説明

温度測定システム及び温度測定方法

【課題】多点温度測定及び広範囲の温度測定を低コストで行うことを実現した温度測定システムを提供する。
【解決手段】温度測定システム10は一本の光ファイバ11を備えており、光ファイバ11のFBG21,22,23,・・・,2nが被測定部31,32,33,・・・,3nにそれぞれ設けられている。光ファイバ11の一端に接続された光源12は、各FBGの反射帯域より広帯域であり且つ連続的なスペクトルの光を、入射光として光ファイバ11に入射する。測定手段13は、各FBGを通過した透過スペクトルの帯域幅を含む帯域を測定可能となっており、入力される透過スペクトル中に示される各FBGの反射スペクトルの移動量に基づいて、対応する被測定部の温度が測定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は温度測定システム及び温度測定方法に係り、特に、FBGが形成された光ファイバを利用して被測定部の温度を測定するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温度を測定するためのセンサとして、FBG(ファイバブラッググレーティング)が形成された光ファイバが利用される。FBGとは、光ファイバのコアの屈折率を軸方向に沿った所定の長さ周期(グレーティング周期)で変化させた回折格子であって、光ファイバへの入射光に対し、グレーティング周期に応じた特定の波長(ブラッグ波長)の光を反射し、残りの光を透過するという特性を有している。温度変化に応じてFBGが熱膨張すると、それに伴ってグレーティング周期が変化する。ブラッグ波長は、グレーティング周期の変化に対して線形に変化するため、ブラッグ波長の変化量に基づいて温度を測定することが可能となる。また、一本の光ファイバに複数のFBGを形成すれば複数箇所の温度を測定する多点温度度測定が可能となる。例えば特許文献1には、光ファイバへの入射光の光源としてレーザを用い、航空機の外板上に設けられた複数のFBGで温度を測定する温度測定システムが開示されている。
【0003】
ここで、図7を用いて、レーザを光源としてFBGによる温度測定を行う方法について概略的に説明する。図7において符号100で示される領域は、温度測定の対象となる被測定部が所与の温度にある場合におけるFBGの反射スペクトルを示している。また、符号200で示される領域は、レーザが発する入射光のスペクトルを示しており、その帯域幅は、FBGの反射スペクトルの帯域幅より狭いことが一般的である。被測定部が上記温度にある場合、FBGは、符号200で示される入射光を反射強度S1にて反射する。また、被測定部の温度が上昇してFBGが伸張すると、FBGの反射スペクトルは一点鎖線の領域110で示されるように長波長側にシフトし、反射光の反射強度がS1からS2へと変化する。上述したように、FBGのブラッグ波長はグレーティング周期の変化、すなわち被測定部の温度変化に対して線形に変化するため、反射強度S1、S2の差異に基づいて被測定部の温度が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−516855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一本の光ファイバに複数のFBGを形成して多点温度測定を行う場合、反射光がどのFBGからのものであるかを判別することが必要となる。したがって、各FBGは、それらのグレーティング周期が互いに異なるように、すなわち各FBGの反射帯域が互いに異なるように形成されることが一般的である。ここで、上述したようにレーザが発する入射光の帯域幅は狭く、単一のレーザで各FBGの反射帯域に対応した入射光を発することはできないため、特許文献1に記載の温度測定システムでは、複数のレーザまたは波長可変レーザを光源として用いている。しかしながら、レーザはLED等と比較すると高価な機器であり、波長可変レーザはさらに高価であるため、特許文献1に記載の温度測定システムのようにレーザを光源として多点温度測定を行う場合、温度測定システムのコストが高くなるという問題点が生じる。
【0006】
また、被測定部の温度の変化幅が広い場合、温度上昇時におけるFBGの熱膨張量も大きくなるため、FBGの反射スペクトルが図7の二点鎖線で示される領域120にシフトすることがある。このような場合、レーザが発する入射光のスペクトル200は反射スペクトルの帯域内に含まれず、FBGにおける反射が起こらないため、温度の測定を行うことが不可能になるという問題点が生じる。この問題点を回避するには、波長可変レーザを用いるか、または光ファイバの材料を変更してFBGの熱膨張量を少なくすることが必要となるため、多点温度測定を行う場合と同様に、温度測定システムのコストが高くなる。すなわち、レーザを光源として多点温度測定を行う温度測定システム、及びレーザを光源として温度の変化幅が大きい被測定部の温度測定を行う温度測定システムは、システムを低コストで構築することが困難であるという問題点を有していた。
【0007】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、多点温度測定及び広範囲の温度測定を低コストで行うことを実現した温度測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る温度測定システムは、被測定部の温度に応じて入射光に対する反射光の波長と入射光に対する透過光の波長とを変化させるFBGを有する光ファイバと、光ファイバに入射光を入射する光源と、反射光または透過光に基づいて、被測定部の温度を測定する測定手段とを備えた温度測定システムにおいて、光源は、FBGの反射スペクトルの帯域幅より広い帯域幅を有するとともに連続的なスペクトルを有する光を入射光として光ファイバに入射し、測定手段は、FBGの反射スペクトルの位置の変化量またはFBGの透過スペクトルの位置の変化量に基づいて、被測定部の温度を測定することを特徴とするものである。
【0009】
光源が発する入射光を、FBGの反射スペクトルの帯域幅より広い帯域幅を有するとともに連続的なスペクトルを有する広帯域の光としたので、入射光のスペクトルの帯域幅に合わせてFBGを複数とすることが可能となる。また、入射光が広帯域であるため、FBGが単一であるか複数であるかにかかわらず、測定可能な温度範囲も広げられた状態となる。測定手段は、FBGの反射スペクトルまたは透過スペクトルを測定するため、入射光のスペクトルの帯域幅に対応した波長帯域を測定すると、その帯域内にFBGの反射スペクトルを見つけることができ、このスペクトルの位置の変化量に基づいて温度の変化量を求めることができる。すなわち、単体の光源を用いても測定可能な帯域幅が広がった状態となっており、レーザを光源とする場合のように、光源を複数とすることや、入射光の波長を可変とすることを必要としない。また、入射光を広帯域とする場合、例えばLED等の安価な機器を光源として用いることができる。したがって、温度測定システムにおいて、多点温度測定及び広範囲の温度測定を低コストで行うことが可能となる。
【0010】
光ファイバは複数のFBGを有していてもよい。また、測定手段は、FBGの透過スペクトルの位置の変化量に基づいて、対応する被測定部の温度を測定してもよい。一般的に、FBGの反射スペクトルを測定する場合は光源及び測定手段が共に光ファイバの一端側に接続されるため、FBGからの反射光を測定手段に導くためのサーキュレータ等が必要となる。一方、FBGの透過スペクトルを測定する場合、光ファイバの一端側に光源が接続され、他端側に測定手段が接続されるため、サーキュレータ等を必要とすることなく透過光を測定手段に入力できる。すなわち、透過スペクトルを測定する場合、温度測定システムの構成を簡単にすることが可能となる。
【0011】
測定手段は、FBGの反射スペクトルの位置の変化量に基づいて、対応する被測定部の温度を測定してもよい。複数のFBGを有する温度計測システムにおいてFBGの反射スペクトルを測定する構成とした場合、光ファイバが途中で断線すると、断線箇所以降にあるFBGからの反射光が測定手段に届かなくなる。したがって、断線の有無、及び断線箇所の特定を行うことが可能となる。
【0012】
この発明に係る温度測定システムは、車両の温度を測定する車両用センサとして用いることが可能であり、その場合、車両は複数の被測定部を有し、光ファイバは複数の被測定部に設けられる複数のFBGを有する。
【0013】
また、この発明に係る温度測定方法は、被測定部の温度に応じて入射光に対する反射光の波長と入射光に対する透過光の波長とを変化させるFBGを有する光ファイバと、光ファイバに入射光を入射する光源と、反射光または透過光に基づいて、被測定部の温度を測定する測定手段とを備えた温度測定システムを用いて、被測定部の温度を測定する温度測定方法において、FBGを被測定部に設けるステップと、光源によってFBGの反射スペクトルの帯域幅より広い帯域幅を有するとともに連続的なスペクトルを有する光を入射光として光ファイバに入射するステップと、測定手段によってFBGの反射スペクトルまたはFBGの透過スペクトルを測定し、反射スペクトルの位置の変化量または透過スペクトルの位置の変化量に基づいて、被測定部の温度を算出するステップとを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、温度測定システムにおいて、多点温度測定及び広範囲の温度測定を低コストで行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態1に係る温度測定システムの構成を示す概略図である。
【図2】実施の形態1に係る温度測定システムにおけるFBGの構成を示す概略図である。
【図3】実施の形態1に係る温度測定システムにおける各FBGの反射スペクトルを示すグラフである。
【図4】実施の形態1に係る温度測定システムにおいて測定手段に入力される透過スペクトルを示すグラフであり、(a)は定常状態のスペクトルを示し、(b)は温度変化が生じた状態を示す。
【図5】この発明の実施の形態2に係る温度測定システムの構成を示す概略図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係る温度測定システムを用いた車両用センサの構成を示す概略図である。
【図7】従来の温度計測方法を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、この発明の実施の形態について添付図に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1に、この実施の形態1に係る温度測定システム10の構成を概略的に示す。温度測定システム10は、一本の光ファイバ11と、光ファイバ11の一端に接続された光源12と、光ファイバ11の他端に接続された測定手段13とを備えている。また、光ファイバ11の途中には、n個のFBG(ファイバブラッググレーティング)21,22,23,・・・,2nが形成されており、これらのFBGが温度測定の対象となるn箇所の被測定部31,32,33,・・・,3nにそれぞれ設けられている。後述するように、各被測定部の温度は、対応するFBGによって測定可能となっている。すなわち、温度測定システム10は、複数の被測定部の温度を測定する多点温度測定を一本の光ファイバ11によって行うものである。
【0017】
次に、図2に示されるFBG21を参照して、その構成について説明する。図2に示すように、光ファイバ11は、光源12(図1参照)から入力される入射光L1が伝播するコア11aと、コア11aの外周部を覆うクラッド11bとを有している。FBG21は、コア11aの屈折率を軸方向に沿った所定の長さ周期(グレーティング周期)Λ1で変化させた回折格子であって、入射光L1に対し、特定の波長(ブラッグ波長)の光を反射光L2として反射し、残りの光を透過光L3として透過するという特性を有している。尚、光ファイバ11は、例えば石英ガラス等の材料から形成されており、その熱膨張率は正の値となっている。また、一例として、各FBGの形成は、光ファイバ11のコア11aに紫外線等を照射することによって行われる。
【0018】
グレーティング周期Λ1は、FBG21のブラッグ波長を規定する要素の1つとなっており、グレーティング周期Λ1の変化量に対してブラッグ波長が線形に変化するようになっている。すなわち、被測定部31の温度が上昇してFBG21が伸張すると、グレーティング周期Λ1も大きくなるため、それに伴ってブラッグ波長が長波長側にシフトする。逆に、被測定部31の温度が低下してFBG21が収縮すると、グレーティング周期Λ1も小さくなるため、それに伴ってブラッグ波長が短波長側にシフトする。したがって、ブラッグ波長のシフト量に基づいて、被測定部31の温度を測定することが可能となる。ここで、FBG21を透過した透過光L3は、入射光L1から反射光L2を除いたものとなるため、ブラッグ波長のシフト量は反射側及び透過側の双方から求めることが可能となっている。
【0019】
また、図2には示されていないが、入射光L1が伝播する方向におけるFBG21の下流側にはFBG22,23,・・・,2nが配置されており(図1参照)、上流側のFBGが透過した透過光が下流側のFBGに順次入射されるようになっている。これらのFBGは、FBG21と同様の構成を有し、対応する被測定部32,33,・・・,3nの温度をそれぞれ測定するためのものであるが、互いに異なるグレーティング周期Λ2,Λ3,・・・,Λnとなるように、すなわち、各FBGが互いに異なるブラッグ波長の光を反射するように形成されている。図3を用いてより詳細に説明すると、FBG21,22,・・・,2nは、それらのブラッグ波長を中心波長とする反射スペクトル41,42,・・・,4nの反射光をそれぞれ反射する。各FBGのグレーティング周期は、対応する反射スペクトルが互いに離間した波長帯域に位置するように選択され、それにより、反射光及び透過光がどのFBGからのものであるかを判別可能となっている。
【0020】
図1に戻って、光源12は、各FBG21,22,・・・,2nの反射スペクトル41,42,・・・,4n(図3参照)を帯域幅に含む広帯域の光を発する機器であり、例えば白色光を発するLED等が用いられる。ここで、LEDにより発せられる白色光とは紫外線(不可視)、紫色〜赤色に対応する波長の光(可視)および赤外線(不可視)が、連続的につながったスペクトルを示す光を指す。すなわち、光源12が光ファイバ11への入射光L1(図2参照)として発する光は無色の光のみに限定されるものではなく、そのスペクトルの帯域幅に応じた様々な色の光を含み得る。一方、測定手段13は、複眼の光学素子であるMOSやCCDを用いて所定の帯域内における光の強度を測定する機器であり、光源12が発する入射光L1の発光帯域を測定可能となっている。尚、光源12の反対側に測定手段13が接続されていることから明らかであるように、温度測定システム10は、各FBGが透過した透過光に基づいて各被測定部の温度を測定するものである。
【0021】
次に、この発明の実施の形態1に係る温度測定システムを用いて被測定部31,32,33,・・・,3nの温度を測定する方法について説明する。
図1に示すように、まず、FBG21,22,23,・・・,2nが対応する被測定部31,32,33,・・・,3nに接着等によって設けられ、次いで、光源12から光ファイバ11に入射光L1が入射される。入射光L1が入射されると、最も上流側に位置するFBG21は、そのブラッグ波長に応じた反射光L2(図2参照)を反射し、残りの光を透過光L3(図2参照)として下流側に透過する。同様に、FBG22,23,・・・,2nは、上流側のFBGからの透過光に対してブラッグ波長に応じた反射光を反射し、残りの光を透過する。最終的に、全てのFBGを透過した光が測定手段13に入力されて監視される。
【0022】
ここで、各FBGが透過する透過光は、その上流側から入射される光から反射光を除いたものとなる。また、光源12は各FBGの反射スペクトルを帯域幅に含む広帯域の光を発しており、測定手段13は、光源12が発する光の発光帯域を測定可能となっている。すなわち、図4(a)に示されるように、全てのFBGを通過して測定手段13に入力される透過スペクトル50には、各FBGによって反射されたスペクトル51,52,・・・,5nが含まれた状態となっており、測定手段13は、これらのスペクトルを波形として認識することが可能となっている。尚、各反射スペクトル51,52,・・・,5nは透過スペクトル50内において互いに離間しているため、これらが位置する波長帯域に基づいて、対応するFBGが判別される。また、図4(a)は、各被測定部に温度変化が生じる前の定常状態を示すものである。
【0023】
以上のように透過スペクトル50を監視する温度測定システム10において、被測定部31の温度が低下し、且つ被測定部32の温度が上昇した場合について以下に説明する。図4(a)に示される定常状態から被測定部31の温度が低下すると、対応するFBG21が収縮してブラッグ波長が短波長側にシフトする。また、被測定部32の温度が上昇すると、対応するFBG22が伸張してブラッグ波長が長波長側にシフトする。したがって、図4(b)に示されるように、測定手段13(図1参照)に入力される透過スペクトル50は、被測定部31に対応する反射スペクトル51が符号51’で示される位置に移動し、被測定部32に対応する反射スペクトル52が符号52’で示される位置に移動した状態となる。測定手段13は、各FBGにおける反射スペクトルを波形として認識可能であるため、被測定部31、32の温度変化量が反射スペクトル51、52の移動量に基づいて、具体的には、反射スペクトル51、52を示す波形のピーク位置の移動量や、あるいは所定の強度における波形の移動量等に基づいて測定される。
【0024】
上述したように、光源12が発する入射光L1を、FBG21,22,23,・・・,2nの反射スペクトル51,52,・・・,5nの帯域幅より広い帯域幅を有するとともに連続的なスペクトルを有する広帯域の光としたので、入射光L1のスペクトルの帯域幅に合わせてFBGを複数とすることが可能となる。また、入射光L1が広帯域であるため、FBGが単一であるか複数であるかにかかわらず、測定可能な温度範囲も広げられた状態となる。測定手段13は、FBG21,22,23,・・・,2nを通過した透過スペクトル50を測定するため、入射光L1のスペクトルの帯域幅に対応した波長帯域を測定すると、その帯域内に各FBGの反射スペクトル51,52,・・・,5nを見つけることができ、これらのスペクトルの位置の変化量に基づいて温度の変化量を求めることができる。すなわち、単体の光源12を用いても測定可能な帯域幅が広がった状態となっており、発光帯域が狭いレーザを光源とする場合のように、光源を複数とすることや、入射光の波長を可変とすることを必要としない。また、入射光L1を広帯域とする場合、例えばLED等の安価な機器を光源12として用いることができる。したがって、温度測定システム10において、多点温度測定及び広範囲の温度測定を低コストで行うことが可能となる。
【0025】
また、測定手段13によって各FBG21,22,23,・・・,2nを通過した透過スペクトル50に基づいて、対応する被測定部31,32,33,・・・,3nの温度を測定したので、温度測定システム10の構成が簡単になる。具体的には、測定手段13を反射側、すなわち光源12側に接続する場合、各FBGからの反射光を測定手段に導くためにサーキュレータ等の機器を必要とすることが一般的であるが、温度測定システム10のように透過スペクトル50に基づいて温度測定を行う場合、光ファイバ11の一端側に光源12を接続し、他端側に測定手段13を接続すればよく、サーキュレータ等を必要としない。
【0026】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係る温度測定システムについて説明する。この実施の形態2に係る温度測定システムは、実施の形態1に係る温度測定システム10における測定手段13が透過側、すなわち光源12の反対側に接続されていたのに対し、反射側に接続されるように構成したものである。尚、以下に説明する実施の形態において、図1〜4に示される符号と同一の符号は同一または同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
【0027】
図5に示すように、温度測定システム60は、実施の形態1と同様の光ファイバ11と光源12とを備えている。また、光源12と、最も上流側に位置するFBG21との間には、FBG21側から光源12側に伝播する光を光ファイバ61に分岐するためのサーキュレータ62が接続されており、光ファイバ61の先端に測定手段13が接続されている。すなわち、実施の形態1における温度測定システム10が、FBG21,22,23,・・・,2nを通過した透過スペクトル50(図4参照)を監視し、それに含まれる反射スペクトル51,52,・・・,5nの位置の変化量に基づいて被測定部の温度を測定していたのに対し、温度測定システム60は、図3に示される反射スペクトル41,42,・・・,4nを監視し、これらの移動量に基づいて温度を測定するものである。その他の構成、及び温度の測定方法については、実施の形態1と同様である。
【0028】
以上のように、測定手段13をFBG21,22,23,・・・,2nの反射側に接続しても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、測定手段13を反射側に接続した場合、例えばFBG21とFBG22との間で光ファイバ11が断線したとすると、測定手段13には、断線箇所以降にあるFBG22,23,・・・,2nからの反射光が届かなくなるため、断線の有無の判別及び断線箇所の特定を行うことが可能となる。
【0029】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3に係る温度測定システムについて、電気自動車やハイブリッドカー等に適用される車両用センサとして適用した場合を例として説明する。
図6に示すように、車両用センサ70は、車両71の前部に設けられたバッテリー72aや車両71の居室内にある部位72b、72c等を光ファイバ11で順次接続したものとなっている。すなわち、バッテリー72aや上記の部位72b、72cは、実施の形態1、2における被測定部に相当しており、これらに対してFBG21〜23がそれぞれ設けられている。また、測定手段13には、図示しない車両の制御部が接続されており、FBG21〜23を利用した温度測定結果に基づいて、バッテリーの稼働状況を示す警告灯やオートエアコン等の機器の動作が制御される。その他の構成及び温度測定方法については、実施の形態1と同様である。
以上のように、この発明に係る温度測定システムは、車両用センサ70として適用することも可能となっている。この場合、一本の光ファイバ11を車両71内に敷設すれば多点温度測定を行えるため、簡単な構成で複数個所の温度管理を行うことが可能となる。
【0030】
実施の形態1〜3に係る温度測定システムは多点温度測定を行うものとして構成されたが、被測定部を複数とすることに限定するものではなく、一箇所の被測定部の温度測定に用いることも可能である。本発明は、広帯域の光源と、光源の発光帯域を測定可能な測定手段とを用いることにより、測定可能な温度範囲を広げることができるという効果を有しており、この効果は被測定部の数に関わらず共通のものである。したがって、レーザを光源とする場合のように、光源の発光帯域がFBGの反射スペクトルから外れて温度の測定が不可能となる問題が生じることがない。
【符号の説明】
【0031】
10,60 温度測定システム、11 光ファイバ、12 光源、13 測定手段、21,22,23,・・・,2n FBG、31,32,33,・・・,3n 被測定部、70 車両用センサ、71 車両、72a バッテリー(被測定部)、72b,72c 車両の居室内の部位(被測定部)、L1 入射光、L2 反射光、L3 透過光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定部の温度に応じて入射光に対する反射光の波長と前記入射光に対する透過光の波長とを変化させるFBGを有する光ファイバと、
前記光ファイバに前記入射光を入射する光源と、
前記反射光または前記透過光に基づいて、前記被測定部の温度を測定する測定手段と
を備えた温度測定システムにおいて、
前記光源は、前記FBGの反射スペクトルの帯域幅より広い帯域幅を有するとともに連続的なスペクトルを有する光を前記入射光として前記光ファイバに入射し、
前記測定手段は、前記FBGの反射スペクトルの位置の変化量または前記FBGの透過スペクトルの位置の変化量に基づいて、前記被測定部の温度を測定することを特徴とする温度測定システム。
【請求項2】
前記光ファイバは複数の前記FBGを有する請求項1に記載の温度測定システム。
【請求項3】
前記測定手段は、前記FBGの透過スペクトルの位置の変化量に基づいて、対応する前記被測定部の温度を測定する請求項1または2に記載の温度測定システム。
【請求項4】
前記測定手段は、前記FBGの反射スペクトルの位置の変化量に基づいて、対応する前記被測定部の温度を測定する請求項1または2に記載の温度測定システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の温度測定システムを用いて車両の温度を測定する車両用センサであって、
前記車両は複数の被測定部を有し、
前記光ファイバは前記複数の被測定部に設けられる複数のFBGを有する車両用センサ。
【請求項6】
被測定部の温度に応じて入射光に対する反射光の波長と前記入射光に対する透過光の波長とを変化させるFBGを有する光ファイバと、
前記光ファイバに前記入射光を入射する光源と、
前記反射光または前記透過光に基づいて、前記被測定部の温度を測定する測定手段と
を備えた温度測定システムを用いて、前記被測定部の温度を測定する温度測定方法において、
前記FBGを前記被測定部に設けるステップと、
前記光源によって前記FBGの反射スペクトルの帯域幅より広い帯域幅を有するとともに連続的なスペクトルを有する光を前記入射光として前記光ファイバに入射するステップと、
前記測定手段によって前記FBGの反射スペクトルまたは前記FBGの透過スペクトルを測定し、前記反射スペクトルの位置の変化量または前記透過スペクトルの位置の変化量に基づいて、前記被測定部の温度を算出するステップと
を含むことを特徴とする温度測定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−225687(P2012−225687A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91421(P2011−91421)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】