説明

混合ガスストリームからのCO2の除去を増進させたシステム及び方法

煙道ガスストリームからCO2を除去するための溶媒系煙道ガス処理システムであって、支持構造体上に被覆された触媒を備えている溶媒系煙道ガス処理システムが提供される。触媒は、少なくとも一定期間、CO2を保有できるものが選ばれ、これによって、CO2及び溶媒の滞留時間を増大できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2008年3月21日出願の米国特許仮出願第61/038,494号(発明の名称:混合ガスストリームからのCO2の除去を増進させたシステム及び方法)の優先権を主張するものであり、その記載のすべてを参照することにより本書に含める。
【0002】
本発明は、二酸化炭素及び二酸化イオウを含有するプロセスガスストリームから二酸化炭素(CO2)を除去するためのシステム及び方法に係る。さらに詳しくは、本発明は、煙道ガスストリームからのCO2の捕捉又は溶媒の再生における溶媒の効率を増大させるために触媒を使用する、煙道ガスストリームからCO2を除去するための溶媒系煙道ガス処理システムに係る。
【背景技術】
【0003】
発電プラントに水蒸気を提供するためのボイラーシステムと一体化したもののような燃焼プラントにおける、燃料、例えば、石炭、石油、ピート、廃棄物等の燃焼では、熱いプロセスガス(又は煙道ガス)が発生される。このような煙道ガスは、しばしば、他の成分の中でも二酸化炭素(CO2)を含有する。二酸化炭素を大気中に放出することによる環境に対するマイナスの影響は広く認められており、その結果、上述の燃料の燃焼において発生される熱いプロセスガスから二酸化炭素を除去するために採用される方法が開発されている。このようなシステム及び方法の1つは既に開示されており、燃焼後煙道ガスストリームから二酸化炭素(CO2)を除去するための一段階式チルドアンモニア系システム及び方法を対象とするものである。
【0004】
アンモニア系システム及び方法(CAP)のような公知の溶媒系CO2捕捉システムは、例えば、燃焼後煙道ガスストリームのようなガスストリームからCO2を捕捉/除去するための比較的低コストの手段を提供する。このようなシステム及び方法は、出願中の特許出願PCT/US2005/012794(国際公開番号:WO2006/022885;発明者:Eli Gal;2005年4月12日出願;発明の名称:CO2の除去を含む燃焼ガスの超浄化)において既に開示されている。この方法では、チルドアンモニアイオン性アンモニア溶液(又はスラリー)を、CO2を含有する煙道ガスと接触させることによって、CO2の煙道ガスストリームからの吸収が達成される。
【0005】
図1Aは、例えば、発電プラントの蒸気発生器システムにおいて使用されるボイラーシステム26の燃焼チャンバーによって放出された煙道ガスストリームFGからの各種汚染物の除去において使用される煙道ガス処理システム15を一般的に示す図である。このシステムは、浄化された煙道ガスストリームを排気筒90から放出する(又は別法として、追加の処理を行う)前に、煙道ガスストリームFGからCO2を除去するように設定されているCO2除去システム70を含む。CO2除去システムは、煙道ガスストリームFGから除去されたCO2を出力するようにも設定されている。CO2除去システムの詳細は、図1Bに一般的に表わされている。
【0006】
図1Bを参照すると、CO2除去システム70は、煙道ガスストリームFGからCO2を捕捉/除去するための捕捉システム72及び煙道ガスストリームFG からCO2を除去するために使用したイオン性アンモニア溶液を再生するための再生システム74を含んでいる。捕捉システム72の詳細は、図1Cに一般的に表わされている。
【0007】
図1C及び図1Dを参照すると、CO2捕捉システム70(図1A)の捕捉システム72が一般的に表わされている。このシステムでは、捕捉システム72は、溶媒系CO2捕捉システムである。さらに詳しくは、この例では、使用される溶媒はチルドアンモニアである。CO2除去のためのチルドアンモニア(CPA)系システム/方法では、吸収剤のイオン性アンモニア溶液(イオン性アンモニア溶液)が、CO2を含有する煙道ガスストリーム(FG)と接触される吸収器が設けられている。イオン性溶液は代表的には水性であり、例えば、水及びアンモニウムイオン、炭酸水素イオン、炭酸イオン及び/又はカルバミン酸イオンを含有してなる。公知のCAP CO2除去システムの例が、図1C及び図1Dに一般的に表わされている。
【0008】
図1Cを参照すると、吸収器170は、例えば、化石燃料燃焼式ボイラー26(図1A参照)の燃焼チャンバーから発生される煙道ガスストリーム(FG)を受け取るように設定されている。また、再生システム74(図1B参照)からの希薄イオン性アンモニア溶液の供給を受けるように設定されている。希薄イオン性アンモニア溶液は、液分配システム121を介して容器170に導入され、その間に、煙道ガスストリームFGも、煙道ガス入口76を介して吸収器によって受け入れられる。
【0009】
イオン性アンモニア溶液は、ガス−液接触装置(以下、「物質移動装置(MTD)」と表示することがある)111(煙道ガスストリームを溶媒と接触させるために使用され、吸収器170内であって、煙道ガスストリームが、入口76を介する導入から容器の出口77まで移動する通路内に設置されている)を介して煙道ガスストリームと接触される。ガス−液接触装置111は、例えば、1以上の周知のように構成された又はランダムの充填剤又はこれらの組み合わせである。
【0010】
煙道ガスストリームと接触すると、イオン性アンモニア溶液は煙道ガスストリームからCO2を吸収するように作用し、このようにして、CO2を富有するイオン性アンモニア溶液(リッチ溶液)を生成する。リッチイオン性アンモニア溶液は、物質移動装置内を通って、流下を続け、ついで、吸収器170の底部78において集められる。ついで、リッチイオン性アンモニア溶液は、再生システム74(図1B参照)を介して再生され、イオン性アンモニア溶液によって煙道ガスストリームから吸収されたCO2を放出する。イオン性アンモニア溶液から放出されたCO2は、ついで、貯蔵又は他の所定の用途/目的のために出力される。CO2がイオン性アンモニア溶液から放出されると、イオン性アンモニア溶液は、「希薄」になったと称される。ついで、希薄イオン性アンモニア溶液は煙道ガスストリームからCO2を吸収するために準備され、液分配システム121に戻され、これによって、吸収器170に再導入される。再生システム74の詳細は、図1Eに表わされている。システム74は再生器195を含む。再生器195は、捕捉システム72からのリッチ溶液の供給を受け取り、CO2がリッチ溶液から分離された後に、希薄溶液を捕捉システム72に戻すように設定されている。
【0011】
再生処理では、リッチイオン性アンモニア溶液は加熱され、溶液中に含有されるCO2がチルドアンモニア溶液から分離される。CO2が分離されると、アンモニア(アンモニアスリップ)は捕捉システムに戻され、ガスストリームからCO2を捕捉するために使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これらの現在知られている溶媒形CO2捕捉技術は、代表的には、CO2捕捉処理が効果的に行われるように、発電システムによって発生された電力の約20〜30%を消費している。さらに、これらの技術は、しばしば、煙道ガスストリームからのCO2の捕捉における再使用を目的としてアミン溶液を再生するために、ボイラー/リボイラー機能によって発生される熱エネルギー(リボイラー負荷)の大部分を必要とする。要するに、煙道ガスストリームからCO2を捕捉する公知の方法は存在するが、これらは、良好に機能するためには、多量のエネルギーを必要とするものである。さらに、煙道ガスがアミンと接触する時間を最大/最適化するためには、代表的なシステムにおける吸収器及び/又は再生器のタンクの物理的サイズは非常に大きなものでなければならない。さらに、現場において、これら容器に適合するよう求められる物理的空間は大きい。現場で空間が制限されるところでは、可能であれば、限られた空間に容器/システムを設置するための追加の対策をとる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の具体例は、化石燃料燃焼式ボイラーと共に使用される煙道ガス処理システムを提供する。簡潔に記述すると、構造において、システムの1具体例は、中でも、二酸化炭素を含有する混合ガスストリームを受け取り、これを溶媒と接触させるように設定された吸収塔を含む煙道ガス処理システムとして提供されるものであって、吸収塔は、触媒で被覆された充填剤を含んでなる。
【0014】
本発明の具体例は、混合ガスストリームを処理する方法であって、該方法は、ボイラーの燃焼チャンバーから煙道ガスストリームを受け取り;煙道ガスストリームを溶媒と接触させ;及び溶媒を触媒と接触させる工程を含んでなる混合ガスストリームの処理法を提供するものとしても考えられる。
【0015】
本発明の他のシステム、方法、特徴及び利点は、下記の図面及び詳細な説明を検討する際に、当業者には明白になるであろう。このような更なるシステム、方法、特徴及び利点は、いずれも、この記載内に含まれるものであり、本発明の範囲内にあり、特許請求の範囲によって保護されるものである。
【0016】
本発明の多くの態様は、以下の図面を参照することによって良好に理解されるであろう。図面における要素は、必ずしも、原寸に比例していない、むしろ、本発明の原理を明確に説明する場合には、強調されている。さらに、図面では、同じ参照符号は、いくつかの図を通して、相当する部材を表わしている。次に、図面を参照して、本発明を詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A−1C】CO2除去機能を備えた代表的な煙道ガス処理システム15を一般的に示す図である。
【図2A−2D】充填剤物質315の壁/表面上に、CO2を保持できる触媒が不動化されている充填剤物質315の例を一般的に示す図である。
【図3】吸収器110及び再生器330に、それぞれ、CO2を保持できる触媒で被覆された充填剤物質315及び335が充填されているアミン系又はアンモニア系CO2捕捉システム70の関連する部分を一般的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、溶媒(アミン/アンモニア)系CO2除去システム/方法におけるCO2捕捉効率を増大させることを目的とするものである。図2A−図3に一般的に示される1具体例において、例えば、1以上の支持構造体320を含んでなる物質移動装置MTD315(又は充填剤物質)が、吸収器110(図3)内に配置、分散されている。支持構造体320は触媒425で被覆されている。
【0019】
図2A−図2Dは、CO2を保持できる固状物質425で被覆されている充填剤物質315を一般的に示す図である。図2B及び2Cは、充填剤物質315が、例えば、相互に接近して配置された一連のコルゲート状支持構造体320を含んでなり、一連の通路334(この通路を通って、吸収器110に入る煙道ガスが流れる)を形成することを示している。触媒425は、各コルゲート状支持構造体320の1以上の表面に被覆される。
【0020】
支持構造体320上に被覆される触媒は、好ましくは、不均一系触媒である。さらに、触媒425は、好ましくは温和な塩基性度/CO2との反応性及び例えば100−1000 m2/gの高比表面積を有する。好ましくは、触媒425は、高BET(Brunauer, Emmett and Teller)及び多孔性を有する市販の触媒(例えば、重合体、金属酸化物、SiO2、モレキュラーシーブ、塩基−及び/又は酸−変性クレー等)であるが、触媒との温和な相互作用(塩基性度)でCO2を保存又は保有できるものでなければならない。表面の塩基性度は、例えば、CO2の吸着能力を増大させるためにアルカリ/アルカリ土類金属又は遷移金属酸化物を使用する表面変性によって調整される。触媒425は、例えば、公知のウォッシュコーティング技術を使用することによって、支持構造体320上に被覆される。
【0021】
操作では、煙道ガスストリームを、充填剤物質315、このようにして、少なくとも一定期間、煙道ガスストリームからCO2を保持/保有できる触媒425が被覆(層状化)された支持構造体320と接触させる。支持構造体320上に分散された触媒にCO2を保有することによって、CO2は、充填剤物質315を通って煙道ガスストリームに対して向流方向で流動する溶媒に、より長い期間露出され、CO2が溶媒によって捕捉される可能性が増大する。
【0022】
このようにして、吸収塔における溶媒(アミン/アンモニア)と共に煙道ガスストリームに含有されるCO2の滞留時間が間接的に増大され、このようにして、固状物質の表面に吸着されるCO2の量が増大される。このため、本発明の1具体例では、一定期間、CO2を保持(吸着)できる固状物質を、溶媒系CO2捕捉システムの吸収塔110(図3)において使用される充填剤物質315の1以上の表面上に不動化(被覆)させている。
【0023】
図3は、例えば、発電プラントの化石燃料燃焼式ボイラーからの煙道ガスストリームを処理する際に使用される溶媒(例えば、アミン又はアンモニア)系CO2捕捉システム300の関連部分を一般的に示す図である。システム300は、1以上の表面において触媒425が被覆されている充填剤物質315を含む吸収塔110を含んでなる。再生塔330も、1以上の表面において触媒425が被覆されている充填剤物質315を含む。
【0024】
本発明を各種の例示的具体例を参照して記述したが、本発明の精神を逸脱することなく、多くの変形が加えられること及びその要素を均等物によって置換できることは、当業者によって理解されるであろう。さらに、その必須の範囲を逸脱することなく、本発明の教示に特別な状況又は物質を適合するように多くの変更をなすことができる。従って、本発明は、本発明を実施するための最良の形態として開示した特別の具体例に限定されず、本発明は、特許請求の範囲内に属する全ての具体例を包含するものである。さらに、用語「第1」、「第2」等は、順序又は重要性を表わすものではなく、むしろ、1つの要素を他の要素から区別するために使用している。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図2D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含有する混合ガスストリームを受け取り、溶媒と接触させるように設定された吸収塔を含んでなる煙道ガス処理システムであって、前記吸収塔が、触媒で被覆された充填剤物質を含んでなるものである、煙道ガス処理システム。
【請求項2】
触媒が不均一系触媒である、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
煙道ガス処理システムがアミン系煙道ガス処理システムである、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
触媒が、アミンによる煙道ガスストリーム中の二酸化炭素の捕捉を増進するために使用されている、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
混合処理ガスシステムが、アンモニア系混合ガス処理システムである、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
二酸化炭素リッチアミンストリームを受け取るように設定された再生塔を含んでなる混合ガス処理システムであって、再生塔が、触媒が被覆/不動化されている充填剤物質を含んでなるものである、混合ガス処理システム。
【請求項7】
触媒が不均一系触媒である、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
二酸化炭素リッチアンモニアストリームを受け取るように設定された再生塔を含んでなる混合ガス処理システムであって、再生塔が、触媒が被覆/不動化されている充填剤物質を含んでなるものである、混合ガス処理システム。
【請求項9】
触媒が不均一系触媒である、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
煙道ガスストリーム及び触媒を含有するアミン供給フィードを受け取るように設定された吸収塔を含んでなる混合ガス処理システム。
【請求項11】
吸収塔が、煙道ガスストリームを、アミン供給フィードからのアミン/触媒と接触させるように設定されている、請求項13記載のシステム。
【請求項12】
煙道ガスストリームを受け取るように設定された吸収塔を含んでなる混合ガス処理システムであって、前記吸収塔が、表面上に吸着されたCO2を活性化し、CO2によるアミンの炭酸化/炭酸水素化及びカーボメーションに対して触媒作用を発揮するために使用される触媒が被覆/不動化されている充填剤物質を含んでなるものである、混合ガス処理システム。
【請求項13】
二酸化炭素リッチアミンストリームを受け取るように設定された再生塔を含んでなる混合ガス処理システムであって、再生塔が、CO2によるアミンの炭酸化/炭酸水素化及びカーボメーションから形成された生成物の分解に対して触媒作用を発揮するために使用される触媒が被覆/不動化されている充填剤物質を含んでなるものである、混合ガス処理システム。
【請求項14】
二酸化炭素リッチアンモニアストリームを受け取るように設定された再生塔を含んでなる混合ガス処理システムであって、再生塔が、CO2によるアンモニアの反応/相互作用から形成された生成物の分解に対して触媒作用を発揮するために使用される触媒が被覆/不動化されている充填剤物質を含んでなるものである、混合ガス処理システム。
【請求項15】
煙道ガスストリーム及び、アミン/アンモニアを使用する低温でのCO2の捕捉及び高温でのアンモニアとCO2との反応/相互作用に対して触媒作用を発揮するために使用される触媒を含むアミン供給フィードを受け取るように設定された吸収塔を含んでなる、混合ガス処理システム。

【図3】
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【公表番号】特表2011−515211(P2011−515211A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500948(P2011−500948)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/037618
【国際公開番号】WO2009/117550
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】