説明

混合物の保存方法および粘着剤組成物の保存方法

【課題】水酸基含有ポリマー、特に(メタ)アクリル系ポリマーとイソシアネート系架橋剤の混合物を安定に貯蔵できる前記混合物の保存方法を提供する。また、水酸基含有ポリマー、特に(メタ)アクリル系ポリマーにイソシアネート架橋剤を配合した光学用粘着剤組成物を安定に貯蔵できる前記粘着剤組成物の保存方法を提供する。
【解決手段】イソシアネート系架橋剤と水酸基含有ポリマーとを含む混合物の保存方法であって、前記混合物中にさらにカルボキシル基含有ポリマーを含むことを特徴とする前記混合物の保存方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸基含有ポリマー、特に(メタ)アクリル系ポリマーにイソシアネート架橋剤を配合した混合物および粘着剤組成物を安定に保存する方法に関する。また、本発明は、水酸基含有ポリマー、特に(メタ)アクリル系ポリマーにイソシアネート架橋剤を配合した光学用粘着剤組成物を安定に保存する方法に関する。
【0002】
なお、前記光学用粘着剤組成物に用いられる光学部材としては、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているものなどがあげられる。
【背景技術】
【0003】
液晶表示装置に用いる光学部材、たとえば偏光板や位相差板などは、液晶セルに粘着剤を用いて貼り付けられる。このような光学材料は、熱や湿度下条件では伸縮が大きく、それに伴う浮きや剥がれが生じやすくなり、粘着剤にはこれに対応できる耐久性が要求される。
【0004】
また、液晶セルに貼り付ける場合には、光学部材に粘着剤が貼り合せされた状態で、打ち抜き加工や、スリット加工のような各種加工処理がなされる。このような時に、粘着剤が切断刃に取られたり、切断面からはみ出したりする恐れがあるために、エージング処理する必要があり、生産性を著しく阻害していた。つまり、粘着剤付き光学部材が製造された後、このような加工処理が速やかにできることは生産性の面で非常に有利である。
【0005】
さらに、液晶セルに貼り付けた後、位置のずれや異物の噛み込みなどで、光学フィルムを剥離する場合には、液晶セルを破壊したりギャップを変化させたりすることなく剥離できるような再剥離性も要求される。
【0006】
このような光学用粘着剤としては、各種の組成の粘着剤が提案されている。たとえば、反応性官能基を有する共重合体と有しない共重合体のブレンド物に多官能性化合物を配合した粘着剤が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。また、アクリル系樹脂とアクリルゴムからなる粘着剤(たとえば、特許文献2参照)や、水酸基を有する共重合体と有しない共重合体をブレンド物に多官能イソシアネート化合物を反応させた粘着剤(たとえば、特許文献3参照)が開示されている。また、光学用粘着剤ではないが、水酸基を有するアクリルポリマーと、アクリル酸・メタクリル酸を共重合したアクリルポリマーをブレンドして多官能性イソシアネートで架橋した粘着剤が開示されている(たとえば、特許文献4参照)。
【0007】
また、イソシアネート系架橋剤の架橋速度を上げるために、ジブチル錫ジラウレートなどの錫化合物やDABCOなどのアミン化合物を添加して、塗布乾燥時に速やかに架橋反応が進行させて、エージング処理の必要がなく加工作業ができるようにする方法も提案されている。
【0008】
しかしながら、しかし、これらの技術を用いても、より高温での耐久性に不満足な場合も多く、接着性が上昇することによる再剥離性への悪影響や、加工処理までに時間がかかる場合が多く観察されている。
【0009】
たとえば、特許文献4においても、イソシアネート架橋反応速度に関する認識や記述はなく、粘着剤溶液にイソシアネート系架橋剤を混合した後のポットライフの問題を生じることが判明した。また、実施例にて示されるような酸成分含有ポリマーを特許文献4のように多量に用いることによる架橋反応阻害の問題が判明した。
【0010】
また、ジブチル錫ジラウレートなどの錫化合物や、DABCOなどのアミン系化合物が使用されると、塗布乾燥で反応を完結できることが知られている。しかし、このような触媒を混合物溶液に加えると、当然ながら溶液状態でも架橋反応が進行して溶液粘度があがるため、塗工作業は配合混合後短時間で処理する必要があり、作業工程上特に問題となることが判明した。
【0011】
【特許文献1】特開昭60−207101号公報
【特許文献2】特開平5−196812号公報
【特許文献3】特開平9−113724号公報
【特許文献4】特開昭56−95965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで本発明は、上述の問題に対処すべく、水酸基含有ポリマー、特に(メタ)アクリル系ポリマーとイソシアネート系架橋剤の混合物を安定に貯蔵できる前記混合物の保存方法を提供することを目的とする。
【0013】
また本発明は、水酸基含有ポリマー、特に(メタ)アクリル系ポリマーにイソシアネート架橋剤を配合した光学用粘着剤組成物を安定に貯蔵できる前記粘着剤組成物の保存方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、下記の保存方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の第一の保存方法は、イソシアネート系架橋剤と水酸基含有ポリマーとを含む混合物の保存方法であって、前記混合物中にさらにカルボキシル基含有ポリマーを含むことを特徴とする。
【0016】
上記保存方法においては、前記水酸基含有ポリマーが、モノマー単位として、一般式CH=C(R)COOR(ただし、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数2〜14のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル系モノマー50〜99.9重量%および水酸基含有モノマー0.1〜20重量%含有する(メタ)アクリル系ポリマー(A)であり、かつ、
前記カルボキシル基含有ポリマーが、モノマー単位として、一般式CH=C(R)COOR(ただし、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数2〜14のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル系モノマー50〜99.9重量%、およびカルボキシル基含有モノマー0.1〜20重量%含有する含有する(メタ)アクリル系ポリマー(B)であることが好ましい。
【0017】
なお、本発明における(メタ)アクリル系ポリマーとは、アクリル系ポリマーおよび/またはメタクリル系ポリマーをいう。また(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートをいう。
【0018】
また、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)に対し、前記(メタ)アクリル系ポリマー(B)が2〜40重量%含まれていることが好ましい。
【0019】
さらに、前記水酸基含有ポリマーおよびカルボキシル基含有ポリマーの合計量100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤0.02〜0.5重量部含有することが好ましい。
【0020】
また、前記水酸基含有ポリマーおよびカルボキシル基含有ポリマーの合計量100重量部に対し、過酸化物0.02〜2重量部含有することを特徴とすることが好ましい。
【0021】
一方、本発明の第二の保存方法は、イソシアネート系架橋剤と水酸基含有ポリマーとを含む混合物の保存方法であって、前記水酸基含有ポリマーがカルボキシル基を含有することを特徴とする。
【0022】
上記保存方法においては、前記水酸基含有ポリマーが、モノマー単位として、一般式CH=C(R)COOR(ただし、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数2〜14のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル系モノマー50〜99.8重量%、水酸基含有モノマー0.1〜20重量%、およびカルボキシル基含有モノマー0.1〜20重量%含有する含有する(メタ)アクリル系ポリマー(C)であることが好ましい。
【0023】
また、前記水酸基含有ポリマー100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤0.02〜0.5重量部含有することが好ましい。
【0024】
さらに、前記水酸基含有ポリマー100重量部に対し、過酸化物0.02〜2重量部含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、実施例の結果に示すように、特定量のカルボキシル基を含有させることにより、水酸基含有ポリマー、特に(メタ)アクリル系ポリマーとイソシアネート系架橋剤の混合物を安定に貯蔵できるものとなる。より具体的には、カルボキシル基を含有させることで、水酸基含有ポリマーとイソシアネート系架橋剤との混合物(混合物溶液)の保存性は大幅に向上して、たとえば、24時間放置しても粘度変化は小さく塗工作業は支障なく行うことができるものとなる。このため、従来の問題点を解消した加熱試験・加湿試験にて発抱や浮き、剥がれなどの不良が生じない、耐久性に優れるとともに、再剥離性や加工処理までの時間が短いた粘着剤の保存方法を提供することが可能となる。
【0026】
上記保存方法が、かかる作用効果を発現する理由の詳細は明らかではないが、実施例に示すように、カルボキシル基の存在が架橋剤混合物(混合物溶液)の粘度を上げない触媒的な作用をするためではないかと推測される。なお、このカルボキシル基を混合物中に導入する方法として、低分子量化合物を用いると上述した通常触媒のように汚染物となる可能性があるが、本発明のように高分子量体として導入することにより、カルボキシル基が全体の架橋物に取り込まれ、触媒由来の問題が完全になくなるという利点もある。
【0027】
さらに、本発明の粘着剤組成物および粘着剤層は、上述のような作用効果を奏するため、前記混合物が粘着剤組成物であることが好ましい。また、前記粘着剤組成物が光学用であることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0029】
本発明の第一の保存方法は、イソシアネート系架橋剤と水酸基含有ポリマーとを含む混合物の保存方法であって、前記混合物中にさらにカルボキシル基含有ポリマーを含むことを特徴とする。
【0030】
本発明における水酸基含有ポリマーとは、イソシアネート基と反応する活性水素を有する水酸基を分子内に有するポリマーをいう。水酸基含有ポリマーとしては、たとえば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ゴム系なども使用することはできるが、耐候性や耐熱性、粘着性などの観点から(メタ)アクリル系ポリマー(アクリル系重合体)が好ましく用いられる。
【0031】
特に、前記水酸基含有ポリマーとして、モノマー単位として、一般式CH=C(R)COOR(ただし、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数2〜14のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル系モノマー50〜99.9重量%および水酸基含有モノマー0.1〜20重量%含有する(メタ)アクリル系ポリマー(A)であることが好ましい。
【0032】
上記一般式において、Rは水素またはメチル基である。また、上記一般式において、Rは炭素数2〜14のアルキル基であるが、炭素数3〜12が好ましく、4〜9のものがより好ましい。また、Rのアルキル基は、直鎖または分岐鎖のいずれも使用できるが、ガラス転移点が低いことから分岐鎖のものが好ましい。
【0033】
一般式CH=C(R)COORで表される(メタ)アクリル系モノマーとしては、具体的には、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0034】
本発明において、上述の一般式CH=C(R)COORで表される(メタ)アクリル系モノマーは、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は(メタ)アクリル系ポリマー(A)のモノマー全体において、50〜99.9重量%であり、60〜99.8重量%であることが好ましく、70〜99.7重量%であることがより好ましい。上記(メタ)アクリル系モノマー(A)が50重量%より少なくなると接着性に乏しくなり好ましくない。
【0035】
上記(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、モノマー単位として、水酸基含有モノマーを0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%含有するものである。上記水酸基含有モノマーの含有量が0.1重量%より小さくなると凝集力が十分に発揮できない場合などがあり、一方、上記水酸含有モノマーの含有量が20重量%を超えると接着性が低下してしまう場合がある。
【0036】
上記水酸基含有モノマーとは、モノマー構造中に1以上の水酸基を有する重合性モノマーをいう。
【0037】
上記水酸基含有モノマーとしては、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどがあげられる。なかでも、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが反応性の観点からも好ましいものとしてあげられる。
【0038】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマー(A)において用いられるその他の重合性モノマーとしては、たとえば、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステルモノマー、芳香族ビニルモノマーなどの凝集力・耐熱性向上成分や、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、ならびにビニルエーテルモノマーなどの接着力向上や架橋化基点として働く官能基を有す成分などを適宜用いることができる。これらのモノマー化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0039】
スルホン酸基含有モノマーとしては、たとえば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などがあげられる。
【0040】
リン酸基含有モノマーとしては、たとえば、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートがあげられる。
【0041】
シアノ基含有モノマーとしては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルがあげられる。
【0042】
ビニルエステルモノマーとしては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ビニルピロリドンなどがあげられる。
【0043】
芳香族ビニルモノマーとしては、たとえば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレンなどがあげられる。
【0044】
アミド基含有モノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドンなどがあげられる。
【0045】
アミノ基含有モノマーとしては、たとえば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルモルホリンなどがあげられる。
【0046】
イミド基含有モノマーとしては、たとえば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、イタコンイミドなどがあげられる。
【0047】
エポキシ基含有モノマーとしては、たとえば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどがあげられる。
【0048】
ビニルエーテルモノマーとしては、たとえば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどがあげられる。
【0049】
炭素数15以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、たとえば、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0050】
上記その他の重合性モノマーは、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は(メタ)アクリル系ポリマー(A)のモノマー全体において、0〜30重量%であることが好ましく、0〜20重量%であることがより好ましく、0〜15重量%であることがさらに好ましい。
【0051】
また、上記(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、重量平均分子量が60万以上であることが好ましく、70万〜300万であることがより好ましく、80万〜250万であることがさらに好ましい。重量平均分子量が60万より小さくなると、耐久性に乏しくなる場合がある。一方、作業性の観点より、前記重量平均分子量は300万以下が好ましい。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0052】
また、粘着性能のバランスが取りやすい理由から、上記(メタ)アクリル系ポリマー(A)のガラス転移温度(Tg)が−5℃以下、好ましくは−10℃以下であることが望ましい。ガラス転移温度が−5℃より高い場合、ポリマーが流動しにくく被着体への濡れが不十分となり、層間に発生するフクレの原因となる場合がある。なお、(メタ)アクリル系ポリマー(A)のガラス転移温度(Tg)は、用いるモノマー成分や組成比を適宜変えることにより上記範囲内に調整することができる。
【0053】
本発明におけるカルボキシル基含有ポリマーとは、カルボキシル基を分子内に有するポリマーをいう。カルボキシル基含有ポリマーとしては、たとえば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ゴム系なども使用することはできるが、上記カルボキシキ基含有ポリマーは、ブレンドする水酸基含有ポリマーとの相溶性を勘案して、主モノマー組成は同一にするのが好ましく用いられる。
【0054】
特に、前記カルボキシキ基含有ポリマーとして、モノマー単位として、一般式CH=C(R)COOR(ただし、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数2〜14のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル系モノマー50〜99.9重量%、およびカルボキシル基含有モノマー0.1〜20重量%含有する含有する(メタ)アクリル系ポリマー(B)であることが好ましい。
【0055】
上記(メタ)アクリル系ポリマー(B)は、モノマー単位として、カルボキシル基含有モノマーを0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜10重量%、より好ましくは0.5〜7重量%含有するものである。上記カルボキシル基含有モノマーの含有量が0.1重量%より小さくなると、ブレンドする量が多くなり、(メタ)アクリル系ポリマー(B)の特性が損なわれる傾向があり、一方、上記カルボキシル基含有モノマーの含有量が20重量%を超えると、保存性が低下してしまう場合がある。
【0056】
上記カルボキシル基含有モノマーとしては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などがあげられる。なかでも、特にアクリル酸、およびメタクリル酸が好ましく用いられる。
【0057】
また、上記(メタ)アクリル系ポリマー(B)における上記カルボキシル基含有モノマー以外のモノマーについては、上述の(メタ)アクリル系ポリマー(A)で示したものを同様に用いることができる。
【0058】
また、上記(メタ)アクリル系ポリマー(B)は、重量平均分子量が60万以上であることが好ましく、70万〜300万であることがより好ましく、80万〜250万であることがさらに好ましい。重量平均分子量が60万より小さくなると、耐久性に乏しくなる場合がある。一方、作業性の観点より、前記重量平均分子量は300万以下が好ましい。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0059】
また、(メタ)アクリル系ポリマー(A)と(メタ)アクリル系ポリマー(B)のブレンド比率は、(メタ)アクリル系ポリマー(B)中のカルボキシル基含有量により変化するが、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)に対し、前記(メタ)アクリル系ポリマー(B)が2〜40重量%含まれていることが好ましく、3〜35重量%であることがより好ましく、5〜30重量%であることがさらに好ましく、5〜20重量%であることがなお好ましく、5〜15重量%であることが特に好ましい。
【0060】
また、粘着性能のバランスが取りやすい理由から、上記(メタ)アクリル系ポリマー(B)のガラス転移温度(Tg)が−5℃以下、好ましくは−10℃以下であることが望ましい。ガラス転移温度が−5℃より高い場合、ポリマーが流動しにくく被着体への濡れが不十分となり、層間に発生するフクレの原因となる場合がある。なお、(メタ)アクリル系ポリマー(B)のガラス転移温度(Tg)は、用いるモノマー成分や組成比を適宜変えることにより上記範囲内に調整することができる。
【0061】
一方、本発明の第二の保存方法は、イソシアネート系架橋剤と水酸基含有ポリマーとを含む混合物の保存方法であって、前記水酸基含有ポリマーがカルボキシル基を含有することを特徴とする。
【0062】
カルボキシル基を含有する水酸基含有ポリマーとしては、イソシアネート基と反応する活性水素を有する水酸基およびカルボキシル基を分子内に有するポリマーをいう。カルボキシル基を含有する水酸基含有ポリマーとしては、たとえば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ゴム系なども使用することはできるが、耐候性や耐熱性、粘着性などの観点から(メタ)アクリル系ポリマー(アクリル系重合体)が好ましく用いられる。
【0063】
特に、前記水酸基含有ポリマーが、モノマー単位として、一般式CH=C(R)COOR(ただし、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数2〜14のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル系モノマー50〜99.8重量%、水酸基含有モノマー0.1〜20重量%、およびカルボキシル基含有モノマー0.1〜20重量%含有する含有する(メタ)アクリル系ポリマー(C)であることが好ましい。
【0064】
上記(メタ)アクリル系ポリマー(C)は、モノマー単位として、カルボキシル基含有モノマーを0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜10重量%、より好ましくは0.5〜7重量%含有するものである。上記カルボキシル基含有モノマーの含有量が0.1重量%より小さくなると、水酸基とイソシアネート架橋剤の触媒効果が認められにくくなり、一方、上記カルボキシル基含有モノマーの含有量が20重量%を超えると、保存性が低下して粘度が高くなり、生産性に支障をきたす場合がある。
【0065】
また、上記(メタ)アクリル系ポリマー(C)における上記カルボキシル基含有モノマー以外のモノマーについては、上述の(メタ)アクリル系ポリマー(A)、(B)で示したものを同様に用いることができる。
【0066】
また、上記(メタ)アクリル系ポリマー(C)は、重量平均分子量が60万以上であることが好ましく、70万〜300万であることがより好ましく、80万〜250万であることがさらに好ましい。重量平均分子量が60万より小さくなると、耐久性に乏しくなる場合がある。一方、作業性の観点より、前記重量平均分子量は300万以下が好ましい。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0067】
また、粘着性能のバランスが取りやすい理由から、上記(メタ)アクリル系ポリマー(C)のガラス転移温度(Tg)が−5℃以下、好ましくは−10℃以下であることが望ましい。ガラス転移温度が−5℃より高い場合、ポリマーが流動しにくく被着体への濡れが不十分となり、層間に発生するフクレの原因となる場合がある。なお、(メタ)アクリル系ポリマー(C)のガラス転移温度(Tg)は、用いるモノマー成分や組成比を適宜変えることにより上記範囲内に調整することができる。
【0068】
このような(メタ)アクリル系ポリマー(A)、(B)、および(C)の製造は、それぞれ溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合などの公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマー(A)、(B)、および(C)は、それぞれランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
【0069】
なお、溶液重合においては、重合溶媒として、たとえば、酢酸エチル、トルエンなどが用いられる。具体的な溶液重合例としては、反応は窒素などの不活性ガス気流下で、重合開始剤として、たとえば、モノマー全量100重量部に対して、アゾビスイソブチロニトリル0.01〜0.2重量部加え、通常、50〜70℃程度で、8〜30時間程度行われる。
【0070】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは特に限定されず適宜選択して使用することができる。
【0071】
本発明に用いられる重合開始剤としては、たとえば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬社製、VA−057)などのアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせなどの過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などをあげることができるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
前記重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー100重量部に対して、0.005〜1重量部程度であることが好ましく、0.02〜0.5重量部程度であることがより好ましい。
【0073】
また、重合開始剤として過酸化物を使用した場合には、重合反応に使用されずに残存した過酸化物を架橋反応に使用することも可能であるが、その場合は残存量を定量し、必要に応じて再添加し、所定の過酸化物量にして使用することができる。
【0074】
また、本発明においては、重合において連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤を用いることにより、(メタ)アクリル系ポリマー(A)、(B)、および(C)の分子量を適宜調整することができる。
【0075】
連鎖移動剤としては、たとえば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどがあげられる。
【0076】
これらの連鎖移動剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー100重量部に対して、0.01〜0.1重量部程度である。
【0077】
また、乳化重合する場合に用いる乳化剤としては、たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などがあげられる。これらの乳化剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0078】
さらに、反応性乳化剤として、プロペニル基、アリルエーテル基などのラジカル重合性官能基が導入された乳化剤として、具体的には、たとえば、アクアロンHS−10、HS−20、KH−10、BC−05、BC−10、BC−20(以上、いずれも第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE10N(旭電化工社製)などがある。反応性乳化剤は、重合後にポリマー鎖に取り込まれるため、耐水性がよくなり好ましい。乳化剤の使用量は、モノマー100重量部に対して、0.3〜5重量部、重合安定性や機械的安定性から0.5〜1重量部がより好ましい。
【0079】
また、本発明におけるイソシアネート系架橋剤とは、2以上のイソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤、数量体化などにより一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を1分子中に有するイソシアネート化合物をいう。
【0080】
本発明のイソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートなどがあげられる。なかでも特に、脂肪族イソシアネートや脂環族イソシアネートが、架橋物が透明になることから好ましく用いられる。
【0081】
より具体的には、たとえば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHX)などのイソシアネート付加物、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合などで多官能化したポリイソシアネートなどをあげることができる。
【0082】
上記イソシアネート系架橋剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記ポリマー(前記水酸基含有ポリマーおよびカルボキシル基含有ポリマーの両者、たとえば、(メタ)アクリル系ポリマー(A)と(メタ)アクリル系ポリマー(B)の両者となる。また、前記水酸基含有ポリマーがカルボキシル基含有ポリマーでもある場合は前記水酸基含有ポリマー、たとえば、(メタ)アクリル系ポリマー(C)となる)100重量部に対し、前記イソシアネート系架橋剤0.02〜2重量部含有することが好ましく、0.04〜1.5重量部含有することがより好ましく、0.05〜1重量部含有することがさらに好ましい。0.02重量部未満では、凝集力が不足する場合があり、一方、2重量部を越えると、架橋形成が過多となり、接着性に劣る場合がある。
【0083】
上記した水酸基含有ポリマーとイソシアネート系架橋剤との混合物(混合物溶液であってもよい)を塗布乾燥して、水酸基とイソシアネート基を反応させて架橋反応を生じさせるが、従来法では、この反応を促進させるための触媒としては、ジブチル錫ジラウレートなどの錫化合物や、DABCOなどのアミン系化合物が使用され、この場合には塗布乾燥で反応を完結できる。しかし、このような触媒を混合物溶液に加えると、当然ながら溶液状態でも架橋反応が進行して溶液粘度があがるため、塗工作業は配合混合後短時間で処理する必要があったが、上記混合物中にカルボキシル基を特定量存在させる本発明の保存方法を用いることによりかかる問題が解消されるものである。
【0084】
混合物溶液とする場合の溶媒としては、たとえば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロへキサノン、n−へキサン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、水などがあげられる。これらの溶媒は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0085】
また、本発明においては、上記混合物が粘着剤組成物であるものとすることができる。特に上記混合物のベースポリマーを粘着性能を発揮しうる(メタ)アクリル系ポリマーとすることにより、アクリル系粘着剤組成物の保存方法とすることができる。
【0086】
さらに、本発明においては、上記混合物中にさらに過酸化物を含有することができる。過酸化物を用いることにより、耐熱性などを向上させたり、さらに架橋度を上げることが可能となりうる。さらに、本発明においては、このような過酸化物を併用しても保存性は全く影受けず、非常に良好である。
【0087】
本発明の過酸化物としては、加熱または光照射によりラジカル活性種を発生して上記混合物(たとえば粘着剤組成物)のベースポリマーの架橋を進行させるものであれば適宜使用可能であるが、作業性や安定性を勘案して、1分間半減期温度が80℃〜160℃である過酸化物を使用することが好ましく、90℃〜140℃である過酸化物を使用することがより好ましい。1分間半減期温度が低すぎると、塗布乾燥する前の保存時に反応が進行し、粘度が高くなり塗布不能となる場合があり、一方、1分間半減期温度が高すぎると、架橋反応時の温度が高くなるため副反応が起こり、また未反応の過酸化物が多く残存して経時での架橋が進行する場合があり、好ましくない。
【0088】
本発明に用いられる過酸化物としては、たとえば、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:90.6℃)、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.4℃)、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度:103.5℃)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:109.1℃)、t−ブチルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジ−n−オクタノイルパーオキシド(1分間半減期温度:117.4℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(1分間半減期温度:124.3℃)、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド(1分間半減期温度:128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)、t−ブチルパーオキシイソブチレート(1分間半減期温度:136.1℃)、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度:149.2℃)などがあげられる。なかでも特に架橋反応効率が優れることから、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)などが好ましく用いられる。
【0089】
なお、過酸化物の半減期とは、過酸化物の分解速度を表す指標であり、過酸化物の残存量が半分になるまでの時間をいう。任意の時間で半減期を得るための分解温度や、任意の温度での半減期時間に関しては、メーカーカタログなどに記載されており、たとえば、日本油脂株式会社の「有機過酸化物カタログ第9版(2003年5月)」などに記載されている。
【0090】
前記過酸化物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記ポリマー(前記水酸基含有ポリマーおよびカルボキシル基含有ポリマーの両者、たとえば、(メタ)アクリル系ポリマー(A)と(メタ)アクリル系ポリマー(B)の両者となる。また、前記水酸基含有ポリマーがカルボキシル基含有ポリマーでもある場合は前記水酸基含有ポリマー、たとえば、(メタ)アクリル系ポリマー(C)となる)100重量部に対し、前記過酸化物0.02〜2重量部含有することが好ましく、0.04〜1.5重量部含有することがより好ましく、0.05〜1重量部含有することがさらに好ましい。0.02重量部未満では、凝集力が不足する場合があり、一方、2重量部を越えると、架橋形成が過多となり、接着性に劣る場合がある。
【0091】
なお、反応処理後の残存した過酸化物分解量の測定方法としては、たとえば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により測定することができる。
【0092】
より具体的には、たとえば、反応処理後の粘着剤組成物を約0.2gずつ取り出し、酢酸エチル10mlに浸漬し、振とう機で25℃下、120rpmで3時間振とう抽出した後、室温で3日間静置する。次いで、アセトニトリル10ml加えて、25℃下、120rpmで30分振とうし、メンブランフィルター(0.45μm)によりろ過して得られた抽出液約10μlをHPLCに注入して分析し、反応処理後の過酸化物量とすることができる。
【0093】
本発明においては、粘着剤組成物が架橋された粘着剤層のゲル分率が、50〜95重量%となるようにイソシアネート系架橋剤(および過酸化物)の添加量を調整することが好ましく、55〜90重量%となるように上記架橋剤の添加量を調整することがより好ましく、60〜85重量%となるように上記架橋剤の添加量を調整することがさらに好ましい。ゲル分率が50重量%より小さくなると、凝集力が低下するため耐久性に劣る場合があり、95重量%を超えると、接着性に劣る場合がある。
【0094】
本発明における粘着剤組成物のゲル分率とは、粘着剤層の乾燥重量W(g)を酢酸エチルに浸漬した後、前記粘着剤層の不溶分を酢酸エチル中から取り出し、乾燥後の重量W(g)を測定し、(W/W)×100として計算される値をゲル分率(重量%)とした。
【0095】
より具体的には、たとえば、架橋後の粘着剤層をW(g)(約500mg)採取した。次いで、前記粘着剤層を酢酸エチル中に約23℃下で7日間浸漬し、その後、前記粘着剤層を取り出し、130℃で2時間乾燥し、得られた粘着剤層のW(g)を測定した。このWおよびWを上記の式に当てはめることにより、ゲル分率(重量%)を求めた。
【0096】
所定のゲル分率に調整するためには、イソシアネート系架橋剤(および過酸化物)の添加量を調整することとともに、架橋処理温度や架橋処理時間の影響を十分考慮する必要がある。
【0097】
架橋処理温度や架橋処理時間の調整は、たとえば、粘着剤組成物に含まれる過酸化物の分解量は50重量%以上になるように設定することが好ましく、60重量%以上になるように設定することがより好ましく、70重量%以上になるように設定することがさらに好ましい。過酸化物の分解量が50重量%より少ないと、粘着剤組成物中に残存する過酸化物の量が多くなり、架橋処理後も経時での架橋反応が起こる場合などがあり、好ましくない。
【0098】
より具体的には、たとえば、架橋処理温度が1分間半減期温度では、1分間で過酸化物の分解量は50重量%であり、2分間で過酸化物の分解量は75重量%であり、1分間以上の架橋処理時間が必要となる。また、たとえば、架橋処理温度における過酸化物の半減期(半減時間)が30秒であれば、30秒以上の架橋処理時間が必要となり、また、たとえば、架橋処理温度における過酸化物の半減期(半減時間)が5分であれば、5分間以上の架橋処理時間が必要となる。
【0099】
このように、使用する過酸化物によって架橋処理温度や架橋処理時間は、過酸化物が一次比例すると仮定して半減期(半減時間)から理論計算により算出することが可能であり、添加量を適宜調節することができる。一方、より高温にするほど、副反応が生じる可能性が高くなることから、架橋処理温度は170℃以下であることが好ましい。
【0100】
また、かかる架橋処理は、粘着剤層の乾燥工程時の温度で行ってもよいし、乾燥工程後に別途架橋処理工程を設けて行ってもよい。
【0101】
また、架橋処理時間に関しては、生産性や作業性を考慮して設定することができるが、通常0.2〜20分間程度であり、0.5〜10分間程度であることが好ましい。
【0102】
また、上記混合物、特に粘着剤組成物には、接着力、耐久力を上げる目的でシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤としては、公知のものを特に制限なく適宜用いることができる。
【0103】
具体的には、たとえば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミンなどのアミノ基含有シランカップリング剤、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのインシアネート基含有シランカップリング剤などがあげられる。このようなシランカップリング剤を使用することは、耐久性の向上に好ましい。
【0104】
前記シランカップリング剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記ポリマー(前記水酸基含有ポリマーおよびカルボキシル基含有ポリマーの両者、たとえば、(メタ)アクリル系ポリマー(A)と(メタ)アクリル系ポリマー(B)の両者となる。また、前記水酸基含有ポリマーがカルボキシル基含有ポリマーでもある場合は前記水酸基含有ポリマー、たとえば、(メタ)アクリル系ポリマー(C)となる)100重量部に対し、前記シランカップリング剤0.01〜1重量部含有することが好ましく、0.02〜0.6重量部含有することがより好ましく、0.1〜0.5重量部含有することがさらに好ましい。0.01重量部未満では、耐久性の向上効果に劣る場合があり、一方、1重量部を越えると、液晶セル等の光学部材への接着力が増大しすぎて再剥離性に劣る場合がある。
【0105】
このようにして得られる混合物は粘度の変化が少なく安定に貯蔵できる。特にイソシアネート系架橋剤の添加直後の粘度(a)と24時間後の粘度(b)の比b/aが1.00〜1.05であることが好ましく、1.00〜1.03であることがより好ましい。
【0106】
さらに上記混合物、特に粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。また、制御できる範囲内で、還元剤を加えてのレドックス系を採用してもよい。
【0107】
本発明に用いられる混合物および粘着剤組成物は、上記のような構成を有するものである。
【0108】
一方、このような粘着剤組成物を、剥離処理した支持体の塗布乾燥、架橋処理して粘着剤層として光学部材に転写したり、光学部材に直接粘着剤組成物を塗布乾燥、架橋処理されて、粘着剤層付き光学部材とされる。つまり、光学部材の片面もしくは両面に粘着剤層形成処理されて粘着剤層付き光学部材となる。このような塗布の方法としては、リバースコーターやグラビアコーターなどのロールコーター、カーテンコーターやリップコーター、ダイコーターなど任意の塗布方法で処理される。表面に粘着層が露出する場合は実用に供されるまで剥離処理したシートで保護してもよい。
【0109】
光学部材としては液晶表示装置等の形成に用いられるものが適宜使用され、その種類は特に制限されない。たとえば、光学部材としては偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているものなどがあげられる。偏光板は偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。また、前記画像表示装置としては、液晶表示装置、有機EL表示装置、PDPなどがあげられる。
【0110】
本発明は、水酸基含有ポリマーとイソシアネート系架橋剤との混合物をカルボン酸含有ポリマーを併用することで、長時間安定に保存でき、さらにこの溶液を塗布乾燥し、加熱反応する際にも効果的に架橋反応が促進させることができる溶液の保存方法を提供するものである。さらには、そのカルボン酸基の導入方法の最適範囲などを提示して、塗工乾燥直後からエージングすることなく架橋度が安定した粘着剤を提供し、その結果、光学部材などに粘着剤を処理した場合には、そのまま打抜き加工などの加工処理ができ、加熱試験・加湿試験にて発抱や浮き、剥がれなどの不良が生じない、耐久性に優れる光学用粘着剤を提供できるものである。
【実施例】
【0111】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定・評価を行った。
【0112】
<粘度の測定>
各実施例・比較例で作製した粘着剤溶液の粘度の測定は、東機産業社製、TV−20型粘度計(固形分濃度13重量%の溶液、23℃)を用いて20rpmでの粘度値を測定することにより行った。
【0113】
<ゲル分率の測定>
各実施例・比較例で作製した粘着剤層をWg取り出し、酢酸エチルに室温(約25℃)下で1週間浸漬した。その後、浸漬処理した粘着剤層(不溶分)を酢酸エチル中から取り出し、130℃で2時間乾燥後の重量Wgを測定し、(W/W)×100として計算される値をゲル分率(重量%)とした。
【0114】
<分子量の測定>
得られた(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
・分析装置:東ソー社製、HLC−8120GPC
・カラム:東ソー社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ;各7.8mmφ×30cm(計90cm)
・カラム温度:40℃
・流量:0.8ml/min
・注入量:100μl
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
なお、分子量はポリスチレン換算により算出した。
【0115】
<過酸化物分解量の測定>
熱分解処理後の過酸化物分解量(mol%)は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により測定した。
【0116】
具体的には、分解処理前後の粘着剤組成物をそれぞれ約0.2gずつ取り出し、酢酸エチル10mlに浸漬し、振とう機で25℃下、120rpmで3時間振とう抽出した後、室温で3日間静置した。次いで、アセトニトリル10ml加えて、25℃下、120rpmで30分振とうし、メンブランフィルター(0.45μm)によりろ過して得られた抽出液約10μlをHPLCに注入して分析し、分解処理前後の過酸化物量の減少を過酸化物分解量とした。
・装置:東ソー社製、HPL CCPM/UV8000
・カラム:MACHEREY−NAGEL社製、NUCLEOSIL 7C18(4.6mmφ×250mm)
・カラム流量:1ml/min
・カラム圧力:41kg/cm
・カラム温度:40℃
・注入量:10μl
・溶離液:水/アセトニトリル=30/70
・注入試料濃度:0.01重量%
・検出器:UV検出器(230nm)。
【0117】
<接着力の測定>
実施例、比較例で得られた光学部材(幅25mm)を、無アルカリガラスに2kgローラーでロール1往復して貼着した。その後、50℃、0.5Mpaのオートクレーブにて30分間処理した後、23℃×50%RH雰囲気下において3時間放置後、剥離角度90°、剥離速度300mm/minで剥離接着力を測定した。
【0118】
また、上記オートクレーブ処理の後、70℃で6時間保存し、23℃×50%RH雰囲気下において3時間放置後、剥離角度90°、剥離速度300mm/minで剥離接着力を測定し、その値を加熱後の接着力とした。
【0119】
<耐久性の評価>
作製した12インチサイズの光学部材を無アルカリガラス(厚さ:0.5mm)に貼り付けた後、50℃、0.5Mpaのオートクレーブにて30分間、次いで80℃の雰囲気下で100時間保存してから、室温(約25℃)に戻し、評価用サンプルを得た。耐熱試験の評価は目視でおこない、評価基準は以下のとおりである。
・光学部材の浮きや剥がれが生じなかった場合:○
・光学部材の浮きや剥がれがかなり生じた場合:×。
【0120】
<加工性の評価>
各実施例・比較例で作製した粘着剤付光学部材を、エージング処理を行わずにプレス機を用いて打ち抜き加工処理を行い、上記加工処理の際の切断刃の状態を目視にて観察評価した。評価基準は以下のとおりである。
・粘着剤層の付着・破損が認められなかった場合:○
・粘着剤層の付着・破損が認められた場合:×。
【0121】
〔実施例1〕
ブチルアクリレート100重量部、アクリル酸1.0重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.5重量部、2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部、および酢酸エチル200部を、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに投入し、充分に窒素置換した後、窒素気流下で境搾しながら55℃で15時間重合反応を行い、重量平均分子量195万の高分子量共重合体(a)を得た。
【0122】
上記高分子量体(a)溶液の固形分100重量部に対して、トリメチロールプロパンのへキサメチレンジイソシアネート付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤(三井化学ポリウレタン社製、タケネートD160N)0.1重量部を配合した固形分濃度が13%の溶液の粘度を、混合後すぐ、5時間後、24時間後測定した。
【0123】
また、粘度の測定時に、シリコーン剥離処理した38μmのPETに、粘着剤の乾燥後の厚さが20μmになるように塗布し、150℃で3分乾燥・架橋を行い、ゲル分率を測定した。
【0124】
〔実施例2〕
ブチルアクリレート100重量部、アクリル酸5重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート1重量部、および2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部として、実施例1と同様に重合反応処理を行い、重量平均分子量205万の高分子量共重合体(b)を得た。
【0125】
また、実施例1と同様にポリイソシアネート系架橋剤を配合して、粘度の測定と、塗布・乾燥・架橋を行い、ゲル分率を測定した。
【0126】
〔実施例3〕
ブチルアクリレート100重量部、アクリル酸0.3重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート2重量部、および2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部として、実施例1と同様に重合反応処理を行い、重量平均分子量180万の高分子量共重合体(c)を得た。
【0127】
また、実施例1と同様にポリイソシアネート系架橋剤を配合して、粘度の測定と、塗布・乾燥・架橋を行い、ゲル分率を測定した。
【0128】
〔比較例1〕
ブチルアクリレート100重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート1重量部、および2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部として、実施例1と同様に重合反応処理を行い、重量平均分子量170万のカルボキシル基がない高分子量共重合体(d)を得た。
【0129】
上記高分子量体(d)溶液の固形分100重量部に対して、架橋触媒であるジブチル錫ジラウレート0.1重量部、トリメチロールプロパンのへキサメチレンジイソシアネート付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤(三井化学ポリウレタン社製、タケネートD160N)0.1重量部を配合した固形分濃度が13%の溶液の粘度を、混合後すぐ、5時間後、24時間後測定した。
【0130】
また、粘度の測定時に、シリコーン剥離処理した38μmのPETに、粘着剤の乾燥後の厚さが20μmになるように塗布し、150℃で3分乾燥・架橋を行い、ゲル分率を測定した。
【0131】
〔比較例2〕
ブチルアクリレート100重量部、アクリル酸3重量部、および2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部として、実施例1と同様に重合反応処理を行い、重量平均分子量195万の水酸基がない高分子量共重合体(e)を得た。
【0132】
また、比較例1と同様にポリイソシアネート系架橋剤と触媒を配合して、粘度の測定と、塗布・乾燥.架橋を行い、ゲル分率を測定した。
【0133】
〔実施例4〕
上記の高分子量体(d)と高分子量体(e)が固形分重量比で80:20になるように混合して、この混合物100重量部に対して、実施例1と同様にポリイソシアネート系架橋剤を配合して、粘度の測定と、塗布・乾燥・架橋を行い、ゲル分率を測定した。
【0134】
上記方法にしたがい、粘度およびゲル分率の測定・評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0135】
【表1】

【0136】
上記表1の結果より、水酸基含有ポリマーとイソシアネート系架橋剤の混合物は、比較例1にあるような反応触媒を添加すると、溶液の粘度はすぐに大きくなり塗工性が低下することが分かる。一方、カルボキシル基を導入した実施例においては、24時間放置後でも粘度変化が少なく、塗工性は良好である。また、架橋度の目安であるゲル分率も安定していることも認められる(比較例はゲル分率の低下や反応不足が見られる)。
【0137】
〔実施例5〕
実施例1の高分子量体(a)溶液の固形分100重量部に対して、トリメチロールプロパンのへキサメチレンジイソシアネート付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤(三井化学ポリウレタン社製、タケネートD160N)0.1重量部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.05重量部を配合した粘着剤組成物を調製した。
【0138】
さらに24時間後に、上記粘着剤組成物を、シリコーン剥離処理した38μmのPETに、粘着剤の乾燥後の厚さが20μmになるように塗布し、150℃で3分乾燥・架橋を行った。ヨウ素染色し延伸したポリビニルアルコールのフィルムの両側にトリアセチルセルロースフィルムを貼り合せた偏光フィルムに転写し、実施例5の粘着剤付光学フィルムとした。
【0139】
〔実施例6〕
実施例2の高分子量体(b)溶液を用いて、実施例5と同様の処理を行い、実施例6の粘着剤付光学フィルムとした。
【0140】
〔実施例7〕
実施例3の高分子量体(c)溶液を用いて、実施例5と同様の処理を行い、実施例7の粘着剤光学フィルムとした。
【0141】
〔実施例8〕
実施例4の高分子量体(d)および高分子量体(e)の混合物溶液を用いて、実施例5と同様の処理を行い、実施例8の粘着剤付光学フィルムとした。
【0142】
〔比較例3〕
比較例1の高分子量体(d)溶液を用いて、実施例5と同様の処理を行ったが、塗布フィルムが均一ではなく、粘着剤付光学フィルムとしての評価はできなかった。
【0143】
〔比較例4〕
比較例2の高分子量体(e)溶液を用いて、実施例5と同様の処理を行い、比較例4の粘剤付光学フィルムとした。
【0144】
〔実施例9〕
実施例1の高分子量体(a)溶液の固形分100重量部に対して、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期:130℃)0.3重量部、トリメチロールプロパンのへキサメチレンジイソシアネート付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤0.06重量部(三井化学ポリウレタン社製、タケネートD160N)、ならびに3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.05重量部を配合した粘着剤組成物を調製した。
【0145】
さらに24時間後に、上記粘着剤組成物を、シリコーン剥離処理した38μmのPETに、粘着剤の乾燥後の厚さが20μmになるように塗布し、150℃で3分乾燥・架橋を行い、ヨウ素染色し延伸したポリビニルアルコールのフィルムの両側にトリアセチルセルロースフィルムを貼り合せた偏光フィルムに転写し、実施例9の粘着剤付光学フィルムとした。なお、このときの粘着剤のゲル分は79重量%、乾燥時の過酸化物の分解率は88mol%であった。
【0146】
〔実施例10〕
実施例2の高分子量体(b)溶液を用いて、実施例9と同様にして、実施例10の粘着剤付光フィルムとした。なお、このときの粘着剤のゲル分は85重量%で、乾燥時の過酸化物の分率は88mol%であった。
【0147】
〔実施例11〕
実施例3の高分子量(c)体溶液の固形分100重量部に対して、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期:130℃)0.25重量部、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤0.06重量部(日本ポリウレタン社製、コロネートL)、ならびに3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.08重量部を配合した粘着剤組成物を調製した。
【0148】
上記粘着剤組成物を、シリコーン剥離処理した38μmのPETに、粘着剤の乾燥後の厚さが20μmになるように塗布し、150℃で3分乾燥・架橋を行い、ヨウ素染色し延伸したポリビニルアルコールのフィルムの両側にトリアセチルセルロースフィルムを貼り合せた偏光フィルムに転写し、実施例11の粘着剤付光学フィルムとした。なお、このときの粘着剤のゲル分は79重量%で、乾燥時の過酸化物の分解率は88mol%であった。
【0149】
〔実施例12〕
実施例4の高分子量体(d)および高分子量体(e)の混合物溶液の固形分100重量部に対して、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期:130℃)0.30重量部、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、コロネートL)0.08重量部、ならびに3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.08重量部を配合した粘着剤組成物を調製した。
【0150】
上記粘着剤組成物を、シリコーン剥離処理した38μmのPETに、粘着剤の乾燥後の厚さが20μmになるように塗布し、150℃で3分乾燥・架橋を行い、ヨウ素染色し延伸したポリビニルアルコールのフィルムの両側にトリアセチルセルロースフィルムを貼り合せた偏光フィルムに転写し、実施例12の粘着剤付光学フィルムとした。なお、このときの粘着剤のゲル分は76重量%で、乾燥時の過酸化物の分解率は88mol%であった。
【0151】
上記方法にしたがい、作製した粘着剤付光学フィルムの接着力、耐久性、および加工性の測定・評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0152】
【表2】

【0153】
上記表2の結果より、本発明の保存方法を用いて作製された粘着剤付光学フィルムを用いた場合(実施例5〜12)、いずれの実施例においても、加熱・加湿処理実験により接着力が大きく増加することや剥がれてしまうことがなく、加工性も良好であり、耐久性および再剥離性に優れることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート系架橋剤と水酸基含有ポリマーとを含む混合物の保存方法であって、前記混合物中にさらにカルボキシル基含有ポリマーを含むことを特徴とする前記混合物の保存方法。
【請求項2】
前記水酸基含有ポリマーが、モノマー単位として、一般式CH=C(R)COOR(ただし、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数2〜14のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル系モノマー50〜99.9重量%および水酸基含有モノマー0.1〜20重量%含有する(メタ)アクリル系ポリマー(A)であり、かつ、
前記カルボキシル基含有ポリマーが、モノマー単位として、一般式CH=C(R)COOR(ただし、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数2〜14のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル系モノマー50〜99.9重量%、およびカルボキシル基含有モノマー0.1〜20重量%含有する含有する(メタ)アクリル系ポリマー(B)である請求項1に記載の混合物の保存方法。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)に対し、前記(メタ)アクリル系ポリマー(B)が2〜40重量%含まれている請求項1に記載の混合物の保存方法。
【請求項4】
前記水酸基含有ポリマーおよびカルボキシル基含有ポリマーの合計量100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤0.02〜0.5重量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の混合物の保存方法。
【請求項5】
前記水酸基含有ポリマーおよびカルボキシル基含有ポリマーの合計量100重量部に対し、過酸化物0.02〜2重量部含有することを特徴とする請求項4に記載の混合物の保存方法。
【請求項6】
イソシアネート系架橋剤と水酸基含有ポリマーとを含む混合物の保存方法であって、前記水酸基含有ポリマーがカルボキシル基を含有することを特徴とする前記混合物の保存方法。
【請求項7】
前記水酸基含有ポリマーが、モノマー単位として、一般式CH=C(R)COOR(ただし、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数2〜14のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル系モノマー50〜99.8重量%、水酸基含有モノマー0.1〜20重量%、およびカルボキシル基含有モノマー0.1〜20重量%含有する含有する(メタ)アクリル系ポリマー(C)である請求項6に記載の混合物の保存方法。
【請求項8】
前記水酸基含有ポリマー100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤0.02〜0.5重量部含有することを特徴とする請求項6または7に記載の混合物の保存方法。
【請求項9】
前記水酸基含有ポリマー100重量部に対し、過酸化物0.02〜2重量部含有することを特徴とする請求項8に記載の混合物の保存方法。
【請求項10】
前記混合物が粘着剤組成物である請求項1〜9のいずれかに記載の混合物の保存方法。
【請求項11】
前記粘着剤組成物が光学用である請求項10に記載の混合物の保存方法。

【公開番号】特開2008−156514(P2008−156514A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347990(P2006−347990)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】