説明

温度補償機能付検出装置

【課題】検出出力の温度補正を正確に行える温度補償機能付検出装置を提供する。
【解決手段】温度補償機能付検出装置は、検知対象ガスのガス濃度に応じて起電力が変化するガスセンサ1と、複数点のガス濃度(校正点)の各々についてガスセンサ1の出力と温度との関係を示した温度補償テーブルが予め登録された記憶部3と、演算処理部5とを備え、演算処理部5は、複数の温度補償テーブルから温度センサ2の検出温度に対応したセンサ出力を抽出することによって、上記検出温度において複数点の物理量とセンサ出力との関係を示す検量線を作成し、当該検量線とガスセンサ1から取り込んだセンサ出力とを用いて今回検出時の物理量を演算により求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度補償機能付検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、検知対象ガスのガス濃度に応じて抵抗値の変化する金属酸化物半導体ガスセンサを用い、ガスセンサの検出出力を温度補正する機能を備えたガス検出装置が提供されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記公報に示されるガス検出装置は、空気質を検出する空気質センサと、空気質センサの検出出力と空気質レベル判定閾値とを比較することで空気質を判定する演算手段と、周囲温度を検出する温度センサと、複数の温度において空気質センサの出力値を補正するための補正係数を記憶した記憶手段とを備えている。このガス検出装置は、温度センサの検出温度をもとに記憶手段から補正係数を読み出し、この補正係数を基準温度における空気質レベル判定閾値に乗算することで、空気質レベル判定閾値の温度補正を行っており、演算手段では補正後の空気質レベル判定閾値と空気質センサの検出出力とを比較することによって、空気質を判定していた。
【0004】
また、この種のガス検出装置としては、基準温度(例えば25℃)におけるガス濃度とセンサ出力との関係を示す検量線データをメモリに記憶させておき、所定のガス濃度および基準温度におけるセンサ出力を取り込み、この時のセンサ出力を用いて検量線データを補正し、補正後の検量線データとセンサ出力のサンプリング値とを用い、補間計算などを行うことによってセンサ出力からガス濃度を求めていた。
【特許文献1】特開平6−130014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、金属酸化物半導体ガスセンサや接触燃焼式のガスセンサでは、検知対象ガスのガス濃度によって、センサ出力の温度に対する変動割合が大きく異なるため、ある1点のガス濃度で検量線データを補正しただけでは、検量線データの補正を正確に行うことができず、このような検量線データを用いた場合、ガス濃度の検出値が不正確になるという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、検出出力の温度補正を正確に行える温度補償機能付検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、検知対象の物理量を電気量に変換するとともに、その出力特性が周囲温度に応じて変動するセンサ部と、周囲温度を検出する温度検出部と、複数点の物理量の各々についてセンサ部の出力と温度との関係を示した温度補償テーブルが予め登録された記憶部と、センサ部のセンサ出力と温度検出部の検出温度と温度補償テーブルとを用いて測定対象の物理量を演算する演算処理部とを備え、演算処理部は、複数の温度補償テーブルから温度検出部の検出温度に対応したセンサ出力を抽出することによって、検出温度において複数点の物理量とセンサ出力との関係を示す検量線を作成し、当該検量線とセンサ部から今回取り込んだセンサ出力とを用いて検知対象の物理量を求めることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、複数点の物理量(校正点)で温度補償テーブルを用意し、測定時の検出温度をもとに複数の温度補償テーブルからセンサ出力を抽出することで、上記検出温度におけるセンサ出力と物理量との関係を示す検量線を作成しているので、この検量線と今回測定時のセンサ出力とを用いて物理量を求めることによって、温度によって出力特性が変動するようなセンサ部を用いた場合でも、検知対象の物理量をより正確に検出することができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、温度を一定とした時にセンサ出力と検知対象の物理量との関係が直線で近似可能な場合に、演算処理部が、検量線を構成する複数点のセンサ出力の内、センサ部から今回取り込んだセンサ出力Axに最も近い2点のセンサ出力をA1,A2、センサ出力A1,A2にそれぞれ対応する物理量をC1,C2、今回検出時の検知対象の物理量をCxとしたときに、Cx=(Ax−A1)×(C2−C1)/(A2−A1)+C1なる演算式を用いて検知対象の物理量を演算することを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、温度を一定とした時にセンサ出力と検知対象の物理量との関係が直線で近似可能な場合には、上記の演算式を用いることによって検知対象の物理量を正確に求めることができる。
【0011】
また請求項3の発明は、請求項1の発明において、温度を一定とした時にセンサ出力の対数値と検知対象の物理量の対数値との関係が直線で近似可能な場合に、演算処理部が、検量線を構成する複数点のセンサ出力の内、センサ部から今回取り込んだセンサ出力Axに最も近い2点のセンサ出力をA1,A2、センサ出力A1,A2にそれぞれ対応する物理量をC1,C2、今回検出時の検知対象の物理量をCxとしたときに、Cx=exp((Ln(Ax)−Ln(A1))×(Ln(C2)−Ln(C1))/(Ln(A2)−Ln(A1))+Ln(C1))なる演算式を用いて検知対象の物理量を演算により求めることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、温度を一定とした時にセンサ出力の対数値と検知対象の物理量の対数値との関係が直線で近似可能な場合には、上記の演算式を用いることによって検知対象の物理量を正確に求めることができる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1又は2の発明において、センサ部が、触媒作用を有する材料で形成され、検知対象の可燃性ガスが触媒作用によりセンサ表面で燃焼する時の燃焼熱によって発生する抵抗値変化から可燃性ガスのガス濃度を求める接触燃焼式ガスセンサからなることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、接触燃焼式ガスセンサを用いてガス濃度を検出する際に、温度変化に応じてセンサ出力が変動したとしても、ガス濃度を正確に検出することができる。
【0015】
また請求項5の発明は、請求項1又は3の発明において、センサ部が、検知対象ガスのガス濃度に応じて抵抗値の変化する金属酸化物半導体ガスセンサからなることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、金属酸化物半導体ガスセンサを用いてガス濃度を検出する際に、温度変化に応じてセンサ出力が変動したとしても、ガス濃度を正確に検出することができる。
【0017】
さらに、請求項6の発明は、請求項1又は2の発明において、センサ部が、異種の金属で形成された一対の電極を有し、検知対象の溶液に一対の電極を浸けると、両電極間に検知対象の濃度に応じた起電力が発生する水質センサからなることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、水質センサを用いて検知対象の濃度を検出する際に、温度変化に応じてセンサ出力が変動したとしても、検知対象の濃度を正確に検出することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数点の物理量(校正点)で温度補償テーブルを用意し、測定時の検出温度をもとに複数の温度補償テーブルからセンサ出力を抽出することで、上記検出温度におけるセンサ出力と物理量との関係を示す検量線を作成しているので、この検量線と今回測定時のセンサ出力とを用いて物理量を求めることによって、温度によって出力特性が変動するようなセンサ部を用いた場合でも、検知対象の物理量をより正確に検出できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
本発明の実施形態1を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態の温度補償機能付検出装置のブロック図であり、この検出装置は、ガスセンサ1と、温度センサ2と、記憶部3と、入力部4と、演算処理部5と、表示部6とを主要な構成として備えている。
【0021】
ガスセンサ1は例えば従来周知の接触燃焼式ガスセンサを用いて構成され、触媒反応によりセンサ表面で可燃性ガス(検知対象ガス)が燃焼すると、燃焼熱によりセンサの温度が上昇し、この温度上昇を受けてセンサの抵抗値が変化するため、センサの抵抗値変化からガス濃度を求めることができる。
【0022】
温度センサ2は例えばサーミスタからなり、その検出出力は演算処理部5に出力される。
【0023】
記憶部3は、例えばEEPROMやフラッシュメモリのような不揮発性メモリやROMなどからなり、予め設定された複数点のガス濃度(このガス濃度を校正点と言う)の各々について、センサ出力と周囲温度との関係を示した温度補償テーブルが予め登録されている。
【0024】
入力部4は、使用者が測定開始などの入力操作を行うために設けられ、その入力信号は演算処理部5に出力される。
【0025】
演算処理部5は、ガスセンサ1および温度センサ2の検出出力をA/D変換部(図示せず)によりA/D変換した値を取り込み、両センサ1,2の検出出力と記憶部3に記憶された温度補償テーブルとを用いてガス濃度を演算する。
【0026】
表示部6は、例えば7セグメントLEDからなり、演算処理部5による演算結果の表示などを行う。なお、演算結果の出力形態としては様々な形態が考えられ、例えば演算処理部5による演算結果(検出濃度)をD/A変換器により電圧値に変換して出力したり、さらに電流値に変換して出力しても良いし、検出濃度のレベルに応じた報知音を出力するスピーカを設け、濃度レベルに応じて報知音の音色、音量、或いは報知音の断続周期を変化させるようにしても良い。
【0027】
ここで、演算処理部5によるガス濃度の検出方法について以下に説明を行う。入力部4を用いて動作モードが測定モードに切り換えられると、演算処理部5は測定動作を開始する。
【0028】
上述のように記憶部3には複数点の校正点(例えば0,500,1000,2500,5000,10000,15000,20000ppmの8点)における温度補償テーブルTa1,Ta2…Ta8が登録されている。各温度補償テーブルTa1,Ta2…Ta8は、各々の濃度中で温度を変化させた時のセンサ出力(抵抗値R’)を、基準温度(例えば25℃)におけるセンサ出力Rsで割って基準化した値R(=R’/Rs)に所定の係数を乗算して整数化してあり、この値と温度とを対応付けてテーブルを作成している。なお、各々の温度で求めた抵抗値Rは、温度センサ2による検出温度のA/D変換値(例えば0〜1024)をアドレスとして記憶させれば良く、表1に温度補償テーブルの一例を示す。
【0029】
【表1】

【0030】
各温度補償テーブルTa1〜Ta8はそれぞれ8点の濃度中でのセンサ出力の温度特性を示しており、図2(a)は0ppmにおける温度補償テーブルTa1と、500ppmにおける温度補償テーブルTa2と、20000ppmにおける温度補償テーブルTa8とをそれぞれグラフ化して示している。
【0031】
演算処理部5では、所定のサンプリング周期が経過する毎に、ガスセンサ1と温度センサ2の出力を取り込み、先ず温度センサ1により検出された温度Txを用いて、記憶部3に登録された複数の温度補償テーブルTa1,Ta2…Ta8を参照し、各々の温度補償テーブルから各校正点(ガス濃度)において温度Txの時の基準化し整数化されたセンサ出力R1,R2…R8を読み込む。そして、全ての温度補償テーブルから温度Txの時のセンサ出力R1,R2…R8を読み込むと、これら8点のセンサ出力R1,R2…R8を用いて図2(b)に示すような検量線が求まるから、演算処理部5では、この検量線とガスセンサ1から読み込んだセンサ出力Rx’とを用いて、現在のガス濃度を求めることができる。
【0032】
すなわち演算処理部5は、今回サンプリングしたセンサ出力Rx’を基準温度(例えば25℃)におけるセンサ出力Rsで基準化し、さらに整数化した値Rxを求め、上述の処理で求めた8点のセンサ出力R1,R2…R8から、上記のセンサ出力Rxを間に挟む2点(つまりセンサ出力Rxに最も近い2点)のセンサ出力(例えばR2とR3)を求め、この2点間でセンサ出力とガス濃度との関係が一次式で示されると仮定して補間計算を行うことにより、現在のガス濃度を求めている。すなわち、センサ出力Rxを間に挟む2点のセンサ出力がRa1,Ra2であり、その時のガス濃度がC1,C2の場合、演算処理部5は以下の式(1)の計算を行って、現在のガス濃度Cxを求めており、演算結果を表示部6に表示させる。
【0033】
Cx=(Rx−Ra1)×(C2−C1)/(Ra2−Ra1)+C1 …(1)
なお、現在のガス濃度が0ppm以上且つ20000ppm以下の範囲内であれば、センサ出力Rxはセンサ出力R1〜R8の範囲内にあるので、上述の補間計算を行うことで、ガス濃度を求めることが可能であるが、現在のガス濃度が20000ppmよりも高い場合は、15000ppmにおけるセンサ出力R7と20000ppmにおけるセンサ出力R8との間を補間する補間曲線を20000ppmを超える高濃度領域に延長した補間曲線を用いてガス濃度を求めれば良い。すなわち、上記の式(1)においてRa1,Ra2にそれぞれR7,R8を、C1,C2にそれぞれ15000,20000(ppm)を代入した式を用いてガス濃度を演算すれば良い。
【0034】
ところで、本実施形態ではセンサ部として接触燃焼式のガスセンサ1を用いているが、センサ部を接触燃焼式ガスセンサに限定する趣旨のものではなく、例えばガス濃度に応じて抵抗値が変化する従来周知の金属酸化物半導体ガスセンサを用いても良い。
【0035】
センサ部に金属酸化物半導体ガスセンサを用いる場合も、上述と略同様の方法でガス濃度を求めることができ、演算処理部5では、複数点のガス濃度における温度補償テーブルから、温度センサ2を用いて検出した現在の温度におけるセンサ出力を読み込んで、横軸および縦軸をそれぞれセンサ出力の対数値、ガス濃度の対数値とした検量線を作成し、この検量線とガスセンサ1から読み込んだセンサ出力とを用いて、直線補間計算を行うことで、現在のガス濃度を演算する。
【0036】
ここで、ガスセンサ1に金属酸化物半導体ガスセンサを用いた場合の測定方法について以下に簡単に説明する。記憶部3には、複数点のガス濃度(10,100,1000,5000,10000,20000,30000ppmの7点)における温度補償テーブルTa1,Ta2…Ta7を記憶しているのであるが、金属酸化物半導体ガスセンサの場合はセンサ出力の対数値とガス濃度の対数値とが略線形な関係を有しているので、温度補償テーブルTa1,Ta2…Ta7として、各々の濃度中で温度を変化させた時のセンサ抵抗R’を、基準温度(例えば25℃)におけるセンサ抵抗Rsで割って基準化した値R(=R’/Rs)を求め、この基準化したセンサ抵抗Rの対数値Ln(R)に所定の係数Kを乗じて整数化した値F(R)と温度とを対応付けてテーブルを作成している。但し、F(R)=Ln(R)×Kとする。
【0037】
そして演算処理部5では、所定のサンプリング周期が経過する毎に、ガスセンサ1と温度センサ2の出力を取り込み、先ず温度センサ1により検出された温度Txを用いて、記憶部3に登録された複数の温度補償テーブルTa1,Ta2…Ta7を参照し、各々の温度補償テーブルから各校正点(ガス濃度)において温度Txの時の基準化し整数化したセンサ出力F(R1),F(R2)…F(R7)を読み込む。そして、全ての温度補償テーブルから温度Txの時のセンサ出力F(R1),F(R2)…F(R7)を読み込むと、これら7点のセンサ出力F(R1),F(R2)…F(R7)を用いて検量線が求まるから、演算処理部5では、ガスセンサ1から読み取ったセンサ抵抗Rx’を基準温度におけるセンサ抵抗Rsで割った値の対数値Ln(Rx)を整数化した値F(Rx)を求め、このセンサ出力F(Rx)と上記の検量線とを用いて、現在のガス濃度を求めることができる。
【0038】
すなわち演算処理部5は、上述の処理で求めた7点のセンサ出力F(R1),F(R2)…F(R7)から、今回サンプリングしたセンサ抵抗Rx’より求めたセンサ出力F(Rx)を間に挟む2点のセンサ出力(例えばF(Ra1)とF(Ra2))を求め、この2点間でセンサ出力の対数値とガス濃度の対数値との関係が一次式で示されると仮定し、以下の式(2)を用いて補間計算を行うことにより、現在のガス濃度Cxを求めている。
【0039】
Cx=exp((F(Rx)−F(Ra1))×(Ln(C2)−Ln(C1))/(F(Ra2)−F(Ra1))+Ln(C1)) …(2)
但し、C1,C2はそれぞれセンサ出力F(Rx)を間に挟む2点のガス濃度である。
【0040】
なお、現在のガス濃度が10ppm以上且つ30000ppm以下の範囲内であれば、センサ出力F(Rx)はセンサ出力F(R1)〜F(R7)の範囲内にあるので、上述の補間計算を行うことで、ガス濃度を求めることが可能であるが、現在のガス濃度が10ppmよりも低い場合は、10ppmにおけるセンサ出力F(R1)と100ppmにおけるセンサ出力F(R2)との間を補間する補間直線を10ppm以下の低濃度領域に延長した補間直線を用いてガス濃度を求めれば良い。同様に、現在のガス濃度が30000ppmよりも高い場合は、20000ppmにおけるセンサ出力F(R6)と30000ppmにおけるセンサ出力F(R7)との間を補間する補間直線を30000ppm以上の高濃度領域に延長した補間直線を用いてガス濃度を求めれば良い。演算処理部5は以上のような演算を行ってガス濃度を求めると、演算結果を表示部6に表示させる。
【0041】
(実施形態2)
上述の実施形態1では、センサ部として金属酸化物半導体ガスセンサ或いは接触燃焼式ガスセンサからなるガスセンサ1を用いた場合について説明を行ったが、本実施形態では、図3に示すようにガスセンサ1の代わりに、異種の金属で形成された一対の電極を有し、これら一対の電極を検査対象の液に浸けて、両電極間に発生する起電力から液中の溶存塩素、溶存オゾン、溶存酸素、溶存水素、溶存二酸化炭素などの濃度を測定する水質センサ7を用いている。尚、水質センサ7以外の構成は実施形態1と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0042】
演算処理部5では、実施形態1と同様の方法で検知対象の濃度を測定しており、以下にその測定方法を簡単に説明する。
【0043】
入力部4を用いて動作モードが測定モードに切り換えられると、演算処理部5は測定動作を開始する。
【0044】
記憶部3には、例えば溶存塩素の濃度が0.05、0.1、0.6mg/Lの時の温度補償テーブルが登録されている。表2は各温度における温度補償テーブルを示しており、各温度補償テーブルでは各々の濃度中で温度を変化させた時のセンサ出力(起電力)を温度と対応付けて記憶している。
【0045】
【表2】

【0046】
図4(a)は各温度補償テーブルをグラフ化したものであり、図4(a)中の◆は0.05mg/Lのデータ、■は0.1mg/Lのデータ、▲は0.6mg/Lのデータであり、L1は0.05mg/Lのデータを多項式で近似した曲線、L2は0.1mg/Lのデータを多項式で近似した曲線、L3は0.6mg/Lのデータを多項式で近似した曲線である。
【0047】
演算処理部5では、所定のサンプリング周期が経過する毎に、水質センサ7と温度センサ2の出力を取り込み、先ず温度センサ1により検出された温度Txを用いて、記憶部3に登録された複数の温度補償テーブルを参照し、各温度補償テーブルのデータを近似した近似曲線L1,L2,L3から温度Txにおけるセンサ出力V1,V2,V3を読み込む。そして、これら3点のセンサ出力V1,V2,V3を用いて図4(b)に示すような検量線が求まるから、演算処理部5では、この検量線と水質センサ7から読み込んだセンサ出力Vxとを用いて、現在の残留塩素濃度を求めることができる。すなわち演算処理部5は、上述の処理で求めた3点のセンサ出力V1,V2,V3から、今回サンプリングしたセンサ出力Vxを間に挟む2点(つまりセンサ出力Vxに最も近い2点)のセンサ出力(例えばV2とV3)を求め、この2点間でセンサ出力とガス濃度との関係が一次式で示されると仮定して補間計算を行うことにより、現在の残留塩素濃度を求めている。ここでセンサ出力Vxを間に挟む2点のセンサ出力がVa1,Va2であり、その時の残留塩素濃度がC1,C2の場合、演算処理部5は以下の式(3)の計算を行って、現在の残留塩素濃度Cxを求め、演算結果を表示部6に表示させている。
【0048】
Cx=(Vx−Va1)×(C2−C1)/(Va2−Va1)+C1 …(3)
なお、現在の残留塩素濃度が0.05mg/L以上且つ0.6mg/L以下の範囲内であれば、現在のセンサ出力Vxがセンサ出力V1〜V3の範囲内にあるので、上述の補間計算を行うことで、残留塩素濃度を求めることが可能であるが、現在の残留塩素濃度が0.05mg/L未満、或いは、0.6mg/Lよりも高い場合は、今回取り込んだセンサ出力Vxに最も近い2点のセンサ出力の間を補間する補間曲線を用いて残留塩素濃度を求めれば良い。例えば、現在の残留塩素濃度が0.6mg/Lよりも高い場合は、センサ出力Vxに最も近い0.1mg/Lにおけるセンサ出力V2と0.6mg/Lにおけるセンサ出力V3との間を補間する補間曲線を0.6mg/Lを超える高濃度領域に延長した補間直線を用いて残留塩素濃度を求めれば良い。同様に、現在の残留塩素濃度が0.05mg/Lよりも低い場合は、センサ出力Vxに最も近い0.05mg/Lにおけるセンサ出力V1と0.1mg/Lにおけるセンサ出力V2との間を補間する補間直線を0.05mg/L以下の低濃度領域に延長した補間直線を用いてガス濃度を求めれば良い。
【0049】
なお、本発明の精神と範囲に反することなしに、広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は、特定の実施形態に制約されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施形態1の温度補償機能付検出装置のブロック図である。
【図2】(a)は温度補償テーブルの説明図、(b)は温度補償テーブルから検出温度におけるセンサ出力を抽出して作成された検量線の説明図である。
【図3】実施形態2の温度補償機能付検出装置のブロック図である。
【図4】(a)は温度補償テーブルの説明図、(b)は温度補償テーブルから検出温度におけるセンサ出力を抽出して作成された検量線の説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 ガスセンサ
2 温度センサ
3 記憶部
4 入力部
5 演算処理部
6 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象の物理量を電気量に変換するとともに、その出力特性が周囲温度に応じて変動するセンサ部と、周囲温度を検出する温度検出部と、複数点の物理量の各々について前記センサ部の出力と温度との関係を示した温度補償テーブルが予め登録された記憶部と、センサ部のセンサ出力と温度検出部の検出温度と前記温度補償テーブルとを用いて測定対象の物理量を演算する演算処理部とを備え、前記演算処理部は、複数の温度補償テーブルから温度検出部の検出温度に対応したセンサ出力を抽出することによって、前記検出温度において複数点の物理量とセンサ出力との関係を示す検量線を作成し、当該検量線と前記センサ部から今回取り込んだセンサ出力とを用いて検知対象の物理量を求めることを特徴とする温度補償機能付検出装置。
【請求項2】
温度を一定とした時に前記センサ出力と前記検知対象の物理量との関係が直線で近似可能な場合に、前記演算処理部が、前記検量線を構成する複数点のセンサ出力の内、前記センサ部から今回取り込んだセンサ出力Axに最も近い2点のセンサ出力をA1,A2、センサ出力A1,A2にそれぞれ対応する物理量をC1,C2、今回検出時の検知対象の物理量をCxとしたときに、
Cx=(Ax−A1)×(C2−C1)/(A2−A1)+C1
なる演算式を用いて検知対象の物理量を演算することを特徴とする請求項1記載の温度補償機能付検出装置。
【請求項3】
温度を一定とした時に前記センサ出力の対数値と前記検知対象の物理量の対数値との関係が直線で近似可能な場合に、前記演算処理部が、前記検量線を構成する複数点のセンサ出力の内、前記センサ部から今回取り込んだセンサ出力Axに最も近い2点のセンサ出力をA1,A2、センサ出力A1,A2にそれぞれ対応する物理量をC1,C2、今回検出時の検知対象の物理量をCxとしたときに、
Cx=exp((Ln(Ax)−Ln(A1))×(Ln(C2)−Ln(C1))/(Ln(A2)−Ln(A1))+Ln(C1))
なる演算式を用いて検知対象の物理量を演算により求めることを特徴とする請求項1記載の温度補償機能付検出装置。
【請求項4】
前記センサ部が、触媒作用を有する材料で形成され、検知対象の可燃性ガスが触媒作用によりセンサ表面で燃焼する時の燃焼熱によって発生する抵抗値変化から可燃性ガスのガス濃度を求める接触燃焼式ガスセンサからなることを特徴とする請求項1又は2記載の温度補償機能付検出装置。
【請求項5】
前記センサ部が、検知対象ガスのガス濃度に応じて抵抗値の変化する金属酸化物半導体ガスセンサからなることを特徴とする請求項1又は3記載の温度補償機能付検出装置。
【請求項6】
前記センサ部が、異種の金属で形成された一対の電極を有し、検知対象の溶液に前記一対の電極を浸けると、両電極間に検知対象の濃度に応じた起電力が発生する水質センサからなることを特徴とする請求項1又は2記載の温度補償機能付検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−57266(P2007−57266A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240232(P2005−240232)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(593210961)エフアイエス株式会社 (39)
【Fターム(参考)】