説明

温水装置

【課題】浴槽に湯水が存在しない場合であっても、ドレイン配管内の凍結防止を効率良くかつ適切に図ることが可能な温水装置を提供する。
【解決手段】温水装置WHは、熱交換器を利用した熱回収に伴って発生したドレインを所定の排水箇所に導くためのドレイン配管6が風呂配管7A内に差し込まれた二重管構造部Dを有しており、凍結判断用の温度検出手段によって検出される温度が所定温度以下であるときに、ドレイン配管6の凍結防止動作として、風呂配管7A内に湯水を供給し、二重管構造部Dにおいてドレイン配管6を前記湯水により加熱させる動作を実行させる制御手段4を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼ガスなどの加熱用媒体から熱交換器を利用して熱回収を行なうことにより湯水加熱を行ない、かつ熱回収に伴って発生するドレインの排水を適切に行なうことが可能とされた温水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の温水装置の一例として、特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された温水装置は、燃焼器により発生された燃焼ガスから熱交換器を利用して顕熱および潜熱を回収し、湯水加熱を行なうように構成されている。燃焼ガスから潜熱回収を行なうと、酸性のドレインが発生するが、このドレインは、中和器を利用して中和されてからドレイン配管を利用して温水装置の外部に導かれるようにされている。一方、前記温水装置は、浴槽への湯張り給湯や風呂追い焚きを行なうための2本の風呂配管も備えており、前記ドレイン配管は、それら2本の風呂配管の外面に沿うようにして浴室内に引き込まれ、浴室の排水口にドレインを排出することが可能に設けられている。
【0003】
また、前記文献には、冬季などにドレイン配管内が凍結することを防止するための手段も記載されている。この手段においては、浴槽の湯水が存在するときには、この浴槽の湯水を利用してドレイン配管を加熱する一方、浴槽内に湯水が存在しないときには、ドレイン貯留部などに設けられたヒータを利用して、ドレイン配管を加熱する(同文献の段落〔0054〕)。
【0004】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0005】
すなわち、ドレイン配管をたとえば温水装置から浴室内に引き込む場合、装置外部に位置するドレイン配管の長さがかなり長くなる場合が多い。このようにドレイン配管が長い場合において、その内部の凍結を適切に防止するには、ドレイン配管の各部を加熱する必要がある。たとえば、ドレイン配管の上流側の箇所を部分的に加熱したとしても、ドレイン配管の下流側部分が加熱されなければ、この下流側部分に残留するドレインが凍結する。これでは、詰まりを生じることとなって、ドレインの円滑な排水が困難となる。これに対し、前記従来技術においては、浴槽に湯水が存在しないときには、電熱式などのヒータを利用してドレイン配管を加熱するが、このようなヒータを用いた加熱方式では、ドレイン配管の全長寸法が長い場合に、このドレイン配管の各所を効率良く加熱することは困難である。ヒータをドレイン配管の略全長域に沿わせて多数設けることも考えられるが、このような手段を採用したのでは、ヒータの部品コストが高価となるばかりか、ヒータの消費電力が多大となり、ランニングコストも高価なる。このように、前記従来技術においては、浴槽湯水が存在しない場合に、ドレイン配管内の長い寸法領域を効率良く加熱することは困難であり、凍結防止を合理的に図る上で苦慮するものとなっていた。
【0006】
【特許文献1】特開2006−112763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、浴槽に湯水が存在しない場合であっても、ドレイン配管内の凍結防止を効率良くかつ適切に図ることが可能な温水装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面により提供される温水装置は、加熱用媒体から熱回収を行なうことにより湯水加熱を行なうための熱交換器と、前記熱回収に伴って発生したドレインを所定の排水箇所に導くためのドレイン配管と、浴槽への湯張り給湯および風呂追い焚き動作の少なくとも一方を行なうための風呂配管と、を備えている、温水装置であって、前記ドレイン配管が前記風呂配管内に差し込まれた二重管構造部、および前記ドレイン配管が前記風呂配管の外面に沿うようにしてこれらの配管が束ねられた束状配管部のいずれか一方と、前記ドレイン配管内に凍結を生じる可能性があるか否かの判断を行なうための温度検出手段と、この温度検出手段によって検出される温度が所定温度以下であるときに、前記ドレイン配管の凍結防止動作として、前記風呂配管内に湯水を供給し、前記二重管構造部または前記束状配管部において前記ドレイン配管を前記湯水により加熱させる動作を実行させる制御手段と、を備えていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、風呂配管内に湯水供給を行なうことにより、二重管構造部または束状配管部において前記ドレイン配管の長い寸法領域を効率良く加熱し、ドレイン配管内の凍結防止を適切に図ることができる。従来技術とは異なり、浴槽に湯水が存在しない場合のドレイン配管の加熱手段として、電熱式のヒータを設ける必要を無くし、または少なくすることができるために、装置の製造コストやランニングコストも低減することができる。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記風呂配管は、前記浴槽の湯水を風呂用ポンプの駆動により一定の経路で循環流通させつつ、別途設けられた加熱手段により加熱して前記浴槽に戻すことが可能な風呂追い焚き用の湯水循環路を構成しており、前記制御手段の制御モードとしては、前記浴槽に所定量以上の湯水が存在し、前記風呂配管内が凍結する可能性があると判断したときに、前記風呂用ポンプを間欠的または連続的に駆動させる風呂凍結防止モードがあり、前記制御手段が前記風呂凍結防止モードであるときには、前記ドレイン配管の凍結防止動作としての風呂配管への湯水供給は実行されないように構成されている。
【0012】
このような構成によれば、風呂追い焚き用の湯水循環路に浴槽の湯水を循環させることによってドレイン配管内の凍結防止が図られている際に、風呂配管に湯水が無駄に供給されることが適切に回避される。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記風呂配管への湯水供給は、所定のインターバルを経て間欠的に複数回にわたって繰り返し実行されるように構成されており、前記風呂配管への1回当たりの湯水供給量、および前記インターバルの時間の少なくとも一方は、前記風呂配管に供給される湯水の温度、外気温、またはその他の所定の項目の値に応じて変更されるように構成されている。
【0014】
このような構成によれば、風呂配管に供給される湯水の温度やその他の情況に対応させて、ドレイン配管の凍結防止を図るのに適した湯水供給量またはインターバル時間で風呂配管に湯水供給を行なわせることができる。したがって、凍結防止に利用される湯水の消費量を少なくしつつ、ドレイン配管内の凍結防止を的確に図ることが可能となる。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記加熱用媒体としての燃焼ガスを発生させる燃焼器を備えており、かつこの燃焼器の燃焼駆動が規制されているときには、前記ドレイン配管凍結防止動作としての風呂配管への湯水供給が行なわれる際に、非加熱の湯水が用いられるように構成されている。
【0016】
このような構成によれば、燃焼器の燃焼駆動が規制されている場合であって、燃焼器によって加熱された高温の湯水を風呂配管に供給することができない場合であっても、非加熱の湯水を利用して、ドレイン配管内の凍結を防止または抑制することが可能となる。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記制御手段は、この温水装置が凍結防止モードを解除した運転休止状態から運転再開がなされたときに、前記ドレイン配管内が凍結しているか否かを判断する機能を有しており、かつ凍結があると判断したときには、前記風呂配管に湯水を供給し、前記ドレイン配管内を解凍させる動作制御を実行するように構成されている。
【0018】
温水装置が、凍結防止モードを解除した運転休止状態に設定されているときには、ドレイン配管内に凍結を生じる場合がある。前記した構成によれば、そのような情況において、温水装置の運転が再開された際に、ドレイン配管内の凍結状態を早期に解消することができる。
【0019】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0021】
図1および図2は、本発明が適用された温水装置およびこれに関連する構成の一例を示している。図1に示すように、本実施形態の温水装置WHは、給湯用および暖房用の温水装置本体部1A,1B、中和器2、ドレイン貯留部3、制御部4、外装ケース5、ドレイン配管6、2本の風呂配管7A,7B、ならびにドレイン配管6の一部が風呂配管7Aに差し込まれた二重管構造部Dを備えている。外装ケース5は、温水装置本体部1A,1B、中和器2、ドレイン貯留部3、および制御部4などを囲んでおり、これらを保護している。制御部4は、本発明でいう制御手段の一例に相当する。
【0022】
給湯用の温水装置本体部1Aは、たとえば台所、洗面所、浴室などに供給される湯を生成するための部分である。暖房用の温水装置本体部1Bは、温水式床暖房装置などの暖房装置の熱媒としての湯水(不凍液なども含まれる)を加熱するための部分である。これら給湯用および暖房用の温水装置本体部1A,1Bは、ファン10a,10bによって燃焼用空気が送り込まれるケーシング11a,11b内に配置された燃焼器12a,12bと、この燃焼器12a,12bによって発生された燃焼ガスから顕熱および潜熱を回収可能な1次熱交換器13a,13bおよび2次熱交換器14a,14bを具備している。
【0023】
給湯用の熱交換器13a,14aは、入水口80aおよび出湯口81aに配管部80,81を介して接続されている。外部から入水口80aに供給された水は、熱交換器14a,13aに導かれて加熱され、かつこの加熱により生成された湯水が出湯口81aに導かれて、この出湯口81aから台所などの所望位置に供給される。また、前記の湯水は、浴槽9への湯張りにも利用される。すなわち、配管部81と風呂配管7Bとは、補助配管部82を介して接続されており、補助配管部82に設けられている開閉弁V1を開くと、配管部81の湯水が風呂配管7Bに供給される。ただし、浴槽9への湯張り時には、風呂用ポンプP1が駆動される。このことにより、補助配管部82から風呂配管(風呂戻り管)7Bに到達した湯水は、風呂用ポンプP1を通過した後に風呂配管(風呂往き管)7A内を通って浴槽9に供給される。
【0024】
2本の風呂配管7A,7Bは、それぞれの一端が浴槽9に接続されて、風呂追い焚き用の湯水循環路Cを構成しており、風呂追い焚き動作を行なう場合には、風呂用ポンプP1が駆動して浴槽9の湯水が風呂配管7Bから風呂用ポンプP1に汲み上げられてから熱交換器89により加熱され、その後に風呂配管7Aを通って浴槽9に戻される。熱交換器89において、浴槽9から汲み上げられた湯水を加熱するための媒体としては、たとえば暖房用の温水装置本体部1Bにおいて加熱された湯水を利用することができる。
【0025】
暖房用の熱交換器13b,14bは、入水口83aおよび出湯口84aに配管部83,84を介して接続されており、暖房装置から入水口83aに戻された湯水が熱交換器14b,13bによって加熱された後に、出湯口84aから前記暖房装置に向けて再度供給されるようになっている。なお、暖房用の熱交換器13b,14bどうしの間には、暖房湯水タンク85およびポンプP2を有する配管部86が設けられている。これらは、配管部83,84やこれに繋がっている暖房装置用の配管内に湯水を補充しつつ、この湯水を循環させるためものである。暖房湯水タンク85は、液面センサ(図示略)を備え、かつ配管部80に分岐接続された給水用配管部80bからの給水が可能とされていることにより、このタンク85内には常に一定量以上の湯水が存在するように制御される。この暖房湯水タンク85には、オーバフロー水をドレイン貯留部3に導くための配管部87が接続されている。このような構成によれば、暖房湯水タンク85からのオーバフロー水をドレイン貯留部3に流入させてから、このドレイン貯留部3に別途流入されるドレインと一緒に廃棄することができる。
【0026】
中和器2は、熱交換器14a,14bによって燃焼ガスから潜熱回収を行なった際に発生する酸性のドレインを中和するためのものであり、合成樹脂製の容器20内に粒状の炭酸カルシウムなどの中和剤21が収容された構成である。熱交換器14a,14bの表面に発生したドレインは、その下方に設けられたドレイン受け部15によって受けられてから、配管部88を介して中和器2内に導入され、中和剤21との接触により中和された後に排出口22から排出される。
【0027】
ドレイン貯留部3は、中和器2の排出口22から排出されるドレインを一時的に貯留させるための部分である。後述するように、このドレイン貯留部3は、中和器2と一体化された構成とすることが可能である。図2によく表われているように、ドレイン貯留部3には、ドレイン用の流入口30、既述した暖房湯水タンク85からのオーバフロー水用の流入口31、および流出口32に加え、3本の電極33a〜33cを有する水位検出器33が設けられている。また、流出口32には、ドレイン用ポンプP3を備えたドレイン配管6が接続されている。
【0028】
水位検出器33は、グランド電極33a、低水位検出用の電極33b、および高水位検出用の電極33cを有しており、これらがドレイン中に浸漬して電気的に導通した状態と、ドレイン中に浸漬することなく電気的に導通していない状態との相違に基づき、ドレインの水位を検出可能である。ドレインの水位が電極33cの下端に到達する高水位LHになると、ドレイン用ポンプP3が駆動を開始し、ドレイン貯留部3からのドレイン排出がなされる。その後、ドレインの水位が電極33a,33bの下端を下回る低水位LLになると、ドレイン用ポンプP3の駆動が停止する。このような制御は、制御部4により実行される。
【0029】
二重管構造部Dは、外装ケース5の外部において風呂配管7A内にドレイン配管6が差し込まれた部分である。風呂配管7Aへのドレイン配管6の差し込みは、たとえば風呂配管7Aの外装ケース5への取付用ジョイント70に設けられた孔部70aを利用して行なわれている。風呂配管7Aの終端には、浴槽9のアダプタ90への取付用ジョイント71が設けられており、このジョイント71に設けられた孔部71aからドレイン配管6の終端6aが外部に引き出されている。ドレイン配管6の終端6aは、たとえば浴室の床に設けられた浴槽湯水の排出口(図示略)にドレインを排出可能な配置とされる。
【0030】
制御部4は、マイクロコンピュータなどを用いて構成されており、温水装置WHの各部の動作制御を実行する。制御部4には、外気温や入水温度を検出するための温度センサSa,Sbなどが接続されており(図1を参照)、制御部4は、それらの検出温度などに基づいて、後述するようにドレイン配管6内の凍結防止動作を実行するように構成されている。
【0031】
次に、前記した温水装置WHの作用について説明する。
【0032】
まず、給湯用および暖房用の湯水加熱動作は、既述したように、燃焼器12a,12bを駆動させて発生させた燃焼ガスから熱交換器13a,13b,14a,14bにより熱回収を行なうことにより行なわれる。熱交換器14a,14bを利用した潜熱回収に伴って発生する酸性のドレインは、ドレイン受け部15から中和器2内に導かれて中和された後にドレイン貯留部3に流入する。ドレイン用ポンプP3は、ドレイン貯留部3におけるドレインの水位が所定の高水位LHになると駆動を開始し、ドレインの水位が所定の低水位LLになると停止する動作を繰り返す。このようなドレイン用ポンプP3の駆動により、ドレイン貯留部3のドレインは、ドレイン配管6の終端6a側に送り出され、浴室の排水口に排出されて廃棄される。暖房湯水タンク85からのオーバフロー水も前記したドレインと一緒に浴室の排水口に排出されることとなる。外装ケース5の外部においては、風呂配管7A内にドレイン配管6が差し込まれた二重管構造部Dが設けられているために、たとえばこのような二重管構造を採用することなく、2本の風呂配管7A,7Bの外部にドレイン配管6を沿わせる場合と比較すると、それら複数の配管が大きく嵩張ることが抑制され、それらの占有スペースを小さくすることができる。また、前記した配管を屋外から浴室内に引き込むべく浴室の外壁に設けられる穴の開口面積も小さくすることができる。
【0033】
冬季などにおいては、ドレイン配管6内が凍結する虞があるが、これに対処するための手段として、制御部4は、図3〜図5に示すフローチャートに示すような動作処理を実行する。この点を以下に説明する。
【0034】
まず、制御部4は、ドレイン配管6内が凍結する可能性があるか否かを、温度センサSa,Sbを利用して検出される外気温または入水温度に基づいて判断する(S1)。もちろん、これ以外の要素に基づいて凍結の可能性を判断してもかまわない。制御部4は、外気温または入水温度が所定温度以下であって、凍結の可能性があると判断した場合には、浴槽9に湯水が一定量以上存在するか否かをも判断する(S1:YES,S2)。この判断は、たとえば風呂用ポンプP1を駆動させ、かつその際に風呂追い焚き用の湯水循環路Cに湯水の流通があることが流量センサ(図示略)を利用して確認されるか否かによって行なうことができる。制御部4は、浴槽9に湯水が一定量以上あると判断した場合には、風呂凍結防止モードを選択する(S2:YES,S3)。このモードにおける動作は、従来から行なわれている風呂凍結防止動作と同様であり、風呂用ポンプP1が適当な時間間隔で間欠的に駆動されて、浴槽9の湯水が湯水循環路Cを循環流通する(S4)。このような動作が行なわれると、風呂配管7A,7B内の凍結防止が図られることに加え、二重管構造部Dにおいてドレイン配管6が浴槽9の湯水により加熱され、ドレイン配管6内の凍結防止も図られる。
【0035】
前記とは異なり、制御部4は、浴槽9に一定量以上の湯水が存在しないと判断した場合には、ドレイン配管の凍結防止モードを選択する(S5)。このモードにおける制御部4の具体的な動作処理手順については図4を参照して後述するが、このモードでは、風呂配管7Aに湯水が供給され、二重管構造部Dにおいてドレイン配管6が前記湯水により加熱される(S6)。このような加熱方式を採用すれば、ドレイン配管6を長い寸法領域にわたって効率良く加熱することができ、ドレイン配管6内の凍結を適切に防止することができる。したがって、ドレイン配管6を加熱するための専用のヒータを別途設ける必要を無くし、または少なくすることができる。
【0036】
前記したドレイン配管の凍結防止モードが選択された場合には、図4に示すように、制御部4は、まず開閉弁V1を開き、燃焼器12aを燃焼駆動させてから、風呂用ポンプP1を駆動させる(S10〜S13)。このことにより、熱交換器14a,13aにより加熱された湯水は、風呂配管7Aに供給される。なお、このような動作は、浴槽9への湯張り動作と同様である。ただし、燃焼器12aの燃焼駆動が規制され、燃焼駆動が許容されていないときには、制御部4は、燃焼器12aを燃焼駆動させない(S11:NO,S18)。この場合には、非加熱の湯水が風呂配管7Aに供給されることとなる。ここで、燃焼器12aの燃焼駆動が規制されている場合としては、たとえば制御部4に接続されたリモンコン(図示略)の運転スイッチがオフにされている場合が挙げられる。また、制御部4がこの温水装置WHのいずれかの部分についてのエラーを検出しており、燃焼器12aを燃焼させることが好ましくない場合も挙げられる。
【0037】
制御部4は、風呂配管7Aへの湯水供給量が所定量に達すると、その時点でこの湯水供給を停止し、インターバル時間を確保する(S14:YES,S15)。湯水供給の停止は、開閉弁V1を閉じるとともに、燃焼器12aおよび風呂用ポンプP1の駆動を停止させることにより行なわれる。次いで、制御部4は、風呂配管7Aに供給されていた湯水の温度または外気温に基づき、前記インターバル時間を決定する(S16)。このインターバル時間の決定にあたっては、湯水の温度や外気温が低いほど、インターバル時間が短くされて風呂配管7Aへの湯水供給頻度が高められるような値とされる。制御部4は、このようにして決定されたインターバル時間が経過すると、開閉弁V1を再度開くなどして、風呂配管7Aへの湯水供給を再開し、以降は前記した一連の動作を繰り返させる(S17:YES,S10)。
【0038】
前記したドレイン配管の凍結防止動作制御によれば、風呂配管7Aに供給される湯水温度や外気温に対応して、湯水供給のインターバルの時間が変更されることとなるために、風呂配管7Aに湯水供給が行なわれる頻度をドレイン配管6内の凍結を防止するのに必要最小限度の頻度、またはこれに近い低頻度とすることができる。したがって、凍結防止に利用される湯水の消費量を少なくするのに好適となる。また、凍結防止動作時には、湯水流通音や風呂用ポンプP1の運転音が発生するが、このような音の発生回数を少なくして、ユーザの耳障りにならないようにすることもできる。なお、風呂配管7Aへの湯水供給頻度を最適な頻度に設定するための手段としては、前記したインターバル時間を変更することに代えて、または加えて、風呂配管7Aへの1回当たりの湯水供給量を湯水温度や外気温に対応させて変更するようにしてもかまわない。
【0039】
また、前記した動作制御によれば、燃焼器12aの燃焼駆動が許容されていないときには、加熱された湯水に代えて、非加熱の湯水が風呂配管7Aに供給されるが、このような非加熱の湯水を利用する場合であっても、二重管構造部Dにおいてドレイン配管6の温度を高めて、ドレイン配管6内の凍結を抑制する効果が期待できる。風呂配管7Aのうち、ドレイン配管6が差し込まれている部分は、その流路断面積が小さくなっているために、この部分の流路抵抗は比較的大きい。これに対し、風呂配管7Aへの湯水供給は、風呂用ポンプP1が駆動して行なわれているために、風呂配管7Aの流路抵抗が比較的大きいにも拘わらず、この部分に対して湯水供給を円滑に行なわせることが可能である。
【0040】
風呂配管7Aに湯水を供給する動作は、ドレイン配管6内の凍結防止に利用されることに加え、ドレイン配管6内が万一凍結した場合の解凍動作にも利用することが可能である。図5は、そのような場合の制御部4の動作処理手順の一例を示している。
【0041】
図5に示す解凍動作用の処理は、たとえば温水装置Aを運転させるための主電源が長期間にわたってオフにされているなど、前述した凍結防止モードが解除されていた情況下において、リモコンの運転スイッチがオンとされたことを前提条件として実行される(S20:YES)。このような条件下において、燃焼器12a,12bのいずれか駆動されると、ドレイン貯留部3からのドレイン排出流量(単位時間当たりの流量)が所定流量以下であるか否かが制御部4により判断される(S21:YES,S22)。この判断に際しては、たとえばドレイン貯留部3の水位が高水位LHとなってドレイン用ポンプP3が駆動を開始してから、前記の水位が所定時間内に低水位LLまで低下しないときには、ドレイン排出流量が所定量以下であるといったふうにして判断される。また、このような判断手法に代えて、たとえばドレイン配管6に流量計を設けておき、ドレイン貯留部3からの実際の排出流量を計測する手段を採用することも可能である。さらに、ドレイン用ポンプP3の駆動電流に基づいて判断することも可能である(ドレイン排出流量が少ない場合には、ドレイン用ポンプP3の負荷が小さくなるために、駆動電流値は小さくなる)。
【0042】
制御部4は、ドレイン貯留部3からのドレイン排出流量が所定流量以下であって、外気温または入水温度が所定温度以下であるときには、ドレイン配管6内に凍結があると判断する(S22:YES,S23:YES,S24)。そして、このように凍結があると判断した場合には、風呂配管7Aへの湯水供給が行なわれる(S25)。すると、ドレイン配管6が二重管構造部Dにおいて加熱され、ドレイン配管6の凍結状態が早期に解消されることとなる。なお、ドレイン配管6内が凍結し、詰まりを生じている状態において、多くのドレインを新たに発生させたのでは、ドレイン貯留部3のドレインがオーバフローする虞がある。したがって、ドレイン配管6内を解凍させる場合には、燃焼器12aの駆動燃焼時間を少なくするといった制限を加えることもできる。
【0043】
図6および図7は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0044】
図6に示す実施形態においては、ドレイン配管6が2本の風呂配管7A,7Bの外面に沿うように配されており、これら3本の配管6,7A,7Bが束ねられた束状配管部D’が構成されている。好ましくは、3本の配管6,7A,7Bの周囲には、断熱性に優れるテープ99が巻き付けられ、また外装用パイプ98によってそれら全体が覆われている。このような束状配管部D’においても、風呂配管7Aに湯水を供給した場合には、この風呂配管7Aに接触しているドレイン配管6が前記湯水によって加熱される効果が期待できる。したがって、前記実施形態で示したような二重管構造部Dに代えて、本実施形態のような束状配管部D’が設けられている場合にも、本発明を適用することができる。
【0045】
図7に示す実施形態においては、ドレイン貯留部3と中和器2とが一体的に形成されている。より具体的には、中和器2を構成する容器20の一部は、中和剤21が充填されていないドレイン貯留部3として形成されており、中和剤21が充填されている領域(中和処理槽の部分)を通過して中和されたドレインは、そのままドレイン貯留部3に流入して貯留されるように構成されている。このような構成によれば、ドレイン貯留部3と中和器2とを別体に形成してこれらを配管接続する場合よりも全体のコンパクト化を図ることが可能である。
【0046】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。本発明に係る温水装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0047】
たとえば、ドレイン配管内に凍結を生じる可能性があるか否かの判断は、外気温や熱交換器への入水温度に代えて、たとえばドレインの温度などに基づいて行なうことができる。本発明でいう加熱用媒体としては、燃焼ガス以外のたとえば高温の排ガスなどを用いることも可能である。本発明に係る温水装置は、上述した実施形態とは異なり、給湯用と暖房用の2つの温水装置本体部が組み合わされた構成でなくてもよく、たとえば暖房用の機能を有しない給湯用の温水装置として構成されていてもよい。ドレインの排水箇所は、適宜選択可能であり、浴槽湯水の排水口とは異なる箇所とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る温水装置の一例を示す概略説明図である。
【図2】図1に示す温水装置の要部説明図である。
【図3】図1および図2に示す温水装置の制御部が凍結防止モードを選択する場合の動作処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】図1および図2に示す温水装置の制御部がドレイン配管の凍結防止動作制御を実行する場合の一例を示すフローチャートである。
【図5】図1および図2に示す温水装置の制御部がドレイン配管内の解凍動作制御を実行する場合の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明でいう束状配管部の一例を示す要部断面斜視図である。
【図7】本発明の他の例を示す要部概略図である。
【符号の説明】
【0049】
WH 温水装置
C 風呂追い焚き用の湯水循環路
D 二重管構造部
D’ 束状配管部
P1 風呂用ポンプ
Sa,Sb 温度センサ(温度検出手段)
4 制御部(制御手段)
6 ドレイン配管
9 浴槽
7A,7B 風呂配管
13a,13b 熱交換器
14a,14b 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱用媒体から熱回収を行なうことにより湯水加熱を行なうための熱交換器と、
前記熱回収に伴って発生したドレインを所定の排水箇所に導くためのドレイン配管と、
浴槽への湯張り給湯および風呂追い焚き動作の少なくとも一方を行なうための風呂配管と、
を備えている、温水装置であって、
前記ドレイン配管が前記風呂配管内に差し込まれた二重管構造部、および前記ドレイン配管が前記風呂配管の外面に沿うようにしてこれらの配管が束ねられた束状配管部のいずれか一方と、
前記ドレイン配管内に凍結を生じる可能性があるか否かの判断を行なうための温度検出手段と、
この温度検出手段によって検出される温度が所定温度以下であるときに、前記ドレイン配管の凍結防止動作として、前記風呂配管内に湯水を供給し、前記二重管構造部または前記束状配管部において前記ドレイン配管を前記湯水により加熱させる動作を実行させる制御手段と、
を備えていることを特徴とする、温水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の温水装置であって、
前記風呂配管は、前記浴槽の湯水を風呂用ポンプの駆動により一定の経路で循環流通させつつ、別途設けられた加熱手段により加熱して前記浴槽に戻すことが可能な風呂追い焚き用の湯水循環路を構成しており、
前記制御手段の制御モードとしては、前記浴槽に所定量以上の湯水が存在し、前記風呂配管内が凍結する可能性があると判断したときに、前記風呂用ポンプを間欠的または連続的に駆動させる風呂凍結防止モードがあり、
前記制御手段が前記風呂凍結防止モードであるときには、前記ドレイン配管の凍結防止動作としての風呂配管への湯水供給は実行されないように構成されている、温水装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の温水装置であって、
前記風呂配管への湯水供給は、所定のインターバルを経て間欠的に複数回にわたって繰り返し実行されるように構成されており、
前記風呂配管への1回当たりの湯水供給量、および前記インターバルの時間の少なくとも一方は、前記風呂配管に供給される湯水の温度、外気温、またはその他の所定の項目の値に応じて変更されるように構成されている、温水装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の温水装置であって、
前記加熱用媒体としての燃焼ガスを発生させる燃焼器を備えており、かつこの燃焼器の燃焼駆動が規制されているときには、前記ドレイン配管凍結防止動作としての風呂配管への湯水供給が行なわれる際に、非加熱の湯水が用いられるように構成されている、温水装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の温水装置であって、
前記制御手段は、この温水装置が凍結防止モードを解除した運転休止状態から運転再開がなされたときに、前記ドレイン配管内が凍結しているか否かを判断する機能を有しており、かつ凍結があると判断したときには、前記風呂配管に湯水を供給し、前記ドレイン配管内を解凍させる動作制御を実行するように構成されている、温水装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−112659(P2010−112659A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287153(P2008−287153)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】