説明

温度センサ、及び、水素充填システム

【課題】高圧の水素雰囲気下において耐久性に優れた温度センサを提供する。
【解決手段】酸化物焼結体からなる素子本体11と、素子本体11に電気的に接続され、Pt又はPt合金からなる一対のリード線13a,13bと、素子本体11及び素子本体11と接続される部分を含むリード線13a,13bの一部を封止する封止ガラス2と、を備え、一対のリード線13a,13bが、Pt、PtとIr及びPdの1種又は2種とからなる合金、PdとIrの合金のいずれかからなり、水素雰囲気下で使用される温度センサ10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガスが充填された容器内の温度を測定できる温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガス雰囲気の温度を検出する場合、温度を検出するセンサ素子が水素に暴露されることにより還元されてしまい、検出温度の精度が損なわれるおそれがある。例えば、センサ素子として用いられるサーミスタ(Thermally Sensitive Resistor)は、水素による還元によりセンサ素子の抵抗値が高くなると、検出温度が実際の温度よりも低く出力される。
【0003】
水素雰囲気下で生じる還元による検出温度のずれに対して、特許文献1は、水素が充填されたタンクに複数の温度センサを設け、検出温度の高い温度センサの出力を基に他の温度センサの出力を補正することが提案されている。この提案は、水素により還元されていないセンサ素子(温度センサ)は、抵抗値が低く、検出温度が高くなることに着目したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−266206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1の提案は、複数の異なるタンク内にそれぞれ温度センサが設けられることを前提としており、全ての温度センサのセンサ素子が同程度に還元されてしまうと、補正ができなくなる。したがって、水素雰囲気下において、温度センサを構成するセンサ素子の特性劣化を抑えることが優先される課題といえる。
特許文献1にも示されているが、水素雰囲気が具現される例として、燃料電池の負極活物質となる水素を貯蔵するタンクが掲げられる。現状、このタンク内の圧力は法律の規制により35MPa以下とされるが、今後は上限を例えば70MPaに引き上げる動きがある。したがって、この傾向に対応するには、水素による還元だけでなく、高い圧力に暴露されることをも考慮する必要がある。一つの目標として、センサ素子が、圧力120MPa、温度−90〜150℃であって、水素濃度100%の雰囲気下で耐久性を備えることが掲げられる。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、高圧の水素雰囲気下における耐久性が優れた温度センサを提供することを目的とする。また本発明は、そのような温度センサを備える水素充填システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の温度センサは、酸化物焼結体からなるサーミスタ素子本体と、素子本体に電気的に接続される一対のリード線と、素子本体及び素子本体と接続される部分を含むリード線の一部を封止するガラス封止体と、を備え、一対のリード線が、Pt、PtとIr及びPdの1種又は2種とからなる合金、PdとIrの合金のいずれかからなり、水素雰囲気下で使用されることを特徴とする。
本発明は、リード線を特定の材質にすることで、水素雰囲気下における耐久性を格段に向上できることを新たに知見したことに基づいている。
【0007】
本発明の温度センサは、水素が充填される容器と、容器内の温度を測定する温度センサと、を備える水素充填システムに用いることで、容器内の水素の温度を長期にわたって安定して測定できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高圧の水素雰囲気下において耐久性に優れた温度センサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態による温度センサの概略構成を示す図である。
【図2】第2実施形態による温度センサの概略構成を示す図である。
【図3】第3実施形態による温度センサの概略構成を示す図である。
【図4】水素充填システムの概略構成を示す図である。
【図5】実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
本実施の形態における温度センサ10は、図1に示すように、サーミスタ素子1と、封止ガラス2とから概略構成されている。
サーミスタ素子1は、その電気抵抗値の温度係数が大きな半導体素子からなり、抵抗値の変化を電圧変化として取り出すための検出回路(不図示)とともに用いることによって、自身が置かれている環境の温度を検出して電気信号からなる温度検出信号を発生する。
封止ガラス2は、サーミスタ素子1を封止して気密状態に保持することによって、環境条件に基づく化学的,物理的変化の発生を防止するとともに、機械的に保護する。
【0011】
サーミスタ素子1は、素子本体11と、電極12a,12bと、リード線13a,13bと、を備えている。
素子本体11は、金属酸化物を焼結して平板状に成形したものが用いられる。
素子本体11に用いられる酸化物焼結体の代表例を以下に示す。ただし、本発明は以下の酸化物焼結体に限定されるものでない。本発明が志向する用途である水素ガス(以下、単に水素)の貯蔵タンクでは、温度の上限がせいぜい150℃であるから、高温用の酸化物焼結体を用いる必要がない。したがって、本発明は、使用できる金属酸化物の選択枝が広い。この酸化物焼結体は、65〜110×10−7/℃(30〜700℃、以下同じ)の線膨張係数を示す。
【0012】
NTC(negative temperature coefficient)サーミスタとして典型的なスピネル構造を有するマンガン酸化物(Mn)を基本組成とする酸化物焼結体を素子本体11に用いることができる。この基本構成にM元素(Ni、Co、Fe、Cu、Al及びCrの1種又は2種以上)を加えたMMn3−xの組成を有する酸化物焼結体を素子本体11に用いることができる。さらに、V、B、Ba、Bi、Ca、La、Sb、Sr、Ti及びZrの1種又は2種以上を加えることができる。
また、PTC(positive temperature coefficient)サーミスタとして典型的なペロブスカイト構造を有する複合酸化物、例えばYCrOを基本構成とする酸化物焼結体を素子本体11に用いることができる。
【0013】
電極12a,12bは、板状をなす素子本体11の表裏面にそれぞれ形成されている。電極12a,12bは、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)及びこれらの合金から選択される素材で構成される。
リード線13a,13bは、一端がそれぞれ電極12a,12bに接続されていて、サーミスタ素子1と外部回路とを接続する。リード線13a,13bは、耐熱性のある、Pt、Ptとイリジウム(Ir)の合金、Ptとパラジウム(Pd)の合金、PtとIrとPdの合金からなる。各合金におけるIr及びPdの含有量は20質量%(以下、単に%)以下の範囲とされる。Ir及びPdの含有量は、好ましくは5〜20%、さらに好ましくは8〜12%である。リード線13a,13bは、電極12a,12bと接続される側の端部が封止体ガラス2に封止される。
【0014】
また、図1に示された封止ガラス2は、非晶質ガラス、結晶質ガラスのいずれも使用できる。非晶質ガラスはそのガラス軟化点が300〜750℃の範囲のものが、また、結晶質ガラスは結晶化温度が700〜1000℃の範囲であるのものが使用できる。非晶質ガラス及び結晶質ガラスの線膨張係数は、素子本体11を構成する酸化物焼結体のそれを考慮し、65〜110×10−7/℃であることが好ましい。これらの特性を備えるガラスとしては、SiO−PbO系ガラス、SiO2−SrO系ガラスを用いることができる。これはもちろん例示であり、さらに酸化カルシウム(CaO)、酸化マンガン(MnO)及び酸化アルミニウム(Al)の1種又は2種以上を含むこと、さらに他の酸化物を含むことを許容する。
【0015】
さて、温度センサ10は、リード線13a,13bが、Pt、Pt−Ir合金、Pt−Pd合金、Pt−Ir−Pd合金から選択されること、そして、サーミスタ素子1を封止して気密状態に保持するのを封止ガラス2が担うこと、により、高圧の水素雰囲気下において優れた耐久性を備える。その理由を本発明者らは以下の通りと判断している。
本発明者らは、水素雰囲気下でサーミスタを用いた温度センサの検出結果にずれが生ずる過程を観察した。つまり、通常、サーミスタからなる素子本体はガラスにより封止されているので、封止状態が確保されている限り、検出結果にずれは生じない。ところが、本発明者の検討によると、極めて短時間でずれが生じるものがあり、それはガラスによる封止状態、特にリード線を封止する部分に剥離が生じることで、そこから水素が封止ガラスの内部に浸入してサーミスタを急激に還元することを確認している。この剥離は、リード線とガラスの接合機構に基づくものと解される。リード線がジュメット線(銅被覆ニッケル鋼線)からなる場合、封止ガラスとリード線の接合界面にCu、酸素(O)及びケイ素(Si)が共有結合した酸化物が生成することで、封止ガラスとリード線が密着する。ところが、酸素雰囲気下ではこの酸化物からも酸素が奪われるため、共有結合自体が破壊され、封止ガラスとリード線の界面の接合強度が失われる。高圧下であることも関与し、この結合の破壊は短時間で封止ガラスの内部まで進行し、最終的には水素暴露が素子本体(サーミスタ)まで達し、検出ずれを起こす。そこで、本実施形態では、リード線13a,13bを、Pt、Pt−Ir合金、Pt−Pd合金、Pt−Ir−Pd合金から選択される素材で構成することとした。これらの素材は化学的に安定なため封止ガラスとの界面に酸化物が生成されないために、酸化物を介する接合に比べると接合強度自体は低い。しかし、水素暴露されても、その化学的な安定の故に、封止ガラス2とリード線13a,13bの界面はそれまでの密着状態を維持することができる。これに加えて、封止ガラス2は樹脂に比べて強度が高いために、温度センサ10が高圧下に置かれても、封止ガラス2がリード線13a,13bを封止する状態を維持することができる。
【0016】
以下、温度センサ10の製造方法の概略を説明する。
まず、サーミスタ素子1を形成する素子本体11は、所定の原料粉末を所定の配合組成となる様に秤量し、これに水を加えてスラリー状とし、これを例えばジルコニアボールとともにポットに入れて、ボールミルによって混合する。
【0017】
次に混合後のスラリーをスプレードライヤーによって乾燥し、得られた粉末を仮焼する。仮焼後の粉末に水を加えて再びスラリー状とし、ジルコニアボールとともにポットに入れて、ボールミルによって粉砕する。粉砕後の粉末は、スプレードライによって乾燥・造粒される。なお、仮焼の温度は
組成に応じて適宜設定される。
次に、冷間静水圧プレスによって、原料作製工程により得られた粉末から円柱形状のインゴットプリフォームを作成し、このインゴットプリフォームを焼結する。そして、得られた焼結体を切断して、さらに研削・研磨して必要な厚さにすることによって、丸形形状のサーミスタウエハーを形成する。
【0018】
このサーミスタウエハーは、そのサーミスタ特性を安定化させるために、アニールすることができる。アニール後のサーミスタウエハーの上下面に、厚膜あるいは薄膜の例えば白金電極を形成する。厚膜電極は、白金粉末に有機バインダー等を混合して作製したペーストをサーミスタウエハーの上下両面に塗布し、乾燥した後に焼結して形成する。また、薄膜電極は、真空蒸着またはスパッタリングによって形成する。
【0019】
このようにして電極形成されたサーミスタウエハーを、ダイシングによって所望寸法に切断して、ガラス封止素子に用いるサーミスタチップにする。
その後、予め白金ペーストを先端に塗布した一対の真っ直ぐなリード線を、サーミスタチップの上下電極に接続し、白金ペーストを乾燥させた後、焼結することによって、図1(b)に示されるサーミスタ素子1を得る。
【0020】
次に、図1(c)に示すように、サーミスタ素子1と、リード線13a,13bのサーミスタ素子1との接続端側と、を覆うようガラス管15を配置する。その状態を維持しながらガラス管15で覆われる部分を所定温度に加熱された炉内に所定時間だけ装入、保持する。この保持の間にガラス管15を十分溶融後、凝固させることで、サーミスタ素子1及びリード線13a,13bの接続端を封止する封止ガラス2を形成し、図1(a)の温度センサ10を得る。
【0021】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態による温度センサ20を説明する。
温度センサ20は、図2に示すように、サーミスタ素子21と、封止ガラス22と、封止補完体23と、から概略構成されている。温度センサ20は、封止補完体23を備えること、及び、封止ガラス22の形態が相違すること、の点で温度センサ10と相違するが、サーミスタ素子21は第1実施形態のサーミスタ素子1と構成が同じであるから、その説明を省略する。
【0022】
円柱状の部材である封止補完体23は、封止ガラス22が保持される保持面24と、リード線13a,13bが軸線方向にそれぞれ貫通されるリード線挿通孔25a,25bと、リード線13a,13bが引き出される引き出し面26と、を備えている。
サーミスタ素子1,21は、封止補完体23の保持面24側に配置され、そのリード線13a,13bは封止補完体23のリード線挿通孔25a,25bをそれぞれ貫通し、引き出し面26の外側に引き出される。
【0023】
封止補完体23は、リード線13a,13bとほぼ等しい線膨張係数を有する材料からなり、リード線13a,13bをそれぞれリード線挿通孔25a,25bに挿通した状態で、封止ガラス22の底部23bと一体に溶融・接合される。したがって、封止補完体23は、サーミスタ素子21及びリード線13a,13bのサーミスタ素子21との接続端側を機械的に補強する。
封止補完体23はその目的を達成できる素材、例えば、AlおよびMgO・SiOからなるフォルステライト(2MgO・SiO)から構成できる。このセラミックスは、線膨張係数が7.0〜9.6×10-6/℃程度である。
【0024】
また、以下説明するように、封止補完体23を設けることにより、高圧の水素暴露下における温度センサ20の耐久性を第1実施形態の温度センサ10よりも向上できる。
封止ガラス22は、封止補完体23の保持面24に接合される。そのために、封止ガラス22の封止端22eにおけるリード線13a,13bの周囲のガラスの肉厚を、第1実施形態に比べて厚くすることができる。つまり、第1実施形態の温度センサ10の封止ガラス2は、その作製工程に起因して図1に示すように楕円体となるため、リード線13a,13bが引き出される封止端2eにおけるリード線13a,13bの周囲、特に楕円体の外側の封止ガラス2の肉厚が薄い。これに比べて、第2実施形態は、封止端22eにおけるリード線13a,13bの外側の封止ガラス22の肉厚は他の部分と同等の厚さにできる。しかも、封止ガラス22の封止端22eに続く封止補完体23も封止ガラス22と同等以上の外径を有している。したがって、第2実施形態による温度センサ20は、封止端22eの周囲の機械的な強度が大きいので、第1実施形態よりも高圧の水素暴露下の耐性が高い。
【0025】
次に、温度センサ20は、理想的には、封止ガラス22と素子本体11を同軸上に配置すると、素子本体11の先端部11aと封止ガラス22の頂部22aとの距離、つまりガラスの肉厚を稼げるので、高圧への耐性が高い。しかし、第1実施形態の温度センサ10は、ガラス管15を溶融、凝固させる工程でサーミスタ素子1が位置ずれを起こし、封止ガラス2と素子本体11を同軸上に配置できない恐れがある。そうすると、素子本体11の先端部11aと封止ガラス2の頂部2aとの間のガラスの肉厚が薄くなる。これに対して、第2実施形態の温度センサ20は、リード線13a,13bがリード線挿通孔25a,25bを貫通した封止補完体23の位置を固定することで、素子本体11の位置を維持できる。そのために、封止ガラス22と素子本体11を同軸上に配置し、素子本体11の先端部11aと封止ガラス22の頂部22aとの間のガラスの肉厚が最大限の厚さに確保しやすくなる。
【0026】
以下、第2実施形態の温度センサ20の製造方法を説明する。なお、図1(b)に示すサーミスタ素子1と同じ構成のサーミスタ素子21を作製するまでは、第1実施形態と同じなので、以下においては、それ以降の工程を説明する。
サーミスタ素子21のリード線13a,13bの所定位置に、封止ガラス22と同組成のガラス粉末を有機バインダーと混合してペースト状にしたものを塗布する。これは、後工程において、リード線13a,13bをリード線挿通孔25a,25bに貫通させた状態で封止補完体23に対して固定するためである。
次いで、封止補完体23のリード線挿通孔25a,25bにそれぞれリード線13a,13bを貫通させて、予め塗布したガラスペーストの所定位置に配置し、ガラスペーストを乾燥させて固定する(図2(b))。
【0027】
その後、図2(c)に示すようにガラス管15を用意し、ガラス管15の一方の切断面にリード線13a,13bに塗布したものと同様のガラスペーストを薄く塗布した後、封止補完体23の保持面24に、ペースト塗布面が接するようにガラス管15を突き当てる。
次に、リード線13a,13bが鉛直になるように保持した状態で、ガラス管15および封止補完体23の部分を加熱炉にて加熱してガラス管15を溶融させて、サーミスタ素子1とリード線13a,13bとをガラス封止して、封止ガラス22を形成するとともに、封止ガラス22の一端部を封止補完体23の保持面24と溶着させることによって、図2(a)に示される温度センサ20を作製する。
【0028】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態による温度センサ30を説明する。
温度センサ30は、図3に示すように、サーミスタ素子31と、封止ガラス32と、から概略構成され、素子本体11、リード線13a,13b及び封止ガラス32の各々は、第1実施形態の素子本体11、リード線13a,13b及び封止ガラス2と構成が同じである。しかし、第1実施形態はリード線13a,13bが素子本体11から同じ向きに引き出されているのに対して、第3実施形態は図3に示すように、リード線13a,13bが素子本体11から互いに異なる向きに引き出されている。
【0029】
温度センサ30は、リード線13a,13bを素子本体11から互いに異なる向きに1本ずつ引き出すことで、素子本体11を基準にして対称形状とすることで、力学的なバランスの向上を図っている。そうすることで、120×10−7/℃と線膨張係数が比較的大きいPd合金(例えばPd−18%Ir合金)をリード線13a,13bに使用することができることを本発明者は確認している。Pd合金をリード線13a,13bは、Pt合金の1/3程度の価格であり、コスト的なメリットが大きい。
また、素子本体11を基準にして対称形状とすることで、封止ガラス32を設ける際に素子本体11が位置ずれを起し難くなり、ガラス肉厚が薄い部分が生じにくくなる。
【0030】
[第4実施形態]
以上説明した温度センサ10(〜30)を用いた水素充填システム100を第4実施形態として説明する。
水素充填システム100は、図4に示すように、水素充填用の耐圧構造を有するタンク101と、タンク101に水素を充填するためのガス流路を備えた供給管102と、充填された水素を外部に吐出するための吐出管103と、タンク101内の温度を検出する温度センサ10と、タンク101内の圧力を検出する圧力センサ104と、温度センサ10から出力される測定温度と圧力センサ104から出力される測定圧力を基にタンク101内に残留する水素の量を求める残量算出部105と、算出された水素の残量を表示する表示部106と、を備える。
残量算出部105は、検出されたタンク101内の温度、圧力をボイル・シャルルの法則に適用することで、タンク101内の水素の残量(体積)を求め、次いで、タンク101の充填限度(いわゆる満タン)に対する残量の比率を求め、それを表示部106に表示させる。
【0031】
以上の水素充填システム100は、例えば燃料電池を電源とする電気自動車に搭載される。この場合、ガスステーションにおいて供給管102を介してタンク101に水素を充填し、走行中に残量算出部105でタンク101に残留する水素の量を求めるとともに、表示部106にその残量を表示させる。表示部106は車室内に置かれ、運転手は表示部106に表示された水素の残量を把握しながら運転する。ここではタンク101を1本のみ示しているが、複数本のタンク101が載せられることがある。その場合、水素充填システム100はタンク101の本数に応じて用意される。
【0032】
以上の水素充填システム100によると、温度センサ10は高圧の水素暴露下でも耐久性に優れているので、タンク101内の水素残量を長期間に亘り正確に求めることができる。
【0033】
[実施例]
第1実施形態に示した形態の温度センサ10、20、30を作製し、水素圧力120MPa、100℃の雰囲気下に曝した後、100μAの電流を通電しながら電気抵抗を測定した。比較として、リード線にジュメット線を用いた以外は第1実施形態に示した形態の温度センサ10と同様の温度センサを用いて同様の測定を行なった。結果を図5に示す。図5は、25℃における電気抵抗を基準とする電気抵抗の変化率を示している。
また、素子本体11、リード線13a,13b、封止ガラス2の仕様は以下の通りである。
素子本体:80%Y−8%Cr−8%Mn−4%Ca(モル%)
リード線:Pt−10%Ir合金線(温度センサ10)
Pt−10%Ir合金線(温度センサ20)
Pd−18%Ir合金線(温度センサ30)
ジュメット線(比較)
封止ガラス:SiO−31%PbO−59%KO−2%()
【0034】
図5に示すように、本発明に従う温度センサ10、20、30は、50時間程度経過しても、抵抗値変動がほとんど生じることなく良好であった。
【符号の説明】
【0035】
10,20,30 温度センサ
1,21,31 サーミスタ素子
2,22,32 封止ガラス
11 素子本体
13a,13b リード線
23 封止補完体
100 水素充填システム
101 タンク
102 供給管
103 吐出管
104 圧力センサ
105 残量算出部
106 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物焼結体からなるサーミスタ素子本体と、
前記素子本体に電気的に接続され、Pt又はPt合金からなる一対のリード線と、
前記素子本体及び前記素子本体と接続される部分を含む前記リード線の一部を封止するガラス封止体と、を備え、
一対の前記リード線が、Pt、PtとIr及びPdの1種又は2種とからなる合金、PdとIrの合金のいずれかからなり、水素雰囲気下で使用されることを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
水素が充填される容器と、
前記容器内の温度を測定する温度センサと、を備え、
前記温度センサが請求項1に記載の温度センサである、
水素充填システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−72769(P2013−72769A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212449(P2011−212449)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000145242)株式会社芝浦電子 (18)
【Fターム(参考)】