説明

混合液体の分離装置

【課題】混合液体から所望の液体を損失少なく効率よく分離して回収する。
【解決手段】混合液体Bを霧状にして噴出する噴出ノズル14、および該噴出ノズルから混合液体が内部に噴出される容器体15を備えるとともに、噴出ノズルから容器体内に噴出された混合液体を加熱することで、被回収液体Aを液状のまま低沸点液体を気化する加熱分離器11と、低沸点液体の気化ガスを容器体内から吸い出す吸出手段13と、該吸出手段による吸引力に抗して自重により落下する被回収液体を回収する回収部12と、を備え、吸出手段は、容器体において噴出ノズルよりも混合液体の噴出方向の前方に位置する前方部分15aに接続通路25を介して接続され、容器体の前方部分、および接続通路のうちの少なくとも一方に、被回収液体の噴出ノズル側から吸出手段側に向かう流れを乱す邪魔部材27が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合液体の分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1に示されるように、ナノ濾過部材等を用いることで、複数種の液体を含有する混合液体から所望の液体を分離して回収する手段が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許出願公開第101224933号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の混合液体の分離装置では、混合液体から所望の液体を損失少なく効率よく分離して回収することについて改善の余地があった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、混合液体から所望の液体を損失少なく効率よく分離して回収することができる混合液体の分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の混合液体の分離装置は、被回収液体、および該被回収液体より沸点の低い低沸点液体を含有する混合液体から被回収液体を分離して回収する混合液体の分離装置であって、前記混合液体を霧状にして噴出する噴出ノズル、および該噴出ノズルから前記混合液体が内部に噴出される容器体を備えるとともに、前記噴出ノズルから前記容器体内に噴出された混合液体を加熱することで、被回収液体を液状のまま低沸点液体を気化する加熱分離器と、前記低沸点液体の気化ガスを前記容器体内から吸い出す吸出手段と、該吸出手段による吸引力に抗して自重により落下する前記被回収液体を回収する回収部と、を備え、前記吸出手段は、前記容器体において前記噴出ノズルよりも混合液体の噴出方向の前方に位置する前方部分に接続通路を介して接続され、前記容器体の前方部分、および前記接続通路のうちの少なくとも一方に、前記被回収液体の前記噴出ノズル側から吸出手段側に向かう流れを乱す邪魔部材が配設されていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、容器体の内部で混合液体を加熱して低沸点液体を気化するに際し、混合液体を噴出ノズルにより霧状にするので、低沸点液体を少ないエネルギで容易かつ確実に気化させることが可能になり、消費エネルギを抑えることができるとともに、混合液体に含まれる被回収液体や低沸点液体の量によって、回収される被回収液体の純度がばらつくのを抑制することが可能になり、適用可能な混合液体の種類が制限されるのを抑えることができる。
さらに、容器体の前方部分、および接続通路のうちの少なくとも一方に、被回収液体の噴出ノズル側から吸出手段側に向かう流れを乱す邪魔部材が配設されているので、霧状の被回収液体を損失少なく確実に回収部に回収することが可能になる。
例えば、回収部が接続通路に配設され、かつ邪魔部材が、接続通路のうち回収部よりも吸出手段側に位置する部分に配設されている場合には、霧状の被回収液体が、吸出手段からの吸引力によって回収部から離れ吸出手段側に流されても、邪魔部材に接触させてこの霧状の被回収液体の流れを乱すことにより、霧状の被回収液体を、例えば邪魔部材上に付着させたり、邪魔部材上で凝集させたりすること等が可能になり、この被回収液体が邪魔部材を超えて吸出手段側に流出するのを抑制することができる。
一方例えば、回収部が接続通路に配設され、かつ邪魔部材が、接続通路のうち回収部より加熱分離器側に位置する部分、若しくは容器体の前方部分に配設されている場合には、霧状の被回収液体を、回収部に到達する前に予め、邪魔部材に接触させることで凝集させて嵩張らせておくことが可能になり、被回収液体を吸出手段による吸引力に抗して確実に自重により回収部に向けて落下させることができる。
また例えば、噴出ノズルが、混合液体を容器体内に鉛直方向に交差する横方向若しくは鉛直方向の上方に向けて噴出し、かつ回収部が、容器体において噴出ノズルより鉛直方向の下方に位置する部分に連結されている場合にも、噴出ノズルから噴出された霧状の被回収液体を、邪魔部材に接触させることで凝集させて嵩張らせることが可能になり、この被回収液体を、低沸点液体の気化ガスとともに吸出手段側に向けて流出させずに、吸出手段による吸引力に抗して確実に自重により回収部に向けて落下させることができる。
【0008】
ここで、前記接続通路には、低沸点液体の気化ガス、および液状の被回収液体を、前記吸出手段からの鉛直方向の上方に向けた吸引力によって旋回させることで、前記気化ガスから被回収液体を遠心力により分離する遠心分離器が鉛直方向の下方に向けて突設され、該遠心分離器には、前記回収部が鉛直方向の下方に向けて突設されてもよい。
【0009】
この場合、遠心分離器が配設されているので、被回収液体を回収部に回収する前に予め、低沸点液体の気化ガス、および液状の被回収液体の混合体を旋回させ、前記気化ガスから霧状の被回収液体を遠心力により分離することが可能になり、被回収液体をより一層確実に回収部に回収することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る混合液体の分離装置によれば、混合液体から所望の液体を損失少なく効率よく分離して回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る一実施形態として示した混合液体の分離装置の概略図である。
【図2】図1に示す混合液体の分離装置のY−Y線矢視断面図である。
【図3】本発明に係る他の実施形態として示した混合液体の分離装置の要部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る混合液体の分離装置の一実施形態を、図1および図2を参照しながら説明する。
この分離装置1は、被回収液体A、および該被回収液体Aより沸点の低い低沸点液体を含有する混合液体Bから被回収液体Aを分離して回収する構成となっている。
【0013】
ここで、本実施形態でいう「液体」とは、例えば、平成元年2月23日付消防危第11号「危険物の規制に関する政令等の一部を改正する政令(危険物の試験及び性状に係る部分)並びに危険物の試験及び性状に関する省令の公布について」において、別添2に示された方法に従って確認されるもの等としてもよい。
また本実施形態でいう「沸点」とは、例えば、JIS K 2233(1984)に規定される方法で測定されるもの等としてもよい。なお、沸点を有しない例えばイオン液体等の場合に、本実施形態でいう「沸点」とは「分解点」を意味するものとする。「分解点」は、熱重量測定装置(TGA)を用いて、液体の重量を測定しつつ、この液体を1分間に10℃ずつ昇温させていく過程で、液体の重量が10%減少したときの温度をいう。ここで、イオン液体とは、塩により構成される化学物質であって、一気圧・100℃で液状の有機化合物を意味し、水は含まない。
【0014】
混合液体Bが含有する液体としては、例えば有機物であっても無機物であってもよい。
有機物としては、例えば、N−メチルモルフォリンオキシド(NMMO)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、エタノール、イソプロピルアルコール、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(C2mimAc)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルフォスフェイト(C2mimDEP)、1−アリル−3−メチルイミダゾリウム塩化物(AmimCl)、1−エチルピリジニウム塩化物、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、ピリジン、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ポリエチレングリコール(PEG)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメチルスルフォネート、若しくはジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられる。
これらのうち、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(C2mimAc)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルフォスフェイト(C2mimDEP)、1−アリル−3−メチルイミダゾリウム塩化物(AmimCl)、1−エチルピリジニウム塩化物、および1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメチルスルフォネートが、前述のイオン液体に該当する。
無機物としては、例えば水(HO)や溶融塩等が挙げられる。
【0015】
なお、混合液体Bとしては、例えば、水(沸点:約100℃)とC2mimAc(沸点(分解点):約210℃)との混合物、水とC2mimDEP(沸点(分解点):約255℃)との混合物、水とAmimCl(沸点(分解点):約245℃)との混合物、水とNMMO(沸点:約120℃)との混合物、水とTHF(沸点:約66℃)との混合物、
水とピリジン(沸点:約115.2℃)との混合物、水とポリエチレングリコール(沸点:約250℃以上)との混合物、水とDMSO(沸点:約189℃)との混合物、若しくは水とDMF(沸点:約153℃)との混合物等が挙げられる。
なお、低沸点液体の沸点と被回収液体Aの沸点との差は、例えば20℃〜200℃、好ましくは100℃〜200℃としてもよい。
また、混合液体Bに含有させる液体の種類は、共沸混合物とならない組み合わせとする。なお、共沸混合物としては、例えば、水とエタノールとの混合物、若しくは水とイソプロピルアルコールとの混合物等が挙げられる。
【0016】
そして混合液体の分離装置1は、混合液体Bを霧状にして噴出する噴出ノズル14、および噴出ノズル14から混合液体Bが内部に噴出される容器体15を備えるとともに、噴出ノズル14から容器体15内に噴出された混合液体Bを加熱することで、被回収液体Aを液状のまま低沸点液体を気化する加熱分離器11と、低沸点液体の気化ガスを容器体15内から吸い出す吸出手段13と、吸出手段13による吸引力に抗して自重により落下する被回収液体Aを回収する回収部12と、を備えている。
【0017】
加熱分離器11において、噴出ノズル14の先端部14aは、容器体15の内部に位置していて、噴出ノズル14の先端部14aから霧状の混合液体Bが噴出される。図示の例では、噴出ノズル14は、先端部14aが下方を向くように鉛直方向に沿って延設されている。
容器体15は、鉛直方向に沿って延びる有底筒状に形成され、その上端開口部内に、噴出ノズル14の先端部14aが位置している。これにより、混合液体Bは、噴出ノズル14の先端部14aから容器体15内に下方に向けて噴出される。
【0018】
さらに本実施形態では、加熱分離器11は、噴出ノズル14内に混合液体Bおよび圧縮気体を供給する供給手段16と、容器体15内に加熱された気体を供給して混合液体Bを加熱する加熱手段17と、を備えている。
【0019】
供給手段16は、噴出ノズル14の基端部に連結された気液混合器18と、混合液体Bが貯留された貯留槽19と、例えばコンプレッサー等の図示されない圧縮気体供給手段と、気液混合器18と貯留槽19とを接続する液体供給管20と、気液混合器18と圧縮気体供給手段とを接続する圧縮気体供給管21と、を備えている。
液体供給管20には、貯留槽19内の混合液体Bを気液混合器18に供給するポンプ20aが配設されている。
圧縮気体供給管21には、気液混合器18に供給する圧縮気体の圧力を調整するレギュレータ21aが配設されている。
【0020】
加熱手段17は、容器体15内に連通された供給通路22と、供給通路22に配設され、吸出手段13からの吸引力により吸引された気体を加熱するヒータ23と、供給通路22に配設され、ヒータ23により加熱された気体の温度が測定可能な温度計24と、を備えている。
供給通路22において、容器体15に連結された先端部22aは、鉛直方向に沿って延びる筒状体とされ、その内側に噴出ノズル14が同軸に配設されている。供給通路22の先端部22aおよび噴出ノズル14の先端部14aそれぞれの鉛直方向に沿う位置は互いに同等となっている。図示の例では、噴出ノズル14の先端部14aは、供給通路22の先端部22aよりも僅かに下方に突出している。
【0021】
吸出手段13は、加熱分離器11の容器体15において、噴出ノズル14よりも混合液体Bの噴出方向の前方に位置する前方部分15aに接続通路25を介して接続されている。図示の例では、接続通路25は、加熱分離器11の容器体15において、噴出ノズル14の先端部14aよりも下方に位置する下部に接続されている。
接続通路25は、加熱分離器11の容器体15の下部に接続されて水平方向に延びる第1通路25aと、第1通路25aの先端部から上方に向けて延びる第2通路25bと、吸出手段13に接続され上方に向けて延びる第3通路25cと、第2通路25bの上端と第3通路25cの上端とを接続する第4通路25dと、を備えている。第1通路25aには、加熱分離器11を通過した混合気体Bの温度を測定可能な温度計26が配設されている。
なお、この温度計26、および加熱手段17が備える温度計24それぞれによる測定結果に基づいて、加熱手段17のヒータ23の温度が制御可能になっている。
【0022】
そして本実施形態では、加熱分離器11の容器体15の前方部分15a、および接続通路25のうちの少なくとも一方に、被回収液体Aの噴出ノズル14側から吸出手段13側に向かう流れを乱す邪魔部材27が配設されている。
図示の例では、邪魔部材27は接続通路25の第2通路25bに配設されている。また、邪魔部材27は、図2に示されるように、第2通路25bの内周面に、径方向の内側に向けて突設されるとともに、第2通路25bの軸方向に間隔をあけて配設された複数の板体28を備えている。
【0023】
各板体28は、弦に沿って切欠かれた切欠き部28aを有し、かつ半円より大きい円板状体となっていて、切欠き部28aと第2通路25bの内周面との間に隙間Xが設けられている。また、各板体28は、該板体28のうち切欠き部28aが、低沸点液体の気化ガスが噴出ノズル14側から吸出手段13側に向けて流れる流動方向に沿って最も後側に位置するように、第2通路25bの軸方向に対して傾斜して配設されている。板体28の外周縁の曲率半径は、第2通路25bの内周面の半径と同等になっている。前記隙間Xは、その全域にわたって、第2通路25bの軸方向に隣接する他の板体28によって第2通路25bの軸方向に覆われている。図示の例では、第2通路25bの軸方向で隣り合う各板体28は、前記隙間Xが、第2通路25bの径方向に沿って中央部を挟む反対側に位置するように第2通路25bの軸方向に沿って互い違いに配設されている。
【0024】
また本実施形態では、図1に示されるように、接続通路25に、低沸点液体の気化ガス、および液状の被回収液体Aを、吸出手段13からの鉛直方向の上方に向けた吸引力によって旋回させることで、前記気化ガスから被回収液体Aを遠心力により分離する遠心分離器29が鉛直方向の下方に向けて突設されている。
図示の例では、遠心分離器29の上端部が、接続通路25における第1通路25aと第2通路25bとの接続部分に連結されている。遠心分離器29は、鉛直方向の上方から下方に向かうに従い漸次縮径された円筒状体となっている。また、遠心分離器29には、該分離器29内の被回収液体Aを冷却可能な冷却手段29aが配設されている。なお、冷却手段29aは、内部に冷媒が循環する循環配管を備え、この循環配管の一部が遠心分離器29の内部に位置していて、この循環配管の一部に遠心分離器29内の被回収液体Aの一部が接触することで凝集することがある。
この遠心分離器29に、回収部12が鉛直方向の下方に向けて突設されている。回収部12は、内径が遠心分離器29の下端部における内径よりも大きく、かつ遠心分離器29よりも鉛直方向の大きさが小さい有底筒状体となっている。また、遠心分離器29と回収部12とは同軸に配設されている。
【0025】
次に、以上のように構成された混合液体の分離装置1の作用について説明する。
【0026】
まず、供給手段16においては、気液混合器18に、圧縮気体供給手段から圧縮気体供給管21を通してレギュレータ21aにより圧力が調整された圧縮気体が供給されるとともに、貯留槽19から液体供給管20を通してポンプ20aにより流量が調整された混合液体Bが供給される。そして、これらの圧縮気体と混合液体Bとが気液混合器18内で混合された後に、噴出ノズル14の先端部14aから加熱分離器11の容器体15内に下方に向けて噴出される。
なお、このときの混合液体Bの液滴の粒径は、例えば1μm〜1000μm、好ましくは10μm〜700μm、さらに好ましくは400μm〜500μmとしてもよい。
【0027】
一方、加熱手段17においては、吸出手段13からの吸引力によって供給通路22内に吸引された気体が、供給通路22の先端部22aに向けて流れる過程でヒータ23により加熱される。このように加熱された気体は、供給通路22の先端部22aから加熱分離器11の容器体15内に下方に向けて供給される。
この際、供給通路22の先端部22aおよび噴出ノズル14がそれぞれ同軸に位置し、かつ供給通路22の先端部22aおよび噴出ノズル14の先端部14aそれぞれの鉛直方向に沿う位置が互いに同等になっているので、噴出ノズル14から噴出された混合液体Bは、加熱手段17からの加熱された気体に即座に全体にわたって接することとなり、低沸点液体の沸点以上、かつ被回収液体Aの沸点より低い温度まで確実に加熱される。これにより、噴出ノズル14から加熱分離器11の容器体15内に噴出された混合液体Bは、即座に、被回収液体Aは液滴のまま低沸点液体のみが気化する。なお、低沸点液体の気化ガス、および液状の被回収液体Aの混合体の温度は、接続通路25に到達するまでの間に、多少は低下するものの、低沸点液体の沸点以上、かつ被回収液体Aの沸点より低い温度に維持される。
【0028】
なお、このときの加熱分離器11の容器体15の内圧は、例えば0.01MPa〜0.50MPa、好ましくは0.03MPa〜0.30MPa、さらに好ましくは0.05MPa〜0.20MPa、最も好ましくは0.08MPa〜0.15MPaとしてもよい。さらに、加熱手段17から容器体15内に供給する気体としては、例えば空気、窒素ガス、若しくはその他の不活性ガス等が挙げられる。また、加熱手段17から容器体15内に供給する気体の温度は、混合液体Bとして、例えば水を約99.6wt%含有し、かつC2mimAcを約0.4wt%含有するものを採用した場合、約220℃としてもよい。
【0029】
そして、低沸点液体の気化ガス、および液状の被回収液体Aの混合体は、加熱分離器11の容器体15の下部に到達すると、接続通路25の第1通路25aを通過して遠心分離器29に到達する。この際、遠心分離器29の内部に作用する吸出手段13からの上方に向けた吸引力によって、遠心分離器29内の前記混合体を旋回させることで、前記気化ガスから被回収液体Aが遠心力により分離される。なおこの過程において、被回収液体Aは冷却手段29aにより遠心分離器29内で冷却される。このように分離された被回収液体Aは、自重により回収部12に向けて落下して回収される一方、低沸点液体の気化ガスは、吸出手段13からの上方に向けた吸引力により第2通路25b内を上昇し、第4通路25dおよび第3通路25cをこの順に通過して吸出手段13に到達し排出される。
【0030】
以上説明したように、本実施形態による混合液体の分離装置1によれば、加熱分離器11の容器体15の内部で低沸点液体を気化するに際し、混合液体Bを、噴出ノズル14により微小液滴の霧状にしてその表面積を増大させるとともに、加熱手段17からの加熱された気体により低沸点液体の沸点以上、かつ被回収液体Aの沸点より低い温度まで加熱するので、低沸点液体を少ないエネルギで容易かつ確実に気化させることが可能になり、消費エネルギを抑えることができるとともに、混合液体Bに含まれる被回収液体Aや低沸点液体の量によって、回収される被回収液体Aの純度がばらつくのを抑制することが可能になり、適用可能な混合液体Bの種類が制限されるのを抑えることができる。
【0031】
さらに、接続通路25に、被回収液体Aの噴出ノズル14側から吸出手段13側に向かう流れを乱す邪魔部材27が配設されているので、霧状の被回収液体Aを損失少なく確実に回収部12に回収することが可能になる。
本実施形態では、回収部12が接続通路25に配設され、かつ邪魔部材27が、接続通路25のうち回収部12よりも吸出手段13側に位置する第2通路25bに配設されているので、霧状の被回収液体Aが、吸出手段13からの吸引力によって回収部12から離れ吸出手段13側に流されても、邪魔部材27の板体28の表裏面のうち、吸出手段13側を向く背面では、カルマン渦または/および乱流を発生させ霧状の被回収液体Aを凝集させ嵩張らせ、また、噴出ノズル14側を向く対向面には霧状の被回収液体Aを付着させること等が可能になり、この被回収液体Aが邪魔部材27を超えて吸出手段13側に流出するのを抑制することができる。
【0032】
また、遠心分離器29が配設されているので、被回収液体Aを回収部12に回収する前に予め、低沸点液体の気化ガス、および液状の被回収液体Aの混合体を旋回させ、前記気化ガスから霧状の被回収液体Aを遠心力により分離することが可能になり、被回収液体Aをより一層確実に回収部12に回収することができる。
【0033】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0034】
例えば、前記実施形態では、邪魔部材27を接続通路25の第2通路25bに配設したが、これに限らず、第1通路25a、第2通路25b、第3通路25c、第4通路25d、および加熱分離器11の容器体15の前方部分15aのうちの少なくとも一つに配設すればよい。
なお、邪魔部材27を、回収部12および遠心分離器29よりも加熱分離器11側に位置する第1通路25aや容器体15の前方部分15aに配設した場合には、霧状の被回収液体Aを、回収部12や遠心分離器29に到達する前に予め、邪魔部材27に接触させることで凝集させて嵩張らせておくことが可能になる。
これにより、被回収液体Aを、遠心分離器29による遠心力によって確実に低沸点液体の気化ガスから分離することができるとともに、被回収液体Aを、吸出手段13による吸引力に抗して確実に自重により回収部12に向けて落下させることができる。
【0035】
また、邪魔部材27は、前記実施形態に限らず、例えばメッシュ体、あるいは径方向に延在する棒状体、あるいは径方向に沿って平行に延びる板体等適宜変更してもよい。
なお、メッシュ体の場合、霧状の被回収液体Aが、メッシュ体の表裏面のうち、噴出ノズル14側を向く対向面には直接付着し、また、吸出手段13側を向く背面には、カルマン渦または/および乱流が発生して凝集することで付着する。
また前記棒状体の場合、霧状の被回収液体Aが、吸出手段13側を向く背部にカルマン渦または/および乱流が発生することで凝集して付着したり、あるいは直接付着したりする。
さらに遠心分離器29に冷却手段29aは配設しなくてもよく、また、遠心分離器29は配設しなくてもよい。
さらに回収部12は加熱分離器11に直結してもよい。
また、加熱手段17は、前記実施形態に限らず例えば、容器体15に直接配設したヒータであってもよいし、さらに、供給通路22に気体を供給するポンプ等を吸出手段13とは別に配設してもよい。
さらにまた、邪魔部材27と吸出手段13との間に、冷却手段を有する補助回収部を配設し、この補助回収部により低沸点液体を回収するようにしてもよい。
【0036】
また、図3に示されるように、噴出ノズル14の先端部14aを鉛直方向の上方に向けて、混合液体Bを容器体15内に鉛直方向の上方に向けて噴出させるようにしてもよい。この図3に示す混合液体の分離装置2では、回収部12は、容器体15において噴出ノズル14より鉛直方向の下方に位置する部分に連結されている。また、接続通路25は、容器体15において噴出ノズル14より鉛直方向の上方に位置する前方部分15aに連結されている。さらに、邪魔部材27は、容器体15の前方部分15aのうち接続通路25よりも鉛直方向の下方に位置する部分に配設されている。
このような混合液体の分離装置2では、鉛直方向の上方に向けて噴出された霧状の被回収液体Aを、邪魔部材27に接触させることで凝集させて嵩張らせることが可能になり、この被回収液体Aを、低沸点液体の気化ガスとともに吸出手段13側に向けて流出させずに、吸出手段13による吸引力に抗して確実に自重により回収部12に向けて落下させることができる。
なお、この図3に示す混合液体の分離装置2において、噴出ノズル14の先端部14aを鉛直方向に交差する横方向に向け、混合液体Bを容器体15内に横方向に噴出させてもよい。
【0037】
さらに、混合液体Bは、3種類以上の液体を含有してもよい。また、加熱分離器11で気化させる低沸点液体は複数種であってもよいし、回収部12で回収する被回収液体Aも複数種であってもよい。
【0038】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
混合液体から所望の液体を損失少なく効率よく分離して回収することができる。
【符号の説明】
【0040】
1、2 混合液体の分離装置
11 加熱分離器
12 回収部
13 吸出手段
14 噴出ノズル
15 容器体
15a 容器体の前方部分
25 接続通路
27 邪魔部材
28 板体
28a 板体の先端縁
29 遠心分離器
A 被回収液体
B 混合液体
X 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被回収液体、および該被回収液体より沸点の低い低沸点液体を含有する混合液体から被回収液体を分離して回収する混合液体の分離装置であって、
前記混合液体を霧状にして噴出する噴出ノズル、および該噴出ノズルから前記混合液体が内部に噴出される容器体を備えるとともに、前記噴出ノズルから前記容器体内に噴出された混合液体を加熱することで、被回収液体を液状のまま低沸点液体を気化する加熱分離器と、
前記低沸点液体の気化ガスを前記容器体内から吸い出す吸出手段と、
該吸出手段による吸引力に抗して自重により落下する前記被回収液体を回収する回収部と、を備え、
前記吸出手段は、前記容器体において前記噴出ノズルよりも混合液体の噴出方向の前方に位置する前方部分に接続通路を介して接続され、
前記容器体の前方部分、および前記接続通路のうちの少なくとも一方に、前記被回収液体の前記噴出ノズル側から吸出手段側に向かう流れを乱す邪魔部材が配設されていることを特徴とする混合液体の分離装置。
【請求項2】
請求項1記載の混合液体の分離装置であって、
前記接続通路には、低沸点液体の気化ガス、および液状の被回収液体を、前記吸出手段からの鉛直方向の上方に向けた吸引力によって旋回させることで、前記気化ガスから被回収液体を遠心力により分離する遠心分離器が鉛直方向の下方に向けて突設され、
該遠心分離器には、前記回収部が鉛直方向の下方に向けて突設されていることを特徴とする混合液体の分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−183511(P2012−183511A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49575(P2011−49575)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】