説明

温度センサ

【課題】 温度センサに対して振動が加わることによる電極線の断線が生じる問題、及び高温下における金属チューブの酸化が原因でサーミスタの抵抗値が変化してしまう問題の両方について対策を行った温度センサにおいて、感温部を小型化せず、且つ金属管の巨大化が抑制できる温度センサの提供。
【解決手段】 温度センサ1の金属チューブ114内には、電極線3及び金属芯線7の一方が電極線3及び金属芯線7の他方に非接触の状態を維持して一対の電極線3及び金属芯線7を支持する機能を持つ他に、自身の絶縁性を維持する範囲内で酸素供給酸化物からなる酸素供給物質を含有して酸素を放出する機能をも兼ねる絶縁支持部材100を有している。これにより、温度センサ1の大型化を抑制しつつ温度検知に対する応答性の低下がない、高信頼性の温度センサ1を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物などの半導体からなるサーミスタやPt等の金属抵抗体といった感温部を含む感温素子を有底筒状の金属管内に配置した温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感温素子を有する温度センサとして特許文献1のような温度センサS1が知られている。この温度センサS1は、サーミスタ素子3(感温部)と、サーミスタ素子3に接続する電極線4と、電極線4と接続する金属芯線5aと、金属芯線5aの先端部を突出させた状態で、金属芯線5aを絶縁保持するシースピン5(シース部材)とを有している。そして、サーミスタ素子3、電極線4、金属芯線5aの先端部及びシースピン5の先端部は、金属カバー2(金属管)の内部に収容されている。さらに、温度センサS1に対して振動が加わることによる電極線4の断線が生じる問題に対し、金属カバー2の内部に電極線4を非接触の状態で保持する碍子部材6(絶縁支持部材)が収容されている。この碍子部材6は、詳細には、電極線4が挿入された穴部6aを有し、この穴部6aにて電極線4を支持することにより、電極線4の耐振性を向上させている。
【0003】
また、従来の温度センサにおいて、特許文献2や特許文献3のような温度センサも知られている。この温度センサは、高温下における金属チューブの酸化が原因で、金属チューブ内の酸素欠乏によりサーミスタの特性が変化してしまう問題に対し、金属チューブ5(金属管)内部のサーミスタ1(感温部)の近傍に酸素放出セラミック体2を配置している。つまり、金属チューブ内の酸欠状態時に、酸素放出セラミック体2が一部酸素を放出するため、金属チューブ2内が酸素欠乏雰囲気となることを抑制ないし緩和することができる。
【特許文献1】特開2002−267547号公報
【特許文献2】特開平5−264368号公報
【特許文献3】特開2000−266609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1と特許文献2、3との両方の問題について対策を施した温度センサを作製すると、金属管内部に絶縁支持部材と酸素放出セラミック体の両方を配置する必要が出てくる。すると、金属管は、両者を配置するスペースが必要となり、金属管自身が大型化し、昨今の温度センサの小型化の要請に応えられない虞がある。また、絶縁支持部材と酸素放出セラミック体といった比較的容積の大きいものを感温素子と共に金属管内に収容すると、金属管を介して感温素子に熱が伝わりにくくなるため、温度検知に対する応答性が低下する可能性もある。
【0005】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、温度センサに振動が加わることによる電極線の断線が生じる問題、及び金属管の酸化が原因でサーミスタの特性が変化してしまう問題の両方について対策を行うにあたり、金属管を大型化させることなく、また温度検知に対する応答性を低下させることのない温度センサを提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明の温度センサは、温度によって電気的特性が変化する感温部と、前記感温部と導通される電極線とを有する感温素子と、先端部が前記電極線に接続され、後端部が外部回路接続用のリード線に接続される金属芯線と、前記金属芯線の該先端部を少なくとも突出させた状態で、当該金属芯線を絶縁保持する筒部材とを有するシース部材と、先端が閉じられた有底筒状をなし、内部に前記感温素子及び前記シース部材の少なくとも前記筒部材の先端部を収容する金属管と、前記金属管内のうち、少なくとも前記感温部よりも後端側で、且つ前記筒部材よりも先端側に位置すると共に、前記電極線及び前記金属芯線の一方が前記電極線及び前記金属芯線の他方に非接触の状態を維持するように、一対の前記電極線及び前記金属芯線を支持する絶縁支持部材と、を備える温度センサにおいて、該絶縁支持部材は、自身の絶縁性を維持する範囲内で酸素供給酸化物からなる酸素供給物質を含有していることを特徴とする。
【0007】
本発明の温度センサによれば、電極線及び金属芯線の周囲の少なくとも一部を覆う絶縁支持部材に、酸素供給酸化物からなる酸素供給物質を含有させることにより、高温時に金属管内が酸欠状態になった際にも、絶縁支持体が酸素を放出することができ、金属管内が酸素欠乏雰囲気となることを抑制ないし緩和することができる。つまり、本発明の温度センサでは、電極線及び金属芯線の周囲の少なくとも一部を覆う絶縁支持部材が、電極線及び金属芯線を支持する機能を持つ他に、上述した酸素放出機能をも兼ねさせるのである。
【0008】
これにより、温度センサに振動が加わることによる電極線の断線が生じる問題と、金属管の酸化が原因でサーミスタの特性が変化してしまう問題の両方を対策するにあたって、従来のように酸素供給セラミック体を金属管内に配置する必要が無くなるため、温度センサの大型化を抑制しつつ温度検知に対する応答性の低下がない、高信頼性の温度センサを提供することができる。
【0009】
なお、酸素供給物質は、絶縁支持部材の絶縁性を維持する範囲内で絶縁支持部材内に含有される必要がある。酸素供給物質を絶縁支持部材に含有させたことにより、絶縁支持部材が導電性を帯びることがあると、一対の電極線間ないし一対の金属芯線間にて絶縁支持部材を介してリーク電流が発生し、温度検知に影響を来たす虞があるからである。なお、本明細書において、絶縁支持部材の絶縁性を維持する範囲内とは、具体的には、900℃での絶縁支持部材の絶縁抵抗が2.0KΩ以上であることを指す。この900℃での絶縁抵抗は、2.6KΩ以上であることが、確実な絶縁性を維持する上で好ましい。
【0010】
さらに、本発明の温度センサは、前記酸素供給物質が、NiO、Fe、CeOのうち少なくとも一種であることが好ましい。酸素供給物質としては、NiO、CeO、CoO、WO、CuO、Ga、SnO、Fe、Ta、ZrO等を採用することができるが、酸素供給物質として、NiO、Fe及びCeOが特に酸素供給能力が高いためである。
【0011】
さらに、本発明の温度センサは、前記酸素供給物質が、前記絶縁支持部材中に分散されてなることが好ましい。このように酸素供給物質が絶縁支持部材中に分散されていることで、酸素供給物質からの酸素が金属管内に効率良く放出することができ、酸素欠乏による感温部の特性変化を効率良く抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明を適用した第1実施形態である温度センサ1を図面と共に説明する。図1は、第1実施形態の温度センサ1の構造を示す部分破断断面図である。
【0013】
温度センサ1は、一対の金属芯線7を筒部材27の内側にて絶縁保持したシース部材108と、先端側が閉塞した軸線方向に延びる筒状の金属チューブ114と、金属チューブ114に接合されると共に金属チューブ114を支持する取り付け部材304と、取り付け部材304の後方側に接合される筒状の継手部材6と、六角ナット251及びネジ部252を有するナット部材205とを備えて構成されている。なお、軸線方向とは、温度センサ1の長手方向であり、図1においては上下方向に相当する。また、温度センサ1における先端側は図における下側であり、温度センサ1における後端側は図における上側である。
【0014】
そして、温度センサ1は、金属チューブ114の内部にサーミスタ素子2を収容しており、例えば、内燃機関の排気管などの流通管に装着されて、サーミスタ素子2を測定対象ガス(排気ガス)が流れる流通管内に配置させて、測定対象ガスの温度検出に使用することができる。なお、サーミスタ素子2は、温度によって電気的特性(電気抵抗値)が変化する感温部(サーミスタ焼結体)9と、この感温部9の電気的特性の変化を取り出すための一対の電極線3とから構成される。
【0015】
金属芯線7は、先端部が溶接によりサーミスタ素子2の電極線3と接続されており、後端部が溶接により加締め端子11と接続されている。そして、加締め端子11は、自身の後端側にて外部回路(例えば、車両の電子制御装置(ECU)等)接続用のリード線12と接続されている。これにより、感温部9の電気的特性の変化は、電極線3、金属芯線7、加締め端子11、リード線12を介して外部回路に取り出されることになる。
【0016】
なお、一対の加締め端子11は、絶縁チューブ15により互いに絶縁されている。また、複数の導線を撚り合わせた導通部を絶縁性の被覆材にて被覆して構成されたリード線12は、耐熱ゴム製の補助リング13の内部を貫通する状態で継手部材6の内部から外部に向かって引き出されている。そして、補助リング13は、継手部材6により加締め固定されている。
【0017】
金属チューブ114は、耐食性金属(例えば、耐熱性金属でもあるSUS310Sなどのステンレス合金)からなり、鋼板の深絞り加工によりチューブ先端側131が閉塞した軸線方向に延びる筒状をなし、筒状のチューブ後端側132が開放した形態で構成されている。金属チューブ114は、チューブ後端側132が取り付け部材304の第2段部46の内面に当接するように、軸線方向寸法が設定されている。
【0018】
金属チューブ114は、内部にサーミスタ素子2およびセメント110を収納しており、セメント110は、サーミスタ素子2の周囲に充填されることで、サーミスタ素子2の揺動を防止している(図2参照)。なお、セメント110は、シリカにアルミナ骨材を含有した絶縁材よりなる。また、金属チューブ114は、先端部分を径が小さく設定された小径部57とされており、この後端側が、経が小径部57よりも大きく設定された大径部58とされている。また、小径部57と大径部58とは、段差部55により接続されている。
【0019】
そして、金属芯線7の先端側及び電極線3の後端側の外周の大半を覆うように絶縁支持部材100が配置されている。この絶縁支持部材100は、図3に示すように、断面略S字状の形状を有し、第1スリット100aと第2スリット100bが互いに逆方向を向くように形成されており、第1スリット100aと第2スリット100bとの間には隔壁100cが形成されている。そして、接続された状態の電極線3及び金属芯線7が第1スリット100a、第2スリット100bにそれぞれ挿入された状態で保持されている。これにより、温度センサ1に振動が加わっても隔壁100cが電極線3同士や金属芯線7同士が接触することを防止しており、電極線3や金属芯線7が断線することを防止できる。
【0020】
この絶縁支持部材100は、アルミナに酸素供給酸化物であるNiOが含有されている。これにより、金属チューブ114が900〜1000℃といった高温下に晒されて当該金属チューブ114に酸化が生じた場合にも、絶縁支持部材100(詳細には、酸素供給酸化物)より酸素が放出されるため、金属チューブ114内が酸素欠乏雰囲気となることが抑制ないし緩和される。従って、感温部9の特性が変化することを抑制できる。
【0021】
図1に戻り、取り付け部材304は、径方向外側に突出する突出部341と、突出部341の後端側に位置すると共に、軸線方向に延びる後端側鞘部42とを有している。そして、取り付け部材304は、少なくとも金属チューブ114の先端側が外部に露出する状態で金属チューブ114の後端側の外周面を取り囲んで金属チューブ114を支持する。
【0022】
突出部341は、先端側向き縮径状のテーパ形状となる取り付け座345を先端側に有する環状に形成されている。取り付け座345は、図示しない排気管のセンサ取り付け位置における後端側向き拡径状のテーパ部に対応したテーパ状に形成されている。つまり、取り付け部材304は、排気管のセンサ取り付け位置に配置される際に、取り付け座345がセンサ取り付け位置のテーパ部に直接密着して取り付けられることで、排気ガスが排気管外部へ漏出するのを防止するように構成されている。
【0023】
後端側鞘部42は、環状に形成されると共に、先端側に位置する第1段部44と、第1段部44よりも小さい外径を有する第2段部46と、を備える二段形状をなしている。このうち、第2段部46は、加締めによる変形が可能となるように、厚さ寸法(環状の内径寸法と外径寸法との径差寸法)が薄く設定されている。そして、第2段部46と、金属チューブ114が溶接部363により溶接されている。また、第1段部44と継手部材6の先端部が溶接部364により溶接されている。
【0024】
第1実施形態の温度センサ1は、以下のようにして製造することができる。即ち、電極線3が感温部9から突出したサーミスタ素子2と、金属芯線7が筒部材27から突出したシース部材108と、図3に示すような絶縁支持部材100と、取り付け部材304を準備する。そして、絶縁支持部材100内の第1スリット100a、第2スリット100b内に、電極線3及び金属芯線7を所定の寸法だけ挿入し、それぞれをレーザ溶接にて溶接し、互いを接続する。
【0025】
その後、感温部9と絶縁支持部材100との隙間に未硬化のセメント110を配置する。具体的には、図示しないディスペンサ等を用いて、感温部9と絶縁支持部材100との間の隙間に、未硬化のセメント110を注入充填する。ついで、セメント110を固化させる。具体的には、900℃で5時間加熱して硬化させ、感温部9と絶縁支持部材100とを互いに固着させる。
【0026】
ついで、金属チューブ114を取り付け部材304に組み付ける作業を行う。具体的には、金属チューブ114を取り付け部材304に挿入し、第2段部46を径方向内側に加締め、更にレーザ溶接により金属チューブ114と取り付け部材304とを固着する。その後、金属チューブ114の先端部131内に未硬化のセメント110を所定量注入し、その状態の金属チューブ114内に感温部9、絶縁支持部材100及びシース部材108を挿入する。ついで、未硬化のセメント110を熱処理により硬化させる。すると、金属チューブ114内にセメント110を介して感温部9、絶縁支持部材110が安定して保持される。その後は、加締め端子11をシース部材108の金属芯線7に取り付ける作業や、継手部材6を取り付け部材304に固着する作業といった公知の温度センサの製造方法を用いて、温度センサ1を完成する。
【0027】
次に、本発明を適用した第2実施形態である温度センサ400を図面と共に説明する。図4は、第2実施形態の温度センサ400の構造を示す部分破断断面図である。なお、第2実施形態の温度センサ400は、第1実施形態1の温度センサ1の金属チューブ114及び取り付け部304の形状が異なるのみであり、その部分を中心に説明し、その他の部分については、同符号を用いて簡略化して説明する、又は省略する。
【0028】
温度センサ400は、一対の金属芯線107を筒部材27の内側にて絶縁保持したシース部材108と、シース部材108を支持する取り付け部材404と、六角ナット251及びネジ部252を有するナット部材205を備えて構成されている。なお、軸線方向とは、温度センサ400の長手方向であり、図4においては上下方向に相当する。また、温度センサ400における先端側は図における下側であり、温度センサ400における後端側は図における上側である。
【0029】
金属キャップ414は、耐食性金属(例えば、耐熱性金属でもあるSUS310Sなどのステンレス合金)からなり、鋼板の深絞り加工によりチューブ先端側431が閉塞した軸線方向に延びる筒状をなし、筒状のチューブ後端側432が開放した形態で構成されている。金属キャップ414は、チューブ後端側432の内面がシース部材108の筒部材27の外面に溶接により固定されている。
【0030】
金属キャップ414は、内部にサーミスタ素子2およびセメント110を収納しており、セメント110は、サーミスタ素子2の周囲に充填されることで、サーミスタ素子2の揺動を防止している(図5参照)。また、金属キャップ414は、先端部分が径が小さく設定された小径部457とされており、この後端側が、経が小径部457よりも大きく設定された大径部458とされている。また、小径部457と大径部458とは、段差部455により接続されている。
【0031】
そして、金属芯線7の先端側及び電極線3の後端側の外周を覆うように絶縁支持部材100が配置されている。この絶縁支持部材100は、断面略S字状の形状を有し、第1スリット100aと第2スリット100bが互いに逆方向を向くように形成されており、第1スリット100aと第2スリット100bとの間には隔壁100cが形成されている。そして、電極線3及び金属芯線7が第1スリット100a、第2スリット100bにそれぞれ挿入された状態で保持されている。これにより、温度センサ1に振動が加わっても隔壁100cが電極線3同士や金属芯線7同士が接触することを防止でき、電極線3や金属芯線7が断線することを防止できる。
【0032】
この絶縁支持部材100は、アルミナに酸素供給酸化物であるNiOが含有されている。これにより、金属キャップ414が900〜1000℃といった高温下に晒されて当該金属キャップ414に酸化が生じた場合にも、絶縁支持部材100(詳細には、酸素供給酸化物)より酸素が放出されるため、金属キャップ414内が酸素欠乏雰囲気となることが抑制ないし緩和される。従って、感温部9の特性が変化することを抑制できる。
【0033】
図4に戻り、取り付け部材404は、経方向外側に突出する突出部441と、突出部441の後端側に位置すると共に、軸線方向に延びる後端側鞘部442とを有している。そして、取り付け部材404は、少なくともシース部材108の先端側が外部に露出する状態でシース部材108の外周面を取り囲んでシース部材108を支持する。
【0034】
突出部441は、先端側向き縮径状のテーパ形状となる取り付け座445を先端側にする環状に形成されている。取り付け座445は、図示しない排気管のセンサ取り付け位置における後端側向き拡径状のテーパ部に対応したテーパ状に形成されている。つまり、取り付け部材404は、排気管のセンサ取り付け位置に配置される際に、取り付け座445がセンサ取り付け位置のテーパ部に直接密着して取り付けられることで、排気ガスが排気管外部へ漏出するのを防止するように構成されている。
【0035】
第2実施形態の温度センサは、以下のようにして製造することができる。即ち、電極線3が感温部9から突出したサーミスタ素子2と、金属芯線7が筒部材27から突出したシース部材108と、絶縁支持部材100と、取り付け部材404を準備する。そして、筒部材27を取り付け部材404に挿入し、固定する。その後、絶縁支持部材100内の第1スリット100a、第2スリット100b内に、電極線3及び金属芯線7を挿入し、それぞれをレーザ溶接にて溶接し、互いを接続する。
【0036】
その後、感温部9と絶縁支持部材100との隙間に未硬化のセメント110を配置する。具体的には、図示しないディスペンサ等を用いて、感温部9と絶縁支持部材100との間の隙間に、未硬化のセメント110を注入充填する。ついで、セメント110を硬化させる。具体的には、900℃で5時間加熱して硬化させ、感温部9と絶縁支持部材100とを互いに固着させる。その後、予め金属キャップ414の先端部431内に未硬化のセメント110を所定量注入しておいた金属キャップ414内に、感温部9及び絶縁支持部材100を挿入する。このとき、シース部材108の筒部材27の先端部までが金属キャップ414内に配置されるように、感温部9及び絶縁支持部材100を挿入する。ついで、未硬化のセメント110を熱処理により硬化させる。すると、金属キャップ414内に、感温部9及び絶縁支持部材110がセメント110により安定して保持される。その後、金属キャップ414のチューブ後端側432を加締め、シース部材108に仮固定し、さらにレーザ溶接にて溶接することで、金属キャップ414とシース部材108とを固着する。その後は、公知の温度センサの製造方法により温度センサ400を作製する。
【0037】
なお、第1実施形態、第2実施形態において、サーミスタ素子2が特許請求の範囲の感温素子であり、金属チューブ114及び金属キャップ414が特許請求の範囲の金属管である。
【0038】
以上、この発明の第1実施形態、第2実施形態について説明したが、この発明は第1実施形態、第2実施形態に限定されることはなく、様々に設計変更することができる。
例えば、第1実施形態、第2実施形態では、図3に示す絶縁支持部材100を用いたが、図6に示すような絶縁支持部材を用いても良い。具体的には、図6(a)に示す絶縁支持部材500は、第1スリット500a及び第2スリット500bが同方向(図中上方)に開口している、断面E字型の絶縁支持部材である。
また、図6(b)に示す絶縁支持部材510は、第1スリット510a、第2スリット510bが背中合わせ状に互いに逆方向(図中上方)に開口している、断面H字型の絶縁支持部材である。
また、図6(c)に示す絶縁支持部材520は、2つの部材、第1絶縁支持部材521、第2絶縁支持部材522とからなり、これらをあわせると、2つの孔の空いた円柱状の絶縁支持部材となる。
【0039】
さらに、第1実施形態、第2実施形態では、絶縁支持部材100の絶縁材料として、アルミナを用いたが、これに限らず、例えば、シリカやムライト等を使用することもできる。
【0040】
さらに、第1実施形態、第2実施形態では、サーミスタ素子2や絶縁支持部材100の周囲をセメント110で取り囲む例を示したが、これに限らず、例えば、感温部9と絶縁支持部材100との間(間隙)のみにセメント110を配置した構造であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1実施形態のガスセンサ1の部分破断断面図である。
【図2】第1実施形態のガスセンサ1の主要部分破断断面図である。
【図3】第1実施形態、第2実施形態の絶縁支持部材100の斜視図である。
【図4】第2実施形態のガスセンサ400の部分破断断面図である。
【図5】第2実施形態のガスセンサ400の主要部分破断断面図である。
【図6】別実施形態の絶縁支持部材500、510、520の斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
1、400・・・温度センサ
2・・・・・・・サーミスタ素子
3・・・・・・・電極線
7・・・・・・・金属芯線
9・・・・・・・感温部
27・・・・・・筒部材
108・・・・・シース部材
110・・・・・セメント
114・・・・・金属チューブ
414・・・・・金属キャップ
100、500、510、520・・・・・絶縁支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度によって電気的特性が変化する感温部と、前記感温部と導通される一対の電極線とを有する感温素子と、
先端部が前記電極線に接続され、後端部が外部回路接続用のリード線に接続される一対の金属芯線と、前記金属芯線の該先端部を少なくとも突出させた状態で、当該金属芯線を絶縁保持する筒部材とを有するシース部材と、
先端が閉じられた有底筒状をなし、内部に前記感温素子及び前記シース部材の少なくとも前記筒部材の先端部を収容する金属管と、
前記金属管内のうち、少なくとも前記感温部よりも後端側で、且つ前記筒部材よりも先端側に位置すると共に、前記電極線及び前記金属芯線の一方が前記電極線及び前記金属芯線の他方に非接触の状態を維持するように、一対の当該電極線及び金属芯線を支持する絶縁支持部材と、
を備える温度センサにおいて、
該絶縁支持部材は、自身の絶縁性を維持する範囲内で酸素供給酸化物からなる酸素供給物質を含有していることを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
前記酸素供給物質は、NiO、Fe、CeOのうち少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の温度センサ。
【請求項3】
前記酸素供給物質は、前記絶縁支持部材中に分散されてなることを特徴とする請求項1又は2記載の温度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−240341(P2007−240341A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63566(P2006−63566)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】