清掃装置、清掃方法、露光装置、露光方法及びデバイスの製造方法
【課題】光学部材の光学面に清掃用媒体を衝突させることにより、該光学面から異物を除去することができる清掃装置、露光装置、清掃方法、露光方法及びデバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】清掃装置は、光学部材の光学面の少なくとも一部に対向して配置されることにより、チャンバ内の環境から分離された清掃用空間を形成する環境形成部材61と、清掃用空間内で光学面の少なくとも一部に清掃用媒体を噴射する清掃用媒体噴射部70と、光学面の少なくとも一部に噴射された清掃用媒体及び清掃用媒体によって光学面の少なくとも一部から除去された異物を回収する回収部72とを備えている。
【解決手段】清掃装置は、光学部材の光学面の少なくとも一部に対向して配置されることにより、チャンバ内の環境から分離された清掃用空間を形成する環境形成部材61と、清掃用空間内で光学面の少なくとも一部に清掃用媒体を噴射する清掃用媒体噴射部70と、光学面の少なくとも一部に噴射された清掃用媒体及び清掃用媒体によって光学面の少なくとも一部から除去された異物を回収する回収部72とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材の光学面を清掃する清掃装置及び清掃方法に関する。また、本発明は、清掃装置を備える露光装置、清掃方法を含む露光方法及び露光装置を用いるデバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体集積回路などのマイクロデバイスを製造するためのリソグラフィ工程では、パターンを感光性材料の塗布されたウエハ、ガラスプレートなどの基板に形成する露光装置が用いられる。こうした露光装置には、レンズ、ミラー及びマスクなどの光学部材が設けられている。そして、光学部材の光学面に異物が付着した場合、該異物の影響によって、基板に適切な形状のパターンを形成できなかったり、基板を照射する露光光の光量が低下したりするおそれがある。そこで、近年では、光学部材の光学面から異物を除去すべく該光学部材を清掃する装置として、例えば特許文献1に記載のクリーンニングシステムが提案されている。このクリーンニングシステムは、雪の粒子、例えば、炭酸ガス又はアルゴン等を光学部材に提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−108696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなクリーンシステムを大気とは異なる雰囲気(一例として、真空雰囲気)に設定されたチャンバ内で使用する場合には、ノズルから提供される雪の粒子の状態(気化する等)が変化してしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、光学部材の光学面から異物を効率よく除去することができる清掃装置、露光装置、清掃方法、露光方法及びデバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、実施形態に示す図1〜図14に対応付けした以下の構成を採用している。
本発明の清掃装置は、チャンバ(13)内に設けられる光学部材(19,21〜24,30〜35,M,R)の光学面(Ma,Ra)を清掃する清掃装置(60)であって、前記光学面(Ma,Ra)の少なくとも一部に対向して配置されることにより、前記チャンバ(13)内の環境から分離された清掃用環境(Sp)を形成する環境形成部材(61,90,110)と、前記清掃用環境(Sp)内で前記光学面(Ma,Ra)の少なくとも一部に清掃用媒体を噴射する噴射部(70)と、前記光学面(Ma,Ra)の少なくとも一部に噴射された清掃用媒体及び前記清掃用媒体によって前記光学面の少なくとも一部から除去された異物を回収する回収部(72)と、を備えることを要旨とする。
【0007】
本発明の清掃方法は、チャンバ(13)内に設けられる光学部材(19,21〜24,30〜35,M,R)の光学面(Ma,Ra)を清掃する清掃方法であって、前記光学面(Ma,Ra)の少なくとも一部に対向する位置に、前記チャンバ内の環境から分離された清掃用環境(Sp)を形成する環境形成工程(S13,S16)と、前記清掃用環境(Sp)内で前記光学面(Ma,Ra)の少なくとも一部に清掃用媒体を噴射し、前記光学面(Ma,Ra)の少なくとも一部に噴射された清掃用媒体と前記清掃用媒体によって前記光学面の少なくとも一部から除去された異物とを回収する清掃工程(S14,S17)と、を有することを要旨とする。
【0008】
なお、本発明をわかりやすく説明するために実施形態を示す図面の符号に対応づけて説明したが、本発明が実施形態に限定されるものではないことは言うまでもない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光学部材の光学面から異物を効率良く除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態における露光装置を示す概略構成図。
【図2】(a)はレチクル保持装置を示す概略構成図、(b)はレチクル保持装置に保持されるレチクルを模式的に示す平面図。
【図3】第1の実施形態における清掃装置を示す概略構成図。
【図4】(a)は環境形成部材を模式的に示す平面図、(b)は図4(a)の4−4線矢視断面図。
【図5】第1供給装置を模式的に示す断面図。
【図6】露光装置の電気的構成を説明するブロック図。
【図7】第1の実施形態における露光処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図8】(a)は第1の実施形態においてレチクルのパターン形成面が清掃される様子を示す模式図、(b)は図8(a)の要部を拡大した拡大図。
【図9】第2の実施形態における環境形成部材を模式的に示す平面図。
【図10】(a)は環境形成部材をレチクルのパターン形成面に対向して配置した状態を模式的に示す側断面図、(b)は図10(a)の要部を拡大した拡大図。
【図11】別の実施形態における第1供給装置を示す概略構成図。
【図12】ミラーの反射面を清掃するための環境形成部材を模式的に示す側断面図。
【図13】デバイスの製造例のフローチャート。
【図14】半導体デバイスの場合の基板処理に関する詳細なフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下に、本発明を具体化した一実施形態について図1〜図8に基づき説明する。なお、本実施形態では、投影光学系の光軸に平行な方向をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直な平面内で走査露光時のレチクルR及びウエハWの走査方向をY軸方向とし、その走査方向に直交する非走査方向をX軸方向として説明する。また、X軸、Y軸、Z軸の周りの回転方向をθx方向、θy方向、θz方向ともいう。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の露光装置11は、光源装置12から射出される、波長が100nm程度以下の軟X線領域である極端紫外光、即ちEUV(Extreme Ultraviolet )光を露光光ELとして用いるEUV露光装置である。こうした露光装置11は、内部が大気よりも低圧の真空雰囲気に設定されるチャンバ13(図1では二点鎖線で囲まれた部分)を備えている。このチャンバ13内には、光源装置12からチャンバ13内に供給された露光光ELで所定のパターンが形成された反射型のレチクルRを照明する照明光学系14と、パターンの形成されたパターン形成面Raが−Z方向側(図1では下側)に位置するようにレチクルRを保持するレチクル保持装置15とが設けられている。また、チャンバ13内には、レチクルRを介した露光光ELでレジストなどの感光性材料が塗布されたウエハWを照射する投影光学系16と、露光面(感光性材料が塗布されたウエハ表面)Waが+Z方向側(図1では上側)に位置するようにウエハWを保持するウエハ保持装置17とが設けられている。
【0013】
光源装置12は、波長が5〜20nmのEUV光を露光光ELとして出力する装置であって、図示しないレーザ励起プラズマ光源を備えている。このレーザ励起プラズマ光源では、例えば半導体レーザ励起を利用したYAGレーザやエキシマレーザなどの高出力レーザで高密度のEUV光発生物質(ターゲット)を照射することによりプラズマが発生され、該プラズマからEUV光が露光光ELとして放射される。こうした露光光ELは、図示しない集光光学系によって集光されてチャンバ13内に出力される。
【0014】
照明光学系14は、チャンバ13の内部と同様に、内部が真空雰囲気に設定される筐体18(図1では一点鎖線で囲まれた部分)を備えている。この筐体18内には、光源装置12から出力された露光光ELを集光するコリメート用ミラー19が設けられており、該コリメート用ミラー19は、入射した露光光ELを略平行に変換してオプティカルインテグレータの一種であるフライアイ光学系20(図1では破線で囲まれた部分)に向けて射出する。このフライアイ光学系20は、一対のフライアイミラー21,22を備えており、該各フライアイミラー21,22のうち入射側に配置される入射側フライアイミラー21は、レチクルRのパターン形成面Raと光学的に共役となる位置に配置されている。こうした入射側フライアイミラー21で反射された露光光ELは、射出側に配置される射出側フライアイミラー22に入射する。
【0015】
また、照明光学系14には、射出側フライアイミラー22から射出された露光光ELを筐体18外に射出するコンデンサミラー23が設けられている。そして、コンデンサミラー23から射出された露光光ELは、後述する鏡筒29内に設置された折り返し用の反射ミラー24により、レチクル保持装置15に保持されるレチクルRに導かれる。
【0016】
レチクル保持装置15は、投影光学系16の物体面側に配置されている。なお、レチクル保持装置15の構成については、後述する。
また、レチクル保持装置15は、レチクル移動装置25の駆動によって、Y軸方向(図1における左右方向)に移動可能である。すなわち、レチクル移動装置25は、レチクル保持装置15に保持されるレチクルRをY軸方向に所定ストロークで移動させる。また、レチクル移動装置25は、レチクルRをX軸方向(図1において紙面と直交する方向)、Z軸方向及びθz方向に微動させることが可能である。なお、レチクルRのパターン形成面Raが露光光ELで照明される場合、該パターン形成面Raの一部には、X軸方向に延びる略円弧状の照明領域が形成される。
【0017】
また、レチクル保持装置15の近傍には、レチクルRのパターン形成面Raのうち、露光光ELで照明される照明領域のZ軸方向における位置、即ち照明領域の高さを計測するための計測装置26が設けられている。この計測装置26は、Z軸方向と交差する方向に向けて計測光(図1では破線矢印で示す。)を発光する複数(図1では1つのみ図示)の発光器27(例えばハロゲンランプやレーザ)と、レチクルRの照明領域の各位置で反射された計測光を受光可能な複数(図1では1つのみ図示)の受光器28(例えばCCD)とを備えている。そして、各受光器28は、レチクルRの照明領域にて反射した計測光を受光した際の受光位置に応じた検出信号を後述する制御装置CONTに出力する。
【0018】
投影光学系16は、露光光ELでレチクルRのパターン形成面Raを照明することにより形成されたパターンの像を所定の縮小倍率(例えば1/4倍)に縮小させる光学系であって、チャンバ13の内部と同様に、内部が真空雰囲気に設定される鏡筒29を備えている。この鏡筒29内には、複数枚(本実施形態では6枚)の反射型のミラー30,31,32,33,34,35が収容されている。これら各ミラー30〜35は、図示しないミラー保持装置を介して鏡筒29にそれぞれ保持されている。そして、物体面側であるレチクルR側から導かれた露光光ELは、ミラー30、ミラー31、ミラー32、ミラー33、ミラー34、ミラー35の順に反射され、ウエハ保持装置17に保持されるウエハWの露光面Waに導かれる。
【0019】
照明光学系14及び投影光学系16が備える各ミラー19,21〜24,30〜35のミラー面には、露光光ELを反射する反射層がそれぞれ形成されている。これら各反射層は、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)を交互に積層した多層膜をそれぞれ有している。
【0020】
ウエハ保持装置17は、ウエハWを静電吸着するための静電吸着保持装置36を備えている。この静電吸着保持装置36は、誘電性材料で形成され且つ吸着面37aを有する基体37と、該基体37内に配置される図示しない複数の電極部とを有している。そして、図示しない電圧印加部から電圧が各電極部にそれぞれ印加された場合、基体37から発生されるクーロン力により、吸着面37aにウエハWが静電吸着される。また、ウエハ保持装置17には、静電吸着保持装置36を保持する図示しないウエハホルダと、該ウエハホルダのZ軸方向(図1では上下方向)における位置及びX軸周り、Y軸周りの傾斜角を調整する図示しないZレベリング機構とが組み込まれている。
【0021】
こうしたウエハ保持装置17は、ウエハ移動装置38によって、Y軸方向に移動可能である。すなわち、ウエハ移動装置38は、静電吸着保持装置36に保持されるウエハWをY軸方向に所定ストロークで移動させる。また、ウエハ移動装置38は、静電吸着保持装置36に保持されるウエハWをX軸方向に所定ストロークで移動させることが可能であるとともに、Z軸方向に微動させることが可能である。
【0022】
そして、ウエハWの一つのショット領域にレチクルRのパターンを形成する場合、照明光学系14によって照明領域をレチクルRに形成した状態で、レチクル移動装置25の駆動によって、レチクルRをY軸方向(例えば、+Y方向側から−Y方向側)に所定ストローク毎に移動させる。また同時に、ウエハ移動装置38の駆動によって、ウエハWをレチクルRのY軸方向に沿った移動に対して投影光学系16の縮小倍率に応じた速度比でY軸方向(例えば、−Y方向側から+Y方向側)に同期して移動させる。そして、一つのショット領域へのパターンの形成が終了した場合、ウエハWの他のショット領域に対するパターンの形成が連続して行われる。
【0023】
次に、本実施形態のレチクル保持装置15について説明する。
図2(a)(b)に示すように、レチクル保持装置15は、レチクルRにおいてパターン形成面Raに沿う方向であるX軸方向における一方側(図2(a)では右側)を把持する第1把持部40Aと、レチクルRにおいてX軸方向における他方側(図2(a)では左側)を把持する第2把持部40Bとを備えている。これら各把持部40A,40Bは、レチクルRを挟んで互いに対向する第1当接部41及び第2当接部42を有している。第1当接部41は、レチクルRを所望の位置に設置するために、剛性の高い材料、例えば、ステンレス、アルミニウム、セラミックで形成されている。また、第2当接部42は、レチクルRをレチクル保持装置15から着脱する際におけるレチクルRの損傷を抑制するために、剛性の低い材料、例えば、デルリン(登録商標)、ポリイミド、導電性ポリイミドで形成されている。なお、第1当接部41及び第2当接部42は、これらの材料又はこれらの材料の組み合わせで形成したものであってもよい。また、第1当接部41及び第2当接部42の当接面41a,42aは、研削又は研磨加工され、所望の面精度に仕上げられた面であってもよい。
【0024】
第1当接部41及び第2当接部42は、パターン形成面Raに沿う方向であって且つX軸方向と直交(交差)するY軸方向に延設されている。また、第1当接部41及び第2当接部42においてレチクルRに当接する当接面41a,42a側には、Y軸方向に沿って延びる複数(本実施形態では2つ)の溝部43が形成されている。第1当接部41は、レチクルRのパターン形成面Raのうち所定のパターンが形成される略正方形状の第1領域R1(図2(b)では二点鎖線で囲まれた領域)を包囲するように形成された第2領域R2に当接するように配置されている。一方、第2当接部42は、レチクルRのパターン形成面Raの反対側の面Rb(即ち、+Z方向側の面)に当接するように配置されている。
【0025】
また、各把持部40A,40Bには、レチクル保持装置15へのレチクルRの取り付け時及びレチクル保持装置15からのレチクルRの取り外し時に駆動する駆動機構45が設けられている。駆動機構45は、第1当接部41を−Z方向側から支持する第1支持部46と、第2当接部42を+Z方向側から支持する第2支持部47と、第1支持部46を基準として第2支持部47を相対的に揺動させるための支点部48と、第2支持部47に駆動力を付与すべく駆動するアクチュエータ49とを備えている。例えば、アクチュエータ49は、圧電素子、ボイスコイルモータ、電磁ソレノイド、油圧プランジャー、ボールねじと減速歯車と回転モータの組み合わせ等である。
【0026】
第1支持部46は、X軸方向に延びる第1アーム46aを有している。第1アーム46aの長手方向における第1の端部(即ち、レチクルRに近い端部)側には、第1当接部41をY軸方向に沿う図示しない軸線を中心に揺動自在であって、且つX軸方向に沿う図示しない軸線を中心に揺動自在な状態で支持する連結部50が設けられている。また、第1アーム46aの長手方向における第2の端部(即ち、レチクルRに遠い端部)側には、支点部48が連結されている。
【0027】
第2支持部47は、X軸方向に延びる第2アーム47aを有している。第2アーム47aの長手方向における第1の端部側には、第2当接部42をY軸方向に沿う図示しない軸線を中心に揺動自在であって、且つX軸方向に沿う図示しない軸線を中心に揺動自在な状態で支持する連結部51が設けられている。また、第2アーム47aの長手方向における第2の端部には、支点部48が連結されている。
【0028】
本実施形態では、第1アーム46aの連結部50及び第2アーム47aの連結部51は、Y軸方向に沿った複数の箇所に設けられる。例えば、連結部50,51は、Y軸方向に沿って等間隔おきに、2箇所又は3箇所、あるいはそれ以上に設けてもよい。なお、連結部50,51の個数及び設置箇所は、例えば、第1当接部41と第2当接部42の機械的な剛性やレチクルRの撓み量等に合わせて決められる。
【0029】
アクチュエータ49は、X軸方向において各当接部41,42と支点部48との間に配置されている。アクチュエータ49の−Z方向側の端部は、第1支持部46に支持されると共に、アクチュエータ49の+Z方向側の端部は、第2支持部47に支持されている。そして、アクチュエータ49は、外部から電圧が印加されることにより、Z軸方向に伸縮可能に構成されている。すなわち、アクチュエータ49が図2(a)に示す状態から伸張した場合には、アクチュエータ49からの駆動力が増大された状態で第2支持部47に伝達される。その結果、第2支持部47に支持される第2当接部42は、支点部48を支点としてレチクルRから離間する方向に移動する。
【0030】
また、第1当接部41にレチクルRが載置された状態でアクチュエータ49が収縮した場合には、アクチュエータ49からの駆動力が増大された状態で第2支持部47に伝達される。そして、第2当接部42は、支点部48を支点として第1当接部41に接近する方向に移動する。その結果、レチクルRは、第1当接部41及び第2当接部42によって挟持される。
【0031】
このようにレチクルRをX軸方向における両端で保持した場合、レチクルRのX軸方向における中央は、自重によって、−Z方向側(重力方向における下方側)に僅かに変位してしまう。すなわち、レチクルRが撓んでしまう。しかし、こうしたレチクルRの撓みは、十分に予測できる。この場合、重力によるレチクルRの撓みは、他のレチクルRに交換しても同様に発生する。そのため、制御装置CONTのメモリ(図示略)には、重力によるレチクルRの撓みとレチクルRに入射する露光光ELの入射角とにより発生するディストーションを補正できるようなレチクルRを移動させるための移動プログラム、ウエハWを移動させるための移動プログラム及び各ミラーの角度調整プログラムなどを記憶させておいてもよい。この場合、レチクル保持装置15に保持されるレチクルRが交換される毎に、レチクルRのY軸方向における各位置の高さを、計測装置26を用いて計測しなくてもよい。
【0032】
その一方で、レチクルR毎に撓み量が異なる可能性がある。この場合、レチクルRをレチクル保持装置15で保持させた場合に、レチクル移動装置25の駆動によって、レチクルRをY軸方向に移動させる。そして、レチクルRのY軸方向における各位置の高さが、計測装置26を用いて計測される。その結果、制御装置CONTでは、レチクルR用の移動プログラム、ウエハW用の移動プログラム及び各ミラーの角度調整プログラムなどが一部補正される。
【0033】
そして、露光処理時では、レチクル移動装置25は、計測装置26による計測結果に基づき、レチクルRのZ軸方向における位置を微調整しつつ、該レチクルRをY軸方向に所定ストロークで移動させる。具体的には、レチクル移動装置25は、レチクルRにおいて露光光ELで照明される照明領域のZ軸方向における位置が一定となるように、レチクルRのZ軸方向における位置を微調整させる。
【0034】
また、本実施形態の露光装置11に使用されるレチクルRには、パターン形成面Raを保護するためのペリクルが設けられていないため、パターン形成面Raに異物が付着する可能性がある。そのため、本実施形態の露光装置11には、レチクルRのパターン形成面Raの第1領域R1を清掃する清掃装置が設けられている。そこで次に、清掃装置について説明する。
【0035】
図3に示すように、清掃装置60は、環境形成部材61と、該環境形成部材61をY軸方向に沿って移動させるための清掃用移動装置62とを備えている。また、清掃装置60は、チャンバ13外に配置される第1タンク63から清掃用媒体を環境形成部材61に供給するための第1供給装置64と、チャンバ13外に配置される第2タンク65から環境形成用気体を環境形成部材61に供給するための第2供給装置66とを備えている。さらに、清掃装置60は、環境形成部材61側から、使用済みとなった清掃用媒体及び環境形成用気体と、レチクルRから除去された異物などとを回収するための回収装置67を備えている。
【0036】
なお、環境形成用気体は、清掃用媒体噴射部70から噴射された清掃用媒体がレチクルRのパターン形成面Raに適切な状態で衝突するように、環境形成部材61の内部の圧力や温度等を調整するために用いられる。また、環境形成用気体は、環境形成部材61の内部に供給されることで、レチクルRのパターン形成面Raの熱を効率よく放熱させるために用いられる。
【0037】
環境形成部材61は、図4(a)(b)に示すように、熱伝導率の高い材料(一例としてアルミニウム)で構成された有底筒状の部材であって、底部61aと、該底部61aの+Z方向側に位置する四角筒状の筒状部61bとを有している。すなわち、環境形成部材61には、+Z方向側に開口する略矩形状の開口部61cが形成されている。この開口部61cのX軸方向における幅H1は、レチクルRの第1領域R1のX軸方向における幅H2(図2(b)参照)と同等、又は該幅H2よりも僅かに広いと共に、開口部61cのY軸方向における幅H3は、開口部61cのX軸方向における幅H1よりも狭い。また、環境形成部材61のX軸方向における幅H4は、第1把持部40Aの第1当接部41と第2把持部40Bの第1当接部41とのX軸方向における間隔H5(図2(a)参照)よりも僅かに狭い。つまり、本実施形態の環境形成部材61は、レチクルRのパターン形成面Raの一部に対向配置可能とされている。
【0038】
また、環境形成部材61の底部61aには、第1供給装置64を介して供給された清掃用媒体を噴射するための複数(図4(a)では9個のみ図示)の清掃用媒体噴射部70が形成されている。一例として、各清掃用媒体噴射部70は、X軸方向に沿って等間隔に配置されている。こうした清掃用媒体噴射部70の口径は、後述する第1供給管路76内の口径よりも小さい。
【0039】
また、環境形成部材61の底部61aには、第2供給装置66を介して供給された気体を、環境形成部材61とレチクルRのパターン形成面Raとで囲まれた空間に供給するための環境形成用気体供給部71が形成されている。一例として、環境形成用気体供給部71は、底部61aのX軸方向における端部(図4(a)では左端)に配置されている。
【0040】
また、環境形成部材61において清掃用媒体噴射部70の近傍には、清掃用媒体噴射部70から噴射された清掃用媒体、環境形成用気体供給部71から供給された環境形成用気体及びレチクルRから除去された異物を回収するための回収部72が設けられている。本実施形態では、回収部72は、環境形成部材61の筒状部61bのうち+Z方向側(即ち、レチクルRに対向する側)の端部に設けられている。また、回収部72は、各清掃用媒体噴射部70及び環境形成用気体供給部71を包囲するように四角環状をなす回収口72aを有している。こうした回収部72は、該回収部72から−Z方向側に延びる回収通路73を介して回収装置67に接続されている。
【0041】
清掃用移動装置62は、図3に示すように、環境形成部材61を、Y軸方向においてレチクル保持装置15とは異なる位置であってレチクルRを清掃不能な退避位置と、Y軸方向においてレチクル保持装置15に対応する位置であってレチクルRを清掃可能な清掃位置との間で進退移動させる。なお、清掃用移動装置62の駆動によって環境形成部材61が清掃位置に配置された場合、図5に示すように、環境形成部材61は、レチクルRのパターン形成面Raとの間に、ほんの僅かな隙間H6(例えば、5μm程度)を介在させた状態で配置される。
【0042】
第1供給装置64は、図5に示すように、第1タンク63内から清掃用媒体を吸引する第1ポンプ75と、該第1ポンプ75から吐出された清掃用媒体を環境形成部材61の各清掃用媒体噴射部70に供給するための第1供給管路76とを備えている。第1供給管路76において環境形成部材61側の部位は、各清掃用媒体噴射部70に個別対応するように分岐されている。そして、各清掃用媒体噴射部70からは、同一圧力で清掃用媒体が噴射される。
【0043】
また、第1ポンプ75は、第1タンク63と同様に、チャンバ13外に配置されている。そのため、第1供給管路76は、チャンバ13の側壁に形成された貫通孔13a内を貫通している。第1供給管路76の外周面と貫通孔13aの側面との間には、熱伝導率の低い材料で構成された円環状の封止部材77が設けられている。この封止部材77は、貫通孔13aと第1供給管路76との間の隙間を介して外部からチャンバ13に大気が漏入することを抑制している。
【0044】
また、第1供給管路76のうちチャンバ13内に位置する部分は、熱伝導率の低い材料で構成された筒部材78によって内包されている。その結果、第1供給管路76内の温度は、第1タンク63内と略同等に維持される。なお、図5では、明細書の説明理解の便宜上、回収部72の図示を省略している。
【0045】
本実施形態において、清掃用媒体は、レチクルRのパターン形成面Raに噴射されることで、気化または昇華する性質を有する媒体である。例えば、清掃用媒体は、二酸化炭素を含んでいる。第1タンク63には、液状の清掃用媒体(例えば、液体の二酸化炭素)が貯留されており、第1ポンプ75を駆動させることによって、環境形成部材61の内部に液状の清掃用媒体が供給される。そして、環境形成部材61の各清掃用媒体噴射部70から、液状の清掃用媒体が噴射される。例えば、清掃用媒体として二酸化炭素を使用する場合、清掃用媒体噴射部70から液体の二酸化炭素を噴射すると、液体の二酸化炭素は熱の出入りがない急激な膨張(断熱膨張)を起こし、固体の二酸化炭素(ドライアイス)と気体の二酸化炭素が入り混じった状態となって、レチクルRのパターン形成面Raに噴射される。噴射されたドライアイスは、レチクルRのパターン形成面Ra上の異物に衝突し、気体の二酸化炭素によって、ドライアイスと異物とがレチクルRのパターン形成面Raから除去される。
【0046】
第2供給装置66は、図3に示すように、第2タンク65内から環境形成用気体を吸引する第2ポンプ80と、該第2ポンプ80から吐出された環境形成用気体を環境形成部材61の環境形成用気体供給部71に供給するための第2供給管路81とを備えている。第2ポンプ80は、第2タンク65と同様に、チャンバ13外に配置されている。また、第2タンク65では、環境形成用気体の温度が室温又は該室温よりも低温で保持されている。なお、本実施形態の環境形成用気体は、例えば、ヘリウムを含んでいる。また、環境形成用気体は、主成分がヘリウム、窒素、ドライエアー、又はこれらの混合物となる気体であってもよい。また、環境形成用気体は、レチクルRのパターン形成面Raに付着したカーボンコンタミの除去用に酸素を含んでものであってもよい。なお、カーボンコンタミとは、カーボンコンタミネーションの略であり、炭素を主成分とする汚れのことを示す。
【0047】
回収装置67は、チャンバ13外に配置される回収ポンプ83と、該回収ポンプ83と環境形成部材61の回収部72とを連結する回収用管路84とを備えている。
次に、本実施形態の露光装置11を制御する制御装置について説明する。
【0048】
図6に示すように、制御装置CONTには、レチクル保持装置15、レチクル移動装置25、ウエハ移動装置38、計測装置26、清掃用移動装置62及び各ポンプ75,80,83が電気的に接続されている。こうした制御装置CONTには、図示しないCPU、ROM及びRAMなどを有する制御回路が設けられている。ROMには、各種制御プログラム及び各種データなどが記憶されている。RAMには、CPUが実行するプログラムデータ及びCPUによる演算結果及び処理結果である各種データなどが一時記憶される。
【0049】
次に、ウエハ保持装置17に保持されるウエハWの各ショット領域に順番に露光処理を行う際に制御装置CONTが実行する露光処理ルーチンについて、図7に示すフローチャートに基づき説明する。
【0050】
ウエハ保持装置17にウエハWが設置されると、制御装置CONTは、露光処理ルーチンを実行する。この露光処理ルーチンにおいて、制御装置CONTは、レチクル移動装置25とウエハ移動装置38とを協働させることにより、ウエハWの一つのショット領域に対して露光処理を行う(ステップS10)。一つのショット領域に対する露光処理が完了すると、制御装置CONTは、ウエハWの全てのショット領域に対する露光処理が完了したか否かを判定する(ステップS11)。
【0051】
この判定結果が否定判定(NO)である場合、即ち未だ露光処理が完了していないショット領域が存在する場合、制御装置CONTは、変更工程を行う。具体的には、制御装置CONTは、露光処理を施すショット領域を変更させるべくウエハ移動装置38の駆動を開始させる(ステップS12)。そして、ショット領域の変更が行われる間に、制御装置CONTは、退避位置に位置する環境形成部材61を清掃位置に移動させるべく清掃用移動装置62を制御する清掃準備処理を行う(ステップS13)。環境形成部材61が清掃位置に移動すると、環境形成部材61は、環境形成部材61の内面とレチクルRのパターン形成面Raとで囲まれた空間を形成する。この状態で、制御装置CONTが第2ポンプ80を駆動させると、環境形成部材61の内面とレチクルRのパターン形成面Raとで囲まれた空間に環境形成用気体を供給することによって、清掃用空間(清掃用環境ともいう。)Spが形成される。この清掃用空間Spは、チャンバ13内の環境から分離されている。(図5参照)。したがって、本実施形態では、ステップS13が、環境形成工程に相当する。
【0052】
続いて、制御装置CONTは、清掃処理を行う(ステップS14)。具体的には、制御装置CONTは、第1ポンプ75を駆動させると共に、レチクルRをY軸方向に沿って移動させるべくレチクル移動装置25を駆動させる。続いて、制御装置CONTは、回収ポンプ83を駆動させる。
【0053】
すると、環境形成用気体によって形成された清掃用空間Sp内には、図8(a)に示すように、各清掃用媒体噴射部70からレチクルRのパターン形成面Raのうち開口部61cに対向する部位に向けて清掃用媒体が噴射される。その結果、レチクルRのパターン形成面Raには、清掃用媒体が衝突する。こうした清掃用媒体が衝突された状態で、レチクルRは、Y軸方向に沿って移動する。そして、各清掃用媒体噴射部70及び環境形成用気体供給部71から噴射された清掃用媒体及び環境形成用気体は、図8(b)に示すように、回収部72を介して回収される。このとき、清掃用媒体とレチクルRとの衝突によって該レチクルRから異物が剥離された場合、該異物は、清掃用媒体及び環境形成用気体と共に回収部72を介して回収される。
【0054】
ちなみに、レチクルRのパターン形成面Raに衝突した清掃用媒体は、レチクルRから熱を受けたり、環境形成部材61から熱を受けたりして気化する。そして、気化後の清掃用媒体(即ち、炭酸ガス)が、回収部72を介して回収される。したがって、本実施形態では、ステップS14が、清掃工程に相当する。
【0055】
図7に戻り、レチクルRの清掃が完了すると共に、ウエハWのショット領域の変更が完了すると、制御装置CONTは、各ポンプ75,80を停止させた後に、回収ポンプ83を停止させ、その後、環境形成部材61を退避位置に移動させるべく清掃用移動装置62を制御する。そして、制御装置CONTは、レチクルRの第1領域R1の一部(Y軸方向における一端側)を露光光ELで照明できるようにレチクル移動装置25を駆動させ、その後、その処理を前述したステップS10に移行する。すなわち、本実施形態では、ウエハWのうち露光処理が行われるショット領域が変更される際に、清掃装置60を用いたレチクルRの清掃が行われる。
【0056】
一方、ステップS11の判定結果が肯定判定(YES)である場合、即ち全てのショット領域に対して露光処理が完了した場合、制御装置CONTは、交換工程を行う。具体的には、制御装置CONTは、ウエハ移動装置38に保持させるウエハWの交換を開始させる(ステップS15)。そして、ウエハWの交換が行われている間に、制御装置CONTは、上記ステップS13の処理と同じように、清掃準備処理を行う(ステップS16)。したがって、本実施形態では、ステップS16もまた、環境形成工程に相当する。
【0057】
続いて、制御装置CONTは、上記ステップS14と同じように、清掃処理を行う(ステップS17)。したがって、本実施形態では、ステップS17もまた、清掃工程に相当する。
【0058】
その後、レチクルRの清掃が完了すると共に、ウエハWの交換が完了すると、制御装置CONTは、各ポンプ75,80を停止させた後に、回収ポンプ83を停止させ、その後、環境形成部材61を退避位置に移動させるべく清掃用移動装置62を制御する。そして、制御装置CONTは、レチクルRの第1領域R1の一部(Y軸方向における一端側)を露光光ELで照明できるようにレチクル移動装置25を駆動させ、その後、その処理を前述したステップS10に移行する。すなわち、本実施形態では、露光処理が行われるウエハWが交換される際に、清掃装置60を用いたレチクルRの清掃が行われる。つまり、ウエハWを交換する交換工程の間に、レチクルRが清掃される。
【0059】
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)レチクルRのパターン形成面Raの清掃時では、該パターン形成面Ra側にチャンバ13内の環境から分離された清掃用空間Spが形成される。この清掃用空間Spで清掃用媒体がパターン形成面Raの一部に向けて噴射される。そして、噴射された清掃用媒体及びパターン形成面Raの一部から除去された異物は、回収部72を介して回収される。したがって、レチクルRのパターン形成面Raに清掃用媒体を衝突させることにより、該パターン形成面Raから異物を除去することができる。
【0060】
(2)回収部72は、清掃用媒体噴射部70の周辺に配置されている。そのため、レチクルRのパターン形成面Raを清掃すべく清掃用媒体噴射部70から噴射された清掃用媒体を、回収部72を介して効率良く回収できる。したがって、清掃用媒体が清掃用空間Sp外に漏れ出ることを抑制でき、ひいてレチクルRの清掃に伴うチャンバ13内の真空度の低下を抑制できる。
【0061】
(3)回収部72の回収口72aは、各清掃用媒体噴射部70を包囲するように環状に形成されている。しかも、回収口72aは、環境形成部材61の筒状部61bにおいてレチクルRに対向する側の端部に形成されている。そのため、清掃用媒体及びレチクルRから取り除かれた異物が清掃用空間Sp外に流出することを抑制でき、ひいては清掃用媒体及びレチクルRから取り除かれた異物を、効率良く回収できる。
【0062】
(4)さらに、環境形成部材61は、レチクルRのパターン形成面Raとの間に、ほんの僅かな隙間H6(例えば、5μm程度)を介在させた状態で配置される。そのため、隙間H6が、清掃用空間Sp内から外部に漏出しようとする気体(使用済みとなった清掃用媒体及び環境形成用気体)に対して流動抵抗として作用し、結果として、上記気体は、回収部72を介してチャンバ13外に排出される。そのため、清掃用媒体が清掃用空間Sp外に漏出することを抑制できる。
【0063】
(5)第1タンク63から第1供給管路76を介して清掃用媒体噴射部70に供給される清掃用媒体は、温度の上昇によって状態を変化させる。そのため、第1タンク63から第1供給管路76を介して清掃用媒体噴射部70に供給される過程で、清掃用媒体の温度が上昇し過ぎてしまうと、清掃用媒体は、清掃用媒体噴射部70内に流入した時点で気化している可能性がある。この点、本実施形態では、第1供給装置64の筒部材78によって、第1供給管路76の環境(特に温度)を、第1タンク63内の環境(特に温度)に接近させることができる。そのため、第1タンク63から供給される液状の清掃用媒体のうち、第1供給管路76内で気化する清掃用媒体の量を少なくできる。したがって、レチクルRに清掃用媒体を確実に衝突させることができ、レチクルRを好適に清掃できる。
【0064】
(6)また、清掃用空間Spは、レチクルRと環境形成部材61とによって、チャンバ13内の環境と分離される。そのため、清掃時では、清掃用空間Sp内の環境は、チャンバ13内の環境と大きく異なる。具体的には、清掃用空間Sp内の温度は、チャンバ13内の温度よりも低い。そのため、清掃用空間Spを形成しないで清掃用媒体をレチクルRに噴射する場合と比較して、レチクルRに衝突する清掃用媒体の量を増大させることができる。例えば、清掃用媒体として二酸化炭素を用いる場合、レチクルRに衝突するドライアイスの量を増大させることができる。したがって、レチクルRの清掃効率を向上させることができる。
【0065】
(7)さらに、清掃用媒体は、レチクルRよりも低温である。そのため、レチクルRを清掃する目的で清掃用媒体をレチクルRに噴射することにより、レチクルRを冷却することができる。したがって、レチクルRの熱膨張に起因したパターンの像の乱れを抑制でき、ウエハWに対して適切なパターンを形成させることができる。
【0066】
(8)また、レチクルRの清掃時には、レチクルRに向けて清掃用媒体及び環境形成用気体が噴射されるため、レチクルRを効率良く冷却できる。したがって、レチクルRに露光光ELを照明する露光処理中のレチクルRの温度を、所望の温度範囲内に抑えることができる。また、その温度範囲内で、レチクル基板の温度膨張係数を最小に設定することで、レチクルRの熱膨張に起因したパターンの像のディストーション、重ね誤差を抑制でき、ウエハWに対して適切なパターンを形成させることができる。
【0067】
(9)レチクル基板としては、例えば、低熱膨張素材のガラスが用いられる。低熱膨張素材のガラスは、設計温度付近での温度変化に対して素材の膨張が少なく、それ以外の温度では、温度変化に対する素材の膨張が大きくなる。そのため、レチクルRの実使用時の温度範囲をなるべく狭くし、平均温度を、温度変化に対する素材の膨張が最も少ない温度に設定することが望ましい。この点、本実施形態では、レチクルRに露光光ELが照射されない非露光処理中(例えば、ウエハ交換中やスキャンブランキング動作中等)に、環境形成用気体と清掃用気体とを用いて、レチクルRが冷却される。そのため、レチクルRに露光光ELを照射する露光処理中の温度範囲を、所望の温度範囲まで狭くすることができる。すなわち、レチクルRを、該レチクルRが最も膨張しにくい温度範囲で使用することができる。
【0068】
(10)もし仮に露光処理を行うショット領域の変更時にレチクルRを清掃しないとすると、パターン形成面Raに異物が付着した状態で露光処理が開始されるおそれがある。この場合、パターン形成面Raに付着した異物の影響によって、一つのウエハWが全て不良となるおそれがある。この点、本実施形態では、ウエハWにパターンを形成するショット領域を変更すべくウエハWが移動している間に、清掃装置60を用いたレチクルRの清掃が行われる。そのため、一つのウエハWの全ての部分が不良となる可能性を低くすることができる。
【0069】
(11)また、このように短い間隔でレチクルRが清掃されることにより、パターン形成面Raに異物が付着したとしても、該異物を速やかに該パターン形成面Raから取り除くことができる。
【0070】
(12)また、本実施形態では、ウエハWの交換時にも、清掃装置60を用いたレチクルRの清掃が行われる。そのため、パターン形成面Raに異物が付着した状態で、ウエハWへの露光処理が開始される可能性を低くできる。また、レチクルRのパターン形成面Raに異物が付着することによるウエハWのロット不良を防止することができる。1ロットは少なくともウエハ25枚程度なので、半導体メーカにとって大きなロスとなる。
【0071】
(13)一般的に、レチクル保持装置15としては、レチクルRのパターン形成面Raの反対側の面Rbに密接する吸着面を有する静電吸着保持装置を備える装置が広く知られている。こうした静電吸着保持装置では、パターン形成面Raの平面度を向上させるためには吸着面の平面度を限りなく高くさせる必要がある。しかも、吸着面の平面度は、静電吸着保持装置の個体毎に僅かに変わってしまう。すなわち、上記静電吸着保持装置を用いてレチクルRを保持する方法では、パターン形成面Raの平面度は、静電吸着保持装置の吸着面の平面度に依存するため、個体毎に値が異なる可能性が高い。この点、本実施形態のレチクル保持装置15は、レチクルRの端部を各把持部40A,40Bによって把持する構成である。そのため、レチクルRのパターン形成面Raの平面度が、レチクル保持装置15の個体毎に変わってしまうことを抑制できる。
【0072】
(14)また、レチクルRのパターン形成面Raの平面度がレチクル保持装置15の個体毎に変わることが抑制されるため、露光処理時に、レチクルRにおいて露光光ELで照明される位置、即ち照明領域の高さを容易に補正できる。したがって、ウエハWに適切な形状のパターンを形成することができる。
【0073】
また、レチクルRの縁部を把持しつつ、ウエハWの交換中にレチクルRの冷却と清掃とを行うことができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図9及び図10に基づき説明する。なお、第2の実施形態は、環境形成部材の構成が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0074】
図9及び図10(a)に示すように、本実施形態の清掃装置60は、平面視略正方形状の底部90a及び四角筒状の筒状部90bを有する環境形成部材90を備えている。この環境形成部材90において+Z方向側に開口する開口部90cは、レチクルRのパターン形成面Raの第1領域R1と同一形状、又は第1領域R1よりも僅かに大きな形状とされている。底部90aには、複数個(図9では81個)の清掃用媒体噴射部70が形成されている。本実施形態では、各清掃用媒体噴射部70は、X軸方向及びY軸方向に沿って等間隔にそれぞれ配置されている。また、底部90aの端部(図9では右上の端部)には、環境形成用気体供給部71が形成されている。
【0075】
環境形成部材90の筒状部90bにおいて+Z方向側の端面側には、回収部72が形成されている。本実施形態の回収部72は、各清掃用媒体噴射部70及び環境形成用気体供給部71を包囲するように配置される複数(本実施形態では4つ)の回収口91を備えている。各回収口91は、筒状部90bの+Z方向側の端面の長手方向に沿って延びるように形成されている。そして、各回収口91は、回収通路73を介して回収用管路84に連通されている。
【0076】
また、筒状部90bの+Z方向側の端面において各回収口91の外周側には、弾性を有する材料(例えば、合成樹脂)で構成される四角環状の緩衝部材92が設けられている。この緩衝部材92は、環境形成部材90をレチクルRのパターン形成面Raに対向して配置した場合に、該パターン形成面Raの第2領域R2に当接される。すなわち、本実施形態では、図10(b)に示すように、環境形成部材90とレチクルRのパターン形成面Raとの間に、隙間が形成されない。
【0077】
本実施形態では、清掃装置60を用いてレチクルRを清掃する場合、環境形成部材90は、清掃用移動装置62の駆動によって、退避位置から清掃位置に移動する。このとき、環境形成部材90の開口部90cは、パターン形成面Raのうち第1領域R1に対向している。そのため、第1領域R1の清掃時には、レチクルRに対して環境形成部材90を相対的に移動させなくてもよい。
【0078】
したがって、本実施形態では、上記第1の実施形態の効果(1)(2)(5)〜(14)と同等の効果に加え、以下に示す効果を得ることができる。
(15)回収部72は、各清掃用媒体噴射部70を包囲するように配置される複数の回収口91を備えている。そのため、清掃用媒体及びレチクルRから取り除かれた異物が清掃用空間Sp外に流出することを抑制でき、ひいては清掃用媒体及びレチクルRから取り除かれた異物を、効率良く回収できる。
【0079】
(16)また、本実施形態の環境形成部材90には、緩衝部材92が設けられている。そのため、本実施形態では、環境形成部材90を清掃位置に配置させることにより、チャンバ13内の環境とは分離された清掃用空間Spが形成される。したがって、清掃用媒体及びレチクルRから取り除かれた異物が清掃用空間Sp外に流出することを抑制でき、ひいては清掃後にチャンバ13内の真空度が低くなることを抑制できる。
【0080】
(17)本実施形態では、清掃装置60を用いたレチクルRの清掃時に、該レチクルRに対して環境形成部材90を相対的に移動させなくてもよい。そのため、上記第1の実施形態の場合と比較して、レチクルRの第1領域R1の各位置に清掃用媒体を噴射できる時間を長くできる。したがって、ウエハWの交換時やショット領域の変更時などのように限られた時間の中で、レチクルRの第1領域R1を清掃する時間を長く確保でき、ひいては第1領域R1に異物が付着した状態で露光処理が行われる可能性を低くできる。
【0081】
なお、上記各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・各実施形態において、各把持部40A,40Bは、レチクルRを把持するために静電吸着力を利用する構成であってもよい。この場合、第1把持部40A及び第2把持部40Bの各当接部41,42は、誘電性材料で形成されると共に、各当接部41,42内には、電極が設けられる。そして、電極に電圧が印加されることにより、各当接部41,42の当接面41a,42aが吸着面として機能する。その結果、レチクルRは、各把持部40A,40Bによって保持される。なお、レチクルRのパターン形成面Raの反対側の面Rbには、導電層を形成すると共に、パターン形成面Raの第2領域R2にも、導電層を形成することが好ましい。
【0082】
・各実施形態において、各把持部40A,40Bは、電磁力でもって、レチクルRを把持する構成であってもよい。例えば、第1当接部41を鉄などの磁石で吸引可能な部材とし、第2当接部42を電磁石としてもよい。
【0083】
・各実施形態において、レチクル保持装置15は、レチクルRのパターン形成面Raの反対側の面Rbに対向する吸着面を有する静電吸着保持装置を備えた構成でもよい。この静電吸着保持装置は、ウエハWを保持する静電吸着保持装置36と略同一構成でもよい。
【0084】
・各実施形態において、レチクル保持装置15の第2当接部42は、レチクル移動装置25に支持されてもよい。これによって、レチクル移動装置25と第2当接部42とを一体的に接合することができる。また、支点部48又はアクチュエータ49の少なくとも一方を、レチクル移動装置25に支持させてもよい。この場合、アクチュエータ49の駆動によって、第1当接部41が、第2当接部42に接離する方向に回動することになる。
【0085】
・第1の実施形態において、レチクルRのパターン形成面Raを清掃する場合には、清掃用移動装置62の駆動によって、環境形成部材90をパターン形成面Raに沿う方向に移動させてもよい。また、レチクルRのパターン形成面Raを清掃する場合には、レチクル移動装置25及び清掃用移動装置62を協働させることにより、環境形成部材90をレチクルRに対して相対移動させてもよい。
【0086】
・各実施形態において、環境形成部材61,90の設置位置をレチクルRのY軸方向において異なる位置に設置するのであれば、清掃用移動装置62を設けなくてもよい。この場合、レチクルRの清掃時において該レチクルRを、レチクル移動装置25の駆動によって、環境形成部材61,90の設置位置まで移動させてもよい。
【0087】
・第2の実施形態において、緩衝部材92は、環状をなす構成でなくてもよい。例えば、リブ状をなす複数の緩衝部材を、各清掃用媒体噴射部70を包囲するように配置してもよい。
【0088】
・第2の実施形態において、緩衝部材92を省略してもよい。
・各実施形態において、環境形成用気体は、ヘリウム以外の他の気体(例えば、窒素や空気)であってもよい。また、環境形成用気体は、ヘリウム、窒素及び空気のうち少なくとも二つを含んだ気体であってもよい。
【0089】
・各実施形態において、環境形成用気体によって、レチクルRを冷却させてもよい。この場合、環境形成用気体の温度は、レチクルRの温度に対して厳密に制御する必要があるので、環境形成部材61の金属部分とレチクルRのパターン形成面Raの温度、清掃用気体と環境形成用気体の温度及び圧力等を正確にモニタし、該モニタ結果に基づき調整される。
【0090】
・各実施形態において、環境形成用気体を供給しなくてもよい。この場合、環境形成部材61,90には環境形成用気体供給部71を設けなくてもよいし、第2供給装置66を設けなくてもよい。このように構成しても、レチクルRのパターン形成面Raに清掃用媒体を噴射することにより、レチクルRを冷却することができる。
【0091】
・各実施形態において、清掃用媒体は、常温で気体であって、且つ冷却すると固化する媒体であれば二酸化炭素以外の他の任意の媒体(例えば、アルゴン)であってもよい。また、清掃用媒体は、二酸化炭素とアルゴンとを共に含んでもよい。
【0092】
・各実施形態において、清掃用媒体は、温度の変化によって液体から気体に気化する媒体(一例として、液体窒素)であってもよい。この場合、清掃用媒体噴射部70からは、液体窒素が噴射される。すると、レチクルRのパターン形成面Raには、液状の窒素と気体状の窒素とが入り混じった状態で衝突することになる。このように構成することにより、レチクルRのパターン形成面Raを清掃することができると共に、レチクルRを冷却することができる。
【0093】
・各実施形態において、第1供給装置は、液状の二酸化炭素を環境形成部材61,90に供給可能な構成であれば任意の構成であってもよい。例えば、図11に示すように、第1供給装置64Aは、第1供給管路76を包囲する筒状の保護用管路100を設け、第1供給管路76の外周面と保護用管路100の内周面との間の隙間101で冷媒(例えば、液体窒素)を流通させてもよい。
【0094】
・各実施形態において、第1供給装置は、第1供給管路76内の環境を第1タンク63内の環境に接近させるための構成を設けなくてもよい。
・各実施形態において、回収部72は、各清掃用媒体噴射部70を包囲して配置される構成であれば、筒状部61b,90bよりも内側に配置してもよい。
【0095】
・第2の実施形態において、回収部72は、環状の回収口を備えた構成であってもよい。
・第1の実施形態において、回収部72は、各清掃用媒体噴射部70を包囲するように配置される複数の回収口を備えた構成であってもよい。
【0096】
・各実施形態において、清掃用媒体噴射部70は、環境形成部材61,90とは別体に設けたものであってもよい。同様に、環境形成用気体供給部71は、環境形成部材61,90とは別体に設けたものであってもよい。さらに、回収部72は、環境形成部材61,90とは別体に設けたものであってもよい。
【0097】
・各実施形態において、清掃用媒体噴射部70を、千鳥配置してもよい。
・各実施形態において、レチクルRのパターン形成面Raの清掃を、ウエハWの交換時に行わなくてもよい。この場合であっても、レチクルRのパターン形成面Raの清掃は、露光処理を行うショット領域の変更時に行われる。
【0098】
・各実施形態において、レチクルRのパターン形成面Raの清掃を、露光処理を行うショット領域の変更時に行わなくてもよい。この場合であっても、レチクルRのパターン形成面Raの清掃は、ウエハWの交換時に行われる。
【0099】
・第1の実施形態において、レチクルRのパターン形成面Raの清掃と、レチクルRの反射面のカーボンコンタミ除去とを並行して行ってもよい。例えば、環境形成部材61内にカーボンコンタミ除去用の光源を設け、カーボンコンタミ除去用の光源からの光をレチクルRのパターン形成面Raに照射させてもよい。この場合、清掃用空間Sp内には酸素が供給される。
【0100】
また、カーボンコンタミ除去用の光源及び酸素の供給装置を環境形成部材61外に設け、レチクルRのパターン形成面Raにおいて清掃用媒体による清掃が行われていない部分をカーボンコンタミ除去用の光源から光で照射してもよい。
【0101】
・第2の実施形態において、レチクルRのパターン形成面Raの清掃と、レチクルRの反射面のカーボンコンタミの除去とを並行して行ってもよい。例えば、環境形成部材90内にカーボンコンタミ除去用の光源を設け、カーボンコンタミ除去用の光源からの光をレチクルRのパターン形成面Raに照射させてもよい。この場合、清掃用空間Sp内には酸素が供給される。
【0102】
・各実施形態において、レチクルRのパターン形成面Raの清掃を、非露光処理時に、メンテナンス処理の一環として行ってもよい。
・各実施形態において、チャンバ13内に該チャンバ13内の環境とは隔離(分離)された清掃用室を設け、該清掃用室内に清掃用媒体噴射部70及び回収部72を設置してもよい。この場合、レチクルRの清掃時には、レチクルRを清掃用室内に移動させる。
【0103】
・本発明の清掃装置60を用いて、照明光学系14及び投影光学系16が備えるミラー19,21〜24,30〜35の光学面(反射面)を清掃してもよい。例えば、図12に示すように、ミラーMの反射面Maは、凹状をなしていたり、凸状をなしていたりする。そのため、環境形成部材110は、ミラーMの反射面Maに対向する側の部位が反射面Maの形状に対応した形状となるように構成される。このとき、環境形成部材110は、反射面Ma全体に対向配置可能な形状であってもよいし、反射面Maの一部に対向配置可能な形状であってもよい。また、本発明の清掃装置60を用いた照明光学系14及び投影光学系16が備えるミラー19,21〜24,30〜35の光学面(反射面)の清掃と、これらのミラーの光学面のカーボンコンタミの除去とを並行して行ってもよい。例えば、環境形成部材61,90の少なくとも一部にカーボンコンタミ除去用の光源を設け、カーボンコンタミ除去用の光をミラーの光学面に照射してもよい。さらに、ミラー19,21〜24,30〜35の光学面(反射面)の清掃と、これらのミラーの光学面のカーボンコンタミの除去とが行われている間に、レチクルRの清掃を行ってもよい。
【0104】
・各実施形態において、露光装置11は、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクルまたはマスクを製造するために、マザーレチクルからガラス基板やシリコンウエハなどへ回路パターンを転写する露光装置であってもよい。また、露光装置11は、液晶表示素子(LCD)などを含むディスプレイの製造に用いられてデバイスパターンをガラスプレート上へ転写する露光装置、薄膜磁気ヘッド等の製造に用いられて、デバイスパターンをセラミックウエハ等へ転写する露光装置、及びCCD等の撮像素子の製造に用いられる露光装置などであってもよい。
・各実施形態において、光源装置12で用いられるEUV光発生物質は、気体状の錫(Sn)でもよいし、液体状又は固体状の錫でもよい。また、EUV光発生物質として、キセノン(Xe)を用いてもよい。
【0105】
・各実施形態において、光源装置12は、放電型プラズマ光源を有する装置でもよい。
・各実施形態において、光源装置12は、例えばg線(436nm)、i線(365nm)、KrFエキシマレーザ(248nm)、F2レーザ(157nm)、Kr2レーザ(146nm)、Ar2レーザ(126nm)等を供給可能な光源であってもよい。また、光源装置12は、DFB半導体レーザまたはファイバレーザから発振される赤外域、または可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(またはエルビウムとイッテルビウムの双方)がドープされたファイバアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を供給可能な光源であってもよい。
【0106】
この場合、照明光学系や投影光学系は、光学部材としてレンズを備えることになる。こうしたレンズの光学面を、本発明の清掃装置で清掃してもよい。
・各実施形態において、露光装置11を、ステップ・アンド・リピート方式の装置に具体化してもよい。
【0107】
次に、本発明の実施形態の露光装置11によるデバイスの製造方法をリソグラフィ工程で使用したマイクロデバイスの製造方法の実施形態について説明する。図13は、マイクロデバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートを示す図である。
【0108】
まず、ステップS101(設計ステップ)において、マイクロデバイスの機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップS102(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスク(レチクルRなど)を製作する。一方、ステップS103(基板製造ステップ)において、シリコン、ガラス、セラミックス等の材料を用いて基板(シリコン材料を用いた場合にはウエハWとなる。)を製造する。
【0109】
次に、ステップS104(基板処理ステップ)において、ステップS101〜ステップS104で用意したマスクと基板を使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によって基板上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップS105(デバイス組立ステップ)において、ステップS104で処理された基板を用いてデバイス組立を行う。このステップS105には、ダイシング工程、ボンティング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。最後に、ステップS106(検査ステップ)において、ステップS105で作製されたマイクロデバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にマイクロデバイスが完成し、これが出荷される。
【0110】
図14は、半導体デバイスの場合におけるステップS104の詳細工程の一例を示す図である。
ステップS111(酸化ステップ)においては、基板の表面を酸化させる。ステップS112(CVDステップ)においては、基板表面に絶縁膜を形成する。ステップS113(電極形成ステップ)においては、基板上に電極を蒸着によって形成する。ステップS114(イオン打込みステップ)においては、基板にイオンを打ち込む。以上のステップS111〜ステップS114のそれぞれは、基板処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
【0111】
基板プロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップS115(レジスト形成ステップ)において、基板に感光性材料を塗布する。引き続き、ステップS116(露光ステップ)において、上で説明したリソグラフィシステム(露光装置11)によってマスクの回路パターンを基板に転写する。次に、ステップS117(現像ステップ)において、ステップS116にて露光された基板を現像して、基板の表面に回路パターンからなるマスク層を形成する。さらに続いて、ステップS118(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップS119(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となった感光性材料を取り除く。すなわち、ステップS118及びステップS119において、マスク層を介して基板の表面を加工する。これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、基板上に多重に回路パターンが形成される。
【符号の説明】
【0112】
11…露光装置、13…チャンバ、14…照明光学系、15…マスク保持装置としてのレチクル保持装置、16…投影光学系、19,21〜24…第1光学部材としてのミラー、25…移動装置としてのレチクル移動装置、30〜35…第2光学部材としてのミラー、40A…第1把持部、40B…第2把持部、41…第1当接部、42…第2当接部、60…清掃装置、61,90,110…環境形成部材、61c,90c…開口部、63…貯留部としての第1タンク、64,64A…第1供給装置、70…噴射部としての清掃用媒体噴射部、71…供給部としての環境形成用気体供給部、72…回収部、72a,91…回収口、76…供給流路としての第1供給管路、78…環境調整部材としての筒部材、92…緩衝部材、100…環境調整部材としての保護用管路、EL…放射ビームとしての露光光、M…光学部材としてのミラー、Ma…光学面としての反射面、R…光学部材、マスクとしてのレチクル、R1…第1領域、R2…第2領域、Ra…光学面としてのパターン形成面、Rb…反対側の面、Sp…清掃用環境としての清掃用空間、W…物体としてのウエハ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材の光学面を清掃する清掃装置及び清掃方法に関する。また、本発明は、清掃装置を備える露光装置、清掃方法を含む露光方法及び露光装置を用いるデバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体集積回路などのマイクロデバイスを製造するためのリソグラフィ工程では、パターンを感光性材料の塗布されたウエハ、ガラスプレートなどの基板に形成する露光装置が用いられる。こうした露光装置には、レンズ、ミラー及びマスクなどの光学部材が設けられている。そして、光学部材の光学面に異物が付着した場合、該異物の影響によって、基板に適切な形状のパターンを形成できなかったり、基板を照射する露光光の光量が低下したりするおそれがある。そこで、近年では、光学部材の光学面から異物を除去すべく該光学部材を清掃する装置として、例えば特許文献1に記載のクリーンニングシステムが提案されている。このクリーンニングシステムは、雪の粒子、例えば、炭酸ガス又はアルゴン等を光学部材に提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−108696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなクリーンシステムを大気とは異なる雰囲気(一例として、真空雰囲気)に設定されたチャンバ内で使用する場合には、ノズルから提供される雪の粒子の状態(気化する等)が変化してしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、光学部材の光学面から異物を効率よく除去することができる清掃装置、露光装置、清掃方法、露光方法及びデバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、実施形態に示す図1〜図14に対応付けした以下の構成を採用している。
本発明の清掃装置は、チャンバ(13)内に設けられる光学部材(19,21〜24,30〜35,M,R)の光学面(Ma,Ra)を清掃する清掃装置(60)であって、前記光学面(Ma,Ra)の少なくとも一部に対向して配置されることにより、前記チャンバ(13)内の環境から分離された清掃用環境(Sp)を形成する環境形成部材(61,90,110)と、前記清掃用環境(Sp)内で前記光学面(Ma,Ra)の少なくとも一部に清掃用媒体を噴射する噴射部(70)と、前記光学面(Ma,Ra)の少なくとも一部に噴射された清掃用媒体及び前記清掃用媒体によって前記光学面の少なくとも一部から除去された異物を回収する回収部(72)と、を備えることを要旨とする。
【0007】
本発明の清掃方法は、チャンバ(13)内に設けられる光学部材(19,21〜24,30〜35,M,R)の光学面(Ma,Ra)を清掃する清掃方法であって、前記光学面(Ma,Ra)の少なくとも一部に対向する位置に、前記チャンバ内の環境から分離された清掃用環境(Sp)を形成する環境形成工程(S13,S16)と、前記清掃用環境(Sp)内で前記光学面(Ma,Ra)の少なくとも一部に清掃用媒体を噴射し、前記光学面(Ma,Ra)の少なくとも一部に噴射された清掃用媒体と前記清掃用媒体によって前記光学面の少なくとも一部から除去された異物とを回収する清掃工程(S14,S17)と、を有することを要旨とする。
【0008】
なお、本発明をわかりやすく説明するために実施形態を示す図面の符号に対応づけて説明したが、本発明が実施形態に限定されるものではないことは言うまでもない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光学部材の光学面から異物を効率良く除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態における露光装置を示す概略構成図。
【図2】(a)はレチクル保持装置を示す概略構成図、(b)はレチクル保持装置に保持されるレチクルを模式的に示す平面図。
【図3】第1の実施形態における清掃装置を示す概略構成図。
【図4】(a)は環境形成部材を模式的に示す平面図、(b)は図4(a)の4−4線矢視断面図。
【図5】第1供給装置を模式的に示す断面図。
【図6】露光装置の電気的構成を説明するブロック図。
【図7】第1の実施形態における露光処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図8】(a)は第1の実施形態においてレチクルのパターン形成面が清掃される様子を示す模式図、(b)は図8(a)の要部を拡大した拡大図。
【図9】第2の実施形態における環境形成部材を模式的に示す平面図。
【図10】(a)は環境形成部材をレチクルのパターン形成面に対向して配置した状態を模式的に示す側断面図、(b)は図10(a)の要部を拡大した拡大図。
【図11】別の実施形態における第1供給装置を示す概略構成図。
【図12】ミラーの反射面を清掃するための環境形成部材を模式的に示す側断面図。
【図13】デバイスの製造例のフローチャート。
【図14】半導体デバイスの場合の基板処理に関する詳細なフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下に、本発明を具体化した一実施形態について図1〜図8に基づき説明する。なお、本実施形態では、投影光学系の光軸に平行な方向をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直な平面内で走査露光時のレチクルR及びウエハWの走査方向をY軸方向とし、その走査方向に直交する非走査方向をX軸方向として説明する。また、X軸、Y軸、Z軸の周りの回転方向をθx方向、θy方向、θz方向ともいう。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の露光装置11は、光源装置12から射出される、波長が100nm程度以下の軟X線領域である極端紫外光、即ちEUV(Extreme Ultraviolet )光を露光光ELとして用いるEUV露光装置である。こうした露光装置11は、内部が大気よりも低圧の真空雰囲気に設定されるチャンバ13(図1では二点鎖線で囲まれた部分)を備えている。このチャンバ13内には、光源装置12からチャンバ13内に供給された露光光ELで所定のパターンが形成された反射型のレチクルRを照明する照明光学系14と、パターンの形成されたパターン形成面Raが−Z方向側(図1では下側)に位置するようにレチクルRを保持するレチクル保持装置15とが設けられている。また、チャンバ13内には、レチクルRを介した露光光ELでレジストなどの感光性材料が塗布されたウエハWを照射する投影光学系16と、露光面(感光性材料が塗布されたウエハ表面)Waが+Z方向側(図1では上側)に位置するようにウエハWを保持するウエハ保持装置17とが設けられている。
【0013】
光源装置12は、波長が5〜20nmのEUV光を露光光ELとして出力する装置であって、図示しないレーザ励起プラズマ光源を備えている。このレーザ励起プラズマ光源では、例えば半導体レーザ励起を利用したYAGレーザやエキシマレーザなどの高出力レーザで高密度のEUV光発生物質(ターゲット)を照射することによりプラズマが発生され、該プラズマからEUV光が露光光ELとして放射される。こうした露光光ELは、図示しない集光光学系によって集光されてチャンバ13内に出力される。
【0014】
照明光学系14は、チャンバ13の内部と同様に、内部が真空雰囲気に設定される筐体18(図1では一点鎖線で囲まれた部分)を備えている。この筐体18内には、光源装置12から出力された露光光ELを集光するコリメート用ミラー19が設けられており、該コリメート用ミラー19は、入射した露光光ELを略平行に変換してオプティカルインテグレータの一種であるフライアイ光学系20(図1では破線で囲まれた部分)に向けて射出する。このフライアイ光学系20は、一対のフライアイミラー21,22を備えており、該各フライアイミラー21,22のうち入射側に配置される入射側フライアイミラー21は、レチクルRのパターン形成面Raと光学的に共役となる位置に配置されている。こうした入射側フライアイミラー21で反射された露光光ELは、射出側に配置される射出側フライアイミラー22に入射する。
【0015】
また、照明光学系14には、射出側フライアイミラー22から射出された露光光ELを筐体18外に射出するコンデンサミラー23が設けられている。そして、コンデンサミラー23から射出された露光光ELは、後述する鏡筒29内に設置された折り返し用の反射ミラー24により、レチクル保持装置15に保持されるレチクルRに導かれる。
【0016】
レチクル保持装置15は、投影光学系16の物体面側に配置されている。なお、レチクル保持装置15の構成については、後述する。
また、レチクル保持装置15は、レチクル移動装置25の駆動によって、Y軸方向(図1における左右方向)に移動可能である。すなわち、レチクル移動装置25は、レチクル保持装置15に保持されるレチクルRをY軸方向に所定ストロークで移動させる。また、レチクル移動装置25は、レチクルRをX軸方向(図1において紙面と直交する方向)、Z軸方向及びθz方向に微動させることが可能である。なお、レチクルRのパターン形成面Raが露光光ELで照明される場合、該パターン形成面Raの一部には、X軸方向に延びる略円弧状の照明領域が形成される。
【0017】
また、レチクル保持装置15の近傍には、レチクルRのパターン形成面Raのうち、露光光ELで照明される照明領域のZ軸方向における位置、即ち照明領域の高さを計測するための計測装置26が設けられている。この計測装置26は、Z軸方向と交差する方向に向けて計測光(図1では破線矢印で示す。)を発光する複数(図1では1つのみ図示)の発光器27(例えばハロゲンランプやレーザ)と、レチクルRの照明領域の各位置で反射された計測光を受光可能な複数(図1では1つのみ図示)の受光器28(例えばCCD)とを備えている。そして、各受光器28は、レチクルRの照明領域にて反射した計測光を受光した際の受光位置に応じた検出信号を後述する制御装置CONTに出力する。
【0018】
投影光学系16は、露光光ELでレチクルRのパターン形成面Raを照明することにより形成されたパターンの像を所定の縮小倍率(例えば1/4倍)に縮小させる光学系であって、チャンバ13の内部と同様に、内部が真空雰囲気に設定される鏡筒29を備えている。この鏡筒29内には、複数枚(本実施形態では6枚)の反射型のミラー30,31,32,33,34,35が収容されている。これら各ミラー30〜35は、図示しないミラー保持装置を介して鏡筒29にそれぞれ保持されている。そして、物体面側であるレチクルR側から導かれた露光光ELは、ミラー30、ミラー31、ミラー32、ミラー33、ミラー34、ミラー35の順に反射され、ウエハ保持装置17に保持されるウエハWの露光面Waに導かれる。
【0019】
照明光学系14及び投影光学系16が備える各ミラー19,21〜24,30〜35のミラー面には、露光光ELを反射する反射層がそれぞれ形成されている。これら各反射層は、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)を交互に積層した多層膜をそれぞれ有している。
【0020】
ウエハ保持装置17は、ウエハWを静電吸着するための静電吸着保持装置36を備えている。この静電吸着保持装置36は、誘電性材料で形成され且つ吸着面37aを有する基体37と、該基体37内に配置される図示しない複数の電極部とを有している。そして、図示しない電圧印加部から電圧が各電極部にそれぞれ印加された場合、基体37から発生されるクーロン力により、吸着面37aにウエハWが静電吸着される。また、ウエハ保持装置17には、静電吸着保持装置36を保持する図示しないウエハホルダと、該ウエハホルダのZ軸方向(図1では上下方向)における位置及びX軸周り、Y軸周りの傾斜角を調整する図示しないZレベリング機構とが組み込まれている。
【0021】
こうしたウエハ保持装置17は、ウエハ移動装置38によって、Y軸方向に移動可能である。すなわち、ウエハ移動装置38は、静電吸着保持装置36に保持されるウエハWをY軸方向に所定ストロークで移動させる。また、ウエハ移動装置38は、静電吸着保持装置36に保持されるウエハWをX軸方向に所定ストロークで移動させることが可能であるとともに、Z軸方向に微動させることが可能である。
【0022】
そして、ウエハWの一つのショット領域にレチクルRのパターンを形成する場合、照明光学系14によって照明領域をレチクルRに形成した状態で、レチクル移動装置25の駆動によって、レチクルRをY軸方向(例えば、+Y方向側から−Y方向側)に所定ストローク毎に移動させる。また同時に、ウエハ移動装置38の駆動によって、ウエハWをレチクルRのY軸方向に沿った移動に対して投影光学系16の縮小倍率に応じた速度比でY軸方向(例えば、−Y方向側から+Y方向側)に同期して移動させる。そして、一つのショット領域へのパターンの形成が終了した場合、ウエハWの他のショット領域に対するパターンの形成が連続して行われる。
【0023】
次に、本実施形態のレチクル保持装置15について説明する。
図2(a)(b)に示すように、レチクル保持装置15は、レチクルRにおいてパターン形成面Raに沿う方向であるX軸方向における一方側(図2(a)では右側)を把持する第1把持部40Aと、レチクルRにおいてX軸方向における他方側(図2(a)では左側)を把持する第2把持部40Bとを備えている。これら各把持部40A,40Bは、レチクルRを挟んで互いに対向する第1当接部41及び第2当接部42を有している。第1当接部41は、レチクルRを所望の位置に設置するために、剛性の高い材料、例えば、ステンレス、アルミニウム、セラミックで形成されている。また、第2当接部42は、レチクルRをレチクル保持装置15から着脱する際におけるレチクルRの損傷を抑制するために、剛性の低い材料、例えば、デルリン(登録商標)、ポリイミド、導電性ポリイミドで形成されている。なお、第1当接部41及び第2当接部42は、これらの材料又はこれらの材料の組み合わせで形成したものであってもよい。また、第1当接部41及び第2当接部42の当接面41a,42aは、研削又は研磨加工され、所望の面精度に仕上げられた面であってもよい。
【0024】
第1当接部41及び第2当接部42は、パターン形成面Raに沿う方向であって且つX軸方向と直交(交差)するY軸方向に延設されている。また、第1当接部41及び第2当接部42においてレチクルRに当接する当接面41a,42a側には、Y軸方向に沿って延びる複数(本実施形態では2つ)の溝部43が形成されている。第1当接部41は、レチクルRのパターン形成面Raのうち所定のパターンが形成される略正方形状の第1領域R1(図2(b)では二点鎖線で囲まれた領域)を包囲するように形成された第2領域R2に当接するように配置されている。一方、第2当接部42は、レチクルRのパターン形成面Raの反対側の面Rb(即ち、+Z方向側の面)に当接するように配置されている。
【0025】
また、各把持部40A,40Bには、レチクル保持装置15へのレチクルRの取り付け時及びレチクル保持装置15からのレチクルRの取り外し時に駆動する駆動機構45が設けられている。駆動機構45は、第1当接部41を−Z方向側から支持する第1支持部46と、第2当接部42を+Z方向側から支持する第2支持部47と、第1支持部46を基準として第2支持部47を相対的に揺動させるための支点部48と、第2支持部47に駆動力を付与すべく駆動するアクチュエータ49とを備えている。例えば、アクチュエータ49は、圧電素子、ボイスコイルモータ、電磁ソレノイド、油圧プランジャー、ボールねじと減速歯車と回転モータの組み合わせ等である。
【0026】
第1支持部46は、X軸方向に延びる第1アーム46aを有している。第1アーム46aの長手方向における第1の端部(即ち、レチクルRに近い端部)側には、第1当接部41をY軸方向に沿う図示しない軸線を中心に揺動自在であって、且つX軸方向に沿う図示しない軸線を中心に揺動自在な状態で支持する連結部50が設けられている。また、第1アーム46aの長手方向における第2の端部(即ち、レチクルRに遠い端部)側には、支点部48が連結されている。
【0027】
第2支持部47は、X軸方向に延びる第2アーム47aを有している。第2アーム47aの長手方向における第1の端部側には、第2当接部42をY軸方向に沿う図示しない軸線を中心に揺動自在であって、且つX軸方向に沿う図示しない軸線を中心に揺動自在な状態で支持する連結部51が設けられている。また、第2アーム47aの長手方向における第2の端部には、支点部48が連結されている。
【0028】
本実施形態では、第1アーム46aの連結部50及び第2アーム47aの連結部51は、Y軸方向に沿った複数の箇所に設けられる。例えば、連結部50,51は、Y軸方向に沿って等間隔おきに、2箇所又は3箇所、あるいはそれ以上に設けてもよい。なお、連結部50,51の個数及び設置箇所は、例えば、第1当接部41と第2当接部42の機械的な剛性やレチクルRの撓み量等に合わせて決められる。
【0029】
アクチュエータ49は、X軸方向において各当接部41,42と支点部48との間に配置されている。アクチュエータ49の−Z方向側の端部は、第1支持部46に支持されると共に、アクチュエータ49の+Z方向側の端部は、第2支持部47に支持されている。そして、アクチュエータ49は、外部から電圧が印加されることにより、Z軸方向に伸縮可能に構成されている。すなわち、アクチュエータ49が図2(a)に示す状態から伸張した場合には、アクチュエータ49からの駆動力が増大された状態で第2支持部47に伝達される。その結果、第2支持部47に支持される第2当接部42は、支点部48を支点としてレチクルRから離間する方向に移動する。
【0030】
また、第1当接部41にレチクルRが載置された状態でアクチュエータ49が収縮した場合には、アクチュエータ49からの駆動力が増大された状態で第2支持部47に伝達される。そして、第2当接部42は、支点部48を支点として第1当接部41に接近する方向に移動する。その結果、レチクルRは、第1当接部41及び第2当接部42によって挟持される。
【0031】
このようにレチクルRをX軸方向における両端で保持した場合、レチクルRのX軸方向における中央は、自重によって、−Z方向側(重力方向における下方側)に僅かに変位してしまう。すなわち、レチクルRが撓んでしまう。しかし、こうしたレチクルRの撓みは、十分に予測できる。この場合、重力によるレチクルRの撓みは、他のレチクルRに交換しても同様に発生する。そのため、制御装置CONTのメモリ(図示略)には、重力によるレチクルRの撓みとレチクルRに入射する露光光ELの入射角とにより発生するディストーションを補正できるようなレチクルRを移動させるための移動プログラム、ウエハWを移動させるための移動プログラム及び各ミラーの角度調整プログラムなどを記憶させておいてもよい。この場合、レチクル保持装置15に保持されるレチクルRが交換される毎に、レチクルRのY軸方向における各位置の高さを、計測装置26を用いて計測しなくてもよい。
【0032】
その一方で、レチクルR毎に撓み量が異なる可能性がある。この場合、レチクルRをレチクル保持装置15で保持させた場合に、レチクル移動装置25の駆動によって、レチクルRをY軸方向に移動させる。そして、レチクルRのY軸方向における各位置の高さが、計測装置26を用いて計測される。その結果、制御装置CONTでは、レチクルR用の移動プログラム、ウエハW用の移動プログラム及び各ミラーの角度調整プログラムなどが一部補正される。
【0033】
そして、露光処理時では、レチクル移動装置25は、計測装置26による計測結果に基づき、レチクルRのZ軸方向における位置を微調整しつつ、該レチクルRをY軸方向に所定ストロークで移動させる。具体的には、レチクル移動装置25は、レチクルRにおいて露光光ELで照明される照明領域のZ軸方向における位置が一定となるように、レチクルRのZ軸方向における位置を微調整させる。
【0034】
また、本実施形態の露光装置11に使用されるレチクルRには、パターン形成面Raを保護するためのペリクルが設けられていないため、パターン形成面Raに異物が付着する可能性がある。そのため、本実施形態の露光装置11には、レチクルRのパターン形成面Raの第1領域R1を清掃する清掃装置が設けられている。そこで次に、清掃装置について説明する。
【0035】
図3に示すように、清掃装置60は、環境形成部材61と、該環境形成部材61をY軸方向に沿って移動させるための清掃用移動装置62とを備えている。また、清掃装置60は、チャンバ13外に配置される第1タンク63から清掃用媒体を環境形成部材61に供給するための第1供給装置64と、チャンバ13外に配置される第2タンク65から環境形成用気体を環境形成部材61に供給するための第2供給装置66とを備えている。さらに、清掃装置60は、環境形成部材61側から、使用済みとなった清掃用媒体及び環境形成用気体と、レチクルRから除去された異物などとを回収するための回収装置67を備えている。
【0036】
なお、環境形成用気体は、清掃用媒体噴射部70から噴射された清掃用媒体がレチクルRのパターン形成面Raに適切な状態で衝突するように、環境形成部材61の内部の圧力や温度等を調整するために用いられる。また、環境形成用気体は、環境形成部材61の内部に供給されることで、レチクルRのパターン形成面Raの熱を効率よく放熱させるために用いられる。
【0037】
環境形成部材61は、図4(a)(b)に示すように、熱伝導率の高い材料(一例としてアルミニウム)で構成された有底筒状の部材であって、底部61aと、該底部61aの+Z方向側に位置する四角筒状の筒状部61bとを有している。すなわち、環境形成部材61には、+Z方向側に開口する略矩形状の開口部61cが形成されている。この開口部61cのX軸方向における幅H1は、レチクルRの第1領域R1のX軸方向における幅H2(図2(b)参照)と同等、又は該幅H2よりも僅かに広いと共に、開口部61cのY軸方向における幅H3は、開口部61cのX軸方向における幅H1よりも狭い。また、環境形成部材61のX軸方向における幅H4は、第1把持部40Aの第1当接部41と第2把持部40Bの第1当接部41とのX軸方向における間隔H5(図2(a)参照)よりも僅かに狭い。つまり、本実施形態の環境形成部材61は、レチクルRのパターン形成面Raの一部に対向配置可能とされている。
【0038】
また、環境形成部材61の底部61aには、第1供給装置64を介して供給された清掃用媒体を噴射するための複数(図4(a)では9個のみ図示)の清掃用媒体噴射部70が形成されている。一例として、各清掃用媒体噴射部70は、X軸方向に沿って等間隔に配置されている。こうした清掃用媒体噴射部70の口径は、後述する第1供給管路76内の口径よりも小さい。
【0039】
また、環境形成部材61の底部61aには、第2供給装置66を介して供給された気体を、環境形成部材61とレチクルRのパターン形成面Raとで囲まれた空間に供給するための環境形成用気体供給部71が形成されている。一例として、環境形成用気体供給部71は、底部61aのX軸方向における端部(図4(a)では左端)に配置されている。
【0040】
また、環境形成部材61において清掃用媒体噴射部70の近傍には、清掃用媒体噴射部70から噴射された清掃用媒体、環境形成用気体供給部71から供給された環境形成用気体及びレチクルRから除去された異物を回収するための回収部72が設けられている。本実施形態では、回収部72は、環境形成部材61の筒状部61bのうち+Z方向側(即ち、レチクルRに対向する側)の端部に設けられている。また、回収部72は、各清掃用媒体噴射部70及び環境形成用気体供給部71を包囲するように四角環状をなす回収口72aを有している。こうした回収部72は、該回収部72から−Z方向側に延びる回収通路73を介して回収装置67に接続されている。
【0041】
清掃用移動装置62は、図3に示すように、環境形成部材61を、Y軸方向においてレチクル保持装置15とは異なる位置であってレチクルRを清掃不能な退避位置と、Y軸方向においてレチクル保持装置15に対応する位置であってレチクルRを清掃可能な清掃位置との間で進退移動させる。なお、清掃用移動装置62の駆動によって環境形成部材61が清掃位置に配置された場合、図5に示すように、環境形成部材61は、レチクルRのパターン形成面Raとの間に、ほんの僅かな隙間H6(例えば、5μm程度)を介在させた状態で配置される。
【0042】
第1供給装置64は、図5に示すように、第1タンク63内から清掃用媒体を吸引する第1ポンプ75と、該第1ポンプ75から吐出された清掃用媒体を環境形成部材61の各清掃用媒体噴射部70に供給するための第1供給管路76とを備えている。第1供給管路76において環境形成部材61側の部位は、各清掃用媒体噴射部70に個別対応するように分岐されている。そして、各清掃用媒体噴射部70からは、同一圧力で清掃用媒体が噴射される。
【0043】
また、第1ポンプ75は、第1タンク63と同様に、チャンバ13外に配置されている。そのため、第1供給管路76は、チャンバ13の側壁に形成された貫通孔13a内を貫通している。第1供給管路76の外周面と貫通孔13aの側面との間には、熱伝導率の低い材料で構成された円環状の封止部材77が設けられている。この封止部材77は、貫通孔13aと第1供給管路76との間の隙間を介して外部からチャンバ13に大気が漏入することを抑制している。
【0044】
また、第1供給管路76のうちチャンバ13内に位置する部分は、熱伝導率の低い材料で構成された筒部材78によって内包されている。その結果、第1供給管路76内の温度は、第1タンク63内と略同等に維持される。なお、図5では、明細書の説明理解の便宜上、回収部72の図示を省略している。
【0045】
本実施形態において、清掃用媒体は、レチクルRのパターン形成面Raに噴射されることで、気化または昇華する性質を有する媒体である。例えば、清掃用媒体は、二酸化炭素を含んでいる。第1タンク63には、液状の清掃用媒体(例えば、液体の二酸化炭素)が貯留されており、第1ポンプ75を駆動させることによって、環境形成部材61の内部に液状の清掃用媒体が供給される。そして、環境形成部材61の各清掃用媒体噴射部70から、液状の清掃用媒体が噴射される。例えば、清掃用媒体として二酸化炭素を使用する場合、清掃用媒体噴射部70から液体の二酸化炭素を噴射すると、液体の二酸化炭素は熱の出入りがない急激な膨張(断熱膨張)を起こし、固体の二酸化炭素(ドライアイス)と気体の二酸化炭素が入り混じった状態となって、レチクルRのパターン形成面Raに噴射される。噴射されたドライアイスは、レチクルRのパターン形成面Ra上の異物に衝突し、気体の二酸化炭素によって、ドライアイスと異物とがレチクルRのパターン形成面Raから除去される。
【0046】
第2供給装置66は、図3に示すように、第2タンク65内から環境形成用気体を吸引する第2ポンプ80と、該第2ポンプ80から吐出された環境形成用気体を環境形成部材61の環境形成用気体供給部71に供給するための第2供給管路81とを備えている。第2ポンプ80は、第2タンク65と同様に、チャンバ13外に配置されている。また、第2タンク65では、環境形成用気体の温度が室温又は該室温よりも低温で保持されている。なお、本実施形態の環境形成用気体は、例えば、ヘリウムを含んでいる。また、環境形成用気体は、主成分がヘリウム、窒素、ドライエアー、又はこれらの混合物となる気体であってもよい。また、環境形成用気体は、レチクルRのパターン形成面Raに付着したカーボンコンタミの除去用に酸素を含んでものであってもよい。なお、カーボンコンタミとは、カーボンコンタミネーションの略であり、炭素を主成分とする汚れのことを示す。
【0047】
回収装置67は、チャンバ13外に配置される回収ポンプ83と、該回収ポンプ83と環境形成部材61の回収部72とを連結する回収用管路84とを備えている。
次に、本実施形態の露光装置11を制御する制御装置について説明する。
【0048】
図6に示すように、制御装置CONTには、レチクル保持装置15、レチクル移動装置25、ウエハ移動装置38、計測装置26、清掃用移動装置62及び各ポンプ75,80,83が電気的に接続されている。こうした制御装置CONTには、図示しないCPU、ROM及びRAMなどを有する制御回路が設けられている。ROMには、各種制御プログラム及び各種データなどが記憶されている。RAMには、CPUが実行するプログラムデータ及びCPUによる演算結果及び処理結果である各種データなどが一時記憶される。
【0049】
次に、ウエハ保持装置17に保持されるウエハWの各ショット領域に順番に露光処理を行う際に制御装置CONTが実行する露光処理ルーチンについて、図7に示すフローチャートに基づき説明する。
【0050】
ウエハ保持装置17にウエハWが設置されると、制御装置CONTは、露光処理ルーチンを実行する。この露光処理ルーチンにおいて、制御装置CONTは、レチクル移動装置25とウエハ移動装置38とを協働させることにより、ウエハWの一つのショット領域に対して露光処理を行う(ステップS10)。一つのショット領域に対する露光処理が完了すると、制御装置CONTは、ウエハWの全てのショット領域に対する露光処理が完了したか否かを判定する(ステップS11)。
【0051】
この判定結果が否定判定(NO)である場合、即ち未だ露光処理が完了していないショット領域が存在する場合、制御装置CONTは、変更工程を行う。具体的には、制御装置CONTは、露光処理を施すショット領域を変更させるべくウエハ移動装置38の駆動を開始させる(ステップS12)。そして、ショット領域の変更が行われる間に、制御装置CONTは、退避位置に位置する環境形成部材61を清掃位置に移動させるべく清掃用移動装置62を制御する清掃準備処理を行う(ステップS13)。環境形成部材61が清掃位置に移動すると、環境形成部材61は、環境形成部材61の内面とレチクルRのパターン形成面Raとで囲まれた空間を形成する。この状態で、制御装置CONTが第2ポンプ80を駆動させると、環境形成部材61の内面とレチクルRのパターン形成面Raとで囲まれた空間に環境形成用気体を供給することによって、清掃用空間(清掃用環境ともいう。)Spが形成される。この清掃用空間Spは、チャンバ13内の環境から分離されている。(図5参照)。したがって、本実施形態では、ステップS13が、環境形成工程に相当する。
【0052】
続いて、制御装置CONTは、清掃処理を行う(ステップS14)。具体的には、制御装置CONTは、第1ポンプ75を駆動させると共に、レチクルRをY軸方向に沿って移動させるべくレチクル移動装置25を駆動させる。続いて、制御装置CONTは、回収ポンプ83を駆動させる。
【0053】
すると、環境形成用気体によって形成された清掃用空間Sp内には、図8(a)に示すように、各清掃用媒体噴射部70からレチクルRのパターン形成面Raのうち開口部61cに対向する部位に向けて清掃用媒体が噴射される。その結果、レチクルRのパターン形成面Raには、清掃用媒体が衝突する。こうした清掃用媒体が衝突された状態で、レチクルRは、Y軸方向に沿って移動する。そして、各清掃用媒体噴射部70及び環境形成用気体供給部71から噴射された清掃用媒体及び環境形成用気体は、図8(b)に示すように、回収部72を介して回収される。このとき、清掃用媒体とレチクルRとの衝突によって該レチクルRから異物が剥離された場合、該異物は、清掃用媒体及び環境形成用気体と共に回収部72を介して回収される。
【0054】
ちなみに、レチクルRのパターン形成面Raに衝突した清掃用媒体は、レチクルRから熱を受けたり、環境形成部材61から熱を受けたりして気化する。そして、気化後の清掃用媒体(即ち、炭酸ガス)が、回収部72を介して回収される。したがって、本実施形態では、ステップS14が、清掃工程に相当する。
【0055】
図7に戻り、レチクルRの清掃が完了すると共に、ウエハWのショット領域の変更が完了すると、制御装置CONTは、各ポンプ75,80を停止させた後に、回収ポンプ83を停止させ、その後、環境形成部材61を退避位置に移動させるべく清掃用移動装置62を制御する。そして、制御装置CONTは、レチクルRの第1領域R1の一部(Y軸方向における一端側)を露光光ELで照明できるようにレチクル移動装置25を駆動させ、その後、その処理を前述したステップS10に移行する。すなわち、本実施形態では、ウエハWのうち露光処理が行われるショット領域が変更される際に、清掃装置60を用いたレチクルRの清掃が行われる。
【0056】
一方、ステップS11の判定結果が肯定判定(YES)である場合、即ち全てのショット領域に対して露光処理が完了した場合、制御装置CONTは、交換工程を行う。具体的には、制御装置CONTは、ウエハ移動装置38に保持させるウエハWの交換を開始させる(ステップS15)。そして、ウエハWの交換が行われている間に、制御装置CONTは、上記ステップS13の処理と同じように、清掃準備処理を行う(ステップS16)。したがって、本実施形態では、ステップS16もまた、環境形成工程に相当する。
【0057】
続いて、制御装置CONTは、上記ステップS14と同じように、清掃処理を行う(ステップS17)。したがって、本実施形態では、ステップS17もまた、清掃工程に相当する。
【0058】
その後、レチクルRの清掃が完了すると共に、ウエハWの交換が完了すると、制御装置CONTは、各ポンプ75,80を停止させた後に、回収ポンプ83を停止させ、その後、環境形成部材61を退避位置に移動させるべく清掃用移動装置62を制御する。そして、制御装置CONTは、レチクルRの第1領域R1の一部(Y軸方向における一端側)を露光光ELで照明できるようにレチクル移動装置25を駆動させ、その後、その処理を前述したステップS10に移行する。すなわち、本実施形態では、露光処理が行われるウエハWが交換される際に、清掃装置60を用いたレチクルRの清掃が行われる。つまり、ウエハWを交換する交換工程の間に、レチクルRが清掃される。
【0059】
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)レチクルRのパターン形成面Raの清掃時では、該パターン形成面Ra側にチャンバ13内の環境から分離された清掃用空間Spが形成される。この清掃用空間Spで清掃用媒体がパターン形成面Raの一部に向けて噴射される。そして、噴射された清掃用媒体及びパターン形成面Raの一部から除去された異物は、回収部72を介して回収される。したがって、レチクルRのパターン形成面Raに清掃用媒体を衝突させることにより、該パターン形成面Raから異物を除去することができる。
【0060】
(2)回収部72は、清掃用媒体噴射部70の周辺に配置されている。そのため、レチクルRのパターン形成面Raを清掃すべく清掃用媒体噴射部70から噴射された清掃用媒体を、回収部72を介して効率良く回収できる。したがって、清掃用媒体が清掃用空間Sp外に漏れ出ることを抑制でき、ひいてレチクルRの清掃に伴うチャンバ13内の真空度の低下を抑制できる。
【0061】
(3)回収部72の回収口72aは、各清掃用媒体噴射部70を包囲するように環状に形成されている。しかも、回収口72aは、環境形成部材61の筒状部61bにおいてレチクルRに対向する側の端部に形成されている。そのため、清掃用媒体及びレチクルRから取り除かれた異物が清掃用空間Sp外に流出することを抑制でき、ひいては清掃用媒体及びレチクルRから取り除かれた異物を、効率良く回収できる。
【0062】
(4)さらに、環境形成部材61は、レチクルRのパターン形成面Raとの間に、ほんの僅かな隙間H6(例えば、5μm程度)を介在させた状態で配置される。そのため、隙間H6が、清掃用空間Sp内から外部に漏出しようとする気体(使用済みとなった清掃用媒体及び環境形成用気体)に対して流動抵抗として作用し、結果として、上記気体は、回収部72を介してチャンバ13外に排出される。そのため、清掃用媒体が清掃用空間Sp外に漏出することを抑制できる。
【0063】
(5)第1タンク63から第1供給管路76を介して清掃用媒体噴射部70に供給される清掃用媒体は、温度の上昇によって状態を変化させる。そのため、第1タンク63から第1供給管路76を介して清掃用媒体噴射部70に供給される過程で、清掃用媒体の温度が上昇し過ぎてしまうと、清掃用媒体は、清掃用媒体噴射部70内に流入した時点で気化している可能性がある。この点、本実施形態では、第1供給装置64の筒部材78によって、第1供給管路76の環境(特に温度)を、第1タンク63内の環境(特に温度)に接近させることができる。そのため、第1タンク63から供給される液状の清掃用媒体のうち、第1供給管路76内で気化する清掃用媒体の量を少なくできる。したがって、レチクルRに清掃用媒体を確実に衝突させることができ、レチクルRを好適に清掃できる。
【0064】
(6)また、清掃用空間Spは、レチクルRと環境形成部材61とによって、チャンバ13内の環境と分離される。そのため、清掃時では、清掃用空間Sp内の環境は、チャンバ13内の環境と大きく異なる。具体的には、清掃用空間Sp内の温度は、チャンバ13内の温度よりも低い。そのため、清掃用空間Spを形成しないで清掃用媒体をレチクルRに噴射する場合と比較して、レチクルRに衝突する清掃用媒体の量を増大させることができる。例えば、清掃用媒体として二酸化炭素を用いる場合、レチクルRに衝突するドライアイスの量を増大させることができる。したがって、レチクルRの清掃効率を向上させることができる。
【0065】
(7)さらに、清掃用媒体は、レチクルRよりも低温である。そのため、レチクルRを清掃する目的で清掃用媒体をレチクルRに噴射することにより、レチクルRを冷却することができる。したがって、レチクルRの熱膨張に起因したパターンの像の乱れを抑制でき、ウエハWに対して適切なパターンを形成させることができる。
【0066】
(8)また、レチクルRの清掃時には、レチクルRに向けて清掃用媒体及び環境形成用気体が噴射されるため、レチクルRを効率良く冷却できる。したがって、レチクルRに露光光ELを照明する露光処理中のレチクルRの温度を、所望の温度範囲内に抑えることができる。また、その温度範囲内で、レチクル基板の温度膨張係数を最小に設定することで、レチクルRの熱膨張に起因したパターンの像のディストーション、重ね誤差を抑制でき、ウエハWに対して適切なパターンを形成させることができる。
【0067】
(9)レチクル基板としては、例えば、低熱膨張素材のガラスが用いられる。低熱膨張素材のガラスは、設計温度付近での温度変化に対して素材の膨張が少なく、それ以外の温度では、温度変化に対する素材の膨張が大きくなる。そのため、レチクルRの実使用時の温度範囲をなるべく狭くし、平均温度を、温度変化に対する素材の膨張が最も少ない温度に設定することが望ましい。この点、本実施形態では、レチクルRに露光光ELが照射されない非露光処理中(例えば、ウエハ交換中やスキャンブランキング動作中等)に、環境形成用気体と清掃用気体とを用いて、レチクルRが冷却される。そのため、レチクルRに露光光ELを照射する露光処理中の温度範囲を、所望の温度範囲まで狭くすることができる。すなわち、レチクルRを、該レチクルRが最も膨張しにくい温度範囲で使用することができる。
【0068】
(10)もし仮に露光処理を行うショット領域の変更時にレチクルRを清掃しないとすると、パターン形成面Raに異物が付着した状態で露光処理が開始されるおそれがある。この場合、パターン形成面Raに付着した異物の影響によって、一つのウエハWが全て不良となるおそれがある。この点、本実施形態では、ウエハWにパターンを形成するショット領域を変更すべくウエハWが移動している間に、清掃装置60を用いたレチクルRの清掃が行われる。そのため、一つのウエハWの全ての部分が不良となる可能性を低くすることができる。
【0069】
(11)また、このように短い間隔でレチクルRが清掃されることにより、パターン形成面Raに異物が付着したとしても、該異物を速やかに該パターン形成面Raから取り除くことができる。
【0070】
(12)また、本実施形態では、ウエハWの交換時にも、清掃装置60を用いたレチクルRの清掃が行われる。そのため、パターン形成面Raに異物が付着した状態で、ウエハWへの露光処理が開始される可能性を低くできる。また、レチクルRのパターン形成面Raに異物が付着することによるウエハWのロット不良を防止することができる。1ロットは少なくともウエハ25枚程度なので、半導体メーカにとって大きなロスとなる。
【0071】
(13)一般的に、レチクル保持装置15としては、レチクルRのパターン形成面Raの反対側の面Rbに密接する吸着面を有する静電吸着保持装置を備える装置が広く知られている。こうした静電吸着保持装置では、パターン形成面Raの平面度を向上させるためには吸着面の平面度を限りなく高くさせる必要がある。しかも、吸着面の平面度は、静電吸着保持装置の個体毎に僅かに変わってしまう。すなわち、上記静電吸着保持装置を用いてレチクルRを保持する方法では、パターン形成面Raの平面度は、静電吸着保持装置の吸着面の平面度に依存するため、個体毎に値が異なる可能性が高い。この点、本実施形態のレチクル保持装置15は、レチクルRの端部を各把持部40A,40Bによって把持する構成である。そのため、レチクルRのパターン形成面Raの平面度が、レチクル保持装置15の個体毎に変わってしまうことを抑制できる。
【0072】
(14)また、レチクルRのパターン形成面Raの平面度がレチクル保持装置15の個体毎に変わることが抑制されるため、露光処理時に、レチクルRにおいて露光光ELで照明される位置、即ち照明領域の高さを容易に補正できる。したがって、ウエハWに適切な形状のパターンを形成することができる。
【0073】
また、レチクルRの縁部を把持しつつ、ウエハWの交換中にレチクルRの冷却と清掃とを行うことができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図9及び図10に基づき説明する。なお、第2の実施形態は、環境形成部材の構成が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0074】
図9及び図10(a)に示すように、本実施形態の清掃装置60は、平面視略正方形状の底部90a及び四角筒状の筒状部90bを有する環境形成部材90を備えている。この環境形成部材90において+Z方向側に開口する開口部90cは、レチクルRのパターン形成面Raの第1領域R1と同一形状、又は第1領域R1よりも僅かに大きな形状とされている。底部90aには、複数個(図9では81個)の清掃用媒体噴射部70が形成されている。本実施形態では、各清掃用媒体噴射部70は、X軸方向及びY軸方向に沿って等間隔にそれぞれ配置されている。また、底部90aの端部(図9では右上の端部)には、環境形成用気体供給部71が形成されている。
【0075】
環境形成部材90の筒状部90bにおいて+Z方向側の端面側には、回収部72が形成されている。本実施形態の回収部72は、各清掃用媒体噴射部70及び環境形成用気体供給部71を包囲するように配置される複数(本実施形態では4つ)の回収口91を備えている。各回収口91は、筒状部90bの+Z方向側の端面の長手方向に沿って延びるように形成されている。そして、各回収口91は、回収通路73を介して回収用管路84に連通されている。
【0076】
また、筒状部90bの+Z方向側の端面において各回収口91の外周側には、弾性を有する材料(例えば、合成樹脂)で構成される四角環状の緩衝部材92が設けられている。この緩衝部材92は、環境形成部材90をレチクルRのパターン形成面Raに対向して配置した場合に、該パターン形成面Raの第2領域R2に当接される。すなわち、本実施形態では、図10(b)に示すように、環境形成部材90とレチクルRのパターン形成面Raとの間に、隙間が形成されない。
【0077】
本実施形態では、清掃装置60を用いてレチクルRを清掃する場合、環境形成部材90は、清掃用移動装置62の駆動によって、退避位置から清掃位置に移動する。このとき、環境形成部材90の開口部90cは、パターン形成面Raのうち第1領域R1に対向している。そのため、第1領域R1の清掃時には、レチクルRに対して環境形成部材90を相対的に移動させなくてもよい。
【0078】
したがって、本実施形態では、上記第1の実施形態の効果(1)(2)(5)〜(14)と同等の効果に加え、以下に示す効果を得ることができる。
(15)回収部72は、各清掃用媒体噴射部70を包囲するように配置される複数の回収口91を備えている。そのため、清掃用媒体及びレチクルRから取り除かれた異物が清掃用空間Sp外に流出することを抑制でき、ひいては清掃用媒体及びレチクルRから取り除かれた異物を、効率良く回収できる。
【0079】
(16)また、本実施形態の環境形成部材90には、緩衝部材92が設けられている。そのため、本実施形態では、環境形成部材90を清掃位置に配置させることにより、チャンバ13内の環境とは分離された清掃用空間Spが形成される。したがって、清掃用媒体及びレチクルRから取り除かれた異物が清掃用空間Sp外に流出することを抑制でき、ひいては清掃後にチャンバ13内の真空度が低くなることを抑制できる。
【0080】
(17)本実施形態では、清掃装置60を用いたレチクルRの清掃時に、該レチクルRに対して環境形成部材90を相対的に移動させなくてもよい。そのため、上記第1の実施形態の場合と比較して、レチクルRの第1領域R1の各位置に清掃用媒体を噴射できる時間を長くできる。したがって、ウエハWの交換時やショット領域の変更時などのように限られた時間の中で、レチクルRの第1領域R1を清掃する時間を長く確保でき、ひいては第1領域R1に異物が付着した状態で露光処理が行われる可能性を低くできる。
【0081】
なお、上記各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・各実施形態において、各把持部40A,40Bは、レチクルRを把持するために静電吸着力を利用する構成であってもよい。この場合、第1把持部40A及び第2把持部40Bの各当接部41,42は、誘電性材料で形成されると共に、各当接部41,42内には、電極が設けられる。そして、電極に電圧が印加されることにより、各当接部41,42の当接面41a,42aが吸着面として機能する。その結果、レチクルRは、各把持部40A,40Bによって保持される。なお、レチクルRのパターン形成面Raの反対側の面Rbには、導電層を形成すると共に、パターン形成面Raの第2領域R2にも、導電層を形成することが好ましい。
【0082】
・各実施形態において、各把持部40A,40Bは、電磁力でもって、レチクルRを把持する構成であってもよい。例えば、第1当接部41を鉄などの磁石で吸引可能な部材とし、第2当接部42を電磁石としてもよい。
【0083】
・各実施形態において、レチクル保持装置15は、レチクルRのパターン形成面Raの反対側の面Rbに対向する吸着面を有する静電吸着保持装置を備えた構成でもよい。この静電吸着保持装置は、ウエハWを保持する静電吸着保持装置36と略同一構成でもよい。
【0084】
・各実施形態において、レチクル保持装置15の第2当接部42は、レチクル移動装置25に支持されてもよい。これによって、レチクル移動装置25と第2当接部42とを一体的に接合することができる。また、支点部48又はアクチュエータ49の少なくとも一方を、レチクル移動装置25に支持させてもよい。この場合、アクチュエータ49の駆動によって、第1当接部41が、第2当接部42に接離する方向に回動することになる。
【0085】
・第1の実施形態において、レチクルRのパターン形成面Raを清掃する場合には、清掃用移動装置62の駆動によって、環境形成部材90をパターン形成面Raに沿う方向に移動させてもよい。また、レチクルRのパターン形成面Raを清掃する場合には、レチクル移動装置25及び清掃用移動装置62を協働させることにより、環境形成部材90をレチクルRに対して相対移動させてもよい。
【0086】
・各実施形態において、環境形成部材61,90の設置位置をレチクルRのY軸方向において異なる位置に設置するのであれば、清掃用移動装置62を設けなくてもよい。この場合、レチクルRの清掃時において該レチクルRを、レチクル移動装置25の駆動によって、環境形成部材61,90の設置位置まで移動させてもよい。
【0087】
・第2の実施形態において、緩衝部材92は、環状をなす構成でなくてもよい。例えば、リブ状をなす複数の緩衝部材を、各清掃用媒体噴射部70を包囲するように配置してもよい。
【0088】
・第2の実施形態において、緩衝部材92を省略してもよい。
・各実施形態において、環境形成用気体は、ヘリウム以外の他の気体(例えば、窒素や空気)であってもよい。また、環境形成用気体は、ヘリウム、窒素及び空気のうち少なくとも二つを含んだ気体であってもよい。
【0089】
・各実施形態において、環境形成用気体によって、レチクルRを冷却させてもよい。この場合、環境形成用気体の温度は、レチクルRの温度に対して厳密に制御する必要があるので、環境形成部材61の金属部分とレチクルRのパターン形成面Raの温度、清掃用気体と環境形成用気体の温度及び圧力等を正確にモニタし、該モニタ結果に基づき調整される。
【0090】
・各実施形態において、環境形成用気体を供給しなくてもよい。この場合、環境形成部材61,90には環境形成用気体供給部71を設けなくてもよいし、第2供給装置66を設けなくてもよい。このように構成しても、レチクルRのパターン形成面Raに清掃用媒体を噴射することにより、レチクルRを冷却することができる。
【0091】
・各実施形態において、清掃用媒体は、常温で気体であって、且つ冷却すると固化する媒体であれば二酸化炭素以外の他の任意の媒体(例えば、アルゴン)であってもよい。また、清掃用媒体は、二酸化炭素とアルゴンとを共に含んでもよい。
【0092】
・各実施形態において、清掃用媒体は、温度の変化によって液体から気体に気化する媒体(一例として、液体窒素)であってもよい。この場合、清掃用媒体噴射部70からは、液体窒素が噴射される。すると、レチクルRのパターン形成面Raには、液状の窒素と気体状の窒素とが入り混じった状態で衝突することになる。このように構成することにより、レチクルRのパターン形成面Raを清掃することができると共に、レチクルRを冷却することができる。
【0093】
・各実施形態において、第1供給装置は、液状の二酸化炭素を環境形成部材61,90に供給可能な構成であれば任意の構成であってもよい。例えば、図11に示すように、第1供給装置64Aは、第1供給管路76を包囲する筒状の保護用管路100を設け、第1供給管路76の外周面と保護用管路100の内周面との間の隙間101で冷媒(例えば、液体窒素)を流通させてもよい。
【0094】
・各実施形態において、第1供給装置は、第1供給管路76内の環境を第1タンク63内の環境に接近させるための構成を設けなくてもよい。
・各実施形態において、回収部72は、各清掃用媒体噴射部70を包囲して配置される構成であれば、筒状部61b,90bよりも内側に配置してもよい。
【0095】
・第2の実施形態において、回収部72は、環状の回収口を備えた構成であってもよい。
・第1の実施形態において、回収部72は、各清掃用媒体噴射部70を包囲するように配置される複数の回収口を備えた構成であってもよい。
【0096】
・各実施形態において、清掃用媒体噴射部70は、環境形成部材61,90とは別体に設けたものであってもよい。同様に、環境形成用気体供給部71は、環境形成部材61,90とは別体に設けたものであってもよい。さらに、回収部72は、環境形成部材61,90とは別体に設けたものであってもよい。
【0097】
・各実施形態において、清掃用媒体噴射部70を、千鳥配置してもよい。
・各実施形態において、レチクルRのパターン形成面Raの清掃を、ウエハWの交換時に行わなくてもよい。この場合であっても、レチクルRのパターン形成面Raの清掃は、露光処理を行うショット領域の変更時に行われる。
【0098】
・各実施形態において、レチクルRのパターン形成面Raの清掃を、露光処理を行うショット領域の変更時に行わなくてもよい。この場合であっても、レチクルRのパターン形成面Raの清掃は、ウエハWの交換時に行われる。
【0099】
・第1の実施形態において、レチクルRのパターン形成面Raの清掃と、レチクルRの反射面のカーボンコンタミ除去とを並行して行ってもよい。例えば、環境形成部材61内にカーボンコンタミ除去用の光源を設け、カーボンコンタミ除去用の光源からの光をレチクルRのパターン形成面Raに照射させてもよい。この場合、清掃用空間Sp内には酸素が供給される。
【0100】
また、カーボンコンタミ除去用の光源及び酸素の供給装置を環境形成部材61外に設け、レチクルRのパターン形成面Raにおいて清掃用媒体による清掃が行われていない部分をカーボンコンタミ除去用の光源から光で照射してもよい。
【0101】
・第2の実施形態において、レチクルRのパターン形成面Raの清掃と、レチクルRの反射面のカーボンコンタミの除去とを並行して行ってもよい。例えば、環境形成部材90内にカーボンコンタミ除去用の光源を設け、カーボンコンタミ除去用の光源からの光をレチクルRのパターン形成面Raに照射させてもよい。この場合、清掃用空間Sp内には酸素が供給される。
【0102】
・各実施形態において、レチクルRのパターン形成面Raの清掃を、非露光処理時に、メンテナンス処理の一環として行ってもよい。
・各実施形態において、チャンバ13内に該チャンバ13内の環境とは隔離(分離)された清掃用室を設け、該清掃用室内に清掃用媒体噴射部70及び回収部72を設置してもよい。この場合、レチクルRの清掃時には、レチクルRを清掃用室内に移動させる。
【0103】
・本発明の清掃装置60を用いて、照明光学系14及び投影光学系16が備えるミラー19,21〜24,30〜35の光学面(反射面)を清掃してもよい。例えば、図12に示すように、ミラーMの反射面Maは、凹状をなしていたり、凸状をなしていたりする。そのため、環境形成部材110は、ミラーMの反射面Maに対向する側の部位が反射面Maの形状に対応した形状となるように構成される。このとき、環境形成部材110は、反射面Ma全体に対向配置可能な形状であってもよいし、反射面Maの一部に対向配置可能な形状であってもよい。また、本発明の清掃装置60を用いた照明光学系14及び投影光学系16が備えるミラー19,21〜24,30〜35の光学面(反射面)の清掃と、これらのミラーの光学面のカーボンコンタミの除去とを並行して行ってもよい。例えば、環境形成部材61,90の少なくとも一部にカーボンコンタミ除去用の光源を設け、カーボンコンタミ除去用の光をミラーの光学面に照射してもよい。さらに、ミラー19,21〜24,30〜35の光学面(反射面)の清掃と、これらのミラーの光学面のカーボンコンタミの除去とが行われている間に、レチクルRの清掃を行ってもよい。
【0104】
・各実施形態において、露光装置11は、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクルまたはマスクを製造するために、マザーレチクルからガラス基板やシリコンウエハなどへ回路パターンを転写する露光装置であってもよい。また、露光装置11は、液晶表示素子(LCD)などを含むディスプレイの製造に用いられてデバイスパターンをガラスプレート上へ転写する露光装置、薄膜磁気ヘッド等の製造に用いられて、デバイスパターンをセラミックウエハ等へ転写する露光装置、及びCCD等の撮像素子の製造に用いられる露光装置などであってもよい。
・各実施形態において、光源装置12で用いられるEUV光発生物質は、気体状の錫(Sn)でもよいし、液体状又は固体状の錫でもよい。また、EUV光発生物質として、キセノン(Xe)を用いてもよい。
【0105】
・各実施形態において、光源装置12は、放電型プラズマ光源を有する装置でもよい。
・各実施形態において、光源装置12は、例えばg線(436nm)、i線(365nm)、KrFエキシマレーザ(248nm)、F2レーザ(157nm)、Kr2レーザ(146nm)、Ar2レーザ(126nm)等を供給可能な光源であってもよい。また、光源装置12は、DFB半導体レーザまたはファイバレーザから発振される赤外域、または可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(またはエルビウムとイッテルビウムの双方)がドープされたファイバアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を供給可能な光源であってもよい。
【0106】
この場合、照明光学系や投影光学系は、光学部材としてレンズを備えることになる。こうしたレンズの光学面を、本発明の清掃装置で清掃してもよい。
・各実施形態において、露光装置11を、ステップ・アンド・リピート方式の装置に具体化してもよい。
【0107】
次に、本発明の実施形態の露光装置11によるデバイスの製造方法をリソグラフィ工程で使用したマイクロデバイスの製造方法の実施形態について説明する。図13は、マイクロデバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートを示す図である。
【0108】
まず、ステップS101(設計ステップ)において、マイクロデバイスの機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップS102(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスク(レチクルRなど)を製作する。一方、ステップS103(基板製造ステップ)において、シリコン、ガラス、セラミックス等の材料を用いて基板(シリコン材料を用いた場合にはウエハWとなる。)を製造する。
【0109】
次に、ステップS104(基板処理ステップ)において、ステップS101〜ステップS104で用意したマスクと基板を使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によって基板上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップS105(デバイス組立ステップ)において、ステップS104で処理された基板を用いてデバイス組立を行う。このステップS105には、ダイシング工程、ボンティング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。最後に、ステップS106(検査ステップ)において、ステップS105で作製されたマイクロデバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にマイクロデバイスが完成し、これが出荷される。
【0110】
図14は、半導体デバイスの場合におけるステップS104の詳細工程の一例を示す図である。
ステップS111(酸化ステップ)においては、基板の表面を酸化させる。ステップS112(CVDステップ)においては、基板表面に絶縁膜を形成する。ステップS113(電極形成ステップ)においては、基板上に電極を蒸着によって形成する。ステップS114(イオン打込みステップ)においては、基板にイオンを打ち込む。以上のステップS111〜ステップS114のそれぞれは、基板処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
【0111】
基板プロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップS115(レジスト形成ステップ)において、基板に感光性材料を塗布する。引き続き、ステップS116(露光ステップ)において、上で説明したリソグラフィシステム(露光装置11)によってマスクの回路パターンを基板に転写する。次に、ステップS117(現像ステップ)において、ステップS116にて露光された基板を現像して、基板の表面に回路パターンからなるマスク層を形成する。さらに続いて、ステップS118(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップS119(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となった感光性材料を取り除く。すなわち、ステップS118及びステップS119において、マスク層を介して基板の表面を加工する。これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、基板上に多重に回路パターンが形成される。
【符号の説明】
【0112】
11…露光装置、13…チャンバ、14…照明光学系、15…マスク保持装置としてのレチクル保持装置、16…投影光学系、19,21〜24…第1光学部材としてのミラー、25…移動装置としてのレチクル移動装置、30〜35…第2光学部材としてのミラー、40A…第1把持部、40B…第2把持部、41…第1当接部、42…第2当接部、60…清掃装置、61,90,110…環境形成部材、61c,90c…開口部、63…貯留部としての第1タンク、64,64A…第1供給装置、70…噴射部としての清掃用媒体噴射部、71…供給部としての環境形成用気体供給部、72…回収部、72a,91…回収口、76…供給流路としての第1供給管路、78…環境調整部材としての筒部材、92…緩衝部材、100…環境調整部材としての保護用管路、EL…放射ビームとしての露光光、M…光学部材としてのミラー、Ma…光学面としての反射面、R…光学部材、マスクとしてのレチクル、R1…第1領域、R2…第2領域、Ra…光学面としてのパターン形成面、Rb…反対側の面、Sp…清掃用環境としての清掃用空間、W…物体としてのウエハ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内に設けられる光学部材の光学面を清掃する清掃装置において、
前記光学面の少なくとも一部に対向して配置されることにより、前記チャンバ内の環境から分離された清掃用環境を形成する環境形成部材と、
前記清掃用環境内で前記光学面の少なくとも一部に清掃用媒体を噴射する噴射部と、
前記光学面の少なくとも一部に噴射された清掃用媒体及び前記清掃用媒体によって前記光学面の少なくとも一部から除去された異物を回収する回収部と、を備えることを特徴とする清掃装置。
【請求項2】
前記回収部は、前記噴射部の周辺に設けられることを特徴とする請求項1に記載の清掃装置。
【請求項3】
前記回収部は、複数の回収口を有しており、
前記複数の回収口は、前記噴射部を囲むようにそれぞれ配置されることを特徴とする請求項2に記載の清掃装置。
【請求項4】
前記回収部は、環状の回収口を有することを特徴とする請求項2に記載の清掃装置。
【請求項5】
前記回収口は、前記環境形成部材において前記光学面に対向する側の端部に形成されることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の清掃装置。
【請求項6】
前記清掃用媒体を貯留する貯留部から前記噴射部に前記清掃用媒体を供給する供給流路と、該供給流路内の環境を前記貯留部内の環境に接近させる環境調整部とを有する供給装置をさらに備えることを特徴とする請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の清掃装置。
【請求項7】
前記清掃用媒体は、環境の変化によって固体から気体に変化する性質を有し、
前記噴射部は、前記清掃用媒体の固体及び気体のうち少なくとも固体を前記光学面の少なくとも一部に噴射し、
前記回収部は、気化後の前記清掃用媒体を回収することを特徴とする請求項1〜請求項6のうち何れか一項に記載の清掃装置。
【請求項8】
前記環境形成部材は、環境形成用気体を供給する供給部をさらに備え、
前記清掃用環境は、前記供給部から供給された前記環境形成用気体によって形成されることを特徴とする請求項1〜請求項7のうち何れか一項に記載の清掃装置。
【請求項9】
前記回収部は、前記光学面の少なくとも一部に噴射された清掃用媒体、環境形成用気体及び前記光学面の少なくとも一部から除去された異物を回収することを特徴とする請求項8に記載の清掃装置。
【請求項10】
前記清掃用媒体は、温度の上昇によって、固体から気体に昇華する媒体を含むことを特徴とする請求項1〜請求項9のうち何れか一項に記載の清掃装置。
【請求項11】
前記清掃用媒体は、ドライアイスを含むことを特徴とする請求項10に記載の清掃装置。
【請求項12】
前記清掃用媒体は、温度の上昇によって、液体から気体に気化する媒体を含むことを特徴とする請求項1〜請求項9のうち何れか一項に記載の清掃装置。
【請求項13】
前記清掃用媒体は、液体窒素を含むことを特徴とする請求項12に記載の清掃装置。
【請求項14】
前記環境形成用気体は、ヘリウム、窒素及び空気のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の清掃装置。
【請求項15】
前記環境形成部材において前記光学面に対向する側の端部に設けられ、前記光学面に当接する緩衝部材をさらに備えることを特徴とする請求項1〜請求項14のうち何れか一項に記載の清掃装置。
【請求項16】
前記緩衝部材は、前記噴射部及び前記回収部を包囲するように形成されていることを特徴とする請求項15に記載の清掃装置。
【請求項17】
前記環境形成部材は、前記光学面の一部に対向して配置されることにより、前記チャンバ内の環境から分離された清掃用環境を形成するように構成されており、
前記環境形成部材を、前記光学部材に対して前記光学面に沿う方向に相対移動させる移動装置をさらに備えることを特徴とする請求項1〜請求項16のうち何れか一項に記載の清掃装置。
【請求項18】
前記光学部材は、所定のパターンが形成される反射型のマスクであり、
前記光学面は、前記マスクにおいて所定のパターンが形成されたパターン形成面であることを特徴とする請求項1〜請求項17のうち何れか一項に記載の清掃装置。
【請求項19】
前記光学部材は、反射型の光学部材であり、
前記光学面は、入射した放射ビームを反射する反射面であることを特徴とする請求項1〜請求項17のうち何れか一項に記載の清掃装置。
【請求項20】
少なくとも一つの第1光学部材を有し、該第1光学部材を介した放射ビームを所定のパターンが形成されたマスクに導く照明光学系と、
少なくとも一つの第2光学部材を有し、前記マスクを介した放射ビームを、前記第2光学部材を介して物体に導く投影光学系と、
請求項1〜請求項17のうち何れか一項に記載の清掃装置と、を備え、
前記清掃装置は、前記第1光学部材及び第2光学部材の少なくとも一方を清掃することを特徴とする露光装置。
【請求項21】
光学部材の光学面に形成された所定のパターンを物体に露光する露光装置において、
請求項1〜請求項17のうち何れか一項に記載の清掃装置を用いて、前記光学部材の光学面を清掃することを特徴とする露光装置。
【請求項22】
前記光学部材は、反射型のマスクであることを特徴とする請求項21に記載の露光装置。
【請求項23】
前記マスクを保持するマスク保持装置をさらに備えることを特徴とする請求項22に記載の露光装置。
【請求項24】
前記マスクのパターン形成面は、前記所定のパターンが形成される第1領域と、該第1領域の外周側に位置する第2領域とを有しており、
前記環境形成部材は、前記第1領域に対向して配置されることにより、前記チャンバ内の環境から分離された清掃用環境を形成することを特徴とする請求項22又は請求項23に記載の露光装置。
【請求項25】
前記環境形成部材は、前記マスクのパターン形成面の一部に対向して配置されることにより、前記チャンバ内の環境から分離された清掃用環境を形成するようになっており、
前記清掃装置を、前記パターン形成面に沿って前記マスクに対して相対的に移動させる移動装置をさらに備えることを特徴とする請求項22又は請求項23に記載の露光装置。
【請求項26】
前記マスクのパターン形成面は、前記所定のパターンが形成される第1領域と、該第1領域の外周側に位置する第2領域とを有しており、
前記マスク保持装置は、前記マスクにおいて前記第2領域の少なくとも一部を把持する把持部を有することを特徴とする請求項23に記載の露光装置。
【請求項27】
前記把持部は、前記マスクにおいて前記パターン形成面に沿う第1の方向における一方側を把持する第1把持部と、前記マスクにおいて前記第1の方向における他方側を把持する第2把持部とを有する請求項26に記載の露光装置。
【請求項28】
前記第1把持部及び前記第2把持部は、前記マスクのうち前記所定のパターンが形成された側のパターン形成面に当接する第1当接部と、前記マスクの前記パターン形成面とは反対側の面に当接する第2当接部とを有することを特徴とする請求項27に記載の露光装置。
【請求項29】
前記第1当接部及び第2当接部は、前記パターン形成面内において前記第1の方向と交差する第2の方向に延びるようにそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項28に記載の露光装置。
【請求項30】
チャンバ内に設けられる光学部材の光学面を清掃する清掃方法であって、
前記光学面の少なくとも一部に対向する位置に、前記チャンバ内の環境から分離された清掃用環境を形成する環境形成工程と、
前記清掃用環境内で前記光学面の少なくとも一部に清掃用媒体を噴射し、前記光学面の少なくとも一部に噴射された清掃用媒体と前記清掃用媒体によって前記光学面の少なくとも一部から除去された異物とを回収する清掃工程と、を有することを特徴とする清掃方法。
【請求項31】
物体の複数の領域に所定のパターンをそれぞれ形成する露光方法であって、
前記物体のうち、前記所定のパターンが形成される領域を変更する変更工程を有し、
前記変更工程を行う際に、請求項30に記載の清掃方法を用いて、前記光学部材の光学面を清掃することを特徴とする露光方法。
【請求項32】
物体に所定のパターンをそれぞれ形成する露光方法であって、
前記物体を交換する交換工程を有し、
前記交換工程を行う際に、請求項30に記載の清掃方法を用いて、前記光学部材の光学面を清掃することを特徴とする露光方法。
【請求項33】
リソグラフィ工程を含むデバイスの製造方法において、
前記リソグラフィ工程は、請求項20〜請求項29のうち何れか一項に記載の露光装置を用いることを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項1】
チャンバ内に設けられる光学部材の光学面を清掃する清掃装置において、
前記光学面の少なくとも一部に対向して配置されることにより、前記チャンバ内の環境から分離された清掃用環境を形成する環境形成部材と、
前記清掃用環境内で前記光学面の少なくとも一部に清掃用媒体を噴射する噴射部と、
前記光学面の少なくとも一部に噴射された清掃用媒体及び前記清掃用媒体によって前記光学面の少なくとも一部から除去された異物を回収する回収部と、を備えることを特徴とする清掃装置。
【請求項2】
前記回収部は、前記噴射部の周辺に設けられることを特徴とする請求項1に記載の清掃装置。
【請求項3】
前記回収部は、複数の回収口を有しており、
前記複数の回収口は、前記噴射部を囲むようにそれぞれ配置されることを特徴とする請求項2に記載の清掃装置。
【請求項4】
前記回収部は、環状の回収口を有することを特徴とする請求項2に記載の清掃装置。
【請求項5】
前記回収口は、前記環境形成部材において前記光学面に対向する側の端部に形成されることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の清掃装置。
【請求項6】
前記清掃用媒体を貯留する貯留部から前記噴射部に前記清掃用媒体を供給する供給流路と、該供給流路内の環境を前記貯留部内の環境に接近させる環境調整部とを有する供給装置をさらに備えることを特徴とする請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の清掃装置。
【請求項7】
前記清掃用媒体は、環境の変化によって固体から気体に変化する性質を有し、
前記噴射部は、前記清掃用媒体の固体及び気体のうち少なくとも固体を前記光学面の少なくとも一部に噴射し、
前記回収部は、気化後の前記清掃用媒体を回収することを特徴とする請求項1〜請求項6のうち何れか一項に記載の清掃装置。
【請求項8】
前記環境形成部材は、環境形成用気体を供給する供給部をさらに備え、
前記清掃用環境は、前記供給部から供給された前記環境形成用気体によって形成されることを特徴とする請求項1〜請求項7のうち何れか一項に記載の清掃装置。
【請求項9】
前記回収部は、前記光学面の少なくとも一部に噴射された清掃用媒体、環境形成用気体及び前記光学面の少なくとも一部から除去された異物を回収することを特徴とする請求項8に記載の清掃装置。
【請求項10】
前記清掃用媒体は、温度の上昇によって、固体から気体に昇華する媒体を含むことを特徴とする請求項1〜請求項9のうち何れか一項に記載の清掃装置。
【請求項11】
前記清掃用媒体は、ドライアイスを含むことを特徴とする請求項10に記載の清掃装置。
【請求項12】
前記清掃用媒体は、温度の上昇によって、液体から気体に気化する媒体を含むことを特徴とする請求項1〜請求項9のうち何れか一項に記載の清掃装置。
【請求項13】
前記清掃用媒体は、液体窒素を含むことを特徴とする請求項12に記載の清掃装置。
【請求項14】
前記環境形成用気体は、ヘリウム、窒素及び空気のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の清掃装置。
【請求項15】
前記環境形成部材において前記光学面に対向する側の端部に設けられ、前記光学面に当接する緩衝部材をさらに備えることを特徴とする請求項1〜請求項14のうち何れか一項に記載の清掃装置。
【請求項16】
前記緩衝部材は、前記噴射部及び前記回収部を包囲するように形成されていることを特徴とする請求項15に記載の清掃装置。
【請求項17】
前記環境形成部材は、前記光学面の一部に対向して配置されることにより、前記チャンバ内の環境から分離された清掃用環境を形成するように構成されており、
前記環境形成部材を、前記光学部材に対して前記光学面に沿う方向に相対移動させる移動装置をさらに備えることを特徴とする請求項1〜請求項16のうち何れか一項に記載の清掃装置。
【請求項18】
前記光学部材は、所定のパターンが形成される反射型のマスクであり、
前記光学面は、前記マスクにおいて所定のパターンが形成されたパターン形成面であることを特徴とする請求項1〜請求項17のうち何れか一項に記載の清掃装置。
【請求項19】
前記光学部材は、反射型の光学部材であり、
前記光学面は、入射した放射ビームを反射する反射面であることを特徴とする請求項1〜請求項17のうち何れか一項に記載の清掃装置。
【請求項20】
少なくとも一つの第1光学部材を有し、該第1光学部材を介した放射ビームを所定のパターンが形成されたマスクに導く照明光学系と、
少なくとも一つの第2光学部材を有し、前記マスクを介した放射ビームを、前記第2光学部材を介して物体に導く投影光学系と、
請求項1〜請求項17のうち何れか一項に記載の清掃装置と、を備え、
前記清掃装置は、前記第1光学部材及び第2光学部材の少なくとも一方を清掃することを特徴とする露光装置。
【請求項21】
光学部材の光学面に形成された所定のパターンを物体に露光する露光装置において、
請求項1〜請求項17のうち何れか一項に記載の清掃装置を用いて、前記光学部材の光学面を清掃することを特徴とする露光装置。
【請求項22】
前記光学部材は、反射型のマスクであることを特徴とする請求項21に記載の露光装置。
【請求項23】
前記マスクを保持するマスク保持装置をさらに備えることを特徴とする請求項22に記載の露光装置。
【請求項24】
前記マスクのパターン形成面は、前記所定のパターンが形成される第1領域と、該第1領域の外周側に位置する第2領域とを有しており、
前記環境形成部材は、前記第1領域に対向して配置されることにより、前記チャンバ内の環境から分離された清掃用環境を形成することを特徴とする請求項22又は請求項23に記載の露光装置。
【請求項25】
前記環境形成部材は、前記マスクのパターン形成面の一部に対向して配置されることにより、前記チャンバ内の環境から分離された清掃用環境を形成するようになっており、
前記清掃装置を、前記パターン形成面に沿って前記マスクに対して相対的に移動させる移動装置をさらに備えることを特徴とする請求項22又は請求項23に記載の露光装置。
【請求項26】
前記マスクのパターン形成面は、前記所定のパターンが形成される第1領域と、該第1領域の外周側に位置する第2領域とを有しており、
前記マスク保持装置は、前記マスクにおいて前記第2領域の少なくとも一部を把持する把持部を有することを特徴とする請求項23に記載の露光装置。
【請求項27】
前記把持部は、前記マスクにおいて前記パターン形成面に沿う第1の方向における一方側を把持する第1把持部と、前記マスクにおいて前記第1の方向における他方側を把持する第2把持部とを有する請求項26に記載の露光装置。
【請求項28】
前記第1把持部及び前記第2把持部は、前記マスクのうち前記所定のパターンが形成された側のパターン形成面に当接する第1当接部と、前記マスクの前記パターン形成面とは反対側の面に当接する第2当接部とを有することを特徴とする請求項27に記載の露光装置。
【請求項29】
前記第1当接部及び第2当接部は、前記パターン形成面内において前記第1の方向と交差する第2の方向に延びるようにそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項28に記載の露光装置。
【請求項30】
チャンバ内に設けられる光学部材の光学面を清掃する清掃方法であって、
前記光学面の少なくとも一部に対向する位置に、前記チャンバ内の環境から分離された清掃用環境を形成する環境形成工程と、
前記清掃用環境内で前記光学面の少なくとも一部に清掃用媒体を噴射し、前記光学面の少なくとも一部に噴射された清掃用媒体と前記清掃用媒体によって前記光学面の少なくとも一部から除去された異物とを回収する清掃工程と、を有することを特徴とする清掃方法。
【請求項31】
物体の複数の領域に所定のパターンをそれぞれ形成する露光方法であって、
前記物体のうち、前記所定のパターンが形成される領域を変更する変更工程を有し、
前記変更工程を行う際に、請求項30に記載の清掃方法を用いて、前記光学部材の光学面を清掃することを特徴とする露光方法。
【請求項32】
物体に所定のパターンをそれぞれ形成する露光方法であって、
前記物体を交換する交換工程を有し、
前記交換工程を行う際に、請求項30に記載の清掃方法を用いて、前記光学部材の光学面を清掃することを特徴とする露光方法。
【請求項33】
リソグラフィ工程を含むデバイスの製造方法において、
前記リソグラフィ工程は、請求項20〜請求項29のうち何れか一項に記載の露光装置を用いることを特徴とするデバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−43992(P2012−43992A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184077(P2010−184077)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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