説明

温度検出装置、タービン静翼、および、ガスタービン

【課題】高温ガスの巻き込みを高い感度で検出することができる温度検出装置、それを備えたタービン静翼およびガスタービンを提供する。
【解決手段】タービン静翼6における径方向内側のシュラウド部62を、タービン静翼6における前縁LE側から後縁TE側に向かって貫通するバイパス流路103と、タービン静翼6の内部を径方向内側に向かって直線状に延びる筒状のガイド部101と、ガイド部101の内部を径方向内側に向かって延び、バイパス流路103を流れる流体の温度を測定する温度測定部102と、が設けられ、バイパス流路103における前縁LE側の開口端は、少なくとも前縁LE側のタービン動翼7Lにおける取付部74と、シュラウド部62との間に形成された前縁側空間LS1に開口されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、タービン動翼が配置されたタービンディスクと、タービン静翼との間の空間における温度を検出する温度検出装置、それを備えたタービン静翼およびガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にガスタービンのタービン部では、タービン動翼が配置されたタービンディスクの強度低下の防止などを目的として、ガスタービンの圧縮機から抽気された圧縮空気(パージ空気)により冷却や、シールが行われている。
【0003】
パージ空気の流量が少ないと、タービン部を流れる高温の燃焼ガスが、タービンディスクが面するディスクキャビティ(ディスク空間)に侵入するため、タービンディスクの温度が上昇し、強度が低下するという問題があった。
【0004】
上述の問題を解決するために、タービンディスクの温度や、ディスク空間内の流体温度を計測することにより、タービンディスクの強度低下を防止する技術が提案されている(例えば、特許文献1から4参照。)。
【0005】
例えば、ディスク空間が、シール部などにより径方向の外側のディスク空間と、内側のディスク空間とに分割されている場合、内側のディスク空間内の流体温度を計測する検出部が設けられている技術を例示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−200437号公報
【特許文献2】特開平6−272571号公報
【特許文献3】特開2002−322918号公報
【特許文献4】特開2004−28036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、パージ空気を供給する外部冷却系統におけるパージ空気の流量を調節するバルブの開度設定を誤った場合や、シールの経年劣化した場合であって、供給されるパージ空気の流量が不足すると、高温の燃焼ガスが、1段動翼(1S)と2段静翼(2C)との間のリム部から巻き込まれることがある。
このように、高温ガスがリム部から巻き込まれると、外側のキャビティ空間における流体温度が上昇する。
【0008】
上述のように、検出部が配置された内側のキャビティ空間には、外側のキャビティ空間において、パージ空気と高温ガスとが混合して温度が低下した流体が流入している。そのため、検出部では、高温ガスの巻き込みを高い感度で検出することが難しく、外側のキャビティ空間まわりの部品が、巻き込まれた高温ガスにより損傷を受けるおそれがあるという問題があった。
【0009】
その一方で、タービン静翼の内部を径方向内側に延び、上述の外側のキャビティ空間に向かって曲がる筒状のガイドを設け、当該ガイドを介して熱電対などの温度センサを外側のキャビティ空間に突出させ、当該空間の流体温度を検出する方法も知られている。
【0010】
しかしながら、このように曲がったガイドを介して熱電対をキャビティ空間に突出させる方法では、ガイドと熱電対とが接触し、磨耗により計測不良が発生するおそれがあるという問題があった。
具体的には、外側のキャビティ空間に突出した熱電対が、当該空間の内部における流体の流れにより振られるため、ガイドと熱電対とが接触して、計測不良が発生するおそれがあった。
【0011】
さらに、曲がったガイドの内部に熱電対を通す際に、熱電対がガイドに引っ掛かりやすいため、熱電対の配置が難しく、外側のキャビティ空間における流体温度の計測が難しいという問題があった。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、高温ガスの巻き込みを高い感度で検出することができる温度検出装置、それを備えたタービン静翼およびガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の温度検出装置は、タービン静翼における径方向内側のシュラウド部を、前記タービン静翼における前縁側から後縁側に向かって貫通するバイパス流路と、前記タービン静翼の内部を径方向内側に向かって直線状に延びる筒状のガイド部と、該ガイド部の内部を径方向内側に向かって延び、前記バイパス流路を流れる流体の温度を測定する温度測定部と、が設けられ、前記バイパス流路における前記前縁側の開口端は、少なくとも前記前縁側のタービン動翼における取付部と、前記シュラウド部との間に形成された前縁側空間に開口されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、温度測定部は、バイパス流路の内部を流れる流体温度を測定するため、タービン静翼に隣接するタービン動翼やタービンディスクと、シュラウド部との間の空間に温度測定部を突出させる場合と比較して、計測不良の発生を防止することができる。
【0015】
温度測定部を上述の空間に突出させた場合、当該空間内における渦などの流体流れにより温度測定部が振られることで、温度測定部とガイド部等とが接触し、温度測定部が損傷するおそれがある。それに対して、バイパス流路を流れる流体温度を測定することにより、温度測定部が渦などの流体流れにより振られることが防止される。
【0016】
さらに、上述の空間に向かって曲がり、温度測定部を当該空間に導くガイド部を用いた場合、ガイド部の内部に温度測定部を通す際に引っ掛かりが起きるおそれがある。それに対して、略直線状に延びるガイド部の内部に温度測定部を通すことにより、引っ掛かりの発生を防止することができる。
【0017】
前縁側のタービン動翼における取付部、およびシュラウド部の間に形成された前縁側空間に対して、バイパス流路の前縁側の開口端が開口しているため、温度測定部は、前縁側空間に高温ガスが巻き込まれたことを検出できる。
【0018】
高温ガスが前縁側空間に巻き込まれると、高温ガスの一部は、前縁側空間に供給されたパージ流体の一部とともに、前縁側の開口端からバイパス流路に流入する。温度測定部は、バイパス流路を流れる流体温度の上昇を検出することにより、前縁側空間に高温ガスが巻き込まれたことを検出できる。
【0019】
上記発明においては、前記バイパス流路における前記後縁側の開口端は、少なくとも前記後縁側のタービン動翼の取付部と、前記シュラウド部との間に形成された後縁側空間に開口されていることが望ましい。
【0020】
本発明によれば、バイパス流路における後縁側の開口端を、後縁側のタービン動翼における取付部、およびシュラウド部の間に形成された後縁側空間に開口させることにより、バイパス流路における流体の流れを確保することができる。
【0021】
後縁側空間の内部における流体圧力は、前縁側空間の内部における流体圧力よりも低い。そのため、前縁側空間と後縁側空間とを繋ぐバイパス流路を形成することにより、前縁側空間から後縁側空間に向かう流体流れが発生する。例えば、前縁側空間へ高温ガスの巻き込みが発生した場合、高温ガスと混合して高温となった流体の一部が、比較的早い段階でバイパス流路に流入する。これにより、温度測定部は、前縁側空間への高温ガスの巻き込みを検出することができる。
【0022】
本発明のタービン静翼は、前縁および後縁を有するとともに、スパン方向に延びる翼形部と、該翼形部における径方向内側の端部に配置されたシュラウド部と、上記本発明の温度検出装置と、が設けられていることを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、上記本発明の温度検出装置が設けられているため、前縁側空間への高温ガスの巻き込みを高い感度で検出することができる。
【0024】
上記発明においては、前記シュラウド部における、前記前縁側のタービン動翼が取り付けられるタービンディスクと対向する領域には、前記前縁から前記後縁に向かって順に、第1シール部および第2シール部が設けられ、前記第1シール部および前記第2シール部の間には、パージ流体が供給され、前記バイパス流路における前記前縁側の開口端は、前記シュラウド部における前記前縁側空間の壁面を構成する領域であって、前記第1シール部の近傍に開口されていることが望ましい。
【0025】
本発明によれば、第1シール部および第2シール部の間に供給されたパージ流体の一部は、第1シール部とタービンディスクとの間を通過して前縁側空間に流入する。このとき、回転するタービンディスクによりパージ流体には、周方向の流速が与えられる。
【0026】
そのため、前縁側空間における第1シール部の近傍には、周方向の流速成分を有する流体の流れが存在することになる。すると、前縁側空間の内部の流体において周方向の温度分布にムラが生じる場合、つまり、前縁側空間への高温ガスの巻き込みが発生する箇所、発生しない箇所がある場合であっても、上述の周方向の流速成分による混合が発生する。
【0027】
これにより、温度検出装置は、バイパス流路の開口端が設けられている周方向に関する位置に影響を受けることなく、前縁側空間への高温ガスの巻き込みを検出することができる。
【0028】
本発明のガスタービンは、空気を圧縮する圧縮機と、圧縮された空気および燃料の混合気を燃焼させ、燃焼ガスを生成する燃焼器と、上記本発明のタービン静翼を有し、前記燃焼ガスから回転駆動力を発生させるタービン部と、が設けられていることを特徴とする。
【0029】
本発明によれば、上記本発明のタービン静翼を有するため、前縁側空間への高温ガスの巻き込みを高い感度で検出することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の温度検出装置、それを備えたタービン静翼およびガスタービンによれば、温度測定部は、バイパス流路の内部を流れる流体温度を測定するため、高温ガスの巻き込みを高い感度で検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係るガスタービンの構成を説明する模式図である。
【図2】図1のタービン部における構成を説明する部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
この発明の一実施形態に係るガスタービンについて、図1および図2を参照して説明する。
本実施形態では、発電機Gを回転駆動することにより発電を行うガスタービン1に、本発明を適用して説明するが、発電に用いられるガスタービン1に限られることなく、他の用途に用いられるガスタービンに適用してもよく、特に限定するものではない。
【0033】
図1は、本実施形態に係るガスタービンの構成を説明する模式図である。
ガスタービン1には、図1に示すように、圧縮機2と、燃焼器3と、タービン部4と、回転軸5と、が設けられている。
【0034】
圧縮機2は、図1に示すように、外部の空気である大気を吸入して圧縮し、圧縮された空気を燃焼器3に供給するものである。
なお、圧縮機2としては、公知の構成を用いることができ、特にその構成を限定するものではない。
【0035】
燃焼器3は、図1に示すように、圧縮機2により圧縮された空気、および、外部から供給された燃料を混合させ、混合された混合気を燃焼させることにより、高温ガス(燃焼ガス)を生成するものである。
なお、燃焼器3としては、公知の構成を用いることができ、特にその構成を限定するものではない。
【0036】
図2は、図1のタービン部における構成を説明する部分拡大断面図である。
タービン部4は、図1に示すように、燃焼器3により生成された高温ガスの供給を受けて回転駆動力を発生させ、発生した回転駆動力を回転軸5に伝達するものである。
タービン部4には、複数のタービン静翼6と、複数のタービン動翼7およびタービンディスク8とが、主に設けられている。
【0037】
なお、本実施形態では理解を容易にするために、タービン静翼6の前縁LE側に配置されたタービン動翼7およびタービンディスク8をタービン動翼7Lおよびタービンディスク8Lとし、後縁TE側に配置されたタービン動翼7およびタービンディスク8をタービン動翼7Tおよびタービンディスク8Tとして説明する。
【0038】
タービン動翼7L,7Tは、タービンディスク8L,8Tの外周面に取り付けられ、タービン静翼6とともに高温ガスから回転駆動力を発生させるものである。
タービン動翼7L,7Tには、図2に示すように、翼形部71と、プラットフォーム部72と、動翼シール部73と、取付部74と、が設けられている。
【0039】
翼形部71は、図2に示すように、周囲を高温ガスが流れる部分であって、凹状に湾曲した正圧面と、凸状に湾曲した負圧面と、が設けられた部分である。
翼形部71はスパン方向(図2の上下方向)に延びる部分であり、径方向内側(図2の下側)には、プラットフォーム部72、動翼シール部73、および、取付部74が設けられている。
【0040】
プラットフォーム部72は、図2に示すように、翼形部71の端部に設けられ、高温ガスの流路を構成する壁面の一部を構成するものである。プラットフォーム部72は、回転軸5に沿う方向(図2の左右方向)、および、周方向(紙面に垂直方向)に延びる板状のものである。
【0041】
動翼シール部73は、図2に示すように、タービン静翼6のシュラウド部62とともに、第1前縁側空間LS1への高温ガスの巻き込みを抑制するものである。動翼シール部73は、回転軸5に沿う方向、および、周方向に延びる板状の部分であり、シュラウド部62よりも径方向内側に配置されたものである。
動翼シール部73におけるタービン静翼6側の端部には、径方向外側、言い換えると、シュラウド部62に向かって突出する突起部が設けられている。
【0042】
取付部74は、図2に示すように、タービン動翼7L,7Tをタービンディスク8L,8Tに取り付ける部分である。取付部74は、翼形部71の端部から、径方向内側に向かって延びる部分であり、クリスマスツリー形状などの公知の取り付け形状に形成された部分である。
【0043】
タービンディスク8L,8Tは、図2に示すように、それぞれタービン動翼7L,7Tが取り付けられる略円板状のものであって、回転軸5に対して回転伝達力が伝達可能に取り付けられるものである。
タービンディスク8L,8Tには、第1リム部81および第2リム部82が設けられている。
【0044】
第1リム部81は、図2に示すように、タービンディスク8L,8Tから高温ガス流れの下流側(図2の右側)に向かって延びるとともに、周方向(図2の紙面に対して垂直方向)に延びる板状のものである。
さらに、第1リム部81は、第2リム部82よりも径方向外側(図2の上側)に配置され、シュラウド部62における第1シール部63とともに、第1前縁側空間LS1と第2前縁側空間LS2とを仕切るものである。
【0045】
第2リム部82は、図2に示すように、タービンディスク8L,8Tから高温ガス流れの上流側(図2の左側)および下流側に向かって延びるとともに、周方向に延びる板状のものである。
【0046】
高温ガス流れの下流側に向かって延びる第2リム部82は、第1リム部81よりも径方向内側(図2の下側)に配置され、シュラウド部62における第2シール部66とともに、第2前縁側空間LS2と後縁側空間TSとを仕切るものである。
その一方で、高温ガス流れの上流側に向かって延びる第2リム部82は、第1リム部81よりも径方向内側(図2の下側)に配置され、第2リム部82およびシュラウド部62の間には、第2前縁側空間LS2と後縁側空間TSとを仕切る第3シール部67が設けられている。
【0047】
タービン静翼6は、タービン動翼7L,7Tとともに高温ガスから回転駆動力を発生させるものである。
タービン静翼6には、図2に示すように、翼形部61と、シュラウド部62と、温度検出装置100と、が設けられている。
【0048】
翼形部61は、図2に示すように、周囲を高温ガスが流れる部分であって、凹状に湾曲した正圧面と、凸状に湾曲した負圧面と、正圧面および負圧面が繋がる部分である前縁LEおよび後縁TEと、が設けられた部分である。
翼形部61はスパン方向(図2の上下方向)に延びる部分であり、径方向内側(図2の下側)には、シュラウド部62が設けられている。
【0049】
シュラウド部62は、図2に示すように、翼形部61の端部に設けられ、高温ガスの流路を構成する壁面の一部を構成するものである。さらに、タービン動翼7L,7Tの取付部74、および、タービンディスク8L,8Tとの間に、第1前縁側空間LS1、第2前縁側空間LS2、および、後縁側空間TSを形成するものである。
【0050】
シュラウド部62には、第1シール部63と、パージ空気空間64および連通孔65と、第2シール部66と、が主に設けられている。
【0051】
第1シール部63は、図2に示すように、第1リム部81とともに、第1前縁側空間LS1と第2前縁側空間LS2とを仕切るものである。第1シール部63は、シュラウド部62から第1リム部81に向かって延びるものである。
【0052】
第2シール部66は、第2リム部82とともに第2前縁側空間LS2と後縁側空間TSとを仕切るものである。第2シール部66は、シュラウド部62から第2リム部82に向かって延びるものである。
【0053】
第1シール部63および第2シール部66としては、公知のシール部材を用いることができ、特に限定するものではない。
【0054】
パージ空気空間64および連通孔65は、図2に示すように、第2前縁側空間LS2にパージ空気(パージ流体)を供給するものである。ここで、パージ空気とは、第1前縁側空間LS1、第2前縁側空間LS2および後縁側空間TSに高温ガスが巻き込まれることを防止するために供給されるものである。
【0055】
パージ空気空間64は、シュラウド部62の内部に形成された空間であり、外部からパージ空気空間64が供給される空間である。連通孔65は、パージ空気空間64と第2前縁側空間LS2とを繋ぐ貫通孔である。
【0056】
第1前縁側空間(前縁側空間)LS1は、図2に示すように、シュラウド部62と、タービン動翼7Lの取付部74と、タービンディスク8Lとにより周囲を囲まれた空間であり、高温ガスが流れる流路、および、第2前縁側空間LS2と連通する空間である。第1前縁側空間LS1および第2前縁側空間の間は、第1シール部63により仕切られている。
さらに、第1前縁側空間LS1は、パージ空気空間64からパージ空気が供給されているとともに、タービン動翼7Lに供給されたパージ空気の一部が供給されている。
【0057】
第2前縁側空間LS2は、図2に示すように、シュラウド部62と、タービンディスク8Lとにより周囲を囲まれた空間であり、第1前縁側空間LS1、および、後縁側空間TSと連通する空間である。第2前縁側空間LS2と後縁側空間TSとの間は、第2シール部66および第3シール部67により仕切られている。
さらに、第2前縁側空間LS2は、パージ空気を供給する連通孔65と連通している。
【0058】
後縁側空間TSは、図2に示すように、シュラウド部62と、タービンディスク8Tと、タービン動翼7Tの取付部74とにより周囲を囲まれた空間であり、第2前縁側空間LS2、および、高温ガスが流れる流路と連通する空間である。
【0059】
温度検出装置100は、第1前縁側空間LS1への高温ガスの巻き込みを検出するものである。
温度検出装置100には、図2に示すように、ガイド部101と、温度センサ(温度測定部)102と、バイパス流路103と、が設けられている。
【0060】
ガイド部101は、図2に示すように、タービン静翼6における翼形部61およびシュラウド部62に配置された略直線状に延びる筒状に形成された部材であり、温度センサ102をバイパス流路103まで導くものである。
理解を容易にするために、図2ではガイド部101におけるバイパス流路103側の端部のみを示している。
【0061】
温度センサ102は、図2に示すように、バイパス流路103を流れる流体の温度を測定するセンサであって、ガイド部101の内部を径方向内側に向かって延びて配置されるものである。
本実施形態では、温度センサ102として熱電対を用いる例に適用して説明するが、熱電対以外の他の公知の温度センサを用いてもよく、特に限定するものではない。
【0062】
バイパス流路103は、図2に示すように、シュラウド部62を前縁LE側から、後縁TE側に向かって貫通する孔であって、第1前縁側空間LS1および後縁側空間TSを連通させる貫通孔である。
バイパス流路103における前縁LE側の開口部は、第1シール部63と隣接する位置であって、第1シール部63よりも径方向外側(図2の上側)、言い換えると、高温ガスの流路側に設けられている。
【0063】
さらに、バイパス流路103には、前縁LE側の開口部から直線状に延びる部分と、後縁TE側の開口部から直線状に延びる部分と、径方向に沿って延びて両者を繋ぐとともに、温度センサ102が配置される部分とが設けられている。
【0064】
回転軸5は、図1に示すように、タービン部4で発生した回転駆動力を、圧縮機2および発電機Gに伝達するものであり、圧縮機2および発電機Gを回転駆動するものである。
【0065】
次に、上記の構成からなるガスタービン1における運転について、図1を参照しながら説明する。
【0066】
ガスタービン1は、図1に示すように、圧縮機2が回転駆動されることにより大気(空気)を吸入する。吸入された大気は、圧縮機2により圧縮されるとともに、燃焼器3に向かって送り出される。
【0067】
燃焼器3に流入された圧縮された空気は、燃焼器3において外部から供給された燃料と混合される。空気および燃料の混合気は燃焼器3において燃焼され、燃焼熱により高温ガスが生成される。
【0068】
燃焼器3において生成された高温ガスは、燃焼器3から下流のタービン部4に供給される。タービン部4は高温ガスにより回転駆動され、その回転駆動力は回転軸5に伝達される。回転軸5は、タービン部4において抽出された回転駆動力を圧縮機2や発電機Gに伝達する。
【0069】
次に、本実施形態の特徴である温度検出装置100による温度の検出方法について、図2を参照しながら説明する。
【0070】
ガスタービン1が運転されている場合には、図2に示すように、パージ空気が第1前縁側空間LS1および第2前縁側空間LS2に供給される。
【0071】
具体的には、第2前縁側空間LS2には、パージ空気空間64および連通孔65を介してパージ空気が第2前縁側空間LS2に供給される。
第2前縁側空間に供給されたパージ空気の一部は、第2シール部66および第3シール部67を介して後縁側空間TSに流入する。その一方で、第2前縁側空間に供給されたパージ空気の別の一部は、第1シール部63を介して第1前縁側空間LS1に流入する。
【0072】
第1前縁側空間LS1には、パージ空気空間64、タービン動翼7Lの取付部74、および、第1シール部63からパージ空気が流入する。パージ空気は、第1前縁側空間LS1から高温ガスが流れる流路に流出し、高温ガスが第1前縁側空間LS1に巻き込まれることを防止している。
【0073】
ここで、第1前縁側空間LS1に供給されるパージ空気の流量などが減少などすると、高温ガスが第1前縁側空間LS1に巻き込まれる。第1前縁側空間LS1の内部では、高温ガスを巻き込んだことにより、内部のパージ空気および高温ガスの混合流体の温度が上昇する。
【0074】
上述の混合流体は、第1前縁側空間LS1および後縁側空間TSの間の圧力差により、第1前縁側空間LS1からバイパス流路103に流入し、温度検出装置100の温度センサ102の周囲を流れたのち、後縁側空間TSに向かって流れる。
温度センサ102は、バイパス流路103を流れる混合流体の温度を測定する。
【0075】
混合流体は、第1前縁側空間LS1からバイパス流路103に流入する際に、第1シール部63を通過したパージ空気により攪拌される。
【0076】
つまり、第1シール部63は、回転するタービンディスク8Lの第1リム部81との間でシール構造を構成するものである。そのため、第1シール部63を通過するパージ空気には、タービンディスク8Lの回転に引きずられて径方向の流速成分が加えられる。
径方向の流速成分が加えられたパージ空気は、バイパス流路103の開口部の近傍において、混合流体の周方向の流れを形成する。そのため、混合流体は、周方向に流れることにより攪拌され、周方向にわたる温度分布が均一化される。
【0077】
温度センサ102は、バイパス流路103における径方向に延びる部分、つまり、温度センサ102が延びる方向に沿って延びる部分に配置されているため、混合流体と温度センサ102との接触領域を確保することができる。さらに、温度センサ102をバイパス流路103の内部に配置することが容易になる。
【0078】
温度センサ102により測定された混合流体の温度は、第1前縁側空間LS1に高温ガスが巻き込まれたか否かの判定に用いられる。つまり、混合流体の測定温度が上昇した場合には、第1前縁側空間LS1への高温ガスの巻き込みが発生したと判断される。
【0079】
上記の構成によれば、温度センサ102は、バイパス流路103の内部を流れる混合流体の温度を測定するため、タービン静翼6に隣接するタービン動翼7L,7Tやタービンディスク8L,8Tと、シュラウド部62との間の空間である第1前縁側空間LS1に温度センサ102を突出させる場合と比較して、計測不良の発生を防止できる。そのため、高温ガスの巻き込みを高い信頼性をもって出することができる。
【0080】
温度センサ102を第1前縁側空間LS1に突出させた場合、第1前縁側空間LS1内における渦などの混合流体の流れにより温度センサ102が振られることで、温度センサ102とガイド部101等とが接触し、温度センサ102が損傷するおそれがある。それに対して、バイパス流路103を流れる混合流体の温度を測定することにより、温度センサ102が渦などの混合流体の流れにより振られることが防止される。
【0081】
さらに、第1前縁側空間LS1に向かって曲がり、温度センサ102を第1前縁側空間LS1に導くタービン動翼7Lを用いた場合、ガイド部の内部に温度センサ102を通す際に引っ掛かりが起きるおそれがある。それに対して、略直線状に延びるガイド部101の内部に温度センサ102を通すことにより、引っ掛かりの発生を防止することができる。
【0082】
タービン動翼7Lにおける取付部74、およびシュラウド部62の間に形成された第1前縁側空間LS1に対して、バイパス流路103の前縁LE側の開口端が開口しているため、温度センサ102は、第1前縁側空間LS1に高温ガスが巻き込まれたことを検出できる。
【0083】
高温ガスが第1前縁側空間LS1に巻き込まれると、高温ガスの一部は、第1前縁側空間LS1に供給されたパージ空気の一部とともに、前縁LE側の開口端からバイパス流路103に流入する。温度センサ102は、バイパス流路103を流れる混合流体の温度上昇を検出することにより、第1前縁側空間LS1に高温ガスが巻き込まれたことを検出できる。
【0084】
バイパス流路103における後縁TE側の開口端を、タービン動翼7Tにおける取付部74、およびシュラウド部62の間に形成された後縁側空間TSに開口させることにより、バイパス流路103における混合流体の流れを確保することができる。
【0085】
後縁側空間TSの内部における混合流体の圧力は、第1前縁側空間LS1の内部における混合流体の圧力よりも低い。そのため、第1前縁側空間LS1と後縁側空間TSとを繋ぐバイパス流路103を形成することにより、第1前縁側空間LS1から後縁側空間TSに向かう混合流体の流れが発生する。例えば、第1前縁側空間LS1へ高温ガスの巻き込みが発生した場合、高温ガスと混合して高温となった混合流体の一部が、比較的早い段階でバイパス流路103に流入する。これにより、温度センサ102は、第1前縁側空間LS1への高温ガスの巻き込みを検出することができる。
【0086】
第1シール部63および第2シール部66の間に供給されたパージ空気の一部は、第1シール部63と第1リム部81との間を通過して第1前縁側空間LS1に流入する。このとき、回転する第1リム部81によりパージ空気には、周方向の流速が与えられる。
【0087】
そのため、第1前縁側空間LS1における第1シール部63の近傍には、周方向の流速成分を有する混合流体の流れが存在することになる。すると、第1前縁側空間LS1の内部の混合流体における周方向の温度分布にムラが生じる場合、つまり、第1前縁側空間LS1への高温ガスの巻き込みが発生する箇所、発生しない箇所がある場合であっても、上述の周方向の流速成分による混合が発生する。
【0088】
これにより、温度検出装置100は、バイパス流路103の開口端が設けられている周方向に関する位置に影響を受けることなく、第1前縁側空間LS1への高温ガスの巻き込みを検出することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 ガスタービン
2 圧縮機
3 燃焼器
4 タービン部
6 タービン静翼
7,7L,7T タービン動翼
8,8L,8T タービンディスク
61 翼形部
62 シュラウド部
74 取付部
100 温度検出装置
101 ガイド部
102 温度センサ(温度測定部)
103 バイパス流路
LE 前縁
TE 後縁
LS1 第1前縁側空間(前縁側空間)
TS 後縁側空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン静翼における径方向内側のシュラウド部を、前記タービン静翼における前縁側から後縁側に向かって貫通するバイパス流路と、
前記タービン静翼の内部を径方向内側に向かって直線状に延びる筒状のガイド部と、
該ガイド部の内部を径方向内側に向かって延び、前記バイパス流路を流れる流体の温度を測定する温度測定部と、
が設けられ、
前記バイパス流路における前記前縁側の開口端は、少なくとも前記前縁側のタービン動翼における取付部と、前記シュラウド部との間に形成された前縁側空間に開口されていることを特徴とする温度検出装置。
【請求項2】
前記バイパス流路における前記後縁側の開口端は、少なくとも前記後縁側のタービン動翼の取付部と、前記シュラウド部との間に形成された後縁側空間に開口されていることを特徴とする請求項1記載の温度検出装置。
【請求項3】
前縁および後縁を有するとともに、スパン方向に延びる翼形部と、
該翼形部における径方向内側の端部に配置されたシュラウド部と、
請求項1または請求項2に記載の温度検出装置と、
が設けられていることを特徴とするタービン静翼。
【請求項4】
前記シュラウド部における、前記前縁側のタービン動翼が取り付けられるタービンディスクと対向する領域には、前記前縁から前記後縁に向かって順に、第1シール部および第2シール部が設けられ、
前記第1シール部および前記第2シール部の間には、パージ流体が供給され、
前記バイパス流路における前記前縁側の開口端は、前記シュラウド部における前記前縁側空間の壁面を構成する領域であって、前記第1シール部の近傍に開口されていることを特徴とする請求項3記載のタービン静翼。
【請求項5】
空気を圧縮する圧縮機と、
圧縮された空気および燃料の混合気を燃焼させ、燃焼ガスを生成する燃焼器と、
請求項3または請求項4に記載のタービン静翼を有し、前記燃焼ガスから回転駆動力を発生させるタービン部と、
が設けられていることを特徴とするガスタービン。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−196664(P2010−196664A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44907(P2009−44907)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】