説明

温水ヒータの製造方法、これにより製造された温水ヒータ

【課題】簡素かつ簡易な製造工程により、温水ヒータを構成する熱媒流通チューブとヒータ部材との間に適度な接触面圧を付与して安定した熱交換特性を得るとともに、熱媒流通チューブ同士の接合強度を高めて信頼性を高めることができる温水ヒータの製造方法を提供する。
【解決手段】チューブ構成部材6をロウ付けして熱媒流通チューブ2を形成する熱媒流通チューブ形成工程と、熱媒流通チューブ2を複数平行に配列し、これらの熱媒流通チューブ2の間にヒータ部材4を配置し、熱媒流通チューブ2とヒータ部材4とを位置決めしながら、ヒータ部材4が熱媒流通チューブ2のヒータ接触面7に密着するように、その積層方向に加圧する位置決め加圧工程と、位置決め加圧工程にて位置決めされた状態で熱媒流通チューブ2同士を接合するチューブ接合工程とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱媒が流れる複数の流路の間にヒータを設置して熱媒を加熱するようにした温水ヒータの製造方法と、この方法により製造された温水ヒータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの動力で走行する一般の自動車においては、周知のようにエンジン冷却水を熱媒としてヒータコアに循環させ、ヒータコアに空調用の空気を通過させて熱交換させることにより車内暖房を行っている。一方、エンジンの動力と電動モータの動力とを併用して走行するハイブリッド車両や、電動モータの駆動力のみで走行する電気自動車等の電動車両においては、運転中にエンジンが休止する、もしくはエンジンが搭載されていないため、エンジン冷却水の熱で効果的な車内暖房を行うことができない。
【0003】
そこで、例えばハイブリッド車両では、エンジン冷却水の経路中に暖房用の温水ヒータを接続しており、低燃費運転時等のようにエンジン冷却水の温度が上昇しにくく暖房能力が不足する時には、ヒータコアによる暖房を補完するために温水ヒータでエンジン冷却水を追加熱するようになっている。
【0004】
上記の温水ヒータは、エンジン冷却水が熱媒として流通する複数の偏平な熱媒流通チューブが積層され、これらの熱媒流通チューブの間に平板状のヒータ部材が介装されたシンプルな構造である。ヒータ部材としては、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子、即ち正特性サーミスタ素子を発熱要素とするPTCヒータが好適である。PTCヒータは、正特性のサーミスタ特性を有しており、温度の上昇と共に抵抗値が上昇し、これによって消費電流が制御されるとともに温度上昇が緩やかになり、その後、消費電流および発熱部の温度が飽和領域に達して安定するものであり、自己温度制御特性を備えているため、車両の空調暖房用に適している。
【0005】
従来、上述のように冷却水が流通する偏平な熱媒流通チューブを複数段積層してその間に平板状の電子部品を介装し、電子部品と冷却水との間で熱交換を行わせるものとして、例えば特許文献1に開示されている積層型冷却器がある。この積層型冷却器の製造方法は、まずアルミニウム材等により複数の偏平な熱媒流通チューブを形成し、次にこれらの熱媒流通チューブを所定の間隔を空けて平行に積層して仮組みし、次にこの仮組みしたものを炉中ロウ付け等により一体化し、最後に各熱媒流通チューブの間に平板状の電子部品を差し込んで積層型冷却器を完成させるようになっていた。
【0006】
偏平な熱媒流通チューブを製造する方法として一般的なのは、例えば特許文献2に開示されている冷却管のように、表裏一対の外殻プレートを最中合わせにしてロウ付けするものである。この製造方法によれば、同じ形状の外殻プレートを多数プレス成形してロウ付けするだけで容易に熱媒流通チューブを製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−142305号公報
【特許文献2】特開2008−166423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
熱媒流通チューブを流れる熱媒(冷却水)と、電子部品(PTCヒータ)とを安定的に熱交換させるには、熱媒流通チューブの偏平面と電子部品とを適度な接触面圧で密着させる必要がある。しかしながら、特許文献1の積層型冷却器のように複数の熱媒流通チューブをロウ付けして一体化してから、各熱媒流通チューブの間に平板状の電子部品を差し込むという製造方法では、必ずしも熱媒流通チューブと電子部品とが良好に密着せず、安定した熱交換特性が得られにくい、もしくは逆に過剰な面圧をもって当接し、熱媒流通チューブ自体やその接合部に負担を掛ける虞がある。これは各部の寸法誤差や組付誤差に起因するものであり、適度な接触面圧を確保するためには熟練と手間を要し、完成品にバラつきが出やすい。
【0009】
しかも、上記の方法で温水ヒータを製造する場合には、熱媒流通チューブを仮組みし、炉中ロウ付けしてヒータ本体を製造する工程と、このヒータ本体にヒータ部材(PTCヒータ)を差し込んで取り付ける工程とが別工程になるため、製造工程全体が複雑にならざるを得なかった。なお、PTCヒータは、絶縁体、配線部材、接着剤等、各種の組立関連部材を用いてユニット状に構成されて温水ヒータに組み込まれるが、上記の組立関連部材の耐熱温度は、熱媒流通チューブを炉中ロウ付けする炉内の温度(500℃以上)よりも概ね低いため、仮組みしたヒータ本体に、ユニット状に構成されたPTCヒータを予め組み込んだ状態で炉中ロウ付けを行うのは不可能であり、どうしても別工程に分けざるを得なかった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、簡素かつ簡易な製造工程により、温水ヒータを構成する熱媒流通チューブとヒータ部材との間に適度な接触面圧を付与して安定した熱交換特性を得るとともに、熱媒流通チューブ同士の接合強度を高めて信頼性を向上させることができる温水ヒータの製造方法、およびこれにより製造された温水ヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
即ち、本発明に係る温水ヒータの製造方法の第1の態様は、板金材料からなる複数のチューブ構成部材がロウ付けされてヒータ接触面を有する熱媒流通チューブが形成され、この熱媒流通チューブが複数平行に配置されて各熱媒流通チューブの間が相互に熱媒流通可能に接合されてヒータ本体が形成され、これら複数の熱媒流通チューブの間にヒータ部材が介装されて該ヒータ部材が前記ヒータ接触面に密着することにより前記熱媒流通チューブ内を流れる熱媒が加熱されるように構成された温水ヒータの製造方法であって、前記チューブ構成部材をロウ付けして前記熱媒流通チューブを形成する熱媒流通チューブ形成工程と、前記熱媒流通チューブを複数平行に配列し、これらの熱媒流通チューブの間に前記ヒータ部材を配置し、前記熱媒流通チューブと前記ヒータ部材とを位置決めしながら、前記ヒータ部材が前記熱媒流通チューブのヒータ接触面に密着するように、その積層方向に加圧する位置決め加圧工程と、前記位置決め加圧工程にて位置決めされた状態で前記熱媒流通チューブ同士を接合するチューブ接合工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、熱媒流通チューブ形成工程で熱媒流通チューブが形成され、次の位置決め加圧工程において、平行に配列された複数の熱媒流通チューブの間にヒータ部材が配置され、これらがその積層方向に加圧されることにより、ヒータ部材が熱媒流通チューブのヒータ接触面に適度な接触面圧を付与された状態で密着し、位置決めされる。そして、次のチューブ接合工程において、位置決めおよび加圧された状態にある複数の熱媒流通チューブが、その間にヒータ部材を介装された状態で接合される。こうして、ヒータ部材が熱媒流通チューブのヒータ接触面に適度な接触面圧を付与された状態で密着され、固定されるため、熱媒流通チューブとヒータ部材との間に安定した熱交換特性を付与することができる。
【0013】
そして、熱媒流通チューブを液密接合してヒータ本体を製造する工程と、このヒータ本体にヒータ部材を取り付ける工程とがチューブ接合工程において同時に行われるため、温水ヒータの製造工程を簡素かつ簡易なものにすることができる。
【0014】
また、本発明に係る温水ヒータの製造方法の第2の態様は、前記第1の態様に記載の温水ヒータの製造方法における前記位置決め加圧工程において、前記熱媒流通チューブの積層方向に貫通形成された熱媒流通孔が整合するように各熱媒流通チューブを積層して位置決めし、前記チューブ接合工程において、前記熱媒流通孔の内周に加熱手段を挿入して前記熱媒流通孔の内周部を加熱することにより前記熱媒流通孔の周部同士をロウ付けして接合することを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、位置決め加圧工程において各熱媒流通チューブに貫通形成された熱媒流通孔が整合するように各熱媒流通チューブを積層して位置決めし、チューブ接合工程において熱媒流通孔の内周部に熱ゴテ等の加熱手段を挿入すれば熱媒流通孔の周部同士をロウ付けできるため、各熱媒流通チューブの位置決めおよび接合作業が簡易かつ容易になる。
【0016】
また、本発明に係る温水ヒータの製造方法の第3の態様は、前記第1または第2の態様に記載の温水ヒータの製造方法における前記熱媒流通チューブ形成工程において、前記チューブ構成部材をロウ付けすることにより前記熱媒流通チューブを形成し、前記チューブ接合工程における前記熱媒流通チューブ同士の接合もロウ付けにより行い、前記チューブ接合工程において用いるロウ材には、前記熱媒流通チューブ形成工程において用いるロウ材よりも融点の低いものを用いることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、チューブ接合工程において熱媒流通チューブ同士をロウ付けする際には、熱媒流通チューブを形成するのに用いられたロウ材の融点よりも低い温度で加熱しながらロウ付けを行えばよい。したがって、熱媒流通チューブ形成工程においてロウ付けした箇所が、チューブ接合工程において加熱された際に溶解して熱媒流通チューブが分解する懸念がなく、チューブ接合工程における接合作業を簡易かつ容易にすることができる。
【0018】
また、本発明に係る温水ヒータの製造方法の第4の態様は、前記第2または第3の態様に記載の温水ヒータの製造方法において、前記熱媒流通孔の周部に予めロウ材を添着しておき、前記チューブ接合工程において該ロウ材を溶融させることにより前記熱媒流通孔の周部同士をロウ付けして接合することを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、熱媒流通チューブ同士の接合部となる熱媒流通孔の周部に予めロウ材が添着されているため、積層された複数の熱媒流通チューブが位置決め加圧工程において加圧されると、添着されたロウ材同士が圧接され、次にチューブ接合工程において熱媒流通孔の周部が加熱されると、添着されたロウ材が溶融して熱媒流通チューブの周部同士が接合される。このため、チューブ接合工程においては特にロウ材を外部から付加するといった必要がなく、加熱するだけでよいため、チューブ接合工程における接合作業を簡易かつ容易にすることができる。
【0020】
また、本発明に係る温水ヒータの製造方法の第5の態様は、前記第2〜第4のいずれかの態様に記載の温水ヒータの製造方法において、前記熱媒流通孔の周部に嵌め込み形状を設け、前記位置決め加圧工程において該嵌め込み形状を相対する熱媒流通孔に嵌め込むことにより位置決めを行うことを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、嵌め込み形状により熱媒流通チューブの熱媒流通孔同士が互いに嵌合するため、位置決め加圧工程において相対する熱媒流通チューブの相対位置がずれることがなく、これにより位置決め作業を簡易かつ容易に行うことができる。
【0022】
また、本発明に係る温水ヒータの製造方法の第6の態様は、前記第5の態様に記載の温水ヒータの製造方法において、嵌め込み形状を前記熱媒流通孔の周方向に沿って連続的に起立する嵌合フランジとしたことを特徴とする。本構成によれば、嵌め込み形状により熱媒流通チューブ同士の位置決め作業を容易にするとともに、熱媒流通孔の周方向に沿ってロウ付けを行う場合に、ロウ付け強度を格段に向上させて熱媒流通チューブ同士の接合強度を高め、温水ヒータの信頼性を高めることができる。
【0023】
また、本発明に係る温水ヒータの製造方法の第7の態様は、前記第6の態様に記載の温水ヒータの製造方法における前記位置決め加圧工程において、前記嵌合フランジを相対する熱媒流通孔に嵌め込んだ後、前記チューブ接合工程において、該嵌合フランジを該熱媒流通孔の径方向外側に向かって拡径させることにより前記熱媒流通チューブ同士を接合することを特徴とする。本構成によれば、嵌合フランジの嵌合により熱媒流通チューブ同士の位置決め作業を容易にするとともに、嵌合フランジを拡径させることにより熱媒流通チューブ同士の連結強度を高め、温水ヒータの信頼性を高めることができる。
【0024】
そして、本発明に係る温水ヒータは、前記第1〜第7のいずれかの態様に記載の温水ヒータの製造方法により製造されたことを特徴とする。この温水ヒータによれば、熱媒流通チューブとヒータ部材との間が適度な接触面圧を持って密着するため、安定した熱交換特性を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明に係る温水ヒータの製造方法、これにより製造された温水ヒータによれば、簡素かつ簡易な製造工程により、熱媒流通チューブとヒータ部材との間に適度な接触面圧を付与して安定した熱交換特性を得るとともに、熱媒流通チューブ同士の接合強度を高めて信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る製造方法を適用し得る温水ヒータの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す温水ヒータのII-II線に沿う縦断面図である。
【図3】熱媒流通チューブ形成工程を示し、(a)はチューブ構成部材がロウ付けされる前の状態を示す縦断面図、(b)はチューブ構成部材がロウ付けされている状態を示す縦断面図、(c)はチューブ構成部材がロウ付けされて熱媒流通チューブが完成した状態を示す縦断面図である。
【図4】本発明に係る温水ヒータの製造方法の第1実施形態を示し、(a)は複数の熱媒流通チューブの間にヒータ部材が配置された状態、(b)は位置決め加圧工程、(c)はチューブ接合工程、(d)は温水ヒータの完成状態をそれぞれ示す縦断面図である。
【図5】本発明に係る温水ヒータの製造方法の第2実施形態を示し、(a)は複数の熱媒流通チューブの間にヒータ部材が配置された状態、(b)は位置決め加圧工程、(c)はチューブ接合工程、(d)は温水ヒータの完成状態をそれぞれ示す縦断面図である。
【図6】本発明に係る温水ヒータの製造方法の第3実施形態を示し、(a)は複数の熱媒流通チューブの間にヒータ部材が配置された状態、(b)は位置決め加圧工程、(c)はチューブ接合工程、(d)は温水ヒータの完成状態をそれぞれ示す縦断面図である。
【図7】本発明に係る温水ヒータの製造方法の第4実施形態を示し、(a)は複数の熱媒流通チューブの間にヒータ部材とパッキン部材が配置された状態、(b)は位置決め加圧工程、(c)はチューブ接合工程と温水ヒータの完成状態をそれぞれ示す縦断面図である。
【図8】本発明に係る温水ヒータの変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係る温水ヒータの製造方法の複数の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る製造方法を適用し得る温水ヒータ1の一例を示す斜視図であり、図2は図1に示す温水ヒータ1のII-II線に沿う縦断面図である。この温水ヒータ1は、例えばハイブリッド車両に装備される一般的な構造のものであり、エンジンが電動モータと共働することによりエンジン冷却水の温度が上昇しにくく、暖房能力が不足しがちなハイブリッド車両において、ヒータコアによる暖房を補完するべくエンジン冷却水を追加熱するものである。
【0028】
温水ヒータ1は、例えば上中下3段の偏平な熱媒流通チューブ2が所定の空隙を介して平行に積層された構成のヒータ本体3と、各熱媒流通チューブ2間の空隙に挟装された2枚の平板状のヒータ部材4とを備えて構成されている。熱媒流通チューブ2は、平面視で例えば六角形状をなすフィン状のチューブであり、図2に示すように、アルミニウムや真鍮等の板金材料からなる上下一対のチューブ構成部材6が最中合わせにされてロウ付けされることにより接合されている。
【0029】
熱媒流通チューブ2の上下面は平坦なヒータ接触面7となっており、この面にヒータ部材4が密着することによって熱媒流通チューブ2内を流れる熱媒としてのエンジン冷却水が加熱される。ヒータ部材4としては、例えばPTCヒータが用いられ、2枚のヒータ部材4からはそれぞれ2枚の電源入力用の端子8が延出している。2枚のヒータ部材4は、要求される加熱量に応じて両方もしくは片方のみが発熱作動する。
【0030】
熱媒流通チューブ2の両端には、上方または下方に凸となるタンク凸部11が膨出成形され、各タンク凸部11の上下面に円孔状の熱媒流通孔12が貫通形成されている。そして、各熱媒流通チューブ2の熱媒流通孔12が互いに整合するように重ね合わせられてロウ付け等により液密に接合されることにより、3段の熱媒流通チューブ2が平行かつ所定の間隔を開けて固定されるとともに、片側6つのタンク凸部11が上下方向に積層されて略円柱状の分配タンク13が形成される。分配タンク13の最下部の熱媒流通孔12にはホース接続用のユニオン14が固着され、分配タンク13の最上部の熱媒流通孔12は蓋部材15で閉塞される。
【0031】
2つのユニオン14には図示しないインレットホースとアウトレットホースが接続され、エンジン側から供給されるエンジン冷却水がインレットホースから一方の分配タンク13に流入し、3枚の熱媒流通チューブ2内を均等に通ってヒータ部材4により加熱されながら他方の分配タンク13側に流れ、アウトレットホースからヒータコア側に供給される。このように、温水ヒータ1の内部ではエンジン冷却水が分配タンク13を経て3段の熱媒流通チューブ2の間を相互に流通することができる。
【0032】
[第1実施形態]
次に、本発明に係る温水ヒータの製造方法の第1実施形態について、図3と図4を参照して説明する。この温水ヒータの製造方法は、熱媒流通チューブ形成工程Aと、位置決め加圧工程Bと、チューブ接合工程Cとを備えている。
A.熱媒流通チューブ形成工程
図3(a)〜(c)は熱媒流通チューブ2を形成する熱媒流通チューブ形成工程Aを示している。図3(a)に示すように、熱媒流通チューブ2を構成するのは上下一対のチューブ構成部材6であり、チューブ構成部材6は、前述の通りアルミニウムや真鍮等の板金材料からプレス成形されており、その両端部にタンク凸部11が膨出成形され、周囲全周に亘って接合代17が形成されている。
【0033】
これら一対のチューブ構成部材6は、図3(b)に示すように対向した状態で仮固定され、重ね合わされた接合代17がロウ付けにより接合される。符号18はロウ材を示す。ロウ材18は熱で溶融し、図3(c)に示すように、毛細管現象により、接合代17の内側に形成される合わせ溝の長手方向に沿って流れ、これにより上下のチューブ構成部材6が一体的に固着して熱媒流通チューブ2が完成する。
【0034】
B.位置決め加圧工程
次に、図4(a)に示すように、前述の熱媒流通チューブ形成工程Aで形成した3つの熱媒流通チューブ2を平行に配列し、これらの熱媒流通チューブ2の間にヒータ部材4を配置する。そして、図4(b)に示すように、各熱媒流通チューブ2を重ね合わせ、その積層方向に貫通形成された前述の熱媒流通孔12を互いに整合させ、かつヒータ部材4が熱媒流通チューブ2のヒータ接触面7の定位置に適度な面圧で密着するように、熱媒流通チューブ2とヒータ部材4とを位置決めしながら、その積層方向に加圧する(位置決め加圧工程B)。このように熱媒流通チューブ2とヒータ部材4とを位置決めしながら加圧するには、図示しないクランプ部材や保持治具を用いる。なお、図4(a)の状態で、予め熱媒流通チューブ2のヒータ接触面7とヒータ部材4との間に、例えばシリコンシート等の熱伝達性のある柔軟なシート部材や、熱伝達ペースト等を介装してもよい。
【0035】
C.チューブ接合工程
次に、図4(c)に示すように、位置決めされて加圧された熱媒流通チューブ2同士を接合する(チューブ接合工程C)。ここでの接合も、ロウ付けによることが望ましいが、必要に応じて接着やカシメといった手法で接合してもよい。
【0036】
ロウ付けを行うための加熱方法として、本実施形態では、熱媒流通孔12の内周に熱ゴテ(加熱手段)20を挿入し、熱媒流通孔12の内周部を加熱している。そして、熱媒流通孔12の外周側からロウ材21を供給して熱媒流通孔12の周部同士をロウ付けして接合する。熱ゴテ20により熱媒流通孔12の付近が加熱されると、熱媒流通孔12の外周側にあてがわれたロウ材21が溶融し、図4(d)に示すように、毛細管現象により、ロウ材21が熱媒流通孔12の合わせ面に形成される合わせ溝に沿って熱媒流通孔12の周囲を一周するように流れ、これにより上下の熱媒流通チューブ2同士が一体的に固着されてヒータ本体3が完成する。
【0037】
このチューブ接合工程Cにおいて用いられるロウ材21としては、熱媒流通チューブ形成工程Aにおいて用いられるロウ材18よりも融点が低いものを用いることが好ましい。例えば、ロウ材18は融点が577℃〜615℃程度のものとし、ロウ材21は融点が520℃〜585℃程度のものとする。そして、熱ゴテ20の加熱温度は、ロウ材18の融点よりも低く設定しておき、チューブ接合工程Cにおいて熱ゴテ20の温度によりロウ材18が溶解しないようにする。なお、ロウ材として、亜鉛を含有するアルミニウムはんだ(融点382℃)等を用いてもよい。
【0038】
最後に、図2のように分配タンク13の上下面に蓋部材15とユニオン14をロウ付け等により固定すればヒータ本体3が完成する。この時には、既にヒータ部材4も熱媒流通チューブ2の間に組み込まれているため、温水ヒータ1としての完成となる。
【0039】
なお、チューブ接合工程Cにおいて各熱媒流通チューブ2同士を接合する際に、ロウ付けによる接合を行わずに、液状ガスケット(シーラント材)により各熱媒流通チューブ2同士を液密に接着する工法も考えられる。この場合は、各熱媒流通チューブ2が重ね合わせられる前の図4(a)の状態で、予め熱媒流通孔12の周囲に液状ガスケットを塗布しておき、これらの熱媒流通チューブ2を図4(b)に示すように重ね合わせた状態で加圧保持し、液状ガスケットを硬化させる。この工法によれば、図4(c)におけるロウ付けを行わなくてもよいため、工程を簡易にできるとともに、ロウ付けの不良による製品歩留まりの低下を回避することができる。
【0040】
以上のような温水ヒータの製造方法によれば、熱媒流通チューブ形成工程Aで形成した熱媒流通チューブ2を、次の位置決め加圧工程Bにおいて平行に配列し、その間にヒータ部材4を介装してこれらを位置決めすると同時に、これらをその積層方法に加圧することにより、ヒータ部材4が熱媒流通チューブ2のヒータ接触面7に適度な接触面圧をもって密着した状態で位置決めされる。
【0041】
そして、次のチューブ接合工程Cにおいて、位置決めおよび加圧された状態にある複数の熱媒流通チューブ2が、その間にヒータ部材4を介装された状態のままで接合される。このため、熱媒流通チューブ2とヒータ部材4との間に適度な密着面圧を付与した状態で温水ヒータ1を完成させることができ、ヒータ部材4が熱媒流通チューブ2のヒータ接触面7から浮きあがるといった事態を回避して、温水ヒータ1に安定した熱交換特性を付与することができる。
【0042】
また、反対にヒータ部材4が過剰な面圧をもって熱媒流通チューブ2のヒータ接触面7に押圧されることが防がれ、熱媒流通チューブ2やその接合部に負担が掛かる虞を無くすことができる。特に温水ヒータ1が車両に搭載される場合には常にエンジン振動や走行振動が加わるため、熱媒流通チューブ2とヒータ部材4との間に過剰な面圧が加わっていると、ロウ付け部等の早期破損に繋がる可能性が高い。本発明によれば、熱媒流通チューブ2とヒータ部材4との間の接触面圧を適度に保って温水ヒータ1の熱交換性能を高めつつ、その寿命を延ばすことができる。
【0043】
しかも、複数の熱媒流通チューブ2を接合してヒータ本体3を製造する工程と、このヒータ本体3にヒータ部材4を取り付ける工程とがチューブ接合工程Cにおいて同時に行われるため、温水ヒータ1の製造工程を簡素かつ簡易なものにすることができる。
【0044】
また、位置決め加圧工程Bにおいて、熱媒流通チューブ2の積層方向に貫通形成された熱媒流通孔12が互いに整合するように各熱媒流通チューブ2を積層して位置決めし、チューブ接合工程Cにおいて、重ね合わせられた熱媒流通孔12の内周に熱ゴテ20等の加熱手段を挿入して熱媒流通孔12の内周部を加熱することにより熱媒流通孔12の周部同士をロウ付けして接合するようにしたため、各熱媒流通チューブ2の位置決めおよび接合作業を簡易かつ容易なものにすることができる。
【0045】
さらに、チューブ接合工程Cにおいて熱媒流通チューブ2同士をロウ付けするのに用いるロウ材21として、熱媒流通チューブ形成工程Aにおいて熱媒流通チューブ2を形成するのに用いるロウ材18よりも融点の低いものを用いるため、チューブ接合工程Cにおいて熱媒流通チューブ2同士をロウ付けする際には、融点が低い方のロウ材21を溶融できるだけの温度でロウ付け作業を行えば、その熱により熱媒流通チューブ2のチューブ構成部材6同士を接合しているロウ材18が溶解してしまうことがなく、これにより熱媒流通チューブ2が分解するといった懸念を排除できる。したがって、チューブ接合工程Cにおける接合作業を簡易かつ容易にすることができる。
【0046】
[第2実施形態]
次に、本発明に係る温水ヒータの製造方法の第2実施形態について、図5(a)〜(d)を参照して説明する。この温水ヒータの製造方法は、熱媒流通チューブ形成工程Aと、位置決め加圧工程Bと、チューブ接合工程Cとを備えている。
【0047】
A.熱媒流通チューブ形成工程
熱媒流通チューブ2の構造と、この熱媒流通チューブ2を形成する熱媒流通チューブ形成工程Aについては、図3(a)〜(c)に示した第1実施形態における熱媒流通チューブ形成工程Aと同様であるため、ここでは説明を省略するが、図3(c)の後で、図5(a)に示すように、熱媒流通チューブ2の熱媒流通孔12の周部に予めロウ材24を添着しおてく工程が追加される。このため、各熱媒流通チューブ2の熱媒流通孔12の周部にはロウ材24が添着された状態となる。このロウ材24も、熱媒流通チューブ形成工程Aにおいて用いられるロウ材18よりも融点が低いものを用いることが好ましい。なお、先述したように、ここでロウ材24の代わりに液状ガスケット(シーラント材)を塗布し、液状ガスケットによる接合としてもよい。
【0048】
B.位置決め加圧工程
次に、図5(a)に示す通り、前述の熱媒流通チューブ形成工程Aで形成した3つの熱媒流通チューブ2を平行に配列し、これらの熱媒流通チューブ2の間にヒータ部材4を配置する。そして、図5(b)に示すように、各熱媒流通チューブ2を重ね合わせ、その積層方向に貫通形成された熱媒流通孔12同士を整合させ、かつヒータ部材4が熱媒流通チューブ2のヒータ接触面7の定位置に適度な面圧で密着するように、熱媒流通チューブ2とヒータ部材4とを位置決めしながら、その積層方向に加圧する(位置決め加圧工程B)。このように、積層された複数の熱媒流通チューブ2が加圧されると、熱媒流通孔12の周部に添着されたロウ材24同士が圧接される。
【0049】
C.チューブ接合工程
次に、図5(c)に示すように、位置決めされて加圧された熱媒流通チューブ2同士を接合する(チューブ接合工程C)。ここでも、第1実施形態の場合と同様に、熱媒流通孔12の内周に熱ゴテ(加熱手段)20を挿入し、熱媒流通孔12の内周部を加熱する。これにより、熱媒流通孔12の周部に予め添着されたロウ材24が溶融し、これに伴い熱媒流通チューブ2同士が密着する。溶融したロウ材24は、図5(d)に示すように、毛細管現象により、熱媒流通孔12の合わせ面に形成される合わせ溝に沿って熱媒流通孔12の周囲を一周するように流れ、これにより上下の熱媒流通チューブ2同士が一体的に固着されてヒータ本体3が完成する。
【0050】
このように、熱媒流通チューブ2同士の接合部となる熱媒流通孔12の周部に予めロウ材24を添着しておけば、チューブ接合工程Cにおいて特にロウ材を外部から付加する必要がなく、熱媒流通孔12の周部を加熱するだけでよいため、チューブ接合工程Cにおける接合作業を簡易かつ容易なものすることができ、しかもロウ付けの接合強度のバラつきを均等化して品質を向上させることができる。
【0051】
また、熱媒流通孔12の周部に添着するロウ材24を、熱媒流通チューブ形成工程Aにおいて用いられるロウ材18よりも融点が低いものにすることにより、第1実施形態の場合と同じく、熱媒流通孔12の内周部を加熱して熱媒流通チューブ2同士をロウ付けする際に、熱媒流通チューブ2を構成しているロウ材18が溶解してしまうことがなく、これによりチューブ接合工程Cにおける接合作業を簡易かつ容易にすることができる。
【0052】
[第3実施形態]
次に、本発明に係る温水ヒータの製造方法の第3実施形態について、図6(a)〜(d)を参照して説明する。この温水ヒータの製造方法は、熱媒流通チューブ形成工程Aと、位置決め加圧工程Bと、チューブ接合工程Cとを備えている。
【0053】
A.熱媒流通チューブ形成工程
熱媒流通チューブ2の構造と、この熱媒流通チューブ2を形成する熱媒流通チューブ形成工程Aについては、図3(a)〜(c)に示した第1実施形態における熱媒流通チューブ形成工程Aと同様であるため、ここでは説明を省略する。この第3実施形態における熱媒流通チューブ2は、図6(a)に示すように、その上下一方(例えば下方)の熱媒流通孔12の周囲に、その周方向に沿って連続的に起立する嵌合フランジ27(嵌め込み手段)が設けられており、この嵌合フランジ27が、対向する熱媒流通チューブ2の上下他方(ここでは上方)の熱媒流通孔12の内周に密に嵌合するようになっている。
【0054】
B.位置決め加圧工程
まず、図6(a)に示すように、3つの熱媒流通チューブ2を平行に配列し、これらの熱媒流通チューブ2の間にヒータ部材4を配置する。そして、図6(b)に示すように、各熱媒流通チューブ2を重ね合わせ、その熱媒流通孔12同士を整合させると同時に、ヒータ部材4が熱媒流通チューブ2のヒータ接触面7の定位置に適度な面圧で密着するように、熱媒流通チューブ2とヒータ部材4とを位置決めしながら、その積層方向に加圧する(位置決め加圧工程B)。
熱媒流通チューブ2の熱媒流通孔12同士を整合させる際には、熱媒流通チューブ2の下側の熱媒流通孔12の周囲に形成された嵌合フランジ27を、対向する熱媒流通チューブ2の上側の熱媒流通孔12に嵌合させる。これにより、上下の熱媒流通チューブ2の熱媒流通孔12が嵌り合って互いに正確に位置決めされる。
【0055】
C.チューブ接合工程
次に、図6(c)に示すように、熱媒流通孔12の内周に熱ゴテ20を挿入し、熱媒流通孔12の内周部を加熱する。そして、熱媒流通孔12の外周側からロウ材21を供給して熱媒流通孔12の周部同士をロウ付けして接合する(チューブ接合工程C)。溶融したロウ材21は、図6(d)に示すように、毛細管現象により熱媒流通孔12の周囲を一周するように流れ、これにより上下の熱媒流通チューブ2同士が一体的に固着されてヒータ本体3が完成する。ここで用いられるロウ材21も、熱媒流通チューブ2を組み立てているロウ材18より融点が低いものを用いるのが好ましい。
【0056】
このように、熱媒流通チューブ2の上下一方の熱媒流通孔12の周囲に形成した嵌合フランジ27を、対向する熱媒流通チューブ2の上下他方の熱媒流通孔12の内周に密に嵌合させる構成とした場合、嵌合フランジ27により、対向する熱媒流通孔12同士が互いに密に嵌合するため、位置決め加圧工程Bにおいて相対する熱媒流通チューブ2の相対位置がずれることがなく、これにより位置決め作業を簡易かつ容易に行うことができる。また、嵌合フランジ27が相対する熱媒流通孔12に嵌合されることにより、この部分のロウ付け面積が増加するため、ロウ付け接合強度を高めて温水ヒータ1の耐久性を高め、信頼性を向上させることができる。なお、ここでも、ロウ材21の代わりに液状ガスケットを用いて熱媒流通チューブ2同士を接合するようにしてもよい。
【0057】
[第4実施形態]
次に、本発明に係る温水ヒータの製造方法の第4実施形態について、図7(a)〜(c)を参照して説明する。この温水ヒータの製造方法は、熱媒流通チューブ形成工程Aと、位置決め加圧工程Bと、チューブ接合工程Cとを備えている。
【0058】
A.熱媒流通チューブ形成工程
熱媒流通チューブ2の構造と、この熱媒流通チューブ2を形成する熱媒流通チューブ形成工程Aについては、図3(a)〜(c)に示した第1実施形態における熱媒流通チューブ形成工程Aと同様であるため、ここでは説明を省略する。この第4実施形態における熱媒流通チューブ2は、第3実施形態の場合と同じく、その上下一方(例えば下方)の熱媒流通孔12の周囲に、周方向に沿って連続的に起立する嵌合フランジ28(嵌め込み手段)が設けられており、この嵌合フランジ28が、対向する熱媒流通チューブ2の上下他方(ここでは上方)の熱媒流通孔12の内周に密に嵌合するようになっている。嵌合フランジ28の高さは、図7(a)に示すシールリング29の厚みの分だけ、第3実施形態の嵌合フランジ27よりも高く設定されている。
【0059】
B.位置決め加圧工程
図7(a)に示すように、3つの熱媒流通チューブ2を平行に配列し、これらの熱媒流通チューブ2の間にヒータ部材4を配置する。同時に、対向する熱媒流通チューブ2の熱媒流通孔12の間にシールリング29を介装する。次に、図7(b)に示すように、各熱媒流通チューブ2を重ね合わせ、第3実施形態の場合と同じく、一方の熱媒流通孔12に形成された嵌合フランジ28を他方の熱媒流通孔12に嵌合させ、熱媒流通孔12同士を位置決めすると同時に、ヒータ部材4が熱媒流通チューブ2のヒータ接触面7の定位置に適度な面圧で密着し、かつ上下の熱媒流通チューブ2の間でシールリング29が適度に圧縮されるように、熱媒流通チューブ2とヒータ部材4とを位置決めしながら、その積層方向に加圧する(位置決め加圧工程B)。
【0060】
C.チューブ接合工程
次に、図7(c)に示すように、嵌合フランジ28を熱媒流通孔12の径方向外側に向かって拡径させる。この作業は、一般にカシメと呼ばれ、図示しないカシメ工具を熱媒流通孔12の内径部に挿入し、嵌合フランジ28を拡径させる(チューブ接合工程C)。これにより、シールリング29が圧縮された状態のままで、熱媒流通チューブ2同士が強固に接合され、温水ヒータ1が完成する。熱媒流通チューブ2(熱媒流通孔12)の間は、シールリング29が圧縮介装されることにより液密にシールされるため、温水ヒータ1の内部を流れる熱媒であるエンジン冷却水が漏れることがない。
【0061】
このように、一方の熱媒流通チューブ2の熱媒流通孔12に形成された嵌合フランジ28を、対向する他方の熱媒流通チューブ2の熱媒流通孔12に嵌合させ、この嵌合フランジ28を径方向外側に向かって拡径させることにより、対向する熱媒流通チューブ2同士を連結するため、その連結強度を高めて温水ヒータ1の信頼性を向上させることができる。しかも、チューブ接合工程Cにおいてロウ付けを行わないため、製品の歩留まりを向上させるとともに、車両振動に強い構造とすることができる。なお、シールリング29の代わりに液状ガスケットを用いてもよく、その場合は嵌合フランジ28を径方向外側に拡径させなくてもよい。
【0062】
[変形例]
図8は、本発明の変形例を示す縦断面図である。ここに示すように、各熱媒流通チューブ2の上下の熱媒流通孔12の周囲には、熱媒流通チューブ2の内側に向かって起立する接合フランジ31が形成されている。このような接合フランジ31を設けることにより、熱媒流通孔12の内周部に図4(c)に示すような熱ゴテ20を挿入して熱媒流通孔12の付近を加熱しながらロウ付けを行う際に、熱媒流通孔12が熱ゴテ20に接する面積が大きくなるため、熱ゴテ20の熱が熱媒流通孔12に伝わりやすくなり、ロウ付けが容易になる。
【0063】
以上のような、本発明に係る温水ヒータの製造方法により製造された温水ヒータ1は、熱媒流通チューブ2とヒータ部材4との間が適度な接触面圧を持って密着し、固定されるため、熱媒流通チューブ2とヒータ部材4との間に安定した熱交換特性を付与することができる。しかも、熱媒流通チューブ2同士の接合強度を高めることができるため、車両に搭載される場合であっても、エンジン振動や走行振動に起因する各接合部の破損を防止することができ、信頼性が高い。
【0064】
なお、本発明に係る温水ヒータの製造方法は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記の各実施形態の構成を組み合わせる等してもよい。また、上記各実施形態においては加熱手段として熱ゴテ20を用いているが、他の加熱手段を用いても構わない。
【符号の説明】
【0065】
1 温水ヒータ
2 熱媒流通チューブ
3 ヒータ本体
4 ヒータ部材
6 チューブ構成部材
7 ヒータ接触面
12 熱媒流通孔
17 接合代
18 熱媒流通チューブ形成工程において用いるロウ材
20 熱ゴテ(加熱手段)
21,24 チューブ接合工程において用いるロウ材
27,28 嵌合フランジ(嵌め込み手段)
29 シールリング
A 熱媒流通チューブ形成工程
B 位置決め加圧工程
C チューブ接合工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板金材料からなる複数のチューブ構成部材がロウ付けされてヒータ接触面を有する熱媒流通チューブが形成され、この熱媒流通チューブが複数平行に配置されて各熱媒流通チューブの間が相互に熱媒流通可能に接合されてヒータ本体が形成され、これら複数の熱媒流通チューブの間にヒータ部材が介装されて該ヒータ部材が前記ヒータ接触面に密着することにより前記熱媒流通チューブ内を流れる熱媒が加熱されるように構成された温水ヒータの製造方法であって、
前記チューブ構成部材をロウ付けして前記熱媒流通チューブを形成する熱媒流通チューブ形成工程と、
前記熱媒流通チューブを複数平行に配列し、これらの熱媒流通チューブの間に前記ヒータ部材を配置し、前記熱媒流通チューブと前記ヒータ部材とを位置決めしながら、前記ヒータ部材が前記熱媒流通チューブのヒータ接触面に密着するように、その積層方向に加圧する位置決め加圧工程と、
前記位置決め加圧工程にて位置決めされた状態で前記熱媒流通チューブ同士を接合するチューブ接合工程と、
を備えることを特徴とする温水ヒータの製造方法。
【請求項2】
前記位置決め加圧工程において、前記熱媒流通チューブの積層方向に貫通形成された熱媒流通孔が整合するように各熱媒流通チューブを積層して位置決めし、
前記チューブ接合工程において、前記熱媒流通孔の内周に加熱手段を挿入して前記熱媒流通孔の内周部を加熱することにより前記熱媒流通孔の周部同士をロウ付けして接合することを特徴とする請求項1に記載の温水ヒータの製造方法。
【請求項3】
前記熱媒流通チューブ形成工程において、前記チューブ構成部材をロウ付けすることにより前記熱媒流通チューブを形成し、
前記チューブ接合工程における前記熱媒流通チューブ同士の接合もロウ付けにより行い、
前記チューブ接合工程において用いるロウ材には、前記熱媒流通チューブ形成工程において用いるロウ材よりも融点の低いものを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の温水ヒータの製造方法。
【請求項4】
前記熱媒流通孔の周部に予めロウ材を添着しておき、前記チューブ接合工程において該ロウ材を溶融させることにより前記熱媒流通孔の周部同士をロウ付けして接合することを特徴とする請求項2または3に記載の温水ヒータの製造方法。
【請求項5】
前記熱媒流通孔の周部に嵌め込み形状を設け、前記位置決め加圧工程において該嵌め込み形状を相対する熱媒流通孔に嵌め込むことにより位置決めを行うことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の温水ヒータの製造方法。
【請求項6】
嵌め込み形状を前記熱媒流通孔の周方向に沿って連続的に起立する嵌合フランジとしたことを特徴とする請求項5に記載の温水ヒータの製造方法。
【請求項7】
前記位置決め加圧工程において、前記嵌合フランジを相対する熱媒流通孔に嵌め込んだ後、前記チューブ接合工程において、該嵌合フランジを該熱媒流通孔の径方向外側に向かって拡径させることにより前記熱媒流通チューブ同士を接合することを特徴とする請求項6に記載の温水ヒータの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載された温水ヒータの製造方法により製造されたことを特徴とする温水ヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−141096(P2012−141096A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294203(P2010−294203)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】