説明

液滴吐出装置

【課題】液体を貯留するメインタンクと液滴吐出ヘッドとの間にサブタンクを備える液滴吐出装置において、メインタンク内の残量を精度良く検出できるようにすることにより、所定の液量となるまでメインタンク内の液体を有効に使い切ることができるようにする。
【解決手段】メインタンク1内の液体をサブタンク2へ供給するための送液手段6の駆動による累積送液時間、累積送液量又は駆動回数のいずれかの検出値を取得する送液動作検出手段を備え、メインタンク1内の液量が第1の液量P1まで低下したことを検出した後に、サブタンク2内の液量が所定量を下回ったことを検出したことによって送液手段6を駆動させたときの送液動作検出手段の検出値を監視することにより、メインタンク1内の液量が第1の液量P1よりも少ない第2の液量P2まで低下したことを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を貯留するメインタンクと液滴吐出ヘッドとの間にサブタンクを備え、サブタンク内の液体が液滴吐出ヘッドからの液滴吐出によって消費された場合に、メインタンク内の液体をサブタンクに供給する制御を行う液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置は、液体供給源であるメインタンクの他に、液滴吐出ヘッド近傍にサブタンクを設置し、メインタンクから送液ポンプ等によって供給される液体をこのサブタンクに一旦貯留させ、サブタンクから各液滴吐出ヘッドに液体を供給するものが知られている。このサブタンクは、液量(内圧)が所定範囲となるように維持されることで、メインタンクの液量に関わらずに液滴吐出ヘッドのノズルに掛かる圧力(背圧)を所定範囲に維持し、液滴を安定して吐出できるようにしている。
【0003】
このような液滴吐出装置では、サブタンク内の液量が液滴を安定吐出可能な所定の範囲を下回ってしまうと、サブタンク内の圧力変化により液滴吐出ヘッドのノズルに掛かる圧力が変化してしまい、最悪の場合、ノズル内のメニスカスがブレイクしてしまうおそれがある。このため、サブタンクの液量が所定範囲にあるか否かを検出するための検出センサを備え、液量が所定量を下回った場合にメインタンクから一定量ずつの液体を供給することで、サブタンク内の液量が常に所定範囲となるように制御するようになっている。
【0004】
一方、メインタンクも液量を検出する検出センサを備えており、サブタンクへ液体を供給し続けることによって液量が所定量まで低下したことを検出すると、オペレータに対して残量の通知を行い、液体の補充やタンク交換を促すようにしている。
【0005】
ここで、この所定量は、通常、液切れによってサブタンクに空気を供給してしまうことのないよう、十分な液量を残して設定される。サブタンクに空気が供給されると、液滴吐出ヘッドに気泡が混入して吐出が不安定となるおそれがあるからである。しかし、これではメインタンク内に多量の液体が残留した状態でオペレータに液体補充やタンク交換を促すこととなり、メインタンク内の多量の液体を無駄にしてしまったり、液体補充やタンク交換の回数が増えることでオペレータの負担が増加する問題がある。
【0006】
従って、検出センサによって検出されるメインタンク内の残量は、液体を無駄なく使い切ることができ、液体補充やタンク交換の回数をできるだけ少なくすることができる液量で、且つ、サブタンクに空気を供給してしまうことのない限界の液量に設定されることが望まれる。
【0007】
しかしながら、このような液量をメインタンクに設けた検出センサだけで検出することには限界がある。例えば、検出センサとして、フロートによって液面位置を検出することで液量を検出する安価なフロートセンサを用いた場合、フロートによって検出可能な液面の下限位置には限度があり、フロートが下限位置まで下降しても、実際にはかなりの液量が残留している。また、電極等の他の検出センサを使用して液量を検出する場合やタンク重量から液量を検出する場合も、検出精度にばらつきがあったり、高精度の検出が不可能であったりして、サブタンクに空気を供給してしまうことのない限界の液量を正確に検出することは現実的には極めて困難である。
【0008】
従って、まず、検出センサによって検出するメインタンク内の液量として、サブタンクに空気を供給してしまうことのない十分な液量を検出しておき、更にその検出の後、残留する液量がサブタンクに空気を供給してしまうことのない限界の液量となるまでを他の手段によって検出することが考えられる。
【0009】
従来、このように検出センサによってある液量のレベルを検出した後、残留する液量を他の手段によって検出する技術として、特許文献1、2に記載のものがある。
【0010】
特許文献1は、電気抵抗値を検出することによって所定レベルのインク残量を検出した時点から、記録枚数の計数、吐出パルス信号のパルス数の計数又はヘッドの走査回数の計数を行い、その計数値を予め記憶された設定値と比較し、設定値に達した時点で警告信号を出力すると同時に記録動作を停止させるものである。
【0011】
また、特許文献2は、一対の電極を用いて所定液面となったことを検出した後のインク残量を、ドット数のカウント値から換算したインク消費量とメンテナンス時の駆動回数のカウント値から換算したインク消費量とを足し合わせた値から判定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平3−247456号公報
【特許文献2】特開平8−34123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
メインタンクと液滴吐出ヘッドとの間にサブタンクを備えた液滴吐出装置において、サブタンクに空気を供給してしまうことのない十分な液量をメインタンク内に残した状態で、更に残りの液量のうち、サブタンクに空気を供給してしまうことのない限界の液量となるまでを、記録枚数やヘッドの走査回数の計数値から換算する場合、これらは必ずしも液体の現実の消費量と比例しているとは限らないため、これによってサブタンクに空気を供給してしまうことのない限界の液量を検出することは大変危険である。
【0014】
一方、パルス数やドット数は、実際の液体の消費量と比例するため、記録枚数やヘッドの走査回数を計数する場合に比べて正確な消費量を検出できると考えられるが、このような技術を、メインタンクと液滴吐出ヘッドとの間にサブタンクを有する液滴吐出装置に適用する場合、次のような問題がある。
【0015】
すなわち、サブタンク内の液量は、液滴吐出ヘッドからの液滴吐出によって消費されて低下していくのに対し、メインタンク内の液量は、サブタンク内の液量が所定量を下回った場合にのみ間欠的に送液されることで段階的に低下していくものであるために、パルス数やドット数のカウント値からメインタンク内の液量を検出しようとする場合、これらパルス数やドット数のカウント値を更にメインタンクからサブタンクへの送液量に換算し直すことにより、メインタンク内の残りの液量を検出し直さなくてはならない。
【0016】
しかしながら、サブタンク内の液量は、パルス数やドット数の増加と一定の比例関係にあるものの、メインタンク内の液量は、サブタンクへの間欠的な送液によって段階的に低下するために、パルス数やドット数等の増加とは必ずしも一定の比例関係にはないため、正確な液量を検出することは困難であり、誤差が大きくなってしまう。
【0017】
しかも、仮に、パルス数やドット数のカウント値をサブタンクへの送液量に換算し直したとしても、液滴吐出により実際に消費される液量は、温度特性に起因する変動や液滴吐出ヘッドのノズル毎のばらつきに起因する変動等が加わることにより、カウント数が大きくなればなる程誤差が大きくなるために、より一層、検出値のばらつきは大きくなってしまい、精度の良い検出を行うことは極めて難しい。
【0018】
更に、単にパルス数やドット数といった駆動周波数を計測する方式では、メンテナンス(ヘッドクリーニングを含む)時のインク消費量が反映されないため、やはり精度の良い検出はできない。
【0019】
従って、サブタンクに空気を供給してしまうことのない十分な液量をメインタンク内に残した状態で、更に残りの液量を検出する際、その検出液量を、このような検出精度のばらつきを考慮して、サブタンクに空気を供給してしまうことのない限界の液量に対して十分に余裕をもたせた液量に設定せざるを得なくなってしまい、依然としてメインタンク内には相当量の液体が残留してしまうこととなってしまう。
【0020】
このため、従来、メインタンクと液滴吐出ヘッドとの間にサブタンクを備えた液滴吐出装置においては、サブタンクに空気を供給してしまうことのない限界の液量となるまで液体を有効に使い切ることはできなかった。
【0021】
そこで、本発明は、液体を貯留するメインタンクと液滴吐出ヘッドとの間にサブタンクを備える液滴吐出装置において、メインタンク内の残量を精度良く検出できるようにすることにより、所定の液量となるまでメインタンク内の液体を有効に使い切ることができるようにすることを課題とする。
【0022】
また、本発明は、液体を貯留するメインタンクと液滴吐出ヘッドとの間にサブタンクを備える液滴吐出装置において、装置毎の個体差による検出精度のばらつきを解消でき、メインタンク内の残量を精度良く検出できるようにすることにより、サブタンクに空気を供給してしまうことのない限界の液量となるまでメインタンク内の液体を有効に使い切ることができるようにすることを課題とする。
【0023】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0025】
請求項1記載の発明は、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、液体を貯留するメインタンクと、前記液滴吐出ヘッドと前記メインタンクとの間において前記液滴吐出ヘッドへ供給するための所定量の液体を貯留するサブタンクと、前記メインタンク内の液体を前記サブタンクへ供給するための送液手段と、前記メインタンク内の液量が第1の液量まで低下したことを検出するメインタンク液量検出手段と、前記サブタンク内の液量が前記所定量を下回ったことを検出するサブタンク液量検出手段とを有し、前記サブタンク液量検出手段により前記サブタンク内の液量が前記所定量を下回ったことを検出した場合に、前記送液手段を駆動させて前記メインタンク内の液体を前記サブタンクに供給する制御を行う液滴吐出装置において、
前記送液手段の駆動による累積送液時間、累積送液量又は累積駆動回数のいずれかの検出値を取得する送液動作検出手段と、
前記メインタンク液量検出手段が前記第1の液量まで低下したことを検出した後に、前記サブタンク液量検出手段が前記所定量を下回ったことを検出したことによって前記送液手段を駆動させたときの前記送液動作検出手段の前記検出値を監視することにより、前記メインタンク内の液量が前記第1の液量よりも少ない第2の液量まで低下したことを検出する残量検出手段とを有することを特徴とする液滴吐出装置である。
【0026】
請求項2記載の発明は、前記サブタンクは、内部の圧力を所定範囲に維持することにより前記液滴吐出ヘッドに対する背圧を所定範囲に維持するように機能する背圧維持装置であることを特徴とする請求項1記載の液滴吐出装置である。
【0027】
請求項3記載の発明は、前記メインタンク内の液量が前記第1の液量から前記第2の液量となるまでの前記送液動作検出手段の前記検出値の基準値を予め記憶した記憶手段を有し、
前記残量検出手段は、前記記憶手段に記憶された前記基準値と前記検出値との差が所定の値に達したときに、前記メインタンク内の液量が前記第2の液量まで低下したことを判断することを特徴とする請求項1又は2記載の液滴吐出装置である。
【0028】
請求項4記載の発明は、前記記憶手段に記憶させる前記基準値を設定する基準値設定手段を有し、
前記基準値設定手段は、前記メインタンク液量検出手段が前記第1の液量となったことを検出したときから前記送液手段を駆動させて前記サブタンク内の液体を消費するよう制御すると共に、前記サブタンク液量検出手段が前記所定量を下回ったことを検出した後、前記送液手段を駆動させても該サブタンク液量検出手段が前記所定量を下回ったことを検出したままの状態となるまでの前記送液動作検出手段の前記検出値に基づいて基準値を設定し、前記記憶手段に記憶させることを特徴とする請求項3記載の液滴吐出装置である。
【0029】
請求項5記載の発明は、前記残量検出手段は、前記メインタンク内が前記第2の液量となったことを判断した時に、少なくとも前記送液手段の駆動を禁止させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液滴吐出装置である。
【0030】
請求項6記載の発明は、前記残量検出手段によって前記第2の液量が検出された時に、前記メインタンクへの液体補充又は前記メインタンクの交換を促す通知を行う通知手段を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液滴吐出装置である。
【0031】
請求項7記載の発明は、装置電源投入時に前記メインタンク液量検出手段が前記第1の液量を検出した場合に、液滴吐出動作を開始させない制御を行う動作制御手段を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液滴吐出装置である。
【0032】
請求項8記載の発明は、前記送液動作検出手段は、前記メインタンク液量検出手段が前記第1の液量を検出しなくなった場合に、それまでに検出された前記検出値をクリアすることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の液滴吐出装置である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、液体を貯留するメインタンクと液滴吐出ヘッドとの間にサブタンクを備える液滴吐出装置において、メインタンク内の残量を、精度良く検出でき、所定の液量となるまでメインタンク内の液体を有効に使い切ることができる。
【0034】
また、本発明によれば、液体を貯留するメインタンクと液滴吐出ヘッドとの間にサブタンクを備える液滴吐出装置において、装置毎の個体差による検出精度のばらつきを解消でき、メインタンク内の残量を精度良く検出できるようにすることにより、サブタンクに空気を供給してしまうことのない限界の液量となるまでメインタンク内の液体を有効に使い切ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1の液量検出手段が所定レベル以下となったことを検出した後の送液手段の送液時間とメインタンク内の残量との関係を示すグラフ
【図2】液滴吐出装置の第1の実施形態における主要部を示す概略構成図
【図3】サブタンクの一例を示す断面図
【図4】液滴吐出装置の内部構成を示すブロック図
【図5】液滴吐出装置におけるメインタンク内の液体の残量を検出する際の一例を示すフローチャート
【図6】不揮発メモリ内に基準時間又は基準量の値を設定する場合のフローチャート
【図7】液滴吐出装置の第2の実施形態における主要部を示す概略構成図
【図8】液滴吐出装置の第3の実施形態における主要部を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明において液滴を吐出する液滴吐出ヘッドは、一般にノズルから液滴を吐出してインクジェット記録を行うためのインクジェットヘッドとして知られている。ノズルから液滴を吐出するための手段は、圧電素子からなる側壁のせん断変形によって液室内の容積を変化させるもの、ピエゾ素子の伸縮作用によって液室内の容積を変化させるもの、液体の膜沸騰現象を利用するもの等があるが、本発明においては特に問わない。
【0037】
メインタンクには一般に大量の液体が貯留される。このようなメインタンクとしては、装置に固定され、液量が低下したら液体を注ぎ入れて継ぎ足しながら使用する固定型のタンク、装置に着脱可能に設けられ、液量が低下したら装置から取り外して交換するカートリッジ型のタンク等があり、本発明はいずれでもよい。
【0038】
サブタンクは液滴吐出ヘッドの近傍に配置される。サブタンクはメインタンクよりも少量の液体を、液量が所定量となるように一旦貯留することのできる大きさに形成される。このようなサブタンクとしては、内部に所定の負圧状態を作り出すことで、これと連通する液滴吐出ヘッドのノズル内が所定の圧力となるように維持する機能を有するタンク、液滴吐出ヘッドのノズル面の高さ位置よりも低い所定の高さ位置となるように配置されることで、液滴吐出ヘッドのノズル内が所定の圧力となるように維持する機能を有するタンク等がある。
【0039】
特に、前者のサブタンクは、内部の圧力を所定範囲に維持することにより液滴吐出ヘッドに対する背圧を所定範囲に維持する背圧維持装置として機能するものであり、サブタンク内の液量が所定量を下回った場合に、メインタンクから所定時間の送液を繰り返して所定液量となるまで送液を行うような間欠的な送液を行っても、サブタンク内の圧力を所定範囲内に維持することができるため、本発明において好ましい。
【0040】
メインタンクとサブタンクとの間、サブタンクと液滴吐出ヘッドとの間は、それぞれ液体供給管を介して液体供給可能に接続され、液滴吐出ヘッドにおいて液滴が吐出されることでサブタンク内の液体が消費される。送液手段は、液滴吐出によってサブタンクの液体が消費されて所定量を下回った場合に、所定時間(例えば1sec)駆動してメインタンク内の液体をサブタンクに送液することで、一回の駆動によって定量の送液を行うものが好ましく用いられる。このような送液手段は、通常、サブタンクの液量が所定量となるまで間欠的に複数回駆動され、定量ずつの送液を複数回に亘って行う。
【0041】
送液手段としては、一般には送液ポンプを用いることができる。送液ポンプは一定時間の駆動によって一定量の液体を送液することのできるものであればよく、具体的にはダイヤフラムポンプ、チューブポンプ、シリンジポンプ等が好ましく用いられる。
【0042】
その他、送液手段には、メインタンクからサブタンクへの液体供給管の流路の開閉動作によって液体を送液するものを用いることもできる。流路の開閉動作は、例えば電磁弁によって行うことができ、この電磁弁の開度及び/又は開放時間の調整によって送液量が規定される。この場合、メインタンクには、可撓性フィルムによって形成されたパック状のものが好ましく用いられ、ばね等の弾性部材やおもり等によって送液に必要なだけの所定の加圧力が掛けられることが好ましい。
【0043】
一方、サブタンクから液滴吐出ヘッドへは液滴吐出による消費によって自然に送液される。
【0044】
本発明においてメインタンク液量検出手段は、メインタンク内の液量が第1の液量まで低下したことを検出する。この「第1の液量」とは、メインタンク内の液量が完全に0になるよりも十分に手前であり、好ましくは、送液手段によってサブタンクに向けて空気を供給してしまうまでに十分に余裕を持った液量である。サブタンクに向けて空気を供給してしまうまでに十分に余裕を持った液量は、その液量を検出した時点で更に送液手段を所定時間、所定量又は所定回数駆動させても空気を供給してしまうことがない程度の液量であり、例えば送液手段がメインタンク内の底部近傍に液体吸引管の先端を配置させたものである場合、液面がこの液体吸引管の先端位置よりも十分に上方の位置となる液量であり、また、送液手段が液体供給管の流路の開閉動作によるものである場合、液面がメインタンクの流出口の上端位置よりも十分に上方の位置となる液量である。
【0045】
このようなメインタンク内の液量が第1の液量となったことを検出するための具体的な手段としては、メインタンク内に配置され、その内部の液面位置に追従するフロートの高さ位置を検出するフロートセンサや、メインタンク内の所定高さに配置された一対の電極が液体中に浸漬されているか否かを検出する電極型の検出装置や、液量を重量によって検出する重量検出装置等が挙げられる。特に、フロートセンサは比較的安価であり、液面位置そのものを容易に検出することができるために本発明において好ましい。しかも、フロートセンサは検出可能な液量レベルには限度があり、フロートが下限位置まで達しても、依然として多量の液体が残留している場合が多く、本発明の適用によって、その残留する液体を有効に使い切ることができる。
【0046】
メインタンク液量検出手段が第1の液量となったことを検出した場合、その時点でオペレータに対して通知手段によって通知(予備的通知)を行うことで、オペレータに液量が少なくなってきたことの注意を促すようにしてもよい。通知は、ランプの点灯や点滅、画面表示、ブザーやチャイムの鳴動等によって行うことができる。
【0047】
本発明においてサブタンク液量検出手段は、サブタンク内の液量が所定量を下回ったことを検出する。この「所定量」とは、サブタンクによって液滴吐出ヘッドのノズル内の圧力(背圧)を液滴の安定吐出を図ることができる程度の圧力に維持することのできる液量の範囲の下限値のことである。
【0048】
サブタンク液量検出手段は、液滴吐出ヘッドからの液滴の吐出によってサブタンク内の液量が低下して上記所定量を下回った時点で検出信号(High)を出力するようにしてもよいが、サブタンク内の液量が、上記所定量を満足していることを検出している場合に検出信号(High)を出力し、液体が消費されて上記所定量を下回った時点で検出信号を出力しない(Low)ようにすることで、この所定量を下回ったことを検出できるようにしてもよい。後者の場合、メインタンクからサブタンクに送液されて液量が上記所定量まで復帰すると検出信号(High)が再び出力される。
【0049】
このようなサブタンク液量検出手段の具体例としては、メインタンク液量検出手段と同様のものを用いることができる。また、サブタンク内の圧力は液量と比例することから、サブタンク内の圧力を検出する圧力検出装置を用い、その圧力値が所定値を下回ったことを検出することによって、液量が所定量を下回ったことを検出することもできる。
【0050】
本発明における送液手段の制御は、サブタンク液量検出手段が上記所定量を下回ったことを検出した場合に、送液手段を駆動させることでメインタンクからサブタンクへ送液を行い、サブタンク内の液量が上記所定量以上となるように行う。また、メインタンク液量検出手段によりメインタンク内の液量が第1の液量まで低下したことを検出した後も、メインタンク内の液量が後述する第2の液量となるまでは、サブタンク液量検出手段が上記所定量を下回ったことを検出した場合には、送液手段を駆動させることでメインタンクからサブタンクへ送液する制御を行う。
【0051】
本発明における送液動作検出手段は、送液手段の駆動による累積送液時間、累積送液量又は累積駆動回数のいずれかを検出する。累積送液時間は、間欠的に送液手段が駆動することによって送液される1回ずつの送液時間を合算した時間のことであり、累積送液量は、間欠的に送液手段が駆動することによって送液される1回ずつの送液量を合算した量のことであり、累積駆動回数は、間欠的に送液手段が駆動することによって送液動作が行われた回数を合算した回数のことである。送液手段の駆動1回当たりの送液量はほぼ一定であるため、累積送液時間によって送液された全体の液量を検出でき、また、駆動回数によって送液された全体の液量を検出できる。
【0052】
これら送液時間、送液量又は駆動回数のいずれかの検出値は、その検出の都度、不揮発メモリに書き込まれ、順次累積される。検出の都度不揮発メモリに書き込むことで、不意の停電等によって装置電源が遮断されてもそれまでの累積データが消えてしまうことはない。不揮発メモリとしては、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の電気(電圧)の操作によってデータの消去や書き換えが可能となっている半導体記憶装置や、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶方式によってデータを読み書きし、外部記憶装置として搭載されているもの等を用いることができる。
【0053】
図1は、メインタンク液量検出手段によりメインタンク内の液量が第1の液量となったことを検出した後の送液ポンプの送液時間とメインタンク内の残量との関係を示すグラフである。
【0054】
図中、P1はメインタンク液量検出手段によって検出されるメインタンク内の第1の液量であり、この時点では、メインタンク内には未だ十分な液量が残留している。この後、サブタンク内の液量低下により、送液ポンプは時間tずつの駆動を繰り返すことで所定量ずつの液体をメインタンクからサブタンクへ供給し、これに伴ってメインタンク内の液量は更に低下していく。本発明によれば、このメインタンク内の液量が第1の液量P1となった後の時間tずつの送液ポンプの送液時間がその都度不揮発メモリに記憶され、累積されることになる。
【0055】
本発明における残量検出手段は、メインタンク液量検出手段が第1の液量まで低下したことを検出した後に、サブタンク液量検出手段が所定量を下回ったことを検出した場合に送液手段を駆動させたときの送液動作検出手段による上記検出値を監視し、メインタンク内の液量が第1の液量よりも少ない第2の液量となったことを判断する。
【0056】
本発明において、この「第2の液量」は、送液手段を駆動させてもサブタンクに向けて空気を供給してしまうことのない限界の最小液量であることが好ましい。例えばメインタンク内の底部近傍に液体吸引管の先端が配置される場合には、残留する液体がこの液体吸引管の先端位置と接している液量とすることができる。この第2の液量となったことを判断することによって、メインタンク内の液量がサブタンクに空気を供給してしまうことのないぎりぎりの液量まで液体を有効に使い切ることができる。
【0057】
残量検出手段における上記検出値の監視は、記憶手段に予め記憶された基準値との比較によって行うことができる。記憶手段には、メインタンク内の液量が第1の液量から第2の液量となるまでの送液動作検出手段による累積送液時間、累積送液量又は累積駆動回数のいずれかからなる検出値の基準値(基準時間、基準量又は基準回数)が予め記憶される。このような記憶手段も、上記と同様にEEPROMやHDD等の不揮発メモリが好ましく使用できる。
【0058】
残量検出手段における検出値と基準値との比較は、例えば基準値−検出値=所定値の判別によって行うことができ、この条件を満足したとき、メインタンク内の液量は第2の液量となったと判断することができる。
【0059】
図1の例では、第1の液量P1を検出した後に送液ポンプのt時間ずつの駆動が5回繰り返されてその累積送液時間5tとなったとき、メインタンク内が第2の液量P2となったことを表している。従って、この場合、累積送液時間5tを基準値と比較し、その差が所定値となったことを判別することによって、メインタンク内の液量が第2の液量P2となったことを判断することができる。
【0060】
所定値(sec、ml又は回)は、メインタンク内に残留する液体を有効に使い切るという観点から、一般には0、すなわち基準値=検出値に設定することができる。
【0061】
このようにして残量検出手段によってメインタンク内が第2の液量となったことが判断された場合、通知手段によってオペレータに対してメインタンク内への液体の補充又はメインタンクの交換を促すための通知を行うことができる。この場合の通知も、ランプの点灯や点滅、画面表示、ブザーやチャイムの鳴動等によって行うことができる。
【0062】
本発明によれば、メインタンク内の第2の液量を、従来のように温度特性等による変動によって検出精度にばらつきが大きくなってしまうパルス数やドット数等のカウント値から換算するものとは異なり、メインタンク内の液量低下と一定の比例関係にある送液手段の動作そのものを、送液動作検出手段の検出値の監視によって判断するものであるため、メインタンク内の液量が第1の液量から第2の液量となるまでを精度良く検出することができる。また、検出精度のばらつきを加味して検出液量に大きな余裕を持たせる必要がないため、第2の液量をサブタンクに空気を供給してしまうことのない限界の最低液量に設定しておくことで、メインタンク内の液体を有効に使い切ることができるようになる。
【0063】
本発明において、予め基準値を記憶する記憶手段に対して、その記憶すべき基準値を設定するための基準値設定手段を備えることは好ましい。
【0064】
この基準値設定手段は、メインタンク液量検出手段が第1の液量となったことを検出したときから送液手段を駆動させてサブタンク内の液体を消費するよう制御すると共に、サブタンク液量検出手段が所定量を下回ったことを検出した後、送液手段を駆動させても該サブタンク液量検出手段が所定量を下回ったことを検出したままの状態となるまでの送液動作検出手段の検出値に基づいて基準値を設定し、記憶手段に記憶させる。
【0065】
ここで、「サブタンク液量検出手段が所定量を下回ったことを検出したままの状態となるまで」は、例えば不揮発メモリに、送液手段を駆動させた後、サブタンク液量検出手段が所定量以上まで復帰したことを検出するであろう送液手段の累積送液時間、累積送液量又は累積駆動回数のいずれかを既定値として設定しておき、この既定値と送液動作検出手段の検出値とを比較し、検出値が既定値を越えた場合に、送液ができなくなったと判断することで行うことができる。
【0066】
また、「検出値に基づいて基準値を設定」するとは、基準値を上記の方法によって検出される送液動作検出手段の検出値に一致させてもよいし、検出値よりも送液手段の駆動の若干の時間的又は量的余裕を持たせた小さい値に設定してもよいことを意味する。
【0067】
このような基準値設定手段による機能は、装置の工場出荷時に実行させることで、送液手段の個体差に起因する送液量のばらつきやメインタンク液量検出手段の装置毎の機械的取り付け精度のばらつき等によって発生する検出ばらつきによる誤差を解消することができる。これにより、装置毎の固有の基準値を適切に設定することができて、メインタンク内の液量の検出精度をより高めることができる。
【0068】
また、基準値設定手段による機能を装置稼働後のメンテナンス時や使用する液体の種類の交換時等に実行させることで、記憶手段に記憶される基準値を最新のものに更新することができる。これにより、長期使用による送液手段の性能劣化等による送液量の変動に起因する誤差を解消することができ、同様にメインタンク内の液量の検出精度をより高めることができる。
【0069】
本発明において残量検出手段は、メインタンク内の液量が第2の液量となったと判断した時に、少なくとも送液手段の駆動を禁止させるようにすることが好ましい。これによりその後の送液手段の駆動は禁止されるため、サブタンクに空気を供給してしまうことを確実に防止できる。この後、サブタンク内の液量が十分な間は、液滴吐出ヘッドからの液滴吐出を継続することもできる。もちろん、送液手段の駆動の禁止に加えて、液滴吐出装置の例えば液滴吐出動作や全体の動作を禁止にすることもできる。この送液手段の駆動の禁止は、液体補充の場合は例えばメインタンク内の液量がメインタンク液量検出手段によって第1の液量以上に復帰した時点、タンク交換の場合は例えば新たなタンクの装着を確認した時点で解除される。
【0070】
本発明において、装置電源投入時にメインタンク液量検出手段が第1の液量まで低下したことを検出した場合に、通知手段にメインタンクの残量が少なくなったことを通知させるための出力を行うと共に液滴吐出動作を開始させない制御を行う動作制御手段を備えることが好ましい。これにより、装置電源投入後のメンテナンス作業中の液体なしによる中断や液滴吐出動作開始直後の液滴なしによる作業停止を防ぐことができ、作業を円滑に続行させることができる。
【0071】
また、本発明において、送液動作検出手段は、メインタンク液量検出手段が上記所定量まで低下したことを検出しなくなった場合、それまで検出された累積送液時間、累積送液量又は累積駆動回数の値をクリアすることが好ましい。これによりメインタンク内の液面の挙動が不安定となること等によって発生するチャタリングを防止することができ、安定した残量検出を行うことができる。
【0072】
本発明における各手段の動作の制御は、装置動作を制御するCPUによって行うことができる。
【0073】
本発明における液滴吐出装置は、液体としてインクを使用することによって、写真、文字、図柄等の通常の画像記録を行う用途に限らず、液体として導電性液体やEL(Electro-Luminescence)機能を持った液体等の機能性液体を使用することによって、所定のパターンを記録形成する各種の産業用途に適用することができる。
【0074】
次に、本発明の具体的な実施の形態について図面を用いて説明する。
【0075】
図2は、液滴吐出装置の第1の実施形態における主要部を示す概略構成図である。
【0076】
図中、1は液体を貯留する固定型のメインタンク、2はメインタンク1から送られる液体を一旦貯留するサブタンク、3はサブタンク2から供給される液体をノズルから液滴として吐出する液滴吐出ヘッドであり、メインタンク1内とサブタンク2内とは液体供給管4によって連通し、サブタンク2内の液滴吐出ヘッド3内とは液体供給管5によって連通している。液体供給管4は、一方の先端4aがメインタンク1内の底部近傍に配置されており、途中に介設された送液ポンプ6によって、メインタンク1内の液体を間欠的な駆動によって所定量ずつサブタンク2に向けて送液するようになっている。また、メインタンク1内には、液面位置を検出することによって液量が第1の液量P1まで低下したことを検出するための液面検出装置7(メインタンク液量検出手段)が設けられている。
【0077】
ここでは液滴吐出ヘッド3は1つだけ示されているが、1つのサブタンク2に対して複数設けられていてもよく、その場合、各液滴吐出ヘッド3内と1つのサブタンク2内とが複数の液体供給管5によって連通される。
【0078】
サブタンク2は、ここでは液滴吐出ヘッド3のノズルに対して所定の圧力(背圧)をかける背圧制御装置として機能するダンパーが用いられている。このようなサブタンク2の一例を図3に示す。
【0079】
サブタンク2は、ケーシング20の一面から凹設された凹部21の開口部21aを、例えばゴムやポリエチレンテレフタレート等のフィルムからなる可撓膜22によって覆うことで内部空間23を形成している。この内部空間23内には、可撓性膜22に対して内部から凹部21の外側に向けた力を作用させ、該可撓性膜22を内部空間23の容積を拡大させる方向(図3における矢視A方向)に付勢する付勢手段であるコイルばね等の弾性部材24を有している。
【0080】
可撓性膜22は、開口部21aの開口面積よりも若干大きな面積を有しており、膜面が緊張せずに弛んだ状態となるように設けられており、弾性部材24によって付勢力が与えられることで、開口部21aの周囲のケーシング20表面で規定される基準面20aに対して、付勢方向に最大でdだけ突出(変位量+d)することができるようになっている。また、内部空間23内の圧力が低くなってくると、可撓性膜22は弾性部材24の付勢力に抗して内部空間23の容積を縮小させる方向(図3における矢視B方向)に移動しようとするが、この場合も可撓性膜22は一点鎖線で示すように最大でdだけ変位(変位量−d)する。通常、液滴吐出動作時に圧力制御しているときは、可撓性膜22の位置がほぼ基準面20aの位置となるように設定されており、弾性部材24によって可撓性膜22が矢視A方向に付勢されることで所定の負圧状態が作成される。
【0081】
25は弾性部材24の可撓性膜22に対する付勢力を変化させるための付勢力調整ねじである。また、26はサブタンク2の内部空間23と連通する圧力検知管であり、図2に示すように、この圧力検知管26に、サブタンク2内の液面を検出する液面検出装置8(サブタンク液量検出手段)とサブタンク2内の圧力を検出する圧力検出装置9が設けられていると共に、液面検出装置8と圧力検出装置9の間から分岐して大気開放弁10を介して大気と連通可能になっている。
【0082】
図4は、かかる液滴吐出装置の内部構成を示すブロック図である。
【0083】
制御部(CPU)100は、送液ポンプ6、メインタンク1の液面検出装置7、サブタンク2の液面検出装置8、サブタンク2の圧力検出装置9、不揮発メモリ200、通知部300及び吐出制御部400とそれぞれ制御可能に接続されている。
【0084】
送液ポンプ6は、制御部100の駆動開始信号によって所定時間駆動することによって所定量の送液を行う。送液時間は不揮発メモリ200の所定領域にその都度記録され、累積される。また、液面検出装置7、8及び圧力検出装置9は、予め設定された所定の液面位置及び圧力値となった場合に、その検出信号を制御部100に送るようになっている。
【0085】
ここで、メインタンク1の液面検出装置7によって該メインタンク1内の液量が第1の液量P1まで低下したことを検出するための液面位置は、メインタンク1内の底部近傍に配置される液体供給管4の先端4aよりも十分に上方の位置であり、メインタンク1内の液量が完全に0になるよりも十分に手前のレベルである。従って、その検出時点では、送液ポンプ4が駆動してもサブタンク2に向けて空気を供給してしまうおそれはない。
【0086】
また、サブタンク2の液面検出装置8によって検出される液面位置は、サブタンク2によって液滴吐出ヘッド3のノズル内の圧力(背圧)を液滴の安定吐出を図ることができる程度の圧力に維持可能な液量範囲の最小液量の液面位置であり、サブタンク2内の残量がこの最小液量の液面位置以下になると制御部100に検出信号を出力する。制御部100はこのサブタンク2の液面検出装置8からの検出信号を受けると、送液ポンプ6に駆動開始信号を送信し、メインタンク1からサブタンク2に送液を行うように制御する。
【0087】
不揮発メモリ200には、予めメインタンク1の液面検出装置7が検出信号を出力した後に該メインタンク1内に残留する液体をサブタンク2に送液し得るだけの送液ポンプ6の累積送液時間である基準時間が記憶されている。制御部100は、メインタンク1の液面検出装置7が検出信号を出力した後の送液ポンプ6の累積送液時間と、この基準時間とを比較し、その比較の結果に基づいて通知部300に信号出力する。
【0088】
次に、かかる液滴吐出装置におけるメインタンク1内の液体の残量を検出する際のフローの一例を図5に基づいて説明する。ここでは、第2の液量P2として、サブタンク2に空気を供給してしまうことのない限界の最小液量を検出するものとしている。
【0089】
まず、装置電源ONの後、制御部100は吐出制御部400を制御して液滴吐出ヘッド3による所定の液滴吐出動作を行う。これによりサブタンク2内の液量は徐々に低下し、それに伴って、送液ポンプ6の駆動によってメインタンク1から所定量ずつの液体が供給されて補充される動作が繰り返される。送液ポンプ6の送液時間は、その都度不揮発メモリ200内に書き込まれて累積される。この間、制御部100は、メインタンク1の液面を検出する液面検出装置7が検出信号を出力しているか否か、すなわちメインタンク1内の液量が第1の液量P1まで低下したか否かを判別している(S1)。
【0090】
ここで、メインタンク1内の液量が未だ第1の液量P1まで低下していない場合(Yesの場合)、制御部100は不揮発メモリ200内に書き込まれた送液ポンプ6のそれまでの累積送液時間をクリアし(S2)、液面検出装置8によってサブタンク2内が液滴安定吐出に必要な液量範囲にあるか否かを判別する(S3)。その結果、サブタンク2内が液滴安定吐出に必要な液量範囲にある場合(Yesの場合)、上記ステップS1からの処理を繰り返し、以後、液滴吐出装置は液滴吐出動作を実行する。
【0091】
また、サブタンク2内が液滴安定吐出に必要な液量範囲を下回った場合(Noの場合)、制御部100は、サブタンク2内の液量は不足していると判断し、送液ポンプ6に駆動開始信号を出力し、所定時間(例えば1sec)だけ送液ポンプ6を駆動させる(S4)。これにより送液ポンプ6は、駆動時間に対応する所定量の液体をメインタンク1からサブタンク2に送液する。この送液時間は不揮発メモリ200に書き込まれ、累積される。
【0092】
所定時間の送液の後、制御部100は再びサブタンク2内が液滴安定吐出に必要な液量範囲にあるか否かを判別し(S5)、未だ液量が不足している場合は、サブタンク2内の液量が十分となるまで上記ステップS4からの処理を繰り返す。
【0093】
サブタンク2内の液量が十分なレベルに達したら、制御部100は通知部300に信号出力し、メインタンク1内の液量は十分である旨の通知を行い(S6)、上記ステップS1からの処理に戻る。このときの通知は、例えば青色ランプの点灯やその旨の画面表示により行われる。
【0094】
液滴吐出動作を行っている間、メインタンク1内の液量はサブタンク2への送液によって減少し続け、やがて上記ステップS1において、メインタンク1内の残量が第1の液量P1まで低下したしたことを検出する(Noの場合)。制御部100は、その第1の液量P1まで低下したことの検出が電源ON後の初回の検出であるかどうかを判別し(S7)、初回の検出である場合(Yesの場合)、制御部100は、不揮発メモリ200に書き込まれている累積送液時間のデータをクリアし(S8)、通知部300に信号出力してメインタンク1内の液量無し通知を行い、オペレータに液体補充を促す(S9)このときの通知は、例えば赤色ランプの点灯やその旨の画面表示により行われる。
【0095】
このとき同時に、制御部100は、以後、メインタンク1内の液量が十分なレベルとなるまで、少なくとも送液ポンプ6の駆動を行わない制御を行う。これにより、装置電源投入後のメンテナンス作業中の液体無しによる中断や液滴吐出動作開始直後の作業停止を防ぐことができ、作業を円滑に続行させることができる。
【0096】
上記ステップS7において、初回の検出でない場合(Noの場合)、制御部100は、サブタンク2内が液滴安定吐出に必要な液量範囲にあるか否かを判別する(S10)。
【0097】
その結果、サブタンク2内が液滴安定吐出に必要な液量範囲にない場合(Noの場合)、制御部100は、サブタンク2内の液量は不足していると判断し、次いで、予め記憶されている基準時間と不揮発メモリ200に書き込まれた送液ポンプ6の累積送液時間との差分を検出する(S11)。
【0098】
すなわち、基準時間−累積送液時間=所定値(sec)によって検出を行い、その結果が、未だ所定値に達していない場合(Noの場合)、メインタンク1内の残量は、未だサブタンク2内に空気を供給してしまうおそれのない十分な液量であると判別されるため、制御部100は送液ポンプ6に駆動開始信号を出力し、所定時間(例えば1sec)だけ送液ポンプ6を駆動させる(S12)。
【0099】
これにより送液ポンプ6は、駆動時間に対応する所定量の液体をメインタンク1からサブタンク2に送液する。所定時間の送液の後、制御部100は再びサブタンク2内が液滴安定吐出に必要な液量範囲にあるか否かを判別し(S13)、未だ液量が不足している場合は、サブタンク2内の液量が十分となるまで上記ステップS12からの処理を繰り返す。
【0100】
サブタンク2内の液量が十分なレベルに達したら、制御部100は、上記ステップS12からの処理によって駆動された送液ポンプ6の累積送液時間を不揮発メモリ200に書き込むことで累積送液時間を更新した後(S14)、通知部300に信号出力し、メインタンク1内の液量は少量である旨の通知を行い(S15)、上記ステップS10からの処理に戻る。このときの通知は、例えば黄色ランプの点灯やその旨の画面表示により行われる。
【0101】
また、上記ステップS11において、予め記憶されている基準時間と不揮発メモリ200に書き込まれている送液ポンプ6の累積送液時間との差分を検出した結果、所定値に達した場合(Yesの場合)、メインタンク1内の残量は、サブタンク2内に送液しても空気を供給してしまうことのない限界の最小液量(第2の液量P2)に達したと判別されるため、制御部100は、上記ステップS8の処理に進み、不揮発メモリ200内の累積送液時間のデータクリア(S8)及び通知部300への信号出力(S9)を行い、例えば赤色ランプの点灯やその旨の画面表示により、オペレータに液体補充を促し、以後、メインタンク1内の液量が十分となるまで液滴吐出動作を開始させない制御を行う。
【0102】
以上の実施形態では、送液ポンプ6の駆動時に送液時間を累積させるものとしたが、これに代えて送液量又は送液ポンプ6の駆動回数を検出して累積させてもよいことはもちろんである。
【0103】
図6は、不揮発メモリ200に予め記憶される基準時間、基準量、基準回数又は基準回数の値を設定する場合のフローを説明するフローチャートである。ここでも基準時間を設定する場合について説明する。
【0104】
このフローは、メインタンク1内の液量が、液面検出手段7によって第1の液量P1まで低下したことを検出する状態となったところから開始される。このとき、制御部100は、吐出制御部400を制御して液滴吐出ヘッド3による液滴吐出動作を継続させ、サブタンク2内の液体を消費し続けている。
【0105】
そして、制御部100は、サブタンク2の液面検出装置8が液滴安定吐出に必要な液量を検出しているか否かを判別する(S20)。その結果、サブタンク2内が液滴安定吐出に必要な液量範囲を検出している場合(Yesの場合)は、通知部300にメインタンク1の液量が少なくなったことを通知させるための信号出力を行う(S21)が、サブタンク2内が液滴安定吐出に必要な液量範囲を検出していない場合(Noの場合)、制御部100は、送液ポンプ6に駆動開始信号を出力し、所定時間(例えば1sec)だけ送液ポンプ6を駆動させる(S22)。これにより送液ポンプ6は、駆動時間に対応する所定量の液体をメインタンク1からサブタンク2に送液する。この送液時間は不揮発メモリ200に書き込まれ、累積される。
【0106】
所定時間の送液の後、制御部100は再びサブタンク2内が液滴安定吐出に必要な液量範囲を検出しているか否かを判別し(S23)、サブタンク2内の液量が十分となったことを検出した場合(Yesの場合)、制御部100は、それまで駆動された送液ポンプ6の累積送液時間を不揮発メモリ200に書き込んだ後(S24)、上記ステップS20からの処理に戻る。
【0107】
一方、上記ステップS23の判別結果が、未だ液量が不足していると判別された場合、それまで駆動された送液ポンプ6の累積送液時間が予め設定された既定値に達したか否かを判別し(S25)、達していない場合(Noの場合)は、上記ステップS22からの処理を繰り返す。
【0108】
ここで、メインタンク1内の液量が0になると、送液ポンプ6を駆動しても液体が供給されず、サブタンク2内の液量は増加しない。このため、上記ステップS25において、制御部100は、それまで駆動された送液ポンプ6の累積送液時間が予め設定された既定値に達したと判別した場合、それまで不揮発メモリ200に書き込まれた送液ポンプ6の累積送液時間を基準時間と設定し(S26)、この基準時間を不揮発メモリ200内の所定領域に記憶させる(S27)。
【0109】
この後、制御部100は、通知部300にメインタンク1内の液体無し通知を行い、オペレータに液体補充を促す(S28)。
【0110】
この一連の処理により、基準時間が不揮発メモリ200に記憶設定される。この処理により、送液ポンプ6の個体差に起因する送液量のばらつきや液面検出装置7の装置毎の機械的取り付け精度のばらつき等によって発生する検出誤差をなくすことができ、装置毎の固有の基準値を適切に設定することができ、第2の液量をサブタンク2に空気を供給してしまうおそれのない限界ぎりぎりに設定しておくことで、メインタンク1内の液体を有効に使い切ることができようになる。
【0111】
このような基準値の設定作業は、装置の工場出荷時、装置稼働後のメンテナンス時又は使用する液体の種類の交換時等に実行させる。
【0112】
図7は、液滴吐出装置の第2の実施形態における主要部を示す概略構成図である。図2と同一符号は同一構成を示しているので詳細な説明は省略する。
【0113】
ここでは、可撓膜22を有する第1の実施形態に示すサブタンク2に代えて、剛体のタンクにより形成したサブタンク11を示している。このサブタンク11は、液滴吐出ヘッド3のノズル面3aの高さ位置よりも所定距離だけ下方の位置となるように配置されることで、液滴吐出ヘッド3のノズルが所定の負圧状態となるようにしている。
【0114】
この場合も、サブタンク11内の液面位置によって液量を検出するための液面検出装置12が設けられ、第1の実施形態と同様の処理によってメインタンク1内の液体の残量を検出することで、第2の液量として設定された液量まで、メインタンク1内の液体を有効に使い切ることができる。
【0115】
図8は、液滴吐出装置の第3の実施形態における主要部を示す概略構成図である。図2と同一符号は同一構成を示しているので詳細な説明は省略する。
【0116】
ここでは、固定型のメインタンク1に代えて、カートリッジ型のメインタンク13を用いている。カートリッジ型のメインタンク13は、可撓性のフィルム等によってパック状に形成されており、内部の液量がなくなると、装置からメインタンク13ごと取り外して他の新しいメインタンク13と交換する。このメインタンク13には例えばコイルばねによって付勢される加圧手段14が設けられおり、メインタンク13に所定の加圧力を付与している。
【0117】
かかるカートリッジ型のメインタンク13内の液量の検出は、液面検出装置7に代えて、メインタンク13の重量を検出する重量検出装置15によって行うことができる。
【0118】
このようなカートリッジ型のメインタンク13を用い、加圧手段14によって加圧を行う場合、送液手段には送液ポンプ6に代えて、液体供給管4の流路を開閉する電磁弁(図示せず)を用い、制御部100によって開閉制御することによってメインタンク1からサブタンク2への液体供給を行うようにしてもよい。
【0119】
また、この第3の実施形態において、サブタンク2は、図7に示す剛体のタンクにより形成したサブタンク11を用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0120】
1、13:メインタンク(メインタンク)
2、11:サブタンク(サブタンク)
3:液滴吐出ヘッド
3a:ノズル面
4、5:液体供給管
4a:液体供給管の先端
6:送液ポンプ
7:液面検出装置(第1の液量検出手段)
8、12:液面検出装置(第2の液量検出手段)
9:圧力検出装置
10:大気開放弁
14:加圧手段
15:重量検出装置(第1の液量検出手段)
20:ケーシング
20a:基準面
21:凹部
21a:開口部
22:可撓膜
23:内部空間
24:弾性部材
25:付勢力調整ねじ
26:圧力検知管
100:制御部
200:不揮発メモリ
300:通知部
400:吐出制御部
P1:第1の液量
P2:第2の液量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、液体を貯留するメインタンクと、前記液滴吐出ヘッドと前記メインタンクとの間において前記液滴吐出ヘッドへ供給するための所定量の液体を貯留するサブタンクと、前記メインタンク内の液体を前記サブタンクへ供給するための送液手段と、前記メインタンク内の液量が第1の液量まで低下したことを検出するメインタンク液量検出手段と、前記サブタンク内の液量が前記所定量を下回ったことを検出するサブタンク液量検出手段とを有し、前記サブタンク液量検出手段により前記サブタンク内の液量が前記所定量を下回ったことを検出した場合に、前記送液手段を駆動させて前記メインタンク内の液体を前記サブタンクに供給する制御を行う液滴吐出装置において、
前記送液手段の駆動による累積送液時間、累積送液量又は累積駆動回数のいずれかの検出値を取得する送液動作検出手段と、
前記メインタンク液量検出手段が前記第1の液量まで低下したことを検出した後に、前記サブタンク液量検出手段が前記所定量を下回ったことを検出したことによって前記送液手段を駆動させたときの前記送液動作検出手段の前記検出値を監視することにより、前記メインタンク内の液量が前記第1の液量よりも少ない第2の液量まで低下したことを検出する残量検出手段とを有することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記サブタンクは、内部の圧力を所定範囲に維持することにより前記液滴吐出ヘッドに対する背圧を所定範囲に維持するように機能する背圧維持装置であることを特徴とする請求項1記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記メインタンク内の液量が前記第1の液量から前記第2の液量となるまでの前記送液動作検出手段の前記検出値の基準値を予め記憶した記憶手段を有し、
前記残量検出手段は、前記記憶手段に記憶された前記基準値と前記検出値との差が所定の値に達したときに、前記メインタンク内の液量が前記第2の液量まで低下したことを判断することを特徴とする請求項1又は2記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記記憶手段に記憶させる前記基準値を設定する基準値設定手段を有し、
前記基準値設定手段は、前記メインタンク液量検出手段が前記第1の液量となったことを検出したときから前記送液手段を駆動させて前記サブタンク内の液体を消費するよう制御すると共に、前記サブタンク液量検出手段が前記所定量を下回ったことを検出した後、前記送液手段を駆動させても該サブタンク液量検出手段が前記所定量を下回ったことを検出したままの状態となるまでの前記送液動作検出手段の前記検出値に基づいて基準値を設定し、前記記憶手段に記憶させることを特徴とする請求項3記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記残量検出手段は、前記メインタンク内が前記第2の液量となったことを判断した時に、少なくとも前記送液手段の駆動を禁止させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記残量検出手段によって前記第2の液量が検出された時に、前記メインタンクへの液体補充又は前記メインタンクの交換を促す通知を行う通知手段を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
装置電源投入時に前記メインタンク液量検出手段が前記第1の液量を検出した場合に、液滴吐出動作を開始させない制御を行う動作制御手段を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記送液動作検出手段は、前記メインタンク液量検出手段が前記第1の液量を検出しなくなった場合に、それまでに検出された前記検出値をクリアすることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の液滴吐出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−228112(P2010−228112A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75241(P2009−75241)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】