説明

減圧式深層組織閉合システム及び方法

深層組織に閉合力を適用するための減圧式深層組織閉合デバイスが、第1の複数の開口部で形成され第1の側及び第2の内側に面した側を有する収縮性基質を有する。収縮性基質は、深層組織の近位に配置するためのものである。減圧源が収縮性基質に流体結合されており、収縮性基質に減圧を送出するよう動作し得る。減圧下では、収縮性基質が、収縮性基質に隣接する深層組織を把持し、深層組織に閉合力を与える。また、システム及び方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本発明は、2008年10月29日提出の米国暫定特許出願第61/109,448号「Reduced−Pressure,Deep−Tissue Closure System and Method」、2008年10月29日提出の米国暫定特許出願第61/109,486号「Reduced−Pressure,Abdominal Treatment System and Method」、2008年10月29日提出の米国暫定特許出願第61/109,390号「Open−Cavity,Reduced−Pressure Wound Dressing and System」、及び2008年10月29日提出の米国暫定特許出願第61/109,410号「Reduced−Pressure,Wound−Closure System and Method」の35USC119条(e)の利益を主張するものである。これらの暫定出願のすべてはあらゆる目的において参照により本書に組み込まれる。
【0002】
本発明は一般に医療システムに関し、より具体的には、減圧式深層組織閉合システムおよび方法に関する。
【0003】
創傷や組織の損傷部位の原因が外傷、手術、あるいは他の原因であろうと、結果として正しい創傷のケアが重要である。例えば腹膜腔またはより一般的には腹腔などの、再入が必要となる部位の創傷の場合に、独特の試みが行われている。腹腔の手術または外傷の場合の多くに、良好かつ簡単なケアのための再入を可能とし、腹膜炎、ACS(abdominal compartment syndrome)、および創傷および内部器官の完治の障害となる感染部位などの箇所へのアクセスの補助となる創傷管理システムが用意されてきた。このようなケアにあたり、体腔から不要な液体を除去し、腹膜や他の組織の接合を補助し、最終的に表皮レベルにある創傷自体の閉じる力の生成を補助することが望ましい。
【0004】
腹部を一時的に閉合するときに脂肪、筋肉、あるいは特定の筋膜などの多くの深層組織が定位置にされる(addressed)必要がある。別に明示しない限り、本書で用いる「または」は、相互に排他的である必要はない。定位置にない場合、深層組織は腹部内にさらに収縮し、以降に問題を生じる。手術者は、例えば腹膜などの深層組織を、当該腹膜にテンションをかけながら縫合する。しかしながら、この部位に減圧治療が望まれる場合や、包帯などを交換する必要がある場合に、問題を生じる場合がある。さらに、深層組織の縫合はときに壊死の原因となりうる。例えば感染しているような複雑な創傷を含んでいる場合、筋膜は非常に脆く、縫合に耐えられない可能性がある。メッシュを使用して後の状況を補助する場合、メッシュの除去が難しく、手術を要する可能性がある。同時に、深層組織、特に腹膜が閉合されない場合、この状況はヘルニアや他の合併症の原因となる。
【0005】
再入のための腹部へのアクセスに加え、体腔から液体を除去することが望ましい。また、腹腔内の創傷を含む組織部位又は創傷へ減圧治療を施すことが望ましい。この治療(しばしば医療業界で「負圧創傷治療」、「局所負圧」、「減圧治療」、あるいは「真空治療」と呼ばれる)は、治癒の早期化及び肉芽組織の形成の増大を含む多くの利点を与える。
【0006】
深層組織の陥凹又は壊死といった合併症を防止又は最小限にするような方法で減圧治療を促進し深層組織の閉合を補助し得るシステム及び方法を提供するのが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
既存の深層組織閉合システム、デバイス、及び方法の問題が、ここで記載された具体的な実施例のシステム、デバイス、方法によって扱われる。具体的な実施例によれば、深層組織の近位に閉合力を適用するための減圧式深層組織閉合システムが、第1の複数の開口部が形成され、第1の側及び第2の内側に面した側を有する収縮性基質を有する。減圧源が、収縮性基質に流体結合されており、収縮性基質に減圧を送出するよう動作し得る。
【0008】
別の具体的な実施例によれば、深層組織の近位に閉合力を適用するための減圧式深層組織閉合システムが、第1の複数の開口部を具えて形成された収縮性基質であって、第1の側及び第2の内側に面した側を有する。第2の側は、第1の複数のセルを具えて形成され、各セルがセル壁を有する。第2の複数の開口部がセル壁に形成される。減圧源が、収縮性基質に流体結合され、収縮性基質に減圧を送出するよう動作し得る。
【0009】
別の具体的な実施例によれば、患者の体腔の深層組織の創傷に閉合力を適用するための減圧治療システムが、第1の複数の開口部が形成された収縮性基質であって、第1の側及び第2の内側に面した側を有する収縮性基質を有する。第2の側が、複数のセル及び第2の複数の開口部を具えて形成される。また、この具体的な減圧治療システムが、減圧を送出するよう動作し得るマニホルド部材と、マニホルド部材及び収縮性基質に流体結合された減圧源とを有する。減圧源は、マニホルド部材及び収縮性基質に減圧を送出する。また、この具体的な減圧治療システムは、体腔の上方で空圧シールを与えるよう動作し得るシーリング部材を有する。
【0010】
別の具体的な実施例によれば、患者の体腔の深層組織に閉合力を適用するための減圧治療システムを製造するための方法が、第1の複数の開口部を有し、第1の側及び第2の内側に面した側を有する収縮性基質を形成するステップを有する。第2の側は、複数のセルさらには第2の複数の開口部を有して形成される。この方法は、さらに、減圧を分配するよう動作し得るマニホルド部材を提供するステップと、体腔の上方で空圧シールを与えるよう動作し得るシーリング部材を提供するステップと有する。
【0011】
別の具体的な実施例によれば、患者の体腔の深層組織に閉合力を与える方法が、深層組織に隣接する体腔に収縮性基質を配置するステップを有する。収縮性基質は、複数の開口部を具えて形成されており、第1の側及び第2の内側に面した側を有する。第2の側は、第1の複数のセル及び第2の複数の開口部を具えて形成される。この方法は、さらに、収縮性基質に減圧源を流体結合するステップとシーリング部材で体腔をシールするステップとを有する。
【0012】
具体的な実施例の他の目的、態様、及び利点が、以下の図面及び詳細な説明を参照して明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、減圧式深層組織閉合システムの具体的な実施例の一部断面図を具えた概略図である。
【図2】図2は、収縮性基質の一部を示す図1の減圧式深層組織閉合システムの具体的な詳細の断面の概略図である。
【図3】図3は、具体的な収縮性基質の第1の側の概略的な斜視図である。
【図4】図4は、図3の具体的な収縮性基質の第2の側の概略的な斜視図である。
【図5】図5は、収縮性基質の別の具体的な実施例の概略的な平面図である。
【図6】図6は、図5の収縮性基質の一部の詳細である。
【図7】図7は、収縮性基質の別の具体的な実施例の概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の実施例の詳細な説明において、本書の一部をなす添付図面を参照する。これらの実施例は、当業者が本発明を実施するのに十分に詳細に説明され、他の実施例が用いられてもよく、本発明の意図または範囲を逸脱することなく論理構造的、機械的、電気的、科学的な変更を施すことができると解される。当業者が実施例を実施するのに不要な詳細を避けるべく、説明において当業者に周知の特定の情報を省略している場合がある。このため以下の詳細な説明は、限定の意味として解すべきではなく、説明する実施例の範囲は添付のクレームよってのみ規定される。
【0015】
図1−2を参照すると、減圧式深層組織閉合デバイス102を有する減圧式深層組織閉合システム100が与えられている。減圧式深層組織閉合システム100及び減圧式深層組織閉合デバイス102は、患者の筋膜110の深層組織の創傷108といった深層組織を含む体腔106の中の組織部位104の近位で使用するためのものである。ある例では、閉合システム100及び閉合デバイス102を他の組織で使用し得る。ここで使用するように、「創傷」は、損傷を原因とするか否かに係わりなく組織又は複数の組織の損傷領域に関する。
【0016】
このような具体的な実施例では、創傷が患者の表皮112、脂肪層114、筋肉116、及び筋膜110を通して延びている。これらの層のうち、特定の関心が、多くの場合、筋膜110を閉合することに向けられる。このような具体的な実施例が筋膜110に焦点を当てる一方、減圧式深層組織閉合システム100及び減圧式深層組織閉合デバイス102を、他の深層組織又は深層組織の創傷に使用し得ることに留意されたい。
【0017】
筋膜110の深層組織の創傷108は、本実施例では、裂傷又は切開形成筋膜端部118を含んでいる。筋膜端部118を閉合又は閉合力で強制的に閉じることが望ましい。ここで使用するように、他のものを示さなければ、「又は」は、相互排他性を要しない。リエントリを要する場合、筋膜110の一時的な閉合が好ましい。このため、筋膜端部118を近付けることによって筋膜110を閉じるか又は閉合力を加えるのが望ましい。以下でさらに説明するように、具体的な実施例の減圧式深層組織閉合デバイス102により、筋膜110を閉じ又は閉合力を加え易くなる。
【0018】
このような具体的な実施例では、体腔106は腹腔であり、組織部位104は、腹腔内容物122の一部又は腹腔内容物122の近位の組織である。減圧式深層組織閉合システム100を用いた開放創の取り扱いを与える場合に、まず腹腔内容物122に体腔包帯剤120を配置するのが望ましい。腹腔内容物122は、体腔包帯剤120に支持を与える。
【0019】
体腔包帯剤120は、非接着性のカプセルに入れたマニホルド部材124を有する。体腔包帯剤120のカプセル化層を、開口部126といった窓又は開口で形成でき、これにより、流体が体腔包帯剤120の中に入り得る。体腔包帯剤120を、別々の複数の脚部材を有する非接着性のドレープで形成し得る。体腔包帯剤120は、腹腔内容物122に配置され、好適には、少なくとも一部が結腸傍溝128の1又はそれ以上の中に配置される。そして、筋膜110の直下(向きを図1に示す)の体腔包帯剤120に隣接して減圧式深層組織閉合デバイス102を配置し得る。
【0020】
減圧式深層組織閉合デバイス102は、第1の面132及び内側に面した(患者に面した)第2の面134を有する収縮性基質130を有する。第1の面132は、例えば筋膜110といった組織層の近くに配置するためであり、閉合デバイス102が閉合又は強制的に閉じられる。収縮性基質130を収縮性材料又は構造を通して第1の複数の開口部136で形成し得る。第1の複数の開口部136は、例えば、長穴(直線状の開口部)、矩形の開口部、不規則形状の開口部等といった任意の形状を取り得る。収縮性基質130を、内側に面した第2の面134又は収縮性基質130の任意の部分に、例えばオープンセル138といった複数のセル又は区画又は部分的な区画で形成し得る。第1の複数の開口部136は、第1の複数のセル138と液通する。図2に示すように、第1の複数のセル138をセル壁140で形成することができ、第2の複数の開口部142を有する。
【0021】
減圧が収縮性基質130に送出されると、内側に向かう力である把持力が生じる。減圧が、第1の複数の開口部136を通して作用し、筋膜110に把持力を与える。把持力は、筋膜110を保持又は把持する。下方の体腔包帯剤120を通して、特に開口部126又はマニホルド144を通して、減圧を収縮性基質130に供給し得る。筋膜110の把持力を矢印146で示す。
【0022】
開口部136を通して把持力を与えるのに加え、減圧はまた収縮性基質130を内側に、すなわち、矢印148で示す方向に押し付ける。この文脈において、「内側」は、減圧式深層組織閉合デバイス102の中央部に向かうことを意味する。代替的に、「内側」を、配置された減圧式深層組織閉合デバイス102に関して、例えば筋膜110といった組織を創傷組織108の端部118に向けて引っ張る方向として規定し得る。減圧が収縮性基質130に作用すると、収縮性基質130が筋膜110を把持し、非収縮位置から収縮位置に変化する。一実施例では、収縮性基質130が、横方向に潰れこれにより縮小するセルを有する。柔軟性のあるセルの側壁は、減圧の影響下で互いに近接するよう移動する。第1の複数の開口部136の減圧が筋膜110を把持するため、そして減圧により収縮性基質130が収縮するため、筋膜端部118が密接になるよう押し付ける閉合力が筋膜110に生じて加えられる。このため、筋膜110が閉合力を受けることにより、閉合位置に筋膜110が閉合又は押し付けられる。
【0023】
一実施例では、収縮性基質130が、減圧が適用されていないときに第1の容積(V)をトータルで規定する、例えば、セル138といった複数のセルを有する。減圧がセルに適用されると、セルは、第2の容積(V)を規定するように潰れ又はそうでなければ移動する。第2の容積は、第1の容積(V)よりも小さく、すなわち、V>Vであり、このような容積の変化は収縮に関連する。
【0024】
ここで使用する「減圧」という用語は、一般に、治療を受ける組織部位104の周囲圧力よりも低い圧力に関する。大部分のケースにおいて、このような減圧は、患者が居る大気圧よりも低いであろう。代替的に、減圧を組織部位104の静水圧よりも低くし得る。他のものを示さない限り、ここで言及する圧力の値は、ゲージ圧である。
【0025】
マニホルド144は、体腔包帯剤120の近位にある減圧式深層組織閉合デバイス102の近位の体腔106の中に置かれる。マニホルド144を収縮性材料130の第1の面132によって支持でき、又はそれに隣接するよう配置し得る。ここで使用する「マニホルド」という用語は、一般に、組織部位104又は他の場所に減圧を加え、流体を送出し、又はそこから流体を除去し易くするよう与えられる物質又は構造に関する。マニホルド144は、一般に、マニホルド144の周囲の領域に提供され且つそこから除去される流体を送出する複数の流路又は通路を有する。マニホルド144は、流体の分配を改善するよう相互結合された複数の流路又は通路を有する。マニホルド144は、組織に接触するよう配置できる生体適合性材料とし得る。マニホルド144の例は、流路、オープンセルのフォームといった泡沫細胞、多孔質組織採取、及び液体、ゲル及び流路を含む又は含むよう硬化する発泡体を形成するよう構成された構造要素を有するデバイスを有する。マニホルド144は多孔質であり、発泡体、ガーゼ、フェルト製マット、又は特定の生体適用に適した他の材質でできている。一実施例では、マニホルド144は多孔質発泡体であり、流路として機能する複数の相互連結されたセル又はポアを有する。多孔質発泡体は、ポリウレタン、オープンセル、テキサス州サンアントニオ所在のKinetic Concepts, Inc.によって製造されるGranuFoam(登録商標)材料といった網状発泡体である。他の実施例が、「クローズドセル」を有し得る。マニホルド144のこれらのクローズドセル部は複数のセルを含んでおり、その大部分は隣接するセルと流体結合していない。マニホルド144にクローズドセルを選択的に配置して、マニホルド144の周囲面を通って流体が流れるのを防止し得る。ある状況では、マニホルド144を使用して、薬剤、抗菌剤、成長因子、及び他の溶液といった流体を創傷108又は体腔106に送出し得る。吸収性材料、ウィッキング材料、疎水性材料、親水性材料等といった他の層又は材料をマニホルド144の一部として含め得る。
【0026】
シーリング部材154が、体腔106の開口156の上方に配置されており、減圧式深層組織閉合システム100を体腔106の中で保持するのに十分な空気圧シールを与える。シーリング部材154は、体腔包帯剤120の中央部でマニホルド144を固定するようにも使用するカバーとし得る。シーリング部材154は、不透水性又は半透水性とする一方、シーリング部材154は、開口156の上方にシーリング部材154を組み込んだ後に組織部位104の減圧を保持し得る。シーリング部材154は、シリコーンベースの化合物、アクリル、ヒドロゲル又はヒドロゲル形成材、又は組織部位で又は減圧式深層組織閉合デバイス102で使用するのに望ましい不浸透性又は浸透性を有する他の生体適合材料で形成された柔軟性を有するオーバードレープ又はフィルムである。
【0027】
シーリング部材154は、さらに、取り付け手段158を有しており、シーリング部材154を患者の表皮112に固定する。取り付け手段158は、多くの形式を取り得る。例えば、取り付け手段158は、シーリング部材154又はシーリング部材154の任意の部分に設けられた接着剤160を有しており、空気の密閉を与える。接着剤160はを予め塗布して取り外し可能なバッキング又は部材でカバーし、これを患者への適用時に外し得る。
【0028】
エルボウポート164といった減圧インタフェース162をシーリング部材154に適用して、シーリング部材154を通してマニホルド144に、ひいては収縮性基質130に減圧を与えることができる。減圧インタフェース162をこのような目的のために使用できるが、しかしながら、他の方法もまた使用し得る。例えば、一実施例では(図示せず)、減圧送出管路166をマニホルド144の中に直接的に配置する。図示する具体的な実施例では、減圧送出管路166が減圧源168に流体結合されている。
【0029】
減圧源168は、様々な減圧を適用し得る。この範囲は、−50乃至−400mmHgである。1つの具体的な実施例では、減圧源168は、−100mmHg、−125mmHg、及び−150mmHgであるプリセットセレクタを有する。また、減圧源168は、遮断アラーム、漏れアラーム、又はバッテリ低下アラームといった多くのアラームを有する。減圧源168は、携帯型ソース、壁掛けソース、又は腹腔のための他のユニットとし得る。減圧源168は、一定圧力、中間圧力、動的圧力、又は設定パターンを具えた圧力を選択的に送出する。
【0030】
減圧送出管路166の中間部170は、図示するデバイス172といった多くのデバイスを有する。デバイス172は、滲出液、腹水、及び除去された他の流体を保持するための、流体収集部材、又は小型容器;圧力フィードバックデバイス;容量検出システム;血液検出システム;感染検出システム;流量監視システム;フィルタ;温度監視システム;等とし得る。例えば、流体収集部材といった代表的なデバイス172を減圧源168に一体に形成し得る。例えば、減圧源168の減圧ポート174は、液体が内部空間に浸入するのを防ぐ疎水性フィルタといった1又はそれ以上のフィルタを有するフィルタ部材を有する。複数のデバイスを含めることができる。
【0031】
減圧式深層組織閉合システム100は、筋膜110に閉合力を与えるよう動作し得る。さらに、減圧式深層組織閉合システムは、体腔106の中及び組織部位104又はその近くでの減圧治療を与え得る。体腔106の中及び組織部位104に減圧治療を適用して、滲出液、腹水、及び他の流体の除去の促進をし得る。また、減圧は、さらなる組織の成長を刺激し得る。組織部位104の創傷のケースでは、肉芽組織の成長及び滲出液及び細菌の除去が、回復の促進を助ける。組織部位104が傷の無い又は感染していない組織の状況では、減圧を使用して採取及び他の組織部位に移植される組織の成長を促進する。
【0032】
使用時に、体腔包帯剤120を体腔106の中及び腹腔内容物122の近くに配置した後に、減圧式深層組織閉合デバイス102を深層組織閉合デバイス102の近く且つ筋膜110の下方に(図1に示す向きで)配置し得る。そして、マニホルド144を体腔106の中に挿入し、減圧式深層組織閉合デバイス102の近位に配置し得る。そして、シーリング部材154を患者の表皮112であって体腔開口部156の上方に配置して、体腔106の上方で空気シールを形成し得る。例えば、エルボウポート164といった減圧インタフェース162をシーリング部材154に取り付け得る。減圧送出管路166を、減圧インタフェース162と減圧源168の間で流体結合する。
【0033】
減圧源168が作動すると、減圧が減圧送出管路166を通して減圧インタフェース162、ひいては、マニホルド144及び減圧式深層組織閉合デバイス102に送出される。減圧式深層組織閉合デバイス102が受ける減圧により、減圧式深層組織閉合デバイス102が、複数の第1の開口部136を通して筋膜110を把持して収縮させる。減圧式深層組織閉合デバイス102が収縮すると、筋膜110が筋膜端部118に向かって閉合力を受ける。これにより筋膜端部118が接近する。筋膜110が受ける閉合力は、筋膜110又は他の組織を破裂又は傷付ける必要なしに大きくなる。筋膜端部118の接近に加えて、減圧インタフェース162、ひいてはマニホルド144に供給される減圧が、体腔106の中の治療を提供し、組織部位104の近位の組織への減圧治療を与える。
【0034】
ここで、図3及び4を参照すると、別の具体的な収縮性基質200が示されている。収縮性基質200は、第1の側202及び第2の内側に面した側204を有する。図3は、第1の側202を示し、図4は、第2の内側に面した側204を示す。図1の減圧式深層組織閉合システム100に収縮性基質200を使用し得る。このような特定の具体的な実施例では、収縮性基質200を中実の円形に形成するが、図5に示す楕円形、弓形、矩形等といった多くの他の形状を使用し得る。収縮性基質200の第1の側202は、そこに形成され第2の内側に面した面204に延びる第1の複数の開口部206を有する。図4に示すように、複数のセル208が、第2の内側に面した面204に形成されている。複数のセル208の各セルは、セル壁210を有する。セル208は、開口部206及びオープンセル部を有する。各セル壁210は、セル壁210を通る1又はそれ以上の開口部を有しており、図2の第2の複数の開口部142に類似する第2の開口部を形成する。このような特定の具体的な実施例では、複数のセル208を、第1の開口部206のそれぞれが中央に位置するハニカムセルとして形成し得る。
【0035】
ここで、図5及び6を参照すると、収縮性基質300の別の具体的な実施例を示す。収縮性基質300を図1の減圧式深層組織閉合システム100に使用し得る。収縮性基質300は、第1の側(図示せず)及び第2の内側に面した側304を有する。このような特定の実施例では、収縮性基質300を、中央開口306を有する楕円形で形成し得るが、中央開口306無しに収縮性基質300を形成し得る。収縮性基質300の第2の内側に面した側304を複数のセル308で形成し得る。第1の複数の開口部310を収縮性基質300を通して形成でき、複数のセル308で液通させ得る。複数のセル308を複数の相互連結されたセル壁312によって形成し得る。図2に示す実施例のように、複数の相互連結されたセル壁312にセル間の開口部(図示せず)を形成でき、第2の複数の開口部を形成する。
【0036】
ここで、図7を参照すると、収縮性基質400の別の具体的な実施例を示す。収縮性基質400を、図1の減圧式深層組織閉合システム100に使用し得る。このような具体的な実施例の収縮性基質400は矩形状であり、収縮性基質400の第1の側402から第2の内側に面した側404まで延びる第1の複数の開口部410を有する。第2の複数の開口部411は、第1の複数の開口部410又はそのいくつかの部分に結合する。
【0037】
代替的な実施例では、収縮性基質400は、第1の側402に開口部410を有するが、第2の内側に面した側404に対応する開口部を有しない。このように、収縮性基質400は、第1の側402のみに開口するセルを有し、セルの中に減圧を与える開口部411を有する。減圧が開口部411を通して供給されるときに、深層組織が開口部410によって把持され、セルの側壁がより近接することで、収縮性基質400が収縮する。
【0038】
様々な多くの材質を使用して、収縮性基質130(図1)、収縮性基質200(図3及び4)、収縮性基質300(図5及び6)、収縮性基質400(図7)を形成し得る。一般に、柔軟性のある収縮性材料を使用する。例えば、これらの収縮性基質130、200、300、400を、柔軟性のある熱可塑性エラストマー(TPE);熱可塑性ウレタン(TPU);シリコーンゴム;等で形成し得る。さらに、収縮性基質に様々な多くのセル形状を使用し得る。例えば、可能なセル形状は、ハニカム、円形、ダイアモンド形、歯車状のセル等である。発泡体は収縮性基質に使用されない。収縮性基質が形成される材料は、好適には、任意の組織の成長を防ぐ。1つの具体的な実施例では、収縮性基質を、融着で形成されるハニカムセルを有するTPUのハニカム材料で形成し得る。一般に、発泡体を使用しない一方、一実施例では、収縮性基質を、組織及び減圧供給インタフェースを把持するための開口部を有する密閉され又はカプセル化した発泡材料で形成し得る。
【0039】
別の具体的な実施例では、xy面(図5の紙面内の方向)で膨張且つ縮小可能である一方z方向(図5の紙面に垂直な方向)でほとんど一定の長さを保持し得る収縮性基質を熱可塑性エラストマー(TPE)で形成し得る。このような実施例では、収縮性基質が、xy方向よりもz方向に集中したより強い材料(さらなる材料)を有する。代替的又は追加的に、ボイドを付加して潰れのパターンを規定し得る。代替的又は追加的に、例えば、フィラメントといった強化部材をz方向に追加して、この方向への潰れを防止し得る。別の具体的な実施例では、収縮性基質を、収縮性基質の第1の側、例えば図5の収縮性基質300の面302に追加のフィルムを有する熱可塑性ウレタン(TPU)を用いて形成し得る。これらは単なる具体例である。
【0040】
代替的な実施例では、収縮性基質を、減圧下で収縮する空圧要素、又はデバイスを使用することによって、減圧下で収縮するよう形成し得る。このため、例えば、図7を参照すると、開口部410の上部及び下部を密閉して、複数の空気圧チャンバを形成し得る。第2の開口部411は、開いたままであり、減圧を受ける。第1の開口部410で形成されチャンバに減圧を送出すると、チャンバが潰れて内側に収縮力を与える。他の空気デバイスを使用し得るが、それぞれの例において、空圧デバイスは、好適には、創傷及び減圧下で収縮を引き起こすことなしに、筋膜を把持する。
【0041】
ある具体的な非限定的な実施例に従って本発明及びその利点を開示したが、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲から逸脱せずに、様々な変更、置換、及び代替を行い得ることに留意されたい。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
深層組織の近位に閉合力を適用するための減圧式深層組織閉合システムであって、前記システムが:
前記深層組織の近位に配置するための収縮性基質であって、前記収縮性基質の第1の側に第1の複数の開口部が形成され、さらに、複数のセルを具えており、第1の側及び第2の内側に面した側を有しており、前記複数のセルが減圧下でないときの第1の容積(V)及び減圧下での第2の容積(V)を有し、V>Vである収縮性基質と;
前記収縮性基質に流体結合され、前記収縮性基質に減圧を送出するよう動作する減圧源と;
を具えることを特徴とする減圧式深層組織閉合システム。
【請求項2】
前記セルが、前記第1の複数の開口部と液通することを特徴とする請求項1に記載の減圧式深層組織閉合システム。
【請求項3】
前記セルが、柔軟性を有する側壁を有することを特徴とする請求項1に記載の減圧式深層組織閉合システム。
【請求項4】
前記複数のセルが、さらに、前記複数のセルに流体結合する第2の複数の開口部を具えることを特徴とする請求項1に記載の減圧式深層組織閉合システム。
【請求項5】
前記減圧源によって減圧が供給されたときに、前記収縮性基質が、前記収縮性基質の前記第1の側に隣接する前記深層組織に把持力を与え、非収縮位置から収縮位置に移動するよう動作し得ることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記減圧源によって減圧が供給されたときに、前記収縮性基質が、前記収縮性基質の前記第1の側に隣接する前記深層組織に把持力を与え、前記深層組織に前記閉合力を発生させるよう動作し得ることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記収縮性基質が、ハニカム基質を含むことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
前記収縮性基質が、熱可塑性エラストマーのハニカム基質を含むことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項9】
前記複数のセルが、複数の歯車状セルを具えることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項10】
組織の近位に閉合力を適用するための減圧式閉合システムであって、減圧式深層組織閉合システムが:
第1の複数の開口部が形成された収縮性基質であって、第1の側及び第2の内側に面した側を有しており、前記第2の内側に面した側が複数のセルを具えて形成されており、各オープンセルがセル壁を有し、少なくとも1のセル間の開口部が前記複数のセルの各オープンセルに形成され、前記組織の近位に配置された収縮性基質と;
前記収縮性基質に流体結合され、前記収縮性基質に減圧を送出するよう動作する減圧源と;
を具えることを特徴とする減圧閉合システム。
【請求項11】
前記減圧源によって減圧が供給されたときに、前記収縮性基質が、前記収縮性基質の前記第1の側に隣接する前記組織に把持力を与え、非収縮位置から収縮位置に移動するよう動作し得ることを特徴とする請求項10に記載の減圧式組織閉合システム。
【請求項12】
前記減圧源によって減圧が供給されたときに、前記収縮性基質が、前記収縮性基質の前記第1の側に隣接する前記組織に把持力を与え、前記組織に閉合力を発生させるよう動作し得ることを特徴とする請求項10に記載の減圧式組織閉合システム。
【請求項13】
前記収縮性基質が、ハニカム基質を含むことを特徴とする請求項10に記載の減圧式組織閉合システム。
【請求項14】
前記収縮性基質が、熱可塑性エラストマーのハニカム基質を含むことを特徴とする請求項10に記載の減圧式組織閉合システム。
【請求項15】
前記複数のセルが、複数の歯車状セルを具えることを特徴とする請求項10に記載の減圧式組織閉合システム。
【請求項16】
患者の体腔の深層組織の創傷に閉合力を適用し、前記体腔に減圧治療を提供するための減圧治療システムであって、前記システムが:
第1の複数の開口部が形成された収縮性基質であって、第1の側及び第2の内側に面した側を有しており、前記第2の内側に面した側が第2の複数の開口部を具えて形成されており、前記深層組織の創傷の近位に配置するための収縮性基質と;
減圧を送出するよう動作し得るマニホルド部材と;
前記マニホルド部材及び前記収縮性基質に流体結合され、前記マニホルド部材及び前記収縮性基質に減圧を送出するための減圧源と;
前記体腔の上方で空圧シールを与えるよう動作し得るシーリング部材と;
を具えることを特徴とする減圧治療システム。
【請求項17】
前記減圧源によって減圧が供給されたときに、前記収縮性基質が、前記収縮性基質の前記第1の側に隣接する深層組織に把持力を与え、非収縮位置から収縮位置に移動するよう動作し得ることを特徴とする請求項16に記載の減圧治療システム。
【請求項18】
前記減圧源によって減圧が供給されたときに、前記収縮性基質が、前記収縮性基質の前記第1の側に隣接する深層組織に把持力を与え、前記深層組織の創傷に閉合力を発生させるよう動作し得ることを特徴とする請求項16に記載の減圧治療システム。
【請求項19】
前記収縮性基質が、ハニカム基質を含むことを特徴とする請求項16に記載の減圧治療システム。
【請求項20】
前記収縮性基質が、熱可塑性エラストマーのハニカム基質を含むことを特徴とする請求項16に記載の減圧治療システム。
【請求項21】
前記収縮性基質が、複数のセルを有する材料を含んでおり、
前記材料が、複数の歯車状セルを具えることを特徴とする請求項16に記載の減圧治療システム。
【請求項22】
患者の体腔の深層組織に閉合力を適用するための減圧治療システムを製造するための方法であって、前記方法が:
第1の複数の開口部を有し、第1の側及び第2の内側に面した側を有して、前記深層組織の近位に配置するための収縮性基質を形成するステップと;
減圧を分配するよう動作し得るマニホルド部材を提供するステップと;
前記体腔の上方で空圧シールを与えるよう動作し得るシーリング部材を提供するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項23】
前記収縮性基質の前記第2の内側に面した側が、複数のセルを具えて形成され、さらに、第2の複数の開口部を具えて形成されることを特徴とする請求項22の減圧治療システムの製造方法。
【請求項24】
前記収縮性基質の前記第2の内側に面した側が、複数のセルを具えて形成され、さらに、第2の複数の開口部を具えて形成され;
前記収縮性基質を形成するステップが、ハニカム基質から前記収縮性基質を形成するステップを具えることを特徴とする請求項22の減圧治療システムの製造方法。
【請求項25】
前記収縮性基質の前記第2の内側に面した側が、複数のセルを具えて形成され、さらに、第2の複数の開口部を具えて形成され;
前記収縮性基質を形成するステップが、熱可塑性エラストマーのハニカム基質から前記収縮性基質を形成するステップを具えることを特徴とする請求項22の減圧治療システムの製造方法。
【請求項26】
前記収縮性基質の前記第2の内側に面した側が、複数のセルを具えて形成され、さらに、第2の複数の開口部を具えて形成され;
前記収縮性基質を形成するステップが、複数の歯車状セルとして前記複数のセルを形成するステップを具えることを特徴とする請求項22の減圧治療システムの製造方法。
【請求項27】
患者の体腔の組織に閉合力を提供する方法であって、
前記組織の近くの前記体腔の中に収縮性基質を配置するステップであって、前記収縮性基質が、第1の複数の開口部を具えて形成されており、第1の側及び第2の内側に面した側を有し、複数のセルを有しており、さらに、前記複数のセルを流体結合するための第2の複数の開口部を具えて形成されているステップと;
前記収縮性基質に減圧を提供するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項28】
前記減圧を提供するステップが:
前記体腔を空気で密閉するステップと;
前記収縮性基質に減圧源を流体結合するステップと;
を具えることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記複数のセルが、減圧下でないときの第1の容積(V)及び減圧下での第2の容積(V)を有し、V>Vであることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項30】
さらに、前記体腔の中にマニホルド部材を配置するステップと、
前記減圧源に前記マニホルド部材を流体結合するステップと、
を具えることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記複数のセルが、前記第1の複数の開口部と液通することを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記セルが、柔軟性のある側壁を有することを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記減圧源によって減圧が供給されたときに、前記収縮性基質が、前記収縮性基質の前記第1の側に隣接する深層組織に把持力を与え、非収縮位置から収縮位置に移動するよう動作し得ることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記減圧源によって減圧が供給されたときに、前記収縮性基質が、前記収縮性基質の前記第1の側に隣接する深層組織に把持力を与え、前記深層組織に閉合力を発生させるよう動作し得ることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記収縮性基質が、ハニカム基質を含むことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記収縮性基質が、熱可塑性エラストマーのハニカム基質を含むことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項37】
前記複数のセルが複数の歯車状セルを具えることを特徴とする請求項27に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−507347(P2012−507347A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534540(P2011−534540)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/044226
【国際公開番号】WO2010/051067
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(508268713)ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】