説明

混練機

【課題】混合槽と加圧蓋の隙間からの噴出するフィラーを、加圧蓋の上面に堆積することを防止することのできる混練機を提供すること。
【解決手段】混練材料を収容する混合槽10と、該混合槽10に収容された混練材料を混練する並列した2本のロータ2、2と、該混合槽10の上部開口部に摺動可能に挿入される加圧蓋3とを備え、該加圧蓋3に、加圧蓋3と混合槽側壁間13をシールする加圧蓋パッキン31を配設した混練機において、加圧蓋3の上部に、加圧蓋パッキン31周辺の隙間から吹き出したフィラーの堆積を防止するフィラー堆積防止機構30を配備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練機に関し、特に、混合槽と加圧蓋の隙間から噴出するフィラーの堆積を防止することにより、混練工程中の清掃工程を軽減することができる混練機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、混練機は、図5に示すように混合槽10内に2本のロータ2、2が配設され、互いに内側に回転するようにし、かつ混練材料が常に混合槽10の内側(中央側)に移送されるようにロータにねじれを加えたロータ翼22(ねじれ翼)をロータ軸21に形成し、さらにゴムやプラスチック等の混練材料をこの2本のロータ2、2に噛み込ませるために、混合槽10の上部に加圧蓋8が配設されている。加圧蓋8には、エアシリンダ等(図示省略)のピストンロッド5やガイドロッド6を配設し、上下動可能に支持することにより、混合槽10の内部が混練材料に適した形状及び内容積となるように調整し、一定の加圧力が付加された状態のもとで、加圧蓋8を上下動できるようにして、混合槽10の内断面が混練材料に適した形状及び内容積になるように、また、混練材料のロータ2間への噛み込みを効果的になるように構成している。
【0003】
ところで、この種の混練機を用いて混練材料を混練する際、ロータ2、2の回転により混練材料内の空隙(ボイド)の体積と形が様々に変化し、この変化による材料挙動の反力により加圧蓋8に上下動(ダンシング)が起こり、混合槽10と加圧蓋8の隙間には、加圧蓋パッキン81を配設しているものの、ダンジングをスムーズに起こすために一定の間隙が設けられており、該間隙から空気と一緒に混練材料に含まれるフィラーが噴出することがあった。
【0004】
そして、このようにして噴出したフィラーが周囲に飛散しないように、また、噴出したフィラーの清掃を簡易に行えるように、フィラーが噴出する混合槽10の箇所にダストカバー7を取り付け、噴出したフィラーによって混合槽10上部の周囲や、加圧蓋8の上面82や傾斜面83が汚れると、ダストカバーを開放して清掃を行うようにしていた。
【0005】
しかしながら、フィラーが加圧蓋8の上部に噴出すると、周囲が汚れるだけでなく、加圧蓋8の上面82、傾斜面83及び混合槽10上部の開口縁周部等に堆積したフィラーの清掃工程を混練工程中に設定する必要があり、設備の稼働を停止することから生産性が著しく低下するという問題がある。
また、噴出したフィラーの分だけ配合比率の変化が生じ、バッチ間で品質のバラツキが出たり、加圧蓋の上部に噴出し、加圧蓋上面82、傾斜面83及び混合槽上部開口縁周部等に堆積したフィラーが、混練完了後の材料排出時に材料内に落下、混入して、これが分散不良の原因となったりする問題もあった(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、本出願人が先に特願2004−285748号として提案した混練機は、図6に示すように、加圧蓋8に、該加圧蓋8と混合槽の上方側壁13間をシールする加圧蓋パッキンを上下に複数段、例えば図に示すように、下段加圧蓋パッキン84と上段加圧蓋パッキン85を配設し、両加圧蓋パッキン84、85間に、空気溜まり87を形成し、この空気溜まり87によって噴出した粉体の勢いを抑え、上段加圧蓋パッキン85から外部への噴出を有効に防止するようにしたものである。
【0007】
しかし、この混練機においては、下段のパッキンから噴出した粉体が、空気溜まり87を形成する加圧蓋上部の表面(斜面部分86、周面86a及び上段パッキンの下面85a)に付着する場合があった。
【0008】
【特許文献1】特公平7−61438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の混練機が有する問題点に鑑み、混合槽と加圧蓋の隙間からの噴出するフィラーを、加圧蓋の上面に堆積することを防止することのできる混練機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の混練機は、混練材料を収容する混合槽と、該混合槽に収容された混練材料を混練する並列した2本のロータと、該混合槽の上部開口部に摺動可能に挿入される加圧蓋とを備え、該加圧蓋には、加圧蓋と混合槽の上方側壁間をシールする加圧蓋パッキンを配設した混練機において、前記加圧蓋の上部に、加圧蓋パッキン周辺の隙間から吹き出したフィラーの堆積を防止するフィラー堆積防止機構を配備したことを特徴とする。
【0011】
この場合において、堆積防止機構を、加圧蓋上部に配設した骨組と、該骨組に張設した弾性部材と、該弾性部材で覆われた空間内に対してガスを給排気するガス給排気手段とから構成することができる。
【0012】
また、堆積防止機構を、加圧蓋上部に傾斜して配設したカバー部材と、該カバー部材に配設した振動付与手段とから構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の混練機によれば、加圧蓋の上部に、加圧蓋パッキンから吹き出したフィラーの堆積を防止するフィラー堆積防止機構を配備するようにしているので、加圧蓋パッキンから吹き出したフィラーが、加圧蓋の上部に堆積することを防止し、清掃行程の大幅な削減を図ることができる。
【0014】
また、堆積防止機構を、加圧蓋上部に配設した骨組と、該骨組に張設した弾性部材と、該弾性部材で覆われた空間内に対してガスを給排気するガス給排気手段とから構成することにより、加圧蓋上部に配設した骨組に張設した弾性部材が、給気ガスによって膨張し、その後、内部のガスを排気することによって収縮するから、加圧蓋上部として形成される弾性部材に堆積したフィラーを、有効に払い落とすことができる。
【0015】
また、堆積防止機構を、加圧蓋上部に傾斜して配設したカバー部材と、該カバー部材に配設した振動付与手段とから構成することにより、振動付与手段の振動によって、加圧蓋上部として形成されるカバー部材が振動し、堆積した、あるいは堆積しようとするフィラーを振動によって下方に落とすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の混練機の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1〜図2に、本発明の混練機の一実施例を示す。
この混練機1は、混練材料を収容する断面が繭形をした混合槽10と、該混合槽10に収容された混練材料を混練する並列した2本のロータ2と、該混合槽10の上部開口部に摺動可能に挿入される加圧蓋3とを備える。
【0018】
混合槽10の対向する側壁11間には、ロータ翼22の回転軌跡の外周縁に添うように繭形に成形した周壁12を構成しており、これにより、混合槽10の断面形状を繭形にし、側壁11と周壁12とでチャンバーを形成している。
周壁12は、詳しくは、2本の並列するロータ2のロータ翼22の外周面のうち、その底部となる部分と側部となる部分とを囲むように繭形に形成されているが、周壁12の上部は解放されていて、この解放された開口部に加圧蓋3が配設されている。
【0019】
ロータ2は、混合槽10の側壁11を貫通させて2本のロータ軸21、21を平行に配設し、かつ、それぞれ内側に回転するように支持するとともに、この各ロータ軸21に混練材料を混練するために、ロータ軸21の一端から他端側に向けてロータ軸21の略中央までの間に亘って、ねじれを加えたロータ翼22を一体に形成している。
そして、両ロータ2は、ロータ翼22が回転方向に互いに90°あるいは任意の角度に位相をずらせた状態で、駆動装置(図示省略)により両ロータ2が同速度で、あるいは異なる速度で、回転するようになっている。
【0020】
加圧蓋3には、側壁11のロータ2よりも上方部分と周壁12の上方側壁13との隙間を可及的に小とするように、加圧蓋パッキン31を4面に配備し、従来例と同様、エアシリンダ等(図示省略)のピストンロッド5と、加圧蓋3が上下動する際にねじれが生じないように保持するためのガイドロッド6を配設する。
そして、加圧蓋パッキン31の上方に位置する加圧蓋上部3aには、堆積防止機構30を配備する。
堆積防止機構30は、加圧蓋上部3aに配設した骨組32と、該骨組32に張設した弾性部材33と、前記骨組32及び弾性部材33で囲まれた空間内に対してガスを給排気するガス給排気手段4とからなる。骨組32は、加圧蓋上部3aに、チャンネル材などを利用して、加圧蓋上部3aが山型など傾斜するように配設する。
そして、骨組32にそって、加圧蓋上部3aの4面すべてにゴム板材、汎布などからなる弾性部材33を張設するものである。
【0021】
ガス給排気手段4に使用されるガスは、その組成を、特に限定するものではなく、大気中の空気を利用しても構わない。
ガス給排気手段4によるガスは、中空のガイドロッド6内を通り、弾性部材33で囲まれた空間内部にガスを給気する(吹き込む)ことによって、図2(b)に示すように弾性部材33を膨張させ、ガスを排気する(吸い出す)ことによって、図2(c)に示すように弾性部材33を収縮する。
【0022】
そして、ガス給排気手段4で給排気するガスの給気速度及び排気速度並びに給気量及び排気量を変化させることによって、弾性部材33の振動数及び振幅を調整することができる。
これによって、加圧蓋パッキン31周辺の隙間(混合槽10と加圧蓋3の隙間)から吹き出し、加圧蓋上部3aに堆積するフィラーの量に応じた堆積防止の対応をすることができ、特に、比較的粘性の高いフィラーの堆積防止に適するものである。
【実施例2】
【0023】
図3に、本発明の混練機1の別の実施例を示す。
この混練機1は、堆積防止機構30の構成以外、実施例1と同様であり、同様の構造については同一の符号、一連の符号を付し説明を省略する。
【0024】
この混練機1の堆積防止機構30Aは、加圧蓋上部3aに傾斜して配設したカバー部材35と、該カバー部材25に配設した振動付与手段36とからなる。
カバー部材35は、その配設方法は、特に限定するものではないが、例えば実施例1と同様に、加圧蓋上部3aに、チャンネル材などを利用して、山型など傾斜するように配設した骨組32に、ボルトやビス等の固着手段で固定することが好ましい。
【0025】
そして、カバー部材35の内面には、カバー部材35を振動させる振動付与手段36を適宜数だけ配設する。振動付与手段36は、実施例1と同様、ガス給排気手段4から圧力空気の供給を受け振動するように構成するほか、電気的に振動するものや、加圧蓋自体の上下動作用を受けて、振動するように錘を付加したり、カバー部材35の厚みを、中間部分が厚く、骨組近傍を薄くして加圧蓋自体の上下動作用を利用して振動させるものであっても構わない。
【0026】
これによって、加圧蓋パッキン31周辺の隙間(混合槽10と加圧蓋3の隙間)から吹き出し、加圧蓋上部3aに堆積するフィラーを振るい落とすことができ、特に、比較的粘性の低いフィラーの堆積防止に適するものである。
【実施例3】
【0027】
図4に、本発明の混練機の別の実施例を示す。
この混練機は、本出願人が先に特願2004−285748号として提案した混練機に実施例1〜2の堆積防止機構30を適用したもので、空気溜まり87を形成する加圧蓋上部(斜面部分86、周面86a及び上段パッキンの下面85a)に付着するフィラーに対して、下段加圧蓋パッキン84と上段加圧蓋パッキン85間と、上段加圧蓋パッキン85の下面に形成した骨組32を覆うように弾性部材33を張設し、実施例1と同様に、ガス給排気手段4によって弾性部材33を膨張(図に示す一点鎖線)、収縮させ、付着したフィラーの付着や堆積を防止する。
【0028】
また、弾性部材33に代えて、実施例2と同様の振動付与手段36を配設したカバー部材35とすることもできる。
【0029】
以上、本発明の混練機について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の混練機は、加圧蓋上部に堆積防止機構を配設することによって、加圧蓋パッキン周辺の隙間から吹き出したフィラーの堆積を防止することができるという特性を有していることから、新規の混練機に適用するほか、既設の混練機の加圧蓋上部を改造して適用するといった用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の混練機の一実施例を示す部分断面図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図2】同混練機の、堆積防止機構の動作を示す、図1(b)のX−X断面から見た説明図で、(a)は、通常時、(b)は、膨張時、(c)は、収縮時をそれぞれ示す。
【図3】同混練機の、別の堆積防止機構を示す、断面正面図である。
【図4】本出願人が先に提案した混練機に、本発明の堆積防止機構を適用した一部切り欠きの正面図である。
【図5】従来の混練機を示す一部断面の側面図である。
【図6】本出願人が先に提案した混練機の一部断面の側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 混合槽
11 側壁
12 周壁
13 上方側壁
2 ロータ
21 ロータ軸
22 ロータ翼
3 加圧蓋
3a 加圧蓋上部
30 堆積防止機構
32 骨組
33 弾性部材
35 カバー部材
36 振動付与手段
4 ガス給排気手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練材料を収容する混合槽と、該混合槽に収容された混練材料を混練する並列した2本のロータと、該混合槽の上部開口部に摺動可能に挿入される加圧蓋とを備え、該加圧蓋には、加圧蓋と混合槽側壁間をシールする加圧蓋パッキンを配設した混練機において、前記加圧蓋の上部に、加圧蓋パッキン周辺の隙間から吹き出したフィラーの堆積を防止するフィラー堆積防止機構を配備したことを特徴とする混練機。
【請求項2】
堆積防止機構が、加圧蓋上部に配設した骨組と、該骨組に張設した弾性部材と、該弾性部材で覆われた空間内に対してガスを給排気するガス給排気手段とからなることを特徴とする請求項1記載の混練機。
【請求項3】
堆積防止機構が、加圧蓋上部に傾斜して配設したカバー部材と、該カバー部材に配設した振動付与手段とからなることを特徴とする請求項1記載の混練機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−320787(P2006−320787A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144055(P2005−144055)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(595057720)株式会社モリヤマ (26)
【Fターム(参考)】