説明

温水装置

【課題】風呂配管にドレイン配管を差し込んだ二重管構造を採用した場合において、ドレイン配管に万一破損が生じても、このドレイン配管内のドレインが浴槽内に流れ込むことを適切に防止または抑制することが可能な温水装置を提供する。
【解決手段】熱交換器を利用した熱回収に伴って発生したドレインを貯留するためのドレイン貯留部3と、このドレイン貯留部3に貯留されたドレインをドレイン配管6内に流入させて所定の排水箇所に導くためのドレイン用ポンプP3と、を備えている、温水装置WHであって、ドレイン配管6が風呂配管7A内に差し込まれ、かつドレイン配管6の終端寄り部分6aが風呂配管7Aから引き出された二重管構造部Dを備えており、ドレイン用ポンプP3は、ドレイン配管6の終端寄り部分6aに設けられて、ドレイン用ポンプP3の駆動時には、ドレイン配管6内が負圧状態となるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼ガスなどの加熱用媒体から熱交換器を利用して熱回収を行なうことにより湯水加熱を行ない、かつ熱回収に伴って発生するドレインの排水処理を適切に行なうことが可能とされた温水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の温水装置の一例として、特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された温水装置は、燃焼器により発生された燃焼ガスから熱交換器を利用して顕熱および潜熱を回収し、湯水加熱を行なうように構成されている。燃焼ガスから潜熱回収を行なうと、酸性のドレインが発生するが、このドレインは、中和器を利用して中和されてからドレイン配管を利用して温水装置の外部に導かれるようにされている。一方、前記温水装置は、浴槽への湯張り給湯や風呂追い焚きを行なうための2本の風呂配管をも備えており、前記したドレイン配管は、それら2本の風呂配管の外面に沿うようにして浴槽の近傍まで延びており、浴室の排水口にドレインを排出することが可能に設けられている。
【0003】
ただし、前記したようにドレイン配管を2本の風呂配管の外面に沿わせた場合には、これら計3本の配管が大きく嵩張った状態で温水装置から浴室まで延びた構成となり、それらの配管の占有スペースが大きくなる。また、家屋の外壁に前記した3本の配管を引き込むための穴を設ける場合には、この穴のサイズを大きくしたり、あるいはドレイン配管を通すための余分の穴を設けるといった必要も生じる。
【0004】
前記した不具合を解消するための手段として、2本の風呂配管のいずれか一方にドレイン配管を差し込み、このドレイン配管と風呂配管とを二重管構造にすることが考えられる。
しかしながら、このような手段を採用した場合には、ドレイン配管の劣化などの何らかの原因によってドレイン配管に破損を生じると、このドレイン配管内からその外側に流出したドレインが風呂配管内を通って浴槽に流れ込むことが懸念される。ドレインは、既述したように、燃焼ガスに含まれていた水蒸気が凝縮したものであり、燃焼ガス中の成分を含んでいる可能性がある。このため、ドレインの中和処理がなされていたとしても、このドレインが浴槽内に流れ込むことは、余り好ましいものではなく、ユーザに不安感を与えてしまう。したがって、そのようなことが適切に防止または抑制されることが望まれる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−112763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、風呂配管にドレイン配管を差し込んだ二重管構造を採用した場合において、ドレイン配管に万一破損が生じても、このドレイン配管内のドレインが浴槽内に流れ込むことを適切に防止または抑制することが可能であり、ユーザに安心感を与えることができる温水装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される温水装置は、加熱用媒体から熱回収を行なうことにより湯水加熱を行なうための熱交換器と、前記熱回収に伴って発生したドレインを貯留するためのドレイン貯留部と、このドレイン貯留部に貯留されたドレインをドレイン配管内に流入させて所定の排水箇所に導くためのドレイン用ポンプと、浴槽への湯張り給湯および風呂追い焚き動作の少なくとも一方を行なうための風呂配管と、を備えている、温水装置であって、前記ドレイン配管が前記風呂配管内に差し込まれ、かつ前記ドレイン配管のドレイン流方向下流側の終端寄り部分が前記風呂配管から引き出された二重管構造部を備えており、前記ドレイン用ポンプは、前記ドレイン配管の終端寄り部分に設けられ、前記ドレイン用ポンプが駆動して前記ドレイン貯留部内のドレインが前記ドレイン配管内に流入するときには、前記ドレイン配管内が負圧状態となるように構成されていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、ドレイン用ポンプが駆動してドレイン貯留部内のドレインがドレイン配管内を通過する際、このドレイン配管内は負圧状態となる。このため、ドレイン配管が万一破損していたとしても、二重管構造部において、負圧状態のドレイン配管内から風呂配管内側にドレインが流出する可能性は少ない。したがって、ドレインが風呂配管を通って浴槽に流れ込むことが好適に防止または抑制されることとなり、ユーザに安心感を与えることができる。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記風呂配管としては、風呂用ポンプの吸入側と前記浴槽とを接続し、かつ前記風呂用ポンプの駆動時に前記浴槽の湯水を前記風呂用ポンプに導く風呂戻り管と、前記風呂用ポンプの吐出側と前記浴槽とを接続し、かつ前記風呂戻り管を介して前記風呂用ポンプに吸入された湯水を前記浴槽に戻す風呂往き管とがあり、前記二重管構造部は、前記ドレイン配管が前記風呂往き管内に差し込まれ、前記風呂用ポンプが駆動したときには前記風呂往き管内が前記ドレイン配管内よりも圧力が高くなる構成とされている。
【0011】
このような構成によれば、ドレイン配管が破損した場合に、このドレイン配管内から風呂配管内に向けてドレインがより流出し難くなる。したがって、浴槽へのドレインの流れ込みを防止する上で、一層好ましいものとなる。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記ドレイン配管内の流水量または流水圧の変化を検出可能であり、かつ前記風呂用ポンプの駆動時において、この風呂用ポンプの駆動に伴って前記ドレイン配管内の流水量が増加し、または流水圧が上昇したときに、前記ドレイン配管に破損またはその他の異常があると判断する判断手段を備えている。
【0013】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、二重管構造部におけるドレイン配管が万一破損している状態において、風呂用ポンプを駆動させて、風呂配管に湯水を所定圧で流通させた際には、この湯水がドレイン配管内に流れ込み、ドレイン配管内の流水量が増加し、または流水圧が上昇する現象を生じる。前記構成によれば、そのような現象を生じた場合に、ドレイン配管に破損その他の異常が発生したものと判断するものであって、異常が発生した旨を的確に検出することが可能である。とくに、前記構成では、風呂用ポンプが駆動されて、この風呂用ポンプの吐出圧がドレイン配管に作用している条件、すなわちドレイン配管が破損を生じ易い条件下での破損検出が行なえるために、早期の異常検出が可能となり、より好ましいものとなる。前記構成によれば、ドレイン配管に異常が発生しているにも拘わらずその旨が検出されない場合と比較すると、ユーザにより大きな安心感を与えることが可能となる効果も得られる。また、異常が発生した旨を適当な報知手段を利用して報知させれば、ユーザが適切な対応措置を迅速に採ることもできる。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記判断手段は、前記ドレイン用ポンプの駆動電流、駆動電力、またはこれらに対応するデータに基づいて、前記ドレイン配管内における流水量または流水圧の変化を検出可能であり、かつ前記ドレイン用ポンプの駆動電流、駆動電力、またはこれらに対応するデータの値が、所定の範囲をはずれたときには、前記ドレイン配管に破損またはその他の異常があると判断するように構成されている。
【0015】
このような構成によれば、ドレイン配管内の流水量または流水圧の変化を、ドレイン用ポンプの駆動電流またはその他のデータに基づいて的確に察知することができ、ドレイン配管に破損を生じた際のドレイン配管内の流水量の増加または流水圧の上昇を、簡易なデータ処理によって正確に検出することが可能となる。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記判断手段は、前記ドレイン用ポンプの駆動電流、駆動電力、またはこれらに対応するデータの値が、詰まりによるドレイン流出駆動負荷上昇により所定範囲以上はずれたときには、前記ドレイン配管に詰まりまたはその他の異常があると判断するように構成されている。
【0017】
このような構成によれば、ドレイン配管に詰まりが生じ、この詰まりに起因しドレイン配管内の流水圧が異常に上昇したり、あるは流水量が減少した場合に、その旨を的確に検出することができる。したがって、そのような異常に好適に対処することが可能となる。二重管構造部を設けた場合には、ドレイン配管を風呂配管内に差し込む必要上から、ドレイン配管を比較的小径にする必要があるが、ドレイン配管を小径にすると、詰まりを生じ易くなるため、前記したような詰まり検出が行なえることは好ましい。
【0018】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0020】
図1および図2は、本発明が適用された温水装置およびこれに関連する構成の一例を示している。図1に示すように、本実施形態の温水装置WHは、給湯用および暖房用の温水装置本体部1A,1B、中和器2、ドレイン貯留部3、制御部4、外装ケース5、ドレイン配管6、ドレイン用ポンプP3、2本の風呂配管7A,7B、ならびにドレイン配管6の一部が風呂配管7Aに差し込まれた二重管構造部Dを備えている。外装ケース5は、温水装置本体部1A,1B、中和器2、ドレイン貯留部3、および制御部4などを囲んでおり、これらを保護している。制御部4は、本発明でいう判断手段の一例に相当する。
【0021】
給湯用の温水装置本体部1Aは、たとえば台所、洗面所、浴室などに供給される湯を生成するための部分である。暖房用の温水装置本体部1Bは、温水式床暖房装置などの暖房装置の熱媒としての湯水(不凍液なども含まれる)を加熱するための部分である。これら給湯用および暖房用の温水装置本体部1A,1Bは、ファン10a,10bによって燃焼用空気が送り込まれるケーシング11a,11b内に配置された燃焼器12a,12bと、この燃焼器12a,12bによって発生された燃焼ガスから顕熱および潜熱を回収可能な1次熱交換器13a,13bおよび2次熱交換器14a,14bを具備している。
【0022】
給湯用の熱交換器13a,14aは、入水口80aおよび出湯口81aに配管部80,81を介して接続されている。外部から入水口80aに供給された水は、熱交換器14a,13aに導かれて加熱され、かつこの加熱により生成された湯水が出湯口81aに導かれて、この出湯口81aから台所などの所望位置に供給される。また、前記の湯水は、浴槽9への湯張りにも利用される。すなわち、配管部81と風呂配管7Bとは、補助配管部82を介して接続されており、補助配管部82に設けられている開閉弁V1を開くと、配管部81の湯水が風呂配管7Bに供給される。ただし、浴槽9への湯張り時には、風呂用ポンプP1が駆動される。このことにより、補助配管部82から風呂配管(風呂戻り管)7Bに到達した湯水は、風呂用ポンプP1を通過した後に風呂配管(風呂往き管)7A内を通って浴槽9に供給される。2本の風呂配管7A,7Bは、それぞれの一端が浴槽9に接続されて、湯水循環路を構成しており、風呂追い焚き動作を行なう場合には、風呂用ポンプP1が駆動して浴槽9の湯水が風呂配管7Bから風呂用ポンプP1に汲み上げられてから熱交換器89により加熱され、その後に風呂配管7Aを通って浴槽9に戻される。熱交換器89において、浴槽9から汲み上げられた湯水を加熱するための媒体としては、たとえば暖房用の温水装置本体部1Bにおいて加熱された湯水が利用される。
【0023】
暖房用の熱交換器13b,14bは、入水口83aおよび出湯口84aに配管部83,84を介して接続されており、暖房装置から入水口83aに戻された湯水が熱交換器14b,13bによって加熱された後に、出湯口84aから前記暖房装置に向けて再度供給されるようになっている。なお、暖房用の熱交換器13b,14bどうしの間には、暖房湯水タンク85およびポンプP2を有する配管部86が設けられている。これらは、配管部83,84やこれに繋がっている暖房装置用の配管内に湯水を補充しつつ、この湯水を循環させるためものである。暖房湯水タンク85は、液面センサ(図示略)を備え、かつ配管部80に分岐接続された給水用配管部80bからの給水が可能とされていることにより、このタンク85内には常に一定量以上の湯水が存在するように制御される。この暖房湯水タンク85には、オーバフロー水をドレイン貯留部3に導くための配管部87が接続されている。このような構成によれば、暖房湯水タンク85からのオーバフロー水をドレイン貯留部3に流入させてから、このドレイン貯留部3に別途流入されるドレインと一緒に廃棄することができる。
【0024】
中和器2は、熱交換器14a,14bによって燃焼ガスから潜熱回収を行なった際に発生する酸性のドレインを中和するためのものであり、合成樹脂製の容器20内に粒状の炭酸カルシウムなどの中和剤21が収容された構成である。熱交換器14a,14bの表面に発生したドレインは、その下方に設けられたドレイン受け部15によって受けられてから、配管部88を介して中和器2内に導入され、中和剤21との接触により中和された後に排出口22から排出される。
【0025】
ドレイン貯留部3は、中和器2の排出口22から排出されるドレインを一時的に貯留させるための部分である。後述するように、このドレイン貯留部3は、中和器2と一体化された構成とすることが可能である。図2によく表われているように、ドレイン貯留部3には、ドレイン用の流入口30、既述した暖房湯水タンク85からのオーバフロー水用の流入口31、およびドレイン配管6が接続された流出口32に加え、3本の電極33a〜33cを有する水位検出器33が設けられている。
【0026】
水位検出器33は、グランド電極33a、低水位検出用の電極33b、および高水位検出用の電極33cを有しており、これらがドレイン中に浸漬して電気的に導通した状態と、ドレイン中に浸漬することなく電気的に導通しない状態との相違に基づき、ドレインの水位を検出可能である。ドレインの水位が電極33cの下端に到達する高水位LHになると、ドレイン用ポンプP3が駆動を開始し、ドレイン貯留部3からのドレイン排出がなされる。その後、ドレインの水位が電極33a,33bの下端を下回る低水位LLになると、ドレイン用ポンプP3の駆動が停止する。このような制御は、制御部4により実行される。
【0027】
二重管構造部Dは、外装ケース5の外部において風呂配管7A内にドレイン配管6が差し込まれた部分である(図3(a)も参照)。風呂配管7Aへのドレイン配管6の差し込みは、たとえば風呂配管7Aの外装ケース5への取付用ジョイント70に設けられた孔部70aを利用して行なわれている。風呂配管7Aの終端には、浴槽9のアダプタ90への取付用ジョイント71が設けられており、このジョイント71に設けられた孔部71aからドレイン配管6の終端寄り部分6aが外部に引き出されている。
【0028】
ドレイン用ポンプP3は、ドレイン配管6の終端寄り部分6aに設けられており、このドレイン用ポンプP3から吐出されるドレインは、たとえば浴室の床に設けられた浴槽湯水の排出口(図示略)に排出可能とされている。浴室には、制御部4とのデータ通信が可能であって、入浴者が操作を行なうためのリモコン40が設置されており、このリモコン40がドレイン用ポンプP3と通信線を介して接続されている。制御部4によるドレイン用ポンプP3の駆動制御は、リモコン40を介して行なわれる。また、ドレイン用ポンプP3に対する駆動電力の供給は、リモコン40から前記通信線を利用して行なわれる。
【0029】
制御部4は、マイクロコンピュータなどを用いて構成されており、温水装置WHの各部の動作制御を実行する。後述するように、この制御部4は、ドレイン用ポンプP3の駆動電流に基づき、ドレイン配管6に破損や詰まりなどの異常があるか否かを判断するが、その詳細については後述する。なお、ドレイン用ポンプP3の駆動電流のデータは、リモコン40によって検出され、制御部4に送信される。ただし、このようなデータの送信を省略し、リモコン40に具備されているデータ処理手段を利用して、ドレイン配管6に異常があるか否かを判断させるように構成することもできる。
【0030】
次に、前記した温水装置WHの作用について説明する。
【0031】
まず、給湯用および暖房用の湯水加熱動作は、既述したように、燃焼器12a,12bを駆動させて発生させた燃焼ガスから熱交換器13a,13b,14a,14bにより熱回収を行なうことにより行なわれる。熱交換器14a,14bを利用した潜熱回収に伴って発生する酸性のドレインは、ドレイン受け部15から中和器2内に導かれて中和された後にドレイン貯留部3に流入する。ドレイン用ポンプP3は、ドレイン貯留部3におけるドレインの水位が所定の高水位LHになると駆動を開始し、ドレインの水位が所定の低水位LLになると停止する動作を繰り返す。このようなドレイン用ポンプP3の駆動により、ドレイン貯留部3のドレインは、ドレイン配管6を通過してドレイン用ポンプP3に吸入され、その後に浴室の排水口に排水される。暖房湯水タンク85からのオーバフロー水も前記したドレインと一緒に浴室の排水口に排水されることとなる。外装ケース5の外部においては、風呂配管7A内にドレイン配管6が差し込まれた二重管構造部Dが設けられているために、たとえばこのような二重管構造を採用することなく、2本の風呂配管7A,7Bの外部にドレイン配管6を沿わせる場合と比較すると、それら複数の配管が大きく嵩張ることが抑制され、それらの占有スペースを小さくすることができる。また、前記した配管を屋外から浴室内に引き込むための浴室の外壁に設けられる穴の開口面積も小さくすることができる。
【0032】
図3(b)に示すように、なんらかの原因によりドレイン配管6に穴69が開く破損を生じる場合があり得る。これに対し、ドレイン用ポンプP3は、ドレイン配管6の終端寄り部分6aに設けられており、ドレイン用ポンプP3の駆動時には、ドレイン配管6内は負圧状態となる。したがって、二重管構造部Dにおいて、ドレイン配管6内のドレインが穴69を通過して風呂配管7A内側に流出することは適切に抑制される。また、風呂配管7Aは、風呂用ポンプP1の吐出側に接続されているために、風呂用ポンプP1の駆動時には、この風呂配管7A内の圧力P2はドレイン配管6内の圧力P1よりも高くなる。したがって、ドレイン配管6内から風呂配管7A内側にドレインが流出することは、より徹底して防止される。その結果、多くのドレインが、風呂配管7Aを通って浴槽9に流れ込むことも防止される。
【0033】
図4は、制御部4により実行される異常検出の基本的な動作手順の一例を示している。この内容を以下に説明する。
【0034】
なお、制御部4は、図4に示す動作手順を実行するための前提の構成として、ドレイン配管6内の流水量または流水圧の変化を検出可能とされている。これは、後述するように、たとえば制御部4にドレイン用ポンプ6の駆動電流を監視させることにより好適に実現することができる。制御部4は、風呂用ポンプP1が駆動されたときには(S20:YES)、この風呂用ポンプP1の駆動に伴って、ドレイン配管6内の流水量が増加し、または流水圧が上昇したかを判断する(S21)。この場合、流水量が単に微小量だけ増加した場合や、流水圧が単に微小値だけ上昇した場合については、これを無視し、流水量が所定値以上に増加したか否か、または流水圧が所定値以上に上昇したか否かの判断内容としてもよい。
【0035】
制御部4は、風呂用ポンプP1の駆動に伴って、ドレイン配管6内の流水量が増加し、または流水圧が上昇したものと判断したときには、ドレイン配管6に破損またはその他の異常が生じたものと判断する(S21:YES,S22)。二重管構造部Dにおけるドレイン配管6が万一破損し、図3(b)に示したように、ドレイン配管6に穴69が開いている状態において、風呂用ポンプP3が駆動されて風呂配管7Aに湯水が所定の圧力で流れると、既述したように、この湯水がドレイン配管7A内に流れ込むために、ドレイン配管6内の流水量が増加し、または流水圧が上昇する。制御部4は、そのような現象を的確に検出して、ドレイン配管6に破損その他の異常が発生したものと判断するために、異常の検出を正確に行なうことが可能である。風呂用ポンプP3の駆動時には、この風呂用ポンプP3の吐出圧がドレイン配管6の周壁部に作用するため、ドレイン配管6が劣化しているような場合には、風呂用ポンプP3の駆動時がドレイン配管6が最も破損し易い条件となる。上記判断処理では、そのような条件に合致するタイミングで破損検出が行なえるために、破損を迅速に検出する上で、より好ましいものとなる。
【0036】
制御部4は、より具体的には、図5に示すような動作処理を実行可能とされており、以下に説明する。
【0037】
まず、制御部4は、ドレイン用ポンプP3の基準電流値I0を求める(S1)。この基準電流値I0は、ドレイン配管6に詰まりや破損が無い正常な条件下において、ドレイン用ポンプP3が所定の回転数で回転する場合の電流値である。この基準電流値I0を求める場合には、ドレイン用ポンプP3内へのエアの噛み込みの影響などを考慮し、ドレイン用ポンプP3を複数回にわたって駆動させた際の平均値を採用するなどの手法を用いることが好ましい。ただし、ドレイン用ポンプP3がエア抜き運転を既に終了している場合には、そのような学習動作を省略してもとくに差し支えない。
【0038】
制御部4は、温水装置WHが実際に稼動している状態において、ドレイン用ポンプP3が駆動される際には、その駆動電流を監視する。この監視時において、駆動電流値Iが基準電流値I0を所定値αIよりも下回っている場合、すなわち、I<I0+α1、の関係であるときには(S4:YES)、ドレイン配管6に詰まりがある虞がある。より具体的には、ドレイン配管6に詰まりがあると、ドレイン流量が減少し、ドレイン用ポンプP3の仕事量が減少するために、駆動電流値Iも低下する。α1は、たとえば燃焼器12a,12bを最もポピュラーな火力で燃焼駆動させた場合に、ドレイン排出量よりもドレイン貯留部3へのドレイン流入量の方が多くなる場合に対応した値とされており、実験により求めることができる。制御部4は、その後にドレイン用ポンプP3の回転数をアップさせるが(S3)、この回転数アップは、判断を正確に行なうためであり、省略することが可能である。また、この回転数アップは、定電流制御および定電圧制御のいずれであってもよい。この点は、後述するステップS9の回転数ダウンの場合も同様である。ドレイン用ポンプP3の回転数をアップさせた状態において、I<I0+α2、(ただし、α2は予め設定された値であり、α2>α1)の関係が成立した場合(S4:YES)、制御部4は、ドレイン配管6に詰まり、またはこれに類する異常があるものと判断する(S5)。次いで、制御部4は、その旨の報知動作を行なわせるとともに、温水装置WHの運転を停止させる(S6,S7)。報知動作は、たとえばリモコン40にその旨の画面表示を行なわせたり、リモコン40においてアラーム音を発生させるなどして行なわれる。
【0039】
前記とは異なり、ドレイン用ポンプP3の駆動電流値Iが基準電流値I0を所定値β1よりも上回っている場合、すなわち、I>I0+β1、の関係であるときには(S8:YES)、ドレイン配管6に破損を生じている虞がある。すなわち、ドレイン配管6に破損があり、風呂配管7A内の湯水もドレイン用ポンプP3によって吸入されると、ドレイン用ポンプP3の仕事量が増大し、駆動電流値Iも上昇する。β1および後述するβ2の値は、適宜に決定することができる。制御部4は、その後は判断を正確に行なうことを目的として、ドレイン用ポンプP3の回転数をダウンさせてから(S9)、I>I0+β1、の関係にあるか否かを判断する。このステップS9もステップ3と同様に省略することが可能である。制御部4は、前記の関係が成立する場合には、ドレイン配管6に破損またはこれに類する異常があるものと判断し(S10:YES,S11)、その旨をリモコン40などを利用して報知させた後に、温水装置WHの運転を停止させる(S12,S7)。
【0040】
前記した一連の動作手順によれば、ドレイン配管6の詰まりや破損などの異常を、ドレイン用ポンプP3の駆動電流を監視する簡易なデータ処理によって、的確に検出することができる。また、異常が検出されてその旨が報知されれば、ユーザがこれを察知して、適切な対応措置を採ることができる。既述したように、本実施形態の温水装置WHでは、ドレイン配管6に破損を生じた場合に、ドレインが浴槽9に流れ込むことが防止または抑制できるものの、やはりこのような破損状態が看過されることは好ましいものではなく、異常検出がなされることによってユーザは的確な対応をとることができるために、ユーザにより大きな安心感を与えることができる利点がある。
【0041】
なお、前記した異常検出は、ドレイン用ポンプP3の駆動電流に基づいて行なっているが、これに代えて、駆動電力やその他のパラメータ(ドレイン用ポンプP3の仕事量に対応して変動するパラメータ)に基づいて異常検出を行なうこともできる。また、本発明においては、ドレイン配管6内の流水量または流水圧の変化を、ドレイン用ポンプP3の電流値などに基づかずに検出させることもできる。たとえば、ドレイン配管6に流量計または圧力計を設けておき、これらによってドレイン配管6内の流水量または流水圧の変化を検出させるようにしてもかまわない。
【0042】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。本発明に係る温水装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0043】
たとえば、図6に示すように、ドレイン貯留部3については、中和器2と一体的に形成することが可能である。同図に示す構成では、中和器2を構成する容器20の一部は、中和剤21が充填されていないドレイン貯留部3として形成されており、中和剤21が充填されている領域(中和処理槽の部分)を通過して中和されたドレインは、そのままドレイン貯留部3に流入して貯留されるように構成されている。このような構成によれば、ドレイン貯留部3と中和器2とを別体に形成してこれらを配管接続する場合よりも全体のコンパクト化を図ることができる。本発明でいうドレイン貯留部は、ある程度の量のドレインを一時的に貯留可能であればよく、他の機器類に付属して設けられていてもかまわない。
【0044】
本発明でいう加熱用媒体としては、燃焼ガス以外のたとえば高温の排ガスなどを用いることが可能である。本発明に係る温水装置は、上述した実施形態とは異なり、給湯用と暖房用の2つの温水装置本体部が組み合わされた構成でなくてもよく、たとえば暖房用の機能を有しない給湯用の温水装置として構成されていてもよい。ドレインの排水箇所は、適宜選択可能であり、浴槽湯水の排水口とは異なる箇所とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る温水装置の一例を示す概略説明図である。
【図2】図1に示す温水装置の要部説明図である。
【図3】(a)は、図2のIII−III断面図であり、(b)は、(a)に示すドレイン配管に破損を生じた状態を示す断面図である。
【図4】図1に示す温水装置の制御部による異常検出の基本的な動作処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】図1に示す温水装置の制御部の具体的な動作処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の他の例を示す要部概略断面図である。
【符号の説明】
【0046】
WH 温水装置
D 二重管構造部
P3 ドレイン用ポンプ
3 ドレイン貯留部
4 制御部(判断手段)
6 ドレイン配管
6a 終端寄り部分(ドレイン配管の)
9 浴槽
7A,7B 風呂配管
13a,13b 熱交換器
14a,14b 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱用媒体から熱回収を行なうことにより湯水加熱を行なうための熱交換器と、
前記熱回収に伴って発生したドレインを貯留するためのドレイン貯留部と、
このドレイン貯留部に貯留されたドレインをドレイン配管内に流入させて所定の排水箇所に導くためのドレイン用ポンプと、
浴槽への湯張り給湯および風呂追い焚き動作の少なくとも一方を行なうための風呂配管と、
を備えている、温水装置であって、
前記ドレイン配管が前記風呂配管内に差し込まれ、かつ前記ドレイン配管のドレイン流方向下流側の終端寄り部分が前記風呂配管から引き出された二重管構造部を備えており、
前記ドレイン用ポンプは、前記ドレイン配管の終端寄り部分に設けられ、前記ドレイン用ポンプが駆動して前記ドレイン貯留部内のドレインが前記ドレイン配管内に流入するときには、前記ドレイン配管内が負圧状態となるように構成されていることを特徴とする、温水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の温水装置であって、
前記風呂配管としては、風呂用ポンプの吸入側と前記浴槽とを接続し、かつ前記風呂用ポンプの駆動時に前記浴槽の湯水を前記風呂用ポンプに導く風呂戻り管と、前記風呂用ポンプの吐出側と前記浴槽とを接続し、かつ前記風呂戻り管を介して前記風呂用ポンプに吸入された湯水を前記浴槽に戻す風呂往き管とがあり、
前記二重管構造部は、前記ドレイン配管が前記風呂往き管内に差し込まれ、前記風呂用ポンプが駆動したときには前記風呂往き管内が前記ドレイン配管内よりも圧力が高くなる構成とされている、温水装置。
【請求項3】
請求項2に記載の温水装置であって、
前記ドレイン配管内の流水量または流水圧の変化を検出可能であり、かつ前記風呂用ポンプの駆動時において、この風呂用ポンプの駆動に伴って前記ドレイン配管内の流水量が増加し、または流水圧が上昇したときに、前記ドレイン配管に破損またはその他の異常があると判断する判断手段を備えている、温水装置。
【請求項4】
請求項3に記載の温水装置であって、
前記判断手段は、前記ドレイン用ポンプの駆動電流、駆動電力、またはこれらに対応するデータに基づいて、前記ドレイン配管内における流水量または流水圧の変化を検出可能であり、かつ前記ドレイン用ポンプの駆動電流、駆動電力、またはこれらに対応するデータの値が、所定の範囲をはずれたときには、前記ドレイン配管に破損またはその他の異常があると判断するように構成されている、温水装置。
【請求項5】
請求項4に記載の温水装置であって、
前記判断手段は、前記ドレイン用ポンプの駆動電流、駆動電力、またはこれらに対応するデータの値が、詰まりによるドレイン流出駆動負荷上昇により所定範囲以上はずれたときには、前記ドレイン配管に詰まりまたはその他の異常があると判断するように構成されている、温水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−117042(P2010−117042A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288596(P2008−288596)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】