液滴吐出ユニット、及び液滴吐出装置
【課題】インクレベルセンサによるリザーブタンク内のインクレベルの誤検知を防止する。
【解決手段】リザーブタンク60を、仕切り壁90によって、インクの出入り口を囲むインク捕集室60Eと、インクレベルセンサを囲むセンサ室60Fとに仕切る。仕切り壁90とリザーブタンク60の底面との間に隙間G1を空けることで、インク捕集室60Eとセンサ室60Fとの間で、インクは流通するが、気泡Hは流通しないようにする。
【解決手段】リザーブタンク60を、仕切り壁90によって、インクの出入り口を囲むインク捕集室60Eと、インクレベルセンサを囲むセンサ室60Fとに仕切る。仕切り壁90とリザーブタンク60の底面との間に隙間G1を空けることで、インク捕集室60Eとセンサ室60Fとの間で、インクは流通するが、気泡Hは流通しないようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出ユニット、及びこの液滴吐出ユニットを備える液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルからインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド等の液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出ユニットとして、メインタンクに貯留された液体がリザーブタンクに供給されて一旦貯留されてから液滴吐出ヘッドへ供給される方式のものがある。この方式の液滴吐出ユニットでは、リザーブタンク内の液面をノズルよりも低くし、リバー部タンクを大気に開放することで、液滴吐出ヘッド内の液体に背圧(負圧)を発生させている。また、リザーブタンク内の液面レベルを光センサによって検知し、検知結果に応じてリザーブタンクへの液体の供給を制御して、リザーブタンク内の液面とノズルとの高低差を所定範囲に維持することで、液滴吐出ヘッド内の液体の背圧を所定範囲に維持し、液滴の吐出性能を安定させようとしている。
【0003】
ここで、リザーブタンク内の液面には、メインタンクの交換時等に液体流路内に進入した気泡が浮いており、この気泡が光センサのプリズム等の反射部材の表面に付着する場合がある。この場合には、液体と反射部材との間に気泡の層が出来、液体の有無に関わらず、光線が反射部材で反射してしまう。これによって、リザーブタンク内の液面レベルが誤検知されてしまうので、種々の対策が考案されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
【0004】
特許文献1には、投光センサから投射された光線を受光センサへ反射するプリズムの光線が当たる部分を、気泡が進入しないような小径の凹部とすることで、気泡の影響を受けない液面レベルの検知を可能にした構成が記載されている。しかし、プリズムに形成された凹部は微小で、凹部によって反射される光量が微小になるので、光センサの検知精度が得られにくくなる。この構成において、十分な検知精度を得るためには、投光センサ、受光センサの精密な位置合せ、投光センサの光量の増加等の措置が必要となり、コストアップに繋がる。また、特許文献1には、プリズムの表面に撥水性を持たせて気泡を破裂させると記載されているが、実験の結果、そのようなことは起きなかった。
【0005】
また、特許文献2には、インクカートリッジ内のインクの液面を高粘度の液体で覆うことで、気泡等によるインクの液面の変動を抑制する構成が記載されている。しかし、カートリッジ内に大量の気泡が進入した場合、しばらくの間、インクの液面と高粘度の液体との間に気泡の層が形成され、高粘度の液体の液面のレベルが上がってしまうので、インクの液面レベルが誤って検知される。
【0006】
また、特許文献3には、プリズムを多面体とし、投光センサと受光センサとを移動させながら複数回、インクの液面レベルを検知する構成が記載されている。この構成は、プリズムの表面に付着している気泡が少量の場合には有効である。しかし、プリズムの表面全体に気泡が付着しているような場合には、全く効果が無い。また、投光センサと受光センサとを移動させる機構が必要となるので、コストアップに繋がる。
【特許文献1】特開2004−9716号公報
【特許文献2】特開2004−276460号公報
【特許文献3】特許2003−300334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事実を考慮してなされたものであり、光センサによるタンク内の液面レベルの誤検知を防止すると共に、そのための構成を単純化してコストを低減する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の液滴吐出ユニットは、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出ヘッドへ供給される液体を貯留するタンクと、前記タンク内の所定高さまで上昇した液面を検出する光センサと、液体の出入り口を囲む第1室と、前記光センサを囲む第2室との2室に前記タンクを仕切る壁であり、前記タンク内の液面の最低レベル以下の高さで、液体を通過させる仕切り壁と、を有することを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の液滴吐出ユニットでは、液体がタンクに一旦貯留されてから液滴吐出ヘッドに供給され、液滴吐出ヘッドによって液滴が吐出される。タンク内の所定高さには、光センサが設置されており、この所定高さまで上昇したタンク内の液面が、光センサによって検知される。
【0010】
ここで、タンクは、仕切り壁によって、液体の出入り口を囲む第1室と、光センサを囲む第2室との2室に仕切られており、第1室と第2室との間での液体の流通が、タンク内の液面の最低レベル以下の高さでのみ可能となっている。これによって、液体の出入り口から第1室に侵入した気泡を第1室に捕集でき、光センサが気泡で覆われることを防止できるので、光センサによるタンク内の液面レベルの誤検知を防止できる。従って、液滴吐出ヘッド内の液体に作用する圧力を所望の範囲に維持できるので、液滴吐出ヘッドの吐出性能を向上できる。
【0011】
また、タンク内に仕切り壁を設けるという単純な構成によって、目的が達成されており、光センサの高精度な調整や光量の増加、光センサの移動機構等が不要となるので、コストを低減できる。
【0012】
請求項2に記載の液滴吐出ユニットは、請求項1に記載の液滴吐出ユニットであって、前記仕切り壁と前記タンクの底面との間に隙間を空けたことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の液滴吐出ユニットでは、仕切り壁とタンクの底面との間に隙間が空けられており、第1室と第2室との間の液体の流通が、タンク内の液面の最低レベルの高さでのみ可能となっている。これによって、液体の出入り口から第1室に侵入した気泡を第1室に捕集でき、光センサが気泡で覆われることを防止できるので、光センサによるタンク内の液面レベルの誤検知を防止でき、以って、液滴吐出ヘッド内の液体に作用する圧力を所望の範囲に維持できる。
【0014】
請求項3に記載の液滴吐出ユニットは、請求項1に記載の液滴吐出ユニットであって、前記仕切り壁の液面の最低レベル以下の高さに孔を空けたことを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の液滴吐出ユニットでは、仕切り壁の液面の最低レベル以下の高さに孔が空けられており、第1室と第2室との間の液体の流通が、タンク内の液面の最低レベル以下の高さでのみ可能となっている。これによって、液体の出入り口から第1室に侵入した気泡を第1室に捕集でき、光センサが気泡で覆われることを防止できるので、光センサによるタンク内の液面レベルの誤検知を防止でき、以って、液滴吐出ヘッド内の液体に作用する圧力を所望の範囲に維持できる。
【0016】
請求項4に記載の液滴吐出ユニットは、請求項1乃至3の何れか1項に記載の液滴吐出ユニットであって、前記仕切り壁と前記光センサとの間隔を、前記第1室内と前記第2室との液面の高さの差が2mm未満となるように設定したことを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の液滴吐出ユニットでは、仕切り壁と光センサとの間隔が、第1室内と第2室との液面の高さの差が2mm未満となるように設定されており、液体が、毛管力によって仕切り壁と光センサとの間に保持されることが防止されている。これによって、光センサによるタンク内の液面レベルの誤検知を防止できる。
【0018】
請求項5に記載の液滴吐出ユニットは、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出ヘッドへ供給される液体を貯留するタンクと、前記タンク内の所定高さまで上昇した液面を検出する光センサと、液体の出入り口を囲む第1室と、前記光センサを囲む第2室との2室に前記タンクを仕切り、液体を通過させ、且つ、気泡の通過を阻止するフィルタと、を有することを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の液滴吐出ユニットでは、タンクが、フィルタによって、液体の出入り口を囲む第1室と、光センサを囲む第2室との2室に仕切られている。このフィルタは、液体は通過させるが気泡の通過は阻止する。
【0020】
これによって、液体の出入り口から第1室に侵入した気泡を第1室に捕集でき、光センサが気泡で覆われることを防止できるので、光センサによるタンク内の液面レベルの誤検知を防止でき、以って、液滴吐出ヘッド内の液体に作用する圧力を所望の範囲に維持できる。
【0021】
請求項6に記載の液滴吐出ユニットは、請求項5に記載の液滴吐出ユニットであって、前記フィルタをメッシュ状の部材としたことを特徴とする。
【0022】
請求項6に記載の液滴吐出ユニットでは、フィルタをメッシュ状の部材にすることによって、第1室と第2室との間で、液体は流通させ、気泡の流通は阻止することを可能としている。
【0023】
請求項7に記載の液滴吐出ユニットは、請求項5又は6に記載の液滴吐出ユニットであって、前記フィルタと前記光センサとの間隔を、前記第1室内と前記第2室との液面の高さの差が2mm未満となるように設定したことを特徴とする。
【0024】
請求項7に記載の液滴吐出ユニットでは、フィルタと光センサとの間隔が、第1室内と第2室との液面の高さの差が2mm未満となるように設定されており、液体が、毛管力によってフィルタと光センサとの間に保持されることが防止されている。これによって、光センサによるタンク内の液面レベルの誤検知を防止できる。
【0025】
請求項8に記載の液滴吐出装置は、請求項1乃至7の何れか1項に記載の液滴吐出ユニットと、記録媒体を前記ノズルに対向させて搬送する搬送手段と、を有することを特徴とする。
【0026】
請求項8に記載の液滴吐出装置では、記録媒体が、搬送手段によって、液滴吐出ヘッドに対向されて搬送される。この際、液滴吐出ヘッドから液滴が吐出されることで、記録媒体に画像等が形成される。
【0027】
ここで、上述したように、光センサが気泡で覆われることが防止され、光センサによるタンク内の液面レベルの誤検知が防止されているので、液滴吐出ヘッド内の液体に作用する圧力を所望の範囲に維持でき、液滴吐出ヘッドの吐出性能を向上できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は上記構成にしたので、光センサによるタンク内の液面レベルの検知精度が向上すると共に、そのための構成が単純化されコストが低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0030】
図1には、本実施形態のインクジェット記録装置12が示されている。インクジェット記録装置12の筐体14内の下部には給紙トレイ16が備えられており、給紙トレイ16内に積層された用紙Pをピックアップロール18で1枚ずつ取り出すことができる。取り出された用紙Pは、所定の搬送経路22を構成する複数の搬送ローラ対20で搬送される。
【0031】
給紙トレイ16の上方には、駆動ロール24及び従動ロール26に張架された無端状の搬送ベルト28が配置されている。搬送ベルト28の上方には記録ヘッドアレイ30が配置されており、搬送ベルト28の平坦部分28Fに対向している。この対向した領域が、記録ヘッドアレイ30からインク滴が吐出される吐出領域SEとなっている。搬送経路22を搬送された用紙Pは、搬送ベルト28で保持されてこの吐出領域SEに至り、記録ヘッドアレイ30に対向した状態で、記録ヘッドアレイ30から画像情報に応じたインク滴が付着される。
【0032】
記録ヘッドアレイ30は、本実施形態では、有効な記録領域が用紙Pの幅(搬送方向と直交する方向の長さ)以上とされた長尺状とされ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、サイアン(C)、及びブラック(K)の4色それぞれに対応した4つのインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッドという)32が搬送方向に沿って配置されており、フルカラーの画像を記録可能になっている。
【0033】
各記録ヘッド32は、ヘッド駆動回路(図示省略)によって制御される。ヘッド駆動回路は、たとえば、画像情報に応じてインク滴の吐出タイミングや使用するインク吐出口(ノズル)を決め、駆動信号を記録ヘッド32に送る構成である。
【0034】
また、記録ヘッドアレイ30は、搬送方向と直交する方向に不動とされていてもよいが、必要に応じて移動するように構成しておくと、マルチパスによる画像記録で、より解像度の高い画像を記録したり、記録ヘッド32の不具合を記録結果に反映させないようにしたりできる。
【0035】
記録ヘッドアレイ30の両側には、それぞれのヘッドユニット32に対応した4つのメンテナンスユニット34が配置されている。図2に示すように、ヘッドユニット32に対してメンテナンスを行う場合に、記録ヘッドアレイ30が上方へ移動し、搬送ベルト28との間に構成された間隙にメンテナンスユニット34が移動して入り込む。そして、ノズル面32N(図3参照)に対向した状態で、所定のメンテナンス動作(吸引、ワイピング、キャッピング等)を行う。
【0036】
図3に示すように、記録ヘッドアレイ30の上流側には、電源38が接続された帯電ロール36が配置されている。帯電ロール36は、従動ロール26との間で搬送ベルト28及び用紙Pを挟みつつ従動し、用紙Pを搬送ベルト28に押圧する押圧位置と、搬送ベルト28から離間した離間位置との間を移動可能とされている。押圧位置では、接地された従動ロール26との間に所定の電位差が生じるため、用紙Pに電荷を与えて搬送ベルト28に静電吸着させることができる。
【0037】
記録ヘッドアレイ30の下流側には、剥離プレート40が配置されており、用紙Pを搬送ベルト28から剥離させる。剥離された用紙Pは、剥離プレート40の下流側で排出経路44を構成する複数の排出ローラ対42で搬送され、筐体14の上部に設けられた排紙トレイ46に排出される。
【0038】
また、図1、図2に示すように、記録ヘッドアレイ30の上方には、各色のインクを貯留するメインインクタンク54が配置されている。図4に示すように、各メインインクタンク54には、インクジェット記録ヘッドユニット(以下、ヘッドユニットという)10に備えられた記録ヘッド32が接続されている。
【0039】
以下、ヘッドユニット10の構成について説明する。なお、ここでは、1つのヘッドユニット10について説明するが、その他のヘッドユニット10も同様の構成である。
[第1実施形態]
図4に示すように、ヘッドユニット10では、リザーブタンク60が、インク供給路62、インク還流路66によって記録ヘッド32に連通されている。リザーブタンク60の上部にはリザーブタンク60内を大気に開放する大気開放口64が設けられている。
【0040】
また、インク還流路66にはバッファ67と一方向弁68とインク循環用ポンプ70が設けられている。バッファ67は、インクの流れを整流する。また、一方向弁68は、記録ヘッド32からリザーブタンク60へのインクの流れのみを許容する。また、インク循環用ポンプ70は、制御部100によって制御されており、必要に応じて駆動されて記録ヘッド32とリザーブタンク60との間でインクを循環させ、記録ヘッド32内に混入した気泡やゴミ等を記録ヘッド32内から除去する。
【0041】
また、インク還流路66には、バッファ67、インク循環用ポンプ70の両側をバイパスするバイパス路72が接続されている。このバイパス路72には開閉弁74が設けられている。開閉弁74は、制御部100によって制御されており、必要に応じて開閉される。
【0042】
また、リザーブタンク60とメインインクタンク54は、インク供給路76によって連通されている。このインク供給路76には、リザーブタンク補充用ポンプ78が設けられている。このリザーブタンク補充用ポンプ78は、制御部100によって制御されており、必要に応じて駆動されてメインインクタンク54からリザーブタンク60へインクを補充する。
【0043】
ところで、リザーブタンク60は記録ヘッド32のノズルより下側に配設され、リザーブタンク60内のインクレベル(液面)がノズルより低くなっていることから、記録ヘッド32内に充填されたインクには背圧(負圧)が発生している。
【0044】
この背圧には許容範囲があり、この許容範囲を超えると、ノズルから記録ヘッド32内へ気泡が混入する等して記録ヘッド32がノズルからインク滴を良好に吐出することができなくなる。記録ヘッド32内のインクに作用する背圧を許容範囲に維持するためには、リザーブタンク60内のインクレベルを所定レベルに維持する必要がある。
【0045】
このため、リザーブタンク60には、インクレベルセンサ80が設けられており、インクレベルセンサ80の検知結果に応じて、制御部100がリザーブタンク補充用ポンプ78が制御され、メインインクタンク54からリザーブタンク60へのインクの供給が制御される。
【0046】
インクレベルセンサ80は、リザーブタンク60内の所定レベルに光線を通過させて、インクを検知する。制御部100は、インクレベルセンサ80によってインクが検知されなくなると、リザーブタンク補充用ポンプ78を駆動させて、メインインクタンク54からリザーブタンク60へインクを補充させ、インクレベルセンサ80によってインクが検知されると、リザーブタンク補充用ポンプ78を停止させて、メインインクタンク54からリザーブタンク60へインクの補充を停止させる。
【0047】
図5、図6に示すように、リザーブタンク60は、矩形柱状の箱体で、側面60Aの下部に、3個の配管接続口82が設けられている。各配管接続口82にはそれぞれ、インク供給路62、インク還流路66、インク供給路76が接続される。また、大気開放口64が、リザーブタンク60の天面60Cに設けられている。
【0048】
また、インクレベルセンサ80は、リザーブタンク60の側面60Aと対向する側面60Bの所定高さに設けられている。図7(A)、(B)に示すように、インクレベルセンサ80は、センサ部84と、側面60Bに形成され、上面視にて三角形状でリザーブタンク60の内側へ凸のプリズム部60Dとからなる。なお、リザーブタンク60は透明で透光可能である。
【0049】
また、センサ部84は、投光センサ84Aと、受光センサ84Bとを備えている。投光センサ84Aは、プリズム部60Dの片側の斜面に向けて投光する。図7(A)に示すように、投光センサ84Aから投射された光線Lの高さにインクが存在しなければ、該光線Lは、プリズム面で反射されて受光センサ84Bに入射し、図7(B)に示すように、該光線Lの高さにインクが存在すれば、該光線Lは、屈折によりインクに入射する。
【0050】
また、図5、図6に示すように、リザーブタンク60は、仕切り壁90によって、側面60A側で配管接続口82を囲む気泡捕集室60Eと、側面60B側でインクレベルセンサ80を囲むセンサ室60Fとに仕切られている。仕切り壁90は、インクを透過しない材料で形成されている。但し、リザーブタンク60の底面60Gと仕切り壁90の下端部との間には1mm未満の隙間G1が空けられ、天面60Cと仕切り壁90の上端部との間には、1〜3mm程度の隙間G2が空けられており、気泡捕集室60Eとセンサ室60Fとの間では、インクが底側の隙間G1を通って流通し、空気が天井側の隙間G2を通って流通するようになっている。
【0051】
ここで、気泡捕集室60Eとセンサ室60Fとの間でインクを流通させる狭い隙間G1を、リザーブタンク60の最も底側、即ち、インクレベルの最下位置に配置したので、リザーブタンク60と記録ヘッド32との間でインクを循環させる際、又は、メインインクタンク54を交換する際等に気泡捕集室60Eに流入した気泡Hを、気泡捕集室60Eに捕集できる。
【0052】
これによって、プリズム部60Dに気泡Hが付着し、プリズム部60Dが気泡Hで覆われることを防止できるので、インクレベルセンサ80によるリザーブタンク60内のインクレベルの誤検知を防止でき、以って、記録ヘッド32内のインクに作用する背圧を許容範囲に維持できる。なお、本実施形態では、隙間G1を0.9mmとしたところ、インクレベルセンサ80によるリザーブタンク60内のインクレベルの誤検知は発生しなかった。
【0053】
また、リザーブタンク60内に仕切り壁90を設けるという単純な構成によって、目的が達成されており、インクレベルセンサ80の高精度な調整や光量の増加、インクレベルセンサ80の移動機構等が不要となるので、コストを低減できる。
【0054】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0055】
図8に示すように、本実施形態では、リザーブタンク60が、上面視にて半円状の仕切り壁91によって、気泡捕集室60E´とセンサ室60F´とに仕切られている。仕切り壁91は、インクを透過しない材料で形成されている。但し、リザーブタンク60の底面60Gと仕切り壁90の下端部との間には1mm未満の隙間G1が空けられ、天面60Cと仕切り壁91の上端部との間には1〜3mm程度の隙間G2が空けられており、気泡捕集室60E´とセンサ室60F´との間では、インクが底側の隙間G1を通って流通し、空気が天井側の隙間G2を通って流通するようになっている。
【0056】
ここで、図9に示すように、仕切り壁91によってプリズム部60Dが覆われており、仕切り壁91とプリズム部60Dとの間隔が狭くなっているが、この間隔が狭くなるほど、仕切り壁91とプリズム部60Dとの間の毛細管現象による液面の上昇量が大きくなる。
【0057】
また、液面の上昇量による気泡捕集室60E´とセンサ室60F´との液面差が常に一定であれば、その点を考慮した位置にインクレベルセンサ80を設置すれば良い。しかし、毛細管現象による液面上昇量は、材料や環境の変化により変動してしまう。
【0058】
これらの変動が発生しても、液面の検出に影響を及ぼさない液面差を調べたところ、液面差が2mm未満となる範囲で、影響が小さくなることがわかった。このような理由から、本実施形態においては、毛細管力による液面差が2mm未満となるように、仕切り壁91とプリズム部60Dとの間隔を設定した。しかし、その他の付加条件により安定した液面差が得られるのであれば、もっと大きな液面差が出来るような仕切り壁91とプリズム60Dとの間隔に設定することも可能である。
【0059】
この液面の上昇量hを、仕切り壁91とプリズム部60Dを平面と仮定して考察したところ、下記(1)式で表される。
【0060】
h=(2×Γ×cosθ)/(D×ρ×g)…(1)
但し、Γ:表面張力
θ:接触角
D:プリズム部60Dの平面と仕切り壁91との最大距離
ρ:密度
g:重力加速度
本実施形態で用いているインクの物性値(Γ=0.030N/m、ρ=1000kg/m3、θ=75°)、液面の上昇量の上限値(h=2)を上記(1)式に代入したところ、液面の上昇量hを2mm以下にするための、プリズム部60Dの平面と仕切り壁91との最大距離Dが、0.8mm以上であることがわかった。
【0061】
そこで、本実施形態では、計算の誤差等を考慮して、プリズム部60Dの平面と仕切り壁91との最大距離Dを、2.5mm以上としたこところ、仕切り壁91とプリズム部60Dとの間の毛細管現象による影響でインクの液面が誤検出されることは起きなかった。
【0062】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、第1、第2実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0063】
図10に示すように、本実施形態では、リザーブタンク60の中央部に、上面視にて円状の仕切り壁93が配設され、この仕切り壁93の内壁に、インクレベルセンサ80が支持されており、リザーブタンク60が、仕切り壁93によって、中央部のセンサ室60F´´と、センサ室60F´´の周囲の気泡捕集室60E´´とに仕切られている。仕切り壁93は、インクを透過しない材料で形成されている。但し、リザーブタンク60の底面60Gと仕切り壁93の下端部との間には1mm未満の隙間G1が空けられており、気泡捕集室60E´´とセンサ室60F´´との間では、インクが底側の隙間G1を通って流通するようになっている。また、仕切り壁93の上端部の一部が1〜3mm程度切欠きされており、気泡捕集室60E´´とセンサ室60F´´との間では、空気が仕切り壁93の切欠き部93Aを通って流通するようになっている。
【0064】
ここで、仕切り壁93によってプリズム部60Dが覆われており、仕切り壁93とプリズム部60Dとの間隔が狭くなっているが、第2実施形態と同様、仕切り壁93とプリズム部60Dの平面との最大距離を2.5mm以上とすることで、仕切り壁93とプリズム部60Dとの間の毛細管現象によるインクの液面の上昇を許容できるレベルに維持している。
【0065】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。なお、第1乃至第3実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0066】
図11に示すように、本実施形態では、インクレベルの上限高さを検知する上限レベルセンサ94と、インクレベルの下限高さを検知する下限レベルセンサ96とが設けられている。上限レベルセンサ94と下限レベルセンサ96は、第1実施形態のインクレベルセンサ80と同様の構成である。
【0067】
制御部100(図4参照)は、上限レベルセンサ94によってインクが検知されると、リザーブタンク補充用ポンプ78を停止させて、メインインクタンク54からリザーブタンク60へのインクの補充を停止させ、下限インクレベルセンサ96によってインクが検知されなくなると、リザーブタンク補充用ポンプ78を駆動させて、メインインクタンク54からリザーブタンク60へインクを補充させる。
【0068】
また、リザーブタンク60が、仕切り壁92によって、気泡捕集室60Eとセンサ室60Fとに仕切られている。仕切り壁92は、インクを透過しない材料で形成されている。但し、天面60Cと仕切り壁92の上端部との間には、1〜3mm程度の隙間G2が空けられており、気泡捕集室60Eとセンサ室60Fとの間で、空気がこの隙間G2を通って流通するようになっている。
【0069】
また、仕切り壁92には、スリットSが形成されており、気泡捕集室60Eとセンサ室60Fとの間で、インクがスリットSを通って流通するようになっている。
【0070】
ここで、スリットSは、下限インクレベルセンサ96のインク検知レベルより底側、即ち、インクレベルの最下位置より低い高さに配置されているので、気泡捕集室60Eに流入した気泡Hを、気泡捕集室60Eに捕集できる。従って、上限インクレベルセンサ94、下限インクレベルセンサ96によるリザーブタンク60内のインクレベルの誤検知を防止でき、以って、記録ヘッド32内のインクに作用する背圧を許容範囲に維持できる。
【0071】
次に、本発明の第5実施形態について説明する。なお、第1乃至第4実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0072】
図12に示すように、本実施形態では、リザーブタンク60が、フィルタ98によって、気泡捕集室60Eとセンサ室60Fとに仕切られている。フィルタ98は、隙間が空いたメッシュ状の板材となっており、気泡捕集室60Eとセンサ室60Fとの間では、インクと空気は自在に流通するが、直径が50〜100μm程度である気泡Hが流通できないようになっている。
【0073】
このため、リザーブタンク60と記録ヘッド32との間でインクを循環させる際、又は、メインインクタンク54を交換する際等に気泡捕集室60Eに流入した気泡Hを、気泡捕集室60Eに捕集できる。
【0074】
これによって、プリズム部60Dが気泡Hで覆われることを防止できるので、インクレベルセンサ80によるリザーブタンク60内のインクレベルの誤検知を防止でき、以って、記録ヘッド32内のインクに作用する背圧を許容範囲に維持できる。なお、本実施形態では、フィルタ98の隙間を、44μmにしたところ、インクレベルセンサ80によるリザーブタンク60内のインクレベルの誤検知は発生しなかった。
【0075】
次に、本発明の第6実施形態について説明する。なお、第1乃至第5実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0076】
図13に示すように、本実施形態では、リザーブタンク60が、上面視にて半円状のフィルタ102によって、気泡捕集室60E´とセンサ室60F´とに仕切られている。フィルタ102は、44μmの隙間が空いたメッシュ状の板材となっており、気泡捕集室60E´とセンサ室60F´との間では、インクと空気は自在に流通するが、気泡Hが流通できないようになっている。
【0077】
ここで、フィルタ102によってプリズム部60Dが覆われており、フィルタ102とプリズム部60Dとの間隔が狭くなっているが、第2、第3実施形態と同様、フィルタ102とプリズム部60Dの平面との最大距離が、2.5mm以上とされており、インクがフィルタ102とプリズム部60Dとの間の毛細管現象によってフィルタ102とプリズム部60Dとの間に保持されることが防止されている。
【0078】
これによって、インクレベルセンサ80によるリザーブタンク60内のインクレベルの誤検知を防止でき、以って、記録ヘッド32内のインクに作用する背圧を許容範囲に維持できる。
【0079】
次に、本発明の第7実施形態について説明する。なお、第1乃至第6実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0080】
図14に示すように、本実施形態では、リザーブタンク60の中央部に、上面視にて円状のフィルタ104が配設され、このフィルタ104の内壁に、インクレベルセンサ80が支持されており、リザーブタンク60が、フィルタ104によって、中央部のセンサ室60F´´と、センサ室60F´´の周囲の気泡捕集室60E´´とに仕切られている。
【0081】
仕切り壁104は、44μmの隙間が空いたメッシュ状の板材となっており、気泡捕集室60E´´とセンサ室60F´´との間では、インクと空気は自在に流通するが、気泡Hが流通できないようになっている。
【0082】
ここで、フィルタ104によってプリズム部60Dが覆われており、フィルタ104とプリズム部60Dとの間隔が狭くなっているが、第2、第3、第6実施形態と同様、フィルタ104とプリズム部60Dの平面との最大距離が、2.5mm以上とされており、インクがフィルタ104とプリズム部60Dとの間の毛細管現象によってフィルタ104とプリズム部60Dとの間に保持されることが防止されている。
【0083】
これによって、インクレベルセンサ80によるリザーブタンク60内のインクレベルの誤検知を防止でき、以って、記録ヘッド32内のインクに作用する背圧を許容範囲に維持できる。
【0084】
次に、本発明の第8実施形態について説明する。なお、第1乃至第7実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0085】
図15に示すように、本実施形態では、第1実施形態のインクレベルセンサ80に変えて、インクレベルセンサ110が設けられている。このインクレベルセンサ110のセンサ部112は、反射型センサで、鉛直下方へ光線を投射して液面で反射された光線を受光し、受光した光量が所定範囲に入ると、即ち、液面が所定高さまで上昇すると、検出信号を出力する。
【0086】
ここで、本実施形態においても、センサ室60Fへの気泡Hの侵入が防止されており、光線が気泡Hで反射されることが防止されているので、インクレベルセンサ110による液面の誤検出を防止できる。
【0087】
なお、第5乃至第7実施形態では、「フィルタ」をメッシュ状の部材としたが、フィルタには、液体を通過させ、気泡の通過を阻止する隙間、孔が形成されている部材であれば広く含まれる。従って、フィルタには、スポンジ等の多孔質体や、多数の小孔が形成されたパンチング板等が含まれる。
【0088】
また、第1乃至第8実施形態では、インクジェット記録装置を例に取って本発明を説明したが、本発明の液滴吐出ヘッドは、インクジェット記録ヘッドに限らず、高分子フィルムやガラス上に着色インクを吐出して行うディスプレイ用のカラーフィルターの作製、溶融状態のハンダを基板上に吐出して行う部品実装用のバンプの形成、有機EL溶液を基板上に吐出させて行うELディスプレイパネルの形成、溶融状態のハンダを基板上に吐出して行う電気実装用のバンプの形成など、様々な工業的用途を対象とした液滴吐出ヘッド一般に対して、適用可能である。
【0089】
また、本発明の液滴吐出装置において画像記録の対象となる「記録媒体」には、液滴吐出ヘッドが液滴を吐出する対象物であれば広く含まれる。したがって、記録媒体には、記録用紙やOHPシートなどが含まれるのはもちろんであるが、これら以外にも、たとえば、配線パターン等が形成される基板などが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施形態のインクジェット記録装置の概略を示す図である。
【図2】本発明の実施形態のインクジェット記録装置の概略を示す図である。
【図3】本発明の実施形態のインクジェット記録装置の印字部の概略を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態のインクジェット記録ヘッドユニットを示す図である。
【図5】図4のインクジェット記録ヘッドユニットに備えられたリザーブタンクを示す斜視図である。
【図6】図5のリザーブタンクを示す断面図である。
【図7】(A)、(B)は、図4、図5のリザーブタンクに備えられた光センサを示す断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態のインクジェット記録ヘッドユニットに備えられたリザーブタンクを示す斜視図である。
【図9】図8のリザーブタンクに備えられた光センサと仕切り壁とを示す断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態のインクジェット記録ヘッドユニットに備えられたリザーブタンクを示す斜視図である。
【図11】本発明の第4実施形態のインクジェット記録ヘッドユニットに備えられたリザーブタンクを示す断面図である。
【図12】本発明の第5実施形態のインクジェット記録ヘッドユニットに備えられたリザーブタンクを示す斜視図である。
【図13】本発明の第6実施形態のインクジェット記録ヘッドユニットに備えられたリザーブタンクを示す斜視図である。
【図14】本発明の第7実施形態のインクジェット記録ヘッドユニットに備えられたリザーブタンクを示す斜視図である。
【図15】本発明の第8実施形態のインクジェット記録ヘッドユニットに備えられたリザーブタンクを示す断面図である。
【符号の説明】
【0091】
10 インクジェット記録ヘッドユニット(液滴吐出ユニット)
12 インクジェット記録装置(液滴吐出装置)
28 搬送ベルト(搬送手段)
32 インクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)
60 リザーブタンク(タンク)
60E 気泡捕集室(第1室)
60E´ 気泡捕集室(第1室)
60E´´ 気泡捕集室(第1室)
60F センサ室(第2室)
60F´ センサ室(第2室)
60F´´ センサ室(第2室)
80 インクレベルセンサ(光センサ)
82 配管接続口(液体の出入り口)
90 仕切り壁
91 仕切り壁
92 仕切り壁
93 仕切り壁
94 上限インクレベルセンサ(光センサ)
96 下限インクレベルセンサ(光センサ)
98 フィルタ
102 フィルタ
104 フィルタ
110 インクレベルセンサ(光センサ)
H 気泡
G1 隙間
P 用紙(記録媒体)
S スリット(貫通孔)
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出ユニット、及びこの液滴吐出ユニットを備える液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルからインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド等の液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出ユニットとして、メインタンクに貯留された液体がリザーブタンクに供給されて一旦貯留されてから液滴吐出ヘッドへ供給される方式のものがある。この方式の液滴吐出ユニットでは、リザーブタンク内の液面をノズルよりも低くし、リバー部タンクを大気に開放することで、液滴吐出ヘッド内の液体に背圧(負圧)を発生させている。また、リザーブタンク内の液面レベルを光センサによって検知し、検知結果に応じてリザーブタンクへの液体の供給を制御して、リザーブタンク内の液面とノズルとの高低差を所定範囲に維持することで、液滴吐出ヘッド内の液体の背圧を所定範囲に維持し、液滴の吐出性能を安定させようとしている。
【0003】
ここで、リザーブタンク内の液面には、メインタンクの交換時等に液体流路内に進入した気泡が浮いており、この気泡が光センサのプリズム等の反射部材の表面に付着する場合がある。この場合には、液体と反射部材との間に気泡の層が出来、液体の有無に関わらず、光線が反射部材で反射してしまう。これによって、リザーブタンク内の液面レベルが誤検知されてしまうので、種々の対策が考案されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
【0004】
特許文献1には、投光センサから投射された光線を受光センサへ反射するプリズムの光線が当たる部分を、気泡が進入しないような小径の凹部とすることで、気泡の影響を受けない液面レベルの検知を可能にした構成が記載されている。しかし、プリズムに形成された凹部は微小で、凹部によって反射される光量が微小になるので、光センサの検知精度が得られにくくなる。この構成において、十分な検知精度を得るためには、投光センサ、受光センサの精密な位置合せ、投光センサの光量の増加等の措置が必要となり、コストアップに繋がる。また、特許文献1には、プリズムの表面に撥水性を持たせて気泡を破裂させると記載されているが、実験の結果、そのようなことは起きなかった。
【0005】
また、特許文献2には、インクカートリッジ内のインクの液面を高粘度の液体で覆うことで、気泡等によるインクの液面の変動を抑制する構成が記載されている。しかし、カートリッジ内に大量の気泡が進入した場合、しばらくの間、インクの液面と高粘度の液体との間に気泡の層が形成され、高粘度の液体の液面のレベルが上がってしまうので、インクの液面レベルが誤って検知される。
【0006】
また、特許文献3には、プリズムを多面体とし、投光センサと受光センサとを移動させながら複数回、インクの液面レベルを検知する構成が記載されている。この構成は、プリズムの表面に付着している気泡が少量の場合には有効である。しかし、プリズムの表面全体に気泡が付着しているような場合には、全く効果が無い。また、投光センサと受光センサとを移動させる機構が必要となるので、コストアップに繋がる。
【特許文献1】特開2004−9716号公報
【特許文献2】特開2004−276460号公報
【特許文献3】特許2003−300334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事実を考慮してなされたものであり、光センサによるタンク内の液面レベルの誤検知を防止すると共に、そのための構成を単純化してコストを低減する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の液滴吐出ユニットは、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出ヘッドへ供給される液体を貯留するタンクと、前記タンク内の所定高さまで上昇した液面を検出する光センサと、液体の出入り口を囲む第1室と、前記光センサを囲む第2室との2室に前記タンクを仕切る壁であり、前記タンク内の液面の最低レベル以下の高さで、液体を通過させる仕切り壁と、を有することを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の液滴吐出ユニットでは、液体がタンクに一旦貯留されてから液滴吐出ヘッドに供給され、液滴吐出ヘッドによって液滴が吐出される。タンク内の所定高さには、光センサが設置されており、この所定高さまで上昇したタンク内の液面が、光センサによって検知される。
【0010】
ここで、タンクは、仕切り壁によって、液体の出入り口を囲む第1室と、光センサを囲む第2室との2室に仕切られており、第1室と第2室との間での液体の流通が、タンク内の液面の最低レベル以下の高さでのみ可能となっている。これによって、液体の出入り口から第1室に侵入した気泡を第1室に捕集でき、光センサが気泡で覆われることを防止できるので、光センサによるタンク内の液面レベルの誤検知を防止できる。従って、液滴吐出ヘッド内の液体に作用する圧力を所望の範囲に維持できるので、液滴吐出ヘッドの吐出性能を向上できる。
【0011】
また、タンク内に仕切り壁を設けるという単純な構成によって、目的が達成されており、光センサの高精度な調整や光量の増加、光センサの移動機構等が不要となるので、コストを低減できる。
【0012】
請求項2に記載の液滴吐出ユニットは、請求項1に記載の液滴吐出ユニットであって、前記仕切り壁と前記タンクの底面との間に隙間を空けたことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の液滴吐出ユニットでは、仕切り壁とタンクの底面との間に隙間が空けられており、第1室と第2室との間の液体の流通が、タンク内の液面の最低レベルの高さでのみ可能となっている。これによって、液体の出入り口から第1室に侵入した気泡を第1室に捕集でき、光センサが気泡で覆われることを防止できるので、光センサによるタンク内の液面レベルの誤検知を防止でき、以って、液滴吐出ヘッド内の液体に作用する圧力を所望の範囲に維持できる。
【0014】
請求項3に記載の液滴吐出ユニットは、請求項1に記載の液滴吐出ユニットであって、前記仕切り壁の液面の最低レベル以下の高さに孔を空けたことを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の液滴吐出ユニットでは、仕切り壁の液面の最低レベル以下の高さに孔が空けられており、第1室と第2室との間の液体の流通が、タンク内の液面の最低レベル以下の高さでのみ可能となっている。これによって、液体の出入り口から第1室に侵入した気泡を第1室に捕集でき、光センサが気泡で覆われることを防止できるので、光センサによるタンク内の液面レベルの誤検知を防止でき、以って、液滴吐出ヘッド内の液体に作用する圧力を所望の範囲に維持できる。
【0016】
請求項4に記載の液滴吐出ユニットは、請求項1乃至3の何れか1項に記載の液滴吐出ユニットであって、前記仕切り壁と前記光センサとの間隔を、前記第1室内と前記第2室との液面の高さの差が2mm未満となるように設定したことを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の液滴吐出ユニットでは、仕切り壁と光センサとの間隔が、第1室内と第2室との液面の高さの差が2mm未満となるように設定されており、液体が、毛管力によって仕切り壁と光センサとの間に保持されることが防止されている。これによって、光センサによるタンク内の液面レベルの誤検知を防止できる。
【0018】
請求項5に記載の液滴吐出ユニットは、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出ヘッドへ供給される液体を貯留するタンクと、前記タンク内の所定高さまで上昇した液面を検出する光センサと、液体の出入り口を囲む第1室と、前記光センサを囲む第2室との2室に前記タンクを仕切り、液体を通過させ、且つ、気泡の通過を阻止するフィルタと、を有することを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の液滴吐出ユニットでは、タンクが、フィルタによって、液体の出入り口を囲む第1室と、光センサを囲む第2室との2室に仕切られている。このフィルタは、液体は通過させるが気泡の通過は阻止する。
【0020】
これによって、液体の出入り口から第1室に侵入した気泡を第1室に捕集でき、光センサが気泡で覆われることを防止できるので、光センサによるタンク内の液面レベルの誤検知を防止でき、以って、液滴吐出ヘッド内の液体に作用する圧力を所望の範囲に維持できる。
【0021】
請求項6に記載の液滴吐出ユニットは、請求項5に記載の液滴吐出ユニットであって、前記フィルタをメッシュ状の部材としたことを特徴とする。
【0022】
請求項6に記載の液滴吐出ユニットでは、フィルタをメッシュ状の部材にすることによって、第1室と第2室との間で、液体は流通させ、気泡の流通は阻止することを可能としている。
【0023】
請求項7に記載の液滴吐出ユニットは、請求項5又は6に記載の液滴吐出ユニットであって、前記フィルタと前記光センサとの間隔を、前記第1室内と前記第2室との液面の高さの差が2mm未満となるように設定したことを特徴とする。
【0024】
請求項7に記載の液滴吐出ユニットでは、フィルタと光センサとの間隔が、第1室内と第2室との液面の高さの差が2mm未満となるように設定されており、液体が、毛管力によってフィルタと光センサとの間に保持されることが防止されている。これによって、光センサによるタンク内の液面レベルの誤検知を防止できる。
【0025】
請求項8に記載の液滴吐出装置は、請求項1乃至7の何れか1項に記載の液滴吐出ユニットと、記録媒体を前記ノズルに対向させて搬送する搬送手段と、を有することを特徴とする。
【0026】
請求項8に記載の液滴吐出装置では、記録媒体が、搬送手段によって、液滴吐出ヘッドに対向されて搬送される。この際、液滴吐出ヘッドから液滴が吐出されることで、記録媒体に画像等が形成される。
【0027】
ここで、上述したように、光センサが気泡で覆われることが防止され、光センサによるタンク内の液面レベルの誤検知が防止されているので、液滴吐出ヘッド内の液体に作用する圧力を所望の範囲に維持でき、液滴吐出ヘッドの吐出性能を向上できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は上記構成にしたので、光センサによるタンク内の液面レベルの検知精度が向上すると共に、そのための構成が単純化されコストが低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0030】
図1には、本実施形態のインクジェット記録装置12が示されている。インクジェット記録装置12の筐体14内の下部には給紙トレイ16が備えられており、給紙トレイ16内に積層された用紙Pをピックアップロール18で1枚ずつ取り出すことができる。取り出された用紙Pは、所定の搬送経路22を構成する複数の搬送ローラ対20で搬送される。
【0031】
給紙トレイ16の上方には、駆動ロール24及び従動ロール26に張架された無端状の搬送ベルト28が配置されている。搬送ベルト28の上方には記録ヘッドアレイ30が配置されており、搬送ベルト28の平坦部分28Fに対向している。この対向した領域が、記録ヘッドアレイ30からインク滴が吐出される吐出領域SEとなっている。搬送経路22を搬送された用紙Pは、搬送ベルト28で保持されてこの吐出領域SEに至り、記録ヘッドアレイ30に対向した状態で、記録ヘッドアレイ30から画像情報に応じたインク滴が付着される。
【0032】
記録ヘッドアレイ30は、本実施形態では、有効な記録領域が用紙Pの幅(搬送方向と直交する方向の長さ)以上とされた長尺状とされ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、サイアン(C)、及びブラック(K)の4色それぞれに対応した4つのインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッドという)32が搬送方向に沿って配置されており、フルカラーの画像を記録可能になっている。
【0033】
各記録ヘッド32は、ヘッド駆動回路(図示省略)によって制御される。ヘッド駆動回路は、たとえば、画像情報に応じてインク滴の吐出タイミングや使用するインク吐出口(ノズル)を決め、駆動信号を記録ヘッド32に送る構成である。
【0034】
また、記録ヘッドアレイ30は、搬送方向と直交する方向に不動とされていてもよいが、必要に応じて移動するように構成しておくと、マルチパスによる画像記録で、より解像度の高い画像を記録したり、記録ヘッド32の不具合を記録結果に反映させないようにしたりできる。
【0035】
記録ヘッドアレイ30の両側には、それぞれのヘッドユニット32に対応した4つのメンテナンスユニット34が配置されている。図2に示すように、ヘッドユニット32に対してメンテナンスを行う場合に、記録ヘッドアレイ30が上方へ移動し、搬送ベルト28との間に構成された間隙にメンテナンスユニット34が移動して入り込む。そして、ノズル面32N(図3参照)に対向した状態で、所定のメンテナンス動作(吸引、ワイピング、キャッピング等)を行う。
【0036】
図3に示すように、記録ヘッドアレイ30の上流側には、電源38が接続された帯電ロール36が配置されている。帯電ロール36は、従動ロール26との間で搬送ベルト28及び用紙Pを挟みつつ従動し、用紙Pを搬送ベルト28に押圧する押圧位置と、搬送ベルト28から離間した離間位置との間を移動可能とされている。押圧位置では、接地された従動ロール26との間に所定の電位差が生じるため、用紙Pに電荷を与えて搬送ベルト28に静電吸着させることができる。
【0037】
記録ヘッドアレイ30の下流側には、剥離プレート40が配置されており、用紙Pを搬送ベルト28から剥離させる。剥離された用紙Pは、剥離プレート40の下流側で排出経路44を構成する複数の排出ローラ対42で搬送され、筐体14の上部に設けられた排紙トレイ46に排出される。
【0038】
また、図1、図2に示すように、記録ヘッドアレイ30の上方には、各色のインクを貯留するメインインクタンク54が配置されている。図4に示すように、各メインインクタンク54には、インクジェット記録ヘッドユニット(以下、ヘッドユニットという)10に備えられた記録ヘッド32が接続されている。
【0039】
以下、ヘッドユニット10の構成について説明する。なお、ここでは、1つのヘッドユニット10について説明するが、その他のヘッドユニット10も同様の構成である。
[第1実施形態]
図4に示すように、ヘッドユニット10では、リザーブタンク60が、インク供給路62、インク還流路66によって記録ヘッド32に連通されている。リザーブタンク60の上部にはリザーブタンク60内を大気に開放する大気開放口64が設けられている。
【0040】
また、インク還流路66にはバッファ67と一方向弁68とインク循環用ポンプ70が設けられている。バッファ67は、インクの流れを整流する。また、一方向弁68は、記録ヘッド32からリザーブタンク60へのインクの流れのみを許容する。また、インク循環用ポンプ70は、制御部100によって制御されており、必要に応じて駆動されて記録ヘッド32とリザーブタンク60との間でインクを循環させ、記録ヘッド32内に混入した気泡やゴミ等を記録ヘッド32内から除去する。
【0041】
また、インク還流路66には、バッファ67、インク循環用ポンプ70の両側をバイパスするバイパス路72が接続されている。このバイパス路72には開閉弁74が設けられている。開閉弁74は、制御部100によって制御されており、必要に応じて開閉される。
【0042】
また、リザーブタンク60とメインインクタンク54は、インク供給路76によって連通されている。このインク供給路76には、リザーブタンク補充用ポンプ78が設けられている。このリザーブタンク補充用ポンプ78は、制御部100によって制御されており、必要に応じて駆動されてメインインクタンク54からリザーブタンク60へインクを補充する。
【0043】
ところで、リザーブタンク60は記録ヘッド32のノズルより下側に配設され、リザーブタンク60内のインクレベル(液面)がノズルより低くなっていることから、記録ヘッド32内に充填されたインクには背圧(負圧)が発生している。
【0044】
この背圧には許容範囲があり、この許容範囲を超えると、ノズルから記録ヘッド32内へ気泡が混入する等して記録ヘッド32がノズルからインク滴を良好に吐出することができなくなる。記録ヘッド32内のインクに作用する背圧を許容範囲に維持するためには、リザーブタンク60内のインクレベルを所定レベルに維持する必要がある。
【0045】
このため、リザーブタンク60には、インクレベルセンサ80が設けられており、インクレベルセンサ80の検知結果に応じて、制御部100がリザーブタンク補充用ポンプ78が制御され、メインインクタンク54からリザーブタンク60へのインクの供給が制御される。
【0046】
インクレベルセンサ80は、リザーブタンク60内の所定レベルに光線を通過させて、インクを検知する。制御部100は、インクレベルセンサ80によってインクが検知されなくなると、リザーブタンク補充用ポンプ78を駆動させて、メインインクタンク54からリザーブタンク60へインクを補充させ、インクレベルセンサ80によってインクが検知されると、リザーブタンク補充用ポンプ78を停止させて、メインインクタンク54からリザーブタンク60へインクの補充を停止させる。
【0047】
図5、図6に示すように、リザーブタンク60は、矩形柱状の箱体で、側面60Aの下部に、3個の配管接続口82が設けられている。各配管接続口82にはそれぞれ、インク供給路62、インク還流路66、インク供給路76が接続される。また、大気開放口64が、リザーブタンク60の天面60Cに設けられている。
【0048】
また、インクレベルセンサ80は、リザーブタンク60の側面60Aと対向する側面60Bの所定高さに設けられている。図7(A)、(B)に示すように、インクレベルセンサ80は、センサ部84と、側面60Bに形成され、上面視にて三角形状でリザーブタンク60の内側へ凸のプリズム部60Dとからなる。なお、リザーブタンク60は透明で透光可能である。
【0049】
また、センサ部84は、投光センサ84Aと、受光センサ84Bとを備えている。投光センサ84Aは、プリズム部60Dの片側の斜面に向けて投光する。図7(A)に示すように、投光センサ84Aから投射された光線Lの高さにインクが存在しなければ、該光線Lは、プリズム面で反射されて受光センサ84Bに入射し、図7(B)に示すように、該光線Lの高さにインクが存在すれば、該光線Lは、屈折によりインクに入射する。
【0050】
また、図5、図6に示すように、リザーブタンク60は、仕切り壁90によって、側面60A側で配管接続口82を囲む気泡捕集室60Eと、側面60B側でインクレベルセンサ80を囲むセンサ室60Fとに仕切られている。仕切り壁90は、インクを透過しない材料で形成されている。但し、リザーブタンク60の底面60Gと仕切り壁90の下端部との間には1mm未満の隙間G1が空けられ、天面60Cと仕切り壁90の上端部との間には、1〜3mm程度の隙間G2が空けられており、気泡捕集室60Eとセンサ室60Fとの間では、インクが底側の隙間G1を通って流通し、空気が天井側の隙間G2を通って流通するようになっている。
【0051】
ここで、気泡捕集室60Eとセンサ室60Fとの間でインクを流通させる狭い隙間G1を、リザーブタンク60の最も底側、即ち、インクレベルの最下位置に配置したので、リザーブタンク60と記録ヘッド32との間でインクを循環させる際、又は、メインインクタンク54を交換する際等に気泡捕集室60Eに流入した気泡Hを、気泡捕集室60Eに捕集できる。
【0052】
これによって、プリズム部60Dに気泡Hが付着し、プリズム部60Dが気泡Hで覆われることを防止できるので、インクレベルセンサ80によるリザーブタンク60内のインクレベルの誤検知を防止でき、以って、記録ヘッド32内のインクに作用する背圧を許容範囲に維持できる。なお、本実施形態では、隙間G1を0.9mmとしたところ、インクレベルセンサ80によるリザーブタンク60内のインクレベルの誤検知は発生しなかった。
【0053】
また、リザーブタンク60内に仕切り壁90を設けるという単純な構成によって、目的が達成されており、インクレベルセンサ80の高精度な調整や光量の増加、インクレベルセンサ80の移動機構等が不要となるので、コストを低減できる。
【0054】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0055】
図8に示すように、本実施形態では、リザーブタンク60が、上面視にて半円状の仕切り壁91によって、気泡捕集室60E´とセンサ室60F´とに仕切られている。仕切り壁91は、インクを透過しない材料で形成されている。但し、リザーブタンク60の底面60Gと仕切り壁90の下端部との間には1mm未満の隙間G1が空けられ、天面60Cと仕切り壁91の上端部との間には1〜3mm程度の隙間G2が空けられており、気泡捕集室60E´とセンサ室60F´との間では、インクが底側の隙間G1を通って流通し、空気が天井側の隙間G2を通って流通するようになっている。
【0056】
ここで、図9に示すように、仕切り壁91によってプリズム部60Dが覆われており、仕切り壁91とプリズム部60Dとの間隔が狭くなっているが、この間隔が狭くなるほど、仕切り壁91とプリズム部60Dとの間の毛細管現象による液面の上昇量が大きくなる。
【0057】
また、液面の上昇量による気泡捕集室60E´とセンサ室60F´との液面差が常に一定であれば、その点を考慮した位置にインクレベルセンサ80を設置すれば良い。しかし、毛細管現象による液面上昇量は、材料や環境の変化により変動してしまう。
【0058】
これらの変動が発生しても、液面の検出に影響を及ぼさない液面差を調べたところ、液面差が2mm未満となる範囲で、影響が小さくなることがわかった。このような理由から、本実施形態においては、毛細管力による液面差が2mm未満となるように、仕切り壁91とプリズム部60Dとの間隔を設定した。しかし、その他の付加条件により安定した液面差が得られるのであれば、もっと大きな液面差が出来るような仕切り壁91とプリズム60Dとの間隔に設定することも可能である。
【0059】
この液面の上昇量hを、仕切り壁91とプリズム部60Dを平面と仮定して考察したところ、下記(1)式で表される。
【0060】
h=(2×Γ×cosθ)/(D×ρ×g)…(1)
但し、Γ:表面張力
θ:接触角
D:プリズム部60Dの平面と仕切り壁91との最大距離
ρ:密度
g:重力加速度
本実施形態で用いているインクの物性値(Γ=0.030N/m、ρ=1000kg/m3、θ=75°)、液面の上昇量の上限値(h=2)を上記(1)式に代入したところ、液面の上昇量hを2mm以下にするための、プリズム部60Dの平面と仕切り壁91との最大距離Dが、0.8mm以上であることがわかった。
【0061】
そこで、本実施形態では、計算の誤差等を考慮して、プリズム部60Dの平面と仕切り壁91との最大距離Dを、2.5mm以上としたこところ、仕切り壁91とプリズム部60Dとの間の毛細管現象による影響でインクの液面が誤検出されることは起きなかった。
【0062】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、第1、第2実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0063】
図10に示すように、本実施形態では、リザーブタンク60の中央部に、上面視にて円状の仕切り壁93が配設され、この仕切り壁93の内壁に、インクレベルセンサ80が支持されており、リザーブタンク60が、仕切り壁93によって、中央部のセンサ室60F´´と、センサ室60F´´の周囲の気泡捕集室60E´´とに仕切られている。仕切り壁93は、インクを透過しない材料で形成されている。但し、リザーブタンク60の底面60Gと仕切り壁93の下端部との間には1mm未満の隙間G1が空けられており、気泡捕集室60E´´とセンサ室60F´´との間では、インクが底側の隙間G1を通って流通するようになっている。また、仕切り壁93の上端部の一部が1〜3mm程度切欠きされており、気泡捕集室60E´´とセンサ室60F´´との間では、空気が仕切り壁93の切欠き部93Aを通って流通するようになっている。
【0064】
ここで、仕切り壁93によってプリズム部60Dが覆われており、仕切り壁93とプリズム部60Dとの間隔が狭くなっているが、第2実施形態と同様、仕切り壁93とプリズム部60Dの平面との最大距離を2.5mm以上とすることで、仕切り壁93とプリズム部60Dとの間の毛細管現象によるインクの液面の上昇を許容できるレベルに維持している。
【0065】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。なお、第1乃至第3実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0066】
図11に示すように、本実施形態では、インクレベルの上限高さを検知する上限レベルセンサ94と、インクレベルの下限高さを検知する下限レベルセンサ96とが設けられている。上限レベルセンサ94と下限レベルセンサ96は、第1実施形態のインクレベルセンサ80と同様の構成である。
【0067】
制御部100(図4参照)は、上限レベルセンサ94によってインクが検知されると、リザーブタンク補充用ポンプ78を停止させて、メインインクタンク54からリザーブタンク60へのインクの補充を停止させ、下限インクレベルセンサ96によってインクが検知されなくなると、リザーブタンク補充用ポンプ78を駆動させて、メインインクタンク54からリザーブタンク60へインクを補充させる。
【0068】
また、リザーブタンク60が、仕切り壁92によって、気泡捕集室60Eとセンサ室60Fとに仕切られている。仕切り壁92は、インクを透過しない材料で形成されている。但し、天面60Cと仕切り壁92の上端部との間には、1〜3mm程度の隙間G2が空けられており、気泡捕集室60Eとセンサ室60Fとの間で、空気がこの隙間G2を通って流通するようになっている。
【0069】
また、仕切り壁92には、スリットSが形成されており、気泡捕集室60Eとセンサ室60Fとの間で、インクがスリットSを通って流通するようになっている。
【0070】
ここで、スリットSは、下限インクレベルセンサ96のインク検知レベルより底側、即ち、インクレベルの最下位置より低い高さに配置されているので、気泡捕集室60Eに流入した気泡Hを、気泡捕集室60Eに捕集できる。従って、上限インクレベルセンサ94、下限インクレベルセンサ96によるリザーブタンク60内のインクレベルの誤検知を防止でき、以って、記録ヘッド32内のインクに作用する背圧を許容範囲に維持できる。
【0071】
次に、本発明の第5実施形態について説明する。なお、第1乃至第4実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0072】
図12に示すように、本実施形態では、リザーブタンク60が、フィルタ98によって、気泡捕集室60Eとセンサ室60Fとに仕切られている。フィルタ98は、隙間が空いたメッシュ状の板材となっており、気泡捕集室60Eとセンサ室60Fとの間では、インクと空気は自在に流通するが、直径が50〜100μm程度である気泡Hが流通できないようになっている。
【0073】
このため、リザーブタンク60と記録ヘッド32との間でインクを循環させる際、又は、メインインクタンク54を交換する際等に気泡捕集室60Eに流入した気泡Hを、気泡捕集室60Eに捕集できる。
【0074】
これによって、プリズム部60Dが気泡Hで覆われることを防止できるので、インクレベルセンサ80によるリザーブタンク60内のインクレベルの誤検知を防止でき、以って、記録ヘッド32内のインクに作用する背圧を許容範囲に維持できる。なお、本実施形態では、フィルタ98の隙間を、44μmにしたところ、インクレベルセンサ80によるリザーブタンク60内のインクレベルの誤検知は発生しなかった。
【0075】
次に、本発明の第6実施形態について説明する。なお、第1乃至第5実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0076】
図13に示すように、本実施形態では、リザーブタンク60が、上面視にて半円状のフィルタ102によって、気泡捕集室60E´とセンサ室60F´とに仕切られている。フィルタ102は、44μmの隙間が空いたメッシュ状の板材となっており、気泡捕集室60E´とセンサ室60F´との間では、インクと空気は自在に流通するが、気泡Hが流通できないようになっている。
【0077】
ここで、フィルタ102によってプリズム部60Dが覆われており、フィルタ102とプリズム部60Dとの間隔が狭くなっているが、第2、第3実施形態と同様、フィルタ102とプリズム部60Dの平面との最大距離が、2.5mm以上とされており、インクがフィルタ102とプリズム部60Dとの間の毛細管現象によってフィルタ102とプリズム部60Dとの間に保持されることが防止されている。
【0078】
これによって、インクレベルセンサ80によるリザーブタンク60内のインクレベルの誤検知を防止でき、以って、記録ヘッド32内のインクに作用する背圧を許容範囲に維持できる。
【0079】
次に、本発明の第7実施形態について説明する。なお、第1乃至第6実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0080】
図14に示すように、本実施形態では、リザーブタンク60の中央部に、上面視にて円状のフィルタ104が配設され、このフィルタ104の内壁に、インクレベルセンサ80が支持されており、リザーブタンク60が、フィルタ104によって、中央部のセンサ室60F´´と、センサ室60F´´の周囲の気泡捕集室60E´´とに仕切られている。
【0081】
仕切り壁104は、44μmの隙間が空いたメッシュ状の板材となっており、気泡捕集室60E´´とセンサ室60F´´との間では、インクと空気は自在に流通するが、気泡Hが流通できないようになっている。
【0082】
ここで、フィルタ104によってプリズム部60Dが覆われており、フィルタ104とプリズム部60Dとの間隔が狭くなっているが、第2、第3、第6実施形態と同様、フィルタ104とプリズム部60Dの平面との最大距離が、2.5mm以上とされており、インクがフィルタ104とプリズム部60Dとの間の毛細管現象によってフィルタ104とプリズム部60Dとの間に保持されることが防止されている。
【0083】
これによって、インクレベルセンサ80によるリザーブタンク60内のインクレベルの誤検知を防止でき、以って、記録ヘッド32内のインクに作用する背圧を許容範囲に維持できる。
【0084】
次に、本発明の第8実施形態について説明する。なお、第1乃至第7実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0085】
図15に示すように、本実施形態では、第1実施形態のインクレベルセンサ80に変えて、インクレベルセンサ110が設けられている。このインクレベルセンサ110のセンサ部112は、反射型センサで、鉛直下方へ光線を投射して液面で反射された光線を受光し、受光した光量が所定範囲に入ると、即ち、液面が所定高さまで上昇すると、検出信号を出力する。
【0086】
ここで、本実施形態においても、センサ室60Fへの気泡Hの侵入が防止されており、光線が気泡Hで反射されることが防止されているので、インクレベルセンサ110による液面の誤検出を防止できる。
【0087】
なお、第5乃至第7実施形態では、「フィルタ」をメッシュ状の部材としたが、フィルタには、液体を通過させ、気泡の通過を阻止する隙間、孔が形成されている部材であれば広く含まれる。従って、フィルタには、スポンジ等の多孔質体や、多数の小孔が形成されたパンチング板等が含まれる。
【0088】
また、第1乃至第8実施形態では、インクジェット記録装置を例に取って本発明を説明したが、本発明の液滴吐出ヘッドは、インクジェット記録ヘッドに限らず、高分子フィルムやガラス上に着色インクを吐出して行うディスプレイ用のカラーフィルターの作製、溶融状態のハンダを基板上に吐出して行う部品実装用のバンプの形成、有機EL溶液を基板上に吐出させて行うELディスプレイパネルの形成、溶融状態のハンダを基板上に吐出して行う電気実装用のバンプの形成など、様々な工業的用途を対象とした液滴吐出ヘッド一般に対して、適用可能である。
【0089】
また、本発明の液滴吐出装置において画像記録の対象となる「記録媒体」には、液滴吐出ヘッドが液滴を吐出する対象物であれば広く含まれる。したがって、記録媒体には、記録用紙やOHPシートなどが含まれるのはもちろんであるが、これら以外にも、たとえば、配線パターン等が形成される基板などが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施形態のインクジェット記録装置の概略を示す図である。
【図2】本発明の実施形態のインクジェット記録装置の概略を示す図である。
【図3】本発明の実施形態のインクジェット記録装置の印字部の概略を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態のインクジェット記録ヘッドユニットを示す図である。
【図5】図4のインクジェット記録ヘッドユニットに備えられたリザーブタンクを示す斜視図である。
【図6】図5のリザーブタンクを示す断面図である。
【図7】(A)、(B)は、図4、図5のリザーブタンクに備えられた光センサを示す断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態のインクジェット記録ヘッドユニットに備えられたリザーブタンクを示す斜視図である。
【図9】図8のリザーブタンクに備えられた光センサと仕切り壁とを示す断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態のインクジェット記録ヘッドユニットに備えられたリザーブタンクを示す斜視図である。
【図11】本発明の第4実施形態のインクジェット記録ヘッドユニットに備えられたリザーブタンクを示す断面図である。
【図12】本発明の第5実施形態のインクジェット記録ヘッドユニットに備えられたリザーブタンクを示す斜視図である。
【図13】本発明の第6実施形態のインクジェット記録ヘッドユニットに備えられたリザーブタンクを示す斜視図である。
【図14】本発明の第7実施形態のインクジェット記録ヘッドユニットに備えられたリザーブタンクを示す斜視図である。
【図15】本発明の第8実施形態のインクジェット記録ヘッドユニットに備えられたリザーブタンクを示す断面図である。
【符号の説明】
【0091】
10 インクジェット記録ヘッドユニット(液滴吐出ユニット)
12 インクジェット記録装置(液滴吐出装置)
28 搬送ベルト(搬送手段)
32 インクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)
60 リザーブタンク(タンク)
60E 気泡捕集室(第1室)
60E´ 気泡捕集室(第1室)
60E´´ 気泡捕集室(第1室)
60F センサ室(第2室)
60F´ センサ室(第2室)
60F´´ センサ室(第2室)
80 インクレベルセンサ(光センサ)
82 配管接続口(液体の出入り口)
90 仕切り壁
91 仕切り壁
92 仕切り壁
93 仕切り壁
94 上限インクレベルセンサ(光センサ)
96 下限インクレベルセンサ(光センサ)
98 フィルタ
102 フィルタ
104 フィルタ
110 インクレベルセンサ(光センサ)
H 気泡
G1 隙間
P 用紙(記録媒体)
S スリット(貫通孔)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドへ供給される液体を貯留するタンクと、
前記タンク内の所定高さまで上昇した液面を検出する光センサと、
液体の出入り口を囲む第1室と、前記光センサを囲む第2室との2室に前記タンクを仕切る壁であり、前記タンク内の液面の最低レベル以下の高さで、液体を通過させる仕切り壁と、
を有することを特徴とする液滴吐出ユニット。
【請求項2】
前記仕切り壁と前記タンクの底面との間に隙間を空けたことを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ユニット。
【請求項3】
前記仕切り壁の液面の最低レベル以下の高さに孔を空けたことを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ユニット。
【請求項4】
前記仕切り壁と前記光センサとの間隔を、前記第1室内と前記第2室との液面の高さの差が2mm未満となるように設定したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の液滴吐出ユニット。
【請求項5】
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドへ供給される液体を貯留するタンクと、
前記タンク内の所定高さまで上昇した液面を検出する光センサと、
液体の出入り口を囲む第1室と、前記光センサを囲む第2室との2室に前記タンクを仕切り、液体を通過させ、且つ、気泡の通過を阻止するフィルタと、
を有することを特徴とする液滴吐出ユニット。
【請求項6】
前記フィルタをメッシュ状の部材としたことを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出ユニット。
【請求項7】
前記フィルタと前記光センサとの間隔を、前記第1室内と前記第2室との液面の高さの差が2mm未満となるように設定したことを特徴とする請求項5又は6に記載の液滴吐出ユニット。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の液滴吐出ユニットと、
記録媒体を前記液滴吐出ヘッドに対向させて搬送する搬送手段と、
を有することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項1】
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドへ供給される液体を貯留するタンクと、
前記タンク内の所定高さまで上昇した液面を検出する光センサと、
液体の出入り口を囲む第1室と、前記光センサを囲む第2室との2室に前記タンクを仕切る壁であり、前記タンク内の液面の最低レベル以下の高さで、液体を通過させる仕切り壁と、
を有することを特徴とする液滴吐出ユニット。
【請求項2】
前記仕切り壁と前記タンクの底面との間に隙間を空けたことを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ユニット。
【請求項3】
前記仕切り壁の液面の最低レベル以下の高さに孔を空けたことを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ユニット。
【請求項4】
前記仕切り壁と前記光センサとの間隔を、前記第1室内と前記第2室との液面の高さの差が2mm未満となるように設定したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の液滴吐出ユニット。
【請求項5】
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドへ供給される液体を貯留するタンクと、
前記タンク内の所定高さまで上昇した液面を検出する光センサと、
液体の出入り口を囲む第1室と、前記光センサを囲む第2室との2室に前記タンクを仕切り、液体を通過させ、且つ、気泡の通過を阻止するフィルタと、
を有することを特徴とする液滴吐出ユニット。
【請求項6】
前記フィルタをメッシュ状の部材としたことを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出ユニット。
【請求項7】
前記フィルタと前記光センサとの間隔を、前記第1室内と前記第2室との液面の高さの差が2mm未満となるように設定したことを特徴とする請求項5又は6に記載の液滴吐出ユニット。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の液滴吐出ユニットと、
記録媒体を前記液滴吐出ヘッドに対向させて搬送する搬送手段と、
を有することを特徴とする液滴吐出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−237552(P2007−237552A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62802(P2006−62802)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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