説明

測定システム及び管理装置及びその処理分散方法

【課題】グループ分けされた複数の測定装置と、各測定装置から測定データを受信、処理するネットワーク上の複数のデータ処理装置とからなる測定システムにおいて、各データ処理装置を円滑に割り振る。
【解決手段】各測定装置が、該位置するエリアに基づくグループに属し、該所属するグループ毎に定義されたマルチキャストアドレスに、それぞれ測定データを送信し、管理装置が、過負荷もしくは障害状況にあるデータ処理装置を検出し、該データ処理装置の受信しているマルチキャストアドレスに関するデータ処理を停止させ、その代替として、より軽い負荷状況にある別のデータ処理装置に、前記マルチキャストグループへの加入を指示し、該マルチキャストアドレスへ送られる各測定データの受信と、該データ処理とを行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定システムにおいて、複数の測定装置で測定されたデータを処理する複数のデータ処理装置の間で負荷を分散する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1によれば、無線LANシステムにおいて、基地局および端末からそれぞれ送信された各無線信号の受信時刻を、複数の無線受信局がそれぞれ測定し、該各測定データを、サーバ装置が収集して前記端末の位置を決定する無線システムが開示されている。
【0003】
一方、昨今の、コンピュータネットワークシステムにおいて、サーバ装置の負荷分散のためにロードバランサが利用されている。特許文献2を引用すると、ロードバランサは、クライアント装置からサーバへのアクセス要求を受け、該配下にある複数のサーバ装置の一つに処理を振り分けることにより負荷分散を実現している。
【0004】
【特許文献1】特開2004−101254号公報
【特許文献2】特開2005−182641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示された無線システムが、大規模な運用に適用される場面が考えられる。例えば、あるビルディング内の各階を移動する人々が携行する移動可能な特定の端末の位置を追跡する場面である。あるいは、ある敷地内の複数の施設間で運搬される資材に備え付けられた移動可能な特定の端末の位置を追跡する場面である。この様な場面では、移動可能な特定の端末の追跡対象となるエリアが複数存在し、位置決定の対象となる端末の数が増加する。そのため、前記無線システムを複数配置する必要が生じる。
【0006】
前記一つのエリアに、単純に、前記無線システムを一つ配置すれば、前記サーバ装置の数は、エリアの数と一致する。
しかし、各サーバ装置を該エリア間で適切に共有すれば、サーバ装置の数を該エリア数よりも減らせることが可能である。また、各端末の所在の偏り等によって生じるサーバ装置の過負荷を分散することが可能となる。さらに、ある一つのサーバ装置に障害が生じても、別のサーバ装置で処理を代替することも可能となる。
【0007】
そこで、各エリアの各無線受信局(各測定装置)による測定データをどの様に複数のサーバ装置(データ処理装置)の一つに割り振るかという課題が見出される。
【0008】
この課題に対し、上述の特許文献1にはなんら開示されていない。また、上述の特許文献2にも、端末の位置の追跡等において生じるこのような課題に関してはなんら開示されていない。さらに、課題解決のためにこれらの技術を単純に適用することも難しい。なぜなら、端末の位置を決定するために(所要のデータ処理をするために)、一つのエリアに割り当てられた各無線受信局(つまり、一つのグループに属する各測定装置)による各々の測定データが、一つのサーバ装置(データ処理装置)に、割り振られなければならないからである。
【0009】
このように、ネットワーク上の、グループ分けされた複数の測定装置と、前記グループ内の各測定装置から測定データを受信、処理するネットワーク上の複数のデータ処理装置とからなる測定システムにおいて、各データ処理装置の異常や過負荷を検知し、所望のデータ処理が中断されぬように、各データ処理装置を円滑に割り振ることが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段は、
ネットワークで接続された複数の測定装置と、前記測定装置によって測定された測定データを受信し、データ処理を行う複数のデータ処理装置とから構成される測定システムにおいて、
前記各測定装置は、複数のグループのいずれかに属し、該グループ毎に定められたマルチキャストアドレスへ、測定データを送信し、
前記各データ処理装置は、該データ処理装置の各々の動作状況に基づいて、加入すべき前記グループが決定され、該各グループに定められたアドレスにマルチキャストされる前記測定データを各々受信し、該測定データに基づくデータ処理を行う、ことを特徴とする測定システムおよびその処理分散方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一つのグループに属する各測定装置からの測定データは同一のマルチキャストアドレスに送信される。割り振られたデータ処理装置は該当する(マルチキャスト)グループへ加入することによって、そのデータ処理に必要な各測定データを全て受信可能になる。その結果、データ処理装置の割り振りが円滑に行われる。
【0012】
本発明による処理分散方法では、各測定装置の受信側となるデータ処理装置を変更する際、各測定装置に対し測定データ送付先の変更するわけではなく、多数の測定装置を伴うシステムにおいても、データ処理装置の割り振りを円滑に行うことができる。
【0013】
本発明による処理分散方法では、ある負荷分散装置の下に各データ処理装置を配置するといった構成をとる必要が無いため、各データ処理装置のネットワーク上への分散配置が可能で、システム構築の柔軟性に富む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る測定システムおよびその処理分散方法の実施例を、以下添付図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明による測定システムおよびその処理分散方法の実施例1を、図1ないし図6を用いて説明する。
まず、図1において、測定システムの測定対象となる領域は、複数のエリア101、102、10jに分割されている。011、012、01N1、021、022、02N2、0j1、0j2、0jNjは測定装置を示す。これらの測定装置は、グループG1〜Gjと表される複数の測定装置の集合にグループ分けされ、各グループG1〜Gjのエリア101、102、10jにそれぞれ対応して設置される。121、122、12mはデータ処理装置を示す。131、13kは管理装置を示す。160は端末であり、各エリア内をあるいは複数のエリア間を移動しうる。170は固定的に設置される基地局を示す。190はネットワークスイッチを示す。
【0016】
一例として、各測定装置、端末及び基地局は、それぞれ通信部、情報蓄積部、クロック、処理部、ネットワークに接続するためのI/F等を備えている。なお、端末が移動可能であるため、実施の形態により、各エリア内には、常時複数の端末が存在する場合もあれば、端末の数が時間と共に変化する場合もある。測定システムは、例えば、複数のエリアにまたがって移動する特定の端末の追跡を行う機能も備えている。
【0017】
測定装置011、012、01N1は、グループG1に属し、エリア101において測定を行う。そして、測定装置011、012、01N1は、各々の測定データを当該グループG1に割り当てられたマルチキャストアドレスMA1へそれぞれ送信する。
【0018】
同様に、測定装置0j1、0j2、0jNjは、グループGjに属し、エリア10jにおいて端末160の位置等の測定を行う。そして、測定装置0j1、0j2、0jNjは、各々の測定データを当該グループGjに割り当てられたマルチキャストアドレスMAjへそれぞれ送信する。
【0019】
なお、実施の形態により、基地局170を省略し、測定装置のみで測定を行うようにしても良い。
【0020】
各グループの各測定装置は、例えば、それぞれのエリアに存在する端末160の位置を検出するために、それぞれ内部のクロックを利用して、基地局170や端末160からの無線信号の受信時刻を各々測定し、各測定データをそれぞれのグループに割り当てられたマルチキャストアドレスへそれぞれ送信する。
【0021】
なお、測定装置は、エリアの境界に位置する等の理由で、複数のグループに属し、複数のエリアにおいて測定された測定データを、割り当てられた複数のマルチキャストアドレスへそれぞれ送信してもよい。
【0022】
データ処理装置121、122、12mは、それぞれが加入(join)しているグループより、マルチキャストされた各測定データを受信し、それぞれデータ処理を行う。
【0023】
例えば、データ処理装置12mはグループGjに加入しており、測定装置0j1、0j2、0jNjによってマルチキャストアドレスMAjへ送信されている各測定データを受信する。前記各測定データは、各データ処理装置による、エリア10jに存在する端末160や基地局170からの無線信号の受信時刻が含まれている。データ処理装置12mは、予め定めた各測定装置の位置と、前記各受信時刻とから、端末160の位置を決定する。位置決定方法の詳細については、例えば特許文献1に開示されているので、詳細についてはそれを援用することとし、ここでは位置決定方法の概要のみを説明する。
【0024】
グループG1に属する測定装置群011〜01N1は、位置検出に用いる所定の無線チャネルの監視を指示されている。基地局170は、前記無線チャネル上に第二の無線パケットを送信する。グループG1の測定装置群011〜01N1は、それぞれ、前記第二の無線パケットの受信時間を測定する。また、端末160は、該無線チャネル上に第一の無線パケットを送信する。前記監視を指示された各測定装置群011〜1N1は、それぞれ、前記各無線パケットの受信時間を測定する。測定後、各測定装置群011〜01N1が各々の測定結果をマルチキャストアドレスMA1へそれぞれ送信することにより、測定結果がグループG1に加入しているデータ処理装置121に伝達される。データ処理装置121は、前記測定結果をもとに、例えば、前記特許文献1に開示された数式を用いて、端末160の位置を算出する。
【0025】
なお、1つのデータ処理装置が複数のグループに加入し、複数のエリアにおいて測定された測定データを受信し、データ処理をしてもよい。
【0026】
管理装置131、13kは各データ処理装置のグループへの加入状況を管理している。また、管理装置131、13kは、各データ処理装置がそれぞれ加入しているグループに関する処理の負荷量を管理している。なお、管理装置131、13kはそれぞれ、主系、待機系とし、主系の障害に備えて、同じ状態を保つよう同期をとってよい。
【0027】
ネットワークスイッチ190は、測定装置からマルチキャストされる測定データを、好ましくは、該データの受信のためにグループ加入しているデータ処理装置が接続されている通信ポートにのみ転送する。なお、ネットワークスイッチがマルチキャストの転送先を解決するには、例えばIGMP(Internet Group Management Protocol)が利用できる。
【0028】
次に、本実施例の測定システムの負荷分散方法について、図2乃至図4を用いて説明する。
【0029】
各測定装置は、いずれかのグループに属する様にグループ分けされる。例えば、図2、図3において、グループG1は測定装置011乃至01N1を、グループGjは測定装置0j1乃至0jNjを含む。図2において、「グループG1測定装置群011〜01N1」とはグループG1に属する複数の測定装置011、…、01N1の総称であり、「グループGj測定装置群0j1〜0jNj」とはグループGjに属する複数の測定装置0j1、…、0jNjの総称である。
【0030】
各グループには、予めマルチキャストアドレスを割り当てる。例えば、図3に示すように、グループG1にはマルチキャストアドレス"239.128.0.1"を、グループG2には"239.128.0.2"をというように割り当てる。
【0031】
そして各測定装置は、各々が測定したデータを、各々が属するグループに割り当てられたマルチキャストアドレスに送信する。
【0032】
各データ処理装置は、管理装置によって各々指示されているグループに加入し、該グループに割り当てられたマルチキャストアドレスに送信される測定データを受信し、データ処理を実施する。例えば、図2乃至図4の例において、データ処理装置121は、グループG1およびGjに加入し、各測定装置からマルチキャストアドレス"239.128.0.1"および"239.128.0.j"に送信されるデータを全て受信し、データ処理を行い、グループG1やGjに存在する端末160の位置を検出する。
【0033】
図2のフロー図は、実施例1による処理分散方法を説明するものである。図2において、グループG1およびGjのそれぞれに属する測定装置011〜01N1および0j1〜0jNjは、それぞれ所定の無線チャネルを監視している。上記無線チャネル上に、端末160が第一の無線パケットを送信し、基地局170が第二の無線パケットを送信すると、グループG1およびGjの各測定装置は、それぞれ、前記第一、第二の無線パケットの受信時間を測定する。測定後、各測定装置は、各々の測定結果をマルチキャストアドレスへそれぞれ送信し、測定結果がデータ処理装置121に伝達される。データ処理装置121は、前記測定結果をもとに、例えば、前記特許文献1に開示された数式を用いて、端末160の位置を算出する処理を行う。他のデータ処理装置も、各々同様な処理を行い、グループG1及びGj内に存在する各端末160の位置を算出する。
【0034】
また、各データ処理装置は、管理装置131(及び13k)からの要求に応じて、或いは、一定周期毎に、管理装置に対し、それぞれの負荷状況(例えば、それぞれのCPU使用率)や、グループへの加入状況を通知する。
【0035】
管理装置131は、各データ処理装置からの通知を受け、それぞれの負荷状況やグループへの加入状況を保持する。例えば、図4に示されるような、テーブルの内容を保持する。
【0036】
図4のテーブルにおいて、第1列はデータ処理装置の識別番号であり、第2列は各データ処理装置が加入しているグループの識別番号であり、第3列はその負荷状況である。例えば、図4では、データ処理装置121が、グループG1、Gjに加入しており、そのCPU使用率は90%であることが示されている。なお、管理装置131は、図4の第4列に示されるように、各データ処理装置の障害状況を保持してもよい。障害状況の有無は、例えば、各データ処理装置が管理装置へ通知してもよいし、各種状況の通知が一定時間無かったデータ処理装置に対し障害有りと管理装置が判断してもよい。
【0037】
管理装置131は、各データ処理装置の負荷状況と障害有無とを監視し、各データ処理の割り振りを行う。例えば、所定の閾値を超えている負荷量や、障害を有するデータ処理装置(以下、異常処理装置)を見つけた場合、管理装置は、正常かつ、より負荷の軽い状態にあるデータ処理装置(以下、代替処理装置)を探す。そして、前記異常処理装置が割り振られていた処理の一部もしくは全部を、前記代替処理装置に割り振る。より具体的には、管理装置は代替処理装置に対して異常処理装置が加入していたグループの一部もしくは全部に加入(join)するように指示し、異常処理装置に対しては、前記指示されたグループからの脱退(leave)を指示する。
【0038】
図2乃至図4の例において、管理装置は、CPU使用率90%のデータ処理装置121を異常処理装置、CPU使用率5%のデータ処理装置12mを代替処理装置と判定し、データ処理装置12mにはグループGjへの加入を指示し、データ処理装置121にはグループGjからの脱退を指示する。図3のテーブルの内容を参照し、データ処理装置12mは、グループGjに加入し、各測定装置からマルチキャストアドレス"239.128.0.j"に送信されるデータを全て受信し、データ処理を行う。一方、データ処理装置121は、グループGjより脱退し、各測定装置からマルチキャストアドレス"239.128.0.j"に送信される測定データの受信とそのデータ処理を止める。
【0039】
以上、本発明による測定システムの処理分散方法によれば、一つのグループに属する各測定装置からの測定データは同一のマルチキャストアドレスに送信される。割り振られたデータ処理装置は該当する(マルチキャスト)グループへ加入することによって、そのデータ処理に必要な各測定データを全て受信可能になる。その結果、データ処理の移行が円滑に行われる。
【0040】
なお、各データ処理装置は、各測定データの受信に基づいて、該当する測定装置の状況を管理装置に通知するようにすれば、管理装置で各測定装置の動作状況を管理でき、利便性が向上する。
【0041】
図5を用いて本発明による管理装置の実施例を説明する。同図において、管理装置500は、NIC(Network Interface Card)501、データ処理装置情報蓄積部502、処理割り振り部503を有する。
【0042】
NIC 501は、当該管理装置と、ネットワーク上の各データ処理装置や別の管理装置との通信を可能にする。
【0043】
データ処理装置情報蓄積部502は、上述した方法で各データ処理装置の負荷状況や、障害有無、ならびに、各グループへの加入状況に関する情報を蓄積する様に構成される。例えば、図4に示されるような、テーブルの内容を蓄積する。
【0044】
処理割り振り部503は、データ処理装置情報蓄積部502を参照し、上述した方法で各データ処理装置の負荷状況と障害有無とを監視し、各データ処理装置への処理の割り振りを行う様に構成される。
【0045】
なお、データ処理装置情報蓄積部502が蓄積する各データ処理装置の負荷状況(CPU使用率)を、図6に示すよう、それぞれのデータ処理装置が加入しているグループ毎に蓄積するようにすれば、より平滑に処理分散することに役立つ。
【0046】
以上述べたとおり、本実施例によれば、一つのグループに属する各測定装置からの測定データは同一のマルチキャストアドレスに送信される。割り振られたデータ処理装置は該当する(マルチキャスト)グループへ加入することによって、そのデータ処理に必要な各測定データを全て受信可能になる。その結果、データ処理装置の割り振りが円滑に行われる。
【0047】
たとえば、監視対象である端末の位置が、グループG1の属するエリアからグループGjの属するエリアへ連続的に変化し、それに伴い各グループに対応した測定データの処理量が刻々変化するような場合でも、各データ処理装置における処理は円滑に行われる。あるいは、特定のグループのエリアに存在する端末160の数が時間的に変化するような場合でも、データ処理装置におけるデータ処理は円滑に行われる。
【0048】
また、本実施例による処理分散方法では、各測定装置の受信側となるデータ処理装置を変更する際、各測定装置に対し測定データ送付先を変更するわけではなく、多数の測定装置を伴うシステムにおいても、データ処理装置の割り振りを円滑に行うことができる。さらに、本実施例による処理分散方法では、ある負荷分散装置の下に各データ処理装置を配置するといった構成をとる必要が無いため、各データ処理装置のネットワーク上への分散配置が可能で、システム構築の柔軟性に富む。
【実施例2】
【0049】
ところで、実際、各測定エリアに対する測定の重要度は均一でないことが考えられる。例えば、危険を格別含む様なエリアにおける測定の重要度は一般に他に比べて高いかもしれない。そこで、各測定装置が属する各グループにはそれぞれ優先順位を設けてよい。
【0050】
そのような例を本発明の実施例2として、図7乃至図9で説明する。
図7は、本実施例による測定システムにおいて、各測定装置のグループ分けと、各グループへのマルチキャストアドレスの割り当てを示すテーブル構成図の例である。同図と実施例1の図3に示したテーブル構成図との違いは、各グループが優先順位を保持する点にある。例えば、グループG1の優先順位はP1=1であり、グループGjの優先順位はPj=2である。つまり、グループG1の重要度が他よりも高い。
【0051】
この様に優先順位を設けた場合において、データ処理装置に関して、例えば、図8に示す負荷状況にあるとする。つまり、データ処理装置121を除く他のデータ処理装置122〜12mは障害状況にある。さらに、データ処理装置121のCPU使用率は100%と非常に高負荷でデータ処理が間に合わなくなるような状態にあるとする。この様なケース実際に起こりうる。例えば、複数のデータ処理装置122〜12mにネットワーク障害が発生するなどして、残りのデータ処理装置121に処理しきれぬ負荷が集中する様なケースである。この様な場合、管理装置は、グループの優先順位に応じて割り振り判定を行い、データ処理装置121の負荷を調整する。
【0052】
例えば、図7乃至図9に示す例では、管理装置131は、グループG1およびGjに加入しているデータ処理装置121の高負荷状況を緩和するために、より優先順位の低いグループGjからの脱退をデータ処理装置121に対し指示する。データ処理装置121は、グループGjより脱退し、各測定装置からマルチキャストアドレス"239.128.0.j"に送信される測定データの受信とそのデータ処理を止め、自己の負荷を緩和する。以上、グループの優先順位に応じて割り振り判定を行うことにより、重要なデータ処理が欠落するリスクを低減するのに役立つ。
【実施例3】
【0053】
また、実際、各エリアに対する測定の重要度が固定的ではないことが考えられる。例えば、より重要度の高い測定対象である端末が複数のエリア間を移るのに伴い、各エリアの測定の重要度も時間的に変化する様な場合である。この場合、各グループの優先順位は端末の位置、換言するとデータ処理結果に基づいて決定してよい。
【0054】
そのような例を本発明の実施例3として、図10で説明する。
例えば、図10に示す様に、データ処理装置121によるデータ処理結果が管理装置に伝達される。そして、例えば、当該結果によって、より重要度の高い測定対象がエリア101に存在することが示されている等の事由から、図7に示す様にグループG1の優先順位が他のグループよりも高く設定される。これに伴い、データ処理装置121に対して、より優先順位の低いグループGjからの脱退を指示する。データ処理装置121は、グループGjから脱退し、各測定装置からマルチキャストアドレス"239.128.0.j"に送信される測定データの受信とそのデータ処理を止め、グループG1の処理を優先して行う。以上、各グループの優先順位は、データ処理結果に基づいて決定することにより、重要なデータ処理が欠落するリスクを低減するのに役立つ。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、例えば、人やモノが備える無線LAN端末の位置を特定するシステムを、大規模な運用に適用する場面において、サーバ装置の負荷分散制御に特に有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施例1による測定システムの構成図である。
【図2】実施例1による処理分散方法を示すフロー図である。
【図3】実施例1による測定システムにおいて、各測定装置のグループ分けと、各グループへのマルチキャストアドレスの割り当てを示すテーブル構成図である。
【図4】実施例1による測定システムにおいて、データ処理装置に関して、管理装置が保持する情報を示すテーブル構成図である。
【図5】実施例1による測定システムにおける管理装置の構成図である。
【図6】実施例1による測定システムにおいて、データ処理装置に関して、管理装置が保持する情報を示す別のテーブル構成図である。
【図7】本発明の実施例2による測定システムにおいて、各測定装置のグループ分けと、各グループへのマルチキャストアドレスの割り当てを示す、別の、テーブル構成図である。
【図8】本発明の実施例2による測定システムにおいて、データ処理装置に関して、管理装置が保持する情報を示すさらに別のテーブル構成図である。
【図9】本発明の実施例2による別の処理分散方法を示すフロー図である。
【図10】本発明の実施例3によるさらに別の処理分散方法を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0057】
011、012、01N1、021、022、02N2、0j1、0j2、0jNj:測定装置、101、102、10j:エリア、121、122、12m:データ処理装置、131、13k、500:管理装置、160:端末、170:基地局、190:ネットワークスイッチ、G1、G2、Gj:(マルチキャスト)グループ、MA1、MA2、MAj:マルチキャストアドレス、501:ネットワークインターフェースカード、502:データ処理装置情報蓄積部、503:処理割り振り部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークで接続された複数の測定装置と、前記測定装置によって測定された測定データを受信し、データ処理を行う複数のデータ処理装置とから構成される測定システムにおいて、
前記各測定装置は、複数のグループのいずれかに属し、該グループ毎に定められたマルチキャストアドレスへ、測定データを送信し、
前記各データ処理装置は、該データ処理装置の各々の動作状況に基づいて、加入すべき前記グループが決定され、該各グループに定められたアドレスにマルチキャストされる前記測定データを各々受信し、該測定データに基づくデータ処理を行うことを特徴とする測定システム。
【請求項2】
前記複数の測定装置のグループ分けは、該各測定装置の設置位置に基づくことを特徴とする請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記複数のグループは、それぞれ前記データ処理に関する優先順位を有することを特徴とする請求項1に記載の測定システム。
【請求項4】
前記各優先順位は、それぞれ前記データ処理の結果に基づいて決定されることを特徴とする請求項3に記載の測定システム。
【請求項5】
少なくとも1つの前記測定装置は、複数の前記グループに属し、前記グループ毎に定められた複数のマルチキャストアドレスへ、測定データを送信することを特徴とする請求項1に記載の測定システム。
【請求項6】
前記測定システムの測定対象領域が複数のエリアで構成されており、
前記測定装置の前記各エリアにおける設置位置に基づき、該測定装置がグループ分けされており、
少なくとも1つの端末が、分割された前記複数のエリア内を移動可能であり、
前記エリアに対応する前記グループの測定装置が当該エリア内に存在する前記端末に関する測定を行い、
該測定データを当該グループに加入した前記データ処理装置が受信してデータ処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の測定システム。
【請求項7】
1つの前記データ処理装置が複数の前記グループに加入し、前記複数のエリアにおいて測定された前記測定データを受信し、前記データ処理を行うことを特徴とする請求項6に記載の測定システム。
【請求項8】
前記各データ処理装置の前記グループへの加入状況や加入している前記グループに関する処理の負荷量に基づいて、前記各データ処理装置が加入すべき前記グループを各々決定する管理装置を備えたことを特徴とする請求項1に記載の測定システム。
【請求項9】
ネットワークで接続された複数の測定装置と、前記測定装置によって測定された測定データを受信しデータ処理を行う複数のデータ処理装置とを備えた測定システムにおける管理装置であって、
データ処理装置情報蓄積部と、処理割り振り部と有し、
前記データ処理装置情報蓄積部は、それぞれ特定のグループに属する前記測定装置に関して、該グループ毎に付与されたマルチキャストアドレスの情報を保持しており、
前記処理割り振り部は、前記各データ処理装置が加入すべき前記グループを各々決定し、前記各データ処理装置に対して、該各グループに定められた前記アドレスにマルチキャストされる測定データを各々受信し、該測定データの処理を行わせる、ことを特徴とする測定システムにおける管理装置。
【請求項10】
前記データ処理装置情報蓄積部は、前記各データ処理装置の各々の動作状況と、該各加入先のグループとに関する情報を蓄積し、
前記処理割り振り部は、前記各データ処理装置の前記グループへの加入状況や加入している前記グループに関する処理の負荷量に基づいて、各データ処理装置がそれぞれ加入すべき前記グループを決定することを特徴とする請求項9に記載の測定システムにおける管理装置。
【請求項11】
前記データ処理装置情報蓄積部は、前記各データ処理装置の各々の動作状況と、該各加入先のグループとに関する情報を蓄積し、
前記処理割り振り部は、前記複数のグループに対して、それぞれ前記データ処理に関する優先順位に応じた割り振りを行うことを特徴とする請求項9に記載の測定システムにおける管理装置。
【請求項12】
前記処理割り振り部は、前記データ処理結果に基づいて前記各優先順位をそれぞれ決定することを特徴とする請求項11に記載の測定システムにおける管理装置。
【請求項13】
ネットワークで接続された複数の測定装置と、前記測定装置によって測定された測定データを受信しデータ処理を行う複数のデータ処理装置とから構成される測定システムにおける処理分散方法であって、
前記複数の測定装置は、それぞれグループに属し、該グループ毎に定められたマルチキャストアドレスに、前記測定データを送信し、
前記複数のデータ処理装置が動作可能な同士間でその処理負荷が平滑化される様にして、該各データ処理装置の加入すべき前記グループを各々決定し、
前記複数のデータ処理装置が、前記各グループに定められた前記アドレスにマルチキャストされる測定データを各々受信し、該測定データの処理を行う、ことを特徴とする処理分散方法。
【請求項14】
前記複数の測定装置のグループ分けは、該各測定装置の設置位置に基づき決定されることを特徴とする請求項13に記載の処理分散方法。
【請求項15】
前記複数のグループは、それぞれ前記データ処理に関する優先順位を有することを特徴とする請求項13に記載の処理分散方法。
【請求項16】
前記各優先順位は、それぞれ前記データ処理結果に基づいて決定されることを特徴とする請求項15に記載の処理分散方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−150979(P2007−150979A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345394(P2005−345394)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】