説明

混合の可逆的音声圧縮

【課題】単一の音声信号に対して統合された仕方で不可逆的圧縮および可逆的圧縮を使用する。
【解決手段】混合の可逆的音声圧縮が、不可逆的音声圧縮と可逆的音声圧縮を同一の音声信号内で組み合わせる統合された不可逆的可逆的圧縮のスキームに適用される。混合の可逆的圧縮は、不可逆的符号化フレームと可逆的符号化フレームの間の遷移フレームを符号化してシームレスな遷移を生成する。混合の可逆的符号化は、重複変換および逆重複変換を行って適切にウインドウ化され、畳み込まれた擬似時間領域フレームを生成し、次に、この擬似時間領域フレームが損失なく符号化されることが可能である。また、混合の可逆的符号化は、劣悪な不可逆的圧縮パフォーマンスを示すフレームに関しても適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声信号およびその他の信号をデジタル式に符号化し、処理するための技術に関する。本発明は、より詳細には、音声信号の不可逆的符号化と可逆的符号化を結合する圧縮技術に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮スキームは、一般に、不可逆的種類と可逆的種類の2種類である。不可逆的圧縮は、圧縮された信号に一部の情報が符号化されることから除くことによって元の信号を圧縮して、復号化した際に信号が、もはや元の信号と同一でないようにする。例えば、多くの最新の不可逆的音声圧縮スキームは、人間聴覚モデルを使用して、人間の耳で知覚上、感知できない、またはほとんど感知できない信号成分を除去する。そのような不可逆的圧縮は、非常に高い圧縮比を実現することができ、不可逆的圧縮は、インターネットの音楽ストリーミング、ダウンロード、および可搬デバイスにおける音楽再生などのアプリケーションによく適するようになっている。
【0003】
他方、可逆的圧縮は、情報の損失なしに信号を圧縮する。復号化の後、もたらされる信号は、元の信号と同一である。不可逆的圧縮と比べて、可逆的圧縮は、非常に限られた圧縮比を実現する。可逆的音声圧縮に関して2:1の圧縮比は、通常、良好であると考えられている。したがって、可逆的圧縮は、音楽アーカイビングおよびDVD(digital versatile disk)オーディオなどの、完璧な再現が必要とされる、またはサイズより品質が選好されるアプリケーションにより適している。
【0004】
従来、音声圧縮スキームは、不可逆的なものか、または可逆的なものである。しかし、いずれの圧縮も最適でないアプリケーションが存在する。例えば、実質的にすべての最新の不可逆的音声圧縮スキームは、雑音割振りのために周波数領域法および心理音響学モデルを使用する。心理音響学モデルは、ほとんどの信号およびほとんどの人々に関してうまく機能するが、完璧ではない。第1に、一部のユーザは、不可逆的圧縮に起因する劣化が最も知覚される音声トラックの部分の間、より高い品質レベルを選択できる能力を有することを望む可能性がある。これは、ユーザの耳に受けのよい可能性がある良好な心理音響学モデルが存在しない場合、特に重要である。第2に、音声データのいくつかの部分が、いずれの良好な心理音響学モデルにもそぐわず、不可逆的圧縮が、所望の品質を実現するために多数のビットを使用し、データ「拡張」さえ使用する可能性がある。その場合、可逆的圧縮が、より効率的である。
【0005】
いくつかの文献に上述のような従来の技術に関連した技術内容が開示されている(例えば、非特許文献1〜6参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Seymour Shilen, "The Modulated Lapped Transform, Its Time-Varying Forms, and Its Application to Audio Coding Standards," IEEE Transactions On Speech and Audio Processing, Vol.5, No.4, July 1997, pp. 359-366
【非特許文献2】John Makhoul, "Linear Prediction: A Tutorial Review," Proceedings of the IEEE, Vol.63, No.4, April 1975, pp. 562-580
【非特許文献3】N.S. Jayant and Peter Noll, "Digital Coding of Waveforms," Prentice Hall, 1984
【非特許文献4】Simon Haykin, "Adaptive Filter Theory," Prentice Hall, 2002
【非特許文献5】Paolo Prandoni and Martin Vetterli, "An FIR Cascade Structure for Adaptive Linear Prediction," IEEE Transactions On Signal Processing, Vol.46, No.9, September 1998, pp.2566-2571
【非特許文献6】Gerald Schuller, Bin Yu, Dawei Huang, and Bern Edler, "Perceptual Audio Coding Using Pre- and Post-Filters and Lossless Compression," IEEE Transactions On Speech and Audio Processing掲載予定
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のシステムには上述したような種々の問題があり、さらなる改善が望まれている。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、単一の音声信号に対して統合された仕方で不可逆的圧縮および可逆的圧縮を使用することが可能になる混合の可逆的音声圧縮を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書で説明する統合された不可逆的可逆的音声圧縮を使用する音声処理により、単一の音声信号に対して統合された仕方で不可逆的圧縮および可逆的圧縮を使用することが可能になる。この統合された手法を使用して、音声符号器は、心理音響学モデルによる雑音割振りが許容可能である音声信号の部分に対して高い圧縮比を実現するために不可逆的圧縮を使用して音声信号を符号化することから、より高い品質が所望され、かつ/または不可逆的圧縮が、十分に高い圧縮を実現できない部分に対して可逆的圧縮を使用することに切り替えることができる。
【0010】
単一の圧縮ストリームの中で不可逆的圧縮と可逆的圧縮を統合することに対する1つの重要な障害は、不可逆的圧縮と可逆的圧縮の間の遷移により、復号化された音声信号において聞き取れる不連続点が導入される可能性があることである。より具体的には、不可逆的圧縮部分においてある音声成分が除去されていることに起因して、不可逆的圧縮部分に関して再現された音声信号は、隣接する可逆的圧縮部分と、その部分間の境界において、相当に不連続である可能性があり、これにより、不可逆的圧縮と可逆的圧縮の間で切り換わる際に聞き取れる雑音(「ポッピング」)が導入される可能性がある。
【0011】
さらなる障害は、多くの不可逆的圧縮スキームが、重なり合ったウインドウに依拠して元の音声信号サンプルを処理するが、可逆的圧縮の方は、一般に、そうしないことである。重なり合った部分が、不可逆的圧縮から可逆的圧縮に切り替える際にドロップされた場合、遷移の不連続性は、悪化する可能性がある。他方、不可逆的圧縮と可逆的圧縮の両方で重なり合った部分を冗長に符号化することは、実現される圧縮比を低くする可能性がある。
【0012】
本明細書で説明する統合された不可逆的可逆的圧縮の実施形態は、以上の障害に対処する。この実施形態では、音声信号が、次の3つのタイプとして符号化されることが可能なフレームに分割される。すなわち、(1)不可逆的圧縮を使用して符号化される不可逆的フレーム、(2)可逆的圧縮を使用して符号化される可逆的フレーム、および(3)不可逆的フレームと可逆的フレームの間の遷移フレームとしての役割をする混合の可逆的フレームである。また、混合の可逆的フレームは、不可逆的フレームと可逆的フレームの間の遷移に役立つことなしに、不可逆的圧縮のパフォーマンスが劣悪な不可逆的フレームのなかの孤立したフレームに関して使用することも可能である。
【0013】
混合の可逆的フレームは、不可逆的圧縮の場合と同様に、重なり合うウインドウに対して重複変換(lapped transform)を行った後、その逆変換を行って単一の音声信号フレームを生成し、次に、このフレームを可逆的に圧縮することによって圧縮される。重複変換および逆変換の後にもたらされる音声信号フレームを本明細書で、「擬似時間領域信号」と呼ぶ。というのは、この信号は、もはや周波数領域内になく、またその音声信号の元の時間領域バージョンでもないからである。この処理は、重複変換のような周波数領域法を使用する不可逆的フレームから、線形予測符号化のような時間領域信号処理法を使用する可逆的フレームに直接に、またその逆にシームレスに融合するという特性を有する。
【0014】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照して行われる以下の実施形態の詳細な説明から明白となるであろう。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、共単一の音声信号に対して統合された仕方で不可逆的圧縮および可逆的圧縮を使用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】説明する実施形態が実施されることが可能な音声符号器を示すブロック図である。
【図2】説明する実施形態が実施されることが可能な音声復号器を示すブロック図である。
【図3】統合された不可逆的可逆的圧縮の一実施形態を使用して符号化され、不可逆的フレーム、混合の可逆的フレーム、および純可逆的フレームから成る圧縮された音声信号を示す図である。
【図4】統合された不可逆的可逆的圧縮の実施形態において入力音声信号を不可逆的フレームとして、混合の可逆的フレームとして、または純可逆的フレームとして符号化することを選択するためのプロセスを示すフローチャートである。
【図5】図4の統合された不可逆的可逆的圧縮の実施形態における混合の可逆的フレームの混合の可逆的圧縮を示すデータフロー図である。
【図6】図5の混合の可逆的圧縮プロセス内で変調離散コサイン変換とその逆変換をともに計算する等価処理マトリクスを示す図である。
【図7】図4の統合された不可逆的可逆的圧縮の実施形態における純可逆的フレームの純可逆的圧縮を示すデータフロー図である。
【図8】図7の純可逆的圧縮におけるトランジェント検出を示すフローチャートである。
【図9】図7の純可逆的圧縮におけるマルチチャネル最小2乗予測フィルタのために使用される基準サンプルを示すグラフである。
【図10】図7の純可逆的圧縮におけるカスケード式LMSフィルタを通る構成およびデータフローを示すデータフロー図である。
【図11】可逆的符号化のために設計されたサブシーケンスを含む入力音声フレームのシーケンスに関するウインドウ化およびウインドウ化されたフレームを示すグラフである。
【図12】混合の可逆的フレームの復号化を示すフローチャートである。
【図13】純可逆的フレームの復号化を示すフローチャートである。
【図14】図4の統合された不可逆的可逆的圧縮の実施形態のための適切なコンピューティング環境を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。以下の説明は、統合された不可逆的可逆的圧縮のための音声プロセッサおよび音声処理技術を対象としている。この音声プロセッサおよび音声処理技術は、Microsoft Windows(登録商標)Media Audio(WMA)ファイル形式の変種を使用する符号器および復号器などの音声符号器および音声復号器において、例示的に適用される。ただし、この音声プロセッサおよび音声処理技術は、この形式に限定されず、その他の音声符号化形式に適用することも可能である。したがって、この音声プロセッサおよび音声処理技術は、一般化された音声符号器および音声復号器の状況で説明しているが、代替として、様々なタイプの音声符号器および音声復号器に組み込むことができる。
【0018】
I.一般化された音声符号器および音声復号器
図1は、統合された不可逆的可逆的音声圧縮のための音声処理が実施されることが可能な一般化された音声符号器(100)を示すブロック図である。符号器(100)は、符号化中、マルチチャネル音声データを処理する。図2は、説明する実施形態が実施されることが可能な一般化された音声復号器(200)を示すブロック図である。復号器(200)は、復号化中、マルチチャネル音声データを処理する。
【0019】
符号器内部および復号器内部のモジュール間に示される関係は、符号器および復号器における情報の主な流れを示し、その他の関係は、簡明にするために図示していない。実施形態、および所望される圧縮のタイプに応じて、符号器または復号器のモジュールは、追加すること、省くこと、複数のモジュールに分割すること、その他のモジュールと組み合わせること、および/または同様のモジュールで置き換えることが可能である。代替の実施形態では、異なるモジュールおよび/またはその他の構成を有する符号器または復号器が、マルチチャネル音声データを処理する。
【0020】
A.一般化された音声符号器
一般化された音声符号器(100)は、セレクタ(108)、マルチチャネルプリプロセッサ(110)、パーティショナ(partitioner)/タイル構成器(tile Configurer)(120)、周波数変換器(130)、知覚モデラ(perception modeler)(140)、重み付け器(weighter)(142)、マルチチャネル変換器(150)、量子化器(160)、エントロピー符号器(170)、コントローラ(180)、混合/純可逆的符号器(172)、関連するエントロピー符号器(174)、およびビットストリームマルチプレクサ[「MUX」](190)とを含む。
【0021】
符号器(100)は、パルス符号変調[「PCM」]形式で、何らかのサンプリング深度およびサンプリングレートである時系列の入力音声サンプル(105)を受け取る。説明する実施形態のほとんどの場合、入力音声サンプル(105)は、マルチチャネルオーディオ(例えば、ステレオモード、サラウンド(surround))に関するが、入力音声サンプル(105)は、代わりにモノラルであることも可能である。符号器(100)は、音声サンプル(105)を圧縮し、符号器(100)の様々なモジュールによって生成される情報を多重化して、Windows(登録商標)Media Audio[「WMA」]またはAdvanced Streaming Format[「ASF」]などの形式でビットストリーム(195)を出力する。代替として、符号器(100)は、他の入力形式および/または出力形式で機能する。
【0022】
最初、セレクタ(108)が、音声サンプル(105)に関する多数の符号化モードから選択を行う。図1で、セレクタ(108)は、次の2つのモードの間で切替えを行う。すなわち、混合/純可逆的符号化モード、および不可逆的符号化モードである。可逆的符号化モードは、混合/純可逆的符号器(172)を含み、通常、高品質(および高いビットレート)の圧縮のために使用される。不可逆的符号化モードは、重み付け器(142)および量子化器(160)などの構成要素を含み、通常、調整可能な品質(および規制されたビットレート)の圧縮のために使用される。セレクタ(108)における選択決定は、ユーザ入力(例えば、ユーザが、高品質の音声コピーを作成するために可逆的符号化を選択すること)、または他の基準に依存する。他の状況(例えば、不可逆的圧縮が、十分なパフォーマンスを提供できない場合)では、符号器(100)は、フレーム、または1組のフレームに関して不可逆的符号化から混合/純可逆的符号化に切り換わることが可能である。
【0023】
マルチチャネル音声データの不可逆的符号化の場合、マルチチャネルプリプロセッサ(110)が、オプションとして、時間領域音声サンプル(105)をマトリクス化しなおす。いくつかの実施形態では、マルチチャネルプリプロセッサ(110)は、1つまたは複数の符号化されたチャネルをドロップするか、または符号器(100)におけるチャネル間の相関を高めるが、それでも復号器(200)における(何らかの形態での)再構成を可能にするように音声サンプル(105)を選択的にマトリクス化しなおす。これにより、符号器に、チャネルレベルにおける品質に対するさらなる制御が与えられる。マルチチャネルプリプロセッサ(110)は、マルチチャネルポストプロセッサに対する命令などの副次情報をMUX(190)に送ることができる。いくつかの実施形態におけるマルチチャネルプリプロセッサの動作に関するさらなる詳細については、「音声符号化および音声復号化のためのアーキテクチャおよび技術(Architecture And Techniques For Audio Encoding And Decoding)」という名称の関連出願の「マルチチャネル前処理(Multi-Channel Pre-Processing)」という題名のセクションを参照されたい。代替として、符号器(100)は、別の形態のマルチチャネル前処理を行う。
【0024】
パーティショナ/タイル構成器(120)が、音声入力サンプル(105)のフレームを時間変動する(time varying)サイズおよびウインドウ成形ファンクション(window shaping function)を有するサブフレームブロックに区分する。サブフレームブロックのサイズおよびウインドウは、フレーム内のトランジェント(transient)信号の検出、符号化モード、およびその他の要因に依存する。
【0025】
符号器(100)が不可逆的符号化から混合/純可逆的符号化に切り換わった場合、サブフレームブロックは、理論上、重なり合う必要、またはウインドウ化(windowing)ファンクションを有する必要はないが、不可逆的符号化が行われたフレームとその他のフレームの間の遷移は、特別の処置を要する可能性がある。パーティショナ/タイル構成器(120)は、区分されたデータのブロックを混合/純可逆的符号器(172)に出力し、ブロックサイズなどの副次情報をMUX(190)に出力する。混合または純可逆的符号化が行われたフレームに関する区分化およびウインドウ化のさらなる詳細を、説明の以下のセクションで提示する。
【0026】
符号器(100)が不可逆的符号化を使用する場合、可能なサブフレームサイズには、32サンプル、64サンプル、128サンプル、256サンプル、512サンプル、1024サンプル、2048サンプル、および4096サンプルが含まれる。可変サイズにより、可変の時間分解能(temporal resolution)が可能になる。小さいブロックは、入力音声サンプル(105)における短いがアクティブな遷移のセグメントにおいて時間の詳細をよりよく保存することを可能にするが、いくらかの周波数分解能を犠牲にする。反対に、大きいブロックは、より良好な周波数分解能とより劣った時間分解能を有し、通常、より長く、それほどアクティブでないセグメントにおいて、フレームヘッダおよび副次情報が、小さいブロックよりも比例して少ないことを理由の一部として、より高い圧縮効率を可能にする。ブロックは重なり合って、さもなければ後の量子化によって導入される可能性がある、ブロック間の知覚される不連続点を減らすことができる。パーティショナ/タイル構成器(120)は、区分されたデータのブロックを周波数変換器(130)に出力し、ブロックサイズなどの副次情報をMUX(190)に出力する。いくつかの実施形態におけるトランジェント検出および区分化の基準に関するさらなる情報については、参照により本明細書に組み込まれている2001年12月14日に出願した「変換符号化における適応ウインドウサイズ選択(Adaptive Window-Size Selection in Transform Coding)」という名称の米国特許出願第10/016,918号を参照されたい。代替として、パーティショナ/タイル構成器(120)は、フレームをウインドウに区分する際、他の区分化の基準または他のブロックサイズを使用する。
【0027】
いくつかの実施形態では、パーティショナ/タイル構成器(120)は、マルチチャネル音声のフレームをチャネルごとに区分する。前述した符号器とは異なり、パーティショナ/タイル構成器(120)は、フレームに関してマルチチャネル音声のすべての異なるチャネルを同じ仕方で区分する必要はない。むしろ、パーティショナ/タイル構成器(120)は、フレームの中の各チャネルを独立に区分する。これにより、例えば、パーティショナ/タイル構成器(120)が、より小さいウインドウを有するマルチチャネルの特定のチャネルにおいて出現するが、フレームの中の他のチャネルにおける周波数分解能または圧縮効率のためにより大きいウインドウを使用するトランジェントを分離することが可能になる。マルチチャネル音声の異なるチャネルを独立にウインドウ化することは、チャネルごとにトランジェントを分離することによって圧縮効率を向上させる可能性があるが、個々のチャネルにおいて区分を指定する追加の情報が、多くの場合、必要とされる。さらに、同じ時間に位置する同一サイズのウインドウが、さらなる冗長性の低減の対象となることがふさわしい可能性がある。したがって、パーティショナ/タイル構成器(120)は、同じ時間に位置する同一サイズのウインドウをタイルとしてグループ化する。いくつかの実施形態におけるタイル化(tiling)に関するさらなる詳細については、「音声符号化および音声復号化のためのアーキテクチャおよび技術(Architecture And Techniques For Audio Encoding And Decoding)」という名称の関連出願の「タイル構成(Tile Configuration)」という題名のセクションを参照されたい。
【0028】
周波数変換器(130)が、音声サンプル(105)を受け取り、周波数領域内のデータに変換する。周波数変換器(130)は、周波数係数データのブロックを重み付け器(142)に出力し、ブロックサイズなどの副次情報をMUX(190)に出力する。周波数変換器(130)は、周波数係数と副次情報をともに知覚モデラ(140)に出力する。いくつかの実施形態では、周波数変換器(130)は、サブフレームブロックのウインドウファンクションによって変調されたDCT(discrete cosine transform)のように動作する時間変動MLTをサブフレームブロックに適用する。代替の実施形態は、その他の様々なMLT、またはDCT、FFT、あるいはその他のタイプの変調された、または変調されない、重複する、または重複しない周波数変換を使用するか、あるいはサブバンド符号化またはウェーブレット符号化を使用する。
【0029】
知覚モデラ(140)は、人間聴覚システムの特性をモデル化して、所与のビットレートに関して再構成される音声信号の知覚される品質を向上させる。一般に、知覚モデラ(140)は、聴覚モデルに従って音声データを処理した後、音声データに対する重み付け係数を生成するのに使用することができる重み付け器(142)に情報を提供する。知覚モデラ(140)は、様々な聴覚モデルのいずれかを使用し、励起パターン情報、またはその他の情報を重み付け器(142)に送る。
【0030】
重み付け器(142)は、知覚モデラ(140)から受け取られた情報に基づいて量子化マトリクスのための重み付け係数を生成し、その重み付け係数を周波数変換器(130)から受け取られたデータに適用する。重み付け係数は、音声データにおける多数の量子化帯域のそれぞれに関する重みを含む。量子化帯域は、符号器(100)の別の場所で使用されるクリティカルな帯域と数または位置が同じであることも、異なることも可能である。重み付け係数は、雑音が量子化帯域にわたって拡散している割合を示し、それほど聞こえない帯域内により多くの雑音を入れ、またその逆を行うことによって雑音の可聴性を最低限に抑えることを目標としている。重み係数は量子化帯域の幅や数をブロックからブロックに変えることができる。重み付け器(140)は、係数データの重み付けされたブロックをマルチチャネル変換器(150)に出力し、重み付け係数のセットなどの副次情報をMUX(190)に出力する。また、重み付け器(140)は、符号器(100)内部のその他のモジュールに対して重み付け係数を出力することもできる。重み付け係数のセットは、より効率的な表現のために圧縮することができる。重み付け係数に不可逆的圧縮が行われた場合、再構成された重み付け係数は、通常、係数データのブロックに重み付けを行うのに使用される。いくつかの実施形態における重み付け係数の計算および圧縮に関するさらなる詳細については、「音声符号化および音声復号化のためのアーキテクチャおよび技術(Architecture And Techniques For Audio Encoding And Decoding)」という名称の関連出願の「逆量子化および逆重み付け(Inverse Quantization and Inverse Weighting)」という題名のセクションを参照されたい。代替として、符号器(100)は、別の形態の重み付けを使用するか、または重み付けを省く。
【0031】
マルチチャネル音声データの場合、重み付け器(142)によって生成される雑音形状の周波数係数データの多数のチャネルは、しばしば、相関する。この相関を活用するため、マルチチャネル変換器(150)は、タイルの音声データにマルチチャネル変換を適用することができる。いくつかの実施形態では、マルチチャネル変換器(150)は、チャネルのすべてではなくいくつかに、かつ/またはタイルの中のクリティカルな帯域にマルチチャネル変換を選択的に、柔軟に適用する。これにより、タイルの比較的相関する部分に対する変換の適用に対して、より正確な制御がマルチチャネル変換器(150)に与えられる。計算上の複雑さを小さくするため、マルチチャネル変換器(150)は、1レベル変換ではなく、階層式変換を使用する。変換マトリクスに関連するビットレートを低減するため、マルチチャネル変換器(150)は、事前定義された(例えば、恒等/無変換、アダマール、DCTタイプII)マトリクス、つまりカスタムマトリクスを選択的に使用し、効率的な圧縮をそのカスタムマトリクスに適用する。最後に、マルチチャネル変換は、重み付け器(142)から下流にあるので、復号器(200)における逆マルチチャネル変換後にチャネル間で漏れる雑音、例えば知覚されることは、逆重み付けによって抑制される。いくつかの実施形態におけるマルチチャネル変換に関するさらなる詳細については、「音声符号化および音声復号化のためのアーキテクチャおよび技術(Architecture And Techniques For Audio Encoding And Decoding)」という名称の関連出願の「柔軟なマルチチャネル変換(Flexible Multi-Channel Transform)」という題名のセクションを参照されたい。代替として、符号器(100)は、他の形態のマルチチャネル変換を使用するか、または全く変換を使用しない。マルチチャネル変換器(150)は、例えば、使用されるマルチチャネル変換、およびタイルのマルチチャネル変換された部分を示す副次情報をMUX(190)に対して生成する。
【0032】
量子化器(160)が、マルチチャネル変換器(150)の出力を量子化し、量子化された係数データをエントロピー符号器(170)に対して生成し、量子化ステップサイズを含む副次情報をMUX(190)に対して生成する。量子化により、情報の不可逆な損失が導入されるが、符号器(100)が、コントローラ(180)と連携して出力ビットストリーム(195)の品質およびビットレートを調整することも可能になる。量子化器は、タイルごとに量子化係数を計算し、また所与のタイルの中のチャネルごとに、チャネルごとの量子化ステップ変更子(modifier)を計算することもできる適応型の一様なスカラー量子化器であることが可能である。タイル量子化係数は、量子化ループの各回の反復ごとに変化して、エントロピー符号器(170)出力のビットレートに影響を与えることが可能であり、またチャネルごとの量子化ステップ変更子を使用して、チャネル間の再構成品質のバランスをとることができる。代替の実施形態では、量子化器は、一様でない量子化器、ベクトル量子化器、および/または非適応型量子化器であるか、あるいは異なる形態の適応型の一様なスカラー量子化を使用する。
【0033】
エントロピー符号器(170)が、量子化器(160)から受け取られた量子化された係数データを可逆的に圧縮する。いくつかの実施形態では、エントロピー符号器(170)は、「レベルモードとランレングス/レベルモード間で符号化を適応させることによるエントロピー符号化(Entropy Coding by Adapting Coding Between Level and Run Length/Level Modes)」という名称の関連出願に記載される適応型エントロピー符号化を使用する。代替として、エントロピー符号器(170)は、何らかの他の形態または組合せのマルチレベルランレングス符号化、可変−可変レングス符号化、ランレングス符号化、ハフマン符号化、辞書符号化、算術符号化、LZ符号化、または何らかの他のエントロピー符号化技術を使用する。エントロピー符号器(170)は、音声情報を符号化するのに費やされたビットの数を計算し、この情報を速度/品質コントローラ(180)に渡すことができる。
【0034】
コントローラ(180)は、量子化器(160)と協働して、符号器(100)の出力のビットレートおよび/または品質を調整する。コントローラ(180)は符号器(100)の他のモジュールから情報を受け取り、受け取った情報を処理して、現在の状況に与えられた所望の量子化係数を決定する。コントローラ(180)は、品質制約および/またはビットレート制約を満たすことを目標として、量子化係数を量子化器(160)に対して出力する。コントローラ(180)は、逆量子化器、逆重み付け器、逆マルチチャネル変換器を含むことが可能であり、場合により、音声データを再構成する、またはブロックに関する情報を計算するその他のモジュールも含むことが可能である。
【0035】
混合の純可逆的符号器(172)および関連する符号器(174)が、混合/純可逆的符号化モードに関して音声データを圧縮する。符号器(100)は、シーケンス全体に対して混合/純可逆的符号化モードを使用するか、あるいはフレームごとに、または他の基準で符号化モード間の切替えを行う。一般的に可逆的符号化モードは不可逆的符号化モードよりも、高い品質、高いビットレート出力をもたらす。代替として、符号器(100)は、混合または純可逆的符号化のための他の技術を使用する。
【0036】
MUX(190)が、音声符号器(100)のその他のモジュールから受け取られた副次情報を、エントロピー符号器(170)から受け取られたエントロピー符号化されたデータとともに多重化する。MUX(190)は、WMA形式、または音声復号器が認識する別の形式で情報を出力する。MUX(190)は、符号器(100)によって出力されるビットストリーム(195)を記憶する仮想バッファを含む。仮想バッファは、音声の複雑さの変化に起因するビットレートの短期間の変動を平滑化するため、所定の時間の音声情報(例えば、ストリームの音声に関して5秒間)を記憶する。その後、仮想バッファは、比較的一定のビットレートでデータを出力する。バッファの現在の充満度、バッファの充満度の変化の速度、およびバッファのその他の特性が、コントローラ(180)によって使用されて、品質および/またはビットレートが調整されることが可能である。
【0037】
B.一般化された音声復号器
図2を参照すると、一般化された音声符号器(200)は、ビットストリームデマルチプレクサ[「DEMUX」](210)と、1つまたは複数のエントロピー復号器(220)と、混合/純可逆的復号器(222)と、タイル構成復号器(230)と、逆マルチチャネル変換器(240)と、逆量子化器/重み付け器(250)と、逆周波数変換器(260)と、オーバーラッパー(overlapper)/加算器(270)と、マルチチャネルポストプロセッサ(280)とを含む。復号器(200)は、符号器(100)よりもいくぶん単純である。というのは、復号器(200)は、速度/品質制御のためのモジュール、または知覚モデル化のためのモジュールを含まないからである。
【0038】
復号器(200)は、WMA形式または別の形式で圧縮された音声情報のビットストリーム(205)を受け取る。ビットストリーム(205)は、エントロピー符号化されたデータ、および復号器(200)が音声サンプル(295)を再構成する元にする副次情報を含む。
【0039】
DMUX(210)は、ビットストリーム(205)の中の情報を構文解析して、情報を復号器(200)のモジュールに送る。DEMUX(210)は、音声の複雑さの変動、ネットワークジッタ、および/またはその他の要因に起因するビットレートの短期間の変動を補償する1つまたは複数のバッファを含む。
【0040】
1つまたは複数のエントロピー復号器(220)が、DEMUX(210)から受け取られたエントロピー符号を損失なしに伸張する。エントロピー復号器(220)は、通常、符号器(100)で使用されるエントロピー符号化技術の逆を適用する。簡明にするため、図2に1つのエントロピー復号器モジュールを示しているが、不可逆的符号化モード用および可逆的符号化モード用として、あるいはモード内においてさえ、異なるエントロピー復号器を使用することも可能である。また、簡明にするため、図2は、モード選択ロジックを示していない。不可逆的符号化モードで圧縮されたデータを復号化する際、エントロピー復号器(220)は、量子化された周波数係数データを生成する。
【0041】
混合/純可逆的復号器(222)および関連するエントロピー復号器(220)は、混合/純可逆的符号化モードに関して可逆的に符号化された音声データを伸張する。復号器(200)は、シーケンス全体に関して特定の復号化モードを使用するか、あるいはフレームごとに、または他の基準で復号化モードを切り替える。
【0042】
タイル構成復号器(230)が、フレームに関するタイルのパターンを示す情報をDEMUX(210)から受け取る。タイルパターン情報は、エントロピー符号化されていること、または別の仕方でパラメータ設定されていることが可能である。次に、タイル構成復号器(230)は、タイルパターン情報を復号器(200)の様々な他の構成要素に送る。いくつかの実施形態におけるタイル構成復号化に関するさらなる詳細については、「音声符号化および音声復号化のためのアーキテクチャおよび技術(Architecture And Techniques For Audio Encoding And Decoding)」という名称の関連出願の「タイル構成(Tile Configuration)」という題名のセクションを参照されたい。代替として、復号器(200)は、他の技術を使用してフレームの中のウインドウパターンをパラメータ設定する。
【0043】
逆マルチチャネル変換器(240)が、エントロピー復号器(220)からのエントロピー復号化済みの量子化された周波数係数データ、ならびにタイル構成復号器(230)からのタイルパターン情報、および、例えば、使用されたマルチチャネル変換およびタイルの変換された部分を示すDEMUX(210)からの副次情報を受け取る。この情報を使用して、逆マルチチャネル変換器(240)は、必要に応じて変換マトリクスを伸張し、1つまたは複数の逆マルチチャネル変換をタイルの音声データに選択的に、柔軟に適用する。逆量子化器/逆重み付け器(250)に対する逆マルチチャネル変換器(240)の配置は、符号器(100)におけるマルチチャネル変換されたデータの量子化に起因してチャネル間で漏れる可能性がある量子化雑音を成形するのに役立つ。いくつかの実施形態における逆マルチチャネル変換に関するさらなる詳細については、「音声符号化および音声復号化のためのアーキテクチャおよび技術(Architecture And Techniques For Audio Encoding And Decoding)」という名称の関連出願の「柔軟なマルチチャネル変換(Flexible Multi-Channel Transform)」という題名のセクションを参照されたい。
【0044】
逆量子化器/逆重み付け器(250)が、DEMUX(210)からタイル量子化係数およびチャネル量子化係数を受け取り、また逆マルチチャネル変換器(240)から量子化された周波数係数データを受け取る。逆量子化器/逆重み付け器(250)は、必要に応じて受け取られた量子化係数/マトリクス情報を伸張した後、逆量子化および逆重み付けを行う。いくつかの実施形態における逆量子化および逆重み付けに関するさらなる詳細については、「音声符号化および音声復号化のためのアーキテクチャおよび技術(Architecture And Techniques For Audio Encoding And Decoding)」という名称の関連出願の「逆量子化および逆重み付け(Inverse Quantization and Iverse Weighting)」という題名のセクションを参照されたい。代替の実施形態では、逆量子化器は、符号器において使用された何らかの他の量子化技術の逆を適用する。
【0045】
逆周波数変換器(260)が、逆量子化器/逆重み付け器(250)によって出力された周波数係数データ、ならびにDEMUX(210)からの副次情報、およびタイル構成復号器(230)からのタイルパターン情報を受け取る。逆周波数変換器(260)は、符号器で使用された周波数変換の逆を適用し、ブロックをオーバーラッパー/加算器(270)に出力する。
【0046】
オーバーラッパー/加算器(270)は、全体として、符号器(100)におけるパーティショナ/タイル構成器(120)に対応する。タイル構成復号器(230)からタイルパターン情報を受け取ることに加えて、オーバーラッパー/加算器(270)は、逆周波数変換器(260)および/または混合/純可逆的復号器(222)から復号化された情報を受け取る。いくつかの実施形態では、逆周波数変換器(260)から受け取られる情報、および混合/純可逆的復号器(222)からの一部の情報は、擬似時間領域情報である、すなわち、一般に、時間によって編成されているが、ウインドウ化され、重なり合うブロックから導出されている。混合/純可逆的復号器(222)から受け取られる他の情報(例えば、純可逆的符号化で符号化された情報)は、時間領域情報である。オーバーラッパー/加算器(270)は、必要に応じて音声データを重ね合わせ、追加し、異なるモードで符号化されたフレームまたは他の音声データシーケンスをインターリーブする。混合または純可逆的符号化が行われたフレームを重ね合わせ、追加し、インターリーブすることに関するさらなる詳細は、以下のセクションで説明する。代替として、復号器(200)は、フレームを重ね合わせ、追加し、インターリーブするために他の技術を使用する。
【0047】
マルチチャネルポストプロセッサ(280)は、オプションとして、オーバーラッパー/加算器(270)によって出力された時間領域音声サンプルをマトリクス化しなおす。マルチチャネルポストプロセッサは、音声データを選択的にマトリクス化しなおして、再生のためのファントムチャネルを生成し、スピーカの間でチャネルを空間的に回転させるなどの特殊効果を行い、より少ないスピーカで再生するためにまたは任意の他の目的のためにチャネルを畳み込む(fold down)。ビットストリームによって制御されるポスト処理の場合、ポスト処理変換マトリクスは、時間の経過とともに変化し、ビットストリーム(205)の中で伝えられるか、またはビットストリーム(205)の中に含まれる。いくつかの実施形態におけるマルチチャネルポストプロセッサの動作に関するさらなる詳細については、「音声符号化および音声復号化のためのアーキテクチャおよび技術(Architecture And Techniques For Audio Encoding And Decoding)」という名称の関連出願の「マルチチャネルポスト処理(Multi-Channel Post-Processing)」という題名のセクションを参照されたい。代替として、復号器(200)は、別の形態のマルチチャネルポスト処理を行う。
【0048】
II.統合された不可逆的音声圧縮と可逆的音声圧縮
前述した一般化された音声符号器100(図1)および音声復号器200(図2)に組み込まれた統合された不可逆的可逆的圧縮のある実施形態は、入力音声信号のある部分を不可逆的圧縮で(例えば、構成要素130、140、160における知覚モデルに基づく量子化を伴う周波数変換ベースの符号化を使用して)符号化し、別の部分を可逆的圧縮を使用して(例えば、混合/純可逆的符号器172において)符号化することを選択的に行う。この手法は、高品質が所望される場合(または不可逆的圧縮が所望の品質に関して高い圧縮比を実現できない場合)により高い品質の音声を実現する可逆的圧縮と、適切な場合に品質の知覚される損失なしに高い圧縮を行うための不可逆的圧縮を統合する。また、これにより、単一の音声信号内において異なる品質レベルで音声を符号化することも可能になる。
【0049】
この統合された不可逆的可逆的圧縮の実施形態は、さらに、不可逆的圧縮と可逆的圧縮の間でシームレスな切替えを実現し、また入力音声が重なり合ったウインドウの中で処理される符号化と重なり合わない処理との間の遷移も実現する。シームレスな切替えのため、この統合された不可逆的可逆的圧縮の実施形態は、次の3つのタイプの音声フレームに選択的に分割された入力音声を処理する。すなわち、不可逆的圧縮で符号化された不可逆的フレーム(LSF)300〜304(図3)、可逆的圧縮で符号化された純可逆的フレーム(PLLF)310〜312、および混合の可逆的フレーム(MLLF)320〜322である。混合の可逆的フレーム321〜322は、不可逆的フレーム302〜303と純可逆的フレーム310〜312の間の遷移としての役割をする。混合の可逆的フレーム320はまた、遷移の目的に役立つことなく、不可逆的フレーム300〜301のなかの不可逆的圧縮のパフォーマンスが劣悪になるであろう孤立したフレームであることが可能である。以下の表1は、統合された不可逆的可逆的圧縮の実施形態における3つの音声フレームタイプを要約している。
【0050】
【表1】

【0051】
図3で示した統合された不可逆的可逆的圧縮を使用して符号化された音声信号の一例におけるフレーム構造を参照すると、この例における音声信号は、それぞれがウインドウ化されたフレームであるブロックのシーケンスとして符号化されている。混合の可逆的フレームは、通常、この例における混合の可逆的フレーム320のように、不可逆的フレームのなかで孤立している。これは、混合の可逆的フレームが、不可逆的圧縮が劣悪な圧縮パフォーマンスを示す「問題のある」フレームに関して使用可能にされるからである。通常、このフレームは、音声信号の非常に雑音の多いフレームであり、音声信号内で孤立して出現する。純可逆的フレームは、通常、連続的である。音声信号内の純可逆的フレームの開始位置および終了位置は、例えば、符号器のユーザによって決められることが可能である(例えば、非常に高い品質で符号化されるべき音声信号の部分を選択することにより)。代替として、音声信号のある部分に関して純可逆的フレームを使用する決定を自動化することができる。ただし、統合された不可逆的可逆的圧縮の実施形態は、すべて不可逆的フレーム、すべて混合の可逆的フレーム、またはすべて純可逆的フレームを使用して音声信号を符号化することも可能である。
【0052】
図4は、統合された不可逆的可逆的圧縮の実施形態において入力音声信号を符号化するプロセス400を示している。プロセス400は、フレームごとに入力音声信号フレーム(パルス符号変調(PCM)形式のフレームサイズの)を処理する。プロセス400は、入力音声信号の次のPCMフレームを獲得することによってアクション401を開始する。この次のPCMフレームに関して、プロセス400は、まず、アクション402で、符号器ユーザが、フレームを不可逆的圧縮のために選択したか、または可逆的圧縮のために選択したかを調べる。フレームに対して不可逆的圧縮が選択されている場合、プロセス400は、アクション403〜404で示されるとおり、通常の変換ウインドウ(MDCT変換ベースの不可逆的圧縮の場合と同様に前のフレームと重なり合うことが可能な)で不可逆的圧縮を使用して入力PCMフレームを符号化することに取りかかる。不可逆的圧縮の後、プロセス400は、アクション405においてフレームに対する不可逆的圧縮の圧縮パフォーマンスを調べる。満足の行くパフォーマンスの基準は、もたらされる圧縮フレームが、元のPCMフレームの3/4より小さいことであることが可能であるが、代替として、許容可能な不可逆的圧縮のパフォーマンスとしてより高い基準、またはより低い基準を使用することも可能である。不可逆的圧縮のパフォーマンスが許容可能である場合、プロセス400は、アクション406で、フレームの不可逆的圧縮からもたらされるビットを圧縮音声信号ビットストリームに出力する。
【0053】
そうではなく、アクション405で、不可逆的圧縮を使用してフレームに対して実現された圧縮が劣悪である場合、プロセス400は、アクション407で、カレント(現行の;current)フレームを混合の可逆的圧縮を使用する孤立した混合の可逆的フレーム(以下に詳述する)として圧縮する。アクション406で、プロセス400は、不可逆的圧縮または混合の可逆的圧縮のよりよいパフォーマンスを示す方を使用して圧縮されたフレームを出力する。本明細書では、「孤立した」混合の可逆的フレームと呼んでいるが、実際には、プロセス400は、劣悪な不可逆的圧縮のパフォーマンスを示す多数の連続する入力フレームを、アクション405および407を通るパスを介して、混合の可逆的圧縮を使用して圧縮することができる。このフレームを「孤立した」と呼んでいる理由は、図3の例示的な音声信号における孤立した混合の可逆的フレーム320に関して示すとおり、通常、劣悪な不可逆的圧縮のパフォーマンスは、入力音声ストリームの中で孤立して出現する事象だからである。
【0054】
他方、符号器のユーザがそのフレームに関して可逆的圧縮を選択したことが、アクション402で判定された場合、プロセス400は、次にアクション408で、そのフレームが、不可逆的圧縮と可逆的圧縮の間の遷移フレーム(すなわち、可逆的圧縮で符号化されるべき1組の連続するフレームの最初のフレームまたは最後のフレーム)であるかどうかを調べる。遷移フレームである場合、プロセス400は、以下に詳述するフレームに関する開始/停止ウインドウ409を使用して、ステップ407で、混合の可逆的圧縮を使用する混合の可逆的遷移フレーム(transition mixed lossless frame)としてそのフレームを符号化し、アクション406でもたらされる混合の可逆的遷移フレームを出力する。そうでなく、連続する可逆的圧縮フレームの最初のフレームまたは最後のフレームではない場合、プロセス400は、アクション410〜411で矩形のウインドウを使用する可逆的圧縮を使用して符号化を行い、アクション406で純可逆的フレームとしてそのフレームを出力する。
【0055】
次に、プロセス400は、アクション401で入力音声信号の次のPCMフレームを獲得することに戻り、音声信号が終了する(または次のPCMフレームを獲得する際の他の障害条件)まで繰り返される。
【0056】
本明細書で説明する統合された不可逆的可逆的圧縮の実施形態は、不可逆的フレームの不可逆的圧縮に関して変調離散コサイン変換(MDCT;modulated discrete cosine transform)ベースの不可逆的符号化を使用し、この符号化は、Microsoft Windows(登録商標)Media Audio(WMA)形式で使用されるMDCTベースの不可逆的符号化、またはその他のMDCTベースの不可逆的符号化であることが可能である。代替の実施形態では、他の重複変換または重ね合わせのない変換に基づく不可逆的符号化を使用することができる。MDCTベースの不可逆的符号化に関するさらなる詳細については、非特許文献1を参照されたい。
【0057】
次に、図5を参照すると、本明細書で説明する統合された不可逆的可逆的圧縮の実施形態における混合の可逆的圧縮はまた、MDCT変換に基づいている。代替の実施形態では、混合の可逆的圧縮は、やはり好ましくは、それぞれの実施形態で使用される不可逆的圧縮と同じ変換および変換ウインドウを使用する。この手法により、混合の可逆的フレームが、重なり合うウインドウ変換に基づく不可逆的フレームから重なり合わない純可逆的フレームへのシームレスな遷移を提供することが可能になる。
【0058】
例えば、前述した実施形態で使用されるMDCT変換ベースの符号化では、カレントPCMフレーム511の次のN個のサンプルを符号化するため、MDCT変換が、音声信号の最後の2N個のサンプルの「サイン(sin)」ベースのウインドウ化ファンクション520から導出されたウインドウ化されたフレーム522に適用される。言い換えれば、入力音声信号の中でカレントPCMフレームを符号化する際、MDCT変換が、入力音声信号500の以前のPCMフレーム510およびカレントPCMフレーム511を包含するウインドウ化されたフレーム522に適用される。これにより、より平滑な不可逆的符号化のために連続するウインドウ化されたフレームの間で50%の重なり合いが提供される。MDCT変換は、クリティカルなサンプリングだけをアーカイブするという特性を有する。すなわち、出力のN個のサンプルだけが、隣接するフレームと併せて使用される際、完璧な再構成のために必要である。
【0059】
図4の符号化プロセス400におけるアクション404における不可逆的圧縮とアクション407における混合の可逆的圧縮でともに、MDCT変換530が、以前のPCMフレーム510およびカレントPCMフレーム511から導出されたウインドウ化されたフレーム522に適用される。不可逆的圧縮の場合、カレントフレーム511の符号化は、MDCTベースの不可逆的コーデック540において行われる。
【0060】
混合の可逆的圧縮符号化の場合、MDCT530から生成された変換係数が、次に、逆MDCT(IMDCT)変換550に入力される(これは、従来のMDCTベースの不可逆的符号化では、別の仕方で復号器において行われる)。MDCT変換と逆MDCT変換はともに、混合の可逆的圧縮のための符号器において行われるので、実際の変換およびその逆変換を物理的に行う代わりに、結合されたMDCTと逆MDCTの等価の処理が行われることが可能である。より具体的には、等価の処理により、ウインドウ化されたフレーム522の後半におけるミラーリング(mirroring)サンプルの追加、およびウインドウ化されたフレームの前半におけるミラーリングサンプルの控除と同じMDCTおよび逆MDCTの結果がもたらされることが可能である。図6は、ウインドウ化されたフレームでマトリクスを増倍するのと等価のMDCT×IMDCT変換の処理を行うための等価のMDCT×IMDCTマトリクス600を示している。MDCT変換とIMDCT変換の結果は、音声信号の周波数領域表現にも、元の時間領域バージョンにもなっていない。MDCTとIMDCTの出力は、2N個のサンプルを有するが、その半分(N個のサンプル)だけが、独立の値を有する。したがって、クリティカルなサンプリングをアーカイブする特性は、混合の可逆的フレームの中で保たれる。このN個のサンプルは、「擬似時間領域」信号と呼ぶことができる。というのは、時間信号ウインドウ化されており、畳み込まれているからである。この擬似時間領域信号は、元の時間領域音声信号の特性の多くを保存し、したがって、任意の時間領域ベースの圧縮をこの信号の符号化のために使用することができる。
【0061】
説明する統合された不可逆的可逆的圧縮の実施形態では、MDCT×IMDCT処理後の混合の可逆的フレームの擬似時間領域信号バージョンが、1次LPCフィルタ551を使用する線形予測符号化(LPC)を使用して符号化される。代替の実施形態は、他の形態の時間領域ベースの符号化を使用して、混合の可逆的フレームに関する擬似時間領域信号を符号化することができる。LPC符号化のさらなる詳細については、非特許文献2(以降、Makhoulと呼ぶ)を参照されたい。LPC符号化に関して、説明する実施形態は、以下の処理アクションを行う。
【0062】
1)自己相関を計算する。説明する実施形態では、単純な1次LPCフィルタが使用されるので、Makhoulからの以下の数式におけるR(0)およびR(1)だけを計算すればよい。
【0063】
【数1】

【0064】
2)LPCフィルタ係数を計算する。LPCフィルタは、R(1)/R(0)である1つの係数だけを有する。
【0065】
3)フィルタを量子化する。LPCフィルタ係数は、1/256のステップサイズによって量子化され、したがって、ビットストリームの中の8ビットで表わすことができる。
【0066】
4)予測剰余を計算する。LPCフィルタ係数が用意されると、MDCTおよびIMDCTからの擬似時間信号に対してLPCフィルタを適用する。出力信号は、以下のアクション(6)においてエントロピー符号化によって圧縮された予測剰余(MDCT変換およびIMDCT変換の後の実際のN個の擬似時間領域信号サンプルとその予測値の差)である。復号器側で、雑音成形量子化が使用可能にされていない場合、剰余から擬似時間信号を完璧に再構成することができる。
【0067】
5)雑音成形量子化560。説明する統合された不可逆的可逆的圧縮の実施形態は、非特許文献3によって説明されるような雑音成形量子化(これは、オプションとして使用不可にすることが可能である)を含む。雑音成形量子化処理は、この場合、より広い品質およびビットレートの範囲をサポートし、混合の可逆的モードが雑音成形を行うことができるように追加されている。雑音成形量子化の長所は、この量子化が復号器側においてトランスペアレントであることである。
【0068】
6)エントロピー符号化。説明する実施形態は、LPC予測剰余のエントロピー符号化のために標準のGolomb符号化570を使用する。代替の実施形態は、混合の可逆的フレームをさらに圧縮するためにLCP予測剰余に対して他の形態のエントロピー符号化を使用することが可能である。Golomb符号化された剰余は、出力580において圧縮された音声ストリームに出力される。
【0069】
カレントフレームの混合の可逆的圧縮の後、符号化プロセスは、次のフレーム512の符号化に取りかかり、フレーム512は、不可逆的フレーム、純可逆的フレーム、または、再び、混合の可逆的フレームとして符号化されることが可能である。
【0070】
前述した混合の可逆的圧縮は、最初のウインドウ化プロセス(雑音形成量子化が使用不可にされた)に関してだけ不可逆的であることが可能であり、このため、「混合の可逆的圧縮」と呼ばれる。
【0071】
図7は、本明細書で説明する統合された不可逆的可逆的圧縮の実施形態の符号化プロセス400(図4)における純可逆的フレームの可逆的符号化700を示している。この例では、入力音声信号は、2つのチャネル(例えば、ステレオ)の音声信号710である。入力音声信号チャネルの以前のPCMフレーム711とカレントPCMフレーム712の矩形ウインドウ化ファンクション715としてもたらされる音声信号チャネルサンプルのウインドウ化されたフレーム720、721に対して可逆的符号化700が行われる。矩形のウインドウの後、ウインドウ化されたフレームは、依然として、元のPCMサンプルから成っている。次に、純可逆的圧縮をそのサンプルに直接に適用することができる。最初の純可逆的フレームと最後の純可逆的フレームは、図11に関連して以下に説明する異なる特殊ウインドウを有する。
【0072】
純可逆的符号化700は、LPCフィルタ726、およびオプションの雑音成形量子化728から始まり、これらは、図5の構成要素551および560と同じ目的に役立つ。確かに、雑音成形量子化728が使用される場合、圧縮は、もはや実際には、純粋に可逆的ものではない。しかし、オプションの雑音成形量子化728の場合でも、簡明にするため、本明細書では、「純可逆的符号化」という呼び方のままにしている。純可逆的モードでは、LPCフィルタ726の他、MCLMS742フィルタおよびCDLMS750フィルタ(以下に説明する)が存在する。雑音成形量子化728は、LPCフィルタ726の後で、ただし、MCLMSフィルタ742およびCDLMSフィルタ750の前に適用される。MCLMSフィルタ742およびCDLMSフィルタ750は、安定したフィルタであることが保証されないため、雑音成形量子化728の前に適用することができない。
【0073】
純可逆的符号化700の次の部分は、トランジェント検出730である。トランジェントとは、音声信号特性が大幅に変化する音声信号におけるポイントである。
【0074】
図8は、本明細書で説明する統合された不可逆的可逆的圧縮の実施形態における純可逆的符号化700で使用されるトランジェント検出手続き800を示している。代替として、トランジェント検出のための他の手続きを使用することも可能である。トランジェント検出に関して、手続き800は、入力音声信号の長期の指数的に重み付けされた平均(AL)801および短期の指数的に重み付けされた平均(AS)802を計算する。この実施形態では、短期平均に関する等価の長さは、32であり、長期平均は、1024である。ただし、他の長さを使用することも可能である。次に、手続き800は、長期平均の短期平均に対する比(K)803を計算し、その比をトランジェントしきい値(例えば、8という値)804と比較する。比がこのしきい値を超えた場合、トランジェントが検出されたものと考えられる。
【0075】
トランジェント検出の後、純可逆的符号化700は、チャネル間相関解除(inter−channel de−correlation)ブロック740を行ってチャネル間の冗長性を除去する。これは、単純なS変形(transformation)、およびマルチチャネル最小平均2乗フィルタ(MCLMS)742から成る。MCLMSは、2つの特徴で標準のLMSフィルタとは異なる。第1に、MCLMSは、すべてのチャネルからの以前のサンプルを基準サンプルとして使用して、1つのチャネルにおけるカレントサンプルを予測する。第2に、MCLMSは、他のチャネルからのいくつかのカレントサンプルも基準として使用して、1つのチャネルにおけるカレントサンプルを予測する。
【0076】
例えば、図9は、4チャネル音声入力信号に関してMCLMSにおいて使用される基準サンプルを描いている。この例では、各チャネルにおける4つの以前のサンプル、ならびに先行する他のチャネルにおけるカレントサンプルがMCLMSのための基準サンプルとして使用されている。カレントチャネルのカレントサンプルの予測値は、基準サンプルの値と、そのサンプルに関連する適応フィルタ係数のドット積として計算される。予測の後、MCLMSは、予測誤差を使用してフィルタ係数を更新する。この4つのチャネルの例では、各チャネルに関するMCLMSフィルタが、異なる長さを有し、チャネル0が最短のフィルタ長(すなわち、16の基準サンプル/係数)を有し、チャネル3が最長のフィルタ長(すなわち、19)を有している。
【0077】
MCLMSの後、純可逆的符号化が、各チャネルに対して1組のカスケード式の最小平均二乗(CDLMS)フィルタ750を適用する。LMSフィルタは、処理されている信号のさらなる知識を使用しない適応フィルタ技術である。LMSフィルタは、予測部分と更新部分の2つの部分を有する。新しいサンプルが符号化されるにつれ、LMSフィルタ技術は、カレントフィルタ係数を使用してサンプルの値を予測する。次に、フィルタ係数が、予測誤差に基づいて更新される。この適応特性により、LMSフィルタが、音声などの時間変動する信号を処理する良好な候補となる。いくつかのLMSフィルタのカスケードも、予測パフォーマンスを向上させることができる。例示的な純可逆的圧縮700では、図10に示すとおりLSMフィルタが3つのフィルタのカスケードに配置され、カスケードにおける次のフィルタの入力が、前のフィルタの出力に接続されている。第3のフィルタの出力は、最終の予測誤差、つまり剰余である。LMSフィルタのさらなる詳細については、非特許文献4、非特許文献5、および非特許文献6を参照されたい。
【0078】
図7を再び参照すると、可逆的符号化700が、トランジェント検出730の結果を使用してCDLMS750の更新速度を制御する。前述したとおり、LMSフィルタは、各予測の後にフィルタ係数が更新される適応フィルタである。可逆的圧縮では、これは、フィルタが、音声信号特性の変化を追うのに役立つ。最適なパフォーマンスのため、更新速度は、信号変化を追い、同時に振動を回避することができなければならない。通常、信号は、ゆっくりと変化し、したがって、LMSフィルタの更新速度は、サンプル当たり2^(−12)のように非常に小さい。しかし、あるサウンドから別のサウンドへのトランジェントなどの大幅な変化が音楽に生じた場合、フィルタの更新が追いつかない可能性がある。可逆的符号化700は、トランジェント検出を使用して、フィルタが、変化する信号特性に迅速に追いつくように適応するのを促進する。トランジェント検出730が、入力においてトランジェントを検出した場合、可逆的符号化700は、CDLMS750の更新速度を2倍にする。
【0079】
CDLMS750の後、可逆的符号化700は、改良されたGolomb符号器760を使用して、カレント音声信号サンプルの予測剰余を符号化する。Golomb符号器は、2の累乗でない除数を使用することで改良されている。代わりに、改良されたGolomb符号器は、4/3*平均(abs(予測剰余))という関係を使用する。除数が2の累乗ではないため、もたらされる商および剰余は、算術符号化770を使用して符号化されてから、圧縮済み音声ストリームへの出力780が行われる。算術符号化は、商に関する確率テーブルを使用するが、剰余の値の一様分布を想定している。
【0080】
図11は、不可逆的符号化、混合の可逆的符号化、および純可逆的符号化のためのウインドウ化された符号化フレームを生成するように入力音声信号の元のPCMフレームに適用されるウインドウ化ファンクションを描いている。この例では、符号器のユーザは、入力音声信号1100の元のPCMフレームのサブシーケンス1110を純可逆的符号化で符号化されるべき可逆的フレームとして指定している。図5に関連して述べたとおり、本明細書で説明する統合された不可逆的可逆的圧縮の実施形態における不可逆的符号化は、カレントPCMフレームおよび以前のPCMフレームにサインウインドウ1130を適用して、不可逆的符号器に入力されるウインドウ化された不可逆的符号化フレーム1132をもたらす。孤立した混合の可逆的符号化フレーム1136の混合の可逆的符号化も、サイン形状ウインドウ1135を使用する。他方、純可逆的符号器は、矩形ウインドウ化ファンクション1140を使用する。不可逆的符号化と可逆的符号化の間の遷移(純可逆的符号化に指定されたシーケンス1110の最初のフレームと最後のフレーム)に関する混合の可逆的符号化は、サインウインドウ化ファンクションと矩形ウインドウ化ファンクションを実質上、結合して最初/最後の遷移ウインドウ1151、1152にして、混合の可逆的符号化のための遷移符号化フレーム1153、1154を提供し、これにより、純可逆的符号化フレーム1158が括られる(bracket)。したがって、ユーザによって可逆的符号化に指定されたフレーム(sないしeの符号が付けられた)のシーケンス1110に関して、統合された不可逆的可逆的圧縮の実施形態は、フレーム(sないしe−1)を可逆的符号化を使用して符号化し、フレームeを混合の可逆的フレームとして符号化する。そのようなウインドウ化ファンクション設計により、各フレームが、クリティカルなサンプリングをアーカイブする特性を有することが保証され、これが意味するのは、符号器が不可逆的フレーム、混合の可逆的フレーム、および純可逆的フレームの間で切り換わる際、冗長な情報が全く符号化されず、サンプルが全く損失しないことである。したがって、音声信号の不可逆的符号化と可逆的符号化をシームレスに統合することが実現される。
【0081】
図12は、本明細書で説明する統合された不可逆的可逆的圧縮の実施形態における混合の可逆的フレームの復号化1200を描いている。混合の可逆的フレームの復号化は、アクション1210で、混合の可逆的フレームのヘッダを復号化することで始まる。本明細書で説明する統合された不可逆的可逆的圧縮の実施形態では、混合の可逆的フレームのヘッダは、不可逆的フレームの形式よりはるかに単純な独自の形式を有する。混合の可逆的フレームのヘッダは、LPCフィルタ係数の情報、および雑音成形の量子化ステップサイズを記憶する。
【0082】
次に、混合の可逆的復号化で、復号器が、アクション1220で、各チャネルのLPC予測剰余を復号化する。前述したとおり、この剰余は、Golomb符号化570(図5)で符号化され、Golomb符号の復号化を要する。
【0083】
アクション1230で、混合の可逆的復号器は、単に復号化された剰余に量子化ステップサイズを掛けて、雑音成形量子化を逆転する。
【0084】
アクション1240で、混合の可逆的復号器は、逆LPCフィルタリングプロセスとして、剰余からの擬似時間信号を再構成する。
【0085】
アクション1250で、混合の可逆的復号器は、時間領域音声信号のPCM再構成を行う。「擬似時間信号」は、既にMDCTおよびIMDCTの結果であるため、復号器は、この時点で、不可逆的圧縮の復号化と同様に動作して、フレームの重なり合いとウインドウ化を逆転するように復号化する。
【0086】
図13は、音声復号器における純可逆的フレームの復号化1300を描いている。純可逆的フレームの復号化もやはり、アクション1310〜12で、フレームヘッダ、ならびにトランジェント情報およびLPCフィルタを復号化することで始まる。次に、純可逆的フレームの復号器は、予測剰余のGolomb符号を復号化すること1320、逆CDLMSフィルタリング1330、逆MCLMSフィルタリング1340、逆チャネルミキシング1350、量子化解除1360、および逆LPCフィルタリング1370によって純可逆的符号化プロセスを逆転させる。最後に、純可逆的フレームの復号器は、アクション1380で音声信号のPCMフレームを再構成する。
【0087】
III.コンピューティング環境
統合された不可逆的可逆的音声圧縮のための前述した音声プロセッサ技術および音声処理技術は、他にも例はあるものの、とりわけ、コンピュータ、音声の記録、伝送、および受信を行う機器、ポータブル音楽プレーヤ、電話デバイス等を含め、デジタル音声信号処理が行われる様々なデバイスの任意のものにおいて実施することができる。音声プロセッサ技術および音声処理技術は、ハードウェア回路でも、また図14に示すような、コンピュータ内部または他のコンピューティング環境内部で実行される音声処理ソフトウェアでも実施することができる。
【0088】
図14は、説明する実施形態を実施することができる適切なコンピューティング環境(1400)の一般化された例を示している。コンピューティング環境(1400)は、本発明の使用または機能の範囲に関して何ら限定を示唆するものではない。というのは、本発明は、多様な汎用または特殊目的のコンピューティング環境において実施できるからである。
【0089】
図14を参照すると、コンピューティング環境(1400)が、少なくとも1つのプロセッサ(1410)およびメモリ(1420)を含んでいる。図14で、この最も基本的な構成(1430)が、破線の中に含まれている。プロセッサ(1410)は、コンピュータ実行可能命令を実行し、現実のプロセッサであること、または仮想のプロセッサであることが可能である。マルチプロセッシングシステムでは、マルチプロセッサが、コンピュータ実行可能命令を実行して処理能力を高める。メモリ(1420)は、揮発性メモリ(例えば、レジスタ、キャッシュ、RAM(random access memory))、不揮発性メモリ(例えば、ROM(read only memory)、EEPROM(electrically erasable programmable read-only memory)、フラッシュメモリ等)、または揮発性メモリと不揮発性メモリの何らかの組合せであることが可能である。メモリ(1420)は、量子化マトリクスを生成し圧縮する、音声符号器を実現するソフトウェア(1480)を記憶する。
【0090】
コンピューティング環境は、さらなる特徴を有することが可能である。例えば、コンピューティング環境(1400)は、ストレージ(1440)、1つまたは複数の入力デバイス(1450)、1つまたは複数の出力デバイス(1460)、および1つまたは複数の通信接続(1470)を含む。バス、コントローラ、またはネットワークなどの相互接続機構(図示せず)が、コンピューティング環境(1400)の構成要素を互いに接続する。通常、オペレーティングシステムソフトウェア(図示せず)が、コンピューティング環境(1400)において実行されている他のソフトウェアのための動作環境を提供し、コンピューティング環境(1400)の構成要素の活動を調整する。
【0091】
ストレージ(1440)は、リムーバブルであること、またはノンリムーバブルであることが可能であり、磁気ディスク、磁気テープ、または磁気カセット、CD(compact disc [disk])−ROM、CD−RW(CD-ReWritable)、DVD、または情報を記憶するのに使用することができ、コンピューティング環境(1400)内でアクセスすることができる任意の他の媒体が含まれる。ストレージ(1440)は、量子化マトリクスを生成し圧縮する、音声符号器を実現するソフトウェア(1480)に対する命令を記憶する。
【0092】
入力デバイス(1450)は、キーボード、マウス、ペン、またはトラックボールなどのタッチ入力デバイス、音声入力デバイス、走査デバイス、またはコンピューティング環境(1400)に入力を提供する別のデバイスであることが可能である。音声の場合、入力デバイス(1450)は、アナログ形態またはデジタル形態の音声入力を受け入れるサウンドカードまたは同様のデバイス、あるいはコンピューティング環境に音声サンプルを提供するCD−ROM読取り装置であることが可能である。出力デバイス(1460)は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカ、CD−書込み装置、またはコンピューティング環境(1400)から出力を提供する別のデバイスであることが可能である。
【0093】
通信接続(1470)は、通信媒体を介して別のコンピューティングエンティティへの通信を可能にする。通信媒体は、変調されたデータ信号の中の、コンピュータ実行可能命令、圧縮された音声情報またはビデオ情報、あるいは他のデータのような、情報を伝送する。変調されたデータ信号とは、信号に情報を符号化するように特性の1つまたは複数が設定された、または変更された信号である。例として、限定としてではなく、通信媒体には、電気、光、RF(radio frequencies)、赤外線、音響、またはその他の搬送波を使用して実施される、有線技術または無線技術が含まれる。
【0094】
本明細書における音声処理技術は、コンピュータ可読媒体の一般的な状況で説明することができる。コンピュータ可読媒体は、コンピューティング環境内部でアクセスすることができる任意の可用な媒体である。例として、限定としてではなく、コンピューティング環境(1400)では、コンピュータ可読媒体には、メモリ(1420)、ストレージ(1440)、通信媒体、および以上の任意の物の組合せが含まれる。
【0095】
本明細書における音声処理技術は、コンピューティング環境において、ターゲットの現実のプロセッサ上または仮想のプロセッサ上で実行される、プログラムモジュールに含まれるコンピュータ実行可能命令のような、コンピュータ実行可能命令の一般的な状況で説明することができる。一般に、プログラムモジュールには、特定のタスクを行う、または特定の抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、ライブラリ、オブジェクト、クラス、コンポーネント、データ構造等が含まれる。プログラムモジュールの機能は、様々な実施形態において、所望に応じてプログラムモジュールの間で組み合わせること、または分割することが可能である。プログラムモジュールに関するコンピュータ実行可能命令は、ローカルのコンピューティング環境内または分散コンピューティング環境内で実行されることが可能である。
【0096】
提示のため、詳細な説明は、「判定する」、「生成する」、「調整する」、および「適用する」のような用語を使用して、コンピューティング環境におけるコンピュータ動作を説明している。以上の用語は、コンピュータによって行われる動作の高レベルの抽象化であり、人間によって行われる動作と混同してはならない。以上の用語に対応する実際のコンピューティング動作は、実施形態に応じて異なる。
【0097】
前述した実施形態に関連して本発明の原理を説明し、図示したので、そのような原理を逸脱することなく、前述した実施形態の構成および詳細を変更できることが認められよう。本明細書で説明するプログラム、プロセス、または方法は、特に明記しない限り、いずれの特定のタイプのコンピューティング環境にも関連することも、限定されることもないことを理解されたい。様々なタイプの汎用のコンピューティング環境または特殊化されたコンピューティング環境が、本明細書で説明する教示による動作で使用することができ、あるいはその動作を行うことができる。ソフトウェアで示した前述の実施形態の要素をハードウェアで実施することもでき、その逆も可能である。
【0098】
音声処理技術を本明細書のところどころで単一の統合されたシステムの一部として説明しているが、その技術は、別々に、場合により、その他の技術と組み合わせて適用することができる。代替の実施形態では、符号器または復号器以外の音声処理ツールが、その技術の1つまたは複数を実施する。
【0099】
前述した音声符号器と音声復号器の実施形態は、様々な技術を実施する。この技術の動作は、通常、提示のために特定の順序で説明されるが、この説明の仕方は、特定の順序が必須でない限り、動作の順序の小さな並べ替えを包含することを理解されたい。例えば、順時に説明した動作が、一部のケースでは、並べ替えられること、または同時に行われることが可能である。さらに、簡明にするため、フローチャートは、通常、特定の技術を他の技術と併せて使用することができる様々な仕方を示してはいない。
【0100】
本発明の原理を適用することができる多数の可能な実施形態に鑑みて、特許請求の範囲および趣旨に含まれる可能性があるすべてのそのような実施形態および等価の形態を本発明として主張する。
【符号の説明】
【0101】
100 音声符号器
108 セレクタ
110 マルチチャネルプリプロセッサ
120 パーティショナ/タイル構成器
130 周波数変換器知覚
140 知覚モデラ
142 重み付け器
150 マルチチャネル変換器
160 量子化器
170 エントロピー符号器
172 混合/純可逆的符号器
174 エントロピー符号器
180 コントローラ
190 MUX
200 音声符号器
210 DEMUX
220 エントロピー復号器
222 混合/純可逆的復号器
230 タイル構成復号器
240 逆マルチチャネル変換器
250 逆量子化器/重み付け器
260 逆周波数変換器
270 オーバーラッパー(overlapper)/加算器
280 マルチチャネルポストプロセッサ
300〜304 LSF
310〜312 PLLF
320〜322 MLLF
1400 コンピューティング環境
1410 プロセッサ
1420 メモリ
1430 基本的構成
1440 ストレージ
1450 入力デバイス
1460 出力デバイス
1470 通信接続
1480 ソフトウェア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声復号器における方法であって、
前記音声復号器で、マルチチャネル音声ビットストリーム内の第1の符号化音声情報と、第2の符号化音声情報とを受信するステップであって、前記第1の符号化音声情報は、変調重複周波数変換、マルチチャンネル変換、知覚重み付け、量子化、及び、エントロピー符号化を含む、複数の不可逆的モードの符号化プロセスを使用して符号化され、前記第2の符号化音声情報は、変調重複周波数変換、線形予測、及び、Golomb符号化を含む、複数の可逆的モードの符号化プロセスを使用して符号化されるステップと、
前記音声復号器で、第1の符号化音声情報と、第2の符号化音声情報とを復号化するステップであって、Golomb復号化、及び、線形予測を含む、複数の可逆的モードの復号化プロセスで、前記第2の符号化音声情報を復号化するステップを含むステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記複数の可逆的モードの復号化プロセスは、さらに雑音成形を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の可逆的モードの復号化プロセスは、算術復号化及び逆マルチチャンネル変換を含み、前記Golomb復号化及び前記算術復号化は、予測値に結合された剰余値を復号化することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の符号化音声情報を復号化するステップは、エントロピー復号化、逆量子化、逆重み付け、逆マルチチャンネル変換、逆変調重複周波数変換を含む、複数の不可逆的モードの復号化プロセスを使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
コンピュータデバイスにより実行されたときに請求項1乃至4のいずれかに記載の方法を前記コンピュータデバイスに実施させるためのコンピュータ実行可能命令を記憶する1以上のコンピュータ読み取り可能記録媒体。
【請求項6】
音声復号器における方法であって、
前記音声復号器で、マルチチャネル音声ビットストリーム内の第1の符号化音声情報と、第2の符号化音声情報とを受信するステップであって、前記第1の符号化音声情報は、変調重複周波数変換、マルチチャンネル変換、重み付け、量子化、及び、エントロピー符号化を含む、複数の不可逆的モードの符号化プロセスを使用して符号化され、前記第2の符号化音声情報は、線形予測、マルチチャンネル変換、Golomb符号化、及び、算術符号化を含む、複数の可逆的モードの符号化プロセスを使用して符号化されるステップと、
前記音声復号器で、第1の符号化音声情報と、第2の符号化音声情報とを復号化するステップであって、Golomb復号化、算術復号化、逆マルチチャンネル復号化、及び、線形予測を含む、複数の可逆的モードの復号化プロセスで、前記第2の符号化音声情報を復号化するステップを含むステップと
を含む方法。
【請求項7】
コンピュータデバイスにより実行されたときに請求項6に記載の方法を前記コンピュータデバイスに実施させるためのコンピュータ実行可能命令を記憶する1以上のコンピュータ読み取り可能記録媒体。
【請求項8】
音声復号器における方法であって、
前記音声復号器で、マルチチャネル音声ビットストリーム内の第1の符号化音声情報と、第2の符号化音声情報とを受信するステップであって、前記第1の符号化音声情報は、変調重複周波数変換、マルチチャンネル変換、重み付け、量子化、及び、第1のエントロピー符号化を含む、複数の不可逆的モードの符号化プロセスを使用して符号化され、前記第2の符号化音声情報は、線形予測、適応フィルタ、及び、第2のエントロピー符号化を含む、複数の可逆的モードの符号化プロセスを使用して符号化されるステップと、
前記音声復号器で、第1の符号化音声情報を、複数の第1の復号化モードのプロセスで、復号化し、第2の符号化音声情報を、エントロピー復号化、適応フィルタ、及び、線形予測を含む、複数の第2の復号化モードのプロセスで、復号化するステップと
を含む方法。
【請求項9】
コンピュータデバイスにより実行されたときに請求項8に記載の方法を前記コンピュータデバイスに実施させるためのコンピュータ実行可能命令を記憶する1以上のコンピュータ読み取り可能記録媒体。
【請求項10】
符号化音声情報を復号するためのシステムであって、
前記システムは、プロセッサと、
前記プロセッサにより実行されたときに方法を前記プロセッサに実施させるためのコンピュータ実行可能命令を記憶する1以上のコンピュータ読み取り可能記録媒体とを備え、
前記方法は、
前記音声復号器で、マルチチャネル音声ビットストリーム内の第1の符号化音声情報と、第2の符号化音声情報とを受信するステップであって、前記第1の符号化音声情報は、変調重複周波数変換、マルチチャンネル変換、知覚重み付け、量子化、及び、エントロピー符号化を含む、複数の不可逆的モードの符号化プロセスを使用して符号化され、前記第2の符号化音声情報は、変調重複周波数変換、線形予測、及び、Golomb符号化を含む、複数の可逆的モードの符号化プロセスを使用して符号化されるステップと、
前記音声復号器で、第1の符号化音声情報と、第2の符号化音声情報とを復号化するステップであって、Golomb復号化、及び、線形予測を含む、複数の可逆的モードの復号化プロセスで、前記第2の符号化音声情報を復号化するステップを含むステップと
を含む方法。
【請求項11】
前記複数の可逆的モードの復号化プロセスは、さらに雑音成形を含む
ことを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記複数の可逆的モードの復号化プロセスは、算術復号化及び逆マルチチャンネル変換を含み、前記Golomb復号化及び前記算術復号化は、予測値に結合された剰余値を復号化することを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1の符号化音声情報を復号化するステップは、エントロピー復号化、逆量子化、逆重み付け、逆マルチチャンネル変換、逆変調重複周波数変換を含む、複数の不可逆的モードの復号化プロセスを使用することを特徴とする請求項10に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−154400(P2011−154400A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101828(P2011−101828)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【分割の表示】特願2003−310668(P2003−310668)の分割
【原出願日】平成15年9月2日(2003.9.2)
【出願人】(500046438)マイクロソフト コーポレーション (3,165)
【Fターム(参考)】