説明

混合チャンバと越流チャンバとを備える混合装置および混合のためのプロセス

本発明は、可溶性原料と希釈剤とを混合させるようになっている混合チャンバ(2)を備える混合装置(1)に関し、混合装置は越流チャンネル(41)を備え、前記越流チャンネルが混合チャンバの外壁に沿って延び、それにより、混合チャンバの容量を超える液体が越流チャンネル内で流れることができ、また、混合チャンバおよび越流チャンネルの排出口(3)により、混合チャンバおよび越流チャンネル内に収容される液体が同じ場所で出て混じり合うことができる。また、本発明は、混合装置を使用して可溶性原料と希釈剤とを混合するためのプロセスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡状製品を提供する混合装置に関する。特に、本発明は、飲料を混合し、泡立て、分配するための混合装置、および、泡状製品を供給するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エスプレッソおよび他のコーヒー、ミルク飲料、スープなどの多くの飲料は、しばしば、粉末または液体濃縮物と水とを混合させることによって生成される。混合装置は、そのような飲料および他の食品を粉末食品成分と水などの液体とを混合させることにより高速生成できることで知られている。これらの装置は、一般に、多くの場合に混合チャンバ内に圧送される水の中に可溶性成分を供給し、それにより、渦を形成して、可溶性成分を水中に混合させて、泡を形成する。その後、泡立った混合物は、通常、混合チャンバの底部を通じて重量により混合チャンバから排出されて、飲料用の容器内に分配される。
【0003】
可溶性原料が混合チャンバ内でその溶解中に泡を形成するときにしばしば生じる1つの問題は、泡が混合チャンバ内の液体上にあるために泡が最後に排出されるということである。その結果、泡がしばしば一部しか排出されず、泡の最後の気泡が混合チャンバの底部に残る。この場合、混合チャンバを浄水によって洗い流さなければならず、また、生成された泡の全てを飲料が含まない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上述の課題を回避して、泡の一部を混合チャンバ内に残すことなく、その結果、飲料の生成後に浄水を用いてチャンバを洗い流す必要なく混合チャンバから排出できる発泡飲料の製造を可能にする新規な混合装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様において、本発明は、可溶性原料と希釈剤とを混合させるための混合チャンバであり、液体が混合チャンバから出ることができるようにする少なくとも1つの排出口を有する混合チャンバを備える混合装置であって、少なくとも1つの越流チャンネルを備え、それにより、混合チャンバの容量を超える液体が少なくとも1つの越流チャンネル内で流れることができ、混合チャンバの排出口および少なくとも1つの越流チャンネルの排出口が合流する、混合装置に関する。
【0006】
本発明の混合装置は、任意の既知の種類であり、様々な形状をとることができる混合チャンバを備える。好ましい形態では、縦方向上向きの壁が略円筒状である。例えば多角形、例えば六角形または楕円形のチャンバ断面など、他の形状を想起できる。底壁は、実質的に、円錐の一部を切り取ったものとなることができる。混合チャンバは、通常、可溶性原料および希釈剤の導入のための注入口と、可溶性原料の溶解によって生じる液体混合製品を供給するための排出口とを備える。通常、混合チャンバの注入口はチャンバの上端にあり、可溶性原料を重量落下によって混合チャンバ内に導入することができる。混合チャンバの排出口は通常は混合チャンバの底部にある。一般に、混合チャンバの注入口は、可溶性原料を供給する計量装置の下側に配置される。これは、可溶性原料を混合チャンバ内に落下させるために重力の利益を享受するのが有益だからである。例えば側面開口を通じた混合チャンバの他の側での可溶性原料の他の導入も可能であるが、液体が混合チャンバを満たして混合チャンバから溢れ出るときの液体の上昇に起因して、実施が更に複雑になる。同様に、混合チャンバの注入口は一般に希釈剤供給開口よりも下側にある。これは、希釈剤を混合チャンバ内に落下させるために重力の利益を享受するのが好ましいからである。混合チャンバの他の側、例えば側面開口での希釈剤の他の導入も可能であるが、液体が混合チャンバを満たして混合チャンバから溢れ出るときの液体の上昇に起因して、実施が更に複雑になる。本発明の好ましい実施形態では、混合チャンバの上部に壁や制約が設けられず、そのため、混合チャンバ内に落下して混合チャンバの容積容量を超えるどのような液体も、混合チャンバの上向きの壁を超えて溢れ出ることにより混合チャンバの外側に自由に流れることができる。また、上壁が存在しないことにより、可溶性原料および希釈剤の導入が容易な大きい注入口も設けられる。混合チャンバは回転自由であることが好ましい。混合チャンバは、側面開口を伴わずに形成されるのが好ましい。
【0007】
混合チャンバは、液体が混合チャンバから出ることができるようにする少なくとも1つの排出口を有する。該少なくとも1つの排出口は、通常は、全ての混合製品が重量によって排出されるように混合チャンバの底壁に配置される。
【0008】
本発明によれば、混合装置が少なくとも1つの越流チャンネルを備えており、それにより、混合チャンバの容量を超える液体が越流チャンネル内で流れることができる。該越流チャンネルは、混合チャンバの外壁に沿って延びるチャンネルであってもよい。越流チャンネルの注入口は一般に混合チャンバの上端に配置される。更に、混合チャンバおよび越流チャンバの排出口は、混合チャンバおよび越流チャンネル内に収容される液体が同じ場所で出て混合するように合流する。混合チャンバおよび越流チャンネルの排出口は、最終的な受容体内に液体を供給する前に混合できる。例えば、一実施形態によれば、混合チャンバの排出口がパイプであってもよく、越流チャンネルの排出口が該パイプに現れることができる。この形態は、液体が混合チャンバ排出口および越流チャンネル排出口を通じて同時に流れるときにベンチュリ効果をもたらす。この効果は、越流チャンネルからくる液体の吸引を高める。この実施形態は、希釈が泡をもたらす液体において特に興味深い。これは、混合チャンバ内の希釈液上に存在する泡が主に越流チャンネルによって排出され、ベンチュリ手段が該泡の吸引を高めるからである。他の実施形態によれば、混合チャンバの排出口が越流チャンネル内に現れることができる。
【0009】
好ましい実施形態によれば、越流チャンネルが混合チャンバを取り囲む越流チャンバである。越流チャンバは、任意の既知の類のものであってもよく、様々な形状をとり得る。越流チャンバは、混合チャンバと同じ形状を有することが好ましい。越流チャンバは、混合チャンバから溢れ出る液体が越流チャンバへ直接に落下するように混合チャンバを取り囲む。
【0010】
越流チャンバは、混合製品が越流チャンバから出ることができるようにする少なくとも1つの排出口を有する。該少なくとも1つの排出口は、通常は、液体が重量によって排出されるように越流チャンバの底壁に配置される。
【0011】
本発明によれば、混合チャンバおよび越流チャンバの排出口により、混合チャンバおよび越流チャンバ内に収容される混合製品が同じ場所で出て混ざり合うことができる。好ましい実施形態によれば、混合チャンバの少なくとも1つの排出口が越流チャンバ内に出る。好ましくは、混合チャンバの少なくとも1つの排出口の総断面が越流チャンバ注入口の総断面以下であり、それにより、混合装置内に導入される液体の大部分が、混合チャンバの少なくとも1つの排出口を通じてよりも、越流チャンバを通じて排出する。一般に、可溶性原料が混合チャンバ内に導入されると、可溶性原料は、それが完全に希釈される前に混合チャンバの少なくとも1つの排出口を部分的に閉じる。この部分的な閉塞は、越流チャンネルまたはチャンバ内の液体のオーバーフローをもたらすのに役立つ。その後、全ての泡が、混合チャンバの少なくとも1つの排出口を通じてではなく越流チャンネルを通じて混合装置から出ることができる。
【0012】
通常、本発明の混合装置は分配装置内に収容される。
【0013】
第2の態様において、本発明は、前述した混合装置を使用して可溶性原料と希釈剤とを混合するためのプロセスであって、
可溶性原料を混合チャンバ内に導入するステップと、
可溶性原料の溶解によって生じる液体が混合チャンバの容量を超えて部分的に少なくとも1つの越流チャンネル内を流れるような量および流れを伴って希釈剤を混合チャンバ内に導入するステップと、
希釈剤の導入を停止するステップと、
を含むプロセスに関する。
【0014】
本方法は、粉末である可溶性原料または液体濃縮物に関して適用される。方法は、特に泡を伴う希釈製品を製造するようになっている。方法は、食品または飲料製品、特にエスプレッソコーヒーまたは泡立ちミルクの製造に適用される。通常、希釈剤は湯である。混合チャンバ内での泡の製造は、可溶性原料の発泡性の結果であってもよく、また、該製造は、希釈剤がチャンバ内に導入されることによって、例えば希釈剤噴射力によって、また、混合チャンバの形態または濾し器やバッフルのようなチャンバ内の発泡装置の存在によって向上させることができる。
【0015】
本発明のプロセスによれば、可溶性原料が混合チャンバ内に導入されると、希釈剤が、可溶性原料の溶解によって生じる液体が混合チャンバの容量を超えて部分的に越流チャンネル内を流れるような量および流れを伴って導入される。該「越流」ステップの制御は、混合チャンバの内容積および混合チャンバの排出口の形状である混合チャンバの特性に基づく。混合チャンバの排出口の形状は、液体を混合チャンバから排出できる最大流量を規定する。この最大流量に基づいて、希釈剤は、液体を混合チャンバから排出できる最大の流れを上回る流れで、混合チャンバの内容積を上回る量で混合チャンバ内に導入される。このようにすると、混合チャンバ排出口を通じて混合チャンバから出る液体の流量は、混合チャンバ内に導入される希釈剤の流量を下回る。その結果、液体が超流チャンネル内に溢れ出るまで、混合チャンバ内で液位が上昇する。
【0016】
本発明のプロセスの好ましい実施形態によれば、希釈剤および可溶性原料が混合チャンバの上端開口を通じて導入される。混合チャンバは、側面開口を伴わずに形成されるのが好ましい。その場合には、「越流」ステップを容易に実施できる。
【0017】
希釈剤を導入するステップ中、製造される泡は液体上に浮く。その結果、液体が混合チャンバの容量を超えると、泡は、最初に越流チャンバ内に落下し、その後、越流チャンバを通じて混合チャンバ完全に排出される。泡が最初に越流チャンバ内に落下して混合チャンバ内に導入され続ける液体によって押されるため、泡は越流チャンバ内に残らない。すなわち、越流チャンバは、泡の背後で混合チャンバから溢れ出る液体によって洗い流される。泡は混合チャンバの排出口を通じて排出されず、そのため、発泡体の気泡が混合チャンバの底部にとどまることが回避される。
【0018】
混合チャンバ内に導入される希釈剤の量は、希釈剤の導入を停止する前に全ての泡を混合チャンバから出させるのに十分でなければならない。この量は、可溶性原料の発泡能力にしたがって適合させることもできる。
【0019】
本発明の特徴および利点は、図面に関連して更に良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る混合装置の平面図である。
【図2】図1の混合装置の側断面図である。
【図3】越流チャンネルが越流チャンバである混合装置の断面図である。
【図4】図3の混合装置を用いて発泡飲料を製造するためのプロセスを示す。
【図5】図3の混合装置を用いて発泡飲料を製造するためのプロセスを示す。
【図6】図3の混合装置を用いて発泡飲料を製造するためのプロセスを示す。
【図7】図3の混合装置を用いて発泡飲料を製造するためのプロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1および図2は、混合チャンバ2と、混合チャンバの外壁に沿って延びる越流チャンネル41とを備える本発明に係る混合装置1を示している。この場合、混合チャンバの上部に達する液体は越流チャンネルを通じて流れることができる。混合チャンバ2は、その底壁に1つの排出口3を有する。排出口3はパイプであり、該パイプには越流チャンネル41の排出口14が現れる。
【0022】
図3は、混合チャンバ2と、混合チャンバを取り囲む越流チャンバ4とを備える本発明に係る混合装置1を示している。2つのチャンバ2、4は同心である。混合チャンバ2の外壁と越流チャンバ4の内壁との間には空間6が存在しており、該空間は、混合チャンバ2から溢れ出る液体の通過を可能にする。越流チャンバ4の上端41は、混合チャンバ2の上端21よりも高いことが好ましい。混合チャンバ2は、両方のチャンバ2、4間の空間6に現れる1つの排出口3を底壁に有する。越流チャンバ4は、混合チャンバ2の排出口3からくる液体と混合チャンバ2から溢れ出る液体および泡とを排出するための1つの排出口5を有する。混合チャンバ2は、混合チャンバのそれぞれの部分に導入される少なくとも2つのピン7によって越流チャンバ4の内側に固定される。
【0023】
図4〜図7は、越流チャンバ2を備える本発明の混合装置を用いて発泡飲料を製造するためのプロセスを示している。最初に、可溶性原料11が混合チャンバ2内に導入される(図4)。その後、希釈剤8が混合チャンバ2内に導入される(図5)。希釈剤と可溶性原料11との混合は、液体飲料9と、液体9上の泡10とをもたらす。泡10は、混合チャンバ2を溢れ出て、両方のチャンバ2、4間の空間6に入る。同時に、液体飲料9が混合チャンバの排出口3を通じて流れて容器13内に落ちる。図6に描かれるように、多くの量の希釈剤8が混合チャンバ2に導入されることにより、混合チャンバが液体で一杯となり、全ての泡が越流チャンバ4を通じて混合チャンバから排出される。液体飲料9の一部も、泡の後に、越流チャンバ4を通じて混合チャンバから排出される。この液体飲料は、チャンバ2、4間の空間6を洗い流して、いかなる泡も該空間6内にとどまらないようにする。最後に、希釈剤の導入が停止され、液体9の残りが混合チャンバ排出口3を通じて混合チャンバ2から排出される(図7)。泡は混合チャンバ内に残らない。これは、泡が該チャンバの上端から排出されてしまっており、液体飲料が混合チャンバを完全に洗い流してしまっているからである。泡は越流チャンバ内に残らない。これは、泡が該チャンバから最初に排出され、泡の通過後に液体飲料が該チャンバを洗い流してしまっているからである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性原料と希釈剤とを混合させるための混合チャンバ(2)であり、液体が該混合チャンバ(2)から出ることができるようにする少なくとも1つの排出口(3)を有する混合チャンバ(2)を備える混合装置(1)であって、
少なくとも1つの越流チャンネル(41)を備え、前記混合チャンバ(2)の容量を超える液体が前記少なくとも1つの越流チャンネル(41)内で流れることができるようになっており、
前記混合チャンバの前記排出口(3)と前記少なくとも1つの越流チャンネルの排出口(14)とが合流している、混合装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの越流チャンネル(41)が前記混合チャンバの外壁に沿って延びる、請求項1に記載の混合装置。
【請求項3】
前記混合チャンバ(2)の前記少なくとも1つの排出口(3)がパイプであり、前記少なくとも1つの越流チャンネル(41)の前記排出口(14)が前記パイプにおいて現れる、請求項1または2に記載の混合装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの越流チャンネルが前記混合チャンバ(2)を取り囲む越流チャンバ(4)である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の混合装置。
【請求項5】
前記液体を前記混合チャンバ(2)から排出することを可能にする前記少なくとも1つの排出口(3)が前記越流チャンバ(4)内に出ている、請求項4に記載の混合装置。
【請求項6】
当該混合装置は、希釈剤の注入口と可溶性原料の注入口とを前記混合チャンバ(2)の上端に備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の混合装置。
【請求項7】
前記混合チャンバが側面開口を伴うことなく形成されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の混合装置。
【請求項8】
当該混合装置が分配装置内に収容される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の混合装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の混合装置を使用して、可溶性原料と希釈剤とを混合するためのプロセスであって、
前記可溶性原料を前記混合チャンバ(2)内に導入するステップと、
前記可溶性原料の溶解によって生じる液体が前記混合チャンバの容量を超えて部分的に前記少なくとも1つの越流チャンネル(4、41)内を流れるような量および流れを伴って、前記希釈剤を前記混合チャンバ(2)内に導入するステップと、
前記希釈剤の導入を停止するステップと
を含むプロセス。
【請求項10】
前記可溶性原料が発泡特性を有する、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記可溶性原料を泡立たせるために前記希釈剤が前記混合チャンバ内に導入される、請求項9または10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記液体を前記混合チャンバから排出できる最大の流れを上回る流れで、かつ、前記混合チャンバの内容積を上回る量で、前記希釈剤が前記混合チャンバ内に導入される、請求項9〜11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記希釈剤および前記可溶性原料が前記混合チャンバの上端開口を通じて導入される、請求項9〜12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
泡の層を伴う飲料製品を生成するための、請求項8〜13のいずれか一項に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−521779(P2011−521779A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510991(P2011−510991)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056383
【国際公開番号】WO2009/144227
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】