説明

清掃用シート

【課題】接合部によって、基材シートと長繊維束との間の自由度が制限されず、ゴミ捕集
性の向上した清掃用シートを提供すること。長繊維のカットによって、清掃シート全体の
強度が低下し難く、長繊維のボリューム感が低下し難い清掃用シートを提供すること。
【解決手段】本発明の清掃用シート1Aは、基材シート2上に長繊維31が集合した複数
個の長繊維束3を備え、それらが並置接合されたものである。長繊維束3は、繊維接合部
32により、接合されて形成されている。長繊維束3は、基材シート2にシート接合部2
1を介して接合されている。シート接合部21は、繊維接合部32に重ねられて設けられ
ており、長繊維束3は、線状カット部24でカットされており、線状カット部24は、隣
り合うシート接合部21同士の間の領域に配されている。長繊維束3は、カット繊維31
1の他に未カット繊維312も有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に一方向に配向する多数本の長繊維を備える清掃用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッド部及びヘッド部に連結された柄を有する清掃具におけるヘッド部に装着されて使用される清掃用シートとして、多数本の長繊維を備えた清掃用シートが知られている。
例えば、引用文献1には、基台シートと、この基台シートに接合部を介して並置された複数の繊維結束体とを備えた清掃シートが開示されている。
【0003】
しかしながら、引用文献1に記載の清掃シートの接合部は、繊維結束体を構成する繊維の流れ方向のほぼ中央位置であって、繊維の流れ方向と交差する方向に一直線状に形成されているため、基台シートと繊維結束体と間の自由度が制限されてしまい、清掃シートのゴミ捕集性を向上させることが難しい。また、引用文献1に記載の清掃シートの複数の繊維結束体は、互いに独立して並置されている。このように、隣り合う繊維結束体同士の間には、長繊維の未切断部が存在していないので、清掃シート全体の強度が低下してしまう。また、長繊維の未切断部が存在していないので、清掃シート全体の長繊維のボリューム感が低下してしまう。
【0004】
引用文献2には、基材シートに、長繊維からなる長繊維層が重ねられており、基材シートと長繊維層とが、複数の接合線によって接合されており、隣り合う接合線同士の間で、基材シートと長繊維層とが部分的に切断された切断部と未切断部とが形成されている清掃用物品が開示されている。
【0005】
しかしながら、引用文献2に記載の清掃用物品は、基材シートと長繊維層との接合を接合線によってのみ行っており、その接合線は長繊維の延びる方向と交叉する方向へ延びて形成されているため、基材シートと長繊維層との間の自由度が制限されてしまい、清掃シートのゴミ捕集性を向上させることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−289341号公報
【特許文献2】特開平11−235301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、接合部によって、基材シートと長繊維束との間の自由度が制限されず、ゴミ捕集性の向上した清掃用シートを提供することにある。また、長繊維のカットによって、清掃シート全体の強度が低下し難く、長繊維のボリューム感が低下し難い清掃用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材シートの少なくとも一方の表面上に、実質的に一方向に配向する長繊維が集合した複数個の長繊維束を備え、該長繊維束が並置接合された清掃用シートであって、前記長繊維束それぞれは、前記長繊維の配向方向と交差する方向に直線状に延びる複数個の繊維接合部により、該長繊維同士が接合されて形成され、前記基材シートに複数個のシート接合部を介して接合されており、複数個の前記シート接合部それぞれは、前記繊維接合部の一部に重ねられて設けられており、前記長繊維束それぞれは、複数個の線状カット部でカットされており、複数の該線状カット部は、前記長繊維の配向方向において隣り合う前記シート接合部同士の間の領域にそれぞれ配されており、且つ前記長繊維束それぞれは、前記長繊維が前記線状カット部によりカットされたカット繊維の他に、該線状カット部近傍にカットされていない未カット繊維も有している清掃用シートを提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の清掃用シートによれば、接合部によって、基材シートと長繊維束との間の自由度が制限されず、ゴミ捕集性が向上する。また、長繊維のカットによって、清掃シート全体の強度が低下し難く、長繊維のボリューム感が低下し難い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態である清掃用シートの平面図である。
【図2】図2は、図1に示す清掃用シートの要部拡大平面図である。
【図3】図3(a)は、図2に示す清掃用シートのX1−X1線の部分断面図であり、図3(b)は、図2に示す清掃用シートのX2−X2線の部分断面図であり、図3(c)は、図2に示す清掃用シートのY1−Y1線の部分断面図である。
【図4】図4は、図1に示す清掃用シートを立体開繊した後の清掃用シートの斜視図である。
【図5】図5は、図1に示す清掃用シートを清掃具に装着した状態を示す斜視図である。
【図6】図6は、本発明の第2実施形態である清掃用シートの平面図である。
【図7】図7は、図6に示す清掃用シートの要部拡大平面図である。
【図8】図8は、本発明の第3実施形態である清掃用シートの平面図である。
【図9】図9は、図8に示す清掃用シートの要部拡大平面図である。
【図10】図10は、本発明の第3実施形態である清掃用シートの平面図である。
【図11】図11は、本発明の第4実施形態である清掃用シートの平面図である。
【図12】図12は、本発明の清掃用シートの製造方法である一実施態様の全容を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の清掃用シートの好ましい一実施形態について、図1〜図5に基づいて説明する。
【0012】
第1実施形態の清掃用シート1Aは、図1〜図3に示すように、基材シート2の両面上に、実質的に一方向に配向する長繊維31が集合した複数個の長繊維束3を備え、長繊維束3が並置接合された清掃用シートである。尚、長繊維束3の配置は、基材シート2の両面において互いに同じであるため、図1〜図3では複数個の長繊維束3を基材シート2の片面に配置した形態を図示し、もう片方の面にも配置する形態の図示は省略する。長繊維束3それぞれは、長繊維31の配向方向と交差する方向に直線状に延びる複数個の繊維接合部32により、長繊維31同士が接合されて形成されている。長繊維束3それぞれは、基材シート2に複数個のシート接合部21を介して接合されている。複数個のシート接合部21それぞれは、繊維接合部32の一部に重ねられて設けられており、長繊維束3それぞれは、複数個の線状カット部24でカットされており、複数の線状カット部24は、長繊維31の配向方向において隣り合うシート接合部21,21同士の間の領域にそれぞれ配されている。長繊維束3それぞれは、長繊維31が線状カット部24によりカットされたカット繊維311の他に、線状カット部24近傍にカットされていない未カット繊維312も有している。
【0013】
第1実施形態の清掃用シート1Aについて、詳述する。
清掃用シートは、基材シート2の両面上に、片面につき、長繊維束3を、2個〜30個備えていることが好ましく、清掃用シート1Aにおいては、4個備えており、これら長繊維束3が並置接合されている。第1実施形態においては、長繊維束3は、基材シート2の両面に配されているが、片面だけでもよい。
以下、基材シート2の両面上に、片面につき、長繊維束3を4個備えている清掃用シート1Aについて、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0014】
基材シート2は、図1に示すように、長方形状であり、基材シート2の長さは、10cm〜60cmであることが好ましく、基材シート2の幅は、5cm〜40cmであることが好ましい。第1実施形態の清掃用シート1Aにおいては、基材シート2は、図1に示すように、基材シート2の長手方向と長繊維31の配向方向とが一致するように、配置されている。長繊維31の配向方向と基材シート2の長手方向は、図中のY方向と同一方向であり、長繊維31の配向方向と直交する方向と基材シート2の幅方向は、図中のX方向と同一方向である。清掃用シート1Aには、基材シート2の両面上それぞれに、4個の長繊維束3それぞれがシート接合部21を介して配置されている。
【0015】
長繊維束3を構成する長繊維31は、通常、製造時におけるその素材の搬送方向に配向している。
ここで、「長繊維31が実質的に一方向に配向する」とは、製造上の誤差、長繊維31が捲縮加工されたこと等によって、一部の長繊維31の配向方向が、その他の大部分の長繊維31の配向方向からずれた場合を排除しない意味である。
【0016】
長繊維束3は、第1実施形態の清掃用シート1Aにおいては、図1,図2に示すように、無数本の長繊維31を、長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)に直線状に延びる複数個の繊維接合部32により、長繊維31同士が接合されて形成されている。長繊維束3は、基材シート2に配され、長繊維31の配向方向(Y方向)に配される後述する複数個の線状カット部24によってカットされていない未カット繊維312と、長繊維31の配向方向(Y方向)に配される複数個の繊維接合部32により接合されている繊維とにより、基材シート2の長手方向(Y方向)の両端間に亘って延在する繊維の束となる。長繊維束3は、図1に示すように、巨視的に見て、長繊維31の配向方向(Y方向)に長い長方形状である。
【0017】
長繊維束3は、第1実施形態の清掃用シート1Aにおいては、図1に示すように、基材シート2の両面上それぞれに、長繊維束3の長手方向と基材シート2の長手方向(Y方向)とが一致するように、配置されている。また、第1実施形態の清掃用シート1Aは、図1に示すように、4個の長繊維束3を、長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)、即ち、基材シート2の幅方向に、実質的に間隔を開けることなく並列に配置している。基材シート2に配した後において、長繊維束3の長さは、基材シート2の長さと略同じであり、長繊維束3の幅は、後述する繊維接合部32の長さ(l1)と略同じである。但し、長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)において隣り合う繊維接合部32同士が連結等し、個々の繊維接合部32の長さ(l1)が判断し難い場合には、長繊維束3の幅は、長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)において隣り合う後述する線状カット部24同士の間隔を略二等分する位置までの長さとする。上記のように判断する長繊維束3の幅は、1cm〜15cmであることが好ましい。清掃用シート1Aにおいては、図1に示すように、4個の長繊維束3の幅の合計幅より、基材シート2の幅の方が広く、基材シート2における長繊維束3よりも幅方向(X方向)外方の領域(以下「フラップ22」という)は、清掃具のヘッド部に装着される際に用いられる部分となる(詳細は後述)。
【0018】
長繊維束3を構成する長繊維31は、埃の絡み取り性の観点から、繊維接合部32の1cmあたり、繊維接合部32の片側に1000本〜50000本設けられていることが好ましく、5000本〜40000本設けられていることが更に好ましい。
【0019】
長繊維束3を構成する長繊維31は、繊維集合体(トウ)の状態で用いられている。繊維集合体(トウ)は、公知の開繊装置を用いて十分に開繊しておくことが好ましい。また、長繊維31の太さは、特に臨界的ではないが、埃の絡み取り性や清掃対象面への傷付き防止性の観点から、0.1〜200dtex、特に2〜30dtexであることが好ましい。また、長繊維31としては、捲縮性繊維を用いると、埃の絡み取り性が一層向上するので好ましい。また、長繊維31としては、製品としての外観の向上、付着汚れの見え易さの向上等のため、白色以外の色(例えば、オレンジ色、水色)のものを用いることもできる。
【0020】
繊維接合部32は、長繊維束3を形成するためのものであり、長繊維束3を基材シート2に接合するためのものではない。繊維接合部32は、熱融着又はホットメルト接着剤により形成されており、清掃用シート1Aにおいては、長繊維31を熱融着することにより形成されている。繊維接合部32は、図1〜図3に示すように、長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)に、即ち、基材シート2の幅方向に直線状に延びて形成されている。図1に示すように、繊維接合部32の長さl1は、5mm〜150mmであることが好ましい。図1に示すように、繊維接合部32の幅w1は、0.5mm〜10mmであることが好ましい。
【0021】
シート接合部21は、長繊維束3を基材シート2に接合するためのものである。シート接合部21は、熱融着又はホットメルト接着剤により形成されており、清掃用シート1Aにおいては、長繊維31を基材シート2に熱融着することにより形成されている。複数個のシート接合部21それぞれは、繊維接合部32の一部に重ねられて設けられている。シート接合部21を各繊維接合部32毎に、1個〜16個設けることが好ましく、清掃用シート1Aにおいては、各繊維接合部32毎に、2個のシート接合部21を設けている。シート接合部21は、図1〜図3に示すように、繊維接合部32上に配されており、シート接合部21それぞれの大きさは、清掃用シート1Aにおいては、長繊維31の配向方向(Y方向)に長く形成されている。繊維接合部32上に配された2個のシート接合部21それぞれと、長繊維31の配向方向に隣り合う繊維接合部32上に配された2個のシート接合部21それぞれとは、長繊維31の配向方向(Y方向)において略同じ位置に設けられている。
【0022】
図1に示すように、シート接合部21それぞれの長さl2は、長繊維31の配向方向(Y方向)に、2mm〜50mmであることが好ましい。図1に示すように、シート接合部21それぞれの幅w2は、0.5mm〜10mmであることが好ましい。清掃用シート1Aにおいて、長繊維31の配向方向(Y方向)に隣り合うシート接合部21同士の間隔d1は、6mm〜200mmであることが好ましい。
【0023】
清掃用シート1Aにおいては、繊維接合部32の長さ(l1)よりも長さ(l2)の短いシート接合部21によって、図3(a),図3(c)に示すように、長繊維束3が基材シート2に接合されている。長繊維31の配向方向(Y方向)に隣り合う繊維接合部32同士の間は、シート接合部21が配されていない部位においては、図3(b)に示すように、長繊維束3と基材シート2とが接合させておらず、基材シート2から長繊維束3が離れている。繊維接合部32は、図3(c)に示すように、繊維接合部32の中で、シート接合部21と重なる部分のみが、基材シート2と接合されており、その他の部分(繊維接合部32の中で、シート接合部21と重ならない部分)では、基材シート2と接合されておらず、長繊維束3が基材シート2から離れている。
【0024】
4個の長繊維束3それぞれは、複数個の線状カット部24でカットされている。そのため、長繊維束3それぞれは、図2に示すように、長繊維31が線状カット部24によりカットされたカット繊維311の他に、線状カット部24の両端部の近傍にカットされていない未カット繊維312も有している。この未カット繊維は、前記基材シートと接合されていない繊維であり、未カット繊維312により、長繊維31の配向方向(Y方向)に隣り合う繊維接合部32同士の間は分離しておらず、長繊維束3は、束の状態を維持している。線状カット部24を、各長繊維束3毎に、2個〜40個設けることが好ましく、清掃用シート1Aにおいては、各長繊維束3毎に、6個又は7個の線状カット部24を設けている。複数個の線状カット部24は、長繊維31の配向方向(Y方向)において隣り合うシート接合部21,21同士の間の領域にそれぞれ配されている。また、清掃用シート1Aにおいては、基材シート2は、長繊維束3のカット位置と同じ位置で、線状カット部24によりカットされている。
【0025】
図1に示すように、線状カット部24それぞれの長さl3は、長繊維31の配向方向(Y方向)において隣り合うシート接合部21,21同士の間の領域を確実にカットしてカット繊維311を形成するために、シート接合部21の幅w2よりも長いことが好ましく、長繊維束3に未カット繊維312を形成するために、繊維接合部32の長さl1以下であることが好ましい。具体的には、線状カット部24それぞれの長さl3は、長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)に、3mm〜140mmであることが好ましく、8mm〜70mmであることが更に好ましい。尚、清掃用シート1Aにおいては、線状カット部24の長さと、繊維接合部32の長さとが略同じに形成されている。
【0026】
清掃用シート1Aにおいては、図1,図2に示すように、4個の長繊維束3それぞれにおける繊維接合部32及び線状カット部24は、長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)に交互に配されており、連続的な直線SL1を形成するように配されている。この直線SL1は、長繊維31の配向方向に、2本〜40本形成されていることが好ましく、清掃用シート1Aにおいては、直線SL1は、13本形成されている。更に、清掃用シート1Aにおいては、図1,図2に示すように、繊維接合部32及び線状カット部24は、長繊維31の配向方向(Y方向)に交互に配されている。長繊維31の配向方向(Y方向)に隣り合う直線SL1同士の間隔d2は、図1に示すように、何れの箇所も略同一であり、5mm〜150mmであることが好ましい。尚、間隔d2とは、長繊維31の配向方向(Y方向)に隣り合う繊維接合部32同士の間隔を測定した値である。
【0027】
長繊維束3におけるカット繊維311の繊維長は、埃の絡み取り性の観点から、好ましくは5〜150mm、更に好ましくは10〜120mmである。カット繊維311の繊維長とは、繊維接合部32から長繊維31の先端までの長さである。
【0028】
長繊維31のカット繊維311は、立体開繊されることにより、無数本のカット繊維311がシート接合部21及び繊維接合部32を基点として基材シート2から立ち上がり、互いに絡められる。清掃用シート1Aにおいては、立体開繊されることにより、図4に示すように、各繊維接合部32毎にカット繊維311が絡まった球状の繊維玉34が形成される。清掃用シート1Aには、図4に示すように、複数個の球状の繊維玉34が千鳥状に配されており、複数個の球状の繊維玉34同士は、線状カット部24の両端近傍に位置し、且つ基材シート2の長手方向(Y方向)に一直線に延びる未カット繊維312により繋がっている。詳述すると、清掃用シート1Aは、図4に示すように、基材シート2と、基材シート2の両面に、長繊維31の配向方向と交差する方向(X方向)に直線状に延びる繊維接合部32が形成された繊維玉34を有している。清掃用シート1Aには、図4に示すように、繊維玉34が基材シート2の長手方向(Y方向)に複数配されて繊維玉34の列が形成されており、この繊維玉34の列が基材シート2の幅方向(X方向)に複数列形成されている。繊維玉34は、繊維接合部32に重ねられて設けられた、長繊維31の配向方向(Y方向)に長いシート接合部21を介して基材シート2に接合されている。清掃用シート1Aは、隣りあう繊維玉34の列同士の間に、未カット繊維312を具備している。
【0029】
第1実施形態の清掃用シート1Aの形成材料について説明する。
基材シート2としては、従来の清掃用シートに用いられている不織布等の繊維シートを用いることができる。特に、清掃対象面に沿って追随し易くするために、長手方向(Y方向)に柔軟性を有するエアスルー不織布又はスパンボンド不織布が好ましい。また、基材シート2の形成材料は、不織布、ネット状シート、フィルム、合成紙又はそれらの複合材料でもよい。
【0030】
長繊維31としては、熱溶着性合成繊維、複合繊維、それらを熱処理して得られるような捲縮繊維を用いることができる。また、長繊維31には、必要に応じて吸塵薬剤を付与してもよく、油剤含浸処理や帯電防止処理、帯電処理、親水化処理等を施してもよい。
【0031】
基材シート2及び長繊維31としては、熱融着による繊維接合部32及びシート接合部21の形成のし易さの観点から、何れも熱溶着性の素材を含んでいることが好ましい。
【0032】
上述した本発明の第1実施形態の清掃用シート1Aを使用した際の作用効果について説明する。
第1実施形態の清掃用シート1Aは、基材シート2を利用して、図5に示すように、ヘッド部41及びヘッド部41に連結された柄42を備えた清掃具4におけるヘッド部41に装着されて使用される。
図5に示す清掃具4は、本実施形態の清掃用シート1Aが装着可能なヘッド部41、及びヘッド部41に自在継手43を介して連結された棒状の柄42から構成されている。ヘッド部41の装着面(底面)は、平面視で長方形状であり、通常の使用態様においては、清掃具4は、ヘッド部41をその幅方向に移動(特に往復移動)させて清掃を行う。つまり、清掃具4の清掃方向は、ヘッド部41の幅方向である。
【0033】
第1実施形態の清掃用シート1Aは、4個の長繊維束3の総面積が、清掃用シート1Aを装着する掃除具4のヘッド部41の底面積よりも広くなるように形成されている。第1実施形態の清掃用シート1Aは、長繊維31の配向方向(Y方向)、基材シート2の長手方向、清掃具4のヘッド部41の長手方向が一致しており、基材シート2の中心点とヘッド部41の中心点とを一致させて、ヘッド部41の装着面(底面)に装着される。次に、基材シート2におけるフラップ22,22をヘッド部41の上面側に折り返す。この際、清掃用シート1Aは、図5に示すように、ヘッド部41の長手方向に沿った側面41aにも、長繊維束3が存在するように装着される。次に、フラップ22を、ヘッド部41における、放射状のスリットを有する可撓性の複数のシート保持部44内に押し込む。これによって清掃用シート1Aを清掃具4のヘッド部41に固定することができる。尚、基材シート2がネット状シートから形成されている場合には、基材シート2とシート保持部44との係合力が高い点で好ましい。本実施形態の清掃用シート1Aは、この状態で、例えば、フローリングの掃き清掃に用いることができる。従って、基材シート2の幅方向と一致する長繊維束3の長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)は、実質的に、清掃具4の清掃方向に配向している。
【0034】
第1実施形態の清掃用シート1Aによれば、清掃具4のヘッド部41に装着した状態で、通常のモップ用の清掃具と同様に、フローリング部屋の掃き掃除(床掃除)等の清掃に供することができる。
第1実施形態の清掃用シート1Aは、図1及び図2に示すように、長繊維束3を形成するための繊維接合部32と、長繊維束3を基材シート2に接合するためのシート接合部21とが別個に存在する。そして、清掃用シート1Aは、図3(b)に示すように、隣り合う繊維接合部32,32同士の間では、シート接合部21と重なる部位以外の広い領域において、長繊維束3と基材シート2とが接合させておらず離れており、長繊維束3が、シート接合部21により拘束されることがない。即ち、隣り合うシート接合部21,21同士の間の領域では、長繊維束3を構成する長繊維31の自由度が、シート接合部21によって制限されることがないため、清掃用シート1Aのゴミ捕集性が向上する。
【0035】
また、第1実施形態の清掃用シート1Aは、図1,図2に示すように、線状カット部24により長繊維31がカットされていない未カット繊維312を有している。この未カット繊維は、前記基材シートと接合されていない繊維であり、未カット繊維312により、長繊維束3は、束の状態を維持している。即ち、立体開繊することにより、図4に示すように、各繊維接合部32毎に形成される球状の繊維玉34は、独立せずに繋がっているため、線状カット部24のカットによって、清掃用シート1A全体の強度が低下し難く、長繊維31のボリューム感が低下し難い。従って、ゴミ捕集性が維持される。
【0036】
また、第1実施形態の清掃用シート1Aは、図1,図2に示すように、シート接合部21それぞれの大きさが、長繊維31の配向方向(Y方向)に長く形成されている。そのため、長繊維31同士の絡みを防止でき、清掃用シート1Aのゴミ捕集性が向上する。
【0037】
また、第1実施形態の清掃用シート1Aは、図3(a)に示すように、基材シート2が、長繊維束3のカット位置と同じ位置で、線状カット部24によりカットされている。そのため、基材シート2が、その長手方向(Y方向)に柔軟性を有している。従って、このようにカットされた基材シート2を備えた清掃用シート1Aは、清掃対象面に沿って追随し易くなるので、ゴミ、埃等の捕捉効果が更に向上する。
【0038】
また、第1実施形態の清掃用シート1Aは、図5に示すように、4個の長繊維束3の総面積が、清掃用シート1Aを装着する掃除具4のヘッド部41の底面積よりも広くなるように形成されており、清掃具4のヘッド部41に装着すると、ヘッド部41の長手方向に沿った側面にも、長繊維束3が存在する。そのため、フローリング床等の角隅に溜まったゴミ、埃等を有効に捕捉することができる。
【0039】
本発明の第2実施形態の清掃用シートについて、図6,図7に基づいて説明する。
第2実施形態の清掃用シート1Bについては、第1実施形態の清掃用シート1Aと異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態の清掃用シート1Aと同様であり、第1実施形態の清掃用シート1Aの説明が適宜適用される。
【0040】
清掃用シート1Bにおいては、図6,図7に示すように、長繊維束3それぞれにおける繊維接合部32が、長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)に延びて連続的な直線SL2を形成するように配されている。具体的には、直線SL2は、長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)に隣り合う長繊維束3それぞれに配された繊維接合部32同士が連結して、長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)に延びる直線である。この直線SL2は、長繊維31の配向方向(Y方向)に、2本〜30本形成されていることが好ましく、清掃用シート1Bにおいては、直線SL2は、6本形成されている。長繊維束3は、清掃用シート1Aで説明したように、その長さが基材シート2の長さと略同じであり、その幅が、個々の繊維接合部32の長さ(l1)によって判断し難い場合には、長繊維31の配向方向と直交する方向において隣り合う線状カット部24同士の間隔を略二等分する位置までの長さであるため、清掃用シート1Bにおいては、図6に示すように、7個の長繊維束3を有している。
【0041】
清掃用シート1Bにおいては、図6,図7に示すように、長繊維束3それぞれにおける線状カット部24は、長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)に非連続的な直線を形成している。清掃用シート1Bにおいては、図6,図7に示すように、繊維接合部32及び線状カット部24は、長繊維31の配向方向(Y方向)に交互に配されている。具体的には、図6,図7に示すように、長繊維31の配向方向(Y方向)に隣り合う繊維接合部32,32上にそれぞれ配されたシート接合部21,21同士の間の領域毎に、線状カット部24が配されており、長繊維束3それぞれにおける線状カット部24は、繊維接合部32,32同士の間の略中央であって、長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)に、並行する2本の不連続線状(いわゆる千鳥状)に形成されている。
【0042】
清掃用シート1Bにおいては、線状カット部24は、図6,図7に示すように、並行する2本の不連続線状の非連続直線NL1,NL2から形成されている。図6に示すように、長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)において、非連続直線NL1を構成する線状カット部24の末端と、それに隣り合う別の非連続直線NL2を構成する線状カット部24の末端との間隔d3は、長繊維束3に未カット繊維312を形成する観点から、−5mm〜10mmであることが好ましく、0mm〜5mmであることが更に好ましい。ここで、間隔d3がマイナスの値とは、上述の末端同士が重なっていることを意味する。
【0043】
清掃用シート1Bにおいては、立体開繊されることにより、繊維接合部32からなる6本の直線SL2上それぞれに、清掃用シート1Bの幅方向(X方向)に延在する、カット繊維311が絡まった繊維玉34が形成される。清掃用シート1Bには、清掃用シート1Bの幅方向に延在する繊維玉34が、清掃用シート1Bの長手方向に6個並置されており、6個の繊維玉34同士は、線状カット部24の両端近傍に位置し、且つ基材シート2の長手方向(Y方向)に一直線状に延びる未カット繊維312により繋がっている。
【0044】
上述した本発明の第2実施形態の清掃用シート1Bを使用した際の作用効果について説明する。
第2実施形態の清掃用シート1Bによれば、清掃具4のヘッド部41に装着した状態で、通常のモップ用の清掃具と同様に、フローリング部屋の掃き掃除(床掃除)等の清掃に供することができる。
第2実施形態の清掃用シート1Bは、第1実施形態の清掃用シート1Aと同様の効果が得られる。以下、第1実施形態の清掃用シート1Aと異なる効果について説明する。
第2実施形態の清掃用シート1Bは、直線SL2上に繊維接合部32が配され、長繊維31の配向方向(Y方向)に隣り合う直線SL2同士の間の領域毎に、千鳥状の線状カット部24が配されている。そのため、各線状カット部24の長さを短く形成することができるので、基材シート2の剛性、言い換えれば、清掃用シート1Bの剛性を維持し易く、清掃用シート1Bを清掃具4のヘッド部41に装着し易い。また、清掃用シート1B領域内のカット繊維311間に隙間が形成され、長繊維束3は、平面視で畝状となる。清掃具4の清掃方向において、繊維311間の隙間に大き目のゴミが、ヘッド部41の装着面(底面)の内部へ入りやすくなり、ゴミ捕集性が向上する。
【0045】
本発明の第3実施形態の清掃用シートについて、図8,図9に基づいて説明する。
第3実施形態の清掃用シート1Cについては、第1実施形態の清掃用シート1Aと異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態の清掃用シート1Aと同様であり、第1実施形態の清掃用シート1Aの説明が適宜適用される。
【0046】
第3実施形態の清掃用シートは、図8,図9に示すように、基材シート2の両面上に、片面につき、長繊維束3を、3個以上の奇数個備えていることが好ましく、清掃用シート1Cにおいては、5個備えており、これら5個の長繊維束3が並置接合されている。第3実施形態の清掃用シートには、基材シート2の長手方向(Y方向)に沿う側縁2aから奇数番目に位置する長繊維束3それぞれにおける繊維接合部32が、長繊維31の配向方向(Y方向)と交差する方向に平行な複数本の第1仮想直線SL3上に配されている。第1仮想直線SL3は、長繊維31の配向方向に、2本〜40本形成されていることが好ましく、長繊維31の配向方向(Y方向)に隣り合う第1仮想直線SL3同士の間隔は略等間隔に形成されている。清掃用シート1Cにおいては、図8,図9に示すように、基材シート2の長手方向(Y方向)に沿う側縁2aから数えて、1番目の長繊維束3、3番目の長繊維束3及び5番目の長繊維束3それぞれにおける繊維接合部32が、長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)に平行な第1仮想直線SL3上に配されており、この第1仮想直線SL3が、長繊維31の配向方向(Y方向)に略均等な間隔で、7本配されている。
【0047】
第3実施形態の清掃用シートには、図8,図9に示すように、基材シート2の長手方向(Y方向)の沿う側縁2aから偶数番目に位置する長繊維束3それぞれにおける繊維接合部32が、長繊維31の配向方向(Y方向)と交差する方向に平行な複数本の第2仮想直線SL4上に配されている。第2仮想直線SL4は、長繊維31の配向方向(Y方向)に、2本〜40本形成されていることが好ましく、長繊維31の配向方向(Y方向)に隣り合う第2仮想直線SL4同士の間隔は略等間隔に形成されている。清掃用シート1Cにおいては、図8,図9に示すように、基材シート2の長手方向(Y方向)の沿う側縁2aから数えて、2番目の長繊維束3、及び4番目の長繊維束3それぞれにおける繊維接合部32が、長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)に平行な第2仮想直線SL4上に配されており、この第2仮想直線SL4が、長繊維31の配向方向(Y方向)に略均等な間隔で、6本配されている。
【0048】
清掃用シート1Cにおいては、図8,図9に示すように、長繊維31の配向方向(Y方向)に隣り合う第1仮想直線SL3,SL3同士の間隔d4が、長繊維31の配向方向(Y方向)に隣り合う第2仮想直線SL4,SL4同士の間隔d5よりも狭く形成されている。清掃用シート1Cにおいては、図8,図9に示すように、長繊維31の配向方向(Y方向)に隣り合う第1仮想直線SL3,SL3同士の間隔d4が、5mm〜150mmであることが好ましく、長繊維31の配向方向(Y方向)に隣り合う第2仮想直線SL4,SL4同士の間隔d5が、10mm〜120mmであることが好ましい。
【0049】
清掃用シート1Cにおいては、図8,図9に示すように、繊維接合部32及び線状カット部24が、長繊維31の配向方向(Y方向)に交互に配されている。清掃用シート1Cに配された5個の長繊維束3それぞれにおいては、図8,図9に示すように、線状カット部24が、長繊維31の配向方向(Y方向)に隣り合う繊維接合部32同士の間の略中央に配されている。清掃用シート1Cにおいては、図8,図9に示すように、清掃用シート1Cの長手方向(Y方向)の中央に位置する繊維接合部32及び線状カット部24は、互いに連結して長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)に延びて連続的な直線SL5を形成するように配されている。直線SL5は、図8に示すように、清掃用シート1Cの長さを二等分する中心線上に形成されており、1番目の長繊維束3の繊維接合部32及び3番目の長繊維束3の繊維接合部32を線状カット部24を介して接合し、3番目の長繊維束3の繊維接合部32及び5番目の長繊維束3の繊維接合部32を線状カット部24を介して接合することにより、長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)に延びる直線である。
【0050】
清掃用シート1Cにおいては、図8,図9に示すように、第1仮想直線SL3,SL3同士の間隔d4を、第2仮想直線SL4,SL4同士の間隔d5よりも狭く形成し、清掃用シート1Cの長手方向の中央に、繊維接合部32及び線状カット部24からなる直線SL5を形成することにより、清掃用シート1Cの長手方向の両端部それぞれには、長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)に、繊維接合部32が、並行する2本の非連続直線として形成される。
【0051】
清掃用シート1Cにおいては、立体開繊されることにより、清掃用シート1Cの長手方向の両端部それぞれに、繊維接合部32からなる並行する2本の非連続直線を備えているため、清掃用シート1Cの長手方向の両端部それぞれに、清掃用シート1Bの幅方向に延在する見かけ上一直線状の、カット繊維311が絡まった繊維玉34が形成される。また、清掃用シート1Cの長手方向の両端部以外の領域においては、各繊維接合部32毎にカット繊維311が絡まった球状の繊維玉34が形成され、複数個の球状の繊維玉34が千鳥状に形成される。
【0052】
上述した本発明の第3実施形態の清掃用シート1Cを使用した際の作用効果について説明する。
第3実施形態の清掃用シート1Cによれば、清掃具4のヘッド部41に装着した状態で、通常のモップ用の清掃具と同様に、フローリング部屋の掃き掃除(床掃除)等の清掃に供することができる。
第3実施形態の清掃用シート1Cは、第1実施形態の清掃用シート1Aと同様の効果が得られる。以下、第1実施形態の清掃用シート1Aと異なる効果について説明する。
第3実施形態の清掃用シート1Cは、複数個の球状の繊維玉34が千鳥状に形成されており、清掃用シート1Cの長手方向の両端部それぞれに、幅方向に一直線状に延在する、カット繊維311が絡まった繊維玉34が形成される。そのため、シート1A及びシート1Bと比較して、長繊維束3の配置構成が複雑になるので繊維玉34はより立体的になる。また、平面視において美観に優れる。
【0053】
本発明の第4実施形態の清掃用シートについて、図10に基づいて説明する。
第4実施形態の清掃用シート1Dについては、第1実施形態の清掃用シート1Aと異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態の清掃用シート1Aと同様であり、第1実施形態の清掃用シート1Aの説明が適宜適用される。
【0054】
清掃用シート1Dにおいては、図10に示すように、長繊維束3それぞれにおける繊維接合部32が、長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)と斜めに交差する方向に延びて形成されている。また、清掃用シート1Dにおいては、基材シート2に、5個の長繊維束3それぞれが長繊維31の配向方向(Y方向)に長く形成されたシート接合部21を介して固定されている。清掃用シート1Dにおいては、各長繊維束3は、長繊維31の配向方向(Y方向)に隣り合うシート接合部21,21同士の間の領域に、線状カット部24によりカットされていない未カット繊維312も有している。清掃用シート1Dの長手方向(Y方向)の両端部は、図10に示すように、ジグザグに切断されている。
【0055】
第4実施形態の清掃用シート1Dにおいては、図10に示すように、繊維接合部32は、同じ長繊維束3において、それぞれ同じ傾きで長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)と斜めに交差し、隣り合う長繊維束3における繊維接合部32は、長繊維31の配向方向(Y方向)に延びる直線に関し、対称の傾きを持って長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)と斜めに交差して形成されている。
【0056】
繊維接合部32は、長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)に延びる直線に対して、3°〜45°の角度α(図10参照)で交差していることが好ましく、5°〜20°の角度αで交差していることが更に好ましい。同じ長繊維束3における各繊維接合部32は同じ角度αであることが好ましい。
【0057】
また、図10に示すように、長繊維束3それぞれをカットする線状カット部24も同様に、長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)と斜めに交差して形成されている。線状カット部24は、同じ長繊維束3においては、それぞれ同じ傾きで長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)と斜めに交差し、隣り合う長繊維束3における線状カット部24は、長繊維31の配向方向(Y方向)に延びる直線に関し、対称の傾きを持って長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)と斜めに交差して形成されている。
【0058】
線状カット部24は、長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)に延びる直線に対して、3°〜45°の角度β(図10参照)で交差していることが好ましく、5°〜20°の角度βで交差していることが更に好ましい。同じ長繊維束3に配される各線状カット部24は同じ角度βであることが好ましい。
【0059】
図10のように、清掃用シート1Dは、基材シート2の幅方向(X方向)に並んだ5つの長繊維束3のうち、中央寄りの3つの長繊維束3においては、基材シート2の長手方向(Y方向)に5つの線状カット部24と6つの繊維接合部32とが交互に形成されている。また、基材シート2の幅方向(X方向)両外方の2つの長繊維束3においては、基材シート2の長手方向(Y方向)に6つの線状カット部24と7つの繊維接合部32とが交互に形成されている。
【0060】
上述した本発明の第4実施形態の清掃用シート1Dによれば、清掃具4のヘッド部41に装着した状態で、通常のモップ用の清掃具と同様に、フローリング部屋の掃き掃除(床掃除)等の清掃に供することができる。
第4実施形態の清掃用シート1Dは、第1実施形態の清掃用シート1Aと同様の効果が得られる。以下、第1実施形態の清掃用シート1Aと異なる効果について説明する。
第4実施形態の清掃用シート1Dは、その長手方向の両端部がギザギザに形成されているため、該端部によって、床と壁が接続する細かい領域への追従性に優れる。また、後述するように清掃用シート形成工程にて、ジグザグに切断して得られた個々の清掃用シート1Dは、同量の原材料を直線状に切断して同枚数の得られた個々の清掃用シート(例えば第1実施形態の清掃用シート1A)に比べて、清掃用シートの全体長さを長くすることができ、材料の低減又は清拭幅を広くすることができる。
また、繊維接合部32、線状カット部24及び清掃用シート1Dの長手方向(Y方向)の両端部が、長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)に延びる直線と斜めに交差しているため、製造の各工程において、ロール状のシール装置、切断装置を用いる場合に、これらの装置の加工性および耐久性に優れる。
【0061】
本発明の第5実施形態の清掃用シートについて、図11に基づいて説明する。
第5実施形態の清掃用シート1Eについては、第4実施形態の清掃用シート1Dと異なる点について説明する。特に説明しない点は、第4実施形態の清掃用シート1Dと同様であり、第4実施形態の清掃用シート1Dの説明が適宜適用される。
【0062】
第5実施形態の清掃用シート1Eは、図11に示すように、長繊維束3それぞれにおける繊維接合部32及び長繊維束3それぞれをカットする線状カット部24が、清掃用シート1Dと同様に、長繊維31の配向方向と直交する方向(X方向)と斜めに交差して形成されている。清掃用シート1Eにおける線状カット部24は、後述する繊維接合線33同士の間に、繊維接合線33に接することなく配されている。また、清掃用シート1Eは、5個の長繊維束3が長繊維31の配向方向(Y方向)に長く形成されたシート接合部21を介して固定されている。各長繊維束3は、長繊維束3におけるシート接合部21と、その長繊維束に隣り合う長繊維束3におけるシート接合部21との間の領域に、カットされていない未カット繊維312を有している。
【0063】
清掃用シート1Eにおいては、図11に示すように、更に、隣り合う長繊維束3同士の間に、長繊維31を接合する繊維接合線33が、長繊維31の配向方向(Y方向)と平行に、基材シート2の長手方向(Y方向)の端部近傍まで延びて形成されている。繊維接合線33は、繊維接合部32と同様に、長繊維束3を基材シート2に接合するためのものではない。清掃用シート1Eにおいては、図11に示すように、繊維接合線33が4本配されており、各繊維接合線33は、長繊維束3に配された各繊維接合部32の下端部(図11中のX方向の下方側の端部)と、その長繊維束3と隣り合う長繊維束3に配された各繊維接合部32の上端部(図11中のX方向の上方側の端部)とに連結されている。このように、繊維接合部32及び繊維接合線33の何れかによって必ず接合されている長繊維31からなる長繊維束3を清掃用シート1Eは有しているため、長繊維31を線状カット部24により切断して得られる未カット繊維312は、繊維接合部32及び繊維接合線33の何れかと接合している。なお、繊維接合線33は、後述の長繊維束形成工程にて形成されるが、第1加熱エンボス機51で形成するか、又は該エンボス機の前後に別のエンボス機を配置して形成することができる。
【0064】
また、清掃用シート1Eにおいては、図11に示すように、各繊維接合部32毎に、3個のシート接合部21を設けている。シート接合部21は、長繊維31の配向方向に長く形成されている。
【0065】
第4実施形態の清掃用シート1Dは、繊維接合線33により清掃用シート1Dの使用時において、長繊維31およびシート基材2の伸びが抑えられ、清掃用シート1D全体の剛性が向上する。清掃用シート1D全体の剛性が向上することで、略球状の繊維玉34は被清掃面との摩擦力が高くなり、ゴミの捕集性が向上する。
また、繊維接合線33は、繊維接合部32と連結されることにより、フリー状態の長繊維31が存在しなくなるため、長繊維31にうねりが生じた場合に、長繊維の配向方向(Y方向)に隣り合う線状カット部24同士の間で発生する繊維の脱落が防止できる。更には、繊維接合線33が繊維接合部32と連結されることにより、基材シート2の幅方向(X方向)に各長繊維束3が連結され、後述の長繊維束供給工程において、安定性が向上する。
【0066】
次に、本発明の清掃用シートの製造方法を、その好ましい一実施態様について、上述した図1〜図4に示す第1実施形態の清掃用シート1Aを製造する場合を例にして、図12を参照しながら説明する。
【0067】
第1実施態様の製造方法においては、下記(1)〜(5)の工程を経て、清掃用シート1Aを製造する。
(1)長繊維束形成工程
(2)長繊維束供給工程
(3)積層体形成工程
(4)カット部形成工程
(5)清掃用シート形成工程
【0068】
(1)長繊維束形成工程
本工程は、図12に示すように、一方向に配向する長繊維31の集合体を繰り出し、拡幅ロール50により所定幅方向に拡幅し、長繊維31の配向方向(長繊維31の搬送方向)と直交する方向に延びる繊維接合部32を形成することにより、長繊維31同士を接合し、一体化した長繊維束3の連続体103を形成する工程である。清掃用シート1Aにおいては、片面につき4個の長繊維束3を備えているため、それに対応して、一方向に配向する長繊維31の集合体を、長繊維31の配向方向(長繊維31の搬送方向)に繰り出し、清掃用シート1Aの長繊維束の連続体103の4個分の幅長さに拡幅ロール50により拡幅開繊して帯状とし、上述の繊維接合部32を形成することにより、長繊維束3の連続体103を4つ形成する。
【0069】
本工程においては、図12に示すように、4つの長繊維31の連続体103の搬送方向(長繊維31の配向方向)と直交する方向に、実質的に連続して延びる連続シール線132を形成する。連続シール線132は、第1加熱エンボス機51により押圧することにより形成されており、巻き出した長繊維31の連続体の搬送方向に、間欠的に形成されている。この連続シール線132は、繊維接合部32と重なるものであり、連続シール線132の間隔は、清掃用シート1Aの長繊維31の配向方向に隣り合う繊維接合部32同士の間隔に対応して形成される。連続シール線132は、ヒートシール、超音波シール等の公知のシール手段により剥離不能に行う。
【0070】
(2)長繊維束供給工程
本工程は、図12に示すように、長繊維束形成工程により形成された長繊維束3の連続体103を、連続した帯状の不織布102の少なくとも一方の表面上に供給する工程である。尚、図12には、上述した長繊維束形成工程が1つしか記載されていないが、清掃用シート1Aにおいては、基材シート2の両面上に長繊維束3を備える場合には、それに対応して、上述の長繊維束形成工程は、2つ設けられていてもよい。図12に示すように、連続した帯状の不織布102を巻き出し、帯状の不織布102の両面それぞれに、長繊維束3の連続体を、長繊維31の配向方向(長繊維31の搬送方向)と同方向に供給する。その際、帯状の不織布102の両面上に配された長繊維束3の連続体それぞれの連続シール線132の位置が、長繊維31の配向方向(長繊維31の搬送方向)に、互いに一致するように配置されることに留意する。尚、不織布102は、基材シート2となる部材である。
【0071】
(3)積層体形成工程
本工程は、図12に示すように、長繊維束3の連続体103と帯状の不織布102とをシール線121を介して接合することにより積層体の連続体を形成する工程である。シール線121は、第2加熱エンボス機52により押圧されて形成されており、長繊維31の配向方向に、間欠的に形成されている。このシール線121は、シート接合部21となるものであり、シール線121の間隔は、清掃用シート1Aの長繊維31の配向方向に隣り合うシート接合部21同士の間隔に対応して形成されており、また、シール線121それぞれの形状は、清掃用シート1Aのシート接合部21に対応するように、図12に示すように、長繊維31の配向方向に長く、シール線121は、連続シール線132と直角に接して形成されている。このシール線121が、清掃用シート1Aのシート接合部21に対応するように、各連続シール線132毎に2本ずつ形成されている。シール線121のシール手段は、連続シール線132と同様である。
【0072】
(4)カット部形成工程
本工程は、図12に示すように、長繊維31の配向方向(長繊維31の搬送方向)に隣り合う連続シール線132同士の間の領域に線状カット部24を形成する工程である。本工程においては、図12に示すように、隣り合う連続シール線132,132間を、長繊維31の配向方向(長繊維31の搬送方向)と直交する方向に、第1カッター61により押圧し、長繊維31を切断することにより、積層体の連続体上に線状カット部24を形成するとともに、長繊維束3の連続体にカット繊維311及び未カット繊維312が形成される。
【0073】
(5)清掃用シート形成工程
本工程は、図12に示すように、積層体の連続体を所要の長さに切断して個々の清掃用シート1Aを得る工程である。本工程においては、図12に示すように、積層体の連続体が、第2カッター62により押圧されて、長繊維31の配向方向(長繊維31の搬送方向)と直交する方向に切断され、基材シート2の両面上に、片面につき、4個の長繊維束3を備えた清掃用シート1Aが、連続的に得られる。
【0074】
清掃用シート1Aの製造方法においては、下記工程(6)を更に有していることが好ましい。
(6)長繊維を3次元方向にランダムに起毛するように立体開繊する工程
本工程は、(4)カット部形成工程と(5)清掃用シート形成工程との間で行われる工程である。本工程は、長繊維束3の連続体のカット繊維311に対して、エアブロー処理、バキューム処理を行い、カット繊維311同士を3次元方向にランダムに起毛させて繊維玉34(図4参照)を形成する工程である。
【0075】
上述した図6に示す第2実施形態の清掃用シート1B、及び図8に示す第3実施形態の清掃用シート1Cを製造する場合には、第1実施態様の製造方法の(1)長繊維束形成工程において、第1加熱エンボス機51により連続シール線132を形成する位置を、清掃用シート1Bの繊維接合部32に対応する位置に変更し、第1実施態様の製造方法の(4)カット部形成工程において、第1カッター61によりカットする位置を、清掃用シート1Bの線状カット部24に対応する位置に変更することにより製造することができる。
【0076】
本発明の清掃用シートは、上述の第1、第2又は第3実施形態の清掃用シートに何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。また、上述の第1、第2又は第3実施形態の清掃用シートにおける各構成要件は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、適宜組み合わせて実施できる。
【0077】
例えば、上述の第1、第2又は第3実施形態の清掃用シート1A,1B,1Cにおいては、図1,図6,図8に示すように、繊維接合部32及び線状カット部24は、長繊維31の配向方向と直交する方向に延びているが、長繊維31の配向方向と交差していればよい。
【0078】
また、上述の第1、第2又は第3実施形態の清掃用シート1A,1B,1Cにおいては、図1,図6,図8に示すように、基材シート2の両面上に、それぞれ長繊維束3を備えているが、基材シート2の片面上にのみ、長繊維束3を備えていてもよい。
【0079】
また、上述の第1、第2又は第3実施形態の清掃用シート1A,1B,1Cにおいては、図1,図6,図8に示すように、シート接合部21の大きさは、長繊維の配向方向に長く形成されているが、繊維接合部32上に配されてさえいれば、長く形成されてなくてもよい。また、シート接合部21それぞれの大きさが、異なるように設けられてもよい。
【0080】
また、上述の第1、第2又は第3実施形態の清掃用シート1A,1B,1Cにおいては、図1,図6,図8に示すように、基材シート2も、長繊維束3のカット位置と同じ位置で、線状カット部24によりカットされているが、基材シート2は、カットされていなくてもよい。
【0081】
また、上述の第1、第2又は第3実施形態の清掃用シート1A,1B,1Cにおいては、図4に示すように、立体開繊により繊維玉34が形成されているが、立体開繊されていなくてもよい。
【0082】
また、上述の第1又は第2実施形態の清掃用シート1A,1Bにおいては、図1,図6,に示すように、長繊維31の配向方向に隣り合う直線SL1同士の間隔d2、又は直線SL2同士の間隔d3は、略等間隔であったが、距離を変えてもよい。例えば、清掃用シートの長手方向の両端部に行くに従って、間隔を徐々に広げてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1A,1B,1C,1D,1E 清掃用シート
2 基材シート
2a 側縁
21 シート接合部
22 フラップ
24 線状カット部
3 長繊維束
31 長繊維
311 カット繊維
312 未カット繊維
32 繊維接合部
33 繊維接合線
34 繊維玉
4 清掃具
41 ヘッド部
41a ヘッド部の側面
42 柄
43 自在継手
44 シート保持部
50 拡幅ロール
51 第1加熱エンボス機
52 第2加熱エンボス機
61 第1カッター
62 第2カッター
102 不織布
103 長繊維束の連続体
121 シール線
132 連続シール線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの少なくとも一方の表面上に、実質的に一方向に配向する長繊維が集合した複数個の長繊維束を備え、該長繊維束が並置接合された清掃用シートであって、
前記長繊維束それぞれは、前記長繊維の配向方向と交差する方向に直線状に延びる複数個の繊維接合部により、該長繊維同士が接合されて形成され、前記基材シートに複数個のシート接合部を介して接合されており、
複数個の前記シート接合部それぞれは、前記繊維接合部の一部に重ねられて設けられており、
前記長繊維束それぞれは、複数個の線状カット部でカットされており、複数の該線状カット部は、前記長繊維の配向方向において隣り合う前記シート接合部同士の間の領域にそれぞれ配されており、且つ前記長繊維束それぞれは、前記長繊維が前記線状カット部によりカットされたカット繊維の他に、該線状カット部近傍にカットされていない未カット繊維も有している清掃用シート。
【請求項2】
前記未カット繊維は、前記基材シートと接合されていない繊維である請求項1に記載の清掃用シート。
【請求項3】
前記シート接合部それぞれの形状は、前記長繊維の配向方向に長い請求項1又は2に記載の清掃用シート。
【請求項4】
前記基材シートは、前記長繊維束のカット位置と同じ位置で、前記線状カット部によりカットされている請求項1〜3の何れかに記載の清掃用シート。
【請求項5】
前記長繊維束それぞれにおける前記繊維接合部及び前記線状カット部は、前記長繊維の配向方向と交差する方向に交互に配され、連続的な直線を複数本形成するように配されており、
前記繊維接合部及び前記線状カット部は、前記長繊維の配向方向に交互に配されている請求項1〜4の何れかに記載の清掃用シート。
【請求項6】
前記長繊維束それぞれにおける前記繊維接合部は、前記長繊維の配向方向と交差する方向に連続的な直線を複数本形成するように配されており、
前記長繊維束それぞれにおける前記線状カット部は、前記長繊維の配向方向と交差する方向に非連続的な直線を複数本形成するように配されており、
前記繊維接合部及び前記線状カット部は、前記長繊維の配向方向に交互に配されている請求項1〜4の何れかに記載の清掃用シート。
【請求項7】
前記基材シートは、前記長繊維の配向方向に長い長方形状であって、
前記清掃用シートは、3個以上の奇数個の前記長繊維束を備えており、
前記基材シートの長手方向の沿う側縁から奇数番目に位置する前記長繊維束それぞれにおける前記繊維接合部は、前記長繊維の配向方向と交差する方向に平行な複数本の第1仮想直線上に配されており、前記基材シートの長手方向の沿う側縁から偶数番目に位置する前記長繊維束それぞれにおける前記繊維接合部は、前記長繊維の配向方向と交差する方向に平行な複数本の第2仮想直線上に配されており、
前記長繊維の配向方向に隣り合う前記第1仮想直線同士の間隔及び該長繊維の配向方向に隣り合う前記第2仮想直線同士の間隔それぞれは、略等間隔に形成され、該第1仮想直線同士の間隔が、該第2仮想直線同士の間隔よりも狭く形成されており、
前記繊維接合部及び前記線状カット部は、前記長繊維の配向方向に交互に配されている請求項1〜4の何れかに記載の清掃用シート。
【請求項8】
複数個の前記長繊維束の総面積は、清掃用シートを装着する掃除具のヘッド部の底面積よりも広い請求項1〜7の何れかに記載の清掃用シート。
【請求項9】
前記長繊維の配向方向、前記基材シートの長手方向、及び前記掃除具のヘッド部の長手方向が一致しており、前記清掃用シートを前記掃除具のヘッド部に装着する際、該ヘッド部の長手方向に沿った側面にも、前記長繊維束が存在する請求項8に記載の清掃用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−207569(P2010−207569A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22856(P2010−22856)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【特許番号】特許第4543124号(P4543124)
【特許公報発行日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】