説明

混練機

【課題】混練物中の気孔の発生を抑制することができる混練機を提供すること。
【解決手段】混練機1において、混練軸3が、混練軸3の軸線方向における導入口4と吐出口5との間に、パドル部11と、パドル部11よりも吐出口5側にパイプ部12とを備える。混練対象物Aが、導入口4からバレル2の内部に導入されると、パドル部11により混練対象物Aが混練され、次いで、その混練物Bが、パイプ部12を通過し、吐出口5から吐出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練機、詳しくは、粉体などを混練するために用いられる混練機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、粉体などを混練する場合、混練機が広く利用されている。
【0003】
このような混練機としては、例えば、被処理物を投入する投入口と、排出する排出口とが設けられた筒状ケーシングと、筒状ケーシング内に配置され、投入口側から排出口側に向けて、順次フィードスクリュウ、パドル、リバーススクリュウが設けられた混練軸とを備える連続二軸混練機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、そのような連続二軸混練機では、被処理物(例えば、粉体)を投入口から筒状ケーシング内に投入し、混練軸に設けられたパドルにより被処理物を混練した後、その被処理物の混練物を排出口から、リバーススクリュウにより筒状ケーシングの外部に押し出して排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−267483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の連続二軸混練機により、混練され排出された混練物中には、気孔(ボイド)が発生する場合がある。このような混練物中の気孔は、混練物が使用される各種産業製品において不具合となる場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、混練物中の気孔の発生を抑制することができる混練機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の混練機は、バレルと、前記バレル内に挿通される混練軸とを備える混練機であって、前記バレルには、一端側に、混練対象物を前記バレルの内部に導入するための導入部と、他端側に、前記混練対象物が混練された混練物を前記バレルの外部に吐出するための吐出部とが形成され、前記混練軸は、前記混練軸の軸線方向における前記導入部と前記吐出部との間に、前記混練対象物を混練する混練部分と、前記混練部分よりも前記吐出部側に配置され、前記混練軸の軸線方向に沿って、凹凸がないように延びる平滑面を有する低せん断部分とを備えることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、導入部からバレルの内部に混練対象物が導入されると、まず、混練部分により混練対象物が混練され、その後、その混練物が、凹凸がないように延びる平滑面を有する低せん断部分、すなわち、混練軸の軸線方向と交差する方向のせん断が抑制された低せん断部分を通過し、吐出部から吐出される。
【0010】
そのため、本発明の混練機を用いて、混練対象物を混練すれば、混練対象物が混練された混練物中における気孔の発生を抑制することができる。
【0011】
また、本発明の混練機では、前記低せん断部分が、全周面にわたって凹凸がないように形成されることが好適である。
【0012】
このような構成によれば、低せん断部分における、混練軸の軸線方向と交差する方向のせん断がさらに抑制される。その結果、混練物中の気孔の発生を、さらに抑制することができる。
【0013】
また、本発明の混練機では、前記バレルは、前記バレル内の気体を排出するためのベント部を備え、前記ベント部は、前記低せん断部分よりも、前記混練軸の軸線方向における前記導入部側に配置されることが好適である。
【0014】
このような構成によれば、混練物中の空気や水分などが、バレルの外部に排出された後、混練物が低せん断部分に到達する。その結果、混練物中の気孔の発生を、さらに抑制することができる。
【0015】
また、本発明の混練機では、前記吐出部は、前記混練軸の軸線方向と直交する方向に投影したときに、前記低せん断部分と重なるように配置されていることが好適である。
【0016】
このような構成によれば、混練物は、再度、混練軸の軸線方向と交差する方向にせん断されることなく、バレルの外部に吐出される。その結果、混練物中の気孔の発生を、さらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の混練機における混練軸は、混練軸の軸線方向における導入部と吐出部との間に、混練対象物を混練する混練部分と、混練部分よりも吐出部側に配置され、混練軸の軸線方向に沿って、凹凸がないように延びる平滑面を有する低せん断部分とを備えている。
【0018】
そのため、本発明の混練機は、混練物中における気孔の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る混練機を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す混練機の吐出口側の平断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る混練機を示す概略構成図である。
【図4】図3に示す混練機の吐出口側の平断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態における混練機の吐出口側の平断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態におけるパイプ部分の断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態におけるパイプ部分の断面図である。
【図8】実施例2の混練物の断面のデジタルマイクロスコープ写真である。
【図9】比較例2の混練物の断面のデジタルマイクロスコープ写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.第1実施形態
図1および図2に示すように、混練機1は、連続二軸混練機であり、バレル2と、2つの混練軸3とを備えている。
【0021】
バレル2は、略楕円筒状に形成され、その一端側には、図1に示すように、混練対象物Aをバレル2の内部に導入するための導入部の一例としての導入口4が設けられている。また、他端側には、混練対象物Aが混練された混練物Bをバレル2の外部に吐出するための吐出部の一例としての吐出口5が設けられている。
【0022】
導入口4は、バレル2の一端側において、混練軸3(後述)の径方向一方外側に、バレル2の側壁を貫通するように形成されている。
【0023】
また、吐出口5は、バレル2の他端側において、混練軸3(後述)の径方向他方外側に、バレル2の側壁を貫通するように形成されている。
【0024】
吐出口5の断面形状としては、例えば、矩形状、楕円形状、円形状などが挙げられ、好ましくは、楕円形状および円形状が挙げられる。
【0025】
また、吐出口5の断面積は、バレル2の断面積に対して、例えば、7〜50%、好ましくは、7〜20%である。
【0026】
また、バレル2における導入口4と吐出口5との間には、混練対象物Aを溶融混練する溶融混練部6が形成されている。
【0027】
溶融混練部6は、その軸線方向途中部において、溶融混練部6内の気体を排出するための複数(2つ)のベント部7を備えている。
【0028】
各ベント部7は、混練軸3(後述)の径方向一方外側に、バレル2の側壁を貫通するように、それぞれ形成されている。つまり、各ベント部7と導入口4とは、混練軸3(後述)の径方向において、互いに並列するように形成されている。
【0029】
また、各ベント部7は、常時閉鎖されており、必要により適宜開放することができる。
【0030】
複数のベント部7は、より具体的には、バレル2の一端側から他端側に向かう方向において、導入口4の他端側近傍に設けられる導入口側のベント部7と、吐出口5の一端側近傍に設けられる吐出口側のベント部7とを備えている。
【0031】
また、吐出口5側のベント部7は、ポンプ(図示せず)と連結されており、ポンプ(図示せず)の駆動による吸引力により、溶融混練部6内の気体が吸引される。
【0032】
また、溶融混練部6には、ヒータ(図示せず)が設けられており、溶融混練部6が、バレル2の一端側から他端側に向かう方向において、ブロック単位で適宜温度調整される。
【0033】
混練軸3は、バレル2の内部に配置され、混練対象物Aを混合せん断する回転軸であって、駆動軸8と、フィードスクリュー部9と、リバーススクリュー部10と、混練部分の一例としてのパドル部11と、低せん断部分の一例としてパイプ部12とが一体的に形成されている。
【0034】
詳しくは、混練軸3は、1つの駆動軸8と、複数(4つ)のフィードスクリュー部9と、複数(3つ)のリバーススクリュー部10と、複数(3つ)のパドル部11と、1つのパイプ部12とを備えている。
【0035】
なお、フィードスクリュー部9、リバーススクリュー部10、パドル部11、およびパイプ部12は、必要により適宜、軸線方向長さや設置数を変更することができる。
【0036】
複数(4つ)のフィードスクリュー部9は、混練対象物Aを吐出口5に向けて搬送する部分であって、具体的には、第1フィード部23、第2フィード部24、第3フィード部25、第4フィード部26から形成され、それらは、駆動軸8の軸線方向に互いに間隔を隔てて配置されている。
【0037】
第1フィード部23は、混練軸3の一端部に配置され、導入口4および導入口4側のベント部7を駆動軸8の径方向に投影したときに、それらの投影面と重なるように配置されている。また、第1フィード部23は、駆動軸8の軸線方向長さが、他のフィード部と比較して最も長く形成されている。
【0038】
第4フィード部26は、4つのフィード部のうち、最も吐出口5側に配置され、吐出口5側のベント部7を駆動軸8の径方向に投影したときに、その投影面と重なるように配置されている。また、第4フィード部26は、駆動軸8の軸線方向長さが、第1フィード部23の略1/2に形成されている。
【0039】
また、第2フィード部24および第3フィード部25は、第1フィード部23と第4フィード部26との間に配置され、駆動軸8の軸線方向長さが、第1フィード部23の略1/10に形成されている。
【0040】
また、フィードスクリュー部9は、図2に示すように、駆動軸8の外周面から突出するらせん状のスクリュー条20を備えている。
【0041】
詳しくは、フィードスクリュー部9のスクリュー条20は、駆動軸8の回転方向(後述)と同じ方向にらせん状に形成されている。つまり、フィードスクリュー部9は、右らせんのスクリュー条20を備えている。
【0042】
フィードスクリュー部9におけるスクリュー条20のピッチ間隔は、例えば、0.6〜2.0cm、好ましくは、1.5〜2.0cmである。
【0043】
複数(3つ)のリバーススクリュー部10は、図1に示すように、第1リバース部30、第2リバース部31、第3リバース部32から形成され、それらは、混練軸3の軸線方向に互いに間隔を隔てて配置されている。
【0044】
第3リバース部32は、混練軸3の他端部に配置され、駆動軸8の軸線方向長さが、他のリバース部と比較して最も長く形成されている。その駆動軸8の軸線方向長さは、第1フィード部23の略1/4である。
【0045】
第1リバース部30は、第1フィード部23と第2フィード部24との間であって、第2フィード部24と隣接配置されている。
【0046】
また、第2リバース部31は、第2フィード部24と第3フィード部25との間であって、第3フィード部25と隣接配置されている。
【0047】
また、第1リバース部30および第2リバース部31は、駆動軸8の軸線方向長さが、第3リバース部32の略1/5に形成されている。
【0048】
また、リバーススクリュー部10も、フィードスクリュー部9と同様に、図2に示すように、駆動軸8の外周面から突出するらせん状のスクリュー条20を備えている。
【0049】
一方、リバーススクリュー部10のスクリュー条20は、フィードスクリュー部9のスクリュー条20と逆方向のらせん状に形成されている。つまり、リバーススクリュー部10は、左らせんのスクリュー条20を備えている。
【0050】
リバーススクリュー部10におけるスクリュー条20のピッチ間隔は、例えば、0.6〜1.5cm、好ましくは、1.0〜1.5cmである。
【0051】
複数(3つ)のパドル部11は、混練対象物Aを混練する部分であって、具体的には、第1パドル部27、第2パドル部28、第3パドル部29から形成され、それらは、混練軸3の軸線方向に互いに間隔を隔てて配置されている。
【0052】
第1パドル部27は、第1フィード部23と第1リバース部30との間に配置されている。
【0053】
第2パドル部28は、第2フィード部24と第2リバース部31との間に配置されている。
【0054】
第3パドル部29は、第3フィード部25と第4フィード部26との間に配置されている。
【0055】
また、第1パドル部27、第2パドル部28および第3パドル部29は、駆動軸8の軸線方向長さが、それぞれ略同じ長さであって、第1フィード部23の略1/3に形成されている。
【0056】
また、パドル部11は、図2に示すように、略楕円板状のパドル羽21を、駆動軸8の軸線方向に沿って並列するように複数備えている。
【0057】
より具体的には、複数のパドル羽21は、駆動軸8の軸線方向に、それぞれ隣接するパドル羽21の長径が、互いに約90°変位するように並列配置されている。
【0058】
パイプ部12は、駆動軸8の軸線方向に沿って略円筒形状に形成され、全周面にわたって凹凸がないように形成されている。
【0059】
また、パイプ部12は、第4フィード部26と第3リバース部32との間に配置され、吐出口5を駆動軸8の径方向に投影したときに、その投影面と重なるように配置されている。また、パイプ部12は、駆動軸8の軸線方向長さが、第1フィード部23の略1/2に形成されている。
【0060】
すなわち、混練軸3では、図1に示すように、駆動軸8の一端側から他端側に向けて、順次、第1フィード部23、第1パドル部27、第1リバース部30、第2フィード部24、第2パドル部28、第2リバース部31、第3フィード部25、第3パドル部29、第4フィード部26、パイプ部12、および、第3リバース部32が配置されている。
【0061】
つまり、混練軸3は、駆動軸8の一端側から他端側に向けて、フィード部、パドル部およびリバース部からなるユニットが繰り返して配置されており、他端側のユニットでは、パドル部とリバース部との間に、さらにフィード部およびパイプ部が配置されている。
【0062】
そして、2つの混練軸3は、図2に示すように、バレル2の内部において、その軸線方向に沿って配置され、かつ、その径方向に沿って、互いに並列配置されている。
【0063】
また、2つの混練軸3は、それぞれの部分(フィードスクリュー部9、リバーススクリュー部10、パドル部11)において、互いの回転駆動を妨げないように配置されている。
【0064】
また、混練軸3の駆動軸8の両端部は、バレル2の軸線方向外方に突出している。その突出する両端部のうち、一端側は、駆動源(図示せず)に相対回転不能に連結され、他端側は、支持壁(図示せず)に相対回転可能に支持されている。つまり、混練軸3は、駆動軸8に駆動源(図示せず)から駆動力が伝達されることにより、駆動軸8の軸線周りにおいて、回転駆動する。具体的には、混練軸3は、駆動軸8の軸線方向において、導入口4側から吐出口5側に見て右回転する。
【0065】
また、図2に示すように、バレル2の内周面と、混練軸3のフィードスクリュー部9、リバーススクリュー部10、およびパドル部11とは、混練軸3の径方向において僅かな間隔を隔てて対向するように配置されている。また、バレル2の内周面と、パイプ部12とは、混練軸3の径方向において、他の部分と比較して大きな間隔を隔てて配置されている。
【0066】
次に、混練機1による混練対象物Aの混練について説明する。
【0067】
混練対象物Aとしては、例えば、樹脂や、それらと添加剤との混合物などが挙げられる。
【0068】
樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アルキド樹脂などの熱硬化性樹脂、例えば、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0069】
添加剤としては、例えば、アミン系化合物、酸無水物系化合物、フェノール樹脂などの硬化剤、例えば、イミダゾール系化合物などの硬化促進剤、例えば、シリカ、アルミナ、金属水酸化物などの充填剤、例えば、アクリル系共重合体、ポリスチレン−ポリイソブチレン共重合体、スチレンアクリレート共重合体などの可撓性付与剤、例えば、カーボンブラックなどの着色剤などが挙げられる。
【0070】
混練機1により、混練対象物Aを混練して混練物Bを調製するには、まず、混練機1の導入口4から、混練対象物Aをバレル2の内部に導入する。
【0071】
そして、駆動軸8に駆動源(図示せず)からの駆動力が伝達されると、混練軸3が回転駆動し、混練対象物Aが第1フィード部23により攪拌されながら、第1パドル部27に向けて搬送される。
【0072】
このとき、第1フィード部23の外方に位置するバレル2(溶融混練部6)は、ヒータ(図示せず)により、例えば、15〜20℃に調整されている。また、混練対象物Aの導入とともに、バレル2の内部に侵入した空気などは、導入口4側のベント部7を開放することにより、バレル2の外部に放出される。
【0073】
次いで、搬送された混練対象物Aは、第1パドル部27において混練される。
【0074】
このとき、第1パドル部27の外方に位置する溶融混練部6は、ヒータ(図示せず)により、例えば、40〜80℃に調整されている。
【0075】
そして、混練された混練対象物Aは、第1フィード部23の回転駆動により搬送される混練対象物Aの押し出し力により、第1リバース部30に向けて押し出される。
【0076】
第1リバース部30に向けて押し出された混練対象物Aのうち、大部分は第1リバース部30を通過し、第2フィード部24に到達する。一方、押し出された混練対象物Aのうち、一部は第1リバース部30の回転駆動により、第1パドル部27に戻され、再度混練される。
【0077】
これによって、混練対象物Aの混練の促進を図るとともに、混練対象物Aの搬送速度が調整される。
【0078】
次いで、第1リバース部30を通過した混練対象物Aは、第2フィード部24により、第2パドル部28および第2リバース部31に向けて搬送される。
【0079】
これによって、混練対象物Aは、第1パドル部27および第1リバース部30と同様に、第2パドル部28および第2リバース部31を、混練されながら通過する。
【0080】
このとき、第2パドル部28の外方に位置する溶融混練部6は、ヒータ(図示せず)により、例えば、60〜120℃に調整されている。
【0081】
次いで、第2リバース部31を通過した混練対象物Aは、続く第3フィード部25により、第3パドル部29に搬送されて、第3パドル部29おいてさらに混練される。これにより、混練対象物Aは、混練物Bとして調製される。
【0082】
このとき、第3パドル部29の外方に位置する溶融混練部6は、ヒータ(図示せず)により、例えば、80〜140℃に調整されている。
【0083】
そして、混練物Bは、混練軸3の回転駆動により押し出されて、第4フィード部26に到達する。
【0084】
このとき、吐出口5側のベント部7に連結されたポンプ(図示せず)を駆動させることにより、混練物B中の水分や揮発成分などが溶融混練部6の外部に排出される。
【0085】
これによって、混練物B中における気孔の低減を図ることができる。
【0086】
次いで、混練物Bは、第4フィード部26によりパイプ部12に搬送される。
【0087】
パイプ部12では、上記したように、全周面にわたって凹凸がないように形成されている。そのため、パイプ部12において、混練物Bは、混練軸3の軸線方向と交差する方向のせん断が抑制され、パイプ部12の軸線方向に沿って円滑に移動される。
【0088】
そして、混練物Bの大部分は、吐出口5から混練物Bが吐出される。
【0089】
一方、吐出されることなく吐出口5を通過して、第3リバース部32に至った混練物Bも、第3リバース部32により押し戻され、吐出口5から混練物Bが吐出される。
【0090】
以上によって、混練対象物Aから、気孔の発生が抑制された混練物Bが調製される。
【0091】
混練機1では、混練軸3が、その軸線方向における導入口4と吐出口5との間に、パドル部11と、パドル部11よりも吐出口5側に配置され、全周面にわたって凹凸がないように形成されたパイプ部12とを備えている。
【0092】
そのため、混練対象物Aがパドル部11により混練された後、その混練された混練物Bが、混練軸3の軸線方向と交差する方向のせん断が抑制されたパイプ部12を通過して、吐出口5から吐出される。
【0093】
その結果、混練物B中の気孔の発生を抑制することができる。
【0094】
また、溶融混練部6は、導入口4側のベント部7と、吐出口5側のベント部7とを備えている。これらベント部7は、それぞれ、混練軸3の軸線方向において、パイプ部12よりも導入口4側に配置されている。
【0095】
そのため、混練対象物Aおよび混練物Bの空気や水分などが、溶融混練部6の外部に排出された後、混練物Bがパイプ部12に到達する。
【0096】
その結果、混練物B中の気孔の発生を、さらに抑制することができる。
【0097】
また、吐出口5は、混練軸3の軸線方向と直交する方向(径方向)に投影したときに、パイプ部12と重なるように配置されている。
【0098】
そのため、混練物Bは、再度、混練軸3の軸線方向と交差する方向にせん断されることなく、バレル2の外部に吐出される。
【0099】
その結果、混練物B中の気孔の発生を、さらに抑制することができる。
2.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0100】
図3は、本発明の第2実施形態に係る混練機を示す概略構成図、図4は、図3に示す混練機の吐出口側の平断面図である。
【0101】
図3および図4において、図1および図2に示す各部に対応する部分には、それらの各部と同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0102】
第1実施形態では、図1に示すように、吐出口5が、バレル2の他端側において、混練軸3の径方向他方外側に、バレル2の側壁を貫通するように形成されている。
【0103】
これに対して、第2実施形態では、図3および図4に示すように、バレル2の他端部が、吐出口5として形成されている。
【0104】
そのため、吐出されることなく吐出口5を通過した混練物Bを、吐出口5に押し戻すための第3リバース部32を設ける必要がなく、パイプ部12は、その遊端部が吐出口5(バレル2の他端部)から突出するように延設されている。
【0105】
その結果、部品点数の低減を図ることができるとともに、混練物Bが第3リバース部32により押し戻されることがないので、混練物B中に気体が混入することを防止できる。従って、製造コストの低減を図ることができながら、混練物B中の気孔の発生を抑制することができる。
【0106】
なお、第2実施形態では、バレル2の他端部が吐出口5として形成されているので、駆動軸8の他端部は支持されておらず、駆動軸8の一端部のみが、駆動源(図示せず)に相対回転不能に連結されることにより、支持されている。これによっても、混練軸3は、バレル2に対して相対回転可能に支持されている。
【0107】
また、吐出口5の断面形状としては、例えば、矩形状、楕円形状、円形状などが挙げられ、好ましくは、楕円形状および円形状が挙げられる。
【0108】
また、吐出口5の断面積は、バレル2の断面積に対して、例えば、15〜50%、好ましくは、25〜45%である。
3.第3実施形態、第4実施形態および第5実施形態
図5は、本発明の第3実施形態における混練機の吐出口側の平断面図である。
【0109】
図5において、図1〜図4に示す各部に対応する部分には、それらの各部と同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0110】
第1実施形態(図2参照)および第2実施形態(図4参照)では、パイプ部12は、略円筒形状に形成されている。
【0111】
これに対して、図5に示す第3実施形態では、パイプ部12は、導入口4側から吐出口5側に向けて幅狭となるテーパ状に形成されている。なお、パイプ部12は、導入口4側から吐出口5側に向けて幅広となるように形成することもできる。
【0112】
なお、図5では、第1実施形態におけるパイプ部12を、テーパ状に形成した態様を示したが、これに限定されず、第2実施形態におけるパイプ部12(図4参照)を、テーパ状に形成することもできる。
【0113】
これによっても、上記した第1実施形態および第2実施形態と同様に、混練物B中の気孔の発生を抑制することができる。
【0114】
上記の第1実施形態〜第3実施形態においては、パイプ部12は、全周面にわたって凹凸がないように形成されているが、混練軸3の軸線方向に沿って、凹凸がないように延びる平滑面を有すればよく、例えば、スプライン状に形成することもできる。
【0115】
スプライン状に形成されるパイプ部12としては、パイプ部12の径方向外方に放射状に延びる突起部34を有している態様(図6)や、パイプ部12の円周面から、径方向内側に切り欠かれる切欠部35を有している態様(図7)が挙げられる。
【0116】
すなわち、図6は、本発明の第4実施形態におけるパイプ部分の断面図である。
【0117】
図6に示す第4実施形態では、パイプ部12は、パイプ部12の径方向外方に放射状に延びる、複数(8つ)の突起部34を備えている。
【0118】
複数(8つ)の突起部34は、混練軸3の軸線方向に沿って延び、パイプ部12の外周面において、周方向に等間隔を隔てて配置されている。
【0119】
また、図7は、本発明の第5実施形態におけるパイプ部分の断面図である。
【0120】
図7に示す第5実施形態では、パイプ部12は、パイプ部12の径方向内側に切り欠かれる、複数(8つ)の切欠部35を備えている。
【0121】
複数(8つ)の切欠部35は、混練軸3の軸線方向に沿って延び、パイプ部12の外周面において、周方向に等間隔を隔てて配置されている。
【0122】
これらによっても、上記した第1実施形態〜第3実施形態と同様に、混練物B中の気孔の発生を抑制することができる。
【0123】
なお、これら実施形態(第1実施形態〜第5実施形態)は、適宜組み合わせることができる。
【実施例】
【0124】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、何らこれらに限定されるものではない。
【0125】
実施例1および2
表1に示す処方(単位:質量部)において各成分(混練対象物A)を、図1に示す混練機1(第1実施形態)の導入口4からそれぞれ導入し、混練物(樹脂組成物)を得た。なお、処方例1により調製された混練物を実施例1とし、処方例2により調製された混練物を実施例2とした。
【0126】
実施例3
表1に示す処方例2(単位:質量部)における各成分(混練対象物A)を、図3に示す混練機1(第2実施形態)の導入口4からそれぞれ導入し、混練物(樹脂組成物)を得た。
【0127】
比較例1および2
図1に示す混練機1のパイプ部12を、フィードスクリュー部9に変更した混練機を用意した。
【0128】
その混練機の導入口4から、表1に示す処方において各成分(混練対象物A)をそれぞれ導入し、混練物(樹脂組成物)を得た。なお、処方例1により調製された混練物を比較例1とし、処方例2により調製された混練物を比較例2とした。
【0129】
(評価)
各実施例および各比較例において得られた混練物について、混練物中の気孔数を次のように測定した。その結果を表2に示す。
(1)気孔数測定
各実施例および各比較例において得られた混練物を、軸線方向長さ15mm〜30mm、直径10mm〜13mmの略円柱形状に調整した。
【0130】
そして、大きさを調整した各混練物を、それぞれ175℃に設定された乾燥機に1時間投入して硬化させた。その後、各混練物を乾燥機から取り出し、それぞれ所定容器に入れて冷却した。
【0131】
一方、各混練物を包埋する包埋用樹脂を用意した。具体的には、エポフィックス冷間埋込樹脂(エポキシ樹脂と硬化剤との2液混合タイプ)を、エポキシ樹脂25質量部に対して、硬化剤3質量部を配合し、必要量の包埋用樹脂を作製した。
【0132】
次いで、各混練物がそれぞれ収容されている容器に、包埋用樹脂を、各混練物が完全に浸かるように流入した。そして、包埋用樹脂が完全に硬化するまで、静置した(室温、約25℃において、7〜8時間)。これによって、内部に各混練物が包埋されているサンプル樹脂が作製された。
【0133】
次いで、サンプル樹脂を容器から取り出し、精密切断機(BUEHLER社製 Isomet1000)を使用して、混練物が切断面の中央部分に位置するように切断して、各試料片(厚さ5mm〜7mm程度)を得た。
【0134】
得られた各試験片の切断面を下記の装置および条件により、研磨した。
【0135】
研磨装置および研磨条件
研磨機:BUEHLER社製 AUTOMET3000
1)初期研磨条件
研磨紙番手:240番、研磨紙台座回転数:50rpm(1/60s−1)、試料加圧力:5〜8、研磨時間:3〜5min
2)2段階目研磨条件
研磨紙番手:600番、研磨紙台座回転数:50rpm(1/60s−1)、試料加圧力:8〜10、研磨時間3〜5min
3)3段階目研磨条件
研磨紙に代えて、適量の水を混合した研磨粉(MICROPOLISH 0.3)を使用した。
【0136】
研磨台座回転数:60rpm(1/60s−1)、試料加圧力:10〜15、研磨時間5〜10min
研磨した各試験片における混練物の2mm×2mmの範囲について、デジタルマイクロスコープ(KEYENCE社製:VHX−500、観察倍率:100倍)により、気孔数および気孔径を観察した。図8に実施例2の混練物の断面のデジタルマイクロスコープ写真を示す。また、図9に比較例2の混練物の断面のデジタルマイクロスコープ写真を示す。
【0137】
実施例1、実施例3および比較例1においては、2mm×2mmの範囲を5か所観察した。
【0138】
実施例2においては、2mm×2mmの範囲を3か所観察した。
【0139】
比較例2においては、2mm×2mmの範囲を2か所観察した。
【0140】
【表1】

なお、表1の略号などを以下に示す。
YSLV−80XY:エポキシ樹脂(新日鐵化学社製)
MEH7851SS:フェノール樹脂(明和化成社製)
2PHZ−PW:イミダゾール(四国化成工業社製)
SIBSTAR:エラストマー(ポリスチレン−ポリイソブチレン共重合体)(カネカ社製)
充填剤:無機充填剤(溶融シリカ)(FB−9454、電気化学工業社製)100質量部に対して、シランカップリング剤(KBM403、信越化学工業社製)0.1質量部を添加して、表面処理したもの。
#20:カーボンブラック(三菱化学社製)
【0141】
【表2】

【符号の説明】
【0142】
1 混練機
2 バレル
3 混練軸
4 導入口
5 吐出口
7 ベント部
11 パドル部
12 パイプ部
A 混練対象物
B 混練物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレルと、前記バレル内に挿通される混練軸とを備える混練機であって、
前記バレルには、一端側に、混練対象物を前記バレルの内部に導入するための導入部と、他端側に、前記混練対象物が混練された混練物を前記バレルの外部に吐出するための吐出部とが形成され、
前記混練軸は、前記混練軸の軸線方向における前記導入部と前記吐出部との間に、前記混練対象物を混練する混練部分と、前記混練部分よりも前記吐出部側に配置され、前記混練軸の軸線方向に沿って、凹凸がないように延びる平滑面を有する低せん断部分とを備えることを特徴とする、混練機。
【請求項2】
前記低せん断部分が、全周面にわたって凹凸がないように形成されることを特徴とする、請求項1に記載の混練機。
【請求項3】
前記バレルは、前記バレル内の気体を排出するためのベント部を備え、
前記ベント部は、前記低せん断部分よりも、前記混練軸の軸線方向における前記導入部側に配置されることを特徴とする、請求項1または2に記載の混練機。
【請求項4】
前記吐出部は、前記混練軸の軸線方向と直交する方向に投影したときに、前記低せん断部分と重なるように配置されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の混練機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−6171(P2013−6171A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−266758(P2011−266758)
【出願日】平成23年12月6日(2011.12.6)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】