説明

温度制御方法

【課題】温度制御が簡便になるとともに、安全性に優れ、省エネ効果にも優れた温度制御方法を提供する。
【解決手段】温度制御方法は、躯体にパイプ管2をはりめぐらせ、該パイプ管内に液体を循環させて温度を制御する温度制御方法において、パイプ管の外側に蓄熱材5を被覆させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度制御が簡便になるとともに、安全性に優れ、省エネ効果にも優れた温度制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パイプ管内に水やオイル等の液体を循環させて温度を制御する方法は、様々な分野で採用されている。
例えば、温水式の床・壁暖房システムにおいては、空間内を暖房するため、床や壁にパイプ管をはりめぐらせ、該パイプ管内に温水等の液体を循環させる方法が採用されている。
また、自動車、電車、船舶、航空等の動力装置や、製鉄、プラスチック等の製造装置、あるいは種々の熱処理装置においても、温度上昇による故障等を防ぐため、パイプ管を用いて冷却水等の液体を循環させる方法が採用されている。
近年では、パソコン等の電子機器などにおいても、パイプ管を用いて冷却水等の液体を循環させるなど、様々な用途で、パイプ管を用いた温度制御方法が採用されている。
【0003】
このような温度制御方法では、温度制御の効率を上げるため、用いるパイプ管は、熱伝導に優れる金属製のものが多く採用されている。また、温度制御の効率を上げるため、躯体とパイプ管は接するように配置されているものが多い。
例えば、温水式床暖房においては、パイプ管は予めコンクリートやモルタル等の床材に埋め込まれて用いるタイプが多く採用されている。
このような温水式床暖房においては、昼夜問わず長期間循環し続けるものが多く、床材自体が常に蓄熱された状態であり、パイプ管の種類等に関わらず、急激な温度変化が少なく、また温度ロスも少なく、電源のON・OFFなどによるエネルギー消費量等も、それほど問題視されることはなかった。
【0004】
しかし近年、温水式床暖房が普及しはじめるにつれ、簡易式のパネル型温水式床暖房が登場し、夜の短期間だけ暖房したり、ある部分だけ部分暖房するタイプが現れ、電源ON時から、より短い時間で目的とする温度に到達できる床暖房システムが望まれるようになってきた。さらに、人々のエコ環境意識の高まりにより、より安全で、より省エネ効果の高い製品が望まれるようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−8288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのような状況下、温水式床暖房システムにおいては、次のような問題が挙げられる。
素早く暖房するためには、床材自体の暖房など必要以上に温度を放出しなければならず、特に、パネル型温水式床暖房においては温度ロスが多くなるため、エネルギー消費量も問題になることがある。
さらに、床材とパイプ管が接している部分において、パイプ管近傍の急激な温度変化により、パイプ管近傍の床材が急激に温度変化を起こし、床材の温度ムラの問題や、場合によっては低温火傷等の危険の恐れがある。
【0007】
このような問題に対し、例えば特許文献1では、温水式床暖房において、温水パイプの間の空間部に、蓄熱部材を配置する方法が記載されている。
しかし、特許文献1のように蓄熱部材が多い場合、電源ON時に、本来なら床表面へと移動する熱が蓄熱部材へと移動し、床表面の暖房が遅れる、という問題があった。また、蓄熱部材が多くても、それに似合う蓄熱効果は発揮されない問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような問題に対し、本発明者らが鋭意検討を行った結果、パイプ管近傍の急激な温度変化を抑えるとともに、パイプ管内の液体を目的の温度とするためのエネルギー消費を抑えることができる、温度制御方法を見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.躯体にパイプ管をはりめぐらせ、該パイプ管内に液体を循環させて温度を制御する温度制御方法において、パイプ管の外側に蓄熱材を被覆させることを特徴とする温度制御方法。
2.床材基礎部に、パイプ管をはりめぐらせ、該パイプ管内に温水を循環させて温度を制御する温水式床暖房の温度制御方法において、パイプ管の外側に蓄熱材を被覆させることを特徴とする温水式床暖房の温度制御方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、パイプ管による温度制御方法において、パイプ管近傍の急激な温度変化を抑えるとともに、パイプ管内の液体を目的の温度とするためのエネルギー消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の温度制御方法を示す床暖房システムのモデル図である。
【図2】図1に示す床暖房システムの横断面(A−A´)の拡大図である。
【図3】実施例1、比較例1における温度測定試験のグラフである
【符号の説明】
【0012】
1:床材基礎部
2:温水パイプ
3:温度制御装置及びポンプ
4:床材
5:蓄熱材
6:温度センサーA
7:温度センサーB
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0014】
本発明の温度制御方法は、躯体にパイプ管をはりめぐらせ、該パイプ管内に液体を循環させて温度を制御する温度制御方法であり、該パイプ管の外側に蓄熱材を被覆させることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の温度制御方法が適用できる躯体としては、例えば、床・壁暖房システムにて使用される基材、自動車、電車、船舶、航空等の動力装置や、製鉄、プラスチック等の製造装置、あるいは種々の熱処理装置にて使用される基板、パソコン等の電子機器にて使用される基板等が挙げられる。
【0016】
本発明の温度制御方法で用いるパイプ管としては、銅、アルミ、鉄、亜鉛、ステンレス、真鍮等の金属製、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂製等、特に限定されず用いることができる。また、パイプ管の種類、口径等も特に限定されず、適宜設定して使用すればよい。
【0017】
本発明では、該パイプ管の外側に蓄熱材を被覆させることを特徴とするものである。
蓄熱材としては、無機塩、無機水和塩、および共融混合物等の無機蓄熱材、脂肪族炭化水素、長鎖アルコール、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステル、ポリエーテル化合物、脂肪酸トリグリセリド等の有機蓄熱材が挙げられる。
【0018】
本発明の蓄熱材を被覆させる方法としては、特に限定されないが、例えば、蓄熱材とともにバインダーを混合して蓄熱組成物を得、該蓄熱組成物をパイプ管の外側に被覆させ、該蓄熱組成物を固形化させる方法等が挙げられる。このような方法では、蓄熱組成物をパイプ管表面に直接塗付して乾燥させることもできるし、パイプ管をはりめぐらせた後、パイプ管近傍に流し込んで固形化させることもできる。なお、蓄熱材は、カプセル化された状態や多孔体に担持された状態で混合してもよい。
【0019】
バインダーとしては、特に限定されないが、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等の合成ゴム等の有機バインダー、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、白色セメント、焼石膏、コロイダルシリカ、水溶性珪酸アルカリ金属塩等の無機結合剤等が挙げられる。
【0020】
また蓄熱組成物としては、バインダーのほかに、顔料、骨材、粘性調整剤、可塑剤、緩衝剤、分散剤、架橋剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、防藻剤、湿潤剤、消泡剤、発泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、凍結防止剤、滑剤、脱水剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、繊維類、香料、化学物質吸着剤、光触媒、吸放湿性粉粒体、熱伝導性物質、難燃剤、層状粘土鉱物、相溶化剤等の添加剤を含有することもできる。
また蓄熱組成物中の蓄熱材の含有量としては、10重量%以上、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上であることが好ましい。
【0021】
蓄熱材の被覆量としては、パイプ管表面に対し、蓄熱材0.01g/cm以上5.0g/cm以下(好ましくは、0.1g/cm以上3.0g/cm)程度被覆させることが好ましい。被覆量が少なすぎると、パイプ管近傍の急激な温度変化が抑えられない場合がある。被覆量が多すぎると、蓄熱材が熱・冷熱を奪い、余計なエネルギー消費が必要となり、即効性に欠ける場合がある。また、それ以上蓄熱材を被覆させたとしても、蓄熱効果が発揮できない場合がある。
【0022】
パイプ管内を循環する液体としては、水やオイル等が挙げられ、液体内に、蓄熱材や凍結防止剤、防腐剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0023】
本発明の温度制御方法では、液体を循環させるためのポンプ、液体温度を制御するために加熱・冷却装置等は、特に限定されず公知のものが使用できる。
【0024】
以下、温度制御方法として、温水式床暖房を具体例とし、実施例、比較例を述べる。
【0025】
図1に示すように、15℃雰囲気下で、床材基礎部(躯体)(1)に、パイプ管(温水パイプ(2))をはりめぐらせ、表面に床材(4)を積層した温水式床暖房を設置した。
なお、該温水パイプ(2)には、温度センサー(6、7)と、温度センサーの情報を基に温度を制御する温度制御装置(3)、及び、液体を循環させるためのポンプ(3)が設置してあり、温水パイプ内を循環する液体の流量、温度等を制御できるようになっている。
【0026】
図2(図1A−A´断面図)に示すように、床材基礎部(1)には、温水パイプ(2)をはりめぐらせるように、凹部構造となっている箇所が存在し、該凹部構造に温水パイプ(2)を嵌め込んで使用する。
この際に、凹部構造内に蓄熱組成物(蓄熱材(5))を流し込んで固形化させ、温水パイプ(2)の外側を蓄熱材(5)で被覆したもの(図2(a)、実施例1)(蓄熱材被覆量:0.7〜2.5g/cm)と、温水パイプ(2)の外側を被覆しないもの(図2(b)、比較例1)とを用意した。
なお、床材基礎部(1)としては木質材料(1800mm×600mm×15mm)、温水パイプ(2)としては、塩化ビニル製温水パイプ(外径10mm、内径6mm)を用いた。また、蓄熱材(5)としては、パラフィンワックス(相変化温度49℃)を用い、バインダーとしてスチレン−ブタジエンエラストマーを用いて、蓄熱材(5)を70重量%含む蓄熱組成物を作製し、該蓄熱組成物を使用した。
【0027】
温度測定試験として、温水温度を50℃、温水流量1リットル/minとし、温水入口温度(温度センサー(6))と、温水出口温度(温度センサー(7))を経時的に測定した。結果は、図3に示すとおり、実施例1は、比較例1に比べ、温水温度を50℃領域に保つためのON−OFF切り替え期間が長くなり、エネルギー消費量を制御することができた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体にパイプ管をはりめぐらせ、該パイプ管内に液体を循環させて温度を制御する温度制御方法において、
パイプ管の外側に蓄熱材を被覆させることを特徴とする温度制御方法。
【請求項2】
床材基礎部に、パイプ管をはりめぐらせ、該パイプ管内に温水を循環させて温度を制御する温水式床暖房の温度制御方法において、
パイプ管の外側に蓄熱材を被覆させることを特徴とする温水式床暖房の温度制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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