説明

液滴吐出ヘッド及び配線ユニット

【課題】 余剰の導電材の付着によって圧電層の変形が阻害されるのを防止すると共に、導電材によるイオンマイグレーションの発生を防止し、更には駆動電極の大型化を抑制することができる液滴吐出ヘッド、及びこれに用いられる配線ユニットを提供する。
【解決手段】 液滴吐出ヘッド1は、配線ユニット12の給電端子50から圧電ユニット11の駆動電極49への電気信号に基づく該圧電ユニット11の駆動により、圧電ユニット11に積層された流路ユニット10が有する液体流路10a内の液体を複数のノズル孔28aから外部へ吐出すべく構成されており、給電端子50は、圧電ユニット11側からみて環状を成す環状露出部81を有し、導電材52は環状露出部81に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動電極に導電材を介して電気的に接続される複数の給電端子を有して圧電ユニットの一方の面上に積層される配線ユニット、及び該配線ユニットを備える液滴吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液滴吐出ヘッドとして、例えばインクジェットプリンタ装置に搭載されるものなどは、インクをノズル孔まで導く流路(チャンネル)の高密度化が要望されている。ここで、液滴吐出ヘッドとしては特許文献1に開示されているようなものがあり、具体的には、複数のノズル孔までインクを導く複数の流路が形成された流路ユニットと、該流路ユニットの上面に積層されて流路内のインクに吐出圧力を付与すべく圧電層が積層されて成る圧電ユニットと、該圧電ユニットの上面に配設された複数の駆動電極へ駆動信号を出力する配線ユニットとから構成されている。このうち圧電ユニットが有する各駆動電極は、流路ユニットの各流路途中に設けられた圧力室に対応する電極部と、配線ユニットが有する複数の給電端子に対して導電材を介して個々に接続される円盤形状の接続端子とから構成されている。そして、ハンダ等の導電材は、この円盤形状の接続端子に載せられている。
【0003】
ところで、駆動電極の接続端子と給電端子とは、ハンダ等の導電材を介して配線ユニットと圧電ユニットとが積層されて接続されるが、そのハンダの容量が少ないと、そのハンダ高さが十分でなくて両端子間を接合できなかったり、ハンダの配置領域が狭くて接続端子と給電端子とが位置ズレを起こして積層されたときに接合不良を起こすなどの問題がおこりやすい。また、機械的な接合強度も弱くなる。そのため、ハンダの容量は多少多めに設定されている。ハンダは、その表面張力により多少多めに設定されても流れ出さない。しかしながら、その加熱圧着時に溶融したハンダのうち、加圧力のバラツキや、ハンダ量のばらつきなどの影響で、余剰分が周辺へ流れ出した場合に、余剰ハンダが圧力室上の圧電層に付着して硬化すると、圧電層の変形が妨げられて圧力室内のインクへ吐出圧力を付与するのが困難となる。そこで、特許文献1では、平面視したときに圧力室が占める領域より外方に離れて接続端子を配置することにより、該接続端子外へ余剰ハンダが流れ出たとしても、圧力室上の圧電層に付着しにくく該圧電層の変形が妨げられないようにしている。
【特許文献1】特開2006―62211号公報(図7参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような構成の場合、接続端子が電極部から比較的離隔して設けられるため、各駆動電極の寸法が大きくなってしまい、上述したようなチャンネルの高密度化要望に応えるのが困難になってしまう。また、圧力室が占める領域外であっても、余剰ハンダ等の導電材が圧電層上に流れ出して硬化すると、圧電層の変形が阻害される可能性が残る。更に、流れ出た余剰の導電材が隣接する他の駆動電極に近接していると、その状態で長期間が経過する間に、駆動電極から金属イオンが拡散(イオンマイグレーション)していき、これが近接する余剰の導電材にまで到達してしまう可能性がある。このようになると、隣接する駆動電極同士が導通状態となるため、これらの駆動電極に対応する流路内の液体を、個別に吐出制御することができなくなってしまう。なお、このような事情は、例示したインクジェットプリンタ装置が備える液滴吐出ヘッドに限られず、他の装置に搭載されるものにも該当しうる。
【0005】
そこで本発明は、余剰の導電材の付着によって圧電層の変形が阻害されるのを防止すると共に、イオンマイグレーションの発生を防止し、更には駆動電極の大型化を抑制することができる液滴吐出ヘッド、及びこれに用いられる配線ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、圧電層の一方の面に複数の駆動電極が近接配置されて成る圧電ユニットと、シート状基材、および該シート状基材に設けられて前記駆動電極に導電材を介して電気的に接続される複数の給電端子を有し、前記圧電ユニットの前記一方の面に積層される配線ユニットとを備え、前記給電端子から前記駆動電極への電気信号に基づく前記圧電ユニットの駆動により、該圧電ユニットの他方の面に積層された流路ユニットが有する液体流路内の液体を複数のノズル孔から外部へ吐出すべく構成されており、更に、前記給電端子は、前記圧電ユニット側からみて環状を成す環状露出部を有し、前記導電材は該環状露出部に設けられている。
【0007】
このような構成とすることにより、従来の外形の等しい円盤形状の給電端子に比べて上記環状露出部は表面積が小さくなるため、ここに載せられる導電材の容量は少なくなる。従って、給電端子と受電端子との間に導電材が介在された状態で、給電端子外へ流れ出す導電材の余剰分を少なくすることができるため、駆動電極の小型化及び流路の高密度化を図ることができると共に、圧電層に付着・硬化してその変形を阻害したり、イオンマイグレーションが生じたりするのを防止することができる。また、このような給電端子は、表面積が小さくなりつつも所定の外形寸法を確保できるため、圧電ユニット側から見たときに給電端子と駆動電極とが重複する領域を大きく確保することができる。つまり、導電材の配置領域を所定寸法確保することができるため、圧電ユニットと配線ユニットとの積層時に、多少の位置ズレが生じたとしても、導電材を介して給電端子と駆動電極とを確実に接続することができる。更には、導電材の容量を少なくしつつも、給電端子からの高さ寸法を比較的大きく確保することができるため、圧電ユニットと配線ユニットとの積層時に、給電端子上の導電材を、確実に駆動電極に接続することができる。
【0008】
前記駆動電極は、前記給電端子から導電材を介して電気信号を受電する受電端子と、前記電気信号により前記圧電層の活性部に電解を生じさせる電極部とを有し、該電極部は、所定の方向へ延設された略帯状を成し、前記受電端子は、前記電極部の延設方向の一方の端部に配設されており、前記電解によって前記活性部を変形駆動させ、前記圧電ユニットの他方の面に積層された流路ユニットが有する液体流路内の液体を外部へ吐出すべく構成されていてもよい。
【0009】
このような構成とすることにより、上述したように導電材の容量が少なくなるため、給電端子上の導電材が、給電端子外へ流れ出す余剰分を少なくすることができる。また、駆動電極において、受電端子から電極部側へ向かって流れ込もうとする導電材を少なくすることができ、従って、電極部に付着・硬化した導電材によって該電極部に対応する圧電層の活性部の変形が阻害されるのを防止することができる。
【0010】
また、本発明に係る配線ユニットは、圧電層の一方の面に複数の駆動電極が近接配置されて成る圧電ユニットの前記一方の面上に積層されるシート状基材と、該シート状基材に設けられて前記駆動電極の夫々と導電材を介して電気的に接続される複数の給電端子とを備え、前記給電端子は、前記圧電ユニット側からみて環状を成す環状露出部を有し、前記導電材は該環状露出部に配設されるべく成してある。
【0011】
このような構成とすることにより、上述したとおり、導電材の容量を少なくして給電端子外へ流れ出す余剰分を少なくすることができるため、圧電層に付着・硬化してその変形を阻害したり、イオンマイグレーションが生じたりするのを防止することができる。また、圧電ユニットと配線ユニットとの積層時に、多少の位置ズレにもかかわらず、導電材を介して給電端子と駆動電極とを確実に接続することができ、しかも、導電材の給電端子からの高さ寸法を比較的大きく確保して、導電材を確実に駆動電極に接続することができる。
【0012】
また、前記シート状基材において前記環状露出部に囲まれる中央部分には、前記シート状基材と前記圧電ユニットとの積層時に前記導電材のうち余剰分が収容されるべく、前記圧電ユニット側とは反対側へ窪んだ凹部が形成されていてもよい。このような構成とすることにより、例え導電材に余剰分が存在していても、この余剰分をシート状基材の凹部内に収容することができるため、余剰導電材が給電端子外へ流れ出すのを防止することができる。
【0013】
また、前記凹部は、前記シート状基材における前記圧電ユニット側とは反対側の面へ貫通する貫通孔を成していてもよい。このような構成とすることにより、導電材の余剰分を収容できる容積を大きく確保することができる。
【0014】
また、前記導電材はハンダであってもよい。このような構成により、一般に圧電ユニットと配線ユニットとの接続に用いられているハンダを導電材とする場合にも、電気的かつ機械的に確実に接続できるとともに、上述したような作用効果を期待することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、余剰の導電材の付着によって圧電層の変形が阻害されるのを防止すると共に、導電材によるイオンマイグレーションの発生を防止し、更には駆動電極の大型化を抑制することができる液滴吐出ヘッド、及びこれに用いられる配線ユニットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る液滴吐出ヘッドについて図面を参照しながら具体的に説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態に係る液滴吐出ヘッドが搭載されたキャリッジの断面図であり、液滴吐出ヘッドとしてインクジェットプリンタ装置のインクジェットヘッドを例示している。なお、図1(a)は前記インクジェットヘッドを一側方から見たときの断面図を示しており、図1(b)はこのインクジェットヘッドを図1(a)中のA-A線で切断したときの断面図を示している。
【0018】
図1に示すように、このキャリッジ1は、例えば、シアン、マゼンダ、イエロー、及びブラックなどの各色のインク(液体)を、後述の流路ユニット10へ互いに独立して供給するインクタンク3と、このインクタンク3を収容して保持するホルダケース4と、このホルダケース4の下部に支持フレーム5を介して取り付けられるインクジェットヘッド6とを備えている。また、このインクジェットヘッド6は、後述する図2及び図3に示すように複数枚のプレートが積層接着されて内部に液体流路10a(図2参照)を有する流路ユニット10の上面に圧電ユニット11が積層接着され、該圧電ユニット11の上面に配線ユニット(チップオンフィルム)12が更に積層接合されて構成されている。配線ユニット12には駆動回路であるドライバIC51(図3参照)が接続され、ドライバIC51は、本体側からの印字データをもとに選択的に圧電ユニット11を駆動させる駆動信号を出力している。このようなインクジェットヘッド6を備えるキャリッジ1は、公知のインクジェットプリンタ装置と同様に、被記録紙の紙面と平行に移動可能に構成され、移動しつつインクジェットヘッド6からインク液滴を吐出することにより、紙面上に画像を形成することができる。
【0019】
図2は、図1に示すキャリッジ1が備えるインクジェットヘッド6の拡大断面図であり、図3は、このインクジェットヘッド6を流路ユニット10と圧電ユニット11と配線ユニット12と支持フレーム5とに分解したときの斜視図である。
【0020】
図2に示すように、インクジェットヘッド6が有する流路ユニット10は、圧力室プレート20、第1スペーサプレート21、絞りプレート22、第2スペーサプレート23、第1共通液室プレート24、第2共通液室プレート25、ダンパープレート26、カバープレート27、及びノズルプレート28が、この順に上方から配設されてそれぞれ積層接着された構成となっている。
【0021】
これらのうち、ノズルプレート28はポリイミド等の樹脂シートで、それ以外の各プレート20〜27は42%ニッケル合金鋼板(42合金)やステンレス等の金属板であり、平面視で何れも長方形状を成し、各々50〜150μm程度の肉厚を有している。各プレート21〜27には、エッチング、レーザ加工、又はプラズマジェット加工等により、液体流路(チャンネル)10aを構成する開孔又は凹部が形成されている。
【0022】
流路ユニット10の最下層のノズルプレート28には、微小径のインク滴吐出用のノズル孔28aが、微小間隔で多数個穿設されていて、ノズル孔28aはノズルプレート28の長辺方向(図3のX方向)に沿って延びる列状に配置され、短辺方向(図3のY方向)に5列設けられている。また、流路ユニット10において最上層に位置する圧力室プレート20には、複数の圧力室31となる複数の圧力室孔20aが、圧力室プレート20をその厚み方向に貫通して形成され、ノズル孔28aに対応してX方向に沿って列状に、Y方向に5列設けられている。圧力室孔20aは、Y方向に長い平面視細長形状をなし、その長手方向(Y方向)がノズル孔28aの列と直交する方向(X方向)に沿うように配置されている。これら複数の圧力室孔20aは、上方から圧電ユニット11が積層され、下方から第1スペーサプレート21が積層されることにより、内部空間を有する複数の圧力室31を形成する。
【0023】
第1スペーサプレート21からカバープレート27のそれぞれには、各圧力室31の一端部に連通し、各ノズル孔28aにまで連通するノズル連通流路36となる各開口が貫通形成され、また、第1スペーサプレート21と絞りプレート22と第2スペーサプレート23には、共通インク室35と圧力室31の他端部とを連通する接続流路33となる各開口21a、23aおよび絞り孔22aが貫通形成されている。
【0024】
また、2枚の共通液室プレート24、25には、圧力室31の列方向(X方向)に配置された位置に対応する下方位置にて、その列方向(X方向)に沿って延設された共通インク室35となる共通インク室孔24a、25aが各共通液室プレート24、25をその厚み方向に貫通して形成され、流路ユニット10の短辺方向(Y方向)に5列設けられている。また、ダンパープレート26には、共通液室35との対向面とは反対側の面を凹み形成してその肉厚を薄肉にさせたダンパ壁26aが、共通液室35の形状と対応してY方向に5列形成され、第2スペーサプレート23、2枚のマニホールドプレート24、25、ダンパプレート26、及びカバープレート27がこの順で積層されることによって、共通液室35およびダンパスペース26bが形成される。更にカバープレート27には、複数のノズル孔28aを有するノズルプレート28が下方から積層接着されている。
【0025】
これらの各プレート20〜28が積層されていることで、連通された開孔や溝が構成され、インクが通流するインク流路10aが構成されている。即ち、インク流路10aは、共通インク室35から接続流路33、圧力室31、ノズル連通流路36およびノズル28aからなる。上記構成により、インクタンク3(図1参照)から流路ユニット10内に供給されたインクは、共通インク室35、接続流路33、圧力室31、及びノズル連通流路36を順に通り、ノズル28aへと導かれる。
【0026】
なお、圧力室プレート20から第2スペーサプレート23までの各プレート20〜23には、その各長手方向(X方向)の一端部に、上下の位置を対応させて、4色のインクに対応する4つのインク供給口34が穿設されている(図3参照)。インクタンク3からの4色のインクは、このインク供給口34にそれぞれ独立して供給される。インク供給口34は、第1および第2共通液室プレート24、25の共通液室35の長手方向の一端部に連通していて、インク供給口34からの各インクを共通液室35に供給される。なお、使用頻度の高い黒インクが流入するインク供給口34は、他より大型に形成されると共に2つの共通液室35のX方向の一端部に連通し、2つのインク流路10aと繋がっている。他のインク供給口34は、それぞれ互いに独立した1つの共通液室35のX方向の一端部に連通し、残りのインク流通路10aと繋がっている。このように流路ユニット10は、5つのインク流路を有しており、インクジェットヘッド6は、4種のインクを互いに独立して吐出可能に構成されている。
【0027】
インク供給口34は、図1にあるように、インクジェットヘッド6が支持プレート5を介してホルダケース4に取り付けられたときに、ホルダケース4に塔載されているインクタンク3のインク色ごとの各インク流出口3aおよび支持プレート5の各インク接続口5cと連通して接続される。(図1、図3参照)
一方、図3に示すように、圧電ユニット11は平面視でX方向に長い長方形状の外観形状を成しており、また、図2に示すように、多数枚のX方向に長い長方形状の圧電シート40〜45と絶縁性を有するトップシート46とが積層されて構成されている。圧電シート40〜45は、夫々の厚みが略30μm程度のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のセラミックス材料から構成されている。
【0028】
各圧電シート40〜45のうち、最下層の圧電シート40から上方へ数えて偶数番目の圧電シート41,43の上面には、各圧力室31の位置に個別に対応するよう配置された多数の個別電極47が、圧力室31が形成する各列に対応するよう5列に印刷形成されている。また、最下層の圧電シート40から上方へ数えて奇数番目の圧電シート40,42,44の上面には、平面視したときに個別電極47を列ごとに全てを覆うように配置された共通電極48が印刷形成されている。そして、個別電極47及び共通電極48は、各圧電シート40〜45及びトップシート46の側端面又は図示しないスルーホールに設けた図示しない中継配線を介し、トップシート46の上面に設けられた複数の駆動電極49(図3も参照)と電気的に接続されている。
【0029】
駆動電極49は、個別駆動電極49aと共通駆動電極49bとを有している。このうち、個別電極47にスルーホールを介して導通された個別駆動電極(駆動電極)49aは、アクチュエータの上面の平面視でX方向に細長形状で圧力室20と重なるように列状に設けられており、圧力室20に対応して5列形成されている。また、共通駆動電極49bは、複数の個別駆動電極49aの集合を挟んだX方向の両端部(短辺)に沿って帯状に形成され、共通電極とスルーホールを介して導通し、グランドに接地されている。なお、各電極47、48および駆動電極49は、Ag−Pd系の導電材料でスクリーン印刷されている。
【0030】
また、圧電ユニット11は、流路ユニット10よりもその外形形状が小さく、流路ユニット10のX方向の一端部にあるインク供給口34を露出させるように配設され、圧電ユニット11の個別電極47と流路ユニット10の圧力室31とが平面視で対向した位置になるように積層接合されている。
【0031】
この圧電ユニット11の上面には、配線ユニット12の一端部が接合される。配線ユニット12は可撓性帯状の配線部材であって、その一端部には、圧電ユニット11上面の駆動電極49に対応して複数の給電端子50を有し、該給電端子50は、配線ユニット12の他端部に設けられたドライバIC51(図3参照)との間で導線53a(図4参照)により電気的に接続されている。また、詳しくは後述するが、給電端子50には導電材を成すハンダ52がハンダバンプとなって付着しており、圧電ユニット11とその上面に積層された配線ユニット12とは、バーヒーターなどで加熱加圧させて溶融したハンダ52を介して給電端子50と駆動電極49とが電気的に接続される。
【0032】
このような構成を成すインクジェットヘッド6は、以下のようにして動作し、ノズル孔28aからインク滴を吐出する。即ち、インクタンク3のインク流出口3aから、支持プレート5のインク接続孔5cおよび、インク供給口34にインクが供給される。インク供給口34には図示しないフィルタが取り付けられている。インク供給口34から流路ユニット10内に供給されたインクは、共通液室35、接続通路33、圧力室31、及びノズル連通流路36から成るインク流路10a内に充填されている。この状態でドライバIC51が印字データに従って選択的に駆動電位を配線ユニット12から圧電ユニット11へ付与し、複数の個別電極47を選択的に所定電位にすると、電位が付与された個別電極47と共通電極48との間に電位差が生じ、圧電シート41〜44の活性部(エネルギー発生部)に電界が作用して積層方向の歪み変形が発生する。ここで活性部とは、各圧電シート41〜44において個別電極47と共通電極48とに挟まれた部分をいい、実質的には上述したような積層方向の歪み変形が生じる部分をいう。そして、このように活性部が変形すると、対応する圧力室31内へ圧電シートが突出するため、圧力室31の内圧が上昇し、内部の液体がノズル通路36を通じてノズル孔28aから外部へ吐出される。
【0033】
このようなインクジェットヘッド6は、図3に示すように矩形枠状を成す支持フレーム5によってホルダケース4(図1参照)に支持される。より具体的に説明すると、図3に示すように支持フレーム5は、平面視長方形状のプレート部材で、その平面視外形形状は流路ユニット10よりも大きく、その中央部分に平面視長方形状の開口5aが貫通形成された枠形状を成している。また、支持フレーム5の長手方向(X方向)の一端部には、インク接続孔5cがY方向に沿って4つ貫通形成されていて、インクタンク3のインク流出口3aと流路ユニット10のインク供給口34とを連通する。開口5aは、圧電ユニット11の平面視外形寸法より若干大きい開口面積を有し、支持フレーム5は、開口5a内に配線ユニット12の一端部が接続された圧電ユニット11が位置し、且つ配線ユニット12の他端部が開口5aから引き出されるようにして、流路ユニット10の上面10bに接着固定される。
【0034】
この際、支持フレーム5において開口5aを形成する内周部5bと、圧電ユニット11の外周部11aとの間には、流路ユニット10の上面10bを底面とする空隙路60が形成される。そして、この空隙路60には液状封止剤66(図2参照)が充填され、支持フレーム5と流路ユニット10、および圧電ユニット11との接合境界(隙間)を封止している。
【0035】
そして、このように流路ユニット10に支持フレーム5が接着固定された状態で、該支持フレーム5はホルダケース4の底部に、接着剤4aによって取り付けられる(図1(a)参照)。この接着剤4aは、支持フレーム5の外周部の全周にわたって塗布され、流路ユニット10のノズルプレート28の下面(ノズル孔28aが外部へ向かって開口する側の面)から支持フレーム5の外側を通って圧電ユニット11へ至る経路は、この接着剤4aによって閉鎖されるようになっている。
【0036】
ところで、上述したように、圧電ユニット11の駆動電極49と配線ユニット12の給電端子50とは、導電材を成すハンダ53によって電気的に接続されるが、加熱・加圧により溶融したハンダ53のうち余剰分が周辺へ流れ出してしまうと、隣接する駆動電極49,49間または給電端子50,50間が導通してしまったり、余剰ハンダ53がトップシート46の上面に付着して硬化することにより活性部の変形を阻害するという事態が生じる可能性がある。そして、本実施の形態に係るインクジェットヘッド6では、このような余剰ハンダ53に起因する事態の発生を防止することのできる構成を備えている。以下、このような構成について説明する。
【0037】
(実施例1)
図4は配線ユニット12の平面図であり、図5は積層された圧電ユニット11及び配線ユニット12を部分的に切り欠いて示す部分拡大図、そして図6は、図5に示す圧電ユニット11及び配線ユニット12をVI-VI線で切断したときの断面図である。なお、図6中の(a)は、圧電ユニット11及び配線ユニット12が対向配置されて接着されていない状態を、(b)は両者が接着された状態をそれぞれ示している。
【0038】
図4〜図6に示すように、配線ユニット12は可撓性帯状のシート状基材12aを有し、その基材12aの下面側に給電端子50や導線53から成る導電層が形成されている。更に、この導電層とシート状基材12aとを、該シート状基材12aの略全面にわたって覆うように、ポリイミドや感光性ソルダレジストなどから成る被覆層70が積層されている。また、図4に示すように、シート状基材12aは、第1領域121を有する一端側が圧電ユニット11と接合され、第2領域122を有する他端側へY方向に延設されていて、第2領域122にはドライバIC51(図3も参照)が実装されている。
【0039】
導電層には、その第1領域121に複数の給電端子50が配設されている。より詳しくは、第1領域121においてシート状基材12aの幅方向(X方向)の両端部分には、圧電ユニット11の共通電極48に導通する駆動電極(共通駆動電極)49bと接続される共通給電端子50bが、それぞれ列状に配設されている。そして、両端部分の共通給電端子50bに挟まれる領域には、圧電ユニット11の個別電極47に導通する駆動電極(個別駆動電極)49aと接続される個別給電端子50aが列状に複数列だけ配設されている。
【0040】
隣接する個別給電端子50a間を通って、各個別給電端子50aから第2領域122のドライバIC51までを接続する複数の出力用導線53aがY方向に引き出されており、第2領域122のドライバIC51からは他端側に設けられた図示しない端子まで接続する入力用導線53bがシート状基材12a上にパターン形成されている。また、配線ユニット12の幅方向(X方向)の両端には、Y方向に沿って他端部まで伸びる共通電極用導線53cが第1領域121から第2領域122にかけて帯状にパターン形成されている。
【0041】
これらの導線層は絶縁性の被覆層70に覆われ、個別給電端子50aは、これに対応する位置で被覆層70を部分的に除去して形成した開孔70a(6参照)によりその一部が圧電ユニット11側へ露出される。また、共通給電端子50bは、配線された帯状の共通電極用導線53cを覆う被覆層70の一部を除去して形成した開孔(図示せず)を通じて、共通電極用導線53cの一部が圧電ユニット11側へ露出されることで、共通電極端子50bを成している。つまり、共通給電端子50bは、共通電極用導線53cそのものである。
【0042】
図5に示すように、圧電ユニット11のトップシート46の上面には帯状の駆動電極49が配設されており、この図5では個別給電端子50aに対応して設けられた駆動電極49aを示している。駆動電極49aは、圧力室20と対応した帯状を成して所定方向(Y方向)へ延設された電極部49cと、該電極部49cにおいてその延設方向の一方の端部に設けられた受電端子49dとから構成され、受電端子49d上には断面視ドーム状に突起した銀ペースト80が設けられている。このような駆動電極49aは、流路ユニット10が有する圧力室31に対応して電極部49cが位置するように配設されており、隣接する駆動電極49aは比較的近接して位置している。
【0043】
なお、銀ペースト80は、導電材を介して受電端子49dと個別給電端子50aとの電気的及び機械的な接続性をより良くするために設けられていて、銀だけでなく、ガラスフリットを含んだ金ペースト等でもよい。また、突起形状であれば、断面視ドーム状だけでなく、断面視長方形状や、中心部分を貫通または窪ませた円環状であってもよい。また、駆動電極49aは、電極部49cと受電端子49dとを連通する細幅部分49eを有しているが、圧力室20に電極部49cが対応し、且つ電極部49cの延設方向の一端側に位置する受電端子49dが個別給電端子50aに対応していれば、このような形状に限らない。
【0044】
図6にも示すように、配線ユニット12が有する個別給電端子50aは、駆動電極49aの受電端子49dに対応して配設されている。この個別給電端子50aは、円盤部材の中心部を切り欠いて貫通孔81aを形成したような円環状を成しており、その周縁部が被覆層70によって覆われている。即ち、本実施の形態においては、円環状を成す個別給電端子50aと被覆層70の開孔70aとが、互いの中心を略一致させるように位置している。開孔70aは、被覆層70の圧電ユニット側の面(導電層とは反対側の面)から導電層側に向かって縮径したテーパー状の断面形状を成し、ハンダ52が付着されていない状態では、個別給電端子50aの外径より小さい開口径を有する開孔70aを通じて、個別給電端子50aが圧電ユニット11側へ露出している。そして、この露出部分は、受電端子49dに対向するようにして円環状に露出する環状露出部81を成している。
【0045】
この環状露出部81には導電材を成すハンダ52が付着されており、このハンダ52も環状露出部81の形状に対応して円環状を成している。また、図6(a)に示すように、環状露出部81に付着されたハンダ52は、シート状基材12aからの高さ寸法H1が被覆層70の厚み寸法H2より若干大きくなるように設定されている。
【0046】
図6(b)に示すように、このような圧電ユニット11と配線ユニット12とを積層し、加熱・加圧すると、円環状のハンダ52の頂部が突起状の銀ペースト80に接着し、個別給電端子50aと駆動電極49とが電気的に接続される。この場合において、個別給電端子50aの環状露出部81は中央部分が切り欠かれて貫通孔81aが形成されているため、この貫通孔81aの部分にはハンダ52が設けられていない。そのため、従来の円盤上の露出部に対して、中央部分が切り欠かれないハンダ52が設けられる場合と比べて、ハンダ52の容量は少なくて済んでいる。従って、積層接着時に生じるハンダ52の余剰分が低減されるため、環状露出部81から流れ出て、駆動電極49の電極部49cや圧電ユニット11のトップシート26にハンダ52の余剰分が付着・硬化するのを抑制することができ、イオンマイグレーションの発生も抑制することができる。
【0047】
また、このようにハンダ52の余剰分がトップシート26に付着・硬化するのを抑制できるため、圧電ユニット11の活性部の変形が阻害されるのを防止する目的で、駆動電極49において電極部49cから受電端子49dを大きく離隔して設ける必要もない。従って、受電端子49dを電極49cに近接配置して、駆動電極49の小型化を図ることが可能である。
【0048】
また、ハンダ52の容量を低減しつつも、環状露出部81の外形寸法は従来と同程度に確保することができるため、圧電ユニット11側から見たときに個別給電端子50aの環状露出部81と駆動電極49の受電端子49dとが重複する領域を大きく確保することができる。つまり、ハンダ52の配置領域が従来と同程度に確保されているため、圧電ユニット11と配線ユニット12との積層時に、多少の位置ズレが生じたとしても、ハンダ52を介して環状露出部81と受電端子49dとを確実に接続することができる。また、ハンダ52は、円環状であるため、銀ペースト80と接続されたときに、その接合状態が断面視でフィレット状になるため、ハンダ容量が低減しつつも、機械的な接続強度を補うことができる。さらに、ハンダ52の配置領域が従来と同程度に確保されるため、ハンダ容量が低減しても接続強度を比較的大きく確保できる。更には、ハンダ52の容量を低減しつつも、環状露出部81の表面からのハンダ高さ寸法を比較的大きく確保することができるため、圧電ユニット11と配線ユニット12との積層時に、環状露出部81上のハンダ52を、確実に受電端子49dに接続することができる。
【0049】
また、受電端子49dの銀ペースト80は、突起形状であるため、受電端子49dと個別給電端子50a上のハンダ52との接合距離を短くなり、またハンダ52が押しつぶされやすくなるため、確実に接続することができる。銀ペースト80の断面視形状が、中央部分が貫通または窪んだ断面視円環状である場合には、円環状のハンダ52との間には、その中央部分において、フィレット部分が広くなるため機械的強度を補うこともできる。
【0050】
(実施例2)
図7は、配線ユニット12の他の構成を示す図面であり、(a)は給電端子50a近傍の拡大平面図を示し、(b)は側面断面図を示している。なお、図7における側面断面図では、シート状基材12aを被覆層70の下方に配置し、且つ、配線ユニット12を圧電ユニット11の下方に配置した態様を示している。本実施例における圧電ユニット11と配線ユニット12とは、このような配置状態で、上下方向から加圧され、更に加熱されて接合される。
【0051】
図7に示す配線ユニット12は、図6に示したものに比べると、ハンダ52のうち余剰分を収容するハンダ収容部85を有している点で異なっている。より詳しく説明すると、図7に示すように、配線ユニット12が有するシート状基材12aには、個別給電端子50aが有する貫通孔81aに連通するように、圧電ユニット11に対向する側に開口した凹部12bが形成されており、貫通孔81aと凹部12bとによってハンダ収容部85が構成されている。
【0052】
そして、図7(b)に示す状態から、上記のような配線ユニット12を圧電ユニット11に積層して加熱・加圧すると、図6(b)に示したものと同様に、円環状のハンダ52の頂部が銀ペースト80に接着し、個別給電端子50aと駆動電極49とが電気的に接続される。そして、図7(b)に示す構成の場合は、ハンダ52は、個別給電端子50aと駆動電極49との間に介在された状態で余剰分が貫通孔81aを通じてハンダ収容部85へ収容されるようになっている(図中の矢印参照)。従って、ハンダ52の余剰分が駆動電極49の電極部49cや圧電ユニット11のトップシート26に流れ出るのを、より効果的に抑制することができる。
【0053】
このとき、銀ペースト80が突起形状であるため、給電端子50a上のハンダ52を押しつぶしやすく、余剰分をハンダ収容部85へ収容させやすい。なお、図7(b)に示すように、配線ユニット12の被覆層70の表面上において、個別給電端子50aよりも電極部49c側へ余剰分のハンダが流れ出た場合に、毛細管力によってこの流れ出たハンダを収容すべく、被覆層70にその表面から窪ませたハンダ収容溝86を設けてあってもよい。なお、凹部12bの断面視形状はこの形状に限らず、凹部12bの開口面よりも奥部においてその断面積が広くなった段差形状であってもよいし、深さ方向に直交する何れかの方向へ偏心していてもよい。その他の構成については、既に実施例1で説明したものと同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0054】
(実施例3)
図8は、圧電ユニット11及び配線ユニット12の他の構成を示す図面であり、(a)は給電端子50a近傍の拡大平面図を示し、(b)は側面断面図を示している。なお、図8における側面断面図においても、シート状基材12aを被覆層70の下方に配置し、且つ、配線ユニット12を圧電ユニット11の下方に配置した態様を示している。そして、本実施例における圧電ユニット11と配線ユニット12とは、このような配置状態で、上下方向から加圧され、更に加熱されて接合される。
【0055】
図8に示す構成では、配線ユニット12に形成されたハンダ収容部85の中心軸線85aが、駆動電極49aの受電端子49dの平面視での中心位置C1に対して、電極部49c側に偏芯して位置している。また、ハンダ収容部85は、駆動電極49aにおいて受電端子49dよりも電極部49c側の細幅部分49eの幅寸法W1と略同一の開口幅W2を有している(図8(a)参照)。
【0056】
そして、図8(b)に示す状態から、上記のような相対位置を維持しつつ、配線ユニット12を圧電ユニット11に積層して加熱・加圧すると、溶融したハンダ52のうち余剰分が、受電端子49dから細幅部分49eを経て電極部49cへ向かうのを抑制することができる。即ち、受電端子49dから電極部49cへ向かう途中の細幅部分49eにて、ハンダ収容部85にて補足することができるため、これより電極部49c側へ余剰分が流れ込むのを防止することができる。なお、その他の構成および各種変形例については既に実施例1、2で説明したものと同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0057】
(実施例4)
図9は、配線ユニット12の他の構成を示す図面であり、(a)は給電端子50a近傍の拡大平面図を示し、(b)は側面断面図を示している。なお、図9における側面断面図においても、シート状基材12aを被覆層70の下方に配置し、且つ、配線ユニット12を圧電ユニット11の下方に配置した態様を示している。そして、本実施例における圧電ユニット11と配線ユニット12とは、このような配置状態で、上下方向から加圧され、更に加熱されて接合される。
【0058】
図9に示す配線ユニット12は、図7に示した配線ユニット12において、ハンダ収容部85を構成する凹部12bが、シート状基材12aを貫通する貫通孔12cを成している点でこれと異なっており、その他の構成については図7のものと同様になっている。
【0059】
このような配線ユニット12によれば、ハンダ収容部85の容量を大きく確保することができるため、ハンダ52からの余剰分をより多くハンダ収容部85にて収容することができる。なお、図8に示した配線ユニット12についても同様に、凹部12bを、シート状基材12aを貫通する貫通孔12cとすることにより、受電端子49dから電極部49cへ向かうハンダ52の余剰分のより多くを、途中の細幅部分49eにて捕捉することが可能となる。また、本実施例に係る圧電ユニット11と配線ユニット12との接合に際しては、配線ユニット12のシート状基材12a側から貫通孔12cを通じてエア吸引しつつ、両者を加圧・加熱して接合してもよい。このようにすれば、ハンダの余剰分を貫通孔12cへと導入しやすくなる。なお、貫通孔12cおよび凹部12bの断面視形状は、上述の実施例1〜3のようにこの形状に限らない。また、実施例4の場合、図7(b)のハンダ収容溝86は、凹部であってもよいが、配線ユニット12を貫通していてもよく、その場合、貫通孔12cとともにハンダ収容溝86を通じてシート状基材12a側からエア吸引をしつつ、接合を行ってもよい。このようにすれば、ハンダの余剰分がたとえ電極部49c側に流れ出してしまった後でも、ハンダ収容溝86を通じて吸引することができ、電極部49c側への影響を少なく出来る。
【0060】
(実施例5)
図10は、配線ユニット12の他の構成を示す図面であり、構成のバリエーションを示す(a)〜(e)において、上段には拡大平面図を示し、下段には側面断面図を示している。なお、図10における側面断面図では、シート状基材12aを被覆層70の下方に配置した状態での配線ユニット12を示している。
このうち、図10(a)に示す配線ユニット12の場合、図9に示した配線ユニット12におけるシート状基材12aの下面(圧電ユニット11との対向面とは反対側の面)に、シート状基材12aを貫通する貫通孔12cの開口を取り囲むようにして、周壁部87を設けた構成となっている。この周壁部87内には貫通孔12cと連通する凹状スペース87aが形成されており、図10(a)に示す構成の場合、平面視して凹状スペース87aは貫通12cから所定の方向へ延設するように構成されている。そして、周壁部87は、貫通孔12cの周囲においては幅寸法W3が比較的大きい一方で、貫通孔12cから離隔してスペース87aを囲む部分においては幅寸法W4が比較的小さく構成されている。
【0061】
また、図10(b)に示す配線ユニット12の場合も、シート状基材12aの下面に周壁部88が貫通孔12cの開口を取り囲むようにして設けられている。この周壁部88は、貫通孔12cに対して同心円状に構成されており、周壁部88によって形成される凹状スペース88aの中心付近に貫通孔12cが位置している。
【0062】
図10(c)に示す配線ユニット12の場合は、シート状基材12aの下面に、直接的に凹状の窪み89を形成することにより、貫通孔12cに連通する凹状スペース89aが形成されている。この窪み89は、平面視したときの外形が円形を成しており、本実施の形態では貫通孔12cに対して同心状に設けられている。
【0063】
図10(d)に示す配線ユニット12の場合は、図10(c)に示した配線ユニット12において、凹状の窪み89の周縁部外側に、該窪み89を取り囲むようにして周壁部90が形成されている。そして、窪み89と周壁部90とによって、比較的大きな容量を有する凹状スペース90aが形成されている。
【0064】
図10(e)に示す配線ユニット12の場合は、図10(c)に示した配線ユニット12において、凹状の窪み89を下方から覆うようにして、シート状基材12aの広い範囲(実質的には、第1領域121(図4参照)の範囲)に被覆シート91が積層されている。この被覆シート91により、窪み89内の凹状スペース89aは、シート状基材12aの下方へ向かっては閉じられた空間となっている。例えば、被覆シート91はポリイミドである。
【0065】
上述したような図10(a)〜(e)に示す各配線ユニット12によれば、圧電ユニット11との接合時にハンダ52から生じた余剰分を、シート状基材12aの貫通孔12cにて収容できると共に、更に多くの余剰分についても、貫通孔12cを通じて圧電ユニット11とは反対側へと導き、シート状基材12aの上面に形成された各凹状スペース87a〜90aにて収容することができる。また、各凹状スペース87a〜90aは、周壁部87,88,90又は窪み89内に形成されているため、ここに収容されたハンダ52の余剰分が、凹状スペース87a〜90aの外方へと流れ出るのを防止することができる。
【0066】
また、図10(a)〜(d)に示した配線ユニット12を圧電ユニット11と接合する際には、配線ユニット12のシート状基材12a側から貫通孔12cを通じてエア吸引しつつ、両者を加圧・加熱して接合してもよい。このようにすれば、ハンダの余剰分を貫通孔12cへと導入しやすくなる。
【0067】
また、図10(a)〜(d)に示す配線ユニット12の場合、余剰のハンダ52が、シート状基材12aの上面にて大気中に露出することとなる。従って、圧電ユニット11にて生じた熱を、駆動電極49、給電端子50、及びハンダ52を通じてシート状基材12aの上面側へ伝達し、ここで大気中へと放散することができる。また、配線ユニット12のドライバIC51にて生じた熱についても、配線53、給電端子50、及びハンダ52を通じてシート状基材12aの上面側へ伝達し、ここで大気中へと放散することができる。
【0068】
一方、図10(e)に示す構成の場合、凹状スペース89aが被覆シート91によって覆われているため、シート状基材12aの上面を伝って流れ出るのを確実に防止することができる。また、図10(d)に示す配線ユニット12では、窪み89と周壁部90とによって大容量の凹状スペース90が形成されているため、より多くの余剰分を収容することができるようになっている。なお、図10(e)に示す配線ユニット12では、シート状基材12aの下面を覆う被覆層70と上面を覆う被覆シート91とが、同一素材又は略同一の熱膨張率を有する素材によって形成されている。たとえば、被覆層70、被覆シート91は、ポリイミドの同一素材を用いている。従って、余剰のハンダ52によって伝えられた熱により、被覆層70と被覆シート91とが同様に膨張・収縮するため、熱によって配線ユニット12に反りが生じるのを抑制することができる。
【0069】
このように、図10(a)〜(d)に示す配線ユニット12によれば、貫通孔12cを通じてシート状基材12aの表裏に亘るハンダ52を介し、圧電ユニット11及び配線ユニット12での発熱を大気中へ放散することができる。従って、シート状基材12aの上面に、金属板等から成る放熱専用の部材を設ける必要もない。その結果、圧電ユニット11の全面の温度を均一にするのを困難にしていた、放熱部材とシート状基材12aとの接着不良という問題が生じなくなるため好都合である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、余剰の導電材の付着によって圧電層の変形が阻害されるのを防止すると共に、導電材によるイオンマイグレーションの発生を防止し、更には駆動電極の大型化を抑制することができる液滴吐出ヘッド、及びこれに用いられる配線ユニットに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施の形態に係る液滴吐出ヘッドが搭載されたキャリッジの断面図であり、液滴吐出ヘッドとしてインクジェットプリンタヘッドを例示している。なお、(a)はインクジェットヘッドを一側方から見たときの断面図を示しており、(b)はこのインクジェットヘッドを図1(a)中のA-A線で切断したときの断面図を示している。
【図2】図1に示すキャリッジが備えるインクジェットヘッドの拡大断面図である。
【図3】インクジェットヘッドを流路ユニットと圧電ユニットと配線ユニットと支持フレームとに分解したときの斜視図である。
【図4】実施例1に係る配線ユニットの平面図である。
【図5】積層された圧電ユニット及び配線ユニットを部分的に切り欠いて示す部分拡大図である。
【図6】図5に示す圧電ユニット及び配線ユニットをVI-VI線で切断したときの断面図であり、(a)は、圧電ユニット及び配線ユニットが対向配置されて接着されていない状態を、(b)は両者が接着された状態をそれぞれ示している。
【図7】実施例2に係る配線ユニットの構成を示す図面であり、(a)は給電端子近傍の拡大平面図を示し、(b)は側面断面図を示している。
【図8】実施例3に係る圧電ユニット及び配線ユニットの構成を示す図面であり、(a)は給電端子近傍の拡大平面図を示し、(b)は側面断面図を示している。
【図9】実施例4に係る配線ユニットの構成を示す図面であり、(a)は給電端子近傍の拡大平面図を示し、(b)は側面断面図を示している。
【図10】実施例5に係る配線ユニットの構成を示す図面であり、構成のバリエーションを示す(a)〜(e)において、上段には拡大平面図を示し、下段には側面断面図を示している。
【符号の説明】
【0072】
1 インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)
10 流路ユニット
11 圧電ユニット
12 配線ユニット
12a シート状基材
12b 凹部
12c 貫通孔
49,49a,49b 駆動電極
49c 電極部
49d 受電端子
50 給電端子
51 ドライバIC
52 ハンダ(導電材)
53a 導線
70 被覆層
80 銀ペースト
81 環状露出部
85 ハンダ収容部(導電材収容部)
87a〜90a 凹状スペース
91 被覆シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電層の一方の面に複数の駆動電極が近接配置されて成る圧電ユニットと、
シート状基材、および該シート状基材に設けられて前記駆動電極に導電材を介して電気的に接続される複数の給電端子を有し、前記圧電ユニットの前記一方の面に積層される配線ユニットとを備え、
前記給電端子から前記駆動電極への電気信号に基づく前記圧電ユニットの駆動により、該圧電ユニットの他方の面に積層された流路ユニットが有する液体流路内の液体を複数のノズル孔から外部へ吐出すべく構成されており、
更に、前記給電端子は、前記圧電ユニット側からみて環状を成す環状露出部を有し、前記導電材は該環状露出部に設けられていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
前記駆動電極は、前記給電端子から導電材を介して電気信号を受電する受電端子と、前記電気信号により前記圧電層の活性部に電解を生じさせる電極部とを有し、
該電極部は、所定の方向へ延設された略帯状を成し、前記受電端子は、前記電極部の延設方向の一方の端部に配設されており、
前記電解によって前記活性部を変形駆動させ、前記圧電ユニットの他方の面に積層された流路ユニットが有する液体流路内の液体を外部へ吐出すべく構成されていることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
圧電層の一方の面に複数の駆動電極が近接配置されて成る圧電ユニットの前記一方の面上に積層されるシート状基材と、該シート状基材に設けられて前記駆動電極の夫々と導電材を介して電気的に接続される複数の給電端子とを備え、
前記給電端子は、前記圧電ユニット側からみて環状を成す環状露出部を有し、前記導電材は該環状露出部に配設されるべく成してあることを特徴とする配線ユニット。
【請求項4】
前記シート状基材において前記環状露出部に囲まれる中央部分には、前記シート状基材と前記圧電ユニットとの積層時に前記導電材のうち余剰分が収容されるべく、前記圧電ユニット側とは反対側へ窪んだ凹部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の配線ユニット。
【請求項5】
前記凹部は、前記シート状基材における前記圧電ユニット側とは反対側の面へ貫通する貫通孔を成していることを特徴とする請求項4に記載の配線ユニット。
【請求項6】
前記導電材はハンダであることを特徴とする請求項3乃至5の何れかに記載の配線ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−241436(P2009−241436A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91394(P2008−91394)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】