説明

液面揺動抑制装置および液面揺動抑制方法

【課題】 容器内に設置することなく、容器の側壁を補強することなく、スロッシングによる液面揺動を適切に抑制することができる装置および方法を提供する。
【解決手段】 本発明の液面揺動抑制装置は、液面に浮き、かつその液面を覆う浮屋根を備える容器に用いられ、スロッシングによる液面の揺動を抑制するための装置であり、容器10の側壁11の所定高さ位置に接続され、変形を可能にするための伸縮部または曲部を備え、液面の揺動により所定高さ位置以上となる液体を容器10の外部へ流出させるための配管12、13、14と、配管13に接続され、流出した液体を収容する貯留タンク15とを含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロッシングによる液面揺動を抑制するための装置および方法に関し、より詳細には、液面揺動によって所定高さ以上になった分の液体を容器から外部へ流出させることにより、液面揺動を抑制する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス等のガスや、水、石油、化学薬品等の液体を貯留するためのタンクとして、球形ホルダや、固定屋根式タンク、浮屋根式タンク等が使用されている。これらガスや液体のうち、石油等の揮発性を有する液体を貯留するタンクには、浮屋根式タンクが多く採用されている。これは、浮屋根が液面を覆い、かつ昇降自在に浮いており、液面がどの位置にあっても浮屋根と液面との間に空間ができず、液体が揮発することがなく、この結果、液ロスを抑制することができるからである。この液ロスは、タンク内の液体の量を減少させ、液体の使用量を減少させるものである。
【0003】
ここで、浮屋根式タンクの構造について説明する。一般に、円形の底板と、液体を貯留するために中空円筒形に構築される側板と、液面を覆い、液面に浮かべて使用される浮屋根とから構成される。中空円筒形に側板を構築するのは、内部に貯留される液体によって側板に加えられる圧力をほぼ均等にし、タンクを破損しにくくするためである。浮屋根は、液面の中央部を覆うデッキ板と、そのデッキ板の周囲に設けられる中空の箱形構造物で、液面に浮くポンツーンとから構成される。ポンツーンとタンクの側板との間には、わずかな隙間が存在するが、ポンツーンの周囲にシール部材を設け、シール部材によってこの隙間を埋めることで、液体の揮発を抑制することができる。なお、浮屋根は、液面に浮かべて使用され、液体の供給に伴って液面レベルが上昇するにつれて上昇し、液体の取り出しに伴って液面レベルが低下するにつれて降下する。
【0004】
地震が発生した場合、震源を中心とする地震動が発生し、この浮屋根式タンクにもこの地震動が伝えられる。この地震動によってタンクは揺動し、タンク内の液体にもこの揺動が伝えられる。地震動による周期とタンクの固有周期とが重なり合い、共振が発生すると、液面が大きく波立つスロッシングと呼ばれる現象が発生する。浮屋根式タンクにおいてスロッシングが発生すると、浮屋根が傾斜し、液面が露出し、タンク外部へ液体が流出する。タンク内容物が水等の無害な液体であれば、タンク外部に流出しても問題はないが、石油等の可燃性液体や、土壌あるいは河川を汚染する有機化合物等の場合には大きな問題となる。そこで、スロッシングの発生を抑制するための装置を備えるタンクが数多く提案されている。
【0005】
例えば、スロッシング抑制装置として、貯蔵液の流動により遊動する抵抗板と、貯蔵液中を沈んでタンク本体の底面に移動可能に設置されるとともに、浮力により浮かぼうとする抵抗板を貯蔵液中で支持する支持体と、抵抗板と支持体とを接続するワイヤとを有するスロッシング抑制装置が提案されている(特許文献1参照)。この装置は、予めタンク本体内に投入され、この装置と流動する貯留液との相対移動により生じる流体抵抗によってスロッシングを抑制するものである。
【0006】
このように、数多く提案されているスロッシング抑制装置は、容器内に抵抗物として設置されるものが多く、容器内に設置される場合、タンク容量や貯蔵液量に違いがあり、あらゆる周期の地震波に対応できる抵抗物等を設置することは困難であるといった問題があった。また、容器内に設置すると、貯蔵量を減少させるといった問題もあった。
【0007】
そこで、容器内に抵抗物等を設置することなく、スロッシングを抑制することができる装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この装置は、気密構造としたシール装置を、浮屋根と容器の側壁との間に配置し、地震発生のない通常時においては内部空気圧力を低く保ち、地震が発生し、スロッシングの成長が認められた場合に、容器外部に配置されている空気圧力可変装置から高圧空気を供給してシール装置内の内部空気圧力を高め、浮屋根と容器の側壁とに密着して固定に近い状態にすることで、スロッシングの成長を抑制するものである。
【0008】
上記装置は、容器内部に抵抗物等を設置しないため、貯蔵量を減少させるといった問題は発生せず、また、浮屋根と容器の側壁との間隔には依存するものの、タンク容量等には依存しないため、容量の異なるタンクにも使用することが可能である。しかしながら、約50万キロリットルの貯蔵液を貯蔵する一般的なタンクでは、その側壁の厚さが、下方で約25mm、上端部では約5mmと小さいため、シール装置を密着させ、固定に近い状態にする場合には、側壁にかかる力は極めて大きく、補強する必要があるといった問題があった。
【特許文献1】特開2005−280738号公報
【特許文献2】特開2005−298022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、容器内に設置することなく、容器の側壁を補強することなく、スロッシングによる液面揺動を適切に抑制することができる装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討の結果、容器の側壁の所定高さ位置に、変形を可能にするための伸縮部または曲部を備える配管を接続し、液面の揺動により、その所定高さ位置以上となる液体を容器の外部へ流出させ、その配管に接続される貯留タンクに、流出させた液体を収容することで、容器内に抵抗物等を設置することなく、容器の側壁を特に補強することなく、スロッシングによる液面揺動を抑制することができることを見出した。上記課題は、本発明の液面揺動抑制装置および方法を提供することにより解決することができる。
【0011】
本発明の液面揺動抑制装置は、液面に浮き、かつその液面を覆う浮屋根を備える容器に用いられ、スロッシングによる液面の揺動を抑制するための装置である。この装置は、容器の側壁の所定高さ位置に接続され、変形を可能にするための伸縮部または曲部を備え、液面の揺動により所定高さ位置以上となる液体を容器の外部へ流出させるための配管と、 配管に接続され、流出した液体を収容する貯留タンクとを含むものである。この装置は、容器外部に設置されるものであるため、容器の容量や貯蔵する液体の量には依存せず、容量の異なるタンクに使用することが可能である。また、容器に接続される配管が、容器の側壁に荷重をかけることになるものの、貯留タンクまでの距離が短い場合や配管が軽量のものである場合、それほど大きな荷重にはならず、また、必要に応じて、架台を設けて支持することができるため、側壁を補強する必要はない。
【0012】
上記配管は、蛇腹構造を有する配管、または、少なくとも3つの管を接続して構成される配管とされる。地震の発生により、容器や貯留タンクが揺動し、それらの間の間隔等が変化するため、変形可能な部分を備えていなければ、配管は破損する。そのため、上記構造または構成とし、変形可能な部分を備えるものとされる。
【0013】
上記配管は、例えば、容器の側壁の所定高さ位置に接続され、容器から離間する方向に延びる容器接続配管と、貯留タンクに接続される貯留タンク接続配管と、容器接続配管と貯留タンク接続配管とを接続し、容器を取り囲むように離間して配置されるリング状配管とから構成されるものとすることができる。
【0014】
また、容器の側壁の所定高さ位置に接続され、容器から離間する方向に延びる容器接続配管と、貯留タンクに接続され、容器接続配管の接続位置より低い位置に配置される貯留タンク接続配管と、貯留タンク接続配管に接続され、容器を取り囲むように離間して配置されるリング状配管と、容器接続配管と前記リング状配管とを接続するために、容器接続配管からリング状配管へ下方に延びる鉛直配管とから構成されるものとすることもできる。
【0015】
なお、容器接続配管は、複数から構成され、これら複数の容器接続配管が、容器を中心として放射状に延びていることが好ましい。これは、いずれの方向に揺動したとしても、液体を流出させ、液面揺動を効果的に抑制させることができるからである。
【0016】
配管長が長い場合等、容器の側壁のみで配管を支持することができない場合に、配管を支持する架台を含む構成にすることができる。
【0017】
さらに、地震波を検出する地震波検出装置と、地震波検出装置による地震波の検出に応答して、配管内の流路を開放する弁とを含むことができる。これにより、地震が発生していない通常時においては、弁を閉止し、その配管を通して液体が流出することがないようにしておき、地震発生時においては、弁を開き、液体を貯留タンクに向けて流出させることができる。また、貯留タンクから容器に向けて流出させた液体を戻すための液体供給装置をさらに含むことができる。
【0018】
本発明の装置は、複数の容器の各々に接続される複数の上記配管と、複数の上記配管を通して流出した液体を収容する1つの貯留タンクとから構成されるものとすることもできる。
【0019】
本発明の方法は、液面に浮き、かつ該液面を覆う浮屋根を備える容器において、スロッシングによる液面の揺動を抑制する方法であり、容器の側壁の所定高さ位置に接続され、変形を可能にするための伸縮部または曲部を備える配管を通して、液面の揺動により所定高さ位置以上となる液体を容器の外部へ流出させる段階を含むものである。
【0020】
さらに、地震波検出装置により地震波を検出する段階と、配管に設けられる弁により閉鎖された該配管内の流路を、地震波検出装置による地震波の検出に応答して開放する段階とを含むことができる。また、液体供給装置により貯留タンクから容器に向けて流出させた液体を戻す段階を含むことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の液面揺動抑制装置は、容器内に装置が設置されるものではないため、様々な容器容量、貯蔵液量を有する容器に適用することができ、貯蔵液量を減少させることはない。また、容器が薄い側壁でも補強することなく設置することができる。本発明の液面揺動抑制方法を提供することにより、波の発生により上昇した液面付近の液体を流出させるのみで、効果的にスロッシングによる液面揺動を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の液面揺動抑制装置および方法について説明する前に、この液面揺動抑制装置を取り付ける浮屋根式タンクについて説明する。上述したように、浮屋根式タンクは、一般に、円形の底板と、中空円筒形に形成される側板とからなるタンク本体と、タンク本体に収容された液体の液面に浮かべ、液面を覆って液の揮発を防止する浮屋根とから構成される。浮屋根は、詳細には、液面の中央部を覆うデッキ板と、デッキ板の周囲に設けられ、液面に浮かべて使用される中空の箱形構造物であるポンツーンとから構成される。また、浮屋根は、ポンツーンと、タンク本体の側板との間に生じるわずかな隙間を埋めるため、ポンツーンにシール部材が周設される。
【0023】
上記底板、側板、デッキ板は、一般に鋼材から作製され、ポンツーンは、液面に浮くように、ポリ塩化ビニルや繊維強化プラスチック(FRP)等のプラスチック材料やコンクリートから製造される。タンク本体は、収容した液体から受ける圧力が均等にかかるように、上記のような円筒形に形成される。それに伴って、浮屋根は、円形のデッキ板、その円形のデッキ板に周設されるようにリング状のポンツーンとされる。
【0024】
本発明の液面揺動抑制装置を、図1を参照して詳細に説明する。本発明の液面揺動抑制装置は、配管と、貯留タンクとを含んで構成されるものである。浮屋根式タンクといった容器10の側壁11の所定高さ位置には、貫通孔が設けられ、その貫通孔に連続するように配管が接続される。配管は、変形を可能にするための伸縮部または曲部を備え、液面の揺動により所定高さ位置以上となる液体を容器10の外部へ流出させることができるものである。貯留タンクは、配管に接続され、流出した液体を収容するものである。ここで、接続高さとは、配管が接続されている高さで、地面を基準とした高さをいう。
【0025】
上記配管は、蛇腹構造を有する配管、または、少なくとも3つの管を接続して構成される配管とされる。これは、地震の発生により、容器や貯留タンクが揺動し、それらの間の間隔等が変化するため、変形可能な部分を備えていなければ、配管もしくは側壁または貯留タンクが破損するからである。蛇腹構造は、伸縮および曲げが可能であり、この構造を有する配管にすることで、いずれの方向に揺動しても配管等が破損することはなく、貯留タンクに適切に液体を流出させることができる。少なくとも3つの管をエルボ等の接続部材で接続した配管は、少なくとも2つの曲部を備えており、これにより、蛇腹構造に比較して小さい伸縮および曲げであるものの、配管全体として伸縮および曲げを可能にしている。
【0026】
図1に示す実施形態では、配管は、容器10の側壁11の所定高さ位置に接続され、容器10から離間する方向に延びる容器接続配管12と、貯留タンク15に接続される貯留タンク接続配管13と、容器接続配管12と貯留タンク接続配管13とを接続し、容器10を取り囲むように離間して配置されるリング状配管14とから構成されている。
【0027】
容器接続配管12は、容器10の側壁11の高さを10mとすれば、例えば、8mといった所定高さ位置に接続され、その側壁11から離間する方向に、下方に傾斜して延びている。図1では、どの方向に波が発生したとしても液体を流出させることができるように、容器10の側壁11には、複数の容器接続配管12が接続されている。各容器接続配管12は、例えば、貫通孔に螺合することにより接続することができる。また、フランジ接続や溶接により接続することもできる。なお、容器接続配管12が接続される高さ位置は、任意に設定することができ、例えば、側壁11の高さの80%〜90%の高さとすることができる。
【0028】
貯留タンク15は、スロッシングによる液面揺動により流出した液体を収容するものであるが、その液体の量は容器10内に貯蔵されている量に比較して充分に少ないため、容器10に比較して充分に小さい容量のものとされる。貯留タンク接続配管13は、容器10から流出した液体を貯留タンク15に収容するため、貯留タンクの上部側面に、例えば、4mの高さ位置に、上記螺合、フランジ接続、溶接等によって接続される。上記のように、貯留タンク15は、浮屋根式タンクである容器10に比較して充分に小さいものであるため、貯留タンク15の上部側面に貯留タンク接続配管13を接続したとしても、その接続高さ位置は、容器接続配管12の接続高さ位置より低いものとなる。このため、液体を容器10から貯留タンク15に向けて流出させることができる。
【0029】
貯留タンク接続配管13は、容器接続配管12の数に対応する数だけ設けることもできるが、小さな容量の貯留タンク15の側面に、その数の貯留タンク接続配管13を接続することは難しく、また、配管本数が増加することにより材料コストがかかることから、この貯留タンク接続配管13は1本とし、複数の容器接続配管12を通して流出した液体を集めるためのリング状配管14が設けられる。
【0030】
リング状配管14は、容器10を取り囲むように離間して配置され、複数の容器接続配管12と1本の貯留タンク接続配管13とを接続する。また、必要に応じて、リング状配管14等を支持する架台16が設けられる。なお、各配管は、鋼や、硬質ポリ塩化ビニル、繊維強化プラスチック(FRP)等のプラスチック材料から製造されるものを用いることができ、長さおよび径は、スロッシングによって容器10から液体がオーバーフローする前に、適切に配管を通して流出させることができるものとされる。また、貯留タンク15も、流出した液体を収容することができる容量のものとされ、上記材料から製造されるものとすることができる。架台16は、L字鋼、ボルトおよびナット等を使用して組み立てたものとすることができる。また、架台16は、リング状配管14全体を支持するため、リング状に構築されたものであってもよい。
【0031】
図2に示す平面図および図3に示す断面図を参照して、液面揺動を抑制する方法について詳細に説明する。容器接続配管12は、図2に示すように容器10を中心として放射状に、図3に示すように斜め下方に向けて延びており、リング状配管14に接続され、リング状配管14から貯留タンク15に向けて、貯留タンク接続配管13が一方向に延びている。図2に示す容器接続配管12は、等間隔で、8本設けられており、近隣する2つの容器接続配管12によって形成される中心角αが45°となるように接続されている。
【0032】
地震が発生すると、いずれかの方向に揺動し、その方向に向けて波が発生する。図3に示すように、波は、液面に高低を発生させ、波が高位となる方向に接続されている容器接続配管12aでは、液面がその接続高さ位置以上になっているため、その容器接続配管12aを通して液体が流出する。図2に示す実施形態では、矢線Aに示す方向に流出し、リング状配管14内を、矢線Bに示す方向に流れ、次に貯留タンク接続配管13内を流れ、貯留タンク15に収容される。反対に、図3に示す低位となる方向に接続されている容器接続配管12bでは、液面がその接続高さ位置より低いため、その容器接続配管12bからは流出しない。このようにして液体を流出させることで、容器10内の液体の量は減少し、容器10からオーバーフローすることを防止することができる。また、液体の量の減少により、浮屋根に加えられる力も小さくなり、液面の揺動が抑制される。
【0033】
図4は、本発明の液面揺動抑制装置に用いることができる配管の別の実施形態を示した図である。図4に示す配管は、容器接続配管17が水平に延びており、貯留タンク15に接続される貯留タンク接続配管13が、容器接続配管17の接続位置より低い位置に配置されており、貯留タンク接続配管13に接続され、容器10を取り囲むように離間して配置されるリング状配管14と容器接続配管17とを接続するために、容器接続配管17からリング状配管14へ下方に延びる鉛直配管18をさらに含んで構成されている。
【0034】
図4に示す実施形態では、図1または図3に示す斜め下方に延びる容器接続配管12に代えて、この部分の配管を、水平に延びる容器接続配管17と、鉛直下方に延びる鉛直配管18との2本の管から構成している。容器接続配管17と鉛直配管18とは、曲部となるエルボ等の接続部材を使用して接続されており、図1または図3に示す配管に比較して曲部が多くなり、より変形を容易にさせることができる。
【0035】
図5は、本発明の液面揺動抑制装置の別の実施形態を示した図である。図5に示す液面揺動装置は、図4に示す配管と同じ構成とされており、容器接続配管17の途中に弁19が設けられ、さらに地震波検出装置20を含む構成とされている。弁19は、一般に電磁弁とされ、電気信号を受けて開閉可能にされている。地震波検出装置20は、地震波を検出し、弁19に、容器接続配管17の流路を開放する信号を与えるものとされている。なお、地震波検出装置20は、P波を検出するものとされ、このP波の検出によって弁を開く信号を与えることができる。
【0036】
図5に示す液面揺動抑制装置では、地震が発生すると、地震波検出装置20が地震波を検出し、弁を開く信号を生成し、弁19にその信号を送信する。地震波検出装置20と弁19とは、配線等で有線接続、または、無線接続することができるようにされており、弁19は、地震波検出装置20から送信された信号を受け取り、弁を開く操作が行われる。これにより、容器接続配管17の流路は開放され、液体を貯留タンク15に向けて流出させることができる。ここでは、各容器接続配管17に各弁19が設けられているが、貯留タンク接続配管13に弁19を設け、弁を1つとすることもできる。
【0037】
本発明の装置は、様々な容量の容器の液面揺動を抑制することができるとともに、複数の容器の液面揺動を同時に抑制することができる。図6に示すように、各容器60に、各配管61を接続し、各配管61を1つの貯留タンク62に接続することにより、同時に複数の容器内の液面揺動を抑制することができる。この場合の配管は、図1、図4、図5に示すような構成とすることができる。
【0038】
貯留タンクは、液体を取り出すための取出口を備え、その取出口にポンプ等の液体供給装置を接続し、また、ポンプ等の液体供給装置と容器の供給口とをラインで接続し、地震終了後、例えば、液面の揺動が停止した後、貯留タンクから容器に向けて、地震時に流出させた液体を戻すことができる。この液体を戻す際、本発明の装置に用いられる配管を使用することもできる。この場合、図7に示すように、貯留タンク接続配管13に分岐部21を設け、その分岐部21を出た配管のそれぞれに弁22、23を設け、また、分岐部21と液体供給装置24とを配管25で接続した構成にすることができる。地震時には、弁22を閉止し、弁23を開として、貯留タンク15に液体を流出させ、地震終了後には、弁23を閉止し、弁22を開とし、液体供給装置24により、配管25、弁22、分岐部21、貯留タンク接続配管13、リング状配管14、各容器接続配管12を順に通して、液体を戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】浮屋根を備えるタンクの外部に液面揺動抑制装置を設置したところを示す断面図。
【図2】浮屋根を備えるタンクの外部に液面揺動抑制装置を設置したところを示す平面図。
【図3】浮屋根を備えるタンクの外部に液面揺動抑制装置を設置したところを示す断面図。
【図4】液面揺動抑制装置に用いられる配管の別の実施形態を示した図。
【図5】液面揺動抑制装置の第2実施形態を示した図。
【図6】液面揺動抑制装置の第3実施形態を示した図。
【図7】液面揺動抑制装置の第4実施形態を示した図。
【符号の説明】
【0040】
10…容器
11…側壁
12、12a、12b、17…容器接続配管
13…貯留タンク接続配管
14…リング状配管
15…貯留タンク
16…架台
18…鉛直配管
19、22、23…弁
20…地震波検出装置
21…分岐部
24…液体供給装置
25…配管
60…容器
61…配管
62…貯留タンク







【特許請求の範囲】
【請求項1】
液面に浮き、かつ該液面を覆う浮屋根を備える容器に用いられ、スロッシングによる液面の揺動を抑制するための装置であって、
前記容器の側壁の所定高さ位置に接続され、変形を可能にするための伸縮部または曲部を備え、前記液面の揺動により前記所定高さ位置以上となる液体を前記容器の外部へ流出させるための配管と、
前記配管に接続され、流出した前記液体を収容する貯留タンクとを含む、液面揺動抑制装置。
【請求項2】
前記配管は、蛇腹構造を有する配管、または、少なくとも3つの管を接続して構成される配管である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記配管は、前記容器の側壁の所定高さ位置に接続され、前記容器から離間する方向に延びる容器接続配管と、前記貯留タンクに接続される貯留タンク接続配管と、前記容器接続配管と前記貯留タンク接続配管とを接続し、前記容器を取り囲むように離間して配置されるリング状配管とから構成される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記配管は、前記容器の側壁の所定高さ位置に接続され、前記容器から離間する方向に延びる容器接続配管と、前記貯留タンクに接続され、前記容器接続配管の接続位置より低い位置に配置される貯留タンク接続配管と、前記貯留タンク接続配管に接続され、前記容器を取り囲むように離間して配置されるリング状配管と、前記容器接続配管と前記リング状配管とを接続するために、前記容器接続配管から前記リング状配管へ下方に延びる鉛直配管とから構成される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
前記容器接続配管は、複数から構成され、前記複数の容器接続配管は、前記容器を中心として放射状に延びていることを特徴とする、請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
さらに、前記配管を支持する架台を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
さらに、地震波を検出する地震波検出装置と、前記地震波検出装置による前記地震波の検出に応答して、前記配管内の流路を開放する弁とを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
さらに、前記貯留タンクから前記容器に向けて流出させた前記液体を戻すための液体供給装置を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記装置は、複数の前記容器の各々に接続される複数の前記配管と、前記複数の配管を通して流出された前記液体を収容する1つの前記貯留タンクとから構成される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
液面に浮き、かつ該液面を覆う浮屋根を備える容器において、スロッシングによる液面の揺動を抑制する方法であって、前記容器の側壁の所定高さ位置に接続され、変形を可能にするための伸縮部または曲部を備える配管を通して、前記液面の揺動により前記所定高さ位置以上となる液体を前記容器の外部へ流出させる段階を含む、方法。
【請求項11】
さらに、地震波検出装置により地震波を検出する段階と、前記配管に設けられる弁により閉鎖された該配管内の流路を、前記地震波検出装置による前記地震波の検出に応答して開放する段階とを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
さらに、液体供給装置により前記貯留タンクから前記容器に向けて流出させた前記液体を戻す段階を含む、請求項10または11に記載の方法。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−197057(P2007−197057A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18586(P2006−18586)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】