温度補償型圧電発振器、周波数補正システム、周波数ドリフト補正方法
【課題】起動直後の周波数ドリフト補正データ、時間情報、及び温度情報に基づいて、外部機器側で起動時ドリフトを補正することが可能な温度補償型圧電発振器を提供する。
【解決手段】TCXO50は、温度センサー2が検知した温度情報を、A/D変換器6によりデジタル信号に変換して記憶する温度情報記憶回路8と、実際の周波数ドリフト特性を近似した曲線の近似係数データ、及び周波数ドリフト特性の温度依存性を示す近似係数データを記憶する周波数ドリフト補正データ記憶部7と、TCXO50が起動した時点からの経過時間情報を出力するN分周器9とカウンタ10により構成される経過時間情報出力手段46と、GPSレシーバ(外部機器)12とインターフェースしてGPSレシーバ12に対して温度情報、周波数ドリフト補正データ、及び経過時間情報を出力するインターフェース制御回路11と、を備えて構成されている。
【解決手段】TCXO50は、温度センサー2が検知した温度情報を、A/D変換器6によりデジタル信号に変換して記憶する温度情報記憶回路8と、実際の周波数ドリフト特性を近似した曲線の近似係数データ、及び周波数ドリフト特性の温度依存性を示す近似係数データを記憶する周波数ドリフト補正データ記憶部7と、TCXO50が起動した時点からの経過時間情報を出力するN分周器9とカウンタ10により構成される経過時間情報出力手段46と、GPSレシーバ(外部機器)12とインターフェースしてGPSレシーバ12に対して温度情報、周波数ドリフト補正データ、及び経過時間情報を出力するインターフェース制御回路11と、を備えて構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度補償型圧電発振器に関し、さらに詳しくは、電子機器に用いられる温度補償型発振器において、起動時の温度ドリフトによる周波数変動を補正する情報を生成する温度補償型圧電発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
温度補償型圧電発振器(以下、TCXOと呼ぶ)は、小型、軽量化が進む一方で、温度変化に対して高い周波数安定度が求められている。特に、GPSで使用されるTCXOでは、電源起動時において即座にGPS衛星を捕捉する必要があるため、起動時における周波数安定性が高いことが求められている。
図10は、特許文献1に開示されたTCXOのパッケージ構造を示す断面図であり、図11はICチップ内部の回路構成を示すブロック図であり、図12は圧電振動子の温度特性を示す図である。図10のパッケージ構造では、外部端子36を有するシート基板35に、図11に示すICチップ37が実装され、接続部材34を介して振動子ベース基板31に設けられた振動子端子32と接続され、振動子ベース基板31内には、圧電振動子30が実装されている。ここで、ICチップ37は、図11に示すとおり、周囲温度を検知する温度センサー38、各温度に対する温度補償電圧に係るデータを記憶するメモリ39、温度センサー38とメモリ39のデータに基づいて、温度補償電圧を発生する温度補償電圧発生回路40、及びVCXO(Volt Controred Crystal Oscillator:電圧制御水晶発振器)41を備えている。即ち、温度補償機構42と圧電発振器43により構成されている。圧電振動子30は例えば、図12に示すとおり、ATカットとして常温(25℃)付近に変極点を持つ3次曲線44のような温度特性となる。温度センサー38は、例えばダイオード等で構成し、周囲温度に応じて変化するダイオードの電圧値を温度変化として検出する。そして、温度センサー38によって得られた温度情報をもとに生成した温度補償電圧は、圧電振動子30の温度特性を打ち消す温度補償特性45を発生させ、圧電発振器43の周波数を精度良く補償する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−136169公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のTCXOでは、起動時には、発振回路や出力回路等の能動素子が動作することで、モールド樹脂に覆われたICチップ37の発熱温度は周囲温度よりも高くなるが、圧電振動子30はICチップ37よりも低い温度で動作するため、ICチップ37内の温度センサー38は、圧電振動子30の実際の温度より高い温度を検出する結果、本来必要とする温度補償量がずれてしまい、起動直後から例えば30秒くらいまでの間に発振周波数がドリフトしてしまうといった問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、起動直後の周波数ドリフト補正データ、時間情報、及び温度情報を外部機器側に出力するようにして、外部機器側でこれらの情報に基づいて起動時ドリフトを補正することが可能な温度補償型圧電発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]圧電振動子と、温度センサーと、前記温度センサーの出力電圧に基づいて前記圧電振動子の周波数温度特性を補償する温度補償電圧を発生する温度補償電圧発生回路とを備え、前記温度補償電圧に基づいて発振周波数が制御される温度補償型圧電発振器であって、前記温度センサーが検知した温度情報を記憶する温度情報記憶回路と、前記温度補償型圧電発振器の周波数ドリフト特性を近似した曲線の近似係数データを記憶する周波数ドリフト補正データ記憶部と、前記温度補償型発振器が起動した時点からの経過時間情報を出力する経過時間情報出力手段と、外部機器に対して前記温度情報、前記近似係数データ、及び前記経過時間情報を出力するインターフェース制御回路と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
本発明の温度補償型発振器は、従来の温度補償型発振器に、温度情報記憶回路、周波数ドリフト補正データ記憶部、経過時間情報出力手段、及びインターフェース制御回路を更に追加して、インターフェース制御回路と接続された外部機器に対して、温度情報、近似係数データ、及び経過時間情報を渡し、外部機器側でそれらの情報に基づいて起動時の周波数ドリフトを補正する。これにより、起動時の周波数ドリフトを経過時間単位に補正することができる。
【0007】
[適用例2]前記周波数ドリフト特性を近似した曲線は、温度を変数とする2次関数の項と、温度を変数とする2次関数と時間を変数とする対数関数との積からなる項と、を含む近似式で表されることを特徴とする。
【0008】
周波数ドリフト特性の近似式は、{A´(temp−t0)2+A}×Ln(time)+{B´(temp−t0)2+B}として表せる。即ち、{A´(temp−t0)2+A}の部分が係数Aの2次関数、{B´(temp−t0)2+B}の部分が係数Bの2次関数、Ln(time)が時間を変数とする対数関数である。従って、外部機器側は、温度情報、近似係数データ、及び経過時間情報を受け取って、上記の近似式に代入して計算することにより、即座に周波数を補正することができる。
【0009】
[適用例3]前記周波数ドリフト補正データ記憶部が、起動から所定時間が経過するまでの間の第1の近似係数データを記憶する第1の周波数ドリフト補正データ記憶部と、前記所定時間が経過した後の第2の近似係数データを記憶する第2の周波数ドリフト補正データ記憶部と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
実際の温度補償型圧電発振器の周波数ドリフト特性は、起動直後から2秒位までの時間経過においては急激な周波数変化を示し、それ以降においては緩やかな周波数変化を示す。そこで本発明では、起動初期状態に周波数が急峻に変化する領域の周波数ドリフトを近似する近似係数と、周波数が緩やかに変化する領域の周波数ドリフトを近似する近似係数とを、備える。これにより、実際の周波数ドリフト特性に近い特性を生成することができる。
【0011】
[適用例4]前記第1の周波数ドリフト補正データ記憶部から前記第2の周波数ドリフト補正データ記憶部へ切り替える時間を記憶する補正データ切替時間記憶部を備えたことを特徴とする。
【0012】
第1と第2の近似係数データは、起動時から所定の時間が経過した時点で交差する点がある。そこで本発明では、この交差する点で第1と第2の周波数ドリフト補正データ記憶部を切り替える。これにより、近似係数データが実際の周波数ドリフト特性に近い近似係数データを得ることができる。
【0013】
[適用例5]前記近似係数データは、前記圧電振動子の発振周波数の公称値に対する周波数偏差として表されていることを特徴とする。
【0014】
機器側が発振器から受信した情報に基づいて計算した近似係数データは、発振周波数を補正する情報である。従って、計算で得られた周波数ドリフト特性は、周波数の偏差として計算されるので、発振周波数の公称値に計算から得られた周波数ドリフト特性(ppb:part per billion(十億分率))を掛けて得られる。これにより、周波数補正式に基づいて計算することにより、精度良く起動時のドリフトを補正することができる。
【0015】
[適用例6]適用例1乃至5の何れか一項に記載の温度補償型圧電発振器と、外部機器と、を備えた周波数補正システムであって、前記外部機器は、前記温度補償型圧電発振器の前記インターフェース制御手段を介して受信した前記近似係数データに基づいて周波数ドリフト特性を計算する制御手段と、該制御手段により計算された前記周波数ドリフト特性に基づいて、前記温度補償型圧電発振器から出力される信号の周波数を補正する補正回路と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
周波数補正システムは、本発明の温度補償型発振器と、そこから出力される情報を基に周波数補正式に基づいて周波数ドリフト特性を計算する制御手段、及び周波数ドリフト特性に基づいて発振周波数を補正する補正回路を備えた外部機器と、を備えて構成される。即ち、外部機器は、温度補償型発振器から与えられた情報を変数として受信して、決められた式に従って計算するだけで、発振周波数を即座に補正することができる。これにより、外部機器側の制御が容易で、且つ単純化することができる。
【0017】
[適用例7]温度情報記憶回路、周波数ドリフト補正データ記憶部、経過時間情報出力手段、及びインターフェース制御回路を備えた温度補償型圧電発振器の周波数ドリフト補正方法であって、前記温度情報記憶回路が、温度センサーが検知した温度情報を記憶するステップと、前記周波数ドリフト補正データ記憶部が、前記温度補償型圧電発振器の周波数ドリフト特性を近似した曲線の近似係数データを記憶するステップと、前記経過時間情報出力手段が、前記温度補償型発振器が起動した時点からの経過時間情報を出力するステップと、前記インターフェース制御回路が、外部機器とインターフェースして該外部機器に対して前記温度情報、前記近似係数データ、及び前記経過時間情報を出力するステップと、を備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明は適用例1と同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は常温(25℃)における周波数ドリフト特性をグラフ化した図であり、(b)はドリフト近似係数A、Bにおける温度依存性を表す図であり、(c)は圧電振動子の温度特性を示す図であり、(d)は各温度における周波数ドリフト特性をグラフ化した図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るTCXOを使用した周波数補正システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る周波数補正システムの動作を説明するフローチャートである。
【図4】各経過時間における周波数偏差の変化の様子を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るTCXOを使用した周波数補正システムの構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る周波数補正システムの動作を説明するフローチャートである。
【図7】各経過時間における周波数偏差の変化の様子を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るTCXOを使用した周波数補正システムの構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る周波数補正システムの動作を説明するフローチャートである。
【図10】特許文献1に開示されたTCXOのパッケージ構造を示す断面図である。
【図11】従来のTCXOに使用されるICチップの内部回路構成を示すブロック図である。
【図12】圧電振動子の温度特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0021】
図1(a)は常温(25℃)におけるTCXOの周波数ドリフト特性をグラフ化した図であり、グラフ26はTCXOの周波数ドリフト特性、グラフ27は計算値による周波数ドリフト近似特性を表す。図1(b)はドリフト近似係数A、 Bにおける温度依存性を表す図である。図1(c)は圧電振動子の温度特性を示す図である。図1(d)は各温度に対する周波数補正式をグラフ化した図である。
周波数補正式は、以下のように表される。
{A´(temp−t0)2+A}×Ln(time)+{B´(temp−t0)2+B}・・・・・(1)
ここで、A、Bはドリフト近似係数、A´、B´はドリフト近似係数A、 Bにおける温度依存性を表す係数、t0は常温25℃、tempは測定時の温度、timeは所定の時刻情報である。実際の周波数ドリフト特性を近似した曲線の近似係数データ、及びドリフト特性の温度依存性を示す近似係数データ(以下、これらのデータを周波数ドリフト補正データと呼ぶ)を記憶回路に保存しておき、外部機器側がTCXOから現在の温度情報と時間経過情報、及び周波数ドリフト補正データを読み出して周波数ドリフト特性を式(1)に基づいて計算する。理論上では、25℃でTCXOを起動したときには、ICチップの発熱温度が圧電振動子の温度よりも僅かに上昇してICチップと圧電振動子に温度差が生じる。この温度差が温度補償動作に影響を与え時間経過とともに周波数が緩やかに上昇する。このような周波数ドリフト特性を式(1)の計算式を使って計算する。
【0022】
図2は本発明の第1の実施形態に係るTCXOを使用した周波数補正システムの構成を示すブロック図である。本発明の周波数補正システム100は、TCXO50とGPSレシーバ12を備えて構成され、TCXO50は、温度に対して周波数が3次曲線的に変化する圧電振動子1、温度変化に対応した電圧を出力する温度センサー2、この電圧に基づいて圧電振動子1の周波数温度特性を補正する温度補償電圧を発生する温度補償電圧発生回路3、及び温度補償電圧に基づいて制御された周波数を発振する電圧制御型発振器(以下、VCXOと呼ぶ)5を備えたTCXO50であって、TCXO50は、温度センサー2が検知した温度情報を、A/D変換器6によりデジタル信号に変換して記憶する温度情報記憶回路8と、TCXO50の周波数ドリフト特性を近似した曲線の近似係数データ、及び周波数ドリフト特性の温度依存性を示す近似係数データを記憶する周波数ドリフト補正データ記憶部7と、TCXO50が起動した時点からの経過時間情報を出力するN分周器9とカウンタ10により構成される経過時間情報出力手段46と、GPSレシーバ(外部機器)12に対して温度情報、周波数ドリフト補正データ、及び経過時間情報を出力するインターフェース制御回路11と、を備えて構成されている。
【0023】
尚、端子4に接続された圧電振動子1以外の回路は、ICチップ22内に集積化されている。また、GPSレシーバ12は、発振信号21の周波数を補正する補正回路15と、GPS衛星との通信を行うRF部14と、ベースバンド信号処理用LSI(BB−LSI)16と、温度情報、周波数ドリフト補正データ、及び経過時間情報に基づいて式(1)により周波数ドリフト特性を計算するCPU(Central processing Unit:中央演算処理装置)17と、メモリ18を備え、クロック19、データ20、及び発振信号21によりTCXO50と接続されている。
即ち、本実施形態のTCXO50は、従来の温度補償型発振器に、温度情報記憶回路8、周波数ドリフト補正データ記憶部7、経過時間情報出力手段46、及びインターフェース制御回路11を追加して、インターフェース制御回路11と接続されたGPSレシーバ12に対して、温度情報、周波数ドリフト補正データ、及び経過時間情報を渡し、GPSレシーバ12側でそれらの情報に基づいてTCXO50の起動時の周波数ドリフトを補正する。これにより、TCXO50の起動時の周波数ドリフトを経過時間単位に補正することができる。
【0024】
図3は本発明の第1の実施形態に係る周波数補正システムの動作を説明するフローチャートであり、図4は各経過時間における周波数偏差の変化の様子を示す図である。
まず、GPSレシーバ12のCPU17は、図4の時刻T1(起動直後の時間0秒の時点)における経過時間情報をインターフェース回路11を介して読み出す(S1)。そして、周波数ドリフト補正データ記憶部7に記憶されている周波数ドリフト補正データと、温度情報記憶回路8に記憶されている温度情報をインターフェース回路11を介して読み出す(S2)。次に、所定の時刻T2の時点における経過時間情報をインターフェース回路11を介して読み出す(S3)。そして、前記式(1)の周波数補正式に各値を代入して計算して(S4)、その計算結果で補正回路15により発振信号21の発振周波数を補正する(S5)。GPSレシーバ12は、補正後の周波数をもとにGPS衛星を捕捉する(S6)。
【0025】
図5は本発明の第2の実施形態に係るTCXOを使用した周波数補正システムの構成を示すブロック図である。本発明の周波数補正システム110は、TCXO51の構成以外は図2と同様であるので、同じ構成要素には図2と同じ参照番号を付して説明を省略する。本発明のTCXO51は、周波数ドリフト補正データ記憶部として、起動から所定時間が経過するまでの間の第1の近似係数データを記憶する第1の周波数ドリフト補正データ記憶部23と、所定時間が経過した後の第2の近似係数データを記憶する第2の周波数ドリフト補正データ記憶部24と、を備えている。即ち、図7で示すように、起動初期状態の周波数ドリフトを近似する近似係数26は、緩やかな部分(B点)では近似精度が悪くなり、実際のTCXO51の周波数ドリフトとの誤差が大きくなる。そこで本実施形態では、起動初期状態の周波数ドリフトを近似する近似係数26と、緩やかに変化する領域の周波数ドリフトを近似する近似係数27とを、備える。これにより、実際の周波数ドリフト特性により近い特性を生成することができる。周波数ドリフト特性が1つの近似曲線上にうまくフィッティングしない場合であっても、ドリフトが急峻なところと緩やかなところで最適フィッティングカーブが得られるため、起動後の周波数ドリフトをより精密に補正することが可能となる。
【0026】
図6は本発明の第2の実施形態に係る周波数補正システムの動作を説明するフローチャートであり、図7は各経過時間における周波数偏差の変化の様子を示す図である。まず、GPSレシーバ12のCPU17は、図7の時刻T1(起動直後の時間0秒の時点)における経過時間情報をインターフェース回路11を介して読み出す(S11)。そして、第1の周波数ドリフト補正データ記憶部23、第2の周波数ドリフト補正データ記憶部24に記憶されている周波数ドリフト補正データと、温度情報記憶回路8に記憶されている温度情報をインターフェース回路11を介して読み出す(S12)。次に、図7の時刻T2(A点)より前にGPS衛星の捕捉を開始しているか否かをチェックして(S13)、時刻T2より前にGPS衛星の捕捉を開始している場合は(S13でYes)、経過時間情報をインターフェース回路11を介して読み出す(S14)。そして、周波数補正式(1)の周波数情報の式に各データを代入して計算して(S15)、その値で補正回路15により発振信号21の発振周波数を補正する(S16)。GPSレシーバ12は、補正後の周波数をもとにGPS衛星を捕捉する(S17)。一方、ステップS13で時刻T2(A点)より後にGPS衛星の捕捉を開始した場合は(S13でNo)、発振器の周波数ドリフト補正データを第1の周波数ドリフト補正データ記憶部23から第2の周波数ドリフト補正データ記憶部24に切り替えて読み取り(S18)、ステップS14に進む。
【0027】
図8は本発明の第3の実施形態に係るTCXOを使用した周波数補正システムの構成を示すブロック図である。本発明の周波数補正システム120は、TCXO52の構成以外は図5と同様であるので、同じ構成要素には図5と同じ参照番号を付して説明を省略する。本発明のTCXO52は、第1の周波数ドリフト補正データ記憶部23と第2の周波数ドリフト補正データ記憶部24とを切り替えるための時間情報を記憶する補正データ切替時間記憶部25を備えた。即ち、第1と第2の近似係数データ26、 27は、起動時から所定の時間が経過した時点で交差する点Aがある。そこで本実施形態では、この交差点Aで第1の周波数ドリフト補正データ記憶部23と第2の周波数ドリフト補正データ記憶部24を切り替える。これにより、近似係数データが実際の周波数ドリフト特性により近い近似係数データを得ることができる。
【0028】
図9は本発明の第3の実施形態に係る周波数補正システムの動作を説明するフローチャートである。まず、GPSレシーバ12のCPU17は、図7の時刻T1(起動直後の時間0秒の時点)における経過時間情報をインターフェース回路11を介して読み出す(S21)。そして、第1の周波数ドリフト補正データ記憶部23、第2の周波数ドリフト補正データ記憶部24に記憶されている周波数ドリフト補正データと、温度情報記憶回路8に記憶されている温度情報をインターフェース回路11を介して読み出す(S22)。次に、補正データ切替時間記憶部25に記憶されている切替時間データを読み出す(S23)。そして所定時間経過後、経過時間情報を読み出し(S24)、経過時間と切替時間とを比較して(S25)、経過時間が切替時間より小さい場合(S25でYes)、発振器の周波数ドリフト補正データを第1の周波数ドリフト補正データ記憶部23から読み取り、周波数補正式(1)の周波数情報の式に各データを代入して計算する(S26)。ステップS25で経過時間が切替時間より大きい場合(S25でNo)、発振器の周波数ドリフト補正データを第2の周波数ドリフト補正データ記憶部24から読み取り、周波数補正式(1)の周波数情報の式に各データを代入して計算する(S29)。そして、その値で補正回路15により発振信号21の発振周波数を補正する(S27)。GPSレシーバ12は、補正後の周波数をもとにGPS衛星を捕捉する(S28)。
【符号の説明】
【0029】
1 圧電振動子、2 温度センサー、3 温度補償電圧発生回路、4 端子、5 VCXO、6 A/D変換器、7 周波数ドリフト補正データ記憶部、8 温度情報記憶回路、9 N分周器、10 カウンタ、11 インターフェース制御回路、12 GPSレシーバ、13 アンテナ、14 RF部、15 補正回路、16 BB−LSI、17 CPU、18 メモリ、19 クロック信号線、20 データ線、21 発振信号線、22 ICチップ、23 第1の周波数ドリフト補正データ記憶部、24 第2の周波数ドリフト補正データ記憶部、25 補正データ切替時間記憶部、26 第1の周波数補正データ、27 第2の周波数補正データ、30 圧電振動子、31 振動子ベース基板、32 振動子端子、33 樹脂モールド、34 接続部材、35 シート基板、36 外部端子、37 ICチップ、38 温度センサー、39 メモリ、40 温度補償電圧発生回路、41 VCXO、42 温度補償機構、43 圧電発振器、44 圧電振動子の変動量、45 温度補償機構による温度補償量、46 経過時間情報出力手段、50 第1の実施形態のTCXO、51 第2の実施形態のTCXO、52 第3の実施形態のTCXO、100 第1の周波数補正システム、110 第2の周波数補正システム、120 第3の周波数補正システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度補償型圧電発振器に関し、さらに詳しくは、電子機器に用いられる温度補償型発振器において、起動時の温度ドリフトによる周波数変動を補正する情報を生成する温度補償型圧電発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
温度補償型圧電発振器(以下、TCXOと呼ぶ)は、小型、軽量化が進む一方で、温度変化に対して高い周波数安定度が求められている。特に、GPSで使用されるTCXOでは、電源起動時において即座にGPS衛星を捕捉する必要があるため、起動時における周波数安定性が高いことが求められている。
図10は、特許文献1に開示されたTCXOのパッケージ構造を示す断面図であり、図11はICチップ内部の回路構成を示すブロック図であり、図12は圧電振動子の温度特性を示す図である。図10のパッケージ構造では、外部端子36を有するシート基板35に、図11に示すICチップ37が実装され、接続部材34を介して振動子ベース基板31に設けられた振動子端子32と接続され、振動子ベース基板31内には、圧電振動子30が実装されている。ここで、ICチップ37は、図11に示すとおり、周囲温度を検知する温度センサー38、各温度に対する温度補償電圧に係るデータを記憶するメモリ39、温度センサー38とメモリ39のデータに基づいて、温度補償電圧を発生する温度補償電圧発生回路40、及びVCXO(Volt Controred Crystal Oscillator:電圧制御水晶発振器)41を備えている。即ち、温度補償機構42と圧電発振器43により構成されている。圧電振動子30は例えば、図12に示すとおり、ATカットとして常温(25℃)付近に変極点を持つ3次曲線44のような温度特性となる。温度センサー38は、例えばダイオード等で構成し、周囲温度に応じて変化するダイオードの電圧値を温度変化として検出する。そして、温度センサー38によって得られた温度情報をもとに生成した温度補償電圧は、圧電振動子30の温度特性を打ち消す温度補償特性45を発生させ、圧電発振器43の周波数を精度良く補償する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−136169公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のTCXOでは、起動時には、発振回路や出力回路等の能動素子が動作することで、モールド樹脂に覆われたICチップ37の発熱温度は周囲温度よりも高くなるが、圧電振動子30はICチップ37よりも低い温度で動作するため、ICチップ37内の温度センサー38は、圧電振動子30の実際の温度より高い温度を検出する結果、本来必要とする温度補償量がずれてしまい、起動直後から例えば30秒くらいまでの間に発振周波数がドリフトしてしまうといった問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、起動直後の周波数ドリフト補正データ、時間情報、及び温度情報を外部機器側に出力するようにして、外部機器側でこれらの情報に基づいて起動時ドリフトを補正することが可能な温度補償型圧電発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]圧電振動子と、温度センサーと、前記温度センサーの出力電圧に基づいて前記圧電振動子の周波数温度特性を補償する温度補償電圧を発生する温度補償電圧発生回路とを備え、前記温度補償電圧に基づいて発振周波数が制御される温度補償型圧電発振器であって、前記温度センサーが検知した温度情報を記憶する温度情報記憶回路と、前記温度補償型圧電発振器の周波数ドリフト特性を近似した曲線の近似係数データを記憶する周波数ドリフト補正データ記憶部と、前記温度補償型発振器が起動した時点からの経過時間情報を出力する経過時間情報出力手段と、外部機器に対して前記温度情報、前記近似係数データ、及び前記経過時間情報を出力するインターフェース制御回路と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
本発明の温度補償型発振器は、従来の温度補償型発振器に、温度情報記憶回路、周波数ドリフト補正データ記憶部、経過時間情報出力手段、及びインターフェース制御回路を更に追加して、インターフェース制御回路と接続された外部機器に対して、温度情報、近似係数データ、及び経過時間情報を渡し、外部機器側でそれらの情報に基づいて起動時の周波数ドリフトを補正する。これにより、起動時の周波数ドリフトを経過時間単位に補正することができる。
【0007】
[適用例2]前記周波数ドリフト特性を近似した曲線は、温度を変数とする2次関数の項と、温度を変数とする2次関数と時間を変数とする対数関数との積からなる項と、を含む近似式で表されることを特徴とする。
【0008】
周波数ドリフト特性の近似式は、{A´(temp−t0)2+A}×Ln(time)+{B´(temp−t0)2+B}として表せる。即ち、{A´(temp−t0)2+A}の部分が係数Aの2次関数、{B´(temp−t0)2+B}の部分が係数Bの2次関数、Ln(time)が時間を変数とする対数関数である。従って、外部機器側は、温度情報、近似係数データ、及び経過時間情報を受け取って、上記の近似式に代入して計算することにより、即座に周波数を補正することができる。
【0009】
[適用例3]前記周波数ドリフト補正データ記憶部が、起動から所定時間が経過するまでの間の第1の近似係数データを記憶する第1の周波数ドリフト補正データ記憶部と、前記所定時間が経過した後の第2の近似係数データを記憶する第2の周波数ドリフト補正データ記憶部と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
実際の温度補償型圧電発振器の周波数ドリフト特性は、起動直後から2秒位までの時間経過においては急激な周波数変化を示し、それ以降においては緩やかな周波数変化を示す。そこで本発明では、起動初期状態に周波数が急峻に変化する領域の周波数ドリフトを近似する近似係数と、周波数が緩やかに変化する領域の周波数ドリフトを近似する近似係数とを、備える。これにより、実際の周波数ドリフト特性に近い特性を生成することができる。
【0011】
[適用例4]前記第1の周波数ドリフト補正データ記憶部から前記第2の周波数ドリフト補正データ記憶部へ切り替える時間を記憶する補正データ切替時間記憶部を備えたことを特徴とする。
【0012】
第1と第2の近似係数データは、起動時から所定の時間が経過した時点で交差する点がある。そこで本発明では、この交差する点で第1と第2の周波数ドリフト補正データ記憶部を切り替える。これにより、近似係数データが実際の周波数ドリフト特性に近い近似係数データを得ることができる。
【0013】
[適用例5]前記近似係数データは、前記圧電振動子の発振周波数の公称値に対する周波数偏差として表されていることを特徴とする。
【0014】
機器側が発振器から受信した情報に基づいて計算した近似係数データは、発振周波数を補正する情報である。従って、計算で得られた周波数ドリフト特性は、周波数の偏差として計算されるので、発振周波数の公称値に計算から得られた周波数ドリフト特性(ppb:part per billion(十億分率))を掛けて得られる。これにより、周波数補正式に基づいて計算することにより、精度良く起動時のドリフトを補正することができる。
【0015】
[適用例6]適用例1乃至5の何れか一項に記載の温度補償型圧電発振器と、外部機器と、を備えた周波数補正システムであって、前記外部機器は、前記温度補償型圧電発振器の前記インターフェース制御手段を介して受信した前記近似係数データに基づいて周波数ドリフト特性を計算する制御手段と、該制御手段により計算された前記周波数ドリフト特性に基づいて、前記温度補償型圧電発振器から出力される信号の周波数を補正する補正回路と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
周波数補正システムは、本発明の温度補償型発振器と、そこから出力される情報を基に周波数補正式に基づいて周波数ドリフト特性を計算する制御手段、及び周波数ドリフト特性に基づいて発振周波数を補正する補正回路を備えた外部機器と、を備えて構成される。即ち、外部機器は、温度補償型発振器から与えられた情報を変数として受信して、決められた式に従って計算するだけで、発振周波数を即座に補正することができる。これにより、外部機器側の制御が容易で、且つ単純化することができる。
【0017】
[適用例7]温度情報記憶回路、周波数ドリフト補正データ記憶部、経過時間情報出力手段、及びインターフェース制御回路を備えた温度補償型圧電発振器の周波数ドリフト補正方法であって、前記温度情報記憶回路が、温度センサーが検知した温度情報を記憶するステップと、前記周波数ドリフト補正データ記憶部が、前記温度補償型圧電発振器の周波数ドリフト特性を近似した曲線の近似係数データを記憶するステップと、前記経過時間情報出力手段が、前記温度補償型発振器が起動した時点からの経過時間情報を出力するステップと、前記インターフェース制御回路が、外部機器とインターフェースして該外部機器に対して前記温度情報、前記近似係数データ、及び前記経過時間情報を出力するステップと、を備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明は適用例1と同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は常温(25℃)における周波数ドリフト特性をグラフ化した図であり、(b)はドリフト近似係数A、Bにおける温度依存性を表す図であり、(c)は圧電振動子の温度特性を示す図であり、(d)は各温度における周波数ドリフト特性をグラフ化した図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るTCXOを使用した周波数補正システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る周波数補正システムの動作を説明するフローチャートである。
【図4】各経過時間における周波数偏差の変化の様子を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るTCXOを使用した周波数補正システムの構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る周波数補正システムの動作を説明するフローチャートである。
【図7】各経過時間における周波数偏差の変化の様子を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るTCXOを使用した周波数補正システムの構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る周波数補正システムの動作を説明するフローチャートである。
【図10】特許文献1に開示されたTCXOのパッケージ構造を示す断面図である。
【図11】従来のTCXOに使用されるICチップの内部回路構成を示すブロック図である。
【図12】圧電振動子の温度特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0021】
図1(a)は常温(25℃)におけるTCXOの周波数ドリフト特性をグラフ化した図であり、グラフ26はTCXOの周波数ドリフト特性、グラフ27は計算値による周波数ドリフト近似特性を表す。図1(b)はドリフト近似係数A、 Bにおける温度依存性を表す図である。図1(c)は圧電振動子の温度特性を示す図である。図1(d)は各温度に対する周波数補正式をグラフ化した図である。
周波数補正式は、以下のように表される。
{A´(temp−t0)2+A}×Ln(time)+{B´(temp−t0)2+B}・・・・・(1)
ここで、A、Bはドリフト近似係数、A´、B´はドリフト近似係数A、 Bにおける温度依存性を表す係数、t0は常温25℃、tempは測定時の温度、timeは所定の時刻情報である。実際の周波数ドリフト特性を近似した曲線の近似係数データ、及びドリフト特性の温度依存性を示す近似係数データ(以下、これらのデータを周波数ドリフト補正データと呼ぶ)を記憶回路に保存しておき、外部機器側がTCXOから現在の温度情報と時間経過情報、及び周波数ドリフト補正データを読み出して周波数ドリフト特性を式(1)に基づいて計算する。理論上では、25℃でTCXOを起動したときには、ICチップの発熱温度が圧電振動子の温度よりも僅かに上昇してICチップと圧電振動子に温度差が生じる。この温度差が温度補償動作に影響を与え時間経過とともに周波数が緩やかに上昇する。このような周波数ドリフト特性を式(1)の計算式を使って計算する。
【0022】
図2は本発明の第1の実施形態に係るTCXOを使用した周波数補正システムの構成を示すブロック図である。本発明の周波数補正システム100は、TCXO50とGPSレシーバ12を備えて構成され、TCXO50は、温度に対して周波数が3次曲線的に変化する圧電振動子1、温度変化に対応した電圧を出力する温度センサー2、この電圧に基づいて圧電振動子1の周波数温度特性を補正する温度補償電圧を発生する温度補償電圧発生回路3、及び温度補償電圧に基づいて制御された周波数を発振する電圧制御型発振器(以下、VCXOと呼ぶ)5を備えたTCXO50であって、TCXO50は、温度センサー2が検知した温度情報を、A/D変換器6によりデジタル信号に変換して記憶する温度情報記憶回路8と、TCXO50の周波数ドリフト特性を近似した曲線の近似係数データ、及び周波数ドリフト特性の温度依存性を示す近似係数データを記憶する周波数ドリフト補正データ記憶部7と、TCXO50が起動した時点からの経過時間情報を出力するN分周器9とカウンタ10により構成される経過時間情報出力手段46と、GPSレシーバ(外部機器)12に対して温度情報、周波数ドリフト補正データ、及び経過時間情報を出力するインターフェース制御回路11と、を備えて構成されている。
【0023】
尚、端子4に接続された圧電振動子1以外の回路は、ICチップ22内に集積化されている。また、GPSレシーバ12は、発振信号21の周波数を補正する補正回路15と、GPS衛星との通信を行うRF部14と、ベースバンド信号処理用LSI(BB−LSI)16と、温度情報、周波数ドリフト補正データ、及び経過時間情報に基づいて式(1)により周波数ドリフト特性を計算するCPU(Central processing Unit:中央演算処理装置)17と、メモリ18を備え、クロック19、データ20、及び発振信号21によりTCXO50と接続されている。
即ち、本実施形態のTCXO50は、従来の温度補償型発振器に、温度情報記憶回路8、周波数ドリフト補正データ記憶部7、経過時間情報出力手段46、及びインターフェース制御回路11を追加して、インターフェース制御回路11と接続されたGPSレシーバ12に対して、温度情報、周波数ドリフト補正データ、及び経過時間情報を渡し、GPSレシーバ12側でそれらの情報に基づいてTCXO50の起動時の周波数ドリフトを補正する。これにより、TCXO50の起動時の周波数ドリフトを経過時間単位に補正することができる。
【0024】
図3は本発明の第1の実施形態に係る周波数補正システムの動作を説明するフローチャートであり、図4は各経過時間における周波数偏差の変化の様子を示す図である。
まず、GPSレシーバ12のCPU17は、図4の時刻T1(起動直後の時間0秒の時点)における経過時間情報をインターフェース回路11を介して読み出す(S1)。そして、周波数ドリフト補正データ記憶部7に記憶されている周波数ドリフト補正データと、温度情報記憶回路8に記憶されている温度情報をインターフェース回路11を介して読み出す(S2)。次に、所定の時刻T2の時点における経過時間情報をインターフェース回路11を介して読み出す(S3)。そして、前記式(1)の周波数補正式に各値を代入して計算して(S4)、その計算結果で補正回路15により発振信号21の発振周波数を補正する(S5)。GPSレシーバ12は、補正後の周波数をもとにGPS衛星を捕捉する(S6)。
【0025】
図5は本発明の第2の実施形態に係るTCXOを使用した周波数補正システムの構成を示すブロック図である。本発明の周波数補正システム110は、TCXO51の構成以外は図2と同様であるので、同じ構成要素には図2と同じ参照番号を付して説明を省略する。本発明のTCXO51は、周波数ドリフト補正データ記憶部として、起動から所定時間が経過するまでの間の第1の近似係数データを記憶する第1の周波数ドリフト補正データ記憶部23と、所定時間が経過した後の第2の近似係数データを記憶する第2の周波数ドリフト補正データ記憶部24と、を備えている。即ち、図7で示すように、起動初期状態の周波数ドリフトを近似する近似係数26は、緩やかな部分(B点)では近似精度が悪くなり、実際のTCXO51の周波数ドリフトとの誤差が大きくなる。そこで本実施形態では、起動初期状態の周波数ドリフトを近似する近似係数26と、緩やかに変化する領域の周波数ドリフトを近似する近似係数27とを、備える。これにより、実際の周波数ドリフト特性により近い特性を生成することができる。周波数ドリフト特性が1つの近似曲線上にうまくフィッティングしない場合であっても、ドリフトが急峻なところと緩やかなところで最適フィッティングカーブが得られるため、起動後の周波数ドリフトをより精密に補正することが可能となる。
【0026】
図6は本発明の第2の実施形態に係る周波数補正システムの動作を説明するフローチャートであり、図7は各経過時間における周波数偏差の変化の様子を示す図である。まず、GPSレシーバ12のCPU17は、図7の時刻T1(起動直後の時間0秒の時点)における経過時間情報をインターフェース回路11を介して読み出す(S11)。そして、第1の周波数ドリフト補正データ記憶部23、第2の周波数ドリフト補正データ記憶部24に記憶されている周波数ドリフト補正データと、温度情報記憶回路8に記憶されている温度情報をインターフェース回路11を介して読み出す(S12)。次に、図7の時刻T2(A点)より前にGPS衛星の捕捉を開始しているか否かをチェックして(S13)、時刻T2より前にGPS衛星の捕捉を開始している場合は(S13でYes)、経過時間情報をインターフェース回路11を介して読み出す(S14)。そして、周波数補正式(1)の周波数情報の式に各データを代入して計算して(S15)、その値で補正回路15により発振信号21の発振周波数を補正する(S16)。GPSレシーバ12は、補正後の周波数をもとにGPS衛星を捕捉する(S17)。一方、ステップS13で時刻T2(A点)より後にGPS衛星の捕捉を開始した場合は(S13でNo)、発振器の周波数ドリフト補正データを第1の周波数ドリフト補正データ記憶部23から第2の周波数ドリフト補正データ記憶部24に切り替えて読み取り(S18)、ステップS14に進む。
【0027】
図8は本発明の第3の実施形態に係るTCXOを使用した周波数補正システムの構成を示すブロック図である。本発明の周波数補正システム120は、TCXO52の構成以外は図5と同様であるので、同じ構成要素には図5と同じ参照番号を付して説明を省略する。本発明のTCXO52は、第1の周波数ドリフト補正データ記憶部23と第2の周波数ドリフト補正データ記憶部24とを切り替えるための時間情報を記憶する補正データ切替時間記憶部25を備えた。即ち、第1と第2の近似係数データ26、 27は、起動時から所定の時間が経過した時点で交差する点Aがある。そこで本実施形態では、この交差点Aで第1の周波数ドリフト補正データ記憶部23と第2の周波数ドリフト補正データ記憶部24を切り替える。これにより、近似係数データが実際の周波数ドリフト特性により近い近似係数データを得ることができる。
【0028】
図9は本発明の第3の実施形態に係る周波数補正システムの動作を説明するフローチャートである。まず、GPSレシーバ12のCPU17は、図7の時刻T1(起動直後の時間0秒の時点)における経過時間情報をインターフェース回路11を介して読み出す(S21)。そして、第1の周波数ドリフト補正データ記憶部23、第2の周波数ドリフト補正データ記憶部24に記憶されている周波数ドリフト補正データと、温度情報記憶回路8に記憶されている温度情報をインターフェース回路11を介して読み出す(S22)。次に、補正データ切替時間記憶部25に記憶されている切替時間データを読み出す(S23)。そして所定時間経過後、経過時間情報を読み出し(S24)、経過時間と切替時間とを比較して(S25)、経過時間が切替時間より小さい場合(S25でYes)、発振器の周波数ドリフト補正データを第1の周波数ドリフト補正データ記憶部23から読み取り、周波数補正式(1)の周波数情報の式に各データを代入して計算する(S26)。ステップS25で経過時間が切替時間より大きい場合(S25でNo)、発振器の周波数ドリフト補正データを第2の周波数ドリフト補正データ記憶部24から読み取り、周波数補正式(1)の周波数情報の式に各データを代入して計算する(S29)。そして、その値で補正回路15により発振信号21の発振周波数を補正する(S27)。GPSレシーバ12は、補正後の周波数をもとにGPS衛星を捕捉する(S28)。
【符号の説明】
【0029】
1 圧電振動子、2 温度センサー、3 温度補償電圧発生回路、4 端子、5 VCXO、6 A/D変換器、7 周波数ドリフト補正データ記憶部、8 温度情報記憶回路、9 N分周器、10 カウンタ、11 インターフェース制御回路、12 GPSレシーバ、13 アンテナ、14 RF部、15 補正回路、16 BB−LSI、17 CPU、18 メモリ、19 クロック信号線、20 データ線、21 発振信号線、22 ICチップ、23 第1の周波数ドリフト補正データ記憶部、24 第2の周波数ドリフト補正データ記憶部、25 補正データ切替時間記憶部、26 第1の周波数補正データ、27 第2の周波数補正データ、30 圧電振動子、31 振動子ベース基板、32 振動子端子、33 樹脂モールド、34 接続部材、35 シート基板、36 外部端子、37 ICチップ、38 温度センサー、39 メモリ、40 温度補償電圧発生回路、41 VCXO、42 温度補償機構、43 圧電発振器、44 圧電振動子の変動量、45 温度補償機構による温度補償量、46 経過時間情報出力手段、50 第1の実施形態のTCXO、51 第2の実施形態のTCXO、52 第3の実施形態のTCXO、100 第1の周波数補正システム、110 第2の周波数補正システム、120 第3の周波数補正システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子と、温度センサーと、前記温度センサーの出力電圧に基づいて前記圧電振動子の周波数温度特性を補償する温度補償電圧を発生する温度補償電圧発生回路とを備え、 前記温度補償電圧に基づいて発振周波数が制御される温度補償型圧電発振器であって、
前記温度センサーが検知した温度情報を記憶する温度情報記憶回路と、
前記温度補償型圧電発振器の周波数ドリフト特性を近似した曲線の近似係数データを記憶する周波数ドリフト補正データ記憶部と、
前記温度補償型発振器が起動した時点からの経過時間情報を出力する経過時間情報出力手段と、
外部機器に対して前記温度情報、前記近似係数データ、及び前記経過時間情報を出力するインターフェース制御回路と、を備えたことを特徴とする温度補償型圧電発振器。
【請求項2】
前記周波数ドリフト特性を近似した曲線は、温度を変数とする2次関数の項と、温度を変数とする2次関数と時間を変数とする対数関数との積からなる項と、を含む近似式で表されることを特徴とする請求項1に記載の温度補償型圧電発振器。
【請求項3】
前記周波数ドリフト補正データ記憶部が、起動から所定時間が経過するまでの間の第1の近似係数データを記憶する第1の周波数ドリフト補正データ記憶部と、前記所定時間が経過した後の第2の近似係数データを記憶する第2の周波数ドリフト補正データ記憶部と、を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の温度補償型圧電発振器。
【請求項4】
前記第1の周波数ドリフト補正データ記憶部から前記第2の周波数ドリフト補正データ記憶部へ切り替える時間を記憶する補正データ切替時間記憶部を備えたことを特徴とする請求項3に記載の温度補償型圧電発振器。
【請求項5】
前記近似係数データは、前記圧電振動子の発振周波数の公称値に対する周波数偏差として表されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の温度補償型圧電発振器。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の温度補償型圧電発振器と、外部機器と、を備えた周波数補正システムであって、
前記外部機器は、前記温度補償型圧電発振器の前記インターフェース制御手段を介して受信した前記近似係数データに基づいて周波数ドリフト特性を計算する制御手段と、該制御手段により計算された前記周波数ドリフト特性に基づいて、前記温度補償型圧電発振器から出力される信号の周波数を補正する補正回路と、を備えたことを特徴とする周波数補正システム。
【請求項7】
温度情報記憶回路、周波数ドリフト補正データ記憶部、経過時間情報出力手段、及びインターフェース制御回路を備えた温度補償型圧電発振器の周波数ドリフト補正方法であって、
前記温度情報記憶回路が、温度センサーが検知した温度情報を記憶するステップと、
前記周波数ドリフト補正データ記憶部が、前記温度補償型圧電発振器の周波数ドリフト特性を近似した曲線の近似係数データを記憶するステップと、
前記経過時間情報出力手段が、前記温度補償型発振器が起動した時点からの経過時間情報を出力するステップと、
前記インターフェース制御回路が、外部機器とインターフェースして該外部機器に対して前記温度情報、前記近似係数データ、及び前記経過時間情報を出力するステップと、を備えたことを特徴とする周波数ドリフト補正方法。
【請求項1】
圧電振動子と、温度センサーと、前記温度センサーの出力電圧に基づいて前記圧電振動子の周波数温度特性を補償する温度補償電圧を発生する温度補償電圧発生回路とを備え、 前記温度補償電圧に基づいて発振周波数が制御される温度補償型圧電発振器であって、
前記温度センサーが検知した温度情報を記憶する温度情報記憶回路と、
前記温度補償型圧電発振器の周波数ドリフト特性を近似した曲線の近似係数データを記憶する周波数ドリフト補正データ記憶部と、
前記温度補償型発振器が起動した時点からの経過時間情報を出力する経過時間情報出力手段と、
外部機器に対して前記温度情報、前記近似係数データ、及び前記経過時間情報を出力するインターフェース制御回路と、を備えたことを特徴とする温度補償型圧電発振器。
【請求項2】
前記周波数ドリフト特性を近似した曲線は、温度を変数とする2次関数の項と、温度を変数とする2次関数と時間を変数とする対数関数との積からなる項と、を含む近似式で表されることを特徴とする請求項1に記載の温度補償型圧電発振器。
【請求項3】
前記周波数ドリフト補正データ記憶部が、起動から所定時間が経過するまでの間の第1の近似係数データを記憶する第1の周波数ドリフト補正データ記憶部と、前記所定時間が経過した後の第2の近似係数データを記憶する第2の周波数ドリフト補正データ記憶部と、を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の温度補償型圧電発振器。
【請求項4】
前記第1の周波数ドリフト補正データ記憶部から前記第2の周波数ドリフト補正データ記憶部へ切り替える時間を記憶する補正データ切替時間記憶部を備えたことを特徴とする請求項3に記載の温度補償型圧電発振器。
【請求項5】
前記近似係数データは、前記圧電振動子の発振周波数の公称値に対する周波数偏差として表されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の温度補償型圧電発振器。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の温度補償型圧電発振器と、外部機器と、を備えた周波数補正システムであって、
前記外部機器は、前記温度補償型圧電発振器の前記インターフェース制御手段を介して受信した前記近似係数データに基づいて周波数ドリフト特性を計算する制御手段と、該制御手段により計算された前記周波数ドリフト特性に基づいて、前記温度補償型圧電発振器から出力される信号の周波数を補正する補正回路と、を備えたことを特徴とする周波数補正システム。
【請求項7】
温度情報記憶回路、周波数ドリフト補正データ記憶部、経過時間情報出力手段、及びインターフェース制御回路を備えた温度補償型圧電発振器の周波数ドリフト補正方法であって、
前記温度情報記憶回路が、温度センサーが検知した温度情報を記憶するステップと、
前記周波数ドリフト補正データ記憶部が、前記温度補償型圧電発振器の周波数ドリフト特性を近似した曲線の近似係数データを記憶するステップと、
前記経過時間情報出力手段が、前記温度補償型発振器が起動した時点からの経過時間情報を出力するステップと、
前記インターフェース制御回路が、外部機器とインターフェースして該外部機器に対して前記温度情報、前記近似係数データ、及び前記経過時間情報を出力するステップと、を備えたことを特徴とする周波数ドリフト補正方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−120074(P2012−120074A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270013(P2010−270013)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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