測光機器の受光装置
【課題】デザインの自由度の向上や大きさ寸法の低減を可能としつつ高い精度で所望の斜入射光特性を得ることのできる測光機器の受光装置を提供する。
【解決手段】受光箇所への光軸方向に対する入射光の入射角度の変化に対する感度の変化度合いを示す斜入射光特性を所定のものとすべく設計される測光機器の受光装置10である。完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板12と、その拡散板12により拡散された入射光を受光し、その受光量に応じた電気信号を出力する受光部材(17)と、その受光部材と拡散板12との間に配置され、受光部材の入射面(17a)における入射光の入射角度を制限する入射角度制限部材(14)と、を備える。
【解決手段】受光箇所への光軸方向に対する入射光の入射角度の変化に対する感度の変化度合いを示す斜入射光特性を所定のものとすべく設計される測光機器の受光装置10である。完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板12と、その拡散板12により拡散された入射光を受光し、その受光量に応じた電気信号を出力する受光部材(17)と、その受光部材と拡散板12との間に配置され、受光部材の入射面(17a)における入射光の入射角度を制限する入射角度制限部材(14)と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照度計、輝度計、色彩計、紫外線強度計、写真用露出計、写真用カラーメーター、スポットメーター、光パワーメーター等の測光機器に好適な受光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測光機器の受光装置は、その測光機器の測定目的に応じた所定の斜入射光特性を有するように設計される。この斜入射光特性とは、受光装置の受光箇所である入射端面への光軸方向に対する入射光の進行方向を入射角度として、その入射角度の変化に対する感度の変化度合いを示すものである。このような測光機器の受光装置では、JIS(日本工業規格(JIS C 1609))に規定されたいわゆる余弦則に近似した斜入射光特性を有することが求められる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような所望の斜入射光特性を実現する手段として、拡散性能を有する材料からなる半球状に突出するグローブ(受光球)を用いて入射面を形成することが知られている。受光装置では、拡散性能を有する半球状のグローブを用いることにより、入射角度が0度から大きくなることに伴う入射角度の変化に対する実効的な受光量の減少度合いを、平坦面に対する入射角度の変化に伴う受光面積の減少度合いよりも低減することができるので、入射角度の増大に伴う受光量の低減を、余弦則よりも小さなものとすることができる。このため、拡散性能を有する半球状のグローブを用いることにより、入射角度に応じた受光量を減ずる方向へと調整するだけで、斜入射光特性を余弦則に近似させることができるので、高い精度で余弦則を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−83008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した構成では、半球状のグローブを突出させるように設ける必要があることから、デザインが制限されるとともに、大きさ寸法(厚み)の増大を招いてしまう。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、その目的は、デザインの自由度の向上や大きさ寸法の低減を可能としつつ高い精度で所望の斜入射光特性を得ることのできる測光機器の受光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、受光箇所への光軸方向に対する入射光の入射角度の変化に対する感度の変化度合いを示す斜入射光特性を所定のものとすべく設計される測光機器の受光装置であって、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板と、該拡散板により拡散された入射光を受光し、その受光量に応じた電気信号を出力する受光部材と、該受光部材と前記拡散板との間に配置され、前記受光部材の入射面における入射光の入射角度を制限する入射角度制限部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の測光機器の受光装置であって、前記入射角度制限部材では、入射光の入射角度の変化に応じた前記受光部材での実効的な受光量の変化の度合いと、該受光部材の指向特性と、を乗算した値を、所望の斜入射光特性とするように、制限する入射角度が設定されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の測光機器の受光装置であって、前記拡散板は、フッ素を含む樹脂材料から形成されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の測光機器の受光装置であって、前記拡散板としてのフッ素を含む樹脂材料は、四フッ化エチレン樹脂であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の測光機器の受光装置であって、前記拡散板は、すりガラスから形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の測光機器の受光装置であって、前記拡散板は、オパールから形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の測光機器の受光装置であって、前記入射角度制限部材は、非透過材料からなる板部材に貫通孔が設けられて形成されており、入射端側の開口の径寸法と、出射端側の開口の径寸法と、前記入射端開口から前記出射端開口に至る光軸方向で見た長さ寸法と、の比により、制限する角度の大きさを設定することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の測光機器の受光装置であって、前記入射角度制限部材は、光軸上で対を為す2つの絞りから形成されており、入射端側の前記絞りの内径寸法と、出射端側の前記絞りの内径寸法と、前記両絞りの光軸方向で見た間隔寸法と、の比により、制限する角度の大きさを設定することを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の測光機器は、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の測光機器の受光装置が搭載されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の測光機器の受光装置によれば、デザインの自由度の向上や大きさ寸法の低減を可能としつつ高い精度で所望の斜入射光特性を容易に得ることができる。
【0016】
上記した構成に加えて、前記入射角度制限部材では、入射光の入射角度の変化に応じた前記受光部材での実効的な受光量の変化の度合いと、該受光部材の指向特性と、を乗算した値を、所望の斜入射光特性とするように、制限する入射角度が設定されていることとすると、任意の指向特性を有する受光部材を用いて所望の斜入射光特性を適切に得ることができる。
【0017】
上記した構成に加えて、前記拡散板は、フッ素を含む樹脂材料から形成されていることとすると、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板を容易に形成することができる。
【0018】
上記した構成に加えて、前記拡散板としてのフッ素を含む樹脂材料は、四フッ化エチレン樹脂であることとすると、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板を容易に形成することができる。
【0019】
上記した構成に加えて、前記拡散板は、すりガラスから形成されていることとすると、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板を容易に形成することができる。
【0020】
上記した構成に加えて、前記拡散板は、オパールから形成されていることとすると、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板を容易に形成することができる。
【0021】
上記した構成に加えて、前記入射角度制限部材は、非透過材料からなる板部材に貫通孔が設けられて形成されており、入射端側の開口の径寸法と、出射端側の開口の径寸法と、前記入射端開口から前記出射端開口に至る光軸方向で見た長さ寸法と、の比により、制限する角度の大きさを設定することとすると、簡易に入射角度制限部材を形成することができる。
【0022】
上記した構成に加えて、前記入射角度制限部材は、光軸上で対を為す2つの絞りから形成されており、入射端側の前記絞りの内径寸法と、出射端側の前記絞りの内径寸法と、前記両絞りの光軸方向で見た間隔寸法と、の比により、制限する角度の大きさを設定することとすると、簡易に入射角度制限部材を形成することができるとともに、2つの絞りの間の空間を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本願発明に係る測光機器の一例としての照度計50における受光装置10の構成を模式的に示す説明図である。
【図2】図1の受光装置10を光軸方向に分解して示す説明図である。
【図3】赤外線吸収フィルタ13の分光透過率を示すグラフであり、縦軸が分光透過率(%)を示し、横軸が波長(nm)を示している。
【図4】標準分光視感効率V(λ)を示すグラフであり、縦軸が最大感度を基準とする感度の比率を示し、横軸が波長(nm)を示している。
【図5】干渉フィルタ15に形成されたロングパス干渉膜とショートパス干渉膜との分光透過率を示すグラフであり、縦軸が透過率(%)を示し、横軸が波長(nm)を示している。
【図6】光電変換素子17の分光応答度PD(λ)を示すグラフであり、縦軸が最大感度を基準とする応答度の比率を示し、横軸が波長(nm)を示している。
【図7】入射角度の異なる入射光に対する干渉フィルタ15の分光透過率を示すグラフであり、縦軸が分光透過率(%)を示し、横軸が波長(nm)を示している。
【図8】干渉フィルタ15における平均角度合成分光透過率Fm´(λ)と平均角度合成分光透過率比Fm(λ)と分光透過率F0(λ)とを示すグラフであり、縦軸が分光透過率(分光透過率比)(%)を示し、横軸が波長(nm)を示している。
【図9】JISに規定された余弦則を示すグラフであり、縦軸が感度比を示し、横軸が受光装置に対する入射角度(度)を示している。
【図10】光電変換素子17の指向特性を示すグラフであり、縦軸が入射角度が0度のときの感度を基準とする感度の比率を示し、横軸が光電変換素子17の受光面17aに対する入射角度(度)を示している。
【図11】受光装置101の構成を模式的に示す図1と同様の説明図である。
【図12】受光装置102の説明図であり、(a)は正面(被測定箇所側)から見た様子を示し、(b)は図1と同様に構成を模式的に示している。
【図13】CIEで規定された等色関数x(λ)、y(λ)、z(λ)を示すグラフであり、縦軸が分光応答度の比率を示し、横軸が波長(nm)を示している。
【図14】実施例1の受光装置103の構成を模式的に示す説明図である。
【図15】比較例としての受光装置203の構成を模式的に示す説明図である。
【図16】受光装置103および受光装置203の斜入射光特性における余弦則からの誤差を示すグラフであり、縦軸が余弦則からの誤差率(%)を示し、横軸が受光装置に対する入射角度(度)を示している。
【図17】実施例2の受光装置104の構成を模式的に示す説明図である。
【図18】比較例としての受光装置204の構成を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本願発明に係る測光機器の受光装置の発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0025】
先ず、本願発明に係る測光機器の受光装置の概念について説明する。図1は、本願発明に係る測光機器の一例としての照度計50における受光装置10の構成を模式的に示す説明図であり、図2は、図1の受光装置10を光軸方向に分解して示す説明図である。図3は、赤外線吸収フィルタ13の分光透過率を示すグラフであり、縦軸が分光透過率(%)を示し、横軸が波長(nm)を示している。図4は、標準分光視感効率V(λ)を示すグラフであり、縦軸が最大感度を基準とする感度の比率を示し、横軸が波長(nm)を示している。図5は、干渉フィルタ15に形成されたロングパス干渉膜およびショートパス干渉膜の分光透過率を示すグラフであり、縦軸が分光透過率(%)を示し、横軸が波長(nm)を示している。この図5では、ショートパス干渉膜の分光透過率を実線で示し、ロングパス干渉膜の分光透過率を一点鎖線で示している。図6は、光電変換素子17の分光応答度PD(λ)を示すグラフであり、縦軸が最大感度を基準とする応答度の比率を示し、横軸が波長(nm)を示している。図7は、入射角度の異なる入射光に対する干渉フィルタ15の分光透過率を示すグラフであり、縦軸が分光透過率(%)を示し、横軸が波長(nm)を示している。この図7では、入射角度が0度の分光透過率F0(λ)を実線で示し、入射角度が15度分光透過率F15(λ)を破線で示し、入射角度が30度の分光透過率F30(λ)を一点鎖線で示し、入射角度が45度の分光透過率F45(λ)を二点鎖線で示している。図8は、干渉フィルタ15における平均角度合成分光透過率Fm´(λ)と平均角度合成分光透過率比Fm(λ)と分光透過率F0(λ)とを示すグラフであり、縦軸が分光透過率(分光透過率比)(%)を示し、横軸が波長(nm)を示している。なお、図8では、入射角度が0度の分光透過率F0(λ)を実線で示し、分光透過率G(λ)を考慮していない平均角度合成分光透過率比Fm(λ)を一点鎖線で示し、分光透過率G(λ)を考慮した平均角度合成分光透過率比Fm(λ)を二点鎖線で示している。図9は、JISに規定された余弦則を示すグラフであり、縦軸が感度比を示し、横軸が受光装置に対する入射角度(度)を示している。図10は、光電変換素子17の指向特性を示すグラフであり、縦軸が入射角度が0度のときの感度を基準とする感度の比率を示し、横軸が光電変換素子17の受光面17aに対する入射角度(度)を示している。
【0026】
受光装置10は、本願発明に係る測光機器の一例である照度計における受光装置として構成されたものである。この受光装置10は、測定箇所に入射してくる光を、単位面積当たりにあらゆる方向から入射する光束に換算して示す照度を計測すべく照度計に搭載されている。
【0027】
本願発明に係る測光機器の受光装置10は、基本的な概念として、デザインの自由度の向上や大きさ寸法の低減を可能としつつ高い精度で所望の斜入射光特性を得ることを目的とし、光軸上に、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板と、そこで拡散された入射光の受光量に応じた電気信号を出力する受光部材と、を有し、その受光部材の入射面における入射光の入射角度を制限する入射角度制限部材を受光部材と拡散板との間に配置して、構成することにより、半球状のグローブを用いることなく高い精度で所望の斜入射光特性を容易に得ることを可能とするものである。
【0028】
受光装置10は、図1および図2に示すように、光軸方向に沿って被測定箇所側から順に、カバー板11と拡散板12と赤外線吸収フィルタ13とスペーサ14と干渉フィルタ15と絞り16と光電変換素子17とを備える。
【0029】
カバー板11は、基本的に拡散板12を保護するものである。このカバー板11は、外方からの拡散板12への接触を防止すべく当該拡散板12を覆うものであり、この例では、無色透明のアクリル樹脂材料から形成されて板状を呈する。カバー板11では、外側の面(11a)で被測定箇所を照射する光(図1に示す矢印参照)を、拡散板12へ向けてすなわち受光装置10内へと取り入れる。以下では、カバー板11の外側の面(11a)から受光装置10内に取り入れられた光を入射光という。このため、カバー板11における外側の面は、受光装置10における入射端面11aとなり、この入射端面11aすなわちカバー板11は、受光装置10における受光箇所の目安となる。なお、カバー板11は、拡散板12を保護できるものであればよいことから、例えば、拡散板12における拡散作用を補助すべく乳白色のアクリル樹脂材料(PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂))から形成されていてもよく、半球状を呈していてもよい。また、カバー板11は、基本的に拡散板12を保護するものであることから、光学的な作用の観点からは設けなくてもよい。
【0030】
拡散板12は、入射光を拡散するものである。この拡散板12は、完全拡散面に近い拡散性能を有する材料から形成され、板状を呈する。ここで言う完全拡散面に近い拡散性能とは、少なくとも光軸方向に対する所定の角度範囲内において、入射光の拡散板12への入射角度の差異に拘らず輝度が一様となる拡散面であることをいい、入射光の拡散板12への入射角度の差異に拘らずどの方向から見ても輝度が一様となる拡散光とすることができることをいう。ここで言う所定の角度範囲とは、入射光を進行させるべく90度以内の所定の大きさであり、後述する入射角度制限部材(この例ではスペーサ14(絞り16も含む場合あり))の制限角度よりも大きいことが望ましい。このような材料としては、フッ素を含む樹脂材料やすりガラス、オパール等があげられる。この例では、拡散板12は、フッ素を含む樹脂材料の一例としての白色PTFE(四フッ化エチレン樹脂)から形成されている。この拡散板12を経た入射光は、拡散光とされて赤外線吸収フィルタ13に到達する。
【0031】
赤外線吸収フィルタ13は、基本的に、測光機器(この例では照度計)において感度を持つ必要のない長波長帯域(可視領域よりも長波長帯域)の成分の透過を阻むものであり、主に赤外線域の透過を阻むものである。この例では、赤外線吸収フィルタ13は、図3に示すような、分光透過率特性を有しており、透過した入射光における略900nm以上の波長帯域の波長成分を完全に吸収して(透過を阻んで)いる。この赤外線吸収フィルタ13を経た入射光は、所定値以上の長波長帯域の波長成分を有さない透過光とされてスペーサ14に到達する。
【0032】
スペーサ14は、入射角度制限部材を構成するものであり、干渉フィルタ15の入射面15bにおける入射光の入射角度と、光電変換素子17の受光面17aにおける入射光の入射角度と、を制限する機能を有している。このスペーサ14は、この例では、所定の厚さ寸法を有する非透過材料からなる板部材に貫通孔14aが設けられて形成された筒状を呈し、その内周壁面が光の反射を防止するものとされている。このスペーサ14では、被測定箇所側の入射端開口14bと、干渉フィルタ15側(光電変換素子17側)の出射端開口14cと、の中心位置が光軸上に位置するものとされている。スペーサ14では、入射端開口14bから貫通孔14a内へと進行した入射光のうち、貫通孔14aの内周壁面に至ることなく出射端開口14cから貫通孔14a外へと進行した角度成分のみを通過させることにより、干渉フィルタ15の入射面15bや光電変換素子17の受光面17aにおける入射光の入射角度を制限する。このため、スペーサ14では、入射端開口14bの径寸法と、出射端開口14cの径寸法と、入射端開口14bから出射端開口14cに至る光軸方向で見た長さ寸法(スペーサ14の厚さ寸法)と、の比により、制限する角度の大きさを設定することができる。この制限する角度の大きさについては、後に詳細に説明する。スペーサ14を経た入射光は、進行方向(光軸方向)に対して、所定の角度以下の角度成分(光束)のみが干渉フィルタ15に到達する。
【0033】
干渉フィルタ15は、受光装置10における分光応答度特性を後述する標準分光視感効率V(λ)(図4参照)に近似させるべく、後述する光電変換素子17の分光応答度PD(λ)(図6参照)を考慮して設定された分光透過率特性を有するものである。この干渉フィルタ15は、板状のガラス基板15aに様々な屈折率を有する誘電体材料による光学薄膜が積層されて形成されている。干渉フィルタ15(ガラス基板15a)は、この例では、被測定箇所側(スペーサ14側)の面である入射面15bにロングパス干渉膜(図5の一点鎖線参照)が形成され、反対側の出射面15cにショートパス干渉膜(図5の実線参照)が形成されている。この入射面15bと出射面15cとは、互いに平行とされており、光軸に直交するものとされている。なお、この例では、板状のガラス基板15aを用いて干渉フィルタ15を形成しているが、光学的に透過の特性を持つ基材であれば、例えば、プラスチックや石英であってもよく、この例に限定されるものではない。
【0034】
このショートパス干渉膜は、図5に実線で示すように、300nmから略570nmまでの波長帯域では略100%の透過率とされ、それ以上の波長帯域では急激に透過率が減少し、略700nmを越える波長帯域の透過率が略0%とされている。また、ロングパス干渉膜は、図5に一点鎖線で示すように、略400nm以下の波長帯域では透過率が略0%とされ、略450nmから略570nmまでの波長帯域では急激に透過率が増加し、それ以上の波長帯域では略100%の透過率とされ、略900nm以上の波長帯域では透過率を規定していない。このため、干渉フィルタ15では、短波長側の特性がロングパス干渉膜により形成され、かつ長波長側の特性がショートパス干渉膜に形成された分光透過率F(λ)(図5でドットを付した領域)を有している。この分光透過率の設定方法については、後に詳細に説明する。この干渉フィルタ15を経た入射光は、所定の分光分布特性の透過光とされて絞り16に到達する。
【0035】
絞り16は、スペーサ14により角度が制限された入射光の、光電変換素子17の受光面17aにおける入射角度を微調整するものである。この絞り16は、受光装置10における斜入射光特性を、後述する余弦則(図9参照)に近似させるべく、干渉フィルタ15を経た入射光のうち光電変換素子17の受光面17aに到達する光束(受光量)を制限する。この斜入射光特性とは、受光装置10において、その受光箇所である入射端面11aへの光軸方向に対する入射光の進行方向を入射角度として、その入射角度の変化に対する感度の変化度合いを示すものである。絞り16は、非透過材料からなる板部材に貫通孔が設けられて形成されている。このため、この例では、スペーサ14の入射端開口14bと、絞り16の貫通孔と、により、光電変換素子17の受光面17aにおける入射角度を制限する入射角度制限部材が構成されている。なお、絞り16は、光電変換素子17の受光面17aにおける入射光の入射角度の微調整のために設けられるものであることから、スペーサ14により十分に入射角度の制限がなされていれば、設けなくてもよい。この場合は、スペーサ14(その入射端開口14bおよび出射端開口14c)により、光電変換素子17の受光面17aにおける入射角度を制限する入射角度制限部材が構成されることとなる。この絞り16を経た入射光は、所定の入射角度以下(所定の角度以下の角度成分のみ)とされて、光電変換素子17に到達する。
【0036】
光電変換素子17は、受光装置10としての測定結果を出力するものである。この光電変換素子17は、所定の大きさ寸法の受光面17aを有し、その受光面17aに入射した光の強度(受光量)に応じた電気信号(例えば、電流値)を、搭載された測光機器(この例では照度計50)の演算制御部(図示せず)へと出力する。光電変換素子17は、この例では、図6に示す分光応答度PD(λ)を有するフォトダイオードが用いられている。この光電変換素子17は、受光面17aに入射した入射光における分光分布特性に、自らの分光応答度PD(λ)(図6参照)を乗算した電気信号(例えば、電流値)を出力する。このため、光電変換素子17は、受光量に応じた電気信号を出力する受光部材として機能する。
【0037】
これにより、受光装置10(照度計50)は、標準分光視感効率V(λ)(図4参照)に近似した分光応答度特性を有するとともに、余弦則(図9参照)に近似した斜入射光特性を有するものとなる。このことについて、以下で詳細に説明する。
【0038】
図4に示す標準分光視感効率(標準比視感度)V(λ)は、CIE(国際照明委員会)で規定された人間の視感(感度)を代表するもの、すなわち可視放射(可視光線)が人間の目に入ったときに感じる波長に対する明るさの知覚の度合い示す尺度である。受光装置10では、基本的に干渉フィルタ15の分光透過率特性(図5参照)と、光電変換素子17の分光応答度PD(λ)(図6参照)と、の積により分光応答度が決まる。ここで、光電変換素子17の分光応答度PD(λ)は、使用する素子の種類によってほぼ決まってしまうので、干渉フィルタ15の分光透過率特性を調節することにより、受光装置10の分光応答度特性を設定している。
【0039】
この干渉フィルタ15は、上述したように、ガラス基板15aに複数の光学薄膜を積層することにより、入射面15bにロングパス干渉膜(図5参照)を設けるとともに、かつ反対側の出射面15cにショートパス干渉膜(図5参照)を設けて形成されている。干渉フィルタ15では、入射面15bに形成されたロングパス干渉膜により、標準分光視感効率V(λ)における短波長側に相当する箇所の分光透過率特性を形成し、出射面15cに形成されたショートパス干渉膜により、標準分光視感効率V(λ)における長波長側に相当する箇所の分光透過率特性を形成している(図5参照)。
【0040】
ここで、干渉フィルタ15では、その性質上、透過波長に入射角度依存性があることが知られている。この入射角度依存性とは、互いに平行とされた入射面15bおよび出射面15cの法線方向に対する入射光の進行方向が為す角度を入射角度として、その入射角度が増大することにより、分光透過率特性が短波長側へと移動(シフト)することをいう。例えば、図7に示すように、干渉フィルタ15において、入射角度が0度の入射光における分光透過率F0(λ)が実線で示すような曲線である場合、入射光における入射角度が15度となると破線で示す分光透過率F15(λ)のように短波長側へと移動する。同様に、入射光における入射角度が30度となると一点鎖線で示す分光透過率F30(λ)のように分光透過率F15(λ)に対してさらに短波長側へと移動し、入射光における入射角度が45度となると二点鎖線で示す分光透過率F45(λ)のように分光透過率F30(λ)に対してさらに短波長側へと移動する。この入射角度依存性では、入射角度が大きいほど、入射角度の変化に対する移動量(波長の増減方向で見た特性線のシフト量)の割合が大きくなる、という特徴と、長い波長領域ほど移動量(波長の増減方向で見た特性線のシフト量)の割合が大きくなる、という傾向がある。これにより、受光装置10では、入射面15bのロングパス干渉膜と出射面15cのショートパス干渉膜とにより構成された干渉フィルタ15を単に用いるだけでは、干渉フィルタ15における透過波長の入射角度依存性の影響により、入射光の干渉フィルタ15への入射角度に応じて分光応答度特性が変化してしまい、安定して標準分光視感効率V(λ)(図4参照)に近似した分光応答度特性を得ることができなくなってしまう。
【0041】
また、干渉フィルタ15では、その性質上、透過波長に偏光依存性があることが知られている。この偏光依存性とは、斜入射光が入射した場合、入射面に平行な方向に振動するP偏光と入射面に垂直な方向に振動するS偏光とでは分光透過率が異なることを言う。これにより、受光装置10では、入射面15bのロングパス干渉膜と出射面15cのショートパス干渉膜とにより構成された干渉フィルタ15を単に用いるだけでは、干渉フィルタ15における透過波長の偏光依存性の影響により、入射光における偏光成分の大きさの差異に応じて分光応答度特性が変化してしまい、安定して標準分光視感効率V(λ)(図4参照)に近似した分光応答度特性を得ることができなくなってしまう。
【0042】
このため、本発明に係る受光装置10では、干渉フィルタ15よりも被測定箇所側の位置に完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板12を設けるとともに、その拡散板12と干渉フィルタ15との間に、干渉フィルタ15の入射面15bにおける入射光の入射角度を制限するスペーサ14を設けている。この受光装置10では、カバー板11(入射端面11a)を経て入射した入射光が、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板12を透過することにより拡散光とされることから、カバー板11への入射角度の差異に拘らず種々の進行方向の光束(角度成分)を有することとなり、赤外線吸収フィルタ13、スペーサ14および干渉フィルタ15へと向かう。すなわち、赤外線吸収フィルタ13、スペーサ14および干渉フィルタ15へと向かう入射光では、カバー板11への入射角度の差異に拘らず角度成分の分布が略等しいものとされている。
【0043】
この入射光は、赤外線吸収フィルタ13を経て、入射端開口14bからスペーサ14の内方(貫通孔14a内)へと進行し、その内周壁面へと向かうことなく出射端開口14cに到達した光束(角度成分)のみが、スペーサ14を通過する。このため、スペーサ14を経た入射光では、入射端開口14bの径寸法と出射端開口14cの径寸法と入射端開口14bから出射端開口14cに至る光軸方向で見た長さ寸法との比に応じた角度以下の進行方向の光束(角度成分)のみを有していることとなる。このスペーサ14における制限角度は、後述する干渉フィルタ15における合成角度範囲の最大値と合致されていることが望ましい。この例では、スペーサ14は、制限角度が45度に設定されており、45度よりも大きい光束(角度成分)を通過させないものとされている。このスペーサ14を通過した入射光が、干渉フィルタ15に入射する。
【0044】
このように、干渉フィルタ15(その入射面15b)には、拡散板12により拡散された入射光のうち、スペーサ14により制限された角度(この例では45度)以下の角度成分(光束)のみが到達する。このため、受光装置10では、干渉フィルタ15への入射光として、0度からスペーサ14の制限角度(45度)までの間の進行方向の光束(角度成分)を略均等に進行させることができる。
【0045】
これに加えて、本発明に係る受光装置10では、0度からスペーサ14の制限角度(45度)までの間の分光透過率特性(図7の符号F0(λ)からF45(λ)参照)の平均値である平均角度合成分光透過率Fm´(λ)(図8参照)に基づいて算出される平均角度合成分光透過率比Fm(λ)と、光電変換素子17における分光応答度PD(λ)(図6参照)と、を乗算した値が、標準分光視感効率V(λ)(図4参照)となるように、干渉フィルタ15の分光透過率F(λ)を設定している。この関係式は、次式(1)、(2)、(3)で表すことができる。なお、実際には、カバー板11と拡散板12と赤外線吸収フィルタ13とにおける分光透過率も問題となることから、これら全体の分光透過率をG(λ)として、次式(1)、(2)、(4)により干渉フィルタ15の分光透過率F(λ)を設定している。ここで、λは波長(nm)を示している。また、平均角度合成分光透過率比Fm(λ)とは、透過率が最大となる波長を100%とした場合の分光透過率の比を示している。
【数1】
【0046】
このため、干渉フィルタ15では、0度からスペーサ14の制限角度(45度)までを合成した角度に対する平均角度合成分光透過率比Fm(λ)と、光電変換素子17の分光応答度PD(λ)と、の積が標準分光視感効率V(λ)となるように、分光透過率F(λ)が設定されていることから、図8に示すように、入射角度が0度であるときの特性線すなわち分光透過率F0(λ)の特性線が、平均角度合成分光透過率比Fm(λ)の特性線に比較して、長波長側に移動(シフト)している。
【0047】
また、干渉フィルタ15では、0度からスペーサ14の制限角度(45度)までを合成した角度に対する平均角度合成分光透過率比Fm(λ)と、光電変換素子17の分光応答度PD(λ)と、の積が標準分光視感効率V(λ)となるように、分光透過率F(λ)が設定されていることから、所定の角度に対する分光透過率F(λ)がリップルを有する特性線(図7の分光透過率F30(λ)や分光透過率F45(λ)の特性線参照)である場合であっても、図8に示すように平均角度合成分光透過率比Fm(λ)としては滑らかな特性線とすることができ、より適切に標準分光視感効率V(λ)に近似させることができる。
【0048】
図9に示す余弦則は、JIS(日本工業規格(JIS C 1609))に規定された受光装置への入射光の入射角度の変化に対する感度の変化度合いの基準値を示すものであって、入射光の入射角度の余弦に等しいものである。この余弦則は、コサイン特性ともいう。受光装置10では、上述した斜入射光特性を、余弦則に近似させることが求められており、この余弦則からの誤差によりJISでは階級の分類が規定されている。
【0049】
ここで、受光装置では、測定のための受光箇所(本願発明の受光装置10では入射端面11aに相当する)として単に平坦な入射端面を設けても、入射光の入射角度の変化に対する感度の変化度合い(斜入射光特性)を、入射光の入射角度の余弦(余弦則)と等しいものとすることは困難である。これは、入射端面が所定の面積を有するとともに入射光もその進行方向に直交する面で見ると所定の面積を有することに起因して入射光の入射角度の変化に伴う入射光の入射端面への入射量の変化が入射角度の余弦とは等しくならないことや、各光学部品における入射角度に対する反射率や透過率は変化すること等が影響しているものと考えられる。また、光電変換素子では、受光面に対して入射光の進行方向が為す入射角度に応じて感度が変化するいわゆる指向特性(図10参照)を有していることも原因として考えられる。
【0050】
このため、本発明に係る受光装置10では、入射光が光電変換素子17(受光面17a)へと至る光路中(光電変換素子17よりも被測定箇所側の位置)に完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板12を設けるとともに、その拡散板12と光電変換素子17との間に、その受光面17aにおける入射光の入射角度を制限する入射角度制限部材(この例ではスペーサ14および絞り16)を設けている。この受光装置10では、カバー板11(入射端面11a)を経て入射した入射光が、拡散板12を透過することにより拡散光とされることから、カバー板11への入射角度の差異に拘らずあらゆる進行方向の光束(角度成分)を有することとなり、赤外線吸収フィルタ13、スペーサ14および干渉フィルタ15へと向かう。
【0051】
この入射光は、赤外線吸収フィルタ13を経て、入射端開口14bからスペーサ14の内方(貫通孔14a内)へと進行し、その内周壁面へと向かうことなく出射端開口14cに到達した光束(角度成分)のみが、スペーサ14を通過することができる。このため、スペーサ14を経た入射光では、入射端開口14bの径寸法と出射端開口14cの径寸法と入射端開口14bから出射端開口14cに至る光軸方向で見た長さ寸法との比に応じた角度以下の進行方向の光束(角度成分)のみを有していることとなる。このスペーサ14における制限角度は、入射端面11aに対する入射光の入射角度の変化に応じたスペーサ14の入射端開口14bへと至る入射光としての光束(光量)の変化の度合いと、光電変換素子17の指向特性(図10参照)と、を考慮しつつ、入射端面11aに対する入射光の入射角度の変化に対する感度特性(斜入射光特性)を余弦則(図9参照)に一致させるように、設定されている。すなわち、スペーサ14における制限角度は、入射端面11aに対する入射光の入射角度の変化に応じた光電変換素子17の受光面17aへと至る実効的な入射光としての光束(光量)の変化の度合いと、光電変換素子17の指向特性(図10参照)と、を乗算した値を、余弦則(図9参照)とするように、設定されている。この例では、スペーサ14は、制限角度が45度に設定されており、45度よりも大きい進行方向の光束(角度成分)を通過させないものとされている。このスペーサ14を通過した入射光が、干渉フィルタ15を経て光電変換素子17の受光面17aに入射する。
【0052】
このように、光電変換素子17の受光面17aには、拡散板12により拡散された入射光のうち、スペーサ14により制限された角度(この例では45度)以下の角度成分(光束)のみが到達する。このため、受光装置10では、光電変換素子17の受光面17aへの入射光として、0度からスペーサ14の制限角度(45度)までの間の進行方向の光束(角度成分)を略均等に進行させることができる。また、拡散板12により拡散された後に干渉フィルタ15を経ることにより、光電変換素子17の受光面17aに入射する入射光では、振動方向が入射面に対して一様な自然光となるので、偏光の影響をなくすことができる。なお、この例では、干渉フィルタ15と光電変換素子17との間に、絞り16が設けられており、この絞り16により干渉フィルタ15を経た入射光のうち光電変換素子17の受光面17aに到達する入射光の入射角度が微調整されているので、光電変換素子17(その受光面17a)に対しては、スペーサ14の入射端開口14bの径寸法と、絞り16の内径寸法と、入射端開口14bから絞り16までの光軸方向の長さ寸法と、により制限された角度以下の角度成分(光束)のみが受光面17aに到達している。このため、この例では、スペーサ14と絞り16とにより、光電変換素子17(その受光面17a)における入射光の入射角度を制限する入射角度制限部材が構成されていることとなるが、この絞り16による入射角度の微調整はスペーサ14による角度制限の作用を補助するものであることから、以下の説明では絞り16による微調整は考えないものとする。
【0053】
このため、光電変換素子17では、スペーサ14(入射角度制限部材)により角度が制限された進行方向の光束(角度成分)のみが受光面17aに入射し、受光面17aにおける入射光の入射角度に対する感度(指向特性(図10参照))に応じて電気信号(例えば、電流値)を出力する。このとき、この出力された電気信号では、スペーサ14における制限角度が、入射端面11aに対する入射光の入射角度の変化に応じた光電変換素子17の受光面17aへと至る実効的な入射光としての光束(光量)の変化の度合いと、光電変換素子17の指向特性(図10参照)と、の積を、余弦則(図9参照)とするように、設定されていることから、斜入射光特性が余弦則(図9参照)に近似することとなる。
【0054】
よって、本発明に係る受光装置10では、入射端面11aに対する入射光の入射角度の変化に応じたスペーサ14の入射端開口14bへと至る入射光としての光束(光量)の変化の度合いと、拡散板12による入射光の拡散と、スペーサ14による制限角度と、光電変換素子17の指向特性(図10参照)と、により、斜入射光特性が余弦則(図9参照)に近似されている。なお、この例では、上述したように、スペーサ14における制限角度は、干渉フィルタ15における合成角度範囲の最大値と合致されて設定されていることから、入射端面11aに対する入射光の入射角度の変化に対する感度特性を余弦則(図9参照)に近似させるために、干渉フィルタ15と光電変換素子17との間に絞り16を設け、受光面17aに到達する入射光の入射角度、すなわち受光面17aでの実行的な受光量の変化の度合いの微調整を行う構成としている。
【0055】
このように、本発明に係る受光装置10では、入射光を拡散板12で拡散し、その拡散された入射光における角度成分をスペーサ14で制限し、その角度成分が制限された入射光における波長成分を干渉フィルタ15で制限するものであることから、干渉フィルタ15における透過波長の入射角度依存性と偏光依存性との影響を低減することができ、高い精度で所望の分光応答度特性(この例では標準分光視感効率V(λ)に近似する特性)を得ることができる。
【0056】
また、受光装置10では、干渉フィルタ15が、入射面15bへの入射角度で見て0度から所定の大きさまでの間の分光透過率特性の平均値に基づく平均角度合成分光透過率比Fm(λ)と、光電変換素子17の分光応答度PD(λ)と、の積が標準分光視感効率V(λ)となるように設定されていることから、拡散板12で拡散されることにより種々の角度成分を略均等に有している入射光に適合する分光透過率特性を有していることとなるので、所望の分光応答度特性(この例では標準分光視感効率V(λ)に近似する特性)を適切に得ることができる。
【0057】
さらに、受光装置10では、干渉フィルタ15が、入射面15bへの入射角度で見て0度から所定の大きさまでの間の分光透過率特性の平均値に基づく平均角度合成分光透過率比Fm(λ)と、光電変換素子17の分光応答度PD(λ)と、カバー板11と拡散板12と赤外線吸収フィルタ13との分光透過率をG(λ)と、の積が標準分光視感効率V(λ)となるように設定されていることから、拡散板12で拡散されることにより種々の角度成分を略均等に有している入射光により適合する分光透過率特性を有していることとなるので、所望の分光応答度特性(この例では標準分光視感効率V(λ)に近似する特性)を適切に得ることができる。
【0058】
受光装置10では、干渉フィルタ15の設定の基準としての平均角度合成分光透過率比Fm(λ)が、0度からスペーサ14(入射角度制限部材)の制限角度(上記した例では45度)までの間の平均値である平均角度合成分光透過率Fm´(λ)(図8参照)に基づいて算出されていることから、スペーサ14を経た入射光が有する角度成分と干渉フィルタ15の設定の対象とされた角度成分とが等しいため、スペーサ14により角度成分が制限された入射光の波長成分を干渉フィルタ15でより適切に制限する(所定の分光透過率で透過させる)ことができるので、所望の分光応答度特性(この例では標準分光視感効率V(λ)に近似する特性)をより適切に得ることができる。
【0059】
受光装置10では、スペーサ14の制限角度が、干渉フィルタ15の分光透過率特性に適合されて設定されていることから、スペーサ14により角度成分が制限された入射光の波長成分を干渉フィルタ15でより適切に制限することができるので、所望の分光応答度特性(この例では標準分光視感効率V(λ)に近似する特性)をより適切に得ることができる。
【0060】
受光装置10では、干渉フィルタ15において、入射面15bにロングパス干渉膜が形成され、かつ出射面15cにショートパス干渉膜が形成されていることから、干渉フィルタ15における透過波長の入射角度依存性の影響をより低減することができる。これは、以下のことによる。スペーサ14の入射端開口14bの径寸法に対して、光電変換素子17の受光面17a上での実効的な径寸法(主に出射端開口14cの径寸法もしくは絞り16の内径寸法により決定される実効的な受光面積)が小さく設定されることにより、干渉フィルタ15を経て光電変換素子17の受光面17aへと入射する光路で見た出射面15c上での面積を入射面15b上での面積よりも小さくすることができることから、スペーサ14(場合によっては絞り16も含む)による入射面15bへの入射光における入射角度の制限値よりも、スペーサ14(場合によっては絞り16も含む)による出射面15cへの入射光における入射角度の制限値の方が、実質的に大きくなる(より狭い角度成分のみの通過を許す)ことが考えられる。ここで、光学薄膜(干渉膜(干渉フィルタ15))では、上述したように、長い波長領域ほど透過波長の入射角度依存性の影響による分光透過率特性線の移動量の割合が大きくなる。これらのことから、干渉フィルタ15として設定する分光透過率において、短波長側の分光透過率特性を形成するロングパス干渉膜を入射面15bに設け、かつ長波長側の分光透過率特性を形成するショートパス干渉膜を出射面15cに設けることにより、入射角度依存性の影響が大きい長波長帯域における入射角度の制限値を実質的に大きくすることができる、換言すると出射面15cに到達する入射光における角度成分をより制限することができるので、透過波長の入射角度依存性の影響を小さくすることができる。
【0061】
受光装置10では、赤外線吸収フィルタ13により入射光における略900nm以上の波長帯域の波長成分が完全に吸収されていることから、干渉フィルタ15における光学薄膜の層数(積層数)を低減しつつ所望の分光応答度特性(この例では標準分光視感効率V(λ)に近似する特性)をより適切に得ることができる。これは、以下のことによる。干渉フィルタ15は、上述したようにガラス基板15aに様々な屈折率を有する誘電体材料による光学薄膜が積層されることにより、分光透過率特性が設定されている。この分光透過率特性は、光学薄膜の層数(積層数)を増やすことにより、非透過帯域(反射性能を有する波長帯域)を拡大することができる。干渉フィルタ15では、受光装置10における分光応答度特性を標準分光視感効率V(λ)に近似すべく分光透過率特性が設定されているが、赤外線吸収フィルタ13により入射光における略900nm以上の波長帯域の波長成分を完全に吸収させることができることから、赤外線吸収フィルタ13があれば略900nm以上の波長帯域に対する反射性能を有する必要がない。このため、干渉フィルタ15の分光透過率F(λ)の長波長側に相当する箇所を形成するショートパス干渉膜に、長波長帯域における反射性能を持たせる必要がなくなるので、当該ショートパス干渉膜を図5に二点鎖線で示すように長波長帯域の透過を許すような特性とすることができる。このため、ショートパス干渉膜における光学薄膜の層数(積層数)を低減することができ、干渉フィルタ15における光学薄膜の層数(積層数)を低減することができる。
【0062】
受光装置10では、赤外線吸収フィルタ13により入射光における略900nm以上の波長帯域の波長成分が完全に吸収されているとともに、干渉フィルタ15における透過波長の入射角度依存性の影響が低減されていることから、干渉フィルタ15における光学薄膜の層数(積層数)をより低減しつつ所望の分光応答度特性(この例では標準分光視感効率V(λ)に近似する特性)をより適切に得ることができる。これは、以下のことによる。上述したように、赤外線吸収フィルタ13により入射光における略900nm以上の波長帯域の波長成分が完全に吸収されていることから、干渉フィルタ15では、略900nm以上の波長帯域に対する反射性能が必要なくなる。ところが、干渉フィルタ15では、透過波長の入射角度依存性の影響により分光透過率特性が短波長側へと移動する場面があることから、この移動分を考慮して干渉フィルタ15における長波長帯域に対する反射性能を設定する必要がある。本願発明の構成では、干渉フィルタ15における透過波長の入射角度依存性の影響を低減することができることから、透過波長の入射角度依存性の影響による分光透過率特性の短波長側への移動分として考慮する量を低減することができるので、干渉フィルタ15における長波長帯域に対する反射性能の上限波長をより900nmに近くに設定することができる(図5に二点鎖線で示すような長波長帯域の透過を許す特性線の間にある矢印参照)。このため、ショートパス干渉膜における非透過帯域を拡大することができ、ショートパス干渉膜における光学薄膜の層数(積層数)を低減することができ、干渉フィルタ15における光学薄膜の層数(積層数)を低減することができる。
【0063】
受光装置10では、入射光を拡散板12で拡散し、その拡散された入射光における角度成分をスペーサ14で制限し、その角度成分が制限された入射光を光電変換素子17の受光面17aで受光するものであることから、受光装置10における斜入射光特性、すなわち受光装置10の入射端面11aへの入射光の入射角度の変化に対する感度の変化度合いを、余弦則(図9参照)に近似させることを容易なものとすることができる。これは、以下のことによる。受光装置10では、拡散板12が完全拡散面に近い拡散性能を有していることから、光軸方向(この例では入射端面11aの法線方向)から見た入射光の入射角度の増大傾向の変化に対して、光電変換素子17の指向特性(図10参照)を考慮した受光面17aでの受光量の減少度合いを、平坦面に対する入射角度の増大傾向の変化に伴う受光面積の減少度合いよりも低減することができるので、入射角度の増大に伴う光電変換素子17の受光面17aでの実効的な受光量の低減を、余弦則よりも小さなものとすることができる。このため、受光装置10では、入射角度に応じた受光量を減ずる方向へと調整するだけで、余弦則に適合させることができることとなる。ここで、受光装置10では、拡散板12と光電変換素子17(受光面17a)との間に、拡散板12で拡散された入射光における角度成分を制限するスペーサ14が設けられていることから、このスペーサ14における制限角度を調整することにより、入射角度に応じた受光量を減ずる方向へと調整することができるので、容易に高い精度で余弦則に適合させることができる。ここで、光電変換素子17の指向特性(図10参照)を考慮した受光面17aでの実行的な受光量の減少度合いとは、光電変換素子17が受光面17aに入射した光の強度(受光量)と自らの指向特性とを乗算した大きさを示す電気信号(例えば、電流値)を出力するものであることから、光電変換素子17からの出力値(電気信号)の減少度合いのことをいう。
【0064】
受光装置10では、スペーサ14の制限角度が、入射端面11aに対する入射光の入射角度の変化に応じた光電変換素子17の受光面17aでの実効的な受光量(光電変換素子17からの出力値(電気信号))の変化の度合いと、光電変換素子17の指向特性(図10参照)と、を乗算した値を、余弦則(図9参照)とするように、設定されていることから、任意の指向特性(図10参照)を有する光電変換素子を用いて受光装置10における斜入射光特性を余弦則(図9参照)に高い精度で近似させることができる。
【0065】
受光装置10では、スペーサ14で角度成分が制限された入射光を光電変換素子17の受光面17aで受光させることで、受光装置10における斜入射光特性を余弦則(図9参照)に近似させるために、入射光を拡散する拡散板12が、完全拡散面に近い拡散性能を有する材料(実施例1ではフッ素を含む樹脂材料の一例としての白色PTFE(四フッ化エチレン樹脂))から形成されているので、従来のように半球状のグローブを用いることなく高い精度で余弦則に近似させることができる。
【0066】
受光装置10では、ガラス基板15aに様々な屈折率を有する誘電体材料による光学薄膜が積層して形成した干渉フィルタ15において、0度からスペーサ14の制限角度(45度)までを合成した角度に対する平均角度合成分光透過率Fm´(λ)に基づく平均角度合成分光透過率比Fm(λ)と、光電変換素子17の分光応答度PD(λ)と、の積が標準分光視感効率V(λ)となるように、分光透過率F(λ)が設定されていることから、所定の角度に対する分光透過率F(λ)がリップルを有する特性線(図7の分光透過率F30(λ)や分光透過率F45(λ)の特性線参照)である場合であっても、図8に示すように平均角度合成分光透過率比Fm(λ)としては滑らかな特性線とすることができ、より適切に標準分光視感効率V(λ)に近似させることができる。
【0067】
受光装置10では、拡散板12により入射光を拡散していることから、入射光が偏光である場合であっても、偏光のない自然光の状態に変換することができるので、干渉フィルタ15を用いて高い精度で所望する分光透過率特性を得る、すなわちより適切に標準分光視感効率V(λ)に近似させることができる。
【0068】
受光装置10では、ガラス基板15a(光学的に透過の特性を持つ基材)に様々な屈折率を有する誘電体材料による光学薄膜を積層して形成した干渉フィルタ15を用いて、分光応答度特性の調整を行っていることから、色ガラスフィルタを用いて構成する場合のように環境負荷の高い物質を用いることなく、かつ色ガラスフィルタを用いて構成する場合に比較して厚さ寸法の増大を招くことなく、高い精度で所望する分光透過率特性を得ることができる。
【0069】
受光装置10では、スペーサ14により、干渉フィルタ15に至る入射光における角度成分を所定の角度以下のものに制限することができるので、干渉フィルタ15を透過した光(入射光)において想定していない波長成分が含まれていることを防止することができる。これは、干渉膜を用いた干渉フィルタでは、所定の入射角度を越える光が入射すると、全く想定していない波長成分の光の透過を許してしまうことがあることによる。
【0070】
受光装置10では、ガラス基板15a(光学的に透過の特性を持つ基材)に様々な屈折率を有する誘電体材料による光学薄膜を積層して形成した干渉フィルタ15を用いて、分光応答度特性の調整を行っていることから、色ガラスフィルタや色素フィルムフィルタを用いて構成する場合に比較して、干渉フィルタ15における分光透過率の設定の自由度が高いので、所望の分光応答度特性(この例では標準分光視感効率V(λ)に近似する特性)をより適切に得ることができる。
【0071】
受光装置10では、ガラス基板15a(光学的に透過の特性を持つ基材)に様々な屈折率を有する誘電体材料による光学薄膜を積層して形成した干渉フィルタ15を用いて、分光応答度特性の調整を行っていることから、色ガラスフィルタや色素フィルムフィルタのように熱や紫外線の吸収により分光透過率特性が変化する、ということがないので、熱や紫外線の影響により分光応答度特性が変化することを防止することができ、安定した分光応答度特性を得ることができる。ここで、受光装置10では、赤外線吸収フィルタ13を用いているが、この赤外線吸収フィルタ13は測光機器(この例では照度計)において感度を持つ必要のない長波長帯域の成分の透過を阻むものであって、分光応答度特性の調整に直接影響を及ぼす構成ではないので、赤外線吸収フィルタ13における熱や紫外線の影響が分光応答度特性に及ぶことはない。
【0072】
受光装置10では、スペーサ14に加えて絞り16が設けられていることから、スペーサ14の制限角度を干渉フィルタ15の分光透過率特性に適合させて設定する、すなわち干渉フィルタ15の設定の基準としての平均角度合成分光透過率比Fm(λ)を0度からスペーサ14の制限角度までの間の平均値である平均角度合成分光透過率Fm´(λ)(図8参照)に基づいて算出することで適切に所望の分光応答度特性(この例では標準分光視感効率V(λ)に近似する特性)を得ることができるとともに、スペーサ14の制限角度を絞り16で補正することで、斜入射光特性を余弦則(図9参照)に高い精度で近似させることができる。
【0073】
受光装置10では、光電変換素子17への入射光の入射角度の制限の観点からは、上述した設定を可能とすることを前提として、被測定箇所側から順に拡散板12、スペーサ14および光電変換素子17を配置するとともに上記したような各設定とすることにより、斜入射光特性を余弦則(図9参照)に高い精度で近似させることができることから、拡散性能を有する半球状のグローブ(受光球)を用いる必要がないので、半球状に突出したグローブを非使用時等に保護するために当該グローブを収容可能な比較的大きなカバー部材を用いる必要もなく、より簡易で小さな構成とすることができる。
【0074】
したがって、本発明に係る受光装置10では、デザインの自由度の向上や大きさ寸法の低減を可能としつつ高い精度で所望の斜入射光特性、この例では余弦則に近似した斜入射光特性を得ることができる。
【0075】
なお、上記した例では、受光装置10が、図1および図2に示すように、光軸方向に沿って被測定箇所側から順に、カバー板11と拡散板12と赤外線吸収フィルタ13とスペーサ14と干渉フィルタ15と絞り16と光電変換素子17とを備える構成とされていたが、干渉フィルタ15または光電変換素子17に至る入射光における角度成分を制限するものであれば、例えば、スペーサ14に代えて一対の絞り18(図11参照)(個別に示すときは被測定箇所側から18a、18bとする)を設けるものであってもよく、上記した例に限定されるものではない。この2つの絞り18が設けられた受光装置101の例を図11に示す。この受光装置101は、基本的な構成は受光装置10と同様であることから、等しい構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。受光装置101では、被測定箇所側から見て拡散板12の後方に一対の絞り18(18a、18b)が設けられており、その両絞り18の間に、赤外線吸収フィルタ131が設けられている。この一対の絞り18は、被測定箇所側に位置する絞り18aが、スペーサ14における入射端開口14b(図2参照)に相当し、かつ干渉フィルタ15側に位置する絞り18bが、スペーサ14における出射端開口14c(図2参照)に相当しており、絞り18aの内径寸法と、絞り18bの内径寸法と、両絞り18a、18bの光軸方向で見た間隔寸法と、の比により、制限する角度の大きさを設定する。このため、受光装置101では、角度成分の制限のために設けられる絞り18aと絞り18bとの間隔を利用して、赤外線吸収フィルタ131を配置することができる。よって、受光装置101では、受光装置10と同様の効果を得ることができるとともに、光軸方向の大きさ寸法を低減することができる。
【0076】
また、上記した例では、受光装置10が、本願発明に係る測光機器の一例である照度計50における受光装置として構成されていたが、他の測光機器であってもよく、上記した例に限定されるものではない。他の測光機器の一例としての色彩照度計60における受光装置102を図12に示す。この受光装置102は、図13に示すCIEで規定された等色関数x(λ)、y(λ)、z(λ)に近似した分光応答度特性を得るように構成されている。なお、一般に等色関数を表わす記号としてバー付きのものが用いられるが、便宜上、バーを省略して示している。この受光装置102は、基本的な構成は受光装置10と同様であることから、等しい構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。受光装置102は、単一のカバー板11、拡散板12および赤外線吸収フィルタ13と、3つのスペーサ142、干渉フィルタ152、絞り162および光電変換素子172(それぞれ個別に示すときは、末尾にa、b、cを付して示す)と、により構成されている。なお、図12では、3つのスペーサ142a、142b、142cの境界線は明確には記載されていない。スペーサ142a、干渉フィルタ152a、絞り162aおよび光電変換素子172aは、共通のカバー板11、拡散板12および赤外線吸収フィルタ13との協働により、等色関数x(λ)(図13の実線参照)に近似した分光応答度特性を得るように構成され、スペーサ142b、干渉フィルタ152b、絞り162bおよび光電変換素子172bは、共通のカバー板11、拡散板12および赤外線吸収フィルタ13との協働により、等色関数y(λ)(図13の一点鎖線参照)に近似した分光応答度特性を得るように構成され、スペーサ142c、干渉フィルタ152c、絞り162cおよび光電変換素子172cは、共通のカバー板11、拡散板12および赤外線吸収フィルタ13との協働により、等色関数z(λ)(図13の二点鎖線参照)に近似した分光応答度特性を得るように構成されている。これらにおいて、各々斜入射光特性が余弦則(図9参照)に近似されているのは言うまでもない。このため、受光装置102では、受光装置10と同様の効果を得ることができ、干渉フィルタ152を用いて高い精度で等色関数x(λ)、y(λ)、z(λ)に近似した分光応答度特性を得ることができる。また、受光装置102では、色彩照度計60として等色関数x(λ)、y(λ)、z(λ)(図13参照)に近似した分光応答度特性を得るべく3つのスペーサ142、干渉フィルタ152、絞り162および光電変換素子172を用いる構成とされているが、拡散性能を有する半球状のグローブを用いる必要のない構成であることから、斜入射光特性を高い精度で余弦則に近似させることができる。これは、半球状のグローブを用いる場合、各光電変換素子172における光軸に直交する面で見た光軸からの位置関係が、光軸周りで見た角度位置に拘らず均等でないと、当該角度位置の変化に応じて斜入射光特性が変化してしまうことによる。さらに、また、受光装置102では、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板12が用いられていることから、色彩照度計60として等色関数x(λ)、y(λ)、z(λ)(図13参照)に近似した分光応答度特性を得るべく3つのスペーサ142、干渉フィルタ152、絞り162および光電変換素子172を用いても、適切に色の評価を行うことができる。これは、各スペーサ142、各干渉フィルタ152、各絞り162および各光電変換素子172における光軸に直交する面で見た光軸からの位置関係が、光軸周りで見た角度位置に拘らず均等でないと、入射光が光軸方向に対して傾斜している場合、各素子に対する入射量のバランスを均一とすることができないことによる。この受光装置102の構成は、光学部材として適宜結像レンズを設けることにより、色彩輝度計とすることができる。
【実施例1】
【0077】
次に、本願発明に係る測光機器の受光装置における具体的な構成の一例である実施例1の受光装置103について説明する。なお、実施例1の測光機器の受光装置103は、基本的な構成は上記した例の受光装置10と同様であることから、等しい構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。図14は、受光装置103の構成を模式的に示す説明図である。図15は、比較例としての受光装置203の構成を模式的に示す説明図である。図16は、受光装置103および受光装置203の斜入射光特性における余弦則からの誤差を示すグラフであり、縦軸が余弦則からの誤差率(%)を示し、横軸が受光装置に対する入射角度(度)を示している。この図16では、受光装置103の誤差を実線で示し、受光装置203の誤差を一点鎖線で示している。また、図16では、入射角度が10、30、50、60および80度であるときのJISで定められたAA級の最大許容誤差の目安を短い横線で示しており、同様にJISで定められた精密級の最大許容誤差の目安をさらに短い横線で示している。
【0078】
実施例1の受光装置103は、本願発明に係る測光機器の一例である照度計503における受光装置として構成されたものであり、後述するカバー板113(その入射端面113a)を外方に露出させるように照度計503の本体503aに設けられている。この受光装置103は、図14に示すように、光軸方向に沿って被測定箇所側から順に、カバー板113と拡散板12と赤外線吸収フィルタ13とスペーサ14と干渉フィルタ15と光電変換素子17とを備える。
【0079】
カバー板113は、外方からの拡散板12への接触を防止すべく当該拡散板12を覆うものであり、乳白色のアクリル樹脂材料(PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂))から形成されて、半球状を呈している。カバー板113では、外側の面(入射端面113a)で被測定箇所を照射する光を、拡散板12へ向けてすなわち受光装置103内へと取り入れる。このカバー板113は、アクリル樹脂材料が低い拡散性能を有していることから、拡散板12での拡散作用を補助することができる。また、カバー板113は、半球状を呈していることから、平坦面で形成されている場合に比較して、光軸方向に対する入射光の入射角度の変化に対する光電変換素子17の受光面17aでの実効的な受光量の低減を、小さなものとすることができる。この受光装置103では、基本的な構成が同様であることから、受光装置10と同様の効果を得ることができる。
【0080】
ここで、比較例としての受光装置203について、図15を用いて説明する。この受光装置203は、光学フィルタとして色ガラスフィルタを用いて構成されている。受光装置203は、図15に示すように、光軸方向に沿って被測定箇所側から順に、グローブ(受光球)41と第1ガラスフィルタ42と第2ガラスフィルタ43と光電変換素子44とを備えており、第1ガラスフィルタ42と第2ガラスフィルタ43とにより光学フィルタが構成されている。グローブ41は、乳白色のアクリル樹脂材料(PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂))から形成されて、半球状を呈している。この受光装置203では、光学フィルタ(42、43)の分光透過率特性と光電変換素子44の分光応答度特性との積によって決まるが、光電変換素子44の分光応答度特性は使用する素子の種類によってほぼ決まってしまうため、光学フィルタ(42、43)における分光透過率特性の調整によって、受光装置としての分光応答度特性を得ることになる。
【0081】
光学フィルタとしての色ガラスフィルタでは、任意の分光透過率特性を得ることが困難であることから、受光装置203では、2枚の第1ガラスフィルタ42と第2ガラスフィルタ43とを用いて所望の分光透過率特性を得る構成とされている。このため、光学フィルタの厚さ寸法の増大を招いてしまう。また、色ガラスフィルタでは、任意の分光透過率特性を得ることが困難であることから、組み合わせる色ガラスフィルタの種類が限定されてしまう、すなわち第1ガラスフィルタ42や第2ガラスフィルタ43として用いることのできる種類が限定されてしまうとともに、それらを組み合わせても高い精度で所望する分光透過率特性を得ることが困難である。このことは、色素フィルムフィルタを用いた場合であっても同様である。さらに、受光装置としての分光応答度特性を標準分光視感効率V(λ)(等色関数x(λ)、y(λ)、z(λ)の場合であっても同様)に近似させることに好適な色ガラスフィルタには、環境負荷の高い物質(例えばカドミウム等)が含まれていることが多く、製作自体が困難となってしまう。
【0082】
また、比較例としての受光装置203では、拡散性能を有する半球状のグローブ41を用いることにより、光軸方向に対する入射光の進行方向の為す角度を入射角度として、入射角度が0度から大きくなることに伴う入射角度の変化に対する実効的な受光量の減少度合いを、平坦面に対する入射角度の変化に伴う受光面積の減少度合いよりも低減し、入射角度の増大に伴う受光量の低減を、余弦則よりも小さなものとしている。このため、受光装置203では、拡散性能を有する半球状のグローブ41を用いることにより、入射角度に応じた受光量を減ずる方向へと調整するだけで、余弦則に適合させることができることとなる。この受光装置203では、入射角度に応じた受光量を減ずる方向への調整のために、半球状のグローブ41を取り囲むように、環状傾斜壁45が設けられている。この環状傾斜壁45では、入射光の入射角度の変化に対する実効的な受光量の減少度合いを余弦則に適合させるべく、入射角度に応じた受光量を調整するように、グローブ41に対する高さ寸法(光軸方向で見た大きさ寸法)と傾斜角度とが設定されている。
【0083】
ところが、受光装置203の構成では、半球状のグローブ41を突出させるように設ける必要があることから、デザインが制限されるとともに、大きさ寸法(厚み)の増大を招いてしまう。また、受光装置203では、グローブ41が乳白色のアクリル樹脂材料(PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂))から形成されていることから、上記した作用を得るための十分な拡散性能を得ることが困難であるため、グローブ41から光電変換素子44(その受光面)までの間隔を大きくすることにより上記した作用を得るための十分な拡散性能を確保する必要があるので、大きさ寸法(厚み)の増大を招いてしまう。
【0084】
これに対し、本発明に係る受光装置103では、干渉フィルタ15を用いていることから、受光装置203に比較して光学フィルタの厚さ寸法を大幅に低減することができる。
【0085】
また、本発明に係る受光装置103では、干渉フィルタ15を用いていることから、受光装置203に比較して高い精度で所望する分光透過率特性を得ることができる。
【0086】
さらに、本発明に係る受光装置103では、干渉フィルタ15を用いていることから、受光装置203に比較して環境負荷の高い物質を用いることなく、受光装置としての分光応答度特性を高い精度で標準分光視感効率V(λ)(等色関数x(λ)、y(λ)、z(λ)の場合であっても同様)に近似させることができる。
【0087】
本発明に係る受光装置103では、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板12(実施例1では白色PTFE(四フッ化エチレン樹脂)から形成されている)が用いられていることから、光軸(この例では入射端面11aの法線方向)に対する入射光の入射角度の変化に対して、光電変換素子17の指向特性(図10参照)を考慮した受光面17aに到達する入射光における光束(光量)の減少度合いを、平坦面に対する入射角度の変化に伴う受光面積の減少度合いよりも低減することができるので、受光装置203に比較してデザインの自由度が大幅に向上するとともに、大きさ寸法を大幅に低減することができる。なお、実施例1の受光装置103では、白色PTFEから為る半球状のカバー板113が設けられているが、これは従来の照度計のユーザーに対して違和感を与えないためという側面が大きく、上述したように実質的には拡散板12を保護するものであって光学的な作用の観点からは設けなくてもよいものであることから、カバー板113は設けなくてもよいものである。
【0088】
本発明に係る受光装置103では、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板12(実施例1では白色PTFE(四フッ化エチレン樹脂)から形成されている)が用いられていることから、受光装置203におけるグローブ41から光電変換素子44(その受光面)までの間隔に比較して、拡散板12から光電変換素子17(その受光面17a)までの間隔を大幅に低減することができる。
【0089】
本発明に係る受光装置103では、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板12(実施例1では白色PTFE(四フッ化エチレン樹脂)から形成されている)が用いられているとともに、拡散板12で拡散された入射光における角度成分を制限するスペーサ14が設けられており、そのスペーサ14の制限角度が、入射端面11aに対する入射光の入射角度の変化に応じた受光面17aに到達する入射光としての光束(光量)の変化の度合いと、光電変換素子17の指向特性(図10参照)と、を乗算した値を、余弦則(図9参照)とするように、設定されていることから、受光装置203のように入射角度に応じた受光量を調整のための半球状のグローブと環状傾斜壁45とを設ける必要がないので、受光装置203に比較して簡易な構成とすることができるとともに、デザインの自由度を大幅に向上させることができる。なお、実施例1の受光装置103では、半球状のグローブに似たカバー板113と、受光装置203の環状傾斜壁45に相当する環状傾斜壁45´がカバー板113を取り囲むように設けられているが、これは従来の照度計のユーザーに対して違和感を与えないためという側面が大きく、スペーサ14の制限角度により斜入射光特性を余弦則に適合させることができることから、環状傾斜壁45´はなくてもよいものである。
【0090】
ここで、実際に受光装置103と受光装置203とを実際に製作して得た斜入射光特性(図16参照)を比較する。受光装置103は、上述したように、入射光を拡散板12で拡散し、その拡散された入射光における角度成分をスペーサ14で制限し、その角度成分が制限された入射光を光電変換素子17の受光面17aで受光するものであって、スペーサ14の制限角度が、入射端面11aに対する入射光の入射角度の変化に応じた光電変換素子17の受光面17aでの実効的な受光量(光電変換素子17からの出力値(電気信号))の変化の度合いと、光電変換素子17の指向特性(図10参照)と、を乗算した値を余弦則(図9参照)とするように、設定されて構成されている。このため、受光装置103では、実質的にスペーサ14における制限角度を調整するだけの簡易な構成であるにも拘らず、JISで定められた精密級の最大許容誤差を満たしているのは勿論であって、極めて高い精度で余弦則に近似した斜入射光特性を得ることができた。他方、受光装置203では、上述したように、拡散性能を有する半球状のグローブ41を環状傾斜壁45で取り囲むものであって、環状傾斜壁45のグローブ41に対する高さ寸法および傾斜角度が入射光の入射角度の変化に対する実効的な受光量の減少度合いを余弦則に適合させるべく、入射角度に応じた受光量を調整するように、設定されて構成されている。このため、受光装置203では、環状傾斜壁45とグローブ41とにおける各寸法の設計値を相対的に設定する必要があるにも拘らず、JISで定められたAA級の最大許容誤差を満たしてはいるが、受光装置103と比較すると余弦則に対する近似が低い精度の斜入射光特性となっている。
【0091】
なお、実施例1の受光装置103では、絞り16(図1および図2参照)が設けられていなかったが、干渉フィルタ15と光電変換素子17との間に、スペーサ14による光電変換素子17(その受光面17a)における入射角度の制限量の微調整のために絞り16(図1および図2参照)を設ける構成としてもよい。
【実施例2】
【0092】
次に、本願発明に係る測光機器の受光装置における具体的な構成の他の一例である実施例2の受光装置104について説明する。なお、実施例2の測光機器の受光装置104は、基本的な構成は上記した例の受光装置10と同様であることから、等しい構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。図17は、受光装置104の構成を模式的に示す説明図である。図18は、比較例としての受光装置204の構成を模式的に示す説明図である。
【0093】
実施例2の受光装置104は、本願発明に係る測光機器の一例である照度計504における受光装置として構成されたものであり、後述するカバー板11(その入射端面11a)を外方に露出させるように照度計504の本体504aに設けられている。この受光装置104は、図17に示すように、光軸方向に沿って被測定箇所側から順に、カバー板11と拡散板12と赤外線吸収フィルタ13とスペーサ14と干渉フィルタ15と光電変換素子17とを備える。
【0094】
カバー板11は、外方からの拡散板12への接触を防止すべく当該拡散板12を覆うものであり、乳白色のアクリル樹脂材料(PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂))から形成されて、板状を呈している。カバー板11では、外側の面(入射端面11a)で被測定箇所を照射する光を、拡散板12へ向けてすなわち受光装置104内へと取り入れる。このカバー板11は、アクリル樹脂材料が低い拡散性能を有していることから、拡散板12での拡散作用を補助することができる。この受光装置104では、基本的な構成が同様であることから、受光装置10と同様の効果を得ることができる。
【0095】
ここで、比較例としての受光装置204について、図18を用いて説明する。この受光装置204は、光学フィルタとして色ガラスフィルタを用いて構成されている。なお、受光装置204は、基本的な構成は実施例1における比較例としての受光装置203と同様であることから、等しい構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0096】
受光装置204は、図18に示すように、光軸方向に沿って被測定箇所側から順に、拡散カバー414と第1ガラスフィルタ42と第2ガラスフィルタ43と光電変換素子44とを備えており、第1ガラスフィルタ42と第2ガラスフィルタ43とにより光学フィルタが構成されている。拡散カバー414は、乳白色のアクリル樹脂材料(PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂))から形成されて、板状を呈している。この受光装置204では、光学フィルタ(42、43)における分光透過率特性の調整によって、受光装置としての分光応答度特性を得ている。
【0097】
また、比較例としての受光装置204では、拡散性能を有する拡散カバー414を用いることにより、光軸方向に対する入射光の進行方向の為す角度を入射角度として、入射角度が0度から大きくなることに伴う入射角度の変化に対する実効的な受光量の減少度合いを、入射光の入射角度の変化に対する実効的な受光量の減少度合いを余弦則に適合させるものである。このため、受光装置204では、受光装置203と比較すると、拡散カバー414(グローブ41)が半球状とされておらず、かつ環状傾斜壁45が設けられていない構成とされている。
【0098】
この受光装置204の構成では、拡散カバー414が乳白色のアクリル樹脂材料(PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂))から形成されていることから、上記した作用を得るための十分な拡散性能を得ることが困難であるため、拡散カバー414から光電変換素子44(その受光面)までの間隔を大きくすることにより、上記した作用を得るための十分な拡散性能を確保する必要があるので、大きさ寸法(厚み)の増大を招いてしまう。
【0099】
これに対し、本発明に係る受光装置104では、干渉フィルタ15を用いていることから、受光装置204に比較して光学フィルタの厚さ寸法を大幅に低減することができる。
【0100】
また、本発明に係る受光装置104では、干渉フィルタ15を用いていることから、受光装置204に比較して高い精度で所望する分光透過率特性を得ることができる。
【0101】
さらに、本発明に係る受光装置104では、干渉フィルタ15を用いていることから、受光装置204に比較して環境負荷の高い物質を用いることなく、受光装置としての分光応答度特性を高い精度で標準分光視感効率V(λ)(等色関数x(λ)、y(λ)、z(λ)の場合であっても同様)に近似させることができる。
【0102】
本発明に係る受光装置104では、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板12(実施例2では白色PTFE(四フッ化エチレン樹脂)から形成されている)が用いられているとともに、拡散板12で拡散された入射光における角度成分を制限するスペーサ14が設けられており、そのスペーサ14の制限角度が、入射端面11aに対する入射光の入射角度の変化に応じた受光面17aに到達する入射光としての光束(光量)の変化の度合いと、光電変換素子17の指向特性(図10参照)と、を乗算した値を余弦則(図9参照)とするように、設定されていることから、受光装置204と比較して、高い精度で余弦則に近似した斜入射光特性を得ることができる。すなわち、受光装置204では、拡散カバー414での低い性能(乳白色のアクリル樹脂材料(PMMA)から形成されている)の拡散率と、拡散カバー414と光電変換素子44(その受光面)との間隔と、拡散カバー414における実効的な入射開口と光電変換素子44(その受光面)における実効的な受光面積との比率と、により斜入射光特性を余弦則に近似させることとなることから、それらの設定が困難であるとともに余弦則に対する近似が低い精度の斜入射光特性となってしまう。実際に受光装置104および受光装置204を製作したところ、受光装置104ではJISで定められた精密級の最大許容誤差を満たす斜入射光特性を得ることができたのに対し、受光装置204ではJISで定められたAA級の最大許容誤差を満たす斜入射光特性を得ることができなかった。
【0103】
なお、実施例2の受光装置104では、絞り16(図1および図2参照)が設けられていなかったが、干渉フィルタ15と光電変換素子17との間に、スペーサ14による光電変換素子17(その受光面17a)における入射角度の制限量の微調整のために絞り16(図1および図2参照)を設ける構成としてもよい。
【0104】
上記した各例および各実施例では、本発明に係る受光装置が搭載された測光機器として照度計(色彩照度計)を示していたが、輝度計、色彩計、紫外線強度計、写真用露出計、写真用カラーメーター、スポットメーター、光パワーメーター等であってもよく、上記した各例および各実施例に限定されるものではなく、いずれの測光機器であっても同様の効果を得ることができる。例えば、本発明に係る受光装置では、干渉フィルタにおける透過波長の入射角度依存性の影響と偏光依存性の影響とが低減されていることから、測定角切替式の輝度計に搭載した場合であっても、測定角切り替えた際に分光応答度が変化してしまうことを防止することができるので、測定角に拘らず高い精度で任意の分光応答度特性を得ることができる。このように輝度計に搭載した場合、図示は略すが受光装置では光学部材として結像レンズが設けられ、上述した分光透過率をG(λ)には当該結像レンズの分光透過率も含まれることとなる。
【0105】
なお、上記した各例および各実施例の受光装置(図11に示した受光装置101を除く)では、光軸方向に沿って被測定箇所側から順に、カバー板11(113)と拡散板12と赤外線吸収フィルタ13とスペーサ14(142)と干渉フィルタ15(152)と絞り16(162)(この絞りは設けられていない場合もある)と光電変換素子17(172)とを備える構成とされていたが、干渉フィルタ15(152)への入射光の入射角度の制限の観点からは、上述した設定を可能とすることを前提として、被測定箇所側から拡散板12、スペーサ14(142)および干渉フィルタ15(152)の順で配置されていれば、他の部材の配置は適宜変更してもよく、上記した各例および各実施例に限定されるものではない。
【0106】
また、上記した各例および各実施例の受光装置(図11に示した受光装置101を除く)では、光軸方向に沿って被測定箇所側から順に、カバー板11(113)と拡散板12と赤外線吸収フィルタ13とスペーサ14(142)と干渉フィルタ15(152)と絞り16(162)(この絞りは設けられていない場合もある)と光電変換素子17(172)とを備える構成とされていたが、光電変換素子17への入射光の入射角度の制限の観点からは、上述した設定を可能とすることを前提として、被測定箇所側から拡散板12、スペーサ14(142)および光電変換素子17(172)の順で配置されていれば、他の部材の配置は適宜変更してもよく、上記した各例および各実施例に限定されるものではない。
【0107】
さらに、上記した各例および各実施例の受光装置(図11に示した受光装置101を除く)では、入射角度制限部材として非透過材料からなる板部材に貫通孔が設けられて形成された筒状を呈するスペーサ14(142)が設けられていたが、入射角度制限部材は、干渉フィルタ15(152)の入射面15bにおける入射光の入射角度と、光電変換素子17の受光面17aにおける入射光の入射角度と、を制限するものであれば、例えば、受光装置101(図11参照)のように一対の絞り(図11では符号18)で形成されていてもよく、上記した各例および各実施例に限定されるものではない。このとき、入射側の開口(入射端開口14bまたは絞り18a)と、出射側の開口(出射端開口14c、絞り16または絞り18b)とは、ともに同一光軸上に設けられていることが望ましい。
【0108】
上記した各例および各実施例の受光装置では、干渉フィルタ15において、入射面15bにロングパス干渉膜が形成され、かつ出射面15cにショートパス干渉膜が形成されていたが、所望の分光透過率特性を得るべく上記したように設定された分光透過率を有するものであれば、例えば、入射面15bにショートパス干渉膜が形成されかつ出射面15cにロングパス干渉膜が形成されていてもよく、上記した各例および各実施例に限定されるものではない。しかしながら、干渉フィルタ15における透過波長の入射角度依存性の影響をより低減することができることから、上記した各例および各実施例のように構成することが望ましい。
【0109】
上記した各例および各実施例の受光装置では、単一のガラス基板15aの両面にロングパス干渉膜およびショートパス干渉膜を設けることにより干渉フィルタ15が形成されていたが、所望の分光透過率特性を得るべく上記したように設定された分光透過率を有するものであれば、例えば、二枚以上の光学的に透過の特性を持つ基材の上に干渉膜が形成されていてもよく、あるいは赤外線吸収フィルタの上に干渉膜が形成されていてもよく、上記した各例および各実施例に限定されるものではない。
【0110】
以上、本発明の測光機器の受光装置を各例および各実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの各例および各実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【符号の説明】
【0111】
10、101、102、103、104 測光機器の受光装置
12 拡散板
13、131 赤外線吸収フィルタ
14、142 (入射角度制限部材としての)スペーサ
14b (入射角度制限部材の入射端側の開口としての)入射端開口
14c (入射角度制限部材の出射端側の開口としての)出射端開口
15、152 干渉フィルタ
15b 入射面
15c 出射面
17、172 (受光部材としての)光電変換素子
18 (入射角度制限部材としての)絞り
50、503、504 (測光機器としての)照度計
60 (測光機器としての)色彩照度計
【技術分野】
【0001】
本発明は、照度計、輝度計、色彩計、紫外線強度計、写真用露出計、写真用カラーメーター、スポットメーター、光パワーメーター等の測光機器に好適な受光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測光機器の受光装置は、その測光機器の測定目的に応じた所定の斜入射光特性を有するように設計される。この斜入射光特性とは、受光装置の受光箇所である入射端面への光軸方向に対する入射光の進行方向を入射角度として、その入射角度の変化に対する感度の変化度合いを示すものである。このような測光機器の受光装置では、JIS(日本工業規格(JIS C 1609))に規定されたいわゆる余弦則に近似した斜入射光特性を有することが求められる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような所望の斜入射光特性を実現する手段として、拡散性能を有する材料からなる半球状に突出するグローブ(受光球)を用いて入射面を形成することが知られている。受光装置では、拡散性能を有する半球状のグローブを用いることにより、入射角度が0度から大きくなることに伴う入射角度の変化に対する実効的な受光量の減少度合いを、平坦面に対する入射角度の変化に伴う受光面積の減少度合いよりも低減することができるので、入射角度の増大に伴う受光量の低減を、余弦則よりも小さなものとすることができる。このため、拡散性能を有する半球状のグローブを用いることにより、入射角度に応じた受光量を減ずる方向へと調整するだけで、斜入射光特性を余弦則に近似させることができるので、高い精度で余弦則を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−83008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した構成では、半球状のグローブを突出させるように設ける必要があることから、デザインが制限されるとともに、大きさ寸法(厚み)の増大を招いてしまう。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、その目的は、デザインの自由度の向上や大きさ寸法の低減を可能としつつ高い精度で所望の斜入射光特性を得ることのできる測光機器の受光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、受光箇所への光軸方向に対する入射光の入射角度の変化に対する感度の変化度合いを示す斜入射光特性を所定のものとすべく設計される測光機器の受光装置であって、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板と、該拡散板により拡散された入射光を受光し、その受光量に応じた電気信号を出力する受光部材と、該受光部材と前記拡散板との間に配置され、前記受光部材の入射面における入射光の入射角度を制限する入射角度制限部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の測光機器の受光装置であって、前記入射角度制限部材では、入射光の入射角度の変化に応じた前記受光部材での実効的な受光量の変化の度合いと、該受光部材の指向特性と、を乗算した値を、所望の斜入射光特性とするように、制限する入射角度が設定されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の測光機器の受光装置であって、前記拡散板は、フッ素を含む樹脂材料から形成されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の測光機器の受光装置であって、前記拡散板としてのフッ素を含む樹脂材料は、四フッ化エチレン樹脂であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の測光機器の受光装置であって、前記拡散板は、すりガラスから形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の測光機器の受光装置であって、前記拡散板は、オパールから形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の測光機器の受光装置であって、前記入射角度制限部材は、非透過材料からなる板部材に貫通孔が設けられて形成されており、入射端側の開口の径寸法と、出射端側の開口の径寸法と、前記入射端開口から前記出射端開口に至る光軸方向で見た長さ寸法と、の比により、制限する角度の大きさを設定することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の測光機器の受光装置であって、前記入射角度制限部材は、光軸上で対を為す2つの絞りから形成されており、入射端側の前記絞りの内径寸法と、出射端側の前記絞りの内径寸法と、前記両絞りの光軸方向で見た間隔寸法と、の比により、制限する角度の大きさを設定することを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の測光機器は、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の測光機器の受光装置が搭載されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の測光機器の受光装置によれば、デザインの自由度の向上や大きさ寸法の低減を可能としつつ高い精度で所望の斜入射光特性を容易に得ることができる。
【0016】
上記した構成に加えて、前記入射角度制限部材では、入射光の入射角度の変化に応じた前記受光部材での実効的な受光量の変化の度合いと、該受光部材の指向特性と、を乗算した値を、所望の斜入射光特性とするように、制限する入射角度が設定されていることとすると、任意の指向特性を有する受光部材を用いて所望の斜入射光特性を適切に得ることができる。
【0017】
上記した構成に加えて、前記拡散板は、フッ素を含む樹脂材料から形成されていることとすると、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板を容易に形成することができる。
【0018】
上記した構成に加えて、前記拡散板としてのフッ素を含む樹脂材料は、四フッ化エチレン樹脂であることとすると、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板を容易に形成することができる。
【0019】
上記した構成に加えて、前記拡散板は、すりガラスから形成されていることとすると、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板を容易に形成することができる。
【0020】
上記した構成に加えて、前記拡散板は、オパールから形成されていることとすると、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板を容易に形成することができる。
【0021】
上記した構成に加えて、前記入射角度制限部材は、非透過材料からなる板部材に貫通孔が設けられて形成されており、入射端側の開口の径寸法と、出射端側の開口の径寸法と、前記入射端開口から前記出射端開口に至る光軸方向で見た長さ寸法と、の比により、制限する角度の大きさを設定することとすると、簡易に入射角度制限部材を形成することができる。
【0022】
上記した構成に加えて、前記入射角度制限部材は、光軸上で対を為す2つの絞りから形成されており、入射端側の前記絞りの内径寸法と、出射端側の前記絞りの内径寸法と、前記両絞りの光軸方向で見た間隔寸法と、の比により、制限する角度の大きさを設定することとすると、簡易に入射角度制限部材を形成することができるとともに、2つの絞りの間の空間を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本願発明に係る測光機器の一例としての照度計50における受光装置10の構成を模式的に示す説明図である。
【図2】図1の受光装置10を光軸方向に分解して示す説明図である。
【図3】赤外線吸収フィルタ13の分光透過率を示すグラフであり、縦軸が分光透過率(%)を示し、横軸が波長(nm)を示している。
【図4】標準分光視感効率V(λ)を示すグラフであり、縦軸が最大感度を基準とする感度の比率を示し、横軸が波長(nm)を示している。
【図5】干渉フィルタ15に形成されたロングパス干渉膜とショートパス干渉膜との分光透過率を示すグラフであり、縦軸が透過率(%)を示し、横軸が波長(nm)を示している。
【図6】光電変換素子17の分光応答度PD(λ)を示すグラフであり、縦軸が最大感度を基準とする応答度の比率を示し、横軸が波長(nm)を示している。
【図7】入射角度の異なる入射光に対する干渉フィルタ15の分光透過率を示すグラフであり、縦軸が分光透過率(%)を示し、横軸が波長(nm)を示している。
【図8】干渉フィルタ15における平均角度合成分光透過率Fm´(λ)と平均角度合成分光透過率比Fm(λ)と分光透過率F0(λ)とを示すグラフであり、縦軸が分光透過率(分光透過率比)(%)を示し、横軸が波長(nm)を示している。
【図9】JISに規定された余弦則を示すグラフであり、縦軸が感度比を示し、横軸が受光装置に対する入射角度(度)を示している。
【図10】光電変換素子17の指向特性を示すグラフであり、縦軸が入射角度が0度のときの感度を基準とする感度の比率を示し、横軸が光電変換素子17の受光面17aに対する入射角度(度)を示している。
【図11】受光装置101の構成を模式的に示す図1と同様の説明図である。
【図12】受光装置102の説明図であり、(a)は正面(被測定箇所側)から見た様子を示し、(b)は図1と同様に構成を模式的に示している。
【図13】CIEで規定された等色関数x(λ)、y(λ)、z(λ)を示すグラフであり、縦軸が分光応答度の比率を示し、横軸が波長(nm)を示している。
【図14】実施例1の受光装置103の構成を模式的に示す説明図である。
【図15】比較例としての受光装置203の構成を模式的に示す説明図である。
【図16】受光装置103および受光装置203の斜入射光特性における余弦則からの誤差を示すグラフであり、縦軸が余弦則からの誤差率(%)を示し、横軸が受光装置に対する入射角度(度)を示している。
【図17】実施例2の受光装置104の構成を模式的に示す説明図である。
【図18】比較例としての受光装置204の構成を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本願発明に係る測光機器の受光装置の発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0025】
先ず、本願発明に係る測光機器の受光装置の概念について説明する。図1は、本願発明に係る測光機器の一例としての照度計50における受光装置10の構成を模式的に示す説明図であり、図2は、図1の受光装置10を光軸方向に分解して示す説明図である。図3は、赤外線吸収フィルタ13の分光透過率を示すグラフであり、縦軸が分光透過率(%)を示し、横軸が波長(nm)を示している。図4は、標準分光視感効率V(λ)を示すグラフであり、縦軸が最大感度を基準とする感度の比率を示し、横軸が波長(nm)を示している。図5は、干渉フィルタ15に形成されたロングパス干渉膜およびショートパス干渉膜の分光透過率を示すグラフであり、縦軸が分光透過率(%)を示し、横軸が波長(nm)を示している。この図5では、ショートパス干渉膜の分光透過率を実線で示し、ロングパス干渉膜の分光透過率を一点鎖線で示している。図6は、光電変換素子17の分光応答度PD(λ)を示すグラフであり、縦軸が最大感度を基準とする応答度の比率を示し、横軸が波長(nm)を示している。図7は、入射角度の異なる入射光に対する干渉フィルタ15の分光透過率を示すグラフであり、縦軸が分光透過率(%)を示し、横軸が波長(nm)を示している。この図7では、入射角度が0度の分光透過率F0(λ)を実線で示し、入射角度が15度分光透過率F15(λ)を破線で示し、入射角度が30度の分光透過率F30(λ)を一点鎖線で示し、入射角度が45度の分光透過率F45(λ)を二点鎖線で示している。図8は、干渉フィルタ15における平均角度合成分光透過率Fm´(λ)と平均角度合成分光透過率比Fm(λ)と分光透過率F0(λ)とを示すグラフであり、縦軸が分光透過率(分光透過率比)(%)を示し、横軸が波長(nm)を示している。なお、図8では、入射角度が0度の分光透過率F0(λ)を実線で示し、分光透過率G(λ)を考慮していない平均角度合成分光透過率比Fm(λ)を一点鎖線で示し、分光透過率G(λ)を考慮した平均角度合成分光透過率比Fm(λ)を二点鎖線で示している。図9は、JISに規定された余弦則を示すグラフであり、縦軸が感度比を示し、横軸が受光装置に対する入射角度(度)を示している。図10は、光電変換素子17の指向特性を示すグラフであり、縦軸が入射角度が0度のときの感度を基準とする感度の比率を示し、横軸が光電変換素子17の受光面17aに対する入射角度(度)を示している。
【0026】
受光装置10は、本願発明に係る測光機器の一例である照度計における受光装置として構成されたものである。この受光装置10は、測定箇所に入射してくる光を、単位面積当たりにあらゆる方向から入射する光束に換算して示す照度を計測すべく照度計に搭載されている。
【0027】
本願発明に係る測光機器の受光装置10は、基本的な概念として、デザインの自由度の向上や大きさ寸法の低減を可能としつつ高い精度で所望の斜入射光特性を得ることを目的とし、光軸上に、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板と、そこで拡散された入射光の受光量に応じた電気信号を出力する受光部材と、を有し、その受光部材の入射面における入射光の入射角度を制限する入射角度制限部材を受光部材と拡散板との間に配置して、構成することにより、半球状のグローブを用いることなく高い精度で所望の斜入射光特性を容易に得ることを可能とするものである。
【0028】
受光装置10は、図1および図2に示すように、光軸方向に沿って被測定箇所側から順に、カバー板11と拡散板12と赤外線吸収フィルタ13とスペーサ14と干渉フィルタ15と絞り16と光電変換素子17とを備える。
【0029】
カバー板11は、基本的に拡散板12を保護するものである。このカバー板11は、外方からの拡散板12への接触を防止すべく当該拡散板12を覆うものであり、この例では、無色透明のアクリル樹脂材料から形成されて板状を呈する。カバー板11では、外側の面(11a)で被測定箇所を照射する光(図1に示す矢印参照)を、拡散板12へ向けてすなわち受光装置10内へと取り入れる。以下では、カバー板11の外側の面(11a)から受光装置10内に取り入れられた光を入射光という。このため、カバー板11における外側の面は、受光装置10における入射端面11aとなり、この入射端面11aすなわちカバー板11は、受光装置10における受光箇所の目安となる。なお、カバー板11は、拡散板12を保護できるものであればよいことから、例えば、拡散板12における拡散作用を補助すべく乳白色のアクリル樹脂材料(PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂))から形成されていてもよく、半球状を呈していてもよい。また、カバー板11は、基本的に拡散板12を保護するものであることから、光学的な作用の観点からは設けなくてもよい。
【0030】
拡散板12は、入射光を拡散するものである。この拡散板12は、完全拡散面に近い拡散性能を有する材料から形成され、板状を呈する。ここで言う完全拡散面に近い拡散性能とは、少なくとも光軸方向に対する所定の角度範囲内において、入射光の拡散板12への入射角度の差異に拘らず輝度が一様となる拡散面であることをいい、入射光の拡散板12への入射角度の差異に拘らずどの方向から見ても輝度が一様となる拡散光とすることができることをいう。ここで言う所定の角度範囲とは、入射光を進行させるべく90度以内の所定の大きさであり、後述する入射角度制限部材(この例ではスペーサ14(絞り16も含む場合あり))の制限角度よりも大きいことが望ましい。このような材料としては、フッ素を含む樹脂材料やすりガラス、オパール等があげられる。この例では、拡散板12は、フッ素を含む樹脂材料の一例としての白色PTFE(四フッ化エチレン樹脂)から形成されている。この拡散板12を経た入射光は、拡散光とされて赤外線吸収フィルタ13に到達する。
【0031】
赤外線吸収フィルタ13は、基本的に、測光機器(この例では照度計)において感度を持つ必要のない長波長帯域(可視領域よりも長波長帯域)の成分の透過を阻むものであり、主に赤外線域の透過を阻むものである。この例では、赤外線吸収フィルタ13は、図3に示すような、分光透過率特性を有しており、透過した入射光における略900nm以上の波長帯域の波長成分を完全に吸収して(透過を阻んで)いる。この赤外線吸収フィルタ13を経た入射光は、所定値以上の長波長帯域の波長成分を有さない透過光とされてスペーサ14に到達する。
【0032】
スペーサ14は、入射角度制限部材を構成するものであり、干渉フィルタ15の入射面15bにおける入射光の入射角度と、光電変換素子17の受光面17aにおける入射光の入射角度と、を制限する機能を有している。このスペーサ14は、この例では、所定の厚さ寸法を有する非透過材料からなる板部材に貫通孔14aが設けられて形成された筒状を呈し、その内周壁面が光の反射を防止するものとされている。このスペーサ14では、被測定箇所側の入射端開口14bと、干渉フィルタ15側(光電変換素子17側)の出射端開口14cと、の中心位置が光軸上に位置するものとされている。スペーサ14では、入射端開口14bから貫通孔14a内へと進行した入射光のうち、貫通孔14aの内周壁面に至ることなく出射端開口14cから貫通孔14a外へと進行した角度成分のみを通過させることにより、干渉フィルタ15の入射面15bや光電変換素子17の受光面17aにおける入射光の入射角度を制限する。このため、スペーサ14では、入射端開口14bの径寸法と、出射端開口14cの径寸法と、入射端開口14bから出射端開口14cに至る光軸方向で見た長さ寸法(スペーサ14の厚さ寸法)と、の比により、制限する角度の大きさを設定することができる。この制限する角度の大きさについては、後に詳細に説明する。スペーサ14を経た入射光は、進行方向(光軸方向)に対して、所定の角度以下の角度成分(光束)のみが干渉フィルタ15に到達する。
【0033】
干渉フィルタ15は、受光装置10における分光応答度特性を後述する標準分光視感効率V(λ)(図4参照)に近似させるべく、後述する光電変換素子17の分光応答度PD(λ)(図6参照)を考慮して設定された分光透過率特性を有するものである。この干渉フィルタ15は、板状のガラス基板15aに様々な屈折率を有する誘電体材料による光学薄膜が積層されて形成されている。干渉フィルタ15(ガラス基板15a)は、この例では、被測定箇所側(スペーサ14側)の面である入射面15bにロングパス干渉膜(図5の一点鎖線参照)が形成され、反対側の出射面15cにショートパス干渉膜(図5の実線参照)が形成されている。この入射面15bと出射面15cとは、互いに平行とされており、光軸に直交するものとされている。なお、この例では、板状のガラス基板15aを用いて干渉フィルタ15を形成しているが、光学的に透過の特性を持つ基材であれば、例えば、プラスチックや石英であってもよく、この例に限定されるものではない。
【0034】
このショートパス干渉膜は、図5に実線で示すように、300nmから略570nmまでの波長帯域では略100%の透過率とされ、それ以上の波長帯域では急激に透過率が減少し、略700nmを越える波長帯域の透過率が略0%とされている。また、ロングパス干渉膜は、図5に一点鎖線で示すように、略400nm以下の波長帯域では透過率が略0%とされ、略450nmから略570nmまでの波長帯域では急激に透過率が増加し、それ以上の波長帯域では略100%の透過率とされ、略900nm以上の波長帯域では透過率を規定していない。このため、干渉フィルタ15では、短波長側の特性がロングパス干渉膜により形成され、かつ長波長側の特性がショートパス干渉膜に形成された分光透過率F(λ)(図5でドットを付した領域)を有している。この分光透過率の設定方法については、後に詳細に説明する。この干渉フィルタ15を経た入射光は、所定の分光分布特性の透過光とされて絞り16に到達する。
【0035】
絞り16は、スペーサ14により角度が制限された入射光の、光電変換素子17の受光面17aにおける入射角度を微調整するものである。この絞り16は、受光装置10における斜入射光特性を、後述する余弦則(図9参照)に近似させるべく、干渉フィルタ15を経た入射光のうち光電変換素子17の受光面17aに到達する光束(受光量)を制限する。この斜入射光特性とは、受光装置10において、その受光箇所である入射端面11aへの光軸方向に対する入射光の進行方向を入射角度として、その入射角度の変化に対する感度の変化度合いを示すものである。絞り16は、非透過材料からなる板部材に貫通孔が設けられて形成されている。このため、この例では、スペーサ14の入射端開口14bと、絞り16の貫通孔と、により、光電変換素子17の受光面17aにおける入射角度を制限する入射角度制限部材が構成されている。なお、絞り16は、光電変換素子17の受光面17aにおける入射光の入射角度の微調整のために設けられるものであることから、スペーサ14により十分に入射角度の制限がなされていれば、設けなくてもよい。この場合は、スペーサ14(その入射端開口14bおよび出射端開口14c)により、光電変換素子17の受光面17aにおける入射角度を制限する入射角度制限部材が構成されることとなる。この絞り16を経た入射光は、所定の入射角度以下(所定の角度以下の角度成分のみ)とされて、光電変換素子17に到達する。
【0036】
光電変換素子17は、受光装置10としての測定結果を出力するものである。この光電変換素子17は、所定の大きさ寸法の受光面17aを有し、その受光面17aに入射した光の強度(受光量)に応じた電気信号(例えば、電流値)を、搭載された測光機器(この例では照度計50)の演算制御部(図示せず)へと出力する。光電変換素子17は、この例では、図6に示す分光応答度PD(λ)を有するフォトダイオードが用いられている。この光電変換素子17は、受光面17aに入射した入射光における分光分布特性に、自らの分光応答度PD(λ)(図6参照)を乗算した電気信号(例えば、電流値)を出力する。このため、光電変換素子17は、受光量に応じた電気信号を出力する受光部材として機能する。
【0037】
これにより、受光装置10(照度計50)は、標準分光視感効率V(λ)(図4参照)に近似した分光応答度特性を有するとともに、余弦則(図9参照)に近似した斜入射光特性を有するものとなる。このことについて、以下で詳細に説明する。
【0038】
図4に示す標準分光視感効率(標準比視感度)V(λ)は、CIE(国際照明委員会)で規定された人間の視感(感度)を代表するもの、すなわち可視放射(可視光線)が人間の目に入ったときに感じる波長に対する明るさの知覚の度合い示す尺度である。受光装置10では、基本的に干渉フィルタ15の分光透過率特性(図5参照)と、光電変換素子17の分光応答度PD(λ)(図6参照)と、の積により分光応答度が決まる。ここで、光電変換素子17の分光応答度PD(λ)は、使用する素子の種類によってほぼ決まってしまうので、干渉フィルタ15の分光透過率特性を調節することにより、受光装置10の分光応答度特性を設定している。
【0039】
この干渉フィルタ15は、上述したように、ガラス基板15aに複数の光学薄膜を積層することにより、入射面15bにロングパス干渉膜(図5参照)を設けるとともに、かつ反対側の出射面15cにショートパス干渉膜(図5参照)を設けて形成されている。干渉フィルタ15では、入射面15bに形成されたロングパス干渉膜により、標準分光視感効率V(λ)における短波長側に相当する箇所の分光透過率特性を形成し、出射面15cに形成されたショートパス干渉膜により、標準分光視感効率V(λ)における長波長側に相当する箇所の分光透過率特性を形成している(図5参照)。
【0040】
ここで、干渉フィルタ15では、その性質上、透過波長に入射角度依存性があることが知られている。この入射角度依存性とは、互いに平行とされた入射面15bおよび出射面15cの法線方向に対する入射光の進行方向が為す角度を入射角度として、その入射角度が増大することにより、分光透過率特性が短波長側へと移動(シフト)することをいう。例えば、図7に示すように、干渉フィルタ15において、入射角度が0度の入射光における分光透過率F0(λ)が実線で示すような曲線である場合、入射光における入射角度が15度となると破線で示す分光透過率F15(λ)のように短波長側へと移動する。同様に、入射光における入射角度が30度となると一点鎖線で示す分光透過率F30(λ)のように分光透過率F15(λ)に対してさらに短波長側へと移動し、入射光における入射角度が45度となると二点鎖線で示す分光透過率F45(λ)のように分光透過率F30(λ)に対してさらに短波長側へと移動する。この入射角度依存性では、入射角度が大きいほど、入射角度の変化に対する移動量(波長の増減方向で見た特性線のシフト量)の割合が大きくなる、という特徴と、長い波長領域ほど移動量(波長の増減方向で見た特性線のシフト量)の割合が大きくなる、という傾向がある。これにより、受光装置10では、入射面15bのロングパス干渉膜と出射面15cのショートパス干渉膜とにより構成された干渉フィルタ15を単に用いるだけでは、干渉フィルタ15における透過波長の入射角度依存性の影響により、入射光の干渉フィルタ15への入射角度に応じて分光応答度特性が変化してしまい、安定して標準分光視感効率V(λ)(図4参照)に近似した分光応答度特性を得ることができなくなってしまう。
【0041】
また、干渉フィルタ15では、その性質上、透過波長に偏光依存性があることが知られている。この偏光依存性とは、斜入射光が入射した場合、入射面に平行な方向に振動するP偏光と入射面に垂直な方向に振動するS偏光とでは分光透過率が異なることを言う。これにより、受光装置10では、入射面15bのロングパス干渉膜と出射面15cのショートパス干渉膜とにより構成された干渉フィルタ15を単に用いるだけでは、干渉フィルタ15における透過波長の偏光依存性の影響により、入射光における偏光成分の大きさの差異に応じて分光応答度特性が変化してしまい、安定して標準分光視感効率V(λ)(図4参照)に近似した分光応答度特性を得ることができなくなってしまう。
【0042】
このため、本発明に係る受光装置10では、干渉フィルタ15よりも被測定箇所側の位置に完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板12を設けるとともに、その拡散板12と干渉フィルタ15との間に、干渉フィルタ15の入射面15bにおける入射光の入射角度を制限するスペーサ14を設けている。この受光装置10では、カバー板11(入射端面11a)を経て入射した入射光が、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板12を透過することにより拡散光とされることから、カバー板11への入射角度の差異に拘らず種々の進行方向の光束(角度成分)を有することとなり、赤外線吸収フィルタ13、スペーサ14および干渉フィルタ15へと向かう。すなわち、赤外線吸収フィルタ13、スペーサ14および干渉フィルタ15へと向かう入射光では、カバー板11への入射角度の差異に拘らず角度成分の分布が略等しいものとされている。
【0043】
この入射光は、赤外線吸収フィルタ13を経て、入射端開口14bからスペーサ14の内方(貫通孔14a内)へと進行し、その内周壁面へと向かうことなく出射端開口14cに到達した光束(角度成分)のみが、スペーサ14を通過する。このため、スペーサ14を経た入射光では、入射端開口14bの径寸法と出射端開口14cの径寸法と入射端開口14bから出射端開口14cに至る光軸方向で見た長さ寸法との比に応じた角度以下の進行方向の光束(角度成分)のみを有していることとなる。このスペーサ14における制限角度は、後述する干渉フィルタ15における合成角度範囲の最大値と合致されていることが望ましい。この例では、スペーサ14は、制限角度が45度に設定されており、45度よりも大きい光束(角度成分)を通過させないものとされている。このスペーサ14を通過した入射光が、干渉フィルタ15に入射する。
【0044】
このように、干渉フィルタ15(その入射面15b)には、拡散板12により拡散された入射光のうち、スペーサ14により制限された角度(この例では45度)以下の角度成分(光束)のみが到達する。このため、受光装置10では、干渉フィルタ15への入射光として、0度からスペーサ14の制限角度(45度)までの間の進行方向の光束(角度成分)を略均等に進行させることができる。
【0045】
これに加えて、本発明に係る受光装置10では、0度からスペーサ14の制限角度(45度)までの間の分光透過率特性(図7の符号F0(λ)からF45(λ)参照)の平均値である平均角度合成分光透過率Fm´(λ)(図8参照)に基づいて算出される平均角度合成分光透過率比Fm(λ)と、光電変換素子17における分光応答度PD(λ)(図6参照)と、を乗算した値が、標準分光視感効率V(λ)(図4参照)となるように、干渉フィルタ15の分光透過率F(λ)を設定している。この関係式は、次式(1)、(2)、(3)で表すことができる。なお、実際には、カバー板11と拡散板12と赤外線吸収フィルタ13とにおける分光透過率も問題となることから、これら全体の分光透過率をG(λ)として、次式(1)、(2)、(4)により干渉フィルタ15の分光透過率F(λ)を設定している。ここで、λは波長(nm)を示している。また、平均角度合成分光透過率比Fm(λ)とは、透過率が最大となる波長を100%とした場合の分光透過率の比を示している。
【数1】
【0046】
このため、干渉フィルタ15では、0度からスペーサ14の制限角度(45度)までを合成した角度に対する平均角度合成分光透過率比Fm(λ)と、光電変換素子17の分光応答度PD(λ)と、の積が標準分光視感効率V(λ)となるように、分光透過率F(λ)が設定されていることから、図8に示すように、入射角度が0度であるときの特性線すなわち分光透過率F0(λ)の特性線が、平均角度合成分光透過率比Fm(λ)の特性線に比較して、長波長側に移動(シフト)している。
【0047】
また、干渉フィルタ15では、0度からスペーサ14の制限角度(45度)までを合成した角度に対する平均角度合成分光透過率比Fm(λ)と、光電変換素子17の分光応答度PD(λ)と、の積が標準分光視感効率V(λ)となるように、分光透過率F(λ)が設定されていることから、所定の角度に対する分光透過率F(λ)がリップルを有する特性線(図7の分光透過率F30(λ)や分光透過率F45(λ)の特性線参照)である場合であっても、図8に示すように平均角度合成分光透過率比Fm(λ)としては滑らかな特性線とすることができ、より適切に標準分光視感効率V(λ)に近似させることができる。
【0048】
図9に示す余弦則は、JIS(日本工業規格(JIS C 1609))に規定された受光装置への入射光の入射角度の変化に対する感度の変化度合いの基準値を示すものであって、入射光の入射角度の余弦に等しいものである。この余弦則は、コサイン特性ともいう。受光装置10では、上述した斜入射光特性を、余弦則に近似させることが求められており、この余弦則からの誤差によりJISでは階級の分類が規定されている。
【0049】
ここで、受光装置では、測定のための受光箇所(本願発明の受光装置10では入射端面11aに相当する)として単に平坦な入射端面を設けても、入射光の入射角度の変化に対する感度の変化度合い(斜入射光特性)を、入射光の入射角度の余弦(余弦則)と等しいものとすることは困難である。これは、入射端面が所定の面積を有するとともに入射光もその進行方向に直交する面で見ると所定の面積を有することに起因して入射光の入射角度の変化に伴う入射光の入射端面への入射量の変化が入射角度の余弦とは等しくならないことや、各光学部品における入射角度に対する反射率や透過率は変化すること等が影響しているものと考えられる。また、光電変換素子では、受光面に対して入射光の進行方向が為す入射角度に応じて感度が変化するいわゆる指向特性(図10参照)を有していることも原因として考えられる。
【0050】
このため、本発明に係る受光装置10では、入射光が光電変換素子17(受光面17a)へと至る光路中(光電変換素子17よりも被測定箇所側の位置)に完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板12を設けるとともに、その拡散板12と光電変換素子17との間に、その受光面17aにおける入射光の入射角度を制限する入射角度制限部材(この例ではスペーサ14および絞り16)を設けている。この受光装置10では、カバー板11(入射端面11a)を経て入射した入射光が、拡散板12を透過することにより拡散光とされることから、カバー板11への入射角度の差異に拘らずあらゆる進行方向の光束(角度成分)を有することとなり、赤外線吸収フィルタ13、スペーサ14および干渉フィルタ15へと向かう。
【0051】
この入射光は、赤外線吸収フィルタ13を経て、入射端開口14bからスペーサ14の内方(貫通孔14a内)へと進行し、その内周壁面へと向かうことなく出射端開口14cに到達した光束(角度成分)のみが、スペーサ14を通過することができる。このため、スペーサ14を経た入射光では、入射端開口14bの径寸法と出射端開口14cの径寸法と入射端開口14bから出射端開口14cに至る光軸方向で見た長さ寸法との比に応じた角度以下の進行方向の光束(角度成分)のみを有していることとなる。このスペーサ14における制限角度は、入射端面11aに対する入射光の入射角度の変化に応じたスペーサ14の入射端開口14bへと至る入射光としての光束(光量)の変化の度合いと、光電変換素子17の指向特性(図10参照)と、を考慮しつつ、入射端面11aに対する入射光の入射角度の変化に対する感度特性(斜入射光特性)を余弦則(図9参照)に一致させるように、設定されている。すなわち、スペーサ14における制限角度は、入射端面11aに対する入射光の入射角度の変化に応じた光電変換素子17の受光面17aへと至る実効的な入射光としての光束(光量)の変化の度合いと、光電変換素子17の指向特性(図10参照)と、を乗算した値を、余弦則(図9参照)とするように、設定されている。この例では、スペーサ14は、制限角度が45度に設定されており、45度よりも大きい進行方向の光束(角度成分)を通過させないものとされている。このスペーサ14を通過した入射光が、干渉フィルタ15を経て光電変換素子17の受光面17aに入射する。
【0052】
このように、光電変換素子17の受光面17aには、拡散板12により拡散された入射光のうち、スペーサ14により制限された角度(この例では45度)以下の角度成分(光束)のみが到達する。このため、受光装置10では、光電変換素子17の受光面17aへの入射光として、0度からスペーサ14の制限角度(45度)までの間の進行方向の光束(角度成分)を略均等に進行させることができる。また、拡散板12により拡散された後に干渉フィルタ15を経ることにより、光電変換素子17の受光面17aに入射する入射光では、振動方向が入射面に対して一様な自然光となるので、偏光の影響をなくすことができる。なお、この例では、干渉フィルタ15と光電変換素子17との間に、絞り16が設けられており、この絞り16により干渉フィルタ15を経た入射光のうち光電変換素子17の受光面17aに到達する入射光の入射角度が微調整されているので、光電変換素子17(その受光面17a)に対しては、スペーサ14の入射端開口14bの径寸法と、絞り16の内径寸法と、入射端開口14bから絞り16までの光軸方向の長さ寸法と、により制限された角度以下の角度成分(光束)のみが受光面17aに到達している。このため、この例では、スペーサ14と絞り16とにより、光電変換素子17(その受光面17a)における入射光の入射角度を制限する入射角度制限部材が構成されていることとなるが、この絞り16による入射角度の微調整はスペーサ14による角度制限の作用を補助するものであることから、以下の説明では絞り16による微調整は考えないものとする。
【0053】
このため、光電変換素子17では、スペーサ14(入射角度制限部材)により角度が制限された進行方向の光束(角度成分)のみが受光面17aに入射し、受光面17aにおける入射光の入射角度に対する感度(指向特性(図10参照))に応じて電気信号(例えば、電流値)を出力する。このとき、この出力された電気信号では、スペーサ14における制限角度が、入射端面11aに対する入射光の入射角度の変化に応じた光電変換素子17の受光面17aへと至る実効的な入射光としての光束(光量)の変化の度合いと、光電変換素子17の指向特性(図10参照)と、の積を、余弦則(図9参照)とするように、設定されていることから、斜入射光特性が余弦則(図9参照)に近似することとなる。
【0054】
よって、本発明に係る受光装置10では、入射端面11aに対する入射光の入射角度の変化に応じたスペーサ14の入射端開口14bへと至る入射光としての光束(光量)の変化の度合いと、拡散板12による入射光の拡散と、スペーサ14による制限角度と、光電変換素子17の指向特性(図10参照)と、により、斜入射光特性が余弦則(図9参照)に近似されている。なお、この例では、上述したように、スペーサ14における制限角度は、干渉フィルタ15における合成角度範囲の最大値と合致されて設定されていることから、入射端面11aに対する入射光の入射角度の変化に対する感度特性を余弦則(図9参照)に近似させるために、干渉フィルタ15と光電変換素子17との間に絞り16を設け、受光面17aに到達する入射光の入射角度、すなわち受光面17aでの実行的な受光量の変化の度合いの微調整を行う構成としている。
【0055】
このように、本発明に係る受光装置10では、入射光を拡散板12で拡散し、その拡散された入射光における角度成分をスペーサ14で制限し、その角度成分が制限された入射光における波長成分を干渉フィルタ15で制限するものであることから、干渉フィルタ15における透過波長の入射角度依存性と偏光依存性との影響を低減することができ、高い精度で所望の分光応答度特性(この例では標準分光視感効率V(λ)に近似する特性)を得ることができる。
【0056】
また、受光装置10では、干渉フィルタ15が、入射面15bへの入射角度で見て0度から所定の大きさまでの間の分光透過率特性の平均値に基づく平均角度合成分光透過率比Fm(λ)と、光電変換素子17の分光応答度PD(λ)と、の積が標準分光視感効率V(λ)となるように設定されていることから、拡散板12で拡散されることにより種々の角度成分を略均等に有している入射光に適合する分光透過率特性を有していることとなるので、所望の分光応答度特性(この例では標準分光視感効率V(λ)に近似する特性)を適切に得ることができる。
【0057】
さらに、受光装置10では、干渉フィルタ15が、入射面15bへの入射角度で見て0度から所定の大きさまでの間の分光透過率特性の平均値に基づく平均角度合成分光透過率比Fm(λ)と、光電変換素子17の分光応答度PD(λ)と、カバー板11と拡散板12と赤外線吸収フィルタ13との分光透過率をG(λ)と、の積が標準分光視感効率V(λ)となるように設定されていることから、拡散板12で拡散されることにより種々の角度成分を略均等に有している入射光により適合する分光透過率特性を有していることとなるので、所望の分光応答度特性(この例では標準分光視感効率V(λ)に近似する特性)を適切に得ることができる。
【0058】
受光装置10では、干渉フィルタ15の設定の基準としての平均角度合成分光透過率比Fm(λ)が、0度からスペーサ14(入射角度制限部材)の制限角度(上記した例では45度)までの間の平均値である平均角度合成分光透過率Fm´(λ)(図8参照)に基づいて算出されていることから、スペーサ14を経た入射光が有する角度成分と干渉フィルタ15の設定の対象とされた角度成分とが等しいため、スペーサ14により角度成分が制限された入射光の波長成分を干渉フィルタ15でより適切に制限する(所定の分光透過率で透過させる)ことができるので、所望の分光応答度特性(この例では標準分光視感効率V(λ)に近似する特性)をより適切に得ることができる。
【0059】
受光装置10では、スペーサ14の制限角度が、干渉フィルタ15の分光透過率特性に適合されて設定されていることから、スペーサ14により角度成分が制限された入射光の波長成分を干渉フィルタ15でより適切に制限することができるので、所望の分光応答度特性(この例では標準分光視感効率V(λ)に近似する特性)をより適切に得ることができる。
【0060】
受光装置10では、干渉フィルタ15において、入射面15bにロングパス干渉膜が形成され、かつ出射面15cにショートパス干渉膜が形成されていることから、干渉フィルタ15における透過波長の入射角度依存性の影響をより低減することができる。これは、以下のことによる。スペーサ14の入射端開口14bの径寸法に対して、光電変換素子17の受光面17a上での実効的な径寸法(主に出射端開口14cの径寸法もしくは絞り16の内径寸法により決定される実効的な受光面積)が小さく設定されることにより、干渉フィルタ15を経て光電変換素子17の受光面17aへと入射する光路で見た出射面15c上での面積を入射面15b上での面積よりも小さくすることができることから、スペーサ14(場合によっては絞り16も含む)による入射面15bへの入射光における入射角度の制限値よりも、スペーサ14(場合によっては絞り16も含む)による出射面15cへの入射光における入射角度の制限値の方が、実質的に大きくなる(より狭い角度成分のみの通過を許す)ことが考えられる。ここで、光学薄膜(干渉膜(干渉フィルタ15))では、上述したように、長い波長領域ほど透過波長の入射角度依存性の影響による分光透過率特性線の移動量の割合が大きくなる。これらのことから、干渉フィルタ15として設定する分光透過率において、短波長側の分光透過率特性を形成するロングパス干渉膜を入射面15bに設け、かつ長波長側の分光透過率特性を形成するショートパス干渉膜を出射面15cに設けることにより、入射角度依存性の影響が大きい長波長帯域における入射角度の制限値を実質的に大きくすることができる、換言すると出射面15cに到達する入射光における角度成分をより制限することができるので、透過波長の入射角度依存性の影響を小さくすることができる。
【0061】
受光装置10では、赤外線吸収フィルタ13により入射光における略900nm以上の波長帯域の波長成分が完全に吸収されていることから、干渉フィルタ15における光学薄膜の層数(積層数)を低減しつつ所望の分光応答度特性(この例では標準分光視感効率V(λ)に近似する特性)をより適切に得ることができる。これは、以下のことによる。干渉フィルタ15は、上述したようにガラス基板15aに様々な屈折率を有する誘電体材料による光学薄膜が積層されることにより、分光透過率特性が設定されている。この分光透過率特性は、光学薄膜の層数(積層数)を増やすことにより、非透過帯域(反射性能を有する波長帯域)を拡大することができる。干渉フィルタ15では、受光装置10における分光応答度特性を標準分光視感効率V(λ)に近似すべく分光透過率特性が設定されているが、赤外線吸収フィルタ13により入射光における略900nm以上の波長帯域の波長成分を完全に吸収させることができることから、赤外線吸収フィルタ13があれば略900nm以上の波長帯域に対する反射性能を有する必要がない。このため、干渉フィルタ15の分光透過率F(λ)の長波長側に相当する箇所を形成するショートパス干渉膜に、長波長帯域における反射性能を持たせる必要がなくなるので、当該ショートパス干渉膜を図5に二点鎖線で示すように長波長帯域の透過を許すような特性とすることができる。このため、ショートパス干渉膜における光学薄膜の層数(積層数)を低減することができ、干渉フィルタ15における光学薄膜の層数(積層数)を低減することができる。
【0062】
受光装置10では、赤外線吸収フィルタ13により入射光における略900nm以上の波長帯域の波長成分が完全に吸収されているとともに、干渉フィルタ15における透過波長の入射角度依存性の影響が低減されていることから、干渉フィルタ15における光学薄膜の層数(積層数)をより低減しつつ所望の分光応答度特性(この例では標準分光視感効率V(λ)に近似する特性)をより適切に得ることができる。これは、以下のことによる。上述したように、赤外線吸収フィルタ13により入射光における略900nm以上の波長帯域の波長成分が完全に吸収されていることから、干渉フィルタ15では、略900nm以上の波長帯域に対する反射性能が必要なくなる。ところが、干渉フィルタ15では、透過波長の入射角度依存性の影響により分光透過率特性が短波長側へと移動する場面があることから、この移動分を考慮して干渉フィルタ15における長波長帯域に対する反射性能を設定する必要がある。本願発明の構成では、干渉フィルタ15における透過波長の入射角度依存性の影響を低減することができることから、透過波長の入射角度依存性の影響による分光透過率特性の短波長側への移動分として考慮する量を低減することができるので、干渉フィルタ15における長波長帯域に対する反射性能の上限波長をより900nmに近くに設定することができる(図5に二点鎖線で示すような長波長帯域の透過を許す特性線の間にある矢印参照)。このため、ショートパス干渉膜における非透過帯域を拡大することができ、ショートパス干渉膜における光学薄膜の層数(積層数)を低減することができ、干渉フィルタ15における光学薄膜の層数(積層数)を低減することができる。
【0063】
受光装置10では、入射光を拡散板12で拡散し、その拡散された入射光における角度成分をスペーサ14で制限し、その角度成分が制限された入射光を光電変換素子17の受光面17aで受光するものであることから、受光装置10における斜入射光特性、すなわち受光装置10の入射端面11aへの入射光の入射角度の変化に対する感度の変化度合いを、余弦則(図9参照)に近似させることを容易なものとすることができる。これは、以下のことによる。受光装置10では、拡散板12が完全拡散面に近い拡散性能を有していることから、光軸方向(この例では入射端面11aの法線方向)から見た入射光の入射角度の増大傾向の変化に対して、光電変換素子17の指向特性(図10参照)を考慮した受光面17aでの受光量の減少度合いを、平坦面に対する入射角度の増大傾向の変化に伴う受光面積の減少度合いよりも低減することができるので、入射角度の増大に伴う光電変換素子17の受光面17aでの実効的な受光量の低減を、余弦則よりも小さなものとすることができる。このため、受光装置10では、入射角度に応じた受光量を減ずる方向へと調整するだけで、余弦則に適合させることができることとなる。ここで、受光装置10では、拡散板12と光電変換素子17(受光面17a)との間に、拡散板12で拡散された入射光における角度成分を制限するスペーサ14が設けられていることから、このスペーサ14における制限角度を調整することにより、入射角度に応じた受光量を減ずる方向へと調整することができるので、容易に高い精度で余弦則に適合させることができる。ここで、光電変換素子17の指向特性(図10参照)を考慮した受光面17aでの実行的な受光量の減少度合いとは、光電変換素子17が受光面17aに入射した光の強度(受光量)と自らの指向特性とを乗算した大きさを示す電気信号(例えば、電流値)を出力するものであることから、光電変換素子17からの出力値(電気信号)の減少度合いのことをいう。
【0064】
受光装置10では、スペーサ14の制限角度が、入射端面11aに対する入射光の入射角度の変化に応じた光電変換素子17の受光面17aでの実効的な受光量(光電変換素子17からの出力値(電気信号))の変化の度合いと、光電変換素子17の指向特性(図10参照)と、を乗算した値を、余弦則(図9参照)とするように、設定されていることから、任意の指向特性(図10参照)を有する光電変換素子を用いて受光装置10における斜入射光特性を余弦則(図9参照)に高い精度で近似させることができる。
【0065】
受光装置10では、スペーサ14で角度成分が制限された入射光を光電変換素子17の受光面17aで受光させることで、受光装置10における斜入射光特性を余弦則(図9参照)に近似させるために、入射光を拡散する拡散板12が、完全拡散面に近い拡散性能を有する材料(実施例1ではフッ素を含む樹脂材料の一例としての白色PTFE(四フッ化エチレン樹脂))から形成されているので、従来のように半球状のグローブを用いることなく高い精度で余弦則に近似させることができる。
【0066】
受光装置10では、ガラス基板15aに様々な屈折率を有する誘電体材料による光学薄膜が積層して形成した干渉フィルタ15において、0度からスペーサ14の制限角度(45度)までを合成した角度に対する平均角度合成分光透過率Fm´(λ)に基づく平均角度合成分光透過率比Fm(λ)と、光電変換素子17の分光応答度PD(λ)と、の積が標準分光視感効率V(λ)となるように、分光透過率F(λ)が設定されていることから、所定の角度に対する分光透過率F(λ)がリップルを有する特性線(図7の分光透過率F30(λ)や分光透過率F45(λ)の特性線参照)である場合であっても、図8に示すように平均角度合成分光透過率比Fm(λ)としては滑らかな特性線とすることができ、より適切に標準分光視感効率V(λ)に近似させることができる。
【0067】
受光装置10では、拡散板12により入射光を拡散していることから、入射光が偏光である場合であっても、偏光のない自然光の状態に変換することができるので、干渉フィルタ15を用いて高い精度で所望する分光透過率特性を得る、すなわちより適切に標準分光視感効率V(λ)に近似させることができる。
【0068】
受光装置10では、ガラス基板15a(光学的に透過の特性を持つ基材)に様々な屈折率を有する誘電体材料による光学薄膜を積層して形成した干渉フィルタ15を用いて、分光応答度特性の調整を行っていることから、色ガラスフィルタを用いて構成する場合のように環境負荷の高い物質を用いることなく、かつ色ガラスフィルタを用いて構成する場合に比較して厚さ寸法の増大を招くことなく、高い精度で所望する分光透過率特性を得ることができる。
【0069】
受光装置10では、スペーサ14により、干渉フィルタ15に至る入射光における角度成分を所定の角度以下のものに制限することができるので、干渉フィルタ15を透過した光(入射光)において想定していない波長成分が含まれていることを防止することができる。これは、干渉膜を用いた干渉フィルタでは、所定の入射角度を越える光が入射すると、全く想定していない波長成分の光の透過を許してしまうことがあることによる。
【0070】
受光装置10では、ガラス基板15a(光学的に透過の特性を持つ基材)に様々な屈折率を有する誘電体材料による光学薄膜を積層して形成した干渉フィルタ15を用いて、分光応答度特性の調整を行っていることから、色ガラスフィルタや色素フィルムフィルタを用いて構成する場合に比較して、干渉フィルタ15における分光透過率の設定の自由度が高いので、所望の分光応答度特性(この例では標準分光視感効率V(λ)に近似する特性)をより適切に得ることができる。
【0071】
受光装置10では、ガラス基板15a(光学的に透過の特性を持つ基材)に様々な屈折率を有する誘電体材料による光学薄膜を積層して形成した干渉フィルタ15を用いて、分光応答度特性の調整を行っていることから、色ガラスフィルタや色素フィルムフィルタのように熱や紫外線の吸収により分光透過率特性が変化する、ということがないので、熱や紫外線の影響により分光応答度特性が変化することを防止することができ、安定した分光応答度特性を得ることができる。ここで、受光装置10では、赤外線吸収フィルタ13を用いているが、この赤外線吸収フィルタ13は測光機器(この例では照度計)において感度を持つ必要のない長波長帯域の成分の透過を阻むものであって、分光応答度特性の調整に直接影響を及ぼす構成ではないので、赤外線吸収フィルタ13における熱や紫外線の影響が分光応答度特性に及ぶことはない。
【0072】
受光装置10では、スペーサ14に加えて絞り16が設けられていることから、スペーサ14の制限角度を干渉フィルタ15の分光透過率特性に適合させて設定する、すなわち干渉フィルタ15の設定の基準としての平均角度合成分光透過率比Fm(λ)を0度からスペーサ14の制限角度までの間の平均値である平均角度合成分光透過率Fm´(λ)(図8参照)に基づいて算出することで適切に所望の分光応答度特性(この例では標準分光視感効率V(λ)に近似する特性)を得ることができるとともに、スペーサ14の制限角度を絞り16で補正することで、斜入射光特性を余弦則(図9参照)に高い精度で近似させることができる。
【0073】
受光装置10では、光電変換素子17への入射光の入射角度の制限の観点からは、上述した設定を可能とすることを前提として、被測定箇所側から順に拡散板12、スペーサ14および光電変換素子17を配置するとともに上記したような各設定とすることにより、斜入射光特性を余弦則(図9参照)に高い精度で近似させることができることから、拡散性能を有する半球状のグローブ(受光球)を用いる必要がないので、半球状に突出したグローブを非使用時等に保護するために当該グローブを収容可能な比較的大きなカバー部材を用いる必要もなく、より簡易で小さな構成とすることができる。
【0074】
したがって、本発明に係る受光装置10では、デザインの自由度の向上や大きさ寸法の低減を可能としつつ高い精度で所望の斜入射光特性、この例では余弦則に近似した斜入射光特性を得ることができる。
【0075】
なお、上記した例では、受光装置10が、図1および図2に示すように、光軸方向に沿って被測定箇所側から順に、カバー板11と拡散板12と赤外線吸収フィルタ13とスペーサ14と干渉フィルタ15と絞り16と光電変換素子17とを備える構成とされていたが、干渉フィルタ15または光電変換素子17に至る入射光における角度成分を制限するものであれば、例えば、スペーサ14に代えて一対の絞り18(図11参照)(個別に示すときは被測定箇所側から18a、18bとする)を設けるものであってもよく、上記した例に限定されるものではない。この2つの絞り18が設けられた受光装置101の例を図11に示す。この受光装置101は、基本的な構成は受光装置10と同様であることから、等しい構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。受光装置101では、被測定箇所側から見て拡散板12の後方に一対の絞り18(18a、18b)が設けられており、その両絞り18の間に、赤外線吸収フィルタ131が設けられている。この一対の絞り18は、被測定箇所側に位置する絞り18aが、スペーサ14における入射端開口14b(図2参照)に相当し、かつ干渉フィルタ15側に位置する絞り18bが、スペーサ14における出射端開口14c(図2参照)に相当しており、絞り18aの内径寸法と、絞り18bの内径寸法と、両絞り18a、18bの光軸方向で見た間隔寸法と、の比により、制限する角度の大きさを設定する。このため、受光装置101では、角度成分の制限のために設けられる絞り18aと絞り18bとの間隔を利用して、赤外線吸収フィルタ131を配置することができる。よって、受光装置101では、受光装置10と同様の効果を得ることができるとともに、光軸方向の大きさ寸法を低減することができる。
【0076】
また、上記した例では、受光装置10が、本願発明に係る測光機器の一例である照度計50における受光装置として構成されていたが、他の測光機器であってもよく、上記した例に限定されるものではない。他の測光機器の一例としての色彩照度計60における受光装置102を図12に示す。この受光装置102は、図13に示すCIEで規定された等色関数x(λ)、y(λ)、z(λ)に近似した分光応答度特性を得るように構成されている。なお、一般に等色関数を表わす記号としてバー付きのものが用いられるが、便宜上、バーを省略して示している。この受光装置102は、基本的な構成は受光装置10と同様であることから、等しい構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。受光装置102は、単一のカバー板11、拡散板12および赤外線吸収フィルタ13と、3つのスペーサ142、干渉フィルタ152、絞り162および光電変換素子172(それぞれ個別に示すときは、末尾にa、b、cを付して示す)と、により構成されている。なお、図12では、3つのスペーサ142a、142b、142cの境界線は明確には記載されていない。スペーサ142a、干渉フィルタ152a、絞り162aおよび光電変換素子172aは、共通のカバー板11、拡散板12および赤外線吸収フィルタ13との協働により、等色関数x(λ)(図13の実線参照)に近似した分光応答度特性を得るように構成され、スペーサ142b、干渉フィルタ152b、絞り162bおよび光電変換素子172bは、共通のカバー板11、拡散板12および赤外線吸収フィルタ13との協働により、等色関数y(λ)(図13の一点鎖線参照)に近似した分光応答度特性を得るように構成され、スペーサ142c、干渉フィルタ152c、絞り162cおよび光電変換素子172cは、共通のカバー板11、拡散板12および赤外線吸収フィルタ13との協働により、等色関数z(λ)(図13の二点鎖線参照)に近似した分光応答度特性を得るように構成されている。これらにおいて、各々斜入射光特性が余弦則(図9参照)に近似されているのは言うまでもない。このため、受光装置102では、受光装置10と同様の効果を得ることができ、干渉フィルタ152を用いて高い精度で等色関数x(λ)、y(λ)、z(λ)に近似した分光応答度特性を得ることができる。また、受光装置102では、色彩照度計60として等色関数x(λ)、y(λ)、z(λ)(図13参照)に近似した分光応答度特性を得るべく3つのスペーサ142、干渉フィルタ152、絞り162および光電変換素子172を用いる構成とされているが、拡散性能を有する半球状のグローブを用いる必要のない構成であることから、斜入射光特性を高い精度で余弦則に近似させることができる。これは、半球状のグローブを用いる場合、各光電変換素子172における光軸に直交する面で見た光軸からの位置関係が、光軸周りで見た角度位置に拘らず均等でないと、当該角度位置の変化に応じて斜入射光特性が変化してしまうことによる。さらに、また、受光装置102では、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板12が用いられていることから、色彩照度計60として等色関数x(λ)、y(λ)、z(λ)(図13参照)に近似した分光応答度特性を得るべく3つのスペーサ142、干渉フィルタ152、絞り162および光電変換素子172を用いても、適切に色の評価を行うことができる。これは、各スペーサ142、各干渉フィルタ152、各絞り162および各光電変換素子172における光軸に直交する面で見た光軸からの位置関係が、光軸周りで見た角度位置に拘らず均等でないと、入射光が光軸方向に対して傾斜している場合、各素子に対する入射量のバランスを均一とすることができないことによる。この受光装置102の構成は、光学部材として適宜結像レンズを設けることにより、色彩輝度計とすることができる。
【実施例1】
【0077】
次に、本願発明に係る測光機器の受光装置における具体的な構成の一例である実施例1の受光装置103について説明する。なお、実施例1の測光機器の受光装置103は、基本的な構成は上記した例の受光装置10と同様であることから、等しい構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。図14は、受光装置103の構成を模式的に示す説明図である。図15は、比較例としての受光装置203の構成を模式的に示す説明図である。図16は、受光装置103および受光装置203の斜入射光特性における余弦則からの誤差を示すグラフであり、縦軸が余弦則からの誤差率(%)を示し、横軸が受光装置に対する入射角度(度)を示している。この図16では、受光装置103の誤差を実線で示し、受光装置203の誤差を一点鎖線で示している。また、図16では、入射角度が10、30、50、60および80度であるときのJISで定められたAA級の最大許容誤差の目安を短い横線で示しており、同様にJISで定められた精密級の最大許容誤差の目安をさらに短い横線で示している。
【0078】
実施例1の受光装置103は、本願発明に係る測光機器の一例である照度計503における受光装置として構成されたものであり、後述するカバー板113(その入射端面113a)を外方に露出させるように照度計503の本体503aに設けられている。この受光装置103は、図14に示すように、光軸方向に沿って被測定箇所側から順に、カバー板113と拡散板12と赤外線吸収フィルタ13とスペーサ14と干渉フィルタ15と光電変換素子17とを備える。
【0079】
カバー板113は、外方からの拡散板12への接触を防止すべく当該拡散板12を覆うものであり、乳白色のアクリル樹脂材料(PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂))から形成されて、半球状を呈している。カバー板113では、外側の面(入射端面113a)で被測定箇所を照射する光を、拡散板12へ向けてすなわち受光装置103内へと取り入れる。このカバー板113は、アクリル樹脂材料が低い拡散性能を有していることから、拡散板12での拡散作用を補助することができる。また、カバー板113は、半球状を呈していることから、平坦面で形成されている場合に比較して、光軸方向に対する入射光の入射角度の変化に対する光電変換素子17の受光面17aでの実効的な受光量の低減を、小さなものとすることができる。この受光装置103では、基本的な構成が同様であることから、受光装置10と同様の効果を得ることができる。
【0080】
ここで、比較例としての受光装置203について、図15を用いて説明する。この受光装置203は、光学フィルタとして色ガラスフィルタを用いて構成されている。受光装置203は、図15に示すように、光軸方向に沿って被測定箇所側から順に、グローブ(受光球)41と第1ガラスフィルタ42と第2ガラスフィルタ43と光電変換素子44とを備えており、第1ガラスフィルタ42と第2ガラスフィルタ43とにより光学フィルタが構成されている。グローブ41は、乳白色のアクリル樹脂材料(PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂))から形成されて、半球状を呈している。この受光装置203では、光学フィルタ(42、43)の分光透過率特性と光電変換素子44の分光応答度特性との積によって決まるが、光電変換素子44の分光応答度特性は使用する素子の種類によってほぼ決まってしまうため、光学フィルタ(42、43)における分光透過率特性の調整によって、受光装置としての分光応答度特性を得ることになる。
【0081】
光学フィルタとしての色ガラスフィルタでは、任意の分光透過率特性を得ることが困難であることから、受光装置203では、2枚の第1ガラスフィルタ42と第2ガラスフィルタ43とを用いて所望の分光透過率特性を得る構成とされている。このため、光学フィルタの厚さ寸法の増大を招いてしまう。また、色ガラスフィルタでは、任意の分光透過率特性を得ることが困難であることから、組み合わせる色ガラスフィルタの種類が限定されてしまう、すなわち第1ガラスフィルタ42や第2ガラスフィルタ43として用いることのできる種類が限定されてしまうとともに、それらを組み合わせても高い精度で所望する分光透過率特性を得ることが困難である。このことは、色素フィルムフィルタを用いた場合であっても同様である。さらに、受光装置としての分光応答度特性を標準分光視感効率V(λ)(等色関数x(λ)、y(λ)、z(λ)の場合であっても同様)に近似させることに好適な色ガラスフィルタには、環境負荷の高い物質(例えばカドミウム等)が含まれていることが多く、製作自体が困難となってしまう。
【0082】
また、比較例としての受光装置203では、拡散性能を有する半球状のグローブ41を用いることにより、光軸方向に対する入射光の進行方向の為す角度を入射角度として、入射角度が0度から大きくなることに伴う入射角度の変化に対する実効的な受光量の減少度合いを、平坦面に対する入射角度の変化に伴う受光面積の減少度合いよりも低減し、入射角度の増大に伴う受光量の低減を、余弦則よりも小さなものとしている。このため、受光装置203では、拡散性能を有する半球状のグローブ41を用いることにより、入射角度に応じた受光量を減ずる方向へと調整するだけで、余弦則に適合させることができることとなる。この受光装置203では、入射角度に応じた受光量を減ずる方向への調整のために、半球状のグローブ41を取り囲むように、環状傾斜壁45が設けられている。この環状傾斜壁45では、入射光の入射角度の変化に対する実効的な受光量の減少度合いを余弦則に適合させるべく、入射角度に応じた受光量を調整するように、グローブ41に対する高さ寸法(光軸方向で見た大きさ寸法)と傾斜角度とが設定されている。
【0083】
ところが、受光装置203の構成では、半球状のグローブ41を突出させるように設ける必要があることから、デザインが制限されるとともに、大きさ寸法(厚み)の増大を招いてしまう。また、受光装置203では、グローブ41が乳白色のアクリル樹脂材料(PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂))から形成されていることから、上記した作用を得るための十分な拡散性能を得ることが困難であるため、グローブ41から光電変換素子44(その受光面)までの間隔を大きくすることにより上記した作用を得るための十分な拡散性能を確保する必要があるので、大きさ寸法(厚み)の増大を招いてしまう。
【0084】
これに対し、本発明に係る受光装置103では、干渉フィルタ15を用いていることから、受光装置203に比較して光学フィルタの厚さ寸法を大幅に低減することができる。
【0085】
また、本発明に係る受光装置103では、干渉フィルタ15を用いていることから、受光装置203に比較して高い精度で所望する分光透過率特性を得ることができる。
【0086】
さらに、本発明に係る受光装置103では、干渉フィルタ15を用いていることから、受光装置203に比較して環境負荷の高い物質を用いることなく、受光装置としての分光応答度特性を高い精度で標準分光視感効率V(λ)(等色関数x(λ)、y(λ)、z(λ)の場合であっても同様)に近似させることができる。
【0087】
本発明に係る受光装置103では、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板12(実施例1では白色PTFE(四フッ化エチレン樹脂)から形成されている)が用いられていることから、光軸(この例では入射端面11aの法線方向)に対する入射光の入射角度の変化に対して、光電変換素子17の指向特性(図10参照)を考慮した受光面17aに到達する入射光における光束(光量)の減少度合いを、平坦面に対する入射角度の変化に伴う受光面積の減少度合いよりも低減することができるので、受光装置203に比較してデザインの自由度が大幅に向上するとともに、大きさ寸法を大幅に低減することができる。なお、実施例1の受光装置103では、白色PTFEから為る半球状のカバー板113が設けられているが、これは従来の照度計のユーザーに対して違和感を与えないためという側面が大きく、上述したように実質的には拡散板12を保護するものであって光学的な作用の観点からは設けなくてもよいものであることから、カバー板113は設けなくてもよいものである。
【0088】
本発明に係る受光装置103では、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板12(実施例1では白色PTFE(四フッ化エチレン樹脂)から形成されている)が用いられていることから、受光装置203におけるグローブ41から光電変換素子44(その受光面)までの間隔に比較して、拡散板12から光電変換素子17(その受光面17a)までの間隔を大幅に低減することができる。
【0089】
本発明に係る受光装置103では、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板12(実施例1では白色PTFE(四フッ化エチレン樹脂)から形成されている)が用いられているとともに、拡散板12で拡散された入射光における角度成分を制限するスペーサ14が設けられており、そのスペーサ14の制限角度が、入射端面11aに対する入射光の入射角度の変化に応じた受光面17aに到達する入射光としての光束(光量)の変化の度合いと、光電変換素子17の指向特性(図10参照)と、を乗算した値を、余弦則(図9参照)とするように、設定されていることから、受光装置203のように入射角度に応じた受光量を調整のための半球状のグローブと環状傾斜壁45とを設ける必要がないので、受光装置203に比較して簡易な構成とすることができるとともに、デザインの自由度を大幅に向上させることができる。なお、実施例1の受光装置103では、半球状のグローブに似たカバー板113と、受光装置203の環状傾斜壁45に相当する環状傾斜壁45´がカバー板113を取り囲むように設けられているが、これは従来の照度計のユーザーに対して違和感を与えないためという側面が大きく、スペーサ14の制限角度により斜入射光特性を余弦則に適合させることができることから、環状傾斜壁45´はなくてもよいものである。
【0090】
ここで、実際に受光装置103と受光装置203とを実際に製作して得た斜入射光特性(図16参照)を比較する。受光装置103は、上述したように、入射光を拡散板12で拡散し、その拡散された入射光における角度成分をスペーサ14で制限し、その角度成分が制限された入射光を光電変換素子17の受光面17aで受光するものであって、スペーサ14の制限角度が、入射端面11aに対する入射光の入射角度の変化に応じた光電変換素子17の受光面17aでの実効的な受光量(光電変換素子17からの出力値(電気信号))の変化の度合いと、光電変換素子17の指向特性(図10参照)と、を乗算した値を余弦則(図9参照)とするように、設定されて構成されている。このため、受光装置103では、実質的にスペーサ14における制限角度を調整するだけの簡易な構成であるにも拘らず、JISで定められた精密級の最大許容誤差を満たしているのは勿論であって、極めて高い精度で余弦則に近似した斜入射光特性を得ることができた。他方、受光装置203では、上述したように、拡散性能を有する半球状のグローブ41を環状傾斜壁45で取り囲むものであって、環状傾斜壁45のグローブ41に対する高さ寸法および傾斜角度が入射光の入射角度の変化に対する実効的な受光量の減少度合いを余弦則に適合させるべく、入射角度に応じた受光量を調整するように、設定されて構成されている。このため、受光装置203では、環状傾斜壁45とグローブ41とにおける各寸法の設計値を相対的に設定する必要があるにも拘らず、JISで定められたAA級の最大許容誤差を満たしてはいるが、受光装置103と比較すると余弦則に対する近似が低い精度の斜入射光特性となっている。
【0091】
なお、実施例1の受光装置103では、絞り16(図1および図2参照)が設けられていなかったが、干渉フィルタ15と光電変換素子17との間に、スペーサ14による光電変換素子17(その受光面17a)における入射角度の制限量の微調整のために絞り16(図1および図2参照)を設ける構成としてもよい。
【実施例2】
【0092】
次に、本願発明に係る測光機器の受光装置における具体的な構成の他の一例である実施例2の受光装置104について説明する。なお、実施例2の測光機器の受光装置104は、基本的な構成は上記した例の受光装置10と同様であることから、等しい構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。図17は、受光装置104の構成を模式的に示す説明図である。図18は、比較例としての受光装置204の構成を模式的に示す説明図である。
【0093】
実施例2の受光装置104は、本願発明に係る測光機器の一例である照度計504における受光装置として構成されたものであり、後述するカバー板11(その入射端面11a)を外方に露出させるように照度計504の本体504aに設けられている。この受光装置104は、図17に示すように、光軸方向に沿って被測定箇所側から順に、カバー板11と拡散板12と赤外線吸収フィルタ13とスペーサ14と干渉フィルタ15と光電変換素子17とを備える。
【0094】
カバー板11は、外方からの拡散板12への接触を防止すべく当該拡散板12を覆うものであり、乳白色のアクリル樹脂材料(PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂))から形成されて、板状を呈している。カバー板11では、外側の面(入射端面11a)で被測定箇所を照射する光を、拡散板12へ向けてすなわち受光装置104内へと取り入れる。このカバー板11は、アクリル樹脂材料が低い拡散性能を有していることから、拡散板12での拡散作用を補助することができる。この受光装置104では、基本的な構成が同様であることから、受光装置10と同様の効果を得ることができる。
【0095】
ここで、比較例としての受光装置204について、図18を用いて説明する。この受光装置204は、光学フィルタとして色ガラスフィルタを用いて構成されている。なお、受光装置204は、基本的な構成は実施例1における比較例としての受光装置203と同様であることから、等しい構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0096】
受光装置204は、図18に示すように、光軸方向に沿って被測定箇所側から順に、拡散カバー414と第1ガラスフィルタ42と第2ガラスフィルタ43と光電変換素子44とを備えており、第1ガラスフィルタ42と第2ガラスフィルタ43とにより光学フィルタが構成されている。拡散カバー414は、乳白色のアクリル樹脂材料(PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂))から形成されて、板状を呈している。この受光装置204では、光学フィルタ(42、43)における分光透過率特性の調整によって、受光装置としての分光応答度特性を得ている。
【0097】
また、比較例としての受光装置204では、拡散性能を有する拡散カバー414を用いることにより、光軸方向に対する入射光の進行方向の為す角度を入射角度として、入射角度が0度から大きくなることに伴う入射角度の変化に対する実効的な受光量の減少度合いを、入射光の入射角度の変化に対する実効的な受光量の減少度合いを余弦則に適合させるものである。このため、受光装置204では、受光装置203と比較すると、拡散カバー414(グローブ41)が半球状とされておらず、かつ環状傾斜壁45が設けられていない構成とされている。
【0098】
この受光装置204の構成では、拡散カバー414が乳白色のアクリル樹脂材料(PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂))から形成されていることから、上記した作用を得るための十分な拡散性能を得ることが困難であるため、拡散カバー414から光電変換素子44(その受光面)までの間隔を大きくすることにより、上記した作用を得るための十分な拡散性能を確保する必要があるので、大きさ寸法(厚み)の増大を招いてしまう。
【0099】
これに対し、本発明に係る受光装置104では、干渉フィルタ15を用いていることから、受光装置204に比較して光学フィルタの厚さ寸法を大幅に低減することができる。
【0100】
また、本発明に係る受光装置104では、干渉フィルタ15を用いていることから、受光装置204に比較して高い精度で所望する分光透過率特性を得ることができる。
【0101】
さらに、本発明に係る受光装置104では、干渉フィルタ15を用いていることから、受光装置204に比較して環境負荷の高い物質を用いることなく、受光装置としての分光応答度特性を高い精度で標準分光視感効率V(λ)(等色関数x(λ)、y(λ)、z(λ)の場合であっても同様)に近似させることができる。
【0102】
本発明に係る受光装置104では、完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板12(実施例2では白色PTFE(四フッ化エチレン樹脂)から形成されている)が用いられているとともに、拡散板12で拡散された入射光における角度成分を制限するスペーサ14が設けられており、そのスペーサ14の制限角度が、入射端面11aに対する入射光の入射角度の変化に応じた受光面17aに到達する入射光としての光束(光量)の変化の度合いと、光電変換素子17の指向特性(図10参照)と、を乗算した値を余弦則(図9参照)とするように、設定されていることから、受光装置204と比較して、高い精度で余弦則に近似した斜入射光特性を得ることができる。すなわち、受光装置204では、拡散カバー414での低い性能(乳白色のアクリル樹脂材料(PMMA)から形成されている)の拡散率と、拡散カバー414と光電変換素子44(その受光面)との間隔と、拡散カバー414における実効的な入射開口と光電変換素子44(その受光面)における実効的な受光面積との比率と、により斜入射光特性を余弦則に近似させることとなることから、それらの設定が困難であるとともに余弦則に対する近似が低い精度の斜入射光特性となってしまう。実際に受光装置104および受光装置204を製作したところ、受光装置104ではJISで定められた精密級の最大許容誤差を満たす斜入射光特性を得ることができたのに対し、受光装置204ではJISで定められたAA級の最大許容誤差を満たす斜入射光特性を得ることができなかった。
【0103】
なお、実施例2の受光装置104では、絞り16(図1および図2参照)が設けられていなかったが、干渉フィルタ15と光電変換素子17との間に、スペーサ14による光電変換素子17(その受光面17a)における入射角度の制限量の微調整のために絞り16(図1および図2参照)を設ける構成としてもよい。
【0104】
上記した各例および各実施例では、本発明に係る受光装置が搭載された測光機器として照度計(色彩照度計)を示していたが、輝度計、色彩計、紫外線強度計、写真用露出計、写真用カラーメーター、スポットメーター、光パワーメーター等であってもよく、上記した各例および各実施例に限定されるものではなく、いずれの測光機器であっても同様の効果を得ることができる。例えば、本発明に係る受光装置では、干渉フィルタにおける透過波長の入射角度依存性の影響と偏光依存性の影響とが低減されていることから、測定角切替式の輝度計に搭載した場合であっても、測定角切り替えた際に分光応答度が変化してしまうことを防止することができるので、測定角に拘らず高い精度で任意の分光応答度特性を得ることができる。このように輝度計に搭載した場合、図示は略すが受光装置では光学部材として結像レンズが設けられ、上述した分光透過率をG(λ)には当該結像レンズの分光透過率も含まれることとなる。
【0105】
なお、上記した各例および各実施例の受光装置(図11に示した受光装置101を除く)では、光軸方向に沿って被測定箇所側から順に、カバー板11(113)と拡散板12と赤外線吸収フィルタ13とスペーサ14(142)と干渉フィルタ15(152)と絞り16(162)(この絞りは設けられていない場合もある)と光電変換素子17(172)とを備える構成とされていたが、干渉フィルタ15(152)への入射光の入射角度の制限の観点からは、上述した設定を可能とすることを前提として、被測定箇所側から拡散板12、スペーサ14(142)および干渉フィルタ15(152)の順で配置されていれば、他の部材の配置は適宜変更してもよく、上記した各例および各実施例に限定されるものではない。
【0106】
また、上記した各例および各実施例の受光装置(図11に示した受光装置101を除く)では、光軸方向に沿って被測定箇所側から順に、カバー板11(113)と拡散板12と赤外線吸収フィルタ13とスペーサ14(142)と干渉フィルタ15(152)と絞り16(162)(この絞りは設けられていない場合もある)と光電変換素子17(172)とを備える構成とされていたが、光電変換素子17への入射光の入射角度の制限の観点からは、上述した設定を可能とすることを前提として、被測定箇所側から拡散板12、スペーサ14(142)および光電変換素子17(172)の順で配置されていれば、他の部材の配置は適宜変更してもよく、上記した各例および各実施例に限定されるものではない。
【0107】
さらに、上記した各例および各実施例の受光装置(図11に示した受光装置101を除く)では、入射角度制限部材として非透過材料からなる板部材に貫通孔が設けられて形成された筒状を呈するスペーサ14(142)が設けられていたが、入射角度制限部材は、干渉フィルタ15(152)の入射面15bにおける入射光の入射角度と、光電変換素子17の受光面17aにおける入射光の入射角度と、を制限するものであれば、例えば、受光装置101(図11参照)のように一対の絞り(図11では符号18)で形成されていてもよく、上記した各例および各実施例に限定されるものではない。このとき、入射側の開口(入射端開口14bまたは絞り18a)と、出射側の開口(出射端開口14c、絞り16または絞り18b)とは、ともに同一光軸上に設けられていることが望ましい。
【0108】
上記した各例および各実施例の受光装置では、干渉フィルタ15において、入射面15bにロングパス干渉膜が形成され、かつ出射面15cにショートパス干渉膜が形成されていたが、所望の分光透過率特性を得るべく上記したように設定された分光透過率を有するものであれば、例えば、入射面15bにショートパス干渉膜が形成されかつ出射面15cにロングパス干渉膜が形成されていてもよく、上記した各例および各実施例に限定されるものではない。しかしながら、干渉フィルタ15における透過波長の入射角度依存性の影響をより低減することができることから、上記した各例および各実施例のように構成することが望ましい。
【0109】
上記した各例および各実施例の受光装置では、単一のガラス基板15aの両面にロングパス干渉膜およびショートパス干渉膜を設けることにより干渉フィルタ15が形成されていたが、所望の分光透過率特性を得るべく上記したように設定された分光透過率を有するものであれば、例えば、二枚以上の光学的に透過の特性を持つ基材の上に干渉膜が形成されていてもよく、あるいは赤外線吸収フィルタの上に干渉膜が形成されていてもよく、上記した各例および各実施例に限定されるものではない。
【0110】
以上、本発明の測光機器の受光装置を各例および各実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの各例および各実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【符号の説明】
【0111】
10、101、102、103、104 測光機器の受光装置
12 拡散板
13、131 赤外線吸収フィルタ
14、142 (入射角度制限部材としての)スペーサ
14b (入射角度制限部材の入射端側の開口としての)入射端開口
14c (入射角度制限部材の出射端側の開口としての)出射端開口
15、152 干渉フィルタ
15b 入射面
15c 出射面
17、172 (受光部材としての)光電変換素子
18 (入射角度制限部材としての)絞り
50、503、504 (測光機器としての)照度計
60 (測光機器としての)色彩照度計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光箇所への光軸方向に対する入射光の入射角度の変化に対する感度の変化度合いを示す斜入射光特性を所定のものとすべく設計される測光機器の受光装置であって、
完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板と、
該拡散板により拡散された入射光を受光し、その受光量に応じた電気信号を出力する受光部材と、
該受光部材と前記拡散板との間に配置され、前記受光部材の入射面における入射光の入射角度を制限する入射角度制限部材と、
を備えることを特徴とする測光機器の受光装置。
【請求項2】
前記入射角度制限部材では、入射光の入射角度の変化に応じた前記受光部材での実効的な受光量の変化の度合いと、該受光部材の指向特性と、を乗算した値を、所望の斜入射光特性とするように、制限する入射角度が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の測光機器の受光装置。
【請求項3】
前記拡散板は、フッ素を含む樹脂材料から形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の測光機器の受光装置。
【請求項4】
前記拡散板としてのフッ素を含む樹脂材料は、四フッ化エチレン樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の測光機器の受光装置。
【請求項5】
前記拡散板は、すりガラスから形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の測光機器の受光装置。
【請求項6】
前記拡散板は、オパールから形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の測光機器の受光装置。
【請求項7】
前記入射角度制限部材は、非透過材料からなる板部材に貫通孔が設けられて形成されており、入射端側の開口の径寸法と、出射端側の開口の径寸法と、前記入射端開口から前記出射端開口に至る光軸方向で見た長さ寸法と、の比により、制限する角度の大きさを設定することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の測光機器の受光装置。
【請求項8】
前記入射角度制限部材は、光軸上で対を為す2つの絞りから形成されており、入射端側の前記絞りの内径寸法と、出射端側の前記絞りの内径寸法と、前記両絞りの光軸方向で見た間隔寸法と、の比により、制限する角度の大きさを設定することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の測光機器の受光装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の測光機器の受光装置が搭載されていることを特徴とする測光機器。
【請求項1】
受光箇所への光軸方向に対する入射光の入射角度の変化に対する感度の変化度合いを示す斜入射光特性を所定のものとすべく設計される測光機器の受光装置であって、
完全拡散面に近い拡散性能を有する拡散板と、
該拡散板により拡散された入射光を受光し、その受光量に応じた電気信号を出力する受光部材と、
該受光部材と前記拡散板との間に配置され、前記受光部材の入射面における入射光の入射角度を制限する入射角度制限部材と、
を備えることを特徴とする測光機器の受光装置。
【請求項2】
前記入射角度制限部材では、入射光の入射角度の変化に応じた前記受光部材での実効的な受光量の変化の度合いと、該受光部材の指向特性と、を乗算した値を、所望の斜入射光特性とするように、制限する入射角度が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の測光機器の受光装置。
【請求項3】
前記拡散板は、フッ素を含む樹脂材料から形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の測光機器の受光装置。
【請求項4】
前記拡散板としてのフッ素を含む樹脂材料は、四フッ化エチレン樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の測光機器の受光装置。
【請求項5】
前記拡散板は、すりガラスから形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の測光機器の受光装置。
【請求項6】
前記拡散板は、オパールから形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の測光機器の受光装置。
【請求項7】
前記入射角度制限部材は、非透過材料からなる板部材に貫通孔が設けられて形成されており、入射端側の開口の径寸法と、出射端側の開口の径寸法と、前記入射端開口から前記出射端開口に至る光軸方向で見た長さ寸法と、の比により、制限する角度の大きさを設定することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の測光機器の受光装置。
【請求項8】
前記入射角度制限部材は、光軸上で対を為す2つの絞りから形成されており、入射端側の前記絞りの内径寸法と、出射端側の前記絞りの内径寸法と、前記両絞りの光軸方向で見た間隔寸法と、の比により、制限する角度の大きさを設定することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の測光機器の受光装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の測光機器の受光装置が搭載されていることを特徴とする測光機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−220770(P2011−220770A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88750(P2010−88750)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】
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