説明

温度特性補償方法及び温度特性補償回路

【課題】温度補償の演算処理をデジタル化して小型化できるとともに、高精度な温度補正を可能とすることを目的とする。
【解決手段】本発明の温度特性補償方法は、2次の温度特性を有し2次温度係数が同一で頂点温度が互いに異なる2つの電圧制御発振器20,22の初期周波数を設定し、電圧制御発振器20,22を起動してそれぞれの出力周波数を測定し、測定した電圧制御発振器20,22の出力周波数の差分を算出し、差分に対応した補正値を計算し、得られた補正値を前記2つの電圧制御発振器20,22に入力し周波数補正することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に2次の温度特性を有する複数の発振器を用いて温度特性を補償する温度特性補償方法及び温度特性補償回路である。
【背景技術】
【0002】
従来の温度補償型発振器では、温度変化による発振周波数の変動を抑制するため、温度特性に優れたデバイスの特性を参照しながら、発振器の制御電圧を制御することが行われている。
【0003】
例えば特許文献1では、2つの発振器の温度特性の傾きが逆であることを利用した温度特性補償方法が開示されている。
また例えば特許文献2では、2つのSAW発振器の二次温度係数差を利用して温度補償を行う温度特性補償回路が開示されている。すなわち頂点温度が同一で曲率が異なる特性の第1及び第2のSAW発振器の発振周波数の差分を電圧変換して第3のSAW発振器の制御信号を生成し、SAW発振器の発振周波数のばらつきを打ち消すようにしている。
【特許文献1】特開2006−60531号公報
【特許文献2】特開2006−67079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1では、アナログ回路が多々必要であり、システムの1チップ化が困難であり、装置の小型化を図れないという問題がある。
また特許文献2では、温度検知用に2つのSAW発振器、及び信号出力用のSAW発振器の合計3つの発振器が必要となる。また異なる2次温度係数の発振器を実現するためにSAWの圧電基板と異なるものにする必要があり、製品の製造及び小型化が困難であるという問題があった。
【0005】
そこで上述した従来技術の問題点を解決するため、本発明は、温度補償の演算処理をデジタル化して小型化できるとともに、高精度な温度補正を可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
〔適用例1〕2次の温度特性を有し頂点温度が互いに異なる2つの電圧制御発振器を有する温度補償回路の温度特性補償方法であって、前記2つの電圧制御発振器を起動して前記2つの電圧制御発振器それぞれの出力周波数を測定し、測定した前記2つの電圧制御発振器の前記出力周波数の差分を算出し、前記2つの電圧制御発振器のうち少なくとも何れか一方の前記電圧制御発振器の補正値を、前記差分に基づいて演算し、演算された前記補正値を前記一方の電圧制御発振器に入力し周波数補正することを特徴とする温度特性補償方法。これにより、第1及び第2の電圧制御発振器の周波数の差分に基づいて各発振器の周波数を補正することができる。この演算処理はデジタル回路で構成することができる。よって製造時のばらつきを受け難く、高精度な温度補正が可能となる。また発振開始のわずかな期間のみ補償回路が動作し、周波数設定を計算するための消費電力を低減することができる。
〔適用例2〕前記補正値を演算する工程は、前記2つの電圧制御発振器の前記出力周波数の前記差分をT、2次係数の補正パラメータをβ、0次係数の補正パラメータをRefとした場合、
補正値=β(Ref−T)
上式で示す前記補正値を演算する工程であることを特徴とする適用例1に記載の温度特性補償方法。これにより、電圧制御発振器の周波数の差分から補正する周波数設定値を求めることができ、この演算処理はデジタル回路で構成することができる。また1チップ化に適しており、回路全体を小型化することができる。
〔適用例3〕2次の温度特性を有し頂点温度が互いに異なる第1及び第2の電圧制御発振器と、前記第1及び第2の電圧制御発振器の出力周波数をそれぞれ測定する第1及び第2のカウンタと、前記第1及び第2のカウンタを所定時間カウントさせるカウンタ値監視回路と、少なくとも前記第1及び第2の電圧制御発振器の何れか一方の前記出力周波数を調整する補正値を、前記第1及び第2の電圧制御発振器の前記出力周波数の差分に基づいて演算する発振周波数調整部と、を備えたことを特徴とする温度特性補償回路。これにより、第1及び第2のSAW発振器の周波数の差分に基づいて発振器の周波数を補正することができる回路が得られる。このためデジタル回路で構成することができる。また発振開始のわずかな期間のみ補償回路が動作し、周波数設定を計算するための消費電力を低減することができる。
〔適用例4〕前記発振周波数調整部は、前記2つの電圧制御発振器の前記出力周波数の前記差分をT、2次係数の補正パラメータをβ、0次係数の補正パラメータをRefとした場合、
補正値=β(Ref−T)
上式で示す前記補正値を演算することを特徴とする適用例3に記載の温度特性補償回路。これにより、電圧制御発振器の周波数の差分から補正する周波数設定値を求めることができ、この演算処理を行う発振周波数調整部はデジタル回路で構成することができる。また1チップ化に適しており、回路全体を小型化することができる。
〔適用例5〕前記発振周波数調整部は、レジスタと、ALUと、制御回路とを備えていることを特徴とする適用例3又は適用例4に記載の温度特性補償回路。これにより、1チップ化に適しており、回路全体を小型化することができる。また、発振周波数調整部の減算器、乗算器による複数の演算処理を共通化させることができ回路規模を抑えることができる。
〔適用例6〕前記発振周波数調整部は、マイクロコントローラを用いたことを特徴とする適用例3又は適用例4に記載の温度特性補償回路。これにより、マイクロコントローラを搭載した発振器のマイクロコントローラに周波数補正の演算処理を行わせることにより演算処理のために特別な回路を設ける必要がなくなるため、構成を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の温度特性補償方法および温度特性補償回路の実施形態を添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
図1は本発明の温度特性補償回路の構成概略を示す図である。図示のように本発明の温度特性補償回路10は、第1および第2の電圧制御発振器20,22と、第1及び第2のカウンタ30,32と、カウンタ値監視回路40と、発振周波数調整部50と、出力部90とを備えている。
【0008】
第1及び第2の電圧制御発振器20,22は、2次の温度特性を有する発振器であり、一例としてSAW発振器を用いることができる。ここでSAW発振器は、弾性表面波装置を備え、弾性表面波装置には弾性表面波を励振するIDT(インターデジタルトランスデューサ)電極が設けられるとともに、弾性表面波を反射する反射器電極が設けられている。IDT電極は、互いに噛み合うように配置された1組の櫛形電極にて構成することができる。さらに櫛形電極間には複数のインバータ、抵抗、バリキャップを設けた構成とし、後述の補正値を周波数制御値として外部から入力することにより発振周波数を補正することができる。
【0009】
本発明の第1及び第2の電圧制御発振器は、2次の温度係数が同一で頂点温度が互いに異なるように構成している。なお各頂点温度の離間距離は大きいほど補正が有利になる。離間距離が小さいと1次直線の傾きが小さくなり補正計算が困難になるためである。また第1及び第2の電圧制御発振器は、中心周波数が互いに異なるように設定している。本実施形態では、一例として第1の電圧制御発振器の頂点温度を20℃、中心周波数を314MHzとし、第2の電圧制御発振器の頂点温度を30℃、中心周波数を315MHzとしている。
【0010】
第1及び第2のカウンタ30,32は、第1及び第2の電圧制御発振器20,22のそれぞれに電気的に接続している。第1及び第2のカウンタ30,32は、第1及び第2の電圧制御発振器のそれぞれの発振周波数を所定時間測定するものである。
【0011】
第1及び第2のカウンタ30,32には、カウンタ値監視回路40が接続している。カウンタ値監視回路40は、第1又は第2のカウンタ30,32のいずれか一方と接続し、そのカウンタが測定する発振器の周波数測定値が入力される。本実施形態では、一例としてカウンタ値監視回路40と第1のカウンタ30とが接続した構成で説明する。カウンタ値監視回路40は、第1のカウンタ30のカウンタ値を監視し、そのカウンタ値が予め設定された値に達したことを検出するとカウンタを停止させる信号を第1及び第2のカウンタ30,32に入力する。本実施形態のカウンタの測定時間は、一例として初期起動時から10msに設定することができる。またカウンタ値監視回路40は、後述する第1及び第2のマルチプレクサ70,72にも停止信号を入力するように構成している。
【0012】
発振周波数調整部50は、第1及び第2のカウンタ30,32の出力側と接続し、各電圧制御発振器の周波数測定値が入力され補正値の演算処理を行っている。
発振周波数調整部50の第1の減算器52は、第1及び第2の電圧制御発振器20,22の周波数測定値の差分を算出する減算器である。このとき第1の減算器52は、第1又は第2の電圧制御発振器20,22のうちいずれか高い周波数測定値から低い周波数測定値を減算するように設定されている。
【0013】
第1の減算器52の出力側は2つに分岐して第2及び第3の減算器54,56に接続している。第2及び第3の減算器54,56は、補正の精度を上げるために設定したパラメータ調整(Ref1,Ref2)を行っており、前述の第1及び第2の発振器の周波数測定値を差分して得られた線形に変化する1次直線の0次係数を調整する減算器である。補正パラメータRef1,Ref2は、予め2つの発振器の頂点温度の差から求めることができる。
【0014】
第2及び第3の減算器54,56の出力側にはそれぞれ第1及び第2の乗算器58,60が接続している。第1及び第2の乗算器58,60は、第2及び第3の減算器58,60の出力信号を二乗して、1次直線から2次曲線を求めている。
【0015】
第1及び第2の乗算器58,60の出力側にはそれぞれ第3および第4の乗算器62,64が接続している。第3及び第4の乗算器62,64は、第1及び第2の乗算器58,60から出力された2次曲線に対して予め設定された補正パラメータとなる2次係数βを乗算している。
【0016】
第3及び第4の乗算器62,64の出力側には第4及び第5の減算器66,68がそれぞれ接続している。まず第4の減算器66には、第3の乗算器62からの出力信号と、周波数設定された信号が入力される。ここで周波数設定は、周波数をデジタル的に可変できる設定値であり、例えば64設定とした場合、真ん中の値となる32を常温(25℃)における発振周波数を314MHzと設定することができる。第4の減算器66では、この周波数設定信号32と第3の乗算器62から得られた調整値との差分を算出している。また第4の減算器66と同様な処理が第5の減算器68でも行われる。すなわち第5の減算器68では、この周波数設定信号32(例えば常温における周波数を315MHzと設定する。)と第4の乗算器64から得られた調整値との差分を算出している。
【0017】
第4及び第5の減算器66,68の出力側には第1及び第2のマルチプレクサ70,72が接続している。第1及び第2のマルチプレクサ70,72は、複数のデータ信号から選択信号に基づいて選択したデータ信号を出力する演算器である。第1及び第2のマルチプレクサ70,72には、それぞれ第4及び第5の減算器66,68の出力信号と、周波数設定信号と、選択信号となるカウンタ値監視回路40の停止信号が入力される。ここでカウンタ値監視回路40と第1及び第2のマルチプレクサ70,72の間には、インバータ42を設けている。インバータ42は、カウンタ値監視回路40からの停止信号を反転させた信号を出力する反転回路である。第1及び第2のマルチプレクサ70,72では、カウンタ値監視回路40からの停止信号に基づいて出力信号を選択している。ここで本発明の第1及び第2のマルチプレクサ70,72は、初期起動時においてカウンタが測定している間は、周波数設定を選択し電圧制御発振器に周波数制御値として入力する。一方、カウンタ値監視回路から停止信号が入力されカウンタが停止したとき、周波数設定との差分を算出した出力信号を選択し、電圧制御発振器に周波数制御値として入力する。したがって第1のマルチプレクサ70は、カウンタ値監視回路40からの停止信号が入力されるまでは、周波数設定信号32を選択して出力する。一方、カウンタ値監視回路40から停止信号が入力されたとき、第4の減算器66からの調整された補正値が出力される。第1のマルチプレクサ70と同様な処理が第2のマルチプレクサ72でも行われる。すなわち、第2のマルチプレクサ72では、カウンタ値監視回路40からの停止信号が入力されるまでは、周波数設定信号32を選択して出力する。一方、カウンタ値監視回路40から停止信号が入力されたとき、第5の減算器68からの調整された補正値が出力される。
【0018】
出力部90は、第3のマルチプレクサ92と、増幅器(Amp)94とから構成されている。第3のマルチプレクサ92は、第1及び第2の発振器20,22と接続し、各発振器の周波数出力信号と、出力選択信号が入力される。ここで出力選択信号は、第1又は第2の発振器20,22のいずれか一方の周波数出力信号を選択する信号である。第3のマルチプレクサ92では、出力選択信号に基づいて第1又は第2の発振器20,22の周波数出力信号を選択して出力している。増幅器94はマルチプレクサ92の出力側に接続し、マルチプレクサ92からの信号を増幅させて出力信号として出力している。
【0019】
次に上記構成による本発明の温度補償回路を用いた温度特性補償方法について説明する。図2は本発明の温度特性補償方法のフローチャートを示す図である。また図3は本発明の温度特性補償方法の説明図である。図4は周波数設定による発振周波数の変化を示したグラフである。
【0020】
まず周波数設定と発振周波数の関係について図4を用いて説明する。図4の横軸は周波数設定を示し、縦軸は発振周波数(MHz)を示している。仮に64設定とした場合、設定が大きいほどキャパシタアレイの容量値が大きいため、図示のように発振周波数は下がる傾向にある。図中ライン1は常温のときの周波数設定を32とし、そのときの発振周波数を315MHzとした1次直線である。そして温度が上昇又は下降したとき、2次の温度特性から発振周波数はいずれも下がる傾向にある(図中ライン2は−25℃の場合を示す)。そこで周波数設定を小さくして315MHzで発振させるように周波数設定を補正する必要がある。以下、周波数設定を補正する温度特性補償方法を図2のフローチャートに従って説明する。
【0021】
本発明の温度特性補償方法は、電圧制御発振器の初期起動時における発振周波数を測定し、その周波数測定値に基づいて発振器の周波数を補正している。そこでまず、第1及び第2の電圧制御発振器を起動させる(ステップ100)。本実施形態では第1及び第2の電圧制御発振器の発振周波数をそれぞれ314MHz,315MHzとしている。このとき第1及び第2の電圧制御発振器20,22にはそれぞれ第1及び第2のマルチプレクサ70,72から周波数設定32が入力される。なお本実施形態では一例として常温(25℃)における発振周波数314MHz,315MHzの周波数設定を32に設定している。
【0022】
第1及び第2の電圧制御発振器20,22のそれぞれに接続する第1及び第2のカウンタ30,32により各発振器の発振周波数を所定時間測定する(ステップ110)。
【0023】
カウンタ値監視回路40では、カウンタからの周波数測定値が入力されて、周波数測定を規定回数行わせた後、停止信号を第1及び第2のカウンタ30,32に出力する(ステップ120)。
【0024】
第1及び第2のカウンタ30,32の周波数測定値(Fcn1=3139898,Fcn2=3149847)に基づいて発振周波数調整部50で補正値の演算処理を行う(ステップ130)。
【0025】
まず第1の減算器52により、第1及び第2の電圧制御発振器20,22の周波数測定値の差分を算出する(T=Fcn1−Fcn2=9949)。このとき得られた差分は、温度に対して線形に変化する値で得られ、第1及び第2の電圧制御発振器20,22の2次曲線の交点を通る一次直線上に表される。
【0026】
そして各発振器の各2次曲線の頂点位置までシフトさせる0次補正を行う。0次係数の補正パラメータ(Ref1,Ref2)は、第1及び第2の電圧制御発振器の発振周波数差である1MHzから99990MHz=9999とし、各頂点温度のシフト分を±5とした場合、
Ref1=(9999−5)=9994
Ref2=(9999+5)=10004
の関係を満たす。
したがって第2及び第3の減算器54では、
Ref1−T=(9994−9949)=45
Ref2−T=(10004−9949)=55
となる。
【0027】
次に2次温度係数の補正を行う。まず第1及び第2乗算器58,60で第2及び第3の減算器58,60の出力信号を二乗して、1次直線から2次曲線を求めている。すなわち
(Ref1−T)=2025
(Ref2−T)=3025
となる。
【0028】
そして得られた2次曲線に対して予め定めた曲率の補正パラメータβを乗算する。ここでβ=0.005とする。そうすると
β(Ref1−T)=10.12
β(Ref2−T)=15.12
となる。
【0029】
得られた各データ値は小数点以下を切り捨てる演算処理を行い、第3及び第4の乗算器62,64のデータ値は、それぞれ補正する周波数設定値の差10,15となる。
【0030】
第4及び第5の減算器66,68では、周波数設定値(32)から第3及び第4の乗算器62,64で得られた補正する周波数の差を減算し、補正する周波数設定値22,17を求める。
【0031】
第1及び第2のマルチプレクサ70,72では、カウンタ値監視回路40からの停止信号が入力されるまでは、周波数設定を選択して第1及び第2の電圧制御発振器に入力している。一方、カウンタ監視回路40から停止信号が入力されたとき、第4及び第5の減算器66,68の補正した周波数設定値(22,17)が第1及び第2の電圧制御発振器にそれぞれ入力される(ステップ140)。
【0032】
第1及び第2の電圧制御発振器20,22では、入力された周波数設定値に基づいて周波数を補正して、設定周波数で発振することができる。例えば第1の電圧制御回路20では、図4に示すように周波数設定32のとき発振周波数314MHzで発振している。周波数測定により314MHzよりも低い周波数(313.989MHz)で発振している場合には、周波数設定値22で周波数補正することによりライン2に示すように314MHzで発振させることができる。
【0033】
次に出力部90では、第1又は第2の電圧制御発振器のいずれか一方を選択する出力選択信号に基づいて発振器を選択し、出力信号として出力する。
このように本発明の温度特性補償回路10は、2次の温度特性を有し2次温度係数が同一で頂点温度が互いに異なる2つの電圧制御発振器の各周波数測定値に基づいて行う演算処理をデジタル的に行うことができる。
【0034】
なお2つの電圧制御発振器のうち設定周波数で発振している場合には補正値0となる。よって補正が必要な電圧制御発振器のみ演算された補正値が入力されて周波数補正することになる。したがって2つの電圧制御発振器のうち少なくとも何れか一方の電圧制御発振器に補正値を演算し、演算された補正値が前記一方の電圧制御発振器に入力されて周波数補正される。
【0035】
図5は本発明の温度特性補償回路の第1の変形例の構成概略を示す図である。図示のように第1の変形例に係る温度特性補償回路10Aは、図1に示す補償回路を実現するための具体的な構成を示し、周波数補正部50Aにレジスタ100と、ALU演算装置120と、制御回路140とを備えている。その他の構成は図1の構成と同一であり、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0036】
レジスタ100は、記憶装置であり、カウンタ値、Ref値、β値、補正値等を一時的に記憶している。ALU演算装置120は、論理演算装置であり、図1に示す複数の減算器、乗算器の処理を行っている。制御回路140は、図1に示す補正処理を実現できるようにレジスタ100の記憶及びALU演算装置120の論理演算を制御している。
【0037】
これにより、発振周波数調整部の減算器、乗算器による複数の演算処理を共通化させることができ回路規模を抑えることができる。
図6は本発明の温度特性補償回路の第2の変形例の構成概略を示す図である。図示のように第2の変形例に係る温度特性補償回路10Bは、図1に示す補償回路を実現するための具体的な構成を示し、第1実施形態の発振周波数補正部50に替えてマイクロコントローラ150を用いている。その他の構成は図1に示す構成と同一であり同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0038】
発振器を無線通信用に用いる場合、送信データを作成するマイクロコントローラが搭載されており、このマイクロコントローラに周波数補正の演算処理を行う構成とすることができる。またマイクロコントローラが高速動作対応で、発振器の出力を直接カウントすることができる構成、又はカウンタICを外付けでする構成の場合には発振器内のカウンタを省略することもできる。これにより、発振器の構成を簡素化することができる。また既存の2周波対応の発振器を使用してカウンタの設置とマイコンのソフト対応で温度補償が実現できる。
【0039】
上述の説明では、電圧制御発振器20,22としてSAW発振器を用いて説明したが、これらの電圧制御発振器20,22は2次の温度特性を有する電圧制御発振器であれば良く、例えば音叉型圧電振動子を用いて発振する電圧制御発振器であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の温度特性補償回路の構成概略を示す図である。
【図2】本発明の温度特性補償方法のフローチャートを示す図である。
【図3】本発明の温度特性補償方法の説明図である。
【図4】周波数設定による周波数の変化を示したグラフである。
【図5】本発明の温度特性補償回路の第1の変形例の構成概略を示す図である。
【図6】本発明の温度特性補償回路の第2の変形例の構成概略を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
10、10A、10B………温度特性補償回路、20………第1の電圧制御発振器、22………第2の電圧制御発振器、30………第1のカウンタ、32………第2のカウンタ、40………カウンタ値監視回路、50、50A………発振周波数調整部、52………第1の減算器、54………第2の減算器、56………第3の減算器、58………第1の乗算器、60………第2の乗算器、62………第3の乗算器、64………第4の乗算器、66………第4の減算器、68………第5の減算器、70………第1のマルチプレクサ、72………第2のマルチプレクサ、90………出力部、92………第3のマルチプレクサ、94………増幅器、100………レジスタ、120………ALU演算装置、140………制御回路、150………マイクロコントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次の温度特性を有し頂点温度が互いに異なる2つの電圧制御発振器を有する温度補償回路の温度特性補償方法であって、
前記2つの電圧制御発振器を起動して前記2つの電圧制御発振器それぞれの出力周波数を測定し、
測定した前記2つの電圧制御発振器の前記出力周波数の差分を算出し、
前記2つの電圧制御発振器のうち少なくとも何れか一方の前記電圧制御発振器の補正値を、前記差分に基づいて演算し、
演算された前記補正値を前記一方の電圧制御発振器に入力し周波数補正することを特徴とする温度特性補償方法。
【請求項2】
前記補正値を演算する工程は、前記2つの電圧制御発振器の前記出力周波数の前記差分をT、2次係数の補正パラメータをβ、0次係数の補正パラメータをRefとした場合、
補正値=β(Ref−T)
上式で示す前記補正値を演算する工程であることを特徴とする請求項1に記載の温度特性補償方法。
【請求項3】
2次の温度特性を有し頂点温度が互いに異なる第1及び第2の電圧制御発振器と、
前記第1及び第2の電圧制御発振器の出力周波数をそれぞれ測定する第1及び第2のカウンタと、
前記第1及び第2のカウンタを所定時間カウントさせるカウンタ値監視回路と、
少なくとも前記第1及び第2の電圧制御発振器の何れか一方の前記出力周波数を調整する補正値を、前記第1及び第2の電圧制御発振器の前記出力周波数の差分に基づいて演算する発振周波数調整部と、
を備えたことを特徴とする温度特性補償回路。
【請求項4】
前記発振周波数調整部は、前記2つの電圧制御発振器の前記出力周波数の前記差分をT、2次係数の補正パラメータをβ、0次係数の補正パラメータをRefとした場合、
補正値=β(Ref−T)
上式で示す前記補正値を演算することを特徴とする請求項3に記載の温度特性補償回路。
【請求項5】
前記発振周波数調整部は、レジスタと、ALU演算装置と、制御回路とを備えていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の温度特性補償回路。
【請求項6】
前記発振周波数調整部は、マイクロコントローラを用いたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の温度特性補償回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−81303(P2010−81303A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247420(P2008−247420)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】