説明

混色照明装置

【課題】複数方向に設けた光源光を高効率に混合し、放射角を制御して演色性の優れた照明装置を実現する。
【解決手段】水平面を基準面として、入射光と基準面のなす仰角をα、全反射面の傾斜角をβ、全反射面の高さをh、全反射面の基準面方向の幅をdとする。混色数をcとして三角柱頂稜付近を通過した光が隣接する三角柱傾斜面と基準面の境界に入射する状態を入射光で示している。全反射面による反射光が基準面の鉛直上方に反射するとき、入射光と基準面のなす仰角α、全反射面の傾斜角βとすると、
α= tan−1(h/(d(c−1)))
β= tan−1(h/d)
α+2β=90°
を満たす全反射面高さh、基準面方向幅dで三角柱溝を形成する。この構造のとき、基準面の仰角αの対称方向からの入射光を前記全反射面三角柱に照射して双方とも鉛直方向に全反射して同一方向に出射する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導光板の底面に三角柱状の溝からなる全反射面を分散配置して構成し、複数方向からの入射光を混色する照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードは小型で高効率などの特徴から液晶表示装置のバックライト、LED電球などの一般照明に使用されている。3原色光の混色として液晶プロジェクターなどに採用されているクロスダイクロイックプリズムは高価なため一般的でないので同一パッケージ内などで混色するか、青色発光ダイオードの青色光を蛍光体に照射して補色による蛍光白色発光ダイオードが用いられている。
【0003】
白色発光ダイオードを用いてカラーフィルタで3色に分解するのはカラーフィルタで吸収されて効率が低下するのでカラーフィルタを使用せずに3原色発光素子を用いて加法混色する方法が多数提案されている。
導光板に45°の溝を画素数設け、側面から入射した光を溝の界面で液晶パネル方向に全反射する導光板を3層重ね、楔形の導光板の厚い部分を交互に配置する提案がある(特許文献1、図20)。液晶パネルの3辺に3色の光源を設置し、導光板に四角錐をマトリックス状に設けて四角錐の傾斜面で反射して液晶パネルの所定の画素に照射する液晶表示装置が提案されている(特許文献2、図21)。
画素寸法の45°の全反射面を導光板底面に設けて3枚重ね、マトリックス状に配置することによって4方からの光を垂直上方に出射する発光表示装置が提案されている(特許文献3)。この提案は特許文献1の45°の全反射面を用い、特許文献2の四角錐によるマトリックス表示と同様な動作と考えられる。
【0004】
直角プリズムを並べたシートの平面側に4方向からの光を入射し、バンドパスミラーを用いて出射する構造の混色装置が提案されている(特許文献4、図22)。一方のプリズム面の入射光は屈折光を同一方向に混色して出射するが、もう一方のプリズム面の入射光は臨界角以上になって全反射して対向する光源に入射するのでバンドパスミラーを用いて全反射光を活用する構成である。
【0005】
蛍光白色発光ダイオードは青色発光ダイオードの青色光を黄色蛍光体に照射して補色により白色に認識される発光ダイオードである。3原色発光素子を反射鏡内部に設ける混色に比べて色むらが出にくいので携帯電話などの液晶表示装置のバックライト、LED電球などとして利用されている。蛍光白色発光ダイオードのスペクトルは先鋭な青色となだらかな黄色域の2つのピークから成っている。このため、Ca1−xAlSiN:Eu2+などの赤色域蛍光体を混合して演色性を改善する提案などがある(特許文献5)。
【0006】
水平面上に短冊状反射面の長軸方向を光源からの平行光の進行方向に直交するように配置し、短冊状反射面の短軸方向を交互に±30°の傾斜を持たせて三角波状に並べ、斜め上方30°の方向に平行光光源を対称位置に設けた構造が提案されている(特許文献6)。夫々の平行光光源と三角波状格子の対をなす反射面が平行になっているので対をなす平行光光源側に配置された反射面には入射出来ず、水平面から30°上方の平行光光源双方からの平行光は三角波状反射鏡の光源方向反射面に沿って入射し、双方から入射した光はいずれも鉛直上方に反射する。
【0007】
特許文献6には屈折格子による混色装置も提案されている。構成物質の屈折率n2、周囲媒体の屈折率n1とし、屈折格子構成物質内から傾斜面に角度αで入射した光が角度βで屈折するとき、V字溝の傾斜面角度は中心線に対してγとして対向する屈折面に平行に入射するので右側光源光は右側傾斜面にしか入射せず、傾斜面と入射光は対称なので左側光源光も同様である。V字溝の傾斜面角度γをβとαの差で設定することにより双方の屈折光は中心線に平行に出射する。屈折格子と前項の反射格子を組み合わせて4方向の混色装置が示されている(図23)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許3131034号公報
【特許文献2】特開2006−323221号公報
【特許文献3】特開2007−264148号公報
【特許文献4】特開2008−218154号公報
【特許文献5】特許4045298号公報
【特許文献6】特許4399678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の導光板に45°の溝を画素数設け、溝の界面で液晶パネル方向に全反射する導光板を3層重ねた提案は45°の全反射面でサブ画素を構成するため、導光板1枚の厚さは表示面長さの1/3が必要である。これを3枚積層するので楔形の交互配置を行なっても非常に厚く、重い表示装置になる。このため材料費が著しく増大する問題がある。特許文献3の表示装置も45°の全反射面なので平坦部を間に設けてはいるが特許文献1以上に厚く、重くなる。薄型化のための平坦部があるので輝度むらを生じる問題もある。このように45°の全反射面を単純に積層しただけでは厚さ・質量・コストなどの点で実用的でない問題がある。
【0010】
導光板の底面に四角錐反射体を多数設け、3方向からの3原色光を画素に反射して混色する特許文献3の提案は、手前の四角錐に遮られて逆V型の反射光しか得られない。四角錐に斜めの平行光を照射すると側面にも当たるので図21に示したように斜めに反射して散乱光になり他の画素に入射すると不鮮明になる。
【0011】
青色発光ダイオードの青色光を黄色蛍光体に照射した補色による白色発光ダイオードは尖鋭なスペクトルの青色光となだらかな黄色光のスペクトルのため赤色域と青緑色域が不足し、平均演色評価数が70前後の演色性が低い照明である。
蛍光体の配合比率を増大するに従って青色光のピークが低下して蛍光が増大するが、別の黄色蛍光体に当たると蛍光体が有色不透明で蛍光波長に対しては蛍光変換率が低いために吸収され、効率が低下する問題がある。
【0012】
演色性を改善するには赤色など長波長蛍光体の量を増やす必要がある。赤色域は比視感度が低いので蛍光体を多量に混合する必要があるが、長波長蛍光体から発せられた光は短波長蛍光体では吸収だけで蛍光変換されず、黄色蛍光が黄色蛍光体に当たる確率と赤色蛍光が赤色蛍光体に当たる確率も増大して効率が低下する問題がある。
【0013】
直角プリズムの一方の傾斜屈折面で屈折して鉛直方向に出射する特許文献4の提案は一方の屈折面への入射角が臨界角以上のため全反射して対向する光源側に入射する比率が半分を占めている。対向する光源側に入射する全反射光の損失を回避するためにバンドパスミラーで再反射して利用するが、複雑で高価である。
【0014】
特許文献6の反射格子と屈折格子は2方向からの平行光を混色して平行光として出射する。4方向以上の光を混合するときは2色づつ混合する屈折格子あるいは反射格子2枚と4色を混合する屈折格子1枚の計3枚で三角形に組み合わせるので厚い構造が必要である。

【課題を解決するための手段】
【0015】
基準面に対して45°の傾斜反射面に基準面に平行な入射光を照射すると基準面に対して鉛直方向に反射するので、45°の傾斜反射面を基準面の鉛直方向に対して対称に設ければ、基準面に平行で対称方向から入射する光は双方とも鉛直方向に反射する。傾斜45°の三角柱状の低屈折率物質空間を高屈折率物質の内部に設ければ全反射を利用することが出来る。45°の傾斜反射面を鉛直面に対称に配置すると直角三角柱になるので、これを全反射三角柱1と呼ぶことにする。
全反射三角柱を全反射面の高さh、全反射面の基準面方向の幅dで細分して他の全反射三角柱からの光の障害とならないようにずらした構造で階段状に分散配置する。基準面に平行で対称方向から入射する光は全反射三角柱の高さhで細分された後に、双方の入射光は櫛歯状の配列で基準面方向の幅dだけずれて鉛直方向に全反射する。このため、対称方向から入射した光は全反射面の基準面方向の幅dで交互に配列して同一方向に出射する。この構造と作用を表した状態を図1、図3に示す。45°傾斜面なのでhとdは同一値である。
高屈折率物質の屈折率n1と低屈折率物質の屈折率n2界面の臨界角θcは数1で示される。
【数1】


低屈折率物質として屈折率がほぼ1の空気とし、高屈折率物質の屈折率は1.41以上のときに臨界角は45°以下の全反射条件を満たすことが出来る。ポリメチルメタクリレート、シクロオレフィン樹脂、ポリカーボネート、共重合ポリエステルの屈折率n、臨界角θcの例を表1に示す。
【表1】

【0016】
全反射面の基準面方向の幅dを視覚的に認識出来ない幅以下にすれば併置加法混色される。特許文献1、3などは1方向入射成分の導光板を単純に積層しているので3色表示では3層になるが、本願発明は対称方向の入射光を1つの全反射三角柱で2色を混合出来るので2倍の密度で混色することが出来る。
【0017】
図2は全反射面を構成する三角柱を基準面方向に1個おきに配置し、下側三角柱の列からの反射光を上側三角柱の列の間を通過させることによって4方向の光を混合する状態を示した断面図である。三角柱の列とは対称方向からの入射光を対にした三角柱が斜上する配置である。4色混合における三角柱の列は図2のように2列あるが、三角柱の列数は混色数の半分なので例えば6色混合の場合は3列、8色混合の場合は4列である。
【0018】
三角柱状の低屈折率物質空間を高屈折率物質の内部に設けるには、三角柱状の低屈折率物質空間を設けた2枚の高屈折率物質を組み合わせることで実現出来る。三角柱の位置を階段状に差を持たせて配置しているので三角柱の列に沿った接合面を設ける必要がある。
図3は全反射三角柱を3段重ねて6色を混色する場合の断面図で、全反射面以外では入射光あるいは反射光に対して垂直の界面にした構造である。接合した界面に空気層が入っても全反射が生じないので組み立てが容易になる。垂直の界面なので図3のように凹凸の大きな形状である。垂直の界面に空気層が入っても全反射は生じないが、約4%の界面反射が生じるので接合剤を介在させることにより透過率を高めることが出来る。
【0019】
界面を入出射光に垂直にした場合は図3のように凹凸が大きいので界面の形状を単純化した形状を図5に示す。図5の界面の一方は緩傾斜面と平面の繰り返し構造で、他方の界面は直角三角柱状の空間を設けた構造である。図5は6色を混合する場合だが、同様な構造で4色、8色などの混色することが出来る。この形状では界面に空気層が入ると逆方向に全反射するので接合剤層を界面に介在させる必要がある。光学用の接合剤としてバルサム樅樹脂、エポキシ接着剤、アクリル接着剤、紫外線硬化樹脂などが使用されている。接合剤を一方の透明物質の面に塗布した後に他方の透明物質側を貼り合わせて形成することが出来る。この構造は図3の凹凸の多い界面に比べ、一方の面が緩傾斜面と平面の繰り返し構造なので塗布や貼り合わせの工程が容易である。
【0020】
図2を平坦な界面で切断すると基準面に対して界面が傾斜するので接合剤を用いても三角柱底面では反対方向に全反射するので光量損失を生じる。このため、下記構造によって一方の界面を平坦にする構造について図6〜図8で説明する。
図6の水平面を基準面として、入射光と基準面のなす仰角をα、全反射面の傾斜角をβ、全反射面の高さをh、全反射面の基準面方向の幅をdとする。混色数をcとして三角柱頂稜付近を通過した光が隣接する三角柱傾斜面と基準面の境界に入射する状態を示している。全反射三角柱列の間を別色の光を透過させることが出来る構造である。全反射面による反射光が基準面の鉛直上方に反射するとき、傾斜面と鉛直方向のなす角度をδとすると、数2に示すように入射角γと反射角γはともに傾斜角βに等しい。
【数2】


入射光と基準面のなす角度αは数3、全反射面の傾斜角βは数4、これらの関係は数5で表される。
数3の分母のC−1は頂稜と前記境界の間を伝播する光線の数である。
【数3】


【数4】


【数5】


数3〜数5を満たす全反射面高さh、基準面方向幅dから求めた混色数cとα、β、γの関係を表2に示す。
【表2】

【0021】
これを6色混合に適用した構造を図7、8色混合に適用した構造を図8に示す。8色混合の場合は全反射面の傾斜角βと入射角γが41.4°なので臨界角θc41.4°未満になる屈折率の物質が必要である。これに適する透明高分子は表1のようにポリカーボネートなどの高屈折率物質である。
導光板の上面は図7、図8のように平坦で、底面は三角柱状の溝を有する構造なので接合が容易である。位置合わせ可能な固定具などを用いて図7、図8のように固定することが出来る。
【0022】
発光素子チップを放物面鏡の焦点に設けると、発光素子チップ寸法の半径rと放物面鏡の焦点距離pの比で平行光との誤差を生じる状態を図9に示す。この誤差角度をεとすると数6で表される。
【数6】


焦点距離pを10mm、半径rを0.2mmとすると最大1.1°の誤差角度である。
全反射三角柱の傾斜は厳密な45°だけでなく、実際には公差を持った範囲の傾斜角度である。この誤差角度をζとすると出射方向の誤差はεの誤差と加算されたものになる。
平行光として出射する装置の場合はεとζを小さく抑える必要があるが、一般照明装置では放射角度が大きいので放射角度に比べてεとζが小さければ影響を抑えることが出来る。
【0023】
照明装置は被照射物の混色状態で演色性が評価される。完全な平行光のまま被照射物に照射されるとストライプ模様が発生するので光路差を視覚的に認識できない寸法で構成する必要がある。屋内用と屋外用では目から表示面までの距離が異なるため視覚的に認識できない寸法は大幅に異なるが、数十cmから見る液晶ディスプレイでは約100μmである。これらのarctanで角度換算すると約0.01°である。平行光として利用する場合は目から屈折格子までの距離Lが長い場合の屈折格子ピッチPの目安は数7で示される。
【数7】

【0024】
一般照明では放射角を広げて照射されるので、図10は出射面にマイクロレンズアレイを設けて放射角を広げる作用を示している。図10では平行光よりも放射角を拡げるための凹レンズアレイを設けている。凸レンズは焦点を通過した後に拡散するので凸レンズも可能である。
各色光とも同一方向に同一放射角で放射されれば方向によらず混色比率は一定である。マイクロレンズを構成する単体レンズの放射角θは単体球面レンズにおける光線高eと焦点距離fにより数8で示され、マイクロレンズ境界部分で放射角が最大になる。
【数8】


混合した平行光の放射方向が異なると一方だけの成分になって色斑を生じるので屈折格子ピッチより凹レンズピッチを狭くし、混合した平行光の放射角と方向を揃えて均一な混色光を照射することが出来る。
マイクロレンズアレイからの拡散光が重畳するとストライプは緩和されて認識出来なくなる。このため、平行光で出射する場合に比べて全反射面の基準面方向の幅dを認識出来ない寸法を大きくすることが出来る。
【0025】
演色評価数は標準光と15色の色票の反射光との色差からCIE1964等色関数により計算される。このため、色票を用いた実測によらなくとも光源のスペクトル特性により計算することが出来る。本発明の混色によるスペクトル特性を図11〜図14に示す。図中の個別発光素子のスペクトル特性を破線、混色による合成スペクトルを太実線、6504Kの標準光を細実線で示す。光源の演色性は色温度6504Kなどの標準光との色差から計算され、5000K以下の光源では黒体放射との色差から計算される。
【0026】
混色による合成曲線の包絡線を標準光のスペクトル曲線に近似させれば色差を小さくなり、演色評価数を高めることが出来る。図11〜図13の4色、6色、8色の混合による光源の演色評価数を表3に示す。R1〜R15は各色票における演色評価数、RaはR1〜R8の平均演色評価数である。表中のYAGは青色LEDとYAG蛍光体による従来の蛍光白色LEDの演色評価数を比較したもので、図14の太破線のスペクトル特性で示したものである。表中の2PHOSは複数の蛍光白色LEDと全反射三角柱を用いて混色した図14のスペクトル特性の演色評価数である。
【表3】

【0027】
蛍光白色発光ダイオードにおいて、複数の蛍光体を多量に混合すると前記YAGの演色評価数よりも改善することが出来るが、複数の蛍光体を多量に混合すると変換された蛍光が他の蛍光体で吸収され易くなり効率が低下する。
波長特性の異なる複数の蛍光白色LEDと全反射三角柱を用いて混色することも出来る。蛍光体を混合して波長特性を広帯域に改善する場合と異なり、効率低下を伴わずに混色して広帯域化する。

【発明の効果】
【0028】
RGBの3色を混色するために45°全反射面の導光板を単純に3枚積層する方法は厚さ・質量・コストが著しく増大し、更に多数色の混色には実用的でない問題があるが、本願発明の全反射三角柱を分散配置すると容易かつ低コストで多数色の混色が可能である。
四角錐に斜めの平行光を照射する混色装置は側面にも当たって散乱光になり他の画素に入射すると不鮮明になるが、本願発明は全反射三角柱なので散乱光を生じることなく放射角を制御して高効率に混色可能である。
直角プリズムシートを用いた4方向光の混色装置はバンドパスミラーが必要になって複雑で高価だが、本願発明は全反射三角柱を分散配置した混色なのでこのような現象は発生せず、高効率で安価に混色可能である。
蛍光白色発光ダイオードの演色性を改善するには長波長蛍光体など蛍光体の量を増やす必要があり、変換した蛍光が赤色蛍光体に当たる確率も増大して効率が低下するが、本願発明は蛍光体の混合によらずに混色するので高効率である。
屈折格子あるいは反射格子は2色の混色のため4色以上を混合する場合、三角形に組み合わせるので厚い構造が必要だが、全反射三角柱による混色は全反射三角柱のピッチ間を複数の光が通過する構造なので多色混合が容易である。複数の光を容易に混色出来るため、演色性の良い連続スペクトルの白色光を出射出来る。
混色して同一方向に平行光として出射するので他の光学系と組み合わせて任意の放射角で出射出来る。
全反射を利用するため高効率に混色することが出来る。
導光板の上面は図7、図8のように平坦で、底面は三角柱状の溝を有する構造なので接合が容易である。

【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】全反射三角柱により2方向の光を混合する構造の原理図
【図2】全反射三角柱により4方向の光を混合する構造の原理図
【図3】2方向の光を混合する全反射三角柱を界面に垂直な構造で結合する構造の断面図
【図4】6方向の光を混合する全反射三角柱を界面に垂直な構造で結合する構造の断面図
【図5】緩傾斜面と平面から成る界面と、三角柱状構造を含む界面で接合した全反射三角柱の断面図
【図6】三角柱の上端を通過した光が隣の全反射三角柱と基準面の境界に入射する構造の断面図
【図7】図6の構造を6方向の混色に適用した構造の断面図
【図8】図6の構造を8方向の混色に適用した構造の断面図
【図9】放物面鏡に設けた発光素子チップ寸法による平行光からの誤差角度
【図10】凹レンズによる放射角と光線高と焦点距離の関係を示す図
【図11】全反射三角柱により4方向の光を混合したときのスペクトル特性図
【図12】全反射三角柱により6方向の光を混合したときのスペクトル特性図
【図13】全反射三角柱により8方向の光を混合したときのスペクトル特性図
【図14】全反射三角柱により2種類の蛍光白色LEDの光を混合したときのスペクトル特性図
【図15】全反射三角柱を用い、放物面鏡による平行光光源部を有する構造の平面図
【図16】図5の構造の全反射三角柱を用い、出射面に凹マイクロレンズアレイを設けた断面図
【図17】全反射三角柱により6方向の光を混色するLED電球の断面図
【図18】出射面の凹マイクロレンズアレイの曲率を変えて配置した車両用前照灯の正面斜視図
【図19】図18の車両用前照灯による走行ビームとすれ違いビームの照射範囲
【図20】3枚の導光板に45°の全反射用溝を設けて積層した従来の液晶表示装置の断面図
【図21】導光板に設けた四角錐の傾斜面によって3色光を所定の画素に照射する従来例
【図22】直角プリズムに4方向の光を入射し、バンドパスミラーを併用して混色する従来例
【図23】反射・屈折格子による従来の4色混合装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
実施例1
図8に示した構造で8色を混合するスポットライトの実施例を示す。8色混合の場合は入射光が基準面と成す角度αは7.2°、全反射面の傾斜角βと入射角γが41.4°なので臨界角θc41.4°未満になる屈折率は1.51以上である。これに適する透明高分子は表1のようにポリカーボネートn=1.59、共重合ポリエステルn=1.63などの高屈折率物質である。全反射面の傾斜角βが41.4°なので形成される全反射面は頂角97.2°の全反射三角柱である。
導光板底面に頂角97.2°の三角柱状の溝を設け、これを4層で三角柱の幅でずらして配置し、αを7.2°で入射すれば鉛直上方に全反射して8色を混色する。この構造は導光板の上面が平坦で、底面は三角柱の溝なので容易に重ね合わせることが出来る。同一形状の導光板を使用し、三角柱の幅でずらすための枠で固定すれば混色部を形成することが出来る。
光源部は軸外放物面鏡の一方を放熱板にすれば放熱が良くなる利点があるが、回転放物面鏡の焦点に発光素子を設けることも出来る。入射角41.4°に対してポリカーボネートで臨界角39.0°なので平行性が±2.4°未満の光源が必要である。共重合ポリエステルn=1.63は臨界角37.8°なので平行性は±3.6°未満の光源が可能である。放物面鏡の焦点距離と光源寸法による誤差角度εなどを考慮した平行性が要求される。
出射面にはスポットライトの放射角に合わせて凹マイクロレンズアレイを設けて拡散光を出射することが出来る。放射角を変更すればダウンライトにも応用出来、細長い形状にすれば線形照明に応用することも出来る。8色混合のとき、図13の破線のような特性の個別発光ダイオードを用いれば合成スペクトル特性は太実線のようになり、平均演色評価数は100が得られる。
【0031】
実施例2
6色を混合するLED電球の実施例の断面図を図17に示す。全反射三角柱は図7の構造である。一方の透明物質の面に接合剤を塗布した後に他方の透明物質側を貼り合わせて形成することが出来る。
光源部は軸外放物面鏡として軸外側を放熱板にすれば放熱面積を広くとれるので放熱が良い。一般のLED電球は中心付近に設けられるので熱抵抗を下げるために放熱フィンが大きくて重いが、この光源部は口金側の放熱板の最も広い部分かつ外周部に設けるので最良の放熱位置である。
出射面には放射角に合わせて凹マイクロレンズアレイを設けて拡散光を出射することが出来る。図17では側面にも放射するための凹マイクロレンズアレイを示しているが、放射角が狭い場合は側面放射用凹マイクロレンズアレイを設けずに全面を中心部の凹マイクロレンズアレイのみの構成にすることも出来る。凹マイクロレンズによる放射角は数7で設定することが出来る。
側面凹マイクロレンズで出射するために側面方向に変換するための全反射面を設けている。
6色混合のとき、図12の破線のような特性の個別発光ダイオードを用いれば合成スペクトル特性は太実線のようになり、平均演色評価数は99が得られる。
【0032】
実施例3
6色を混合する車両用前照灯の実施例の斜視図を図18に示す。一方の界面の形状を緩傾斜面と平面で交互に配置し、他方の界面は三角柱状の空間として三角柱状の低屈折率物質空間を高屈折率物質の内部に設けた図5の構造などを採用することが出来る。一方の透明物質の面に接合剤を塗布した後に他方の透明物質側を貼り合わせて形成することが出来る。
光源部は軸外放物面鏡として軸外側を放熱板にすれば放熱面積を広くとれるので放熱が良く、信頼性を高めることが出来る。
出射面にはスポットライトの放射角に合わせて凹マイクロレンズアレイを設けて拡散光を出射することが出来る。車両用前照灯では走行ビーム照射範囲とすれ違いビーム照射範囲を切り替えて使用される。この実施例では上部を走行ビーム用、下部をすれ違いビーム用に設定した構造である。走行ビーム照射域は図19のように上向きに照射するが、上下方向よりも水平方向に拡げて照射するために水平方向の曲率半径が短く、上下方向の曲率半径が長い楕円凹マイクロレンズである。
すれ違いビーム照射域は走行ビームよりも下向に照射するが、約15°のカットオフラインで対向車への照射を避ける必要がある。走行車線前方を照射する領域、対向車線を照射する領域、対向車線側方を照射する領域の3つがあるので凹マイクロレンズの上下方向の曲率は3種類を設けている。図18の右半分は走行車線正面を照射するので上部を照射するように曲率半径を短くし、対向車線の側方を照射する図18の左側は曲率半径を長く設定する。対向車線照射域はカットオフラインに合わせて曲率半径を順次変えることにより設定する。
6色混合のとき、図12の破線のような特性の個別発光ダイオードを用いれば合成スペクトル特性は太実線のようになり、平均演色評価数は99が得られるので車両用前照灯として十分な演色性である。

【符号の説明】
【0033】
1:全反射三角柱 2:全反射面
3:高屈折率物質 4:低屈折率物質
5:基準面 6:放物面鏡
7:接合面 8:発光素子
9:凹屈折面 10:凹面鏡
11:光源 12:入射光
13:拡散光 14:平行光
15:反射光 16:界面
17:放熱材 18:回路基板
19:カバー 20:走行ビーム照射域
21:すれ違いビーム照射域 22:カットオフライン
23:センターライン 24:道路境界線
25:全反射溝 26:導光板
27:四角錐 28:バンドパスミラー
29:屈折格子 30:反射格子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
全反射三角柱の高さh、基準面方向幅d、混色数c、入射光の仰角α、全反射面の傾斜角βとしたとき、
α=tan−1(h/(d(c−1)))、
β=tan−1(h/d)、
α+2β=90°
を満たす全反射三角柱の高さh、基準面方向幅dで三角柱溝を形成し、
基準面の仰角αの対称方向からの入射光を前記全反射三角柱に照射して、
双方とも鉛直方向に全反射して同一方向に出射することを特徴とする混色照明装置。
【請求項2】
階段状に分散して列をなして配置した全反射三角柱の間を、
別の列をなして配置された全反射三角柱からの反射光を通過させることによって偶数方向の光を混合することを特徴とする請求項1に記載の混色照明装置。
【請求項3】
全反射面三角柱からなる混色照明装置の出射面にマイクロレンズアレイを設けた構造により放射角を拡大して出射することを特徴とする請求項1に記載の混色照明装置
【請求項4】
全反射三角柱からなる混色照明装置の出射面にすれ違いビーム照射域のマイクロレンズアレイを設けた構造から成り、前記マイクロレンズの曲率半径を段階的に変化させてカットオフラインに一致させることを特徴とする請求項1に記載の混色照明装置


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−238407(P2012−238407A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104973(P2011−104973)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【特許番号】特許第4789027号(P4789027)
【特許公報発行日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(306030862)
【Fターム(参考)】