説明

測光装置及び撮像装置

【課題】測光センサを有効利用すること。
【解決手段】本発明の測光装置は、撮影光学系の被写界を測光する測光手段(23)と、測光手段が前記被写界の各位置について生成する測光信号をブロック化することによりブロック信号群を生成するブロック化手段(40d)と、ブロック化手段が生成するブロック信号群の中の最大値が目標値となるように測光手段の動作条件をフィードバック制御するフィードバック制御手段(40a、50a)と、ブロック化手段が生成するブロック信号群に基づき被写体輝度を演算する測光演算手段(40b)とを備え、ブロック化手段は、ブロック化解像度の異なる複数段階のブロック信号群を生成することが可能であり、フィードバック制御手段は、参照対象とすべきブロック信号群のブロック化解像度を測光演算手段の動作内容に応じて切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測光装置及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一眼レフレックスカメラには、ミラーダウン状態でも被写界の明るさ分布を監視できるよう、電荷蓄積型の測光センサが設けられている。この測光センサは、測光演算やシーン解析に用いられ、測光演算の結果(被写体輝度)はカメラの露出制御に利用され、シーン解析の結果はカメラのフォーカス制御に利用される。
【0003】
通常、測光演算に適した測光センサの動作条件(電荷蓄積時間及びアンプゲインの組み合わせ)と、シーン解析に適した測光センサの動作条件とは異なるので、測光センサの電荷蓄積は1回の測光サイクル内に2回行われ、そのうち1回の電荷蓄積の動作条件は測光演算用の動作条件に設定され、他の1回の電荷蓄積の動作条件はシーン解析用の動作条件に設定される。
【0004】
このうち、測光演算用の動作条件は、測光センサの出力する測光信号群をブロック化してできるブロック信号群の中の最大値が目標値となるようにフィードバック制御され、シーン解析用の動作条件は、そのブロック信号群の平均値が目標値となるようにフィードバック制御される。以下、測光演算用のフィードバック制御を「ピークAGC」と称し、シーン解析用のフィードバック制御を「被写体重視AGC」と称す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−2688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、測光センサの解像度向上に伴い、前述したブロック化のブロック分割数(ブロック化解像度)も高まりつつある。しかし、ブロック化解像度が高すぎると、被写界内に著しく高輝度な物体(輝点)が存在した場合に、その輝点に対応するブロック信号が著しく高くなるので、上述したピークAGCは、輝点の測光信号が飽和しないよう、測光演算用の電荷蓄積時間やアンプゲインを強く抑える方向に働く。このようなピークAGCの下では、被写界内で輝点以外の部分の測光信号が黒つぶれする(信号値がゼロになる)可能性があるので、測光演算の結果である被写体輝度が不適切となり、その被写体輝度に応じて設定されるカメラの露出が不適切となる虞がある。
【0007】
そこで本発明は、測光センサを有効利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の測光装置は、撮影光学系の被写界を測光する測光手段と、前記測光手段が前記被写界の各位置について生成する測光信号をブロック化することによりブロック信号群を生成するブロック化手段と、前記ブロック化手段が生成するブロック信号群を参照し、そのブロック信号群の中の最大値が目標値となるように前記測光手段の動作条件をフィードバック制御するフィードバック制御手段と、前記フィードバック制御下で前記ブロック化手段が生成するブロック信号群を参照し、そのブロック信号群に基づき前記被写界内の被写体輝度を演算する測光演算手段とを備え、前記ブロック化手段は、ブロック化解像度の異なる複数段階の前記ブロック信号群を生成することが可能であり、前記フィードバック制御手段は、参照対象とすべきブロック信号群のブロック化解像度を、前記測光演算手段の動作内容に応じて切り換える。
【0009】
本発明の撮像装置は、撮影光学系が形成する被写界の像を撮像する撮像手段と、前記被写界の測光を行う本発明の測光装置と、前記測光装置の前記測光演算手段が演算した被写体輝度に基づき、前記撮像手段の露出を制御する露出制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、測光センサを有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】カメラシステムの全体構成図である。
【図2】ボディ駆動制御装置24及びその周辺のブロック図である。
【図3】ブロック化部40dの動作を説明する図である。
【図4】ブロック化解像度の切り換えに関するボディ駆動制御装置24の動作フローチャートである。
【図5】本実施形態の効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態]
以下、本発明の実施形態として一眼レフレックス・ディジタルスチルカメラシステムを説明する。
【0013】
図1は、カメラシステムの全体構成図である。図1に示すとおり、カメラシステムは、カメラボディ1と、カメラボディ1に装着されたレンズ鏡筒2とを備え、カメラボディ1に装着されるレンズ鏡筒2は、他のレンズ鏡筒に交換することも可能である。
【0014】
レンズ鏡筒2には、撮影レンズ31(ズーミングレンズおよびフォーカシングレンズを含む)、絞り32、レンズ駆動制御装置33などが備えられる。この撮影レンズ31は、被写界(撮影レンズ31の物体空間)から射出した光束(被写界光束)を結像する。
【0015】
レンズ駆動制御装置33は、不図示のマイクロコンピューター、ROM、RAM、レンズ駆動用アクチュエーター、絞り駆動用アクチュエーターなどから構成され、撮影レンズ31の焦点調節や絞り32の開口調節などを行う。
【0016】
カメラボディ1には、メインミラー11、サブミラー12、シャッター13、撮像素子14、焦点検出装置15、拡散スクリーン16、コンデンサーレンズ17、ペンタダハプリズム18、接眼レンズ19、測光光学素子20、測光レンズ22、測光センサ23、ボディ駆動制御装置24などが備えられる。
【0017】
測光センサ23は、CCDやCMOSなどで構成された電荷蓄積型の撮像素子であって、赤色光の強度を検出するR画素と、緑色光の強度を検出するG画素と、青色光の強度を検出するB画素とをモザイク状に(例えばベイヤ配列パターンで)配列している。測光センサ23の総画素数は、例えば86000個などである。なお、本実施形態では、測光センサ23の内部にA/D変換回路が搭載されており、測光センサ23の出力する測光信号は、ディジタル信号であると仮定する。
【0018】
撮像素子14は、CCDやCMOSなどで構成された電荷蓄積型の撮像素子であって、赤色光の強度を検出するR画素と、緑色光の強度を検出するG画素と、青色光の強度を検出するB画素とをモザイク状に(例えばベイヤ配列パターンで)配列している。撮像素子14の総画素数は、測光センサ23の総画素数よりも多い。
【0019】
焦点検出装置15は、瞳分割位相差検出方式の焦点検出装置であり、撮影レンズ31の焦点調節状態を示す信号を、被写界内のエリア毎に生成する。
【0020】
ボディ駆動制御装置24は、後述するシーケンスマイコンや画像処理ICなどから構成され、カメラボディ1に搭載された各要素を制御する。このボディ駆動制御装置24は、レンズ鏡筒2のマウント部に設けられた電気接点(不図示)を介してレンズ鏡筒2のレンズ駆動制御装置33と電気的に接続されている。
【0021】
非撮影時には、図1に破線で示すように、メインミラー11とサブミラー12とが被写界光束の光路に挿入され(ミラーダウン状態となり)、撮影レンズ31を通過した被写界光束の一部はメインミラー11で反射し、拡散スクリーン16上に被写界像を形成する。この被写界像から射出した光束は、コンデンサーレンズ17、ペンタダハプリズム18、接眼レンズ19を介して撮影者の目へ導かれる。また、拡散スクリーン16上の被写界像から射出した光束は、コンデンサーレンズ17、ペンタダハプリズム18、測光光学素子20、測光レンズ22を介して測光センサ23上に被写界像を形成し、測光センサ23により測光信号へと変換され、ボディ駆動制御装置24に取り込まれる。
【0022】
一方、撮影レンズ31を通過した被写界光束の残りの一部はメインミラー11の中央透過部を透過し、サブミラー12で反射して焦点検出装置15へ入射し、焦点検出装置15においてエリア毎の信号へと変換され、ボディ駆動制御装置24に取り込まれる。
【0023】
撮影時には、図1中に実線で示すようにメインミラー11とサブミラー12が被写界光束の光路から離脱され(ミラーアップ状態となり)、撮影レンズ31を通過した被写界光束は、撮像素子14上に被写界像を形成し、撮像素子14により画像信号へと変換される、ボディ駆動制御装置24に取り込まれる。
【0024】
なお、カメラボディ1の上面にはレリーズボタンが設けられており、カメラボディ1の背面にはモニタ、マルチセレクタ、ライブビュー表示スイッチなどが設けられている。このうちレリーズボタンは、撮影タイミングを入力するためのスイッチであり、マルチセレクタは、カメラボディ1のモード(測光モード、フォーカスモードなど)を切り換えるためのスイッチであり、ライブビュー表示スイッチは、被写界の様子をモニタへ映し出すためのスイッチである。よって、非撮影時にライブビュー表示スイッチがオンされると、メインミラー11及びサブミラー12がミラーアップ状態となり、被写界光束が撮像素子14に導かれる。
【0025】
図2は、ボディ駆動制御装置24及びその周辺のブロック図である。ボディ駆動制御装置24には、MCUにより構成されたシーケンスマイコン50と、シーケンスマイコン50の制御下で画像処理を実行する画像処理IC40(ASIC)とが備えられる。これらシーケンスマイコン50と画像処理IC40との間におけるデータの送受は、通信によって行われる。
【0026】
シーケンスマイコン50には、センサ制御部50aと、フォーカス演算部50bとが備えられ、画像処理IC40には、蓄積演算部40aと、測光演算部40bと、シーン解析部40cと、ブロック化部40dとが備えられる。
【0027】
すなわち、本実施形態では、測光演算部40b及びシーン解析部40cの搭載先が、シーケンスマイコン50の側ではなく、画像処理IC40の側とされる(従来は、測光演算部40bとシーン解析部40cとフォーカス演算部50bとが何れもシーケンスマイコン50の側へ搭載されていた。)。
【0028】
したがって、本実施形態では、フォーカス演算部50bによるフォーカス演算と、シーン解析部40cによるシーン解析(及び測光演算部40bによる測光演算)とが、シーケンスマイコン50と、画像処理IC40とに振り分けられる。
【0029】
ブロック化部40dは、図3(A)に示すとおり、測光センサ23の各画素が生成する測光信号をブロック化することにより、第1解像度のブロック毎の積算測光信号を生成してから、それを第1解像度のブロック毎の平均測光信号に換算すると、それを第1解像度のブロック信号群として画像処理IC40のレジスタの所定領域へ書き込む。
【0030】
また、ブロック化部40dは、図3(B)に示すとおり、第1解像度のブロック毎の積算測光信号をブロック化することにより、第1解像度よりも粗い第2解像度のブロック毎の積算測光信号を生成してから、それを第2解像度のブロック毎の平均測光信号に換算すると、それを第2解像度のブロック信号群として画像処理IC40のレジスタの別の所定領域へ書き込む。
【0031】
また、ブロック化部40dは、図3(C)に示すとおり、第2解像度のブロック毎の積算測光信号をブロック化することにより、第2解像度よりも粗い第3解像度のブロック毎の積算測光信号を生成してから、それを第3解像度のブロック毎の平均測光信号に換算すると、それを第3解像度のブロック信号群として画像処理IC40のレジスタの更に別の所定領域へ書き込む。
【0032】
また、ブロック化部40dは、図3(D)に示すとおり、第3解像度のブロック毎の積算測光信号をブロック化することにより、第3解像度よりも粗い第4解像度のブロック毎の積算測光信号を生成してから、それを第4解像度のブロック毎の平均測光信号に換算すると、それを第4解像度のブロック信号群として画像処理IC40のレジスタの更に別の所定領域へ書き込む。
【0033】
さらに、ブロック化部40dは、第4解像度のブロック毎の積算測光信号をブロック化することにより、被写界全域の積算測光信号を生成してから、それを被写界全域の平均測光信号に換算すると、それを被写界全域のブロック信号として画像処理ICのレジスタの更に別の所定領域へ書き込む。
【0034】
なお、以上の複数段階に亘る一連のブロック化処理は、測光センサ23の電荷蓄積が行われる毎に実行され、電荷蓄積の繰り返し周期内に完了するものとする。また、図3に示した第1解像度、第2解像度、第3解像度、第4解像度の関係はあくまでも一例であって、実際の関係は、図3に示した関係と異なる可能性もある。
【0035】
図2に戻り、蓄積演算部40aは、ブロック化部40dが生成するブロック信号に基づき、現在の被写界に適した測光センサ23の動作条件(アンプゲインと電荷蓄積時間との組み合わせ)を算出する。ここで、蓄積演算部40bが算出する動作条件には2通りあって、1つは測光演算用の動作条件であり、他の1つはシーン解析用の動作条件である。このうち、測光演算用の動作条件は、被写界で最も明るい部分に関する測光信号が目標値となるような動作条件であり、シーン解析用の動作条件は、被写界の各部に関する測光信号の平均値が目標値となるような動作条件である。蓄積演算部40aが算出したこれら2通りの動作条件は、シーケンスマイコン50の側に搭載されたセンサ制御部50aによって参照される。
【0036】
センサ制御部50aは、蓄積演算部40aが算出する2通りの動作条件のとおりに測光センサ23の動作条件を制御する。この制御下で測光センサ23は、測光演算用の動作条件下での電荷蓄積及び電荷読み出しと、シーン解析用の動作条件下での電荷蓄積及び電荷読み出しとを、交互に繰り返す。この制御により、測光演算用の電荷蓄積期間に測光センサ23が生成する測光信号は、被写界で最も明るい部分に関する測光信号が目標値にほぼ一致するようにフィードバック制御され(ピークAGC)、シーン解析用の電荷蓄積期間に測光センサ23が生成する測光信号は、被写界の平均測光信号が目標値にほぼ一致するようにフィードバック制御される(被写体重視AGC)。
【0037】
測光演算部40bは、測光演算用の電荷蓄積に応じてブロック化部40dが生成したブロック信号群と、カメラボディ1に設定中の測光モードとに基づき測光演算を行い、被写体輝度を算出する。なお、撮影時における撮像素子14の露出(シャッター速度と絞り値との組み合わせ)は、この被写体輝度に基づき制御(露出制御)される。
【0038】
シーン解析部40cは、シーン解析用の電荷蓄積に応じてブロック化部40dが生成したブロック信号群に対してシーン解析処理を施し、被写界中の主要被写体エリアを認識すると、その主要被写体エリアの位置(及び動き)を示す信号を生成する。この信号は、必要に応じて、シーケンスマイコン50の側に搭載されたフォーカス演算部50bにより参照される。
【0039】
ここで、カメラボディ1のフォーカスモードがオートエリアAFモードであった場合、シーン解析部40cは、被写界の背景エリアと被写体エリアとを分離し、さらにテンプレートマッチングにより、人物の顔エリアを検出し、その顔エリアを主要被写体エリアとする。
【0040】
また、カメラボディ1のフォーカスモードが3D−トラッキングモードであった場合、シーン解析部40cは、テンプレートマッチングにより、ユーザが予め指定した特定被写体エリアを検出し、その特定被写体エリアを主要被写体エリアとする。
【0041】
フォーカス演算部50bは、シーン解析部40cが生成した信号(主要被写体エリアの位置及び動きを示す信号)と、焦点検出装置15がエリア毎に生成した信号と、カメラボディ1のフォーカスモードとに基づきフォーカス演算を行い、撮影レンズ31のデフォーカス信号を生成する。このデフォーカス信号は、レンズ駆動制御装置33へ送出され、撮影レンズ31のフォーカス制御(フィードバック制御)に使用される。この制御により、撮影レンズ31の合焦先は、ユーザが予め指定したエリア、又は、シーン解析部40cが認識した主要被写体エリアに一致する。
【0042】
ここで、カメラボディ1のフォーカスモードがエリア固定型(シングルポイントAFモードなど、撮影レンズ31の合焦先を主要被写体エリアに追従させないタイプ)である場合、フォーカス演算部50bは、シーン解析部40cの生成する信号を参照せずに、撮影レンズ31の合焦先をユーザが予め指定したエリアに一致させるためのデフォーカス信号を、撮影レンズ31のデフォーカス信号として生成する。
【0043】
一方、カメラボディ1のフォーカスモードが被写体追従型(オートエリアAFモード、3D−トラッキングモードなど、撮影レンズ31の合焦先を主要被写体エリアに追従させるタイプ)である場合、フォーカス演算部50bは、シーン解析部40cが生成した信号を参照し、撮影レンズ31の合焦先を主要被写体エリアに追従させるためのデフォーカス信号を、撮影レンズ31のデフォーカス信号として生成する。
【0044】
図4は、ブロック化解像度の切り換えに関するボディ駆動制御装置24の動作のフローチャートである。なお、以下のステップS12〜S16におけるフィードバック制御(ピークAGC、被写体重視AGC)の初回ループの処理は、3回目以降のループの処理と若干異なるが、ここではその説明を省略する。
【0045】
ステップS11:シーケンスマイコン50は、レリーズボタンが半押しされた否かを判別し、半押しされた場合はステップS12へ移行する。
【0046】
ステップS12:シーケンスマイコン50は、カメラボディ1の現在の測光モードを判別し、その測光モードがブロック信号群の全体を必要とする測光モード(マルチパターン測光)である場合にはステップS13へ移行し、ブロック信号群の一部を主として使用する測光モード(中央部重点又はスポット測光)である場合にステップS14へ移行する。
【0047】
ステップS13:蓄積演算部40aは、測光演算用の直前の電荷蓄積に応じて生成された第4解像度のブロック信号群(図3(D))を参照し、そのブロック信号群の中の最大値に応じて前述したピークAGC(測光演算用の動作条件の算出)を行う。この動作条件は、センサ制御部50aによって測光演算用の次回の電荷蓄積時に測光センサ23へ設定される。
【0048】
ステップS14:蓄積演算部40aは、測光演算用の直前の電荷蓄積に応じて生成された第3解像度のブロック信号群(図3(C))を参照し、そのブロック信号群の中の最大値に応じて前述したピークAGCの処理(測光演算用の動作条件の算出)を行う。この動作条件は、センサ制御部50aによって測光演算用の次回の電荷蓄積時に測光センサ23へ設定される。
【0049】
ステップS15:測光演算部40bは、測光演算用の直前の電荷蓄積に応じて生成された第3解像度のブロック信号群(図3(C))を参照し、そのブロック信号群に対して現在の測光モードに応じた演算を施すことにより、被写体輝度を算出する。この被写体輝度は、撮影時における撮像素子14の露出制御に使用される。
【0050】
ステップS16:蓄積演算部40aは、シーン解析用の直前の電荷蓄積に応じて生成された被写界全域のブロック信号を参照し、そのブロック信号に応じて前述したピークAGCの処理(シーン解析用の動作条件を算出)を行う。この動作条件は、センサ制御部50aによってシーン解析用の次回の電荷蓄積時に測光センサ23へ設定される。
【0051】
ステップS17:シーケンスマイコン50は、カメラボディ1の現在のフォーカスモードを判別し、そのフォーカスモードが3D−トラッキングモードである場合はステップS18へ移行し、エリア固定型(シングルポイントAFモードなど、撮影レンズ31の合焦先を主要被写体エリアに追従させないタイプ)である場合には、ステップS20へ移行し、それ以外のAFモード(オートエリアAFモードなど)である場合はステップS19へ移行する。
【0052】
ステップS18:シーン解析部40cは、シーン解析用の直前の電荷蓄積に応じて生成された第2解像度のブロック信号群(図3(B))を参照し、設定中のフォーカスモードに応じたシーン解析により、主要被写体エリアを検出する。
【0053】
ステップS19:シーン解析部40cは、シーン解析用の直前の電荷蓄積に応じて生成された第1解像度のブロック信号群(図3(A))を参照し、設定中のフォーカスモードに応じたシーン解析により、主要被写体エリアを検出する。
【0054】
ステップS20:フォーカス演算部50bは、設定中のフォーカスモードに応じたフォーカス演算により、撮影レンズ31のデフォーカス信号を生成する。このデフォーカス信号は、レンズ駆動制御装置33へ送出され、撮影レンズ31のフォーカス制御(フィードバック制御)に使用される。
【0055】
ステップS21:シーケンスマイコン50は、レリーズボタンの半押しが解除されたか否かを判別し、解除された場合はステップS11へ戻り、解除されていなかった場合はステップS22へ移行する。
【0056】
ステップS22:シーケンスマイコン50は、レリーズボタンが全押しされたか否かを判別し、全押しされた場合はステップS23へ移行し、全押しされていない場合はステップS12へ戻る。
【0057】
ステップS23:シーケンスマイコン50は、メインミラー11及びサブミラー12をミラーアップ状態とし、撮像素子14の初期化を行い、撮像素子14の電荷蓄積及び電荷読み出しを行う。なお、この電荷蓄積時における撮像素子14の露出は、前述した測光演算の結果(被写体輝度)に応じて設定される。その後、シーケンスマイコン50は、メインミラー11及びサブミラー12をミラーダウン状態とする。また、シーケンスマイコン50は、撮像素子14から読み出された電荷(画像信号)に対して画像処理を施し、不図示の記憶媒体へ適当な形式で保存し、フローを終了する。なお、画像処理及び保存に関する処理の一部又は全部は、画像処理IC40に実行させることが望ましい。
【0058】
以上、本実施形態のカメラシステムは、撮影光学系(撮影レンズ31)の被写界を測光する測光手段(測光センサ23)と、測光手段(測光センサ23)が被写界の各位置について生成する測光信号をブロック化することによりブロック信号群を生成するブロック化手段(ブロック化部40d)と、ブロック化手段が生成するブロック信号群を参照し、そのブロック信号群の中の最大値が目標値となるように測光手段(測光センサ23)の動作条件をフィードバック制御するフィードバック制御手段(蓄積演算部40a、センサ制御部50a)と、そのフィードバック制御下でブロック化手段(ブロック化部40d)が生成するブロック信号群を参照し、そのブロック信号群に基づき被写界内の被写体輝度を演算する測光演算手段(測光演算部40b)とを備え、ブロック化手段(ブロック化部40d)は、ブロック化解像度の異なる複数段階のブロック信号群を生成することが可能であり、フィードバック制御手段(蓄積演算部40a、センサ制御部50a)は、参照対象とすべきブロック信号群のブロック化解像度を、測光演算手段(測光演算部40b)の動作内容に応じて切り換える。
【0059】
したがって、本実施形態のカメラシステムは、解像度の高い高性能な測光手段(測光センサ23)を有効利用することが可能である。
【0060】
また、本実施形態の測光演算手段(測光演算部40b)は、ブロック化手段(ブロック化部40d)が生成するブロック信号群の全体を被写体輝度に反映させる全体測光モード(マルチパターン測光)と、そのブロック信号群の一部を主として被写体輝度に反映させる部分重視測光モード(中央部重点又はスポット測光)との間で切り換えが可能であり、フィードバック制御手段(蓄積演算部40a、センサ制御部50a)は、測光演算手段(測光演算部40b)が全体測光モードに設定された期間におけるブロック化解像度を、測光演算手段(測光演算部40b)が部分重視測光モードに設定された期間におけるブロック化解像度よりも粗く設定する(ステップS13、S14)。
【0061】
したがって、本実施形態の全体測光モード(マルチパターン測光)のピークAGCでは、参照対象となるブロック信号群のブロック化解像度が図5(A)に示すとおり粗く設定されるので、被写界内に輝点(著しく高輝度な物体)が存在していたとしても、輝点を含むブロックのブロック信号は、ブロック内の平均化効果により、輝点の実際の輝度よりも若干低めの値を示している。
【0062】
よって、このピークAGCの下では、図5(C)に示すとおり輝点の測光信号は飽和する可能性があるものの、輝点以外の部分の測光信号が黒つぶれする(信号値がゼロとなる)可能性を回避できる。よって、このピークAGCの下では、全体測光モードの測光演算、すなわち、被写界の全域の輝度を被写体輝度へ反映させる測光モードの測光演算を、適正に行うことができる(具体的には、ユーザの着目している主要被写体が輝点でない限りは、測光演算の結果は適正となる。)。
【0063】
一方、本実施形態の部分重視測光モード(中央部重点又はスポット測光)のピークAGCでは、参照対象となるブロック信号群のブロック化解像度が図5(B)に示すとおり細かく設定されるので、被写界内に輝点が存在していた場合は、輝点に対応するブロック信号は、輝点の実際の輝度を正確に表している。
【0064】
よって、このピークAGCの下では、図5(D)に示すとおり、最も暗い部分の測光信号が黒つぶれする可能性があるものの、輝点の測光信号が飽和する可能性を回避できる。よって、このピークAGCの下では、部分重視測光モードの測光演算、すなわち、被写体界内の一部の輝度を主として被写体輝度へ反映させる測光モードの測光演算を、適正に行うことができる(具体的には、被写界の中央部やユーザの指定したスポットが輝点上又は輝点近傍であったとしても、測光演算の結果は適正となる。)。
【0065】
また、本実施形態のフィードバック制御手段(蓄積演算部40a、センサ制御部50a)は、測光演算手段(測光演算部40b)が全体測光モードに設定された期間におけるブロック化解像度を、測光演算手段(測光演算部40b)の参照対象とすべきブロック信号群のブロック化解像度よりも粗くする(ステップS13、S15)。
【0066】
したがって、本実施形態では、フィードバック制御(ピークAGC)の演算量を、必要最小限に抑えることができる。
【0067】
以上の本実施形態によれば、解像度の高い高性能な測光センサを有効利用するのに適した構成の測光装置及び撮像装置を実現することができる。
【0068】
[実施形態の補足]
なお、上述した実施形態のカメラシステムでは、撮像素子14で取得した画像を処理対象とする顔検出モジュールを、画像処理ICに搭載する場合は、前述したシーン解析部40cによる顔検出に、その顔検出モジュールを兼用してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…カメラボディ、2…レンズ鏡筒、31…撮影レンズ、32…絞り、33…レンズ駆動制御装置、33…レンズ駆動制御装置、11…メインミラー、12…サブミラー、13…シャッター、14…撮像素子、15…焦点検出装置、16…拡散スクリーン、17…コンデンサーレンズ、18…ペンタダハプリズム、19…接眼レンズ、20…測光光学素子、22…測光レンズ、23…測光センサ、24…ボディ駆動制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系の被写界を測光する測光手段と、
前記測光手段が前記被写界の各位置について生成する測光信号をブロック化することによりブロック信号群を生成するブロック化手段と、
前記ブロック化手段が生成するブロック信号群を参照し、そのブロック信号群の中の最大値が目標値となるように前記測光手段の動作条件をフィードバック制御するフィードバック制御手段と、
前記フィードバック制御下で前記ブロック化手段が生成するブロック信号群を参照し、そのブロック信号群に基づき前記被写界内の被写体輝度を演算する測光演算手段とを備え、
前記ブロック化手段は、
ブロック化解像度の異なる複数段階の前記ブロック信号群を生成することが可能であり、
前記フィードバック制御手段は、
参照対象とすべきブロック信号群のブロック化解像度を、前記測光演算手段の動作内容に応じて切り換える
ことを特徴とする測光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測光装置において、
前記測光演算手段は、
前記ブロック化手段が生成するブロック信号群の全体を前記被写体輝度に反映させる全体測光モードと、前記ブロック信号群の一部を主として前記被写体輝度に反映させる部分重視測光モードとの間で切り換えが可能であり、
前記フィードバック制御手段は、
前記測光演算手段が全体測光モードに設定された期間における前記ブロック化解像度を、前記測光演算手段が部分重視測光モードに設定された期間における前記ブロック化解像度よりも粗く設定する
ことを特徴とする測光装置。
【請求項3】
請求項2に記載の測光装置において、
前記フィードバック手段は、
前記測光演算手段が全体測光モードに設定された期間における前記ブロック化解像度を、前記測光演算手段の参照対象とすべきブロック信号群のブロック化解像度よりも粗く設定する
ことを特徴とする測光装置。
【請求項4】
撮影光学系が形成する被写界の像を撮像する撮像手段と、
前記被写界の測光を行う請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の測光装置と、
前記測光装置の前記測光演算手段が演算した被写体輝度に基づき、前記撮像手段の露出を制御する露出制御手段と
を備えたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−42289(P2013−42289A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177015(P2011−177015)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】