説明

液滴噴射装置及び液滴噴射方法

【課題】検査部におけるインクの検出を確実に行う。
【解決手段】フレキシブルフィルム61aの被噴射領域に対して、シアンの紫外線硬化型インクとマゼンタの紫外線硬化型インクと、イエローの紫外線硬化型インクと、ブラックの紫外線硬化型インクが噴射され、さらに紫外線が照射されることによって、被噴射領域Rに対して撥液層100が形成される。さらに、撥液層の表面に対して紫外線硬化型インクSを噴射して配置する。そして、制御部は、検査用噴射部61をスライド装置によって移動させて、検査用噴射部に着弾されたインクを検査用スキャナーに撮像させ、この撮像データに基づいてインク噴射状態を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴噴射装置及び液滴噴射方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液滴噴射装置では、インクを噴射するノズルが形成された噴射ヘッドを備えており、この噴射ヘッドと被噴射物とを相対移動させることによって、被噴射物の広い範囲にインクを噴射配置する。
【0003】
このような液滴噴射装置には、例えば、特許文献1及び特許文献2に示すように、ノズルのインク噴射状態を検査するための検査部が設置されている。
そして、液滴噴射装置は、検査部にてノズルのインク噴射状態が異常であると検出された場合には、ノズルに対するクリーニング等を行うことによってノズルのインク噴射状態を回復させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−76067号公報
【特許文献2】特開2009−255086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、検査部では、検査用噴射部に対してインクを噴射し、着弾したインクを撮像している。そして、インク噴射状態は、撮像された撮像データに基づいて行われる。
しかしながら、検査用噴射部に対して噴射されたインクが画像処理において検出し難い場合があり、インク噴射状態を誤認する恐れがある。
特に、近年は、オーバーコートやアンダーコートを行うためのクリアインクを用いる場合があり、インクの検出が困難となっている。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、検査部におけるインクの検出を確実に行うことができる液滴噴射装置及び液滴噴射方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段として、本発明は、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、被噴射物に対してインクを噴射するノズルを有する噴射ヘッドと、上記被噴射物の外部にて上記インクを受けて上記ノズルのインク噴射状態を検査する検査部とを備える液滴噴射装置であって、上記検査部において上記インクが噴射される被噴射領域が上記インクに対して撥液性を有するという構成を採用する。
【0009】
このような構成を採用する本発明によれば、検査部の被噴射領域が撥液性を有しているため、検査部に噴射されたインクが球形に近づき、インクの高さが増す。クリアインクであっても完全に透明なものではないため、インクの高さが増すに連れて光が透過し難くなる。つまり、インクの高さが高くなるに連れて、インクの存在する箇所と、その周囲との濃淡差が大きくなる。したがって、検査部の被噴射領域が撥液性を有し、当該被噴射領域に噴射されたインクの高さが増すことによって、インクの検出を容易かつ確実に行うことが可能となる。
したがって、本発明によれば、検査部におけるインクの検出を確実に行うことが可能となる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記インクが紫外線照射によって硬化する紫外線硬化型インクであり、上記ノズルのインク噴射状態を検査するための上記インクの噴射よりも前に、上記被噴射領域に上記インクを噴射し、噴射された上記インクを硬化させることで上記被噴射領域に撥液性を付与する制御を行うという構成を採用する。
【0011】
紫外線硬化型インクは、紫外線が照射されて硬化されることによって硬化される前のインクに対する撥液性を発現する。
このため、上記構成を採用する本発明によれば、予め被噴射領域がインクに対する撥液性を有していない場合であっても、被噴射領域に対して撥液性を付与することができる。
【0012】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記ノズルが、上記インクとして第1の色のインクを噴射する第1ノズルと、上記インクとして第2の色のインクを噴射する第2ノズルと、を備え、上記被噴射領域に撥液性を付与する際に、上記第1の色のインク及び上記第2の色のインクを上記被噴射領域に噴射する制御を行うという構成を採用する。
【0013】
このような構成を採用する本発明によれば、一度に多くのノズルから被噴射領域に対してインクが噴射されるため、短時間で被噴射領域に対して撥液性を付与することが可能となる。
【0014】
第4の発明は、上記第2の発明において、上記ノズルが、上記インクとしてクリアインクを噴射する第3ノズルを備え、上記被噴射領域に撥液性を付与する際に、上記クリアインクを上記被噴射領域に噴射する制御を行うという構成を採用する。
【0015】
紫外線硬化型インクは、硬化された際に、硬化される前の同種のインクに対して強い撥液性を発現する。クリアインクを用いる液滴噴射装置において、最も画像処理により検出が難しいのは、光の透過率が大きいクリアインクであるが、本発明によれば、被噴射領域がクリアインクに対して大きな撥液性を有することとなり、クリアインクをより確実に検出することが可能となる。
【0016】
第5の発明は、上記第2〜第4いずれかの発明において、上記被噴射領域に撥液性を付与する際に、上記噴射ヘッドの移動速度を、上記被噴射物に上記インクを噴射する際の上記噴射ヘッドの移動速度よりも遅くする制御を行うという構成を採用する。
【0017】
このような構成を採用する本発明によれば、被噴射領域に撥液性を付与する際の噴射ヘッドの移動速度が遅くなるため、被噴射領域に撥液性を付与するために噴射されたインクに対して紫外線が照射されるまでの時間が長くなり、インクを広い範囲に濡れ広がらせることが可能となる。
このため、少ないインク量で、被噴射領域の全域にインクを配置することが可能となる。
【0018】
第6の発明は、上記第2〜第5いずれかの発明において、上記噴射ヘッドを主走査方向に繰り返し往復移動させながら上記被噴射物に対して上記ノズルから上記インクを噴射させ、上記噴射ヘッドの1回目の往復移動の際に上記被噴射領域に上記インクを噴射し、上記噴射ヘッドの2回目以降の往復移動の際に上記被噴射領域に噴射された上記インクに上記紫外線を照射することによって上記被噴射領域に撥液性を付与する制御を行うという構成を採用する。
【0019】
このような構成を採用する本発明によれば、2回目以降の噴射ヘッドの往復移動の際にインクに対して紫外線が照射されるため、噴射ヘッドが少なくとも1回往復移動するまでは、撥液性を付与するために噴射されたインクに対して紫外線が照射されず、インクが濡れ広がる時間を確保することができる。
したがって、少ないインク量で、被噴射領域の全域にインクを配置することが可能となる。
【0020】
第7の発明は、上記第2〜第6いずれかの発明において、上記被噴射領域に撥液性を付与する際の上記インクの噴射解像度を、上記ノズルのインク噴射状態を検査する際の噴射解像度及び上記被噴射物に対して上記インクを噴射する際の噴射解像度よりも粗くする制御を行うという構成を採用する。
【0021】
このような構成を採用する本発明によれば、撥液性を付与するために必要とされるインクの量を減少させることができる。
【0022】
第8の発明は、上記第2〜第7いずれかの発明において、上記被噴射領域に撥液性を付与する際の上記インクの着弾径を、上記被噴射物に対するインクの着弾径及び上記ノズルのインク噴射状態を検査する際の着弾径よりも大きくする制御を行うという構成を採用する。
【0023】
このような構成を採用する本発明によれば、撥液性を付与する際のインクの着弾径が大きくなるため、撥液性を付与する際に噴射するインクの回数を減少させることができる。
このため、より短時間で撥液性を付与するためのインクの噴射を完了することが可能となる。
【0024】
第9の発明は、上記第1〜第8いずれかの発明において、上記ノズルのインク噴射状態を検査する際に上記検査部の同じ位置に複数回インクを噴射する制御を行うという構成を採用する。
【0025】
このような構成を採用する本発明によれば、インク噴射状態を検査する際に、先に噴射されたインクに後に噴射されたインクが重なるため、検査部におけるインクの高さをより高くすることが可能となり、インクの検出をより容易かつ確実に行うことが可能となる。
【0026】
第10の発明は、上記第1〜第8いずれかの発明において、上記ノズルのインク噴射状態を検査する際に単一のノズルから上記検査部の異なる位置にインクを噴射する制御を行うという構成を採用する。
【0027】
このような構成を採用する本発明によれば、単一のノズルに対するインク噴射状態の検査を、検査部の複数箇所に噴射されたインクから判断することができる。このため、より確実にインク噴射状態を判断することが可能となる。
【0028】
第11の発明は、上記第10の発明において、単一のノズルから噴射されるインクが上記被噴射領域において直線状に繋がるように制御を行うという構成を採用する。
【0029】
このような構成を採用する本発明によれば、単一のノズルから噴射されたインクが検査部において直線状に繋がるため、ノズルから噴射されたインクが他のインクと繋がっていない場合と比較して、画像処理によるインクの検出を容易に行うことができる。
【0030】
第12の発明は、上記第1〜第11いずれかの発明において、上記被噴射領域の幅が上記ノズルのインク噴射状態を検査する際に噴射される上記インクの着弾径の2倍以上に設定されているという構成を採用する。
【0031】
このような構成を採用する本発明によれば、インク噴射状態を検査する際に噴射されるインクの一部が被噴射領域を超えてしまうことを防止し、インク噴射状態を検査するためのインクを確実に被噴射領域に配置することが可能となる。
【0032】
第13の発明は、被噴射物に対して噴射ヘッドに形成されたノズルから上記被噴射物に対してインクを噴射すると共に、上記被噴射物の外部に設けられた検査部に対して上記インクを噴射して上記ノズルのインク噴射状態を検査する液滴噴射方法であって、上記検査部において上記インクが噴射される被噴射領域が上記インクに対して撥液性を有するという構成を採用する。
【0033】
このような構成を採用する本発明によれば、検査部の被噴射領域が撥液性を有しているため、検査部に噴射されたインクが球形に近づき、インクの高さが増す。クリアインクであっても完全に透明なものではないため、インクの高さが増すに連れて光が透過し難くなる。つまり、インクの高さが高くなるに連れて、インクの存在する箇所と、その周囲との濃淡差が大きくなる。したがって、検査部の被噴射領域が撥液性を有し、当該被噴射領域に噴射されたインクの高さが増すことによって、インクの検出を容易かつ確実に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態における液滴噴射装置の概略構成を示す模式図であって、(a)は液滴噴射装置の平面図、(b)は液滴噴射装置の側面図である。
【図2】(a)〜(c)は噴射ヘッドの概略構成を示す図である。
【図3】噴射ヘッドの噴射面(下面)を示す平面図である。
【図4】ヘッドユニットの概略構成を示す底面図である。
【図5】本発明の第1実施形態における液滴噴射装置が備える検査部6を含む模式図である。
【図6】本発明の液滴噴射装置の動作説明を行うための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明に係る液滴噴射装置及び液滴噴射方法の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0036】
図1(a)、(b)は、本発明における液滴噴射装置の第1の実施形態の概略構成を示す模式図であって、(a)は液滴噴射装置の平面図、(b)は液滴噴射装置の側面図である。なお、図1(a)、(b)では、本発明の液滴噴射装置を、連続した長尺な記録媒体10(被噴射物)に対して印刷を行う、印刷装置に適用した場合について示している。図1(a)、(b)において符号1は液滴噴射装置であり、この液滴噴射装置1は、インクとして紫外線硬化型のインクを液滴噴射する噴射ヘッド20と、この噴射ヘッド20から噴射された紫外線硬化型インクS(図6等参照)に紫外線を照射する照射装置80(図4参照)とを備えている。
そして、本実施形態の液滴噴射装置1は、噴射ヘッド20を有するヘッド機構部2と、供給排出機構部3と、インク供給部(図示せず)と、メンテナンス部5と、検査部6と、制御部60と、を備えて構成されている。
【0037】
噴射ヘッド20は、インクジェット方式の噴射ヘッドであって、紫外線硬化性を有する成分を含むインク、すなわち紫外線硬化型インクSを液滴として、連続した長尺な帯状の記録媒体10の被記録箇所となる表面に向けて噴射するものである。ここで、記録媒体10としては、本実施形態では紫外線硬化型インクSによる記録が可能な媒体が用いられ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレン(PE)、ポリカーボネイト(PC)などのフレキシブルフィルムが用いられる。
【0038】
供給排出機構部3は、記録媒体10を噴射ヘッド20による記録位置に供給し、また、この記録位置から排出するものである。インク供給部は、貯留タンク(図示せず)に貯留したインクを噴射ヘッド20に供給するためのものである。メンテナンス部5は、噴射ヘッド20の保守を行うものであり、本実施形態においては噴射ヘッド20のクリーニング等を行うことによってノズル噴射状態を回復させる。
【0039】
供給排出機構部3は、供給リール31と、巻取リール32と、吸着ユニット33と、アイドラローラー37と、アイドラローラー38と、Y軸走査機構42と、を備えて構成されている。
Y軸走査機構42は、Y軸ガイドレール42aとY軸スライダー42bとを、それぞれ二組ずつ備えて構成されている。吸着ユニット33は、吸着テーブル33aと、テーブル台43と、テーブル昇降機構44と、供給ローラー34と、従動ローラー34aと、媒体送りローラー36と、従動ローラー36aと、を備えて構成されている。各リール、及び各ローラーは、それぞれ回転軸まわりに回転可能になっており、それぞれの回転軸は互いに略平行になっている。
記録媒体10が送られる方向は、互いに略平行な各リール、及び各ローラーの回転軸に略直交する方向となっている。なお、各リール、及び各ローラーの回転軸の軸方向に平行な方向をX軸方向と表記し、記録媒体10の送り方向をY軸方向と表記している。
【0040】
Y軸走査機構42のY軸ガイドレール42aは、吸着テーブル33aを挟んでX軸方向の両側にそれぞれ1つずつ配設されており、Y軸方向に延在している。Y軸スライダー42bは、テーブル台43の底面に設けられ、その状態でY軸ガイドレール42a上に配設されたもので、Y軸駆動モーター(図示せず)によってY軸ガイドレール42a上をその延在方向に摺動するように構成されたものである。
【0041】
吸着ユニット33の吸着テーブル33aは、テーブル台43上に固定されたテーブル昇降機構44に固定されたものである。この吸着テーブル33aは、その上面上に記録媒体10を保持するようになっており、したがってその上面は、記録媒体10を保持する側の面、すなわち保持面となっている。このような構成のもとに、保持面上に記録媒体10が保持された状態で、上記噴射ヘッド20から紫外線硬化型インクSが噴射され、このインクの液滴が記録媒体10上に着弾するようになっている。
【0042】
この吸着テーブル33aには、図示しない負圧源に接続する吸着用孔又は吸着用溝からなる吸着用凹部(図示せず)が設けられ、該吸着用凹部は上記保持面上に開口している。これにより、記録媒体10はその所定部位が保持面上に位置決めされた状態で、上記負圧源に接続する吸着用凹部によって吸引・吸着されることにより、保持面上に保持固定されるようになっている。
【0043】
上記テーブル昇降機構44は、吸着テーブル33aをZ軸方向に昇降させるもので、吸着テーブル33aの保持面(吸着面)をZ軸方向における所定の位置となる吸着位置、及びこの吸着位置よりテーブル台43に近い退避位置との間で昇降させ、かつ、各位置にて保持固定するようになっている。吸着位置にあるときの吸着テーブル33aの保持面の位置は、後述する供給ローラー34の外周、及び媒体送りローラー36の外周のそれぞれの上端の位置に、略一致している。
【0044】
吸着テーブル33aのY軸方向における両側には、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとが配設されている。これら供給ローラー34及び従動ローラー34aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとは、支持部材(図示せず)を介してテーブル台43に固定され、その状態で吸着テーブル33aを挟んでその両側に配設されている。供給ローラー34及び従動ローラー34aは、吸着テーブル33aの上流側、すなわち供給リール31側に配設されており、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aは、吸着テーブル33aの下流側、すなわち巻取リール32側に配設されている。
【0045】
テーブル台43は、Y軸走査機構42によってY軸方向に移動可能になっており、かつ、Y軸方向における任意の位置に保持可能になっている。また、このテーブル台43上に配置された吸着テーブル33a、供給ローラー34及び従動ローラー34a、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aも、Y軸走査機構42によってY軸方向に移動可能になっており、かつ、Y軸方向における任意の位置に保持可能になっている。
【0046】
供給排出機構部3が備える供給リール31と、アイドラローラー37と、吸着ユニット33と、アイドラローラー38と、巻取リール32とは、記録媒体10の供給方向であるY軸方向においてこの順に配置されており、供給リール31側が記録媒体10の供給方向における上流側、巻取リール32側が下流側になっている。
【0047】
また、吸着ユニット33において、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、吸着テーブル33aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとは、Y軸方向においてこの順に配置されている。したがって、供給排出機構部3において、供給リール31と、アイドラローラー37と、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、吸着テーブル33aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aと、アイドラローラー38と、巻取リール32とは、Y軸方向においてこの順に配置されている。
【0048】
供給リール31には、帯状の記録媒体10が巻かれており、供給モーター(図示せず)によって供給リール31が回転させられることにより、記録媒体10が繰り出されるようになっている。従動ローラー34aは、その外周が供給ローラー34の外周に接して配置されており、付勢装置(図示せず)によって供給ローラー34に押し付けられている。供給ローラー34は、供給モーター(図示せず)によって回転させられるようになっており、この供給ローラー34に直接又は間接的に接する従動ローラー34aは、供給ローラー34の回転に従動して回転するようになっている。このような構成のもとに、これら供給ローラー34と従動ローラー34aとの間に挟持される記録媒体10は、供給ローラー34の回転によって送られるようになっている。
【0049】
アイドラローラー37は、その回転軸がZ軸方向に揺動可能になっており、かつ、揺動方向の一方(本実施形態では下方)に付勢されている。また、このアイドラローラー37は、記録媒体10における、供給リール31と、供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分に、上記付勢力によって当接させられている。このような構成のもとに記録媒体10は、アイドラローラー37によって付勢されることにより、供給リール31とアイドラローラー37との間、及びアイドラローラー37と供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分が、弛み無く張られた状態になっている。
【0050】
したがって、記録媒体10は、供給ローラー34と従動ローラー34aとの間に供給されて挟持される際の状態が、略平坦に維持され易くなっている。なお、供給ローラー34における記録媒体10の供給速度と、供給リール31における記録媒体10の繰り出し速度との差によって、供給リール31と供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分の弛み量が変動する。しかし、弛み量の変動に追従してアイドラローラー37の位置が変わることにより、弛み無く張られた状態に維持されるようになっている。また、吸着ユニット33の移動による、供給リール31と供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間における記録媒体10の弛み量の変動についても、同様にして、弛み無く張られた状態に維持されるようになっている。
【0051】
従動ローラー36aは、その外周が供給ローラー36の外周に接して配置されており、付勢装置(図示せず)によって媒体送りローラー36に押し付けられている。媒体送りローラー36は、媒体送りモーター(図示せず)によって回転させられるようになっており、この媒体送りローラー36に直接又は間接的に接する従動ローラー36aは、媒体送りローラー36の回転に従動して回転するようになっている。このような構成のもとに、これら媒体送りローラー36と従動ローラー36aとの間に挟持される記録媒体10は、媒体送りローラー36の回転によって送られるようになっている。
【0052】
ここで、媒体送りローラー36による送り量は、供給ローラー34による送り量より多く設定されている。また、媒体送りモーターから媒体送りローラー36への動力伝達機構には、トルク制御機構(図示せず)が組み込まれている。このような構成のもとに、媒体送りローラー36において供給ローラー34より速く送られる記録媒体10は、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間の部分が、上記トルク制御機構で制御されたトルクに応じた張力で張られるようになっている。
【0053】
この張られた部分には、吸着テーブル33aの保持面が対向している。すなわち、記録媒体10における、吸着テーブル33aの保持面上に位置する部分は、上記トルク制御機構で制御されたトルクに応じた張力で張られている。ここで、前述した吸着位置に位置する吸着テーブル33aの保持面の位置は、媒体送りローラー36の外周上端と供給ローラー34の外周上端とがなす面の位置に略一致している。したがって、吸着位置に位置する吸着テーブル33aの保持面は、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間に張られた記録媒体10に接してこれを保持するようになっている。
【0054】
吸着テーブル33aは、その保持面上に記録媒体10を保持するようになっている。保持面は平坦な面であり、したがって記録媒体10における被保持面、すなわち被記録面と反対の側の面は、保持面によって平坦な状態に保持されるようなっている。また、この保持面には、図示しないものの、吸着用孔又は吸着用溝からなる吸着用凹部が設けられており、該吸着用凹部によって記録媒体10はその被保持面が吸着され、吸着テーブル33aの保持面上に吸着・保持されるようになっている。すなわち、吸着用凹部には、吸引ポンプ等の図示しない負圧源が配管等を介して接続されており、これによって吸着用凹部はその開口部上に位置する記録媒体10を吸着するようになっている。
【0055】
巻取リール32は、巻取モーター(図示せず)によって回転させられるようになっており、これにより、媒体送りローラー36から送り出された記録媒体10は、巻取リール32に巻き取られるようになっている。
アイドラローラー38は、その回転軸がZ軸方向に揺動可能になっており、かつ、揺動方向の一方に付勢されている。また、このアイドラローラー38は、記録媒体10における、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aと、巻取リール31との間の部分に、上記付勢力によって当接させられている。このような構成のもとに記録媒体10は、アイドラローラー38によって付勢されることにより、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aと巻取リール31との間、及びアイドラローラー38と巻取リール32との間の部分が、弛み無く張られた状態になっている。
【0056】
したがって、記録媒体10は、巻取リール32に巻き取られる際の状態が、略平坦に維持され易くなっている。なお、媒体送りローラー36における記録媒体10の送り速度と、巻取リール32における記録媒体10の巻き取り速度との差によって、媒体送りローラー36と巻取リール32との間の部分の弛み量が変動する。しかし、弛み量の変動に追従してアイドラローラー38の位置が変わることにより、弛み無く張られた状態に維持されるようになっている。また、吸着ユニット33の移動による、媒体送りローラー36と巻取リール32との間における記録媒体10の弛み量の変動についても、同様にして、弛み無く張られた状態に維持されるようになっている。
【0057】
このような状態のもとで、記録媒体10は供給リール31から巻取リール32まで送られ、途中の吸着テーブル(媒体保持部)33aの保持面上に保持された部位に、記録(印刷)がなされるようになっている。
【0058】
ヘッド機構部2は、ヘッドキャリッジ22と、X軸走査機構11とを備えている。
X軸走査機構11は、X軸ガイドレール11aとX軸スライダー11bと支持台11dとをそれぞれ二組備え、さらにガイドレール支持柱11cを4本備えて構成されている。支持台11dは、吸着テーブル33aのX軸方向に、該吸着テーブル33aを挟んでその両側にそれぞれ一つずつ配設されており、前述した一対のY軸ガイドレール42a、42aを間に挟む位置に配設されている。一方のY軸ガイドレール42aと支持台11dとの間には、メンテナンス部5が配設されている。
【0059】
二つの支持台11d、11dのそれぞれの上には、そのY軸方向おける両端部に、ガイドレール支持柱11cがそれぞれ1本ずつ、計2本立設されている。二つのX軸ガイドレール11aのうちの一方は、支持台11dの供給リール31の側の端部にそれぞれ立設されたガイドレール支持柱11c間に架け渡されて、吸着テーブル33aの上方にてX軸方向に延在した状態で配設されている。また、一対のX軸ガイドレール11aのうちの他方は、支持台11dの巻取リール32の側の端部にそれぞれ立設されたガイドレール支持柱11c間に架け渡されて、吸着テーブル33aの上方にてX軸方向に延在した状態で配設されている。
【0060】
X軸スライダー11bは、X軸ガイドレール11a上に配設されたもので、X軸駆動モーター(図示せず)によってX軸ガイドレール11a上をその延在方向に摺動するように構成されたものである。2本のX軸ガイドレール11aのそれぞれに支持されたX軸スライダー11bには、ヘッドキャリッジ22のブリッジプレート27の両端部がそれぞれ固定されている。両端部がそれぞれX軸スライダー11bに固定されたブリッジプレート27は、X軸スライダー11bに支持された状態で、2本のX軸ガイドレール11aの間に懸架されている。このような構成のもとに、ブリッジプレート27は、X軸駆動モーターによってX軸ガイドレール11a上をその延在方向に摺動するようになっており、また、X軸方向における任意の位置に保持されるようになっている。
【0061】
ヘッドキャリッジ22は、ブリッジプレート27と、サブキャリッジ28と、ヘッドユニット21とを備えて構成されている。サブキャリッジ28は、ブリッジプレート27の下面略中央部に設けられたもので、このサブキャリッジ28の下面側には、ヘッドユニット21が固定されている。ヘッドユニット21の下面側には噴射ヘッド20が備えられており、この噴射ヘッド20の底部側には、図2(a)に示すようにノズル24を形成したノズル基板25が配設されている。このような構成のもとに噴射ヘッド20は、上記の吸着テーブル33aの保持面上に位置させられるようになっており、その際、ノズル基板25を保持面に対向させるようになっている。
【0062】
ここで、吸着ユニット33はY軸走査機構42によってY軸方向に移動可能になっており、したがって吸着テーブル33aの保持面はY軸方向に移動可能になっている。すなわち、記録媒体10における吸着テーブル33aの保持面に吸着保持された部位を、Y軸方向に走査させることが可能になっている。
一方、サブキャリッジ28に固定されたヘッドユニット21の噴射ヘッド20は、X軸走査機構11によってサブキャリッジ28が設けられたブリッジプレート27がX軸方向に移動させられることにより、X軸方向に走査させられるようになっている。
なお、本実施形態においては、吸着テーブル33aの−X方向側に検査部6が設置されている。そして、X軸走査機構11は、噴射ヘッド20が後述する検査部6の検査用噴射部61に到達可能なようにX軸ガイドレール11aの長さが設定されている。
【0063】
このような構成のもとに、X軸走査機構11によってヘッドユニット21の噴射ヘッド20をX軸方向に走査させ、Y軸走査機構42によって記録媒体10における吸着テーブル33aの保持面に吸着保持された部位をY軸方向に走査させることができる。すなわち、記録媒体10における吸着テーブル33aの保持面に吸着保持された部位のほぼ全面に対して、噴射ヘッド20のノズル24を対向させることができるようになっている。
【0064】
よって、吸着テーブル33aの保持面上に吸着保持された記録媒体10の被記録部分を、Y軸方向の噴射位置まで移動させて停止させ、ヘッドユニット21のX軸方向の移動に同調させて、噴射ヘッド20から紫外線硬化型インクSを液滴として噴射させることで、記録媒体10上の所望位置に紫外線硬化型インクSの液滴(ドット)を配することができる。したがって、ヘッドユニット21をX軸方向に移動させる主走査と、吸着テーブル33aの保持面に吸着保持された記録媒体10をY軸方向に移動させる副走査(改行)とを、後述するように制御部60で制御することにより、吸着テーブル33aの保持面に保持された記録媒体10上の任意の位置にヘッドユニット21の噴射ヘッド20を対向させ、その状態で紫外線硬化型インクSを液滴として噴射させることができる。これにより、記録媒体10に所望の画像を形成(記録)することが可能になる。つまり、本実施形態においては、噴射ヘッド20を主走査方向(X方向)に繰り返し往復移動させながら記録媒体10に対して紫外線硬化型インクSを噴射させ、さらに噴射ヘッド20の片道移動(往移動あるいは復移動)ごとに記録媒体10を副走査方向に改行し、これにより、記録媒体10に所望の画像を形成する。
【0065】
次に、噴射ヘッド20について、図2(a)〜(c)、図3を参照して説明する。図2(a)〜(c)は噴射ヘッド20の概略構成を示す図であり、図2(a)は噴射ヘッド20の概略構成を示す外観斜視図、(b)は噴射ヘッド20の内部構造を説明するための要部斜視図、(c)は噴射ヘッド20のノズル部分を示す要部側断面図である。また、図3は噴射ヘッド20の噴射面(下面)を示す平面図であって、ノズル列の概略構成を説明するための図である。なお、図2(a)、図3に示したX軸、Y軸、(Z軸)は、噴射ヘッド20が液滴噴射装置1に組み込まれた状態を示す図1(a)、(b)における、X軸、Y軸、(Z軸)に一致している。
【0066】
図2(a)に示すように噴射ヘッド20は、ノズル基板25を備えて形成されたもので、ノズル基板25には、多数のノズル24がY軸方向に沿って直線状に配列されてなるノズル列70が、X軸方向に複数列形成されている。本実施形態では、図3に示すようにノズル列70が8列形成されている。これらノズル列70は、本実施形態では色材を有する画像形成用のインク、すなわちカラーインクを噴射するノズルを配列した第1のノズル列71と、アンダーコート用又はオーバーコート用のインク、すなわち色材を有さないクリアインクや白色インク等を噴射するノズルを配列した第2のノズル列72と、からなっている。
【0067】
具体的には、図3中において左側から順に、第1のノズル列71として、カラーインクとしてのC(シアン)を噴射する第1のノズル列71C、M(マゼンタ)を噴射する第1のノズル列71M、Y(イエロー)を噴射する第1のノズル列71Y、黒(K)を噴射する第1のノズル列71Kが、それぞれ1列ずつ配置されている。さらに、第2のノズル列72として、アンダーコート用のクリアインクを噴射する第2のノズル列72CR、オーバーコート用の白色インクを噴射する第2のノズル列72Wが、それぞれ2列ずつ配置されている。すなわち、本実施形態では、第2のノズル列72CR、72Wの数が、カラーインクを噴射する第1のノズル列71C、71M、71Y、71Kのそれぞれの数より、多く配置されている。
【0068】
ここで、図3中において左側から奇数番目のノズル列、すなわち1番目の第1のノズル列71C、3番目の第1のノズル列71Y、5番目の第2のノズル列72CR、7番目の第2のノズル列72Wは、Y軸方向において対応するノズル24どうしの位置が各ノズル列間において同じに配置され、かつ、Y軸方向沿うノズル24間の間隔が全て同じに形成配置されている。したがって、各ノズル列の各ノズル24は等ピッチに配置されている。同様に、図3中において左側から偶数番目のノズル列、すなわち2番目の第1のノズル列71M、4番目の第1のノズル列71K、6番目の第2のノズル列72CR、8番目の第2のノズル列72Wも、Y軸方向において対応するノズル24どうしの位置が各ノズル列間において同じに配置され、かつ、Y軸方向沿うノズル24間の間隔が全て同じに形成配置されている。したがって、各ノズル列の各ノズル24は等ピッチに配置されている。
【0069】
ただし、X軸方向において隣り合う二つのノズル列間、例えば第1のノズル列71Cと第1のノズル列71Mとの間、第1のノズル列71Yと第1のノズル列71Kの間、二つの第2のノズル列72CR間、二つの第2のノズル列72W間では、それぞれ、ノズル24の位置がY軸方向において半ピッチずれた千鳥状になっている。
なお、各ノズル列71、72は、本実施形態では全てノズル24を180個配列して形成されている。
そして、このようなノズル24から紫外線硬化型インクSを液滴として噴射し、対向する記録媒体10の面上に着弾させることで、噴射ヘッド20は記録媒体10上の所望位置に紫外線硬化型インクSを配することができるようになっている。
【0070】
図2(b)、(c)に示すように噴射ヘッド20は、ノズル基板25上に圧力室プレート51を積層し、さらに圧力室プレート51上に振動板52を積層したものである。圧力室プレート51には、噴射ヘッド20に供給される紫外線硬化型インクSが常に充填される液たまり55が形成されており、液たまり55は、振動板52とノズル基板25と、壁部(図示せず)とに囲まれた空間からなっている。紫外線硬化型インクSは、振動板52の液供給孔53を経由して液たまり55に供給されるようになっている。また、圧力室プレート51には、複数のヘッド隔壁57によって区画された圧力室58が形成されている。
【0071】
圧力室58はノズル24のそれぞれに対応して設けられており、圧力室58の数とノズル24の数とは同じになっている。圧力室58には、2つのヘッド隔壁57の間に位置する供給口56を介して、液たまり55から機能液が供給されるようになっている。ヘッド隔壁57の圧力室58とノズル24と供給口56との組は、液たまり55に沿って1列に並んでおり、1列に並んだノズル24がノズル列24Aを形成している。図2(b)では図示を省略しているが、ノズル24を含むノズル列24Aに対して、その側方にもう1列のノズル列24Aが形成されている。
【0072】
図2(c)に示すように振動板52上には、それぞれの圧力室58に対応して、すなわち個々のノズル24に対応して圧電素子59が配置されている。圧電素子59は、下部電極と上部電極との間に圧電層を挟持したもので、電極間に駆動波形(駆動電圧)が印加されることで、対応するノズル24から紫外線硬化型インクSを噴射させるようになっている。ここで、圧電素子59は、図1(a)、(b)に示した制御部60によって制御されるようになっている。
【0073】
次に、ヘッド機構部2が備えるヘッドユニット21の概略構成について、図4を参照して説明する。図4は、ヘッドユニット21の概略構成を示す底面図である。なお、図4に示したX軸及びY軸は、図1に示したX軸及びY軸に一致している。
図4に示すようにヘッドユニット21は、サブキャリッジ28の下面に取り付けられたユニットプレート23と、ユニットプレート23の下面側に搭載された9個の噴射ヘッド20とを有し、さらにこれら9個の噴射ヘッド20のX軸方向における両側に、紫外線を照射する照射装置80をそれぞれ配設したものである。なお、図4では噴射ヘッド20を9個配設しているが、噴射ヘッド20の数についてはこれに限定されることなく、例えば15個配設した構成であってもよい。
【0074】
噴射ヘッド20は、ノズル基板25を下方に向けた状態で、保持部材(図示せず)によってユニットプレート23に固定されている。また、9個の噴射ヘッド20は、Y軸方向に分かれて、それぞれ3個ずつの噴射ヘッド20からなるヘッド組20Aを、3つ形成している。なお、各噴射ヘッド20のノズル列24Aは、ヘッドユニット21が液滴噴射装置1に取り付けられた状態で、Y軸方向に沿って配列させられている。
【0075】
一つのヘッド組20Aを構成する3個の噴射ヘッド20は、Y軸方向において、互いに隣り合う噴射ヘッド20の、一方の噴射ヘッド20の端のノズル24に対して、もう一方の噴射ヘッド20の端のノズル24が、1ノズルピッチずれて配置されている。このような構成のもとにヘッド組20Aが有する3個の噴射ヘッド20は、全てのノズル24のX軸方向の位置を同じにすると、全てのノズル24がY軸方向に等ピッチで並ぶようになる。すなわち、X軸方向の同じ位置において、それぞれの噴射ヘッド20が有するそれぞれのノズル列24Aを構成するノズル24から噴射される液滴は、設計上では、Y軸方向に等間隔に並んで一直線に着弾するようになる。
【0076】
また、ヘッドユニット21が有する3つのヘッド組20Aは、全てのノズル24のX軸方向の位置を同じにすると、全てのノズル24がY軸方向に等ピッチで並ぶようになっている。すなわち、X軸方向の同じ位置において、それぞれの噴射ヘッド20が有するそれぞれのノズル列24Aを構成するノズル24から噴射される液滴は、設計上では、Y軸方向に等間隔に並んで一直線に着弾するようになっている。したがって、ヘッドユニット21が備える三つのヘッド組20Aにおける9個の噴射ヘッド20が有する18列のノズル列24Aは、1本のノズル列として扱うことができる。
【0077】
照射装置80は、紫外線光源(図示せず)を備えて構成されたもので、紫外線光源を下方に向けた状態でサブキャリッジ28又はユニットプレート23に固定されている。照射装置80は、上記したように噴射ヘッド20のX軸方向における両側にそれぞれ配設されたものであり、これによって噴射ヘッド20から記録媒体10に向けて紫外線硬化型インクSが噴射された直後に、記録媒体10に着弾した紫外線硬化型インクSに対して紫外線を照射できるようになっている。すなわち、噴射ヘッド20はX軸方向に走査(主走査)されつつ、紫外線硬化型インクSを噴射する。したがって、ユニットプレート23がX軸方向に走査された際、走査方向に対して後側に位置する照射装置80から記録媒体10に向けて紫外線を照射することにより、記録媒体10上に着弾している紫外線硬化型インクSに対して紫外線を照射することができるようになっている。
【0078】
ここで、紫外線光源としては、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等を用いることができる。また、紫外帯域で発光するLEDを用いることもできる。
【0079】
このような紫外線光源から照射される紫外線によって硬化する紫外線硬化型インクSとしては、ビヒクル、光重合開始剤および顔料の混合物に、消泡剤、重合禁止剤等の補助剤を添加して調合されたものが挙げられる。ビヒクルは、光重合硬化性を有するオリゴマー、モノマー等を、反応性希釈剤により粘度調整して調合される。したがって、インクを硬化させる目的で溶媒を揮発させることはない。
【0080】
ビヒクルとしては、単官能あるいは多官能の重合性化合物が使用できる。より具体的には、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等のオリゴマー(プレポリマー)を例示でき、インクとしての粘度を調整する反応性希釈剤もこれらの材料を用いることができる。
【0081】
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系が広く用いられる。より具体的には、4−benzoyl−N,N,N−trimethyl benzene methaneannmonium chloride、2−hydroxy 3−(4−benzoyl−phenoxy)−N,N,N− trimethyl 1−propane annmonium chloride、4−benzoyl−N,N−dimethyl N−[2− (1−oxo−2−propenyloxy) ethyl] benzene methammonium bromide等、第4級アンモニウム塩型の水溶性有機物等を用いることができる。この種の光重合開始剤は、その組成に応じて、紫外線吸収特性、反応開始効率、黄変性等が異なるので、インクとしての色等に応じて使い分けられる。
【0082】
重合禁止剤としては、ラジカル捕捉能力を有してラジカル重合を阻害する化合物であれば何れも使用できる。ただし、インクジェット式記録装置における噴射適性等を配慮すると、ハイドロキノン類、カテコール類、ヒンダードアミン類、フェノール類、フェノチアジン類、縮合芳香族環のキノン類から選択された少なくとも1種類以上の化合物が好ましい。
【0083】
ハイドロキノン類としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、1−o−2,3,5−トリメチルハイドロキノン、2−tert−ブチルハイドロキノン等を例示できる。カテコール類としては、カテコール、4−メチルカテコール、4−tert−ブチルカテコール等を例示できる。ヒンダードアミン類としては、テトラメチルピペリジニル基を有する化合物等を例示できる。
【0084】
また、フェノール類としては、フェノール、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸アルキルエステル等を例示できる。フェノチアジン類としては、フェノチアジン等を例示できる。上記縮合芳香族環のキノン類としては、ナフトキノン等を例示できる。
【0085】
さらに、重合禁止剤は、カーボンブラックまたは表面に重合防止官能基を導入した無機・有機微粒子であってもよい。重合防止官能基としては、例えば、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、テトラメチルピペリジニル基、縮合芳香族環等を例示できる。
【0086】
なお、このような紫外線硬化型インクSとしては、顔料や染料等の色材(色成分)を含むカラーインクが挙げられるが、アンダーコート、オーバーコートを行うためのクリアインクを挙げることもできる。また、色材を含むものの、オーバーコートを行うために用いられる白色インクや、黒色インクも挙げることができる。
【0087】
続いて、図5を参照して、検査部6について説明する。図5は、検査部6を含む模式図であり、図1の+Y方向から見た側面図である。
検査部6は、ノズル24のインク噴射状態を検査するものであり、具体的には、ノズル24からインクが噴射されないことによって発生するドット抜けを主として検出するものである。
そして、図5に示すように検査部6は、検査用噴射部61と、検査用スキャナー62(撮像部)とを備えている。
【0088】
検査用噴射部61は、噴射ヘッド20のノズル24から検査用にインクを噴射するためのものであり、吸着テーブル33aの−X方向側に配置されている。
なお、検査用噴射部61は、例えば、噴射ヘッド20側に向けて露出される表面全域が紫外線硬化型インクが噴射可能な被噴射領域として使用可能なフレキシブルフィルム61a(検査メディア)と、インクが噴射されたフレキシブルフィルム61aの領域を巻き取る巻取り装置と、インクが噴射されてないフレキシブルフィルム61aの領域を送り出す送出し装置とを備えている。
このフレキシブルフィルム61aは、露出領域(インクが噴射可能な領域)の幅が噴射ヘッド20の幅の数倍程度に設定され、露出領域の長さがヘッドユニット21と同程度に設定されている。
つまり、検査用噴射部61では、Y方向にずらされて配置された噴射ヘッド20の各々から噴射されるインクをノズル列24Aごとに直線状に配列することができ、さらに検査用噴射部61をX方向に変位させることで、全てのノズル24からインクを噴射する動作を複数回繰り返すことが可能に構成されている。
なお、フレキシブルフィルム61aとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレン(PE)、ポリカーボネイト(PC)、ポリプロピレン(PP)などからなるフレキシブルフィルム61aを用いることができる。
【0089】
また、検査用噴射部61は、図5に示すように、X方向に移動可能なスライド装置63によって、水平方向に移動可能とされている。
そして、本実施形態においてスライド装置63は、噴射ヘッド20の下方位置から検査用スキャナー62の下方位置まで検査用噴射部61を移動可能に構成されている。
【0090】
検査用スキャナー62は、検査用噴射部61よりもさらに吸着テーブル33aから−X方向に離間して配置されており、噴射ヘッド20(ヘッドユニット21)の移動可能範囲の外部領域に固定配置されている。
そして、検査用スキャナー62は、噴射ヘッド20の移動可能範囲の外部領域にて検査用噴射部61に噴射されたインクを撮像する。
【0091】
このように、本実施形態の液滴噴射装置1においては、検査用噴射部61が水平移動可能とされ、検査用スキャナー62が固定されている。
そして、噴射ヘッド20の下方に配置された検査用噴射部61に対して噴射ヘッド20からインクが噴射され、その後、噴射ヘッド20を検査用スキャナー62に移動させて噴射されたインクが撮像される。
【0092】
図1に戻り、制御部60は、本実施形態の液滴噴射装置1の動作全体を制御するものである。例えば、制御部60は、X軸走査機構11を制御することでX軸方向の主走査をなさせるとともに、Y軸走査機構42を制御することでY軸方向の副走査をなさせるようになっている。さらに、このようなX軸走査機構11及びY軸走査機構42の制御による走査制御とともに、各走査時でのノズル24(ノズル列70)からの噴射制御をなすようになっている。つまり、各走査に対応して噴射を制御する、噴射制御部としての機能も有している。
【0093】
そして、本実施形態の液滴噴射装置1において制御部60は、検査部6のフレキシブルフィルム61aに対して撥液性を付与する工程(以下、撥液性付与工程と称する)と、各ノズル24のインク噴射状態を検査する工程(以下、検査工程と称する)と、記録媒体10に描画を行う工程(以下、描画工程と称する)とを行う。
【0094】
なお、撥液性付与工程は、検査工程よりも前に行われるものであり、検査工程で紫外線硬化型インクが噴射される被噴射領域に紫外線硬化型インクを噴射し、噴射された紫外線硬化型インクを硬化させることで被噴射領域に撥液性を付与する工程である。
つまり、本実施形態の液滴噴射装置1において制御部60は、ノズル24のインク噴射状態を検査するための紫外線硬化型インクの噴射よりも前に、フレキシブルフィルム61aの被噴射領域に紫外線硬化型インクを噴射し、噴射された紫外線硬化型インクを硬化させることで被噴射領域に撥液性を付与する制御を行う。
【0095】
そして、検査工程においては、撥液性が付与された被噴射領域に対して紫外線硬化型インクが噴射される。
つまり、本実施形態の液滴噴射装置1においては、検査部6のフレキシブルフィルム61aの被噴射領域が撥液性を有し、この撥液性を有する被噴射領域に対して紫外線硬化型インクが噴射される。
【0096】
また、本実施形態の液滴噴射装置1において制御部60は、撥液性付与工程において、シアンの紫外線硬化型インクを噴射するノズル24と、マゼンタの紫外線硬化型インクを噴射するノズル24と、イエローの紫外線硬化型インクを噴射するノズル24と、ブラックの紫外線硬化型インクを噴射するノズル24との全てからフレキシブルフィルム61aの被噴射領域に対し紫外線硬化型インクを噴射する。
【0097】
このような構成の液滴噴射装置1によって描画工程を行うことで、記録媒体10に対し紫外線硬化型インクを噴射し、所望の画像を印刷するには、まず、制御部60により、X軸走査機構11におけるX軸駆動モーターやY軸走査機構42におけるY軸駆動モーターを駆動させ、噴射ヘッド20と吸着テーブル33a上の記録媒体10との相対的位置を逐次変化させる。また、このような走査制御と並行して、噴射ヘッド20の圧電素子59に駆動波形(駆動電圧)を印加して駆動させ、噴射ヘッド20の各ノズル列70から紫外線硬化型インクを記録媒体10に向けて噴射し、着弾させ、さらに紫外線を照射して紫外線硬化型インクを硬化させる。
【0098】
また、撥液性付与工程を行う場合には、フレキシブルフィルム61aの被噴射領域(露出面)に対して、シアンの紫外線硬化型インクと、マゼンタの紫外線硬化型インクと、イエローの紫外線硬化型インクと、ブラックの紫外線硬化型インクが噴射され、さらに紫外線が照射されることによって、図6(a)に示すように、被噴射領域Rに対して撥液層100が形成され、これによって被噴射領域Rに対して撥液性が付与される。
【0099】
また、検査工程を行う場合には、図6(b)に示すように、撥液層100の表面に対して紫外線硬化型インクSを噴射して配置する。そして、制御部60は、検査用噴射部61をスライド装置63によって移動させて、検査用噴射部61に着弾されたインクを検査用スキャナー62に撮像させ、この撮像データに基づいて(画像処理によって)インク噴射状態を判断する。
【0100】
そして、このような本実施形態の液滴噴射装置1(液滴噴射方法)においては、検査部6の被噴射領域Rが撥液性を有しているため、検査部6に噴射された紫外線硬化型インクが球形に近づき、紫外線硬化型インクの高さが増す。クリアインクであっても完全に透明なものではないため、紫外線硬化型インクの高さが増すに連れて光が透過し難くなる。つまり、紫外線硬化型インクの高さが高くなるに連れて、紫外線硬化型インクの存在する箇所と、その周囲との濃淡差が大きくなる。したがって、検査部6の被噴射領域Rが撥液性を有し、当該被噴射領域Rに噴射された紫外線硬化型インクの高さが増すことによって、紫外線硬化型インクの検出を容易かつ確実に行うことが可能となる。
したがって、本実施形態の液滴噴射装置1(液滴噴射方法)によれば、検査部6における紫外線硬化型インクの検出を確実に行うことが可能となる。
【0101】
また、本実施形態の液滴噴射装置1においては、検査工程(ノズル24のインク噴射状態を検査するためのインクの噴射)よりも前に、被噴射領域Rに紫外線硬化型インクを噴射し、噴射された紫外線硬化型インクを硬化させることで被噴射領域Rに撥液性を付与する。
紫外線硬化型インクは、紫外線が照射されて硬化されることによって硬化される前のインクに対する撥液性を発現する。
このため、本実施形態の液滴噴射装置1によれば、予め被噴射領域Rが紫外線硬化型に対する撥液性を有していない場合であっても、被噴射領域Rに対して撥液性を付与することができる。
【0102】
また、本実施形態の液滴噴射装置1においては、撥液性付与工程において、シアンの紫外線硬化型インクを噴射するノズル24と、マゼンタの紫外線硬化型インクを噴射するノズル24と、イエローの紫外線硬化型インクを噴射するノズル24と、ブラックの紫外線硬化型インクを噴射するノズル24との全てからフレキシブルフィルム61aの被噴射領域に対し紫外線硬化型インクを噴射する。
このため、一度に多くのノズル24から被噴射領域Rに対して紫外線硬化型インクが噴射されるため、短時間で被噴射領域Rに対して撥液性を付与することが可能となる。
【0103】
なお、本実施形態の液滴噴射装置1においては、撥液性付与工程において、クリアインクを被噴射領域Rに噴射するようにしても良い。
紫外線硬化型インクは、硬化された際に、硬化される前の同種のインクに対して強い撥液性を発現する。クリアインクを用いる液滴噴射装置において、最も画像処理により検出が難しいのは、光の透過率が大きいクリアインクであるが、撥液性付与工程でクリアインクを用いることによって、被噴射領域Rがクリアインクに対して大きな撥液性を有することとなり、クリアインクをより確実に検出することが可能となる。
【0104】
また、本実施形態の液滴噴射装置1においては、撥液性付与工程にて噴射ヘッド20の移動速度を、描画工程(被噴射物にインクを噴射する際)での噴射ヘッド20の移動速度よりも遅くすることが好ましい。
これによって、撥液性付与工程での噴射ヘッド20の移動速度が遅くなるため、被噴射領域Rに撥液性を付与するために噴射された紫外線硬化型インクに対して紫外線が照射されるまでの時間が長くなり、紫外線硬化型インクを広い範囲に濡れ広がらせることが可能となる。
このため、少ないインク量で、被噴射領域Rの全域に紫外線硬化型インクを配置することが可能となる。
【0105】
また、本実施形態の液滴噴射装置1においては、検査工程よりも前に、検査部6のフレキシブルフィルム61aの露出された表面全域に対して撥液性を付与することが好ましい。
露出されるフレキシブルフィルム61aの表面全域が数回の検査工程を行える広さを有しているが、これによって、露出されるフレキシブルフィルム61aの全域に対して先に撥液性が付与される。
このため、検査工程のたびに被噴射領域Rに撥液性を付与する必要がなくなり、短時間でインク噴射状態を検査することが可能となる。
【0106】
また、本実施形態の液滴噴射装置1においては、描画工程と並行して撥液性付与工程と検査工程とが行われる。つまり、噴射ヘッド20が記録媒体10に対向配置されている場合には描画工程を行い、噴射ヘッド20が検査部6に対向している場合には撥液性付与工程あるいは検査工程を行う。
ここで、例えば、撥液性付与工程において、噴射ヘッド20の1回目の往復移動の際に被噴射領域Rに紫外線硬化型インクを噴射し、噴射ヘッド20の2回目以降の往復移動の際に被噴射領域Rに紫外線硬化型インクに紫外線を照射することによって被噴射領域Rに撥液性を付与することが考えられる。
これによれば、2回目以降の噴射ヘッド20の往復移動の際に紫外線硬化型インクに対して紫外線が照射されるため、噴射ヘッド20が少なくとも1回往復移動するまでは、撥液性を付与するために噴射された紫外線硬化型インクに対して紫外線が照射されず、紫外線硬化型インクが濡れ広がる時間を確保することができる。
したがって、少ないインク量で、被噴射領域Rの全域に紫外線硬化型インクを配置することが可能となる。
【0107】
また、本実施形態の液滴噴射装置1においては、撥液性付与工程での噴射解像度(噴射ピッチ)を、検査工程及び描画工程での噴射解像度よりも粗くすることが好ましい。
これによっても、撥液性を付与するために必要とされるインクの量を減少させることができる。
【0108】
また、本実施形態の液滴噴射装置1においては、撥液性付与工程における紫外線硬化型インクの着弾径を、描画工程及び検査工程の着弾径よりも大きくすることが好ましい。これによれば、撥液性付与工程での紫外線硬化型インクの着弾径が大きくなるため、撥液性を付与する際に噴射する紫外線硬化型インクの回数を減少させることができる。
このため、より短時間で撥液性を付与するための紫外線硬化型インクの噴射を完了することが可能となる。
【0109】
また、本実施形態の液滴噴射装置1においては、検査工程にて、検査部6(フレキシブルフィルム61a)の同じ位置に複数回紫外線硬化型インクを噴射することが好ましい。
これによって、先に噴射された紫外線硬化型インクに後に噴射された紫外線硬化型インクが重なるため、フレキシブルフィルム61aにおける紫外線硬化型インクの高さをより高くすることが可能となり、紫外線硬化型インクの検出をより容易かつ確実に行うことが可能となる。同じ位置に複数回紫外線硬化型インクを噴射する方法としては、異なる複数のノズルから同じ位置に紫外線硬化型インクを噴射した後に、一括して紫外線を照射して硬化させる方法を用いても良いし、噴射ヘッド20を一度移動するたびに、一つのノズルから同じ場所にインクを噴射するとともに紫外線を照射してインクを硬化させる動作を複数回繰り返し行う方法を用いても良い。
【0110】
また、本実施形態の液滴噴射装置1においては、検査工程にて、単一のノズル24から検査部6(フレキシブルフィルム61a)の異なる位置に紫外線硬化型インクを噴射しても良い。
このような場合には、単一のノズル24に対するインク噴射状態の検査を、フレキシブルフィルム61aの複数箇所に噴射された紫外線硬化型インクから判断することができる。このため、より確実にインク噴射状態を判断することが可能となる。
【0111】
なお、単一のノズル24から噴射される紫外線硬化型インクが被噴射領域Rにおいて直線状に繋がるようにしても良い。
これによって、ノズル24から噴射された紫外線硬化型インクが他の紫外線硬化型インクと繋がっていない場合と比較して、画像処理による紫外線硬化型インクの検出を容易に行うことができる。
【0112】
さらに、本実施形態の液滴噴射装置1においては、被噴射領域Rの幅が検査工程にて噴射される紫外線硬化型インクの着弾径の2倍以上に設定されていることが好ましい。
これによって、検査工程にて噴射される紫外線硬化型インクの一部が被噴射領域Rを超えてしまうことを防止し、インク噴射状態を検査するための紫外線硬化型インクを確実に被噴射領域Rに配置することが可能となる。
【0113】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0114】
例えば、上記実施形態では、本発明の液滴噴射装置を、連続した長尺な記録媒体に対して印刷を行う印刷装置に適用したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば対象とする被噴射物としては長尺なものでなく矩形状の基板とすることもできる。また、このような基板としては、前述した樹脂以外に、ガラス基板を対象とすることもできる。
【0115】
また、上記実施形態では、照射装置80は、サブキャリッジ28又はユニットプレート23に固定され、X軸走査機構11によってヘッドユニット21をX軸方向に走査させるシリアル型の印刷装置に適用したが、本発明はこれに限定されることなく、ヘッドキャリッジ22の長さが記録媒体10の印刷領域の幅方向の長さ以上であるヘッドキャリッジ、いわゆるラインヘッドを採用してもよい。また、記録媒体10の印刷領域の幅方向の長さ以上の長さを有する照射装置、いわゆる、ライン状の照射装置を採用してもよい。また、ヘッドキャリッジ22の長さが記録媒体10の印刷領域の幅方向の長さ以下であって、ヘッドキャリッジ22を固定して、記録媒体10をX軸方向に走査させる装置構成を採用しても良い。
【0116】
また、上記実施形態では、本発明を主に工業的な用途の液滴噴射装置に適用した場合について説明したが、民生用途のプリンターに本発明を適用することもできる。
【0117】
また、上記実施形態においては、紫外線硬化型インクを被噴射領域Rに噴射して硬化することによって撥液性を付与する構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、コロナ処理等によって予め撥液化処理がなされたフレキシブルフィルム等を用いることによって、被噴射領域Rが撥液性を有する構成を採用しても良い。
このような場合には、インクとして紫外線硬化型インク以外のものを用いることも可能となる。
【符号の説明】
【0118】
1……液滴噴射装置、10……記録媒体(被噴射物)、6……検査部、61……検査用噴射部、61a……フレキシブルフィルム(検査メディア)、62……検査用スキャナー、20……噴射ヘッド、21……ヘッドユニット、24……ノズル、60……制御部、S……紫外線硬化型インク(インク)、R……被噴射領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被噴射物に対してインクを噴射するノズルを有すると噴射ヘッドと、前記被噴射物の外部にて前記インクを受けて前記ノズルのインク噴射状態を検査する検査部とを備える液滴噴射装置であって、
前記検査部において前記インクが噴射される被噴射領域が前記インクに対して撥液性を有することを特徴とする液滴噴射装置。
【請求項2】
前記インクが紫外線照射によって硬化する紫外線硬化型インクであり、
前記ノズルのインク噴射状態を検査するための前記インクの噴射よりも前に、
前記被噴射領域に前記インクを噴射し、噴射された前記インクを硬化させることで前記被噴射領域に撥液性を付与する制御を行うことを特徴とする請求項1記載の液滴噴射装置。
【請求項3】
前記ノズルは、
前記インクとして第1の色のインクを噴射する第1ノズルと、
前記インクとして第2の色のインクを噴射する第2ノズルと、
を備え、
前記被噴射領域に撥液性を付与する際に、前記第1の色のインク及び前記第2の色のインクを前記被噴射領域に噴射する制御を行うことを特徴とする請求項2記載の液滴噴射装置。
【請求項4】
前記ノズルは、前記インクとしてクリアインクを噴射する第3ノズルを備え、
前記被噴射領域に撥液性を付与する際に、前記クリアインクを前記被噴射領域に噴射する制御を行うことを特徴とする請求項2記載の液滴噴射装置。
【請求項5】
前記被噴射領域に撥液性を付与する際に、前記噴射ヘッドの移動速度を、前記被噴射物に前記インクを噴射する際の前記噴射ヘッドの移動速度よりも遅くする制御を行うことを特徴とする請求項2〜4いずれかに記載の液滴噴射装置。
【請求項6】
前記噴射ヘッドを主走査方向に繰り返し往復移動させながら前記被噴射物に対して前記ノズルから前記インクを噴射させ、
前記噴射ヘッドの1回目の往復移動の際に前記被噴射領域に前記インクを噴射し、前記噴射ヘッドの2回目以降の往復移動の際に前記被噴射領域に噴射された前記インクに前記紫外線を照射することによって前記被噴射領域に撥液性を付与する制御を行う
ことを特徴とする請求項2〜5いずれかに記載の液滴噴射装置。
【請求項7】
前記被噴射領域に撥液性を付与する際の前記インクの噴射解像度を、前記ノズルのインク噴射状態を検査する際の噴射解像度及び前記被噴射物に対して前記インクを噴射する際の噴射解像度よりも粗くする制御を行うことを特徴とする請求項2〜6いずれかに記載の液滴噴射装置。
【請求項8】
前記被噴射領域に撥液性を付与する際の前記インクの着弾径を、前記被噴射物に対するインクの着弾径及び前記ノズルのインク噴射状態を検査する際の着弾径よりも大きくする制御を行うことを特徴とする請求項2〜7いずれかに記載の液滴噴射装置。
【請求項9】
前記ノズルのインク噴射状態を検査する際に前記検査部の同じ位置に複数回インクを噴射する制御を行うことを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載の液滴噴射装置。
【請求項10】
前記ノズルのインク噴射状態を検査する際に単一のノズルから前記検査部の異なる位置にインクを噴射する制御を行うことを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載の液滴噴射装置。
【請求項11】
前記単一のノズルから噴射されるインクが前記被噴射領域において直線状に繋がるように制御を行うことを特徴とする請求項10記載の液滴噴射装置。
【請求項12】
前記被噴射領域の幅が前記ノズルのインク噴射状態を検査する際に噴射される前記インクの着弾径の2倍以上に設定されていることを特徴とする請求項1〜11いずれかに記載の液滴噴射装置。
【請求項13】
被噴射物に対して噴射ヘッドに形成されたノズルから前記被噴射物に対してインクを噴射すると共に、前記被噴射物の外部に設けられた検査部に対して前記インクを噴射して前記ノズルのインク噴射状態を検査する液滴噴射方法であって、
前記検査部において前記インクが噴射される被噴射領域が前記インクに対して撥液性を有することを特徴とする液滴噴射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−213955(P2012−213955A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81660(P2011−81660)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】