説明

減震パット

【課題】水平方向の揺れと垂直方向の揺れとが複合している地震の場合に、両方向の揺れをスムーズに緩和・吸収できる減震パットを提供することを目的とする。
【解決手段】第一板51と、第一板51の上面52に転動可能に載置されている支持球体60と、支持球体60に載上されて支持されている第二板61と、第二板61の上面62に載置され、転動しないで垂直方向に変形する弾性部材46と、弾性部材46に載上されて支持されている第三板41とを備え、第一板51と第二板61との間から支持球体60が脱出しないように支持球体60の転動範囲を規制する規制機構53、63を有し、地震時に、支持球体60が転動することで第一板51が第二板61に対して水平方向に相対変位し、弾性部材46が変形することで第二板61が前記第三板41に対して垂直方向に相対変位する減震パット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震により載置している物品が揺れるのを小さくする減震パットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、地震の揺れを吸収する減震パットとして、様々なものが提案されている。例えば、図13に示すように、上面側にドーム状凹部92が形成された下ベース91と、下ベース91の上方に設けられ、下面側にドーム状凹部94が形成された上ベース93と、下ベース91のドーム状凹部92と上ベース93のドーム状凹部94との間に設けられ、上ベース93を支持しているゴム製の球体95とを備えた免震装置90が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−300160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、免震装置90は、垂直方向の揺れに対しては、球体95が変形することで吸収・緩和していることから、水平方向の揺れと垂直方向の揺れとが複合している場合には、球体95の変形が大きくなり、水平方向の揺れをスムーズに緩和・吸収することができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、水平方向の揺れと垂直方向の揺れとが複合している地震の場合に、両方向の揺れをスムーズに緩和・吸収できる減震パットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の減震パットは、第一板と、前記第一板の上面に転動可能に載置されている支持球体と、前記支持球体に載上されて支持されている第二板と、前記第二板の上面に載置され、転動しないで垂直方向に変形する弾性部材と、前記弾性部材に載上されて支持されている第三板とを備え、前記第一板と前記第二板との間から前記支持球体が脱出しないように前記支持球体の転動範囲を規制する規制機構を有し、地震時に、前記支持球体が転動することで前記第一板が前記第二板に対して水平方向に相対変位し、前記弾性部材が変形することで前記第二板が前記第三板に対して垂直方向に相対変位する。
【0007】
また、垂直方向の揺れを十分に緩和・吸収できることから、減震パットは、第二板と第三板との間に弾性部材が垂直方向に変形するための1mm以上の隙間を有することが好ましい。この隙間は、2mm以上であることがより好ましい。この隙間の上限は、特に限定はされないが、敢えて言うならば10mm以下である。
【0008】
また、減震パットは、第一板と第二板とを上下に分離しないように結合する結合機構を有することが好ましい。結合機構を有することで、設置や移動するとき等に分解することなく、取扱いが容易になる。また、揺れが大きいときに分解してしまうことを防止できる。
【0009】
弾性部材としては、特に限定はされないが、ゴムや熱可塑性エラストマー等からなるゴム状体や、コイルバネ等が例示できる。また、ゴム状体は、特に限定はされないが、変形し易いことから、中空体が好ましい。
また、弾性部材が設けられる態様は、特に限定はされないが、第二板の上面及び第三板の下面の少なくとも一方に凹設されている嵌入凹部に、弾性部材が転動しないように嵌入されている態様等が例示でき、より好ましくは、第二板の上面と第三板の下面とにそれぞれ凹設されている嵌入凹部に、弾性部材が転動しないように嵌入されている態様である。
【0010】
結合機構の態様は、特に限定はされないが、第一板及び第二板のいずれか一方に貫設された結合孔と、結合孔を通り抜けられない大きさの座金と、座金を貫装して結合孔に遊貫している結合ボルトと、第一板及び第二板の他方に設けられ、結合ボルトに螺合している結合ナットとを備えている態様等が例示できる。
【0011】
規制機構の態様は、特に限定はされないが、第一板の上面及び第二板の下面の少なくとも一方に凹設された、平面視形状が支持球体より大きい凹所等が例示できる。凹所の態様は、特に限定はされないが、凹所の内底面の中央に、支持球体が嵌合する、平面視形状が支持球体より小さい嵌合凹部が凹設されている態様が好ましい。これは、所定以上の力で水平方向に揺れないと、支持球体が嵌合凹部から外れて凹所内を転動しないことから、第一板が水平方向に相対変位しない。このため、地震でない時の安定性が高くなるからである。
【0012】
支持球体の個数は、特に限定はされないが、安定性が高くなることから、三個以上であることが好ましい。
【0013】
第一板、第二板、第三板の材料は、特に限定はされないが、ゴム、プラスチック、木材、鉄等の金属等が例示できる。また、第一板、第二板、第三板は、これらの材料を単独で用いたものであってもよいし、これらの材料を複数組み合わせて用いたものであってもよい。これらの材料の組み合わせとしては、特に限定はされないが、ゴムとプラツチック、ゴム又はプラスチックと木材、ゴム又はプラスチックと金属、木材と金属等が例示できる。第一板及び第二板は、木材からなり、支持球体と接する部分のみがゴムからなることが好ましい。これは、木材からなることで、意匠性が高くなる(見た目がよくなる)とともに、剛性が高くなり、且つコストを下げることができる。また、支持球体と接する部分がゴムからなることで、支持球体の転動がスムーズになるとともに、転動時の音が小さくなるからである。
【0014】
支持球体の材料は、特に限定はされないが、第一板及び第二板の材料と同じか又はそれより硬質の材料であることが好ましい。これは、支持球体が大きく変形することで転動し難くなることを防止するためである。また、第一板又は第二板が複数の材料を組み合わせたものである場合には、支持球体と接する第一板の部分及び第二板の部分の材料と同じか又はそれより硬質の材料であることが好ましい。
【0015】
本発明の減震パットに載置される物品は、特に限定はされないが、陶磁器等の美術工芸品・骨董品、パーソナルコンピュータ等の電子機器、測定装置等の精密機器等が例示できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水平方向の揺れと垂直方向の揺れとが複合している地震の場合に、両方向の揺れをスムーズに緩和・吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1の減震パットの斜視図である。
【図2】同減震パットの平面図である。
【図3】同減震パットの正面図及び断面図である。
【図4】同減震パットの分解斜視図である。
【図5】同減震パットの横揺れ時の説明図である。
【図6】同減震パットの縦揺れ時の説明図である。
【図7】実施例2の減震パットの平面図である。
【図8】同減震パットの正面図及び断面図である。
【図9】同減震パットの分解斜視図である。
【図10】実施例3の減震パットの平面図である。
【図11】同減震パットの正面図及び断面図である。
【図12】同減震パットの分解斜視図である。
【図13】従来例の免震装置の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0018】
本発明の実施例1である減震パット50について図1〜図6を用いて説明する。減震パット50には、壷5が載置されている。
【0019】
減震パット50は、一辺が約30cmの略正方形の板状の第一板51と、第一板51の上面52に載置されている略真球状の四個の支持球体60と、四個の支持球体60に載上されて支持されている、一辺が約30cmの略正方形の板状の第二板61と、第二板61の上面62に載置されている、中空で略円柱状の四個のゴムチューブ46と、四個のゴムチューブ46に載上されて支持されている、一辺が約30cmの略正方形の板状の第三板41とを備えている。第一板51と第二板61とは、結合機構70で結合されている。第一板51、第二板61、第三板41及び支持球体60は、それぞれゴムからなっている。
【0020】
第一板51は、上面52の略中央に下面54へと繋がる略円柱状の結合孔56が貫設され、上面52の四隅付近には、それぞれ第一凹所53が凹設されている。結合孔56は、上下方向の略中央に段部57が形成され、段部57より上側の結合孔56の上部56eが段部57より下側の結合孔56の下部56dより縮径している。また、下面54側の開口は、拡径して蓋板59が嵌合している。第一凹所53は、支持球体60の半径より半径が大きくなっている略円形状の開口をしており、側面53aが支持球体60より曲率半径が若干大きくなっている凹曲面状に形成されている。また、内底面53bが支持球体60の半径より半径が大きくなっている略円形状をしており、中心に向かって深くなっている。内底面53bの略中央には、支持球体60と曲率半径が略同じ大きさになっている凹球面状で、開口の半径が支持球体60の半径より小さくなっている嵌合凹部53cが形成されている。
【0021】
第一板51の下面54には、減震パット50を両面テープ等で床面等の設置場所に接着するための下被接着面部55が二箇所形成されている。また、下被接着面部55を除く下面54の全体には、小突起が形成され、下面54の全周は、面取り加工が施されている。
【0022】
第二板61は、下面64の略中央に上面62へと繋がる略円柱状の中央孔66が貫設され、下面64の四隅付近には、それぞれ第二凹所63が凹設されている。中央孔66は、上下方向の中間に段部が形成され、段部より下側が段部より上側より縮径している。第二凹所63は、支持球体60の半径より半径が大きくなっている略円形状の開口をしており、側面63aが支持球体60より曲率半径が若干大きくなっている凹曲面状に形成されている。また、内底面63bが支持球体60の半径より半径が大きくなっている略円形状をしており、中心に向かって深くなっている。内底面63bの略中央には、支持球体60と曲率半径が略同じ大きさになっている凹球面状で、開口の半径が支持球体60の半径より小さくなっている嵌合凹部63cが形成されている。
【0023】
第二板61の上面62には、外周に沿って延びる四本の第二円弧溝67が凹設され、各第二円弧溝67より外側には、それぞれ上面62から下面64へと繋がる略円柱状のナット孔68が貫設されている。第二円弧溝67は長さ方向と直交する断面の形状が略円弧状になっている。この第二円弧溝67が嵌入凹部である。ナット孔68は、上下方向の中間に段部が形成され、段部より上側が段部より下側より縮径している。
【0024】
第三板41は、第二円弧溝67に対応する位置の下面44に、外周に沿って延びる四本の第三円弧溝47が凹設され、ナット孔68に対応する位置の下面44に、それぞれ下面44から上面42へと繋がる略円柱状のボルト孔48が貫設されている。第三円弧溝47は長さ方向と直交する断面が略円弧状になっている。この第三円弧溝47が嵌入凹部である。ボルト孔48は、上下方向の中間に段部が形成され、段部より下側が段部より上側より縮径している。
【0025】
第三板41の上面42の略中央には、載置している物品を両面テープ等で減震パット50に接着するための上被接着面部45が形成されている。また、上被接着面部45を除く上面42の全体には、小突起が形成され、上面42の全周は、面取り加工が施されている。
【0026】
四個の支持球体60は、第一凹所53と第二凹所63との間にそれぞれ一個ずつ設けられ、第一板51と第二板61との間に約3mmの隙間が生じるようにして第二板61を支持している。また、第一凹所53及び第二凹所63は平面視形状が支持球体60より大きいことから、支持球体60は、第一凹所53及び第二凹所63内で転動可能になっている。なお、第一凹所53及び第二凹所63から支持球体60は脱出できないことから、支持球体60の転動範囲は第一凹所53及び第二凹所63内に規制されており、第一凹所53及び第二凹所63が規制機構である。
【0027】
結合機構70は、結合孔56と、結合孔56の下部56d内に設けられ、結合孔56の上部56eの内径より外径が一回り大きい略円盤状の座金71と、座金71を貫装して結合孔56の上部56eに遊貫している結合ボルト72と、中央孔66に嵌入され、結合ボルト72に螺合している結合ナット73とを備えている。また、座金71は、結合孔56の上部56eの内径より外径が一回り大きいことから、結合孔56の上部56eを通り抜けられなくなっている。このため、第一板51と第二板61とが上下に分離しようとすると、座金71が結合孔56の段部57に当接して、結合機構70は、第一板51と第二板61とが上下に分離するのを規制している。
【0028】
四個のゴムチューブ46は、それぞれ長さ方向を横にして、第二円弧溝67と第三円弧溝47とに嵌入された状態で、第二円弧溝67と第三円弧溝47との間にそれぞれ一個ずつ設けられ、第二板61と第三板41との間に約3mmの隙間が生じるようにして第三板41を支持している。なお、第二円弧溝67及び第三円弧溝47の半径がゴムチューブ46の半径より若干大きくなっていることから、第二円弧溝67及び第三円弧溝47とゴムチューブ46との間に隙間が生じている。しかし、この隙間は減震パット50に物品が載置されることによりゴムチューブ46が変形することで埋まってしまうことから、ゴムチューブ46は転動しないで垂直方向に変形する。
【0029】
第二板61と第三板41とは、ナット孔68に嵌入されている連結ナット78に、ボルト孔48を貫通している連結ボルト77を螺合させることで、互いに水平方向に相対変位不能に連結されている。
【0030】
次に、地震時における減震パット50の動きについて図5、図6を用いて説明する。
【0031】
減震パット50は、図5のaに示すように、支持球体60が第一凹所53の嵌合凹部53c及び第二凹所63の嵌合凹部63cに嵌合た状態で静止している。
地震により減震パット50が設置されている場所が水平方向に揺れると、設置場所の揺れに伴って、第一板51が水平方向に移動しようとする。ところが、物品が載置されている第三板41は慣性質量が大きくなっていることから、水平方向に相対変位不能に第三板41に連結されている第二板61は水平方向に移動し難くなっている。このため、支持球体60が第一凹所53の嵌合凹部53c及び第二凹所63の嵌合凹部63cから外れて転動し、図5のb、cに示すように、第二板61は水平方向に変位しないで、第一板51が第二板61に対して水平方向に相対変位する。これにより、減震パット50は、地震により載置している物品が水平方向に揺れるのを小さくすることができる。なお、結合ボルト72は結合孔56の上部56eに遊貫しており、座金71はその外径が結合孔56の下部56dの内径より十分に小さいことから、結合ボルト72及び座金71が第一板51の水平方向の変位を規制することはない。
【0032】
地震により減震パット50が設置されている場所が垂直方向に揺れると、図6に示すように、設置場所の揺れに伴って、第一板51が垂直方向に移動しようとする。第一板51が垂直方向に移動しようとすると、第二板61も垂直方向に移動しようとする。ところが、物品が載置されている第三板41は、慣性質量が大きくなっていることから、移動し難くなっている。このため、図6のbに示すように、ゴムチューブ46が垂直方向に圧縮されて変形し、第三板41に対して第二板61が垂直方向に相対変位し、第二板61と第三板41との隙間が小さくなる。これにより、減震パット50は、地震により載置している物品が垂直方向に揺れるのを小さくすることができる。
【0033】
また、水平方向の揺れと垂直方向の揺れとが複合した地震により減震パット50が載置されている場所が揺れる場合には、上記のように、水平方向の揺れは支持球体60の転動による第一板51の第二板61に対する水平方向の相対変位により緩和・吸収され、垂直方向の揺れはゴムチューブ46の垂直方向の変形による第二板61の第三板41に対する垂直方向の相対変位により緩和・吸収される。これにより、減震パット50は、地震により載置している物品が水平方向及び垂直方向に揺れるのを小さくすることができる。
【0034】
本実施例の減震パット50によれば、次の(a)〜(g)の効果が得られる。
(a)水平方向に揺れる(相対変位する)機構と垂直方向に揺れる(相対変位する)機構とを分離していることから、両方向の揺れが複合している地震に対し、スムーズに対応でき、両方向の揺れを緩和・吸収することができる。
(b)支持球体60が転動することにより、第一板51が第二板61に対して水平方向に相対変位することから、地震により載置している物品が水平方向に揺れるのを小さくすることができる。
(c)結合機構70により第一板51と第二板61とが結合されていることから、設置や移動するとき等に分解することなく、取扱いが容易である。
(d)四個の支持球体60で第二板61の四隅付近を支持していることから、安定性が高くなっている。
(e)第一凹所53及び第二凹所63にそれぞれ嵌合凹部53c、63cが形成され、嵌合凹部53c、63cに支持球体60が嵌合しており、所定以上の力で水平方向に揺れないと、支持球体60が嵌合凹部53c、63cから外れて第一凹所53及び第二凹所63内を転動しないことから、第一板51が第二板61に対して水平方向に相対変位せず、地震でない時の安定性が高くなっている。
(f)ゴムチューブ46が垂直方向に伸縮して変形することにより、第二板61が第三板41に対して垂直方向に相対変位することから、地震により載置している物品が垂直方向に揺れるのを小さくすることができる。
(g)長さ方向を横にしたゴムチューブ46で第三板41を支持していることから、ゴムチューブ46と第三板41との接触面積が大きくなり、安定性が高くなっている。
【実施例2】
【0035】
本発明の実施例2である減震パット80について図7〜図9を用いて説明する。
【0036】
減震パット80は、第二板81と第三板86との間に弾性チューブの替わりにバネ軸方向を垂直方向に向けている四個のコイルバネ85を介在させ、この四個のコイルバネ85で第三板86を支持している点がのみが実施例1の減震パット50と異なり、その他の点は減震パット50と同じである。そこで、減震パット50と異なる点を説明する。なお、図7〜図9において、減震パット50と同じ部材及び部位には、同じ符号を付している。
【0037】
減震パット80は、第二板81の上面62と第三板86の下面44とにそれぞれコイルバネ85を挿入するための有底で略円柱状のバネ孔82、87が凹設されている。このバネ孔82、87が嵌入凹部である。四個のコイルバネ85は、それぞれバネ軸方向を垂直方向に向けて、第二板81のバネ孔82と第三板86のバネ孔87とに嵌入され、バネ孔82とバネ孔87との間にそれぞれ一個ずつ設けられ、第二板81と第三板86との間に約3mmの隙間が生じるようにして第三板86を支持している。
【0038】
本実施例の減震パット80によれば、実施例1の減震パット50で得られる(a)〜(e)の効果に加え、次の(h)の効果が得られる。
(h)コイルバネ85が垂直方向に伸縮して変形することにより、第二板81が第三板86に対して垂直方向に相対変位することから、地震により載置している物品が垂直方向に揺れるのを小さくすることができる。
【実施例3】
【0039】
本発明の実施例3である減震パット100について図10〜図12を用いて説明する。
【0040】
減震パット100は、一辺が約30cmの略正方形の板状の第一板151と、第一板151の上面152に載置されている略真球状(直径が約20mm)の四個の支持球体160と、四個の支持球体160に載上されて支持されている、一辺が約29cmの略正方形の板状の第二板161と、第二板161の上面162に載置されている、中空で略円柱状(外径が約30mm、内径が約11mm)の四個のゴムチューブ146と、四個のゴムチューブ146に載上されて支持されている、一辺が約30cmの略正方形の板状の第三板141とを備えている。第一板151と第二板161とは、結合機構170で結合されている。第一板151、第二板161及び第三板141は木材からなり、支持球体160はウレタンからなっている。
【0041】
第一板151は、上面152の略中央に下面154へと繋がる略円柱状の結合孔156が貫設され、上面152の四隅付近には、それぞれ第一孔111が凹設されている。結合孔156は、上下方向の略中央に段部157が形成され、段部157より上側の結合孔156の上部156eが段部157より下側の結合孔156の下部156dより縮径している。また、下面154側の開口は、拡径して蓋板159が嵌合している。第一孔111には、ゴム(EPDM)からなり、略円柱状の第一凹所体112が嵌装されている。第一凹所体112は上面に第一凹所153が凹設されている。第一凹所153は、支持球体160の半径より半径が大きくなっている略円形状の開口をしており、側面153aが支持球体160より曲率半径が若干大きくなっている凹曲面状に形成されている。また、内底面153bが支持球体160の半径より半径が大きくなっている略円形状をしており、中心に向かって深くなっている。内底面153bの略中央には、支持球体160と曲率半径が略同じ大きさになっている凹球面状で、開口の半径が支持球体160の半径より小さくなっている嵌合凹部153cが形成されている。
【0042】
第二板161は、下面164の略中央に上面162へと繋がる略円柱状の中央孔166が貫設され、下面164の四隅付近には、それぞれ第二孔121が凹設されている。中央孔166は、上下方向の中間に段部が形成され、段部より下側が段部より上側より縮径している。第二孔121には、ゴム(EPDM)からなり、略円柱状の第二凹所体122が嵌装されている。第二凹所体122は下面に第二凹所163が凹設されている。第二凹所163は、支持球体160の半径より半径が大きくなっている略円形状の開口をしており、側面163aが支持球体160より曲率半径が若干大きくなっている凹曲面状に形成されている。また、内底面163bが支持球体160の半径より半径が大きくなっている略円形状をしており、中心に向かって深くなっている。内底面163bの略中央には、支持球体160と曲率半径が略同じ大きさになっている凹球面状で、開口の半径が支持球体160の半径より小さくなっている嵌合凹部163cが形成されている。
【0043】
第二板161の上面162には、外周に沿って延びる四本の第二溝167が凹設され、各第二溝167より内側には、それぞれ上面162から下面164へと繋がる略円柱状のナット孔168が貫設されている。この第二溝167が嵌入凹部である。ナット孔168は、上下方向の中間に段部が形成され、段部より上側が段部より下側より縮径している。
【0044】
第三板141は、略平板状の本体部101と、本体部101の上面142に接合され、木材からなる上面化粧板102と、本体部101の側面に接合され、木材からなる側面化粧板103とからなる。
【0045】
本体部101は、第二溝167に対応する位置の下面144に、外周に沿って延びる四本の第三溝147が凹設され、ナット孔168に対応する位置の下面144に、それぞれ下面144から上面142へと繋がる略円柱状のボルト孔148が貫設されている。この第三溝147が嵌入凹部である。ボルト孔148は、上下方向の中間に段部が形成され、段部より下側が段部より上側より縮径している。
【0046】
四個の支持球体160は、第一凹所153と第二凹所163との間にそれぞれ一個ずつ設けられ、第一板151と第二板161との間に約3mmの隙間が生じるようにして第二板161を支持している。また、第一凹所153及び第二凹所163は平面視形状が支持球体160より大きいことから、支持球体160は、第一凹所153及び第二凹所163内で転動可能になっている。なお、第一凹所153及び第二凹所163から支持球体160は脱出できないことから、支持球体160の転動範囲は第一凹所153及び第二凹所163内に規制されており、第一凹所153及び第二凹所163が規制機構である。
【0047】
結合機構170は、結合孔156と、結合孔156の下部156d内に設けられ、結合孔156の上部156eの内径より外径が一回り大きい略円盤状の座金171と、中央孔166に挿入され、結合孔156の上部156eに遊貫して座金171を貫装している結合ボルト172と、結合孔156の下部156d内に設けられ、結合ボルト172に螺合している結合ナット173とを備えている。また、座金171は、結合孔156の上部156eの内径より外径が一回り大きいことから、結合孔156の上部156eを通り抜けられなくなっている。このため、第一板151と第二板161とが上下に分離しようとすると、座金171が結合孔156の段部157に当接して、結合機構170は、第一板151と第二板161とが上下に分離するのを規制している。
【0048】
四個のゴムチューブ146は、シリコンゴムからなり、それぞれ長さ方向を横にして、第二溝167と第三溝147とに嵌入された状態で、第二溝167と第三溝147との間にそれぞれ一個ずつ設けられている。そして、第二板161と第三板141との間に約3mmの隙間が生じるように垂直方向に変形して第三板141を支持している。なお、第二溝167及び第三溝147とゴムチューブ146との間に隙間が生じているが、この隙間は減震パット100に物品が載置されることによりゴムチューブ146が変形することで埋まってしまうことから、ゴムチューブ146は転動しないで垂直方向に変形する。
【0049】
第二板161と第三板141とは、ナット孔168に嵌入されている連結ナット178に、ボルト孔148を貫通している連結ボルト177を螺合させることで、互いに水平方向に相対変位不能に連結されている。
【0050】
地震時における減震パット100の動きは、実施例1の減震パット50と同じである。
【0051】
本実施例の減震パット100によれば、次の(i)〜(q)の効果が得られる。
(i)水平方向に揺れる(相対変位する)機構と垂直方向に揺れる(相対変位する)機構とを分離していることから、両方向の揺れが複合している地震に対し、スムーズに対応でき、両方向の揺れを緩和・吸収することができる。
(j)支持球体160が転動することにより、第一板151が第二板161に対して水平方向に相対変位することから、地震により載置している物品が水平方向に揺れるのを小さくすることができる。
(k)結合機構170により第一板151と第二板161とが結合されていることから、設置や移動するとき等に分解することなく、取扱いが容易である。
(l)四個の支持球体160で第二板161の四隅付近を支持していることから、安定性が高くなっている。
(m)第一凹所153及び第二凹所163にそれぞれ嵌合凹部153c、163cが形成され、嵌合凹部153c、163cに支持球体160が嵌合しており、所定以上の力で水平方向に揺れないと、支持球体160が嵌合凹部153c、163cから外れて第一凹所153及び第二凹所163内を転動しないことから、第一板151が第二板161に対して水平方向に相対変位せず、地震でない時の安定性が高くなっている。
(n)ゴムチューブ146が垂直方向に伸縮して変形することにより、第二板161が第三板141に対して垂直方向に相対変位することから、地震により載置している物品が垂直方向に揺れるのを小さくすることができる。
(o)長さ方向を横にしたゴムチューブ146で第三板141を支持していることから、ゴムチューブ146と第三板141との接触面積が大きくなり、安定性が高くなっている。
(p)第一板151、第二板161及び第三板141の材料が木材であることから、第一板、第二板及び第三板の材料がゴムである実施例1の減震パット50及び実施例2の減震パット80よりコストを下げることができる。また、意匠性が高く(見た目がよく)なり、剛性が高くなっている。
(q)第一凹所153及び第二凹所163をそれぞれゴムからなる第一凹所体112及び第二凹所体122に設けていることから、第一凹所及び第二凹所を木材からなる部分に設けた場合に比べ、支持球体160の転動がスムーズ(特に、転動後に支持球体160が嵌合凹部153c、163cに嵌合し易い)であり、且つ転動時の音を小さくできる。
【0052】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
【符号の説明】
【0053】
41 第三板
44 下面
46 ゴムチューブ
47 第三円弧溝
50 減震パット
51 第一板
52 上面
53 第一凹所
53b 内底面
53c 嵌合凹部
56 結合孔
60 支持球体
61 第二板
62 上面
63 第二凹所
63b 内底面
63c 嵌合凹部
64 下面
67 第二円弧溝
70 結合機構
71 座金
72 結合ボルト
73 結合ナット
80 減震パット
81 第二板
82 バネ孔
85 コイルバネ
86 第三板
87 バネ孔
100 減震パット
141 第三板
144 下面
146 ゴムチューブ
151 第一板
152 上面
153 第一凹所
153b 内底面
153c 嵌合凹部
156 結合孔
160 支持球体
161 第二板
162 上面
163 第二凹所
163b 内底面
163c 嵌合凹部
164 下面
167 第二溝
170 結合機構
171 座金
172 結合ボルト
173 結合ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一板(51、151)と、前記第一板(51、151)の上面(52、152)に転動可能に載置されている支持球体(60、160)と、前記支持球体(60、160)に載上されて支持されている第二板(61、81、161)と、前記第二板(61、81、161)の上面(62、162)に載置され、転動しないで垂直方向に変形する弾性部材(46、85、146)と、前記弾性部材(46、85、146)に載上されて支持されている第三板(41、86、141)とを備え、
前記第一板(51、151)と前記第二板(61、81、161)との間から前記支持球体(60、160)が脱出しないように前記支持球体(60、160)の転動範囲を規制する規制機構(53、63、153、163)を有し、
地震時に、前記支持球体(60)が転動することで前記第一板(51、151)が前記第二板(61、81、161)に対して水平方向に相対変位し、前記弾性部材(46、85、146)が変形することで前記第二板(61、81、161)が前記第三板(41、86、141)に対して垂直方向に相対変位する減震パット。
【請求項2】
前記弾性部材(46、85、146)を転動しないように嵌入している嵌入凹部(47、67、82、87、147、167)が前記第二板(61、81、161)の上面(62、162)及び第三板(41、86、141)の下面(44、144)の少なくとも一方に凹設されている請求項1記載の減震パット。
【請求項3】
前記減震パットは、前記第二板(61、81、161)と前記第三板(41、86、141)との間に前記弾性部材(46、85、146)が垂直方向に変形するための1mm以上の隙間を有する請求項1又は2記載の減震パット。
【請求項4】
前記弾性部材(46、146)は、ゴム状体(46、146)である請求項1〜3のいずれか一項に記載の減震パット。
【請求項5】
前記弾性部材(85)は、バネ軸方向を垂直方向に向けているコイルバネ(85)である請求項1〜3のいずれか一項に記載の減震パット。
【請求項6】
前記減震パットは、前記第一板(51、151)と前記第二板(61、81、161)とを上下に分離しないように結合する結合機構(70、170)を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の減震パット。
【請求項7】
前記結合機構(70、170)は、前記第一板(51、151)及び前記第二板(61、81、161)のいずれか一方に貫設された結合孔(56、156)と、前記結合孔(56、156)を通り抜けられない大きさの座金(71、171)と、前記座金(71、171)を貫装して前記結合孔(56、156)に遊貫している結合ボルト(72、172)と、前記第一板(51、151)及び前記第二板(61、81、161)の他方に設けられ、前記結合ボルト(72、172)に螺合している結合ナット(73、173)とを備えている請求項6記載の減震パット。
【請求項8】
前記規制機構(53、63、153、163)は、前記第一板(51、151)の上面(52、152)及び前記第二板(61、81、161)の下面(64、164)の少なくとも一方に凹設されている、平面視形状が前記支持球体(60、160)より大きい凹所(53、63、153、163)である請求項1〜7のいずれか一項に記載の減震パット。
【請求項9】
前記凹所(53、63、153、163)の内底面(53b、63b、153b、163b)の中央には、前記支持球体(60、160)が嵌合する、平面視形状が前記支持球体(60、160)より小さい嵌合凹部(53c、63c、153c、163c)が凹設されている請求項8記載の減震パット。
【請求項10】
前記第一板(151)及び第二板(161)は、木材からなり、前記支持球体(160)と接する部分のみがゴムからなる請求項求項1〜9のいずれか一項に記載の減震パット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−57392(P2013−57392A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237737(P2011−237737)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(598062066)株式会社テイエスケイ (3)
【Fターム(参考)】