説明

添加剤としてイオン液体を使用することにより、配合潤滑油中のハイドロパーオキサイドによって誘起される酸化を制御する方法

潤滑油の抗酸化性を、潤滑油への添加量のイオン液体の添加によって改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、添加剤を用いることによって、ハイドロカーボン配合(又は処方)潤滑油で潤滑されたエンジン中の酸化の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
アニオンとカチオンを含む低沸点塩であるイオン液体は、それらの不揮発性、不燃性と、熱、機械および電気化学安定性のために、潤滑用途に着目されてきた。
【0003】
(特許文献1)は、基油として、アニオンとカチオンで形成され、イオン濃度が1モル/dm以上であるイオン液体を含む潤滑剤に関する。基油自体としてのイオン液体の説明において、参考文献は、アニオンとカチオン成分を詳述しており、望ましくない腐食性および粘度の喪失を排除するために、イオン液体システムを、実質的に水を含まない状態とする必要性を示している。この参考文献では、好適な有用なカチオンとして特に、イミダゾリウム、ピリジニウム、アルキルアンモニウム、数多くの好適なアニオンの中でも、BFおよびPFを特定している。特に、アルキルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、アルキルアンモニウムテトラフルオロボレート等の材料が、潤滑基流体自体として用いることが好適であることが開示されている。この参考文献に含まれるイオン液体はいずれも、様々な添加剤と組み合わせて用いることができ、鉱油および合成油と組み合わせて用いてもよい。この参考文献には、「イオン液体の物理特性は、その分子構造から予測するのが困難であり、粘度、粘度指数および流動点等の特性を、分子構造の修正により容易に制御することはできない。」(段落[0007])とある。
【0004】
(特許文献2)には、分散剤および洗剤としての、高分子量N−ヒドロカルビル置換第4級アンモニウム塩(炭化水素成分分子量350〜3000)の添加が教示されている。‘858のカチオンは、高分子量第4級アンモニウムであり、アニオンは、ハロゲン化物、亜硝酸塩、硝酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、アルキルホウ酸塩、重炭酸塩、アルカン酸塩、リン酸塩、アルキルリン酸塩、ジアルキルリン酸塩、ジアルキルジチオリン酸塩等である。
【0005】
(特許文献1)には、基油として、そして炭化水素基油または合成基油と混合できる成分としてのイオン液体が教示されている。イオン液体としては、アルキルアンモニウム塩が挙げられる。
【0006】
(特許文献3)には、第4級アンモニウムスクシンイミド塩が教示されており、それを、10W40完全配合潤滑油に添加しており、分散剤としてのその有効性をベンチVC試験で評価している。
【0007】
(特許文献4)には、スクシンイミド等のアミン含有分散剤と、フルオロリン酸と反応させて、付加物を生成することが教示されている。この付加物を潤滑油に添加し、フルオロカーボンシールへの攻撃に対して分散剤を不活性化するその能力を評価した。
【0008】
(特許文献5)には、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、第4級アンモニウムカチオン、第4級ホスホニウムカチオンおよびビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンからなる群から選択されるカチオンで構成された合成潤滑剤が教示されている。
【0009】
(特許文献6)は、潤滑油として用いられるイオン液体に関する。イオン液体は、式(NC)−(A)−X−((Q))−(B)−(CN)の材料であり、式中、Xはホウ素、炭素、窒素、酸素、アルミニウム、ケイ素、リン、硫黄、ヒ素またはセレンであり、Qは、有機基であり、Aは、ゼロより大きい整数であり、(b)〜(e)はゼロを含む整数である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0027038号明細書
【特許文献2】米国特許第4,108,858号明細書
【特許文献3】米国特許第4,326,973号明細書
【特許文献4】米国特許第4,747,971号明細書
【特許文献5】国際公開第07/055324号パンフレット
【特許文献6】特開2006/351856号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、基油(又はベースオイル)と、酸化防止剤(又は抗酸化剤)、摩耗防止剤(又は耐摩耗剤)、洗剤(又は界面活性剤)または分散剤から選択される少なくとも1種の添加量の添加剤を含む潤滑油によって潤滑された内燃機関における酸化、好ましくは、ハイドロパーオキサイドによって誘起(又は誘導)される酸化を減少させる方法であって、潤滑油に、添加量の1種以上のイオン液体を添加することによって減少させる方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添加量(又は添加剤量)のイオン液体とは、本発明においては、潤滑油配合物(又は処方物)の全量を基準として、約0.01〜5.0重量%の範囲の量、好ましくは、約0.1〜1.55重量%の範囲の量、より好ましくは、約0.1〜0.5重量%のイオン液体の量を意味する。
【0013】
イオン液体は、カチオンとアニオンで形成された塩であり、結合はイオン結合である。
【0014】
本発明において添加剤として用いるイオン液体は、1種以上のアニオンにイオン結合した1種以上のカチオンを含む。
【0015】
典型的なカチオンは、
【化1】

(式中、各R〜R12は、同一でも異なっていてもよく、水素、−OH、C〜C16アルキル基、C〜Cアルケニル基(このアルキルまたはアルケニル基は、−CN、−SOH、−OHからなる群から選択されるヘテロ原子置換基を含有していてもよい)、C〜Cフルオロカーボン基、C〜C10アリール基、C〜C12アリールキル基、C〜C12アルキルアリール基(これら全ての基がエーテル結合を有していてもよい)、C〜Cアルコキシ基からなる群から選択され、式中、R5’は、同一または異なり、水素、C〜C10アルキル、C〜C10ヒドロキシアルキル、C〜C10アリール、C〜C12アリールキル、C〜C12アルキルアリールから選択され、(a)、(b)および(c)は、1〜30、好ましくは、1〜10の整数である)およびかかるカチオンの混合物から選択される)により表わすことができる。
【0016】
好ましくは、カチオンは、
【化2】

(式中、R、R、R、R、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、水素、C〜Cアルキル基、C〜C10アリール基、C〜C12アラルキル基またはC〜C12アルキルアリール基、好ましくはC〜Cアルキル基、Cアリール基からなる群から選択される)からなる群のうち1種以上から選択される。
【0017】
最も好ましくは、カチオンは、
【化3】

からなる群のうち1種以上から選択される。
【0018】
アニオンは、BX、Al、Ga、PX(式中、Xは、ハロゲン、好ましくは、フッ素または臭素、最も好ましくは、フッ素である)、R17OSO、R17SO、SO−2、PO−3、NO、(CN)、R17PO、R18COO、R17OCOO、R18PO、SCN、HO(R18)COO、HS(R18)COO、R18、(C(2n+1−x))SO、(C(2n+1−x))COO、F(HF)、((C(2n+1−x))Y’O、((C(2n+1−n))Y’O(式中、Y’は、炭素原子または硫黄原子であり、2つ以上のY’が存在するとき、それらは、互いに同一でも異なっていてもよく、複数の(C(2n+1−n))Y’O基は、互いに同一でも異なっていてもよい)、nは、整数であり、xは、0〜13の整数であり、zは、1〜3の整数であり、Y’が炭素原子で、0〜4のとき、Y’は硫黄原子である)B(CY’’(2m+1)4、P(CY’’(2m+1)(式中、Y’’は、水素原子またはフッ素原子であり、複数のY’’が存在するとき、それらは互いに同一でも異なっていてもよく、複数の(CY’’(2m+1))基は、互いに同一でも異なっていてもよく、mは、0〜6の整数であり、R17は、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アリールまたはアルキルまたはアルキルアリールであり、R18は、C〜C10アルキル、C〜C10アリール、C〜C12アリールアルキルまたはC〜C12アルキルアリールである)、
【化4】

(式中、R19は、C〜C22アルキルである)
【化5】

(式中、R20およびR21は、同一でも異なっていてもよく、水素またはC〜C22アルキルから選択される)、下式のアニオン
【化6】

(式中、R13〜R16のそれぞれは、互いに同一でも異なっていてもよく、(C(2n+1−x))(式中、nおよびxは前述したとおりである)から選択される基である)、および
【化7】

(式中、Rは、HまたはC〜C12ヒドロカルビル、好ましくは、HまたはC〜Cヒドロカルビルであり、Qは、環において可能な炭素数である)、ジC〜C20アルキルジチオホスフェート、ジC〜C20アルキルジチオカルバメート(carbamate)およびかかるアニオンの混合物からなる群から選択される。
【0019】
好ましくは、アニオンは、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ビス(トリフルオロメチルスルホニルイミド、
【化8】

ジ(C〜C12アルキル)ジチオホスフェート、ジ(C〜C12アルキル)ジチオカルバメートからなる群のうち1種以上から選択される。
【0020】
イオン液体を添加することのできる潤滑油は、約100〜450℃の潤滑油沸点範囲で沸騰する天然または合成ベースストックまたは基油から選択される1種以上のベースストックまたは基油を含む任意の潤滑油である。本明細書において、基油とベースストックという用語は、区別なく用いられる。
【0021】
様々な潤滑基油が当該技術分野において知られている。潤滑基油は、天然油と合成油の両方である。天然および合成油(またはこれらの混合物)は、未精製、精製または再精製で用いることができる(後者のものは、再生または再処理油としても知られている)。未精製油は、天然または合成源から直接得られたものであり、追加の精製なしで用いられる。これらのものとしては、レトルト採取法から直接得られるシェール油、一次蒸留から直接得られる石油およびエステル化プロセスから直接得られるエステル油が挙げられる。精製油は、少なくとも1つの潤滑油特性を改善するために、精製油に、1つ以上の精製工程がなされる以外は、未精製油で述べた油と同様である。当業者なら、多くの精製プロセスに精通している。これらのプロセスとしては、溶媒抽出、二次蒸留、酸抽出、塩基抽出、ろ過およびパーコレート法が挙げられる。再精製油は、以前使用された油を用いること以外は、精製油と同様のプロセスにより得られる。
【0022】
グループI、II、III、IVおよびVは、潤滑基油の指針を作成するために、American Petroleum Institute(API Publication 1509;www.API.org)により開発および定義された基油ストックの広い分類である。グループIベースストックは、概して、約80〜120の粘度指数を有し、約0.03%を超える硫黄および/または約90%未満の飽和物を含有する。グループIIベースストックは、概して、約80〜120の粘度指数を有し、約0.03%以下の硫黄および約90%以上の飽和物を含有する。グループIIIストックは、概して、約120を超える粘度指数を有し、約0.03%以下の硫黄および約90%を超える飽和物を含有する。グループIVは、ポリアルファオレフィン(PAO)を含む。グループVベースストックは、グループI〜IVに含まれないベースストックを含む。以下の表に、これら5つのグループのそれぞれの特性をまとめてある。
【0023】
【表1】

【0024】
天然油としては、動物油、植物油(例えば、ヒマシ油およびラード油)および鉱油が挙げられる。好ましい熱酸化安定性を有する動物および植物油を用いることができる。天然油の中では、鉱油が好ましい。鉱油は、原油源について、例えば、パラフィン系、ナフテン系または混合パラフィン−ナフテン系のいずれかによって、様々に異なる。石炭またはシェールから誘導された油も有用である。天然油は、それらの製造および精製に用いる方法によっても、例えば、蒸留範囲およびそれらが、直留かクラックか、水素化精製されたかまたは溶媒抽出されたかによっても異なる。
【0025】
ポリアルファオレフィン、アルキル芳香族および合成エステル等の合成油をはじめとするグループIIおよび/またはグループIIIの水素処理またはハイドロクラックベースストックも、周知のベースストック油である。
【0026】
合成油としては、重合および内部重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー、エチレン−オレフィンコポリマーおよびエチレン−アルファオレフィンコポリマー)等の炭化水素油が挙げられる。ポリアルファオレフィン(PAO)油ベースストックが、一般的に用いられる合成炭化水素油である。例を挙げると、C、C10、C12、C14オレフィンまたはこれらの混合物から誘導されたPAOを用いてもよい。例えば、その全内容が参照することによって本明細書に組み込まれる米国特許第4,956,122号明細書、同第4,827,064号明細書および同第4,827,073号明細書を参照されたい。
【0027】
ヒドロカルビル芳香族は、基油または基油成分として用いることができ、ベンゼノイド部分またはナフテノイド部分またはそれらの誘導体等の芳香族部分から誘導された、その重量の少なくとも約5%を含有する任意のヒドロカルビル分子とすることができる。これらのヒドロカルビル芳香族としては、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、アルキルジフェニルオキサイド、アルキルナフトール、アルキルジフェニルスルフィド、アルキル化ビス−フェノールA、アルキル化チオジフェノール等が挙げられる。芳香族は、モノ−アルキル化、ジアルキル化、ポリアルキル化等とすることができる。芳香族は、単官能性または多官能性とすることができる。ヒドロカルビル基はまた、アルキル基、アルケニル基、アルキニル、シクロアルキル基、シクロアルケニル基およびその他関連のヒドロカルビル基の混合物で構成することもできる。ヒドロカルビル基は、約C〜約C60の範囲とすることができるが、約C〜約C40が好ましいことが多い。ヒドロカルビル基の混合物が好ましいことが多い。ヒドロカルビル基は、場合により、硫黄、酸素および/または窒素含有置換基を含有することができる。芳香族基はまた、分子の少なくとも約5%が、上述のタイプの芳香族部分で構成されていれば、天然(石油)から誘導することもできる。約3cSt〜約50cStの100℃での粘度が好ましく、ヒドロカルビル芳香族成分については、約3.4cSt〜約20cStの粘度がより好ましいことが多い。例えば、ナフタレンまたはメチルナフタレンは、オクテン、デセン、ドデセン、テトラデセンまたはそれ以上のオレフィン、同様のオレフィンの混合物等でアルキル化することができる。潤滑油組成物中のヒドロカルビル芳香族の有用な濃度は、用途に応じて、約2%〜約25%、好ましくは、約4%〜約20%、より好ましくは、約4%〜約15%とすることができる。
【0028】
エステルは、有用なベースストックを含む。添加剤の溶解およびシール適合性特性は、二塩基酸とモノアルカノールのエステル、およびモノカルボン酸のポリオールエステル等のエステルの使用により確保できる。前者のタイプのエステルとしては、例えば、フタル酸、コハク酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸等とのジカルボン酸と、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール等の様々なアルコールのエステルが挙げられる。これらのタイプのエステルの具体例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル等が挙げられる。
【0029】
特に有用な合成エステルは、1種以上の多価アルコール、好ましくは、ヒンダードポリオール(ネオペンチルポリオール、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトール)を、少なくとも4個の炭素原子を含有するアルカン酸、好ましくは、C〜C30酸、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸およびベヘン酸をはじめとする飽和直鎖脂肪酸、または対応する分岐鎖脂肪酸またはオレイン酸等の不飽和脂肪酸、またはこれらの材料のいずれかの混合物と反応させることにより得られるものである。
【0030】
好適な合成エステル成分としては、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールおよび/またはジペンタエリスリトールと、約5〜約10個の炭素原子を含有する1種以上のモノカルボン酸とのエステルが挙げられる。これらのエステルは、広く市販されており、例えば、ExxonMobil Chemical CompanyのMobil P−41およびP−51エステルがある。
【0031】
従来のものではない、または一般的でないベースストックおよび/または基油としては、(1)1つ以上のガス・ツー・リキッド(GTL)材料、同様に、(2)合成ろう、天然ろうまたはろう質フィード、鉱油系および/または非鉱油系ろう質フィードストック、例えば、軽油、スラックろう(天然油、鉱油または合成、例えば、フィッシャー・トロプシュフィードストックの溶媒脱ろうから誘導されたもの)、天然ろうおよび軽油等のろう質ストック、ろう質燃料水素化分解装置底液、ろう質ラフィネート、水素化分解物、熱分解物、脚油またはその他鉱物、鉱油、さらには、非石油系油から誘導されたろう質材料、例えば、石炭液化またはシェール油からのろう質材料、約20以上、好ましくは、約30以上の炭素数の直鎖状または分岐状ヒドロカルビル化合物から誘導された水素化脱ろうまたは水添異性化/触媒(および/または溶媒)脱ろうベースストックおよび/または基油、およびかかるベースストックおよび/または基油の混合物から誘導されたベースストックおよび/または基油の1つまたは混合物が挙げられる。
【0032】
GTL材料は、1つ以上の合成、化合、変換、転移および/または分解/脱構築プロセスにより、ガス状炭素含有化合物、水素含有化合物および/または水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、プロピン、ブタン、ブチレンおよびブチン等のフィードストックとしての成分から誘導された材料である。GTLベースストックおよび/または基油は、それ自体、フィードストックとして、単純なガス状炭素含有化合物、水素含有化合物および/または成分から誘導される、炭化水素、例えば、ろう質合成炭化水素から通常誘導される潤滑粘度のGTL材料である。GTLベースストックおよび/または基油としては、(1)例えば、蒸留の後、低減した/低い流動点の潤滑油が生成される触媒脱ろうプロセス、溶媒脱ろうプロセスのいずれか、または両方を含む最終ろう処理工程を行う等、合成GTL材料から分離/分画された潤滑油沸点範囲で沸点する油、(2)例えば、水素化脱ろうまたは水素化異性化触媒および/または溶媒脱ろう合成ろうまたはろう質炭化水素を含む合成ろう異性化物、(3)水素化脱ろうまたは水素化異性化触媒および/または溶媒脱ろうフィッシャー・トロプシュ(F−T)材料(すなわち、炭化水素、ろう質炭化水素、ろうおよび可能な類似酸素化物)、好ましくは、水素化脱ろうまたは水素化異性化/その後、触媒および/または溶媒脱ろう脱ろうF−Tろう質炭化水素または水素化脱ろうまたは水素化異性化/その後、触媒(または溶媒)脱ろうされたもの、F−Tろうまたはこれらの混合物が挙げられる。
【0033】
GTL材料、特に、水素化脱ろうまたは水素化異性化/の後触媒および/または溶媒脱ろうしたろうまたはろう質フィードから誘導されたGTLベースストックおよび/または基油、好ましくは、F−T材料から誘導されたベースストックおよび/または基油は、典型的に、約2mm/秒〜約50mm/秒の100℃での動粘性率を有するという特徴がある(ASTM D445)。それらは、さらに、典型的に、−5℃〜約−40℃以下の流動点を有するという特徴がある(ASTM D97)。それらはまた、典型的に、約80〜約140以上の粘度指数を有するという特徴がある(ASTM D2270)。
【0034】
また、GTLベースストックおよび/または基油は、典型的に、高パラフィン(90%超の飽和物)であり、単環性パラフィンおよび多環性パラフィンと、非環式イソパラフィンを組み合わせた混合物を含有していてもよい。かかる組み合わせにおけるナフテン(すなわち、シクロパラフィン)含量の比は、用いる触媒および温度により異なる。さらに、GTLベースストックおよび/または基油は、典型的に、非常に少ない硫黄および窒素含量であり、概して、これらの各成分の約10ppm未満、より典型的には、約5ppm未満含有する。F−T材料、特に、F−Tろうから得られるGTLベースストックおよび/または基油の硫黄および窒素含量は、実質的にゼロである。また、リンおよび芳香族がないと、低SAP生成物の形成に、実質的に特に好適なものとなる。
【0035】
GTLベースストックおよび/または基油および/またはろう異性化ベースストックおよび/または基油という用語は、製造プロセスにおいて回収される広い粘度範囲の材料の個々の留分、2つ以上のかかる留分の混合物、同じく、目的とする動粘性率を示すブレンドを生成する1つまたは2つ以上の低粘度留分と、1、2以上の高粘度留分の混合物を含むものと考えられる。
【0036】
GTLベースストックおよび/または基油が誘導されるGTL材料は、好ましくは、F−T材料(すなわち、炭化水素、ろう質炭化水素、ろう)である。
【0037】
イオン液体酸化防止剤を添加した潤滑油はまた、洗剤、分散剤、フェノール酸化防止剤、アミン酸化防止剤、耐摩耗性添加剤から選択される添加量の1種以上の性能添加剤も含有しており、また、流動点降下剤、腐食防止剤、シール適合性添加剤、消泡添加剤、金属不活性剤、阻害剤、防錆添加剤、摩擦調整剤等も含有していてもよく、これらは全て、当業者に既に周知された材料であり、LUBRICANTS AND RELATED PRODUCTS、 by Klamann,Verlag Chemie, Deerfield Beach,Florida(ISBN 0−89573−177−0)、「Lubricant Additives」 by M.W.Ranney,Noges Data Corporation,Parkridge,New Jersey(1978)、および「Lubricant Additives」C.V.Smaltheer and R.K.Smith,Legiers−Helen Company,Cleveland,Ohio(1967)に既述されている。
【0038】
イオン液体酸化防止剤は、ベースストックおよび/または基油自体に、またはベースストック/基油および少なくとも1種の追加の性能添加剤を含む配合潤滑剤に添加することができる。
【0039】
亜鉛またはモリブデンジアルキルジチオホスフェートあるいは亜鉛またはモリブデンジアルキルジチオカルバメート、好ましくは、亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(ZDDP)またはモリブデンジアルキルジチオカルバメート(MoDTC)のうち少なくとも1種を含有する潤滑油を配合(又は処方)するとき、イオン液体を、潤滑油に添加する前に、亜鉛またはモリブデンジアルキルジチオホスフェートあるいは亜鉛またはモリブデンジアルキルジチオカルバメートと予備混合する、すなわち、イオン液体および例えばZDDPまたはMoDTCを一緒に混合して、潤滑油に予備混合物として添加すると、イオン液体に対する酸化防止剤の影響は、意外にも増大する。アルキル基は、同一または異なるものとすることができ、C〜C12第1級または第2級アルキル基から選択することができ、好ましくは、第2級アルキル基である。予備混合は、イオン液体およびZDDPあるいはMoDTCを一緒に、十分に加熱してから、単に添加して、イオン液体と亜鉛またはモリブデンジアルキルジチオホスフェートまたはジアルキルジチオカルバメートと反応させることにより行うことができる。
【0040】
好ましくは、イオン液体のみを、30〜120℃、好ましくは、約50℃で、攪拌して加熱する。その後、イオン液体の加熱溶液に、亜鉛またはモリブデンDDPあるいは亜鉛またはモリブデンDTCを添加する。
【0041】
その後、混合物を、約50〜120℃、好ましくは、約90℃の温度に、イオン液体および亜鉛またはモリブデンDDPまたはDTCが相互作用するのに十分な時間、好ましくは、約30分〜2時間、好ましくは、約1時間、さらに加熱する。冷却すると、淡褐色の透明な溶液が形成される。イオン液体および亜鉛またはモリブデンDDPまたはDTCは、任意の比率だが、好ましくは、1:4〜4:1の比率、より好ましくは、1:3〜3:1、さらにより好ましくは、1:2〜2:1、最も好ましくは、1:1の比率で化合することができる。潤滑油が、かかる亜鉛またはモリブデンDDPまたはDTC材料を既に含有させている場合には、イオン液体との予備混合物として用いるかかるDDPまたはDTCの量は、潤滑油に元々添加しようとしたかかるDDPまたはDTC材料の処理レベルの全てまたは一部を占めるはずである。すなわち、イオン液体との予備混合物として油に添加されたDDPまたはDTC材料の量は、油に元々添加しようとしたDDPまたはDTCの量に加えたり、それを上回ることのない量で用いる。
【0042】
潤滑油に添加されたかかる予備混合物の量は、潤滑油配合物(又は処方物)の総量を基準として、約0.01〜5.0重量%のイオン液体、好ましくは、約0.1〜1.50重量%のイオン液体、より好ましくは、約0.1〜0.5重量%のイオン液体の上述した範囲で、潤滑油にある量のイオン液体を添加するのに十分な量である。
【実施例】
【0043】
実施例1
配合(又は処方)5W30エンジンオイルのハイドロパーオキサイド誘起酸化に対する抵抗性を評価した。試験したエンジンオイルは、約9重量%の摩擦調整剤、分散剤、洗剤、消泡剤、酸化防止剤を含有する添加剤処理アドパックを含有し、9重量%の処理レベルZDDP(0.1重量%)およびMolyDTC(0.1重量%)を含んでいた。この油の別の試料に、それぞれ0.1重量%の様々なイオン液体(IL)を添加し、各混合物の酸化性能を評価した。
【0044】
パーオキサイド酸化は、t−ブチルハイドロパーオキサイドを、132ミリモル/ハイドロパーオキサイド/リットルを与える量で、油に添加することにより誘導した。HPNとは、ハイドロパーオキサイド数を意味する。HPNが少なければ少ないほど、油はハイドロパーオキサイド誘起酸化に対して抵抗力がある。ハイドロパーオキサイドを含有する油を、30分間、70℃まで加熱し、冷却してから、滴定し、HPNを求めた。結果を表1に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
1−ブチル−4−メチルペリジニウムテトラフルオロボレートおよびt−ブチルハイドロパーオキサイドの混合溶液は、132の初期HPNを示し、これは、70℃で30分間加熱した後も同じままであった。このことは、IL単体が、HP分解剤でないことを示している。
【0047】
示されるとおり、全ての場合において、イオン液体を含有する油のHPNは、イオン液体が全く存在しない配合油(又は処方油)に示されたよりも低いレベルまで低減した。
【0048】
実施例2
他の一連の実験で、配合5W30潤滑油に、0.1重量%の様々なイオン液体を添加したが、イオン液体は、ZDDPかMoDTCのいずれかとの予備混合物として添加した。5W30潤滑油に添加されたアドパックにおいて、予備混合物が添加された実施例の場合、イオン液体予備混合物を介して油に添加されたZDDPまたはMoDTCの量が、予備混合物が存在しなかったときの、対照油に存在するZDDPまたはMoDTCの量と同じとなるように、アドパックに存在した0.1重量%のZDDPまたは0.1重量%のMoDTCは排除された。用いたZDDPは、第2級C〜CアルキルZDDPであり、MolyDTCは、CアルキルMolyトリマーDTCであった。結果を表2に示す。
【0049】
【表3】

【0050】
予備混合物は全て、イオン液体を、攪拌しながら、約50℃の温度まで加熱することにより調製した。その溶液に、適量のZDDPまたはMoDTCを添加して、50:50モル比とし、混合物を1時間、90℃まで加熱した。それぞれの場合において添加した予備混合物の量は、0.1重量%のイオン液体自体を潤滑油に充填するのに十分なものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油と、添加量の抗酸化剤、耐摩耗剤、洗剤または分散剤から選択される少なくとも1種の添加剤とを含む潤滑油によって潤滑された内燃機関における酸化を減少させる方法であって、前記潤滑油に、添加量の1種以上のイオン液体を添加することによって減少させる方法。
【請求項2】
前記添加量のイオン液体が、前記潤滑油の総量を基準として、約0.01〜5.0重量%の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イオン液体が、イオン結合により結合したカチオンとアニオンで形成された塩である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記カチオンが、
【化1】

【化2】

(式中、各R〜R12は、同一でも異なっていてもよく、水素、−OH、C〜C16アルキル基、C〜Cアルケニル基(前記アルキルまたはアルケニル基は、−CN、−SOH、−OHからなる群から選択されるヘテロ原子置換基を含有していてもよい)、C〜Cフルオロカーボン基、C〜C10アリール基、C〜C12アリールアルキル基、C〜C12アルキルアリール基(これら全ての基がエーテル結合を有していてもよい)、C〜Cアルコキシ基からなる群から選択され、式中、R5’は、同一または異なり、水素、C〜C10アルキル、C〜C10ヒドロキシアルキル、C〜C10アリール、C〜C12アラルキル、C〜C12アルキルアリールから選択され、(a)、(b)および(c)は、1〜30、好ましくは、1〜10の整数である)およびかかるカチオンの混合物から選択され、
前記アニオンが、BX、Al、Ga、PX(式中、Xは、ハロゲンである)、R17OSO、R17SO、SO−2、PO−3、NO、(CN)、R17PO、R18COO、R17OCOO、R18PO、SCN、HO(R18)COO、HS(R18)COO、R18、(C(2n+1ーx))SO、(C(2n+1−x))COO、F(HF)、((C(2n+1−x))Y’O、((C(2n+1−x))Y’O(式中、Y’ は、炭素原子または硫黄原子であり、2つ以上のY’が存在するとき、それらは、互いに同一でも異なっていてもよく、複数の((C(2n+1−x))Y’O基は、互いに同一でも異なっていてもよく、nは、整数であり、xは、0〜13の整数であり、zは、Y’が炭素原子のとき、1〜3の整数であり、Y’が硫黄原子のとき、0〜4である)、B(CY’’(2m+1)4、P(CY’’(2m+1)(式中、Y’’は、水素原子またはフッ素原子であり、複数のY’’が存在するとき、それらは互いに同一でも異なっていてもよく、複数の(CY’’(2m+1))基は、互いに同一でも異なっていてもよく、mは、0〜6の整数であり、R17は、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アリールまたはアルキルまたはアルキルアリールであり、R18は、C〜C10アルキル、C〜C10アリール、C〜C12アリールアルキルまたはC〜C12アルキルアリールである)、
【化3】

(式中、R19は、C〜C22アルキルである)
【化4】

(式中、R20はおよびR21は、同一でも異なっていてもよく、水素またはC〜C22アルキルから選択される)、下式のアニオン
【化5】

(式中、R13〜R16のそれぞれは、互いに同一でも異なっていてもよく、(C(2n+1-x))(式中、nおよびxは前述したとおりである)から選択される基である)、および
【化6】

(式中、Rは、HまたはC〜C12ヒドロカルビルであり、Qは、環において可能な炭素数である)、ジC〜C20アルキルジチオホスフェート、ジC〜C20アルキルジチオカルバメートおよびかかるアニオンの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記カチオンが、
【化7】

(式中、各R、R、R、R、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、水素、C〜Cアルキル基、C〜C10アリール基、C〜C12アラルキルまたはC〜C12アルキルアリール基、好ましくは、C〜Cアルキル基およびCアリール基からなる群から選択される)からなる群から1種以上選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記カチオンが、
【化8】

からなる群のうち1種以上から選択され、
前記アニオンが、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ビス(トリフルオロメチルスルホニルイミド、
【化9】

ジ(C〜C12アルキル)ジチオホスフェート、ジ(C〜C12アルキル)ジチオカルバメートからなる群のうち1種以上から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記イオン液体が、亜鉛またはモリブデンジアルキルジチオホスフェートあるいは亜鉛またはモリブデンジアルキルジチオカルバメートと予備混合される、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記亜鉛またはモリブデンジアルキルジチオホスフェートあるいは亜鉛またはモリブデンジアルキルジチオカルバメートの前記アルキル基は、同一でも異なっていてもよく、C〜C12第1級および第2級アルキル基から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記イオン液体と、前記亜鉛またはモリブデンジアルキルジチオホスフェートあるいは亜鉛またはモリブデンジアルキルジチオカルバメートは、1:10〜10:1の比率で組み合わされる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記イオン液体と、前記亜鉛またはモリブデンジアルキルジチオカルバメートは、
(a)前記イオン液体のみを30〜100℃の温度に加熱すること、
(b)前記加熱したイオン液体に、前記亜鉛またはモリブデンジアルキルジチオホスフェート(DDP)あるいは亜鉛またはモリブデンジアルキルジチオカルバメート(DTC)を添加すること、
(c)(b)の前記混合物を、50〜120℃の温度に、前記イオン液体と、前記亜鉛またはモリブデンDDPあるいはDTCが相互作用するために十分な時間、加熱すること
によって予備混合される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記潤滑油中の亜鉛またはモリブデンDDPあるいはDTCの唯一の供給源が、前記予備混合物からである、請求項7に記載の方法。

【公表番号】特表2012−518704(P2012−518704A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551061(P2011−551061)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/000459
【国際公開番号】WO2010/096169
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】