説明

渦流計測用センサ、及び、渦流計測用センサによる検査方法

【課題】外径が大きく変化するような高周波焼入れ部品を検査する場合であっても、プローブ型コイルにおける強い磁界により高い検出精度で焼入れ深さ/硬度測定試験を行うことができ、さらにエッジ効果を低減させることが可能となる、渦流計測用センサ、及び、渦流計測用センサによる検査方法を提供する。
【解決手段】本実施形態に係るプローブ型の渦流計測用センサ100は、励磁部20と検出部30とを有し、励磁部20は、柱状の磁性体からなるメインコア21と、メインコア21の周囲に周方向に巻きつけられたソレノイドコイルであるメインコイル22と、を備える主励磁部、及び、主励磁部の周囲に、メインコア21の軸心方向と同一の軸心方向となるように配設された柱状の磁性体からなるサブコア25を備え、それぞれが独立して主励磁部に対する軸心方向位置を可変に構成された複数の副励磁部、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦流計測用センサ、及び、渦流計測用センサによる検査方法に関し、より詳細には、渦流式検査における検査精度を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車やオートバイのエンジン部品や足回り部品等の機械部品には、金属(導電体)を高周波誘導加熱して焼入れを行う、高周波焼入れを施した鋼材(以下、鋼材とする)が使用されている。前記鋼材の高周波焼入れにおいては、表面焼入れの硬化層深さ(以下、焼入れ深さとする)及びその硬度について、有効硬化層深さ及び全硬化層深さが規格されている。このため、鋼材の品質を保証するために、焼入れ深さ及び硬度を測定して評価する必要がある。
【0003】
従来、前記鋼材の焼入れ深さ及び硬度は、サンプルとして抜き取られた鋼材を部分的に切断し、その断面強度をビッカース硬度計等の各種硬度計にて測定し、その結果から焼入れ深さ及び硬度を評価していた。
しかし、この破壊検査による手法ではサンプルとして使用した鋼材が廃棄されるため、材料コストの上昇に繋がっていた。また、検査に要する時間が長くなる上に、インラインでの全数検査が不可能であるため、単発的に発生する不良を発見できずに次工程に搬出してしまう可能性があった。
【0004】
そこで、非破壊検査である渦流式検査を用いて、鋼材の焼入れ深さ及び硬度を測定する技術が知られている(例えば、特許文献1、及び、特許文献2参照)。
渦流式検査は、前記鋼材の近くに交流電流を流した励磁コイルを接近させて交流磁場を発生させ、該交流磁場によって鋼材に渦電流を生じさせ、該渦電流により誘起された誘導磁場を検出コイルにより検出するものである。つまり、該渦流式検査により、鋼材を廃棄することなく、短時間で、かつ全数検査によって鋼材の焼入れ深さ及び硬度を定量的に測定することが可能となるのである。
前記渦流式検査は、上記の鋼材の焼入れ深さ及び硬度を測定するための焼入れ深さ/硬度測定試験のほか、検査対象物の表面に生じた割れ等の傷を検出するための探傷試験や、検査対象物に含まれる異物を検出するための異材判別試験等にも用いられている。
【0005】
前記焼入れ深さ/硬度測定試験においては、鋼材の導電率は、母材と硬化層に生じるマルテンサイトとの間で差が生じる。従って、渦電流センサを用いて鋼材を測定すれば、焼入れ深さの変化に伴って検出コイルが検出する電圧(振幅)が変化し、また、検出コイルが検出する電圧は硬化層深さの増加とともに単調に減少するので、これらの現象を利用して鋼材の焼入れ深さを算定することができるのである。
【0006】
例えば、前記特許文献1に記載の技術によれば、貫通コイルを用いて軸物部品の軸部の焼入れ深さを検査する構成としている。貫通コイルはプローブ型コイルに比較して磁界が強く、鋼材との距離を精密に制御する必要もないため、焼入れ深さ/硬度測定試験に適しているのである。
しかし、貫通コイルの測定部分である内周の径は一定であるため、測定部位の貫通コイルに対する充填率(貫通コイルの内周横断面積に対する鋼材の測定部位における横断面積の割合)は、鋼材の測定部位における外径によって変化する。充填率が低くなると渦流式検査の検査精度は指数関数的に低下するため、前記従来技術によれば、鋼材の外径が測定部位ごとに変化することにより、検査精度に差が発生するという問題があった。
また、検査対象物である鋼材は貫通コイルに挿通する必要があるため、外径がほぼ一定である軸物部品に限られていた。つまり、例えばクランクシャフトのように外径が大きく変化するような部品を検査対象物とすることは難しかったのである。
【0007】
また、前記特許文献2に記載の技術によれば、プローブ型コイルを用いて鋼材の焼入れ深さを測定する構成としている。
前記焼入れ深さ/硬度測定試験については、他の探傷試験や異材判別試験と比較して、ノイズ成分に対する検出する信号成分の比率が小さいため、より高い検出精度が求められる。しかし、プローブ型コイルは磁界が弱く、また鋼材との距離を精密に制御する必要があるため、探傷試験や異材判別試験には適用することができるものの、焼入れ深さ/硬度測定試験に採用することは困難であった。
【0008】
また、従来技術に係るプローブ型コイルにおいては、ワークWにおける磁界を広げたり、片側に偏らせたりすることができず、磁界の広がりや方向などを任意にコントロールすることが困難であった。
さらに、プローブ型コイルによる探傷試験においても、鋼材端部においてエッジ信号に欠陥信号が埋もれてしまう、所謂エッジ効果は適用可能部品や検査可能範囲などにおける大きな制約となっており、プローブ型コイルによる渦流計測においてはエッジ効果の低減が課題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−31224号公報
【特許文献2】特開2009−47664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は上記現状に鑑み、外径が大きく変化するような高周波焼入れ部品を検査する場合であっても、プローブ型コイルにおける強い磁界により高い検出精度で焼入れ深さ/硬度測定試験を行うことができ、また、磁界の広がりや方向などを任意にコントロールすることでエッジ効果を低減させることが可能となる、渦流計測用センサ、及び、渦流計測用センサによる検査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
即ち、請求項1においては、計測対象部品に対して所定の交流励磁信号を印加するための励磁部と、前記交流励磁信号が印加された計測対象部品から渦電流による検出信号を検出するための検出部と、を有する、プローブ型の渦流計測用センサであって、前記励磁部は、柱状の磁性体からなるメインコアと、該メインコアの周囲に周方向に巻きつけられたソレノイドコイルであるメインコイルと、を備える主励磁部、及び、該主励磁部の周囲に、前記メインコアの軸心方向と同一の軸心方向となるように配設された柱状の磁性体からなるサブコアを備え、それぞれが独立して前記主励磁部に対する軸心方向位置を可変に構成された複数の副励磁部、を具備するものである。
【0013】
請求項2においては、前記副励磁部は、前記サブコアの周囲に周方向に巻きつけられたソレノイドコイルであるサブコイルを備え、前記主励磁部のメインコイルで発生する磁束の方向と、前記副励磁部のサブコイルで発生する磁束の方向と、が逆になるように構成されるものである。
【0014】
請求項3においては、前記主励磁部は、前記メインコイル及び前記メインコアのそれぞれが独立して軸心方向位置を可変に構成されるものである。
【0015】
請求項4においては、前記検出部は、前記主励磁部の軸心部を中心として放射状に配設された複数の検出コイルを備え、該検出コイルはそれぞれが独立して前記検出信号の検出に関する有効・無効を切替可能に構成されるものである。
【0016】
請求項5においては、前記検出部は、前記励磁部の先端面に全体的に配設される、複数のパンケーキコイル又は複数のプレーナコイルを備えるものである。
【0017】
請求項6においては、前記検出部は、前記励磁部の先端面のうち前記主励磁部及び前記副励磁部に対向する位置に、前記メインコアの軸心方向と同一の軸心方向となるように配設される、複数の垂直ソレノイドコイルと、前記励磁部の先端面のうち前記主励磁部と前記副励磁部との間の位置に、前記メインコアの軸心に対して垂直に軸心方向を向けて放射状に配設される、複数の水平ソレノイドコイルと、を備えるものである。
【0018】
請求項7においては、前記検出部は、前記メインコアの半径方向における前記副励磁部よりも外側に、前記副励磁部に隣接して配設された複数の検出コイルを備えるものである。
【0019】
請求項8においては、請求項1から請求項7の何れか一項に記載の渦流計測用センサを用いて渦流計測を行うことにより、計測対象部品を検査するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0021】
本発明により、外径が大きく変化するような高周波焼入れ部品を検査する場合であっても、プローブ型コイルにおける強い磁界により高い検出精度で焼入れ深さ/硬度測定試験を行うことができ、また、磁界の広がりや方向などを任意にコントロールすることでエッジ効果を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】焼入部材の深さ方向の層状態、硬さ及び透磁率の関係を示す図。
【図2】本実施形態に係る渦流計測を行うための装置構成を示す模式図。
【図3】渦流計測における交流励磁信号と検出信号との関係を示す図。
【図4】第一実施形態に係る渦流計測用センサの構成を示す概略図。
【図5】(a)は図4におけるA−A線断面図、(b)は同じくB−B線断面図。
【図6】第一実施形態に係る渦流計測用センサにおける第一実施例を示す概略図。
【図7】同じく第二実施例を示す概略図。
【図8】同じく第三実施例を示す概略図。
【図9】同じく第四実施例を示す概略図。
【図10】同じく第五実施例を示す概略図。
【図11】第二実施形態に係る渦流計測用センサの構成を示す概略図。
【図12】(a)は図11におけるC−C線断面図、(b)は同じくD−D線断面図。
【図13】第二実施形態に係る渦流計測用センサにおける第一実施例を示す概略図。
【図14】同じく第二実施例を示す概略図。
【図15】(a)は同じく第三実施例を示す概略図、(b)は(a)におけるE−E線断面図。
【図16】第三実施形態に係る渦流計測用センサにおける第一実施例を示す概略図。
【図17】同じく第二実施例を示す概略図。
【図18】同じく第三実施例を示す概略図。
【図19】(a)は同じく第四実施例を示す概略図、(b)は(a)におけるF−F線断面図。
【図20】(a)は第四実施形態に係る渦流計測用センサの構成を示す概略図、(b)は(a)におけるG−G線断面図。
【図21】第五実施形態に係る渦流計測用センサの構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではなく、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
【0024】
本発明は渦流計測用センサが有する、励磁部である励磁コイル、及び、検出部である検出コイルを、それぞれ複数のコイルによって構成するとともに、それらのコイルの配置や連結方法等を工夫することにより、渦流計測の適用範囲の拡大を図ろうとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の実施の形態では、渦流計測用センサによる渦流計測が高周波焼入等による焼入部品の焼入品質(焼入深さ・焼入硬さ)の検査に用いられる場合を主な例として説明する。つまり、焼入品質については、渦流計測用センサが用いられて渦流計測が行われることにより計測対象部品である焼入部品が検査される。
【0025】
図1に、焼入が施された鋼材(S45C等)である焼入部材の深さ(表面からの距離)方向の層状態、硬さ及び透磁率の関係を示す。図1に示すように、焼入部材においては、その概略的な組織構成として、表面側から、焼入が施された部分である硬化層1と、母材の部分である母層2とが、境界層3を介して形成される。硬さ変化曲線4を参照すると、硬化層1と母層2とは異なる硬さとなり、硬化層1の硬さが母層2のそれよりも大きくなる。境界層3においては、硬さは硬化層1から母層2にかけて漸減する。硬さの具体例としては、ビッカース硬さ(Hv)で、硬化層1ではHv=600〜700、母層2ではHv=300程度の硬さを示す。
【0026】
一方、透磁率変化曲線5を参照すると、焼入部材の表面からの距離に対する透磁率の変化は、焼入部材の表面からの距離に対する硬さの変化に対して略逆比例の関係となる。つまり、透磁率については、硬化層1の透磁率が母層2のそれよりも小さくなるとともに、境界層3においては硬化層1から母層2にかけて漸増する。本実施形態に係る渦流計測においては、このような焼入部材における、表面からの距離に対する硬さと透磁率との関係が利用される。
【0027】
本実施形態に係る渦流計測を行うための装置構成の概略(計測原理)について、図2を用いて説明する。図2に示すように、渦流計測においては、計測対象部品であるワーク(磁性体)6の計測部位6aに対して、励磁部である励磁コイル7及び検出部である検出コイル8を有する渦流計測用センサ9が所定の位置にセットされる。このような構成において、励磁コイル7に電流が供給されると、励磁コイル7の周囲に磁界が発生する。すると、電磁誘導によって磁性体であるワーク6の計測部位6aの表面近傍に渦電流が発生する(図2中の矢印C1参照)。計測部位6aの表面における渦電流の発生にともない、検出コイル8を磁束が貫通し、検出コイル8に誘起電圧が発生する。そして、検出コイル8によって誘起電圧が計測されるのである。
【0028】
励磁コイル7は、その両端(両端子)が、交流電源10に接続される。交流電源10は、励磁コイル7に対して所定の交流励磁信号(励磁用交流電圧信号)V1を印加する。検出コイル8は、その両端(両端子)が、計測装置11に接続される。計測装置11は、励磁コイル7に交流電源10からの交流励磁信号V1が印加されたときの検出コイル8から得られる検出信号(前記誘起電圧についての電圧信号)V2の大きさと、検出信号V2の交流励磁信号V1に対する位相差(位相遅れ)Φ(図3参照)とを検出する。ここで、計測装置11には、位相差Φを検出するため、増幅された位相検波として、交流励磁信号V1(波形)が与えられる。
【0029】
検出コイル8によって検出される検出信号V2は、計測部位6a(ワーク6)の透磁率を反映する。つまり、計測部位6aの透磁率が高くなると、前述のような渦電流の発生にともなう磁束が増して検出信号V2が大きくなる。逆に、計測部位6aの透磁率が低くなると、渦電流の発生にともなう磁束が減って検出信号V2が小さくなる。この渦電流に基づく検出信号V2を定量化(数値化)するため、図3に示すように、検出信号V2の大きさの値である振幅値Yと、検出信号V2の交流励磁信号V1に対する位相差Φに起因する値である値X(=YcosΦ)とが着目され、次のような知見が得られている。
【0030】
まず、検出信号V2の振幅値Yは、焼入表面硬さ(焼入された部分の硬さ)との間に相関を有するということがある。すなわち、図1における硬さ変化曲線4と透磁率変化曲線5との比較からわかるように、焼入表面硬さが低いときには透磁率は高いという関係がある。透磁率が高いと、交流励磁信号V1が励磁コイル7に印加されたときに生じる磁束は増し、計測部位6aの表面に誘導される渦電流も増大する。これにともない、検出コイル8によって検出される検出信号V2の振幅値Yも増大する。したがって、逆に、検出コイル8によって検出される検出信号V2の振幅値Yから、渦電流が発生している計測部位6aを貫く磁束、つまり透磁率が導かれる。これにより、図1に示す硬さ変化曲線4と透磁率変化曲線5との関係から焼入表面硬さがわかる。
【0031】
次に、検出信号V2の交流励磁信号V1に対する位相差Φに起因する値Xは、焼入深さ(焼入硬化層の深さ)との間に相関を有するということがある。すなわち、焼入深さが深くなること、つまり焼入部材において焼入された硬化層1が増大することは、透磁率の低い範囲が深さ方向に増すこととなり、交流励磁信号V1に対して検出信号V2の位相遅れが増すこととなる。これにより、位相差Φに起因する値の大小から、焼入深さの深浅がわかる。
【0032】
以上のような計測原理によって焼入部品の焼入品質の検査を行うための渦流計測においては、前述したように励磁コイル及び検出コイルを有する渦流計測用センサが用いられる。以下、渦流計測用センサの構成を、本発明の実施形態として説明する。
【0033】
[第一実施形態]
まず、本発明の第一実施形態に係る渦流計測用センサ100について、図4から図10を用いて説明する。なお、本明細書では、図4における上側を上方、下側を下方とし、同じく右側を右側方、左側を左側方とし、紙面手前側を前方、紙面奥行側を後方として説明する。また、説明の便宜上、図4及び図6から図10については、左右両端のサブコア25・25のみを図示し、他のサブコア25は省略する。
【0034】
図4及び図5に示す如く、本実施形態に係るプローブ型の渦流計測用センサ100は、励磁部20と、検出部30と、を有する。励磁部20は前記の如く、計測対象部品であるワークWに対して所定の交流励磁信号(前記交流励磁信号V1参照)を印加する。検出部30は、前記交流励磁信号が印加されたワークWから渦電流による検出信号(前記検出信号V2参照)を検出するのである。
【0035】
そして、励磁部20は、主励磁部及び副励磁部を具備する。主励磁部は、フェライトやパーマロイなどの透磁率の高い磁性体からなる円柱状のメインコア21と、メインコア21の周囲に周方向に巻きつけられたソレノイドコイルであるメインコイル22と、を備える。また、メインコイル22の両端(両端子)は、図示しない交流電源に接続されている。つまり、メインコイル22はワークWに対して所定の交流励磁信号を印加するための励磁コイルであり、メインコア21はメインコイル22で発生する磁界を強めるのである。
【0036】
一方、副励磁部は、主励磁部であるメインコア21及びメインコイル22の周囲に、メインコア21の軸心方向と同一の軸心方向となるように配設された円柱状のサブコア25・25・・・を備える。サブコア25・25・・・は、フェライトやパーマロイなどの透磁率の高い磁性体である。本実施形態においては、図5(a)に示す如く、サブコア25・25・・・が主励磁部の周囲に10個配設される構成としているが、その個数は限定されるものではない。
【0037】
前記メインコア21、メインコイル22、及び、サブコア25・25・・・は、それぞれが励磁部20の内部で渦流計測用センサ100の先端方向(ワークWの方向)に延出する図示しないロッドの先端に配設されている。そして、それぞれの前記ロッドは渦流計測用センサ100の内部において軸心方向に摺動可能に構成されている。即ち、メインコア21、メインコイル22、及び、サブコア25・25・・・は、励磁部20においてそれぞれが独立して相互の軸心方向位置を可変に構成されているのである(図6から図10参照)。
【0038】
検出部30は、図5(b)に示す如く、励磁部20の先端面に全体的に配設されたパンケーキコイルである複数の検出コイル31・31・・・を備えている。また、それぞれの検出コイル31・31・・・は、その両端(両端子)が、図示しない計測装置に接続されている。つまり、検出コイル31・31・・・は交流励磁信号が印加されたワークWから渦電流による検出信号を検出するのである。なお、本実施形態においては検出コイル31・31・・・としてパンケーキコイルを用いるが、プレーナコイルを用いた構成にすることも可能である。
【0039】
上記の如く構成された渦流計測用センサ100を用いて渦流計測を行う場合は、交流電源によりメインコイル22に電圧を印加する。メインコイル22に対して図4及び図5(a)に示す矢印αの如く電流が流れた瞬間には、右ネジの法則に従ってメインコイル22の内部において下向き(ワークW側へ向かう方向)の磁界が発生する(図6中の矢印a11参照)。ここで、図5(a)において、メインコア21のうち符号D1で示す部分は、メインコイル22による垂直方向の磁界の向きを示す記号部分である。符号D1は、垂直方向の磁界が図5(a)における紙面に対して奥行側に向かうことを示す記号である。
【0040】
そして、前記の如く発生した磁界により電磁誘導を起こし、電磁誘導によって磁性体であるワークWに渦電流を発生させるのである。さらに、ワークWの表面における渦電流の発生にともない、検出コイル31・31・・・に磁束を貫通させ、検出コイル31・31・・・に誘起電圧を発生させる。そして、検出コイル31・31・・・によって誘起電圧を計測するのである。
【0041】
第一実施形態に係る渦流計測用センサ100を用いて渦流計測を行う場合のうち、通常時の渦流計測で用いる第一実施例について説明する。
本実施例においては図6に示す如く、メインコア21及びメインコイル22を渦流計測用センサ100の先端側に移動させる。そして、サブコア25・25・・・を渦流計測用センサ100の先端の反対側(基端側)に移動させて、サブコア25・25・・・がメインコア21及びメインコイル22から離れた状態で前記の如く渦流計測を行うのである。
【0042】
本実施例において、メインコイル22に対して図6に示す矢印αの如く電流が流れた瞬間には、右ネジの法則に従ってメインコイル22の内部において下向きの磁界(図6中の矢印a11)が発生し、さらに、メインコイル22の外部において上向きの磁界が発生する。詳細には、メインコイル22の内部と外部とを交互に循環する回転磁界(図6中の矢印b11)が発生するのである。
【0043】
このようにメインコイル22において発生する垂直方向の磁界および回転磁界がワークWに作用することによって発生する渦電流を、検出コイル31・31・・・によって検出するのである。このように、本実施例においては上記の如く渦流計測を行うことにより、サブコア25・25・・・の影響を受けない状態で、即ち通常の渦流計測を行うことができるのである。
【0044】
第一実施形態に係る渦流計測用センサ100を用いて渦流計測を行う場合のうち、磁界を全体的に広げた状態で行う渦流計測で用いる第二実施例について説明する。
本実施例においては図7に示す如く、メインコア21、メインコイル22、及び、サブコア25・25・・・を渦流計測用センサ100の先端側に移動させた状態で前記の如く渦流計測を行うのである。
【0045】
本実施例において、メインコイル22に対して図7に示す矢印αの如く電流が流れた瞬間には、右ネジの法則に従ってメインコイル22の内部において下向きの磁界(図7中の矢印a12)が発生し、さらに、メインコイル22の内部と外部とを交互に循環する回転磁界(図7中の矢印b12)が発生する。
【0046】
この際、メインコイル22の外部における上向きの磁界は、透磁率の高いサブコア25・25・・・によって引き付けられ、外側に広げられる。このため、メインコイル22によってワークWに作用する回転磁界の範囲を、図7に示す如く第一実施例よりも広げることができるのである。このようにメインコイル22において発生する回転磁界の範囲を広くして、回転磁界がワークWに作用して発生する渦電流を広くすることができる。そして、広い範囲の渦電流を検出コイル31・31・・・によって検出することが可能となるのである。このように、本実施例においては上記の如く渦流計測を行うことにより、サブコア25・25・・・によって磁界をワークWにおいて全体的に広げた状態で渦流計測を行うことができるのである。
【0047】
第一実施形態に係る渦流計測用センサ100を用いて渦流計測を行う場合のうち、磁界を外側に強めた状態で行う渦流計測で用いる第三実施例について説明する。
本実施例においては図8に示す如く、メインコイル22、及び、サブコア25・25・・・を渦流計測用センサ100の先端側に移動させる。そして、メインコア21をメインコイル22に対して渦流計測用センサ100の基端側に少し移動させた状態で前記の如く渦流計測を行うのである。
【0048】
本実施例において、メインコイル22に対して図8に示す矢印αの如く電流が流れた瞬間には、右ネジの法則に従ってメインコイル22の内部において下向きの磁界(図8中の矢印a13)が発生し、さらに、メインコイル22の内部と外部とを交互に循環する回転磁界(図8中の矢印b13)が発生する。
【0049】
この際、メインコイル22の外部における上向きの磁界は、サブコア25・25・・・によって引き付けられると同時に、上側に移動したメインコア21にも引き付けられる。このため、回転磁界は、図8に示す如く上側から下側に向かうに従って徐々に拡径した形状で発生し、ワークWには拡径した部分の回転磁界が作用するのである。このようにメインコイル22において発生する回転磁界の形状をワークWの部分で拡径させることで、ワークWにおける磁界を外側に強め、回転磁界がワークWに作用して発生する渦電流を外側において強くすることができるのである。そして、外側の渦電流を検出コイル31・31・・・によって重点的に検出することが可能となるのである。このように、本実施例においては上記の如く渦流計測を行うことにより、メインコア21及びサブコア25・25・・・によって磁界をワークWにおいて外側に強めた状態で渦流計測を行うことができるのである。
【0050】
第一実施形態に係る渦流計測用センサ100を用いて渦流計測を行う場合のうち、磁界を内側中心部に強めた状態で行う渦流計測で用いる第四実施例について説明する。
本実施例においては図9に示す如く、メインコア21を渦流計測用センサ100の先端側に移動させる。そして、サブコア25・25・・・を渦流計測用センサ100の基端側に移動させ、メインコイル22をメインコア21とサブコア25・25・・・との中間位置に移動させた状態で前記の如く渦流計測を行うのである。
【0051】
本実施例において、メインコイル22に対して図9に示す矢印αの如く電流が流れた瞬間には、右ネジの法則に従ってメインコイル22の内部において下向きの磁界(図9中の矢印a14)が発生し、さらに、メインコイル22の内部と外部とを交互に循環する回転磁界(図9中の矢印b14)が発生する。
【0052】
この際、メインコイル22の外部における上向きの磁界がサブコア25・25・・・によって引き付けられると同時に、メインコイル22の内部における下向きの磁界がメインコア21に引き付けられる。このため、回転磁界は、図9に示す如く上側から下側に向かうに従って徐々に縮径した形状で発生し、ワークWには縮径した部分の回転磁界が作用するのである。このようにメインコイル22において発生する回転磁界の形状をワークWの部分で縮径させることで、ワークWにおける磁界を内側中心部に強め、回転磁界がワークWに作用して発生する渦電流を内側中心部において強くすることができるのである。そして、内側中心部の渦電流を検出コイル31・31・・・によって重点的に検出することが可能となるのである。このように、本実施例においては上記の如く渦流計測を行うことにより、メインコア21及びサブコア25・25・・・によって磁界をワークWにおいて内側中心部に強めた状態で渦流計測を行うことができるのである。
【0053】
第一実施形態に係る渦流計測用センサ100を用いて渦流計測を行う場合のうち、磁界を一方の片側に強めた状態で行う渦流計測で用いる第五実施例について説明する。
本実施例においては図10に示す如く、メインコア21及びメインコイル22を渦流計測用センサ100の先端側に移動させる。そして、サブコア25・25・・・のうち一方(図10においては左側のサブコア25)を渦流計測用センサ100の先端側に移動させ、他方(図10においては右側のサブコア25)を渦流計測用センサ100の基端側に移動させて、他方のサブコア25・25・・・がメインコア21及びメインコイル22から離れた状態で前記の如く渦流計測を行うのである。
【0054】
本実施例において、メインコイル22に対して図10に示す矢印αの如く電流が流れた瞬間には、右ネジの法則に従ってメインコイル22の内部において下向きの磁界(図10中の矢印a15)が発生し、さらに、メインコイル22の内部と外部とを交互に循環する回転磁界(図10中の矢印b15及び矢印c15)が発生する。
【0055】
この際、メインコイル22の右側外部における上向きの磁界は、右側上方に位置するサブコア25の影響を受けないため、通常の磁界が発生する。一方、メインコイル22の左側外部における上向きの磁界は、サブコア25によって引き付けられる。このため、メインコイル22の左側外部における回転磁界は、図10に示す如く上側から下側に向かうに従って徐々に左側に偏った形状で発生し、ワークWには左側に偏った部分の回転磁界が作用するのである。このようにメインコイル22において発生する回転磁界の形状をワークWの部分で左側に偏らせることで、ワークWにおける磁界を一方の片側に強め、回転磁界がワークWに作用して発生する渦電流を一方の片側において強くすることができるのである。そして、一方の片側の渦電流を検出コイル31・31・・・によって重点的に検出することが可能となるのである。このように、本実施例においては上記の如く渦流計測を行うことにより、サブコア25・25・・・によって磁界をワークWにおいて一方の片側に強めた状態で渦流計測を行うことができるのである。
【0056】
上記の如く本実施形態に係る渦流計測用センサ100における励磁部20は、主励磁部であるメインコア21及びメインコイル22と、主励磁部の周囲に、メインコア21の軸心方向と同一の軸心方向となるように配設された円柱状のサブコア25・25・・・と、を備え、メインコア21、メインコイル22、及び、サブコア25・25・・・は、励磁部20においてそれぞれが独立して相互の軸心方向位置を可変に構成されている。
【0057】
本実施形態においては上記の如く構成することにより、メインコア21、メインコイル22、及び、サブコア25・25・・・の位置関係を相互に変更することで、メインコイル22の内部と外部とを交互に循環する回転磁界の形状を必要に応じて変更することができる。即ち、ワークWにおける磁界を広げたり、片側に偏らせたりすることができるようになるため、磁界の広がりや方向などを任意にコントロールすることが可能となるのである。
【0058】
また、本実施形態に係る渦流計測用センサ100における検出部30は、励磁部20の先端面に全体的に配設されたパンケーキコイルである複数の検出コイル31・31・・・を備えている。
本実施形態においては上記の如く構成することにより、渦流計測用センサ100の先端面における垂直方向磁界と水平方向磁界とを同じ感度で均等に検出し、評価することが可能となる。また、検出部30の幅を小さくすることにより、励磁部20とワークWとの距離を小さくすることができ、渦流計測の精度を向上させることができる。
【0059】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る渦流計測用センサ200について、図11から図15を用いて説明する。なお、以下の実施形態に係る渦流計測用センサの説明において、既出の実施形態と共通する部分については、同符号を付してその説明を省略する。また、説明の便宜上、図11及び図13から図14については、左右両端のサブコア25・25及びサブコイル26・26のみを図示し、他のサブコア25及びサブコイル26は省略する。
【0060】
図11及び図12に示す如く、本実施形態に係るプローブ型の渦流計測用センサ200は、前記第一実施形態と同様に、励磁部220と、検出部230と、を有する。励磁部220は計測対象部品であるワークWに対して所定の交流励磁信号を印加し、検出部230は前記交流励磁信号が印加されたワークWから渦電流による検出信号を検出するのである。
【0061】
そして、励磁部220は、主励磁部及び副励磁部を具備する。主励磁部は、フェライトやパーマロイなどの磁性体からなる円柱状のメインコア21と、メインコア21の周囲に周方向に巻きつけられたソレノイドコイルであるメインコイル22と、を備える。
【0062】
一方、副励磁部は、主励磁部であるメインコア21及びメインコイル22の周囲に、メインコア21の軸心方向と同一の軸心方向となるように配設された円柱状のサブコア25・25・・・と、前記サブコア25・25・・・の周囲に周方向に巻きつけられたソレノイドコイルであるサブコイル26・26・・・と、を備える。サブコア25・25・・・は、フェライトやパーマロイなどの磁性体である。
【0063】
また、メインコイル22及びサブコイル26・26・・・の両端(両端子)は、図示しない交流電源に接続されている。つまり、メインコイル22及びサブコイル26・26・・・はワークWに対して所定の交流励磁信号を印加するための励磁コイルであり、メインコア21及びサブコア25・25・・・はメインコイル22及びサブコイル26・26・・・で発生する磁界を強めるのである。また、交流電源はサブコイル26・26・・・に対してそれぞれ独立して電圧を印加することができる。即ち、ワークWに作用させる磁界の形状に応じて、それぞれのサブコイル26・26・・・の電流のON・OFFを切替える構成としているのである。
【0064】
前記メインコア21、メインコイル22、及び、サブコア25・25・・・は、前記実施形態と同様に、励磁部220においてそれぞれが独立して相互の軸心方向位置を可変に構成されているのである。なお、サブコイル26・26・・・はサブコア25・25・・・に対する相対的な位置が変わらないように構成されている。
【0065】
検出部230は、図12(b)に示す如く、励磁部220の先端面に全体的に配設されたパンケーキコイルである複数の検出コイル31・31・・・を備えている。また、それぞれの検出コイル31・31・・・は、その両端(両端子)が、図示しない計測装置に接続されている。
【0066】
上記の如く構成された渦流計測用センサ200を用いて渦流計測を行う場合は、交流電源によりメインコイル22及びサブコイル26・26・・・に電圧を印加する。この際、主励磁部のメインコイル22で発生する磁束の方向と、副励磁部のサブコイル26・26・・・で発生する磁束の方向と、が逆になるように電圧が印加される。具体的には、図11及び図12(a)に示す如く、メインコイル22に対して平面視で時計周りに矢印αの如く電流が流れる瞬間には、サブコイル26・26・・・に対して平面視で反時計周りに矢印βの如く電流が流れるように構成するのである。
【0067】
メインコイル22に対して図11及び図12(a)に示す矢印αの如く電流が流れた瞬間には、右ネジの法則に従ってメインコイル22の内部において下向き(ワークW側へ向かう方向)の磁界が発生する(図13中の矢印a21参照)。また、サブコイル26・26・・・に対して図11及び図12(a)に示す矢印βの如く電流が流れた瞬間には、右ネジの法則に従ってサブコイル26・26・・・の内部において上向きの磁界が発生する(図13中の矢印x参照)。ここで、図12(a)において、メインコア21のうち符号D1で示す部分は、メインコイル22による垂直方向の磁界の向きを示す記号部分である。符号D1は、垂直方向の磁界が図12(a)における紙面に対して奥行側に向かうことを示す記号である。また、サブコア25・25・・・のうち符号D2で示す部分は、サブコイル26・26・・・による垂直方向の磁界の向きを示す記号部分である。符号D2は、垂直方向の磁界が図12(a)における紙面に対して手前側に向かうことを示す記号である。
【0068】
そして、前記の如く発生した磁界により電磁誘導を起こし、電磁誘導によって磁性体であるワークWに渦電流を発生させるのである。さらに、ワークWの表面における渦電流の発生にともない、検出コイル31・31・・・に磁束を貫通させ、検出コイル31・31・・・に誘起電圧を発生させる。そして、検出コイル31・31・・・によって誘起電圧を計測するのである。
【0069】
第二実施形態に係る渦流計測用センサ200を用いて渦流計測を行う場合のうち、磁界を全体的に広げた状態で行う渦流計測で用いる第一実施例について説明する。
本実施例においては図13に示す如く、メインコア21、メインコイル22、サブコア25・25・・・、及び、サブコイル26・26・・・を渦流計測用センサ200の先端側に移動させた状態で前記の如く渦流計測を行うのである。
【0070】
本実施例において、メインコイル22及びサブコイル26・26・・・に対して図13に示す矢印α及び矢印βの如く電流が流れた瞬間には、右ネジの法則に従ってメインコイル22の内部において下向きの磁界(図13中の矢印a21)が発生し、さらに、メインコイル22の外部において上向きの磁界が発生する。詳細には、メインコイル22の内部と外部とを交互に循環する回転磁界(図13中の矢印b21)が発生するのである。加えて、サブコイル26・26・・・の内部において上向きの磁界(図13中の矢印x)が発生する。
【0071】
この際、メインコイル22の外部における上向きの磁界は、サブコイル26・26・・・によって生じる上向きの磁界と向きが重複するため、ワークWに作用する回転磁界を強くすることができるのである。つまり、前記第一実施形態における磁界に比べて強い磁界をワークWに作用させることができ、回転磁界がワークWに作用して発生する渦電流を大きくすることができる。そして、より大きな渦電流を検出コイル31・31・・・によって検出することが可能となるのである。
【0072】
また、前記第一実施形態の第二実施例と同様に、メインコイル22の外部における上向きの磁界は、サブコイル26・26・・・によって引き付けられ、外側に広げられる。このため、メインコイル22によってワークWに作用する回転磁界の範囲を広げることができるのである。このようにメインコイル22において発生する回転磁界の範囲を広くして、回転磁界がワークWに作用して発生する渦電流を広くすることができる。そして、広い範囲の渦電流を検出コイル31・31・・・によって検出することが可能となるのである。このように、本実施例においては上記の如く渦流計測を行うことにより、サブコア25・25・・・によって磁界をワークWにおいて全体的に広げた状態で渦流計測を行うことができるのである。
【0073】
第二実施形態に係る渦流計測用センサ200を用いて渦流計測を行う場合のうち、磁界を一方の片側に強めた状態で行う渦流計測で用いる第二実施例について説明する。
本実施例においては図14に示す如く、メインコア21及びメインコイル22を渦流計測用センサ200の先端側に移動させる。そして、サブコア25・25・・・及びサブコイル26・26・・・のうち一方の片側(図14においては左側のサブコア25及びサブコイル26)を渦流計測用センサ200の先端側に移動させ、他方(図14においては右側のサブコア25及びサブコイル26)を渦流計測用センサ200の基端側に移動させて、他方のサブコア25・25・・・及びサブコイル26・26・・・がメインコア21及びメインコイル22から離れた状態で渦流計測を行うのである。この際、基端側に移動させたサブコイル26には、電圧を印加しないようにする。
【0074】
本実施例において、メインコイル22及びサブコイル26に対して図14に示す矢印α及び矢印βの如く電流が流れた瞬間には、右ネジの法則に従ってメインコイル22の内部において下向きの磁界(図14中の矢印a22)が発生し、さらに、メインコイル22の外部において上向きの磁界が発生する。詳細には、メインコイル22の内部と外部とを交互に循環する回転磁界(図14中の矢印b22及び矢印c22)が発生するのである。加えて、左側に位置するサブコイル26の内部において上向きの磁界(図14中の矢印x)が発生する。
【0075】
この際、メインコイル22の右側外部における上向きの磁界は、右側上方に位置するサブコア25及びサブコイル26の影響を受けないため、通常の磁界が発生する。一方、メインコイル22の左側外部における上向きの磁界は、サブコイル26によって生じる上向きの磁界と向きが重複するため強められると同時に、サブコイル26によって引き付けられる。このため、メインコイル22の左側外部における回転磁界は、図14に示す如く上側から下側に向かうに従って徐々に左側に偏った形状で発生し、ワークWには左側に偏った部分の回転磁界が強く作用するのである。このようにメインコイル22において発生する強い回転磁界の形状をワークWの部分で左側に偏らせることで、ワークWにおける磁界を一方の片側により強め、回転磁界がワークWに作用して発生する渦電流を一方の片側において強くすることができるのである。そして、一方の片側の渦電流を検出コイル31・31・・・によって重点的に検出することが可能となるのである。このように、本実施例においては上記の如く渦流計測を行うことにより、サブコア25・25・・・及びサブコイル26・26・・・によって磁界をワークWにおいて一方の片側にさらに強めた状態で渦流計測を行うことができるのである。
【0076】
第二実施形態に係る渦流計測用センサ200を用いて渦流計測を行う場合のうち、ワークWにおける磁界を前後方向に狭く、左右方向に広くした状態で行う渦流計測で用いる第三実施例について説明する。
本実施例においては図15に示す如く、メインコア21及びメインコイル22を渦流計測用センサ200の先端側に移動させる。そして、サブコア25・25・・・及びサブコイル26・26・・・のうち、左右両端のサブコア25・25及びサブコイル26・26を渦流計測用センサ200の先端側に移動させ、前後それぞれの側のサブコア25・25・・・及びサブコイル26・26・・・を渦流計測用センサ200の基端側に移動させて、前後のサブコア25・25・・・及びサブコイル26・26・・・がメインコア21及びメインコイル22から離れた状態で渦流計測を行うのである。この際、基端側に移動させたサブコイル26・26・・・には、電圧を印加しないようにする。
【0077】
本実施例において、メインコイル22及びサブコイル26に対して図15に示す矢印α及び矢印βの如く電流が流れた瞬間には、右ネジの法則に従ってメインコイル22の内部において下向きの磁界(図15中の矢印a23)が発生し、さらに、メインコイル22の外部において上向きの磁界が発生する。詳細には、メインコイル22の内部と外部とを交互に循環する回転磁界(図15中の矢印b23)が発生するのである。加えて、左右両側に位置するサブコイル26・26の内部において上向きの磁界(図15中の矢印x)が発生する。
【0078】
この際、メインコイル22の前後それぞれの側における上向きの磁界は、上方に位置するサブコア25及びサブコイル26の影響を受けないため、通常の磁界が発生する。一方、メインコイル22の左右両側外部における上向きの磁界は、サブコイル26・26によって生じる上向きの磁界と向きが重複するため強められると同時に、サブコイル26によって引き付けられる。このため、メインコイル22の左右両側外部における回転磁界は、図15(b)に示す如く前後方向に狭く、左右方向に広い形状で発生し、ワークWには左右方向に長い回転磁界が強く作用するのである。このようにメインコイル22において発生する強い回転磁界の形状をワークWの部分で左右方向に広くすることで、ワークWにおける磁界を左右方向でより強め、回転磁界がワークWに作用して発生する渦電流を左右方向で強くすることができるのである。そして、左右方向の渦電流を検出コイル31・31・・・によって重点的に検出することが可能となるのである。このように、本実施例においては上記の如く渦流計測を行うことにより、サブコア25・25・・・及びサブコイル26・26・・・によって磁界をワークWにおいて前後方向に狭く、左右方向に広くした状態で渦流計測を行うことができるのである。
【0079】
上記の如く本実施形態に係る渦流計測用センサ200における励磁部220は、主励磁部であるメインコア21及びメインコイル22と、主励磁部の周囲に、メインコア21の軸心方向と同一の軸心方向となるように配設された円柱状のサブコア25・25・・・と、サブコア25・25・・・の周囲に周方向に巻きつけられたソレノイドコイルであるサブコイル26・26・・・と、を備えている。
【0080】
本実施形態においては上記の構成において、メインコイル22の外部における上向きの磁界と、サブコイル26・26・・・によって生じる上向きの磁界との向きを重複させ、ワークWに作用する回転磁界を強くしているのである。つまり、前記第一実施形態における磁界に比べて強い磁界をワークWに作用させ、より大きな渦電流を検出コイル31・31・・・によって検出しているのである。
加えて、メインコア21、メインコイル22、サブコア25・25・・・、及び、サブコイル26・26・・・の位置関係を相互に変更する構成としている。これにより、ワークWにおける磁界を広げたり、片側に偏らせたりすることができるようになるため、磁界の広がりや方向などを任意にコントロールすることが可能となるのである。なお、本実施形態においても、前記第一実施形態の如く、磁界をワークWの外側で強めたり、内側中心部で強めたりすることは可能である。
【0081】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る渦流計測用センサ300について、図16から図19を用いて説明する。なお、説明の便宜上、図16及び図18から図19(a)については、左右両端のサブコア25・25及びサブコイル26・26のみを図示し、他のサブコア25及びサブコイル26は省略する。
【0082】
図16に示す如く、本実施形態に係るプローブ型の渦流計測用センサ300は、前記第二実施形態の如く、検出部が主励磁部の軸心部を中心として放射状に配設された複数の検出コイル31・31・・・を備えている。本実施形態における検出コイル31・31・・・は前記実施形態と同様にパンケーキコイルを用いるが、メインコイル22やサブコイル26の内側に捲回されたソレノイドコイル等を用いることも可能である。
【0083】
さらに、検出コイル31・31・・・はそれぞれが独立して検出信号の検出に関する有効・無効を切替可能に構成されている。具体的には、検出コイル31・31・・・のうち、検出信号を有効に検出するように設定した有効検出コイル31aからの検出信号のみを計測装置11で受信し、検出信号の検出を無効とするように設定した無効検出コイル31bからの検出信号は計測装置11で受信しないように制御するのである。
【0084】
第三実施形態に係る渦流計測用センサ300を用いて、鋼材に形成された焼入硬化層の焼入れ深さ及び硬度を測定する場合のうち、通常時の渦流計測で用いる第一実施例について説明する。
本実施例においては図16に示す如く、メインコア21及びメインコイル22を渦流計測用センサ300の先端側に移動させる。そして、サブコア25・25・・・及びサブコイル26・26・・・を渦流計測用センサ300の基端側に移動させて、サブコア25・25・・・及びサブコイル26・26・・・がメインコア21及びメインコイル22から離れた状態で前記の如く渦流計測を行うのである。
【0085】
本実施例において、メインコイル22に対して図16に示す矢印αの如く電流が流れた瞬間には、右ネジの法則に従ってメインコイル22の内部において下向きの磁界(図16中の矢印a31)が発生し、さらに、メインコイル22の外部において上向きの磁界が発生する。詳細には、メインコイル22の内部と外部とを交互に循環する回転磁界(図16中の矢印b31)が発生するのである。
【0086】
このようにメインコイル22において発生する垂直方向の磁界および回転磁界は、図16に示す如くワークWに形成された焼入硬化層WQのうち、メインコイル22に対向する部分に作用し、渦電流を発生させる。本実施例では、渦電流が発生する部分の検出コイルを有効検出コイル31a・31a・・・とし、その他の外周縁部に位置する検出コイルを無効検出コイル31b・31b・・・とするのである。そして、有効検出コイル31a・31a・・・によって、焼入硬化層WQに発生する渦電流を検出して、焼入硬化層WQの焼入れ深さ及び硬度を測定するのである。
【0087】
このように、本実施形態においては上記の如く渦流計測を行うことにより、磁界の広がりや方向に合わせて任意に検出コイルの有効・無効を切替えることで、検出領域を自由に選択することが可能となるのである。
【0088】
第三実施形態に係る渦流計測用センサ300を用いて、鋼材に形成された焼入硬化層の焼入れ深さ及び硬度を測定する場合のうち、磁界を外側に強めた状態で行う渦流計測で用いる第二実施例について説明する。
本実施例においては図17に示す如く、メインコイル22、サブコア25・25・・・、及び、サブコイル26・26・・・を渦流計測用センサ300の先端側に移動させる。そして、メインコア21をメインコイル22に対して渦流計測用センサ300の基端側に少し移動させた状態で前記の如く渦流計測を行うのである。本実施例では、渦流計測対象としてクランクシャフトCにおけるジャーナル部が用いられ、ジャーナル部の中央部Cc及び両端のR部Cr・Crにわたって焼入硬化層CQが形成されているものとする。なお、本実施例ではクランクシャフトCのピン部や、カムシャフト等にも適用することが可能である。
【0089】
本実施例において、メインコイル22に対して図17に示す矢印αの如く電流が流れた瞬間には、右ネジの法則に従ってメインコイル22の内部において下向きの磁界(図17中の矢印a32)が発生し、さらに、メインコイル22の内部と外部とを交互に循環する回転磁界(図17中の矢印b32)が発生する。加えて、サブコイル26・26・・・の内部において上向きの磁界(図17中の矢印x)が発生する。
【0090】
この際、メインコイル22の外部における上向きの磁界は、サブコイル26・26・・・によって引き付けられると同時に、上側に移動したメインコア21にも引き付けられる。このため、回転磁界は、図17に示す如く上側から下側に向かうに従って徐々に拡径した形状で発生し、クランクシャフトCには拡径した部分の回転磁界が作用するのである。このようにメインコイル22において発生する回転磁界の形状をクランクシャフトCの部分で拡径させることで、クランクシャフトCにおける磁界を外側に強め、回転磁界がクランクシャフトCに作用して発生する渦電流を外側において強くすることができるのである。このように、本実施例においては上記のように渦流計測を行うことにより、図17の磁気の浸透イメージに示す如く、メインコア21及びサブコア25・25・・・によって磁界をクランクシャフトCにおいて外側に強めた状態で渦流計測を行うことができるのである。
【0091】
このようにメインコイル22において発生する垂直方向の磁界および回転磁界は、図17に示す如くクランクシャフトCに形成された焼入硬化層CQのうち、サブコイル26・26・・・に対向する部分に強く作用し、渦電流を発生させる。
この際、電磁誘導現象によってクランクシャフトCに発生する渦電流は計測対象の表面付近で大きく広がるという性質を持つ。また、透磁率は図1に示す如く焼入硬化層CQよりも未焼入部の方が大きいため、磁界は未焼入部に引き寄せられやすい。このため、焼入硬化層CQと未焼入部との境界部分が存在するR部Cr・Cr部に渦電流が広がりやすくなるのである。即ち、図17に示す如く、渦電流をジャーナル部の両端のR部Cr・Crの部分に広げることが可能となるのである。
本実施例では、渦電流が発生する部分の検出コイルを有効検出コイル31a・31a・・・とし、その他の内周部に位置する検出コイルを無効検出コイル31b・31b・・・とするのである。そして、有効検出コイル31a・31a・・・によって、焼入硬化層CQのうちR部Cr・Crに発生する渦電流を検出して、R部Cr・Crの焼入れ深さ及び硬度を測定するのである。
【0092】
このように、本実施形態においては上記の如く渦流計測を行うことにより、磁界の広がりや方向に合わせて任意に検出コイルの有効・無効を切替えることで、検出領域を自由に選択することが可能となる。具体的には、クランクシャフトCのジャーナル部やピン部における焼入深さ/硬さを、焼入硬化層CQのうち両端のR部Cr・Crのみ検出することができる。また、焼入れパターンに合わせて、磁界の広がりや方向を制御して渦流計測を行うことにより、計測精度を向上させることが可能となるのである。また、クランクシャフトCやカムシャフトのように外径が大きく変化するような部品であっても、プローブ型の渦流計測用センサ300を用いることにより、渦流計測を精度良く行うことが可能となるのである。
【0093】
第三実施形態に係る渦流計測用センサ300を用いて、鋼材に形成された焼入硬化層の焼入れ深さ及び硬度を測定する場合のうち、磁界を内側中心部に強めた状態で行う渦流計測で用いる第三実施例について説明する。
本実施例においては図18に示す如く、メインコア21を渦流計測用センサ300の先端側に移動させる。そして、サブコア25・25・・・及びサブコイル26・26・・・を渦流計測用センサ300の基端側に移動させ、メインコイル22をメインコア21とサブコア25・25・・・との中間位置に移動させた状態で前記の如く渦流計測を行うのである。本実施例においても前記実施例と同様に、渦流計測対象としてクランクシャフトCにおけるジャーナル部が用いられ、ジャーナル部の中央部Cc及び両端のR部にわたって焼入硬化層CQが形成されているものとする。
【0094】
本実施例において、メインコイル22に対して図18に示す矢印αの如く電流が流れた瞬間には、右ネジの法則に従ってメインコイル22の内部において下向きの磁界(図18中の矢印a33)が発生し、さらに、メインコイル22の内部と外部とを交互に循環する回転磁界(図18中の矢印b33)が発生する。加えて、サブコイル26・26・・・の内部において上向きの磁界(図18中の矢印x)が発生する。
【0095】
この際、メインコイル22の外部における上向きの磁界がサブコア25・25・・・によって引き付けられると同時に、メインコイル22の内部における下向きの磁界がメインコア21に引き付けられる。このため、回転磁界は、図18に示す如く上側から下側に向かうに従って徐々に縮径した形状で発生し、クランクシャフトCには縮径した部分の回転磁界が作用するのである。このようにメインコイル22において発生する回転磁界の形状をクランクシャフトCの部分で縮径させることで、クランクシャフトCにおける磁界を内側中心部に強め、回転磁界がクランクシャフトCに作用して発生する渦電流を内側中心部において強くすることができるのである。このように、本実施例においては上記のように渦流計測を行うことにより、図18の磁気の浸透イメージに示す如く、メインコア21及びサブコア25・25・・・によって磁界をクランクシャフトCにおいて内側中心部に強めた状態で渦流計測を行うことができるのである。
【0096】
このようにメインコイル22において発生する垂直方向の磁界および回転磁界は、図18に示す如くクランクシャフトCに形成された焼入硬化層CQのうち、渦流計測用センサ300の内側中心部に対向する部分に強く作用し、渦電流を発生させる。即ち、図18に示す如く、渦電流をジャーナル部の中央部Ccの部分に作用させるのである。
本実施例では、渦電流が発生する部分の検出コイルを有効検出コイル31aし、その他の部分に位置する検出コイルを無効検出コイル31b・31b・・・とするのである。そして、有効検出コイル31aによって、焼入硬化層CQのうち中央部Ccに発生する渦電流を検出して、中央部Ccの焼入れ深さ及び硬度を測定するのである。
【0097】
このように、本実施形態においては上記の如く渦流計測を行うことにより、磁界の広がりや方向に合わせて任意に検出コイルの有効・無効を切替えることで、検出領域を自由に選択することが可能となる。具体的には、クランクシャフトCのジャーナル部やピン部における焼入深さ/硬さを、焼入硬化層CQのうち中央部Ccのみ検出することができる。また、焼入れパターンに合わせて、磁界の広がりや方向を制御して渦流計測を行うことにより、計測精度を向上させることが可能となるのである。
【0098】
第三実施形態に係る渦流計測用センサ300を用いて渦流計測を行う場合のうち、磁界を一方の片側に強めた状態で行う渦流計測で用いる第四実施例について説明する。
本実施例においては図19(a)に示す如く、メインコア21及びメインコイル22を渦流計測用センサ300の先端側に移動させる。そして、サブコア25・25・・・及びサブコイル26・26・・・のうち一方の片側(図19(a)及び(b)においては左側のサブコア25及びサブコイル26)を渦流計測用センサ300の先端側に移動させ、他のサブコア25・25・・・及びサブコイル26・26・・・を渦流計測用センサ300の基端側に移動させて、他のサブコア25・25・・・及びサブコイル26・26・・・がメインコア21及びメインコイル22から離れた状態で渦流計測を行うのである。この際、基端側に移動させたサブコイル26には、電圧を印加しないようにする。
【0099】
本実施例において、メインコイル22及びサブコイル26に対して図19(a)に示す矢印α及び矢印βの如く電流が流れた瞬間には、右ネジの法則に従ってメインコイル22の内部において下向きの磁界(図19中(a)の矢印a34)が発生し、さらに、メインコイル22の外部において上向きの磁界が発生する。詳細には、メインコイル22の内部と外部とを交互に循環する回転磁界(図19(a)中の矢印b34及び矢印c34)が発生するのである。加えて、左側に位置するサブコイル26の内部において上向きの磁界(図19(a)中の矢印x)が発生する。
【0100】
この際、メインコイル22の右側外部における上向きの磁界は、右側上方に位置するサブコア25及びサブコイル26の影響を受けないため、通常の磁界が発生する。一方、メインコイル22の左側外部における上向きの磁界は、サブコイル26によって生じる上向きの磁界と向きが重複するため強められると同時に、サブコイル26によって引き付けられる。このため、メインコイル22の左側外部における回転磁界は、図19(a)に示す如く上側から下側に向かうに従って徐々に左側に偏った形状で発生し、ワークWには図19(b)に示す如く左側に偏った部分の回転磁界が強く作用するのである。このようにメインコイル22において発生する強い回転磁界の形状をワークWの部分で左側に偏らせることで、ワークWにおける磁界を一方の片側により強め、回転磁界がワークWに作用して発生する渦電流を一方の片側において強くすることができるのである。
【0101】
このようにメインコイル22において発生する垂直方向の磁界および回転磁界は、図19(a)及び(b)に示す如くワークWにおける渦流計測用センサ300の左側に対向する部分に作用し、渦電流を発生させる。本実施例では、渦電流が発生する部分の検出コイルを有効検出コイル31a・31aとし、その他の部分に位置する検出コイルを無効検出コイル31b・31b・・・とするのである。そして、有効検出コイル31aによってワークWに発生する渦電流を検出するのである。
【0102】
このように、本実施形態においては上記の如く渦流計測を行うことにより、磁界の広がりや方向に合わせて任意に検出コイルの有効・無効を切替えることで、検出領域を自由に選択することが可能となる。具体的には図19(a)に示す如く、ワークWの端部を計測対象とする場合であっても、割れ(欠陥)のある部分だけに渦電流を発生させ、その部分の検出コイルを有効検出コイル31a・31aとして計測して、エッジ部分の渦流計測を無効とすることにより、エッジ信号に欠陥信号が埋もれてしまうことを防ぐことができるのである。換言すれば、プローブ型コイルによる渦流計測において、エッジ効果を低減させることが可能となるのである。
【0103】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態に係る渦流計測用センサ400について、図20(a)及び(b)を用いて説明する。なお、説明の便宜上、図20(a)については、左右両端のサブコア25・25及びサブコイル26・26のみを図示し、他のサブコア25及びサブコイル26は省略する。
【0104】
図20(a)及び(b)に示す如く、本実施形態に係るプローブ型の渦流計測用センサ400は、検出部に、複数の垂直ソレノイドコイル35・35・・・と、複数の水平ソレノイドコイル36・36・・・と、を備える。具体的には、励磁部の先端面のうち、主励磁部であるメインコイル22及び副励磁部であるサブコイル26に対向する位置に、メインコア21の軸心方向と同一の軸心方向となるように配設される、複数の垂直ソレノイドコイル35・35・・・を備えるのである。そして、同じく励磁部の先端面のうち、メインコイル22とサブコイル26との間の位置に、メインコア21の軸心に対して垂直に軸心方向を向けて放射状に配設される、複数の水平ソレノイドコイル36・36・・・と、を備えるのである。
【0105】
本実施形態に係る垂直ソレノイドコイル35・35・・・は、図20(a)に示す如く励磁部によって形成される垂直方向(上下方向)の磁界に検出感度を有する。つまり、垂直ソレノイドコイル35・35・・・は、本実施形態の渦流計測用センサ400において、中心軸方向の磁界(垂直方向磁界)に検出感度を有するのである。一方、水平ソレノイドコイル36・36・・・は、励磁部によって形成される水平方向(前後左右方向)の磁界に検出感度を有する。つまり、水平ソレノイドコイル36・36・・・は、本実施形態の渦流計測用センサ400において、中心軸に垂直な方向の磁界(水平方向磁界)に検出感度を有するのである。
【0106】
上記の如く構成された渦流計測用センサ400を用いて渦流計測を行う場合は、交流電源によりメインコイル22及びサブコイル26・26・・・に電圧を印加する。そして、メインコイル22に対して図20(a)に示す矢印αの如く電流が流れた瞬間には、右ネジの法則に従ってメインコイル22の内部において下向きの磁界が発生する(図20中の矢印a41参照)。また、サブコイル26・26・・・に対して図20(a)に示す矢印βの如く電流が流れた瞬間には、右ネジの法則に従ってサブコイル26・26・・・の内部において上向きの磁界が発生する(図20(a)中の矢印x参照)。
【0107】
そして、前記の如く発生した磁界により電磁誘導を起こし、電磁誘導によって磁性体であるワークWに渦電流を発生させるのである。さらに、ワークWの表面における渦電流の発生にともない、検出部に磁束を貫通させ、検出部によってワークWの表面における渦電流の発生にともなう誘起電圧を計測するのである。この際、垂直ソレノイドコイル35・35・・・によって垂直方向磁界を、水平ソレノイドコイル36・36・・・によって水平方向磁界を感度良く検出することができるのである。
【0108】
本実施形態の渦流計測用センサ400においては上記の如く、検出部に、複数の垂直ソレノイドコイル35・35・・・と、複数の水平ソレノイドコイル36・36・・・と、を備える構成とすることにより、検出部による検出感度の増強、および検出効率の向上を図ることができるのである。
【0109】
[第五実施形態]
次に、本発明の第五実施形態に係る渦流計測用センサ500について、図21を用いて説明する。図21に示す如く、本実施形態に係るプローブ型の渦流計測用センサ500は、検出部として、メインコア21の半径方向における、副励磁部であるサブコア25・25・・・及びサブコイル26・26・・・よりも外側に、サブコア25・25・・・及びサブコイル26・26・・・に隣接して配設された複数の検出コイル531a・531a・・・を備える。具体的には、サブコア25・25・・・及びサブコイル26・26・・・の外側に、渦流計測用センサ500の軸心方向に一定の幅を有して複数の検出コイル531a・531a・・・が配設されるのである。
【0110】
本実施形態の渦流計測用センサ500は上記の如く構成することにより、管状のワークや穴の内面部などを広範囲かつ一度に渦流計測する内挿型渦流計測用センサとして使用することが可能となる。
本実施形態の渦流計測用センサ500で渦流計測を行う場合は図21に示す如く、メインコア21及びメインコイル22を渦流計測用センサ500の基端側に移動させ、サブコア25・25・・・、及び、サブコイル26・26・・・から離れた位置に配置する。そして、サブコア25・25・・・、及び、サブコイル26・26・・・を渦流計測用センサ500の先端側に螺旋状に配置する。さらに、渦流計測用センサ500をパイプPに挿入し、図21中の矢印Rの如く軸心周りに回転させながら、矢印Xの如く移動させて渦流計測を行うのである。なお、サブコア25・25・・・、及び、サブコイル26・26・・・を螺旋状に配置せずに、渦流計測用センサ500の軸心に垂直な同一平面上に配置する構成にすることもできるが、相互に発生させる磁界の影響を少なくするためには螺旋状に配置することが望ましい。
【0111】
上記の如く構成された渦流計測用センサ500を用いてパイプPの内面部の渦流計測を行う場合は、交流電源によりサブコイル26・26・・・のみに電圧を印加する。サブコイル26・26・・・に対して図21に示す矢印βの如く電流が流れた瞬間には、右ネジの法則に従ってサブコイル26・26・・・の内部において上向きの磁界が発生する(図21中の矢印x参照)。
【0112】
そして、前記の如く発生した磁界により電磁誘導を起こし、電磁誘導によって磁性体であるパイプPに渦電流を発生させるのである。さらに、パイプPの表面における渦電流の発生にともない、検出コイル531a・531a・・・に磁束を貫通させ、検出コイル531a・531a・・・によってパイプPの表面における渦電流の発生にともなう誘起電圧を計測するのである。なお、この際には、先端の検出コイル31b・31b・・・は全て無効としている。
【0113】
上記の如く、本実施形態の渦流計測用センサ500においては、サブコア25・25・・・及びサブコイル26・26・・・の外側に、渦流計測用センサ500の軸心方向に一定の幅を有して複数の検出コイル531a・531a・・・を配設することにより、管状のワークや穴の内面部などを広範囲かつ一度に渦流計測する内挿型渦流計測用センサとして使用することができるのである。換言すれば、渦流計測用センサ500は、前記実施形態の如く上置型の渦流計測用センサとしてだけでなく、内挿型渦流計測用センサとしても用いることが可能となるのである。
【符号の説明】
【0114】
20 励磁部
21 メインコア
22 メインコイル
25 サブコア
30 検出部
31 検出コイル
100 渦流計測用センサ
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象部品に対して所定の交流励磁信号を印加するための励磁部と、前記交流励磁信号が印加された計測対象部品から渦電流による検出信号を検出するための検出部と、を有する、プローブ型の渦流計測用センサであって、
前記励磁部は、柱状の磁性体からなるメインコアと、該メインコアの周囲に周方向に巻きつけられたソレノイドコイルであるメインコイルと、を備える主励磁部、及び、該主励磁部の周囲に、前記メインコアの軸心方向と同一の軸心方向となるように配設された柱状の磁性体からなるサブコアを備え、それぞれが独立して前記主励磁部に対する軸心方向位置を可変に構成された複数の副励磁部、を具備する、
ことを特徴とする、渦流計測用センサ。
【請求項2】
前記副励磁部は、前記サブコアの周囲に周方向に巻きつけられたソレノイドコイルであるサブコイルを備え、
前記主励磁部のメインコイルで発生する磁束の方向と、前記副励磁部のサブコイルで発生する磁束の方向と、が逆になるように構成される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の渦流計測用センサ。
【請求項3】
前記主励磁部は、前記メインコイル及び前記メインコアのそれぞれが独立して軸心方向位置を可変に構成される、
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の渦流計測用センサ。
【請求項4】
前記検出部は、前記主励磁部の軸心部を中心として放射状に配設された複数の検出コイルを備え、該検出コイルはそれぞれが独立して前記検出信号の検出に関する有効・無効を切替可能に構成される、
ことを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の渦流計測用センサ。
【請求項5】
前記検出部は、前記励磁部の先端面に全体的に配設される、複数のパンケーキコイル又は複数のプレーナコイルを備える、
ことを特徴とする、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の渦流計測用センサ。
【請求項6】
前記検出部は、前記励磁部の先端面のうち前記主励磁部及び前記副励磁部に対向する位置に、前記メインコアの軸心方向と同一の軸心方向となるように配設される、複数の垂直ソレノイドコイルと、前記励磁部の先端面のうち前記主励磁部と前記副励磁部との間の位置に、前記メインコアの軸心に対して垂直に軸心方向を向けて放射状に配設される、複数の水平ソレノイドコイルと、を備える、
ことを特徴とする、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の渦流計測用センサ。
【請求項7】
前記検出部は、前記メインコアの半径方向における前記副励磁部よりも外側に、前記副励磁部に隣接して配設された複数の検出コイルを備える、
ことを特徴とする、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の渦流計測用センサ。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか一項に記載の渦流計測用センサを用いて渦流計測を行うことにより、計測対象部品を検査する、
ことを特徴とする、渦流計測用センサによる検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−145176(P2011−145176A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6289(P2010−6289)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】