説明

測定チップならびにその分析方法

【課題】目視による定性的な分析と,定量値を得ることのできる測定チップならびにその分析方法を提供する。
【解決手段】測定チップ1は,基板2と試料導入部5と基板2上に流路6と,フィルタ7と試薬領域3と基板カバー8とを備え,試料導入部5は基板2の端面にあり,かつ試料導入部5と流路6とフィルタ7と試薬領域3は流路6を介し連結され,フィルタ7は試料導入部5と試薬領域3との間にあり,試薬領域3は少なくとも基質と反応する酵素と酵素の反応物と反応する呈色試薬とを有し,基板2の反応と関与しない部位は少なくとも一個以上の照合カラーチャート4を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,血液など体液中の成分分析に用いる,測定チップならびにその分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
測定チップは,例えば血液など体液中のアルブミン,グルコース,白血球,潜血,pH,比重,クレアチニン,等の存在/不存在,量を測定するために用いられる.従来の測定チップは,液体を付けた後の試薬領域の色を,試験結果のレベルまたは量の判定のための照合カラーチャートと目視で比較する.カラーチャートは基本濃度判定ランクの数量の色調が,一定ランク間隔で印刷されている.カラーチャートは,測定チップとは別のチャート紙であったり,あるいは測定チップ保管手段に添付または貼付されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
測定チップ上に比較用カラー領域が構成された,従来の測定チップを図10に示す(例えば特許文献2参照).図10の様に基板100上に,2つの比較用カラー領域101と試薬領域102が構成されており,2つの比較用カラー領域101の各々は,存在/不存在の結果を示す試薬領域102で出現しうる最大量の色,または最も濃い色とされている.一滴以上の試験液が試薬領域102に付けられ,試薬領域102中に結果として生じた色合いは,比較用カラー領域101の各々の色合いと比較して,試験物質の存在/不存在を目視で判定している.ここで,試薬領域102と2つの照合カラー領域101はごく近接して設置されている。
【0004】
従来の測定チップの分析方法では,試験片の一部分に形成された試薬領域を含む,試験片の像をカラーイメージセンサで撮像し,得られる複数の色信号から試薬部における測定波長毎の反射率を求め,さらに測定チップ上に設けた標準反射部分として,試薬領域が形成されていない試験片の部分の同様な反射率を用いて,事前に準備された検量線の補正を行い,補正を行った検量線を用いて測定チップの分析を行っている(例えば特許文献3)。
【特許文献1】特開平11−326320号公報
【特許文献2】特開2001−264327号公報
【特許文献3】特開平07−005110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,従来の測定チップにおいては,試薬領域と照合カラーチャートとを目視にて判断を行わなければならず,如何に不連続ではなく連続的な照合カラーチャートを用いたとしても,分解能の高い定量値を得ることは出来なかった.また,照合カラーチャートが測定チップと分離されている場合,多くの照合用カラーチャートは測定チップ保管容器に貼付されているので,大気にさらされていることによる退色が発生し,正確な分析を行えなかった。
【0006】
測定チップ上に比較用カラー領域が構成された測定チップも,比較用カラー領域は分析物の存在/不存在を判断するもので,定性的な分析物の濃度判断や定量値を得ることが出来なかった。
【0007】
また,従来の測定チップの分析方法においては,測定時の照明の違いなどによる反射強度の補正を測定チップ上の標準反射部分で行うが,面内の照明の違いは一様ではなく,さらにカラーイメージセンサは微小センサと微小色フィルタの集合体であり,個々に特性が異なるため,精度が高く再現性の高い定量分析を行うことが出来なかった。
【0008】
本発明は,従来の問題を解決するためになされたもので,目視による定性的な分析と,定量値を得ることのできる測定チップならびにその分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の測定チップは,基板上に試薬領域と,前記試薬領域の前記分析物濃度に応じた呈色と比較するための照合カラーチャートと,前記照合カラーチャートの内部または近傍に基準カラーが形成された構成を有している。
【0010】
この構成により,使用者が目視による定性的な分析物濃度を認識でき,測定チップをカラー撮像素子で撮影した際に,照明の不均一に対する校正をした上で定量的な分析物濃度も認識できることとなる。
【0011】
また,本発明の測定チップは,前記基板の裏面に,前記測定チップの特徴と関連付けられた記号が記された構成を有している。
【0012】
この構成により,使用者が目視による定性的な分析物濃度を認識でき,測定チップをカラー撮像素子で撮影した際に,測定チップの全体パターン等の情報を与えた上で定量的な分析物濃度も認識できることとなる。
【0013】
また,本発明の測定チップは,前記照合カラーチャートは,前記分析物濃度に対して連続的に表示された構成を有している。
【0014】
この構成により,使用者が目視による定性的な分析物濃度をより高い精度で認識できることとなる。
【0015】
また,本発明の測定チップは,基板と試料導入部と前記基板上に少なくとも底部と二つ以上の側壁部とを有する流路と,フィルタと試薬領域と基板カバーとを備え,前記試料導入部は前記基板の端面にあり,かつ前記試料導入部と前記流路と前記フィルタと前記試薬領域は前記流路を介し連結され,前記フィルタは前記試料導入部と前記試薬領域との間にあり,前記試薬領域は少なくとも基質と反応する酵素と前記酵素の反応物と反応する呈色試薬とを有し,前記基板の前記反応と関与しない部位は少なくとも一個以上の照合カラーチャートが形成された構成を有している。
【0016】
この構成により,使用者が血液など試料に触れることなく測定チップを使用でき,感染などを防止することができることとなる。
【0017】
また,本発明の測定チップの分析方法は,前記測定チップは,少なくとも基板上に試薬領域と,前記試薬領域の前記分析物濃度に応じた呈色と比較するための照合カラーチャートを含み,前記測定チップをカラー撮像素子で撮影し,取り込んだ画像からの前記照合カラーチャートの色判定から前記分析物濃度との検量線を作成し,前記試薬領域の色判定と比較して前記分析物濃度を得るようにした構成を有している。
【0018】
この構成により,使用者が測定チップをカラー撮像素子で撮影した際に,定量的な分析物濃度が認識できることとなる。
【0019】
また,本発明の測定チップの分析方法は,前記測定チップは,少なくとも基板上に試薬領域と,前記試薬領域の前記分析物濃度に応じた呈色と比較するための照合カラーチャートと,前記照合カラーチャートの内部または近傍の基準カラーを含み,前記測定チップをカラー撮像素子で撮影し,取り込んだ画像からの前記基準カラーの色判定により補正した前記照合カラーチャートの色判定から前記分析物濃度との検量線を作成し,前記試薬領域の色判定と比較して前記分析物濃度を得るようにした構成を有している。
【0020】
この構成により,使用者が測定チップをカラー撮像素子で撮影した際に,照明の不均一に対する校正した上で定量的な分析物濃度が認識できることとなる。
【0021】
また,本発明の測定チップの分析方法は,前記カラー撮像素子は,カメラ付携帯電話であるようにした構成を有している。
【0022】
この構成により,通信機能を用いることで使用者が何らかの患者である場合,医師などと使用者の状態を自動的に共有することとなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は,測定チップが少なくとも基板上に試薬領域と,前記試薬領域の前記分析物濃度に応じた呈色と比較するための照合カラーチャートを含み,前記測定チップをカラー撮像素子で撮影し,取り込んだ画像からの前記照合カラーチャートの色判定から前記分析物濃度との検量線を作成し,前記試薬領域の色判定と比較して前記分析物濃度を得るようにしたことにより,使用者が目視による定性的な分析物濃度を認識でき,測定チップをカラー撮像素子で撮影した際に,定量的な分析物濃度も認識できるという効果を有する測定チップとその分析方法を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下,本発明の実施の形態の測定チップならびにその分析方法について,図面を用いて説明する。
【0025】
本発明の第1の実施の形態の測定チップを図1に示す.図1の(a)は上面図中一点鎖線(a)での断面図であり,以下同様に(b)は上面中一点鎖線(b)での断面図であり,(c)は上面中一点鎖線(c)での断面図である。
【0026】
図1において,測定チップ1は,基板2の表面に形成された試薬領域3と,被分析液を試薬領域3に導くための試料導入部5と流路6と,流路6内のフィルタ7と,被分析液中の分析物濃度ステップに応じた複数の照合カラーチャート4と,流路6を確定し全体を覆う基板カバー8とを有する構成である.測定チップ1の大きさは,一辺が20mm以上の正方形または長方形が望ましく,さらに望ましい形態としては,短辺20mm長辺50mmの直方体である。
【0027】
基板2は,ポリスチレン,ポリエステル,ポリ塩化ビニル,ポリカーボネイト,ポリプロピレンなどの高分子プラスチック材料や合成樹脂等で形成され,容易に折り曲げることの出来ない硬度であり,平坦な板状である.厚さは数mm程度であり,望ましくは1から3mmである.基板カバー8も基板2と同様の材料であるが,可視光に対してほぼ透明である材料と厚さである.厚さは1mm以下であり,望ましくは0.02から0.2mmである。
【0028】
流路6の溝は,基板2の押し出し成形や,基板2の切削加工あるいは熱加工等により形成される.流路6の幅は5mm以下程度であり,高さは0.1mmから1mm程度である.望ましくは,幅2mm高さ0.2mmである.長さの制限はないが,望ましくは10mm程度である。
【0029】
照合カラーチャート4は,絵の具,インク,顔料,塗料等の,オフセット印刷,グラビア印刷,凸版印刷,スクリーン印刷,熱転写印刷,レーザー印刷,インクジェット印刷等によって形成される.照合カラーチャート4の大きさは,一辺が3mm以上の正方形または長方形であるのが望ましい。
【0030】
フィルタ7は,ガラス繊維や不繊布などの繊維質状の材料からなり,網目状に構成されている.繊維質間隔によってその間隔以上の大きさの被分析液中の成分を捕捉することができる.捕捉する成分は試薬領域3での被分析物と試薬の反応を妨害する成分や,被分析物以外で色を有する成分である.繊維質間隔は数μmから数10μm程度であり,望ましくは1から5μmである.流路6の流れ方向の長さは数mm程度であり,望ましくは1から5mmである。
【0031】
以上のように構成された測定チップについて,以下に一例として,被分析液として血液を,分析物をグルコースとして,その動作を説明する。
【0032】
まず,図示しない使用者がこれも図示しないランセット等を用いて,指先などから被分析液である血液を体内から滲出させる.滲出した血液に対して測定チップ1の試料導入部5を接触させる.血液は試料導入部5から流路6を毛細管現象によって試薬領域3へと流れていく.途中,フィルタ7により血液中の血球成分が捕捉され,血漿成分のみが試薬領域3へと到達する。
【0033】
試薬領域3には当業者にとって公知である酵素比色法の酵素ならびに色原体が,基板2の上に塗布や貼着や印刷,あるいはろ紙やフィルムその他の担体に塗布や印刷,含浸,あるいは練り込み等により一体化した状態で基板2に設置されている.試薬領域3の大きさは,一辺が3mm以上の正方形または長方形であるのが望ましい.試薬領域3の下,基板2との間には,試薬領域の呈色を制御するための色が照合カラーチャート4と同様の方法で形成することも出来る.ただし,試薬領域3の試薬と反応しない材質から選ばれることが照合カラーチャート4の場合と異なる。
【0034】
試薬領域3に達した被分析液である血液は,分析物であるグルコースと試薬領域3内の酵素と,グルコース+酸素+水 −(グルコースオキシターゼ)→ グルコン酸+過酸化水素,の反応を行い,さらに反応生成物と色原体がもう一つの酵素と,過酸化水素+色原体 −(ペルオキシターゼ)→ 過酸化水素+キノン系色素,の反応を行う.この一連の反応により,試薬領域3は分析物であるグルコース濃度に応じた呈色を示す。
【0035】
グルコースオキシターゼの代わりに,ピラノースオキシダーゼも使用できる.ペルオキシダーゼの代わりに,ヘモグロビン,チオシアン酸鉄,フェロシアン化鉄,ヨウ化カリウム及びモリブデン酸アンモニウムなども使用できる。
【0036】
色原体としては発色した場合可視部に吸収のあるものであればよく,o−アニシジン,ベンチジン,o−トリジン,テトラメチルベンチジン,ロイコ系色原体及び4−アミノアンチピリンとフェノール又はその誘導体やアニリン誘導体を組み合わせるトリンダー系試薬などが使用できる。
【0037】
この呈色を照合カラーチャート4と比較することにより,使用者はグルコース濃度の定性的な値を目視で判断できる.照合カラーチャートの詳細を図8に示す.図8において,41はカラーチャート部,43は対応分析物濃度である。
【0038】
ここで,照合カラーチャート4の対応分析物濃度43は,その後の処置が必要な,高血糖あるいは低血糖な状態を判定できるしきい値を境としたステップの,複数の照合カラーチャートとすることも出来る.これにより,使用者はグルコース濃度が,速やかなインシュリン摂取が必要な高血糖な状態,あるいは直ちに糖の摂取が必要な低血糖な状態であるかを目視で判断できる。
【0039】
次に,分析物濃度の定量的な分析方法について詳細に説明する.分析物濃度は,照合カラーチャート4から求めた検量線と,試薬領域3の呈色比較により行う。
【0040】
図6に測定チップの分析方法の構成図を示す.図6において,81は照明手段,82はカラー撮像素子,83は分析装置,84は表示・入力装置である.基板1からの入射光は,太陽光や室内照明光など何らかの照明手段81の試薬領域3と照合カラーチャート4を含む基板1からの反射光である。
【0041】
被分析液が試薬領域3に到達し,分析物による反応が十分進行した状態で,測定チップ1を分析装置83との伝達手段を持つ,カラー撮像素子82で撮影を行う.カラー撮像素子82は,CCDやCMOSセンサ等の半導体デバイスが使用できる.撮影した画像には,試薬領域3ならびに照合カラーチャート4と,各々に付属した基準カラー部が写っている。
【0042】
以下にカラー撮像素子82としてCCDを用いた場合を例にとり,この画像の分析方法について記す。
【0043】
カラーCCDは,複数のフォトダイオードがマトリックス状に配置されており,各々のフォトダイオード上には通常,赤・緑・青色のいずれかのカラーフィルターが配置されている.また一部には前記三原色と補色の関係である,黄色・マゼンタ・シアンを用いるものもある.カラーフィルターの配置は三原色の場合,主に縦3×横3の9つのフォトダイオードに,縦横方向に各々2つの赤と青のカラーフィルター,中央と四隅に5つの緑のカラーフィルターを組単位として使用されている.各フォトダイオードの電気信号出力は,入射光のカラーフィルター透過後の光強度に比例したものである。
【0044】
分析装置83内での画像分析の第一段階は,測定チップ1ならびにこの中の,試薬領域3,複数の照合カラーチャート4の認識を行う.これは,各認識部と基板2とのエッジ検出で行う.事前に記憶された全体パターンとのマッチングを行い,撮影時の倍率を決定し,各認識部を各々判定し,各認識部と相関するカラーCCD上のフォトダイオードのアドレスを決定する。
【0045】
ここで,測定チップ1の試薬領域3がある面とは反対面に,全体パターン識別番号を記載しておき,これを分析装置83と何らかの伝達手段がある表示・入力装置84に入力し分析すべき全体パターンを与えることが出来る.図9に測定チップ1の試薬領域3がある面とは反対面を示す.図9(a)において9は全体パターン認識番号である。
【0046】
あるいは,全体識別番号を一次元または二次元バーコードとし,カラー撮像装置82で撮影し,これを認識することで分析すべき全体パターンを与えることも出来る.図9(b)において9は二次元バーコードの一例である.さらに,全体パターン識別以外の分析物種類や要求されている分析精度,使用者への分析結果の伝達方法等の情報を加えることも可能である。
【0047】
第二段階は,各認識部の色の判定を行う.各認識部には,少なくとも各色について複数のフォトダイオードが対応しており,これら同色の電気信号出力の平均や度数分布の中央値を算出する.これによって,各色(赤=R,緑=G,青=B)の電気信号出力が得られる.これを一般にRGB出力値という.この操作を各認識部ごとに繰り返し行う。
【0048】
第三段階は,第二段階の結果によるグルコース濃度との検量線の作成である.発明者による検討の結果,RGB出力のうちRとG出力とグルコース濃度に相関が認められ,この二つについて検量線を作成した.図11において(a)はR出力とグルコース濃度の関係であり,(b)はG出力とグルコース濃度の関係である。
【0049】
図11から分かるように,グルコース濃度が高くなるとR出力ならびにG出力が低下する傾向を示し,グルコース濃度は,
[グルコース濃度]=A×exp(−B×[R出力またはG出力])
の形式で検量線を作成できる。
【0050】
第四段階は,第三段階での照合カラーチャート4からの検量線と試薬領域3の呈色比較である.試薬領域3について照合カラーチャート4について行った第二段階と同様の色判定を行い,この結果をR出力ならびにG出力の検量線に代入して,血液中のグルコース濃度を決定することが出来る.分析物濃度は,分析装置83内の保存手段に後で撮影時刻や,使用者のイベント情報などと共に再表示可能な状態で保存され,分析装置83と何らかの伝送手段を持つ表示・入力装置84に表示され使用者に認識される。
【0051】
先の第三段階ならびに第四段階は,以下のように変更することも可能である。
【0052】
変更可能な第三段階は,RGB出力値の加工である.RGB出力値では三つの独立変数があり,各色の比率のみを表す.これを色空間への変換を行う.ここで言う色空間とは,明度,彩度,色相のことである.色空間の表示方法として様々な表現方法が提案されており,表色系と呼ばれる.表色系としては,XYZ(Yxy)表色系,L*a*b表色系,L*C*h表色系などがある。
【0053】
ここでは,L*C*h表色系を例にとって変換方法を示す.変換は,規格化したRGB出力値を一旦XYZ表色系に変換する.さらにXYZ表色系からL*a*b表色系へ変換し,最後にL*C*h表色系へと変換する.L*C*h表色系は,L*が明度を,C*が彩度を,hが色相角度を表す.図7にL*C*h表色系の表色図を示す。
【0054】
変更可能な第四段階は,照合カラーチャート4からの検量線作成と試薬領域3の呈色比較である.各照合カラーチャートの変換後の色判定結果を表色系でマッピングする.マッピングは,図7に示した明度・彩度・色相角度からなる三次元空間上に配置される.さらに試薬領域3の変換後の色判定結果も同じく表色系で先のマッピング上に当てはめる.当てはめられたマッピング上の隣接する既知の濃度との比率配分で被分析液の分析物濃度を決定することが出来る。
【0055】
比率配分は,明度と彩度の二次元,あるいは明度と色相角度の二次元を使用することが出来,これらの一種類から,または二種類の平均を用いることが可能である.好ましくは,二種類の二次元のうち既知濃度の隣接間隔が最も大きい次元を使用する。
【0056】
また,カラー撮像装置82,分析装置83,表示・入力装置84は,これらが一体であるカメラ付携帯電話でもよい.カメラ付携帯電話を用いることで,前記動作の他に外部との通信機能が付加されているので,例えば使用者が糖尿病患者の場合,通信機能を通じて医師とのコミュニケーションが可能となり,あるいは自動的に分析結果を医師のデータベースに記録していくことも可能となる。
【0057】
このような本発明の第1の実施の形態の測定チップならびに分析方法によれば,測定チップ上に照合カラーチャートを設け,またカラー撮像装置で測定チップを撮影し,パターンの認識と照合カラーチャートから分析物濃度との検量線を求め,試薬領域との呈色比較を行えるようにしたことにより,使用者による定性的な分析物濃度の目視による認識と,測定チップの撮影による定量的な分析物濃度を,一つの測定チップで行うことができる。
【0058】
さらには,測定チップに固有の番号やバーコードを付加し,これを分析装置に入力することで,測定チップの全体パターンやその他の測定チップ固有の情報を分析装置に自動的に与えることが出来る。
【0059】
さらには,撮影をカメラ付携帯電話にすることで,撮影と分析,表示と保存を一つの装置で出来ることにとどまらず,通信機能を用いることで使用者が何らかの患者である場合,医師などと使用者の状態を自動的に共有することが可能となる。
【0060】
次に,本発明の第2の実施の形態の測定チップならびに分析方法について図面を用いて説明する.本発明の第2の実施の形態において,本発明の第1の実施の形態と異なる点についてのみ詳細に記す。
【0061】
照合カラーチャート4の詳細な構成を,図3に示す.図3において,照合カラーチャート4は先の目視での判定に用いたカラーチャート部41と基準カラー部42a,42b,42cからなる.基準カラー部42aは赤の基準色であり,42bは緑色の基準色,42cは青色の基準色である.基準カラー部42a,42b,42cの位置は,図3の配置に限らないが望ましくは目視に影響を与えない位置が好適である。
【0062】
同じく,試薬領域3の詳細な構成を,図4に示す.図4において,試薬領域3の周囲に基準カラー部31a,31b,31cが配置されている.基準カラー部31aは赤の基準色であり,31bは緑色の基準色,31cは青色の基準色である.基準カラー部31a,31b,31cの位置は,図4の配置に限らないが望ましくは目視に影響を与えない位置が好適である。
【0063】
基準カラー部は,赤・緑・青色の三原色としたが,その他の原色や補色,色数の変更も可能である.あるいは基準明度・彩度・色相であってもよい。
【0064】
基板1からの入射光は,太陽光や室内照明光など何らかの照明手段81の試薬領域3と照合カラーチャート4を含む基板1からの反射光であり,照明手段81の状態や,照明手段81・基板1・カラー撮像素子82の位置・角度関係によって撮影毎で異なり,また基板1面内でも照明光は一様でなく条件が異なっている。
【0065】
このため,照合カラーチャート4および試薬領域3の色判定において,各々の色判定場所での照明光の違いにより,精度が下がる可能性がある.そこで,基準カラー部を用いて色判定の補正を行う.色判定の補正方法を一例として,基準カラー部を各々赤・緑・青色とした場合について説明する。
【0066】
まず,照合カラーチャート部や試薬領域の場合と同様に,各々のカラー基準部に対して基準カラー部の認識と色の判定,各々のRGB出力値を算出する.本来,測定チップ全面での照明の状態が均一であれば各々の色判定場所でのカラー基準部のRGB出力値は同一となるはずである.しかしながら,照明の状態が不均一の場合,各々の色判定場所でのRGB出力値が異なることになる.図12(a)は,照明に不均一がある場合の補正前出力とグルコース濃度の例である.図12(a)において,グルコース濃度200mg/dlから傾きが変化している。
【0067】
そこで,各々の照合カラーチャート4について,基準カラー部31を用いて補正を行う.すなわち,基準カラー部31の各々の本来得られるべき各RGB出力値と実際に得られたRGB出力値を比較し,その減少あるいは増加比率で照合カラーチャート4のRGB出力を補正する.この補正を全照合カラーチャート部と試薬領域について行い,補正後の値を用いて照合カラーチャート4から検量線を作成し,試薬領域との呈色比較で血液のグルコース濃度を決定することが出来る。
【0068】
図12(b)は,補正後のグルコース濃度と出力値の関係の例である.図12(b)の下向き矢印で示したように,基準カラー部での色判定結果に基づき補正を行った結果,誤差を少なくした検量線の作成が可能となった。
【0069】
このような本発明の第2の実施の形態の測定チップならびに分析方法によれば,測定チップ上の照合カラーチャートと試薬領域の各々に基準カラー部を設けたことにより,測定チップをカラー撮像素子で撮影する際の照明光の不均一による,色判定の精度低下を補正することができる。
【0070】
次に,本発明の第3の実施の形態の測定チップについて図2と7を用いて説明する.本発明の第3の実施の形態において,これまでの本発明の実施の形態と異なる点についてのみ詳細に記す。
【0071】
図2は本発明の第3の実施の形態の測定チップであり,図2の測定チップ1において,図1の測定チップと同一の記号は同一の構成を示す.図1と異なるのは,照合カラーチャート4であり,照合カラーチャート4の詳細を図5に示す.図5の照合カラーチャート4において,カラーチャート部41は連続的なチャートとなっており,基準カラー部42があるステップで配置されている.対応分析物濃度43もあるステップで配置されており,ステップ間の表示をステップ表示44で行う。
【0072】
図5において基準カラー部42は,対応分析物濃度43と一致するように配置されているが,さらに多くても,あるいは少なくてもよい.また,基準カラー部42をカラーチャート41近傍の外部に設置してもよい。
【0073】
図示しない試薬領域との目視による呈色の比較が,照合カラーチャート4と行われる.また,同じく図示しないカラー撮像素子による測定チップ1の撮影が行われ,同じく図示しない分析装置で色判定が行われる。
【0074】
照合カラーチャート4の色判定は,照合カラーチャート4の複数の場所で行われる.複数の場所は,望ましくは基準カラー部42の近傍で行われる.基準カラー部42の色判定による補正を行った上で照合カラーチャート4から検量線が作成され,同じく基準カラー部の色判定による補正を行った上での試薬領域3との呈色比較により血液のグルコース濃度が決定される。
【0075】
このような本発明の第3の実施の形態の測定チップならびに分析方法によれば,測定チップ上の照合カラーチャートを連続的なチャートとすることで,試薬領域の各々に基準カラー部を設けたことにより,使用者による定性的な分析物濃度の目視による認識の判定精度を高めることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように,本発明にかかる測定チップならびに分析方法は,使用者による分析物濃度の目視による定性的な認識と,測定チップの撮影による定量的な認識を一つの測定チップにて行えるという効果を有し,血液など体液中の成分分析に用いる,測定チップならびにその分析方法等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施の形態における測定チップを示す構成図
【図2】本発明の第3の実施の形態における測定チップを示す構成図
【図3】本発明の第2の実施の形態における照合カラーチャートの詳細図
【図4】本発明の第2の実施の形態における試薬領域の詳細図
【図5】本発明の第3の実施の形態における照合カラーチャートの詳細図
【図6】本発明の第1の実施の形態における測定チップの分析方法を示す構成図
【図7】本発明の第1の実施の形態におけるL*C*h表色系の表色図
【図8】本発明の第1の実施の形態における照合カラーチャートの詳細図
【図9】本発明の第1の実施の形態における測定チップの裏面図
【図10】従来の測定チップを示す構成図
【図11】出力とグルコース濃度との関係を示すグラフ
【図12】補正前後の出力とグルコース濃度との関係を示すグラフ
【符号の説明】
【0078】
1 測定チップ
2 基板
3 試薬領域
4 照合カラーチャート
5 試料導入部
6 流路
7 フィルタ
8 基板カバー
9 全体パターン認識番号あるいは二次元バーコード
31 基準カラー部
41 カラーチャート部
42 基準カラー部
43 対応分析物濃度
44 ステップ表示
81 照明手段
82 カラー撮像素子
83 分析装置
84 表示・入力装置
100 基板
101 比較用カラー領域
102 試薬領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に試薬領域と,前記試薬領域の前記分析物濃度に応じた呈色と比較するための照合カラーチャートと,前記照合カラーチャートの内部または近傍に基準カラーが形成されたことを特徴とする測定チップ。
【請求項2】
前記試薬領域に前記被分析液を導くための流路を具備したことを特徴とする,請求項1記載の測定チップ。
【請求項3】
前記基板の裏面に,前記測定チップの特徴と関連付けられた記号が記されていることを特徴とする,請求項1または2記載の測定チップ。
【請求項4】
前記照合カラーチャートは,前記分析物濃度に対して連続的に表示されていることを特徴とする,請求項1から3記載の測定チップ。
【請求項5】
基板と試料導入部と前記基板上に少なくとも底部と二つ以上の側壁部とを有する流路と,フィルタと試薬領域と基板カバーとを備え,前記試料導入部は前記基板の端面にあり,かつ前記試料導入部と前記流路と前記フィルタと前記試薬領域は前記流路を介し連結され,前記フィルタは前記試料導入部と前記試薬領域との間にあり,前記試薬領域は少なくとも基質と反応する酵素と前記酵素の反応物と反応する呈色試薬とを有し,前記基板の前記反応と関与しない部位は少なくとも一個以上の照合カラーチャートを有することを特徴とする測定チップ。
【請求項6】
前記測定チップは,少なくとも基板上に試薬領域と,前記試薬領域の前記分析物濃度に応じた呈色と比較するための照合カラーチャートを含み,前記測定チップをカラー撮像素子で撮影し,取り込んだ画像からの前記照合カラーチャートの色判定から前記分析物濃度との検量線を作成し,前記試薬領域の色判定と比較して前記分析物濃度を得ることを特徴とする,測定チップの分析方法。
【請求項7】
前記測定チップは,少なくとも基板上に試薬領域と,前記試薬領域の前記分析物濃度に応じた呈色と比較するための照合カラーチャートと,前記照合カラーチャートの内部または近傍の基準カラーを含み,前記測定チップをカラー撮像素子で撮影し,取り込んだ画像からの前記基準カラーの色判定により補正した前記照合カラーチャートの色判定から前記分析物濃度との検量線を作成し,前記試薬領域の色判定と比較して前記分析物濃度を得ることを特徴とする,測定チップの分析方法。
【請求項8】
前記カラー撮像素子は,カメラ付携帯電話であることを特徴とする,請求項6または7記載の測定チップの分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−101482(P2007−101482A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294812(P2005−294812)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】