説明

清浄空気循環システム、及び清浄空気循環方法

【課題】清浄空気を循環させることで清浄空気生成装置から供給される清浄空気の供給量を低減し、かつ、清浄空気が供給される低露点空間の露点温度の最適化を図る。
【解決手段】清浄空気生成装置から送られる清浄空気が流れる清浄空気供給通路と、前記清浄空気供給通路を介して前記清浄空気が供給され、室内が低露点温度に保たれる低露点室と、前記低露点室から排出される排出清浄空気が流れ、前記清浄空気供給通路と合流する循環通路と、前記清浄空気供給通路と前記循環通路との合流部に設けられ、前記清浄空気生成装置から供給される清浄空気を前記低露点室へ向けて噴出する際の動圧により前記循環通路を流れる排出清浄空気を誘引する誘引部と、前記排出清浄空気の露点温度を変化させる要因に関する属性情報に応じて、前記循環通路を流れる排出清浄空気の流量を調整する第一調整部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清浄空気循環システム、及び清浄空気循環方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
低露点温度(例えば、−70度以下)の空気を製造する除湿装置として、吸着ロータ式、圧縮空気を用いたPSA(Pressure Swing Adsorption)方式、又は膜式といった除湿装置が知られている。これらの除湿装置のうち、ドライルーム(本出願人の登録商標)やその他の低露点室への供給空気やクリーンドライエアの製造装置としては、製造コストの観点から吸着ロータ式の除湿装置(例えば、特許文献1参照。)が多く用いられている。
【0003】
クリーンドライエア(CDA)は、通常の空気や、クリーンルームの空気と比較して高価である。そこで、価格低減の方法として、CDAを循環させること、又は再利用することが考えられている。CDAを循環させる技術としては、送風機を用いる技術(例えば、特許文献2参照。)や圧縮機を用いる技術が知られている。また、CDAを循環させるその他の技術として、エジェクタの吸入口に使用済み高清浄空気を吸入し、ノズルから噴射した補給用高清浄乾燥空気にて使用済み高清浄空気を駆動し、高清浄空気を循環させる技術が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開平11−188224号公報
【特許文献2】特開2000−70657号公報
【特許文献3】特開2001−141272号公報
【特許文献4】特開2001−38137号公報
【特許文献5】特開2004−141721号公報
【特許文献6】特開2007−185617号公報
【特許文献7】特許第3364708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クリーンドライエア(CDA)を循環させる技術として、送風機や圧縮機を用いる技術や、エジェクタを用いる技術が知られている。しかしながら、送風機や圧縮機を用いる技術では、露点温度の上昇やケミカル汚染が生じることが懸念される。また、CDAを循環させる際、循環するCDAの露点温度は、CDAを供給するCDA生成装置の運転状況等によって変化することが想定される。例えば、循環するCDAの露点温度、換言するとチャンバ内から排出された戻りCDAの露点温度は、CDA生成装置の運転開始時やCDAが供給されるチャンバ内部へ対象物(例えば、半導体や液晶素子等の電子部品)を出し入れする際に、高くなることが想定される。そして、露点温度が高い循環CDAを用いると、チャンバ内部の露点温度を最適な値に維持することができないといった問題を生ずる虞がある。
【0005】
本発明では、上記の問題に鑑み、清浄空気を循環させることで清浄空気生成装置から供給される清浄空気の供給量を低減し、かつ、清浄空気が供給される低露点空間の露点温度の最適化を図る技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、上述した課題を解決するために、清浄空気生成装置の運転状況や低露点空間の使用状況に応じて、低露点空間から排出される排出清浄空気の流量を調整することとした。
【0007】
詳細には、本発明の清浄空気循環は、清浄空気を生成する清浄空気生成装置から送られる清浄空気が流れる清浄空気供給通路と、前記清浄空気供給通路を介して前記清浄空気が供給され、室内が低露点温度に保たれる低露点室と、前記低露点室から排出される排出清浄空気が流れ、前記清浄空気供給通路と合流する循環通路と、前記清浄空気供給通路と前記循環通路との合流部に設けられ、前記清浄空気生成装置から供給される清浄空気を前記低露点室へ向けて噴出する際の動圧により前記循環通路を流れる排出清浄空気を誘引する誘引部と、前記排出清浄空気の露点温度を変化させる要因に関する属性情報に応じて、前記循環通路を流れる排出清浄空気の流量を調整する第一調整部と、を備える。
【0008】
本発明によれば、低露点室へ向けて噴出する際の動圧によって排出清浄空気を誘引することで、送風機や圧縮機を用いた場合に懸念される露点温度の上昇やケミカル汚染を生じることなく清浄空気を循環させることができる。その結果、清浄空気生成装置によって生成される清浄空気の供給量を低減することができる。また、属性情報に応じて、循環通路を流れる排出清浄空気の流量を調整することで、低露点室内の露点温度の最適化を図ることが可能となる。
【0009】
本発明の清浄空気循環システムは、清浄空気供給通路と、低露点室と、循環通路とを備える。清浄空気供給通路は、清浄空気生成装置から送られる清浄空気が流れる。清浄空気供給通路の一端は、清浄空気生成装置へ接続し、清浄空気供給通路の他端は、低露点室へ接続することができる。清浄空気生成装置は、低露点温度の空気を製造する除湿装置によって構成することができる。例えば、清浄空気生成装置は、既存の、ロータ式、圧縮空気を用いたPSA方式、膜式等の除湿装置を利用することができる。
【0010】
低露点室は、清浄空気が供給されることで、室内が低露点温度に保たれており、半導体を製造する製造場所や、製造後の部品等を保管する保管場所として利用することができる。
【0011】
循環通路は、低露点室から排出される排出清浄空気が流れる。循環通路は、一端を低露点室へ接続し、他端を清浄空気供給通路へ接続することができる。なお、本発明の循環通路は、排出清浄空気を排出した低露点室自身へ排出清浄空気を循環させる通路の他、排出清浄空気を排出した低露点室以外の低露点室へ排出清浄空気を循環させる通路としてもよい。
【0012】
誘引部は、清浄空気を低露点室へ向けて噴出する際の動圧を利用して循環通路を流れる排出清浄空気を誘引する。清浄空気の噴出は、ノズルによって実現することができる。誘引部は、例えば誘引ユニットとして構成することができる。具体的には、合流部にチャンバを設け、そのチャンバ内部にノズルを設置する。ノズルから所定の圧力下で清浄空気を噴出すると、ノズル周囲の空気が誘引され、誘引された排出清浄空気が噴出された清浄空気とともに低露点室内へ流れる。これにより、動圧を利用した誘引による、排出清浄空気の循環が可能となる。
【0013】
第一調整部は、属性情報に応じて、循環通路を流れる排出清浄空気の流量を調整する。第一調整部は、ダンパによって構成することができる。ダンパは、モータ等によって開閉可能なダンパ(例えば、モータダンパ)としてもよく、また、手動で開閉可能なダンパ(例えば、ボリュームダンパ)としてもよい。
【0014】
属性情報とは、排出清浄空気の露点温度を変化させる要因に関する情報である。より具体的には、属性情報は、前記清浄空気生成装置の運転情報と、前記低露点室の出入口の開閉情報と、前記低露点室内の露点温度情報と、のうち少なくともいずれか一つが含まれるものとすることができる。清浄空気生成装置の運転情報とは、清浄空気生成装置が起動し
たことを示す情報である。低露点室の出入口の開閉情報とは、低露点室の出入口が開閉されたことを示す情報である。低露点室内の露点温度情報とは、低露点室内の露点温度を示す情報である。清浄空気生成装置の起動時では、低露点室内の露点温度が基準値を満たしていないことが想定される。また、低露点室の出入口を開閉した際は、出入口から外部の空気が流入することで低露点室内の露点温度が上昇することが予想される。このように清浄空気生成装置の起動時や、低露点室の開閉時では、低露点室内の露点温度が基準値を満たしていない可能性があり、低露点室内の露点温度が高い場合には、そこから排出される排出清浄空気の露点温度も高くなることが懸念される。そこで、本発明では、清浄空気生成装置の起動時や、低露点室の開閉時、又は低露点室内の露点温度といった各情報に基づいて循環通路を流れる排出清浄空気の流量を調整することとした。これにより、本発明によれば、排出清浄空気を循環させるとともに、低露点空間内の露点温度の最適化を図ることが可能となる。
【0015】
なお、本発明の清浄空気循環システムは、前記第一調整部が前記循環通路を流れる排出清浄空気の流量を制限する際、前記清浄空気が前記誘引部へ流れる清浄空気補助通路と、前記第一調整部による排出清浄空気の流量調整に対応して、前記循環通路を流れる排出清浄空気の流量を調整する第二調整部と、を更に備える構成としてもよい。
【0016】
排出清浄空気の循環を制限した場合には、低露点空間へ供給される清浄空気が不足することが懸念される。そこで、本発明では、清浄空気補助通路と、第二調整部とを設け、排出清浄空気の循環が制限される場合には、排出清浄空気に替えて、清浄空気生成装置から送られる清浄空気を誘引することとした。このように、属性情報に応じて誘引部で誘引する空気を切り替え可能とすることで、排出清浄空気を循環と、低露点空間内の露点温度の最適化とを図ることが可能となる。なお、本発明では、第二調整部を第一調整部とは別の構成としたが、例えば、第一調整部を清浄空気補助通路と循環通路との合流部に設け、第一調整部に上記第二調整部の機能を持たせるようにしてもよい。
【0017】
なお、本発明の清浄空気循環システムにおいて、前記第一調整部及び前記第二調整部は、夫々がダンパであり、前記清浄空気循環システムは、前記属性情報に基づいて各ダンパを制御する制御部を更に備え、前記制御部は、前記清浄空気生成装置が起動される際、該起動から所定時間、前記排出清浄空気の循環を制限するように前記各ダンパを制御し、前記低露点室の出入口が開閉される際、該開閉から所定時間、排出清浄空気の循環を制限するように前記各ダンパを制御し、前記低露点室内の露点温度が基準値を上回る場合、排出清浄空気の循環を制限するように前記各ダンパを制御するようにしてもよい。
【0018】
本発明では、第一調整部及び第二調整部をダンパによって構成し、このダンパを制御する制御部を更に設けることで、誘引部で誘引される排出清浄空気の流量調整の自動化が実現されている。また、上記のようにダンパを制御することで、正確かつ効率的に、清浄空気生成装置から供給される清浄空気の供給量を低減し、かつ、低露点室内の露点温度の最適化を図る可能となる。
【0019】
また、本発明の清浄空気循環システムにおいて、前記清浄空気供給通路は、複数に分岐され、前記低露点室は、前記複数に分岐された清浄空気供給通路の夫々に接続され、前記循環通路は、前記夫々の低露点室に接続され、前記誘引部は、前記複数に分岐された清浄空気供給通路と前記夫々の低露点室に接続された循環通路との合流部に設けられ、前記第一調整部は、前記夫々の低露点室に接続された循環通路に設けられるようにしてもよい。
【0020】
本発明によれば、複数の低露点室の夫々において、清浄空気生成装置から供給する清浄空気の供給量の低減と、低露点室内の露点温度の最適化を図ることが可能となる。また、多系統の低露点空間に対して空気源である清浄空気生成装置を共用することで、設備コス
トの低減を図ることが可能となる。例えば、隣接する低露点室の出入口を同時に開閉すると、排出される排出清浄空気の循環を行うことができず、清浄空気生成装置から供給される清浄空気の供給量が増加する虞がある。そこで、本発明のように複数の低露点室を設ける場合には、夫々の低露点室の扉を順番に開閉することが好ましい。これにより、清浄空気生成装置から供給される清浄空気の供給量が一度に増加するといった現象を防止することができる。なお、上記のように清浄空気循環システムを複数の低露点室等によって構成する場合、上述した清浄空気補助通路や第二調整部といった構成も、複数配置することが好ましい。
【0021】
また、本発明の清浄空気循環システムは、前記低露点室から排出される排出清浄空気が流れ、該排出清浄空気を該低露点室の外部へ排出する排出通路と、前記排出通路と接続され、該排出通路を流れる排出清浄空気が供給されることで、該排出清浄空気を利用可能な排出清浄空気利用室と、を更に備える構成としてもよい。
【0022】
本発明によれば、排出通路により、排出清浄空気を低露点室の外部へ排出することが可能となる。また、排出通路に排出清浄空気利用室を接続することで、排出通路を流れる排出清浄空気の利用が可能となる。なお、排出通路には、切替部等を設け、排出清浄空気の排出清浄空気利用室への供給を切り替え可能とすることが好ましい。例えば、低露点室を所定機器のクリーンストッカとして利用し、排出清浄空気利用室を所定機器のメンテナンス用低露点ブースとして利用することができる。低露点室を更に設けてもよい。なお、例えば、低露点室を更に設けた場合において、その低露点室を、溶剤の発生がある作業のように、室内の清浄空気が劣化する虞がある用途に利用する場合には、排出清浄空気を循環させずに、全て外部へ排出することが好ましい。
【0023】
また、本発明の清浄空気循環システムは、前記清浄空気供給通路から分岐された第二清浄空気供給通路と、前記第二清浄空気供給通路を介して前記清浄空気が供給される第二低露点室と、前記第二低露点室から排出される排出清浄空気が流れる第二排出通路であって、前記低露点室及び前記第二露点室よりも室内の露点温度が高い第三低露点室へ該第二低露点室から排出される排出清浄空気を導く第二排出通路と、を更に備える構成としてもよい。
【0024】
本発明によれば、第二低露点室から排出される排出清浄空気の有効利用を図ることができる。低露点室が複数存在する場合、低露点室の用途に応じて必要とされる低露点室内の露点温度が異なる。そこで、本発明では、第二露点室よりも室内の露点温度が高い第三露点室へ、第二露点室から排出される排出清浄空気を導くこととした。
【0025】
また、本発明の清浄空気循環システムは、前記低露点室は、室内の清浄空気が汚染されない清浄領域と、室内の清浄空気が汚染される汚染領域と、を有し、前記清浄領域から排出される排出清浄空気は、前記循環通路を介して前記低露点室へ循環され、前記汚染領域から排出される排出清浄空気は、該清浄空気循環システムの外部へ排出されるようにしてもよい。
【0026】
本発明は、一つの低露点空間を多目的で利用することを想定するものである。汚染領域から排出される排出清浄空気は、清浄空気循環システムの外部へ排出し、清浄領域から排出される排出清浄空気のみ循環させることで、清浄空気循環システムをより効率よく運転することが可能となる。
【0027】
以上、本発明の清浄空気循環システムについて説明したが、本発明は、上述した清浄空気循環システムと同等の機能及び作用効果を有する清浄空気循環方法とすることができる。具体的には、本発明は、清浄空気を生成する清浄空気生成装置から送られる清浄空気が
流れる清浄空気供給通路と、前記清浄空気供給通路を介して前記清浄空気が供給され、室内が低露点温度に保たれる低露点室と、前記低露点室又は前記低露点室と隣接する低露点室から排出される排出清浄空気が流れ、前記清浄空気供給通路と合流する循環通路と、を備える清浄空気循環システムにおいて清浄空気を循環させる清浄空気循環方法であって、前記清浄空気供給通路と前記循環通路との合流部において、前記清浄空気生成装置から供給される清浄空気を前記低露点室へ向けて噴出する際の動圧により前記循環通路を流れる排出清浄空気を前記清浄空気供給通路へ誘引し、前記排出清浄空気の露点温度を変化させる要因に関する属性情報に応じて、前記循環通路を流れる排出清浄空気の流量を調整する清浄空気循環方法である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、清浄空気を循環させることで清浄空気生成装置から供給される清浄空気の供給量を低減し、かつ、清浄空気が供給される低露点室の露点温度の最適化を図る技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、本発明の清浄空気循環システムの実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施形態においては、露点温度−70度以下の超低湿度空気(以下、CDA又はクリーンドライエアとする。)を循環させるCDA循環システムを例に説明する。
【0030】
(第一実施形態)
<構成>
図1は、第一実施形態のCDA循環システムの構成を示す。同図に示すように、本実施形態のCDA循環システムは、CDA供給ダクト11、給気チャンバ2、誘引ユニット3、低露点室4と、循環ダクト13と、排出ダクト12と、補助ダクト14と、制御ユニット7と、モータダンパ51、52、53とによって構成されている。以下、詳細に説明する。
【0031】
CDA供給ダクト11(本発明の清浄空気供給通路に相当する。)は、CDA生成装置1から送られるCDAが流れる。CDA供給ダクト11は、一端がCDA生成装置1へ接続され、他端が給気チャンバ2へ接続されている。なお、CDA供給ダクト11、循環ダクト13等の各ダクトは、既存のダクトを用いることができる。断面形状や材質等は、特に限定されない。
【0032】
CDA生成装置1(本発明の清浄空気生成装置に相当する。)は、露点温度−70度以下の超低湿度空気を生成する。CDA生成装置1で生成されるCDAは、ガス不純物(分子汚染物質)が除去された空気である。塵埃は、CDA生成装置1の内部又は外部に設けられたろ過フィルタによって除去される。ろ過フィルタとしては、HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)が例示され、例えば低露点室4の天井にを取り付けることができる。CDA生成装置1は、既存の清浄空気生成装置によって構成することができる。例えば、CDA生成装置1には、シリカゲル又は金属珪酸塩を有する回転自在なロータ内に処理空気を通過させて処理空気中の湿度を低下させる、ロータ式の清浄空気生成装置を用いることができる(例えば、特開2001−38137号公報、特開2004−141721号公報参照。)。また、CDA生成装置1には、ガス精製、加熱再生、冷却工程を複数の吸着塔を切り替えながら行って、連続的に精製ガスを供給する、圧力スイング式の清浄空気生成装置を用いてもよい(例えば、特開2007−185617号公報参照。)。なお、圧力スイング式の清浄空気生成装置を用いる場合には、必要に応じてCDAの圧力を適宜調整すればよい。
【0033】
給気チャンバ2は、ノズル32で噴出する際に用いるCDAが滞留する。給気チャンバ2の一側面には、CDA供給ダクト11が接続され、CDAがCDA供給ダクト11を介して給気チャンバ2内へ流れ込む。また、CDA供給ダクト11の延長線上に位置する、CDA供給ダクト11が接続されている側面と対向する給気チャンバ2上の側面には、補助ダクト14の一端が接続されている。更に、給気チャンバ2の側面であって、CDA供給ダクト11が接続される側面と補助ダクト14が接続される側面との双方の側面と隣接する側面には、ノズル32の吸入口が給気チャンバ2の内部に突出するように設けられている。CDA供給ダクト11の軸方向と、ノズル32の軸方向とは略直交している。なお、補助ダクト14やノズル32の詳細については、後述する。
【0034】
誘引ユニット3(本発明の誘引部に相当する。)は、給気チャンバ2と隣接し、誘引チャンバ31とノズル32とによって構成されている。給気チャンバ2と誘引チャンバ31とは、ノズル32を介して連通しており、給気チャンバ2内に位置するノズル32の吸入口から吸入されたCDAが、誘引チャンバ31内に位置するノズル32の噴出口から誘引チャンバ31内へ噴出される。ノズル32の吹出方向の誘引チャンバ31の側面には、給気口41が設けられており、給気口41を介して、誘引チャンバ31と低露点室4、より具体的には誘引チャンバ31と低露点室4の天井チャンバ48aとが連通している。その結果、ノズル32から噴出されたCDAが、低露点室4内へ流入する。また、ノズル32の噴出方向と直交する方向に位置する誘引チャンバ31の側面には、循環ダクト13を流れる空気(循環制御時は、戻りCDA。循環規制制御時は、CDA。循環制御、循環規制制御については、後述する。)を取り込む吸入口33が設けられている。これにより、ノズル32から噴出されたCDAの動圧により、循環ダクト13を流れる空気が誘引される。なお、本実施形態では、ノズル32部分における給気の圧力が500Pa程度に設定されている。図1の誘引ユニット3内の矢印は、空気の流れを示す。
【0035】
低露点室4は、その内部がCDAによって満たされ、半導体、リチウムイオン電池、有機EL、水晶振動子の製造場所、これら電子部品や電子機器の保管場所(ストッカ)等として利用することができる。低露点室4は、内部の露点温度が一定に保たれるように密閉空間となっている。低露点室4の上部には給気口41が設けられ、ノズル32から噴出されたCDAと循環ダクト13を経て誘引作用により低露点室4から戻された空気が給気口41を介して低露点室4内へ供給される。また、低露点室4の下部に設けられた床下チャンバ48bには第一排気口42と第二排気口43が設けられ、低露点室4内を通過したCDAが外部へ排出可能である。低露点室4の側面には、出入口44が設けられ、作業者の出入りや電子部品の搬入が可能である。なお、ノズル32から500Pa程度の圧力で噴出されたCDAは、天井チャンバ48a、天井45、電子部品等の生産や保管のための空間49、床46、床下チャンバ48bを順次通過し、第一排出口42又は第二排出口43へ流れる。なお、天井45、床46は、共にパンチング鋼板によって構成されており、低露点室4を通過するCDAがより層流になるように工夫されている。
【0036】
排出ダクト12(本発明の排出通路に相当する。)は、一端が第一排気口42に接続され、第一排気口42から排出される排出CDAが流れる。なお、排出ダクト12の他端は、CDA循環システム1の外部で開放してもよく、また、他の低露点室へ接続してもよい。排出ダクト12には、第一モータダンパ51が設けられており、排出ダクト12を流れる排出CDAの流量調整が可能である。
【0037】
循環ダクト13(本発明の循環通路に相当する。)は、一端が第二排気口43に接続され、他端が誘引チャンバ31の吸入口33に接続され、第二排気口43から排出される戻りCDAが内部を流れる。戻りCDAも低露点室4から排出されるCDAであるが、第一排気口42から排出される排出CDAと区別するため、循環されるCDAを戻りCDAと呼ぶこととする。また、循環ダクト13の上流側(第二排出口の近傍)には、第二モータ
ダンパ52が設けられ、循環ダクト13を流れる戻りCDAの流量調整が可能である。換言すると、第二モータダンパ52により、誘引ユニット3における戻りCDAの誘引を制限することができる。
【0038】
補助ダクト14(本発明の清浄空気補助通路に相当する。)は、一端が給気チャンバ2と接続され、他端が循環ダクト13と接続されている。補助ダクト14は、その内部をCDA生成装置1によって生成されたCDAがノズル32と並列関係で流れる。補助ダクト14の上流側(給気チャンバ2との接続部近傍)には、第三モータダンパ53が設けられ、補助ダクト14を流れるCDAの流量調整が可能である。なお、補助ダクト14は、循環ダクト13を流れる戻りCDAの循環が制限された際に、低露点室4へのCDAの供給量を補完すべく、補助的に用いられる。
【0039】
第一モータダンパ51、第二モータダンパ52(本発明の第一調整部に相当する。)、第三モータダンパ53(本発明の第二調整部に相当する。)は、夫々が設置されたダクトを流れるCDAや戻りCDAの流量を調整する。本実施形態では、これらのモータダンパが、制御ユニット7と電気的に接続され、開閉動作や開度調整が制御ユニット7によって制御される。
【0040】
制御ユニット7(本発明の制御部に相当する。)は、運転情報、開閉情報、露点温度情報等の属性情報に基づいて、各モータダンパを制御する。制御ユニット7は、中央演算処理装置(CPU)、メモリ等を含むコンピュータにより構成することができる。制御ユニット7は、内部のコンピュータが、運転情報等を電気信号として取得し、メモリに格納された所定の処理に従って各モータダンパを制御する。運転情報とは、CDA生成装置1が起動したことを示す情報であり、開閉情報とは、低露点室4の出入口44が開閉されたことを示す情報であり、露点温度情報とは、低露点室4内の露点温度を示す情報である。運転情報は、例えばCDA生成装置1のスイッチと制御ユニット7とを電気的に接続することで取得可能である。また、開閉情報は、出入口44付近に開閉センサを設けることで取得可能である。露点温度情報は、低露点室4の内部に露点温度センサを設けることで取得可能である。このように各センサと制御ユニット7とを電気的に接続することで開閉情報や露点温度情報を取得することができる。
【0041】
<運転方法>
次に上述したCDA循環システム100の運転方法について、制御ユニット7による各モータダンパの制御と共に説明する。
【0042】
図2は、CDA循環システムの運転制御フローを示す。ステップS01では、運転情報、開閉情報、露点温度情報等の属性情報がコンピュータに入力される。すなわち、各種センサを通じて取得された情報が、電気的に接続されたコンピュータに入力される。属性情報の入力が完了するとステップS02へ進む。
【0043】
ステップS02では、取得した情報に基づいて各モータダンパ51、52、53がコンピュータによって制御される。具体的には、入力された運転情報に基づいてCDA生成装置1が起動されたと判断された場合、第一モータダンパ51の開度が100%、第二モータダンパ52の開度が0%、第三モータダンパ53の開度が100%となるように、各モータダンパがコンピュータによって制御される(以下、循環規制制御ともいう。)。CDA生成装置1の起動時は、低露点室4内の露点温度が基準値を満たしていないことが想定され、このような状況下で低露点室4から排出される戻りCDAを循環させると、低露点室4内の露点温度を最適化することができないことが懸念される。そこで、CDA生成装置1の起動時は、第二モータダンパ52を全閉し、戻りCDAの誘引を制限し、低露点室4から排出されるCDAを排出ダクト12を通じて排出CDAとして外部へ排出すること
とした。なお、戻りCDAの循環を制限すると、低露点室4へのCDAの供給量を十分に確保できない虞がある。そこで、第三モータダンパ53を全開して、補助ダクト14にCDAを流し、ノズル32で誘引させる空気をCDAとすることとした。これにより、CDA生成装置1の起動時においても、低露点室4内の露点温度の最適化を実現することが可能となる。
【0044】
また、出入口44が開閉されると出入口44から外部の空気が流入し、低露点室4内の露点温度が上昇することが予想され、このような状況下で低露点室4内から排出される戻りCDAを循環させると、低露点室4内の露点温度を最適化することができない。また、実際に低露点室4内の露点温度を計測し、露点温度が基準値を満たしていない場合においても、低露点室4から排出される戻りCDAを循環させることは好ましくない。そこで、開閉情報に基づいて低露点室4の出入口44が開閉されたと判断された場合や、露点温度情報に基づいて低露点室4内の露点温度が基準値を満たしていないと判断された場合にも、上記と同様の制御が実行される。その結果、低露点室4内の露点温度を常に最適に保つことが可能となる。なお、低露点室4内の基準値は、低露点室4の使用目的に応じて予め設定することができる。
【0045】
一方、第一実施形態のCDA循環システム100は、低露点室4から排出される戻りCDAを循環させることで、CDA生成装置1で生成されたCDAの供給量を低減することを特徴とする。従って、上記以外の場合、つまり、CDA生成装置1の起動時、出入口44の開閉時、又は低露点室4内の露点温度が基準値を満たしていない場合以外には、第一モータダンパ51の開度が20%、第二モータダンパの開度が100%、第三モータダンパの開度が0%となるように、各モータダンパがコンピュータによって制御される(以下、循環制御ともいう。)。その結果、低露点室4から排出される戻りCDAは、循環ダクト13を流れ、この循環ダクト13を流れる戻りCDAがノズル32の動圧によって誘引されることで、戻りCDAが循環する。これにより、CDA生成装置1から供給するCDAの供給量を低減することが可能となる。なお、第一モータダンパ51の開度を20%とした理由は以下の理由による。すなわち、誘引ユニット3内の誘引風量と給気風量との比を4:1と仮定し、循環ダクト13の口径を給気チャンバ2へのCDA供給ダクト11の口径の1/4とする前提によるものである。誘引風量と給気風量との比は、ノズル32の形状や口径等の設計によって異なる。
【0046】
上記循環制御と循環規制制御の切り替えは、例えば以下のように行えばよい。低露点室4内の露点温度に基づいて循環規制制御を実行する場合には、低露点室4内の露点温度が基準値を満たした時点で、循環規制制御から循環制御へ移行すればよい。一方、運転情報や開閉情報に基づいて循環規制制御を実行する場合には、例えば所定時間経過後に循環規制制御から循環制御へ移行すればよい。所定時間は、CDA生成装置1の起動時の低露点室4内の露点温度変化や出入口44の開閉による低露点室4内の露点温度変化を実験等によって予め求め、実験結果を考慮して適宜設定することができる。
【0047】
なお、上記循環制御と循環規制制御の切り替えは、比例制御としてもよい。比例制御とは、第一モータダンパ51、第二モータダンパ52、第三モータダンパ53の開度を比例的に制御するものである。つまり、露点温度に基づく制御では、露点温度に応じて、CDA生成装置1の起動時や出入口44の開閉に基づく制御では、起動や開閉から一定時間の間で、第一モータダンパ51の開度を全開から徐々に閉じる。一方、第二ダンパ52は、全閉から徐々に開き、第三ダンパは、全開から徐々に閉じる。このように、循環制御と循環規制制御の切り替えを比例制御とすることで、切り替えをより円滑に実行することができ、低露点室4へ供給されるCDAの供給量を常に一定に保つことができる。また、低露点室4を通過するCDAを常に層流とすることができる。
【0048】
<効果>
以上説明した第一実施形態のCDA循環システム100によれば、低露点室4へ向けてCDAを噴出するノズル32の噴出時の動圧(本実施形態では、500Pa程度)によって、循環ダクト13を流れる戻りCDAを誘引して、戻りCDAを循環させることができる。その結果、送風機や圧縮機を用いた場合に懸念される露点温度の上昇やケミカル汚染を生じることなく戻りCDAを循環させることが可能となる。これにより、CDA生成装置1から供給されるCDAの供給量を低減することができる。また、属性情報に応じて、循環規制制御と循環制御とを切り替えることで、低露点室4内の露点温度の最適化を図ることが可能となる。なお、本実施形態では、循環CDAの20%程度のCDAを供給することで、低露点室4内の露点温度の最適化を実現することができる。換言すると、一つのCDA循環システムで、CDAの供給量を従来の20%まで低減することが可能となる。
【0049】
(第二実施形態)
図3は、第二実施形態のCDA循環システムの構成を示す。第二実施形態のCDA循環システム101は、低露点室4に加えて第二低露点室4aを備えており、低露点室4には、第二低露点室4aから排出される戻りCDAが循環される。換言すると、第二実施形態のCDA循環システム101では、低露点室4と隣接する第二低露点室4から排出される戻りCDAがカスケード的に低露点室4へ供給される。なお、同一の構成については、共通番号を付すことでその詳細な説明を省略する。また、符号の末尾に付されたローマ字は、実施形態に応じて付したものであり、共通番号が付された構成は、同等の機能を有するものとし、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する他の実施形態においても同様とする。
【0050】
第二低露点室4aには、CDA供給ダクト11aが接続され、図示しないCDA生成装置によって生成されるCDAが供給される。第二低露点室4aの基本的な構成は低露点室4と同様であり、第二低露点室4aも、半導体の製造場所や保管場所として利用することができる。また、第二低露点室4aには、排出ダクト12aが接続されており、第二低露点室4aから排出される排出CDAの排出が可能である。また、第二低露点室4aには、循環ダクト13aが接続され、第二低露点室4aから排出される戻りCDAを低露点室4へ供給可能である。なお、CDA供給ダクト11a、排出ダクト12a、循環ダクト13aの夫々には、ボリュームダンパ63a、ボリュームダンパ61a、ボリュームダンパ62が設けられており、各ダクト内を流れるCDAの流量調整が可能である。
【0051】
低露点室4には、誘引ユニット3と排出ダクト12が接続されている。また、誘引ユニット3には、給気チャンバ2が接続され、給気チャンバ2にはCDA供給ダクト11が接続されている。なお、第二実施形態においても、誘引ユニット3は、誘引チャンバ31とノズル32とを備えており、基本的には第一実施形態の誘引ユニット3と同様の構成を有している。但し、第二実施形態では、誘引ユニット3の吸入口33に第二低露点室4aから排出される戻りCDAが流れる循環ダクト13aが接続されている点で、第一実施形態とは異なる。その結果、第二実施形態のCDA循環システム101では、第二低露点室4aから排出される戻りCDAが、誘引ユニット3によって誘引される。また、CDA供給ダクト11、排出ダクト12には、夫々ボリュームダンパ63、ボリュームダンパ61が設けられており、各ダクト内を流れるCDAの流量が調整可能である。
【0052】
なお、第二実施形態のCDA循環システム101では、各ダンパがモータダンパではなく、ボリュームダンパによって構成されている。従って、手動により各ダクトを流れるCDAの流量を調整することができる。流量の調整方法は、第一実施形態における循環制御及び循環規制制御に準じて行えばよい。すなわち、CDA生成装置の起動時、第二低露点室4aの出入口44aの開閉時、第二低露点室4aの露点温度が基準値を満たしていない場合には、ボリュームダンパ63aの開度が100%、ボリュームダンパ61aの開度が
100%、ボリュームダンパ62の開度が0%、ボリュームダンパ63の開度が100%、ボリュームダンパ61の開度が100%となるように、各ボリュームダンパを調整する。また、上記以外の場合、つまり、第二低露点室4aから排出される戻りCDAを低露点室4へカスケード的に供給する場合には、ボリュームダンパ63aの開度が100%、ボリュームダンパ61aの開度が20%、ボリュームダンパ62の開度が100%、ボリュームダンパ63の開度が20%、ボリュームダンパ61の開度が100%となるように、各ボリュームダンパを調整する。
【0053】
第二実施形態のCDA循環システム101によれば、第二低露点室4aから排出される戻りCDAを低露点室4において有効利用することができ、CDA生成装置からのCDA供給量を低減することができる。また、属性情報に応じて各ボリュームダンパの開度を調整することで、低露点室4、第二低露点室4aの室内の露点温度の最適化を実現することができる。なお、第二実施形態において設置した各ボリュームダンパをモータダンパとし、制御ユニットを設け、制御ユニット内のコンピュータによって、各モータダンパを制御するようにしてもよい。
【0054】
(第三実施形態)
図4は、第三実施形態のCDA循環システムの構成を示す。第三実施形態のCDA循環システム102は、第一実施形態で説明した低露点室4が10室設けられ、夫々の低露点室4に戻りCDAを循環に必要な構成(CDA供給ダクト11、給気チャンバ2、誘引ユニット3、循環ダクト13と、排出ダクト12と、補助ダクト14、モータダンパ)が設けられている。本実施形態における低露点室4は、特にロボット化された搬送工程におけるストッカとして利用することができる。低露点室4は、搬送スペース99を挟んで両サイドに5室ずつ、合計10室設けられている。なお、本実施形態(図3)及び後述する第五実施形態(図6)では、低露点室4が上下方向に並んで描かれているが、複数の低露点室は、高さ方向に配置してもよく、また、例えば同一階において水平方向に並列に配置してもよい。
【0055】
なお、図示では省略するが、各モータダンパに制御ユニットを電気的に接続することで、各モータダンパを制御ユニット内のコンピュータによって実行することができる。従って、第三実施形態のCDA循環システム101の運転方法は、第一実施形態のCDA循環システム100と同様に行うことができる。すなわち、属性情報をコンピュータに入力し、属性情報に基づいて循環制御・循環規制制御を実行すればよい。
【0056】
ここで、第三実施形態のCDA循環システム102のように複数の循環経路が存在する場合には、例えば各低露点室の出入口を複数同時に開閉すると、CDA生成装置1から供給するCDAの供給量が急激に増加する虞がある。そこで、第三実施形態のように複数の循環経路が存在する場合には、各低露点室の出入口の開閉を順次行うことが好ましい。例えば、各出入口付近にディスプレイを設け、他の出入口の開閉状況を表示するようにしてもよい。また、制御ユニットのコンピュータにより、同時に複数の出入口の扉が開かないよう、開閉自体を規制するように制御してもよい。これにより、CDA生成装置1から供給するCDAの供給量の急激な増加を抑制することが可能となる。
【0057】
(第四実施形態)
図5は、第四実施形態のCDA循環システムの構成を示す。第四実施形態のCDA循環システム103は、第一実施形態のCDA循環システム100の構成に加えて、メンテナンス用低露点ブース4c、と第三低露点室4dを備えている。メンテナンス用低露点ブース4cは、例えば真空チャンバのように、装置の塵埃による汚染を嫌うだけでなく水分の付着を嫌う装置の保守として用いることができる。メンテナンス用低露点ブース4cは、排出ダクト12から分岐された分岐排出ダクト12cと接続され、ボリュームバルブ61
、61cを開放することで低露点室4から排出される戻りCDAが供給される。低露点室4から排出される戻りCDAは、排出ダクト12と循環ダクト13とに流れるが、本実施形態では、このうち排出ダクト12を流れる戻りCDAを更に有効利用することができる。
【0058】
なお、第三低露点室4dは、例えば溶剤の発生がある工程等、CDAを劣化させる虞がある用途に用いることができる低露点室である。そこで、第三低露点室4dでは、排出CDAを循環させずに全て外部へ排出している。このように、低露点室の用途に応じて循環ダクトや誘引ユニット等を適宜配置することで、より効率性のよいCDA循環システムを提供することができる。
【0059】
(第五実施形態)
図6は、第五実施形態のCDA循環システムの構成を示す。第五実施形態のCDA循環システム104は、5室の低露点室(第一低露点室4eから第五低露点室4i)を有している。第一低露点室4eから第三低露点室4gは、クリーンレベルが高い低露点室であり、第四低露点室4h及び第五低露点室4iは、第一低露点室4eから第三低露点室4gに比べてクリーンレベルが低い低露点室である。第一低露点室4eには、循環ダクト13eや誘引ユニット3eといった排出される戻りCDAを、排出した低露点室へ循環させるのに必要な構成が設けられている。第一低露点室4eには、第一実施形態の低露点室4に相当する構成が設けられている。
【0060】
第二低露点室4fには、第二低露点室4fから排出される戻りCDAを第四低露点室4hへ循環させるための循環ダクト13fが設けられており、クリーンレベルが高いCDAを第二低露点室4fよりもクリーンレベルが低い第四低露点室4hへカスケード的に供給することが可能である。第三低露点室4gも、基本的には第二低露点室4fと同様の構成を有しており、第三低露点室4gから排出される戻りCDAを第五低露点室4iへ循環させるための循環ダクト13gが設けられている。これにより、第三低露点室4gから排出される戻りCDAを、第三低露点室4gよりもクリーンレベルが低い第五低露点室4iへカスケード的に供給することが可能である。第四低露点室4h及び第五低露点室4iには、夫々誘引ユニット3h、3iが接続されており、第二低露点室4f又は第三低露点室4gから排出される戻りCDAを誘引し、夫々の室内へ供給することが可能である。
【0061】
このように、第五実施形態のCDA循環システム104によれば、各低露点室のクリーンレベルに応じて循環ダクトや誘引ユニット等を適宜配置することで、より効率性のよいCDA循環システムを提供することができる。なお、上記におけるクリーンとは、粒子状の塵埃ではなく、ガス・分子レベルの汚染物質が吸着されて除去されたレベルを意味する。そして、ガス・分子レベルの汚染物質が十分に除去されたクリーンレベルが高い低露点室から排出されるCDAを戻りCDAとしてクリーンレベルが低い低露点室へ循環させることができる。なお、室内の湿度が異なる低露点室が複数ある場合にも同様の構成とすることができる。すなわち、湿度が低く管理されるべき低露点室では、他の低露点室から排出されるCDAの導入はせず、湿度が低く管理されるべき低露点室と比べると高い湿度が許容される低露点室では他の低露点室からのCDAを導入してもよい。
【0062】
(第六実施形態)
図7は、第六実施形態のCDA循環システムの構成を示す。第六実施形態のCDA循環システム105は、第一実施形態のCDA循環システム100を基本構成とし、低露点室4jが4つの領域に区分けされている。具体的には、第六実施形態のCDA循環システム105では、低露点室4jが、CDAを汚染する虞がある汚染域471とCDAを汚染する虞が少ない清浄域472とを有している。汚染域471には、排出される戻りCDAをCDA循環システム105の外部へ排出する排出ダクト12jが接続されている。一方、
清浄域472には、誘引ユニット3jへ戻りCDAを導く循環ダクト13jが接続されている。なお、上記汚染域471とは、例えば溶剤を用いる作業工程のように、室内のCDAが汚染される作業が行われることで、排出されるCDAが汚染される可能性あるエリアである。一方、清浄域472は、溶剤等を用いない作業工程が行われるので、排出されるCDAが汚染されないエリアである。従って、本実施形態のCDA循環システムは、工程によって排出されるCDAの性状が異なる施設等に好適に用いることができる。
【0063】
第六実施形態のCDA循環システム105によれば、一つの低露点室を複数の用途に使用することができる。そして、CDA生成装置から供給されるCDAの供給量を必要最小限に抑えると共に、区分けされた各領域内の露点温度の最適化を実現することができる。
【0064】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明のCDA循環システムはこれらに限らず、可能な限りこれらの組合せを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】第一実施形態のCDA循環システムの構成を示す。
【図2】CDA循環システムの運転制御フローを示す。
【図3】第二実施形態のCDA循環システムの構成を示す。
【図4】第三実施形態のCDA循環システムの構成を示す。
【図5】第四実施形態のCDA循環システムの構成を示す。
【図6】第五実施形態のCDA循環システムの構成を示す。
【図7】第六実施形態のCDA循環システムの構成を示す。
【符号の説明】
【0066】
1・・・CDA生成装置
2・・・給気チャンバ
3・・・誘引ユニット
4・・・低露点室
7・・・制御ユニット
12・・・排出ダクト
13・・・循環ダクト
14・・・補助ダクト
31・・・誘引チャンバ
32・・・ノズル
33・・・吸入口
41・・・給気口
42・・・第一排気口
43・・・第二排気口
44・・・出入口
45・・・天井
46・・・床
51・・・第一モータダンパ
52・・・第二モータダンパ
53・・・第三モータダンパ
100・・・CDA循環システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
清浄空気を生成する清浄空気生成装置から送られる清浄空気が流れる清浄空気供給通路と、
前記清浄空気供給通路を介して前記清浄空気が供給され、室内が低露点温度に保たれる低露点室と、
前記低露点室から排出される排出清浄空気が流れ、前記清浄空気供給通路と合流する循環通路と、
前記清浄空気供給通路と前記循環通路との合流部に設けられ、前記清浄空気生成装置から供給される清浄空気を前記低露点室へ向けて噴出する際の動圧により前記循環通路を流れる排出清浄空気を誘引する誘引部と、
前記排出清浄空気の露点温度を変化させる要因に関する属性情報に応じて、前記循環通路を流れる排出清浄空気の流量を調整する第一調整部と、
を備える清浄空気循環システム。
【請求項2】
前記属性情報には、前記清浄空気生成装置の運転情報と、前記低露点室の出入口の開閉情報と、前記低露点室内の露点温度情報と、のうち少なくともいずれか一つが含まれる、請求項1に記載の清浄空気循環システム。
【請求項3】
前記第一調整部が前記循環通路を流れる排出清浄空気の流量を制限する際、前記清浄空気が前記誘引部へ流れる清浄空気補助通路と、
前記第一調整部による排出清浄空気の流量調整に対応して、前記循環通路を流れる排出清浄空気の流量を調整する第二調整部と、を更に備える請求項1又は請求項2に記載の清浄空気循環システム。
【請求項4】
前記第一調整部及び前記第二調整部は、夫々がダンパであり、
前記清浄空気循環システムは、前記属性情報に基づいて各ダンパを制御する制御部を更に備え、
前記制御部は、
前記清浄空気生成装置が起動される際、該起動から所定時間、前記排出清浄空気の循環を制限するように前記各ダンパを制御し、
前記低露点室の出入口が開閉される際、該開閉から所定時間、排出清浄空気の循環を制限するように前記各ダンパを制御し、
前記低露点室内の露点温度が基準値を上回る場合、排出清浄空気の循環を制限するように前記各ダンパを制御する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の清浄空気循環システム。
【請求項5】
前記清浄空気供給通路は、複数に分岐され、
前記低露点室は、前記複数に分岐された清浄空気供給通路の夫々に接続され、
前記循環通路は、前記夫々の低露点室に接続され、
前記誘引部は、前記複数に分岐された清浄空気供給通路と前記夫々の低露点室に接続された循環通路との合流部に設けられ、
前記第一調整部は、前記夫々の低露点室に接続された循環通路に設けられる、請求項1又は請求項2に記載の清浄空気循環システム。
【請求項6】
前記低露点室から排出される排出清浄空気が流れ、該排出清浄空気を該低露点室の外部へ排出する排出通路と、
前記排出通路と接続され、該排出通路を流れる排出清浄空気が供給されることで、該排出清浄空気を利用可能な排出清浄空気利用室と、を更に備える請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の清浄空気循環システム。
【請求項7】
前記清浄空気供給通路から分岐された第二清浄空気供給通路と、
前記第二清浄空気供給通路を介して前記清浄空気が供給される第二低露点室と、
前記第二低露点室から排出される排出清浄空気が流れる第二排出通路であって、前記低露点室及び前記第二露点室よりも室内の露点温度が高い第三低露点室へ該第二低露点室から排出される排出清浄空気を導く第二排出通路と、を更に備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の清浄空気循環システム。
【請求項8】
前記低露点室は、室内の清浄空気が汚染されない清浄領域と、室内の清浄空気が汚染される汚染領域と、を有し、
前記清浄領域から排出される排出清浄空気は、前記循環通路を介して前記低露点室へ循環され、
前記汚染領域から排出される排出清浄空気は、該清浄空気循環システムの外部へ排出される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の清浄空気循環システム。
【請求項9】
清浄空気を生成する清浄空気生成装置から送られる清浄空気が流れる清浄空気供給通路と、前記清浄空気供給通路を介して前記清浄空気が供給され、室内が低露点温度に保たれる低露点室と、前記低露点室又は前記低露点室と隣接する低露点室から排出される排出清浄空気が流れ、前記清浄空気供給通路と合流する循環通路と、を備える清浄空気循環システムにおいて清浄空気を循環させる清浄空気循環方法であって、
前記清浄空気供給通路と前記循環通路との合流部において、前記清浄空気生成装置から供給される清浄空気を前記低露点室へ向けて噴出する際の動圧により前記循環通路を流れる排出清浄空気を前記清浄空気供給通路へ誘引し、
前記排出清浄空気の露点温度を変化させる要因に関する属性情報に応じて、前記循環通路を流れる排出清浄空気の流量を調整する
清浄空気循環方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−186127(P2009−186127A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28649(P2008−28649)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)
【Fターム(参考)】