説明

温度差有無検知装置、液面検知装置及び冷凍空調装置

【課題】電気的に繋がっている少なくとも2箇所の金属表面の温度差を簡易かつ安価に検知することができる温度差有無検知装置を提供する。
【解決手段】温度差有無検知装置30は、温度差発生装置33により第1金属の測定箇所表面のうち少なくとも1箇所の温度を変化させ、温度差をつけることによって、少なくとも2箇所の第1金属の測定箇所表面の温度差を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に繋がっている少なくとも2箇所の金属表面の温度差を計測する温度差有無検知装置、この温度差有無検知装置を利用して金属容器内に貯留される流体の液面を検知する液面検知装置、及び、この温度差有無検知装置を備えた冷凍空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、温度差を計測することにより容器内に貯留される流体の液面を検知する技術が存在している(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術は、容器にセンサーを密着させ、表面温度を計測して液面を検知している。このように液面を検知する場合、センサーの密着が計測精度へ与える影響が大きい。すなわち、特許文献1に記載の技術は、センサーが容器表面に密着していれば液面を検知することは可能であるが、センサーが密着していなければ容器表面以外の温度を計測することとなり、誤検知してしまう。それに加え、センサーの密着の有無が誤検知の原因になるにも関わらず、計測対象となる金属表面へのセンサーの密着の有無をセンサー単体で判別する方法がなかった。
【0003】
また、計測対象に計測機器が接触し、その箇所の温度を計測できているか判別する技術が存在している(たとえば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の技術は、計測対象に金属シールを貼り付け、計測棒が金属シールに接触することで発生する起電力から計測対象の表面温度を計測するとともに、温度表示されないときに計測対象が計測機器に接触していないと判別できるようになっている。これは、2つの異なる金属線の両端を密着し、2つの密着部分の温度差がある場合に起電力が発生するという、ゼーベック効果を用いたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−39510号公報(第1項、第1図等)
【特許文献2】特開昭60−142136号公報(第1頁、第1図等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の技術は、計測棒と金属シールが接する部分の他にセンサー内部で金属を密着させ、この部分に基準温度を発生させる部品を組み込み、組込基準とすることで、計測棒と金属シールが接する部分の温度を計測する構成であると考えられる。この場合、基準温度と計測箇所の温度が異なる場合は、起電力が発生して温度を計測することができるが、2つの接点温度が等しい場合は起電力が発生しないことになる。そのため、特許文献2に記載の技術では、温度差なしか、密着不良か、特定できないという問題があった。また、特許文献2に記載の技術では、計測箇所の温度を正確に計測するために、基準温度を発生させる部品は高精度なものを用いなければならず、高価であるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、電気的に繋がっている少なくとも2箇所の金属表面の温度差を簡易かつ安価に検知することができる温度差有無検知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る温度差有無検知装置は、電気的に繋がっている第1金属の表面の異なる箇所の温度差を検知する温度差有無検知装置において、前記第1金属とは異なる第2金属で構成された少なくとも2本の金属線と、前記第1金属の表面の異なる箇所の間に温度差があるときに発生する起電力を計測する計測装置と、前記第1金属の検知箇所のうち少なくとも1箇所の温度を変化させ、少なくとも2箇所の前記第1金属の検知箇所表面に強制的に温度差を発生させる温度差発生装置と、前記温度差発生装置を制御する制御装置と、を備え、前記各金属線は、一方の端部が前記計測装置に接続され、他方の端部が前記第1金属の各検知箇所に密着されており、前記制御装置は、前記温度差発生装置により前記第1金属の検知箇所表面のうち少なくとも1箇所の温度を変化させ、温度差をつけることによって、前記第1金属と前記各金属線との密着状態を確認した後、少なくとも2箇所の前記第1金属の測定箇所の間で発生する起電力から、少なくとも2箇所の前記第1金属の測定箇所表面の温度差を検知することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る液面検知装置は、電気的に繋がっている第1金属の表面の異なる箇所の温度差を検知することで前記第1金属で構成された金属容器の内部に貯留されている流体の液面を検知する液面検知装置において、前記第1金属とは異なる第2金属で構成された少なくとも2本の金属線と、前記第1金属の表面の異なる箇所の間に温度差があるときに発生する起電力を計測する計測装置と、前記第1金属の検知箇所のうち少なくとも1箇所の温度を変化させ、少なくとも2箇所の前記第1金属の検知箇所表面に強制的に温度差を発生させる温度差発生装置と、前記温度差発生装置を制御する制御装置と、を備え、前記各金属線は、一方の端部が前記計測装置に接続され、他方の端部が前記第1金属の各検知箇所に密着されており、前記制御装置は、前記温度差発生装置により前記金属容器の検知箇所表面のうち少なくとも1箇所の温度を変化させ、温度差をつけることによって、前記金属容器と前記各金属線との密着状態を確認した後、少なくとも2箇所の前記金属容器の測定箇所の間で発生する起電力から、少なくとも2箇所の前記金属容器の測定箇所表面の温度差を検知し、この結果に基づいて前記金属容器の内部に貯留されている流体の液面の有無を検知することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る冷凍空調装置は、上記の温度差有無検知装置を備え、前記温度差有無検知装置が検知した温度差を空調運転の制御に利用していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る温度差有無検知装置によれば、構成が単純であり、安価に温度差の有無を検知することができる。
【0011】
本発明に係る液面検知装置によれば、構成が単純であり、安価に温度差の有無を検知することができるとともに、液面も容易に検知することができる。
【0012】
本発明に係る冷凍空調装置によれば、上記の温度差有無検知装置を備えているので、温度差有無検知装置が検知した温度差を空調運転の制御に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る温度差有無検知装置を説明するための概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る温度差有無検知装置の制御的な接続状態を示すブロック図である。
【図3】金属容器の外部表面温度と液面位置との関係を模式的に表した模式図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る液面検知装置の状態と液面位置との関係を模式的に表した模式図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る液面検知装置の状態と起電力の発生有無との関係を模式的に表した模式図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る液面検知装置の制御処理の流れの一例を示したフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態に係る液面検知装置3の制御処理の流れの別の一例を示したフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態に係る液面検知装置の構成例の一つを示した模式図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る液面検知装置の構成例の一つを示した模式図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る温度差有無検知装置の構成例の一つを示した模式図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る液面検知装置の構成例の一つを示した模式図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る冷凍空調装置の構成例の一つを示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る温度差有無検知装置30を説明するための概略図である。図2は、温度差有無検知装置30の制御的な接続状態を示すブロック図である。図1及び図2に基づいて、温度差有無検知装置30の構成及び動作について説明する。この温度差有無検知装置30は、電気的に繋がっている少なくとも2箇所の金属表面の温度差を簡易かつ安価に計測するものである。なお、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0015】
[機器の構成]
本実施の形態では、図1に示すように温度差有無検知装置30を一つ用いた簡易な構成を例として説明する。また、本実施の形態では、温度差有無検知装置30を液面検知装置3として利用し、金属容器1の内部に貯留されている流体の液面を検知する場合を例に説明する。
【0016】
液面検知装置3は、金属容器1の表面2箇所に密着され、計測対象となる第1金属とは異なる金属材料(以下、第2金属で称する)で構成される金属線31と、金属容器1と金属線31の接点2つに温度差がある場合に発生する起電力を計測する計測装置32と、少なくとも片方の接点部分に設置され、金属容器1と第1金属との密着部分に温度差を発生させる温度差発生装置33と、制御機器(たとえば、温度差発生装置33等)と計測機器(たとえば、計測装置32等)と接続され、機器制御と計測値処理を行なう制御装置34と、により構成される。以下、詳細な構成を要素毎に説明する。
【0017】
(金属容器1)
金属容器1は、金属材料で構成され、外部から内部の液量を測定したり、目視によって内部全体を透視することが不可能に構成されている。そして、金属容器1は、内部圧力が高いことから容器の肉厚が厚くなっている。金属容器1としては、たとえば冷凍空調装置などの冷凍サイクル装置の一要素機器である冷媒を貯留するレシーバーやアキュムレーター等の圧力容器が想定される。レシーバーやアキュムレーターは、冷凍空調装置内の圧力が高いため、3〜5mmの厚みのある耐圧仕様となっていることが通常である。
【0018】
金属容器1は、一般的に、大型のものは鉄製で、小型のものは銅製であり、ほぼ鉄または銅のどちらかの素材で構成されている。よって、金属容器1表面の任意の2箇所は、電気的に通電している。金属容器1には、一般的に、冷媒の流入口となる入口管、冷媒の流出口となる出口管が上部に設置されており、冷凍空調装置の起動時や急激な負荷変動時以外、金属容器1の内部の液面はほぼ一定に保たれている。
【0019】
(金属線31)
金属線31は、第1金属で構成される金属容器1と2点で密着し、電気的に閉回路を形成している。この金属線31は、2つの接点での温度差が発生する場合にゼーベック効果を生じる第1金属とは異なる第2金属で構成されている。たとえば、金属容器1が鉄や銅で構成される場合には、金属線31は銅とニッケルの合金であるコンスタンタンを用いて構成する。コンスタンタンは、一般的に熱電対の素材としてよく用いられており、安価で入手しやすく、ゼーベック効果を生じる金属、たとえば鉄や銅との相性がよいという特性を持っている。
【0020】
ゼーベック効果の有無を計測するためには、2本以上の金属線31を用い、一方の端部を計測装置32に、他方の端部を温度差を計測する金属容器1の表面2箇所に密着させる。金属線31は、金属容器1に密着する端部以外で金属線31と金属容器1が接触しないように、金属線31を樹脂等の絶縁体でコーティングするとよい。
【0021】
(計測装置32)
計測装置32は、ゼーベック効果により発生する起電力の有無を判別するものである。この計測装置32は、起電力の有無を判別できればよく、高精度である必要ない。計測装置32は、たとえば、永久磁石とコイルで構成されるものや、アンプやAD変換機等で構成されるもので構成するとよい。計測装置32は、計測精度に比例して価格も上昇するが、高精度である必要がないため、装置価格自体を安価に抑えることができる。
【0022】
(温度差発生装置33)
温度差発生装置33は、金属線31が金属容器1に密着しているかどうかを確認する際に必要となるもので、金属容器1の計測箇所のうち少なくとも1箇所の温度を変化させ、少なくとも2箇所の金属容器1の計測箇所表面に強制的に温度差を発生させるものであり、たとえばヒーター等が挙げられる。ヒーターは、ある部分の温度を任意の状態に変化させるのに効果的な部材であり、かつ制御も容易である。
【0023】
(制御装置34)
制御装置34は、液面検知装置3の頭脳となる部分であり、少なくとも機器制御と計測値処理の2つのことを行う。機器制御は、センサーの密着有無確認時と、液面有無判断時と、において温度差発生装置33の入切を切り替えるものである。計測値処理機能は、各状況で発生した起電力を計測し、液面有無や密着有無の判断や処理を行うものである。
【0024】
制御装置34は、計測部34a、制御部34b、データ処理部34c、記憶部34dを有している。計測部34aは、入力部34eを介して入力される情報(たとえば、計測装置32で計測された情報)から、金属容器1の表面と金属線31の間の起電力の発生有無を計測する機能を有している。制御部34bは、計測部34aでの判断を受けて、出力部34fを介して温度差発生装置33の入切を切り替える機能を有している。データ処理部34cは、現在の制御内容を、たとえばパラメータを用いて所定のプログラムでデータ処理を実行する機能を有している。記憶部34dは、データ処理部34cでデータ処理された内容を格納する機能を有している。
【0025】
<計測原理>
本実施の形態における液面検知方法と金属線密着有無検知方法の計測原理であるゼーベック効果について説明する。
【0026】
ゼーベック効果は、異なる2つの金属の両端を密着させ閉回路とした際に、密着部分の温度差があれば起電力が発生し、温度差がなければ起電力が発生しない、という現象である。これは、物質中の帯電した荷電粒子が拡散する際、散乱が温度により異なるために荷電粒子の密度差が高くなり、電位差が生じることにより発生するものである。当然、2つの金属が密着していなければ、電位差は生じず、起電力も発生しない。この現象を用いて、温度差有無検知装置30は、金属容器1の表面と金属線31の間の起電力の発生有無を計測し、密着有無、温度差有無を判断するようになっている。また、液面検知装置3は、温度差有無検知30を利用して金属容器1に貯留される流体の液面を検知するようになっている。
【0027】
(液面検知方法)
金属容器1の内部の液面を温度差発生有無により検知する方法について、図3を用いて説明する。図3は、金属容器1の外部表面温度と液面位置との関係を模式的に表した模式図である。この図3では、金属容器1の内部に半分液が、残りの半分にガスが入っている状態を図示しており(図3の紙面右側)、またその時の金属容器1の外表面の温度を併せて図示している(図3の紙面左側)。なお、図3では、横軸が温度(T)を、縦軸が液面高さ(H)を、それぞれ表している。
【0028】
外気温度をTa、金属容器1の内部流体温度をTrとすると、内部が液状態である容器下部の金属容器1の表面温度は、熱容量が大きいため内部流体温度に接近し、内部がガス状態である容器上部の金属容器1の表面温度は、外気温度に接近する。つまり、金属容器1の上下2箇所の温度差を計測した場合、温度差が発生していれば液面が存在し、温度差が発生していなければ液面が存在していないということになる。そこで、本実施の形態に係る液面検知装置3においては、金属容器1の上下2箇所に金属線31を密着させ、起電力発生有無を計測することにより温度差有無を判定し、温度差有無判定結果により液面の有無を判定している。
【0029】
以上を踏まえて、液面あり、液面なし、密着していないという3つの状態を、図4〜図6を参照しながら整理する。図4は、液面検知装置3の状態と液面位置との関係を模式的に表した模式図である。図5は、液面検知装置3の状態と起電力の発生有無との関係を模式的に表した模式図である。図6は、液面検知装置3の制御処理の流れの一例を示したフローチャートである。なお、図4、図5について、起電力発生がある場合は、計測装置32の針が右に傾き起電力の発生を示し、起電力発生がない場合は、計測装置32の針が左(0)に傾き起電力の発生がないことを示す。また、密着の有無については、金属線31端部が黒丸であれば密着を、白抜き丸であれば密着していないことを示す。
【0030】
液面検知を行なった後に密着性確認をする場合について、図6のフローを参照しながら説明する。制御装置34は、起電力の有無を判断する(ステップS11)。この際、温度差発生装置33は停止の状態となる。
【0031】
起電力が発生していると判断すると(図4の(イ)、ステップS11;Yes)、制御装置34は、金属容器1の内部に液面があるものと判断する(ステップS12)。このときの状態は、金属容器1と金属線31が密着しており、かつ2箇所の密着部の温度差が生じている状態である。つまり、2箇所の密着部の間に液面があることになる。
【0032】
起電力が発生していないと判断すると(ステップS11;No)、制御装置34は、金属線密着有無検知を実施する(ステップS13)。起電力が発生しない場合、2つの状態が考えられる。1つが、液面が存在しないために2つの密着部の温度差が生じない状態(図4の(ロ))、もう1つが、金属線31が金属容器1に密着していない状態(図4の(ハ))。この2つの状態を判別するために制御装置34はステップS14の金属線密着有無検知を実施する。
【0033】
ステップS13では、制御装置34は、温度差発生装置33を用いて図5の接点A2を加熱、又は冷却することにより図5の接点A1、A2に温度差を発生させる。そして、制御装置34は、起電力発生の有無を再度計測する(ステップS14)。
【0034】
起電力が発生していると判断すると(ステップS14;Yes)、制御装置34は、金属容器1の内部に液面がないものと判断する(図5の(ロ)、ステップS15)。このとき、制御装置34は、ステップS11で起電力が発生しない要因として温度差がないことが原因であると断定する。つまり、前述したように、温度差がない場合には、金属容器1の表面と金属線31との2つの密着箇所間に液面がないことを示すため、液面が無い状態であると判断できる。
【0035】
外部から強制的に温度差をつけているにも関わらず、起電力が発生していないと判断すると(ステップS14;No)、制御装置34は、金属容器1と金属線31とが密着していないと判断する(図5の(ハ)、ステップS16)。この状態では、起電力は常に0であることから、液面有無の判断を実施することができない。よって、センサ異常等の異常信号を出力する。
【0036】
本実施の形態においては、液面検知を行なった後に密着性確認を行なう事例について説明しているが、これに限るものではなく、密着性確認を行なった後に液面検知を行なう図7に示した流れでもよい。図7は、液面検知装置3の制御処理の流れの別の一例を示したフローチャートである。
【0037】
また、前記のように液面検知と金属線密着有無検知を一つの流れで行なう必要はなく、下記に記載の検知タイミングを考慮して実施することで無駄な計測がなく効率的に検知を実施することができる。
【0038】
(液面有無検知と金属線密着有無検知のタイミング)
冷凍空調装置は、起動時や負荷変動時に運転が不安定になることがあり、その際、液溜め容器(金属容器1)内の液面が変動する。このとき、温度差有無を判定することで液面有無を検知しても、液面が安定していないため液面を正確に検知できない。よって、液面有無検知は、極力、冷凍空調装置が安定している状態の時に実施する。
【0039】
一方、外部から強制的に温度差を与えて金属線密着有無判定を行なう場合は、冷凍空調装置が不安定な状態でも実施できる。金属線密着有無判定を冷凍空調装置の安定時に実施すると、安定時間が限られているため液面有無検知の回数が減少してしまうことになる。よって、金属線密着有無判定は、極力、安定タイミングからずらして実施する。この際、冷凍空調装置の安定有無は、冷凍空調装置の圧縮機周波数や膨張弁開度から判定するとよい。
【0040】
本実施の形態では、温度差発生装置33がヒーターであり、金属容器1と金属線31との密着部分の一方に設置する場合について記載したが、これに限るものではなく、金属容器1と金属線31の密着部分両方に設置するようにしてもよい。これは、図3に示しているように、熱容量の違いにより、内部がガスの場合は金属容器1の外部表面温度は外部温度に接近し、内部が液の場合には金属容器1の内部温度に接近するためである。このことから、外部温度と内部温度の温度差が大きくなれば、液/ガスの境界部分での温度変化が分かりやすくなるため、液面位置を判別しやすくなるということが分かる。
【0041】
また、金属容器1と金属線31との密着部分の一つ一つに温度差発生装置33を設置してそれぞれを別個独立的に制御するようにしてもよい。こうすれば、液面の有無を短時間で、かつ精度良く計測することも可能になる。これは、個別に温度差発生装置33を設置することで、温度差発生装置33の発停タイミングを任意のタイミングに制御できるためである。具体的には、ヒーターを発停させ、表面温度の変化から液・ガスを判別させたり、ある任意の温度まで上昇する際の時間から判別させたり、することが可能となる。
【0042】
本実施の形態では、温度差発生装置33についてヒーターを用いる構成について記載したが、これに限るものではなく、ファン等で風を当てたり、風があたる場所に金属容器1を設置する等により、金属容器1の表面の熱交換を促進させる構成にしてもよい。
【0043】
本実施の形態では、金属線31を外部に設置し、液面有無を検知する方法について記載したが、これに限るものではなく、金属線31を金属容器1の内部に設置してもよい。これは、金属容器1の内部に金属線31を設置すると、計測箇所への密着を目視では確認することができないためである。前記しているように、外部から計測箇所への密着の有無を確認できれば、誤検知や誤動作を防止することができる。
【0044】
本実施の形態では、金属線31を用いた例について記載したが、これに限るものではなく、金属箔を用いた金属線31を使用してもよい。金属箔とすることで、金属表面との密着が向上する。
【0045】
本実施の形態では、温度差有無検知装置30を一つ使ったものを例として説明したがこれに限るものではなく、複数の温度差有無検知装置30(図8に示すように30A、30B、30C・・・・)を用いて液面検知装置3を構成してもよい。このように複数の場所に温度差有無検知装置30を設置することで、金属容器1内における液面の高さを細かく把握することができる。図8は、本発明の実施の形態に係る液面検知装置3の構成例の一つを示した模式図である。
【0046】
また、複数の温度差有無検知装置30を用いる形態では、温度差を計測する2つの計測箇所のうち片側を、まとめて下部に設置するほうがよい(図8参照)。これは、基準となる温度は極力変動しにくい部分に設置することが液面位置を把握する際に整理しやすいためである。つまり、金属容器1に貯留する液は金属容器1の下部から溜まるため、容器内部がすべてガス状態となる場合を除き、金属容器1の下部温度は内部の液温度に接近するため温度変動しにくいからである。
【0047】
また、複数箇所の温度差有無を計測する方法として、図9に示すように複数の金属線31A、31B、31Cと、計測装置32と、温度差発生装置33と、制御装置34と、接点を変化させるスイッチ35と、で温度差有無検知装置30を構成してもよい。このように、スイッチ35で切り替える構成とすることにより、1つの計測装置32で計測できるというメリットがある。図9は、本発明の実施の形態に係る液面検知装置3の構成例の一つを示した模式図である。
【0048】
さらに、本実施の形態では、構成が分かりやすいように、金属容器1に金属線31を密着させる構成として温度差有無検知装置30について説明したが、これに限るものではなく、たとえば冷凍空調装置の凝縮器や蒸発器のヘッダ部分や圧縮機、配管等に設置して温度差有無を計測する方法としてもよいし、計測した温度差有無の判定を用いて冷凍空調装置の運転制御させてもよい。具体的には、図12に示すように、少なくとも圧縮機8、凝縮器9、膨張弁6、蒸発器7で構成される冷凍空調装置5の凝縮器9の過冷却度や蒸発器7の過熱度の有無を、温度差有無検知装置30で計測するようにしてもよい。すなわち、温度差有無検知装置30を液面検知装置3以外のことにも利用することができるのである。
【0049】
この場合には、外部からセンサー密着部分を加熱してもよいが、意図的に冷凍空調装置5の運転状態を変化させることにより、金属線31を設置した2箇所の温度差を発生させることができる。たとえば、図12に示すように蒸発器7においては、常に蒸発温度となる配管部分A5と、膨張弁6の制御により過熱度がつく蒸発器出口の配管部分A6に金属線31を密着させる。このように設置した上で、膨張弁6の開度を絞るなどして、過熱度が大きくなると予測される運転状態に冷凍空調装置5を制御させることで、意図的に温度差を発生させる。
【0050】
このように、冷凍空調装置5を制御させることで温度差を発生させ、起電力の発生有無を確認することで、外部から強制的に温度差をつけることなく配管表面への金属線31の密着性を確認でき、また簡易的に計測、制御装置を構成することが可能となる。また、上記は温度差発生装置33を付加した場合について記載したが、これに限るものではなく、たとえば金属容器1の表面と金属線31の密着性を確認する場合には、常に温度差発生している部分を基準温度として接点のひとつを設置し、その他の金属線31をスイッチ35により変化させることで、密着性を確認してもよい。
【0051】
図10は、温度差有無検知装置30の構成例の一つを示した模式図である。この図10は、冷凍空調装置を流れる冷媒が、右から左に流れる凝縮器9の概略図を示したものであり、凝縮器9のヘッダー92の表面B1と表面D1、表面C1の温度差有無を計測する際の装置構成を示したものである。表面B1、表面C1、表面D1には、金属線31B、金属線31C、金属線31Dが密着され、表面B1、表面C1、表面D1の反対側の端部には、スイッチ35の接点B2、接点C2、接点D2が接続されており、スイッチ35により接点B2、接点C2、接点D2を選択的に切り替え可能な構成となっている。
【0052】
また、金属配管と金属の密着確認用として、吐出配管91の配管部分A3に金属線31Aを密着させ、配管部分A3の反対端部はスイッチ35の接点A4に接続されており、スイッチ35により接点A4、接点B2を切替可能な構成となっている。
【0053】
計測装置32は、接点F1に接続された金属線と金属配管の密着部分と、接点E1に接続された金属線と金属配管の密着部分に温度差が発生した場合に起電力が発生し、それを計測する構成となる。一般的に、冷凍空調装置が稼働している場合は、凝縮温度に比べて吐出温度が高くなることから、配管部分A3と表面B1、表面C1、表面D1とには温度差が発生する。このことから、金属配管に異なる金属材料で構成される金属線が密着している場合には起電力が発生する。逆に起電力が発生しない場合は、密着していないことになる。
【0054】
密着性が確認された後は、接点E1に接点B2を、接点F1に接点C2、接点D2を順に切り替えることで、表面B1と表面C1、表面D1の温度差有無を計測することができる。このような構成にすることにより、外部から温度差発生装置33を付加し、温度差を発生させなくても、密着性を確認でき、かつ温度差有無も確認できる。
【0055】
また、前記のように複数の計測対象を計測する際に、複数の異なる金属材料で構成される金属線を一つずつ配置させる構成としていたが、これに限るものではなく、図11のように一つのシート上に液面位置を等間隔に計測できるように金属線もしくは、金属箔を配置し、個々の金属線には個別の温度差発生装置33を配置し、これらを1つのシート上にまとめることで、温度差有無検知装置30を構成してもよい。図11は、液面検知装置3の構成例の一つを示した模式図である。
【0056】
このように、計測部分を一つにまとめることで、金属容器1への温度差有無検知装置30の設置が容易になり、時間を短縮できる他に、予め決められたセンサー間隔で接点を配置できることから、液面位置の把握等も容易になる。
【0057】
また、本実施の形態では、電気的に通電している金属表面の温度差を計測する方法について記載しているが、これに限るものではなく、温度差を計測したい物体表面に電気的に通電している金属シールを貼付け、その金属シール表面に、金属シールとは異なる金属材料で構成される金属線を密着させる構成としてもよい。このような構成とすることにより、温度差を計測する被計測対象が電気的に通電していなかったり、金属でない場合にも、本実施の形態で記載した内容と同様に、温度差を計測したり、被計測対象への金属線の密着有無を判断することができる。
【0058】
以上のように、本実施の形態に係る温度差有無検知装置30によれば、計測対象となる金属容器1の表面への金属線31の密着有無を簡易に検知することができるとともに、構成が単純であり、安価に温度差有無を判別できるというメリットがある。また、本実施の形態に係る液面検知装置3によれば、温度差有無検知装置30を利用したものであるので、金属容器1の内部に貯留されている流体の液面も容易に検知することができる。さらに、本実施の形態に係る冷凍空調装置によれば、温度差有無検知装置30を備えることで、レシーバーやアキュムレーターの液面を容易に検知できるだけでなく、凝縮器や蒸発器のヘッダ部分や圧縮機、配管等の温度差有無を容易に計測できる。加えて、本実施の形態に係る冷凍空調装置によれば、温度差有無検知装置30によって計測した温度差有無の判定を運転制御に用いることもできる。つまり、温度差を計測するための手段(たとえば、温度センサー)を省略することができ、その分安価になる。
【符号の説明】
【0059】
1 金属容器、3 液面検知装置、5 冷凍空調装置、6 膨張弁、7 蒸発器、8 圧縮機、9 凝縮器、30 温度差有無検知装置、30A 温度差有無検知装置、30B 温度差有無検知装置、30C 温度差有無検知装置、31 金属線、31A 金属線、31B 金属線、31C 金属線、31D 金属線、32 計測装置、33 温度差発生装置、34 制御装置、34a 計測部、34b 制御部、34c データ処理部、34d 記憶部、34e 入力部、34f 出力部、35 スイッチ、91 吐出配管、92 ヘッダー、A1 接点、A2 接点、A3 配管部分、A4 接点、A5 配管部分、A6 配管部分、B1 表面、B2 接点、C1 表面、C2 接点、D1 表面、D2 接点、E1 接点、E2 接点、F1 接点、F2 接点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に繋がっている第1金属の表面の異なる箇所の温度差を検知する温度差有無検知装置において、
前記第1金属とは異なる第2金属で構成された少なくとも2本の金属線と、
前記第1金属の表面の異なる箇所の間に温度差があるときに発生する起電力を計測する計測装置と、
前記第1金属の検知箇所のうち少なくとも1箇所の温度を変化させ、少なくとも2箇所の前記第1金属の検知箇所表面に強制的に温度差を発生させる温度差発生装置と、
前記温度差発生装置を制御する制御装置と、を備え、
前記各金属線は、
一方の端部が前記計測装置に接続され、他方の端部が前記第1金属の各検知箇所に密着されており、
前記制御装置は、
前記温度差発生装置により前記第1金属の検知箇所表面のうち少なくとも1箇所の温度を変化させ、温度差をつけることによって、前記第1金属と前記各金属線との密着状態を確認した後、少なくとも2箇所の前記第1金属の測定箇所の間で発生する起電力から、少なくとも2箇所の前記第1金属の測定箇所表面の温度差を検知する
ことを特徴とする温度差有無検知装置。
【請求項2】
前記第1金属は、銅または鉄である
ことを特徴とする請求項1に記載の温度差有無検知装置。
【請求項3】
前記第2金属は、コンスタンタンである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の温度差有無検知装置。
【請求項4】
前記温度差発生装置は、ヒーターである
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の温度差有無検知装置。
【請求項5】
複数の測定箇所を加熱するように前記ヒーターを複数設け、
前記制御装置は、
前記ヒーターを測定箇所毎に独立して制御している
ことを特徴とする請求項4に記載の温度差有無検知装置。
【請求項6】
電気的に繋がっている第1金属の表面の異なる箇所の温度差を検知することで前記第1金属で構成された金属容器の内部に貯留されている流体の液面を検知する液面検知装置において、
前記第1金属とは異なる第2金属で構成された少なくとも2本の金属線と、
前記第1金属の表面の異なる箇所の間に温度差があるときに発生する起電力を計測する計測装置と、
前記第1金属の検知箇所のうち少なくとも1箇所の温度を変化させ、少なくとも2箇所の前記第1金属の検知箇所表面に強制的に温度差を発生させる温度差発生装置と、
前記温度差発生装置を制御する制御装置と、を備え、
前記各金属線は、
一方の端部が前記計測装置に接続され、他方の端部が前記第1金属の各検知箇所に密着されており、
前記制御装置は、
前記温度差発生装置により前記金属容器の検知箇所表面のうち少なくとも1箇所の温度を変化させ、温度差をつけることによって、前記金属容器と前記各金属線との密着状態を確認した後、少なくとも2箇所の前記金属容器の測定箇所の間で発生する起電力から、少なくとも2箇所の前記金属容器の測定箇所表面の温度差を検知し、この結果に基づいて前記金属容器の内部に貯留されている流体の液面の有無を検知する
ことを特徴とする液面検知装置。
【請求項7】
前記液面検知装置を複数用いて、前記金属容器内部に貯留されている流体の液面の有無を複数位置で検知する
ことを特徴とする請求項6に記載の液面検知装置。
【請求項8】
前記金属線を3本以上備えたものにおいて、
3本以上の前記金属線の接続を切り替えることができるスイッチを設け、
前記金属線の一方の端部を前記スイッチを介して前記計測装置に接続し、他方の端部を前記第1金属に密着させ、
前記制御装置は、
前記スイッチを制御することにより前記金属線の通電箇所である検知箇所を切り替えられる
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の液面検知装置。
【請求項9】
前記第1金属は、銅または鉄である
ことを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の液面検知装置。
【請求項10】
前記第2金属は、コンスタンタンである
ことを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載の液面検知装置。
【請求項11】
前記温度差発生装置は、ヒーターである
ことを特徴とする請求項6〜10のいずれか一項に記載の液面検知装置。
【請求項12】
複数の測定箇所を加熱するように前記ヒーターを複数設け、
前記制御装置は、
前記ヒーターを測定箇所毎に独立して制御している
ことを特徴とする請求項11に記載の液面検知装置。
【請求項13】
前記金属線を3本以上備えたものにおいて、
前記金属線は、任意の間隔で配置され、まとめられている
ことを特徴とする請求項6〜12のいずれか一項に記載の液面検知装置。
【請求項14】
前記金属線の片方の接点は前記金属容器の下部に設置されている
ことを特徴とする請求項13に記載の液面検知装置。
【請求項15】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の温度差有無検知装置を備え、
前記温度差有無検知装置が検知した温度差を空調運転の制御に利用している
ことを特徴とする冷凍空調装置。
【請求項16】
前記冷凍空調装置の制御により、計測箇所の少なくとも片方の温度を変化させることで温度差を発生させる
ことを特徴とする請求項15に記載の冷凍空調装置。
【請求項17】
計測対象機器が安定している状態の時に前記温度差有無検知装置により温度差有無検知を行い、
計測対象機器が安定していない状態の時に前記温度差発生装置を用いて前記金属線の密着有無検知を行なう
ことを特徴とする請求項15又は16に記載の冷凍空調装置。
【請求項18】
請求項6〜14のいずれか一項に記載の液面検知装置を併せて備えた
ことを特徴とする請求項15〜17のいずれか一項に記載の冷凍空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−32930(P2013−32930A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168245(P2011−168245)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】