sa1)成分と水とを混合してなるものの液安定性(均一性、透明性)がより向上することから、非プロトン性極性有機溶媒が特に好ましい。
【0024】
非プロトン性極性有機溶媒としては、たとえばジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、N−メチルピロリドン、2−ブタノン等の分子内に酸素原子(=O)を有するもの;アセトニトリル等が挙げられる。
なかでも、非プロトン性極性有機溶媒としては、液晶汚れに対する洗浄力がより向上することから、分子内に酸素原子(=O)を有するものが好ましく、DMSO、DMF、アセトンが特に好ましく、ジメチルスルホキシド(DMSO)が最も好ましい。
【0025】
プロトン性極性有機溶媒としては、たとえばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素数1〜4の1価アルコール;酢酸、ギ酸、酪酸等の炭素数1〜4のモノカルボン酸;グリコールエーテル等が挙げられる。
グリコールエーテルとしては、たとえば、一方の末端が脂肪族炭化水素基若しくは芳香族炭化水素基で、かつ、他方の末端が水素原子であるエチレングリコール系エーテル;一方の末端が脂肪族炭化水素基若しくは芳香族炭化水素基で、かつ、他方の末端が水素原子であるプロピレングリコール系エーテル;両方の末端がアルキル基であるジアルキルグリコールエーテルが挙げられる。
上記のなかでも、プロトン性極性有機溶媒としては、液晶汚れに対する洗浄力が高く、環境への排水負荷が低いことから、下記一般式(2)で表される化合物が特に好ましい。
【0026】
【化3】

[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はベンジル基であり、nは0〜50の数である。]
【0027】
前記一般式(2)中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はベンジル基である。
n=0の場合、式(2)で表される化合物は1価アルコールである。この場合、Rは炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノールがより好ましく、エタノールがさらに好ましい。
n=1〜50の場合、式(2)で表される化合物はエチレングリコール系エーテルである。この場合、Rのアルキル基は、安定に入手確保しやすいことから炭素数4〜6が好ましい。前記式(2)中、nは、(Sa1)成分と水とを混合してなるものの液安定性(均一性、透明性)がより向上することから、1〜30の数が好ましく、1〜10の数がより好ましい。
なお、一般式(2)で表される化合物は、上記で定義した界面活性剤には含まれないものである。
【0028】
無極性有機溶媒としては、たとえばパラフィン類(ドデカン、テトラデカン等)、オレフィン類(ドデセン、テトラデセン等)などの鎖式炭化水素(脂肪族炭化水素);シクロアルカン等の脂環式化合物等を用いることができる。
【0029】
本発明の液晶除去用洗浄剤組成物は、なかでも環境への排水負荷が低減され、容易に非危険物化が可能である等の理由から、(Sa1)成分と水とを混合してなるものであることが好ましい。
かかる場合、当該液晶除去用洗浄剤組成物における水の含有割合は、10〜95質量%であることが好ましく、80〜95質量%であることがより好ましい。水の含有割合が10質量%以上であると、環境への排水負荷をより低減でき、また、当該液晶除去用洗浄剤組成物を非危険物化できる。一方、95質量%以下であると、(Sa1)成分との配合バランスをとることができ、液晶汚れに対する洗浄力がより向上する。
水は、特に制限されず、たとえば蒸留水、イオン交換水、市水を使用できる。
【0030】
前述した(Sa1)成分と水とを混合してなるもののなかでも、本発明の液晶除去用洗浄剤組成物としては、均一で透明な外観を呈し、液安定性(均一性、透明性)に優れた溶液を調製できることから、前記(Sa1)成分と水に加えて、前記一般式(2)で表される化合物、HLBが11以上のノニオン界面活性剤及び非プロトン性極性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも一種(以下当該一種を「(S2)成分」という。)をさらに混合してなるものであることが好ましい。
かかる液晶除去用洗浄剤組成物、すなわち、(Sa1)成分と水と(S2)成分とを混合してなるものを、以下「(Sa1)−水の透明溶液」ということがある。
【0031】
「(Sa1)−水の透明溶液」における(Sa1)成分の含有割合は、5〜70質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましい。(Sa1)成分の含有割合が下限値以上であると、液晶汚れに対する洗浄力がより向上する。上限値以下であると、環境への排水負荷をより低減できる。また、当該透明溶液の液安定性(均一性、透明性)がより向上する。
(Sa1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
「(Sa1)−水の透明溶液」における水の含有割合は、10質量%以上であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。水の含有割合が下限値以上であると、当該透明溶液を非危険物化できる。
【0033】
「(Sa1)−水の透明溶液」における(S2)成分の含有割合は、10〜70質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましい。(S2)成分の含有割合が下限値以上であると、当該透明溶液の液安定性(均一性、透明性)がより向上する。上限値以下であると、液晶汚れに対する洗浄力がより向上する。
(S2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(S2)成分を用いることにより、(Sa1)成分と水との相溶性が高まる。
加えて、(S2)成分としてHLBが11以上のノニオン界面活性剤を用いると、当該透明溶液の曇点が高くなり、さらに高温保存の条件下で白濁するのを防止する効果が得られる。
また、(S2)成分として非プロトン性極性有機溶媒を用いると、さらに液晶汚れに対する洗浄力が向上する。
【0034】
(Sa1)成分と(S2)成分との混合割合[(Sa1)/(S2)]は、
(S2)成分としてHLBが11以上のノニオン界面活性剤を用いる場合、質量比で、(Sa1)/(HLBが11以上のノニオン界面活性剤)=0.1〜10であることが好ましく、0.1〜6であることがより好ましい。
(S2)成分として非プロトン性極性有機溶媒を用いる場合、質量比で、(Sa1)/(非プロトン性極性有機溶媒)=0.1〜10であることが好ましく、0.1〜9であることがより好ましい。
(S2)成分として前記一般式(2)で表される化合物を用いる場合、質量比で、(Sa1)/(一般式(2)で表される化合物)=0.5〜10であることが好ましく、1〜6であることがより好ましい。
いずれの場合も、(Sa1)/(S2)の下限値以上であると、洗浄性が向上する。(Sa1)/(S2)の上限値以下であると、洗浄剤組成物の液安定性(均一性、透明性)が向上する。
【0035】
「(Sa1)−水の透明溶液」のpHは、特に限定されず、25℃でpH2〜10程度の範囲であることが好ましい。当該透明溶液のpHが2〜10程度の範囲であると、液晶パネルの腐食が起こりにくくなる。
本発明において、液晶除去用洗浄剤組成物のpHは、洗浄剤組成物を25℃に調温し、ガラス電極式pHメーター(製品名:HM−30G、東亜ディーケーケー(株)製)を用い、ガラス電極を、当該洗浄剤組成物に直接に浸漬し、1分間経過後に示すpHの値をいう。
【0036】
「(Sa1)−水の透明溶液」の粘度は、特に限定されず、25℃で15mPa・s以下であることが好ましい。当該透明溶液の粘度が上限値以下であると、液晶汚れに対する洗浄力がより向上する。また、環境への排水負荷をより低減できる。
本発明において、液晶除去用洗浄剤組成物の粘度は、25℃に調温した洗浄剤組成物を、DV−I+VISCOMETER(製品名、BROOKFIELD社製)を用い、ロータNo.2で60rpm、60秒後の測定条件により測定した値(mPa・s)を示す。
【0037】
また、本発明の液晶除去用洗浄剤組成物は、(Sa1)成分を含有する有機溶剤成分からなるものも好ましい。かかる場合、当該有機溶剤成分における(Sa1)成分の含有割合は、20質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、100質量%であってもよく、100質量%であることが特に好ましい。当該芳香族化合物の含有割合が下限値以上であると、液晶汚れに対する洗浄力がより向上する。
当該有機溶剤成分に含まれていてもよい(Sa1)成分以外の他の成分としては、たとえば、パラフィン類(ドデカン、テトラデカン等)、オレフィン類(ドデセン、テトラデセン等)などの鎖式炭化水素(脂肪族炭化水素);シクロアルカン等の脂環式化合物;上述した1価アルコール、モノカルボン酸又はグリコールエーテル等のプロトン性極性有機溶媒、非プロトン性極性有機溶媒;(Sa1)成分以外の芳香族化合物などが挙げられる。
【0038】
本発明の液晶除去用洗浄剤組成物は、たとえば、(Sa1)成分と、水などの任意成分とを、同じ容器に入れた後、一定の撹拌を施すことにより、(Sa1)成分が任意成分中に分散した分散液若しくは乳濁液、又は(Sa1)成分と任意成分との溶液(たとえば、上記「(Sa1)−水の透明溶液」等)として調製できる。
また、(Sa1)成分を含有する前記有機溶剤成分と、水などの任意成分とを混合して調製してもよい。
【0039】
また、本発明の液晶除去用洗浄剤組成物は、液晶汚れの除去に用いる際、当該洗浄剤組成物をそのまま原液で用いることができ、他の成分と混合して用いることもできる。後述するように、当該洗浄剤組成物を、水で希釈して用いることもできる。
【0040】
以上説明した本発明の液晶除去用洗浄剤組成物によれば、液晶汚れに対する洗浄力が高い、という効果が得られる。この効果が得られる理由は、定かではないが、本発明の液晶除去用洗浄剤組成物に用いられている前記一般式(1)で表される芳香族化合物((Sa1)成分)と液晶汚れとの相溶性が高いためと推測される。
本発明者らの検討によると、たとえば液晶パネルのギャップ(狭部)に付着した液晶汚れは、(Sa1)成分に対して瞬時に溶解し、従来用いられている鎖式炭化水素(脂肪族炭化水素)又は脂環式化合物に比べて、(Sa1)成分との相溶性が高いことが確認された。これは、(Sa1)成分と、液晶汚れに含まれる芳香族化合物との間で、π電子同士の相互作用が働くことにより、(Sa1)成分と液晶汚れとの親和性が高まることに因ると考えられる。
また、(Sa1)成分以外の芳香族化合物を用いた場合よりも、(Sa1)成分を用いた場合の方が、特に水と混合して用いると、液晶汚れに対する洗浄力がより高くなることが確認された。これは、(Sa1)成分が、特定の2つの置換基(R、R)を有し、かつ、水に対して若干の溶解性を示すことに因ると考えられる。
【0041】
表1に、後述の実施例に用いた芳香族化合物(有機溶剤)の水への溶解度(25℃)を示す。
なお、表1中、※1はメーカーのMSDS、※2はSTN REGISTRYファイル(数値は専用のソフトウェアを用いて得られた物性データ(計算値))、※3は独立行政法人 製品評価基盤技術機構(nite)ホームページ、※4は溶剤ハンドブック(講談社)にそれぞれ基づく水への溶解度であることを示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1から、本発明に係る芳香族化合物(p−キシレングリコールジメチルエーテル、α−メトキシ−p−キシレン、1,2−ジメトキシベンゼン、1,4−ジメトキシベンゼン)は、水への溶解度が0.16〜0.32g/100g水溶液であり、水に対して若干の溶解性を示している。
これに対して、p−キシレン、トルエンは、水に対してほとんど溶解性を示さず;ベンジルアルコール(上記特許文献1に記載された芳香族単環化合物に包含されるもの)は、水への溶解度が1g/100g水溶液を超え、本発明に係る芳香族化合物に比べて、水に対する溶解性が高い。本発明者らの検討によると、水への溶解度が1g/100g水溶液を超える芳香族化合物を用いると、液晶汚れに対する洗浄力向上の効果が得られにくくなることが確認された。これは、芳香族化合物の液晶汚れへの吸着性が弱まるためと考えられる。アニソールと、本発明に係る芳香族化合物とは、水への溶解度が同程度であるが、アニソールは置換基(−OCH)が1つであり、本発明に係る芳香族化合物と相違する。
【0044】
また、本発明の液晶除去用洗浄剤組成物によれば、環境への排水負荷を低減できる、という効果が得られる。この効果が得られる理由は、以下のように推測される。
本発明の液晶除去用洗浄剤組成物においては、(Sa1)成分の液晶汚れに対する洗浄力が高いことから、(Sa1)成分の濃度を低くできる。また、(Sa1)成分は、水と混合して用いることができ、さらに、化学物質排出移動量届出(PRTR)制度、労働安全衛生法(労安法)、毒物及び劇物取締法(毒劇法)のいずれにも該当しないものである。そのため、本発明の液晶除去用洗浄剤組成物は、環境への排水負荷が低いと考えられる。
なお、キシレン及びトルエンは、PRTR、労安法、毒劇法のいずれも該当し、アニソールは、労安法に該当する。ベンジルアルコール及びフェニルグリコール(上記特許文献2に記載された「R12O(AO)13」に包含される芳香族化合物)は、PRTR、労安法、毒劇法のいずれにも該当しないものである。
【0045】
また、本発明の洗浄剤組成物によれば、洗浄を行う際、水で希釈して用いることができるため、当該洗浄剤組成物の原液中の(Sa1)成分が高濃度であっても、洗浄時は希釈により(Sa1)成分を低濃度にできることから、環境への排水負荷が低減される。一方、(Sa1)成分を高濃度で含有する洗浄剤組成物の原液は、運搬時の容器サイズの縮小・容器の数量の低減を図ることができるため、輸送費用の削減など、経済的に有利である。
加えて、特に、(Sa1)成分と、水と、(S2)成分とを混合してなる洗浄剤組成物によれば、均一で透明な外観を呈し、液安定性(均一性、透明性)に優れた原液を調製でき、さらに、原液として非危険物化が図られた液晶除去用洗浄剤組成物が得られる。また、洗浄剤組成物自体に配合する(Sa1)成分の量も低減でき、環境への排水負荷がより低減されるとともに、液晶汚れに対して良好な洗浄効果も得られる。
【0046】
本発明の液晶除去用洗浄剤組成物は、液晶パネルの洗浄用として好適な洗浄剤組成物である。
本発明に用いられる前記一般式(1)で表される芳香族化合物は、工業的に入手が容易なものである。当該芳香族化合物の主たる用途としては、樹脂の中間体や医薬品の中間体等の有機合成原料が挙げられ、この従来の用途と、本発明の液晶除去用という用途とは全く相違しており、本発明の液晶除去用洗浄剤組成物は、当該芳香族化合物の新たな用途を提供するものである。
【0047】
≪液晶パネルの洗浄方法≫
本発明の液晶パネルの洗浄方法は、上記本発明の液晶除去用洗浄剤組成物を用いる方法である。
本発明の液晶パネルの洗浄方法は、特に限定されるものではなく、たとえば以下のようにして行うことができる。
すなわち、本発明の液晶除去用洗浄剤組成物を撹拌しながら、液晶パネルを所定の時間浸漬する(洗浄工程)。当該液晶除去用洗浄剤組成物は、たとえば(Sa1)成分と水などの任意成分とを予め混合したものを用いてもよく、(Sa1)成分と任意成分とを個別に用いて洗浄の際に混合してもよい。また、前記(Sa1)成分に代えて、(Sa1)成分を含有する有機溶剤成分を用いてもよい。
なかでも、当該液晶除去用洗浄剤組成物を、水で希釈して用いることが好ましく、2〜20倍量の水で希釈して用いることがより好ましい。この場合、当該液晶除去用洗浄剤組成物としては、上記「(Sa1)−水の透明溶液」を用いることが好ましい。
当該希釈の方法としては、当該液晶除去用洗浄剤組成物の2〜20倍量の水を用いることが好ましく、2〜15倍量の水を用いることがより好ましい。
当該液晶除去用洗浄剤組成物を2倍量以上の水で希釈すると、液晶パネルのギャップ(狭部)に付着した液晶汚れを充分に除去できることに加えて、環境への排水負荷をより低減できる。
当該液晶除去用洗浄剤組成物を20倍量以下の水で希釈すると、低濃度の(Sa1)成分で液晶汚れを充分に除去できる。
【0048】
次いで、当該洗浄剤組成物中から液晶パネルを取り出し、水中に浸漬する(リンス工程)。
その後、水中から液晶パネルを取り出し、乾燥機などを用いて乾燥する(乾燥工程)。
なお、洗浄工程又はリンス工程においては、超音波処理を行ってもよい。超音波処理を行うと、液晶パネルのギャップ(狭部)に付着した液晶汚れを短時間で、より良好に除去できるため好ましい。
また、本発明の液晶パネルの洗浄方法は、上記洗浄方法以外にも、被洗浄物である液晶パネルに、本発明の液晶除去用洗浄剤組成物をノズル等から直接吹き付けて塗布して拭き取る方法などが挙げられる。
以上説明した本発明の液晶パネルの洗浄方法によれば、液晶パネルのギャップ(狭部)に付着した液晶汚れを充分に除去することができ、かつ、環境への排水負荷を低減できる。
【実施例】
【0049】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0050】
本実施例において使用した有機溶剤[入手先]は下記の通りである。以下に、それらの構造を合わせて示す。
【0051】
p−キシレングリコールジメチルエーテル[イハラニッケイ化学工業(製)]。
α−メトキシ−p−キシレン[イハラニッケイ化学工業(製)]。
1,2−ジメトキシベンゼン[東京化成工業(製)]。
1,4−ジメトキシベンゼン[東京化成工業(製)]。
p−キシレン[純正化学(製)]。
トルエン[関東化学(製)]。
アニソール[関東化学(製)]。
ベンジルアルコール[関東化学(製)]。
フェニルグリコール[日本乳化剤(製)]。
シクロヘキサン[純正化学(製)]。
1−ドデセン[出光興産(製)]。
ノルマルドデカン[ジャパンエナジー(製)]。
【0052】
【化4】

【0053】
【化5】

【0054】
【化6】

【0055】
<液晶汚れに対する洗浄力の評価(1)>
以下に示す1)〜6)の手順に従って、液晶汚れに対する洗浄力の評価を行った。
1)液晶パネルを作製し、当該液晶パネルのギャップ(狭部)に、TFT液晶パネル用の液晶材料を、シリンジを用いて注入した。
本実施例で用いた、液晶材料が注入される前の空の液晶パネルを図1に示す。
【0056】
図1(a)は液晶パネルを示す概略斜視図であり、図1(b)は、図1(a)におけるガラス基板1bの端部1b1側からの液晶パネルの一部側面図である。
図1(a)に示す液晶パネル10は、一対のガラス基板1a、1bを、接着剤により、開口部(図示せず)を残して接着部2を介して貼り合わせて液晶室3(表示部)を作り、該開口部を封止剤により封止して作製した。液晶パネル10には、電極6が形成されている。
作製された液晶パネル10は、図1(b)に示すように、ガラス基板1aの端部1a1から接着部2までの距離(空隙部4の奥行き)が300μm、ガラス基板1a、1b間の距離が3μmであった。
そして、一対のガラス基板1a、1b同士の接着部2の外側(液晶室3側とは反対側)の、対向するガラス基板1a、1bと接着部2とにより形成される狭いギャップ(狭部)に液晶材料(図示せず)を注入した液晶パネル10(2インチサイズ)を用いて、下記2)以降の操作を行った。
なお、図1中のXで囲まれた範囲は、下記6)の操作において、液晶材料残りの状態を評価した領域を示す。
【0057】
2)上記の各有機溶剤2gとイオン交換水18gとをそれぞれ混合してなる各例の洗浄剤組成物20gを、100mLビーカーに入れ、長さ2cmのスターラーを用いて撹拌(600rpm)を継続しながら、ギャップ(狭部)に液晶材料が注入された液晶パネルを、60℃で5分間、洗浄剤組成物の原液中に浸漬した。
3)液晶パネルを取り出し、それぞれの面を、片面5秒間ずつイオン交換水で洗浄した。
4)イオン交換水50gを100mLビーカーに入れ、60℃で10分間、液晶パネルを浸漬した(リンス工程)。
5)液晶パネルを取り出し、100℃の乾燥機内で10分間乾燥した。
6)偏光顕微鏡により、液晶パネルの所定の領域(図1中のX)におけるギャップ(狭部)内の液晶材料残りの状態を目視で観察し、下記評価基準(合格:4点以上)に基づいて、液晶汚れに対する洗浄力を評価した。その結果を表2に示す。
(評価基準)
5点:液晶材料が完全に洗浄・除去されていた。
4点:液晶材料が極わずかに残っていた。
3点:液晶材料がところどころに残っていた。
2点:液晶材料が塊状となって残っていた。
1点:液晶材料の半分以上が残っていた。
当該評価基準に対応する、液晶パネルの所定の領域(図1中のX)におけるギャップ(狭部)内の液晶材料残りの状態を図2に示す。図2中、符号5は液晶材料、符号1aと1bはガラス基板、符号2は接着部をそれぞれ示す。
【0058】
【表2】

【0059】
表2の結果から明らかなように、本発明に係る芳香族化合物を用いた実施例1〜4の洗浄剤組成物は、比較例1〜8の洗浄剤組成物に比べて、液晶汚れに対する洗浄力が高いことが確認できた。
また、実施例1〜4の洗浄剤組成物の芳香族化合物(有機溶剤)濃度は10質量%と低く、かつ、当該芳香族化合物(有機溶剤)は全て、PRTR、労安法、毒劇法のいずれにも該当しないものであることから、実施例1〜4の洗浄剤組成物は環境への排水負荷が低いものである。
【0060】
<洗浄剤組成物の調製>
(実施例5〜19、比較例9)
表3〜4に示す組成に従って、各成分を常法に準じて混合することにより、各例の洗浄剤組成物を調製した。
表中の配合量の単位は、洗浄剤組成物の全質量を基準とする質量%であり、各成分の純分換算量を示す。
以下に、表中に示した成分について説明する。
【0061】
[表中に示した成分の説明]。
・一般式(1)で表される芳香族化合物(Sa1)
PXDM:p−キシレングリコールジメチルエーテル[イハラニッケイ化学工業(製)]。
【0062】
・(Sa1)成分の比較成分[以下「(Sa1’)成分」と表す。]
ドデカン:ノルマルドデカン[ジャパンエナジー(製)]。
【0063】
水:イオン交換水
【0064】
・一般式(2)で表される化合物、HLBが11以上のノニオン界面活性剤及び非プロトン性極性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも一種(S2)。
【0065】
・・(一般式(2)で表される化合物)
C4E3:一般式(2)におけるRがブチル基、nが3である、トリエチレングリコールモノブチルエーテル。商品名:ブチセロール30、協和発酵ケミカル製。
C6E8:一般式(2)におけるRがヘキシル基、nが8である、オクタエチレングリコールモノヘキシルエーテル。
Ph−G EO3モル:一般式(2)におけるRがフェニル基、nが3である、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル。商品名:フェニルグリコール−30(PhG−30)、日本乳化剤製。
エタノール:一般式(2)におけるRがエチル基、nが0である1価アルコール。関東化学製;プロトン性極性有機溶媒。
【0066】
・・(HLBが11以上のノニオン界面活性剤)
C10E14(HLB=15.9):アルキル基の炭素数が10で、かつ、オキシエチレン基の繰返し数(エチレンオキサイドの平均付加モル数)が14である、ポリオキシエチレンアルキル(分岐デシル)エーテル。商品名:ノイゲンXL−140、第一工業製薬製。
C8E20(HLB=17.4):アルキル基の炭素数が8で、かつ、オキシエチレン基の繰返し数(エチレンオキサイドの平均付加モル数)が20である、ポリオキシエチレンアルキル(2−エチルヘキシル)エーテル。商品名:ニューコール1020、日本乳化剤製。
C10E5(HLB=11.6):アルキル基の炭素数が10で、かつ、オキシエチレン基の繰返し数(エチレンオキサイドの平均付加モル数)が5である、ポリオキシエチレンアルキル(分岐デシル)エーテル。商品名:ノイゲンXL−50、第一工業製薬製。
【0067】
・・(非プロトン性極性有機溶媒)
DMSO:ジメチルスルホキシド、東レ・ファインケミカル製。
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド、関東化学製。
アセトン:関東化学製。
【0068】
・(S2)成分の比較成分[以下「(S2’)成分」と表す。]
C10E4(HLB=10.5):アルキル基の炭素数が10で、かつ、オキシエチレン基の繰返し数(エチレンオキサイドの平均付加モル数)が4である、ポリオキシエチレンアルキル(分岐デシル)エーテル。商品名:ノイゲンXL−40、第一工業製薬製。
【0069】
<液安定性の評価>
[外観の評価]
表3〜4に示す組成に従って調製した直後の洗浄剤組成物10gを、密栓ビン10mLにそれぞれ入れ、室温(20℃)にて1日間、静置した後の外観を目視により観察した。その外観が、均一透明であれば○、白濁〜二層分離の状態であれば×とした。その結果を表3、4に示す。
ここでいう「白濁」は、水溶液全体に渡って乳濁していたことを示す。「二層分離」は、油層と水層とに分離していたことを示す。
【0070】
[曇点の測定]
各例の洗浄剤組成物について、洗浄剤組成物の配合を15〜25℃で行い、均一透明な溶液を調製した後、当該溶液20gを、30mlガラス試験管に収容して水浴に浸漬し、水浴の温度を1℃/分で上昇させ、当該溶液が白く濁り始めた時点の溶液の温度(℃)を、標準温度計の目盛を読み取ることにより測定した。その結果を表3、4に示す。
【0071】
<液晶汚れに対する洗浄力の評価(2)>
以下に示す1)〜7)の手順に従って、液晶汚れに対する洗浄力の評価を行った。
1)上記評価(1)と同様にして、図1に示す液晶パネルを作製し、当該液晶パネルのギャップ(狭部)に、TFT液晶パネル用の液晶材料を、シリンジを用いて注入した。
【0072】
2)100mLビーカーに、各例の洗浄剤組成物20gを入れ、当該洗浄剤組成物をイオン交換水80g(当該洗浄剤組成物の4倍量の水)でそれぞれ希釈して、20質量%水溶液100gを調製した。
そして、最後に撹拌を停止してから10秒間経過後の、20質量%水溶液の外観を目視で観察した。その結果を表3、4に示す。
表中、「白濁」は、水溶液全体に渡って乳濁していたことを示す。「二層分離」は、油層と水層とに分離していたことを示す。
【0073】
3)各例の20質量%水溶液20gを、100mLビーカーにそれぞれ入れ、長さ2cmのスターラーを用いて撹拌(600rpm)を継続しながら、ギャップ(狭部)に液晶材料が注入された液晶パネルを、45℃で15分間、当該20質量%水溶液中に浸漬した。
4)液晶パネルを取り出し、それぞれの面を、片面5秒間ずつイオン交換水で洗浄した。
5)イオン交換水50gを100mLビーカーに入れ、45℃で10分間、液晶パネルを浸漬した(リンス工程)。
6)液晶パネルを取り出し、100℃の乾燥機内で10分間乾燥した。
7)偏光顕微鏡により、液晶パネルの所定の領域(図1中のX)におけるギャップ(狭部)内の液晶材料残りの状態を目視で観察し、上記評価(1)と同様の評価基準(合格:4点以上)に基づいて、液晶汚れに対する洗浄力を評価した。その結果を表3、4に示す。
【0074】
【表3】

【0075】
【表4】

【0076】
表3〜4の結果から、実施例5〜18の洗浄剤組成物は、いずれも、外観が均一透明であり、かつ、液晶汚れに対する洗浄力が高いことが確認できた。また、実施例5〜18の洗浄剤組成物は、いずれも、曇点が30℃以上であることも確認できた。
(S2)成分と異なる(S2’)成分を用いた実施例19の洗浄剤組成物においては、液晶汚れに対する洗浄力が高いこと、また、均一透明な外観は得られないこと、が確認できた。
一方、(Sa1)成分と異なるドデカンを用いた比較例9の洗浄剤組成物においては、液晶汚れに対する洗浄力は低く、均一透明な外観は得られないことも確認された。
したがって、(Sa1)成分と、水と、(S2)成分とを混合してなる洗浄剤組成物は、均一で透明な外観を呈し、液安定性(均一性、透明性)に優れることが確認できた。加えて、水で希釈して(Sa1)成分を低い濃度で用いることができることから環境への排水負荷を低減でき、かつ、液晶汚れに対する洗浄力が高いことも確認できた。
【0077】
また、本評価(2)において、液晶パネルを洗浄する際、実施例5〜19の洗浄剤組成物の20質量%水溶液は白濁していた。このように白濁した水溶液を液晶パネルに接触させて洗浄を行うことにより、本発明の洗浄剤組成物及び洗浄方法においては、液晶汚れに対して良好な洗浄効果が得られることも確認できた。
なお、リンス工程で、白濁した20質量%水溶液を、液晶パネルから容易に除去できることも確認できた。
【符号の説明】
【0078】
1a ガラス基板 1b ガラス基板 2 接着部 3 液晶室 4 空隙部 5 液晶材料 10 液晶パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される芳香族化合物を含有することを特徴とする液晶除去用洗浄剤組成物。
【化1】

[式中、RはOCH又はCHOCHを示し、RはCH、OCH又はCHOCHを示す。]
【請求項2】
前記一般式(1)で表される芳香族化合物と水とを混合してなる請求項1記載の液晶除去用洗浄剤組成物。
【請求項3】
下記一般式(2)で表される化合物、HLBが11以上のノニオン界面活性剤及び非プロトン性極性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも一種をさらに混合してなる請求項2記載の液晶除去用洗浄剤組成物。
【化2】

[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はベンジル基であり、nは0〜50の数である。]
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の液晶除去用洗浄剤組成物を用いることを特徴とする液晶パネルの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−84124(P2010−84124A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125163(P2009−125163)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】