説明

渦流探傷装置、及び、渦流探傷方法

【課題】探傷対象であるテストピースが複雑な形状であっても、最適なSN比を得ることのできるバンドパスフィルターの設定周波数を、作業者の経験に依存せずに定量的に把握することができる、渦流探傷装置及び渦流探傷方法を提供する。
【解決手段】渦流探傷装置10は、回転させた健常テストピースTa及び欠陥テストピースTbのそれぞれに発生した渦電流を渦流センサ23で検出し、渦流センサ23で検知した前記渦電流の変化に基づいて、信号処理装置12で健常形状信号及び欠陥形状信号を生成し、解析装置13で、信号処理装置12で生成した前記健常形状信号及び欠陥形状信号をFFT解析して比較することにより、ノイズが発生している周波数を算出し、設定装置22で、解析装置13で算出した周波数をバンドパスフィルター21の設定周波数として設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦流探傷装置、及び、渦流探傷方法に関し、具体的には、渦流計測によってテストピースの欠陥を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主にシャフト部材等の長軸状部材について、高周波焼入時に発生する焼割れや、切削加工時に発生する切削割れ等の欠陥を検出する技術として、渦流探傷装置が用いられている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
前記従来技術に係る渦流探傷装置では、テストピースに交流コイルを備える渦流センサを接近させて電磁誘導により渦電流を発生させるとともに、前記テストピースに発生した渦電流を前記渦流センサで検出する。そして、該渦流センサで検出した前記渦電流の変化に基づいて、信号処理装置で前記渦電流の変化を示す信号である形状信号を生成し、信号を減衰させる周波数となる設定周波数が予め入力されたバンドパスフィルターに前記形状信号を入力することにより、前記テストピースにおける欠陥の有無を判断するのである。
【0004】
そして、従来の渦流探傷装置においては、前記渦流センサで検出した渦電流信号を互いに90度異なるX軸成分及びY軸成分に分離し、X軸成分にノイズ(テストピースの形状や材質により発生している信号)、Y軸成分に欠陥信号が得られるように調整している。さらに、欠陥の無い健常テストピースと、欠陥のある欠陥テストピースとを交互に複数回計測し、計測するごとに作業者がバンドパスフィルターの周波数を調整することで、オシロスコープのXY波形の形状に基づいて欠陥信号を特定し、渦流探傷装置におけるバンドパスフィルターの設定周波数を決定しているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−313493号公報
【特許文献2】特開2004−212141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、探傷の対象であるテストピースが複雑な形状である場合、スプライン等の形状等により発生するノイズは欠陥信号と類似する。つまり、前記従来技術によれば、複雑な形状であるテストピースに対して、作業者がオシロスコープにおけるXY波形の形状に基づいて欠陥信号を特定する構成であるため、バンドパスフィルターに設定すべき周波数を定量的に把握することが難しかった。換言すれば、最適なSN比(欠陥信号とノイズの比)を得ることのできるバンドパスフィルターの設定周波数を求めることが困難となっていたのである。
【0007】
また、オシロスコープにおけるXY波形の形状の判断は作業者の経験に依存しているため、バンドパスフィルターの設定周波数が作業者によって異なるという問題があった。即ち、渦流探傷装置における探傷精度に差異が発生し、探傷精度不良によって過検出、欠陥の見逃しのような検出ミスが発生するおそれがあったのである。
さらに、作業者が繰り返して作業する必要があることで、設定周波数を求める時間が長くかかり、渦流探傷における作業時間の増加に繋がっていた。
【0008】
そこで本発明では、上記現状に鑑み、探傷対象であるテストピースが複雑な形状であっても、最適なSN比(欠陥信号とノイズの比)を得ることのできるバンドパスフィルターの設定周波数を、作業者の経験に依存せずに定量的に把握することができる、渦流探傷装置、及び、渦流探傷方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、回転させたテストピースに、交流コイルを備える渦流センサを接近させて電磁誘導による渦電流を発生させるとともに、前記テストピースに発生した渦電流を前記渦流センサで検出し、該渦流センサで検出した前記渦電流の変化に基づいて、信号処理装置で前記渦電流の変化を示す信号である形状信号を生成し、信号を減衰させる周波数となる設定周波数が予め設定されたバンドパスフィルターに前記形状信号を入力することにより、前記テストピースにおける欠陥の有無を判断する、渦流計測部と、前記バンドパスフィルターの設定周波数を設定する設定部と、を備える、渦流探傷装置であって、前記渦流計測部で生成した前記形状信号をFFT解析する、周波数解析部をさらに備え、前記渦流計測部で、欠陥が無く回転させた健常テストピース、及び、欠陥を有し回転させた欠陥テストピースのそれぞれについて、前記渦流センサを接近させて電磁誘導による渦電流を発生させるとともに、前記健常テストピース及び欠陥テストピースのそれぞれに発生した渦電流を前記渦流センサで検出し、該渦流センサで検知した前記渦電流の変化に基づいて、前記信号処理装置で前記健常テストピースにおける前記渦電流の変化を示す信号である健常形状信号、及び、前記欠陥テストピースにおける前記渦電流の変化を示す信号である欠陥形状信号を生成し、前記周波数解析部で、前記渦流計測部で生成した前記健常形状信号及び欠陥形状信号をFFT解析して比較することにより、ノイズが発生している周波数を算出し、前記設定部で、前記周波数解析部で算出した周波数を、前記バンドパスフィルターにおいて前記設定周波数として設定するものである。
【0011】
請求項2においては、欠陥が無く回転させた健常テストピース、及び、欠陥を有し回転させた欠陥テストピースのそれぞれについて電磁誘導による渦電流を発生させるとともに、前記健常テストピース及び欠陥テストピースのそれぞれに発生した渦電流を検出し、該渦電流の変化に基づいて、前記健常テストピースにおける前記渦電流の変化を示す信号である健常形状信号、及び、前記欠陥テストピースにおける前記渦電流の変化を示す信号である欠陥形状信号を生成する、形状信号生成工程と、前記形状信号生成工程で生成した、前記健常形状信号及び欠陥形状信号をFFT解析して比較することにより、ノイズが発生している周波数を算出する、周波数解析工程と、前記周波数解析工程で算出した周波数を、バンドパスフィルターにおいて信号を減衰させる周波数となる設定周波数として設定する、設定工程と、回転させたテストピースに発生した電磁誘導による渦電流を検出し、検出した前記テストピースの渦電流の変化に基づいて、前記渦電流の変化を示す信号である形状信号を生成し、前記設定工程で前記設定周波数を設定したバンドパスフィルターに前記形状信号を入力することにより、前記テストピースにおける欠陥の有無を判断する、渦流探傷工程と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
本発明により、渦流探傷装置、及び、渦流探傷方法において、探傷対象であるテストピースが複雑な形状であっても、最適なSN比(欠陥信号とノイズの比)を得ることのできるバンドパスフィルターの設定周波数を、作業者の経験に依存せずに定量的に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る渦流探傷装置の概要を示した図。
【図2】本発明の一実施形態に係る渦流探傷方法の作業手順を示した図。
【図3】(a)は健常テストピースのFFT解析結果を示した図、(b)は同じく欠陥テストピースのFFT解析結果を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではなく、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
【0016】
[渦流探傷装置10]
まず始めに、本発明の一実施形態に係る渦流探傷装置10の概要について、図1を用いて説明をする。
図1に示す如く、渦流探傷装置10は、信号処理装置12、バンドパスフィルター21、及び、渦流センサ23を備える渦流計測部を備える。
【0017】
詳細には、前記渦流計測部は、励磁コイル及び検出コイルからなる交流コイルを備えた渦流センサ23と、該渦流センサ23と電気的に接続された信号処理装置12と、該信号処理装置12と電気的に接続されたバンドパスフィルター21と、を主な構成要素として備えるのである。
【0018】
そして、渦流センサ23は、前記交流コイルに交流電流を通電することにより、前記交流コイルと導電体であるテストピースT(健常テストピースTa)との間に生じる電磁誘導により前記テストピースTに渦電流を発生させると同時に、前記テストピースTに発生した渦電流を検出可能に構成されている。
【0019】
また、信号処理装置12は、前記渦流センサ23に電流を供給すると同時に、前記渦流センサ23が検出した渦電流の変化に基づいて形状信号を生成可能に構成されている。ここで、形状信号とは、前記テストピースTにおける前記渦電流の変化を示す信号であり、該形状信号を高速フーリエ変換解析(以下、FFT解析)することにより、解析結果(FFT波形)を得ることができ、また、後述するように、該形状信号に基づいてテストピースTにおける欠陥の有無を判断することができる。
【0020】
また、バンドパスフィルター21は予め設定周波数が設定されるフィルタ回路であり、前記設定周波数で設定した周波数の信号を減衰させるように構成されている。即ち、欠陥信号を示す周波数成分を除いた周波数を設定周波数としてバンドパスフィルター21に設定することにより、バンドパスフィルター21に入力された形状信号のうち、欠陥信号を示す周波数成分のみを通すのである。つまりこのように構成することにより、信号処理装置12が生成した形状信号をバンドパスフィルター21に入力することにより、信号処理装置12においてテストピースTにおける欠陥の有無を判断することができるのである。
なお、本明細書における欠陥とは、高周波焼入において発生する焼割れや、切削加工時に発生する切削割れ等のことをいう。
【0021】
また、渦流探傷装置10は、設定装置22からなる設定部を備える。
該設定装置22は、前記バンドパスフィルター21と電気的に接続され、バンドパスフィルター21の設定周波数を設定可能に構成されている。
【0022】
上記の如く構成された渦流探傷装置10において、図1に示す如く、旋盤等で構成された回転装置80にテストピースTを取り付け、図1中の矢印αに示す如く回転させる。そして、交流コイルに交流電流を通電した状態の前記渦流センサ23をテストピースTに接近させて、前記テストピースTの軸方向(図1中の矢印Aの方向)に走査させる。これにより、前記テストピースTと前記交流コイルとの間に生じる電磁誘導効果のために前記テストピースTに渦電流が発生し、前記テストピースTに発生した渦電流を渦流センサ23が検出するのである。
【0023】
そして、渦流センサ23で検出した前記渦電流の変化に基づいて、前記信号処理装置12で形状信号を生成する。その後、予め設定装置22によって設定周波数が設定されたバンドパスフィルター21に前記形状信号を入力することにより、信号処理装置12において前記テストピースTにおける欠陥の有無を判断するのである。
【0024】
また、渦流探傷装置10は、解析装置13からなる周波数解析部をさらに備える。
該解析装置13は、前記信号処理装置12と電気的に接続され、信号処理装置12で生成した前記形状信号をFFT解析可能に構成されている。具体的には、渦流探傷装置10で検出するべき欠陥信号はY成分のみであることから、後述するように健常テストピースTaを用いて位相調整を行い、健常テストピースTaと欠陥テストピースTbとのY成分のみを解析装置13で周波数解析して、欠陥信号の周波数成分を特定する構成としている。
なお、図1に示す如く、本明細書における健常テストピースTaとは欠陥がない通常のテストピースであり、欠陥テストピースTbとは、例えば通常のテストピースに対して、検出する必要がある最小サイズの欠陥を放電加工などにより施した、欠陥を有するテストピースのことである。
【0025】
[渦流探傷方法]
次に、上記の如く構成した渦流探傷装置10で行う渦流探傷方法について、図1から図3を用いて説明をする。
図2に示す如く、本発明の一実施形態に係る渦流探傷方法は、回転させた健常テストピースTa及び欠陥テストピースTbのそれぞれについて電磁誘導による渦電流を発生させるとともに、前記健常テストピースTa及び欠陥テストピースTbのそれぞれに発生した渦電流を検出し、該渦電流の変化に基づいて、前記健常テストピースTaにおける前記渦電流の変化を示す信号である健常形状信号、及び、前記欠陥テストピースTbにおける前記渦電流の変化を示す信号である欠陥形状信号を生成する、形状信号生成工程(ステップS1・S3)と、前記形状信号生成工程で生成した、前記健常形状信号及び欠陥形状信号をFFT解析して比較することにより、テストピースTの形状や材質に関わるノイズ信号が発生している周波数を算出する、周波数解析工程(ステップS2・S4〜S6)と、前記周波数解析工程で算出した周波数をバンドパスフィルター21の設定周波数として設定する、設定工程(ステップS7)と、回転させたテストピースTに電磁誘導による渦電流を発生させながら検出した前記テストピースTの渦電流の変化に基づいて形状信号を生成し、前記設定工程で前記設定周波数を設定したバンドパスフィルター21に前記形状信号を入力することにより、前記テストピースTにおける欠陥の有無を判断する、渦流探傷工程(ステップS8)と、を備える。
【0026】
前記各工程について、詳細に説明する。
まず、形状信号生成工程(ステップS1)では、前記渦流計測部において、回転装置80上で回転させた健常テストピースTaについて、前記渦流センサ23を交流コイルに交流電流を通電した状態で接近させて電磁誘導による渦電流を発生させるとともに、前記健常テストピースTaに発生した渦電流を前記渦流センサ23で検出する。そして、渦流センサ23で検出した前記渦電流の変化に基づいて、前記信号処理装置12で健常形状信号を生成する。ここで、健常形状信号とは、前記健常テストピースTaにおける前記渦電流の変化を示す信号である。
【0027】
次に、周波数解析工程(ステップS2)では、前記解析装置13で、信号処理装置12で生成した前記健常形状信号をFFT解析し、図3(a)に示す如くFFT解析結果(FFT波形)を得る。
【0028】
次に、形状信号生成工程(ステップS3)では、前記渦流計測部において、回転装置80上で回転させた欠陥テストピースTbについても同様に、前記渦流センサ23を交流コイルに交流電流を通電した状態で接近させて電磁誘導による渦電流を発生させるとともに、前記欠陥テストピースTbに発生した渦電流を前記渦流センサ23で検出する。そして、渦流センサ23で検知した前記渦電流の変化に基づいて、前記信号処理装置12で欠陥形状信号を生成する。ここで、欠陥形状信号とは、前記欠陥テストピースTbにおける前記渦電流の変化を示す信号である。
【0029】
次に、周波数解析工程(ステップS4)では、前記解析装置13で、信号処理装置12で生成した前記欠陥形状信号をFFT解析し、図3(b)に示す如くFFT解析結果(FFT波形)を得る。
なお、前記ステップS1・S2とステップS3・S4はその順序を入替ることも可能である。即ち、先に欠陥テストピースTbについて欠陥形状信号を生成し、FFT解析をした後、健常テストピースTaについて健常形状信号を生成し、FFT解析を行う構成にすることもできる。
【0030】
次に、周波数解析工程(ステップS5)では、前記解析装置13で、前記健常形状信号のFFT波形と、欠陥形状信号のFFT波形とを比較し、欠陥信号を示す周波数成分を特定する。
【0031】
欠陥信号を示す周波数成分の特定方法について、図3を用いて具体的に説明する。図3(a)は健常テストピースTaから生成した健常形状信号のFFT波形を示した図、図3(b)は同じく欠陥テストピースTbから生成した欠陥形状信号のFFT波形を示した図である。
【0032】
図3(a)に示す健常形状信号のFFT波形と、図3(b)に示す欠陥形状信号のFFT波形とを重ね合わせて比較すると、電圧のピークが周波数によって異なっている。詳しくは、図3(a)では略中央値付近の周波数において電圧がピークとなっているのに対し、図3(b)では中央値よりも小さい周波数において電圧がピークとなっているのである。これにより、図3(b)において電圧がピークとなる周波数成分が、欠陥信号を示す周波数成分であることが特定できる。換言すれば、健常テストピースTaと欠陥テストピースTbとから得られたFFT波形において差異のある周波数成分が、欠陥信号を示しているものと特定できるのである。
【0033】
次に、周波数解析工程(ステップS6)では、前記解析装置13で、テストピースTの形状や材質に関わるノイズ信号の成分が発生している周波数を算出する。具体的には図3に示す如く、前記周波数解析工程(ステップS5)欠陥信号を示す周波数成分が特定されているため、欠陥信号を示す周波数成分以外の周波数が、ノイズが発生している周波数成分として算出される。即ち、図3(b)において電圧がピークとなる、欠陥信号を示す周波数成分以外の周波数が、ノイズが発生している周波数成分(図3(a)参照)として算出されるのである。
【0034】
次に、設定工程(ステップS7)では、設定装置22で、解析装置13で算出したノイズ成分の発生している周波数を前記バンドパスフィルター21の設定周波数として設定するのである。
【0035】
そして、渦流探傷工程(ステップS8)では、旋盤等で構成された回転装置80に探傷対象であるテストピースTを取り付け、前記渦流センサ23を交流コイルに交流電流に通電した状態で接近させることにより、前記テストピースTに電磁誘導効果による渦電流を発生させ、前記テストピースTに発生した渦電流を渦流センサ23で検出するのである。
そして、渦流センサ23で検出した前記渦電流の変化に基づいて、前記信号処理装置12で形状信号を生成する。その後、前記設定工程(ステップS7)で設定装置22が設定周波数を設定したバンドパスフィルター21に前記形状信号を入力する。そして、バンドパスフィルター21が、前記設定周波数で設定したノイズ成分の周波数の信号を減衰させるとともに、欠陥信号を示す周波数成分のみを通すことにより、信号処理装置12において前記テストピースTにおける欠陥の有無を判断するのである。
【0036】
即ち、本発明の一実施形態に係る渦流探傷装置10は、渦流計測部で、回転させた健常テストピースTa及び欠陥テストピースTbのそれぞれについて、前記渦流センサ23を接近させて電磁誘導による渦電流を発生させるとともに、前記健常テストピースTa及び欠陥テストピースTbのそれぞれに発生した渦電流を前記渦流センサ23で検出する。そして、該渦流センサ23で検知した前記渦電流の変化に基づいて、前記信号処理装置12で健常形状信号及び欠陥形状信号を生成し、解析装置13で、信号処理装置12で生成した前記健常形状信号及び欠陥形状信号をFFT解析して比較することにより、ノイズが発生している周波数を算出し、設定装置22で、解析装置13で算出した周波数を前記バンドパスフィルター21の設定周波数として設定するように構成しているのである。
【0037】
前記のように構成することにより、探傷対象であるテストピースTが複雑な形状であっても、最適なSN比(欠陥信号とノイズの比)を得ることのできるバンドパスフィルター21の設定周波数を、作業者の経験に依存せずに定量的に把握することができる。
【0038】
具体的には、健常テストピースTa及び欠陥テストピースTbの双方について形状信号を取得し、それぞれのFFT解析結果(FFT波形)を比較することにより、テストピースTの形状や材質により発生している信号であるノイズと、欠陥信号とを分離することができるのである。これにより、テストピースTの形状や材質に依存することなく欠陥信号の周波数成分を定量的且つ高精度に把握することが可能となるため、最適なSN比を得ることのできるバンドパスフィルター21の設定周波数を求めることができるのである。
【0039】
また、上記の如く構成することにより、作業者の経験に拠らずにバンドパスフィルター21の設定周波数を求めることが可能となるため、バンドパスフィルター21の設定周波数が作業者によって異なることを防ぐことができる。即ち、渦流探傷装置10における探傷精度を均質化することができ、探傷精度が向上することによって、過検出、欠陥の見逃しのような検出ミスを防止することができるのである。
【0040】
さらに、上記の如く構成することにより、作業者が繰り返して作業することによって求めていたバンドパスフィルター21の設定周波数を、数工程の処理で定量的に求めることができるため、渦流探傷における作業時間を大幅に短縮することが可能となるのである。
【符号の説明】
【0041】
10 渦流探傷装置
12 信号処理装置
13 解析装置
21 バンドパスフィルター
22 設定装置
23 渦流センサ
80 回転装置
Ta 健常テストピース
Tb 欠陥テストピース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転させたテストピースに、交流コイルを備える渦流センサを接近させて電磁誘導による渦電流を発生させるとともに、前記テストピースに発生した渦電流を前記渦流センサで検出し、該渦流センサで検出した前記渦電流の変化に基づいて、信号処理装置で前記渦電流の変化を示す信号である形状信号を生成し、信号を減衰させる周波数となる設定周波数が予め設定されたバンドパスフィルターに前記形状信号を入力することにより、前記テストピースにおける欠陥の有無を判断する、渦流計測部と、
前記バンドパスフィルターの設定周波数を設定する設定部と、を備える、渦流探傷装置であって、
前記渦流計測部で生成した前記形状信号をFFT解析する、周波数解析部をさらに備え、
前記渦流計測部で、欠陥が無く回転させた健常テストピース、及び、欠陥を有し回転させた欠陥テストピースのそれぞれについて、前記渦流センサを接近させて電磁誘導による渦電流を発生させるとともに、前記健常テストピース及び欠陥テストピースのそれぞれに発生した渦電流を前記渦流センサで検出し、該渦流センサで検知した前記渦電流の変化に基づいて、前記信号処理装置で前記健常テストピースにおける前記渦電流の変化を示す信号である健常形状信号、及び、前記欠陥テストピースにおける前記渦電流の変化を示す信号である欠陥形状信号を生成し、
前記周波数解析部で、前記渦流計測部で生成した前記健常形状信号及び欠陥形状信号をFFT解析して比較することにより、ノイズが発生している周波数を算出し、
前記設定部で、前記周波数解析部で算出した周波数を、前記バンドパスフィルターにおいて前記設定周波数として設定する、
ことを特徴とする、渦流探傷装置。
【請求項2】
欠陥が無く回転させた健常テストピース、及び、欠陥を有し回転させた欠陥テストピースのそれぞれについて電磁誘導による渦電流を発生させるとともに、前記健常テストピース及び欠陥テストピースのそれぞれに発生した渦電流を検出し、該渦電流の変化に基づいて、前記健常テストピースにおける前記渦電流の変化を示す信号である健常形状信号、及び、前記欠陥テストピースにおける前記渦電流の変化を示す信号である欠陥形状信号を生成する、形状信号生成工程と、
前記形状信号生成工程で生成した、前記健常形状信号及び欠陥形状信号をFFT解析して比較することにより、ノイズが発生している周波数を算出する、周波数解析工程と、
前記周波数解析工程で算出した周波数を、バンドパスフィルターにおいて信号を減衰させる周波数となる設定周波数として設定する、設定工程と、
回転させたテストピースに発生した電磁誘導による渦電流を検出し、検出した前記テストピースの渦電流の変化に基づいて、前記渦電流の変化を示す信号である形状信号を生成し、前記設定工程で前記設定周波数を設定したバンドパスフィルターに前記形状信号を入力することにより、前記テストピースにおける欠陥の有無を判断する、渦流探傷工程と、を備える、
ことを特徴とする、渦流探傷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−276431(P2010−276431A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128335(P2009−128335)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】