説明

温度補償方法および温度補償発振回路

【課題】 少ないメモリ容量の記憶部を用いて温度補償を行う温度補償方法、補正値決定回路および温度補償発振回路を提供する。
【解決手段】 温度補償発振回路10は、圧電振動子40を備えた発振回路42と、圧電振動子40の温度を間欠的に計測して、この計測結果をディジタル信号で出力する温度計測部22と、温度計測部22から出力されたディジタル信号のうちの上位ビットを入力して、ディジタル信号のうちの最下位ビットに応じて上位ビットを設定し、これをアドレス値として出力するカウンタ28と、容量アレイ44に設けられたスイッチのオン/オフを制御する補正値がアドレス値と1対1に対応させて保存され、カウンタ28から入力したアドレス値に応じた補正値を読み出して出力する記憶部30と、発振回路42に2つ設けられ、記憶部30から入力した補正値に基づいて容量値を設定する容量アレイ44を備えた構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度補償方法および温度補償発振回路に係り、特にディジタル方式で温度補償を行う温度補償方法および温度補償発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
温度補償発振回路は、温度補償型圧電発振器やリアルタイムクロックモジュールを構成することができる。図5は従来技術に係る温度補償型圧電発振器のブロック図である。従来のディジタル温度補償型圧電発振器1は、この圧電発振器1の周波数温度特性を補償するための補正値データを予め記憶部2に保存している。また圧電発振器1は、圧電振動子3の周囲温度を温度センサ9およびアナログ/ディジタル(A/D)コンバータ4を備えた温度計測部により計測して、この計測信号をディジタル信号で記憶部2に出力している。なおA/Dコンバータ4から出力されたディジタル信号は、全ての桁が記憶部2に入力される。そして圧電発振器1は、記憶部2に保存されている補正値をディジタル信号に応じて読み出して発振回路5に出力し、発振回路5に設けられている容量アレイ6の容量値を補正値に基づいて調整することにより圧電振動子3を温度補償している。
【0003】
また圧電発振器1は、上述した構成に加えて1Hzのタイミング信号を入力し、前記温度計測部を1秒毎に間欠的に動作させて、記憶部2で補正値を読み出す動作を間欠的に行わせる制御部7を備えるとともに、記憶部2から出力された補正値を保持するラッチ8を備えることにより、平均すると消費電流を抑えて、低消費電力化を図ることができる。
【0004】
なお特許文献1には、メモリの容量を増やすことなく温度補償制御の精度を高めるために、制御する温度の隣接する二点間の既知の制御値を単純な平均値を用いて補間する温度補償型圧電発振器が開示されている。
【特許文献1】特開平8−130411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した温度補償型圧電発振器は、A/Dコンバータから出力されるディジタル信号の全ての桁を記憶部に入力し、このディジタル信号と1対1に対応した補正値を読み出して記憶部から出力している。このため記憶部は、大きなメモリ容量が必要になる課題があった。また記憶部は、記憶しなければならない補正値のデータ量が多いと、データの書き込み時間が長くなる課題があった。
【0006】
さらに特許文献1に係る温度補償型圧電発振器は、補償情報読出回路やアドレス加算回路、複数のスイッチ回路等が必要になるので、発振器全体の構成が大きくなってしまう課題がある。
【0007】
本発明は、少ないメモリ容量の記憶部を用いて温度補償を行う温度補償方法および温度補償発振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る温度補償方法は、圧電振動子の温度を温度計測部で計測して、この計測結果をディジタル信号で出力し、前記ディジタル信号を上位ビットと最下位ビットに分け、前記最下位ビットに応じて前記上位ビットを設定して、この設定された前記上位ビットをアドレス値として記憶部に出力し、容量アレイに設けられたスイッチをオン/オフ制御する補正値を前記アドレス値と1対1に対応させて前記記憶部に保存しておき、前記アドレス値を前記記憶部に入力し、このアドレス値に対応した前記補正値を読み出して2つ設けられた前記容量アレイにそれぞれ出力し、前記補正値に基づいて前記各容量アレイを同じ容量値に設定して、または前記各容量アレイを異なる容量値に設定して、前記圧電振動子の発振周波数を調整する、ことを特徴としている。
【0009】
温度計測部から出力されるディジタル信号のうち最下位ビットを除いた上位ビットに基づいて記憶部を参照しているので、アドレス値と補正値を1対1に対応させたデータの量を少なくしても圧電振動子を温度補償することができる。そして記憶部のメモリ容量を半分にすることができるので、記憶部を小型化することができ、温度補償発振回路も小型化することができる。またデータの書き込み量が減るので、データの書き込み時間を短くすることができる。
【0010】
また温度補償方法は、前記最下位ビットに応じて、前記温度計測部から出力された前記ディジタル信号の前記上位ビットをそのまま前記アドレス値として用いて、2つの前記容量アレイをいずれも同じ前記容量値に設定し、または前記温度計測部から出力された前記ディジタル信号の前記上位ビットをそのまま前記アドレス値として用いて、2つ設けられた前記容量アレイにおける一方の前記容量アレイの前記容量値を設定するとともに、前記温度計測部から出力された前記ディジタル信号の前記上位ビットに基づくアドレス値を+1して上位のアドレス値とし、この上位アドレス値を用いて他方の前記容量アレイの前記容量値を設定する、ことを特徴としている。
【0011】
2つの容量アレイのそれぞれに異なる容量値が設定されるときは、上位ビットをそのままアドレス値として用いたときの補正値を2つ設けられた容量アレイの両方に入力して容量値が設定されたときと、+1された上位アドレス値を用いたときの補正値を2つ設けられた容量アレイの両方に入力して容量値が設定されたときの中間の容量値となっている。したがって本発明に係る温度補償発振回路は、温度変動に対して細かく追従することができ、本発明に比べて2倍のデータ量で温度補償している場合と同等の温度補償の効果を得ることができる。
【0012】
また温度補償方法は、前記温度計測部は間欠的に動作し、前記各容量アレイの前段に配置されたラッチに前記記憶部から出力された前記補正値が一時的に保持されることを特徴としている。温度計測部を間欠的に動作させると、温度計測部からディジタル信号が出力されないときが生じるが、補正値をラッチが保持しているので、温度計測部が動作していないときでも補正値を容量アレイに供給することができる。したがって温度補償発振回路を間欠的に動作させても圧電振動子を温度補償できるので、温度補償発振回路の消費電力を低減させることができる。
【0013】
本発明に係る温度補償発振回路は、圧電振動子を備えた発振回路と、前記圧電振動子の温度を間欠的に計測して、この計測結果をディジタル信号で出力する温度計測部と、前記温度計測部から出力された前記ディジタル信号のうちの上位ビットを入力して、前記ディジタル信号のうちの最下位ビットに応じて前記上位ビットを設定し、これをアドレス値として出力するカウンタと、容量アレイに設けられたスイッチのオン/オフを制御する補正値が前記アドレス値と1対1に対応させて保存され、前記カウンタから入力した前記アドレス値に応じた前記補正値を読み出して出力する記憶部と、前記発振回路に2つ設けられ、前記記憶部から入力した前記補正値に基づいていずれも同じ容量値に設定される、またはそれぞれ異なる容量値に設定される前記容量アレイと、を備えたことを特徴としている。
【0014】
温度計測部から出力されるディジタル信号のうち上位ビットに基づいて記憶部を参照しているので、アドレス値と補正値を1対1に対応させたデータの量を少なくしても圧電振動子を温度補償することができる。そして記憶部のメモリ容量を半分にすることができるので、記憶部を小型化することができ、温度補償発振回路も小型化することができる。またデータの書き込み量が減るので、データの書き込み時間を短くすることができる。
【0015】
そして前記カウンタは、前記最下位ビットが零のときに、入力した前記上位ビットを前記アドレス値として前記容量アレイに出力してなり、前記最下位ビットが1のときに、2つ設けられた前記容量アレイのうちの一方に対して、入力した前記上位ビットを前記アドレス値として出力し、他方に対して、入力した前記上位ビットを+1した上位の前記アドレス値を出力してなる、ことを特徴としている。
【0016】
これにより2つの容量アレイのそれぞれに同じ容量値を設定することができ、また2つの容量アレイにそれぞれ異なる容量値を設定することもできる。そして2つの容量アレイにそれぞれ異なる容量値が設定されるときは、上位ビットをそのままアドレス値として用いたときの補正値を2つの容量アレイの両方に入力して容量値が設定されたときと、+1された上位アドレス値を用いたときの補正値を2つの容量アレイの両方に入力して容量値が設定されたときの中間の容量値となっている。したがって本発明に係る温度補償発振回路は、温度変動に対して細かく追従することができ、本発明に比べて2倍のデータ量で温度補償している場合と同等の温度補償の効果を得ることができる。
【0017】
また温度補償発振回路は、前記容量アレイのそれぞれの前段にラッチを設けたことを特徴としている。温度計測部を間欠的に動作させても、補正値を容量アレイに供給することができる。したがって温度補償発振回路を間欠的に動作できるので、温度補償発振回路の消費電力を低減させることができる。
【0018】
また温度補償発振回路は、2つ設けられた前記容量アレイのうち、一方の前記容量アレイは前記圧電振動子のゲート側に接続され、他方の前記容量アレイは前記圧電振動子のドレイン側に接続されたことを特徴としている。これにより圧電振動子のゲート側の容量値とドレイン側の容量値が同じまたは同程度に調整されるので、圧電振動子を確実に発振させることができる。
【0019】
また温度補償発振回路は、前記発振回路の後段に計時回路を接続したことを特徴としている。これにより温度補償発振回路は、容量緩急式のリアルタイムクロックモジュールを構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明に係る温度補償方法および温度補償発振回路の最良の実施形態について説明する。まず第1の実施形態について説明する。図1は第1の実施形態に係る温度補償発振回路のブロック図である。図2は補正値決定回路のブロック図である。温度補償発振回路10は、補正値決定回路20と圧電振動子40を備えた発振回路42を有する構成である。
【0021】
図2に示される補正値決定回路20は、温度計測部22、カウンタ28、記憶部30、ラッチ32(32a,32b)および制御部34を備えている。温度計測部22は、圧電振動子40の温度を計測する温度センサ24と、この温度センサ24から出力される計測結果をアナログ信号からディジタル信号に変換するアナログ/ディジタル(A/D)コンバータ26を備えている。このA/Dコンバータ26の後段にカウンタ28および制御部34が接続されている。カウンタ28は、A/Dコンバータ26から出力されるディジタル信号のうち、最下位ビットを除いた上位ビットを入力する。すなわち図2に示される場合、A/Dコンバータ26は8ビットの出力O7〜O0を有しており、この8ビットのうち上位7ビットの出力O7〜O1をカウンタ28は入力する。そしてカウンタ28は、上位ビットを入力するとアドレス値を出力する。
【0022】
制御部34は、A/Dコンバータ26から出力されるディジタル信号のうち、最下位ビットを入力する。すなわち図2に示される場合、A/Dコンバータ26の8ビットの出力O7〜O0のうち、最下位の出力O0を制御部34は入力する。そして制御部34は、最下位ビットの情報「0」または「1」に応じてカウンタ28から出力されるアドレス値を設定する。また制御部34は、タイミング信号を入力して、このタイミング信号に基づいて温度計測部22およびカウンタ28を間欠的に動作させるとともに、ラッチ32を制御している。そして制御部34は、図2に示される場合、1Hzのタイミング信号を入力する構成である。
【0023】
そしてカウンタ28の後段に記憶部30が接続されている。記憶部30は、アドレス値と1対1に対応付けられた補正値を予め保存しており、カウンタ28からアドレス値を入力すると、このアドレス値に応じた補正値を読み出して出力するものである。なお記憶部30は、図2に示される場合、カウンタ28からの出力A6〜A0を入力する。また補正値は、後述する容量アレイ44に設けられたスイッチ48のオン/オフを制御するものである。この記憶部30の後段に2つのラッチ32(第1ラッチ32aおよび第2ラッチ32b)が並列接続されている。ラッチ32は、記憶部30から出力される補正値を入力すると、この補正値を次の補正値が入力されるまで保持するものである。
【0024】
また図1に示される温度補償発振回路10は、ラッチ32の後段に圧電振動子40を備えた発振回路42を接続した構成である。圧電振動子40は、例えばATカット等の圧電振動子や音叉型圧電振動子、弾性表面波共振子等であればよい。発振回路42は、圧電振動子40を発振させるものであり、補正値に応じて容量値が変化する容量アレイ44を各ラッチ32の後段にそれぞれ備えている。そして第1ラッチ32aの後段に第1容量アレイ44aが接続され、第2ラッチ32bの後段に第2容量アレイ44bが接続されている。
【0025】
図3は容量アレイを説明する回路図である。各容量アレイ44は、容量値の異なる複数のコンデンサ46を並列接続するとともに、ラッチ32から出力される補正値によってオン/オフ制御されるスイッチ48を各コンデンサ46に直列接続した構成である。そして各容量アレイ44は同じものであり、第1容量アレイ44aと第2容量アレイ44bに設けられている全てのコンデンサ46の容量値を合計すると、従来技術に係る温度補償型圧電発振器に用いられている容量アレイの容量値と同程度になる。また第1容量アレイ44aは圧電振動子40のゲートg側に接続され、第2容量アレイ44bは圧電振動子40のドレインd側に接続されている。
【0026】
次に、温度補償発振回路10の動作について説明する。まず温度計測部22は、制御部34に入力されるタイミング信号に基づいて間欠的に動作する。すなわち温度センサ24は、圧電振動子40の温度を間欠的に計測して、この計測結果をアナログ信号で出力する。A/Dコンバータ26は、アナログ信号を入力すると、ディジタル信号に変換して出力する。カウンタ28は、A/Dコンバータ26から出力されたディジタル信号を最下位ビットと上位ビットに分割したうちの上位ビットを入力する。また制御部34は、ディジタル信号を最下位ビットと上位ビットに分割したうちの最下位ビットを入力する。
【0027】
制御部34は、入力した最下位ビットが「0」であるか、または「1」であるかを判別する。そして制御部34は、最下位ビットが「0」であった場合、カウンタ28に入力された上位ビットをアドレス値としてそのまま出力するように、カウンタ28に設定信号を出力する。また制御部34は、最下位ビットが「1」であった場合、2つ設けられたラッチ32のうちの一方に補正値をセットするためにカウンタ28に入力された上位ビットをアドレス値としてそのまま出力するとともに、2つ設けられたラッチ32のうちの他方に補正値をセットするためにカウンタ28に入力された上位ビットに基づくアドレス値を+1した上位のアドレス値を出力するように、カウンタ28に設定信号を出力する。なお上位ビットに基づくアドレス値を+1した上位アドレス値とは、カウンタ28に入力した上位ビットをそのままアドレス値としたときに、このアドレス値に隣接している上位のアドレス値のことをいう。
【0028】
そしてカウンタ28は、制御部34から入力した設定信号に基づいて、A/Dコンバータ26から入力した上位ビットを設定し、この設定された上位ビットをアドレス値として出力する。
【0029】
記憶部30は、アドレス値を入力するとこのアドレス値に対応した補正値を読み出し、ラッチ32を介して補正値を容量アレイ44にそれぞれ出力する。具体的には、A/Dコンバータ26から出力されたディジタル信号の最下位ビットが「0」の場合、各ラッチ32に同じ補正値が入力される。なお、この補正値は、A/Dコンバータ26から出力された上位ビットがそのままアドレス値とされたものに基づいている。またA/Dコンバータ26から出力されたディジタル信号の最下位ビットが「1」の場合、各ラッチ32に異なる補正値が入力される。すなわち第1ラッチ32aおよび第2ラッチ32bのいずれか一方に入力される補正値は、A/Dコンバータ26から出力されたディジタル信号の上位ビットをアドレス値としてそのまま用いたものに基づいている。そして第1ラッチ32aおよび第2ラッチ32bの他方に入力される補正値は、A/Dコンバータ26から出力されたディジタル信号の上位ビットに基づくアドレス値に1を足した上位アドレス値に基づいている。
【0030】
各ラッチ32は、補正値を入力すると、この補正値を容量アレイ44に出力するとともに、この補正値を次の補正値が入力されるまで一時的に保持する。各容量アレイ44は、補正値を入力すると、この補正値に応じて各スイッチ48をオンまたはオフして、圧電振動子40にコンデンサ46を接続する。これにより容量アレイ44の容量値が調整されて、圧電振動子40の発振周波数が調整されるので、発振回路42から出力されるクロック信号は温度補償されて出力される。
【0031】
なお圧電振動子40の発振周波数は、圧電振動子40のゲートg側に接続された第1容量アレイ44aの容量値と、圧電振動子40のドレインd側に接続された第2容量アレイ44bの容量値を足した容量値に基づいて調整される。そして最下位ビットが「1」の場合、圧電振動子40の発振周波数は、A/Dコンバータ26から出力された上位ビットをそのままアドレス値としたときの補正値に基づいたものと、A/Dコンバータ26から出力された上位ビットを+1して上位アドレス値としたときの補正値に基づいたものによって調整される。したがって最下位ビットが「1」の場合、圧電振動子40の発振周波数の調整量は、A/Dコンバータ26から出力される上位ビットをそのままアドレス値として用いたときの補正量に基づいて圧電振動子40の発振周波数を調整するときと、A/Dコンバータ26から出力される上位ビットを+1して上位アドレス値として用いたときの補正量に基づいて圧電振動子40の発振周波数を調整するときの中間の調整量になる。よって温度補償発振回路10は、本実施形態に比べて2倍のデータ量で温度補償している場合と同等の温度補償の効果がある。なお、このデータとは、アドレス値と補正値を1対1に対応させて記憶部30に保存される情報のことである。
【0032】
このような温度補償発振回路10は、A/Dコンバータ26から出力されるディジタル信号のうち最下位ビットを使わず、上位ビットを使用して記憶部30を参照するので、記憶部30に保存されるデータの容量は半分になり、メモリ容量を少なくすることができる。これにより記憶部30に保存するアドレス値と補正値を1対1に対応させたデータの書き込み量が減り、データの書き込み時間を短くすることができる。また記憶部30は、少ないメモリ容量を有すればいいので、小型化することができる。そして記憶部30が小型化できることにより、温度補償発振回路10も小型化することができる。
【0033】
さらにタイミング信号に基づいて温度計測部22を動作させる間欠時間を設定し、圧電振動子40を温度補償しているので、温度計測部22を連続して動作させる場合に比べて消費電力を低減させることができる。
【0034】
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態で説明した温度補償発振回路に計時回路を接続して容量緩急方式のリアルタイムクロックモジュールを形成した構成について説明する。このため第2の実施形態では、第1の実施形態で説明した温度補償発振回路と同様の構成部分の説明を省略し、同番号を付す。
【0035】
図4は第2の実施形態に係る温度補償発振回路のブロック図である。温度補償発振回路10を構成している発振回路42の後段には、計時回路50が接続されている。この計時回路50は、分周回路52および時計・カレンダー回路54を備えている。分周回路52は、発振回路42から出力されたクロック信号を入力すると、このクロック信号を所定の分周数で分周して出力する。時計・カレンダー回路54は、分周回路52から出力されたクロック信号を入力して、このクロック信号に基づいて時計やカレンダーを表示または出力する。
【0036】
これにより温度補償発振回路10は、リアルタイムクロックモジュールを構成することができる。そして温度補償発振回路10は、温度センサ24およびA/Dコンバータ26を間欠的に動作させ、この間欠時間において補正値を切り換えて圧電振動子40を温度補償しているので、温度センサ24およびA/Dコンバータ26を連続して動作させる場合に比べて消費電力を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1の実施形態に係る温度補償発振回路のブロック図である。
【図2】補正値決定回路のブロック図である。
【図3】容量アレイを説明する回路図である。
【図4】第2の実施形態に係る温度補償発振回路のブロック図である。
【図5】従来技術に係る温度補償型圧電発振器のブロック図である。
【符号の説明】
【0038】
10………温度補償発振回路、20………補正値決定回路、22………温度計測部、28………カウンタ、30………記憶部、32………ラッチ、34………制御部、40………圧電振動子、42………発振回路、44………容量アレイ、50………計時回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子の温度を温度計測部で計測して、この計測結果をディジタル信号で出力し、
前記ディジタル信号を上位ビットと最下位ビットに分け、
前記最下位ビットに応じて前記上位ビットを設定して、この設定された前記上位ビットをアドレス値として記憶部に出力し、
容量アレイに設けられたスイッチをオン/オフ制御する補正値を前記アドレス値と1対1に対応させて前記記憶部に保存しておき、
前記アドレス値を前記記憶部に入力し、このアドレス値に対応した前記補正値を読み出して2つ設けられた前記容量アレイにそれぞれ出力し、
前記補正値に基づいて前記各容量アレイを同じ容量値に設定して、または前記各容量アレイを異なる容量値に設定して、前記圧電振動子の発振周波数を調整する、
ことを特徴とする温度補償方法。
【請求項2】
前記最下位ビットに応じて、
前記温度計測部から出力された前記ディジタル信号の前記上位ビットをそのまま前記アドレス値として用いて、2つの前記容量アレイをいずれも同じ前記容量値に設定し、
または前記温度計測部から出力された前記ディジタル信号の前記上位ビットをそのまま前記アドレス値として用いて、2つ設けられた前記容量アレイにおける一方の前記容量アレイの前記容量値を設定するとともに、前記温度計測部から出力された前記ディジタル信号の前記上位ビットに基づくアドレス値を+1して上位のアドレス値とし、この上位アドレス値を用いて他方の前記容量アレイの前記容量値を設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の温度補償方法。
【請求項3】
前記温度計測部は間欠的に動作し、前記各容量アレイの前段に配置されたラッチに前記記憶部から出力された前記補正値が一時的に保持されることを特徴とする請求項1または2に記載の温度補償方法。
【請求項4】
圧電振動子を備えた発振回路と、
前記圧電振動子の温度を間欠的に計測して、この計測結果をディジタル信号で出力する温度計測部と、
前記温度計測部から出力された前記ディジタル信号のうちの上位ビットを入力して、前記ディジタル信号のうちの最下位ビットに応じて前記上位ビットを設定し、これをアドレス値として出力するカウンタと、
容量アレイに設けられたスイッチのオン/オフを制御する補正値が前記アドレス値と1対1に対応させて保存され、前記カウンタから入力した前記アドレス値に応じた前記補正値を読み出して出力する記憶部と、
前記発振回路に2つ設けられ、前記記憶部から入力した前記補正値に基づいていずれも同じ容量値に設定される、またはそれぞれ異なる容量値に設定される前記容量アレイと、
を備えたことを特徴とする温度補償発振回路。
【請求項5】
前記カウンタは、
前記最下位ビットが零のときに、入力した前記上位ビットを前記アドレス値として前記容量アレイに出力してなり、
前記最下位ビットが1のときに、2つ設けられた前記容量アレイのうちの一方に対して、入力した前記上位ビットを前記アドレス値として出力し、他方に対して、入力した前記上位ビットを+1した上位の前記アドレス値を出力してなる、
ことを特徴とする請求項4に記載の温度補償発振回路。
【請求項6】
2つ設けられた前記容量アレイのうち、一方の前記容量アレイは前記圧電振動子のゲート側に接続され、他方の前記容量アレイは前記圧電振動子のドレイン側に接続されたことを特徴とする請求項4または5に記載の温度補償発振回路。
【請求項7】
前記発振回路の後段に計時回路を接続したことを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の温度補償発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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