説明

液相の移動及び/又は反応方法

【課題】充填塔形式の化学装置において、液分配器や多孔質材料等の装備を用いることなく液相の偏流を抑制する方法を提供する。
【解決手段】固体粒子の表面処理をする工程1と、工程1の後に、
充填塔内において、液相が前記表面処理された固体粒子と接触する工程2とを有する液相の移動及び/又は反応方法であって、前記固体粒子の粒子径分布において、粒子径0.09mm以下の含有率が0〜33質量%であり、粒子径16mm超の含有率が0〜33質量%であり、前記液相が、親水性液体1であり、前記表面処理が、前記固体粒子の表面を親水性液体2と接触させる工程と、前記親水性液体2を乾燥する工程とを含む表面処理であって、標準試験により算出される拡がり面積増加割合が10〜10000%となる表面処理である移動及び/又は反応方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填塔を使用した化学装置における液相の移動及び/又は反応方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学工業プロセスにおいて、気−液、液−液など異相間の物質移動、及び/又は固体粒子の触媒作用又は吸着作用を能率よく行うために塔内に固体粒子状の充填物を詰めた充填塔が使用される。例えば、気−液反応や液へのガス吸収の化学装置として使用されるトリクル反応器や吸収塔が用いられている。
トリクル反応器を用いたトリクル反応は、液相成分が灌液流と言われる流動状態において実施される。この灌液流は、液相成分と気相成分が特定の流量範囲にあるとき発生すると言われており、流量範囲については種々報告されている(非特許文献1)。
他方、吸収塔におけるガス吸収操作は、トリクル反応と同様に灌液流の流動状態で実施されることもあるが、灌液流に限らず様々な流動状態で実施できる。
しかし、充填塔においては、固体粒子が充填されて形成される充填層の水平方向への液流分布にばらつき(以下偏流現象という)が発生する。
偏流現象は、液−固、気−液又は液−液の接触効率を悪化させ反応効率を著しく低下させる。さらに、固体粒子が触媒である場合、局所的な発熱を誘引し、触媒失活や充填塔内壁の劣化を招く。このため、充填塔内における偏流の改善は、液相又は異相間の物質移動、トリクル反応、ガス吸収操作等において極めて大きな課題となっている。
【0003】
この課題を解決する方法として、液導入部分に液分配器を設置する、あるいは、触媒又は充填物等の層間に液再分配器を導入する方法が採られている。例えば、ライザー管が取り付けられたトレイにキャップを設置することによって導入液および偏流液の分散性および再分散性を高める方法(バブルキャップ方式)が挙げられる(非特許文献2)。
また、偏流現象に由来する反応効率の低下を防止することを目的に、充填塔の側壁に多孔質材料を設置し、この多孔質材料を通して気体原料を供給することで気液接触効率を高める方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−277497号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】化学工学 第46巻 第4号p.215(1982)、AIChEJournal Vol.32,No1,p.115(1986)
【非特許文献2】化学工学 第44巻 第7号p.415(1980)、化学工学 第58巻 第11号p.883(1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、液分配器や再分配器を用いても、液の偏流を完全に抑制することは極めて困難である。解決策として、再分配器の増設が考えられるが、装置サイズ、装置コスト、ハンドリング等の制約があるため、設置数には限界がある。結果として、この方法における偏流改善効果は、限定的なものとなっている。
また、特許文献1に記載される方法は、反応器を大型化させ、また多孔質材料を用いることで反応器本体のコストも増大させるため、反応装置の小型化・低コスト化という観点から好ましいとはいえない。
【0007】
本発明は、充填塔形式の化学装置において、液分配器や多孔質材料等の装備を用いることなく液相の偏流を抑制する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、固体粒子の表面処理をする工程1と、工程1の後に、
充填塔内において、液相が前記表面処理された固体粒子と接触する工程2とを有する液相の移動及び/又は反応方法であって、
前記固体粒子の粒子径分布において、
粒子径0.09mm以下の含有率が0〜33質量%であり、
粒子径16mm超の含有率が0〜33質量%であり、
前記液相が、親水性液体1であり、
前記表面処理が、前記固体粒子の表面を親水性液体2と接触させる工程と、前記親水性液体2を乾燥する工程とを含む表面処理であって、
以下の標準試験により算出される拡がり面積増加割合が10〜10000%となる表面処理である移動及び/又は反応方法である。
〔標準試験〕
(1)内壁底面を有し、前記内壁底面から前記内壁底面に対向する端部までの高さが60mmの円柱容器であって、
前記内壁底面に前記親水性液体1の排出孔を有し、前記端部が開放端である前記容器に、
(2)前記表面処理をする前の固体粒子(固体粒子B)を親水性液体1中に25±2℃1時間浸漬させた後固体粒子が通過しない最大径のふるいで濾過し、固体粒子の表面が乾燥する前に、
前記容器の開口から、前記内壁底面から50mmの高さまで最上面が略水平になるように充填し、
(3)固体粒子の表面が乾燥する前に、前記親水性液体1を、前記容器の前記端部の中央部に、前記最上面から1cmの高さから内径0.32mmの注射針を取り付けた5mlのシリンジで、1ml/分で2ml滴下し、
(4)前記滴下の終了後であって、前記充填された前記固体粒子B中の前記親水性液体1の前記排出孔からの流下が停止したときに、前記内壁底面から20mmの高さまで、前記充填された前記固体粒子Bを除去し、
(5)前記除去後の前記底面から20mmの高さに現れた前記充填された前記固体粒子Bの略水平の最上面の前記親水性液体1の拡がりを、
(6)前記内壁底面から300mmの高さから写真を撮影し、
前記固体粒子Bの最上面の前記親水性液体1の拡がり面積S(固体粒子B上の拡がり面積S)を前記写真に基づき求める。
(7)前記固体粒子B上の拡がり面積Sを求める前記手順(1)〜(6)において、前記固体粒子Bを、前記固体粒子Bを前記表面処理した後の固体粒子(固体粒子A)に置き換えたことを除き、前記手順(1)〜(6)と同じ手順で、前記固体粒子Aの最上面の前記親水性液体1の拡がり面積Sを求める。
(8)式〔(S−S)/S〕×100(%)によって前記拡がり面積増加割合を算出する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、充填塔形式の化学装置において、液分配器や多孔質材料等の装備を用いることなく液相成分の偏流を抑制する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】試験例4における、拡がり面積S(=106mm)を求めるための写真。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の方法は、固体粒子の表面処理をする工程1と、工程1の後に、
充填塔内において、液相が前記表面処理された固体粒子と接触する工程2とを有する液相の移動及び/又は反応方法であって、
前記固体粒子の粒子径分布において、
粒子径0.09mm以下の含有率が0〜33質量%であり、
粒子径16mm超の含有率が0〜33質量%であり、
前記液相が、親水性液体1であり
前記表面処理が、前記固体粒子の表面を親水性液体2と接触させる工程と、前記親水性液体2を乾燥する工程とを有する表面処理であって、
後述する標準試験により算出される拡がり面積増加割合が10〜10000%となる表面処理である移動及び/又は反応方法である。
【0012】
本発明において使用される充填塔は、垂直な塔内に固体粒子や特別に設計された充填物を充填し、液−固、気−液又は液−液の接触、好ましくはトリクル反応を運転目的にする灌液充填塔(以下、充填塔ともいう)である。
充填塔としては、固体粒子を充填した場合に、固体粒子表面上に液相が接触しながら鉛直下方向に流下する流動状態を形成する任意の形状のもの、好ましくは液相中に固体粒子で形成される充填層を埋没しないような流動状態を形成するものが使用できる。
反応装置の形状、長さ、直径及び材質は、原料の種類、反応のタイプ、生産量、ハンドリング性能、コスト等に応じて適宜選択すればよい。一般的には形状が管型、直径が10〜3000mm程度、長さは0.1〜30m程度、材質は例えばステンレス製で、原料等によっては内壁にガラスや樹脂等でコートされた反応器が好ましく用いられる。
また、マルチチューブ型を使用することもでき、その場合は、例えば直径が10〜300mm程度、長さは0.1〜30m程度のチューブを5〜1000本設置したものを好ましく使用できる。
【0013】
本発明で使用される液相(以下、液相ともいう)は、トリクル反応等の充填塔において使用される親水性液体に代表される親水性液体1(以下、親水性液体1ともいう)で構成され、本発明の効果を好適に確保する観点から、親水性液体1は、水溶性液体又は少なくとも溶媒が水溶性である溶液であり、例えば、水に難溶のカルボン酸エステルの、アルコール溶液であってもよい。
親水性液体1は、好ましくは、水、水溶性有機溶剤、
無機酸又はこれらの水溶液及び/若しくは水溶性有機溶剤溶液、
有機酸又はこれらの水溶液及び/若しくは水溶性有機溶剤溶液、
無機アルカリ又はこれらの水溶液及び/若しくは水溶性有機溶剤溶液、
及び/又は、
有機アルカリ又はこれらの水溶液及び/若しくは水溶性有機溶剤溶液、
が挙げられ、
水溶性有機溶剤としては、アルコール類、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリグリコール、アミド類、例えば、ジメチルホルミアミド、ジメチルアセトアミド、ニトリル類、例えばアセトニトリル等が挙げられ、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、ジメチルホルミアミド、ジメチルアセトアミド、より好ましくは、メタノール、エタノールであり、
無機酸としては、例えば、硝酸、りん酸、硫酸、塩酸等が挙げられ、好ましくは、硝酸、りん酸であり、
有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、安息香酸、フタル酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸等が挙げられ、好ましくは、ギ酸、酢酸、蓚酸、アジピン酸であり、
無機アルカリとしては、例えば、アンモニア、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられ、
有機アルカリとしては、例えば、ピリジン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0014】
親水性液体1として、更に好ましくは、水、メタノール、エタノール又は少なくともこれらの1つを溶媒とする溶液であり、更に好ましくは水又は水溶液である。
【0015】
親水性液体1の粘性は、好ましくは充填塔を通過できる通常の液相の粘性の程度であり、オストワルド毛細管粘度計による親水性液体1の温度が25℃における粘度が、好ましくは0.01〜100cP、より好ましくは0.1〜10cP、さらに好ましくは0.1〜2cPである。オストワルド毛細管粘度計を用いて粘度を測定する場合、粘度計と試料液体が十分な温度平衡に達してから液の流下時間を測定する。
【0016】
本発明で使用される固体粒子(以下、固体粒子ともいう)は、充填塔に通常充填され、充填塔内で液相が接触する充填物として、該液相を含む異相間物質移動に使用されるこれらの相とは不活性の粒子、充填塔内の反応に必要な触媒粒子、該液相又は該液相を含む混合相を吸着するための吸着剤粒子等が使用できる。
【0017】
本発明における表面処理(以下、表面処理ともいう)により本発明の効果を好適に確保する観点から、固体粒子は、水酸基を含むもの、又は親水性液体2による表面処理によって、例えば固体粒子表面のSi−O−Si結合やAl−O−Al結合が加水分解を受けて水酸基を形成しうるものが好ましく、
水酸基を含む又は水酸基を形成しうる金属の酸化物、炭化物、窒化物又は水酸化物、若しくは
水酸基を含む又は水酸基を形成しうる、金属を含む或いは含まない固体有機化合物が使用できる。
水酸基を含む又は水酸基を形成しうる、金属の酸化物としては、シリカ(アモルファスシリカなど)、アルミナ(γ−アルミナなど)、ジルコニウム、チタニア等の単一金属酸化物、シリカアルミナ、シリカジルコニア、ゼオライト化合物等の複合酸化物等が挙げられる。
【0018】
固体粒子の粒子径は、充填塔で使用する通常の充填物粒子の程度でハンドリングや閉塞性を考慮する観点から、その粒子径分布において、
粒子径0.09mm以下の含有率が0〜33質量%、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0質量%であり、
粒子径16mm超の含有率が0〜33質量%、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0質量%である。
固体粒子の粒子径分布は、JIS Z 8815による乾式ふるい分け試験方法により得られる粒径範囲のふるい下百分率に基づき、
粒子径0.09mm以下の含有率とは粒径範囲0.09mm以下のふるい下百分率の合計を、
粒子径16mm超の含有率とは粒径範囲16mm超のふるい上百分率の合計をいう。
なお、以下では、固体粒子についてJIS Z 8815による乾式ふるい分け試験方法をした結果、ふるい下百分率の合計が0〜33質量%、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0質量%となる粒径範囲の上限がXmm、ふるい上百分率の合計が0〜33質量%、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0質量%となる粒径範囲の下限がYmmだった場合、その固体粒子の粒子径は「X〜Ymm」であるという。
【0019】
固体粒子の形状は、粉体、成型体等いずれでもよく、反応系や反応器、充填塔の形状に応じて適宜選択でき、例えば、成型体であれば、球状、円柱状、顆粒状等が挙げられる。
【0020】
表面処理において固体粒子と接触させる親水性液体2(以下、親水性液体2ともいう)は、固体粒子が表面処理によって、本発明における標準試験(以下、標準試験ともいう)による拡がり面積増加割合が所定の範囲になるような水溶性液体又は少なくとも溶媒が水溶性である溶液であり、
好ましくは、水、水溶性有機溶剤、
無機酸又はこれらの水溶液及び/若しくは水溶性有機溶剤溶液、
有機酸又はこれらの水溶液及び/若しくは水溶性有機溶剤溶液、
無機アルカリ又はこれらの水溶液及び/若しくは水溶性有機溶剤溶液、
及び/又は、
有機アルカリ又はこれらの水溶液及び/若しくは水溶性有機溶剤溶液、
が挙げられ、
水溶性有機溶剤としては、アルコール類、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリグリコール、アミド類、例えば、ジメチルホルミアミド、ジメチルアセトアミド、ニトリル類、例えばアセトニトリル等が挙げられる。
好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、ジメチルホルミアミド、ジメチルアセトアミド、より好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールであり、
無機酸としては、例えば、硝酸、りん酸、硫酸、塩酸等が挙げられ、好ましくは、硝酸、硫酸、塩酸が挙げられ、より好ましくは、硝酸であり、
有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、安息香酸、フタル酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸等が挙げられ、好ましくは、酢酸、蓚酸、アジピン酸、であり、
無機アルカリとしては、例えば、アンモニア、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられ、
有機アルカリとしては、例えば、ピリジン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0021】
親水性液体2は、前述した水酸基を含む又は水酸基を形成しうる固体粒子の表面に対して表面処理した場合に、本発明の標準試験により算出される拡がり面積増加割合が所定の範囲になるようにできるものが好ましい。
例えば、水酸基を含む又は水酸基を形成しうる金属の酸化物、炭化物、窒化物又は水酸化物、若しくは、水酸基を含む又は水酸基を形成しうる、金属を含む或いは含まない固体有機化合物、好ましくは、水酸基を含む又は水酸基を形成しうる金属の酸化物である、シリカ(アモルファスシリカなど)、アルミナ(γ−アルミナなど)、ジルコニウム、チタニア等の単一金属酸化物、シリカアルミナ、シリカジルコニア、ゼオライト化合物等の複合酸化物等に対しては、親水性液体2は、水、硝酸、硫酸、塩酸、酢酸、蓚酸、アジピン酸が好ましく、水、硝酸、蓚酸がより好ましく、水が更に好ましい。
【0022】
但し、液相が、表面処理された固体粒子に接触した際に、液相が、表面処理される前の固体粒子と接触してなされる所望の反応又は吸着等の効果が著しく低下することがないものを使用することが好ましい。
【0023】
親水性液体2の粘度は、固体粒子を親水性液体2に浸漬した際、又は、親水性液体2を還流させた際に、固体粒子と親水性液体2の接触を効率よく行える程度が好ましく、本発明における表面処理を円滑に行うために、より好ましくは0.01〜10000cP、更に好ましくは0.1〜5000cP、更に好ましくは0.1〜1000cPであり、更に必要に応じて水又は他の親水性液体2で希釈して適宜粘度を調整して使用してもよい。
【0024】
表面処理は、表面処理後の固体粒子に対して行われる標準試験により、後述する拡がり面積増加割合が10〜10000%、好ましくは20〜5000%、より好ましくは30〜2000%、更に好ましくは30〜1500%となるように、親水性液体2と固体粒子とを接触させればよい。
【0025】
表面処理を効率よく行う観点から、親水性液体2を親水性液体2の媒質の沸点前後まで加熱して、固体粒子を親水性液体2に浸漬、好ましくはさらに親水性液体2を還流させた後、親水性液体2を濾過やデカンテーションにより除去して行うことがより好ましく、さらに好ましくはその後加熱乾燥することである。
表面処理を効率よく行う観点から、固体粒子100重量部に対して、固体粒子に接触させる親水性液体2は、好ましくは1〜10000重量部であり、より好ましくは10〜1000重量部、更に好ましくは50〜300重量部である。
【0026】
親水性液体2を還流させる場合、還流時間は、好ましくは0.1〜10000時間、より好ましくは1〜100時間、更に好ましくは5〜20時間、更に好ましくは5〜10時間である。
親水性液体2を還流させる場合、例えば、リービッヒ冷却管、ジムロート冷却管などの冷却器を用いて行うことができる。
【0027】
親水性液体2を乾燥する工程では、空気中で、好ましくは加熱乾燥により、
好ましくは30〜300℃、より好ましくは50〜200℃、更に好ましくは80〜150℃で、
好ましくは0.1〜1000時間、より好ましくは1〜100時間、更に好ましくは5〜50時間、更に好ましくは10〜30時間行う。
なお、十分に乾燥させることと乾燥効率の観点から、高温下では相対的に短時間で、低温下では相対的に長時間の乾燥をすることが望ましく、例えば、
30〜80℃では、好ましくは10〜1000時間、より好ましくは30〜100時間乾燥させ、
80〜300℃、好ましくは80〜200℃、より好ましくは80〜150℃では、好ましくは0.1〜100時間、より好ましくは1〜50時間、更に好ましくは5〜50時間、更に好ましくは10〜30時間乾燥させる。
【0028】
本発明における標準試験(以下、標準試験ともいう)は、以下の条件で行う。
(1)内壁底面を有し、前記内壁底面から前記内壁底面に対向する端部までの高さが60mmの円柱容器であって、
前記内壁底面に前記親水性液体1の排出孔を有し、前記端部が開放端である前記容器に、
(2)前記表面処理をする前の固体粒子(固体粒子B)を、親水性液体1中に25±2℃1時間浸漬させた後濾過し、固体粒子の表面が乾燥する前に、
前記容器の開口から、前記内壁底面から50mmの高さまで最上面が略水平になるように充填し、
(3)固体粒子の表面が乾燥する前に、前記親水性液体1を、前記容器の前記端部の中央部に、前記最上面から1cmの高さから内径0.32mmの注射針を取り付けた5mlのシリンジで、1ml/分で2ml滴下し、
(4)前記滴下の終了後であって、前記充填された前記固体粒子B中の前記親水性液体1の前記排出孔からの流下が停止したときに、前記内壁底面から20mmの高さまで、前記充填された前記固体粒子Bを除去し、
(5)前記除去後の前記底面から20mmの高さに現れた前記充填された前記固体粒子Bの略水平の最上面の前記親水性液体1の拡がりを、
(6)前記内壁底面から300mmの高さから写真を撮影し、
前記固体粒子Bの最上面の前記親水性液体1の拡がり面積S(固体粒子B上の拡がり面積S)を前記写真に基づき求める。
(7)前記固体粒子B上の拡がり面積Sを求める前記手順(1)〜(6)において、前記固体粒子Bを前記表面処理した後の固体粒子(固体粒子A)に置き換えたことを除き、前記手順(1)〜(6)と同じ手順で、前記固体粒子Aの最上面の前記親水性液体1の拡がり面積Sを求める。
(8)式〔(S−S)/S〕×100(%)によって前記拡がり面積増加割合を算出する。
標準試験は、湿度50±5%の下で行うことが好ましい。
【0029】
上記手順(2)では、前記表面処理をする前の固体粒子(固体粒子B)を、親水性液体1中に25±2℃1時間浸漬させた後濾過した後から好ましくは20分以内に、より好ましくは10分以内に、更に好ましくは5分以内に、前記容器の開口から、前記内壁底面から50mmの高さまで最上面が略水平になるように充填することが好ましく、
上記手順(3)では、前記濾過した後から好ましくは30分以内に、より好ましくは20分以内に、更に好ましくは10分以内に、前記親水性液体1を、前記容器の前記端部の中央部に、前記最上面から1cmの高さから、内径0.32mmの注射針を取り付けた5mlのシリンジで、1ml/分で2ml滴下することが好ましい。
【0030】
上記手順(3)における親水性液体1の滴下は、内径0.32mmの注射針を取り付けた5mlのシリンジを用いて最上面の固体粒子B又はAの空隙を避けて滴下することが好ましい。
【0031】
上記手順(6)及び(7)における固体粒子Bの最上面の親水性液体1の拡がり面積S及び固体粒子Aの最上面の親水性液体1の拡がり面積Sとは、固体粒子B又は固体粒子Aの表面の親水性液体1によって濡れた部分の、写真撮影した高さでの平面視野における面積をいう。
【0032】
親水性液体1によって濡れた部分が肉眼で識別できる場合は、撮影された写真において濡れた部分の輪郭で囲まれる面積を求めればよい。
【0033】
親水性液体1によって濡れた部分が肉眼で識別できない場合は、肉眼で識別できるように、親水性液体1に予め親水性液体1に溶解する色素(場合によっては蛍光色素)を親水性液体1の固体粒子表面上の濡れを阻害しない程度に添加して肉眼で識別できるようにした上で写真を撮影するとよい。また、親水性液体1によって濡れた部分に色素等を散布して親水性液体1によって濡れていない部分と識別できるようにしてから写真撮影をしてもよい。色素としては、例えば、ボルドーS、ブリリアントブルーFCF等が好適に使用できる。
【0034】
写真は、好ましくは、後述する画像解析条件によって固体粒子の親水性液体1によって濡れた部分の面積を測定できる程度に明瞭に撮影されることが好ましく、白黒撮影でもカラー撮影でもよいが、固体粒子の親水性液体1によって濡れた部分の面積の識別がし易いとい観点から、カラー撮影の方が好ましい。
【0035】
撮影した写真について画像解析装置を使用して固体粒子Bの最上面の親水性液体1の拡がり面積S及び固体粒子Aの最上面の親水性液体1の拡がり面積Sを求めてもよい。
画像解析装置を使用する場合、例えば、画像解析ソフトImage−J(アメリカ国立衛生研究所(National Institute of Health)製フリーソフト)を使用してカラー写真を解析する場合は、画像倍率を好ましくは30〜0.05倍、より好ましくは10〜0.1倍で、更に好ましくは3〜0.5倍で、元の画像がカラー画像の場合、RGB3原色に分解し、得られたRGBの各画像の中から、着色粒子が明瞭な画像を選択して上記面積を求めることが好ましい。
【0036】
標準試験において使用する容器(以下、容器ともいう)は、手順(6)及び(7)で観察される固体粒子B又はAの最上面の親水性液体1の拡がりが容器内側壁に到達しない程度に十分に広い内壁断面を有していることが好ましく、内壁断面は円形でも多角形であってもよく、好ましくは円形である。容器の内壁の材質は、容器内壁間に固体粒子を充填した際に変形しない程度の強さを有し、内壁底面に親水性液体1が到達した際に親水性液体1が内壁内に浸透せず速やかに内壁底面の排出孔から排出できる材質であれば、金属、プラスチック、ガラス等の何を使用してもよい。
【0037】
容器の内壁底面には、標準試験の手順(3)で滴下した親水性液体1が、容器の内壁底面に滞留しないように排出孔が設けてある。実施例では、固体粒子を充填する前に、容器に所定の直径のガラスビーズが充填され、このガラスビーズが排出孔として機能している。このように容器の内壁底面は排出孔を設けた内壁であってもよく、親水性液体1を固体粒子から速やかに排出できる空隙を何らかの手段で設けて排出孔として機能させてもよい。
【実施例】
【0038】
〔標準試験〕
内径30mmのプラスチック製円柱容器に直径5mmのガラスビーズを高さ50mmになるまで充填した。各試験例における表面処理をしない固体粒子(固体粒子B)を水中(室温 25℃)に1時間浸漬させた後目開き1.4mmのふるいで濾過し、固体粒子の表面が乾燥しないうち(前記濾過後2分以内)にこれをガラスビーズの最上面の上に、ガラスビーズの最上面から50mmの高さになるまで充填した。
固体粒子の表面が乾燥しないうち(前記濾過後5分以内に)に、この固体粒子Bが充填された円柱容器の中央に、ブリリアントブルーFCFを濃度0.01重量%で溶解した青色に着色した水(親水性液体1)を、内径0.32mmの注射針(品名:トップ注射針、トップ社製)を取り付けた5mlシリンジ(品名:オールプラスチックディスポシリンジ、HSW社製)を使用して、1ml/分で2ml滴下した。
滴下終了後、液のガラスビーズ中への落下が停止したことを確認した後、ガラスビーズ最上面から20mmの高さまで、充填されていた固体粒子Bを円柱容器外に除去した。ガラスビーズ最上面から20mmの高さに現れた固体粒子Bの最上面を、ガラスビーズ最上面から300mmの高さから写真撮影し、画像解析ソフトImage−J(画像倍率0.75倍)を使って、固体粒子Bの最上面上の水の拡がり面積Sを求めた。
次に、上記固体粒子Bの最上面上の水の拡がり面積を求めた手順において、固体粒子Bに代えて固体粒子Aを使用した以外は同じ手順によって、固体粒子Aの最上面上の水の拡がり面積Sを求めた。
各試験例において、〔(S−S)/S〕×100(%)によって拡がり面積増加割合を算出した。
試験環境の湿度は52%で行った。
【0039】
〔試験例1〕
蒸留水(親水性液体2)140gにアモルファスシリカ(固体粒子、富士シリシア化学社製CARIACT Q−10、粒子径:1.7〜4.0mm)70gを加え、300mlガラス製フラスコとガラス製冷却管からなる還流装置を用いて8時間還流することによって表面処理を行った。次いで、アモルファスシリカを乾燥(空気中、110℃、15時間)させた。
このアモルファスシリカについてS及びSを求め、拡がり面積増加割合を算出した結果、S=382mm、S=572mm、拡がり面積増加割合は50%であった。
【0040】
〔試験例2〕
アモルファスシリカをγ−アルミナ(固体粒子、住友化学社製KHS−46、粒子径:4.0〜6.7mm)に変えたほかは、試験例1と同様に表面処理を行った。
このγ−アルミナについてS及びSを求め、拡がり面積増加割合を算出した結果、S=14mm、S=49mm、拡がり面積増加割合は250%であった。
【0041】
〔試験例3〕
アモルファスシリカをチタニア(固体粒子、堺化学工業社製CS−200S−46、粒子径:4.0〜6.7mm)に変えたほかは、試験例1と同様に表面処理を行った。
このチタニアについてS及びSを求め、拡がり面積増加割合を算出した結果、S=14mm、S=99mm、拡がり面積増加割合は607%であった。
【0042】
〔試験例4〕
蒸留水を1規定硝酸(親水性液体2)に変えたほかは、試験例2と同様に表面処理を行った。
このγ−アルミナについてS及びSを求め、拡がり面積増加割合を算出した結果、S=14mm、S=106mm、拡がり面積増加割合は657%であった。
【0043】
〔試験例5〕
蒸留水を1規定硝酸(親水性液体2)に変えたほかは、試験例3と同様に処理・乾燥を行った。
このチタニアについてS及びSを求め、拡がり面積増加割合を算出した結果、S=14mm、S=78mm、拡がり面積増加割合は457%であった。
【0044】
〔試験例6〕
蒸留水を1規定蓚酸(親水性液体2)に変えたほかは、試験例2と同様に表面処理を行った。
このγ−アルミナについてS及びSを求め、拡がり面積増加割合を算出した結果、S=14mm、S=120mm、拡がり面積増加割合は757%であった。
【0045】
〔試験例7〕
蒸留水を1規定蓚酸(親水性液体2)に変えたほかは、試験例3と同様に処理・乾燥を行った。
このチタニアについてS及びSを求め、拡がり面積増加割合を算出した結果、S=14mm、S=155mm、拡がり面積増加割合は1007%であった。
【0046】
〔実施例1〕
〔充填塔試験装置を用いた溶存酸素量(C)の測定〕
最下部に固体粒子支持用の金網が取り付けられた内径52mm、高さ400mmの樹脂製パイプ(充填塔)の下に、液受器として100mlの三つ口フラスコを6mm樹脂製チューブで接続した。三つ口フラスコには溶存酸素計センサーを設置した。
次に樹脂製パイプの上方から水道水を100ml/分で、窒素を1L/分で、同時に外径6mmのSUS製パイプのノズルから連続的に流通させた。
なお、水道水は、落下する際にパイプの内壁に接触しないよう、充填物支持用の金網のほぼ中央にめがけて落下させた。樹脂製パイプの上面は、上記の水道水及び窒素供給用ノズル以外は密閉されているため、水道水と窒素は樹脂製パイプ内をダウンフローで通過した。
水道水と窒素を流通している間、パイプ内を通過した水道水のうち約10mlは三つ口フラスコ内に一旦捕捉され、連続的に置換されながら、窒素に同伴して三つ口フラスコから排出された。
この捕捉された水中の溶存酸素量を、溶存酸素計を用いて常時モニターした。
溶存酸素量は、4.12(mg/L)で一定になった。そして水道水と窒素の流通を停止した。
次に、試験例1において表面処理を行ったアモルファスシリカを25℃の水道水に1時間浸漬させ、これを目開き1.4mmのふるいで濾過した後、高さ50mmになるまで上記の樹脂製パイプ内に充填した。
そして、再度水道水と窒素の流通を開始し、三つ口フラスコ内に捕捉された水道水中の溶存酸素量を常時モニターした。
結果、溶存酸素量は、3.75(mg/L)で一定になった。
さらに、水道水と窒素の流通を停止した後、充填層から自然落下してパイプから流下した水道水の量を測定することによって、充填物層内における水道水の動的ホールドアップ(充填塔内に滞留している液の全量(具体的には、水道水の供給側バルブと充填塔出口のバルブを同時に閉じ、水道水の自然落下が終了するまでしばらく(2〜5分程度)待った後、出口バルブを開いて、自然落下した液の量をメスシリンダー又は電子天秤を用いて計測する))を求めたところ、4.75mlであった。
そして、この動的ホールドアップから、充填層内での水道水の滞留時間を算出したところ、2.85秒であった。
引き続き、表面処理したアモルファスシリカを1時間水道水に浸漬させ、これを目開き1.4mmのふるいで濾過した後10分以内に高さ100mmになるよう追加充填した。
そして高さ50mmの場合と同じ方法で、水道水と窒素を流通させ、溶存酸素量測定、水道水の動的ホールドアップ測定、水道水の滞留時間の算出を行った。溶存酸素量は2.80(mg/L)で,動的ホールドアップは11.81ml、滞留時間は7.09秒であった。
この操作を、充填物高さ150mm、200mmにして同様に繰り返し行った。
充填物高さ150mmのときの溶存酸素量、動的ホールドアップ、滞留時間は、それぞれ2.08(mg/L)、20.56ml、12.34秒、200mmのときはそれぞれ1.60(mg/L)、26.19ml、15.71秒であった。
【0047】
〔気液間の物質移動容量係数(Ka)の算出〕
気液間の物質移動容量係数(Ka)を、AIChE Journal Vol.21,No4,p.706(1975)記載の方法を参考に算出した。
具体的な方法を、以下に示す。
aは、水道水中の溶存酸素が全て窒素に置換されたときの溶存酸素量(C)、流通前の水道水中の溶存酸素量(C)、充填層から通過後捕捉された水道水中の溶存酸素量(C)、充填層内での水道水の滞留時間(T)を使って以下の式で表される。
ln{(C−C)/(C−C)}=KaT
水道水中の溶存酸素量(C)を測定したところ7.22(mg/L)であった。Cは0(g/L)である。CとTは、上記の〔充填塔試験装置を用いた溶存酸素量の測定〕で既にそれぞれ求められている。
これらの値を上式に代入し、縦軸がln{(C−C)/(C−C)}、横軸がTのグラフにプロットした。
そして、最小二乗法によって描かれた一次方程式の傾きからKaを求めた。結果、Kaは0.061(1/s)となった。
【0048】
〔気液間の物質移動容量係数(Ka)の平均値の算出〕
〔充填塔試験装置を用いた溶存酸素量(C)の測定〕と〔気液間の物質移動容量係数(Ka)の算出〕を3回繰り返し行ったところ、2回目のKaは0.065(1/s)、3回目のKaは0.068(1/s)となった。これら3回のKa平均値は、0.065(1/s)となった。
【0049】
〔比較例1〕
〔充填塔試験装置を用いた溶存酸素量(C)の測定〕
表面処理および乾燥を行ったアモルファスシリカを、表面処理前のアモルファスシリカに変えたほかは実施例1と同様に行い、各充填物高さにおける溶存酸素量、動的ホールドアップ、滞留時間をそれぞれ測定および算出した。
【0050】
〔気液間の物質移動容量係数(Ka)の算出〕
上記溶存酸素量(C)の測定によって得られた溶存酸素量、滞留時間の値を使って実施例1と同様にKaの算出行った。結果、1回目は0.056(1/s)となった。
【0051】
〔気液間の物質移動容量係数(Ka)の平均値の算出〕
〔充填塔試験装置を用いた溶存酸素量(C)の測定〕と〔気液間の物質移動容量係数(Ka)の算出〕を3回繰り返し行ったところ、2回目のKaは0.060(1/s)、3回目のKaは0.057(1/s)となった。これら3回のKa平均値は、0.058(1/s)となった。
【0052】
以上の試験では、酸素が飽和量(C)溶存する水道水(液相)が、充填塔内のアモルファスシリカ(固体粒子)と接触しつつ流下し、その流下する過程で窒素(気相)と接触し、窒素(気相)が水道水(液相)に移動し水道水に溶存する酸素と置換される。この置換される程度の尺度として物質移動容量係数(Ka)の平均値を算出している。
水道水に溶存する酸素が全て窒素に置換された場合の溶存酸素量(Cは0ml/Lであるので、充填層から通過後捕捉された水道水中の溶存酸素量(C)とすると、
a=ln{(C−C)/(C−C)}/T=ln{(−C)/(−C)}/T
=ln{C/C}/T=(lnC−lnC)/T
従って、窒素(気相)が水道水(液相)に移動して溶存酸素と置換される程、溶存酸素量Cは小さくなり、Kaは大きい値となる。
上記実施例及び比較例では、気液間の物質移動容量係数Kaの平均値が、それぞれ、
本発明の表面処理を行った固体粒子を使用すると、 0.065(1/s)となり、
本発明の表面処理を行わなかった固体粒子を使用すると、0.058(1/s)となる。
この結果は、液相(水道水)が、本発明の表面処理を行った充填塔の充填物である固体粒子(アモルファスシリカ)を通過すると、表面処理を行った固体粒子間の液相の偏流が改善され、固体粒子表面で液相が濡れ拡がり、気相(窒素)との接触面積が増大した結果、気相の液相への移動が、本発明の表面処理を行わなかった固体粒子を使用した場合よりも、効率よく行われたことを示している。
また、固体粒子が触媒であれば、液相が、本発明の表面処理を行った充填塔の充填物である固体粒子(触媒)を通過すると、表面処理を行った固体粒子(触媒)間の液相の偏流が改善され、固体粒子(触媒)表面で液相が濡れ拡がり、例えば、気相又は他の液相及び触媒との接触面積が増大して、気相又は他の液相と、この液相との反応が、本発明の表面処理を行わなかった固体粒子(触媒)を使用した場合よりも、効率よく行われることになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体粒子の表面処理をする工程1と、工程1の後に、
充填塔内において、液相が前記表面処理された固体粒子と接触する工程2とを有する液相の移動及び/又は反応方法であって、
前記固体粒子の粒子径分布において、
粒子径0.09mm以下の含有率が0〜33質量%であり、
粒子径16mm超の含有率が0〜33質量%であり、
前記液相が、親水性液体1であり、
前記表面処理が、前記固体粒子の表面を親水性液体2と接触させる工程と、前記親水性液体2を乾燥する工程とを含む表面処理であって、
以下の標準試験により算出される拡がり面積増加割合が10〜10000%となる表面処理である移動及び/又は反応方法。
〔標準試験〕
(1)内壁底面を有し、前記内壁底面から前記内壁底面に対向する端部までの高さが60mmの円柱容器であって、
前記内壁底面に前記親水性液体1の排出孔を有し、前記端部が開放端である前記容器に、
(2)前記表面処理をする前の固体粒子(固体粒子B)を親水性液体1中に25±2℃1時間浸漬させた後固体粒子が通過しない最大径のふるいで濾過し、固体粒子の表面が乾燥する前に、
前記容器の開口から、前記内壁底面から50mmの高さまで最上面が略水平になるように充填し、
(3)固体粒子の表面が乾燥する前に、前記親水性液体1を、前記容器の前記端部の中央部に、前記最上面から1cmの高さから内径0.32mmの注射針を取り付けた5mlのシリンジで、1ml/分で2ml滴下し、
(4)前記滴下の終了後であって、前記充填された前記固体粒子B中の前記親水性液体1の前記排出孔からの流下が停止したときに、前記内壁底面から20mmの高さまで、前記充填された前記固体粒子Bを除去し、
(5)前記除去後の前記底面から20mmの高さに現れた前記充填された前記固体粒子Bの略水平の最上面の前記親水性液体1の拡がりを、
(6)前記内壁底面から300mmの高さから写真を撮影し、
前記固体粒子Bの最上面の前記親水性液体1の拡がり面積S(固体粒子B上の拡がり面積S)を前記写真に基づき求める。
(7)前記固体粒子B上の拡がり面積Sを求める前記手順(1)〜(6)において、前記固体粒子Bを、前記固体粒子Bを前記表面処理した後の固体粒子(固体粒子A)に置き換えたことを除き、前記手順(1)〜(6)と同じ手順で、前記固体粒子Aの最上面の前記親水性液体1の拡がり面積Sを求める。
(8)式〔(S−S)/S〕×100(%)によって前記拡がり面積増加割合を算出する。
【請求項2】
前記表面処理が、前記固体粒子を前記液体に浸漬して前記親水性液体2を還流させて接触させる請求項1記載の液相の移動及び/又は反応方法。
【請求項3】
前記表面処理が、前記固体粒子を前記親水性液体2に接触させた後に、前記親水性液体2を、濾過、デカンテーション及び/又は乾燥して除去する請求項1又は2記載の液相の移動及び/又は反応方法。
【請求項4】
前記反応が、前記液相と気相との間でなされる気液反応である請求項1〜3いずれか1項記載の液相の移動及び/又は反応方法。
【請求項5】
前記親水性液体1が水又は水溶液である請求項1〜4いずれか1項記載の液相の移動及び/又は反応方法。
【請求項6】
前記固体粒子が、前記反応の触媒である請求項1〜5いずれか1項記載の液相の移動及び/又は反応方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−130886(P2012−130886A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286995(P2010−286995)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】