説明

減速機、ロボットハンド、およびロボット

【課題】リングギア、公転ギア、貫通ピンとの間のバックラッシュの発生を抑制もしくは回避可能な減速機を提供する。
【解決手段】リングギアに噛合しながら公転する公転ギアに貫通孔を設けておき、貫通孔には公転ギアの自転を取り出すための貫通ピンを挿入する。リングギア、公転ギアは厚さ方向に半分に分割し、二枚のリングギアは、互いに逆方向に回転するように付勢しておく。こうすれば、それぞれのリングギアに噛合する二枚の公転ギアも逆方向に付勢されて、それぞれ逆方向から貫通ピンに押しつけられる。その結果、リングギアと公転ギアとの間のバックラッシュ、および公転ギアと貫通ピンとの間のバックラッシュの発生を抑制もしくは回避することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された回転速度を減じて出力する減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
モーターなどの動力源から得られる動力は、そのまま使用するには回転速度が高すぎた
りトルクが不足したりすることが多い。そこで、減速機を用いて適した回転速度まで減速
させることにより、必要な回転数および必要なトルクを得ることが一般的である。
【0003】
大きな減速比が得られる減速機として、次のようなものが提案されている。先ず、リン
グギアの内側に、リングギアよりも少し小さく且つリングギアよりも歯数が少ない(例え
ば歯数が1つ少ない)公転ギアを設けておく。公転ギアの中心位置には、公転ギアに対し
て回転可能な状態で円形カムを設ける。円形カムからは、リングギアの中心軸上の位置に
第1回転軸を立設する。このような構成を有する減速機では、第1回転軸によってリング
ギアの中心軸周りに円形カムを回転させると、公転ギアはリングギアに噛合しながらリン
グギアの中心軸周りに公転する。そして、公転ギアがリングギアの中心軸周りを一回公転
する間に、公転の方向とは逆方向にリングギアとの歯数差分だけ自転する。従って、公転
ギアの自転の動きを取り出すことで、入力の回転(第1回転軸の回転)を大きく減速させ
ることができる。
【0004】
また、公転ギアの自転の動きは、公転ギアに設けられた貫通孔と、貫通孔に挿入された
貫通ピンとによって取り出される。貫通孔と貫通ピンとの間にはクリアランスが設けられ
ており、このクリアランスによって公転ギアの公転の動きを吸収しつつ、公転ギアが自転
する動きを貫通ピンで取り出すことができる。こうして貫通ピンで取り出した公転ギアの
自転の動きは、貫通ピンが連結された第2回転軸から外部に出力される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−240852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した特許文献1に記載の減速機には、バックラッシュが発生し易いという
問題があった。すなわち、第1回転軸の入力が第2回転軸から出力されるまでの間には、
リングギアと公転ギアとが噛み合う部分で生じる通常のバックラッシュに加えて、公転ギ
アの貫通孔と貫通ピンとが当接する部分で生じるバックラッシュも存在する。後者のバッ
クラッシュは、特許文献1の動作原理の減速機において、製造誤差に起因して生じるバッ
クラッシュである。そして、これら二種類のバックラッシュが存在するため、全体として
大きなバックラッシュが発生し易くなる。その結果、第1回転軸の入力に対して出力トル
クが得られない期間が発生したり、あるいは、第2回転軸に回転方向の大きながたつきが
発生したりするといった問題が生じていた。そのため、組み立て後にバックラッシュの大
きさを検査し、問題があれば分解して寸法がわずかに違う部品に変更し、再度組み立てな
おしてバックラッシュを検査する。この作業を繰り返して、所定の大きさ以下のバックラ
ッシュの減速機を得る。もしくは、全ての部品の寸法をあらかじめ測定して選別し、組み
立てた時にバックラッシュの大きさが許容範囲に収まるように組み合わせた部品で組み立
てが行われており、組み立て作業に非常に時間がかかっていた。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題の少なくとも一部を解決するためになさ
れたものであり、製造誤差を含んだ部品を用いても、部品寸法選別や組み立て検査を行う
ことなく、バックラッシュが発生することを抑制もしくは回避可能な減速機を提供するこ
とを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の減速機は次の構成を採用し
た。すなわち、
内周に複数のギア歯が形成されたリングギアと、
前記リングギアに対して偏心して設けられ、外周に複数のギア歯が形成されて該リング
ギアと噛合する公転ギアと、
前記公転ギアの中心位置に、該公転ギアに対して回転可能に設けられた円形カムと、
前記円形カムに設けられ、前記リングギアの中心軸上に位置し、該中心軸周りに該円形
カムを回転させて、該公転ギアを該中心軸周りに公転させる第1回転軸と、
前記公転ギアに形成された貫通孔に挿入される貫通ピンと、
前記リングギアの中心軸上に設けられて前記貫通ピンと連結され、前記公転ギアの自転
による回転を出力する第2回転軸と
を備え、
前記リングギアは、前記ギア歯の厚さ方向に重ねられて、前記中心軸を中心として互い
に反対方向に回転可能な第1リングギアと第2リングギアとを有し、
前記公転ギアは、前記第1リングギアと噛合する第1公転ギアと、前記第2リングギア
と噛合する第2公転ギアとを有し、
前記円形カムは、前記第1公転ギアに対して回転可能に設けられた第1円形カムと、前
記第2公転ギアに対して回転可能に設けられた第2円形カムとを有し、
前記第1リングギアと前記第2リングギアとの間には、該第1リングギアと該第2リン
グギアとを、前記中心軸回りに互いに逆方向に付勢する付勢部材が設けられている
ことを特徴とする。
【0009】
このような構成を有する本発明の減速機においては、第1回転軸によって円形カム(第
1円形カムおよび第2円形カム)をリングギアの中心軸周りに回転させると、公転ギア(
第1公転ギアおよび第2公転ギア)が、リングギア(第1リングギアおよび第2リングギ
ア)に噛合しながら中心軸周りを公転する。また、詳細には後述するが、公転ギア(第1
公転ギアおよび第2公転ギア)は公転しながら公転の方向とは逆方向に少しずつ(リング
ギアと公転ギアとの歯数差に相当する角度だけ)自転する。そして、公転ギアが自転する
動きは、公転ギアの貫通孔に挿入された貫通ピンに伝達される。こうして貫通ピンに伝達
された公転ギアの自転は、入力の回転に対して減速されており、減速された回転が貫通ピ
ンと連結する第2回転軸から出力される。ここで、本発明の減速機では、第1リングギア
と第2リングギアとが、付勢部材によって逆方向に付勢されている。
【0010】
こうすれば、第1リングギアのギア歯が第1公転ギアのギア歯に押しつけられて、第1
公転ギアが回転し、第1公転ギアの貫通孔が貫通ピンに押しつけられた状態となる。また
、第2リングギアについては、第1リングギアとは逆方向に付勢される結果、第2リング
ギアのギア歯が第2公転ギアのギア歯に押しつけられ、第2公転ギアが第1公転ギアとは
逆方向に回転して、第2公転ギアの貫通孔が貫通ピンに押しつけられた状態となる。この
ような状態では、第1回転軸を回転させて第1公転ギアおよび第2公転ギアを公転させる
と、第1回転軸を何れの向きに回転させた場合でも、第1公転ギアあるいは第2公転ギア
の何れか一方は、第1リングギアおよび貫通ピン、あるいは第2リングギアおよび貫通ピ
ンに押しつけられた状態となっている。その結果、第1回転軸の回転を直ちに第2回転軸
に伝えることが可能となり、バックラッシュの発生を抑制もしくは回避することが可能と
なる。
【0011】
また、上述した本発明の減速機においては、弦巻バネの一端を第1リングギアに取り付
け、弦巻バネの他端を第2リングギアに取り付けて、弦巻バネを用いて、第1リングギア
および第2リングギアを付勢するようにしても良い。
【0012】
こうすれば、第1リングギアと第2リングギアとを、簡単に逆方向に付勢することが可
能となる。また、第1リングギアと第2リングギアとが弦巻バネの力で引き合うようにな
る。このため、第1リングギアと第2リングギアとが離れてしまうことを、抑制もしくは
回避することができる。その結果、減速機の構造を簡単にすることができる。
【0013】
また、上述した本発明の減速機においては、第1公転ギアと第2公転ギアとを、中心軸
に対して互いに逆方向に等距離偏心させて設けるようにしてもよい。
【0014】
こうすれば、第1公転ギアと第2公転ギアの二つのギアの重心が、中心軸上に来るよう
にすることができる。その結果、たとえ第1回転軸を速い速度で回転させた場合でも、重
心が振れ回って振動が発生することを回避することが可能となる。
【0015】
また、上述した本発明の減速機は、大きな減速比を実現することができ、更に、リング
ギアと公転ギアとの間のバックラッシュと、公転ギアの貫通孔と貫通ピンとの間のバック
ラッシュとを抑制もしくは回避することができる。そのため、ロボットハンドやロボット
に組み込んで使用する減速機として特に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施例の減速機の外観図である。
【図2】本実施例の減速機の内部構造を示す分解斜視図である。
【図3】本実施例の減速機の動作原理を示した説明図である。
【図4】貫通ピンによって公転ギアの自転を取り出すことが可能な理由を示した説明図である。
【図5】本実施例の減速機がバックラッシュの発生を抑制もしくは回避するメカニズムを示した説明図である。
【図6】本実施例の減速機がバックラッシュの発生を抑制もしくは回避するメカニズムを示した説明図である。
【図7】第1公転ギアと第2公転ギアとが逆位相となるように設けられた変形例の減速機の要部を示す説明図である。
【図8】本実施例の減速機をロボットハンドの関節部分などに組み込んだ様子を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施
例を説明する。
A.本実施例の減速機の構成:
B.減速機の動作原理:
C.バックラッシュを抑制もしくは回避するメカニズム:
D.変形例:
E.適用例:
【0018】
A.本実施例の減速機の構成 :
図1は、本実施例の減速機10の外観図である。図示されるように、本実施例の減速機
10には、円柱形の本体部40の底面側に入力軸20(第1回転軸)が設けられており、
本体部40の上面側に出力軸30(第2回転軸)が設けられている。後述するように本体
部40は上下二つ(入力軸20側と出力軸30側の二つ)の部分に分かれている。何れか
の本体部40を固定した状態で入力軸20を回転させると、その回転が本体部40内の機
構によって減速されて、上蓋板104の中心に固定された出力軸30から出力される。
【0019】
図2は、本実施例の減速機10の内部構造を示した分解斜視図である。図示されている
ように、本実施例の減速機10では、本体部40の外周を構成する円筒形の部材の内周側
に複数のギア歯が形成されて、リングギア100を構成している。また、本体部40が上
下二つに分かれていることに対応して、リングギア100も、入力軸20(第1回転軸)
側の第1リングギア100aと、出力軸30(第2回転軸)側の第2リングギア100b
とによって構成されている。換言すれば、本実施例の減速機10では、一枚のリングギア
100が約半分の厚さの二枚のリングギア(第1リングギア100aおよび第2リングギ
ア100b)に分割されている。尚、以下では、単にリングギア100と表記した場合は
、第1リングギア100aおよび第2リングギア100bを指すものとする。また、第1
リングギア100aと第2リングギア100bとの合わせ面は、一方(たとえば第1リン
グギア100a)が他方(たとえば第2リングギア100b)に対してインローに形成さ
れている。そして、図2に示したように第1リングギア100aと第2リングギア100
bとを重ねると、第1リングギア100aと第2リングギア100bとが互いに摺動して
回転可能な構造となっている。尚、「インロー」とは、互いに当接される一組の合わせ面
のうち、一方の合わせ面が凸形状に形成され、他方の合わせ面が凹形状に形成されており
、それら二つの合わせ面を互いに組み合わせたときに、凸形状の部分と凹形状の部分とが
きれいに(ほとんど隙間無く)嵌り合う状態をいう。
【0020】
リングギア100の内側には、リングギア100よりも少し小さく、外周側に複数のギ
ア歯が形成された公転ギア110が設けられている。この公転ギア110も、約半分の厚
さを有する二枚のギアに分割されており、入力軸20(第1回転軸)側の第1公転ギア1
10aが第1リングギア100aと噛み合い、出力軸30(第2回転軸)側の第2公転ギ
ア110bが第2リングギア100bと噛み合っている。尚、以下では、単に公転ギア1
10と表記した場合は、第1公転ギア110aおよび第2公転ギア110bを指すものと
する。また、「公転」とは、ある点の周りを物体が周回する動きのことである。また公転
ギアとは、ある点の回りを公転するギアのことである。本実施例の場合では、リングギア
100の中心軸の周りを、公転ギア110が周回する。
【0021】
公転ギア110(第1公転ギア110aおよび第2公転ギア110b)の中心位置には
、軸孔112(第1公転ギア110aの軸孔112a、および第2公転ギア110bの軸
孔112b)が設けられている。そして、第1公転ギア110aの軸孔112aには、入
力軸20に設けられた円形の第1偏心カム130aがベアリング116を介して回転自在
に嵌め込まれる。同様に、第2公転ギア110bの軸孔112bにも、入力軸20に設け
られた円形の第2偏心カム130bがベアリング116を介して嵌め込まれる。尚、図2
では、第1公転ギア110aの軸孔112aは第2公転ギア110bに隠れているため、
第2公転ギア110bの軸孔112bのみが表示されている。以下では、単に偏心カム1
30と表記した場合は、第1偏心カム130aおよび第2偏心カム130bを指すものと
する。また、本実施例では、説明の都合上、第1偏心カム130aおよび第2偏心カム1
30bは同じ方向に偏心しているものとする。
【0022】
また、公転ギア110(第1公転ギア110aおよび第2公転ギア110b)には、公
転ギア110の中心位置に対して同心円上の四カ所に貫通孔114(第1公転ギア110
aの貫通孔114a、および第2公転ギア110bの貫通孔114b)が設けられている
。尚、図2では、第1公転ギア110aの貫通孔114aは第2公転ギア110bに隠れ
ているため、第2公転ギア110bの貫通孔114bのみが表示されている。そして、そ
れぞれの貫通孔114a,bには、公転ギア110の自転の動きを取り出すための貫通ピ
ン120が挿入されている。貫通ピン120によって公転ギア110の自転の動きを取り
出す方法については後述する。これら貫通ピン120は、下端部が本体部40の底面を構
成する下蓋板102に取り付けられるとともに、上端部がナット106によって本体部4
0の上面を構成する上蓋板104に固定される。
【0023】
また、第1リングギア100aの外周と、第2リングギア100bの外周との間には、
弦巻バネ140が斜めに張設されている。このため、第1リングギア100aと第2リン
グギア100bとの間には、互いの合わせ面が離れないように引き合うと共に、互いに逆
方向に回転させようとする力が作用する。尚、図2では、弦巻バネ140が手前側の一カ
所にしか表示されていないが、反対の位置(リングギア100の中心軸に対して回転対称
の位置)にも弦巻バネ140が設けられている。
【0024】
B.減速機の動作原理 :
図3は、本実施例の減速機10の動作原理を示した説明図である。尚、図2を用いて前
述したように、本実施例の減速機10では、リングギア100が第1リングギア100a
および第2リングギア100bによって構成されているが、これらは同様に動作する。そ
こで理解の便宜から、図3では、第1リングギア100aおよび第2リングギア100b
が一体のリングギア100であるものとして説明する。また、公転ギア110についても
同様に、公転ギア110は第1公転ギア110aおよび第2公転ギア110bによって構
成されているが、これらは同様に動作する。そこで理解の便宜から、図3では、第1公転
ギア110aおよび第2公転ギア110bが一体の公転ギア110であるものとして説明
する。
【0025】
前述したように、リングギア100の内側には、リングギア100よりも小さな公転ギ
ア110が設けられており、リングギア100と公転ギア110とは一箇所で噛合してい
る。従って、公転ギア110は、リングギア100の中心位置に対して偏心した状態とな
っている。また、公転ギア110の中心位置には軸孔112が設けられており、この軸孔
112にはベアリング116(図2を参照)を介して偏心カム130が嵌め込まれている
。このため、入力軸20を回転させると偏心カム130が回転して、公転ギア110は入
力軸20(およびリングギア100の中心軸)を中心とする公転運動を行う。また、公転
ギア110と偏心カム130との間はベアリング116によって回転自在となっているが
、公転ギア110とリングギア100とはギア歯によって噛合している。このため公転ギ
ア110は、リングギア100のギア歯との噛合によって自転しながら、入力軸20(お
よびリングギア100の中心軸)を中心として公転することとなる。尚、「自転」とは、
ある物体の内部の点(例えば中心や重心)を通る軸を中心軸として回転する動きのことで
ある。本実施例の場合、公転ギア110が自転するとは、公転ギア110の中心(図示せ
ず)を通る軸を中心軸として回転することを意味している。
【0026】
図3(a)には、偏心カム130が図面上で上側に偏心しており、従って、公転ギア1
10が図面上の上側でリングギア100と噛み合っている状態が示されている。尚、図3
では、公転ギア110が回転する様子が把握できるように、公転ギア110の側面に矢印
が表示されている。この矢印は、図3(a)の状態では図面上で真上を指している。
【0027】
図3(a)に示した状態から入力軸20を時計回り方向に45度だけ回転させると、偏
心カム130の働きによって、公転ギア110も時計回り方向に45度だけ公転する。ま
た、公転ギア110はリングギア100に噛合しているから、ギア歯の数に相当する角度
だけ反時計回り方向に自転する。その結果、公転ギア110は、図3(b)に示すような
状態となる。図3(a)と図3(b)とを比較すれば明らかなように、偏心カム130が
時計回り方向に45度回転したことに伴って、公転ギア110も時計回り方向に45度だ
け公転し、図面上では右上側に偏心した位置に移動している。また、公転ギア110に描
かれた矢印の向きは、図3(a)と同様にほぼ図面上の真上を指している。これは、公転
ギア110を時計回り方向に公転させたときに、リングギア100との噛合によって公転
ギア110に生じた反時計回り方向の自転が、時計回り方向の公転をほぼ打ち消したため
と考えることができる。
【0028】
図3(b)に示した状態から、入力軸20を時計回り方向に更に45度だけ回転させる
と、公転ギア110は図3(c)に示した位置まで移動する。この状態は、図3(a)に
示した状態に対して、公転ギア110が時計回り方向に90度だけ公転した状態である。
また、公転ギア110が、リングギア100と噛み合いながらこの位置まで公転すること
に伴って、公転ギア110はギア歯の数に相当する角度だけ、反時計回り方向に自転して
いる。また、公転ギア110に設けられた矢印の向きは、図3(b)と同様に、依然とし
てほぼ図面上の真上を指した状態となっている。
【0029】
図3(c)に示した状態から、入力軸20を更に時計回り方向に回転させていくと、公
転ギア110は、図3(d)に示した状態、図3(e)に示した状態、図3(f)に示し
た状態、図3(h)に示した状態へと移動していき、入力軸20をちょうど一回転させる
と、図3(i)に示した状態となる。また、公転ギア110に表示された矢印の向きは、
図3(a)と比較すると、ちょうどギア歯の一歯分だけ反時計回り方向に回転している。
すなわち、公転ギア110に生じる時計回り方向の公転と反時計回り方向の自転とは、ほ
ぼ打ち消し合う大きさになっているものの、厳密には、一回分の公転につき、ギア歯一枚
分だけ自転の角度の方が大きくなる。これは、公転ギア110のギア歯の数が、リングギ
ア100のギア歯の数よりも一歯だけ少なく形成されている結果、公転ギア110がリン
グギア100と噛み合いながら時計回り方向に一回公転するためには、公転ギア110は
反時計回り方向に一回と、更に一歯分だけ余分に自転しなければならないためである。
【0030】
このように、本実施例の減速機10では、入力軸20を一回転させると、公転ギア11
0が、リングギア100とのギア歯の数の差に相当する歯数分だけ、逆方向に自転するこ
ととなる。例えば、リングギア100の歯数を50枚、公転ギア110の歯数を49枚と
すると、入力軸20を一回転させる毎に、公転ギア110が50分の1回転(従って36
0度/50=7.2度)だけ逆方向に自転する。
【0031】
また、入力軸20を回転させたときの公転ギア110の動きは次のように考えることも
できる。先ず、入力軸20を回転させると、偏心カム130によって公転ギア110は、
入力軸20(およびリングギア100の中心軸)を中心とする公転を行う。一方で、公転
ギア110はリングギア100と噛み合っているので、公転ギア110はリングギア10
0の上を転がりながら自転することとなる。
【0032】
ここで、公転ギア110はリングギア100よりも少しだけ小さく形成されている。従
って、公転ギア110は、実際にはほとんど回転(正確には自転)しなくても、少しだけ
平行移動するだけでリングギア100の上を転がることができる。たとえば、図3(a)
に示す状態と、図3(b)に示す状態とでは、公転ギア110がほとんど回転することな
く、少しだけ右下方向に移動しているに過ぎない。それにも拘わらず、リングギア100
に対して公転ギア110が噛み合う位置は、リングギア100の中心位置から45度だけ
移動している。すなわち、リングギア100の上を公転ギア110が転がっている。また
、図3(b)に示す状態と図3(c)に示す状態とについても同様に、公転ギア110は
ほとんど回転することなく、ほぼ下方向の少しだけ右寄りに移動しているに過ぎない。そ
れにも拘わらず、リングギア100に対して公転ギア110が噛み合う位置は、更に45
度だけ移動している。すなわち、リングギア100の上を公転ギア110が転がっている

【0033】
このように、公転ギア110をリングギア100に対して少しだけ小さく形成しておけ
ば、公転ギア110を振れ回るように移動(揺動)させるだけで、ほとんど自転させるこ
となく、リングギア100の上で公転ギア110を転がすことができる。そして、公転ギ
ア110が元の位置まで(たとえば図3(a)または図3(i)に示す位置まで)戻って
くるまでの間には、リングギア100と公転ギア110との歯数の差に相当する角度の自
転しか生じない。
【0034】
上述したように、本実施例の公転ギア110を公転させても、実際には公転ギア110
は少しずつ自転しながらリングギア100の内側を僅かに揺動しているに過ぎない。この
ように考えれば、公転ギア110の自転を貫通ピン120によって取り出せることも了解
できる。すなわち、図2に示したように、本実施例の公転ギア110には4つの貫通孔1
14が設けられており、これら貫通孔114にはそれぞれ貫通ピン120が挿入されてい
る。ここで、貫通孔114の大きさを貫通ピン120の直径に対してある程度大きめに設
定しておけば、公転ギア110がリングギア100内を揺動する動きを、貫通孔114と
貫通ピン120との間の隙間(クリアランス)によって吸収して、公転ギア110の自転
のみを取り出すことができる。以下、この点について説明する。
【0035】
図4は、公転ギア110の自転を貫通ピン120によって取り出す様子を示した説明図
である。尚、理解の便宜から、図4においても、第1リングギア100aおよび第2リン
グギア100bが一体のリングギア100であり、第1公転ギア110aおよび第2公転
ギア110bが一体の公転ギア110であるものとして説明する。
【0036】
先ず、公転ギア110に設けられた貫通孔114の大きさについて説明する。貫通孔1
14は、図4(a)に示すように、公転ギア110の中心位置とリングギア100の中心
位置とを一致させたときに、貫通ピン120の位置に重ねて、貫通ピン120よりも半径
aだけ大きな孔に形成されている。ここで「a」とは、リングギア100の中心位置に対
する公転ギア110の偏心量である。
【0037】
このように貫通孔114を形成した公転ギア110を、偏心カム130によって図面上
で上側に偏心させる。すると、公転ギア110は長さaだけ上方向に偏心するので、図4
(b)に示したように、貫通孔114の下側が貫通ピン120の外周面とが当接した状態
となる。また、偏心カム130によって公転ギア110が図面上で右側に偏心すると、図
4(c)に示した様に、貫通孔114の左側が貫通ピン120と当接する。同様に、公転
ギア110が図面上で下側に偏心すると、図4(d)に示す様に貫通孔114の上側が貫
通ピン120と当接し、図面上で左側に偏心すると、図4(e)に示すように貫通孔11
4の右側で、貫通孔114と貫通ピン120とが当接する。
【0038】
このように、本実施例の減速機10では、貫通孔114の大きさを貫通ピン120に対
して偏心量aに相当する分だけ大きくしておくことで、公転ギア110がリングギア10
0内で揺動する動きを吸収することができる。ここで、「貫通孔114の大きさを貫通ピ
ン120に対して偏心量aに相当する分だけ大きくする」とは、貫通孔114の半径を貫
通ピン120の半径よりも偏心量aの分だけ大きくする、もしくは貫通孔114の直径を
貫通ピン120の直径よりも偏心量aの2倍(2a)の分だけ大きくすることを意味して
いる。その一方で、公転ギア110が自転すると、貫通孔114の位置が移動するから、
この動きは貫通ピン120に伝達される。このため、公転ギア110の自転の動きだけを
取り出すことが可能となる。こうして取り出された公転ギア110の自転は、貫通ピン1
20が取り付けられた本体部40の上蓋板104および下蓋板102(図2を参照)に伝
達される。その結果、公転ギア110の自転が、上蓋板104に固定された出力軸30か
ら減速機10の外部に出力される。
【0039】
以上のような原理で動作する本実施例の減速機10は、入力軸20を回転させると、公
転ギア110とリングギア100との噛み合いによって公転ギア110が公転し、その時
の公転ギア110の自転が、公転ギア110の貫通孔114を貫通する貫通ピン120に
よって取り出されて、出力軸30に出力される。従って、入力軸20の回転が出力軸30
から出力されるまでの間には、公転ギア110とリングギア100との間のバックラッシ
ュだけでなく、貫通孔114と貫通ピン120との間でもバックラッシュが発生する。こ
のため、減速機10全体として大きなバックラッシュが発生し易く、その結果、入力軸2
0を回転させても出力軸30の出力トルクが得られない期間が生じたり、あるいは入力軸
20が止まっているのに出力軸30がガタついたりする不都合が生じ易い。しかし本実施
例の減速機10では、図2を用いて前述したように、リングギア100を第1リングギア
100aおよび第2リングギア100bの二枚のギアで構成し、公転ギア110を第1公
転ギア110aおよび第2公転ギア110bの二枚のギアで構成して、第1リングギア1
00aと第2リングギア100bとが逆方向に回転するように弦巻バネ140で付勢して
いるため、バックラッシュの発生を抑制もしくは回避することができる。以下、本実施例
の減速機10がバックラッシュの発生を抑制もしくは回避するメカニズムについて説明す
る。
【0040】
C.バックラッシュを抑制もしくは回避するメカニズム :
図5および図6は、本実施例の減速機10がバックラッシュの発生を抑制もしくは回避
するメカニズムを示した説明図である。尚、本実施例の減速機10では、バックラッシュ
の発生を抑制もしくは回避するために、弦巻バネ140が第1リングギア100aおよび
第2リングギア100bを逆方向に付勢している。そこで、図5には、弦巻バネ140に
よって付勢された第2リングギア100bの動きが示されており、図6には、第1リング
ギア100aの動きが示されている。尚、図2に示した例では、上側の第2リングギア1
00bは時計回りに付勢され、下側の第1リングギア100aは反時計回りに付勢されて
いるので、図5および図6においても、第2リングギア100bおよび第1リングギア1
00aがこの方向に付勢されているものとして説明する。
【0041】
仮に、第2リングギア100bと第2公転ギア110bとの間にバックラッシュが存在
していると、第2リングギア100bは弦巻バネ140によって時計回りに付勢されて、
第2リングギア100bのギア歯が第2公転ギア110bのギア歯に当接する。図5(a
)には、第2リングギア100bが時計回りに付勢されたことにより、第2リングギア1
00bのギア歯が第2公転ギア110bのギア歯に当接した状態が示されている。
【0042】
また仮に、第2公転ギア110bの貫通孔114bと、貫通ピン120との間にバック
ラッシュが存在していると、第2リングギア100bに押されて第2公転ギア110bが
時計方向に回転し、第2公転ギア110bの貫通孔114bが貫通ピン120に当接する
。図5(b)には、第2公転ギア110bの貫通孔114bが貫通ピン120に当接した
状態が示されている。この時の第2リングギア100bの回転角度θbは、第2リングギ
ア100bと第2公転ギア110bとの間のバックラッシュに対応する回転角度と、第2
公転ギア110bの貫通孔114bと貫通ピン120との間のバックラッシュに対応する
回転角度とを加えた回転角度となる。尚、図5では、第2リングギア100bおよび第2
公転ギア110bの回転角度θbは、実際よりも大きく表示されている。
【0043】
第2リングギア100bの下側に設けられた第1リングギア100aについても、同様
なことが成立する。すなわち、第1リングギア100aは、弦巻バネ140によって反時
計回りに付勢されて、図6(a)に示すように、第1リングギア100aのギア歯が第1
公転ギア110aのギア歯に当接する。そして、第1リングギア100aに押されるよう
にして第1公転ギア110aが反時計回りに回転し、図6(b)に示すように、第1公転
ギア110aの貫通孔114aが貫通ピン120に当接する。この時の第1リングギア1
00aの回転角度θaは、第1リングギア100aと第1公転ギア110aとの間のバッ
クラッシュに対応する回転角度と、第1公転ギア110aの貫通孔114aと貫通ピン1
20との間のバックラッシュに対応する回転角度とを加えた回転角度となる。尚、図6に
おいても、第1リングギア100aおよび第1公転ギア110aの回転角度θaは、実際
よりも大きく表示されている。
【0044】
以上では、第2リングギア100bが時計回りに回転することによる第2公転ギア11
0bの動き(図5参照)と、第1リングギア100aが反時計回りに回転することによる
第1公転ギア110aの動き(図6参照)とを別々に説明した。しかし実際には、第2リ
ングギア100bと第1リングギア100aとは互いに引き合う方向に付勢されているの
で、これらの動きは同時に発生する。その結果、貫通ピン120は、第2公転ギア110
bの貫通孔114bと、第1公転ギア110aの貫通孔114aとによって、あたかも両
側から挟み込まれたような状態となる。そしてこの状態では、以下に説明するように、リ
ングギア100と公転ギア110との間のバックラッシュも、公転ギア110と貫通ピン
120とのバックラッシュも解消された状態となっている。
【0045】
たとえば、入力軸20が回転して公転ギア110(第1公転ギア110aおよび第2公
転ギア110b)を時計回りに回転させようとしたとする。この場合、図6に示したよう
に第1リングギア100aと第1公転ギア110aとが当接しているので、このギアの噛
み合いによって、第1公転ギア110aの時計回りの公転は、第1公転ギア110aの反
時計回りの自転に直ちに変換される。そして第1公転ギア110aの貫通孔114aと貫
通ピン120とも当接しているので、第1公転ギア110aの反時計回りの自転は直ちに
貫通ピン120に伝達される。
【0046】
また、公転ギア110(第1公転ギア110aおよび第2公転ギア110b)が時計回
りに回転している時に、急に回転方向が反転したものとする。公転ギア110が時計回り
に回転している間も、図5に示したように、第2公転ギア110bは第2リングギア10
0bと当接している。従って、公転ギア110の回転方向が反転して反時計回りに回転す
ると、第2公転ギア110bと第2リングギア100bとの噛み合いによって、第2公転
ギア110bの反時計回りの公転は、第2公転ギア110bの時計回りの自転に直ちに変
換される。そして第2公転ギア110bの貫通孔114bと貫通ピン120とも当接して
いるので、第2公転ギア110bの時計回りの自転は直ちに貫通ピン120に伝達される

【0047】
このように、入力軸20を何れの方向に回転させた場合でも、第1リングギア100a
と第1公転ギア110aとの噛み合い、あるいは第2リングギア100bと第2公転ギア
110bとの噛み合いの何れかによって、直ちに第1公転ギア110aあるいは第2公転
ギア110bが自転する動きに変換される。そして、第1公転ギア110aあるいは第2
公転ギア110bが自転する動きは、第1公転ギア110aの貫通孔114aあるいは第
2公転ギア110bの貫通孔114bによって、直ちに貫通ピン120に伝達される。こ
のため、本実施例の減速機10では、全くバックラッシュが生じない。
【0048】
また、本実施例の減速機10によれば、リングギア100(第1リングギア100aや
第2リングギア100b)、公転ギア110(第1公転ギア110aや第2公転ギア11
0b)、あるいは貫通ピン120の寸法精度が悪い場合でも、第1リングギア100aお
よび第2リングギア100bの合計回転角度(=θa+θb)が大きくなるだけであり、
減速機10にバックラッシュが生じることはない。
【0049】
更に、図4を用いて前述したように、貫通孔114に対して貫通ピン120が当接する
位置は、公転ギア110の公転と共に移動する。従って、貫通孔114(あるいは貫通ピ
ン120)が完全な円形に形成されていなかった場合には、公転中の公転ギア110の位
置によってバックラッシュ量が変化する。しかしこのような場合でも、本実施例の減速機
10では、公転ギア110の公転に伴って、第1リングギア100aおよび第2リングギ
ア100bの合計回転角度(=θa+θb)が変動するだけであり、バックラッシュが生
じることはない。
【0050】
D.変形例 :
上述した実施例では、入力軸20に設けられた第1偏心カム130aおよび第2偏心カ
ム130bが同じ方向に偏心しており、従って、第1公転ギア110aおよび第2公転ギ
ア110bも、第1リングギア100aおよび第2リングギア100bに対して同じ方向
に偏心しているものとして説明した。しかし、第1偏心カム130aおよび第2偏心カム
130b(従って、第1公転ギア110aおよび第2公転ギア110b)は、互いに逆方
向に偏心していてもよい。
【0051】
図7は、第1偏心カム130aと第2偏心カム130bとが逆方向に偏心して組み付け
られる変形例の減速機10の要部を示す説明図である。図7(a)には、第1リングギア
100aおよび第2リングギア100bに対して、第1公転ギア110aおよび第2公転
ギア110b、入力軸20が組み立てられる様子を示す分解斜視図が示されている。尚、
図7(a)では、貫通ピン120や、下蓋板102、上蓋板104などは図示が省略され
ている。図7(a)では、図面上で上側に設けられた第2公転ギア110bは右側に偏心
し、従って、第2公転ギア110bの右側で第2リングギア100bに噛合し、また、図
面上で下側に設けられた第1公転ギア110aは左側に偏心して、第1公転ギア110a
の左側で第1リングギア100aに噛合するように組み付けられる。
【0052】
また、第1リングギア100aおよび第2リングギア100bに対して、第1公転ギア
110aおよび第2公転ギア110bを組み付けた状態で、上方(第2公転ギア110b
の側)から見た様子が、図7(b)に示されている。尚、図7(b)では、入力軸20の
図示は省略され、代わりに貫通ピン120が図示されている。図示されているように、手
前側に表示された第2公転ギア110bは右側に偏心して、右側で第2リングギア100
bに噛合し、図面上で奥側に表示された第1公転ギア110aは左側に偏心して、左側で
第1リングギア100aに噛合している。
【0053】
このように、第1公転ギア110aと第2公転ギア110bとを逆方向に偏心して組み
付けると、次のような利点を得ることができる。すなわち、図4を用いて前述したように
、入力軸20を一回回転させると、公転ギア110(第1公転ギア110aおよび第2公
転ギア110b)が入力軸20の回りを一回公転する。従って、入力軸20を速い速度で
回転させると、公転ギア110(第1公転ギア110aおよび第2公転ギア110b)が
入力軸20の回りを速い速度で公転することになって、減速機10には、重心が触れ回る
ような動きが生じる。これに対して、図7に示した変形例のように、第1公転ギア110
aと第2公転ギア110bとを逆方向に偏心させると、第1公転ギア110aと第2公転
ギア110bとを合わせた重心は、入力軸20の中心軸上に来る。このため、入力軸20
が速い速度で回転して、第1公転ギア110aと第2公転ギア110bとが速い速度で公
転しても、重心が触れ回るような動きが生じることがない。その結果、入力軸20を速い
速度で回転させても、振動の少ない減速機10を提供することが可能となる。
【0054】
E.適用例 :
上述したように、本実施例の減速機10は、大きな減速比を実現することが可能であり
、しかもバックラッシュも生じない。このため、本実施例の減速機10は、ロボットの関
節や、ロボットハンドの関節などに適用される減速機として特に適している。
【0055】
図8は、本実施例の減速機10をロボットハンドの関節部分などに組み込んだ様子を示
した説明図である。図8(a)に示したロボットハンド200には、2本の向かい合う指
202の3カ所に関節が設けられており、この関節部分に減速機10が組み込まれている
。また、図8(b)に示したロボット500には、ロボットのアーム部分とロボットハン
ド200との接続部やアーム部分の肘の部分、あるいはアーム部分の付け根の部分などに
、減速機10が組み込まれている。このため、減速機10が組み込まれた関節部分の出力
の遅れや出力軸30のガタつきが防止されて、関節の動きを滑らかにすることが可能であ
る。
【0056】
以上、本実施例の減速機について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるもので
はなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0057】
たとえば、上述した実施例あるいは変形例では、第1リングギア100aと第2リング
ギア100bとは、弦巻バネ140が張設されることによって、互いに引き合うような状
態で、それぞれ逆方向に付勢されているものとして説明した。しかし、第1リングギア1
00aと第2リングギア100bとは、互いに逆方向に付勢されていれば足り、互いに引
き合うような状態で付勢されている必要はない。たとえば、弦巻バネ140を圧縮した状
態で組み込むことにより、第1リングギア100aと第2リングギア100bとが互いに
遠ざかるようにしても構わない。
【符号の説明】
【0058】
10…減速機、 20…入力軸、 30…出力軸、
40…本体部、 100a…第1リングギア、 100b…第2リングギア、
102…下蓋板、 104…上蓋板、 106…ナット、
110a…第1公転ギア、 110b…第2公転ギア、 112a,b…軸孔、
114a,b…貫通孔、 116…ベアリング、 120…貫通ピン、
130a…第1偏心カム、 130b…第2偏心カム、 140…弦巻バネ、
200…ロボットハンド、 202…指、 500…ロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に複数のギア歯が形成されたリングギアと、
前記リングギアに対して偏心して設けられ、外周に複数のギア歯が形成されて該リング
ギアと噛合する公転ギアと、
前記公転ギアの中心位置に、該公転ギアに対して回転可能に設けられた円形カムと、
前記円形カムに設けられ、前記リングギアの中心軸上に位置し、該中心軸周りに該円形
カムを回転させて、該公転ギアを該中心軸周りに公転させる第1回転軸と、
前記公転ギアに形成された貫通孔に挿入される貫通ピンと、
前記リングギアの中心軸上に設けられて前記貫通ピンと連結され、前記公転ギアの自転
による回転を出力する第2回転軸と
を備え、
前記リングギアは、前記ギア歯の厚さ方向に重ねられて、前記中心軸を中心として互い
に反対方向に回転可能な第1リングギアと第2リングギアとを有し、
前記公転ギアは、前記第1リングギアと噛合する第1公転ギアと、前記第2リングギア
と噛合する第2公転ギアとを有し、
前記円形カムは、前記第1公転ギアに対して回転可能に設けられた第1円形カムと、前
記第2公転ギアに対して回転可能に設けられた第2円形カムとを有し、
前記第1リングギアと前記第2リングギアとの間には、該第1リングギアと該第2リン
グギアとを、前記中心軸回りに互いに逆方向に付勢する付勢部材が設けられている
ことを特徴とする減速機。
【請求項2】
前記付勢部材は、該付勢部材の一端が前記第1リングギアに取り付けられ、該付勢部材
の他端が前記第2リングギアに取り付けられた弦巻バネである請求項1に記載の減速機。
【請求項3】
前記第1公転ギアと前記第2公転ギアとが、前記中心軸に対して互いに逆方向に等距離
偏心して設けられている請求項1または請求項2に記載の減速機。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の減速機を有するロボットハンド。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の減速機を有するロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−197916(P2012−197916A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64014(P2011−64014)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】