減少された量の窒化チタン介在物を伴うコバルト−ニッケル−クロム−モリブデン合金
外科用インプラントの適用に有用であるコバルト−ニッケル−クロム−モリブデン合金は、全合金の重量に基づく重量パーセントで、少なくとも20のコバルト、33.0ないし37.0のニッケル、19.0ないし21.0のクロム、9.0ないし10.5のモリブデン、及び30ppm未満の窒素を含む。合金の態様は、有意な量の窒化チタン及び混合炭窒化物の介在物が欠如している。合金は、ある種の慣用的な合金の処方中の硬質粒子の介在物によって起こるダイの損傷を伴わずに、細いゲージ番号のワイヤーに冷間延伸することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コバルト、ニッケル、クロム及びモリブデンを含む合金に関し、ここにおいて合金は、好ましい疲労強度を示し、そしてバー、ワイヤー及び他の形態に、表面欠陥を生じ、或いは冷間延伸又は鍛造中に破断若しくは亀裂する受容不可能な傾向を示すことなく加工することができる。本開示は、更に本開示中に記載される合金を製造する方法、及びこのような合金から製造され、又はそれを含む製品にも関する。このような製品は、例えばステント、移植可能な除細動器又はペースメーカーのためのペーシングリード、及び他の外科用インプラントの適用における使用を意図した小さい直径のワイヤーを含む、バー及びワイヤーを含む。
【背景技術】
【0002】
特定化された合金が、外科用インプラントの適用のために開発されている。“MP35N”合金(UNS R30035)としても知られるこのような合金の一つは、例えば、ペーシングパルスを移植された除細動器又はペースメーカーから心臓へ中継するために適合された心臓ステント及びペーシングリードのような、外科用インプラントにおける使用を意図したバー及びワイヤーの形態に製造される。ペーシングリードの一つの例を図1に示す。外科用インプラントの適用における使用のための鍛練したMP35N合金に対する標準規格は、ASTM規格F562−02中に見出すことができ、この全ての開示は、本明細書中に参考文献として援用される。ASTM規格に与えられているように、外科用インプラントの適用に使用されるMP35N合金は、以下の表1に与えた化学組成を有しなければならない。然しながら、化学物質の含有率の測定における研究室間の受容可能な変化を考慮するために、ASTM規格(ASTM F562−02の表2)は、MP35合金の測定された化学組成の表1に示した最小又は最大値から、表1の右端の列に示した量だけ変化することを許容している。本開示中で使用される場合、“MP35N”合金は、以下の表1及びASTM規格F562−02中に記載されたとおりの化学的組成を有するコバルト−ニッケル−クロム−モリブデン合金を指す。
【0003】
【表1】
【0004】
ある種の技術的問題が、ペーシングリード及び他の外科用インプラントの適用に使用するためのMP35N合金の製造中に遭遇するであろう。特に、問題のある表面欠陥が、合金を、ワイヤーに冷間延伸するときに現れるであろう。合金を、例えばペーシングリードとして使用するための小さいゲージ番号のワイヤーに延伸する場合、表面欠陥は、延伸加工の後のほうの段階中に、ワイヤーが、このような適用のために典型的に使用される最終サイズである約0.18mm(0.007インチ)直径に近づいた場合に生じる可能性が大である。延伸に関連する表面欠陥は、これらが有意な時間及び資金が製品に投資された後に現れることができるために、特に問題がある。ワイヤーが小さい直径に近づくと、表面欠陥は、冷間延伸中にワイヤーの破断を起こす。これは、ワイヤー生産中の低い加工収率となり、これは、ワイヤーの代価を有意に増加させる。表面欠陥を有するMP35N合金ワイヤーから形成されたペーシングリード及び他の外科用インプラントは、更に減少した疲労抵抗性を有するかもしれず、そして破断に対して敏感であろう。結果としての減少した使用期間は、インプラントの早期の交換を必要とするだろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
慣用的なMP35N合金の冷間延伸中に遭遇する前述の技術的問題を考慮すれば、同様な外科用インプラントの適用のために適した、そして更に改良された疲労強度を示し、そしてバー、ワイヤー及び他の適した形態に、表面欠陥を生じる、或いは冷間延伸又は鍛造中に破断若しくは亀裂する受容不可能な傾向を伴わずに、適当に加工することができるコバルト−ニッケル−クロム合金に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の必要性に対処するために、本開示は、全合金の重量に基づいた重量パーセントで:少なくとも20のコバルト;32.7ないし37.3のニッケル;18.75ないし21.25のクロム;8.85ないし10.65のモリブデン;及び30ppm未満の窒素を含む合金に関する。ある態様において、合金は、窒化チタン及び混合金属炭窒化物の介在物を完全に又は実質的に含まない。
【0007】
本開示は、更に全合金の重量に基づいた重量パーセントで:少なくとも20のコバルト;33.0ないし37.0のニッケル;19.0ないし21.0のクロム;9.0ないし10.5のモリブデン;0.025以下の炭素;0.15以下のマンガン;0.15以下のケイ素;0.015以下のリン;1.0以下のチタン;0.010以下の硫黄;1.0以下の鉄;及び0.015以下のホウ素を含む合金に関する。合金は、窒化チタン及び混合金属炭窒化物の介在物を完全に又は実質的に含まない。
【0008】
本開示は、更に本明細書中に記載される新規な合金のいずれかを含む製品に関する。製品の例は、バー、ワイヤー、管、外科用インプラント機器、外科用インプラント機器の部品、移植可能な除細動器、移植可能な除細動器のための部品、移植可能なペースメーカー、移植可能なペースメーカーの部品、ペーシングリード、及び心臓ステントを含む。製品が、バー又はワイヤーである場合、物品は、更にASTM標準規格F562に準拠した外科用インプラントの適用において使用するために認可されたものであることができる。
【0009】
本開示は、更に合金を製造する方法に関し、ここにおいてこの方法は、全合金重量に基づいた重量パーセントで:少なくとも20重量パーセントのコバルト;33.0ないし37.0重量パーセントのニッケル;19.0ないし21.0重量パーセントのクロム;9.0ないし10.5重量パーセントのモリブデン;及び30ppm未満の窒素を含む組成を有するVARインゴットを調製することを含む。この方法のある態様において、インゴットは、窒化チタン及び混合金属炭窒化物の介在物を、完全に又は実質的に含まない。この方法は、更にインゴットをバー、ワイヤー、及び管の一つに加工することも含み、これは、更に外科用インプラント装置、外科用インプラント装置の部品、移植可能な除細動器の部品、移植可能なペースメーカーの部品、ペーシングリード、及び心臓ステントの一つに加工することができる。
【0010】
本開示の新規な合金は、ある態様において、ワイヤーに延伸された場合、慣用的な化学組成を有するMP35N合金から製造された延伸ワイヤーによって普通に示される表面仕上に対して、有意に改良された表面仕上を示すコバルト−ニッケル−クロム−モリブデン合金である。本開示の合金の態様は、更に、慣用的なMP35N合金に対して改良された疲労抵抗性を、そしてペーシングリード及びある種の他の外科用インプラントの適用において使用するために必要とされる小さい直径に延伸された場合、慣用的なMP35N合金と比較して、有意に低い破断率からの利益を示す。
【0011】
これらの及び他の利益は、以下のある態様の説明を考慮することによって明白となるものである。
実施態様の説明
冷間延伸及び鍛造中のMP35N合金の不良な性能が、大きい硬質の窒化チタン(TiN)介在物の存在にあることは決定されている。更に、比較的高い量の窒素を含むMP35N合金において、大きい硬質の立方体状の混合金属炭窒化物の介在物が、合金中で形成され得る。混合金属炭窒化物は、主としてチタン及びクロムの炭窒化物である。延伸及び鍛造における慣用的なMP35N合金の主たる破壊の機構は、粒子状介在物における疲労の開始である。TiN及び混合金属炭窒化物の介在物は、溶融後の合金の固化中に形成され、そして粒子は、その後の熱処理又は熱機械的加工によって除去或いは破壊することができない。その代わり、介在物がその注型されたときの粒度で最終製品中に保持されることが決定されている。
【0012】
硬質のTiN及び混合金属炭窒化物粒子は、慣用的なMP35N材料の冷間延伸中に延伸ダイを損傷する。損傷したダイを経由して延伸されたワイヤーは、ワイヤー表面の掻き傷の形態の表面欠陥を有するだろう。ダイの損傷及び結果としてのワイヤー表面の欠陥は、収率を有意に減少する。延伸されたワイヤーが小さい直径になるに従い、窒化物及び炭窒化物粒子は、ワイヤーの断面の大きい部分を占め、そして従って、材料を弱くし、従って延伸中の破断を起こす。粒子は、更に疲労負荷中の応力増加物質として作用し、そして疲労亀裂の開始に寄与し、これは材料及び関連する装置の早期の損傷となるだろう。
【0013】
本開示のコバルト−ニッケル−クロム−モリブデン合金の態様は、上記の表1及びASTM規格F562中に列挙された範囲内の化学組成を有する。然しながら、この態様は、慣用的なMP35N合金の化学組成とは異なった化学組成を有する。これらの化学組成の差は、ASTM規格F562に含まれるMP35N合金に対する幅広い化学組成内に入るが、慣用的なMP35N合金より実質的に低い量の窒素及び/又はチタンを含む合金を提供する。例えば、ASTM規格F562に準拠して製造された慣用的なMP35N合金は、典型的には少なくとも約50ppmの窒素及び約0.95重量パーセントのチタンを含む。本開示に関する改質されたMP35N合金中の化学組成の差は、合金中の硬質のTiN及び混合金属炭窒化物粒子の介在物の形成を抑制することが見出されている。これは、次に、合金をバー及びワイヤーの形態に加工する能力を改良し、そして合金及び合金から製造される製品の疲労抵抗性を向上する。
【0014】
従って、本開示のコバルト−ニッケル−クロム−モリブデン合金の態様は、有意な量のTiN及び混合金属炭窒化物粒子の介在物を含まず、そして合金は、このような粒子を含まないか、又は実質的に含まない。有意な量の硬質粒子が存在しないことは、延伸ダイの損傷を抑制し、そしてこれによって延伸されたワイヤーの表面仕上を、損傷したダイを経由して延伸された慣用的なMP35Nに対して有意に改良する。TiN及び混合金属炭窒化物粒子の量の減少は、更に本明細書中に記載される改質MP35N合金の疲労抵抗性を、慣用的なMP35N合金から慣用的な加工法を使用して形成されたワイヤー又は他の物品に対して有意に改良する。更に、有意な量のTiN及び混合金属炭窒化物粒子が存在しないために、ワイヤー延伸での、より低いワイヤーの破断の発生が実現する。
【0015】
従って、本明細書中に記載される改質MP35N合金の性能及び特質における前述の改良は、合金中のある種の粒子の介在物の存在を有意に減少又は排除することによって得られる。これは、例えば、溶融装入物を製造するために使用される原材料中の窒素及び/又はチタンの量を減少することによって達成することができる。窒素及び/又はチタンの減少は、更に材料の冷間作業又は鍛造に先立って、材料を適当に加工することによっても達成することができる。当業者は、本開示を読むことにより、MP35N合金中の窒素及び/又はチタンの量を減少するための更なる方法を把握することができ、そしてこのような方法が、本明細書中に明確に記述されていないが、本開示によって包含されることを意図している。
【0016】
本開示のコバルト−ニッケル−クロム−モリブデン合金の態様は、更に慣用的なMP35N合金より有意に低い量に酸素を制限するために処方又は加工することもできる。このような減少は、本開示の改質MP35N合金を、材料を破断することなく熱間作業する能力を援助する。本開示の合金をバー又はワイヤーに鍛造中に亀裂させないことをよりよく確実にするために、例えば合金中の結晶粒界における酸素脆化の発生を抑制する工程を取ることができる。これは、例えば以下の実施例中に記載されるある種の脱酸素技術によって達成することができる。
【0017】
ASTM規格F562に準拠するペーシングリード又は他の外科用インプラントの適用に使用するための慣用的なMP35N合金に対する標準的な生産溶融経路は、真空誘導溶解法(VIM)及び真空電極式アーク溶解法(VAR)の組合せである。慣用的なMP35N合金の典型的な取鍋及びインゴットの化学組成を、以下の表2に与える(窒素及び特定の他の元素の量は決定されなかった)。慣用的なMP35N材料中で観察された平均の粒子サイズは、1−2マイクロメートルの球状のAl2O3の核を伴う、立方体状の6マイクロメートルのTiNの析出であり、そしてこのような粒子の一つを図2に示す。TiNの殻を伴わない酸化アルミニウムも、更に慣用的な材料中で、図3に示すように観察された。本開示の合金の微細組織中のTiN及び混合金属炭窒化物粒子の発生を有意に減少又は排除するために、一つの経路は、適当に減少された量の窒素及び/又はチタンを含む高品質の原材料を思慮深く選択することである。合金中の窒素の量の減少は、TiN及び混合金属炭窒化物の形成を抑制するものであるが、MP35N合金中の窒素の溶解度は知られておらず、従って、MP35Nに対する溶融工程中のチタンのような窒化物の構成物の排除も更に考慮した。例えば、チタンの減少又は排除は、例えば、強度に制約されない、そしてこのような適用に対するASTM規格が、最小強度の制限を含んでいないために、ペーシングリードのような適用において可能であると考えられた。
【0018】
本開示内の制約された数の改質MP35N合金の態様を説明する実験の結果を、以下に開示する。
実施例1
WE48、WE52、WE53及びWE54と称する四つの約68kg(150ポンド)のヒートを、VIM−VAR処理し、そして12.7cm(5インチ)のRDビレットに鍛造した。それぞれのヒートの取鍋の化学組成を、慣用的MP35N合金の、特定のヒートに対する取鍋及びVIMの化学組成と共に表2に示す。実験的な改質MP35Nのヒートを、ASTM規格F562に準拠して製造された慣用的なMP35Nに対する典型的な化学組成と比較して、表3に示したチタン及び窒素に対する一般的な目的で処方した。表3のみの目的のために、“高”チタンは、0.70重量パーセント又はそれより多いと考え、そして“低”チタンは、ppmの範囲の濃度と考える。更に表3のみの目的のために、“高”窒素は、0.01重量パーセント又はそれより多いと考え、そして“低”窒素は、0.001重量パーセントよりも少ないと考える。直ぐ上で記載したような表3に関連する用語“高”及び“低”の使用は、本開示又は特許請求の範囲中の他の場所で使用されるこの用語の意味とは関係なく、又はこのような意味を有しないことは理解されるべきである。
【0019】
一つの実験的ヒートWE48は、鍛造中に重度の亀裂を生じ、そして圧延に適していなかった。残りのヒートは、ハンドミルで約2.659cm(1.047インチ)のRDバーに圧延した。ヒートを、バーを焼鈍した後、ミクロな清浄性(microcleanliness)及び機械的特性に対して評価した。
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】
ヒートWE52、WE53及びWE54から製造したバーの機械的特性及び結晶粒度を、表4に示す。バーを約1052℃(1925°F)で2時間焼鈍し、そして次いで水で急冷してから、試験した。
【0023】
【表4】
【0024】
迅速ひずみ速度熱間引張試験を、プレス鍛造中に重度に亀裂を起こしたヒートWE48の延性を測定するために使用した。結果を図4に示す。材料の低い延性は、51ppmの高い酸素の量、及びアルミニウム及びチタンのような酸化物形成元素の欠如に起因し、これらは、結晶粒界の酸素脆化を防止する化合物を形成するものである。16ppmの酸素の量を有する他の低チタンのヒートWE53は、鍛造又は圧延による亀裂を起こさなかった。この結果は、低チタンヒート中の酸素の量が、加工及び/又は化学組成の小さい変化によって容易に影響され得る中間の不安定な境界の近辺にあったことを示した。従って、結晶粒界における酸素脆化の有意な発生を防止するための更に強い脱酸素の方法を含む加工管理を伴う更なるヒートが考慮された。
【0025】
最低の量のチタン及び窒素の両方を含むヒートWE48、及び最高の量のチタン及び窒素の両方を含むヒートWE54のミクロな清浄性の評価を、標準的ASTM E45及び走査電子顕微鏡(SEM)のランダム粒子分析によって行った。100×におけるASTM E45測定は、いずれもの粒子を検出しなかった。WE54のSEM分析は、概略3マイクロメートルの粒度のTiN粒子を明らかにした。このような粒子の一つを図5に示す。粒子の粒度は、生産ヒートで製造された慣用的なMP35N合金中の典型的なTiN粒子よりある程度小さかった。慣用的なMP35N合金の生産ヒートに対するヒートWE54のTiN粒子の粒度のわずかな減少は、実験的ヒートの製造において使用したより小さいパイロットプラントのVAR法の、生産規模のVAR法に対するより速い冷却速度の関数であったと考えられる。ヒートWE48(表3に関して、低チタン、低窒素のヒート)におけるSEM分析によって、粒子は検出されなかった。
【0026】
この実施例の結果に基けば、改質MP35N合金の一つの好ましい態様は、ppmの量より多い窒素を含まず、そして更に慣用的なMP35N合金より低い量のチタンを含む。結果に基づけば、改質MP35N合金の一つの好ましい態様は、TiN及び混合金属炭窒化物のいずれもの有意な形成を抑制するために、30ppm未満の窒素を含む。更に好ましい量は、20ppm未満の窒素であり、これは、問題のある粒子の介在物が材料中に存在しないことをより良好に確実にするものである。このような窒素の量は、ASTM規格F562に従って処方された慣用的なMP35N材料より有意に低い。更に、本開示の合金は、いずれもの有意な量のTiN及び混合金属炭窒化物粒子が存在しないことをより良好に確実にするために、所望により0.7重量パーセント未満のチタンを、そして更に好ましくは0.03重量パーセント未満のチタンを含むことができる。
【0027】
本開示の改質MP35N合金が、結晶粒界の酸素脆化を抑制し、そして適切な熱間作業性を可能にするように、十分な量の脱酸素を伴うことも更に好ましい。これは、例えば0.05ないし0.15重量パーセントのアルミニウムを合金中に含んで、加工された合金中の酸素の量を十分に減少することによって達成することができる。アルミニウムが、小さい(即ち、3マイクロメートルより小さい)、一般的に球状の酸化アルミニウム粒子の形成を促進することが予測され、これは、慣用的なMP35N中に典型的に存在する立方体状のTiN粒子よりも、疲労寿命特性に対して有害ではない。合金の酸素含有率を減少するための他の技術は、以下の実施例中で検討され、そして装入物のVIM溶融中の脱酸素の方法を変更することを含む。
【0028】
TiN及び混合金属炭窒化物の介在物を完全に又は実質的に排除するための信頼できる方法は、窒素及びチタンの一方或いは両方を装入された原材料から完全に又は実質的に排除することによる。窒素及びチタンの両方を原材料から完全に又は実質的に排除することは、有意な量のいずれかの元素が不注意に装入物に導入された場合、そのようにすることが安全率を与える限り好ましい。然しながら、MP35N合金からチタンの全て又は実質的に全てを排除することは、加工中の合金の不十分な脱酸素のみが行われることとなり、そして比較的低い鍛造性を有する合金が製造されることが決定されている。先に記載したように、一つの解答は、例えばアルミニウム含有率を0.05ないし0.15重量パーセントに増加して、十分な脱酸素を与え、そして鍛造中の破損を抑制することである。十分な量の脱酸素を与えて、改質MP35N合金の適切な熱間加工性を確実にする、減少されたチタンの量を含む、他の戦略は、以下の実施例3において検討される。
【0029】
実施例2
加工及び試験手順
比較の目的のために、標準的なMP35N合金の化学組成及び減少された量のチタンを含む改質MP35Nの化学組成で合金を製造した。実験的な改質合金の化学組成は表5に与えられ、そして慣用的なMP35N合金の典型的な化学組成(約0.95重量パーセント)に対して有意に減少された量のチタンを含む。
【0030】
【表5】
【0031】
合金を、約1860kg(3,000ポンド)のVIM電極として用意し、これを、約43.2cm(17インチ)直径のインゴットにVARで再溶融した。それぞれのVARインゴットを拡散焼なましして微小偏析を減少させ、そして次いでGFM機で回転鍛造して、約10.2cm(4インチ)厚さのビレットを製造した。それぞれのビレットを連続圧延機で約5.56mm(0.219インチ)厚さのコイルに熱間圧延した。コイルを焼鈍し、約5.49mm(0.216インチ)厚さにシェービングし、そして延伸のための準備として酸洗した。延伸は、カーバイドダイ及び粉末潤滑剤を使用して約1.63mm(0.064インチ)まで行った。約0.178mm(0.007インチ)の最終直径までの更なる加工は、ダイヤモンドダイ及び鉱油の潤滑剤を使用して行った。材料の評価のために、最終ワイヤーの直径は、約±0.005mm(±0.0002インチ)の許容変化を伴う約0.178mm(0.007インチ)でなければならず、そして目標は、最終ワイヤーにおいて約21.1−22.5t/cm2(300−320ksi)の極限引張強度を維持することであった。
【0032】
合金及び合金から延伸されたワイヤーを評価するために使用した試験手順の説明、並びに試験から誘導されたいくつかの観察は、以下のとおりである。
ミクロな清浄性
一連の8個のASTM F562標準試料を、MP35N合金から冷間延伸された2.54mm(0.100インチ)直径のワイヤーから切断した。8個の試料は、慣用的なMP35N合金の5個の別個の溶融マスターヒートを代表した。改質された減少したチタンのMP35N合金の二つの試料も、更に同じ溶融マスターヒートから製造された2.54cm(1.0インチ)及び約5.49mm(0.216インチ)直径の冷間(hard)延伸材料から切断した。全ての試料を熱硬化性化合物に据付けて、それぞれの断片の全長にわたる縦方向断面を得た。据付けられた試験片を研磨し、そして金属組織学的に磨いて、試料の縦方向中心に近い磨かれた平面を得た。
【0033】
調製した断面を、後方散乱電子像(BEI)を使用した走査電子顕微鏡(SEM)で検査した。それぞれの試料の断面に対して、調製された断面の代表的な部分を示す160枚の映像を1000×の倍率で1.77mm2の全試験面積に対して得た。バックグラウンドより暗く又は明るく見える特徴物(feature)の分析を、映像分析ソフトウェアを使用して行った。コントラストを、母材より高い平均原子数(mean atomic number)を有する特徴物が、より低い平均原子数を有する特徴物と比較してより明るく見えるように調節した。最大の寸法を、それぞれの映像中のそれぞれの個々の特徴物に対して記録した。映像化された介在物を、最大の寸法によって1マイクロメートルの群に、検出された最大の介在物まで分類した。いくつかの最大寸法の測定値は、“ストリンガー(stringer)”の形成において起こる別個の、しかし個々の介在物として識別できない介在物の結果であると考えられる。0.2マイクロメートルより小さい特徴物は数えなかった。
【0034】
前述の分析を、それぞれの試料の断面の160枚の映像のそれぞれについて行った。この方法により、標準的なMP35N合金及び実験的な低チタン合金間の清浄さの直接的な比較が達成された。選択された介在物を、高倍率で検査し、そして定量的化学分析を、いくつかの介在物に対してエネルギー分散型X線分光法(EDS)によって行った。
【0035】
結晶粒度
結晶粒度分析を、慣用的なMP35N合金の試料に対して行って、改質MP35N合金の結晶粒度が同様であることを確認した。結晶粒度は、ASTM試験規格 E112に記載されているAbramsの三環切片(three circle intercept)手順を使用して決定した。試料を、約0.178mm(.007インチ)の仕上ワイヤーのための加工焼鈍サイズ(0.254mm(.010インチ))において採取した。
【0036】
表面分析
材料を視覚的に検査するために、約0.178mm(0.007インチ)ワイヤーの三つの約4.57m(15フィート)の試料を、慣用的なMP35N合金及び改質MP35N合金のそれぞれのヒートから得た。それぞれの試料を30×の倍率で、試料の始点、中間点、及び終点の三つのデータの組で視覚的に評価した。それぞれのデータの組は、四つの隣接する約30cm(1フィート)の部分からなっていた。それぞれの部分を、次の基準:1=許容、2=許容限界、3=拒否限界、4=拒否、及び5=全くの拒否、で評価した。許容性の指定された量は、心臓血管の市場における移植可能なワイヤー製品の表面の一体性に対する現時点の要求に基づいている。
【0037】
慣用的なMP35N合金の約0.178mm(0.007インチ)ワイヤーの14個の部分及び改質MP35N合金から製造された約0.178mm(0.007インチ)ワイヤーの16個の部分も、更に表面欠陥に対して渦電流センサーを使用して評価した。検出閾値を、これが、強度において天然に存在する渦電流シグナルの周波数を、非対称な右の分布(skewed right distribution)で切取るように設定した。この分布は、元から存在する表面及びワイヤーの暴露された表面下の特徴物の典型である。それぞれの試料の典型的な表面の変化を特徴づけするために、約300m(1000フート)部分当りの閾値を超えるシグナルの数を数えた。
【0038】
機械的特性
引張特性を、ASTM E8、“Standard Test Methods for Tension Testing Metallic Materials”の最新改訂版によって測定した。疲労特性を評価するために、ワイヤー試料を、ロータリービーム循環試験機器を使用する促進疲労試験にかけた。この種類の促進疲労試験の結果は、歴史的に巻きコイル寿命試験と良好な相関を示している。当技術分野において一般的に知られているように、ロータリービーム試験は、試料を、周期的な引張及び圧縮応力に置くことを含む。それぞれの回転中に、引張中の試験片の部分は、圧縮におかれ、そして次いで引張に循環して戻される。この方法により、応力は完全に循環的様式で逆転される。試験中に使用される3600rpmの高い循環速度は、繰返し可能な結果を生じている。
【0039】
試験中の所望する応力量を得るために、一定の切断長さの材料を、規定された半径の周りに位置させた。慣用的なMP35N合金及び改質合金のそれぞれのヒートの7個の試料を、各種の応力量で試験した。ワイヤーの試料が切断した場合、破壊が起こったと考えた。試験機器はワイヤーの切断を検知し、そして切断にいたるまでの試験時間の長さを分で記録した。
【0040】
実験結果
ミクロな清浄性
慣用的なMP35N材料及び改質された減少したチタンのMP35N材料間の清浄さの比較を、中央値粒度の介在物及び99thパーセンタイルの介在物限度に対して1マイクロメートルの群で、介在物の粒度の頻度分布を評価することによって達成した。それぞれの試料に対して、見出された最大の介在物の粒度及び介在物の全数を、それぞれの材料の種類の平均及び標準偏差に対して評価した。表6は、それぞれの材料の種類に対するデータを要約する。
【0041】
【表6】
【0042】
全ての試料は、BEIを使用して、全体の材料より明るく又は暗く見える特徴物を有していた。より暗い特徴物は、一般的に丸い形態を有し、そして典型的には試料中にランダムに散在していた。より暗い特徴物の大部分は、高い濃度のマグネシウム及び酸化物を持つ介在物であった。いくつかの介在物は、更に硫黄も含有していた。図6は、改質合金中の典型的な粒度の介在物の映像であり、一方、図7は、実験的改質MP35N合金中で見出された最大の介在物の映像である。図8は、実験的合金中の暗い介在物に対する典型的なEDSスペクトルである。
【0043】
図9は、改質MP35N合金中に見出された、バックグラウンドより明るい特徴物の例である。これらの特徴物は、一般的に丸い形態であり、そしてランダムに、そしてストリンガー中に存在していた。最大の特徴物の多くは、隣接した明るい介在物であった。低チタン合金中の明るい介在物に対する典型的なEDSスペクトルを図10に示す。介在物の小さい粒度のために、分析は、介在物及び周囲の基材金属の複合である。
【0044】
慣用的なMP35N合金から製造されたワイヤーの試料において、最大の特徴物は、多数の又は破壊された介在物のストリンガーであった。最大の頻度の介在物は、典型的には視野全体にランダムに散在したミクロン以下の介在物であった。より暗い特徴物の大部分は、高い濃度のチタン及び窒素を持つ介在物であった。より暗い特徴物のいくつかは、チタン及び窒素を含有する外部領域を持つ、高いマグネシウム、アルミニウム、及び酸素である中心からなっていた。他の暗い特徴物は、酸素と共に高い濃度のマグネシウム及び/又はアルミニウムを含む介在物であった。図11及び12は、慣用的なMP35N合金中に存在する典型的な中央値の粒度より大きい介在物の顕微鏡写真である。図11及び12は、図6及び図7中の映像より10ないし20倍小さい倍率で撮られた映像を描写し、そして従って、図11及び図12に示された介在物は、実質的に大きい粒度であることが特記される。
【0045】
図13及び図14は、慣用的なMP35N合金中で見出された暗い介在物の典型的なEDSスペクトルを示す。図13は、介在物の全体のスペクトルを描写し、一方、図14は、材料中の暗い介在物のより暗い中心領域のスペクトルを描写する。
【0046】
慣用的なMP35N合金から製造されたワイヤーの試料中のバックグラウンドより明るい特徴物は、一般的に丸い。特徴物は、ストリンガー中に、そしてランダムに散在する。明るい特徴物のいくつかのクラスターも更に観察された。最大の特徴物の多くは、隣接する明るい介在物であった。明るい特徴物のEDS分析は、高い濃度のモリブデン及びホウ素を示す。典型的な明るい介在物のEDSスペクトルを、図15に示す。このような明るい介在物の一般的に小さい粒度のために、図15の基礎となる分析は、介在物及び周囲の基材金属の複合である。
【0047】
結晶粒度
結果は、実験的改質MP35N合金が、ASTM規格F562に合致する慣用的なMP35N合金と同様な望ましい結晶粒度特性を維持することを示す。表7は、結晶粒度の結果を要約する。図16ないし図18は、試料の結晶粒度を示す顕微鏡写真である。図16及び図17は、それぞれ評価された慣用的なMP35N材料の、縦方向及び横方向の断面である。図18及び図19は、それぞれ実験的な改質MP35N合金の、縦方向及び横方向の断面である。
【0048】
【表7】
【0049】
表面分析
視覚的評価分析に関して、約30cm(1フィート)当りの視覚的データの平均の解釈は、慣用的なMP36N材料と比較して、実験的MP35N材料の表面性能の46%の改良を示した。約30cm(1フィート)部分間の評価における標準偏差の平均の解釈は、慣用的なMP35N材料と比較して、実験的材料の表面の一貫性の54%の改良を示した。約300m(1000フィート)部分間の閾値シグナルを超える範囲は、慣用的なMP35N材料と比較して、実験的材料の表面の一貫性の65%の改良を示した。
【0050】
渦電流分析に関して、約300m(1000フィート)当りの閾値シグナルを超えるデータの平均の解釈は、慣用的なMP35N合金の評価と比較して、実験的な改質MP35N材料の表面及び表面性能の69%の改良を示した。約300m(1000フィート)部分間の閾値シグナルを超える範囲の平均の解釈は、評価された慣用的なMP35N合金と比較して、実験的な合金の表面の一貫性(consistency)の65%の改良を示した。
【0051】
機械的特性
表8に示すように、実験的な改質MP35N材料の引張特性は、慣用的なMP35N材料の試料と匹敵した。試験結果は、Instron試験装置で、約91kg(200ポンド)のロードセル、25.4cm(10インチ)のゲージ長さ、12.7cm(5インチ)/分のクロスヘッド速度を使用して得た。
【0052】
【表8】
【0053】
疲労試験を、実験的及び標準的合金から製造した単繊維ワイヤーに対して、単一駆動チャックを有する、Valley Instrument Rotary Beam Tester,Model 10040を使用して行った。試験を、空気中で約18.3−23.9℃(65−75°F)で行った。“ランアウト(runout)”(即ち、無限数のサイクル)は、ワイヤーの切断を伴わない5千4百万サイクル(約15,000分)と考えた。試料の種類に対するいくつかの応力値量において完了したサイクルの平均数の試験結果を表9に示す。
【0054】
【表9】
【0055】
約14.1t/cm2(200Ksi)の比較的高い応力量で開始して、実験的低チタン合金によって達成された改良は、明白である。改良は継続し、そしてペーシングリードのような外科的インプラントに対する実際の使用の範囲を代表すると考えられる約7.0t/cm2(100ksi)の応力量の近辺において最も劇的である。図20は、典型的なS−N曲線形式に再構成した表9からのデータを示す。
【0056】
疲労試験の目的は、材料の耐久限度を確立することにある。合金の耐久限度は、それより下では金属が亀裂を起こさずに、無限数のサイクルに理論的に耐えるものである極限応力である。表9及び図20に示すように、慣用的なMP35N合金の耐久限度は、行われた試験中で約6.3t/cm2(90ksi)よりも小さい。然しながら、実験的な改質MP35N合金は、約7.0t/cm2(100ksi)においてランアウトに耐えた。これは、改質材料の耐久限度が、約7.0及び約7.7t/cm2(100及び110ksi)間のどこかにあり、一方、標準的MP35N材料のそれは、有意に低いことを示唆する。疲労試験は、実験的な改質合金が、標準的MP35N材料より少なくとも約703kg/cm2(10,000psi)大きい耐久限度を有することを示す。試験結果は、更に実験的な材料の改質された化学組成が、約7.0t/cm2(100ksi)の応力量において少なくとも797%(6,774,228サイクルに対して54,000,000サイクル)の改良を与えたことも示唆する。
【0057】
本明細書中に記載された改質MP35N合金の有意に高い耐久限度によって示唆される外科用インプラントに対するより大きい実用寿命は、医療機器設計技術者のために更なる安全率及び信頼値を提供する。例えば、ペーシングコイル中のワイヤーに適用される応力に寄与する二つの主要な因子は、コイルの直径及びワイヤーの直径である。改質材料のより高い耐久限度は、より小さい直径のコイル及び/又はより小さい直径のワイヤーの使用を可能にして、一方、同じ安全率を与える。
【0058】
実施例3
熱間加工中の上記の実施例1中のヒートWE48の破損に照らして、本発明の開示内の改質MP35N合金の熱間加工性に対する各種の脱酸素の方法の効果を評価した。溶融処理を、各種の方法で改変して、処理された材料中の酸素の量を最低にした。これは、VIM溶融中に使用する脱酸素の方法を改変することによって達成した。
【0059】
VIM溶融中に添加される場合、ニッケル−カルシウム、ニッケル−マグネシウム又はセリウムの非常に遅い時期の添加が、本開示の実験的な改質MP35N合金中の酸素を有意に減少するために有効であることが決定された。表10に示した取鍋の化学組成を有するヒートWF64、WF65及びWF66を調製した。ヒートWF64は、合金中に約156ppmのマグネシウムを与えるための、ニッケル−マグネシウムのVIMにおける添加を含んでいた。ヒートWF65は、合金中に約141ppmのカルシウムを与えるための、ニッケル−カルシウムのVIMにおける添加を含んでいた。ヒートWF66は、合金に約0.01重量パーセントのセリウムを与えるための、セリウムのVIMにおける添加を含んでいた。これらの添加のそれぞれは、酸化物を生成し、そしてこれによって、さもなければ結晶粒界における酸素脆性に寄与し、そして熱間作業中の破損を促進し得る酸素を合金から除去することを意図していた。
【0060】
図21に含まれる表は、ヒートWF64、WF65及びWF66の合金の圧延したままの約3.8cm(1.5インチ)のRDのミクロを分析するためにSEMを使用して見出された介在物を特徴付ける。図21に示すように、合金中に見出された介在物は、殆んど排他的に使用された特定の脱酸素性元素の酸化物(酸化カルシウム、酸化マグネシウム、又は酸化セリウム)であった。認識される量のTiN又は混合金属炭窒化物粒子は、三つのヒートから製造された合金の微細組織中に見出されなかった。これらのヒートから製造された合金は、容易に熱間加工可能であることが見出された。従って、低量のチタンを含む本開示の改質MP35N合金の処理は、VIMにおける添加によって改質されて、TiN又は混合金属炭窒化物粒子の形成を促進することなく、受容可能な熱間加工性を得ることができることが決定された。
【0061】
【表10】
【0062】
実施例3に関して、そして実施例1に関する脱酸素性アルミニウムを使用した添加に関して観察された結果に基づいて、0.05ないし0.15重量パーセントのアルミニウム、5ないし20ppmのカルシウム、5ないし50ppmのマグネシウム、及び5ないし50ppmのセリウムの一つ又はそれより多くを合金に与える適切な材料のVIMにおける添加は、本開示の改質MP35N合金に適切な熱間加工性を与えるために好ましいことであろう。
【0063】
本発明の説明は、本発明の明確な理解に関連する本発明の側面を例示していると理解されるものである。当業者にとって明白であるものである本発明のある種の態様、そして従って本発明のよりよい理解を容易にしないものである態様は、本発明の説明を簡単にするために提供されていない。本発明の態様が説明されてきたが、当業者は、前述の説明を考慮すれば、本発明の多くの改変及び変更を使用することができることを認識するものである。本発明の全てのこのような変更及び改変は、以上の説明及び特許請求の範囲によって包含されることを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、ペーシングリードの一つの態様の例示である。
【図2】図2は、慣用的なMP35N合金中に見出された、酸化アルミニウムの核を含む典型的なTiNの析出物の顕微鏡写真である。
【図3】図3は、慣用的なMP35N合金中に見出された、典型的な酸化アルミニウム粒子の顕微鏡写真である。
【図4】図4は、本明細書中の実施例1中の実験的ヒートWE48の、迅速ひずみ速度熱間引張試験の結果を示すグラフである。
【図5】図5は、本明細書中の実施例1の高チタン、高窒素の実験的ヒートWE54中の窒化チタン粒子(直径概略3マイクロメートル)のSEM映像である。
【図6】図6は、本明細書中の実施例2において考察された低チタン、低窒素の実験的MP35N材料中の典型的な粒度の介在物の、BEIを使用して形成したSEM映像である。
【図7】図7は、本明細書中の実施例2において考察された低チタン、低窒素の実験的MP35N材料中に見出された最大の介在物の、BEIを使用して形成したSEM映像である。
【図8】図8は、本明細書中の実施例2において考察された低チタン、低窒素の実験的MP35N材料中の暗い介在物に対する典型的なEDSスペクトルである。
【図9】図9は、本明細書中の実施例2において考察された低チタン、低窒素の実験的MP35N材料中で見出されたバックグラウンドより明るい介在物の、BEIを使用して形成されたSEM映像である。
【図10】図10は、本明細書中の実施例2において考察された低チタン、低窒素の実験的MP35N材料中の明るい介在物に対する典型的なEDSスペクトルである。
【図11】図11は、本明細書中の実施例2において考察された慣用的なMP35N材料中の典型的な中間より大きい粒度の介在物の、BEIを使用して形成されたSEM映像である。
【図12】図12は、本明細書中の実施例2において考察された慣用的なMP35N材料中において見出された最大の暗い介在物の、BEIによって形成されたSEM映像である。
【図13】図13は、本明細書中の実施例2において考察された慣用的なMP35N材料中に見出されたバックグラウンドより暗い介在物の典型的なEDSスペクトルである。
【図14】図14は、本明細書中の実施例2において考察された慣用的なMP35N材料のワイヤー中の介在物のより暗い中心領域の典型的なEDSスペクトルである。
【図15】図15は、本明細書中の実施例2において考察された慣用的なMP35N材料のワイヤー中の典型的な明るい介在物のEDSスペクトルである。
【図16】図16は、本明細書中の実施例2において考察された慣用的なMP35N材料の調製された縦及び横断面の顕微鏡写真である。
【図17】図17は、本明細書中の実施例2において考慮された慣用的なMP35N材料の調製された縦断面及び横断面の顕微鏡写真である。
【図18】図18は、本明細書中の実施例2において考察された低チタン、低窒素の実験的MP35N材料の、調製された縦断面及び横断面の顕微鏡写真である。
【図19】図19は、本明細書中の実施例2において考察された低チタン、低窒素の実験的MP35N材料の、調製された縦断面及び横断面の顕微鏡写真である。
【図20】図20は、慣用的なMP35N材料及び低チタン、低窒素の実験的MP35N材料に対する、応力量に対する応力サイクルの破壊に至る平均回数のS−Nプロットである。
【図21】図21は、各種の脱酸素の方法を使用して処理された実験的MP35N材料のSEM分析の結果を与える。
【技術分野】
【0001】
本開示は、コバルト、ニッケル、クロム及びモリブデンを含む合金に関し、ここにおいて合金は、好ましい疲労強度を示し、そしてバー、ワイヤー及び他の形態に、表面欠陥を生じ、或いは冷間延伸又は鍛造中に破断若しくは亀裂する受容不可能な傾向を示すことなく加工することができる。本開示は、更に本開示中に記載される合金を製造する方法、及びこのような合金から製造され、又はそれを含む製品にも関する。このような製品は、例えばステント、移植可能な除細動器又はペースメーカーのためのペーシングリード、及び他の外科用インプラントの適用における使用を意図した小さい直径のワイヤーを含む、バー及びワイヤーを含む。
【背景技術】
【0002】
特定化された合金が、外科用インプラントの適用のために開発されている。“MP35N”合金(UNS R30035)としても知られるこのような合金の一つは、例えば、ペーシングパルスを移植された除細動器又はペースメーカーから心臓へ中継するために適合された心臓ステント及びペーシングリードのような、外科用インプラントにおける使用を意図したバー及びワイヤーの形態に製造される。ペーシングリードの一つの例を図1に示す。外科用インプラントの適用における使用のための鍛練したMP35N合金に対する標準規格は、ASTM規格F562−02中に見出すことができ、この全ての開示は、本明細書中に参考文献として援用される。ASTM規格に与えられているように、外科用インプラントの適用に使用されるMP35N合金は、以下の表1に与えた化学組成を有しなければならない。然しながら、化学物質の含有率の測定における研究室間の受容可能な変化を考慮するために、ASTM規格(ASTM F562−02の表2)は、MP35合金の測定された化学組成の表1に示した最小又は最大値から、表1の右端の列に示した量だけ変化することを許容している。本開示中で使用される場合、“MP35N”合金は、以下の表1及びASTM規格F562−02中に記載されたとおりの化学的組成を有するコバルト−ニッケル−クロム−モリブデン合金を指す。
【0003】
【表1】
【0004】
ある種の技術的問題が、ペーシングリード及び他の外科用インプラントの適用に使用するためのMP35N合金の製造中に遭遇するであろう。特に、問題のある表面欠陥が、合金を、ワイヤーに冷間延伸するときに現れるであろう。合金を、例えばペーシングリードとして使用するための小さいゲージ番号のワイヤーに延伸する場合、表面欠陥は、延伸加工の後のほうの段階中に、ワイヤーが、このような適用のために典型的に使用される最終サイズである約0.18mm(0.007インチ)直径に近づいた場合に生じる可能性が大である。延伸に関連する表面欠陥は、これらが有意な時間及び資金が製品に投資された後に現れることができるために、特に問題がある。ワイヤーが小さい直径に近づくと、表面欠陥は、冷間延伸中にワイヤーの破断を起こす。これは、ワイヤー生産中の低い加工収率となり、これは、ワイヤーの代価を有意に増加させる。表面欠陥を有するMP35N合金ワイヤーから形成されたペーシングリード及び他の外科用インプラントは、更に減少した疲労抵抗性を有するかもしれず、そして破断に対して敏感であろう。結果としての減少した使用期間は、インプラントの早期の交換を必要とするだろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
慣用的なMP35N合金の冷間延伸中に遭遇する前述の技術的問題を考慮すれば、同様な外科用インプラントの適用のために適した、そして更に改良された疲労強度を示し、そしてバー、ワイヤー及び他の適した形態に、表面欠陥を生じる、或いは冷間延伸又は鍛造中に破断若しくは亀裂する受容不可能な傾向を伴わずに、適当に加工することができるコバルト−ニッケル−クロム合金に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の必要性に対処するために、本開示は、全合金の重量に基づいた重量パーセントで:少なくとも20のコバルト;32.7ないし37.3のニッケル;18.75ないし21.25のクロム;8.85ないし10.65のモリブデン;及び30ppm未満の窒素を含む合金に関する。ある態様において、合金は、窒化チタン及び混合金属炭窒化物の介在物を完全に又は実質的に含まない。
【0007】
本開示は、更に全合金の重量に基づいた重量パーセントで:少なくとも20のコバルト;33.0ないし37.0のニッケル;19.0ないし21.0のクロム;9.0ないし10.5のモリブデン;0.025以下の炭素;0.15以下のマンガン;0.15以下のケイ素;0.015以下のリン;1.0以下のチタン;0.010以下の硫黄;1.0以下の鉄;及び0.015以下のホウ素を含む合金に関する。合金は、窒化チタン及び混合金属炭窒化物の介在物を完全に又は実質的に含まない。
【0008】
本開示は、更に本明細書中に記載される新規な合金のいずれかを含む製品に関する。製品の例は、バー、ワイヤー、管、外科用インプラント機器、外科用インプラント機器の部品、移植可能な除細動器、移植可能な除細動器のための部品、移植可能なペースメーカー、移植可能なペースメーカーの部品、ペーシングリード、及び心臓ステントを含む。製品が、バー又はワイヤーである場合、物品は、更にASTM標準規格F562に準拠した外科用インプラントの適用において使用するために認可されたものであることができる。
【0009】
本開示は、更に合金を製造する方法に関し、ここにおいてこの方法は、全合金重量に基づいた重量パーセントで:少なくとも20重量パーセントのコバルト;33.0ないし37.0重量パーセントのニッケル;19.0ないし21.0重量パーセントのクロム;9.0ないし10.5重量パーセントのモリブデン;及び30ppm未満の窒素を含む組成を有するVARインゴットを調製することを含む。この方法のある態様において、インゴットは、窒化チタン及び混合金属炭窒化物の介在物を、完全に又は実質的に含まない。この方法は、更にインゴットをバー、ワイヤー、及び管の一つに加工することも含み、これは、更に外科用インプラント装置、外科用インプラント装置の部品、移植可能な除細動器の部品、移植可能なペースメーカーの部品、ペーシングリード、及び心臓ステントの一つに加工することができる。
【0010】
本開示の新規な合金は、ある態様において、ワイヤーに延伸された場合、慣用的な化学組成を有するMP35N合金から製造された延伸ワイヤーによって普通に示される表面仕上に対して、有意に改良された表面仕上を示すコバルト−ニッケル−クロム−モリブデン合金である。本開示の合金の態様は、更に、慣用的なMP35N合金に対して改良された疲労抵抗性を、そしてペーシングリード及びある種の他の外科用インプラントの適用において使用するために必要とされる小さい直径に延伸された場合、慣用的なMP35N合金と比較して、有意に低い破断率からの利益を示す。
【0011】
これらの及び他の利益は、以下のある態様の説明を考慮することによって明白となるものである。
実施態様の説明
冷間延伸及び鍛造中のMP35N合金の不良な性能が、大きい硬質の窒化チタン(TiN)介在物の存在にあることは決定されている。更に、比較的高い量の窒素を含むMP35N合金において、大きい硬質の立方体状の混合金属炭窒化物の介在物が、合金中で形成され得る。混合金属炭窒化物は、主としてチタン及びクロムの炭窒化物である。延伸及び鍛造における慣用的なMP35N合金の主たる破壊の機構は、粒子状介在物における疲労の開始である。TiN及び混合金属炭窒化物の介在物は、溶融後の合金の固化中に形成され、そして粒子は、その後の熱処理又は熱機械的加工によって除去或いは破壊することができない。その代わり、介在物がその注型されたときの粒度で最終製品中に保持されることが決定されている。
【0012】
硬質のTiN及び混合金属炭窒化物粒子は、慣用的なMP35N材料の冷間延伸中に延伸ダイを損傷する。損傷したダイを経由して延伸されたワイヤーは、ワイヤー表面の掻き傷の形態の表面欠陥を有するだろう。ダイの損傷及び結果としてのワイヤー表面の欠陥は、収率を有意に減少する。延伸されたワイヤーが小さい直径になるに従い、窒化物及び炭窒化物粒子は、ワイヤーの断面の大きい部分を占め、そして従って、材料を弱くし、従って延伸中の破断を起こす。粒子は、更に疲労負荷中の応力増加物質として作用し、そして疲労亀裂の開始に寄与し、これは材料及び関連する装置の早期の損傷となるだろう。
【0013】
本開示のコバルト−ニッケル−クロム−モリブデン合金の態様は、上記の表1及びASTM規格F562中に列挙された範囲内の化学組成を有する。然しながら、この態様は、慣用的なMP35N合金の化学組成とは異なった化学組成を有する。これらの化学組成の差は、ASTM規格F562に含まれるMP35N合金に対する幅広い化学組成内に入るが、慣用的なMP35N合金より実質的に低い量の窒素及び/又はチタンを含む合金を提供する。例えば、ASTM規格F562に準拠して製造された慣用的なMP35N合金は、典型的には少なくとも約50ppmの窒素及び約0.95重量パーセントのチタンを含む。本開示に関する改質されたMP35N合金中の化学組成の差は、合金中の硬質のTiN及び混合金属炭窒化物粒子の介在物の形成を抑制することが見出されている。これは、次に、合金をバー及びワイヤーの形態に加工する能力を改良し、そして合金及び合金から製造される製品の疲労抵抗性を向上する。
【0014】
従って、本開示のコバルト−ニッケル−クロム−モリブデン合金の態様は、有意な量のTiN及び混合金属炭窒化物粒子の介在物を含まず、そして合金は、このような粒子を含まないか、又は実質的に含まない。有意な量の硬質粒子が存在しないことは、延伸ダイの損傷を抑制し、そしてこれによって延伸されたワイヤーの表面仕上を、損傷したダイを経由して延伸された慣用的なMP35Nに対して有意に改良する。TiN及び混合金属炭窒化物粒子の量の減少は、更に本明細書中に記載される改質MP35N合金の疲労抵抗性を、慣用的なMP35N合金から慣用的な加工法を使用して形成されたワイヤー又は他の物品に対して有意に改良する。更に、有意な量のTiN及び混合金属炭窒化物粒子が存在しないために、ワイヤー延伸での、より低いワイヤーの破断の発生が実現する。
【0015】
従って、本明細書中に記載される改質MP35N合金の性能及び特質における前述の改良は、合金中のある種の粒子の介在物の存在を有意に減少又は排除することによって得られる。これは、例えば、溶融装入物を製造するために使用される原材料中の窒素及び/又はチタンの量を減少することによって達成することができる。窒素及び/又はチタンの減少は、更に材料の冷間作業又は鍛造に先立って、材料を適当に加工することによっても達成することができる。当業者は、本開示を読むことにより、MP35N合金中の窒素及び/又はチタンの量を減少するための更なる方法を把握することができ、そしてこのような方法が、本明細書中に明確に記述されていないが、本開示によって包含されることを意図している。
【0016】
本開示のコバルト−ニッケル−クロム−モリブデン合金の態様は、更に慣用的なMP35N合金より有意に低い量に酸素を制限するために処方又は加工することもできる。このような減少は、本開示の改質MP35N合金を、材料を破断することなく熱間作業する能力を援助する。本開示の合金をバー又はワイヤーに鍛造中に亀裂させないことをよりよく確実にするために、例えば合金中の結晶粒界における酸素脆化の発生を抑制する工程を取ることができる。これは、例えば以下の実施例中に記載されるある種の脱酸素技術によって達成することができる。
【0017】
ASTM規格F562に準拠するペーシングリード又は他の外科用インプラントの適用に使用するための慣用的なMP35N合金に対する標準的な生産溶融経路は、真空誘導溶解法(VIM)及び真空電極式アーク溶解法(VAR)の組合せである。慣用的なMP35N合金の典型的な取鍋及びインゴットの化学組成を、以下の表2に与える(窒素及び特定の他の元素の量は決定されなかった)。慣用的なMP35N材料中で観察された平均の粒子サイズは、1−2マイクロメートルの球状のAl2O3の核を伴う、立方体状の6マイクロメートルのTiNの析出であり、そしてこのような粒子の一つを図2に示す。TiNの殻を伴わない酸化アルミニウムも、更に慣用的な材料中で、図3に示すように観察された。本開示の合金の微細組織中のTiN及び混合金属炭窒化物粒子の発生を有意に減少又は排除するために、一つの経路は、適当に減少された量の窒素及び/又はチタンを含む高品質の原材料を思慮深く選択することである。合金中の窒素の量の減少は、TiN及び混合金属炭窒化物の形成を抑制するものであるが、MP35N合金中の窒素の溶解度は知られておらず、従って、MP35Nに対する溶融工程中のチタンのような窒化物の構成物の排除も更に考慮した。例えば、チタンの減少又は排除は、例えば、強度に制約されない、そしてこのような適用に対するASTM規格が、最小強度の制限を含んでいないために、ペーシングリードのような適用において可能であると考えられた。
【0018】
本開示内の制約された数の改質MP35N合金の態様を説明する実験の結果を、以下に開示する。
実施例1
WE48、WE52、WE53及びWE54と称する四つの約68kg(150ポンド)のヒートを、VIM−VAR処理し、そして12.7cm(5インチ)のRDビレットに鍛造した。それぞれのヒートの取鍋の化学組成を、慣用的MP35N合金の、特定のヒートに対する取鍋及びVIMの化学組成と共に表2に示す。実験的な改質MP35Nのヒートを、ASTM規格F562に準拠して製造された慣用的なMP35Nに対する典型的な化学組成と比較して、表3に示したチタン及び窒素に対する一般的な目的で処方した。表3のみの目的のために、“高”チタンは、0.70重量パーセント又はそれより多いと考え、そして“低”チタンは、ppmの範囲の濃度と考える。更に表3のみの目的のために、“高”窒素は、0.01重量パーセント又はそれより多いと考え、そして“低”窒素は、0.001重量パーセントよりも少ないと考える。直ぐ上で記載したような表3に関連する用語“高”及び“低”の使用は、本開示又は特許請求の範囲中の他の場所で使用されるこの用語の意味とは関係なく、又はこのような意味を有しないことは理解されるべきである。
【0019】
一つの実験的ヒートWE48は、鍛造中に重度の亀裂を生じ、そして圧延に適していなかった。残りのヒートは、ハンドミルで約2.659cm(1.047インチ)のRDバーに圧延した。ヒートを、バーを焼鈍した後、ミクロな清浄性(microcleanliness)及び機械的特性に対して評価した。
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】
ヒートWE52、WE53及びWE54から製造したバーの機械的特性及び結晶粒度を、表4に示す。バーを約1052℃(1925°F)で2時間焼鈍し、そして次いで水で急冷してから、試験した。
【0023】
【表4】
【0024】
迅速ひずみ速度熱間引張試験を、プレス鍛造中に重度に亀裂を起こしたヒートWE48の延性を測定するために使用した。結果を図4に示す。材料の低い延性は、51ppmの高い酸素の量、及びアルミニウム及びチタンのような酸化物形成元素の欠如に起因し、これらは、結晶粒界の酸素脆化を防止する化合物を形成するものである。16ppmの酸素の量を有する他の低チタンのヒートWE53は、鍛造又は圧延による亀裂を起こさなかった。この結果は、低チタンヒート中の酸素の量が、加工及び/又は化学組成の小さい変化によって容易に影響され得る中間の不安定な境界の近辺にあったことを示した。従って、結晶粒界における酸素脆化の有意な発生を防止するための更に強い脱酸素の方法を含む加工管理を伴う更なるヒートが考慮された。
【0025】
最低の量のチタン及び窒素の両方を含むヒートWE48、及び最高の量のチタン及び窒素の両方を含むヒートWE54のミクロな清浄性の評価を、標準的ASTM E45及び走査電子顕微鏡(SEM)のランダム粒子分析によって行った。100×におけるASTM E45測定は、いずれもの粒子を検出しなかった。WE54のSEM分析は、概略3マイクロメートルの粒度のTiN粒子を明らかにした。このような粒子の一つを図5に示す。粒子の粒度は、生産ヒートで製造された慣用的なMP35N合金中の典型的なTiN粒子よりある程度小さかった。慣用的なMP35N合金の生産ヒートに対するヒートWE54のTiN粒子の粒度のわずかな減少は、実験的ヒートの製造において使用したより小さいパイロットプラントのVAR法の、生産規模のVAR法に対するより速い冷却速度の関数であったと考えられる。ヒートWE48(表3に関して、低チタン、低窒素のヒート)におけるSEM分析によって、粒子は検出されなかった。
【0026】
この実施例の結果に基けば、改質MP35N合金の一つの好ましい態様は、ppmの量より多い窒素を含まず、そして更に慣用的なMP35N合金より低い量のチタンを含む。結果に基づけば、改質MP35N合金の一つの好ましい態様は、TiN及び混合金属炭窒化物のいずれもの有意な形成を抑制するために、30ppm未満の窒素を含む。更に好ましい量は、20ppm未満の窒素であり、これは、問題のある粒子の介在物が材料中に存在しないことをより良好に確実にするものである。このような窒素の量は、ASTM規格F562に従って処方された慣用的なMP35N材料より有意に低い。更に、本開示の合金は、いずれもの有意な量のTiN及び混合金属炭窒化物粒子が存在しないことをより良好に確実にするために、所望により0.7重量パーセント未満のチタンを、そして更に好ましくは0.03重量パーセント未満のチタンを含むことができる。
【0027】
本開示の改質MP35N合金が、結晶粒界の酸素脆化を抑制し、そして適切な熱間作業性を可能にするように、十分な量の脱酸素を伴うことも更に好ましい。これは、例えば0.05ないし0.15重量パーセントのアルミニウムを合金中に含んで、加工された合金中の酸素の量を十分に減少することによって達成することができる。アルミニウムが、小さい(即ち、3マイクロメートルより小さい)、一般的に球状の酸化アルミニウム粒子の形成を促進することが予測され、これは、慣用的なMP35N中に典型的に存在する立方体状のTiN粒子よりも、疲労寿命特性に対して有害ではない。合金の酸素含有率を減少するための他の技術は、以下の実施例中で検討され、そして装入物のVIM溶融中の脱酸素の方法を変更することを含む。
【0028】
TiN及び混合金属炭窒化物の介在物を完全に又は実質的に排除するための信頼できる方法は、窒素及びチタンの一方或いは両方を装入された原材料から完全に又は実質的に排除することによる。窒素及びチタンの両方を原材料から完全に又は実質的に排除することは、有意な量のいずれかの元素が不注意に装入物に導入された場合、そのようにすることが安全率を与える限り好ましい。然しながら、MP35N合金からチタンの全て又は実質的に全てを排除することは、加工中の合金の不十分な脱酸素のみが行われることとなり、そして比較的低い鍛造性を有する合金が製造されることが決定されている。先に記載したように、一つの解答は、例えばアルミニウム含有率を0.05ないし0.15重量パーセントに増加して、十分な脱酸素を与え、そして鍛造中の破損を抑制することである。十分な量の脱酸素を与えて、改質MP35N合金の適切な熱間加工性を確実にする、減少されたチタンの量を含む、他の戦略は、以下の実施例3において検討される。
【0029】
実施例2
加工及び試験手順
比較の目的のために、標準的なMP35N合金の化学組成及び減少された量のチタンを含む改質MP35Nの化学組成で合金を製造した。実験的な改質合金の化学組成は表5に与えられ、そして慣用的なMP35N合金の典型的な化学組成(約0.95重量パーセント)に対して有意に減少された量のチタンを含む。
【0030】
【表5】
【0031】
合金を、約1860kg(3,000ポンド)のVIM電極として用意し、これを、約43.2cm(17インチ)直径のインゴットにVARで再溶融した。それぞれのVARインゴットを拡散焼なましして微小偏析を減少させ、そして次いでGFM機で回転鍛造して、約10.2cm(4インチ)厚さのビレットを製造した。それぞれのビレットを連続圧延機で約5.56mm(0.219インチ)厚さのコイルに熱間圧延した。コイルを焼鈍し、約5.49mm(0.216インチ)厚さにシェービングし、そして延伸のための準備として酸洗した。延伸は、カーバイドダイ及び粉末潤滑剤を使用して約1.63mm(0.064インチ)まで行った。約0.178mm(0.007インチ)の最終直径までの更なる加工は、ダイヤモンドダイ及び鉱油の潤滑剤を使用して行った。材料の評価のために、最終ワイヤーの直径は、約±0.005mm(±0.0002インチ)の許容変化を伴う約0.178mm(0.007インチ)でなければならず、そして目標は、最終ワイヤーにおいて約21.1−22.5t/cm2(300−320ksi)の極限引張強度を維持することであった。
【0032】
合金及び合金から延伸されたワイヤーを評価するために使用した試験手順の説明、並びに試験から誘導されたいくつかの観察は、以下のとおりである。
ミクロな清浄性
一連の8個のASTM F562標準試料を、MP35N合金から冷間延伸された2.54mm(0.100インチ)直径のワイヤーから切断した。8個の試料は、慣用的なMP35N合金の5個の別個の溶融マスターヒートを代表した。改質された減少したチタンのMP35N合金の二つの試料も、更に同じ溶融マスターヒートから製造された2.54cm(1.0インチ)及び約5.49mm(0.216インチ)直径の冷間(hard)延伸材料から切断した。全ての試料を熱硬化性化合物に据付けて、それぞれの断片の全長にわたる縦方向断面を得た。据付けられた試験片を研磨し、そして金属組織学的に磨いて、試料の縦方向中心に近い磨かれた平面を得た。
【0033】
調製した断面を、後方散乱電子像(BEI)を使用した走査電子顕微鏡(SEM)で検査した。それぞれの試料の断面に対して、調製された断面の代表的な部分を示す160枚の映像を1000×の倍率で1.77mm2の全試験面積に対して得た。バックグラウンドより暗く又は明るく見える特徴物(feature)の分析を、映像分析ソフトウェアを使用して行った。コントラストを、母材より高い平均原子数(mean atomic number)を有する特徴物が、より低い平均原子数を有する特徴物と比較してより明るく見えるように調節した。最大の寸法を、それぞれの映像中のそれぞれの個々の特徴物に対して記録した。映像化された介在物を、最大の寸法によって1マイクロメートルの群に、検出された最大の介在物まで分類した。いくつかの最大寸法の測定値は、“ストリンガー(stringer)”の形成において起こる別個の、しかし個々の介在物として識別できない介在物の結果であると考えられる。0.2マイクロメートルより小さい特徴物は数えなかった。
【0034】
前述の分析を、それぞれの試料の断面の160枚の映像のそれぞれについて行った。この方法により、標準的なMP35N合金及び実験的な低チタン合金間の清浄さの直接的な比較が達成された。選択された介在物を、高倍率で検査し、そして定量的化学分析を、いくつかの介在物に対してエネルギー分散型X線分光法(EDS)によって行った。
【0035】
結晶粒度
結晶粒度分析を、慣用的なMP35N合金の試料に対して行って、改質MP35N合金の結晶粒度が同様であることを確認した。結晶粒度は、ASTM試験規格 E112に記載されているAbramsの三環切片(three circle intercept)手順を使用して決定した。試料を、約0.178mm(.007インチ)の仕上ワイヤーのための加工焼鈍サイズ(0.254mm(.010インチ))において採取した。
【0036】
表面分析
材料を視覚的に検査するために、約0.178mm(0.007インチ)ワイヤーの三つの約4.57m(15フィート)の試料を、慣用的なMP35N合金及び改質MP35N合金のそれぞれのヒートから得た。それぞれの試料を30×の倍率で、試料の始点、中間点、及び終点の三つのデータの組で視覚的に評価した。それぞれのデータの組は、四つの隣接する約30cm(1フィート)の部分からなっていた。それぞれの部分を、次の基準:1=許容、2=許容限界、3=拒否限界、4=拒否、及び5=全くの拒否、で評価した。許容性の指定された量は、心臓血管の市場における移植可能なワイヤー製品の表面の一体性に対する現時点の要求に基づいている。
【0037】
慣用的なMP35N合金の約0.178mm(0.007インチ)ワイヤーの14個の部分及び改質MP35N合金から製造された約0.178mm(0.007インチ)ワイヤーの16個の部分も、更に表面欠陥に対して渦電流センサーを使用して評価した。検出閾値を、これが、強度において天然に存在する渦電流シグナルの周波数を、非対称な右の分布(skewed right distribution)で切取るように設定した。この分布は、元から存在する表面及びワイヤーの暴露された表面下の特徴物の典型である。それぞれの試料の典型的な表面の変化を特徴づけするために、約300m(1000フート)部分当りの閾値を超えるシグナルの数を数えた。
【0038】
機械的特性
引張特性を、ASTM E8、“Standard Test Methods for Tension Testing Metallic Materials”の最新改訂版によって測定した。疲労特性を評価するために、ワイヤー試料を、ロータリービーム循環試験機器を使用する促進疲労試験にかけた。この種類の促進疲労試験の結果は、歴史的に巻きコイル寿命試験と良好な相関を示している。当技術分野において一般的に知られているように、ロータリービーム試験は、試料を、周期的な引張及び圧縮応力に置くことを含む。それぞれの回転中に、引張中の試験片の部分は、圧縮におかれ、そして次いで引張に循環して戻される。この方法により、応力は完全に循環的様式で逆転される。試験中に使用される3600rpmの高い循環速度は、繰返し可能な結果を生じている。
【0039】
試験中の所望する応力量を得るために、一定の切断長さの材料を、規定された半径の周りに位置させた。慣用的なMP35N合金及び改質合金のそれぞれのヒートの7個の試料を、各種の応力量で試験した。ワイヤーの試料が切断した場合、破壊が起こったと考えた。試験機器はワイヤーの切断を検知し、そして切断にいたるまでの試験時間の長さを分で記録した。
【0040】
実験結果
ミクロな清浄性
慣用的なMP35N材料及び改質された減少したチタンのMP35N材料間の清浄さの比較を、中央値粒度の介在物及び99thパーセンタイルの介在物限度に対して1マイクロメートルの群で、介在物の粒度の頻度分布を評価することによって達成した。それぞれの試料に対して、見出された最大の介在物の粒度及び介在物の全数を、それぞれの材料の種類の平均及び標準偏差に対して評価した。表6は、それぞれの材料の種類に対するデータを要約する。
【0041】
【表6】
【0042】
全ての試料は、BEIを使用して、全体の材料より明るく又は暗く見える特徴物を有していた。より暗い特徴物は、一般的に丸い形態を有し、そして典型的には試料中にランダムに散在していた。より暗い特徴物の大部分は、高い濃度のマグネシウム及び酸化物を持つ介在物であった。いくつかの介在物は、更に硫黄も含有していた。図6は、改質合金中の典型的な粒度の介在物の映像であり、一方、図7は、実験的改質MP35N合金中で見出された最大の介在物の映像である。図8は、実験的合金中の暗い介在物に対する典型的なEDSスペクトルである。
【0043】
図9は、改質MP35N合金中に見出された、バックグラウンドより明るい特徴物の例である。これらの特徴物は、一般的に丸い形態であり、そしてランダムに、そしてストリンガー中に存在していた。最大の特徴物の多くは、隣接した明るい介在物であった。低チタン合金中の明るい介在物に対する典型的なEDSスペクトルを図10に示す。介在物の小さい粒度のために、分析は、介在物及び周囲の基材金属の複合である。
【0044】
慣用的なMP35N合金から製造されたワイヤーの試料において、最大の特徴物は、多数の又は破壊された介在物のストリンガーであった。最大の頻度の介在物は、典型的には視野全体にランダムに散在したミクロン以下の介在物であった。より暗い特徴物の大部分は、高い濃度のチタン及び窒素を持つ介在物であった。より暗い特徴物のいくつかは、チタン及び窒素を含有する外部領域を持つ、高いマグネシウム、アルミニウム、及び酸素である中心からなっていた。他の暗い特徴物は、酸素と共に高い濃度のマグネシウム及び/又はアルミニウムを含む介在物であった。図11及び12は、慣用的なMP35N合金中に存在する典型的な中央値の粒度より大きい介在物の顕微鏡写真である。図11及び12は、図6及び図7中の映像より10ないし20倍小さい倍率で撮られた映像を描写し、そして従って、図11及び図12に示された介在物は、実質的に大きい粒度であることが特記される。
【0045】
図13及び図14は、慣用的なMP35N合金中で見出された暗い介在物の典型的なEDSスペクトルを示す。図13は、介在物の全体のスペクトルを描写し、一方、図14は、材料中の暗い介在物のより暗い中心領域のスペクトルを描写する。
【0046】
慣用的なMP35N合金から製造されたワイヤーの試料中のバックグラウンドより明るい特徴物は、一般的に丸い。特徴物は、ストリンガー中に、そしてランダムに散在する。明るい特徴物のいくつかのクラスターも更に観察された。最大の特徴物の多くは、隣接する明るい介在物であった。明るい特徴物のEDS分析は、高い濃度のモリブデン及びホウ素を示す。典型的な明るい介在物のEDSスペクトルを、図15に示す。このような明るい介在物の一般的に小さい粒度のために、図15の基礎となる分析は、介在物及び周囲の基材金属の複合である。
【0047】
結晶粒度
結果は、実験的改質MP35N合金が、ASTM規格F562に合致する慣用的なMP35N合金と同様な望ましい結晶粒度特性を維持することを示す。表7は、結晶粒度の結果を要約する。図16ないし図18は、試料の結晶粒度を示す顕微鏡写真である。図16及び図17は、それぞれ評価された慣用的なMP35N材料の、縦方向及び横方向の断面である。図18及び図19は、それぞれ実験的な改質MP35N合金の、縦方向及び横方向の断面である。
【0048】
【表7】
【0049】
表面分析
視覚的評価分析に関して、約30cm(1フィート)当りの視覚的データの平均の解釈は、慣用的なMP36N材料と比較して、実験的MP35N材料の表面性能の46%の改良を示した。約30cm(1フィート)部分間の評価における標準偏差の平均の解釈は、慣用的なMP35N材料と比較して、実験的材料の表面の一貫性の54%の改良を示した。約300m(1000フィート)部分間の閾値シグナルを超える範囲は、慣用的なMP35N材料と比較して、実験的材料の表面の一貫性の65%の改良を示した。
【0050】
渦電流分析に関して、約300m(1000フィート)当りの閾値シグナルを超えるデータの平均の解釈は、慣用的なMP35N合金の評価と比較して、実験的な改質MP35N材料の表面及び表面性能の69%の改良を示した。約300m(1000フィート)部分間の閾値シグナルを超える範囲の平均の解釈は、評価された慣用的なMP35N合金と比較して、実験的な合金の表面の一貫性(consistency)の65%の改良を示した。
【0051】
機械的特性
表8に示すように、実験的な改質MP35N材料の引張特性は、慣用的なMP35N材料の試料と匹敵した。試験結果は、Instron試験装置で、約91kg(200ポンド)のロードセル、25.4cm(10インチ)のゲージ長さ、12.7cm(5インチ)/分のクロスヘッド速度を使用して得た。
【0052】
【表8】
【0053】
疲労試験を、実験的及び標準的合金から製造した単繊維ワイヤーに対して、単一駆動チャックを有する、Valley Instrument Rotary Beam Tester,Model 10040を使用して行った。試験を、空気中で約18.3−23.9℃(65−75°F)で行った。“ランアウト(runout)”(即ち、無限数のサイクル)は、ワイヤーの切断を伴わない5千4百万サイクル(約15,000分)と考えた。試料の種類に対するいくつかの応力値量において完了したサイクルの平均数の試験結果を表9に示す。
【0054】
【表9】
【0055】
約14.1t/cm2(200Ksi)の比較的高い応力量で開始して、実験的低チタン合金によって達成された改良は、明白である。改良は継続し、そしてペーシングリードのような外科的インプラントに対する実際の使用の範囲を代表すると考えられる約7.0t/cm2(100ksi)の応力量の近辺において最も劇的である。図20は、典型的なS−N曲線形式に再構成した表9からのデータを示す。
【0056】
疲労試験の目的は、材料の耐久限度を確立することにある。合金の耐久限度は、それより下では金属が亀裂を起こさずに、無限数のサイクルに理論的に耐えるものである極限応力である。表9及び図20に示すように、慣用的なMP35N合金の耐久限度は、行われた試験中で約6.3t/cm2(90ksi)よりも小さい。然しながら、実験的な改質MP35N合金は、約7.0t/cm2(100ksi)においてランアウトに耐えた。これは、改質材料の耐久限度が、約7.0及び約7.7t/cm2(100及び110ksi)間のどこかにあり、一方、標準的MP35N材料のそれは、有意に低いことを示唆する。疲労試験は、実験的な改質合金が、標準的MP35N材料より少なくとも約703kg/cm2(10,000psi)大きい耐久限度を有することを示す。試験結果は、更に実験的な材料の改質された化学組成が、約7.0t/cm2(100ksi)の応力量において少なくとも797%(6,774,228サイクルに対して54,000,000サイクル)の改良を与えたことも示唆する。
【0057】
本明細書中に記載された改質MP35N合金の有意に高い耐久限度によって示唆される外科用インプラントに対するより大きい実用寿命は、医療機器設計技術者のために更なる安全率及び信頼値を提供する。例えば、ペーシングコイル中のワイヤーに適用される応力に寄与する二つの主要な因子は、コイルの直径及びワイヤーの直径である。改質材料のより高い耐久限度は、より小さい直径のコイル及び/又はより小さい直径のワイヤーの使用を可能にして、一方、同じ安全率を与える。
【0058】
実施例3
熱間加工中の上記の実施例1中のヒートWE48の破損に照らして、本発明の開示内の改質MP35N合金の熱間加工性に対する各種の脱酸素の方法の効果を評価した。溶融処理を、各種の方法で改変して、処理された材料中の酸素の量を最低にした。これは、VIM溶融中に使用する脱酸素の方法を改変することによって達成した。
【0059】
VIM溶融中に添加される場合、ニッケル−カルシウム、ニッケル−マグネシウム又はセリウムの非常に遅い時期の添加が、本開示の実験的な改質MP35N合金中の酸素を有意に減少するために有効であることが決定された。表10に示した取鍋の化学組成を有するヒートWF64、WF65及びWF66を調製した。ヒートWF64は、合金中に約156ppmのマグネシウムを与えるための、ニッケル−マグネシウムのVIMにおける添加を含んでいた。ヒートWF65は、合金中に約141ppmのカルシウムを与えるための、ニッケル−カルシウムのVIMにおける添加を含んでいた。ヒートWF66は、合金に約0.01重量パーセントのセリウムを与えるための、セリウムのVIMにおける添加を含んでいた。これらの添加のそれぞれは、酸化物を生成し、そしてこれによって、さもなければ結晶粒界における酸素脆性に寄与し、そして熱間作業中の破損を促進し得る酸素を合金から除去することを意図していた。
【0060】
図21に含まれる表は、ヒートWF64、WF65及びWF66の合金の圧延したままの約3.8cm(1.5インチ)のRDのミクロを分析するためにSEMを使用して見出された介在物を特徴付ける。図21に示すように、合金中に見出された介在物は、殆んど排他的に使用された特定の脱酸素性元素の酸化物(酸化カルシウム、酸化マグネシウム、又は酸化セリウム)であった。認識される量のTiN又は混合金属炭窒化物粒子は、三つのヒートから製造された合金の微細組織中に見出されなかった。これらのヒートから製造された合金は、容易に熱間加工可能であることが見出された。従って、低量のチタンを含む本開示の改質MP35N合金の処理は、VIMにおける添加によって改質されて、TiN又は混合金属炭窒化物粒子の形成を促進することなく、受容可能な熱間加工性を得ることができることが決定された。
【0061】
【表10】
【0062】
実施例3に関して、そして実施例1に関する脱酸素性アルミニウムを使用した添加に関して観察された結果に基づいて、0.05ないし0.15重量パーセントのアルミニウム、5ないし20ppmのカルシウム、5ないし50ppmのマグネシウム、及び5ないし50ppmのセリウムの一つ又はそれより多くを合金に与える適切な材料のVIMにおける添加は、本開示の改質MP35N合金に適切な熱間加工性を与えるために好ましいことであろう。
【0063】
本発明の説明は、本発明の明確な理解に関連する本発明の側面を例示していると理解されるものである。当業者にとって明白であるものである本発明のある種の態様、そして従って本発明のよりよい理解を容易にしないものである態様は、本発明の説明を簡単にするために提供されていない。本発明の態様が説明されてきたが、当業者は、前述の説明を考慮すれば、本発明の多くの改変及び変更を使用することができることを認識するものである。本発明の全てのこのような変更及び改変は、以上の説明及び特許請求の範囲によって包含されることを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、ペーシングリードの一つの態様の例示である。
【図2】図2は、慣用的なMP35N合金中に見出された、酸化アルミニウムの核を含む典型的なTiNの析出物の顕微鏡写真である。
【図3】図3は、慣用的なMP35N合金中に見出された、典型的な酸化アルミニウム粒子の顕微鏡写真である。
【図4】図4は、本明細書中の実施例1中の実験的ヒートWE48の、迅速ひずみ速度熱間引張試験の結果を示すグラフである。
【図5】図5は、本明細書中の実施例1の高チタン、高窒素の実験的ヒートWE54中の窒化チタン粒子(直径概略3マイクロメートル)のSEM映像である。
【図6】図6は、本明細書中の実施例2において考察された低チタン、低窒素の実験的MP35N材料中の典型的な粒度の介在物の、BEIを使用して形成したSEM映像である。
【図7】図7は、本明細書中の実施例2において考察された低チタン、低窒素の実験的MP35N材料中に見出された最大の介在物の、BEIを使用して形成したSEM映像である。
【図8】図8は、本明細書中の実施例2において考察された低チタン、低窒素の実験的MP35N材料中の暗い介在物に対する典型的なEDSスペクトルである。
【図9】図9は、本明細書中の実施例2において考察された低チタン、低窒素の実験的MP35N材料中で見出されたバックグラウンドより明るい介在物の、BEIを使用して形成されたSEM映像である。
【図10】図10は、本明細書中の実施例2において考察された低チタン、低窒素の実験的MP35N材料中の明るい介在物に対する典型的なEDSスペクトルである。
【図11】図11は、本明細書中の実施例2において考察された慣用的なMP35N材料中の典型的な中間より大きい粒度の介在物の、BEIを使用して形成されたSEM映像である。
【図12】図12は、本明細書中の実施例2において考察された慣用的なMP35N材料中において見出された最大の暗い介在物の、BEIによって形成されたSEM映像である。
【図13】図13は、本明細書中の実施例2において考察された慣用的なMP35N材料中に見出されたバックグラウンドより暗い介在物の典型的なEDSスペクトルである。
【図14】図14は、本明細書中の実施例2において考察された慣用的なMP35N材料のワイヤー中の介在物のより暗い中心領域の典型的なEDSスペクトルである。
【図15】図15は、本明細書中の実施例2において考察された慣用的なMP35N材料のワイヤー中の典型的な明るい介在物のEDSスペクトルである。
【図16】図16は、本明細書中の実施例2において考察された慣用的なMP35N材料の調製された縦及び横断面の顕微鏡写真である。
【図17】図17は、本明細書中の実施例2において考慮された慣用的なMP35N材料の調製された縦断面及び横断面の顕微鏡写真である。
【図18】図18は、本明細書中の実施例2において考察された低チタン、低窒素の実験的MP35N材料の、調製された縦断面及び横断面の顕微鏡写真である。
【図19】図19は、本明細書中の実施例2において考察された低チタン、低窒素の実験的MP35N材料の、調製された縦断面及び横断面の顕微鏡写真である。
【図20】図20は、慣用的なMP35N材料及び低チタン、低窒素の実験的MP35N材料に対する、応力量に対する応力サイクルの破壊に至る平均回数のS−Nプロットである。
【図21】図21は、各種の脱酸素の方法を使用して処理された実験的MP35N材料のSEM分析の結果を与える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全合金重量に基づいた重量パーセントで:
少なくとも20のコバルト;
32.7ないし37.3のニッケル;
18.75ないし21.25のクロム;
8.85ないし10.65のモリブデン;及び
30ppm未満の窒素;
を含む合金。
【請求項2】
20ppm未満の窒素を含む、請求項1に記載の合金。
【請求項3】
更に、0.7重量パーセント未満のチタンを含む、請求項1に記載の合金。
【請求項4】
更に、0.03重量パーセント未満のチタンを含む、請求項1に記載の合金。
【請求項5】
更に:
0.035以下の炭素;
0.18以下のマンガン;
0.17以下のケイ素;
0.020以下のリン;
0.015以下の硫黄;
1.05以下の鉄;及び
0.020以下のホウ素;
を含む、請求項1に記載の合金。
【請求項6】
少なくとも20のコバルト;
33.0ないし37.0のニッケル;
19.0ないし21.0のクロム;
9.0ないし10.5のモリブデン;
30ppm未満の窒素;
を含む、請求項1に記載の合金。
【請求項7】
更に:
0.025以下の炭素;
0.15以下のマンガン;
0.15以下のケイ素;
0.015以下のリン;
0.010以下の硫黄;
1.0以下の鉄;及び
0.015以下のホウ素;
を含む、請求項6に記載の合金。
【請求項8】
20ppm未満の窒素を含む、請求項7に記載の合金。
【請求項9】
更に、0.7重量パーセント未満のチタンを含む、請求項7に記載の合金。
【請求項10】
更に、0.03重量パーセント未満のチタンを含む、請求項7に記載の合金。
【請求項11】
前記合金が、窒化チタン及び混合金属炭窒化物の介在物を実質的に含まない、請求項1及び6のいずれか1項に記載の合金。
【請求項12】
更に、0.05ないし0.15重量パーセントのアルミニウムを含む、請求項1に記載の合金。
【請求項13】
更に、5ないし20ppmのカルシウムを含む、請求項1に記載の合金。
【請求項14】
更に、5ないし50ppmのマグネシウムを含む、請求項1に記載の合金。
【請求項15】
更に、5ないし50ppmのセリウムを含む、請求項1に記載の合金。
【請求項16】
前記合金が、結晶粒界において有意な酸素脆化を示さない、請求項1に記載の合金。
【請求項17】
前記合金が、実質的にチタンを含まない、請求項1に記載の合金。
【請求項18】
前記合金が、実質的に窒素を含まない、請求項1に記載の合金。
【請求項19】
前記合金が、100ksiより大きい耐久限度を有する、請求項1に記載の合金。
【請求項20】
前記合金が、ASTM標準規格F562に準拠した外科用インプラントの適用に使用するために適格である、請求項1に記載の合金。
【請求項21】
全合金重量に基づいた重量パーセントで:
少なくとも20のコバルト;
33.0ないし37.0のニッケル;
19.0ないし21.0のクロム;
9.0ないし10.5のモリブデン;
0.025以下の炭素;
0.15以下のマンガン;
0.15以下のケイ素;
0.015以下のリン;
1.0以下のチタン;
0.010以下の硫黄;
1.0以下の鉄;及び
0.015以下のホウ素;
を含み、窒化チタン及び混合金属炭窒化物の介在物を実質的に含まない合金。
【請求項22】
30ppm未満の窒素を含む、請求項21に記載の合金。
【請求項23】
20ppm未満の窒素を含む、請求項21に記載の合金。
【請求項24】
0.7重量パーセント未満のチタンを含む、請求項21に記載の合金。
【請求項25】
0.03重量パーセント未満のチタンを含む、請求項21に記載の合金。
【請求項26】
更に、0.05ないし0.15重量パーセントのアルミニウムを含む、請求項21に記載の合金。
【請求項27】
更に、5ないし20ppmのカルシウムを含む、請求項21に記載の合金。
【請求項28】
更に、5ないし50ppmのマグネシウムを含む、請求項21に記載の合金。
【請求項29】
更に、5ないし50ppmのセリウムを含む、請求項21に記載の合金。
【請求項30】
前記合金が、結晶粒界において有意な酸素脆化を示さない、請求項21に記載の合金。
【請求項31】
前記合金が、100ksiより大きい耐久限度を有する、請求項21に記載の合金。
【請求項32】
前記合金が、ASTM標準規格F−562に準拠した外科用インプラントの適用に使用するために適格である、請求項21に記載の合金。
【請求項33】
請求項1ないし32のいずれか1項に記載の合金を含む製品。
【請求項34】
前記製品が、バー、ワイヤー、管、外科用インプラント機器、外科用インプラント機器の部品、移植可能な除細動器、移植可能な除細動器のための部品、移植可能なペースメーカー、移植可能なペースメーカーの部品、ペーシングリード、及び心臓ステントから選択される、請求項33に記載の製品。
【請求項35】
前記製品が、バー及びワイヤーの一つであり、そしてASTM標準規格F562に準拠した外科用インプラントの適用において使用するために適格である、請求項33に記載の製品。
【請求項36】
合金を製造する方法であって:
少なくとも20重量パーセントのコバルト;
33.0ないし37.0重量パーセントのニッケル;
19.0ないし21.0重量パーセントのクロム;及び
9.0ないし10.5重量パーセントのモリブデン;並びに
30ppm未満の窒素;
を含む組成を有するVARインゴットを調製することを含む、前記方法。
【請求項37】
前記インゴットが窒化チタン及び混合金属炭窒化物の介在物を実質的に含まない、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記インゴットが20ppm未満の窒素を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記インゴットが0.7重量パーセント未満のチタンを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記インゴットが0.03重量パーセント未満のチタンを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記インゴットが、更に、0.05ないし0.15重量パーセントのアルミニウムを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記インゴットが、更に、5ないし20ppmのカルシウムを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記インゴットが、更に、5ないし50ppmのマグネシウムを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記インゴットが、更に、5ないし50ppmのセリウムを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
前記インゴットが、更に:
0.025以下の炭素;
0.15以下のマンガン;
0.15以下のケイ素;
0.015以下のリン;
0.010以下の硫黄;
1.0以下の鉄;及び
0.015以下のホウ素;
を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項46】
前記インゴットが、VIMを含むシーケンスによって製造される、請求項36に記載の方法。
【請求項47】
更に、インゴットを、バー、ワイヤー、及び管の一つに加工することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項48】
前記バー、ワイヤー、又は管が、100ksiより大きい耐久限度を有する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
更に、前記インゴットをバー及びワイヤーの一つに加工することを含み、このとき前記バー又はワイヤーが、ASTM標準規格F562に準拠した外科用インプラントの適用に使用するために適格である、請求項36に記載の方法。
【請求項50】
前記バー又はワイヤーが、更に、外科用インプラント機器、外科用インプラント機器の部品、移植可能な除細動器のための部品、移植可能なペースメーカーの部品、ペーシングリード、及び心臓ステントの一つに加工される、請求項49に記載の方法。
【請求項1】
全合金重量に基づいた重量パーセントで:
少なくとも20のコバルト;
32.7ないし37.3のニッケル;
18.75ないし21.25のクロム;
8.85ないし10.65のモリブデン;及び
30ppm未満の窒素;
を含む合金。
【請求項2】
20ppm未満の窒素を含む、請求項1に記載の合金。
【請求項3】
更に、0.7重量パーセント未満のチタンを含む、請求項1に記載の合金。
【請求項4】
更に、0.03重量パーセント未満のチタンを含む、請求項1に記載の合金。
【請求項5】
更に:
0.035以下の炭素;
0.18以下のマンガン;
0.17以下のケイ素;
0.020以下のリン;
0.015以下の硫黄;
1.05以下の鉄;及び
0.020以下のホウ素;
を含む、請求項1に記載の合金。
【請求項6】
少なくとも20のコバルト;
33.0ないし37.0のニッケル;
19.0ないし21.0のクロム;
9.0ないし10.5のモリブデン;
30ppm未満の窒素;
を含む、請求項1に記載の合金。
【請求項7】
更に:
0.025以下の炭素;
0.15以下のマンガン;
0.15以下のケイ素;
0.015以下のリン;
0.010以下の硫黄;
1.0以下の鉄;及び
0.015以下のホウ素;
を含む、請求項6に記載の合金。
【請求項8】
20ppm未満の窒素を含む、請求項7に記載の合金。
【請求項9】
更に、0.7重量パーセント未満のチタンを含む、請求項7に記載の合金。
【請求項10】
更に、0.03重量パーセント未満のチタンを含む、請求項7に記載の合金。
【請求項11】
前記合金が、窒化チタン及び混合金属炭窒化物の介在物を実質的に含まない、請求項1及び6のいずれか1項に記載の合金。
【請求項12】
更に、0.05ないし0.15重量パーセントのアルミニウムを含む、請求項1に記載の合金。
【請求項13】
更に、5ないし20ppmのカルシウムを含む、請求項1に記載の合金。
【請求項14】
更に、5ないし50ppmのマグネシウムを含む、請求項1に記載の合金。
【請求項15】
更に、5ないし50ppmのセリウムを含む、請求項1に記載の合金。
【請求項16】
前記合金が、結晶粒界において有意な酸素脆化を示さない、請求項1に記載の合金。
【請求項17】
前記合金が、実質的にチタンを含まない、請求項1に記載の合金。
【請求項18】
前記合金が、実質的に窒素を含まない、請求項1に記載の合金。
【請求項19】
前記合金が、100ksiより大きい耐久限度を有する、請求項1に記載の合金。
【請求項20】
前記合金が、ASTM標準規格F562に準拠した外科用インプラントの適用に使用するために適格である、請求項1に記載の合金。
【請求項21】
全合金重量に基づいた重量パーセントで:
少なくとも20のコバルト;
33.0ないし37.0のニッケル;
19.0ないし21.0のクロム;
9.0ないし10.5のモリブデン;
0.025以下の炭素;
0.15以下のマンガン;
0.15以下のケイ素;
0.015以下のリン;
1.0以下のチタン;
0.010以下の硫黄;
1.0以下の鉄;及び
0.015以下のホウ素;
を含み、窒化チタン及び混合金属炭窒化物の介在物を実質的に含まない合金。
【請求項22】
30ppm未満の窒素を含む、請求項21に記載の合金。
【請求項23】
20ppm未満の窒素を含む、請求項21に記載の合金。
【請求項24】
0.7重量パーセント未満のチタンを含む、請求項21に記載の合金。
【請求項25】
0.03重量パーセント未満のチタンを含む、請求項21に記載の合金。
【請求項26】
更に、0.05ないし0.15重量パーセントのアルミニウムを含む、請求項21に記載の合金。
【請求項27】
更に、5ないし20ppmのカルシウムを含む、請求項21に記載の合金。
【請求項28】
更に、5ないし50ppmのマグネシウムを含む、請求項21に記載の合金。
【請求項29】
更に、5ないし50ppmのセリウムを含む、請求項21に記載の合金。
【請求項30】
前記合金が、結晶粒界において有意な酸素脆化を示さない、請求項21に記載の合金。
【請求項31】
前記合金が、100ksiより大きい耐久限度を有する、請求項21に記載の合金。
【請求項32】
前記合金が、ASTM標準規格F−562に準拠した外科用インプラントの適用に使用するために適格である、請求項21に記載の合金。
【請求項33】
請求項1ないし32のいずれか1項に記載の合金を含む製品。
【請求項34】
前記製品が、バー、ワイヤー、管、外科用インプラント機器、外科用インプラント機器の部品、移植可能な除細動器、移植可能な除細動器のための部品、移植可能なペースメーカー、移植可能なペースメーカーの部品、ペーシングリード、及び心臓ステントから選択される、請求項33に記載の製品。
【請求項35】
前記製品が、バー及びワイヤーの一つであり、そしてASTM標準規格F562に準拠した外科用インプラントの適用において使用するために適格である、請求項33に記載の製品。
【請求項36】
合金を製造する方法であって:
少なくとも20重量パーセントのコバルト;
33.0ないし37.0重量パーセントのニッケル;
19.0ないし21.0重量パーセントのクロム;及び
9.0ないし10.5重量パーセントのモリブデン;並びに
30ppm未満の窒素;
を含む組成を有するVARインゴットを調製することを含む、前記方法。
【請求項37】
前記インゴットが窒化チタン及び混合金属炭窒化物の介在物を実質的に含まない、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記インゴットが20ppm未満の窒素を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記インゴットが0.7重量パーセント未満のチタンを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記インゴットが0.03重量パーセント未満のチタンを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記インゴットが、更に、0.05ないし0.15重量パーセントのアルミニウムを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記インゴットが、更に、5ないし20ppmのカルシウムを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記インゴットが、更に、5ないし50ppmのマグネシウムを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記インゴットが、更に、5ないし50ppmのセリウムを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
前記インゴットが、更に:
0.025以下の炭素;
0.15以下のマンガン;
0.15以下のケイ素;
0.015以下のリン;
0.010以下の硫黄;
1.0以下の鉄;及び
0.015以下のホウ素;
を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項46】
前記インゴットが、VIMを含むシーケンスによって製造される、請求項36に記載の方法。
【請求項47】
更に、インゴットを、バー、ワイヤー、及び管の一つに加工することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項48】
前記バー、ワイヤー、又は管が、100ksiより大きい耐久限度を有する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
更に、前記インゴットをバー及びワイヤーの一つに加工することを含み、このとき前記バー又はワイヤーが、ASTM標準規格F562に準拠した外科用インプラントの適用に使用するために適格である、請求項36に記載の方法。
【請求項50】
前記バー又はワイヤーが、更に、外科用インプラント機器、外科用インプラント機器の部品、移植可能な除細動器のための部品、移植可能なペースメーカーの部品、ペーシングリード、及び心臓ステントの一つに加工される、請求項49に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2007−504362(P2007−504362A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525315(P2006−525315)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/015628
【国際公開番号】WO2005/026399
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(501187033)エイティーアイ・プロパティーズ・インコーポレーテッド (39)
【出願人】(506074358)フォート・ウェイン・メタルズ・リサーチ・プロダクツ・コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/015628
【国際公開番号】WO2005/026399
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(501187033)エイティーアイ・プロパティーズ・インコーポレーテッド (39)
【出願人】(506074358)フォート・ウェイン・メタルズ・リサーチ・プロダクツ・コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】
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