温度検知装置、定着装置及び画像形成装置
【課題】赤外線を透過する透過部の表層に異物が付着しても、検知誤差の発生を防止して高精度に検知し得る温度検知装置を提供する。
【解決手段】本発明は、被検知体から放射される赤外線を透過部材53を通して受光素子54で受光し、当該被検知体の表面温度を検知する温度検知装置50におけるものである。前記透過部材53を、当該透過部材53に付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成した。
【解決手段】本発明は、被検知体から放射される赤外線を透過部材53を通して受光素子54で受光し、当該被検知体の表面温度を検知する温度検知装置50におけるものである。前記透過部材53を、当該透過部材53に付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検知体から放射される赤外線を受光して、当該被検知体の表面温度を検知する温度検知装置、その温度検知装置を備えた定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンタなどの画像形成装置には、一般に、用紙に転写されたトナー像を熱定着させるために、定着ローラ及び加圧ローラを備える熱定着装置が設けられている。このような熱定着装置は、用紙が定着ローラと加圧ローラとの間を通過する間に、用紙上のトナー像を熱で溶融して定着させる。
【0003】
また、熱定着装置の定着ローラは、通常、ハロゲンランプなどからなるヒータが内装されると共に、その表面温度を検知するための温度センサが設けられている。この温度センサによる表面温度の検知に基づいてヒータのオン・オフが制御されることにより、定着ローラは所定の熱定着温度が維持されるように構成されている。
【0004】
従来、熱定着装置に用いられる温度センサとしては、サーミスタなどの定着ローラと接触させる接触方式の温度センサや、赤外線センサなどの定着ローラと接触させない非接触方式の温度センサが知られている。このうち、非接触方式の温度センサは、定着ローラの表面と接触しないで温度検知できるので、耐久時に定着ローラの表面に傷がつきにくいなどの利点がある。このため、近年、非接触方式の赤外線センサが装備される熱定着装置が、各種提案されている。
【0005】
ところで、熱定着装置においては、用紙に定着されるべきトナー像が定着ローラに付着してしまう所謂オフセット現象を防止するため、かかる定着ローラの表面にシリコンオイルを塗布したり、トナー中にワックスを含有させたりして、表面離型性を向上させる対策がとられている。
【0006】
しかし、長期間の使用によって、シリコンオイルやワックス等の離型剤が、上記温度センサとしての非接触赤外線センサに設けられたシリコンフィルタの表面に付着すると、その付着物によってシリコンフィルタを通して受光する赤外線入射光量が変化する。これにより、センサの出力が変化するため、定着ローラの表面温度が実際よりも高いあるいは低い温度で誤って検知される。その結果、目標温度よりも高い温度又は低い温度で定着が行われて異常画像が発生するといった問題がある。なお、近年では、オイル塗布方式が減り、ワックス内在型のトナーが増えているため、特にワックス揮発成分の付着による温度検知ずれが発生しやすくなっている。
【0007】
このような問題に対して、例えば、特許文献1(特開2004−45330号公報)では、非接触温度検知手段の窓部材(フィルタ)にフッ素コート、もしくはフッ素系オイル塗布することにより、表面に付着した汚れを除去しやすくすることが提案されている。
また、特許文献2(特開2004−12660号公報)では、受光部を保護する透過性の保護フィルムを巻取リールによって巻き取り可能に構成し、保護フィルムに汚れが付着したら巻き取って新しい面を受光部の位置に配置することが提案されている。
また、特許文献3(特許第3871198号公報)では、赤外線フィルタを透過状態と遮蔽状態とに切り換えるシャッタにクリーニング手段を設け、シャッタを移動させる際にクリーニング手段で赤外線フィルタをクリーニングすることが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の方式は、フィルタ(窓部材)の汚れを除去しやすくする、もしくは汚れたフィルタ(保護フィルム)を定期的に更新して汚れのない面を配置するというものであり、フィルタに汚れがついた状態では検知誤差が発生し得る。
【0009】
そこで、本発明は、斯かる事情に鑑み、赤外線を透過するフィルタ等を有する透過部に異物が付着しても、検知誤差の発生を防止して高精度に検知し得る温度検知装置、その温度検知装置を備えた定着装置及び画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、被検知体から放射される赤外線を透過部を通して受光素子で受光し、当該被検知体の表面温度を検知する温度検知装置において、前記透過部の少なくとも表層を、その表層に付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成したものである。
【0011】
透過部の表層に付着物が付着しても、その表層が付着物と同じ屈折率の材料で構成されているため、透過部を通過する赤外線の透過率は変化しない。このため、付着物が付着することによる温度検知ずれが発生しないので、長期に亘って温度検知精度を良好に維持することができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の温度検知装置において、前記透過部は、赤外線を透過する透過部材を有し、当該透過部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成したものである。
【0013】
透過部材をそれに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成することにより、透過部材に付着物が付着しても、透過部材を通過する赤外線の透過率は変化しない。このため、付着物が付着することによる温度検知ずれが発生しないので、長期に亘って温度検知精度を良好に維持することができる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1に記載の温度検知装置において、前記透過部は、赤外線を透過する透過部材と、赤外線を透過すると共に前記透過部材の表面を被覆する被覆部材を有し、当該被覆部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成したものである。
【0015】
被覆部材をそれに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成することにより、被覆部材に付着物が付着しても、被覆部材を通過する赤外線の透過率は変化しない。このため、付着物が付着することによる温度検知ずれが発生しないので、長期に亘って温度検知精度を良好に維持することができる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1に記載の温度検知装置において、前記透過部は、赤外線を透過する第1の透過部材と、当該第1の透過部材を透過した赤外線を透過する第2の透過部材を有し、前記第1の透過部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成したものである。
【0017】
第1の透過部材をそれに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成することにより、第1の透過部材に付着物が付着しても、第1の透過部材を通過する赤外線の透過率は変化しない。このため、付着物が付着することによる温度検知ずれが発生しないので、長期に亘って温度検知精度を良好に維持することができる。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1に記載の温度検知装置において、前記透過部は、赤外線を透過する第1の透過部材と、当該第1の透過部材を透過した赤外線を透過する第2の透過部材と、前記第1の透過部材の表面を被覆する被覆部材を有し、当該被覆部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成したものである。
【0019】
被覆部材をそれに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成することにより、被覆部材に付着物が付着しても、被覆部材を通過する赤外線の透過率は変化しない。このため、付着物が付着することによる温度検知ずれが発生しないので、長期に亘って温度検知精度を良好に維持することができる。
【0020】
請求項6の発明は、請求項2又は4に記載の温度検知装置において、前記透過部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率の光学ガラスで構成したものである。
【0021】
透過部材をそれに付着する付着物と同じ屈折率の光学ガラスで構成することにより、透過部材に付着物が付着しても、透過部材を通過する赤外線の透過率は変化しない。このため、付着物が付着することによる温度検知ずれが発生しないので、長期に亘って温度検知精度を良好に維持することができる。
【0022】
請求項7の発明は、請求項3又は5に記載の温度検知装置において、前記被覆部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率のワックスで構成したものである。
【0023】
被覆部材をそれに付着する付着物と同じ屈折率のワックスで構成することにより、被覆部材に付着物が付着しても、被覆部材を通過する赤外線の透過率は変化しない。このため、付着物が付着することによる温度検知ずれが発生しないので、長期に亘って温度検知精度を良好に維持することができる。また、この場合、既存の透過部材にワックスを被覆するだけの簡単な構成で安価に上記目的の作用・効果が得られる。
【0024】
請求項8の発明は、請求項2から7のいずれか1項に記載の温度検知装置において、前記透過部材を前記受光素子に対して着脱可能に構成したものである。
【0025】
これにより、透過部材の表面又は被覆部材の表面に粉塵等の汚れが付着しても、透過部材を取り外すことにより、透過部材の清掃や交換等を容易に行うことができるので、長期に亘って温度制御を正確に行うことが可能となる。
【0026】
請求項9の発明は、請求項1から8のいずれか1項に記載の温度検知装置において、前記被検知体が記録媒体上の未定着画像を定着する定着部材である場合、前記付着物と同じ屈折率の材料として、前記定着部材の表面に塗布される離型剤、又はトナーに含有されている離型剤と同じ屈折率の材料を用いたものである。
【0027】
これにより、温度検知装置を定着部材の表面温度を検知するために用いた場合に、透過部材又は被覆部材に前記離型剤が付着しても、離型剤の付着による赤外線の透過率の変化を防止することができる。
【0028】
請求項10の発明は、請求項1から9のいずれか1項に記載の温度検知装置において、前記受光素子をサーモパイル素子としたものである。
【0029】
受光素子としてサーモパイル素子を適用可能である。
【0030】
請求項11の発明は、加熱手段によって加熱され記録媒体上の未定着画像を定着する定着部材と、当該定着部材と対向して定着ニップを形成する対向部材と、前記定着部材の表面温度を検知するための温度検知装置を備えた定着装置において、前記温度検知装置を、請求項1から10のいずれか1項に記載の温度検知装置としたものである。
【0031】
定着装置が、請求項1から10のいずれか1項に記載の温度検知装置を備えることにより、これらの温度検知装置による上記効果が得られる。
【0032】
請求項12の発明は、請求項11に記載の定着装置を備えた画像形成装置である。
【0033】
画像形成装置が、請求項11に記載の定着装置を備えているので、この定着装置が備える温度検知装置による上記効果が得られる。
【0034】
請求項13の発明は、請求項12に記載の画像形成装置において、画像形成装置本体に対して前記定着装置と前記温度検知装置を一体的に着脱可能に構成したものである。
【0035】
定着装置と温度検知装置を画像形成装置本体に対して一体的に着脱可能に構成することにより、定着装置が寿命を迎えたときには、定着装置と温度検知装置を一体で交換できる。これにより、温度検知装置の定着装置に対する位置ずれをなくすことができ、温度検知装置の検知精度の低下を防止することができる。また、画像形成装置本体から温度検知装置を取り外し可能とすることで、温度検知装置の透過部に粉塵等が付着しても、粉塵等の清掃及び除去を容易に行うことができ、長期に亘って検知精度を良好に維持することができる。
【0036】
請求項14の発明は、請求項12に記載の画像形成装置において、前記温度検知装置を画像形成装置本体に設けたものである。
【0037】
温度検知装置を画像形成装置本体に設けることも可能である。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る温度検知装置は、透過部の少なくとも表層を付着物と同じ屈折率の材料で構成しているため、透過部の表層に付着物が付着しても、赤外線透過率が変化するのを防止することができる。これにより、本発明によれば、透過部への付着物の有無に関係なく、長期に亘って温度検知精度を良好に維持することが可能となり、信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図2】前記画像形成装置に設けられた作像部の概略構成図である。
【図3】前記画像形成装置に設けられた定着装置の概略構成図である。
【図4】前記定着装置に設けられた温度センサの外観斜視図である。
【図5】前記温度センサの断面図である。
【図6】屈折率の異なる2物質間の界面に光が垂直入射したときの透過率を説明するための図である。
【図7】従来例の光学系モデルを模式的に示した図である。
【図8】本発明の光学系モデルを模式的に示した図である。
【図9】前記温度センサの他の実施形態の構成を示す図である。
【図10】図9に示す実施形態における光学系モデルを模式的に示した図である。
【図11】前記温度センサのさらに別の実施形態における光学系モデルを模式的に示した図である。
【図12】前記定着装置の他の実施形態の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0041】
まず、本発明に係る画像形成装置の基本構成及び基本動作について説明する。ただし、本発明は、図1に示す画像形成装置に限らず、その他の複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等にも適用可能である。
図1に示すように、画像形成装置本体100の上部に配設されたトナー容器収容部31には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応した4つのトナー容器32Y,32M,32C,32Kが着脱自在(交換自在)に設置されている。トナー容器収容部31の下方には中間転写ユニット15が配設されている。その中間転写ユニット15の中間転写ベルト8に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部6Y,6M,6C,6Kが並設されている。
【0042】
トナー容器32Y,32M,32C,32Kの下方には、それぞれ、図示しないトナー補給装置が配設されている。そして、トナー容器32Y,32M,32C,32Kに収容されているトナーは、それぞれ、トナー補給装置によって、作像部6Y,6M,6C,6Kの現像装置内に供給(補給)されるようになっている。
【0043】
図2を参照して、イエローに対応した作像部6Yは、像担持体(又は潜像担持体)としての感光体ドラム1Yと、感光体ドラム1Yの周囲に配設された帯電部4Y、現像装置5Y(現像部)、クリーニング部2Y、図示しない除電部等で構成されている。そして、感光体ドラム1Y上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程)が行われて、感光体ドラム1Y上にイエロー画像が形成されることになる。
【0044】
なお、他の3つの作像部6M,6C,6Kも、使用されるトナーの色が異なる以外は、イエローに対応した作像部6Yとほぼ同様の構成となっていて、それぞれのトナー色に対応した画像が形成される。以下、他の3つの作像部6M,6C,6Kの説明を適宜に省略して、イエローに対応した作像部6Yのみの説明を行うことにする。
【0045】
図2を参照して、感光体ドラム1Yは、不図示の駆動モータによって図2中の時計方向に回転駆動される。そして、帯電部4Yに設けた帯電ローラ4aの位置で、感光体ドラム1Yの表面が一様に帯電される(帯電工程)。
その後、感光体ドラム1Yの表面は、露光装置7(図1参照)から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での露光走査によってイエローに対応した静電潜像が形成される(露光工程)。
その後、感光体ドラム1Yの表面は、現像装置5Yが有する現像ローラ5aとの対向位置に達して、この位置で静電潜像が現像されて、イエローのトナー像が形成される(現像工程)。
その後、感光体ドラム1Yの表面は、中間転写ベルト8及び1次転写バイアスローラ9Yとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム1Y上のトナー像が中間転写ベルト8上に転写される(1次転写工程)。このとき、感光体ドラム1Y上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
その後、感光体ドラム1Yの表面は、クリーニング部2Yとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム1Y上に残存した未転写トナーがクリーニングブレード2aによって機械的に回収される(クリーニング工程)。
最後に、感光体ドラム1Yの表面は、不図示の除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム1Y上の残留電位が除去される。
こうして、感光体ドラム1Y上で行われる、一連の作像プロセスが終了する。
【0046】
なお、上述した作像プロセスは、他の作像部6M,6C,6Kでも、イエロー作像部6Yと同様に行われる。すなわち、作像部の下方に配設された露光装置7から、画像情報に基づいたレーザ光Lが、各作像部6M,6C,6Kの感光体ドラム上に向けて照射される。詳しくは、露光装置7は、光源からレーザ光Lを発して、そのレーザ光Lを回転駆動されたポリゴンミラーで走査しながら、複数の光学素子を介して感光体ドラム上に照射する。 その後、現像工程を経て各感光体ドラム上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト8上に重ねて転写する。こうして、中間転写ベルト8上にカラー画像が形成される。
【0047】
ここで、図1を参照して、中間転写ユニット15は、中間転写ベルト8、4つの1次転写バイアスローラ9Y,9M,9C,9K、2次転写バックアップローラ12、複数のテンションローラ10,11、中間転写クリーニング部13等で構成される。中間転写ベルト8は、複数のローラ部材によって張架・支持されるとともに、1つのローラ部材12の回転駆動によって図1中の矢印方向に無端移動される。
【0048】
4つの1次転写バイアスローラ9Y,9M,9C,9Kは、それぞれ、中間転写ベルト8を感光体ドラム1Y,1M,1C,1Kとの間に挟み込んで1次転写ニップを形成している。そして、1次転写バイアスローラ9Y,9M,9C,9Kに、トナーの極性とは逆の転写バイアスが印加される。
そして、中間転写ベルト8は、矢印方向に走行して、各1次転写バイアスローラ9Y,9M,9C,9Kの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム1Y,1M,1C,1K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト8上に重ねて1次転写される。
【0049】
その後、各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト8は、2次転写ローラ19との対向位置に達する。この位置では、2次転写バックアップローラ12が、2次転写ローラ19との間に中間転写ベルト8を挟み込んで2次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト8上に形成された4色のトナー像は、この2次転写ニップの位置に搬送された転写紙等の記録媒体P上に転写される。このとき、中間転写ベルト8には、記録媒体Pに転写されなかった未転写トナーが残存する。
【0050】
その後、中間転写ベルト8は、中間転写クリーニング部13の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト8上の未転写トナーが回収される。
こうして、中間転写ベルト8上で行われる、一連の転写プロセスが終了する。
【0051】
ここで、2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体Pは、画像形成装置本体100の下方に配設された給紙部26から、給紙ローラ27やレジストローラ対28等を経由して搬送されたものである。詳しくは、給紙部26には、転写紙等の記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ27が図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pがレジストローラ対28のローラ間に向けて給送される。レジストローラ対28に搬送された記録媒体Pは、回転駆動を停止したレジストローラ対28のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト8上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対28が回転駆動されて、記録媒体Pが2次転写ニップに向けて搬送される。こうして、記録媒体P上に、所望のカラー画像が転写される。
【0052】
その後、2次転写ニップの位置でカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着部20の位置に搬送される。そして、この位置で、定着ベルト及び加圧ローラによる熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像が記録媒体P上に定着される。その後、記録媒体Pは、排紙ローラ対29のローラ間を経て、装置外へと排出される。排紙ローラ対29によって装置外に排出された記録媒体Pは、出力画像として、スタック部30上に順次スタックされる。
こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0053】
次に、上記定着装置20の構成について詳しく説明する。
図3は、定着装置20の概略構成図である。図3に示すように、定着装置20は、記録媒体上の未定着画像を定着する定着部材(又は定着回転体)としての定着ベルト43と、その定着ベルト43と対向して定着ニップNを形成する対向部材としての加圧ローラ44等を備える。
【0054】
定着ベルト43は、無端ベルトであり、定着ローラ40と及び加熱ローラ41に掛け渡されている。定着ベルト43の断面構造としては、例えばニッケル、ステンレス、ポリイミドなどの基材にシリコンゴム層などの弾性層を形成した2層構造となっている。また、定着ベルト43は、その内側からテンションローラ42によって付勢されることにより、定着ベルト43に所定の張力が付与されている。
【0055】
加熱ローラ41は、アルミ又は鉄等から成る中空ローラで構成されており、その内部には加熱手段としてのヒータ45が配設されている。このヒータ45が発熱することにより、定着ベルト43が加熱されるようになっている。なお、本実施形態では、ヒータ45として、ハロゲンヒータを用いているが、それ以外に、誘導加熱機構(IH)等も適用可能である。
【0056】
定着ローラ40は、芯金と、この芯金を被覆する耐熱多孔質層の弾性体層とを有する。なお、ここでは回転する定着ローラ40を例に示したが、これに代えて非回転のパッドを用いて定着ベルト43を加圧ローラ44に当接させるようにしてもよい。また、定着ベルト43を省略し、定着ローラ40を加圧ローラ44に直接当接させる構成(定着ローラ40を定着部材として用いる構成)としてもよい。
【0057】
上記加圧ローラ44は、芯金にゴム等の弾性層が形成されて構成される。ここでは、加圧ローラ44内に、加熱手段としてのヒータ46が配設されている。加圧ローラ44は、バネなどの図示しない弾性体により定着ローラ40に圧接する向きに付勢されており、この弾性体の付勢力によって加圧ローラ44は定着ベルト43と圧接してニップ部Nを形成している。このニップ部Nに未定着画像Gを形成した記録媒体Pを通過させることで熱と圧力によりトナー像を記録媒体P上に定着させる。
【0058】
また、定着ベルト43の加熱ローラ41に張架された部位に対向して、温度センサ50が配設されている。この温度センサ50によって定着ベルト43の表面温度が検知され、その検知温度に基づいて、定着ベルト43の温度が予め設定された目標温度となるように制御されている。温度センサ50は、定着ベルト43に対して非接触に配設された非接触型の温度検知装置であり、本実施形態では、定着ベルト43(被検知体)から放射される赤外線量を測定してその表面温度を検知するサーモパイル型赤外線センサを用いている。ただし、温度センサ50はこれに限定されるものではない。
【0059】
図4は、温度センサ50の外観斜視図、図5は、温度センサ50の断面図である。
図4と図5において、符号51は赤外線入光用の開口窓52が形成されたケーシングを構成するキャンケース、符号53はキャンケース51の開口窓52を覆うフィルタ、符号54は受光素子としてのサーモパイル素子、符号55はサーモパイル素子54に配置されている熱電対(図示せず)で生じた起電力を外部に出力するための端子、符号56は座面を示す。端子55は、図示しない制御手段に電気的に接続されている。また、フィルタ53は、赤外線を透過可能な透過部材で構成されている。
【0060】
上記定着ベルト43から放射される赤外線は、温度センサ50の開口窓52からフィルタ53を通してサーモパイル素子54に受光される。そして、受光した赤外線量に応じた電気信号が出力され、端子55を介して外部に電圧として取り出される。この検出出力によって上記加熱ローラ41内のヒータ45の点灯を制御し、定着ベルト43の表面温度を一定範囲に維持するようになっている。
【0061】
上述のように、従来では、トナーと定着部材の離型性の向上のために用いられるワックスやオイル等の離型剤が温度センサのフィルタに付着すると、フィルタを通過する赤外線の入射光量が変化して、センサの出力が変化してしまう不具合が生じる。そこで、本発明では、このような不具合を防止するため、フィルタ53を、ワックスやオイル等の付着物の赤外線に対する屈曲率と同じ屈曲率の材料で構成している。具体的には、本実施形態のフィルタ53は、トナーに含有されているワックスの揮発性物質の屈曲率と同じ屈曲率の材料で構成されている。例えば、パラフィンワックスを含有するトナーを使用する場合、フィルタ53を、パラフィンワックスの屈折率1.5とほぼ同等の屈折率を有する光学ガラスで構成する。
【0062】
以下、本発明の作用・効果について、従来例と比較して詳しく説明する。
例えば、図6に示すように、屈曲率がn1とn2の2種類の物質の界面に光が垂直入射した場合、光の透過率Tは下記式(1)で表される。
T=4n1n2/(n1+n2)2・・・・・式(1)
【0063】
従来の一般的なサーモパイルは、図7(a)に示すように、シリコン製のフィルタ63を透過した赤外光を受光素子64によって検知するようになっている。ここで、シリコンの屈折率は3.4であるため、空気(屈折率1)とシリコンとの界面を透過する赤外光の透過率は、上記式(1)を用いて0.7と算出される。従って、全体の透過率は、空気からシリコンへの透過率0.7と、シリコンから空気への透過率0.7を乗算した値となるので、0.7×0.7=0.49となる。
【0064】
次に、図7(b)に示すように、フィルタ63の表面にワックス70が付着し、ワックス層ができた場合の赤外光の透過率を考える。
ワックス70がパラフィンから成る場合、その屈折率は約1.5であるため、空気(透過率1)とワックスの界面での透過率は、上記式(1)を用いて0.96と算出される。同様に、ワックス(屈折率約1.5)とシリコン(屈折率3.4)の界面での透過率は、0.85と算出される。また、シリコンと空気の界面での透過光は、上記の通り0.7である。従って、この場合の全体の透過率は、空気からワックスへの透過率0.96と、ワックスからシリコンへの透過率0.85と、シリコンから空気への透過率0.7を乗算した値となるので、0.96×0.85×0.7=0.57となり、上記図7(a)で示すフィルタ63にワックス70が付着する前の透過率0.49よりも大きくなる。その結果、受光素子が実際の温度よりも高く検知してしまう。なお、フィルタ63の表面でのワックス70の付着状態(形状や膜厚等)を考慮すると、実際はさらに複雑な系になっていると推察されるが、赤外線の透過率が変化するメカニズムとしては、このモデルのような現象が起こっていると考えられる。
【0065】
一方、図8に示すのは、本発明に係る温度センサの構成の一例である。
図8(a)に示すように、本発明に係る温度センサでは、フィルタ53を、トナーに含有されるパラフィン系ワックスの屈折率1.5とほぼ同等の屈折率を有する光学ガラス(屈折率1.51)で構成している。なお、光学ガラスには、屈折率が1.43〜2.14のものがあり、ワックスの種類によって適宜選択できる。この場合、空気(屈折率1)と光学ガラスの界面での透過率は、上記式(1)を用いて0.96と算出されるので、全体の透過率は、0.96×0.96=0.92となる。
【0066】
また、図8(b)に示すように、フィルタ53の表面にトナーのワックス70が付着した場合、本発明では、フィルタ53をワックス70(屈折率1.5)とほぼ同等の屈折率1.51となるようにしているので、ワックスとフィルタの界面での透過率の変化はない。従って、この場合の全体の透過率は、空気からワックスへの透過率0.96と、光学ガラスから空気への透過率0.96を乗算した値となるので、0.96×0.96=0.92となり、上記図8(a)で示すフィルタ53にワックス70が付着する前の透過率0.92と同じ値となる。このように、本発明の場合は、従来例と異なり、フィルタ53にワックス70が付着しても、赤外線透過率を0.92に維持することができ、受光素子54の出力が変化するのを防止することができる。
【0067】
また、図9に、本発明に係る温度センサの他の実施形態の構成を示す。
上記説明した図5に示す実施形態では、透過部材としての1つのフィルタ53を有する透過部を備えるが、図9に示す実施形態における温度センサ50の透過部は、第1の透過部材及び第2の透過部材としての2つのフィルタ59,53を有している。
【0068】
詳しくは、図9に示す温度センサ50では、キャンケース51を着脱可能なカバー部材57で覆っている。カバー部材57のキャンケース51の開口窓52と対応する箇所には、独自の開口窓58が形成されており、この開口窓58に、キャンケース51の開口窓52に設けたフィルタ53とは別のフィルタ59が設けられている。カバー部材57に設けられたフィルタ59を第1フィルタ(第1の透過部材)、キャンケース51に設けられたフィルタ53を第2フィルタ(第2の透過部材)と呼ぶと、定着ベルトから放射される赤外線は、第1フィルタ59、第2フィルタ53を順次通過してサーモパイル素子54に受光されるようになっている。
【0069】
また、本実施形態では、上記2つのフィルタ53,59のうち、第1フィルタ59を、トナーに含有されるパラフィン系ワックスの屈折率1.5とほぼ同等の屈折率を有する光学ガラス(屈折率1.51)で構成している。一方、第2フィルタ53の材質は、一般的にフィルタに用いられるシリコンを適用している。それ以外の構成は、図1〜図5において説明した構成と同様であるので説明を省略する。
【0070】
図10は、図9に示す実施形態における光学系モデルを模式的に示した図である。
上記のように、本実施形態では、第1フィルタ59によって第2フィルタ53が覆われているため、図10(b)に示すように、離型剤としてのワックス70は外側の第1フィルタ59の表面に付着する虞がある。
以下、図10を参照して、第1フィルタ59の表面にトナーのワックス70が付着した場合と付着していない場合とでの赤外線の透過率について説明する。
【0071】
まず、図10(a)において、第1フィルタ59にワックス70が付着していない場合の赤外線の透過率について説明する。
この場合、赤外線の透過率は、赤外線が第1フィルタ59を通過するときの透過率と、第2フィルタ53を通過するときの透過率を乗算した値となる。第1フィルタ通過時の透過率は、空気(屈折率1)と光学ガラス(屈折率1.5)の界面での透過率が、上記式(1)より0.96となるので、0.96×0.96=0.92となる。また、第2フィルタ通過時の透過率は、空気(屈折率1)とシリコン(屈折率3.4)の界面での透過率が、上記式(1)より、0.7となるので、0.7×0.7=0.49となる。従って、全体の透過率は、0.92×0.49=0.46となる。
【0072】
次に、図10(b)において、第1フィルタ59にワックス70が付着した場合の赤外線の透過率について説明する。
上記のように、本実施形態では、第1フィルタ59をワックス70(屈折率1.5)とほぼ同等の屈折率1.51となるようにしている。このため、ワックスと第1フィルタの界面での透過率の変化はない。従って、この場合、第1フィルタ通過時の透過率は、上記図10(a)で示すワックス70が付着しない場合での透過率と同じ0.92であり、第2フィルタ通過時の透過率も上記と同様の0.49となるので、全体の透過率も上記と同じ0.46(0.92×0.49)となる。
【0073】
このように、本実施形態の場合も、上記実施形態と同様に、フィルタ(第1フィルタ59)にワックスが付着しても、赤外線透過率を維持することができ、受光素子54の出力が変化するのを防止することができる。さらに、図9に示す実施形態では、長期の使用によって第1フィルタ59の表面に粉塵等の汚れが付着しても、カバー部材57を取り外すことにより、第1フィルタ59の清掃や交換等を容易に行うことができる。このため、長期に亘って温度制御を正確に行うことが可能である。
【0074】
図11は、本発明に係る温度センサのさらに別の実施形態における光学系モデルを模式的に示した図である。
図11(a)に示すように、この実施形態に係る温度センサの透過部は、フィルタ53と、フィルタ53の表面を被覆する被覆層60とを有する。フィルタ53は、一般的に用いられるシリコンで構成されており、被覆層60は、トナーに含有されるパラフィン系ワックスの屈折率1.5と同等の屈折率を有するワックス(屈折率1.5)で構成されている。本実施形態において、その他の構成については、図1〜図5において説明した構成と同様であるので説明を省略する。
【0075】
上記のように、本実施形態では、フィルタ53の表面を被覆層60で覆っているため、図11(b)に示すように、離型剤としてのワックス70は被覆層60の表面に付着する虞がある。
以下、図11を参照して、被覆層60の表面にトナーのワックス70が付着した場合と付着していない場合とでの赤外線の透過率について説明する。
【0076】
まず、図11(a)において、被覆層60にワックス70が付着していない場合の赤外線の透過率について説明する。
この場合、被覆層の屈折率は1.5であるため、空気(透過率1)と被覆層の界面での透過率は、上記式(1)を用いて0.96と算出される。同様に、被覆層(屈折率約1.5)とシリコン(屈折率3.4)の界面での透過率は、0.85と算出される。また、シリコンと空気の界面での透過光は、上記の通り0.7である。従って、この場合の全体の透過率は、空気から被覆層への透過率0.96と、被覆層からシリコンへの透過率0.85と、シリコンから空気への透過率0.7を乗算した値となるので、0.96×0.85×0.7=0.57となる。
【0077】
次に、図11(b)において、被覆層60にワックス70が付着した場合の赤外線の透過率について説明する。
上記のように、本実施形態では、被覆層60を離型剤としてのワックス70(屈折率1.5)と同等の屈折率1.5のワックスで構成している。このため、離型剤としてのワックスと被覆層の界面での透過率の変化はない。従って、この場合、赤外線透過率は、上記図11(a)で示すワックス70が付着しない場合での透過率と同じ0.57となる。
【0078】
このように、本実施形態の場合、被覆層60にワックスが付着しても、赤外線透過率を維持することができ、受光素子54の出力が変化するのを防止することができる。また、この場合、既存のフィルタの表面をワックスで被覆するだけの簡単な構成でよいので、安価に作成することができる。
【0079】
また、図示省略するが、図9に示す2つのフィルタ53,59を有する温度センサにおいて、外側の第1フィルタ59の表面を、離型剤としてのワックスと同等の屈折率の被覆層で被覆してもよい。これにより、第1フィルタ59にワックスが付着しても、上記と同様に赤外線透過率を維持することができると共に、第1フィルタ59をシリコンなどで構成された既存のフィルタを適用することができ、簡単かつ安価な構成とすることが可能となる。
【0080】
また、上記本発明の各実施形態では、図3に示すように、温度センサ50を定着装置20内に設け、温度センサ50と定着装置20を画像形成装置本体に対して一体的に着脱可能に構成しているので、定着装置20が寿命を迎えたときには、定着装置20と温度センサ50を一体で交換できる。これにより、温度センサ50の定着装置20(定着ベルト43)に対する位置ずれをなくすことができ、温度センサ50の検知精度の低下を防止することができる。また、画像形成装置本体から温度センサ50を取り外し可能とすることで、温度センサ50のフィルタに粉塵等が付着しても、粉塵等の清掃及び除去を容易に行うことができ、長期に亘って検知精度を良好に維持することができる。
【0081】
また、図12に示すように、温度センサ50を定着装置20内に設けずに画像形成装置本体側に取り付けてもよい。この場合は、定着装置20を取り外しても、温度センサ50は画像形成装置本体に取り付けられたままとなるので、上記図9に示すような着脱可能なカバー部材57を設けることにより、フィルタ(第1フィルタ59)の清掃あるいは交換を容易に行うことが可能となる。これにより、定着装置20の寿命よりも長い画像形成装置の寿命まで、同じ温度センサ50を使用し続けることができ、コスト低減や省資源化に貢献できる。
【0082】
また、図12に示す定着装置20は、定着ベルト43へのトナー付着防止のために、シリコンオイルを定着ベルト43表面に塗布する手段としての塗布ローラ80を備えているが、この場合、温度センサ50に設けたフィルタ53又は第1フィルタ59、あるいはそれらの表面を被覆する被覆層60を、シリコンオイルと同じ屈折率の材料で構成することにより、フィルタ53又は第1フィルタ59、あるいは被覆層60にシリコンオイルが付着しても、上記実施形態と同様に、赤外線透過率の変化を防止することができる。
【0083】
以上のように、本発明に係る温度センサは、赤外線を透過する透過部の少なくとも表層をワックスやオイル等の付着物と同じ屈折率の材料で構成しているため、透過部の表層にワックスやオイル等が付着しても、赤外線透過率が変化するのを防止することができる。これにより、本発明によれば、透過部への付着物の有無に関係なく、長期に亘って温度検知精度を良好に維持することが可能となり、信頼性が向上する。また、本発明に係る温度センサを定着装置の温度検知手段として用いることで、定着温度を正確に測定できるようになる。その結果、定着設定温度に余裕を持たせることが不要となり、画像を定着可能な最低限の温度で制御することができるようになるので、省エネルギー化を実現できる。
【0084】
なお、本発明が上述の実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、上述の実施形態の中で示唆した以外にも、実施形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0085】
20 定着装置
43 定着ベルト(定着部材)
44 加圧ローラ(対向部材)
45 ヒータ(加熱手段)
50 温度センサ(温度検知装置)
53 フィルタ(透過部材)
54 サーモパイル素子(受光素子)
59 フィルタ(透過部材)
60 被覆層
70 ワックス(付着物)
N 定着ニップ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0086】
【特許文献1】特開2004−45330号公報
【特許文献2】特開2004−12660号公報
【特許文献3】特許第3871198号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検知体から放射される赤外線を受光して、当該被検知体の表面温度を検知する温度検知装置、その温度検知装置を備えた定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンタなどの画像形成装置には、一般に、用紙に転写されたトナー像を熱定着させるために、定着ローラ及び加圧ローラを備える熱定着装置が設けられている。このような熱定着装置は、用紙が定着ローラと加圧ローラとの間を通過する間に、用紙上のトナー像を熱で溶融して定着させる。
【0003】
また、熱定着装置の定着ローラは、通常、ハロゲンランプなどからなるヒータが内装されると共に、その表面温度を検知するための温度センサが設けられている。この温度センサによる表面温度の検知に基づいてヒータのオン・オフが制御されることにより、定着ローラは所定の熱定着温度が維持されるように構成されている。
【0004】
従来、熱定着装置に用いられる温度センサとしては、サーミスタなどの定着ローラと接触させる接触方式の温度センサや、赤外線センサなどの定着ローラと接触させない非接触方式の温度センサが知られている。このうち、非接触方式の温度センサは、定着ローラの表面と接触しないで温度検知できるので、耐久時に定着ローラの表面に傷がつきにくいなどの利点がある。このため、近年、非接触方式の赤外線センサが装備される熱定着装置が、各種提案されている。
【0005】
ところで、熱定着装置においては、用紙に定着されるべきトナー像が定着ローラに付着してしまう所謂オフセット現象を防止するため、かかる定着ローラの表面にシリコンオイルを塗布したり、トナー中にワックスを含有させたりして、表面離型性を向上させる対策がとられている。
【0006】
しかし、長期間の使用によって、シリコンオイルやワックス等の離型剤が、上記温度センサとしての非接触赤外線センサに設けられたシリコンフィルタの表面に付着すると、その付着物によってシリコンフィルタを通して受光する赤外線入射光量が変化する。これにより、センサの出力が変化するため、定着ローラの表面温度が実際よりも高いあるいは低い温度で誤って検知される。その結果、目標温度よりも高い温度又は低い温度で定着が行われて異常画像が発生するといった問題がある。なお、近年では、オイル塗布方式が減り、ワックス内在型のトナーが増えているため、特にワックス揮発成分の付着による温度検知ずれが発生しやすくなっている。
【0007】
このような問題に対して、例えば、特許文献1(特開2004−45330号公報)では、非接触温度検知手段の窓部材(フィルタ)にフッ素コート、もしくはフッ素系オイル塗布することにより、表面に付着した汚れを除去しやすくすることが提案されている。
また、特許文献2(特開2004−12660号公報)では、受光部を保護する透過性の保護フィルムを巻取リールによって巻き取り可能に構成し、保護フィルムに汚れが付着したら巻き取って新しい面を受光部の位置に配置することが提案されている。
また、特許文献3(特許第3871198号公報)では、赤外線フィルタを透過状態と遮蔽状態とに切り換えるシャッタにクリーニング手段を設け、シャッタを移動させる際にクリーニング手段で赤外線フィルタをクリーニングすることが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の方式は、フィルタ(窓部材)の汚れを除去しやすくする、もしくは汚れたフィルタ(保護フィルム)を定期的に更新して汚れのない面を配置するというものであり、フィルタに汚れがついた状態では検知誤差が発生し得る。
【0009】
そこで、本発明は、斯かる事情に鑑み、赤外線を透過するフィルタ等を有する透過部に異物が付着しても、検知誤差の発生を防止して高精度に検知し得る温度検知装置、その温度検知装置を備えた定着装置及び画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、被検知体から放射される赤外線を透過部を通して受光素子で受光し、当該被検知体の表面温度を検知する温度検知装置において、前記透過部の少なくとも表層を、その表層に付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成したものである。
【0011】
透過部の表層に付着物が付着しても、その表層が付着物と同じ屈折率の材料で構成されているため、透過部を通過する赤外線の透過率は変化しない。このため、付着物が付着することによる温度検知ずれが発生しないので、長期に亘って温度検知精度を良好に維持することができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の温度検知装置において、前記透過部は、赤外線を透過する透過部材を有し、当該透過部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成したものである。
【0013】
透過部材をそれに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成することにより、透過部材に付着物が付着しても、透過部材を通過する赤外線の透過率は変化しない。このため、付着物が付着することによる温度検知ずれが発生しないので、長期に亘って温度検知精度を良好に維持することができる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1に記載の温度検知装置において、前記透過部は、赤外線を透過する透過部材と、赤外線を透過すると共に前記透過部材の表面を被覆する被覆部材を有し、当該被覆部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成したものである。
【0015】
被覆部材をそれに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成することにより、被覆部材に付着物が付着しても、被覆部材を通過する赤外線の透過率は変化しない。このため、付着物が付着することによる温度検知ずれが発生しないので、長期に亘って温度検知精度を良好に維持することができる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1に記載の温度検知装置において、前記透過部は、赤外線を透過する第1の透過部材と、当該第1の透過部材を透過した赤外線を透過する第2の透過部材を有し、前記第1の透過部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成したものである。
【0017】
第1の透過部材をそれに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成することにより、第1の透過部材に付着物が付着しても、第1の透過部材を通過する赤外線の透過率は変化しない。このため、付着物が付着することによる温度検知ずれが発生しないので、長期に亘って温度検知精度を良好に維持することができる。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1に記載の温度検知装置において、前記透過部は、赤外線を透過する第1の透過部材と、当該第1の透過部材を透過した赤外線を透過する第2の透過部材と、前記第1の透過部材の表面を被覆する被覆部材を有し、当該被覆部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成したものである。
【0019】
被覆部材をそれに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成することにより、被覆部材に付着物が付着しても、被覆部材を通過する赤外線の透過率は変化しない。このため、付着物が付着することによる温度検知ずれが発生しないので、長期に亘って温度検知精度を良好に維持することができる。
【0020】
請求項6の発明は、請求項2又は4に記載の温度検知装置において、前記透過部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率の光学ガラスで構成したものである。
【0021】
透過部材をそれに付着する付着物と同じ屈折率の光学ガラスで構成することにより、透過部材に付着物が付着しても、透過部材を通過する赤外線の透過率は変化しない。このため、付着物が付着することによる温度検知ずれが発生しないので、長期に亘って温度検知精度を良好に維持することができる。
【0022】
請求項7の発明は、請求項3又は5に記載の温度検知装置において、前記被覆部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率のワックスで構成したものである。
【0023】
被覆部材をそれに付着する付着物と同じ屈折率のワックスで構成することにより、被覆部材に付着物が付着しても、被覆部材を通過する赤外線の透過率は変化しない。このため、付着物が付着することによる温度検知ずれが発生しないので、長期に亘って温度検知精度を良好に維持することができる。また、この場合、既存の透過部材にワックスを被覆するだけの簡単な構成で安価に上記目的の作用・効果が得られる。
【0024】
請求項8の発明は、請求項2から7のいずれか1項に記載の温度検知装置において、前記透過部材を前記受光素子に対して着脱可能に構成したものである。
【0025】
これにより、透過部材の表面又は被覆部材の表面に粉塵等の汚れが付着しても、透過部材を取り外すことにより、透過部材の清掃や交換等を容易に行うことができるので、長期に亘って温度制御を正確に行うことが可能となる。
【0026】
請求項9の発明は、請求項1から8のいずれか1項に記載の温度検知装置において、前記被検知体が記録媒体上の未定着画像を定着する定着部材である場合、前記付着物と同じ屈折率の材料として、前記定着部材の表面に塗布される離型剤、又はトナーに含有されている離型剤と同じ屈折率の材料を用いたものである。
【0027】
これにより、温度検知装置を定着部材の表面温度を検知するために用いた場合に、透過部材又は被覆部材に前記離型剤が付着しても、離型剤の付着による赤外線の透過率の変化を防止することができる。
【0028】
請求項10の発明は、請求項1から9のいずれか1項に記載の温度検知装置において、前記受光素子をサーモパイル素子としたものである。
【0029】
受光素子としてサーモパイル素子を適用可能である。
【0030】
請求項11の発明は、加熱手段によって加熱され記録媒体上の未定着画像を定着する定着部材と、当該定着部材と対向して定着ニップを形成する対向部材と、前記定着部材の表面温度を検知するための温度検知装置を備えた定着装置において、前記温度検知装置を、請求項1から10のいずれか1項に記載の温度検知装置としたものである。
【0031】
定着装置が、請求項1から10のいずれか1項に記載の温度検知装置を備えることにより、これらの温度検知装置による上記効果が得られる。
【0032】
請求項12の発明は、請求項11に記載の定着装置を備えた画像形成装置である。
【0033】
画像形成装置が、請求項11に記載の定着装置を備えているので、この定着装置が備える温度検知装置による上記効果が得られる。
【0034】
請求項13の発明は、請求項12に記載の画像形成装置において、画像形成装置本体に対して前記定着装置と前記温度検知装置を一体的に着脱可能に構成したものである。
【0035】
定着装置と温度検知装置を画像形成装置本体に対して一体的に着脱可能に構成することにより、定着装置が寿命を迎えたときには、定着装置と温度検知装置を一体で交換できる。これにより、温度検知装置の定着装置に対する位置ずれをなくすことができ、温度検知装置の検知精度の低下を防止することができる。また、画像形成装置本体から温度検知装置を取り外し可能とすることで、温度検知装置の透過部に粉塵等が付着しても、粉塵等の清掃及び除去を容易に行うことができ、長期に亘って検知精度を良好に維持することができる。
【0036】
請求項14の発明は、請求項12に記載の画像形成装置において、前記温度検知装置を画像形成装置本体に設けたものである。
【0037】
温度検知装置を画像形成装置本体に設けることも可能である。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る温度検知装置は、透過部の少なくとも表層を付着物と同じ屈折率の材料で構成しているため、透過部の表層に付着物が付着しても、赤外線透過率が変化するのを防止することができる。これにより、本発明によれば、透過部への付着物の有無に関係なく、長期に亘って温度検知精度を良好に維持することが可能となり、信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図2】前記画像形成装置に設けられた作像部の概略構成図である。
【図3】前記画像形成装置に設けられた定着装置の概略構成図である。
【図4】前記定着装置に設けられた温度センサの外観斜視図である。
【図5】前記温度センサの断面図である。
【図6】屈折率の異なる2物質間の界面に光が垂直入射したときの透過率を説明するための図である。
【図7】従来例の光学系モデルを模式的に示した図である。
【図8】本発明の光学系モデルを模式的に示した図である。
【図9】前記温度センサの他の実施形態の構成を示す図である。
【図10】図9に示す実施形態における光学系モデルを模式的に示した図である。
【図11】前記温度センサのさらに別の実施形態における光学系モデルを模式的に示した図である。
【図12】前記定着装置の他の実施形態の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0041】
まず、本発明に係る画像形成装置の基本構成及び基本動作について説明する。ただし、本発明は、図1に示す画像形成装置に限らず、その他の複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等にも適用可能である。
図1に示すように、画像形成装置本体100の上部に配設されたトナー容器収容部31には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応した4つのトナー容器32Y,32M,32C,32Kが着脱自在(交換自在)に設置されている。トナー容器収容部31の下方には中間転写ユニット15が配設されている。その中間転写ユニット15の中間転写ベルト8に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部6Y,6M,6C,6Kが並設されている。
【0042】
トナー容器32Y,32M,32C,32Kの下方には、それぞれ、図示しないトナー補給装置が配設されている。そして、トナー容器32Y,32M,32C,32Kに収容されているトナーは、それぞれ、トナー補給装置によって、作像部6Y,6M,6C,6Kの現像装置内に供給(補給)されるようになっている。
【0043】
図2を参照して、イエローに対応した作像部6Yは、像担持体(又は潜像担持体)としての感光体ドラム1Yと、感光体ドラム1Yの周囲に配設された帯電部4Y、現像装置5Y(現像部)、クリーニング部2Y、図示しない除電部等で構成されている。そして、感光体ドラム1Y上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程)が行われて、感光体ドラム1Y上にイエロー画像が形成されることになる。
【0044】
なお、他の3つの作像部6M,6C,6Kも、使用されるトナーの色が異なる以外は、イエローに対応した作像部6Yとほぼ同様の構成となっていて、それぞれのトナー色に対応した画像が形成される。以下、他の3つの作像部6M,6C,6Kの説明を適宜に省略して、イエローに対応した作像部6Yのみの説明を行うことにする。
【0045】
図2を参照して、感光体ドラム1Yは、不図示の駆動モータによって図2中の時計方向に回転駆動される。そして、帯電部4Yに設けた帯電ローラ4aの位置で、感光体ドラム1Yの表面が一様に帯電される(帯電工程)。
その後、感光体ドラム1Yの表面は、露光装置7(図1参照)から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での露光走査によってイエローに対応した静電潜像が形成される(露光工程)。
その後、感光体ドラム1Yの表面は、現像装置5Yが有する現像ローラ5aとの対向位置に達して、この位置で静電潜像が現像されて、イエローのトナー像が形成される(現像工程)。
その後、感光体ドラム1Yの表面は、中間転写ベルト8及び1次転写バイアスローラ9Yとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム1Y上のトナー像が中間転写ベルト8上に転写される(1次転写工程)。このとき、感光体ドラム1Y上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
その後、感光体ドラム1Yの表面は、クリーニング部2Yとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム1Y上に残存した未転写トナーがクリーニングブレード2aによって機械的に回収される(クリーニング工程)。
最後に、感光体ドラム1Yの表面は、不図示の除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム1Y上の残留電位が除去される。
こうして、感光体ドラム1Y上で行われる、一連の作像プロセスが終了する。
【0046】
なお、上述した作像プロセスは、他の作像部6M,6C,6Kでも、イエロー作像部6Yと同様に行われる。すなわち、作像部の下方に配設された露光装置7から、画像情報に基づいたレーザ光Lが、各作像部6M,6C,6Kの感光体ドラム上に向けて照射される。詳しくは、露光装置7は、光源からレーザ光Lを発して、そのレーザ光Lを回転駆動されたポリゴンミラーで走査しながら、複数の光学素子を介して感光体ドラム上に照射する。 その後、現像工程を経て各感光体ドラム上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト8上に重ねて転写する。こうして、中間転写ベルト8上にカラー画像が形成される。
【0047】
ここで、図1を参照して、中間転写ユニット15は、中間転写ベルト8、4つの1次転写バイアスローラ9Y,9M,9C,9K、2次転写バックアップローラ12、複数のテンションローラ10,11、中間転写クリーニング部13等で構成される。中間転写ベルト8は、複数のローラ部材によって張架・支持されるとともに、1つのローラ部材12の回転駆動によって図1中の矢印方向に無端移動される。
【0048】
4つの1次転写バイアスローラ9Y,9M,9C,9Kは、それぞれ、中間転写ベルト8を感光体ドラム1Y,1M,1C,1Kとの間に挟み込んで1次転写ニップを形成している。そして、1次転写バイアスローラ9Y,9M,9C,9Kに、トナーの極性とは逆の転写バイアスが印加される。
そして、中間転写ベルト8は、矢印方向に走行して、各1次転写バイアスローラ9Y,9M,9C,9Kの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム1Y,1M,1C,1K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト8上に重ねて1次転写される。
【0049】
その後、各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト8は、2次転写ローラ19との対向位置に達する。この位置では、2次転写バックアップローラ12が、2次転写ローラ19との間に中間転写ベルト8を挟み込んで2次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト8上に形成された4色のトナー像は、この2次転写ニップの位置に搬送された転写紙等の記録媒体P上に転写される。このとき、中間転写ベルト8には、記録媒体Pに転写されなかった未転写トナーが残存する。
【0050】
その後、中間転写ベルト8は、中間転写クリーニング部13の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト8上の未転写トナーが回収される。
こうして、中間転写ベルト8上で行われる、一連の転写プロセスが終了する。
【0051】
ここで、2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体Pは、画像形成装置本体100の下方に配設された給紙部26から、給紙ローラ27やレジストローラ対28等を経由して搬送されたものである。詳しくは、給紙部26には、転写紙等の記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ27が図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pがレジストローラ対28のローラ間に向けて給送される。レジストローラ対28に搬送された記録媒体Pは、回転駆動を停止したレジストローラ対28のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト8上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対28が回転駆動されて、記録媒体Pが2次転写ニップに向けて搬送される。こうして、記録媒体P上に、所望のカラー画像が転写される。
【0052】
その後、2次転写ニップの位置でカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着部20の位置に搬送される。そして、この位置で、定着ベルト及び加圧ローラによる熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像が記録媒体P上に定着される。その後、記録媒体Pは、排紙ローラ対29のローラ間を経て、装置外へと排出される。排紙ローラ対29によって装置外に排出された記録媒体Pは、出力画像として、スタック部30上に順次スタックされる。
こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0053】
次に、上記定着装置20の構成について詳しく説明する。
図3は、定着装置20の概略構成図である。図3に示すように、定着装置20は、記録媒体上の未定着画像を定着する定着部材(又は定着回転体)としての定着ベルト43と、その定着ベルト43と対向して定着ニップNを形成する対向部材としての加圧ローラ44等を備える。
【0054】
定着ベルト43は、無端ベルトであり、定着ローラ40と及び加熱ローラ41に掛け渡されている。定着ベルト43の断面構造としては、例えばニッケル、ステンレス、ポリイミドなどの基材にシリコンゴム層などの弾性層を形成した2層構造となっている。また、定着ベルト43は、その内側からテンションローラ42によって付勢されることにより、定着ベルト43に所定の張力が付与されている。
【0055】
加熱ローラ41は、アルミ又は鉄等から成る中空ローラで構成されており、その内部には加熱手段としてのヒータ45が配設されている。このヒータ45が発熱することにより、定着ベルト43が加熱されるようになっている。なお、本実施形態では、ヒータ45として、ハロゲンヒータを用いているが、それ以外に、誘導加熱機構(IH)等も適用可能である。
【0056】
定着ローラ40は、芯金と、この芯金を被覆する耐熱多孔質層の弾性体層とを有する。なお、ここでは回転する定着ローラ40を例に示したが、これに代えて非回転のパッドを用いて定着ベルト43を加圧ローラ44に当接させるようにしてもよい。また、定着ベルト43を省略し、定着ローラ40を加圧ローラ44に直接当接させる構成(定着ローラ40を定着部材として用いる構成)としてもよい。
【0057】
上記加圧ローラ44は、芯金にゴム等の弾性層が形成されて構成される。ここでは、加圧ローラ44内に、加熱手段としてのヒータ46が配設されている。加圧ローラ44は、バネなどの図示しない弾性体により定着ローラ40に圧接する向きに付勢されており、この弾性体の付勢力によって加圧ローラ44は定着ベルト43と圧接してニップ部Nを形成している。このニップ部Nに未定着画像Gを形成した記録媒体Pを通過させることで熱と圧力によりトナー像を記録媒体P上に定着させる。
【0058】
また、定着ベルト43の加熱ローラ41に張架された部位に対向して、温度センサ50が配設されている。この温度センサ50によって定着ベルト43の表面温度が検知され、その検知温度に基づいて、定着ベルト43の温度が予め設定された目標温度となるように制御されている。温度センサ50は、定着ベルト43に対して非接触に配設された非接触型の温度検知装置であり、本実施形態では、定着ベルト43(被検知体)から放射される赤外線量を測定してその表面温度を検知するサーモパイル型赤外線センサを用いている。ただし、温度センサ50はこれに限定されるものではない。
【0059】
図4は、温度センサ50の外観斜視図、図5は、温度センサ50の断面図である。
図4と図5において、符号51は赤外線入光用の開口窓52が形成されたケーシングを構成するキャンケース、符号53はキャンケース51の開口窓52を覆うフィルタ、符号54は受光素子としてのサーモパイル素子、符号55はサーモパイル素子54に配置されている熱電対(図示せず)で生じた起電力を外部に出力するための端子、符号56は座面を示す。端子55は、図示しない制御手段に電気的に接続されている。また、フィルタ53は、赤外線を透過可能な透過部材で構成されている。
【0060】
上記定着ベルト43から放射される赤外線は、温度センサ50の開口窓52からフィルタ53を通してサーモパイル素子54に受光される。そして、受光した赤外線量に応じた電気信号が出力され、端子55を介して外部に電圧として取り出される。この検出出力によって上記加熱ローラ41内のヒータ45の点灯を制御し、定着ベルト43の表面温度を一定範囲に維持するようになっている。
【0061】
上述のように、従来では、トナーと定着部材の離型性の向上のために用いられるワックスやオイル等の離型剤が温度センサのフィルタに付着すると、フィルタを通過する赤外線の入射光量が変化して、センサの出力が変化してしまう不具合が生じる。そこで、本発明では、このような不具合を防止するため、フィルタ53を、ワックスやオイル等の付着物の赤外線に対する屈曲率と同じ屈曲率の材料で構成している。具体的には、本実施形態のフィルタ53は、トナーに含有されているワックスの揮発性物質の屈曲率と同じ屈曲率の材料で構成されている。例えば、パラフィンワックスを含有するトナーを使用する場合、フィルタ53を、パラフィンワックスの屈折率1.5とほぼ同等の屈折率を有する光学ガラスで構成する。
【0062】
以下、本発明の作用・効果について、従来例と比較して詳しく説明する。
例えば、図6に示すように、屈曲率がn1とn2の2種類の物質の界面に光が垂直入射した場合、光の透過率Tは下記式(1)で表される。
T=4n1n2/(n1+n2)2・・・・・式(1)
【0063】
従来の一般的なサーモパイルは、図7(a)に示すように、シリコン製のフィルタ63を透過した赤外光を受光素子64によって検知するようになっている。ここで、シリコンの屈折率は3.4であるため、空気(屈折率1)とシリコンとの界面を透過する赤外光の透過率は、上記式(1)を用いて0.7と算出される。従って、全体の透過率は、空気からシリコンへの透過率0.7と、シリコンから空気への透過率0.7を乗算した値となるので、0.7×0.7=0.49となる。
【0064】
次に、図7(b)に示すように、フィルタ63の表面にワックス70が付着し、ワックス層ができた場合の赤外光の透過率を考える。
ワックス70がパラフィンから成る場合、その屈折率は約1.5であるため、空気(透過率1)とワックスの界面での透過率は、上記式(1)を用いて0.96と算出される。同様に、ワックス(屈折率約1.5)とシリコン(屈折率3.4)の界面での透過率は、0.85と算出される。また、シリコンと空気の界面での透過光は、上記の通り0.7である。従って、この場合の全体の透過率は、空気からワックスへの透過率0.96と、ワックスからシリコンへの透過率0.85と、シリコンから空気への透過率0.7を乗算した値となるので、0.96×0.85×0.7=0.57となり、上記図7(a)で示すフィルタ63にワックス70が付着する前の透過率0.49よりも大きくなる。その結果、受光素子が実際の温度よりも高く検知してしまう。なお、フィルタ63の表面でのワックス70の付着状態(形状や膜厚等)を考慮すると、実際はさらに複雑な系になっていると推察されるが、赤外線の透過率が変化するメカニズムとしては、このモデルのような現象が起こっていると考えられる。
【0065】
一方、図8に示すのは、本発明に係る温度センサの構成の一例である。
図8(a)に示すように、本発明に係る温度センサでは、フィルタ53を、トナーに含有されるパラフィン系ワックスの屈折率1.5とほぼ同等の屈折率を有する光学ガラス(屈折率1.51)で構成している。なお、光学ガラスには、屈折率が1.43〜2.14のものがあり、ワックスの種類によって適宜選択できる。この場合、空気(屈折率1)と光学ガラスの界面での透過率は、上記式(1)を用いて0.96と算出されるので、全体の透過率は、0.96×0.96=0.92となる。
【0066】
また、図8(b)に示すように、フィルタ53の表面にトナーのワックス70が付着した場合、本発明では、フィルタ53をワックス70(屈折率1.5)とほぼ同等の屈折率1.51となるようにしているので、ワックスとフィルタの界面での透過率の変化はない。従って、この場合の全体の透過率は、空気からワックスへの透過率0.96と、光学ガラスから空気への透過率0.96を乗算した値となるので、0.96×0.96=0.92となり、上記図8(a)で示すフィルタ53にワックス70が付着する前の透過率0.92と同じ値となる。このように、本発明の場合は、従来例と異なり、フィルタ53にワックス70が付着しても、赤外線透過率を0.92に維持することができ、受光素子54の出力が変化するのを防止することができる。
【0067】
また、図9に、本発明に係る温度センサの他の実施形態の構成を示す。
上記説明した図5に示す実施形態では、透過部材としての1つのフィルタ53を有する透過部を備えるが、図9に示す実施形態における温度センサ50の透過部は、第1の透過部材及び第2の透過部材としての2つのフィルタ59,53を有している。
【0068】
詳しくは、図9に示す温度センサ50では、キャンケース51を着脱可能なカバー部材57で覆っている。カバー部材57のキャンケース51の開口窓52と対応する箇所には、独自の開口窓58が形成されており、この開口窓58に、キャンケース51の開口窓52に設けたフィルタ53とは別のフィルタ59が設けられている。カバー部材57に設けられたフィルタ59を第1フィルタ(第1の透過部材)、キャンケース51に設けられたフィルタ53を第2フィルタ(第2の透過部材)と呼ぶと、定着ベルトから放射される赤外線は、第1フィルタ59、第2フィルタ53を順次通過してサーモパイル素子54に受光されるようになっている。
【0069】
また、本実施形態では、上記2つのフィルタ53,59のうち、第1フィルタ59を、トナーに含有されるパラフィン系ワックスの屈折率1.5とほぼ同等の屈折率を有する光学ガラス(屈折率1.51)で構成している。一方、第2フィルタ53の材質は、一般的にフィルタに用いられるシリコンを適用している。それ以外の構成は、図1〜図5において説明した構成と同様であるので説明を省略する。
【0070】
図10は、図9に示す実施形態における光学系モデルを模式的に示した図である。
上記のように、本実施形態では、第1フィルタ59によって第2フィルタ53が覆われているため、図10(b)に示すように、離型剤としてのワックス70は外側の第1フィルタ59の表面に付着する虞がある。
以下、図10を参照して、第1フィルタ59の表面にトナーのワックス70が付着した場合と付着していない場合とでの赤外線の透過率について説明する。
【0071】
まず、図10(a)において、第1フィルタ59にワックス70が付着していない場合の赤外線の透過率について説明する。
この場合、赤外線の透過率は、赤外線が第1フィルタ59を通過するときの透過率と、第2フィルタ53を通過するときの透過率を乗算した値となる。第1フィルタ通過時の透過率は、空気(屈折率1)と光学ガラス(屈折率1.5)の界面での透過率が、上記式(1)より0.96となるので、0.96×0.96=0.92となる。また、第2フィルタ通過時の透過率は、空気(屈折率1)とシリコン(屈折率3.4)の界面での透過率が、上記式(1)より、0.7となるので、0.7×0.7=0.49となる。従って、全体の透過率は、0.92×0.49=0.46となる。
【0072】
次に、図10(b)において、第1フィルタ59にワックス70が付着した場合の赤外線の透過率について説明する。
上記のように、本実施形態では、第1フィルタ59をワックス70(屈折率1.5)とほぼ同等の屈折率1.51となるようにしている。このため、ワックスと第1フィルタの界面での透過率の変化はない。従って、この場合、第1フィルタ通過時の透過率は、上記図10(a)で示すワックス70が付着しない場合での透過率と同じ0.92であり、第2フィルタ通過時の透過率も上記と同様の0.49となるので、全体の透過率も上記と同じ0.46(0.92×0.49)となる。
【0073】
このように、本実施形態の場合も、上記実施形態と同様に、フィルタ(第1フィルタ59)にワックスが付着しても、赤外線透過率を維持することができ、受光素子54の出力が変化するのを防止することができる。さらに、図9に示す実施形態では、長期の使用によって第1フィルタ59の表面に粉塵等の汚れが付着しても、カバー部材57を取り外すことにより、第1フィルタ59の清掃や交換等を容易に行うことができる。このため、長期に亘って温度制御を正確に行うことが可能である。
【0074】
図11は、本発明に係る温度センサのさらに別の実施形態における光学系モデルを模式的に示した図である。
図11(a)に示すように、この実施形態に係る温度センサの透過部は、フィルタ53と、フィルタ53の表面を被覆する被覆層60とを有する。フィルタ53は、一般的に用いられるシリコンで構成されており、被覆層60は、トナーに含有されるパラフィン系ワックスの屈折率1.5と同等の屈折率を有するワックス(屈折率1.5)で構成されている。本実施形態において、その他の構成については、図1〜図5において説明した構成と同様であるので説明を省略する。
【0075】
上記のように、本実施形態では、フィルタ53の表面を被覆層60で覆っているため、図11(b)に示すように、離型剤としてのワックス70は被覆層60の表面に付着する虞がある。
以下、図11を参照して、被覆層60の表面にトナーのワックス70が付着した場合と付着していない場合とでの赤外線の透過率について説明する。
【0076】
まず、図11(a)において、被覆層60にワックス70が付着していない場合の赤外線の透過率について説明する。
この場合、被覆層の屈折率は1.5であるため、空気(透過率1)と被覆層の界面での透過率は、上記式(1)を用いて0.96と算出される。同様に、被覆層(屈折率約1.5)とシリコン(屈折率3.4)の界面での透過率は、0.85と算出される。また、シリコンと空気の界面での透過光は、上記の通り0.7である。従って、この場合の全体の透過率は、空気から被覆層への透過率0.96と、被覆層からシリコンへの透過率0.85と、シリコンから空気への透過率0.7を乗算した値となるので、0.96×0.85×0.7=0.57となる。
【0077】
次に、図11(b)において、被覆層60にワックス70が付着した場合の赤外線の透過率について説明する。
上記のように、本実施形態では、被覆層60を離型剤としてのワックス70(屈折率1.5)と同等の屈折率1.5のワックスで構成している。このため、離型剤としてのワックスと被覆層の界面での透過率の変化はない。従って、この場合、赤外線透過率は、上記図11(a)で示すワックス70が付着しない場合での透過率と同じ0.57となる。
【0078】
このように、本実施形態の場合、被覆層60にワックスが付着しても、赤外線透過率を維持することができ、受光素子54の出力が変化するのを防止することができる。また、この場合、既存のフィルタの表面をワックスで被覆するだけの簡単な構成でよいので、安価に作成することができる。
【0079】
また、図示省略するが、図9に示す2つのフィルタ53,59を有する温度センサにおいて、外側の第1フィルタ59の表面を、離型剤としてのワックスと同等の屈折率の被覆層で被覆してもよい。これにより、第1フィルタ59にワックスが付着しても、上記と同様に赤外線透過率を維持することができると共に、第1フィルタ59をシリコンなどで構成された既存のフィルタを適用することができ、簡単かつ安価な構成とすることが可能となる。
【0080】
また、上記本発明の各実施形態では、図3に示すように、温度センサ50を定着装置20内に設け、温度センサ50と定着装置20を画像形成装置本体に対して一体的に着脱可能に構成しているので、定着装置20が寿命を迎えたときには、定着装置20と温度センサ50を一体で交換できる。これにより、温度センサ50の定着装置20(定着ベルト43)に対する位置ずれをなくすことができ、温度センサ50の検知精度の低下を防止することができる。また、画像形成装置本体から温度センサ50を取り外し可能とすることで、温度センサ50のフィルタに粉塵等が付着しても、粉塵等の清掃及び除去を容易に行うことができ、長期に亘って検知精度を良好に維持することができる。
【0081】
また、図12に示すように、温度センサ50を定着装置20内に設けずに画像形成装置本体側に取り付けてもよい。この場合は、定着装置20を取り外しても、温度センサ50は画像形成装置本体に取り付けられたままとなるので、上記図9に示すような着脱可能なカバー部材57を設けることにより、フィルタ(第1フィルタ59)の清掃あるいは交換を容易に行うことが可能となる。これにより、定着装置20の寿命よりも長い画像形成装置の寿命まで、同じ温度センサ50を使用し続けることができ、コスト低減や省資源化に貢献できる。
【0082】
また、図12に示す定着装置20は、定着ベルト43へのトナー付着防止のために、シリコンオイルを定着ベルト43表面に塗布する手段としての塗布ローラ80を備えているが、この場合、温度センサ50に設けたフィルタ53又は第1フィルタ59、あるいはそれらの表面を被覆する被覆層60を、シリコンオイルと同じ屈折率の材料で構成することにより、フィルタ53又は第1フィルタ59、あるいは被覆層60にシリコンオイルが付着しても、上記実施形態と同様に、赤外線透過率の変化を防止することができる。
【0083】
以上のように、本発明に係る温度センサは、赤外線を透過する透過部の少なくとも表層をワックスやオイル等の付着物と同じ屈折率の材料で構成しているため、透過部の表層にワックスやオイル等が付着しても、赤外線透過率が変化するのを防止することができる。これにより、本発明によれば、透過部への付着物の有無に関係なく、長期に亘って温度検知精度を良好に維持することが可能となり、信頼性が向上する。また、本発明に係る温度センサを定着装置の温度検知手段として用いることで、定着温度を正確に測定できるようになる。その結果、定着設定温度に余裕を持たせることが不要となり、画像を定着可能な最低限の温度で制御することができるようになるので、省エネルギー化を実現できる。
【0084】
なお、本発明が上述の実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、上述の実施形態の中で示唆した以外にも、実施形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0085】
20 定着装置
43 定着ベルト(定着部材)
44 加圧ローラ(対向部材)
45 ヒータ(加熱手段)
50 温度センサ(温度検知装置)
53 フィルタ(透過部材)
54 サーモパイル素子(受光素子)
59 フィルタ(透過部材)
60 被覆層
70 ワックス(付着物)
N 定着ニップ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0086】
【特許文献1】特開2004−45330号公報
【特許文献2】特開2004−12660号公報
【特許文献3】特許第3871198号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検知体から放射される赤外線を透過部を通して受光素子で受光し、当該被検知体の表面温度を検知する温度検知装置において、
前記透過部の少なくとも表層を、その表層に付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成したことを特徴とする温度検知装置。
【請求項2】
前記透過部は、赤外線を透過する透過部材を有し、当該透過部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成した請求項1に記載の温度検知装置。
【請求項3】
前記透過部は、赤外線を透過する透過部材と、赤外線を透過すると共に前記透過部材の表面を被覆する被覆部材を有し、当該被覆部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成した請求項1に記載の温度検知装置。
【請求項4】
前記透過部は、赤外線を透過する第1の透過部材と、当該第1の透過部材を透過した赤外線を透過する第2の透過部材を有し、前記第1の透過部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成した請求項1に記載の温度検知装置。
【請求項5】
前記透過部は、赤外線を透過する第1の透過部材と、当該第1の透過部材を透過した赤外線を透過する第2の透過部材と、前記第1の透過部材の表面を被覆する被覆部材を有し、当該被覆部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成した請求項1に記載の温度検知装置。
【請求項6】
前記透過部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率の光学ガラスで構成した請求項2又は4に記載の温度検知装置。
【請求項7】
前記被覆部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率のワックスで構成した請求項3又は5に記載の温度検知装置。
【請求項8】
前記透過部材を前記受光素子に対して着脱可能に構成した請求項2から7のいずれか1項に記載の温度検知装置。
【請求項9】
前記被検知体が記録媒体上の未定着画像を定着する定着部材である場合、前記付着物と同じ屈折率の材料として、前記定着部材の表面に塗布される離型剤、又はトナーに含有されている離型剤と同じ屈折率の材料を用いた請求項1から8のいずれか1項に記載の温度検知装置。
【請求項10】
前記受光素子をサーモパイル素子とした請求項1から9のいずれか1項に記載の温度検知装置。
【請求項11】
加熱手段によって加熱され記録媒体上の未定着画像を定着する定着部材と、当該定着部材と対向して定着ニップを形成する対向部材と、前記定着部材の表面温度を検知するための温度検知装置を備えた定着装置において、
前記温度検知装置を、請求項1から10のいずれか1項に記載の温度検知装置としたことを特徴とする定着装置。
【請求項12】
請求項11に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
画像形成装置本体に対して前記定着装置と前記温度検知装置を一体的に着脱可能に構成した請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記温度検知装置を画像形成装置本体に設けた請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項1】
被検知体から放射される赤外線を透過部を通して受光素子で受光し、当該被検知体の表面温度を検知する温度検知装置において、
前記透過部の少なくとも表層を、その表層に付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成したことを特徴とする温度検知装置。
【請求項2】
前記透過部は、赤外線を透過する透過部材を有し、当該透過部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成した請求項1に記載の温度検知装置。
【請求項3】
前記透過部は、赤外線を透過する透過部材と、赤外線を透過すると共に前記透過部材の表面を被覆する被覆部材を有し、当該被覆部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成した請求項1に記載の温度検知装置。
【請求項4】
前記透過部は、赤外線を透過する第1の透過部材と、当該第1の透過部材を透過した赤外線を透過する第2の透過部材を有し、前記第1の透過部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成した請求項1に記載の温度検知装置。
【請求項5】
前記透過部は、赤外線を透過する第1の透過部材と、当該第1の透過部材を透過した赤外線を透過する第2の透過部材と、前記第1の透過部材の表面を被覆する被覆部材を有し、当該被覆部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率の材料で構成した請求項1に記載の温度検知装置。
【請求項6】
前記透過部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率の光学ガラスで構成した請求項2又は4に記載の温度検知装置。
【請求項7】
前記被覆部材を、それに付着する付着物と同じ屈折率のワックスで構成した請求項3又は5に記載の温度検知装置。
【請求項8】
前記透過部材を前記受光素子に対して着脱可能に構成した請求項2から7のいずれか1項に記載の温度検知装置。
【請求項9】
前記被検知体が記録媒体上の未定着画像を定着する定着部材である場合、前記付着物と同じ屈折率の材料として、前記定着部材の表面に塗布される離型剤、又はトナーに含有されている離型剤と同じ屈折率の材料を用いた請求項1から8のいずれか1項に記載の温度検知装置。
【請求項10】
前記受光素子をサーモパイル素子とした請求項1から9のいずれか1項に記載の温度検知装置。
【請求項11】
加熱手段によって加熱され記録媒体上の未定着画像を定着する定着部材と、当該定着部材と対向して定着ニップを形成する対向部材と、前記定着部材の表面温度を検知するための温度検知装置を備えた定着装置において、
前記温度検知装置を、請求項1から10のいずれか1項に記載の温度検知装置としたことを特徴とする定着装置。
【請求項12】
請求項11に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
画像形成装置本体に対して前記定着装置と前記温度検知装置を一体的に着脱可能に構成した請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記温度検知装置を画像形成装置本体に設けた請求項12に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−73560(P2012−73560A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226788(P2010−226788)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]