温水系における腐食を抑制する方法
本発明は、系の温度および圧力において温水系内の水の酸化還元電位を測定する方法および装置、および、上記系における酸素捕集剤または溶解酸素を有効な腐食抑制濃度に維持するため、上記系への酸素捕集剤または酸素の添加を監視および制御するために測定された上記酸化還元電位を用いる方法に関係する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用ボイラー系等の温水系における、金属表面の腐食を抑制する方法に関する。特には、本発明は系の温度および圧力において系内の水の酸化還元電位を測定する方法、および、上記系における酸素捕集剤または溶解酸素を有効な腐食抑制濃度に維持および制御するために測定された上記酸化還元電位を用いる方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
ボイラー水工業において用いられる工業合金に対する酸素の親和力は、多くの腐食現象の原因である。これは、酸素の量ばかりではなく、水化学および金属学などの要因によっても左右される複雑な過程である。例えば、上記水系中の他の種の存在は酸素を活動的な腐食勢力に変化させ得る、また、金属学的に不活性になり得る。他の重要な要因は、温度、圧力、液体速度、および操作手順である。酸素が腐食過程における主または必須の構成要素かもしれないが、それが唯一ではない。
【0003】
水系における酸素腐食を減少させる従来の手段は、機械的または化学的な手段による分子溶解酸素(molecular dissolved oxygen)の大部分を除去である。溶解している酸素の大部分は、機械的な脱気の使用によりppb体制(regime)へと減少される。ここでは、通常水は通気口付の導管内で沸点以上に加熱される。この水中の溶解酸素の溶解度は、温度が上がるにつれて減少する。脱気装置に特有の流動力(flow dynamics)および操作上(operational issues)の課題は、上記水中に10億分の1の溶解酸素を残留させる。水中に10億分の1溶解酸素を残す。さらに再現可能に低くかつ安定な値に溶解酸素値を減少させるために用いられる薬品は酸素捕集剤と呼ばれる。これらの捕集剤(scavenger)は不活性化(passivating)腐食抑制剤としても機能する。脱気装置は常に完璧に機能するわけではない。もし、すれば、金属不活性を向上する薬品は好ましい添加物であるが、純粋な捕集剤は必要ない。従って、上記酸素捕集剤は脱気装置の機能不全の可能性に対する保険として添加される場合がある。上記捕集剤は、空気の漏れ込み(air in-leakage)に対抗するために添加されてもよい。
【0004】
伝統的には、ボイラー給水へ供給される酸素捕集剤の量は、上記給水中の溶解酸素の量に加えいくらかの余分な量の捕集剤に基づいていた。供給される余分な捕集剤の量は、余分な捕集剤の濃度およびボイラーサイクルの機能である、ボイラー給水またはボイラー水自体における望ましい残留捕集剤濃度に基づく。この供給制御機構には数々の問題がある。第1に、捕集剤供給速度の制御は能動的ではない。残留捕集剤の減少が生じ、腐食作用が生じる前に、長期間の高酸素状態が存在し得る。第2の課題はボイラー水における残留捕集剤の存在が、単純に系が十分に処理されていることを意味するものではないということである。状態によっては(すなわち、低い温度または短い滞留時間)共給水において高酸素状態および十分な細く剤の両方が同時に起こり得る。この高酸素共給水がボイラーへ到達すると、上記酸素は蒸気と共に勢いよく流れ、ボイラー水中に未反応の捕集剤を残留させる。極端な場合には、ボイラー自身においては期待された酸素捕集剤の残留濃度がありながら、プリボイラーおよび復水系においては許容されない高いレベルの溶解酸素をもたらす。
【0005】
超高純水を用いる特定の高圧ボイラー(ワンススルー)においては、異なる取り組みがとられる。酸素捕集剤は用いられない。実際は、少量の酸素分子が給水中へ意図的に添加される。酸素、酸化剤は、ボイラー水化学が慎重に制御された状態下で炭素鋼用の不活性化剤として作用する。用いられる酸素濃度は空気飽和(8ppmDO)値よりも大幅に少なく、それ故脱気が使用される。制御された量の酸素を添加する前に、予めある程度脱気する方が簡単である。このように、温水系での酸素または酸素捕集剤の供給の効果的な制御方法が望まれている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様において、本発明は(i)系の温度、圧力およびpHにおいて系の有効な腐食抑制に適した酸化還元電位の範囲を決定すること;
(ii)温度および圧力において上記系内の上記水の酸化還元電位を測定すること;および
(iii)上記水の酸化還元電位を既定の酸化還元電位の範囲内に維持するために酸素または酸素捕集剤を上記系へ添加することを含む温水系において有効な腐食抑制量の酸素捕集剤または酸素を維持する方法である。
【0007】
他の態様において、本発明は(i)系へ有効な腐食抑制量の酸素または1つ以上の酸素捕集剤を添加すること;
(ii)温度および圧力において上記系内の上記水の酸化還元電位を測定すること;および
(iii)測定された上記水の酸化還元電位に基づいて、系における有効な量の酸素または酸素捕集剤を維持するために酸素または酸素捕集剤を上記系へ添加することを含む温水系の金属表面の腐食を抑制する方法である。
【0008】
他の態様において、本発明は(i)系の温度、圧力およびpHにおいて系の有効な腐食抑制に適した酸化還元電位の範囲を決定すること;
(ii)上記系の酸化還元電位を既定の酸化還元電位の範囲内にするために酸素または1つ以上の酸素捕集剤を上記系へ添加すること;
(iii)上記系内の水の酸化還元電位を連続的または断続的に測定すること;および
(iv)測定された系の酸化還元電位を既定の範囲内に維持するために酸素または酸素捕集剤を添加することを含む温水系の金属表面の腐食を抑制する方法である。
【0009】
本発明は、処理された水の酸化還元電位に基づいて上記酸素捕集剤の供給を制御することに関係する。加えて、上記酸化還元電位は、温度および圧力において直接水中で高温電気化学電位監視セルを用いて測定される。その場で酸化還元電位を測定することにより、サンプル調整装置の必要性が削減される。水の酸化還元電位は、溶解酸素および酸素捕集剤の両方の濃度の作用である。共給水における特定の酸化還元電位を目標とすることにより、酸素の攻撃から系を保護するために必要な捕集剤の正確な量を供給することが可能になる。また、上記水の持続的な監視により、系にアップセット(upset)が生じた際に即座に修正措置を取ることができ、それ故に上記系が常に適切に処理されていることを保証する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
酸素腐食は、金属のアノード酸化および分子状酸素のカソード還元によって特徴付けられる電気化学腐食の一形態である。アノードまたはカソード反応、またはその両方は、反応の速度を決定し得る。カソード反応の速度が、カソードにおける酸素の還元速度に依る場合、全体の反応速度は酸素濃度と共に増加する。全体の腐食速度がアノード反応の速度に依る場合、酸素濃度の増加は影響がないか、または実質的に全体の腐食速度を減少させ得る(アノードにおける不活性化効果の結果として)。そのため、酸素に起因する腐食の制御には2つの取り組みが明らかである。それらは、カソードおよび/またはアノード反応速度を減少することである。カソード反応速度は、溶解酸素の機械的および化学的な除去により減少させることができる。不活性化がアノード反応の速度を減少させる。後者は、不活性化酸素捕集剤の使用を通じて達成でき、それ故アノードおよびカソードのハーフセル反応の両方に作用する。しかしながらDOの存在下では、酸素捕集剤なしでも達成できる。
【0011】
酸素は酸化物質であるため、系の酸化還元電位(ORP)レベルに直接作用する。
【0012】
ORP数は、参照電極に対して測定されるため相対数であり、そのように引用される必要がある。通常これらの測定は銀/塩化銀または銅/硫酸銅電極のような、ある標準参照電極に対してなされる。これらの測定は、温度、圧力および流れの代表的な条件下で成されるべきである。電位値はその後、温度、スケールにおけるSHE(標準水素電極)へ変換される。電位データはその後25℃におけるSHEスケールへ変換される。後者のスケールにおけるゼロは、慣例により、電気化学の研究における標準ゼロ点である。水素の形成の標準自由エネルギーが温度の作用として異なるため、SHE(25℃)スケールのゼロと他のいかなる温度におけるSHEスケールのゼロとの間には電位差がある。
【0013】
ORP測定は、系側の流れに含有され、または高圧孔フィッティングが利用できる場合は処理流自体に取り付けられたORPセルを用いてなされる。白金電極の電位は、圧力平衡、銀/塩化銀参照電極などの外部参照電極に対して測定される。セルを貫く水流の温度もまた、時間の作用として記録される。全てのデータは高入力インピーダンスデータ自動記録装置に規則的な間隔で記録することができる。
【0014】
流速は、代表的な水のサンプルが電極を通るように選択される。理想的には、電気化学セルにおいて見出された条件は、系におけるバルク水において見出された条件と酷似しているべきである。上記サンプル流は、サンプリングの地点において、系に関し、サンプルの化学的同質性を確実にするために「十分早く」あるべきである。セル設計は、流動電位も最小になるようになされなければならない。電気化学セルは基礎がしっかりしており、導電性物質から成ることを確保する。早い線形流速を維持する、サンプリング用の大きな直径の配管も、線形流速が過剰である径の小さな配管に比べ、流動電位を制限することへの助けとなる。このことは、高純水において特に重要である。
【0015】
試験環境の作動温度および圧力でORP測定をすることの重要性は一見して明らかである:溶液および物質の上記特徴における投与薬品の効果は、温度が上昇するにつれて変わり得る(通常変化する)。これらの特徴におけるアップセット状態の効果は、理想的には実際の操作状態にできる限り近い状態において評価される必要がある。
【0016】
上記ORPセルは、実施の場の状態の貫流状態(すなわち流速)をシミュレートするサイズとなるであろう。
【0017】
上記ORPセルは、ORPまたはpH状態が変化してもその参照電位(標準水素電極(SHE)に相対する)が変化しない、安定で信頼性のある参照電極と;ORP状態の変化に応答性のある白金(または貴金属)電極とを有するべきである。
【0018】
好ましい参照電極は、塩化カリウム(0.1から0.01規定)で充填された銀/塩化銀電極である。
【0019】
図1に、白金電極アセンブリ2と、熱電対3と、銀/塩化銀電極アセンブリ4が据え付けられた代表的なORPセル1を示す。上記セルは、AISIタイプ316ステンレス鋼などの適した物質から製造される。セルは、電極が互いに近傍になるように設計された。これは、低導電性の水環境において存在する非代償性抵抗効果を低減する。図1は、ORPセルをいかなる流れのループからも隔離するために用いられる、いくつかの高温(370℃まで)および圧力定格(27.6MPa;4000psiまで)の弁を有する貫流配置のセルを示す。上記セルおよび弁ユニットは、いかなる貫流系にも取り付けることができる。原則的には、弁10および11が閉じ、セルが作動していない状態で、主な動線は弁5を通るものである。まず弁10および11開き、その後に弁5を閉じることにより、セル内に水を通すことができる。この段階において、全ての必要な電極電位の監視を行うことができる。
【0020】
ORPセルにおいて行われる試験は、ループを貫く主な流れに影響を与えることなく行うことができる。すなわち、全ての段階において、弁5を開きその後弁10および11を閉じることができる。ブリード弁6は、ORPセルを通気するために開くことができ、セルがクールダウンしたらセルのいかなる部分も分解/交換または改装することができる。例えば、新たな白金電極を取り付けることができ、新鮮なKCl充填溶液を銀/塩化銀参照電極へ注入することができる。従って、これはループを貫く主な流れに影響を与えることなく行うことができる。セルはボイラー循環の通常のサンプル地点に配置することができ、それ故結果として一旦ORPセルの作動が再開されると、流れのループに入る酸素は少なくなる。そうでない場合は、第2のブリード弁(図示せず)を弁10の近傍に取り付けることができ、セルに水を流す前にセル内に不活性ガスをパージすることができる。上記セルはいかなる側流または排出ループ上に配置することができ、セルを貫流する水は排水へ捨てることができる。
【0021】
図1に示すORPセルには、4つの独特な品目がある(ORPセル自身は除く):2つの熱電対、1つのEPBRE(外部圧力平衡参照電極)および1つの白金プローブ。ORPは単にEPBREと白金プローブとの間に記録された電位差である。上記熱電対は、セルの温度と、上記参照電極自身の冷接点温度とを測定するために用いられる。
【0022】
同様の信号を得るための方法は数々あるが、基本的な前提は、ORPが流水の流れ中で温度および圧力において測定されることである。
【0023】
図1に示されるような代表的なORPセルの製造を以下に説明する。以下に説明する代表的なORPセルは、300℃までの温度において作動するように設計されており、13.8MPa(2000psi;1380bar)までの圧力において安全に使用することができる。典型的には、より低い温度での作動が系の状態と一致する。例えば、脱気装置(最初に溶解酸素の機械的除去に用いられる)は、340kPaまでの圧力において100から125℃体制で作動できる。
【0024】
以下のアイテムが図1に示されるORPセルの製造に用いられる:ORPセルボディー1(11/2”Hexタイプ316SS stockからの電極ボディー、1/4”NPTフィッティングを取り込むための糸を通した(threaded)コネクタを有する7/16”中央にあけられた穴、High Pressure Equipment Co., Erie, PA)、Jタイプ熱電対3(1/8”OD、シース(sheath)熱電対、304 SS, 鉄コンスタンタン、Jタイプ、6”の長さ、0.125”のシース径、Omega Engineering, Inc., Stanford, CT.)、Swagelok(登録商標)弁5、10および46(UGシリーズベローズシール弁3/8” Swagelok(登録商標)チューブコネクタCAT#SS−6UG、Dearborn Valve & Fitting Co., Wauconda, IL)、ブレード弁6(ステンレス鋼バーハンドル+バーベットツウ通気口CAT#SS−BVM−4−C3−SHを有するBVシリーズブリード弁、Dearborn Valve & Fitting Co., Wauconda, IL)、雌の分岐ティー7(CAT#SS−600−3TTF、Dearborn Valve & Fitting Co., Wauconda, IL)、雄のコネクタ8(MSC雄コネクタ、CAT#6MSC4N、Instrument Associates, Inc., Alsip, IL)、ユニオンティー9(CAT#SS−600−3、Dearborn Valve & Fitting Co., Wauconda, IL)。
【0025】
図1に示された上記アイテムを連結するために、ステンレス鋼配管(3/8”OD AISIタイプ316)が用いられた。全セルおよび部品は、必要であれば異なるサイズの配管から組み立てることができる。ブリード弁6は、雌の分岐ティー7に取り付いている。上記セルが組み立てられ、現場に取り付けられた時点でのみ、温度制御および安全上の理由のため断熱される。
【0026】
上記ORPセルの付属装置用の、図2に示される代表的な銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極(EPBRE)の製造を以下に説明する。
【0027】
銀/塩化銀EPBREの製造には以下のアイテムが用いられる:圧力保持キャップ46、テフロン(登録商標)絶縁体12(テフロン(登録商標)ラウンドバー、24”、部品番号2RT−8、Small Parts, Inc.; Miami Lakes, Fl)、3/16”配管フィッティング用テフロン(登録商標)フェルール13(CAT#3TZ−T、Instrument Associates, Inc.; Alsip, IL)、テフロン(登録商標)インサート14(0.125”ODテフロン(登録商標)配管、1/16”ID;CAT#L−06407−42、Cole Parmer Instruments Co., Chicago, IL)、熱収縮テフロン(登録商標)15(膨張形1/4”OD;CAT#N−06851−20 Cole Parmer Instruments Co., Chicago, IL)、銀ロッド16(直径3.2mm、99.99%;CAT#34,877−5 Aldrich Chemical Company, Inc., Milwaukee, WI)、ステンレス鋼フィッティング17(PARKERフィッティング、CAT#4RU2, Instrument Associate, Inc., Alsip, IL),1/4”ODステンレス鋼配管18(0.028”壁)、0.1N KCl電解質、高圧フィッティング20(bored through1/4”配管フィッティング1/4NPTフィッティング(雄コネクタ)、CAT#SS−400−1−4−BT、Dearborn Valve & Fitting Co., Wauconda, IL)、多孔質、コアドリル、銀/塩化銀電極用ジルコニアフリット21(約寸法1/8”ODおとび約15mmの長さ、Materials Engineering Associates, Lanham, MD).
【0028】
ステップ1.銀ロッドの作製
a.銀ロッド16を切断する(寸法:7cmの長さであり、その4.5cmが直径1/8”から点(0”)になるテーパー端)。やすりでテーパー端に削る。一連のグリット紙、すなわち120/240/400/600で研磨する。
【0029】
b.1NのHCl溶液を調製する。
【0030】
c.クロロダイジング(chlorodizing)プロセス。
【0031】
1リットルのガラスセルに、1NのHCl約1リットルをセットアップする、参照電極は不要である;互いに接続された2つの炭素対向電極は対向電極として働く(ポテンシオスタット対向電極リードに接続される)。作用電極(グリーンリード)は上記ガラスセルの中央にぶら下げられた銀ロッドである。両対向電極は、ガラスセルの端に、180°離れている。上記銀(作用電極)は上記2つの対向電極の真ん中にある。標準的なポテンシオスタットのセットアップは:EG&G273ポテンシオスタット:電流範囲=100mA、モード=ガルバノスタット;セットスキャンセットアップ:I1=0A;ディレイ1=10s;スキャン1=1mA/s;I2=−8.3mA(0.083−mAとして供給);ディレイ2=6500;スキャン2=10s;I3=0A。セルが活性化したらスタートを押す。クロロダイジング後に、クロロダイズド電極を0.1NのKCl電極充填溶液中に格納する。
【0032】
ステップ2.銀/塩化銀電極の組み立て
a.ステンレス鋼フィッティング17を銀ロッド16および熱収縮テフロン(登録商標)15が貫通できるように、上記ステンレスフィッティング17にドリルで孔をあける。上記フィッティングは径違い(reducing)ユニオンである。一方の端は1/4”配管を、他方の端は1/8”インチ配管を取り込む。用いられるドリルサイズ11/64”ドリルビットである。ドリルした後、アセトン中で超音波洗浄する。
【0033】
b.上記1/4”ステンレス配管18を通ってオートクレーブへつながるフィッティングに用いられるのは1/4”NPTステンレス鋼フィッティング20である。このフィッティングをORPセル1の底に接続する。この作業で用いられる上記ステンレス鋼配管151/2”の長さである。バリを除去し、配管の端をオリジナルのパイプの肉厚に復元する。
【0034】
c.テフロン(登録商標)インサート14の小片(熱収縮ではない)の中央に5/64”ドリルビットで、約3cmの長さになるようにドリルアウトする。そして、アセトンで洗浄する。
【0035】
d.テフロン(登録商標)15の長片の一端(1/4”から1/8”の2:1HST)は、上記フリット21の上で熱収縮される。フリット21は3.2mmの直径および約14mmの長さである。熱収縮テフロン(登録商標)のもう半分は、3cmのテフロン(登録商標)インサート14の小片の上で収縮される。上記テフロン(登録商標)の両片(3cmのテフロン(登録商標)インサートも含む)が透明な状態で加熱されていることを確認する。これは、不透明状態へ冷却される際にそれらが互いに結合されることを確実にする。上記フリット21およびテフロン(登録商標)インサート14上にこの配管約29cmを熱収縮する。そして、テフロン(登録商標)がまっすぐになるようにする(必要に応じて、再度透明状態にする)。
【0036】
e.圧抜きキャップ:上記銀ロッドが圧力下で放出されないように、1/4インチステンレス鋼フィッティング17の上にステンレス鋼バンドクランプが溶接付けされるべきである。テフロン(登録商標)シート(テフロン(登録商標)シート、6”×6”;部品番号VT−125、Small Parts, Inc.; Miami Lakes, FL)の小片を切り取り、絶縁テープを用いてこれらの小片をステンレス鋼キャップ47の内部に貼り付け、絶縁ステップを完了させる。
【0037】
f.1/4から1/8” テフロン(登録商標)配管15の最終片を所望の長さに熱収縮し、端片が約1/8”ロッドの上で熱収縮することを確認する。テーパーの、クロロダイズされた、ゲインロッド部分が強制されるのはこの端である。電気的な接続点として、約3/8”の銀が上記端より飛び出るようにする。
【0038】
g.テフロン(登録商標)フェルール13を差し込み、上記フィッティング17を締める。
【0039】
h.長い皮下注射針を用い、1/8”OD熱収縮テフロン(登録商標)の両方の部分に0.1NのKClを充填する。
【0040】
i.容易な再充填に先立って使用後の電極を分離するために、露出しているテフロン(登録商標)インサート14に少量の真空グリースを塗布する。
【0041】
j.銀ロッド16を含有する熱収縮テフロン(登録商標) 1/8”ODを、テフロン(登録商標)インサート14上でスライドさせる。
【0042】
k.0.1NのKCLが充填された電極19の静止電位を、飽和KCl//塩化銀/銀電極に対して、飽和KClのビーカー中で25℃において測定する。上記静止電位は+90mV(±2mV)であるべきである。
【0043】
圧力保持キャップを有する代表的な白金電極アセンブリの製造を以下に説明する。
【0044】
以下のアイテムが白金電極の製造に用いられる:テフロン(登録商標)保持キャップ22(テフロン(登録商標)ラウンドバー、24”;部品番号2RT−8、Small Parts, Inc.; Miami Lakes, FL)、ステンレス鋼フォロア23から成るConax(登録商標)フィッティング(TG−14−AT、Patrick and Douglass, Inc., Lombard, IL)、ステンレス鋼ガイド24、セラミック絶縁体25(2)、テフロン(登録商標)シール26、およびステンレス鋼フィッティング27、熱収縮テフロン(登録商標)28(J−SM2T−20−36一層、Small Parts, Inc.; Miami Lakes, FL)、白金ワイヤ29(直径1.5mm、99.9%;CAT#34,939−9、Aldrich Chemical Company, Inc., Milwaukee, WI)、ステンレス鋼ワッシャ30、テフロン(登録商標)絶縁金属ワイヤ31。
【0045】
白金電極の組み立て
a.白金ワイヤ29をまっすぐにし、長さが焼く10cmであることを確認する。
【0046】
b.ステンレス鋼ワッシャ30に90°離し、外周端から2mm内側に、5/64”ドリルビットを用いて、4つの穴をあける。ワッシャのIDは17.4mmおよびODは38mmである。
【0047】
c.テフロン(登録商標)キャップ22。直径1/2”のテフロン(登録商標)ロッドから11mmの長片を切り取り、5/64”ドリルビットを用いて、平面端の一方の中心に厚みの1/3まで穴をあける。この穴は、白金ワイヤのアンカポイントとして機能する。上記テフロン(登録商標)のもう一方に弓のこで、約1から2mmの深さの、中央で交差する2本の垂直線を切る。これらの溝は、テフロン(登録商標)絶縁体を固定するワイヤのアンカポイントとして機能する。
【0048】
d.テフロン(登録商標)シール26にはEGグランド(Gland)が付いており、5/64”ドリルビットを用いて穴のサイズを増加する。
【0049】
e.熱収縮テフロン(登録商標)28の一部を約7cmの長さに切る。白金ワイヤをアセトン、その後にエタノールで洗浄する。一方の端で1cmテフロン(登録商標)が露出するように、白金ワイヤ上にスライドさせる。テフロン(登録商標)を、テフロン(登録商標)が透明になるまでヒートガンで加熱する。
【0050】
f.上記電極ボディー32を図3に示すように組み立てる。溶液に露出先端は、Conax(登録商標)フィッティングの端から15mm突き出していなければならず、アセンブリを指で締める。密閉性を維持するために、<15ftlbsで締める。シールは確実に圧力試験される。漏れた場合は、もう少し締めてもよい。
【0051】
g.OD0.8mmで約24cmの長さのステンレス鋼ワイヤを4片切り取り、それらを半分に折り畳む。
【0052】
h.折り畳んだ端がConax(登録商標)グランドの背後に向くように、上記折り畳んだワイヤをワッシャ30の穴に通す。
【0053】
i.わにぐちクリップ(白金プローブとの電気的な接続に用いられる)が上記ワイヤと電気的に接続されないように固定するために、1/8”ODテフロン(登録商標)配管の41/2cmを各折り畳まれたワイヤ上に配置する。
【0054】
j.テフロン(登録商標)キャップ22を白金ワイヤ29(Ptワイヤ上にドリルで開けた穴に挿入された)上に、頂点を越えてワイヤを折り畳み、先に切った溝へ配置する。
【0055】
k.Ptワイヤの頂部に絶縁体をしっかり取り付けるために、テフロン(登録商標)絶縁体の頂部の周りにワイヤの端部を巻きつける。これは、ECPセル1の内圧の結果、PtワイヤがConax(登録商標)フィッティングから滑り落ちるのを防止するためである。
【0056】
l.露出したステンレス鋼ワイヤを覆うために、上記頂部の周りにテフロン(登録商標)テープを巻きつける。
【0057】
上述したORPセルを用いて測定された温度におけるORPは、上記参照電極と白金電極との間に存在する電位差である。測定は、白金電極の露出された(雰囲気に開放された)白金ワイヤに電気的ワイヤを取り付け、上記ワイヤを電圧測定装置の正端子(多くは赤ワイヤ)へと動かすことにより行われる。参照電極の露出された銀部分には他のワイヤが取り付けられ、電圧測定装置の負端子(多くは黒ワイヤ)へと動かされる。上記ワイヤを白金および銀電極に取り付けるために、電気的接触および絶縁が確保されれば、例えばわにぐちクリップのようないかなる適した接続装置を用いてもよい。また、ワイヤは電極の白金および銀部分にはんだ付けされてもよい。
【0058】
pHプローブとは異なり、ORPプローブは較正する必要はないが、プローブが適正に機能しているかを確認することは良い手法である。ORPプローブ較正の業者から得られるORP標準には様々なものがある。しかしながら、基本構成成分から構成するのが、新たな標準を得るための最も経済的で良い方法である。ORP標準を構成するための処方を含むASTM標準D1498−93がある。
【0059】
高温ORPプローブでは、EPBRE参照電極と飽和KCl//塩化銀/銀電極との間の電位差は、飽和KCl溶液中で得られる。上記電位差は、常に88から92mVである。これは、飽和KClではなく、0.1NのKClがEPBREに用いられているからである。
【0060】
ここに説明されるようなORPセルを用いて生じたデータは、いかなる数の市販の装置によって記録されてもよく、一例として、128Kメモリおよび8605試験リードを有し、TCスキャンカード(Keithley Instruments, Arlington Heights, Il)付きでも入手可能であるモデル2001/MEM2高性能デジタルマルチメータ(DMM)データ記録装置を挙げることができる。
【0061】
EPBREの冷接点の温度は、熱電対の一端をEPBREの外部ベースへ取り付けることにより監視できる。ここに述べる実験のために、Jタイプの精密ゲージ、取り付けられていないベアの熱電対プローブ(5ft直線ケーブル)CAT#G−08505−87(Cole-Parmer Instrument Company; Niles, Il)の一端がEPBREの外部ベースに貼り付けられた。この範囲は通常周囲温度である。
【0062】
高入力インピーダンスデータ記録装置、クイックベーシックダウンロードプログラムおよびデータグラフィングパッケージ((中でも)Microsoft ExcelまたはSynergy System Kaleidagraph productのような)を用いれば、高圧および高温の水性の環境下での全ORPシグネチャープロファイルを得ることができる。最終的な出力は、時間およびセル温度の作用としてのORP電位のプロットである。
【0063】
試験温度および25℃における、銀−塩化銀参照電極で測定された測定電極電位から標準水素電極スケールへの変換を以下に説明する(慣例により、0Vおよび25℃おけるSHE)。
【0064】
ここで説明する銀/塩化銀電極は、活性な銀/塩化銀の先端の電解質は原則的に室温(25℃で採取)であるのに対し、試験温度における充填溶液の先端(ジルコニアフリット21に関する)を有する。ハーフセル反応用の電位は知られる必要がある:
【0065】
【数1】
【0066】
これは以下の知識を必要とする:
(1)室温でのSHEスケールにおける銀/塩化銀ハーフセルの電位(E°);
(2)一方のセルが温度におけるものであり、もう一方は周囲温度である銀/塩化銀端子セルの電位Eth(端子電位)
(3)上昇された温度におけるKClの活性係数
(4)修正水素スケール反応への変換
【0067】
【数2】
【0068】
上記の情報の多くは文献において表にされており、グラフにして式に当てはめればよいだけである。0.1NのKCl電極充填溶液(全ての温度は摂氏である)のデータを示す。
【0069】
EPBRE(T)に対して測定されたORPを、c2=水サンプル温度(℃)、c7=周囲温度(℃)(これはEPBREのベース温度である)、およびc5=温度における上記ORPセルでの、ボルトでのEPBREに対して白金において測定されたORPである、SHE(T)に変換するには:
【0070】
【数3】
【0071】
温度におけるSHEスケールをSHE(25℃)スケールへの変換は:
【0072】
【数4】
【0073】
よって、例えば、セル温度が206.2℃の場合;EPBREのベースに関する温度は25.1℃;およびEPBREに対する白金の電位(これがORPである)は−0.3265Vとして測定され、そして:EPBRE(T)に対するORPは−0.3265V、SHE(T)に対するORPは−0.2319Vと計算され、およびSHE(25℃)に対するORPは−0.1296Vと計算される。
【0074】
測定されたORPは、腐食制御のために温水系に供給される必要がある酸素捕集剤または酸化剤(酸素)の量の制御に用いられる。制御機構は、ポンプリミッタ、警報、および知的制御を含有してもよく、さらにpH、溶解酸素およびその他の水構成成分などの入力に基づいてもよい。
【0075】
ここで用いられるように、「温水系」は金属表面に温水が接触する任意の系を意味する。「温水」とは、約100°Fから700°F間での温度の水を意味する。上記温水系は、大気圧または約3000psiまでの圧力下で作動されてもよい。好ましい温水系は、工業用ボイラー系である。例としては、ボイラー給水は一般的に約200°Fから約400°Fの温度である。
【0076】
酸素腐食は、蒸気を発生する系のいかなる個所においても発生し得る。その特徴および重大性は、溶解酸素、圧力、温度、水化学、流れの状態および冶金の源によって左右され得る。上記攻撃は、保護フィルムのいかなる弱点および粒状鱗(tubercle)キャップで形成される鋭い端部において発生し得る。系の全ての部分においてDO腐食を防止することが酸素腐食制御の目的である。よって、どこから酸素が系に入るかおよび最適な効果のための酸素捕集剤の供給地点をどのようにして選択するかを考慮することは絶対に必要なことである。主な酸素源は、多くの場合給水である。単段の真空脱気装置ではDO値を100ppbよりさほど低くは減少しないのに対し、より効果的な脱気ヒーターはDO値を約7ppbまで下げうる。
【0077】
酸素捕集剤によって減少されない限り、DOは残りの系を通過して運ばれ、給水プリヒーターおよびエコノマイザを腐食しうる。DOは水ボイラー体制の前に系から逃れられないため、プリボイラー領域がより酸素攻撃を受けやすい。プリボイラー内では、熱流束および温度が最も高い場所で上記攻撃は最も深刻である。これは、エコノマイザ領域内で最も攻撃が起こりやすいことを意味する。上記攻撃は点食の形で現れるため、腐食は比較的早い。これらのタイプの欠陥を防止するため、給水貯蔵タンクまたは脱気ヒーターの貯蔵部に頻繁に酸素捕集剤が添加される。
【0078】
酸素の他の「漏れ込み」は、給水ポンプの吸引側、シール、コンデンサ、高圧タービン部と低圧タービン部との交差部分を含みうる。銅および特定の銅含有合金は、アンモニア存在下では特に酸素の進入に対し敏感である。
【0079】
全ての還元剤が酸素捕集剤であるとは限らないが、全ての酸素捕集剤は、還元する物質(還元剤)と定義される。酸素捕集剤に適した還元剤は、酸素との反応での発熱の存在という熱力学的要件を満たす。実用においては、低い温度において適切な反応性が要求される。すなわち、好ましい反応速度論が必要である。多くの酸素捕集剤において、この要件は満たされない。上記還元剤およびその酸化生成物が腐食性ではなく、蒸気発生装置において形成された場合に腐食性の生成物を形成しないことが強く望まれる。全ての酸素捕集剤は特定のpH領域、温度および圧力に関しては適切に機能し、何れかの形で触媒に影響される。特定の系用の適切な酸素捕集剤の選択は、上述した基準に基づいて容易に決定できる。
【0080】
好ましい酸素捕集剤はヒドラジン、亜硫酸塩、カルボヒドラジド、N,N−ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキノン、エリソルビン酸塩、メチルエチルケトキシム、ヒドロキシルアミン、タルトロン酸、エトキシキン(ethoxyquin)、メチルテトラゾン(methyltetrazone)、テトラメチルフェニレンジアミン、セミカルバジド、DEAE2−ケトグルコン酸塩、N−イソプロピルヒドロキシルアミン、アスコルビン酸、没食子酸およびヒドロキシアセトンを含む。
【0081】
特定の温水系においては、酸素腐食を不活性化によっても抑制し得る。不活性化は、水性媒体中での金属イオンと、イオン性または他の化学種との間の化学反応の結果として、不溶性で無孔の物質のバリアが生じる、腐食抑制の1形態である。このような方法により上記化学系が不溶性のバリアのセットアップを許容する場合、不活性化が可能である。しかしながらそうでない場合は、不活性化は可能ではなく、腐食制御はアノード抑制よりはむしろカソード抑制を介する必要がある。ほとんどの蒸気発生系においては、アノード不活性は磁鉄鉱層(Fe3O4)の形成に由来する。ボイラーにおける不活性化層の記載は、色彩においては濃い黒、砲金グレーから灰色がかった青へと及ぶ。上記層は磁鉄鉱であり;この層とは別に、上記ボイラーチューブはいかなる腐食もまったくない。
【0082】
鉄水系へ量を慎重に制御して添加された場合、分子酸素などの酸化剤は磁鉄鉱形成を加速させる。これが酸化ボイラー水処理の根拠である。このアプローチでの成功は、高度に脱イオン化されるべきである、給水のイオン含量の厳格な制御にある。趣旨は、磁鉄鉱を、磁鉄鉱よりも低い溶解性の水和酸化第二鉄(FeOOH)変換する、溶解酸素を添加することにある。
【0083】
ORPは、ボイラー水(ボイラー排出)および復水においても測定することができる。復水は、酸素の漏れ込みが深刻な腐食の問題を引き起こしうる領域である場合が多い。
【0084】
給水のORP電位は、溶解酸素および酸素報酬剤の両方の濃度による作用である。主に、給水における特定のORP電位を目標とすることにより、酸素の攻撃から系(多くは炭素鋼冶金合金)を守るために必要な正確な捕集剤の量を供給し、適切な不活性および腐食抑制を提供することが可能になる。
【0085】
このコンセプトの主な利点は、給水を継続的に監視することにより、系のアップセットがあった場合に即時に修正措置をとる事が可能である。このように、全ボイラー系が常に適切に処理されることを確保する。溶解酸素値を制御するためだけではなく、系の腐食速度を低減するために余分な捕集剤が供給(不活性酸素捕集剤の場合)される状況もある。
【0086】
費用がかさみ、複雑であり、現在では行えない場合もあるが、リアルタイムの溶解酸素値およびリアルタイムの残留酸素捕集剤を測定することも可能である。工業合金の腐食速度についての推測を依然としてしなければならない。
【0087】
ここで説明されるORPに基づく制御機構下では、警報装置はボイラーの操作者に脱気装置の故障を警告できる。例えば、付加的な捕集剤の供給でORP電位を制御できない場合、タイムアウト警告がある。また、多すぎる捕集剤が汲み上げられている場合、制御ロジックが操作者に警告できる。高性能な制御機構は、ボイラー操作のフル診断制御のためのph、溶解酸素(DO)、ORPおよび残留捕集剤の信号を含みうる。
【0088】
ORP制御機構を採用するには、捕集剤の還元力が変動する際の温度における個々の捕集剤応答を理解することが重要である。系の腐食に付随するORP制御フィロソフィーの係わり合いおよび波及効果も理解される必要がある。
【0089】
図4に、以下に説明するORP研究に用いられる試験装置を示す。一般的には、溶解酸素が機械的に除去される場所であるポンプ34を用いたトレータイプの脱気装置35へ脱イオン水33が供給される。その後、脱気された水に、弁38および39をそれぞれ介してコーステック溶液36および/または酸素捕集剤溶液37を供給することができる。また、酸素捕集剤を直接脱気装置へ添加することもできる。ここで説明される研究用には、コーステック添加によりpHは約9.2に制御される。この試験手順を通じて、装置流速は440ml/分である。
【0090】
その後、いかなる温度にも水を熱することができる10個の熱交換器42へ、主供給ポンプ41により水が供給される。圧力は、沸騰が防止される程度である。これはプリボイラーの環境をシミュレートする(一般的なボイラーではエコノマイザ後)。この一連の試験において、圧力は800psiであり、上記熱交換ラックを出た水の温度は通常は約205℃である。所望であれば、以下に記載されたサンプルセクション45で取られたサンプル水の分析用のサンプル水を注入口サンプル地点40から取ることもできる。
【0091】
ORP試験手順中に、熱交換ラックの後に更なる投薬を行ってもよい。ORP測定用の白金および参照電極を有する高温ORPセル1の直前で、酸素および/または捕集剤(還元剤)を供給してもよい、十分な柔軟性がある。
【0092】
意図的に水に酸素が添加される場合は、空気飽和水または酸素飽和水として添加される。酸素投与の個所は、脱気装置の直後か、高温ECPセルの直前である。
【0093】
高温腐食セル43は、全面および局部の腐食試験を行うためのORPセルの後に取り付けられる。水はクーラー44により減圧および冷却された後、サンプルセクション45を通過する。サンプルセクションには、数々の分析装置がある。それらは、溶解酸素メーター、室温ORPプローブ、導電率プローブおよびpHプローブを含む。ORP応答における溶解酸素および酸素捕集剤(還元剤)の濃度の効果を測定するための、上述したORPセルおよび試験装置の使用、および、温水系における酸素捕集剤供給の制御のためのORPの使用を以下の実施例で説明する。
【実施例】
【0094】
実施例1
還元剤および溶解酸素濃度の変化に対する、高温および低温ORPプローブ応答の比較
図5に、室温(低温)ORPプローブの性能を、上述した実験装置を用いた本発明の高温ORPプローブと比較した一連の試験を示す。図は、異なる溶解酸素およびエリソルビン酸の添加から得られた2つのORP測定を示す。溶解酸素値は、右側のYスケールプロットされている。X軸は日にち単位の時間である。高温(110℃)ORPプローブ応答の階段状変化は、エリソルビン酸または溶解酸素値の変化が生じたときに対応する。低温ORPプローブによる唯一の変化は、溶解酸素値に大きな変化あったときに対応する。図から分かるように、低温ORPプローブ還元剤(この場合、エリソルビン酸)添加の変化には応答しない。
【0095】
図5はまた、低温ORPプローブが溶解酸素値のみに応答するのに対し、高温ORPプローブが過剰な捕集剤の供給にいかに応答するかを示す。低温ORPプローブはまた、高温ORPプローブの応答に比べて遅い。また、低温ORPプローブの応答に関する変化は、高温ORPプローブに見られるものよりも大幅に小さいこともわかる。
【0096】
また、低温ORPプローブは、酸素の減少よりも酸素の増加に対してより応答するように見られ、応答におけるヒステリシスを示す。加えて、低温ORPプローブによって真のORP変化が捉えられていない場合もあり、捉えられても、測定されたORP数の動きは遅く、動きの大きさは小さい。
【0097】
いかなるORPベースの制御体制においても、温度、pH、溶解酸素濃度、および酸素捕集剤の存在を含む径の様々な要因を考慮しなければならない。これらの要因を以下に詳しく述べる。
【0098】
実施例2
ORP測定における温度およびpHの影響
ORP測定の温度は、得られるORP値の判断において重大であると留意することは重要である。例えば、pH(室温)9.2(コーステック調整(caustic adjusted))の水環境において、温度を204℃から121℃に下げると、EPBRE(T)に対して測定した際のORPは数百ミリボルト上昇する。これは、ネルンスト式における要因の、温度の影響の直接的な結果である。温度を上げるとORP数は下がる。
【0099】
ネルンスト式は
【0100】
【数5】
【0101】
を定める。
【0102】
従って、温度は、直接的および比例的に測定電位(E)に影響する。温度が上がるにつれて、電位は下がる(より負だから)。温度は上記式の「T」項に影響するばかりではなく、「z」項(移送された電子の数)および酸化および還元濃度に影響し、それ故上記対数項にも影響する。これが、ORPプローブが温度効果について通常は較正されない理由である。
【0103】
一般的に高温ORPプローブの場合では、1℃の上昇毎にORPは約2.6mVずつ減少する。この変化の大きさ、およびその重要性は、ORPプローブを通貨する流水の温度が変化した場合、ORPのいかなる制御範囲についても見積もる必要がある。
【0104】
pHもまたORPに影響することが知られている。pHが増加するにつれてORPは減少し、この変化の相関的な大きさは室温pHにおいて、1単位毎の増加について約55から65mVであると予想される。この応答もまた、直線的である。
【0105】
実施例3
ORPにおける溶解酸素および酸素捕集剤濃度の影響
ORP数は溶解酸素値が増加するにつれて増加すると予想される。pH=9.2(コーステック添加)の205℃の水において、溶解酸素値を300ppbまで変化させた一連の試験を行った。図6にORP応答を示す。
【0106】
図6は、溶解酸素含有量を直線スケールに示す。これは、少ない量の酸素がいかに劇的にORP数に影響し、より高い溶解酸素値でいかに早くORP数が飽和するかを見るのに有効である。
【0107】
高温ORPプローブは、室温プローブに比べより急勾配に応答し、溶解酸素により平らな応答を示す。高温ORPプローブは、室温ORPプローブよりも大幅に大きい範囲の応答も示す。
【0108】
温水系において腐食を抑制するために用いられる酸素捕集剤は、特定の温水系下では異なる還元能力を有し、独特の還元および酸化平衡をもたらす。例えば、より多くの酸素捕集剤(還元剤)の添加の際にはORPは減少するが、比例的な大きな捕集剤の増加についてはORPの減少はより少なくなる。同様の影響が、溶解酸素の増加についても見られる。
【0109】
これは、それぞれORPの独特な状態につながる。温度、pHおよびORPまたはDO動力学および熱力学的に捕集剤に影響する他のいかなる要因と共にORP状態は変化する。ボイラー給水における還元剤制御のためのORPの使用を以下に説明する。
【0110】
給水のORP電位は、溶解酸素および酸素捕集剤の両方の濃度(上述したもののうち)の作用である。主には給水における特定のORP電位を目標とすることにより、酸素の攻撃から系を守るために必要な、正確な量の捕集剤を供給することができる。
【0111】
この概念における重要な利点は、連続的に給水を監視することにより、系がアップセットした際に即座に修正作業をすることができ、それ故ボイラー計が常に適切に化学的に処理されることを確実にすることができる。また、溶解酸素値を制御するためだけではなく、系の腐食速度を減少させるために過剰な捕集剤が供給される(酸素捕集剤の不活性化の場合)状況もある。
【0112】
実施例4
酸素捕集剤供給のON/OFF制御
この研究において用いられるORPコントローラは、ON/OFF操作および振動周波数比例制御の能力を有するLMI Liquitron DR 500シリーズのORPコントローラ(Liqui-Systems Inc., Madison WI社製)である。ORP信号(4から20mA信号)のデータ記録のアウトプットもある。用いられる還元剤投与ポンプは、LMIポンプ(Electron Metering Pump A78 1-490SI)である。捕集剤のフルPID制御供給を試みる場合は、ヨコガワUT−550コントローラが用いられる。
【0113】
酸素捕集剤は、投与管(quill)を介して脱気装置貯留(storage)部に供給されるか、または脱気装置の出口に供給される。脱気された水に意図的に酸素を添加する際は、酸素飽和水として添加され、投与地点は脱気装置の出口である。
【0114】
還元剤(この場合は酸素捕集剤)は、ORPセットポイントに基づいて供給される。一般的には、ON/OFF制御用にセットポイントはセットされ、制御範囲もセットされる。定義によれば、この制御体制においては、ポンプはONまたはOFFの何れかである。
【0115】
上記制御体制は以下のように取り扱われる。ORPが高すぎる場合は、捕集剤の流れを増加してORPを低下させるためにポンプはオンにされる。ORPはセットポイントまで低下する。セットポイントに到達すると、ポンプはオフになる。セットポイントが−400mVで制御範囲が50mVであると仮定すると、ORPが−400mVまで減少するとポンプはオフになる。上記例においては、ORPの示度が−350mVを超えた場合のみポンプはオンに戻る。(−400mV+50mV=セットポイント+制御範囲)
【0116】
例として、亜硫酸塩を添加される捕集剤/還元剤として用いる。LMIポンプを用い、47ml/分のポンプ能力において亜硫酸塩溶液をプリボイラー装置に供給する。標準装置水を脱気し、脱イオン水はコーステックを添加することによりpHを9.2に調整した。
【0117】
この場合は、脱気装置の出口に亜硫酸ナトリウム、酸素捕集剤および溶解酸素が供給された。捕集剤を供給しなければ、溶解酸素値のベースラインは140ppbであった。試験をし、ORPを図7に示される制御ボックスの範囲内に維持するために、亜硫酸塩ポンプのスイッチをオンおよびオフした。
【0118】
図から分かるように、制御バンドについては、酸素のブレイクスルーの後に続く亜硫酸塩による溶解酸素の捕集に関連する大きなORP変化がある。系のラグタイムおよびORPプローブ応答がORPの激しい動きにつながる。
【0119】
もし溶解酸素の進入事象の持続時間が、薬品が供給されてから導入された薬品の効果が発揮されるまでのラグタイムよりも短い場合は、DOスパイクを捉え、化学的に中和することはできないであろう。この場合、酸素スパイクはORPプローブを通過し、更なる還元剤が供給に際する後のORPスパイクの減少が続き、これがORPプローブへ到達する。
【0120】
捕集剤が溶解酸素と反応する十分な機会を与えられるサンプルポイントがあるはずである。どうやら、いかなる捕集剤が供給されても、ORPをセットポイントまで減少させられる必要がある。これを阻害するいかなるものは、制御哲学を混乱させる。この状態は、捕集剤が動力学的にORP数を減少させられないポイントにおいてのみサンプルポイントが得られる場合に発生し得る。この場合は、溶解酸素値はより高いかもしれないが、より下流でDOの所望量を最終的に捕集するために十分な還元剤が存在するようにORP制御ポイントが選択される。
【0121】
脱気装置における酸素進入は、捕集反応の持続時間が異なること以外は脱気後のDO漏れと同様である。捕集剤供給時間も異なる。
【0122】
大きなDOバックグラウンドがある場合は、ORP対DO滴定曲線の急勾配の部分でORP制御は行われる。特にDOブレイクスルー時間に対してラグタイムが長い場合、小さいDO変化で大きなORP変動が期待される。
【0123】
ORPに影響する他の全ての変動するものがどのように変化するかを知ることは重要である。コンピュータ制御体制においては、他の要因を測定することができ、ORP制御アルゴリズムに考慮することができる。
【0124】
ON/OFF供給におけるORP変動は、複数のものに関連付けられる。
それらは以下を含む:
1.セットポイント
2.制御範囲
3.循環ORP変動間の時間は、持続時間と共に変動する。もし薬品が長時間系内に滞留すると、循環変動は長くなる。インライン給水変動がより短いON/OFFサイクルタイムをもたらす。
4.ORPの変動は、DOブレイクスルーおよび捕集剤の作用が喚起される前に到達するDO数によりアップサイドに変動し、DOへの捕集効果がある。ダウンサイドの変動は、DO在庫が捕集された後、またはDOが減少し、かつ過剰還元剤があるときの系内の捕集剤の濃度と共に変動する。関連する酸化剤および還元剤の濃度は、特定の還元剤の捕集剤としての潜在能力と同様に論点(of issue)である。
【0125】
発生するDOブレイクスルーの量は、捕集剤の存在なしの場合のDOの絶対値および系がDOと反応するための時間および存在する捕集剤濃度に依存する。系変動において達成されるのは、動力学的および熱力学的な平衡である。
【0126】
上記試験手順においては、最悪な場合のシナリオの制御試みられたことを指摘しなければならない。機能する脱気装置の存在下ではフィールドにおいては期待されない、フルで一定なDOベースラインがある。
【0127】
いかなる特定の系にも多すぎる捕集剤が供給されないようにポンプリミッタおよび警告について慎重に考慮しなければならない。
【0128】
ON/OFF制御が好調に機能する1つの用途は、ベースラインの捕集剤を提供する1つのポンプと、「アップセット」状態におけるORP数を低く維持するための余分に必要な捕集剤を提供するほかのポンプヘッドがある場合である。そのような1つのアップセット状態は、瞬間的に比較的多くの量の脱気水が脱気装置から「要求された」場合に生じうる。これはある系においては短時間の高溶解酸素値につながり得る。この場合、ON/OFF制御ポンプヘッドは捕集剤添加のための調整ポンプとして用いられる。
【0129】
実施例5
酸素捕集剤供給のPID制御
酸素捕集剤供給は、PID制御アルゴリズム(またはこの場合はPI制御アルゴリズム)を用いても制御可能である。PID制御は、比例的、相対的および誘導体の制御を支持する。PID制御アルゴリズムは、様々な用途に用いられ、とりわけ加熱および冷却サイクルに用いられる。ヨコガワ550PIDコントローラが、この研究に用いられている(Yokogawa, Newnan, GA, USA)。
【0130】
最初のステップは、ORPプローブ信号を高入力インピーダンスへ、低入力インピーダンスコンバータへ送ることである。この信号はその後ヨコガワコントローラへ送られ、コントローラはLMIポンプをセットポイントへ駆動するために用いられる。
【0131】
LMI ORPコントローラからの4から20mAの出力は、ヨコガワPIDコントローラの入力として用いられる。4から20mAの出力信号はその後PIDコントローラからLMIポンプへと送られる。
【0132】
ORP信号はPIDコントローラへ直接送られるのが理想である。好ましくは、PIDコントローラは警告、ポンプリミッタ等およびデータ記録装置、データ表示機および供給ポンプ用の信号提供装置などの内在素性を有する。
【0133】
PIDパラメータは、開ループチューニングを用いて展開されることが好ましい。重要なのは、ラグタイムと、通常の作動におけるORP信号の変化の最大速度である。P、IおよびDパラメータの算出手順を以下に示す。
【0134】
最初に、いかなる捕集剤の供給なしでORP信号を上昇させる。この実験では、ORP数は140ppbDOベースライン状態により駆動された。いったんORPが安定したら、捕集剤供給ポンプの100%速度で系に捕集剤を供給する。これはその用途において可能な捕集剤の最大供給速度に相当する。
【0135】
図8に示すように、捕集剤ポンプが100%速度にセットされてからORP値の最初の減少が見られるまでの時間から生じるラグタイム「L」がある。距離「LR」は図8に示すように構成することができる。ORP曲線の最大変化速度は、酸素捕集剤ポンプがオンにされ、100%にセットされた時間から推測される。
【0136】
開ループ制御機構においては:P=100LR/1.25スケール(LRはmVで与えられ、スケールはmVで与えられる);I=2L(Lは秒で);およびD=0.5L(Lは秒で)。よって、D=1/4Iである。PID制御においては、Pの増加、Dの減少およびIの増加は、応答をより鈍感にする。
【0137】
実施例6
脱気装置への亜硫酸塩供給のPID制御
この試験においては、脱気管を介して脱気装置へ亜硫酸塩を供給された。PIDパラメータ開ループチューニング法を用いてP=833;I=1612;d=403として計算された。ORP制御ポイントは−400mVにセットされた。ベースラインDO値は、脱気後の酸素飽和水をポンピングすることにより達成された140ppbである。上記PIDパラメータでPIDコントローラをセットし、フルPID制御された捕集剤の供給を行った結果を図9に示す。
【0138】
図から分かるように、コントローラはORPをセットポイントにし、そこに維持する。コントローラが系をセットポイントにするのにかかる時間は、多くのものの作用であり、捕集剤生成物の濃度が制御変動の1つである。この場合、捕集剤生成物はとても希釈されている。この場合、行き過ぎ量はないことが分かる。これは優れた安定状態制御である。PIDパラメータを適切に変動させると、系変動に基づく応答時間を増加させることができる。
【0139】
実施例7
脱気装置の出口への亜硫酸塩供給のPID制御
脱気装置の出口への亜硫酸塩の供給のPID制御は、新たな開ループチューニングパラメータを用いて行われる。脱気装置の出口において供給される140ppbのDOベースラインを減少させるために装置に希釈亜硫酸ナトリウム溶液を供給する。図10にORP制御および得られた系の応答を示す。ORPは205℃で測定された。セットポイントについてのORP制御は、これらの要求の厳しい状態下で優れている。この場合、溶解酸素は1時間以内に取り除かれた。行き過ぎた量のORPが1サイクルある。この場合、蒸気安定状態相におけるポンプの出力の平均は9.6%であった。これは、供給された亜硫酸塩のほぼ100%の消費に一致する。
【0140】
実施例8
脱気装置へ亜硫酸塩を供給中の系の溶解酸素濃度の変化の効果
PID制御下における、脱気装置への亜硫酸塩供給中の系の溶解酸素濃度の変化をこの例で説明する。図11に試験された3つの状態を示す。3つの範囲は、「DO供給」;「DO OFF」;および「DO OFF亜硫酸塩OFF」としてマークされている。一番目の領域では、DO供給(140ppbベースライン)がされている。その後、二番目の領域では追加のDO供給がオフにされ、最終的に三番目の領域では捕集剤供給がオフにされて装置はPID制御から外される。この場合、(PIDアルゴリズムにおける)Pパラメータ開ループチューニング法から計算されたものから減少する。これはセットポイントへ向けた動きを増加させるが、行き過ぎ量の領域が生じ、行き過ぎ量になる。このことはPID制御された系では一般的である。
【0141】
図から分かるように、変化後の1サイクルにおいては、−400mVでのORP制御が達成されている。PID制御手順におけるPパラメータの減少に伴い、行き過ぎ量の領域が1つと、行き過ぎ量ではない領域が1つある。系にDOが汲み上げられているときの亜硫酸塩供給ポンプは約24%の速度でオンであり、試験装置への追加DOが添加されていないときは平均速度2.3%でオンである。どちらの場合においても、−400mVでのORP制御は達成されている。ORP制御はセットポイントの10mV以内であり、それは非常に優れた制御である。
【0142】
三番目の領域では、系として−400mVを超えるORPの増加は、PID制御から外され、亜硫酸塩供給は停止され、脱気装置の溶解酸素値のベースラインは達成される。
【0143】
カルボヒドラジドおよびエリソルビン酸捕集剤供給が添加された試験においても同様に優れたORP制御が観測され、ORPに同様に影響する全ての薬品に作用することが推測される。
【0144】
実施例9
カルボヒドラジド供給のPID制御
コーステックおよび酸素散布水がプリボイラー装置に供給された場合、現状では、ORP数は140ppbDO環境でのEPBRE(T)に対して+100mVから+200mVの階級である。DO添加なしでの過剰な多くのカルボヒドラジドの供給は高いTのORPを、205℃におけるEPBRE(T)に対して約−650mVに降下させる。
【0145】
この試験中に、添加DO供給がオフにされた(図12参照)。よって、脱気水と共に持ち込まれたDO(一般的には2から4ppb)以外には、装置への意図的なDO供給はない。意図的なDO供給がないグラフの部分に用いられるPIDパラメータは、140ppbDOベースラインの場合:P=250;I=720;D=180である。
【0146】
図12に、達成されたORP制御および得られたプローブ応答を示す。このセットポイントにおいては、DO供給があってもなくてもORPは良好に制御されている。図から分かるように、DOがオフにされるとORPは減少する。その後カルボヒドラジド供給ポンプは必要な量よりも少ないカルボヒドラジドを供給する。安定なORP体制においては、DOをオフにした後カルボヒドラジドポンプの出力の平均は0.68%に下がる。この減少は、低いORP値を維持するためのより少ない捕集剤の添加の必要として推測される。
【0147】
実施例10
ORPセットポイントの選択
任意のORP制御機構において用いられるセットポイントは、水化学およびプラント制御哲学を含む系変動に基づいて実験的に決められる。制御哲学における決定は、酸化水処理が用いられるかや、特定のプラント力学などの工学合金の冶金に依る。化学的な構成要素は、用いられる還元剤、温度、pH、溶解酸素等を含む。
【0148】
添加された酸素または酸素捕集剤に対する系の応答およびORPによる測定は、これらだけではないが、酸素捕集剤投与地点、ORP監視地点、系のラグタイム、用いられる酸素捕集剤、用いられるORPプローブ、および関連したパラメータおよびチューニングアルゴリズムを含む用いられるコントローラを含む複数の要因に左右される。
【0149】
亜硫酸ナトリウムおよびコーステックが供給される脱イオン水系のORPセットポイントの決定をこの例で説明する。ORP測定は204℃(400°F)で生じる。任意の工業系において、ボイラー給水の工業合金(この場合は炭素鋼)の腐食を最小にすることが主な目的である。一般的には、溶解酸素からの局部的な点食攻撃に関する懸念がある。通常の腐食速度(均一な物質消耗)も低くあるべきである。下記の機構では、点食電位の決定には周期分極試験(溶液抵抗についての補償を伴う)が用いられ、通常の腐食速度試験にはインピーダンス試験が用いられる。
【0150】
図13に考慮されるべき情報の数々を示す。まず、左端の軸は204℃で測定された、EPBREに対する(mVでの)ORP数範囲である。+300mVから−600mVの数が示されている。また、水中に140ppbの溶解酸素がある場合のORP数の概略位置も上記軸上に示されている。ORP範囲はその後一般的には<10ppbの溶解酸素を水中に残留させる、機械的にほとんどの溶解酸素を除去する良好な脱気装置を通した水について与えられる。
【0151】
次のORP数の範囲は、温度におけるORPプローブが行われた試験について600mVの動きを示すのに対し、室温ORPプローブは90mVの範囲しか示さないことを明らかにする。
【0152】
グラフのその次のセクションは、0から2500の範囲の数で「残留亜硫酸塩(ppbDO捕集剤相当)」を示す。このグラフは、良好な脱気水中において亜硫酸塩の量が増加するにつれてORPがいかに変動するかを示す。この場合、水のpHは9.2である(コーステック添加により達成)。よって、例えば、付加的な60ppbのDOを捕集可能な余分な亜硫酸塩濃度を提供するために十分な亜硫酸塩が添加されれば、−500mVのORPが測定される。余分な還元剤の増加の量として見られるように、その後ORP数は減少する。これは予期されたものである。
【0153】
図の最後の部分は、この亜硫酸塩およびコーステック環境における炭素鋼の腐食性能の腐食地図を提供する。炭素鋼のECP(自由腐食電気化学電位)を等価のORP数用に示す。腐食電位が−672mV(対EPBRE)を超えると、炭素鋼は点食し、高い電位では点食攻撃が悪化することが分かった。すなわち、形成される点食は、自動的に繁殖する。任意に、点食の「信頼線」を−672mV線の約100mV下に引いた。点食の発生機会をなくすためには系はこの線の下で作動されるべきであることを暗示する。この「パズル」の最終部は、「低全面腐食」として示された領域である。ここでは、炭素鋼の腐食速度が最も低いことが分かった。この場合、約0.2mpy(1年につきミリインチ)または1年につき約5ミクロンである。
【0154】
よって、この場合、ORP制御が低い炭素鋼腐食速度を得るにセットアップされた場合、このボイラー給水系においては、−400mVよりも小さいORPセットポイントが適切であり、−500mVよりも小さいセットポイントがさらによい。
【0155】
炭素鋼自身の腐食電位は、動的な系において捕集剤供給制御へのECP数の応答が遅すぎるため、捕集剤供給制御に用いることはできない。また、電極の分極に関する問題もある。
【0156】
任意のORPに基づいた制御パッケージは、ここに説明された方法および装置を用いて展開することができる。これはハードウエアおよびソフトウエアを含む。最初のユニットは、ORP監視装置のみという単純なものでもよく、その後にORP制御装置、さらにORPに基づく完全自動化された還元剤供給制御のための統合ORP、pH、温度装置が続いてもよい。最終的な装置はスマートデバイスであるため、ORPアップセットおよびpH制御問題に帰する場合のあるアップセットを検出し、酸化剤/還元剤の平衡変化を検出しない。そのような系は、捕集剤供給ポンプの調整は行わない場合もある。そのような系は、捕集剤から酸素への反応はpHにより影響を受けることを知りながら捕集剤投与量ポンプを調整する程度に十分に知的な場合がある。ORP制御点は、このように捕集を最適化するように変動する場合がある。より複雑な系においては、低い腐食応答を提供するセットポイントへORPを調整するために、含蓄された含蓄腐食も考慮に入れてもよい。腐食情報は、実験データから局所的に生成または、推測することができる。
【0157】
上述した装置および方法を用いて、我々は工業用ボイラー系の効果的な腐食制御は、銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極に対する、温度および圧力で測定されたORPが400°Fにおいて約−0.7Vから約−0.3Vの範囲内に維持されるように系へ酸素捕集剤を添加することにより好ましく実現できることを見出した。
【0158】
一態様においては、酸素捕集剤は、工業用ボイラー給水および復水系へ添加される。
【0159】
pHが約8から約10であり、亜硫酸ナトリウムが酸素捕集剤として採用されている、全炭素鋼給水および復水系については、銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極(0.1NのKCl充填溶液)に対する、ORPを400°Fにおいて約−0.65Vから約−0.5Vの範囲内に維持することにより、効果的な腐食制御が好ましく達成される。
【0160】
pHが約8から約10であり、カルボヒドラジドが酸素捕集剤として採用されている、全炭素鋼給水および復水系については、銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極(0.1NのKCl充填溶液)に対する、ORPを400°Fにおいて約−0.6Vから約−0.45Vの範囲内に維持することにより、効果的な腐食制御が好ましく達成される。
【0161】
pHが約8から約10であり、エリソルビン酸が酸素捕集剤として採用されている、全炭素鋼給水および復水系については、銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極(0.1NのKCl充填溶液)に対する、ORPの範囲を400°Fにおいて約−0.6Vから約−0.35Vに維持することにより、効果的な腐食制御が好ましく達成される。
【0162】
pHが約8から約10であり、銅を含有する混合冶金給水および復水系については、銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極(0.1NのKCl充填溶液)に対する、ORPの範囲が400°Fにおいて約−0.65Vから約−0.5Vの範囲内に維持するように、酸素捕集剤が好ましく添加される。pHを約8.8から約9.2に調整すると、銅腐食速度が減少する。
【0163】
含酸素水処理の化学的な要件を満たす全鉄工業用ボイラー系では、銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極(0.1NのKCl充填溶液)に対する、ORPを400°Fにおいて約0Vから約0.3Vの範囲内に維持するように系へ酸素を添加することにより、効果的な腐食制御が好ましく行われる。
【0164】
一般的に酸素捕集剤は、液体の形で温水系へ供給される。ほとんど又は全く脱気されていない系へ亜硫酸塩は添加されることもあるが、通常捕集剤はいくらかの機械的な脱気が行われた後に温水系へ添加される。最良の手順は、捕集剤が脱気貯蔵部又は温水貯蔵タンクへ供給されることを指示する。ここでは、水は既に機械的に脱気されており、化学酸素捕集剤はボイラー給水として用いられる前に、残りの溶解酸素と反応するための時間が与えられる。しかしながら捕集剤は、ボイラー給水配管自体又は復水領域へ供給されてもよい。
【0165】
酸素捕集剤は、通常温水系に添加される他の化学的なもの(chemistries)と混合されて用いてもよい。これらは、スケールを減少する、およびボイラーの製造に用いられる工業合金の腐食を防止するための薬品を含む。このような化学的なものは(これらに限定されないが)、リン酸前記、ホスホン酸塩、キレート剤(chelants)、ポリマー、アミン、フィルマー(filmers)、消泡、pH制御剤等を含む。多機能の生成物をボイラー系へ予め混合する、又は個々に添加してもよい。
【0166】
特許請求の範囲に既定された本発明の概念および範囲を逸脱することなく、個々に説明された本発明の方法の構成、操作および配置についての変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】図1は、据え付けられた白金電極アセンブリ2および銀/塩化銀参照電極アセンブリ4および熱電対3が示された、酸化還元電位(ORP)測定セルの概略図である。
【図2】図2は、銀/塩化銀参照電極アセンブリの概略図である。
【図3】図3は、白金プローブアセンブリの概略図である。
【図4】図4は、処理水の酸化還元電位に基づいて酸化剤または還元剤の供給の制御を調査するために用いられる試験装置の概略図である。
【図5】図5は、還元剤(エリソルビン酸)および溶解酸素の濃度に対する高温ORPプローブレスポンスおよび低温ORPプローブレスポンスのプロットである。
【図6】図6は、pH9.2および205℃における脱イオン水流の溶解酸素濃度(ppb)に対するORP(対SHE(25℃)(V))のプロットである。
【図7】図7は、亜硫酸塩ON/OFF試験中の、時間に対するORP(対飽和KCl/AgCl/Ag電極)のプロットである。この図においては、コントロールバンドはクロス模様のボックスとして示されている。
【図8】図8は、温水系への亜硫酸塩の供給を制御するためのPIDパラメータを決定するためにオープンループ調整法が用いられた実験の、時間に対するORP(対飽和KCl/AgCl/Ag電極)のプロットである。
【図9】図9は、脱気装置の出口への亜硫酸塩の供給を制御するためにオープンループ調整(PID(P=999.9、I=644、D=161))が用いられた実験の、時間に対するORP(対飽和KCl/AgCl/Ag電極)のプロットである。
【図10】図10は、脱気装置への亜硫酸塩の供給を制御するためにオープンループ調整(PID(P=833、I=1612、D=403))が用いられた実験の、時間に対するORP(対飽和KCl/AgCl/Ag電極)のプロットである。
【図11】図11は、脱気装置への亜硫酸塩の供給を制御するためにオープンループ調整(PID(P=833/4、I=1612、D=403))が用いられた、溶解酸素アップセット実験の、時間に対するORP(対飽和KCl/AgCl/Ag電極)のプロットである。ORPの設定ポイントは−400mVである。
【図12】図12は、脱気装置の出口へのカルボヒドラジドの供給を制御するためにオープンループ調整(PID(P=250、I=720、D=180))が用いられた実験の、時間に対するORP(対外部圧力平衡参照電極0.1NのKCl/AgCl/Ag電極)のプロットである。ORPの設定ポイントは−500mVである。
【図13】図13は、亜硫酸ナトリウムおよびコーステックが系に添加される実験における、最適な腐食制御のためのORP設定ポイントを決定するために用いられるORP(204℃においてEPBREに対して測定した)腐食地図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用ボイラー系等の温水系における、金属表面の腐食を抑制する方法に関する。特には、本発明は系の温度および圧力において系内の水の酸化還元電位を測定する方法、および、上記系における酸素捕集剤または溶解酸素を有効な腐食抑制濃度に維持および制御するために測定された上記酸化還元電位を用いる方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
ボイラー水工業において用いられる工業合金に対する酸素の親和力は、多くの腐食現象の原因である。これは、酸素の量ばかりではなく、水化学および金属学などの要因によっても左右される複雑な過程である。例えば、上記水系中の他の種の存在は酸素を活動的な腐食勢力に変化させ得る、また、金属学的に不活性になり得る。他の重要な要因は、温度、圧力、液体速度、および操作手順である。酸素が腐食過程における主または必須の構成要素かもしれないが、それが唯一ではない。
【0003】
水系における酸素腐食を減少させる従来の手段は、機械的または化学的な手段による分子溶解酸素(molecular dissolved oxygen)の大部分を除去である。溶解している酸素の大部分は、機械的な脱気の使用によりppb体制(regime)へと減少される。ここでは、通常水は通気口付の導管内で沸点以上に加熱される。この水中の溶解酸素の溶解度は、温度が上がるにつれて減少する。脱気装置に特有の流動力(flow dynamics)および操作上(operational issues)の課題は、上記水中に10億分の1の溶解酸素を残留させる。水中に10億分の1溶解酸素を残す。さらに再現可能に低くかつ安定な値に溶解酸素値を減少させるために用いられる薬品は酸素捕集剤と呼ばれる。これらの捕集剤(scavenger)は不活性化(passivating)腐食抑制剤としても機能する。脱気装置は常に完璧に機能するわけではない。もし、すれば、金属不活性を向上する薬品は好ましい添加物であるが、純粋な捕集剤は必要ない。従って、上記酸素捕集剤は脱気装置の機能不全の可能性に対する保険として添加される場合がある。上記捕集剤は、空気の漏れ込み(air in-leakage)に対抗するために添加されてもよい。
【0004】
伝統的には、ボイラー給水へ供給される酸素捕集剤の量は、上記給水中の溶解酸素の量に加えいくらかの余分な量の捕集剤に基づいていた。供給される余分な捕集剤の量は、余分な捕集剤の濃度およびボイラーサイクルの機能である、ボイラー給水またはボイラー水自体における望ましい残留捕集剤濃度に基づく。この供給制御機構には数々の問題がある。第1に、捕集剤供給速度の制御は能動的ではない。残留捕集剤の減少が生じ、腐食作用が生じる前に、長期間の高酸素状態が存在し得る。第2の課題はボイラー水における残留捕集剤の存在が、単純に系が十分に処理されていることを意味するものではないということである。状態によっては(すなわち、低い温度または短い滞留時間)共給水において高酸素状態および十分な細く剤の両方が同時に起こり得る。この高酸素共給水がボイラーへ到達すると、上記酸素は蒸気と共に勢いよく流れ、ボイラー水中に未反応の捕集剤を残留させる。極端な場合には、ボイラー自身においては期待された酸素捕集剤の残留濃度がありながら、プリボイラーおよび復水系においては許容されない高いレベルの溶解酸素をもたらす。
【0005】
超高純水を用いる特定の高圧ボイラー(ワンススルー)においては、異なる取り組みがとられる。酸素捕集剤は用いられない。実際は、少量の酸素分子が給水中へ意図的に添加される。酸素、酸化剤は、ボイラー水化学が慎重に制御された状態下で炭素鋼用の不活性化剤として作用する。用いられる酸素濃度は空気飽和(8ppmDO)値よりも大幅に少なく、それ故脱気が使用される。制御された量の酸素を添加する前に、予めある程度脱気する方が簡単である。このように、温水系での酸素または酸素捕集剤の供給の効果的な制御方法が望まれている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様において、本発明は(i)系の温度、圧力およびpHにおいて系の有効な腐食抑制に適した酸化還元電位の範囲を決定すること;
(ii)温度および圧力において上記系内の上記水の酸化還元電位を測定すること;および
(iii)上記水の酸化還元電位を既定の酸化還元電位の範囲内に維持するために酸素または酸素捕集剤を上記系へ添加することを含む温水系において有効な腐食抑制量の酸素捕集剤または酸素を維持する方法である。
【0007】
他の態様において、本発明は(i)系へ有効な腐食抑制量の酸素または1つ以上の酸素捕集剤を添加すること;
(ii)温度および圧力において上記系内の上記水の酸化還元電位を測定すること;および
(iii)測定された上記水の酸化還元電位に基づいて、系における有効な量の酸素または酸素捕集剤を維持するために酸素または酸素捕集剤を上記系へ添加することを含む温水系の金属表面の腐食を抑制する方法である。
【0008】
他の態様において、本発明は(i)系の温度、圧力およびpHにおいて系の有効な腐食抑制に適した酸化還元電位の範囲を決定すること;
(ii)上記系の酸化還元電位を既定の酸化還元電位の範囲内にするために酸素または1つ以上の酸素捕集剤を上記系へ添加すること;
(iii)上記系内の水の酸化還元電位を連続的または断続的に測定すること;および
(iv)測定された系の酸化還元電位を既定の範囲内に維持するために酸素または酸素捕集剤を添加することを含む温水系の金属表面の腐食を抑制する方法である。
【0009】
本発明は、処理された水の酸化還元電位に基づいて上記酸素捕集剤の供給を制御することに関係する。加えて、上記酸化還元電位は、温度および圧力において直接水中で高温電気化学電位監視セルを用いて測定される。その場で酸化還元電位を測定することにより、サンプル調整装置の必要性が削減される。水の酸化還元電位は、溶解酸素および酸素捕集剤の両方の濃度の作用である。共給水における特定の酸化還元電位を目標とすることにより、酸素の攻撃から系を保護するために必要な捕集剤の正確な量を供給することが可能になる。また、上記水の持続的な監視により、系にアップセット(upset)が生じた際に即座に修正措置を取ることができ、それ故に上記系が常に適切に処理されていることを保証する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
酸素腐食は、金属のアノード酸化および分子状酸素のカソード還元によって特徴付けられる電気化学腐食の一形態である。アノードまたはカソード反応、またはその両方は、反応の速度を決定し得る。カソード反応の速度が、カソードにおける酸素の還元速度に依る場合、全体の反応速度は酸素濃度と共に増加する。全体の腐食速度がアノード反応の速度に依る場合、酸素濃度の増加は影響がないか、または実質的に全体の腐食速度を減少させ得る(アノードにおける不活性化効果の結果として)。そのため、酸素に起因する腐食の制御には2つの取り組みが明らかである。それらは、カソードおよび/またはアノード反応速度を減少することである。カソード反応速度は、溶解酸素の機械的および化学的な除去により減少させることができる。不活性化がアノード反応の速度を減少させる。後者は、不活性化酸素捕集剤の使用を通じて達成でき、それ故アノードおよびカソードのハーフセル反応の両方に作用する。しかしながらDOの存在下では、酸素捕集剤なしでも達成できる。
【0011】
酸素は酸化物質であるため、系の酸化還元電位(ORP)レベルに直接作用する。
【0012】
ORP数は、参照電極に対して測定されるため相対数であり、そのように引用される必要がある。通常これらの測定は銀/塩化銀または銅/硫酸銅電極のような、ある標準参照電極に対してなされる。これらの測定は、温度、圧力および流れの代表的な条件下で成されるべきである。電位値はその後、温度、スケールにおけるSHE(標準水素電極)へ変換される。電位データはその後25℃におけるSHEスケールへ変換される。後者のスケールにおけるゼロは、慣例により、電気化学の研究における標準ゼロ点である。水素の形成の標準自由エネルギーが温度の作用として異なるため、SHE(25℃)スケールのゼロと他のいかなる温度におけるSHEスケールのゼロとの間には電位差がある。
【0013】
ORP測定は、系側の流れに含有され、または高圧孔フィッティングが利用できる場合は処理流自体に取り付けられたORPセルを用いてなされる。白金電極の電位は、圧力平衡、銀/塩化銀参照電極などの外部参照電極に対して測定される。セルを貫く水流の温度もまた、時間の作用として記録される。全てのデータは高入力インピーダンスデータ自動記録装置に規則的な間隔で記録することができる。
【0014】
流速は、代表的な水のサンプルが電極を通るように選択される。理想的には、電気化学セルにおいて見出された条件は、系におけるバルク水において見出された条件と酷似しているべきである。上記サンプル流は、サンプリングの地点において、系に関し、サンプルの化学的同質性を確実にするために「十分早く」あるべきである。セル設計は、流動電位も最小になるようになされなければならない。電気化学セルは基礎がしっかりしており、導電性物質から成ることを確保する。早い線形流速を維持する、サンプリング用の大きな直径の配管も、線形流速が過剰である径の小さな配管に比べ、流動電位を制限することへの助けとなる。このことは、高純水において特に重要である。
【0015】
試験環境の作動温度および圧力でORP測定をすることの重要性は一見して明らかである:溶液および物質の上記特徴における投与薬品の効果は、温度が上昇するにつれて変わり得る(通常変化する)。これらの特徴におけるアップセット状態の効果は、理想的には実際の操作状態にできる限り近い状態において評価される必要がある。
【0016】
上記ORPセルは、実施の場の状態の貫流状態(すなわち流速)をシミュレートするサイズとなるであろう。
【0017】
上記ORPセルは、ORPまたはpH状態が変化してもその参照電位(標準水素電極(SHE)に相対する)が変化しない、安定で信頼性のある参照電極と;ORP状態の変化に応答性のある白金(または貴金属)電極とを有するべきである。
【0018】
好ましい参照電極は、塩化カリウム(0.1から0.01規定)で充填された銀/塩化銀電極である。
【0019】
図1に、白金電極アセンブリ2と、熱電対3と、銀/塩化銀電極アセンブリ4が据え付けられた代表的なORPセル1を示す。上記セルは、AISIタイプ316ステンレス鋼などの適した物質から製造される。セルは、電極が互いに近傍になるように設計された。これは、低導電性の水環境において存在する非代償性抵抗効果を低減する。図1は、ORPセルをいかなる流れのループからも隔離するために用いられる、いくつかの高温(370℃まで)および圧力定格(27.6MPa;4000psiまで)の弁を有する貫流配置のセルを示す。上記セルおよび弁ユニットは、いかなる貫流系にも取り付けることができる。原則的には、弁10および11が閉じ、セルが作動していない状態で、主な動線は弁5を通るものである。まず弁10および11開き、その後に弁5を閉じることにより、セル内に水を通すことができる。この段階において、全ての必要な電極電位の監視を行うことができる。
【0020】
ORPセルにおいて行われる試験は、ループを貫く主な流れに影響を与えることなく行うことができる。すなわち、全ての段階において、弁5を開きその後弁10および11を閉じることができる。ブリード弁6は、ORPセルを通気するために開くことができ、セルがクールダウンしたらセルのいかなる部分も分解/交換または改装することができる。例えば、新たな白金電極を取り付けることができ、新鮮なKCl充填溶液を銀/塩化銀参照電極へ注入することができる。従って、これはループを貫く主な流れに影響を与えることなく行うことができる。セルはボイラー循環の通常のサンプル地点に配置することができ、それ故結果として一旦ORPセルの作動が再開されると、流れのループに入る酸素は少なくなる。そうでない場合は、第2のブリード弁(図示せず)を弁10の近傍に取り付けることができ、セルに水を流す前にセル内に不活性ガスをパージすることができる。上記セルはいかなる側流または排出ループ上に配置することができ、セルを貫流する水は排水へ捨てることができる。
【0021】
図1に示すORPセルには、4つの独特な品目がある(ORPセル自身は除く):2つの熱電対、1つのEPBRE(外部圧力平衡参照電極)および1つの白金プローブ。ORPは単にEPBREと白金プローブとの間に記録された電位差である。上記熱電対は、セルの温度と、上記参照電極自身の冷接点温度とを測定するために用いられる。
【0022】
同様の信号を得るための方法は数々あるが、基本的な前提は、ORPが流水の流れ中で温度および圧力において測定されることである。
【0023】
図1に示されるような代表的なORPセルの製造を以下に説明する。以下に説明する代表的なORPセルは、300℃までの温度において作動するように設計されており、13.8MPa(2000psi;1380bar)までの圧力において安全に使用することができる。典型的には、より低い温度での作動が系の状態と一致する。例えば、脱気装置(最初に溶解酸素の機械的除去に用いられる)は、340kPaまでの圧力において100から125℃体制で作動できる。
【0024】
以下のアイテムが図1に示されるORPセルの製造に用いられる:ORPセルボディー1(11/2”Hexタイプ316SS stockからの電極ボディー、1/4”NPTフィッティングを取り込むための糸を通した(threaded)コネクタを有する7/16”中央にあけられた穴、High Pressure Equipment Co., Erie, PA)、Jタイプ熱電対3(1/8”OD、シース(sheath)熱電対、304 SS, 鉄コンスタンタン、Jタイプ、6”の長さ、0.125”のシース径、Omega Engineering, Inc., Stanford, CT.)、Swagelok(登録商標)弁5、10および46(UGシリーズベローズシール弁3/8” Swagelok(登録商標)チューブコネクタCAT#SS−6UG、Dearborn Valve & Fitting Co., Wauconda, IL)、ブレード弁6(ステンレス鋼バーハンドル+バーベットツウ通気口CAT#SS−BVM−4−C3−SHを有するBVシリーズブリード弁、Dearborn Valve & Fitting Co., Wauconda, IL)、雌の分岐ティー7(CAT#SS−600−3TTF、Dearborn Valve & Fitting Co., Wauconda, IL)、雄のコネクタ8(MSC雄コネクタ、CAT#6MSC4N、Instrument Associates, Inc., Alsip, IL)、ユニオンティー9(CAT#SS−600−3、Dearborn Valve & Fitting Co., Wauconda, IL)。
【0025】
図1に示された上記アイテムを連結するために、ステンレス鋼配管(3/8”OD AISIタイプ316)が用いられた。全セルおよび部品は、必要であれば異なるサイズの配管から組み立てることができる。ブリード弁6は、雌の分岐ティー7に取り付いている。上記セルが組み立てられ、現場に取り付けられた時点でのみ、温度制御および安全上の理由のため断熱される。
【0026】
上記ORPセルの付属装置用の、図2に示される代表的な銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極(EPBRE)の製造を以下に説明する。
【0027】
銀/塩化銀EPBREの製造には以下のアイテムが用いられる:圧力保持キャップ46、テフロン(登録商標)絶縁体12(テフロン(登録商標)ラウンドバー、24”、部品番号2RT−8、Small Parts, Inc.; Miami Lakes, Fl)、3/16”配管フィッティング用テフロン(登録商標)フェルール13(CAT#3TZ−T、Instrument Associates, Inc.; Alsip, IL)、テフロン(登録商標)インサート14(0.125”ODテフロン(登録商標)配管、1/16”ID;CAT#L−06407−42、Cole Parmer Instruments Co., Chicago, IL)、熱収縮テフロン(登録商標)15(膨張形1/4”OD;CAT#N−06851−20 Cole Parmer Instruments Co., Chicago, IL)、銀ロッド16(直径3.2mm、99.99%;CAT#34,877−5 Aldrich Chemical Company, Inc., Milwaukee, WI)、ステンレス鋼フィッティング17(PARKERフィッティング、CAT#4RU2, Instrument Associate, Inc., Alsip, IL),1/4”ODステンレス鋼配管18(0.028”壁)、0.1N KCl電解質、高圧フィッティング20(bored through1/4”配管フィッティング1/4NPTフィッティング(雄コネクタ)、CAT#SS−400−1−4−BT、Dearborn Valve & Fitting Co., Wauconda, IL)、多孔質、コアドリル、銀/塩化銀電極用ジルコニアフリット21(約寸法1/8”ODおとび約15mmの長さ、Materials Engineering Associates, Lanham, MD).
【0028】
ステップ1.銀ロッドの作製
a.銀ロッド16を切断する(寸法:7cmの長さであり、その4.5cmが直径1/8”から点(0”)になるテーパー端)。やすりでテーパー端に削る。一連のグリット紙、すなわち120/240/400/600で研磨する。
【0029】
b.1NのHCl溶液を調製する。
【0030】
c.クロロダイジング(chlorodizing)プロセス。
【0031】
1リットルのガラスセルに、1NのHCl約1リットルをセットアップする、参照電極は不要である;互いに接続された2つの炭素対向電極は対向電極として働く(ポテンシオスタット対向電極リードに接続される)。作用電極(グリーンリード)は上記ガラスセルの中央にぶら下げられた銀ロッドである。両対向電極は、ガラスセルの端に、180°離れている。上記銀(作用電極)は上記2つの対向電極の真ん中にある。標準的なポテンシオスタットのセットアップは:EG&G273ポテンシオスタット:電流範囲=100mA、モード=ガルバノスタット;セットスキャンセットアップ:I1=0A;ディレイ1=10s;スキャン1=1mA/s;I2=−8.3mA(0.083−mAとして供給);ディレイ2=6500;スキャン2=10s;I3=0A。セルが活性化したらスタートを押す。クロロダイジング後に、クロロダイズド電極を0.1NのKCl電極充填溶液中に格納する。
【0032】
ステップ2.銀/塩化銀電極の組み立て
a.ステンレス鋼フィッティング17を銀ロッド16および熱収縮テフロン(登録商標)15が貫通できるように、上記ステンレスフィッティング17にドリルで孔をあける。上記フィッティングは径違い(reducing)ユニオンである。一方の端は1/4”配管を、他方の端は1/8”インチ配管を取り込む。用いられるドリルサイズ11/64”ドリルビットである。ドリルした後、アセトン中で超音波洗浄する。
【0033】
b.上記1/4”ステンレス配管18を通ってオートクレーブへつながるフィッティングに用いられるのは1/4”NPTステンレス鋼フィッティング20である。このフィッティングをORPセル1の底に接続する。この作業で用いられる上記ステンレス鋼配管151/2”の長さである。バリを除去し、配管の端をオリジナルのパイプの肉厚に復元する。
【0034】
c.テフロン(登録商標)インサート14の小片(熱収縮ではない)の中央に5/64”ドリルビットで、約3cmの長さになるようにドリルアウトする。そして、アセトンで洗浄する。
【0035】
d.テフロン(登録商標)15の長片の一端(1/4”から1/8”の2:1HST)は、上記フリット21の上で熱収縮される。フリット21は3.2mmの直径および約14mmの長さである。熱収縮テフロン(登録商標)のもう半分は、3cmのテフロン(登録商標)インサート14の小片の上で収縮される。上記テフロン(登録商標)の両片(3cmのテフロン(登録商標)インサートも含む)が透明な状態で加熱されていることを確認する。これは、不透明状態へ冷却される際にそれらが互いに結合されることを確実にする。上記フリット21およびテフロン(登録商標)インサート14上にこの配管約29cmを熱収縮する。そして、テフロン(登録商標)がまっすぐになるようにする(必要に応じて、再度透明状態にする)。
【0036】
e.圧抜きキャップ:上記銀ロッドが圧力下で放出されないように、1/4インチステンレス鋼フィッティング17の上にステンレス鋼バンドクランプが溶接付けされるべきである。テフロン(登録商標)シート(テフロン(登録商標)シート、6”×6”;部品番号VT−125、Small Parts, Inc.; Miami Lakes, FL)の小片を切り取り、絶縁テープを用いてこれらの小片をステンレス鋼キャップ47の内部に貼り付け、絶縁ステップを完了させる。
【0037】
f.1/4から1/8” テフロン(登録商標)配管15の最終片を所望の長さに熱収縮し、端片が約1/8”ロッドの上で熱収縮することを確認する。テーパーの、クロロダイズされた、ゲインロッド部分が強制されるのはこの端である。電気的な接続点として、約3/8”の銀が上記端より飛び出るようにする。
【0038】
g.テフロン(登録商標)フェルール13を差し込み、上記フィッティング17を締める。
【0039】
h.長い皮下注射針を用い、1/8”OD熱収縮テフロン(登録商標)の両方の部分に0.1NのKClを充填する。
【0040】
i.容易な再充填に先立って使用後の電極を分離するために、露出しているテフロン(登録商標)インサート14に少量の真空グリースを塗布する。
【0041】
j.銀ロッド16を含有する熱収縮テフロン(登録商標) 1/8”ODを、テフロン(登録商標)インサート14上でスライドさせる。
【0042】
k.0.1NのKCLが充填された電極19の静止電位を、飽和KCl//塩化銀/銀電極に対して、飽和KClのビーカー中で25℃において測定する。上記静止電位は+90mV(±2mV)であるべきである。
【0043】
圧力保持キャップを有する代表的な白金電極アセンブリの製造を以下に説明する。
【0044】
以下のアイテムが白金電極の製造に用いられる:テフロン(登録商標)保持キャップ22(テフロン(登録商標)ラウンドバー、24”;部品番号2RT−8、Small Parts, Inc.; Miami Lakes, FL)、ステンレス鋼フォロア23から成るConax(登録商標)フィッティング(TG−14−AT、Patrick and Douglass, Inc., Lombard, IL)、ステンレス鋼ガイド24、セラミック絶縁体25(2)、テフロン(登録商標)シール26、およびステンレス鋼フィッティング27、熱収縮テフロン(登録商標)28(J−SM2T−20−36一層、Small Parts, Inc.; Miami Lakes, FL)、白金ワイヤ29(直径1.5mm、99.9%;CAT#34,939−9、Aldrich Chemical Company, Inc., Milwaukee, WI)、ステンレス鋼ワッシャ30、テフロン(登録商標)絶縁金属ワイヤ31。
【0045】
白金電極の組み立て
a.白金ワイヤ29をまっすぐにし、長さが焼く10cmであることを確認する。
【0046】
b.ステンレス鋼ワッシャ30に90°離し、外周端から2mm内側に、5/64”ドリルビットを用いて、4つの穴をあける。ワッシャのIDは17.4mmおよびODは38mmである。
【0047】
c.テフロン(登録商標)キャップ22。直径1/2”のテフロン(登録商標)ロッドから11mmの長片を切り取り、5/64”ドリルビットを用いて、平面端の一方の中心に厚みの1/3まで穴をあける。この穴は、白金ワイヤのアンカポイントとして機能する。上記テフロン(登録商標)のもう一方に弓のこで、約1から2mmの深さの、中央で交差する2本の垂直線を切る。これらの溝は、テフロン(登録商標)絶縁体を固定するワイヤのアンカポイントとして機能する。
【0048】
d.テフロン(登録商標)シール26にはEGグランド(Gland)が付いており、5/64”ドリルビットを用いて穴のサイズを増加する。
【0049】
e.熱収縮テフロン(登録商標)28の一部を約7cmの長さに切る。白金ワイヤをアセトン、その後にエタノールで洗浄する。一方の端で1cmテフロン(登録商標)が露出するように、白金ワイヤ上にスライドさせる。テフロン(登録商標)を、テフロン(登録商標)が透明になるまでヒートガンで加熱する。
【0050】
f.上記電極ボディー32を図3に示すように組み立てる。溶液に露出先端は、Conax(登録商標)フィッティングの端から15mm突き出していなければならず、アセンブリを指で締める。密閉性を維持するために、<15ftlbsで締める。シールは確実に圧力試験される。漏れた場合は、もう少し締めてもよい。
【0051】
g.OD0.8mmで約24cmの長さのステンレス鋼ワイヤを4片切り取り、それらを半分に折り畳む。
【0052】
h.折り畳んだ端がConax(登録商標)グランドの背後に向くように、上記折り畳んだワイヤをワッシャ30の穴に通す。
【0053】
i.わにぐちクリップ(白金プローブとの電気的な接続に用いられる)が上記ワイヤと電気的に接続されないように固定するために、1/8”ODテフロン(登録商標)配管の41/2cmを各折り畳まれたワイヤ上に配置する。
【0054】
j.テフロン(登録商標)キャップ22を白金ワイヤ29(Ptワイヤ上にドリルで開けた穴に挿入された)上に、頂点を越えてワイヤを折り畳み、先に切った溝へ配置する。
【0055】
k.Ptワイヤの頂部に絶縁体をしっかり取り付けるために、テフロン(登録商標)絶縁体の頂部の周りにワイヤの端部を巻きつける。これは、ECPセル1の内圧の結果、PtワイヤがConax(登録商標)フィッティングから滑り落ちるのを防止するためである。
【0056】
l.露出したステンレス鋼ワイヤを覆うために、上記頂部の周りにテフロン(登録商標)テープを巻きつける。
【0057】
上述したORPセルを用いて測定された温度におけるORPは、上記参照電極と白金電極との間に存在する電位差である。測定は、白金電極の露出された(雰囲気に開放された)白金ワイヤに電気的ワイヤを取り付け、上記ワイヤを電圧測定装置の正端子(多くは赤ワイヤ)へと動かすことにより行われる。参照電極の露出された銀部分には他のワイヤが取り付けられ、電圧測定装置の負端子(多くは黒ワイヤ)へと動かされる。上記ワイヤを白金および銀電極に取り付けるために、電気的接触および絶縁が確保されれば、例えばわにぐちクリップのようないかなる適した接続装置を用いてもよい。また、ワイヤは電極の白金および銀部分にはんだ付けされてもよい。
【0058】
pHプローブとは異なり、ORPプローブは較正する必要はないが、プローブが適正に機能しているかを確認することは良い手法である。ORPプローブ較正の業者から得られるORP標準には様々なものがある。しかしながら、基本構成成分から構成するのが、新たな標準を得るための最も経済的で良い方法である。ORP標準を構成するための処方を含むASTM標準D1498−93がある。
【0059】
高温ORPプローブでは、EPBRE参照電極と飽和KCl//塩化銀/銀電極との間の電位差は、飽和KCl溶液中で得られる。上記電位差は、常に88から92mVである。これは、飽和KClではなく、0.1NのKClがEPBREに用いられているからである。
【0060】
ここに説明されるようなORPセルを用いて生じたデータは、いかなる数の市販の装置によって記録されてもよく、一例として、128Kメモリおよび8605試験リードを有し、TCスキャンカード(Keithley Instruments, Arlington Heights, Il)付きでも入手可能であるモデル2001/MEM2高性能デジタルマルチメータ(DMM)データ記録装置を挙げることができる。
【0061】
EPBREの冷接点の温度は、熱電対の一端をEPBREの外部ベースへ取り付けることにより監視できる。ここに述べる実験のために、Jタイプの精密ゲージ、取り付けられていないベアの熱電対プローブ(5ft直線ケーブル)CAT#G−08505−87(Cole-Parmer Instrument Company; Niles, Il)の一端がEPBREの外部ベースに貼り付けられた。この範囲は通常周囲温度である。
【0062】
高入力インピーダンスデータ記録装置、クイックベーシックダウンロードプログラムおよびデータグラフィングパッケージ((中でも)Microsoft ExcelまたはSynergy System Kaleidagraph productのような)を用いれば、高圧および高温の水性の環境下での全ORPシグネチャープロファイルを得ることができる。最終的な出力は、時間およびセル温度の作用としてのORP電位のプロットである。
【0063】
試験温度および25℃における、銀−塩化銀参照電極で測定された測定電極電位から標準水素電極スケールへの変換を以下に説明する(慣例により、0Vおよび25℃おけるSHE)。
【0064】
ここで説明する銀/塩化銀電極は、活性な銀/塩化銀の先端の電解質は原則的に室温(25℃で採取)であるのに対し、試験温度における充填溶液の先端(ジルコニアフリット21に関する)を有する。ハーフセル反応用の電位は知られる必要がある:
【0065】
【数1】
【0066】
これは以下の知識を必要とする:
(1)室温でのSHEスケールにおける銀/塩化銀ハーフセルの電位(E°);
(2)一方のセルが温度におけるものであり、もう一方は周囲温度である銀/塩化銀端子セルの電位Eth(端子電位)
(3)上昇された温度におけるKClの活性係数
(4)修正水素スケール反応への変換
【0067】
【数2】
【0068】
上記の情報の多くは文献において表にされており、グラフにして式に当てはめればよいだけである。0.1NのKCl電極充填溶液(全ての温度は摂氏である)のデータを示す。
【0069】
EPBRE(T)に対して測定されたORPを、c2=水サンプル温度(℃)、c7=周囲温度(℃)(これはEPBREのベース温度である)、およびc5=温度における上記ORPセルでの、ボルトでのEPBREに対して白金において測定されたORPである、SHE(T)に変換するには:
【0070】
【数3】
【0071】
温度におけるSHEスケールをSHE(25℃)スケールへの変換は:
【0072】
【数4】
【0073】
よって、例えば、セル温度が206.2℃の場合;EPBREのベースに関する温度は25.1℃;およびEPBREに対する白金の電位(これがORPである)は−0.3265Vとして測定され、そして:EPBRE(T)に対するORPは−0.3265V、SHE(T)に対するORPは−0.2319Vと計算され、およびSHE(25℃)に対するORPは−0.1296Vと計算される。
【0074】
測定されたORPは、腐食制御のために温水系に供給される必要がある酸素捕集剤または酸化剤(酸素)の量の制御に用いられる。制御機構は、ポンプリミッタ、警報、および知的制御を含有してもよく、さらにpH、溶解酸素およびその他の水構成成分などの入力に基づいてもよい。
【0075】
ここで用いられるように、「温水系」は金属表面に温水が接触する任意の系を意味する。「温水」とは、約100°Fから700°F間での温度の水を意味する。上記温水系は、大気圧または約3000psiまでの圧力下で作動されてもよい。好ましい温水系は、工業用ボイラー系である。例としては、ボイラー給水は一般的に約200°Fから約400°Fの温度である。
【0076】
酸素腐食は、蒸気を発生する系のいかなる個所においても発生し得る。その特徴および重大性は、溶解酸素、圧力、温度、水化学、流れの状態および冶金の源によって左右され得る。上記攻撃は、保護フィルムのいかなる弱点および粒状鱗(tubercle)キャップで形成される鋭い端部において発生し得る。系の全ての部分においてDO腐食を防止することが酸素腐食制御の目的である。よって、どこから酸素が系に入るかおよび最適な効果のための酸素捕集剤の供給地点をどのようにして選択するかを考慮することは絶対に必要なことである。主な酸素源は、多くの場合給水である。単段の真空脱気装置ではDO値を100ppbよりさほど低くは減少しないのに対し、より効果的な脱気ヒーターはDO値を約7ppbまで下げうる。
【0077】
酸素捕集剤によって減少されない限り、DOは残りの系を通過して運ばれ、給水プリヒーターおよびエコノマイザを腐食しうる。DOは水ボイラー体制の前に系から逃れられないため、プリボイラー領域がより酸素攻撃を受けやすい。プリボイラー内では、熱流束および温度が最も高い場所で上記攻撃は最も深刻である。これは、エコノマイザ領域内で最も攻撃が起こりやすいことを意味する。上記攻撃は点食の形で現れるため、腐食は比較的早い。これらのタイプの欠陥を防止するため、給水貯蔵タンクまたは脱気ヒーターの貯蔵部に頻繁に酸素捕集剤が添加される。
【0078】
酸素の他の「漏れ込み」は、給水ポンプの吸引側、シール、コンデンサ、高圧タービン部と低圧タービン部との交差部分を含みうる。銅および特定の銅含有合金は、アンモニア存在下では特に酸素の進入に対し敏感である。
【0079】
全ての還元剤が酸素捕集剤であるとは限らないが、全ての酸素捕集剤は、還元する物質(還元剤)と定義される。酸素捕集剤に適した還元剤は、酸素との反応での発熱の存在という熱力学的要件を満たす。実用においては、低い温度において適切な反応性が要求される。すなわち、好ましい反応速度論が必要である。多くの酸素捕集剤において、この要件は満たされない。上記還元剤およびその酸化生成物が腐食性ではなく、蒸気発生装置において形成された場合に腐食性の生成物を形成しないことが強く望まれる。全ての酸素捕集剤は特定のpH領域、温度および圧力に関しては適切に機能し、何れかの形で触媒に影響される。特定の系用の適切な酸素捕集剤の選択は、上述した基準に基づいて容易に決定できる。
【0080】
好ましい酸素捕集剤はヒドラジン、亜硫酸塩、カルボヒドラジド、N,N−ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキノン、エリソルビン酸塩、メチルエチルケトキシム、ヒドロキシルアミン、タルトロン酸、エトキシキン(ethoxyquin)、メチルテトラゾン(methyltetrazone)、テトラメチルフェニレンジアミン、セミカルバジド、DEAE2−ケトグルコン酸塩、N−イソプロピルヒドロキシルアミン、アスコルビン酸、没食子酸およびヒドロキシアセトンを含む。
【0081】
特定の温水系においては、酸素腐食を不活性化によっても抑制し得る。不活性化は、水性媒体中での金属イオンと、イオン性または他の化学種との間の化学反応の結果として、不溶性で無孔の物質のバリアが生じる、腐食抑制の1形態である。このような方法により上記化学系が不溶性のバリアのセットアップを許容する場合、不活性化が可能である。しかしながらそうでない場合は、不活性化は可能ではなく、腐食制御はアノード抑制よりはむしろカソード抑制を介する必要がある。ほとんどの蒸気発生系においては、アノード不活性は磁鉄鉱層(Fe3O4)の形成に由来する。ボイラーにおける不活性化層の記載は、色彩においては濃い黒、砲金グレーから灰色がかった青へと及ぶ。上記層は磁鉄鉱であり;この層とは別に、上記ボイラーチューブはいかなる腐食もまったくない。
【0082】
鉄水系へ量を慎重に制御して添加された場合、分子酸素などの酸化剤は磁鉄鉱形成を加速させる。これが酸化ボイラー水処理の根拠である。このアプローチでの成功は、高度に脱イオン化されるべきである、給水のイオン含量の厳格な制御にある。趣旨は、磁鉄鉱を、磁鉄鉱よりも低い溶解性の水和酸化第二鉄(FeOOH)変換する、溶解酸素を添加することにある。
【0083】
ORPは、ボイラー水(ボイラー排出)および復水においても測定することができる。復水は、酸素の漏れ込みが深刻な腐食の問題を引き起こしうる領域である場合が多い。
【0084】
給水のORP電位は、溶解酸素および酸素報酬剤の両方の濃度による作用である。主に、給水における特定のORP電位を目標とすることにより、酸素の攻撃から系(多くは炭素鋼冶金合金)を守るために必要な正確な捕集剤の量を供給し、適切な不活性および腐食抑制を提供することが可能になる。
【0085】
このコンセプトの主な利点は、給水を継続的に監視することにより、系のアップセットがあった場合に即時に修正措置をとる事が可能である。このように、全ボイラー系が常に適切に処理されることを確保する。溶解酸素値を制御するためだけではなく、系の腐食速度を低減するために余分な捕集剤が供給(不活性酸素捕集剤の場合)される状況もある。
【0086】
費用がかさみ、複雑であり、現在では行えない場合もあるが、リアルタイムの溶解酸素値およびリアルタイムの残留酸素捕集剤を測定することも可能である。工業合金の腐食速度についての推測を依然としてしなければならない。
【0087】
ここで説明されるORPに基づく制御機構下では、警報装置はボイラーの操作者に脱気装置の故障を警告できる。例えば、付加的な捕集剤の供給でORP電位を制御できない場合、タイムアウト警告がある。また、多すぎる捕集剤が汲み上げられている場合、制御ロジックが操作者に警告できる。高性能な制御機構は、ボイラー操作のフル診断制御のためのph、溶解酸素(DO)、ORPおよび残留捕集剤の信号を含みうる。
【0088】
ORP制御機構を採用するには、捕集剤の還元力が変動する際の温度における個々の捕集剤応答を理解することが重要である。系の腐食に付随するORP制御フィロソフィーの係わり合いおよび波及効果も理解される必要がある。
【0089】
図4に、以下に説明するORP研究に用いられる試験装置を示す。一般的には、溶解酸素が機械的に除去される場所であるポンプ34を用いたトレータイプの脱気装置35へ脱イオン水33が供給される。その後、脱気された水に、弁38および39をそれぞれ介してコーステック溶液36および/または酸素捕集剤溶液37を供給することができる。また、酸素捕集剤を直接脱気装置へ添加することもできる。ここで説明される研究用には、コーステック添加によりpHは約9.2に制御される。この試験手順を通じて、装置流速は440ml/分である。
【0090】
その後、いかなる温度にも水を熱することができる10個の熱交換器42へ、主供給ポンプ41により水が供給される。圧力は、沸騰が防止される程度である。これはプリボイラーの環境をシミュレートする(一般的なボイラーではエコノマイザ後)。この一連の試験において、圧力は800psiであり、上記熱交換ラックを出た水の温度は通常は約205℃である。所望であれば、以下に記載されたサンプルセクション45で取られたサンプル水の分析用のサンプル水を注入口サンプル地点40から取ることもできる。
【0091】
ORP試験手順中に、熱交換ラックの後に更なる投薬を行ってもよい。ORP測定用の白金および参照電極を有する高温ORPセル1の直前で、酸素および/または捕集剤(還元剤)を供給してもよい、十分な柔軟性がある。
【0092】
意図的に水に酸素が添加される場合は、空気飽和水または酸素飽和水として添加される。酸素投与の個所は、脱気装置の直後か、高温ECPセルの直前である。
【0093】
高温腐食セル43は、全面および局部の腐食試験を行うためのORPセルの後に取り付けられる。水はクーラー44により減圧および冷却された後、サンプルセクション45を通過する。サンプルセクションには、数々の分析装置がある。それらは、溶解酸素メーター、室温ORPプローブ、導電率プローブおよびpHプローブを含む。ORP応答における溶解酸素および酸素捕集剤(還元剤)の濃度の効果を測定するための、上述したORPセルおよび試験装置の使用、および、温水系における酸素捕集剤供給の制御のためのORPの使用を以下の実施例で説明する。
【実施例】
【0094】
実施例1
還元剤および溶解酸素濃度の変化に対する、高温および低温ORPプローブ応答の比較
図5に、室温(低温)ORPプローブの性能を、上述した実験装置を用いた本発明の高温ORPプローブと比較した一連の試験を示す。図は、異なる溶解酸素およびエリソルビン酸の添加から得られた2つのORP測定を示す。溶解酸素値は、右側のYスケールプロットされている。X軸は日にち単位の時間である。高温(110℃)ORPプローブ応答の階段状変化は、エリソルビン酸または溶解酸素値の変化が生じたときに対応する。低温ORPプローブによる唯一の変化は、溶解酸素値に大きな変化あったときに対応する。図から分かるように、低温ORPプローブ還元剤(この場合、エリソルビン酸)添加の変化には応答しない。
【0095】
図5はまた、低温ORPプローブが溶解酸素値のみに応答するのに対し、高温ORPプローブが過剰な捕集剤の供給にいかに応答するかを示す。低温ORPプローブはまた、高温ORPプローブの応答に比べて遅い。また、低温ORPプローブの応答に関する変化は、高温ORPプローブに見られるものよりも大幅に小さいこともわかる。
【0096】
また、低温ORPプローブは、酸素の減少よりも酸素の増加に対してより応答するように見られ、応答におけるヒステリシスを示す。加えて、低温ORPプローブによって真のORP変化が捉えられていない場合もあり、捉えられても、測定されたORP数の動きは遅く、動きの大きさは小さい。
【0097】
いかなるORPベースの制御体制においても、温度、pH、溶解酸素濃度、および酸素捕集剤の存在を含む径の様々な要因を考慮しなければならない。これらの要因を以下に詳しく述べる。
【0098】
実施例2
ORP測定における温度およびpHの影響
ORP測定の温度は、得られるORP値の判断において重大であると留意することは重要である。例えば、pH(室温)9.2(コーステック調整(caustic adjusted))の水環境において、温度を204℃から121℃に下げると、EPBRE(T)に対して測定した際のORPは数百ミリボルト上昇する。これは、ネルンスト式における要因の、温度の影響の直接的な結果である。温度を上げるとORP数は下がる。
【0099】
ネルンスト式は
【0100】
【数5】
【0101】
を定める。
【0102】
従って、温度は、直接的および比例的に測定電位(E)に影響する。温度が上がるにつれて、電位は下がる(より負だから)。温度は上記式の「T」項に影響するばかりではなく、「z」項(移送された電子の数)および酸化および還元濃度に影響し、それ故上記対数項にも影響する。これが、ORPプローブが温度効果について通常は較正されない理由である。
【0103】
一般的に高温ORPプローブの場合では、1℃の上昇毎にORPは約2.6mVずつ減少する。この変化の大きさ、およびその重要性は、ORPプローブを通貨する流水の温度が変化した場合、ORPのいかなる制御範囲についても見積もる必要がある。
【0104】
pHもまたORPに影響することが知られている。pHが増加するにつれてORPは減少し、この変化の相関的な大きさは室温pHにおいて、1単位毎の増加について約55から65mVであると予想される。この応答もまた、直線的である。
【0105】
実施例3
ORPにおける溶解酸素および酸素捕集剤濃度の影響
ORP数は溶解酸素値が増加するにつれて増加すると予想される。pH=9.2(コーステック添加)の205℃の水において、溶解酸素値を300ppbまで変化させた一連の試験を行った。図6にORP応答を示す。
【0106】
図6は、溶解酸素含有量を直線スケールに示す。これは、少ない量の酸素がいかに劇的にORP数に影響し、より高い溶解酸素値でいかに早くORP数が飽和するかを見るのに有効である。
【0107】
高温ORPプローブは、室温プローブに比べより急勾配に応答し、溶解酸素により平らな応答を示す。高温ORPプローブは、室温ORPプローブよりも大幅に大きい範囲の応答も示す。
【0108】
温水系において腐食を抑制するために用いられる酸素捕集剤は、特定の温水系下では異なる還元能力を有し、独特の還元および酸化平衡をもたらす。例えば、より多くの酸素捕集剤(還元剤)の添加の際にはORPは減少するが、比例的な大きな捕集剤の増加についてはORPの減少はより少なくなる。同様の影響が、溶解酸素の増加についても見られる。
【0109】
これは、それぞれORPの独特な状態につながる。温度、pHおよびORPまたはDO動力学および熱力学的に捕集剤に影響する他のいかなる要因と共にORP状態は変化する。ボイラー給水における還元剤制御のためのORPの使用を以下に説明する。
【0110】
給水のORP電位は、溶解酸素および酸素捕集剤の両方の濃度(上述したもののうち)の作用である。主には給水における特定のORP電位を目標とすることにより、酸素の攻撃から系を守るために必要な、正確な量の捕集剤を供給することができる。
【0111】
この概念における重要な利点は、連続的に給水を監視することにより、系がアップセットした際に即座に修正作業をすることができ、それ故ボイラー計が常に適切に化学的に処理されることを確実にすることができる。また、溶解酸素値を制御するためだけではなく、系の腐食速度を減少させるために過剰な捕集剤が供給される(酸素捕集剤の不活性化の場合)状況もある。
【0112】
実施例4
酸素捕集剤供給のON/OFF制御
この研究において用いられるORPコントローラは、ON/OFF操作および振動周波数比例制御の能力を有するLMI Liquitron DR 500シリーズのORPコントローラ(Liqui-Systems Inc., Madison WI社製)である。ORP信号(4から20mA信号)のデータ記録のアウトプットもある。用いられる還元剤投与ポンプは、LMIポンプ(Electron Metering Pump A78 1-490SI)である。捕集剤のフルPID制御供給を試みる場合は、ヨコガワUT−550コントローラが用いられる。
【0113】
酸素捕集剤は、投与管(quill)を介して脱気装置貯留(storage)部に供給されるか、または脱気装置の出口に供給される。脱気された水に意図的に酸素を添加する際は、酸素飽和水として添加され、投与地点は脱気装置の出口である。
【0114】
還元剤(この場合は酸素捕集剤)は、ORPセットポイントに基づいて供給される。一般的には、ON/OFF制御用にセットポイントはセットされ、制御範囲もセットされる。定義によれば、この制御体制においては、ポンプはONまたはOFFの何れかである。
【0115】
上記制御体制は以下のように取り扱われる。ORPが高すぎる場合は、捕集剤の流れを増加してORPを低下させるためにポンプはオンにされる。ORPはセットポイントまで低下する。セットポイントに到達すると、ポンプはオフになる。セットポイントが−400mVで制御範囲が50mVであると仮定すると、ORPが−400mVまで減少するとポンプはオフになる。上記例においては、ORPの示度が−350mVを超えた場合のみポンプはオンに戻る。(−400mV+50mV=セットポイント+制御範囲)
【0116】
例として、亜硫酸塩を添加される捕集剤/還元剤として用いる。LMIポンプを用い、47ml/分のポンプ能力において亜硫酸塩溶液をプリボイラー装置に供給する。標準装置水を脱気し、脱イオン水はコーステックを添加することによりpHを9.2に調整した。
【0117】
この場合は、脱気装置の出口に亜硫酸ナトリウム、酸素捕集剤および溶解酸素が供給された。捕集剤を供給しなければ、溶解酸素値のベースラインは140ppbであった。試験をし、ORPを図7に示される制御ボックスの範囲内に維持するために、亜硫酸塩ポンプのスイッチをオンおよびオフした。
【0118】
図から分かるように、制御バンドについては、酸素のブレイクスルーの後に続く亜硫酸塩による溶解酸素の捕集に関連する大きなORP変化がある。系のラグタイムおよびORPプローブ応答がORPの激しい動きにつながる。
【0119】
もし溶解酸素の進入事象の持続時間が、薬品が供給されてから導入された薬品の効果が発揮されるまでのラグタイムよりも短い場合は、DOスパイクを捉え、化学的に中和することはできないであろう。この場合、酸素スパイクはORPプローブを通過し、更なる還元剤が供給に際する後のORPスパイクの減少が続き、これがORPプローブへ到達する。
【0120】
捕集剤が溶解酸素と反応する十分な機会を与えられるサンプルポイントがあるはずである。どうやら、いかなる捕集剤が供給されても、ORPをセットポイントまで減少させられる必要がある。これを阻害するいかなるものは、制御哲学を混乱させる。この状態は、捕集剤が動力学的にORP数を減少させられないポイントにおいてのみサンプルポイントが得られる場合に発生し得る。この場合は、溶解酸素値はより高いかもしれないが、より下流でDOの所望量を最終的に捕集するために十分な還元剤が存在するようにORP制御ポイントが選択される。
【0121】
脱気装置における酸素進入は、捕集反応の持続時間が異なること以外は脱気後のDO漏れと同様である。捕集剤供給時間も異なる。
【0122】
大きなDOバックグラウンドがある場合は、ORP対DO滴定曲線の急勾配の部分でORP制御は行われる。特にDOブレイクスルー時間に対してラグタイムが長い場合、小さいDO変化で大きなORP変動が期待される。
【0123】
ORPに影響する他の全ての変動するものがどのように変化するかを知ることは重要である。コンピュータ制御体制においては、他の要因を測定することができ、ORP制御アルゴリズムに考慮することができる。
【0124】
ON/OFF供給におけるORP変動は、複数のものに関連付けられる。
それらは以下を含む:
1.セットポイント
2.制御範囲
3.循環ORP変動間の時間は、持続時間と共に変動する。もし薬品が長時間系内に滞留すると、循環変動は長くなる。インライン給水変動がより短いON/OFFサイクルタイムをもたらす。
4.ORPの変動は、DOブレイクスルーおよび捕集剤の作用が喚起される前に到達するDO数によりアップサイドに変動し、DOへの捕集効果がある。ダウンサイドの変動は、DO在庫が捕集された後、またはDOが減少し、かつ過剰還元剤があるときの系内の捕集剤の濃度と共に変動する。関連する酸化剤および還元剤の濃度は、特定の還元剤の捕集剤としての潜在能力と同様に論点(of issue)である。
【0125】
発生するDOブレイクスルーの量は、捕集剤の存在なしの場合のDOの絶対値および系がDOと反応するための時間および存在する捕集剤濃度に依存する。系変動において達成されるのは、動力学的および熱力学的な平衡である。
【0126】
上記試験手順においては、最悪な場合のシナリオの制御試みられたことを指摘しなければならない。機能する脱気装置の存在下ではフィールドにおいては期待されない、フルで一定なDOベースラインがある。
【0127】
いかなる特定の系にも多すぎる捕集剤が供給されないようにポンプリミッタおよび警告について慎重に考慮しなければならない。
【0128】
ON/OFF制御が好調に機能する1つの用途は、ベースラインの捕集剤を提供する1つのポンプと、「アップセット」状態におけるORP数を低く維持するための余分に必要な捕集剤を提供するほかのポンプヘッドがある場合である。そのような1つのアップセット状態は、瞬間的に比較的多くの量の脱気水が脱気装置から「要求された」場合に生じうる。これはある系においては短時間の高溶解酸素値につながり得る。この場合、ON/OFF制御ポンプヘッドは捕集剤添加のための調整ポンプとして用いられる。
【0129】
実施例5
酸素捕集剤供給のPID制御
酸素捕集剤供給は、PID制御アルゴリズム(またはこの場合はPI制御アルゴリズム)を用いても制御可能である。PID制御は、比例的、相対的および誘導体の制御を支持する。PID制御アルゴリズムは、様々な用途に用いられ、とりわけ加熱および冷却サイクルに用いられる。ヨコガワ550PIDコントローラが、この研究に用いられている(Yokogawa, Newnan, GA, USA)。
【0130】
最初のステップは、ORPプローブ信号を高入力インピーダンスへ、低入力インピーダンスコンバータへ送ることである。この信号はその後ヨコガワコントローラへ送られ、コントローラはLMIポンプをセットポイントへ駆動するために用いられる。
【0131】
LMI ORPコントローラからの4から20mAの出力は、ヨコガワPIDコントローラの入力として用いられる。4から20mAの出力信号はその後PIDコントローラからLMIポンプへと送られる。
【0132】
ORP信号はPIDコントローラへ直接送られるのが理想である。好ましくは、PIDコントローラは警告、ポンプリミッタ等およびデータ記録装置、データ表示機および供給ポンプ用の信号提供装置などの内在素性を有する。
【0133】
PIDパラメータは、開ループチューニングを用いて展開されることが好ましい。重要なのは、ラグタイムと、通常の作動におけるORP信号の変化の最大速度である。P、IおよびDパラメータの算出手順を以下に示す。
【0134】
最初に、いかなる捕集剤の供給なしでORP信号を上昇させる。この実験では、ORP数は140ppbDOベースライン状態により駆動された。いったんORPが安定したら、捕集剤供給ポンプの100%速度で系に捕集剤を供給する。これはその用途において可能な捕集剤の最大供給速度に相当する。
【0135】
図8に示すように、捕集剤ポンプが100%速度にセットされてからORP値の最初の減少が見られるまでの時間から生じるラグタイム「L」がある。距離「LR」は図8に示すように構成することができる。ORP曲線の最大変化速度は、酸素捕集剤ポンプがオンにされ、100%にセットされた時間から推測される。
【0136】
開ループ制御機構においては:P=100LR/1.25スケール(LRはmVで与えられ、スケールはmVで与えられる);I=2L(Lは秒で);およびD=0.5L(Lは秒で)。よって、D=1/4Iである。PID制御においては、Pの増加、Dの減少およびIの増加は、応答をより鈍感にする。
【0137】
実施例6
脱気装置への亜硫酸塩供給のPID制御
この試験においては、脱気管を介して脱気装置へ亜硫酸塩を供給された。PIDパラメータ開ループチューニング法を用いてP=833;I=1612;d=403として計算された。ORP制御ポイントは−400mVにセットされた。ベースラインDO値は、脱気後の酸素飽和水をポンピングすることにより達成された140ppbである。上記PIDパラメータでPIDコントローラをセットし、フルPID制御された捕集剤の供給を行った結果を図9に示す。
【0138】
図から分かるように、コントローラはORPをセットポイントにし、そこに維持する。コントローラが系をセットポイントにするのにかかる時間は、多くのものの作用であり、捕集剤生成物の濃度が制御変動の1つである。この場合、捕集剤生成物はとても希釈されている。この場合、行き過ぎ量はないことが分かる。これは優れた安定状態制御である。PIDパラメータを適切に変動させると、系変動に基づく応答時間を増加させることができる。
【0139】
実施例7
脱気装置の出口への亜硫酸塩供給のPID制御
脱気装置の出口への亜硫酸塩の供給のPID制御は、新たな開ループチューニングパラメータを用いて行われる。脱気装置の出口において供給される140ppbのDOベースラインを減少させるために装置に希釈亜硫酸ナトリウム溶液を供給する。図10にORP制御および得られた系の応答を示す。ORPは205℃で測定された。セットポイントについてのORP制御は、これらの要求の厳しい状態下で優れている。この場合、溶解酸素は1時間以内に取り除かれた。行き過ぎた量のORPが1サイクルある。この場合、蒸気安定状態相におけるポンプの出力の平均は9.6%であった。これは、供給された亜硫酸塩のほぼ100%の消費に一致する。
【0140】
実施例8
脱気装置へ亜硫酸塩を供給中の系の溶解酸素濃度の変化の効果
PID制御下における、脱気装置への亜硫酸塩供給中の系の溶解酸素濃度の変化をこの例で説明する。図11に試験された3つの状態を示す。3つの範囲は、「DO供給」;「DO OFF」;および「DO OFF亜硫酸塩OFF」としてマークされている。一番目の領域では、DO供給(140ppbベースライン)がされている。その後、二番目の領域では追加のDO供給がオフにされ、最終的に三番目の領域では捕集剤供給がオフにされて装置はPID制御から外される。この場合、(PIDアルゴリズムにおける)Pパラメータ開ループチューニング法から計算されたものから減少する。これはセットポイントへ向けた動きを増加させるが、行き過ぎ量の領域が生じ、行き過ぎ量になる。このことはPID制御された系では一般的である。
【0141】
図から分かるように、変化後の1サイクルにおいては、−400mVでのORP制御が達成されている。PID制御手順におけるPパラメータの減少に伴い、行き過ぎ量の領域が1つと、行き過ぎ量ではない領域が1つある。系にDOが汲み上げられているときの亜硫酸塩供給ポンプは約24%の速度でオンであり、試験装置への追加DOが添加されていないときは平均速度2.3%でオンである。どちらの場合においても、−400mVでのORP制御は達成されている。ORP制御はセットポイントの10mV以内であり、それは非常に優れた制御である。
【0142】
三番目の領域では、系として−400mVを超えるORPの増加は、PID制御から外され、亜硫酸塩供給は停止され、脱気装置の溶解酸素値のベースラインは達成される。
【0143】
カルボヒドラジドおよびエリソルビン酸捕集剤供給が添加された試験においても同様に優れたORP制御が観測され、ORPに同様に影響する全ての薬品に作用することが推測される。
【0144】
実施例9
カルボヒドラジド供給のPID制御
コーステックおよび酸素散布水がプリボイラー装置に供給された場合、現状では、ORP数は140ppbDO環境でのEPBRE(T)に対して+100mVから+200mVの階級である。DO添加なしでの過剰な多くのカルボヒドラジドの供給は高いTのORPを、205℃におけるEPBRE(T)に対して約−650mVに降下させる。
【0145】
この試験中に、添加DO供給がオフにされた(図12参照)。よって、脱気水と共に持ち込まれたDO(一般的には2から4ppb)以外には、装置への意図的なDO供給はない。意図的なDO供給がないグラフの部分に用いられるPIDパラメータは、140ppbDOベースラインの場合:P=250;I=720;D=180である。
【0146】
図12に、達成されたORP制御および得られたプローブ応答を示す。このセットポイントにおいては、DO供給があってもなくてもORPは良好に制御されている。図から分かるように、DOがオフにされるとORPは減少する。その後カルボヒドラジド供給ポンプは必要な量よりも少ないカルボヒドラジドを供給する。安定なORP体制においては、DOをオフにした後カルボヒドラジドポンプの出力の平均は0.68%に下がる。この減少は、低いORP値を維持するためのより少ない捕集剤の添加の必要として推測される。
【0147】
実施例10
ORPセットポイントの選択
任意のORP制御機構において用いられるセットポイントは、水化学およびプラント制御哲学を含む系変動に基づいて実験的に決められる。制御哲学における決定は、酸化水処理が用いられるかや、特定のプラント力学などの工学合金の冶金に依る。化学的な構成要素は、用いられる還元剤、温度、pH、溶解酸素等を含む。
【0148】
添加された酸素または酸素捕集剤に対する系の応答およびORPによる測定は、これらだけではないが、酸素捕集剤投与地点、ORP監視地点、系のラグタイム、用いられる酸素捕集剤、用いられるORPプローブ、および関連したパラメータおよびチューニングアルゴリズムを含む用いられるコントローラを含む複数の要因に左右される。
【0149】
亜硫酸ナトリウムおよびコーステックが供給される脱イオン水系のORPセットポイントの決定をこの例で説明する。ORP測定は204℃(400°F)で生じる。任意の工業系において、ボイラー給水の工業合金(この場合は炭素鋼)の腐食を最小にすることが主な目的である。一般的には、溶解酸素からの局部的な点食攻撃に関する懸念がある。通常の腐食速度(均一な物質消耗)も低くあるべきである。下記の機構では、点食電位の決定には周期分極試験(溶液抵抗についての補償を伴う)が用いられ、通常の腐食速度試験にはインピーダンス試験が用いられる。
【0150】
図13に考慮されるべき情報の数々を示す。まず、左端の軸は204℃で測定された、EPBREに対する(mVでの)ORP数範囲である。+300mVから−600mVの数が示されている。また、水中に140ppbの溶解酸素がある場合のORP数の概略位置も上記軸上に示されている。ORP範囲はその後一般的には<10ppbの溶解酸素を水中に残留させる、機械的にほとんどの溶解酸素を除去する良好な脱気装置を通した水について与えられる。
【0151】
次のORP数の範囲は、温度におけるORPプローブが行われた試験について600mVの動きを示すのに対し、室温ORPプローブは90mVの範囲しか示さないことを明らかにする。
【0152】
グラフのその次のセクションは、0から2500の範囲の数で「残留亜硫酸塩(ppbDO捕集剤相当)」を示す。このグラフは、良好な脱気水中において亜硫酸塩の量が増加するにつれてORPがいかに変動するかを示す。この場合、水のpHは9.2である(コーステック添加により達成)。よって、例えば、付加的な60ppbのDOを捕集可能な余分な亜硫酸塩濃度を提供するために十分な亜硫酸塩が添加されれば、−500mVのORPが測定される。余分な還元剤の増加の量として見られるように、その後ORP数は減少する。これは予期されたものである。
【0153】
図の最後の部分は、この亜硫酸塩およびコーステック環境における炭素鋼の腐食性能の腐食地図を提供する。炭素鋼のECP(自由腐食電気化学電位)を等価のORP数用に示す。腐食電位が−672mV(対EPBRE)を超えると、炭素鋼は点食し、高い電位では点食攻撃が悪化することが分かった。すなわち、形成される点食は、自動的に繁殖する。任意に、点食の「信頼線」を−672mV線の約100mV下に引いた。点食の発生機会をなくすためには系はこの線の下で作動されるべきであることを暗示する。この「パズル」の最終部は、「低全面腐食」として示された領域である。ここでは、炭素鋼の腐食速度が最も低いことが分かった。この場合、約0.2mpy(1年につきミリインチ)または1年につき約5ミクロンである。
【0154】
よって、この場合、ORP制御が低い炭素鋼腐食速度を得るにセットアップされた場合、このボイラー給水系においては、−400mVよりも小さいORPセットポイントが適切であり、−500mVよりも小さいセットポイントがさらによい。
【0155】
炭素鋼自身の腐食電位は、動的な系において捕集剤供給制御へのECP数の応答が遅すぎるため、捕集剤供給制御に用いることはできない。また、電極の分極に関する問題もある。
【0156】
任意のORPに基づいた制御パッケージは、ここに説明された方法および装置を用いて展開することができる。これはハードウエアおよびソフトウエアを含む。最初のユニットは、ORP監視装置のみという単純なものでもよく、その後にORP制御装置、さらにORPに基づく完全自動化された還元剤供給制御のための統合ORP、pH、温度装置が続いてもよい。最終的な装置はスマートデバイスであるため、ORPアップセットおよびpH制御問題に帰する場合のあるアップセットを検出し、酸化剤/還元剤の平衡変化を検出しない。そのような系は、捕集剤供給ポンプの調整は行わない場合もある。そのような系は、捕集剤から酸素への反応はpHにより影響を受けることを知りながら捕集剤投与量ポンプを調整する程度に十分に知的な場合がある。ORP制御点は、このように捕集を最適化するように変動する場合がある。より複雑な系においては、低い腐食応答を提供するセットポイントへORPを調整するために、含蓄された含蓄腐食も考慮に入れてもよい。腐食情報は、実験データから局所的に生成または、推測することができる。
【0157】
上述した装置および方法を用いて、我々は工業用ボイラー系の効果的な腐食制御は、銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極に対する、温度および圧力で測定されたORPが400°Fにおいて約−0.7Vから約−0.3Vの範囲内に維持されるように系へ酸素捕集剤を添加することにより好ましく実現できることを見出した。
【0158】
一態様においては、酸素捕集剤は、工業用ボイラー給水および復水系へ添加される。
【0159】
pHが約8から約10であり、亜硫酸ナトリウムが酸素捕集剤として採用されている、全炭素鋼給水および復水系については、銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極(0.1NのKCl充填溶液)に対する、ORPを400°Fにおいて約−0.65Vから約−0.5Vの範囲内に維持することにより、効果的な腐食制御が好ましく達成される。
【0160】
pHが約8から約10であり、カルボヒドラジドが酸素捕集剤として採用されている、全炭素鋼給水および復水系については、銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極(0.1NのKCl充填溶液)に対する、ORPを400°Fにおいて約−0.6Vから約−0.45Vの範囲内に維持することにより、効果的な腐食制御が好ましく達成される。
【0161】
pHが約8から約10であり、エリソルビン酸が酸素捕集剤として採用されている、全炭素鋼給水および復水系については、銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極(0.1NのKCl充填溶液)に対する、ORPの範囲を400°Fにおいて約−0.6Vから約−0.35Vに維持することにより、効果的な腐食制御が好ましく達成される。
【0162】
pHが約8から約10であり、銅を含有する混合冶金給水および復水系については、銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極(0.1NのKCl充填溶液)に対する、ORPの範囲が400°Fにおいて約−0.65Vから約−0.5Vの範囲内に維持するように、酸素捕集剤が好ましく添加される。pHを約8.8から約9.2に調整すると、銅腐食速度が減少する。
【0163】
含酸素水処理の化学的な要件を満たす全鉄工業用ボイラー系では、銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極(0.1NのKCl充填溶液)に対する、ORPを400°Fにおいて約0Vから約0.3Vの範囲内に維持するように系へ酸素を添加することにより、効果的な腐食制御が好ましく行われる。
【0164】
一般的に酸素捕集剤は、液体の形で温水系へ供給される。ほとんど又は全く脱気されていない系へ亜硫酸塩は添加されることもあるが、通常捕集剤はいくらかの機械的な脱気が行われた後に温水系へ添加される。最良の手順は、捕集剤が脱気貯蔵部又は温水貯蔵タンクへ供給されることを指示する。ここでは、水は既に機械的に脱気されており、化学酸素捕集剤はボイラー給水として用いられる前に、残りの溶解酸素と反応するための時間が与えられる。しかしながら捕集剤は、ボイラー給水配管自体又は復水領域へ供給されてもよい。
【0165】
酸素捕集剤は、通常温水系に添加される他の化学的なもの(chemistries)と混合されて用いてもよい。これらは、スケールを減少する、およびボイラーの製造に用いられる工業合金の腐食を防止するための薬品を含む。このような化学的なものは(これらに限定されないが)、リン酸前記、ホスホン酸塩、キレート剤(chelants)、ポリマー、アミン、フィルマー(filmers)、消泡、pH制御剤等を含む。多機能の生成物をボイラー系へ予め混合する、又は個々に添加してもよい。
【0166】
特許請求の範囲に既定された本発明の概念および範囲を逸脱することなく、個々に説明された本発明の方法の構成、操作および配置についての変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】図1は、据え付けられた白金電極アセンブリ2および銀/塩化銀参照電極アセンブリ4および熱電対3が示された、酸化還元電位(ORP)測定セルの概略図である。
【図2】図2は、銀/塩化銀参照電極アセンブリの概略図である。
【図3】図3は、白金プローブアセンブリの概略図である。
【図4】図4は、処理水の酸化還元電位に基づいて酸化剤または還元剤の供給の制御を調査するために用いられる試験装置の概略図である。
【図5】図5は、還元剤(エリソルビン酸)および溶解酸素の濃度に対する高温ORPプローブレスポンスおよび低温ORPプローブレスポンスのプロットである。
【図6】図6は、pH9.2および205℃における脱イオン水流の溶解酸素濃度(ppb)に対するORP(対SHE(25℃)(V))のプロットである。
【図7】図7は、亜硫酸塩ON/OFF試験中の、時間に対するORP(対飽和KCl/AgCl/Ag電極)のプロットである。この図においては、コントロールバンドはクロス模様のボックスとして示されている。
【図8】図8は、温水系への亜硫酸塩の供給を制御するためのPIDパラメータを決定するためにオープンループ調整法が用いられた実験の、時間に対するORP(対飽和KCl/AgCl/Ag電極)のプロットである。
【図9】図9は、脱気装置の出口への亜硫酸塩の供給を制御するためにオープンループ調整(PID(P=999.9、I=644、D=161))が用いられた実験の、時間に対するORP(対飽和KCl/AgCl/Ag電極)のプロットである。
【図10】図10は、脱気装置への亜硫酸塩の供給を制御するためにオープンループ調整(PID(P=833、I=1612、D=403))が用いられた実験の、時間に対するORP(対飽和KCl/AgCl/Ag電極)のプロットである。
【図11】図11は、脱気装置への亜硫酸塩の供給を制御するためにオープンループ調整(PID(P=833/4、I=1612、D=403))が用いられた、溶解酸素アップセット実験の、時間に対するORP(対飽和KCl/AgCl/Ag電極)のプロットである。ORPの設定ポイントは−400mVである。
【図12】図12は、脱気装置の出口へのカルボヒドラジドの供給を制御するためにオープンループ調整(PID(P=250、I=720、D=180))が用いられた実験の、時間に対するORP(対外部圧力平衡参照電極0.1NのKCl/AgCl/Ag電極)のプロットである。ORPの設定ポイントは−500mVである。
【図13】図13は、亜硫酸ナトリウムおよびコーステックが系に添加される実験における、最適な腐食制御のためのORP設定ポイントを決定するために用いられるORP(204℃においてEPBREに対して測定した)腐食地図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)系の温度、圧力およびpHにおいて系の有効な腐食抑制に適した酸化還元電位の範囲を決定すること;
(ii)温度および圧力において上記系内の上記水の酸化還元電位を測定すること;および
(iii)上記水の酸化還元電位を既定の酸化還元電位の範囲内に維持するために酸素または酸素捕集剤を上記系へ添加することを含む温水系において有効な腐食抑制量の酸素捕集剤または酸素を維持する方法。
【請求項2】
上記温水系が工業用ボイラー系であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸素捕集剤が上記温水系へ添加されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記酸化還元電位の範囲が400°Fにおいて、対銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極で、約―0.7Vから約―0.3Vであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記酸素捕集剤がヒドラジン、亜硫酸ナトリウム、カルボヒドラジド、N,N−ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキノン、エリソルビン酸塩、メチルエチルケトキシム、ヒドロキシルアミン、タルトロン酸、エトキシキン(ethoxyquin)、メチルテトラゾン(methyltetrazone)、テトラメチルフェニレンジアミン、セミカルバジド、DEAE2−ケトグルコン酸塩、N−イソプロピルヒドロキシルアミン、アスコルビン酸、没食子酸およびヒドロキシアセトンから成る群から選択されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記酸素捕集剤が工業用ボイラー給水および復水系へ添加されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
上記給水および復水系は、pH約8から約10の全炭素鋼系であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記酸素捕集剤が亜硫酸ナトリウムであり、上記酸化還元電位の範囲が400°Fにおいて、対銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極(0.1NのKCl充填溶液)で、約―0.65Vから約―0.5Vであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記酸素捕集剤がカルボヒドラジドであり、上記酸化還元電位の範囲が400°Fにおいて、対銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極(0.1NのKCl充填溶液)で、約―0.6Vから約―0.45Vであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
上記酸素捕集剤がエルソルビン酸であり、上記酸化還元電位の範囲が400°Fにおいて、対銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極(0.1NのKCl充填溶液)で、約―0.6Vから約―0.35Vであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
上記給水および復水系は、pH約8から約10の銅を含む混合冶金系であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項12】
上記酸化還元電位の範囲がpH約9.2から約9.5、400°Fにおいて、対銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極(0.1NのKCl充填溶液)で、約―0.65Vから約―0.5Vであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記工業用ボイラー系がpH約9.2から約9.5の全鉄系であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項14】
酸素が上記系へ添加されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
上記酸化還元電位の範囲が400°Fにおいて、対銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極(0.1NのKCl充填溶液)で、約0Vから約0.3Vであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(i)系へ有効な腐食抑制量の酸素または1つ以上の酸素捕集剤を添加すること;
(ii)温度および圧力において上記系内の上記水の酸化還元電位を測定すること;および
(iii)測定された上記水の酸化還元電位に基づいて、系における有効な量の酸素または酸素捕集剤を維持するために酸素または酸素捕集剤を上記系へ添加することを含む温水系の金属表面の腐食を抑制する方法。
【請求項17】
上記酸化還元電位の測定および酸素または酸素捕集剤の添加は、連続的に行われることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
上記酸化還元電位の測定および酸素または酸素捕集剤の添加は、断続的に行われることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
(i)系の温度、圧力およびpHにおいて系の有効な腐食抑制に適した酸化還元電位の範囲を決定すること;
(ii)上記系の酸化還元電位を既定の酸化還元電位の範囲内にするために酸素または1つ以上の酸素捕集剤を上記系へ添加すること;
(iii)上記系内の水の酸化還元電位を連続的または断続的に測定すること;および
(iv)測定された系の酸化還元電位を既定の範囲内に維持するために酸素または酸素捕集剤を添加することを含む温水系の金属表面の腐食を抑制する方法。
【請求項20】
2つの熱電対と、銀−塩化銀参照電極と、白金電極とを有する、温度および圧力において温水系における流水の流れの酸化還元電位を測定するためのセルであり、
一方の熱電対は上記セルの温度を測定し、もう一方の熱電対は上記銀−塩化銀参照電極の冷接点温度を測定することを特徴とするセル。
【請求項1】
(i)系の温度、圧力およびpHにおいて系の有効な腐食抑制に適した酸化還元電位の範囲を決定すること;
(ii)温度および圧力において上記系内の上記水の酸化還元電位を測定すること;および
(iii)上記水の酸化還元電位を既定の酸化還元電位の範囲内に維持するために酸素または酸素捕集剤を上記系へ添加することを含む温水系において有効な腐食抑制量の酸素捕集剤または酸素を維持する方法。
【請求項2】
上記温水系が工業用ボイラー系であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸素捕集剤が上記温水系へ添加されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記酸化還元電位の範囲が400°Fにおいて、対銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極で、約―0.7Vから約―0.3Vであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記酸素捕集剤がヒドラジン、亜硫酸ナトリウム、カルボヒドラジド、N,N−ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキノン、エリソルビン酸塩、メチルエチルケトキシム、ヒドロキシルアミン、タルトロン酸、エトキシキン(ethoxyquin)、メチルテトラゾン(methyltetrazone)、テトラメチルフェニレンジアミン、セミカルバジド、DEAE2−ケトグルコン酸塩、N−イソプロピルヒドロキシルアミン、アスコルビン酸、没食子酸およびヒドロキシアセトンから成る群から選択されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記酸素捕集剤が工業用ボイラー給水および復水系へ添加されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
上記給水および復水系は、pH約8から約10の全炭素鋼系であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記酸素捕集剤が亜硫酸ナトリウムであり、上記酸化還元電位の範囲が400°Fにおいて、対銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極(0.1NのKCl充填溶液)で、約―0.65Vから約―0.5Vであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記酸素捕集剤がカルボヒドラジドであり、上記酸化還元電位の範囲が400°Fにおいて、対銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極(0.1NのKCl充填溶液)で、約―0.6Vから約―0.45Vであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
上記酸素捕集剤がエルソルビン酸であり、上記酸化還元電位の範囲が400°Fにおいて、対銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極(0.1NのKCl充填溶液)で、約―0.6Vから約―0.35Vであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
上記給水および復水系は、pH約8から約10の銅を含む混合冶金系であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項12】
上記酸化還元電位の範囲がpH約9.2から約9.5、400°Fにおいて、対銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極(0.1NのKCl充填溶液)で、約―0.65Vから約―0.5Vであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記工業用ボイラー系がpH約9.2から約9.5の全鉄系であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項14】
酸素が上記系へ添加されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
上記酸化還元電位の範囲が400°Fにおいて、対銀/塩化銀外部圧力平衡参照電極(0.1NのKCl充填溶液)で、約0Vから約0.3Vであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(i)系へ有効な腐食抑制量の酸素または1つ以上の酸素捕集剤を添加すること;
(ii)温度および圧力において上記系内の上記水の酸化還元電位を測定すること;および
(iii)測定された上記水の酸化還元電位に基づいて、系における有効な量の酸素または酸素捕集剤を維持するために酸素または酸素捕集剤を上記系へ添加することを含む温水系の金属表面の腐食を抑制する方法。
【請求項17】
上記酸化還元電位の測定および酸素または酸素捕集剤の添加は、連続的に行われることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
上記酸化還元電位の測定および酸素または酸素捕集剤の添加は、断続的に行われることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
(i)系の温度、圧力およびpHにおいて系の有効な腐食抑制に適した酸化還元電位の範囲を決定すること;
(ii)上記系の酸化還元電位を既定の酸化還元電位の範囲内にするために酸素または1つ以上の酸素捕集剤を上記系へ添加すること;
(iii)上記系内の水の酸化還元電位を連続的または断続的に測定すること;および
(iv)測定された系の酸化還元電位を既定の範囲内に維持するために酸素または酸素捕集剤を添加することを含む温水系の金属表面の腐食を抑制する方法。
【請求項20】
2つの熱電対と、銀−塩化銀参照電極と、白金電極とを有する、温度および圧力において温水系における流水の流れの酸化還元電位を測定するためのセルであり、
一方の熱電対は上記セルの温度を測定し、もう一方の熱電対は上記銀−塩化銀参照電極の冷接点温度を測定することを特徴とするセル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2007−512437(P2007−512437A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541303(P2006−541303)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/038253
【国際公開番号】WO2005/052213
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(503270032)ナルコ カンパニー (22)
【氏名又は名称原語表記】NALCO COMPANY
【住所又は居所原語表記】1601 W.Diehl Road,Naperville,IL 60563−1198,United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/038253
【国際公開番号】WO2005/052213
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(503270032)ナルコ カンパニー (22)
【氏名又は名称原語表記】NALCO COMPANY
【住所又は居所原語表記】1601 W.Diehl Road,Naperville,IL 60563−1198,United States of America
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]