説明

添加剤注入装置を備える動力系

動力系が提供される。この動力系は、粒子状物質を含む排気流を発生させるように構成された動力源を含む。この動力系はまた、燃料供給手段と動力源とを接続し、燃料流を燃料供給手段から動力源へと方向付けるように構成された燃料供給ラインも含む。添加剤注入装置は、添加剤を燃料流の中に注入するように構成される。イオン化装置は、少なくとも部分的に排気流の中に配置され、電荷を粒子状物質と添加剤に印加するように構成される。微粒子フィルタは、排気流から粒子状物質と添加剤を除去するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して動力系に関し、より具体的には、添加剤注入装置を備える動力系に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンを含む内燃機関は、大気汚染の原因となり得る物質の複合的な混合物を排出する。これらの大気汚染物質には、粒子状物質または煤煙として知られる固形物が含まれている可能性がある。環境意識の高まりにより、ディーゼルエンジンの排出物基準がより厳しくなっている。エンジンから排出される粒子状物質の量は、エンジンの種類、エンジンの大きさ、および/またはエンジンのクラスに応じて規制されて得る。
【0003】
エンジンメーカが環境中への粒子状物質排出規制に適合するために採用している方法の1つは、粒子状物質捕集装置、たとえば微粒子トラップまたはディーゼル微粒子捕集フィルタ(DPF)を使用して、エンジンの排気流から粒子状物質を除去する、というものである。DPFは、フィルタ基板内に粒子状物質を捕捉するように設計されたフィルタであり、これには、たとえばワイヤメッシュまたはセラミックハニカム濾材が含まれていてもよい。この濾材は、比較的粒径の大きい粒子状物質を排気から減少させるには有効であるが、比較的粒径の小さい粒子状物質の捕捉においては不十分となり得る。
【0004】
時間の経過により、粒子状物質が濾材上に堆積することがあり、排気通路を閉塞させて、その結果、排気圧力が上昇し、エンジンの性能が低下し得る。DPFは、たとえばエンジンの燃焼またはDPFに関連付けられた加熱装置の制御を通じて排気の温度を上昇させることによって濾材に付着した粒子状物質を燃焼させることで、再生可能である。一般に、DPFの再生工程は所定の時間、たとえば10分間続く。場合によっては、濾材上の粒子状物質の分布が均一でないと、一部の粒子状物質が燃焼せずに残ったまま、再生工程が終了し得る。
【0005】
エンジン排気中の粒子状物質削減の管理には、さまざまな再生方法が利用できる。たとえば、2002年12月3日にVincentらに発行された(特許文献1)(以下、「’725号特許」という)には、微粒子フィルタトラップの再生に使用するための鉄含有燃料可溶性添加剤を供給する方法が記載されている。この方法は、燃焼前、または燃焼中に燃料に添加剤を添加するステップを含む。特に、添加剤の供給分は、燃料サプライチェーンの中のいずれかの段階で燃料に添加されるか、または車載の注入装置を介して、燃料へ、または直接、燃焼室またはインレットシステム内に添加される。添加剤は燃料と混合し、混合物が燃焼して、煤煙微粒子と添加剤を含む排気流が排出される。動作の際には、添加剤によって煤煙微粒子の着火温度が下がる。
【0006】
(特許文献1)に記載された方法は、微粒子フィルタトラップの再生には適している場合があるが、問題もあり得る。たとえば、粒子状物質の粒形が十分に小さいと、ディーゼル微粒子捕集フィルタでは微細な粒子状物質を有効に捕捉できない場合がある。それゆえ、微細な粒子状物質が直接、環境中に排出されて、環境汚染を引き起こし得る。さらに、濾材上の粒子状物質と添加剤の分布が均一でない場合がある。その結果、再生終了後に、濾材上に残留粒子状物質が燃焼されずに残ることがあり、これは排気流および/またはエンジンの性能に不利な影響を与え得る。
【0007】
本発明の系は、既存の技術を改良しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,488,725号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、動力系に関する。この動力系は、排気流を発生させるように構成された動力源を含む。動力系はまた、燃料供給手段と動力源とを接続する燃料供給ラインも含む。この燃料供給ラインは、燃料流を燃料供給手段から動力源へと方向付けるように構成される。添加剤注入装置が、添加剤を燃料流の中に注入するように構成される。イオン化装置が、少なくとも部分的に排気流の中に配置され、排気流の中の添加剤と粒子状物質に電荷を印加するように構成される。微粒子フィルタが、排気流から粒子状物質と添加剤を除去するように構成される。
【0010】
本発明の他の態様は、排気流から粒子状物質を除去する方法に関する。この方法は、燃料流を動力源へと方向付けるステップを含む。この方法はまた、添加剤を動力源の上流の燃料流の中に注入するステップも含む。この方法はまた、燃料と添加剤を燃焼させて、粒子状物質と添加剤の含まれる排気流を生成するステップも含む。この方法はまた、排気流を、イオン化装置を通るように方向付けることによって、添加剤と粒子状物質に電荷を印加するステップも含む。この方法は、排気流を、微粒子フィルタを通るように方向付けるステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】例示的な本発明の動力系を有する例示的な機械の概略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、例示的な機械5を概略的に描いたものであり、この中で例示的な本発明の動力系10を使用し得る。機械5はどのような種類の機械でもよく、たとえば乗用車、事業用車両、農耕機械、鉱山機械、建設機械等の移動機械であってもよい。あるいは、機械5は、たとえば発電機等の静止機械であってもよい。
【0013】
動力系10は、燃料を燃焼させ、粒子状物質を含む排気流を発生させるように構成された動力源20と、排気流を処理するように構成された排気後処理システム30を含んでいてもよい。本願の目的上、動力源20を4ストロークディーゼルエンジンとし図示し、説明する。当業者であれば、動力源20がどのような種類の内燃機関でもよく、たとえばガソリンエンジン、気体燃料型エンジン(たとえば、天然ガスエンジン)、または、当業者の間で周知のその他のどのような種類の燃焼エンジンでもよいことがわかるであろう。動力源20は、少なくとも部分的に複数の燃焼室25を画定するエンジンブロックを含んでいてもよい。図の実施形態において、動力源20は4つの燃焼室を含む。動力源20に含める燃焼室25はそれより多くても、少なくてもよく、また燃焼室25は「インライン」構成または「V字形」構成、あるいはその他の適切な構成で配置してもよいと考えられる。
【0014】
動力源20は、空気/燃料混合物を燃焼室25の各々に引き込み、燃焼させて、動力、熱および排気を生成してもよい。特に、動力源20は、空気/燃料混合物を動力源20に供給するためのインテークマニホールド35を含んでいてもよい。インテークマニホールド35は、燃料システム40から燃料を、また給気システム(図示せず)から空気を受けてもよく、空気と燃料の混合物を、燃焼室25の各々へと方向付けてもよい。
【0015】
燃料システム40は、燃料を動力源20に供給して燃焼させるように構成されていてもよい。燃料システム40は、燃料供給手段45、ポンプ55、および燃料流を燃料供給手段45から動力源20へと方向付けるように構成された燃料供給ライン50を含んでいてもよい。燃料供給ライン50は、燃料流を燃料供給手段45から動力源20のインテークマニホールド35へと方向付けるように構成されていてもよい。ポンプ55は、燃料供給ライン50の中に配置されてもよく、燃料供給手段45からある量の燃料を吸引し、この燃料に加圧し、加圧燃料をインテークマニホールド35へと方向付けるように構成されていてもよい。あるいは、動力源20は、燃焼室25の各々に関連付けられ、燃料を燃焼室25の各々に注入するように構成された注入装置(図示せず)を含んでいてもよいと考えられる。
【0016】
動力系10は、燃焼前または燃焼中の燃料への添加剤溶液の供給を提供する装置をさらに含んでいてもよい。具体的には、動力系10は、ある量の添加剤を貯蓄し、供給するように構成された添加剤供給手段60と、動力源20へと供給される燃料流の中に添加剤を注入するように構成された添加剤注入装置70を含んでいてもよい。動力系10はまた、添加剤を添加剤供給手段60から添加剤注入装置70へと送出するように構成されたポンプ65を含んでいてもよい。ポンプ65は、どのような種類の高精度な定量低流量ポンプであってもよい。ポンプ65は、ダイアフラムポンプまたは当業界で周知のその他のポンプであってもよい。添加剤注入装置70は、動力系10の中の任意の適切な位置に配置されてもよい。たとえば、添加剤注入装置70は、少なくとも部分的に燃料供給ライン50の中に、少なくとも部分的に燃料供給手段45の中に、インテークマニホールド35に隣接して、または燃焼室25に隣接して配置されてもよい。添加剤は、添加剤注入装置70によって、動力源20に供給される燃料の中に注入されてもよい。たとえば、添加剤は、燃焼前または燃焼中に、燃料供給ライン50、燃料供給手段45、インテークマニホールド35、燃料室25、または燃料システム40または動力源20の中のいずれかの適切な場所に注入されてもよい。図1に示されるように、添加剤注入装置70は、動力源20の上流に配置されてもよく、添加剤を動力源20の上流のインテークマニホールド35へと注入してもよい。添加剤注入装置70は機械式、油圧式、または電気式に作動されてもよいと考えられる。
【0017】
後処理システム30は、燃焼工程後の有害ガスの排出と動力源20から排出される粒子状物質を削減するように構成されていてもよい。後処理システム30は、排気通路を有する排気マニホールド85を含んでいてもよく、各通路は、燃焼室25の1つと流体連通する。後処理システム30は、通路90を含んでいてもよく、これは排気マニホールド85と流体連通していてもよい。後処理システム30は、排気から有害ガスおよび粒子状物質を削減するために、通路90内に各種の装置を含んでいてもよい。たとえば、後処理システム30は、少なくとも部分的に通路90内に配置され、排気がそこを通過する間に粒子状物質を捕捉するように構成された微粒子フィルタ95を含んでいてもよい。図には示されていないが、当業者は、後処理システム30がまた、微粒子フィルタ95に関連付けられ、再生工程中に排気または微粒子フィルタ95内に捕捉された粒子状物質の温度を上昇させて粒子状物質を酸化するための燃料燃焼バーナまたは加熱装置を含んでいてもよいことがわかるであろう。いくつかの実施形態において、排気の温度は、エンジン燃焼の制御によって上げられてもよい。このような実施形態においては、後処理システム30に燃料燃焼バーナまたは加熱装置が含まれていなくてもよい。後処理システム30は、当業界で周知のその他の構成要素、たとえば選択触媒還元装置、NOxトラップ、SOx還元装置等を含んでいてもよいと考えられる。
【0018】
微粒子フィルタ95は、さまざまな微粒子フィルタのいずれでもよく、たとえば、焼結金属ファイバフロースルー型フィルタ、コージライトまたは炭化珪素ウォールフロー型フィルタまたは当業界で周知のその他の微粒子フィルタであってもよい。微粒子フィルタ95は、ハウジング100と、少なくとも部分的にハウジング100の中に配置されたフィルタ基板105を含んでいてもよい。フィルタ基板105は、ワイヤメッシュ濾材、セラミックハニカム濾材、または当業界で周知のその他の適切な濾材を含んでいてもよい。排気流が濾材を通過すると、粒子状物質、たとえば燃焼しなかった炭化水素が濾材に衝突し、濾材によってブロックされ得る。時間の経過により、粒子状物質がフィルタ基板105の表面上に堆積する場合があり、濾材が飽和状態となり得る。このような粒子状物質の堆積によって、微粒子フィルタ95を通過する排気流が減少する場合があり、エンジンの性能に不利な影響を与え得る。
【0019】
動力系10は、動力系10の動作を制御するように構成された制御システム120を含んでいてもよい。制御システム120はコントローラ80を含んでいてもよく、これは、既存の機械制御モジュールまたは単独型のコントローラであってもよい。コントローラ80は、動力系10の各種のシステムと装置に関連付けられていてもよい。たとえば、コントローラ80は、動力源20、後処理システム30および燃料システム40の少なくとも1つに関連付けられていてもよい。コントローラ80は、動力源20の動作、排気後処理および燃料送達を制御してもよい。別の例として、コントローラ80はまた、添加剤供給手段60、添加剤注入装置70およびポンプ65の少なくとも1つに関連付けられていてもよい。コントローラ80は、動力源20に供給される燃料中への添加剤の注入を制御するように構成されていてもよい。コントローラ80は、添加剤供給手段60、添加剤注入装置70およびポンプ65の少なくとも1つを制御することによって、添加剤注入の量とタイミングを調整してもよい。
【0020】
制御システム120は、排気流と流体連通し、排気流のパラメータを測定するように構成された少なくとも1つのセンサを含んでいてもよい。制御システム120はまた、微粒子フィルタ95に関連付けられ、微粒子フィルタ95のパラメータを測定するように構成された少なくとも1つのセンサを含んでいてもよい。たとえば、制御システム120は、温度センサ130を含んでいてもよい。温度センサ130は、少なくとも部分的に通路90内に、たとえば微粒子フィルタ95の上流または下流に配置されてもよく、また、排気流と流体連通していてもよい。温度センサ130は、排気流の温度を測定してもよく、また測定温度を示す信号を発生してもよい。温度センサ130は、この信号を分析のためにコントローラ80に送信してもよい。いくつかの実施形態において、温度センサ130はまた、微粒子フィルタ95に関連する温度または、フィルタ基板105の表面に堆積した粒子状物質の温度を測定するように構成されていてもよい。温度センサ130は、微粒子フィルタ95の一部、たとえばフィルタ基板105と一体であってもよく、または微粒子フィルタ95に隣接して配置されてもよい。
【0021】
制御システム120は、少なくとも部分的に通路90内に配置され、排気流と流体連通する圧力センサ135を含んでいてもよい。圧力センサ135は、通路90内の排気圧力を測定するように構成されていてもよい。たとえば、圧力センサ135は、微粒子フィルタ95の上流に配置されて、微粒子フィルタ95の上流の排気圧力をモニタしてもよい。圧力センサ135はまた、所望により、微粒子フィルタ95の上流に配置してもよい。2つ以上の圧力センサを通路90内のさまざまな位置に配置してもよいと考えられる。
【0022】
制御システム120は、微粒子フィルタ95内の粒子状物質の負荷、たとえばフィルタ基板105上に堆積した粒子状物質の量を測定するように構成された微粒子フィルタ負荷センサ125を含んでいてもよい。負荷センサ125は、粒子状物質の負荷を示す信号を発生してもよく、この信号をコントローラ80に送信してもよい。負荷センサ125は、微粒子フィルタ95と一体であっても、またはそれに隣接して配置されてもよい。
【0023】
それに加えておよび/またはその代わりに、排気または微粒子フィルタ95の温度、通路90内の排気圧力および微粒子フィルタ95の負荷の少なくとも1つは、センサによって測定されるのではなく、コントローラ80によって推定されてもよい。すなわち、コントローラ80は、排気および/または微粒子フィルタ95に関連する温度、圧力および負荷を、動力源20および/またはこれに関連付けられている機械の1つまたはそれ以上の動作条件に関する可変値の関数として判断してもよい(すなわち、仮想センサ)。たとえば、燃料供給量、着火タイミング、出力、エンジン速度、ブースト圧、エンジン温度、空気/燃料比および/またはその他の周知のパラメータに関する1つまたはそれ以上のエンジン性能マップがコントローラ80のメモリの中に保存されてもよい。これらのマップの各々は、表、グラフおよび/または等式の形態であってもよく、動力源20のラボおよび/または現場における動作から収集したデータをまとめたものを含んでいてもよい。コントローラ80は、動力系10の動作に関するデータを受け取ってもよく、これらのマップの1つまたはそれ以上を参照することによって、動力源20の所与の動作条件についての排気および/または微粒子フィルタ95に関連する温度、圧力および負荷を推定してもよい。このように、コントローラ80は、温度データを測定または推定して、そこから微粒子フィルタ95の再生と添加剤の注入に関する決定を下してもよい。
【0024】
後処理システム30はイオン化装置140を含んでいてもよい。イオン化装置140は、少なくとも部分的に排気通路90内の、微粒子フィルタ95の上流に配置されてもよい。イオン化装置140は、所定の極性の電圧、たとえば正電圧をイオン化装置140に供給するように構成された第一の荷電装置145に接続されていてもよい。その結果、イオン化装置140は帯電してもよく、今度は、排気がイオン化装置140を通過する間に、第一の電荷、たとえば正電荷を排気中の粒子状物質と添加剤粒子に印加してもよい。それゆえ、粒子状物質と添加剤粒子は、同符号電荷、たとえば正電荷で帯電してもよい。
【0025】
後処理システム30はまた、第二の電荷を微粒子フィルタ95に印加するように構成された第二の荷電装置155を含んでいてもよい。第二の電荷は、粒子状物質と添加剤粒子に印加される第一の電荷のそれとは反対の極性を有していてもよい。第二の荷電装置155は、微粒子フィルタ95の適切な部分、たとえばフィルタ基板105またはハウジング100に接続されていてもよい。第二の荷電装置155は、電圧を、たとえば微粒子フィルタ95のフィルタ基板105に供給してもよく、それによって微粒子フィルタ95のフィルタ基板105は第二の電荷で帯電してもよい。
【0026】
第一の荷電装置145と第二の荷電装置155の少なくとも一方は、コントローラ80と接続されて、これによって制御されてもよい。コントローラ80はたとえば、イオン化装置140と微粒子フィルタ95に供給される電圧の大きさと極性を、それぞれ第一の荷電装置145と第二の荷電装置155の制御によって制御してもよい。換言すれば、コントローラ80は、粒子状物質と添加剤粒子および微粒子フィルタ95に印加される電荷の量と極性を制御してもよい。図には別の装置として示されているが、いくつかの実施形態においては、第一の荷電装置145と第二の荷電装置155の少なくとも一方がコントローラ80と一体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のシステムは、燃焼によって発生する粒子状物質を削減し、微粒子フィルタの再生を促進するために、任意の動力系に利用可能であり得る。たとえば、本発明の後処理システム30は、移動システム、たとえば自動車、大型トラック、建設機械、船舶等の移動車両に動力を供給するエンジンに利用可能であり得る。後処理システム30はまた、発電設備等の静止機械にも利用可能であり得る。
【0028】
動力源20は、空気と燃料の混合物を燃焼させて、動力と排気を発生してもよい。燃料システム40は、動力源20に燃料を供給してもよい。ポンプ55は、燃料供給装置45から燃料を吸引し、燃料に加圧し、加圧された燃料をインテークマニホールド35へと方向付けてもよい。燃料は、給気システム(図示せず)から受け取った空気と混合されてもよく、燃焼室25へと方向付けられて、その中で燃焼されてもよい。動力源20は、燃焼後に排気流を排出し得る。排気流は、燃焼室25から放出され、排気マニホールド85を通って後処理システム30へと方向付けられてもよく、ここで排気が処理される。排気流は、大気汚染物質の複雑な混合物を含む場合があり、これは粒子状物質を含み得る。環境中への粒子状物質の放出は、排気流を微粒子フィルタ95に通すことによって削減してもよい。
【0029】
添加剤は、燃焼前または燃焼中に、動力系10の中の適切な場所にある動力源20に供給される燃料流の中に注入されてもよい。添加剤は、微粒子フィルタ95の再生を促進する目的のため、フィルタ基板105の表面上の粒子状物質の分布の均一性を改善する目的のため、またはその他の適切な目的のために構成されていてもよい。添加剤は、鉄系材料、たとえばジシクロペンタジエニル鉄またはその他の任意の適切な材料であってもよい。添加剤注入装置70は、所定の量の添加剤を動力源20に供給される燃料流の中に注入してもよい。あるいは、添加剤注入装置70は、添加剤をインテークマニホールド35または燃焼室25に注入してもよい。添加剤は、燃焼室25内の空気/燃料混合物と一緒に燃焼されてもよい。
【0030】
燃焼後に、添加剤は粒子となり得、粒子状物質と一緒に排気中に存在する場合がある。排気がイオン化装置140の脇を通過する間に、イオン化装置140が電荷、たとえば正電荷を添加剤粒子および粒子状物質に印加してもよい。コントローラ80は、第一の荷電装置145からイオン化装置140へと供給される電圧を制御することによって、イオン化装置140を制御してもよい。その結果、添加剤粒子と粒子状物質は、同じ極性、たとえば正の極性の同符号電荷で帯電し得る。
【0031】
帯電した添加剤粒子と粒子状物質は、同じ極性の2つの電荷間の静電力によって相互に反発する。具体的には、反発力は、いずれの帯電添加剤粒子と粒子状物質のいずれの帯電粒子の間にも存在し得る。反発力の結果として、排気中の粒子状物質および/または添加剤粒子は均一に分布し得る。その結果、粒子状物質および/または添加剤がフィルタ基板105の表面に付着すると、フィルタ基板105の表面上の粒子状物質および/または添加剤粒子の均一な分布が実現され得る。粒子状物質および添加剤粒子が均一に分布することにより、粒子状物質の再生の効率が改善され、再生工程終了時にフィルタ基板105の上に残っている残留粒子状物質が削減または排除され得る。
【0032】
コントローラ80は、第二の荷電装置155を制御して、微粒子フィルタ95の一部、たとえばフィルタ基板105に逆電圧を印加させてもよい。換言すれば、たとえば、正電圧がイオン化装置140に供給される場合は、負電圧がフィルタ基板105に供給され得る。そのため、正に帯電した粒子状物質と添加剤粒子がフィルタ基板105に到達すると、正に帯電した粒子状物質と添加剤粒子は、反対の電荷間の静電引力により、負に帯電したフィルタ基板105の表面に引き付けられる。このように、粒子状物質はフィルタ基板105によってより捕捉されるやすくなり得る。特に、より粒径の小さい粒子状物質は、通常であれば帯電しないとフィルタ基板105の網目を通過し得るが、正に帯電した粒子状物質と負に帯電したフィルタ基板105との間の静電引力によって、フィルタ基板105によって捕捉され得る。
【0033】
コントローラ80は、微粒子フィルタ95の再生および/または添加剤の注入を制御してもよい。たとえば、動力系10の動作中、コントローラ80は、負荷センサ125によって、フィルタ基板105の上に堆積した粒子状物質の負荷をモニタしてもよい。負荷センサ125が、フィルタ基板105の粒子状物質の負荷が所定の負荷閾値を超えたことを示すと、コントローラ80は微粒子フィルタ95を再生する再生工程を開始させてもよい。その代わりに、および/またはそれに加えて、コントローラ80は、圧力センサ135を通じて微粒子フィルタ95の上流の排気流の圧力をモニタしてもよく、この圧力センサは排気流の圧力を示す信号を発生して、この信号をコントローラ80に送信してもよい。コントローラ80は、排気流の圧力の測定結果に基づいて、微粒子フィルタ95を再生するための再生工程が必要か否かを判断してもよい。コントローラ80はまた、微粒子フィルタ95を再生するために再生が必要か否かを、温度センサ130によって測定される、排気流および/または、フィルタ基板105により捕捉された粒子状物質の温度に基づいて判断してもよいと考えられる。コントローラ80は、負荷センサ125によって測定される負荷、圧力センサ135によって測定される圧力および温度センサ130によって測定される温度の少なくとも1つに基づいて、再生を開始させてもよい。
【0034】
コントローラ80は、温度センサ130を通じて、排気流の温度および/または微粒子フィルタ95に関連する温度をモニタしてもよい。温度センサ130は、測定された温度を示す信号を発生して、この信号をコントローラ80に送信してもよい。一実施形態において、コントローラ80は、微粒子フィルタ95を再生するために再生工程が必要であると判断すると、負荷センサ125によって測定された負荷、温度センサ130によって測定された温度、および圧力センサ135によって測定された圧力の少なくとも1つに基づいて、添加剤注入装置70によって注入されるべき添加剤の量と添加剤注入のタイミングを判断してもよい。
【0035】
たとえば、コントローラ80は、添加剤注入の量とタイミングを、負荷センサ125によって測定された負荷に基づいて判断してもよい。コントローラ80が負荷センサ125によって発生された信号を受信し、再生が必要と判断すると、コントローラ80は、添加剤注入装置70とポンプ65を作動させて、動力源20に供給される燃料流の中に所定の量の添加剤が注入されるようにしてもよい。
【0036】
他の例として、コントローラ80が温度センサ130によって発生された温度信号を受信し、排気または微粒子フィルタ95の温度が所定の温度閾値に到達したと判断すると、コントローラ80は、ポンプ65および/または添加剤注入装置70を作動させて、動力源20に供給される燃料流の中に所定の量の添加剤が注入されるようにしてもよい。
【0037】
また別の例として、コントローラ80が圧力センサ135によって発生された信号を受信して、排気圧力が所定の閾値を超えたと判断すると、コントローラ80は、ポンプ65および/また添加剤注入装置70を作動させて、動力源20に供給される燃料流の中に所定の量の添加剤が注入されるようにしてもよい。添加剤が注入されると、コントローラ80は添加剤注入装置70を、所定の長さの時間にわたって継続的に添加剤を注入するか、または所定の間隔、たとえば30秒間隔で所定の量の添加剤を注入するように制御してもよい。添加剤の注入は、再生が終了した時、またはいずれかの所望の適切な時に、コントローラ80によって終了されてもよい。たとえば、コントローラ80は、添加剤注入をいつ終了すべきかを、圧力センサ135によって測定された圧力、温度センサ130によって測定された温度、負荷センサ125によって測定された負荷の少なくとも1つに基づいて判断してもよい。
【0038】
微粒子フィルタ95の再生中に、コントローラ80は、燃焼室25内および/または、粒子フィルタ95に関連付けられた燃料燃焼バーナ(図示せず)または加熱装置(図示せず)内の燃焼を制御して、排気および/またはフィルタ基板105によって捕捉された粒子状物質の温度を上昇させることによって、粒子状物質を酸化させるようにしてもよい。温度が酸化温度範囲、たとえば500〜600℃に上昇されると、粒子状物質は酸化し得る。フィルタ基板105において、添加剤は化学反応を起こす場合があり、これは粒子状物質の酸化を触媒し得る。たとえば、鉄をベースとする添加剤は、粒子状物質の着火または酸化閾値温度を下げる場合があり、それによって粒子状物質を比較的低い温度で酸化できるようになり、それゆえ、微粒子フィルタ95の再生が促進される。
【0039】
いくつかの実施形態において、添加剤によって粒子状物質の酸化または着火に必要な温度が低下し得るため、動力源20内の燃焼を意図的に制御することを通じて、または燃料燃焼バーナを動作させることを通じて、または加熱装置を制御することによって、排気温度または微粒子フィルタ95に関連する温度を上昇させるために必要な労力が大幅に軽減され得る。
【0040】
再生工程は、所定の時間、たとえば10分間継続してもよい。再生工程中、フィルタ基板105に堆積した粒子状物質がフィルタ基板105の表面から燃焼し得る。粒子状物質および/または添加剤を含む帯電排気間に存在する反発力によって、粒子状物質がフィルタ基板105の表面上でより均等に分布してもよい。その結果、再生工程中、フィルタ基板105の表面上に堆積した粒子状物質は、均一に燃焼し得る。粒子状物質が燃焼した後、少なくとも一部の添加剤粒子がフィルタ基板105の表面から分離され得、ハウジング100に貯蓄され得る。添加剤粒子は、後に、たとえば微粒子フィルタ95の定期的保守作業中に回収されて処分またはリサイクルされてもよい。
【0041】
当業者とっては当然のことながら、本発明の動力系には、開示の範囲から逸脱することなく、各種の改良と変更を加えることができる。他の実施形態も、本明細書で開示される系の詳細な説明と実践を考慮すれば当業者には明らかであろう。詳細な説明と例は例示として考えるものとし、開示の正確な範囲は以下の特許請求の範囲およびこれと均等のものによって示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状物質を含む排気流を発生させるように構成された動力源と、
燃料供給手段と動力源とを接続し、燃料流を燃料供給手段から動力源へと方向付けるように構成された燃料供給ラインと、
添加剤を燃料流の中に注入するように構成された添加剤注入装置と、
少なくとも部分的に排気流の中に配置され、粒子状物質と添加剤に電荷を印加するように構成されたイオン化装置と、
排気流から粒子状物質と添加剤を除去するように構成された微粒子フィルタと、
を備える動力系。
【請求項2】
添加剤注入装置が動力源の上流に配置される、請求項1に記載の動力系。
【請求項3】
添加剤供給手段と、
添加剤を添加剤供給装置から吸引し、添加剤を添加剤注入装置へと方向付けるように構成されたポンプと、
をさらに含む、請求項1に記載の動力系。
【請求項4】
添加剤が鉄系添加剤である、請求項1に記載の動力系。
【請求項5】
排気流と流体連通し、排気流のパラメータを測定するように構成されたセンサをさらに含む、請求項1に記載の動力系。
【請求項6】
センサが、温度センサまたは圧力センサの少なくとも一方を含み、パラメータが少なくとも排気流の温度または排気流の圧力である、請求項5に記載の動力系。
【請求項7】
微粒子フィルタに関連付けられ、粒子状物質の負荷を測定するように構成された負荷センサをさらに含む、請求項1に記載の動力系。
【請求項8】
イオン化装置に関連付けられ、粒子状物質と添加物に印加される電荷を供給するように構成された第一の荷電装置をさらに含む、請求項1に記載の動力系。
【請求項9】
粒子状物質と添加剤に印加される電荷が第一の電荷であり、動力系が、微粒子フィルタに関連付けられ、第二の電荷を微粒子フィルタに印加するように構成された第二の荷電装置をさらに含む、請求項8に記載の動力系。
【請求項10】
添加剤注入装置に関連付けられ、燃料流への添加剤の注入を制御するように構成されたコントローラをさらに含む、請求項9に記載の動力系。
【請求項11】
コントローラが、第一の電荷と第二の電荷を制御するようにさらに構成されている、請求項10に記載の動力系。
【請求項12】
燃料流を動力源へと方向付けるステップと、
添加剤を燃料流へと注入するステップと、
燃料を燃焼させて、排気流を生成するステップであって、排気流が粒子状物質と添加剤を含むステップと、
粒子状物質と添加剤に同符号電荷を印加するステップと、
排気流が微粒子フィルタを通過するように方向付けるステップと、
を含む、排気流から粒子状物質を除去する方法。
【請求項13】
添加剤の注入を排気流に関連するパラメータに基づいて制御するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
パラメータが排気流の温度と排気流の圧力の少なくとも一方を示す、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
添加剤の注入を微粒子フィルタ内の粒子状物質の負荷に基づいて制御するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
電荷を微粒子フィルタに印加するステップをさらに含み、微粒子フィルタに印加される電荷が、粒子状物質と添加剤に印加される同符号電荷の極性と反対の極性を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
燃料を燃焼させて、粒子状物質を含む排気流を発生させるように構成された動力源と、
燃料流を燃料供給手段から動力源へと方向付けるように構成された燃料供給ラインと、
添加剤を燃料流の中に注入するように構成された添加剤注入装置と、
少なくとも部分的に排気流の中に配置され、第一の極性を有する第一の電荷を粒子状物質と添加剤に印加するように構成されたイオン化装置と、
排気流から粒子状物質と添加剤を除去するように構成された微粒子フィルタと、
微粒子フィルタに第二の電荷を印加するように構成された荷電装置であって、第二の電荷が第一の極性と反対の第二の極性を有する荷電装置と、
を備える機械。
【請求項18】
添加剤注入装置が動力源の上流に配置されている、請求項17に記載の機械。
【請求項19】
添加剤が鉄系添加剤である、請求項17に記載の機械。
【請求項20】
排気流と流体連通し、排気流のパラメータを測定するように構成された少なくとも1つのセンサと、
微粒子フィルタに関連付けられ、微粒子フィルタのパラメータを測定するように構成された少なくとも1つのセンサと、
添加剤注入装置に関連付けられ、燃料流への添加剤の注入を、排気流のパラメータと微粒子フィルタのパラメータの少なくとも一方に基づいて制御するように構成されたコントローラと、
をさらに含む、請求項17に記載の機械。

【図1】
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【公表番号】特表2013−515905(P2013−515905A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546048(P2012−546048)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/060528
【国際公開番号】WO2011/087697
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(391020193)キャタピラー インコーポレイテッド (296)
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
【Fターム(参考)】