説明

温度感応性ポリホスファゼン系高分子、その製造方法、及びそれを用いた注入型温度感応性ポリホスファゼンヒドロゲル

本発明は、温度変化によって水溶液中でゾル−ゲル転移挙動を示す、化学式1で表すポリホスファゼン系高分子、その製造方法、及びそれを用いた注入型温度感応性ポリホスファゼンヒドロゲルに関する。
【化16】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度変化によって水溶液中でゾル−ゲル転移挙動を示す生分解性ポリホスファゼン系高分子、その製造方法、及びそれを用いた注入型温度感応性ポリホスファゼンヒドロゲルに関する。
【背景技術】
【0002】
「ヒドロゲル」とは、水溶液中に存在する高分子から形成された三次元網状構造を示すもので、通常、共有結合による化学的架橋により形成される網状構造と、分子間の物理的相互作用による物理的架橋により形成される網状構造とに区分される。
【0003】
物理的架橋により形成される網状構造は、共有結合のような架橋点により形成されるのでなく、物理的結合区域(physical junction zone)により形成されるという点において、化学的架橋により形成される網状構造と区別される。高分子は、温度、pH、電気などの外部刺激に対して感応性を示すが、特に、温度変化によって急激な相転移現象を示す高分子を「温度感応性高分子」という。温度感応性高分子は、水溶液中で温度変化による相転移挙動を示し、このような相転移は、温度変化によってゾルからゲルに、ゲルからゾルに、可逆的に起こる。特に、中性高分子の場合、物理的網状構造は、通常、疏水性相互作用により形成され、疏水性相互作用は、脂肪族鎖、フッ素鎖、芳香族鎖などの側鎖を有する高分子の水溶液で観察される。
【0004】
物理的架橋により形成されたヒドロゲルは、体に有害な化学的架橋剤を使用しないため、薬物輸送担体用材料として脚光を浴びている。温度変化によってゾル−ゲル転移特性を示す高分子としては、例えば、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシド(PEO−PPO−PEO)共重合体、及びポリエチレンオキシド−ポリ(乳酸−グリコール酸)−ポリエチレンオキシド(PEO−PLGA−PEO)共重合体などがあり、これらを注入型薬物輸送担体用材料として使用するための研究が行われている(Advanced Drug Delivery Reviews, 54, 37(2002), Journal of Controlled Release, 80, 9(2002))。
【0005】
しかし、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)は、細胞毒性を示し、生体内で分解されないという欠点があり、PEO−PPO−PEO共重合体(Poloxamer(登録商標)又はFluronic(登録商標))のうちF127は、約20重量%以上の濃度で温度変化によるゾル−ゲル転移挙動を示すが、これを長期間使用した場合、血漿中のコレステロールとトリグリセリドの濃度を増加させるだけでなく、生体内で分解されない。
【0006】
PEO−PLGA−PEO共重合体(Regel(登録商標))は、生理条件で分解されることが知られており、体温付近の温度でゲルになるため、抗癌剤を局所輸送する輸送担体として研究されている。しかし、この高分子も、約16重量%以上の高い濃度でのみゾル−ゲル転移特性を示すことが報告されている(Journal of Controlled Release, 62, 09(1999))。
【0007】
本発明者らは、先に、ポリジクロロホスファゼンをメトキシポリエチレングリコールとアミノ酸エステルに置換して得られたポリホスファゼン系高分子が、所定温度以下では水に溶解するが、徐々に昇温させた場合、所定温度以上では相転移挙動を示し、水溶液中で徐々に加水分解されることを報告した(Macromolecules 32, 2188 (1999)、Macromolecules 32, 7820(1999)、Macromolecules 35, 3876(2002)、大韓民国特許第259367号、第315630号、及び米国特許第6319984号など)。しかし、これら論文又は特許に開示されたポリホスファゼン系高分子の相転移挙動は、主にゾル−沈殿であり、ゾル−ゲル転移挙動を示す高分子の場合も、生理的条件ではゲル強度が弱いか、又はゲルが収縮する現象が発生して、薬物輸送担体への応用には限界があるので、これを改善する必要があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、このような従来の温度感応性ポリホスファゼン系高分子の物性を改善することにより、生分解性を有し、溶液の温度変化によってゾル−ゲル転移挙動を示し、体温付近の温度で優れたゲル特性を有する、注入型薬物輸送担体用材料としての使用に適したポリホスファゼン系高分子、その製造方法、及びそれを用いた注入型温度感応性・生分解性ヒドロゲルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記化学式1:
【0010】
【化8】

【0011】
(式中、Rは、CH2CH(CH32、CH(CH3)C25又はC77であり、R′は、CH2COOC25又はCH(CH3)COOC25であり、R″は、OC25、NHCH2COOC25、NHCH2COOC77、NHCH(CH2CH(CH32)COOC25又はNHCH(CH(CH3)C25)COOC25であり、
a、b、c、dは、各置換基の含量を示す値であって、a、bは、それぞれ0.1〜1.9であり、c、dは、それぞれ0〜1.9であり、ただし、a+b+c+d=2.0であり、
nは、ポリホスファゼンの重合度であって、10〜10,000の値を有し、
mは、アミノメトキシポリエチレングリコール置換基の繰返し単位数を示し、10〜50の値を有する)
で表されるポリホスファゼン系高分子、その製造方法、及びそれを用いた注入型温度感応性ポリホスファゼンヒドロゲルに関する。
【0012】
本発明は、Macromolecules 32, 2188(1999)、Macromolecules 32, 7820(1999)、Macromolecules 35, 3876(2002)、大韓民国特許第259367号、第315630号、及び米国特許第6319984号などに開示された相転移特性を示すポリホスファゼン系高分子が、薬物輸送担体用材料としての使用に適したゾル−ゲル転移特性を示さないという問題を改善したもので、本発明者らは、ポリホスファゼン系高分子のゲル化温度及びゲル粘度が、アミノ酸エステルの種類とアミノメトキシポリエチレングリコールの分子量、及びこれらそれぞれの含量によって大きく異なることと、このような性質を利用してポリホスファゼン系高分子のゲル特性を調節できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
したがって、本発明のポリホスファゼン系高分子は、前述の文献に提示されたポリホスファゼン系高分子に置換されているものに比べて、分子量の大きいポリエチレングリコールを置換基として有し、高分子の親水性/疏水性バランス、すなわち、ポリホスファゼン系高分子中に存在する親水性置換基と疏水性置換基との比率が体温付近の温度でも優れたゲル特性を有するように調節されたもので、注入型薬物輸送担体用材料としての使用に適した物理的性質を有することを特徴とする。
【0014】
本発明において、前記親水性置換基は、分子量が550以上、好ましくは、分子量が550〜2,500の範囲であるアミノメトキシポリエチレングリコールであり、前記疏水性置換基は、ロイシンエチルエステル、イソロイシンエチルエステル、フェニルアラニンエチルエステル、グリシンエチルエステル、グリシルグリシンベンジルエステル、グリシルグリシンエチルエステル、グリシルロイシンエチルエステル、及びグリシルイソロイシンエチルエステルから構成された群から選択されるアミノ酸のエステルである。一方、エチル−2−(O−グリシル)グリコラート、及びエチル−2−(O−グリシル)ラクタートから構成された群から選択されるデプシペプチドエステルは、分解速度を調節するための置換基である。
【0015】
以下、化学式1で表すポリホスファゼン系高分子の製造方法について説明する。
【0016】
本発明においては、下記化学式2で表すホスファゼン三量体を、文献の方法(Y.S. Sohnら、Macromolecules, 28, 7566(1995))により熱重合して、平均分子量の範囲が103〜105である化学式3のポリジクロロホスファゼン線状重合体を得て、これを出発物質として使用する。
【0017】
【化9】

【0018】
【化10】

【0019】
本発明による化学式1のポリホスファゼン系高分子の製造方法は、
(1) 化学式3で表す化合物を、下記化学式4で表すアミノ酸エチルエステル又はその塩と反応させる工程と、
【0020】
【化11】

【0021】
(2) 前記工程(1)の生成物を、下記化学式5で表すデプシペプチドのエステル又はその塩、あるいは下記化学式6で表すアミノ酸のエステル又はその塩と反応させる工程と、
【0022】
【化12】

【0023】
【化13】

【0024】
(3) 前記工程(2)の生成物を、下記化学式7で表すアミノメトキシポリエチレングリコール又はその塩と反応させて、化学式1で表すポリホスファゼン系高分子を得る工程とを含む。
【0025】
【化14】

【0026】
前記工程(1)〜(3)の全ての反応を経た場合は、化学式1において、c又はdが0でないポリホスファゼン系高分子が得られ、工程(1)の生成物を、工程(2)を経ずにそのまま工程(3)の反応のための出発物質として使用した場合は、化学式1において、cとdがそれぞれ0であるポリホスファゼン系高分子が得られる。
【0027】
下記反応式1は、前述のような本発明によるポリホスファゼン系高分子の製造工程を整理して示すものである。
【0028】
【化15】

【0029】
化学式3〜7及び反応式1において、R、R′、R″、a、b、c、d、n、mは、化学式1の化合物に対して定義したものと同じである。
【0030】
以下、反応式1に表すような本発明によるポリホスファゼン系高分子の製造方法をより詳しく説明する。
【0031】
前記工程(1)は、化学式3の化合物と、化学式3の化合物1当量を基準に化学式4で表すアミノ酸エチルエステル又はその塩0.1〜1.9当量とを、4当量のトリエチルアミンの存在下で反応させる方法で行うことができる。化学式4で表すアミノ酸エチルエステルの塩は、塩化水素塩であることが好ましい。反応溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロホルム又はトルエンなどを使用することができ、−60〜50℃で約12〜72時間反応させる。
【0032】
前記工程(2)は、前記工程(1)の生成物と、化学式5で表すデプシペプチドのエステル又はその塩、あるいは化学式6で表すアミノ酸のエステル、ジペプチドエステル、又はその塩0〜1.9当量とを、0〜4当量のトリエチルアミンの存在下で反応させる方法で行うことができる。化学式5又は化学式6で表す化合物の塩は、シュウ酸塩又は塩化水素塩であることが好ましい。反応溶媒としては、アセトニトリルを使用することができるが、これに限定されるものでなく、反応温度は、0〜45℃であることが好ましく、反応時間は、約12〜72時間である。
【0033】
前記工程(3)で反応物として使用される化学式7のアミノメトキシポリエチレングリコールは、次のような方法で製造することができる。
【0034】
まず、乾燥したメトキシポリエチレングリコール1当量を、1当量の4−トルエンスルホニルクロライドと2当量のトリエチルアミン存在下で、クロロホルムを溶媒として使用して12時間反応させた後、2当量のアジ化ナトリウムをさらに添加して、ジメチルホルムアミド又はアセトニトリル溶媒下で70〜80℃で12〜24時間反応させて、メトキシポリエチレングリコールアジドを得る。次に、メトキシポリエチレングリコールアジドを、2当量のトリフェニルホスフィンと10当量の水を使用して、アミノメトキシポリエチレングリコールに転換させる。このような方法で得られたアミノメトキシポリエチレングリコール200gにベンゼン200mlを入れ、70〜80℃で蒸留して過量の水を除去し、80〜90℃の油浴に入れて真空状態で3日間乾燥させた後、3Åの分子篩を十分に入れて乾燥した窒素を充填した後、注射器で必要量だけ取って前記工程(3)の反応に使用する。
【0035】
前記工程(3)では、前記工程(2)の生成物を、残存する塩素原子を基準に、化学式6で表すアミノメトキシポリエチレングリコール2当量と、4当量のトリエチルアミンの存在下で反応させて、前記工程(2)の生成物中に残存する塩素原子を全てアミノメトキシグリコールに置換する。ここで、反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クロロホルム又はトルエンを使用することが好ましいが、これに限定されるものでなく、反応温度は40〜50℃であり、反応時間は約48〜72時間である。
【0036】
前記工程(1)〜(3)において、各工程の生成物を精製せずにそのまま次の工程の反応に使用することができ、次のような方法で、前記工程(3)の反応混合物から純粋な目的生成物を回収することができる。
【0037】
まず、反応混合物を遠心分離又は濾過して、反応混合物から沈殿物(例えば、トリエチルアンモニウムクロリド、シュウ酸トリエチルアンモニウム塩など)を除去し、少量の溶媒が残るまで濾液を減圧濃縮する。次に、濃縮液をTHFに溶解し、過剰量のヘキサンを加えて生成物の沈殿を誘導し、これを濾過する過程を2〜3回繰り返して、未反応のアミノメトキシポリエチレングリコール、アミノ酸エステル、及びデプシペプチドを除去する。さらに、このような過程により得られた固体を少量のメタノールに溶解し、メタノールと蒸溜水で順次透析した後に低温乾燥して、純粋な化学式1の化合物を得る。
【0038】
また、本発明は、化学式1のポリホスファゼン系高分子を含有し、温度変化によって明確なゾル−ゲル転移特性を示す、注入型薬物輸送担体用温度感応性ヒドロゲルに関する。本発明において、前記ヒドロゲルは、化学式1のポリホスファゼン系高分子が、緩衝溶液、酸性溶液、塩基性溶液、塩溶液、又は水に、2〜30重量%の濃度で、好ましくは、7〜15重量%の濃度で溶解しているものである。
【発明の効果】
【0039】
本発明により、低い温度では溶液状態で存在するが体温付近ではゲルに変わる温度感応性ヒドロゲル特性を有し、注入型薬物輸送担体としての使用に適した、ポリホスファゼン系高分子、その製造方法、及びそれを用いた注入型温度感応性ヒドロゲルが提供された。
【0040】
本発明によるポリホスファゼン系高分子は、水溶液中で温度感応性と生分解性を同時に有するだけでなく、ゲル化温度、ゲル強度、分解速度、薬物放出挙動などにおいて注入型薬物輸送担体としての使用に適した特性を有する。
【0041】
したがって、本発明の高分子は、注入型薬物輸送担体用材料をはじめとする組織工学に関連する多様な産業分野での応用が期待される。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を挙げて、本発明をより詳しく説明する。しかし、実施例は、本発明を例示するためのもので、本発明の範囲がこれに限定されるのではない。
【0043】
以下の実施例において、生成物に対する炭素、水素、窒素元素の分析は、韓国科学技術研究院の特性分析センタのPerkin-Elmer C、H、N分析計により行われた。一方、水素及びリン核磁気共鳴スペクトルは、Varian Gemini-300により、ガラス転移温度(T)は、Du Pont 1090示差熱分析計により、平均分子量(Mw)は、Waters 1515ポンプ及び2410微分屈折計のゲル透過クロマトグラフィーにより、それぞれ測定した。
【0044】
高分子の粘度は、粘度を測定しようとする高分子を、pH7.4のPBS水溶液に10重量%の濃度で溶解し、これを自動温度調節浴(TC-501)が装着された粘度計(Brookfield DV-III+ Rheometer)のチャンバに入れた後、剪断速度を0.1〜1.7にして1分当り0.04℃昇温させながら測定した。
【0045】
実施例1
ポリ[ポリ(アミノメトキシエチレングリコール550)(イソロイシンエチルエステル)(エチル−2−(O−グリシル)ラクタート)ホスファゼン]、[NP(AMPEG550)0.77(IleOEt)1.19(GlyLacOEt)0.04]の製造
【0046】
ポリ(ジクロロホスファゼン)(2.00g、17.26mmol)をテトラヒドロフランに溶解した後、ドライアイス−アセトン浴に入れ、トリエチルアミン(8.38g、82.84mmol)とイソロイシンエチルエステル塩化水素塩(4.05g、20.71mmol)を順次加えた後、常温で48時間反応させた。
【0047】
前記反応溶液に、エチル−2−(O−グリシル)ラクタートアンモニウムシュウ酸塩(0.19g、0.86mmol)とトリエチルアミン(0.35g、3.45mmol)をアセトニトリル(50ml)に溶解した溶液を加えた後、氷浴で19時間反応させた。
【0048】
次に、分子量550のアミノメトキシポリエチレングリコール(14.24g、25.89mmol)とトリエチルアミン(5.24g、51.78mmol)を加え、50℃で48時間反応させた。
【0049】
反応溶液を遠心分離又は濾過して生成された過量の沈殿物(Et3N・HCl)を除去し、少量の溶媒が残るまで濾液を減圧濃縮した。この濃縮液をテトラヒドロフランに溶解し、過剰量のヘキサンを加えて沈殿を生成し、濾過するというプロセスを、2〜3回繰り返した後、さらに、このようなプロセスにより得られた固体を少量のメタノールに溶解し、メタノールで5日間、引き続き蒸溜水で5日間透析した後に低温乾燥して、最終生成物[NP(AMPEG550)0.77(IleOEt)1.19(GlyLacOEt)0.04]6.9g(収率60%)を得た。
組成式: C38H76N4O17P
元素分析値: C, 50.12; H, 8.71; N, 6.50
理論値: C, 49.90; H, 8.60; N, 6.43
水素核磁気共鳴スペクトル(CDCl3, ppm):
δ 0.8-1.0 (b, 6H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 1.1-1.3 (b, 3H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3, -NHCH2COOCH(CH3)COOCH2CH3),
δ 1.4-1.6 (b, 2H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3, -NHCH2COOCH(CH3)COOCH2CH3),
δ 1.6-1.9 (b, 1H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 2.9-3.2 (b, 2H, -NHCH2CH2O(CH2CH2O)10CH3),
δ 3.4 (s, 3H,-NHCH2CH2O(CH2CH2O)16CH3),
δ 3.5-3.9 (b, 95H, -NHCH2CH2O(CH2CH2O)10CH3, -NHCH2COOCH(CH3)COOCH2CH3,
-NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 4.0-4.4 (b, 4H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3, -NHCH2COOCH(CH3)COOCH2CH3),
δ 5.0-5.1 (b, 1H, -NHCH2COOCH(CH3)COOCH2CH3)
リン核磁気共鳴スペクトル(CDCl3,ppm): δ17.9
平均分子量(Mw): 21000
最高粘度(Vmax): 16.8 Pa・s
最高ゲル温度(Tmax): 41℃
【0050】
実施例2
ポリ[(アミノメトキシポリエチレングリコール550)(イソロイシンエチルエステル)(グリシルグリシンエチルエステル)ホスファゼン]、[NP(AMPEG550)0.70(IleOEt)1.20(GlyGlyOEt)0.10]の製造
第1工程では、ポリ(ジクロロホスファゼン)(2.00g、17.26mmol)、トリエチルアミン(4.19g、41.42mmol)及びイソロイシンエチルエステル塩化水素塩(4.05g、20.71mmol)を、第2工程では、グリシルグリシンエチルエステル塩化水素塩(0.34g、1.73mmol)及びトリエチルアミン(0.70g、6.92mmol)を、第3工程では、分子量550のアミノメトキシポリエチレングリコール(13.29g、24.16mmol)及びトリエチルアミン(4.89g、48.32mmol)をそれぞれ使用して、実施例1と同様の方法で反応させて、最終生成物[NP(AMPEG550)0.70(IleOEt)1.20(GlyGlyOEt)0.10]8.2g(収率70%)を得た。
組成式: C37H75N4O16P
元素分析値: C, 50.01; H, 8.59; N, 6.90
理論値: C, 49.80; H, 8.56; N, 6.84
水素核磁気共鳴スペクトル(CDCl3, ppm):
δ 0.8-1.0 (b, 6H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 1.1-1.3 (b, 6H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3, -NHCH2CONHCH2COOCH2CH3),
δ 1.4-1.6 (b, 2H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 1.6-1.9 (b, 1H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 2.9-3.2 (b, 2H, -NHCH2CH2O(CH2CH2O)10CH3),
δ 3.4 (s, 3H,-NHCH2CH2O(CH2CH2O)10CH3),
δ 3.5-3.9 (b, 95H, -NHCH2CH2O(CH2CH2O)10CH3, -NHCH2CONHCH2COOCH2CH3,
-NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3)
δ 4.0-4.4 (b, 4H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3, -NHCH2CONHCH2COOCH2CH3,
-NHCH2CONHCH2COOCH2CH3),
リン核磁気共鳴スペクトル(CDCl3, ppm): δ18.1
平均分子量(Mw): 41000
最高ゲル粘度(Vmax): 550.0Pa・s
最高ゲル温度(Tmax): 39℃
【0051】
実施例3
ポリ[(アミノメトキシポリエチレングリコール550)(イソロイシンエチルエステル)ホスファゼン]、[NP(AMPEG550)0.80(IleOEt)1.20]の製造
ポリ(ジクロロホスファゼン)(2.00g、17.26mmol)をテトラヒドロフランに溶解した後、ドライアイス−アセトン浴に入れ、ここにイソロイシンエチルエステル塩化水素塩(4.05g、20.71mmol)とトリエチルアミン(8.38g、82.84mmol)を順次加えた後、常温で48時間反応させた。次に、分子量550のアミノメトキシポリエチレングリコール(15.19g、27.62mmol)及びトリエチルアミン(5.59g、55.24mmol)を加え、50℃で48時間反応させた。
生成物を実施例1と同様の方法で反応溶液から回収して、最終生成物[NP(AMPEG550)0.80(IleOEt)1.20]7.2g(収率62%)を得た。
組成式: C31H64N3O13P
元素分析値: C, 50.23; H, 8.70; N, 6.51
理論値: C, 49.95; H, 8.62; N, 6.24
水素核磁気共鳴スペクトル(CDCl3, ppm): δ 0.8-1.0 (b, 6H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 1.1-1.3 (b, 3H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 1.4-1.6 (b, 2H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 1.6-1.9 (b, 1H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 2.9-3.2 (b, 2H, -NHCH2CH2O(CH2CH2O)10CH3),
δ 3.4 (s, 3H,-NHCH2CH2O(CH2CH2O)16CH3),
δ 3.5-3.9 (b, 95H, -NHCH2CH2O(CH2CH2O)10CH3, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 4.0-4.4 (b, 4H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3)
リン核磁気共鳴スペクトル(CDCl3, ppm): δ19.1
平均分子量(Mw): 39000
最高粘度(Vmax): 535.0Pa・s
最高ゲル温度(Tmax): 38℃
【0052】
実施例4
ポリ[(アミノメトキシポリエチレングリコール750)(イソロイシンエチルエステル)ホスファゼン]、[NP(AMPEG750)0.65(IleOEt)1.35]の製造
実施例3と同様の方法で、ポリ(ジクロロホスファゼン)(2.00g、17.26mmol)とイソロイシンエチルエステル塩化水素塩(4.73g、24.16mmol)を、トリエチルアミン(9.78g、96.64mmol)の存在下で反応させた後、分子量750のアミノメトキシポリエチレングリコール(15.53g、20.71mmol)と、トリエチルアミン(4.19g、41.42mmol)の存在下で反応させて、最終生成物[NP(AMPEG750)0.65(IleOEt)1.35]9.0g(収率70%)を得た。
組成式: C41H84N3O18P
元素分析値: C, 51.32; H, 8.96; N, 5.21
理論値: C, 52.01; H, 8.91; N, 5.64
水素核磁気共鳴スペクトル(CDCl3, ppm):
δ 0.8-1.0 (b, 6H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 1.1-1.3 (b, 3H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 1.4-1.6 (b, 2H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 1.6-1.9 (b, 1H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 2.9-3.2 (b, 2H, -NHCH2CH2O(CH2CH2O)16CH3),
δ 3.4 (s, 3H,-NHCH2CH2O(CH2CH2O)16CH3),
δ 3.5-3.9 (b, 95H, -NHCH2CH2O(CH2CH2O)16CH3, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 4.0-4.4 (b, 4H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3)
リン核磁気共鳴スペクトル(CDCl3, ppm): δ17.9
平均分子量(Mw): 22000
最高ゲル粘度(Vmax): 680.0Pa・s
最高ゲル温度(Tmax): 47℃
【0053】
実施例5
ポリ[(アミノメトキシポリエチレングリコール750)(イソロイシンエチルエステル)(グリシンエチルエステル)ホスファゼン]、[NP(AMPEG750)0.46(IleOEt)1.36(GlyOEt)0.18]の製造
第1工程では、ポリ(ジクロロホスファゼン)(2.00g、17.26mmol)、トリエチルアミン(9.78g、96.64mmol)及びイソロイシンエチルエステル塩化水素塩(4.73g、24.16mmol)を、第2工程では、トリエチルアミン(1.40g、13.80mmol)及びグリシンエチルエステル塩化水素塩(0.48g、3.45mmol)を、第3工程では、分子量750のアミノメトキシポリエチレングリコール(12.95g、17.26mmol)及びトリエチルアミン(3.49g、34.52mmol)をそれぞれ使用して、実施例1と同様の方法で反応させて、最終生成物[NP(AMPEG750)0.46(IleOEt)1.36(GlyOEt)0.18]8.2g(収率76%)を得た。
組成式: C45H92N4O20P
元素分析値: C, 52.01; H, 8.91; N, 6.86
理論値: C, 51.66; H, 8.82; N, 6.75
水素核磁気共鳴スペクトル(CDCl3, ppm): δ 0.8-1.0 (b, 6H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 1.1-1.3 (b, 3H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3, -NHCH2COOCH2CH3),
δ 1.4-1.6 (b, 2H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 1.6-1.9 (b, 1H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 2.9-3.2 (b, 2H, -NHCH2CH2O(CH2CH2O)16CH3),
δ 3.4 (s, 3H,-NHCH2CH2O(CH2CH2O)16CH3),
δ 3.5-3.9 (b, 95H, -NHCH2CH2O(CH2CH2O)16CH3, -NHCH2COOCH2CH3,
-NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 4.0-4.4 (b, 4H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3, -NHCH2COOCH2CH3)
リン核磁気共鳴スペクトル(CDCl3, ppm): δ17.9
平均分子量(Mw): 24000
最高ゲル粘度(Vmax): 1021.2Pa・s
最高ゲル温度(Tmax): 48℃
【0054】
実施例6
ポリ[(アミノメトキシポリエチレングリコール750)(イソロイシンエチルエステル)(エチル−2−(O−グリシル)グリコラート)ホスファゼン]、[NP(AMPEG750)0.64(IleOEt)1.23(GlyGlycOEt)0.13]の製造
第1工程では、ポリ(ジクロロホスファゼン)(2.00g、17.26mmol)、トリエチルアミン(9.10g、82.84mmol)及びイソロイシンエチルエステル塩化水素塩(4.39g、22.44mmol)を、第2工程では、トリエチルアミン(0.35g、3.45mmol)及びエチル−2−(O−グリシル)グリコラートアンモニウムシュウ酸塩(0.19g、0.86mmol)を、第3工程では、分子量750のアミノメトキシポリエチレングリコール(18.12g、24.16mmol)及びトリエチルアミン(4.89g、48.32mmol)をそれぞれ使用して、実施例1と同様の方法で反応させて、最終生成物[NP(AMPEG750)0.64(IleOEt)1.23(GlyGlycOEt)0.13]7.4g(収率62%)を得た。
組成式: C47H94N4O22P
元素分析値: C, 51.00; H, 8.52; N, 6.90
理論値: C, 50.34; H, 8.44; N, 6.77
水素核磁気共鳴スペクトル(CDCl3, ppm): δ 0.8-1.0 (b, 6H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 1.1-1.3 (b, 3H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3, -NHCH2COOCH2COOCH2CH3),
δ 1.4-1.6 (b, 2H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 1.6-1.9 (b, 1H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 2.9-3.2 (b, 2H, -NHCH2CH2O(CH2CH2O)15CH3),
δ 3.4 (s, 3H,-NHCH2CH2O(CH2CH2O)15CH3),
δ 3.5-3.9 (b, 95H, -NHCH2CH2O(CH2CH2O)15CH3, -NHCH2COOCH2COOCH2CH3, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 4.0-4.4 (b, 4H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3, -NHCH2COOCH2COOCH2CH3),
δ 4.5-4.7 (b, 2H, -NHCH2COOCH2COOCH2CH3),
リン核磁気共鳴スペクトル(CDCl3, ppm): δ19.1 平均分子量(Mw): 10000
最高ゲル粘度(Vmax): 670.0Pa・s
最高ゲル温度(Tmax): 53℃
【0055】
実施例7
ポリ[(アミノメトキシポリエチレングリコール1100)(イソロイシンエチルエステル)ホスファゼン]、[NP(AMPEG1100)0.84(IleOEt)1.16]の製造
実施例3と同様の方法で、ポリ(ジクロロホスファゼン)(2.00g、17.26mmol)とイソロイシンエチルエステル塩化水素塩(4.05g、20.71mmol)をトリエチルアミン(4.19g、41.42mmol)の存在下で反応させた後、分子量1,100のアミノメトキシポリエチレングリコール(30.38g、27.62mmol)と、トリエチルアミン(5.59g、55.24mmol)の存在下で反応させて、最終生成物[NP(AMPEG1100)0.84(IleOEt)1.16]8.3g(収率50%)を得た。
組成式: C57H116N3O26P
元素分析値: C, 52.21; H, 9.01; N, 4.30
理論値: C, 52.44; H, 8.94; N, 4.10
水素核磁気共鳴スペクトル(CDCl3, ppm): δ 0.8-1.0 (b, 6H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 1.1-1.3 (b, 3H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 1.4-1.6 (b, 2H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 1.6-1.9 (b, 1H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 2.9-3.2 (b, 2H, -NHCH2CH2O(CH2CH2O)23CH3),
δ 3.4 (s, 3H,-NHCH2CH2O(CH2CH2O)23CH3),
δ 3.5-3.9 (b, 95H, -NHCH2CH2O(CH2CH2O)23CH3, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 4.0-4.4 (b, 4H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3)
リン核磁気共鳴スペクトル(CDCl3, ppm): δ18.07
平均分子量(Mw): 39000
【0056】
実施例8
ポリ[(アミノメトキシポリエチレングリコール550)(イソロイシンエチルエステル)(グリシルグリシンベンジルエステル)ホスファゼン]、[NP(AMPEG550)0.72(IleOEt)1.19(GlyGlyOBz)0.09]の製造
第1工程では、ポリ(ジクロロホスファゼン)(2.00g、17.26mmol)、トリエチルアミン(4.19g、41.42mmol)及びイソロイシンエチルエステル塩化水素塩(4.05g、20.71mmol)を、第2工程では、グリシルグリシンベンジルエステル塩化水素塩(0.44g、1.72mmol)及びトリエチルアミン(0.70g、6.88mmol)を、第3工程では、分子量550のアミノメトキシポリエチレングリコール(13.29g、24.16mmol)及びトリエチルアミン(4.89g、48.32mmol)をそれぞれ使用して、実施例1と同様の方法で反応させて、最終生成物[NP(AMPEG550)0.72(IleOEt)1.19(GlyGlyOBz)0.09]7.8g(収率70%)を得た。
組成式: C42H77N4O16P
元素分析値: C, 51.01; H, 8.61; N, 6.79
理論値: C, 50.20; H, 8.52; N, 6.68
水素核磁気共鳴スペクトル(CDCl3, ppm):
δ 0.8-1.0 (b, 6H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 1.1-1.3 (b, 3H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 1.4-1.6 (b, 2H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 1.6-1.9 (b, 1H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 2.9-3.2 (b, 2H, -NHCH2CH2O(CH2CH2O)10CH3),
δ 3.4 (s, 3H,-NHCH2CH2O(CH2CH2O)10CH3),
δ 3.5-3.9 (b, 95H, -NHCH2CH2O(CH2CH2O)10CH3, -NHCH2CONHCH2COOCH2C6H5, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3),
δ 4.0-4.4 (b, 4H, -NHCH(CH2CH(CH3)2COOCH2CH3, -NHCH2CONHCH2COOCH2C6H5),
δ 5.3-5.4 (b, 2H, -NHCH2CONHCH2COOCH2C6H5),
δ 7.0-7.3 (b, 5H, -NHCH2CONHCH2COOCH2C6H5),
リン核磁気共鳴スペクトル(CDCl3, ppm): δ17.9
平均分子量(Mw): 47000
最高ゲル粘度(Vmax): 309Pa・s
最高ゲル温度(Tmax): 29℃
【0057】
実施例9
ポリ[(アミノメトキシポリエチレングリコール750)(フェニルアラニンエチルエステル)ホスファゼン]、[NP(AMPEG750)0.73(PheOEt)1.27]の製造
実施例3と同様の方法で、ポリ(ジクロロホスファゼン)(2.00g、17.26mmol)を、フェニルアラニンエチルエステル塩化水素塩(5.15g、22.44mmol)と、トリエチルアミン(9.08g、89.76mmol)の存在下で反応させた後、分子量750のアミノメトキシポリエチレングリコール(18.12g、24.16mmol)と、トリエチルアミン(4.89g、48.33mmol)の存在下で反応させて、最終生成物[NP(AMPEG750)0.73(PheOEt)1.27]9.4g(収率65%)を得た。
組成式: C44H82N3O18P
元素分析値: C, 55.00; H, 8.24; N, 5.31
理論値: C, 54.74; H, 8.14; N, 5.03
水素核磁気共鳴スペクトル(CDCl3, ppm): δ 0.8-1.05 (b, 3H, -NHCH(CH2C6H5)COOCH2CH3,),
δ 2.9-3.2 (b, 4H, -NHCH(CH2C6H5)COOCH2CH3), -NHCH2CH2O(CH2CH2O)15CH3),
δ 3.4 (s, 3H,-NHCH2CH2O(CH2CH2O)15CH3),
δ 3.5-3.9 (b, 95H, -NHCH2CH2O(CH2CH2O)15CH3, -NHCH(CH2C6H5)COOCH2CH3),
δ 4.0-4.4 (b, 2H, -NHCH(CH2C6H5)COOCH2CH3),
δ 7.0-7.3 (b, 5H, -NHCH(CH2C6H5)COOCH2CH3),
リン核磁気共鳴スペクトル(CDCl3, ppm): δ17.6
平均分子量(Mw): 255000
【0058】
実施例10
ポリ[(アミノメトキシポリエチレングリコール550)(ロイシンエチルエステル)ホスファゼン]、[NP(AMPEG550)0.69(LeuOEt)1.31]の製造
実施例3と同様の方法で、ポリ(ジクロロホスファゼン)(2.00g、17.26mmol)を、ロイシンエチルエステル塩化水素塩(4.56g、23.30mmol)と、トリエチルアミン(9.43g、93.20mmol)の存在下で反応させた後、分子量550のアミノメトキシポリエチレングリコール(12.34g、22.44mmol)と、トリエチルアミン(4.54g、44.88mmol)の存在下で反応させて、最終生成物[NP(AMPEG550)0.69(LeuOEt)1.31]8.2g(収率75%)を得た。
組成式: C31H64N3O13P
元素分析値: C, 50.45; H, 8.79; N, 6.91
理論値: C, 50.21; H, 8.65; N, 6.67
水素核磁気共鳴スペクトル(CDCl3, ppm): δ 0.8-1.0 (s, 6H, -NHCH(CH2CH(CH3)2)COOCH2CH3),
δ 1.1-1.3 (s, 6H, -NHCH(CH2CH(CH3)2)COOCH2CH3),
δ 1.4-1.6 (b, 2H, -NHCH(CH2CH(CH3)2)COOCH2CH3),
δ 1.6-1.9 (b, 1H, -NHCH(CH2CH(CH3)2)COOCH2CH3),
δ 2.9-3.2 (b, 2H, -NHCH2CH2O(CH2CH2O)10CH3),
δ 3.4 (s, 3H, -NHCH2CH2O(CH2CH2O)10CH3),
δ 3.5-3.9 (b, 29H, -NHCH2CH2O(CH2CH2O)10CH3, -NHCH(CH2CH(CH3)2)COOCH2CH3),
δ 4.0-4.4 (b, 4H, -NHCH(CH2CH(CH3)2)COOCH2CH3),
リン核磁気共鳴スペクトル(CDCl3, ppm): δ17.9
平均分子量(Mw): 143000
最高ゲル粘度(Vmax): 6.2Pa・s
最高ゲル温度(Tmax): 44℃
【0059】
実施例11: ポリホスファゼンのゾル−ゲル変化の観察
本発明の実施例によるポリホスファゼン系高分子及びMacromolecules 35, 3876(2002)に開示されたポリホスファゼン系高分子を、pH7.4のPBS溶液にそれぞれ10重量%の濃度に溶解し、これらの温度変化によるゾル−ゲル転移挙動を観察した。
図1は、本発明のポリホスファゼン系高分子の温度変化によるゾル−ゲル転移挙動を示す写真である。低い温度(4℃)では流動性の溶液状態であり、体温付近(37℃)ではゲル状態に転移することを示す。
表1は、Macromolecules 35, 3876(2002)に開示されたポリホスファゼン系高分子(高分子1、2)及び本発明の実施例1〜4で製造されたポリホスファゼン系高分子の、温度変化によるゲル特性の実験結果を示すものである。
【0060】
【表1】

【0061】
表1において、「開始ゲル温度」とは、高分子水溶液(10重量%、pH7.4のPBS溶液)の粘度が大きく増加し始める温度をいい、「最高ゲル温度」とは、高分子水溶液(10重量%、pH7.4のPBS溶液)の粘度が最高点に到達する温度をいい、「最高ゲル強度」とは、高分子水溶液(10重量%、pH7.4のPBS溶液)の粘度が最高点に到達したときの粘度をいう。
【0062】
図2は、表1に示す高分子1、2のポリホスファゼン系高分子、及び本発明の実施例1〜3で製造されたポリホスファゼン系高分子の、温度変化による粘度変化を示す図である。
【0063】
表1及び図2から分かるように、高分子1の場合、最高ゲル温度は29℃であり、温度が37℃に到達する前にゲルが収縮し、高分子2の場合、最高ゲル温度は52℃であるがゲル強度が非常に弱い。したがって、高分子1、2は、薬物輸送担体としての使用に適していないことが分かる。
【0064】
それに対して、本発明の実施例1〜4で製造されたポリホスファゼン系高分子は、37℃近くで透明なゲル特性を維持するだけでなく、薬物輸送担体としての使用に十分な程度のゲル強度を有することが確認された。
【0065】
実施例12: ポリホスファゼンゲル高分子の薬物放出挙動試験
表1に示す高分子1のポリホスファゼン系高分子、及び本発明の実施例2〜4で製造されたポリホスファゼン系高分子の薬物放出挙動実験を、次のとおりに実施した。
【0066】
ポリホスファゼン系高分子の生体外(in vitro)放出挙動実験のために、モデル薬物として、FITC−デキストラン(FITC-dextran、Mw 71, 600)を使用した。まず、実験対象高分子を4℃でpH7.4のPBS水溶液に10重量%の濃度で溶解し、前記モデル薬物を0.1重量%の濃度で入れた後、低温で攪拌して均一な溶液を得た。この溶液0.5mlを37℃に維持された容器に入れると直ちにゲルとなった。これに、図3に示すように、pH7.4のPBS水溶液2.5mlをさらに加えた後、薬物放出実験をした。
【0067】
所定時間間隔で溶液から試料を採取して蛍光値(fluorescence intensity)を測定することにより、放出された薬物の量を計算した。その結果を図4に示す。図4から分かるように、大部分のゲルにおいて薬物が15日以上徐々に放出される結果が得られた。
【0068】
高分子1の場合、特徴的に、本発明の高分子に比べて非常に多い量である70%以上の薬物が、最初の日に放出された。このように薬物の初期放出量が多いのは、高分子1からなるゲルが、37℃のpH7.4のPBS水溶液中で収縮するためであるということができる。
【0069】
それに対して、本発明の実施例2〜4で製造された高分子の場合は、薬物の初期放出量が少なく(40%以内)、薬物が15日以上の期間に徐々に放出されることが分かる。これは、本発明のポリホスファゼン系高分子の場合、37℃でもゲルが収縮しないだけでなく、ゲル強度も維持されるためであるということができる。
【0070】
一方、実施例2、3の高分子が実施例4の高分子に比べて初期薬物放出量が少ないが、これは、実施例2、3の高分子の場合、最高ゲル温度が37℃付近であるのに対して、実施例4の高分子の場合、最高ゲル温度が47℃であるため現れる現象であるということができる。すなわち、実施例4の高分子が、実施例2、3の高分子に比べて親水性が大きいため水に溶解しやすく、これにより、薬物がより早く放出されると推測される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施例4によるポリホスファゼンのゾル−ゲル転移挙動を示す写真である。
【図2】高分子(10重量%、pH7.4のPBS溶液)の温度変化による粘度変化を示す図である。
【図3】ポリホスファゼン系高分子ヒドロゲルのモデル薬物(FITC-Dextran)放出実験模型を示す図である。
【図4】ポリホスファゼン系高分子ヒドロゲルのモデル薬物(FITC-Dextran)放出実験結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1:
【化1】


(式中、Rは、CH2CH(CH32、CH(CH3)C25又はC77であり、R′は、CH2COOC25又はCH(CH3)COOC25であり、R″は、OC25、NHCH2COOC25、NHCH2COOC77、NHCH(CH2CH(CH32)COOC25又はNHCH(CH(CH3)C25)COOC25であり、
a、bは、それぞれ0.1〜1.9であり、c、dは、それぞれ0〜1.9であり、ただし、a+b+c+d=2.0であり、
nは、10〜10,000の整数であり、mは、10〜50の整数である)で表されるポリホスファゼン系高分子。
【請求項2】
(1) 化学式3:
【化2】


で表されるポリジクロロホスファゼンを、化学式4:
【化3】


で表されるアミノ酸エチルエステルと、1:0.1〜1.9のモル比で反応させる工程と、
(2) 前記工程(1)の生成物を、化学式5:
【化4】


又は化学式6:
【化5】


で表される化合物0〜1.9当量と反応させる工程と、
(3) 前記工程(2)の生成物を、残存する塩素原子を基準に、化学式7で表すアミノメトキシポリエチレングリコール2当量と反応させる工程と、
を含む、下記化学式1:
【化6】


(式中、Rは、CH2CH(CH32、CH(CH3)C25又はC77であり、R′は、CH2COOC25又はCH(CH3)COOC25であり、R″は、OC25、NHCH2COOC25、NHCH2COOC77、NHCH(CH2CH(CH32)COOC25又はNHCH(CH(CH3)C25)COOC25であり、
a、bは、それぞれ0.1〜1.9であり、c、dは、それぞれ0〜1.9であり、ただし、a+b+c+d=2.0であり、
nは、10〜10,000の整数であり、mは、10〜50の整数である)で表されるポリホスファゼン系高分子の製造方法。
【化7】

【請求項3】
前記各工程の反応混合物から生成物を、精製せずに次の工程の反応に使用する、請求項2に記載のポリホスファゼン系高分子の製造方法。
【請求項4】
前記工程(1)及び(3)の反応において、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、及びトルエンからなる群より選択される溶媒を、前記工程(2)の反応においてアセトニトリルを、それぞれ反応溶媒として使用する、請求項2又は3に記載のポリホスファゼン系高分子の製造方法。
【請求項5】
前記アミノメトキシポリエチレングリコールの分子量が、550〜2,500である、請求項2又は3に記載のポリホスファゼン系高分子の製造方法。
【請求項6】
前記工程(3)の反応が完了した後、反応混合物にエチルエーテル又はヘキサンを加えて沈殿を生成し、これを濾過して得られた固体をメタノールに溶解し、メタノールと蒸溜水でそれぞれ3〜10日間透析した後に低温乾燥して、純粋な化学式1の化合物を回収する工程をさらに含む、請求項2又は3に記載のポリホスファゼン系高分子の製造方法。
【請求項7】
化学式4のアミノ酸エチルエステル化合物を、塩化水素塩の形で使用する、請求項2に記載のポリホスファゼン系高分子の製造方法。
【請求項8】
化学式6又は7の化合物を、シュウ酸塩又は塩化水素塩の形で使用する、請求項2に記載のポリホスファゼン系高分子の製造方法。
【請求項9】
トリエチルアミンの存在下で反応を行う、請求項7又は8に記載のポリホスファゼン系高分子の製造方法。
【請求項10】
請求項1によるポリホスファゼン系高分子が、緩衝溶液、酸性溶液、塩基性溶液、塩溶液、又は水に2〜30重量%の濃度で溶解している、温度変化によってゾル−ゲル転移特性を示す注入型薬物輸送担体用の温度感応性ヒドロゲル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−528718(P2006−528718A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521784(P2006−521784)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【国際出願番号】PCT/KR2004/001864
【国際公開番号】WO2005/010079
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(399101854)コリア インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー (68)
【Fターム(参考)】