測定方法、測定装置およびエピタキシャル基板
【課題】従来のグロー放電発光分析方法では正確に測定強度を測定することが困難な薄膜を有する測定対象材についての測定を行なうことが可能な測定方法、測定装置および当該測定方法によって測定された薄膜を備えるエピタキシャル基板を提供する。
【解決手段】本発明に従った測定方法は、基板(試料S)を準備する工程と、測定工程とを備える。測定工程では、グロー放電発光分析法を用いて、試料Sの表面からの深さ方向における成分元素の濃度分布を測定する。具体的には、試料Sに給電することによりグロー放電による発光を発生させ、当該発光を波長ごとに分光して分光した光の強度を測定することにより、試料Sの深さ方向における成分元素の濃度分布の測定を行なう。測定工程において、強度を測定する光のエネルギーは試料Sのバンドギャップエネルギーより大きい。
【解決手段】本発明に従った測定方法は、基板(試料S)を準備する工程と、測定工程とを備える。測定工程では、グロー放電発光分析法を用いて、試料Sの表面からの深さ方向における成分元素の濃度分布を測定する。具体的には、試料Sに給電することによりグロー放電による発光を発生させ、当該発光を波長ごとに分光して分光した光の強度を測定することにより、試料Sの深さ方向における成分元素の濃度分布の測定を行なう。測定工程において、強度を測定する光のエネルギーは試料Sのバンドギャップエネルギーより大きい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、測定方法、測定装置およびエピタキシャル基板に関し、より特定的には、グロー放電発光分析法を用いた測定方法、測定装置およびエピタキシャル基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象材に電力を供給することによりグロー放電による発光を発生させ、その発光を波長ごとに分光して当該分光した光の強度を測定することにより、測定対象材の成分分析を行なうグロー放電発光分析法および当該グロー放電発光分析方法を実施する測定装置が知られている。そして、測定対象材として基板などのベース材上に薄膜が形成されたものを用いる場合、測定時間に対する所定の波長の光の測定強度に周期的な変化(波状の波形)が見られることが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
このような光の測定強度の周期的な変化は、グロー放電に起因する光のうち、薄膜表面で反射するものと、ベース材表面で反射するものとの干渉現象によって発生する。そして、この光の測定強度を正確に測定するためには、このような周期的な変化の影響を測定結果から除去する必要がある。上述した測定強度の周期的な変化の影響を測定結果から除去する方法として、上述した測定強度の周期的な変化の周期などを利用した演算を行なうことが提案されている。たとえば、特許文献1に開示されたグロー放電発光分析方法では、以下のような測定方法を用いている。
【0004】
すなわち、特許文献1では、基板上に薄膜が形成された測定対象材に関し、周期的に変化する測定強度のデータから平均周期を算出する。そして、測定時刻を中心とする平均周期内における測定強度の平均値を算出し、当該測定時刻における補正後の(周期的な変化の影響を除去した)測定強度としている。
【特許文献1】特願2000−28530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の測定方法では、以下のような問題があった。すなわち、測定対象材の薄膜の厚みが、エピタキシャル基板のエピタキシャル膜のようにナノメートルオーダー程度と極めて薄くなる場合、測定強度が上述した周期的な変化を示さなくなる。この結果、測定対象材の薄膜の厚みが薄くなると、上述のように測定強度の周期的変化の周期といったデータに基づいて測定強度を補正することができなくなっていた。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、この発明の目的は、従来のグロー放電発光分析方法では正確に測定強度を測定することが困難な薄膜を有する測定対象材についての測定を行なうことが可能な測定方法、測定装置および当該測定方法によって測定された薄膜を備えるエピタキシャル基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従った測定方法は、測定対象材を準備する工程と、測定工程とを備える。測定工程では、グロー放電発光分析法を用いて、測定対象材の表面からの深さ方向における成分元素の濃度分布を測定する。グロー放電発光分析法とは、測定対象材に給電することによりグロー放電による発光を発生させ、当該発光を波長ごとに分光して分光した光の強度を測定することにより、測定対象材の成分分析を行なう分析方法である。測定工程において、強度を測定する光のエネルギーは測定対象材のバンドギャップエネルギーより大きい。
【0008】
このようにすれば、強度を測定する光のエネルギーが測定対象材のバンドギャップエネルギーより大きいため、グロー放電発光分析法において強度を測定する光のうち、測定対象材に入射する光の成分の少なくとも一部が測定対象材に吸収される。このため、測定対象材の表面に薄い膜が形成されている場合に、グロー放電に起因する光のうち、当該薄い膜表面で反射するものと、ベース材表面で反射するものとの干渉現象によって測定強度が周期的に変化することになる光の成分の割合を低減できる。この結果、測定される光の強度データが変動する程度を小さくすることができる。このため、測定する光の強度データの変動が1周期以上観測されないような薄い膜を有する測定対象材について、当該膜に関して正確な光の強度データを得ることができる。したがって、測定対象材の深さ方向における成分元素の濃度分布の正確な情報を得ることができる。
【0009】
本発明に従った測定方法は、測定準備工程と本測定工程とを備える。測定準備工程は、測定対象材準備工程と、決定工程と、予備測定工程と、波長決定工程とを含む。測定対象材準備工程では、予備測定用の測定対象材を準備する。決定工程では、測定対象材に給電することによりグロー放電による発光を発生させ、当該発光を波長ごとに分光して測定可能な強度を示す光の複数の波長を決定する。予備測定工程では、測定対象材に給電することによりグロー放電による発光を発生させ、当該発光を波長ごとに分光した後、決定工程で決定した複数の波長のそれぞれの光について強度を測定する。波長決定工程では、予備測定工程において測定された複数の波長の光のそれぞれの強度データのうち、相対的に時間的な変化が少ないデータを示す光の波長を、本測定工程において測定に用いる測定波長として決定する。
【0010】
本測定工程は、本測定工程用に準備された測定対象材に給電することによりグロー放電による発光を発生させ、当該発光を波長ごとに分光して当該分光した光の強度を測定することにより、測定対象材の成分分析を行なうグロー放電発光分析法によって、強度を測定する光の波長として波長決定工程において決定された測定波長を用いることにより、測定対象材の表面からの深さ方向における成分元素の濃度分布を測定する測定工程を含む。
【0011】
このようにすれば、測定準備工程において測定に用いる測定波長を決定した後、当該測定波長を用いて本測定工程での測定対象材の測定を実施するので、構成材料の種類などが正確に分かっていないような測定対象材についても、測定データの時間的な変動(たとえば測定対象材からの反射光の存在に起因する光の干渉に基づく周期的変動)を抑制できる。このため、光の正確な強度データを得ることができるので、測定対象材の深さ方向における成分元素の濃度分布を正確に測定できる。
【0012】
本発明に従った測定装置は、測定対象材の表面の少なくとも一部が内部に露出する反応室と、ガス供給部材と、励起部材と、計測部材と、測定波長設定部材と、出力部材とを備える。ガス供給部材は、反応室の内部に測定用ガスを供給する。励起部材は、反応室の内部で測定用ガスをプラズマ化する。計測部材は、プラズマ化した測定用ガスの原子が測定対象材の表面に入射することにより、測定対象材から放出された原子が励起された後放出する光について、複数の波長ごとに強度を測定する。測定波長設定部材は、計測部材において強度が測定される光の波長を設定する。出力部材は、計測部材により測定される複数の波長ごとの光の強度データについて、特定の波長の光について当該強度データを時系列データとして出力する。出力部材から時系列データとして強度データが出力される光のエネルギーは、測定対象材のバンドギャップエネルギーより大きい。
【0013】
このようにすれば、当該測定装置において上述した本発明に従った測定方法を容易に実施することができる。すなわち、時系列データとして強度データが出力される光のエネルギーが測定対象材のバンドギャップエネルギーより大きいので、当該光のうち測定対象材に入射した成分の少なくとも一部が測定対象材に吸収される。このため、測定対象材の表面に薄い膜が形成されている場合に、グロー放電に起因する光のうち、薄膜表面で反射するものと、ベース材表面で反射するものとの干渉現象によって測定強度が周期的に変化することになる光の成分の割合を低減できる。この結果、測定される光の強度データが変動する程度を小さくできる。このため、測定する光の強度データの変動が1周期以上観測されないような薄い膜を有する測定対象材について、正確な光の強度データを得ることができる。したがって、測定対象材の深さ方向における成分元素の濃度分布の正確な情報を得ることができる。
【0014】
本発明に従ったエピタキシャル基板は、上記測定方法を用いて、表面からの深さ方向における成分元素の濃度分布が測定されている。このようにすれば、成分元素の深さ方向における分布を正確に特定されたエピタキシャル基板を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来の方法では正確なデータを得ることができなかった薄い膜を有する測定対象材について、グロー放電発光分光測定法を用いて深さ方向での成分元素の濃度分布のデータを正確に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0017】
図1は、本発明に従った測定装置の構成を示す構成模式図である。図2は、図1の測定装置を用いた測定方法を説明するフローチャートである。図3は、図2における測定工程の内容を説明するフローチャートである。図4は、図3の予備測定工程の内容を説明するフローチャートである。図1〜図4を参照して、本発明に従った測定装置および測定方法を説明する。
【0018】
図1を参照して、本発明に従った測定装置としてのグロー放電発光分析装置1は、グロー放電管2と、電源部3と、ガス供給部6と、分光器7と、分析制御部8と、測定波長設定部20と、図示しない排気部材とを備える。グロー放電管2は、測定対象材である試料Sに対しグロー放電を発生させる。電源部3は、グロー放電管2に高周波電力を供給する。ガス供給部6は、測定に必要なガスをグロー放電管2に供給する。排気部材としては、ガス供給部6からのガス供給前に、グロー放電管2の内部の空気を吸引、排出することにより、グロー放電管2の内部を所定の圧力状態(真空)にする真空引き装置を用いることができる。排気部材の構成としては、任意の構成を採用することができる。
【0019】
分光器7は、グロー放電管2から生じる光Lを分光すると共に、各分光の強度を測定する。分析制御部8は、測定された各分光の強度に基づき各測定対象材の成分分析に係る演算、並びに電源部3とガス供給部6とに対する制御等を行なう。なお、電源部3は交流電源AC(たとえば出力電圧220Vの交流電源)に接続されて高周波電力を生成するジェネレータ4と、可変コンデンサを含むマッチングボックス5とを備える。ここでジェネレータ4は電源装置に相当する。
【0020】
グロー放電管2は、任意の構成を採用することができる。たとえば、グロー放電管2として、以下のような構成を採用してもよい。すなわち、グロー放電管2として、内部に貫通孔を形成したランプボディに、当該貫通孔の一方端部側に絶縁材を介在させて陽極およびセラミックスを押圧ブロックにより取り付けた構成にしてもよい。当該貫通孔は試料の正面に配置され、ガス供給部6からの不活性ガスが導かれる。また、当該貫通孔の他方端部(試料に面する側の一方端部と反対側の端部)は分光器7に繋がっていてもよい。貫通孔の他方端部側には集光レンズを配置してもよい。また上記セラミックスには試料Sが試料押圧部材により押圧された状態で取り付けられる。試料押圧部材は電圧印加電極を兼ねてもよい。試料押圧部材は、電源部3と電源線Dにより接続され、電源部3から供給される高周波電力を試料Sに印加して試料Sへの給電を行なってもよい。
【0021】
電源部3を構成するジェネレータ4は、第1接続コードS1により分析制御部8と接続され、任意の構成を採用することができる。たとえば、ジェネレータ4の構成として、高周波電力生成部、制御部および電力計測部を備える構成を採用してもよい。ジェネレータ4の高周波電力生成部は、交流電源ACと接続されて電圧が正(+)および負(−)に変化する交流の高周波電力を生成する。また、高周波電力生成部は制御部と接続され、制御部の制御により高周波電力の出力形態(たとえば分析開始から分析終了まで連続して高周波電力を供給する連続給電モードや電力供給および電力供給停止を交互にパルス的に切り替えることにより断続的に高周波電力が給電される断続給電モードなどの出力形態)および電力値等を調整する。高周波電力生成部はたとえば13.56MHzの高周波電力を生成する。
【0022】
ジェネレータ4の制御部は給電切替手段としても機能し、上述した連続給電モードと断続給電モードなどの出力形態の切替を分析制御部8の指示に基づき行なう。さらに、制御部は断続給電モードでは回数設定手段としても機能する。この場合、第1接続コードS1を通じて分析制御部8から出力されてきた信号により、制御部は断続給電モードでの単位時間(1秒間)当たりの給電回数である給電周波数を約30Hz〜3000Hzの範囲で調節可能としてもよい。また、給電周波数は、たとえば好ましくは50Hz以上200Hz以下、より好ましくは100Hz程度に調節してもよい。
【0023】
さらに、また、制御部は、分析制御部8から出力された信号に基づいて、各出力形態の条件を設定する設定手段としての機能を有していてもよい。たとえば、制御部は断続給電モードに関して、断続給電モード中の1回分の給電時間を設定する時間設定手段としての機能を有していてもよい。たとえば、断続給電モードで交互に繰返される給電と電力供給停止とについて、給電時間T1と、給電および電力供給停止の1サイクルに要するサイクル時間T2とを考えた場合に、ジェネレータ4の制御部は給電時間T1とサイクル時間T2との比(給電占有率)を分析制御部8からの信号に基づいて設定してもよい。なお、給電占有率(T1/T2)は、たとえば10%程度に設定することができる。
【0024】
なお、上述した断続給電モードでは給電周波数の調節により1秒間当たり30〜3000回、電力供給と電力供給停止が交互に繰返されるが、この繰返しに従来のマッチングボックス5の可変コンデンサの駆動が機構的に追従できない場合がある。このため、ジェネレータ4の制御部がスパッタリングによる試料Sのインピーダンス値の変動に対応する調整を行なうようにすることが好ましい。このようにジェネレータ4の制御部が調整を行なうことで、断続給電モードであってもスパッタリングによる試料Sのインピーダンス値の変動に対応して適切な給電を行なえる。なお、制御部が試料Sのインピーダンス値の変動に対応した調整を行なうのは断続給電モードの場合であり、連続給電モードでは後述するように電源部3のマッチングボックス5が調整を行なう。
【0025】
ジェネレータ4の電力計測部は、2本の内部接続線により制御部および高周波電力生成部と接続されていてもよい。電力計測部は、高周波電力生成部で生成されて図1に示す試料押圧部材9へ向かう高周波電力の進行波の電力値である出力値Pfを検出する第1検出手段、および、試料Sから反射して戻ってくる反射波の電力値である反射値Prを検出する第2検出手段として機能している。電力計測部は、断続給電モードにおける制御部での上述した試料Sのインピーダンス値の変動に対応した調整のため、検出した出力値Pfおよび反射値Prを制御部へ伝送している。
【0026】
また、第2接続コードS2により分析制御部8と接続されている電源部3のマッチングボックス5の構成としては、任意の構成を採用することができる。たとえば、マッチングボックス5は、上述した連続給電モードにおいて、ジェネレータ4で生成された高周波電力の出力形態を調整する可変コンデンサ、当該可変コンデンサの電気容量を調整する調整部材としてのモータ、およびモータの駆動等の制御を行なうコンデンサ制御部を備えていてもよい。
【0027】
可変コンデンサはモータの駆動に応じて自身の電気容量を変更できるようになっていてもよい。マッチングボックス5のコンデンサ制御部は、たとえば第2接続コードS2により分析制御部8と接続されていてもよい。後述するように分析制御部8からマッチングボックス5へ伝送されてくる断続給電モードに設定されているかを伝える通知信号に基づいて、コンデンサ制御部はモータの駆動を制御してもよい。具体的には、コンデンサ制御部が断続給電モードの通知信号を受け付けた場合、当該コンデンサ制御部は可変コンデンサの電気容量が一定に固定されるようにモータを一定の状態に維持する制御を行なう。この場合、断続給電モードではマッチングボックス5で高周波電力のモジュールおよびフェーズは調整されない。
【0028】
一方、マッチングボックス5が(上述のようにたとえばコンデンサ制御部が)断続給電モードの通知信号を分析制御部8から受け付けていない場合、即ち、連続給電モードが設定されているときには、マッチングボックス5では試料Sからの反射値Prが最小となるようにモータの駆動が制御されることにより可変コンデンサの電気容量が変更される。なお、反射値Prが最小であれば、コンデンサ制御部は可変コンデンサの電気容量を変更する制御は行なわない。このように、連続給電モードでは、試料のインピーダンス値の変動はマッチングボックス5で対処される。
【0029】
また、図1に示すガス供給部6は、アルゴンガスのような不活性ガス又は不活性ガスの混合ガス等を充填したボンベ(図示せず)、および、第3接続線S3と接続された電磁弁(図示せず)を備える。電磁弁は、分析制御部8の第2基板17の制御により開閉されることにより、上記ボンベからの不活性ガスの供給を制御する。
【0030】
グロー放電管2からの光Lを測定する分光器7はポリクロメータによるもので、第1スリット7a、回折格子7b、第2スリット7c、および複数の光電子増倍管(フォトマルチプライヤ)7dを備えている。第1スリット7aは、図1に示すようにグロー放電管2から入射する光Lを透過させる。回折格子7bは、第1スリット7aを透過した光Lを分光する。第2スリット7cは、各測定対象成分に相当する波長に分光された光を透過させる。複数の光電子増倍管7dは、第2スリット7cを透過したそれぞれの光の強度を検出する。なお、各光電子増倍管7dは、複数のコードを束ねた接続線束S4により分析制御部8に接続されている。分析制御部8は、光電子増倍管7dが検出した光の強度を、測定値データとして接続線束S4を介して取得する。
【0031】
図1に示す測定波長設定部20は、後述する成分分析を行なうための特定の波長を設定するもので、たとえば、回折格子7bの角度を制御することにより所定の測定波長の光がスリット7cを通過し、光電子増倍管7dにより測定されるようにするためのものであり、任意の構成を採用することができる。たとえば、測定波長設定部20は、回折格子7bの角度を変更するための駆動部材の一例であるモータと、当該モータの動作を制御するための制御部とを備えていてもよい。当該制御部は、第6接続コードS6を介して分析制御部8と接続されている。制御部は、分析制御部8からの制御信号に基づいて、モータの動作を制御することにより、回折格子7bの角度を調整する。モータとしては、たとえばステッピングモータなどを用いてもよい。この場合、回折格子7bの回転軸にステッピングモータの駆動軸を接続し、回折格子7bの角度を当該ステッピングモータの回転により直接的に制御することができる。
【0032】
なお、分光器7をモノクロメータによって構成してもよい。また、回折格子を回転させずに各波長のスペクトル分布をフォトダイオードアレイ等の検出器を用いて、同時測光できるポリクロメータを用いることもできる。この場合、測定波長設定部は、たとえば角度が固定された回折格子と、当該回折格子と検出器との間に位置するスリット7cなどの光制限部材とから構成される。測定波長設定部20はさらにたとえば光制限部材の位置を移動可能な構成を採用することができる。具体的には、光制限部材の配置を機械的に移動させるためのシリンダやモータなどの動作を測定波長設定部20にて制御するようにしてもよい。また、分光器7としてポリクロメータを用いる場合、同時測光した各波長の光の一部の必要な波長の光についての測定データを電気的に抽出する、といった制御を後述の出力部材で行なってもよい。
【0033】
図1に示す分析制御部8としては、たとえばコンピュータを用いることができる。出力部材としての分析制御部8は、第1基板16、第2基板17、CPU8b、記憶装置としてのハードディスク8c、一次記憶装置としてのメモリ8dおよびこれらの機器を接続するための内部バス8aを備える。第1基板16には、光電子増倍管7dから延在する接続線束S4が接続される。第2基板17には、ジェネレータ4から延在する第1接続コードS1、マッチングボックス5から延在する第2接続コードS2、ガス供給部6から延在する第3接続コードS3および測定波長設定部20から延在する第6接続コードS6が接続される。また、各基板16、17は、上述した内部バス8aを介してCPU8b、ハードディスク8c、およびメモリ8dに接続される。なお、内部バス8aには外部接続線S5を介してモニタ装置8eも接続されている。さらに、第2基板17には図示していない排気部材としての真空引き装置も接続されている。
【0034】
第2基板17は、CPU8bの制御により測定波長を示す信号がCPU8bから伝送されると、測定波長を示す指示信号を測定波長設定部20へ出力する。指示信号としては、測定波長の値を示す信号であってもよいし、当該測定波長の値に対応した回折格子7bの角度を示す信号であってもよい。指示信号として測定波長の値を示す信号が第2基板17から測定波長設定部20に送出される場合、測定波長設定部20において当該信号に基づき回折格子7bの角度を決定し、当該決定された角度の値に基づいてモータなどの駆動部材が制御されてもよい。また、指示信号として回折格子7bの角度を示す信号が第2基板17から測定波長設定部20に送出される場合、測定波長設定部20において受け取った信号により示される角度の値に基づいて、モータなどの駆動部材が制御されてもよい。
【0035】
また、第2基板17は、CPU8bの制御により設定されたモードを示す信号がCPU8bから伝送されると、モード切替の指示信号をジェネレータ4へ出力する。また、第2基板17は、各モードにおける制御パラメタを示す指示信号を、電源部3に向けて送出する。制御パラメタとしては、たとえば断続給電モードにおける給電周波数および給電占有率、高周波電力のピーク電力値、変動するインピーダンス値に対応した調整に用いられる基準電力値(基準値)等が挙げられる。なお、第2基板からは、ガス供給部6および排気部材に対する制御に係る指示信号も送出される。ガス供給部6および排気部材に対する制御に係る指示信号は上述した給電モードに関係なく同様となっていてもよい。
【0036】
本発明の出力部材を構成するCPU8bは、ハードディスク8cに記憶された制御用のプログラムに基づいて各種処理を行なう。例えば、ユーザによる測定波長の設定を受け付けて、設定された測定波長に対応する信号を第2基板17に伝送する処理を行なう。また、CPU8bは、ハードディスク8cに記憶された測定値分析用のプログラムをメモリ8dにロードし、当該プログラムに従って演算処理を行なう。この演算処理により、分光器7の光電子増倍管7dから取得した測定値に基づき試料Sの成分の濃度等に係る分析が行なわれる。なお、測定値分析用のプログラムには、各光電子増倍管7dが測定した光の強度に基づき試料Sの成分分析をCPU8bに行なわせる処理が規定されており、また、分析結果を種々のグラフの形態でモニタ装置8e等に出力する処理も規定されている。つまり、測定される複数の波長ごとの光の強度データについて、特定の波長の光について当該強度データを時系列データとしてモニタ装置8eなどの出力装置に出力する処理もCPU8bにより行なわれる。また、CPU8bはユーザによる基準時間の設定を受け付けて、基準時間と分析時間とを比較しながら測定する、測定時間設定機能(タイマ機能)のような各種機能を備えていてもよい。
【0037】
ハードディスク8cは記憶部として、上述した各種プログラム、さらにユーザにより設定された基準電力値(基準値)のような各種パラメタ、および測定値および分析値に係る各種データを記憶する。ハードディスク8cに記憶される制御用のプログラムは、起動するとモニタ装置8eに各種入力あるいは出力用画面を表示してもよい。分析制御部8には、図示しないキーボードなどの入力装置が接続されている。分析制御部8には、上述したモニタ装置8eにおける表示などを利用しながら、ユーザが測定周波数の設定、モード選択、給電周波数の設定、給電占有率の設定などを行なった結果として、信号が入力装置から入力される。
【0038】
次に、上述した構成のグロー放電発光分析装置1による分析方法を、図2〜図4を参照して説明する。
【0039】
図2に示すように、まず測定対象材である基板を準備する基板準備工程(S100)を実施する。基板としては、たとえば表面にエピタキシャル膜が形成されたエピタキシャル基板を準備する。
【0040】
次に、測定工程(S200)を実施する。測定工程(S200)では、図3に示すようにまず準備工程(S210)を実施する。具体的には、基板準備工程(S100)で準備された試料Sとしての基板を、グロー放電発光分析装置1のグロー放電管2にセットする。その後、グロー放電管2の内部の真空引きを排気部材としての真空引き装置で行なう。
【0041】
次に、測定波長が決定済であるか否かを判断する判断工程(S220)を実施する。この判断工程(S220)では、試料Sについて光電子増倍管7dで測定する光の波長がすでに決定されているかどうかを判断する。判断工程(S220)において、測定波長がすでに決定されている場合(判断工程(S220)でYESと判断された場合)には、後述するように当該試料Sに対して本測定工程(S240)を実施する。本測定工程(S240)の内容は後述する。
【0042】
一方、判断工程(S220)において測定波長が決定されていないと判断された場合(判断工程(S220)でNOと判断された場合)には、当該試料Sについて測定波長を決定するための予備測定工程(S230)が実施される。予備測定工程(S230)では、図4に示すように、まず測定可能な波長の抽出工程(S231)を実施する。具体的には、ガス供給部6より測定に必要な不活性ガス(アルゴンガス)をグロー放電管2の内部に供給する。その状態で、試料Sに給電することによりグロー放電による発光を発生させ、当該発光を波長ごとに分光して波長ごとの光の強度データを得る。そして、当該強度データに基づいて、分析に用いることが可能な発光強度を示す波長(測定波長の候補となり得る波長)を複数抽出する。この測定波長の候補となり得る波長は、測定対象の元素ごとに複数抽出することが好ましい。ここで、分析に用いることが可能な波長について、一義的に規定することは難しいが、分光強度や分光の干渉の有無や程度などをパラメータとして決定し得る。
【0043】
次に、抽出された波長の光を用いて、試料Sについて分析(グロー放電発光分析法)を、所定時間予備的に行なう工程(S232)を実施する。この工程(S232)では、抽出工程(S231)で抽出した複数の波長について、それぞれ所定時間だけグロー放電発光分析法による分析を行なう。つまり、先ずグロー放電管2に供給したアルゴンガスから生じたアルゴンイオンが、試料Sの表面に衝突することでスパッタリングが起こる。その結果、試料Sの表面からイオンを含む粒子が飛び出す。次に、この粒子がプラズマ中で励起されてから基底状態に戻る際に元素固有の発光が生じる。さらに、図1に示すように、この発光による光Lを分光器7で分光する。この分光した各光の強度を、光電子増倍管7dにより測定する。その測定値を分析制御部8が光電子増倍管7dから(分光器7から)取得する。
【0044】
この結果、たとえば数msec間隔で検出された複数のデータが連なった、各波長の光について発光強度の時系列データ(実際には試料Sの表面から深さ方向における成分濃度分布に対応するデータ)が得られる。この工程(S232)において、各波長の光についての発光強度のデータを取得する上記所定時間としては、試料Sの構成などに応じて、適宜設定することができる。
【0045】
次に、測定結果に基づき、本測定に用いる光の波長を決定する工程(S233)を実施する。この工程(S233)では、上述した工程(S232)で得られた各波長の光の発光強度のデータを比較し、時間的な変動の相対的に少ないものを測定波長として決定する。判断基準としては、たとえば発光強度の時間的な変動(周期的な変動)が相対的に少ない波長を目視で判断してもよいが、所定の判定値を算出してその判定値を用いて判断してもよい。たとえば、発光強度のデータのある期間(たとえば5秒)における平均値に対して、当該期間中でのデータの変動量(最大値−最小値の値)の割合がたとえば5%以下となっていること、といった基準を用いることができる。このようにして、測定波長を決定することができる。なお、測定波長は測定対象の元素ごとに決定する。なお、この工程(S233)は、上述のような数値基準を利用して分析制御部で自動的に行なうようにしてもよい。
【0046】
上述のように図3で示した予備測定工程(S230)が実施された後、あるいは工程(S220)でYESと判断された後、本測定工程(S240)が実施される。当該本測定工程(S240)では、上記予備測定工程(S230)で決定された測定波長を用いて、試料Sについてグロー放電発光分析法を用いた成分分析を行なう。なお、先に予備測定工程(S230)が実施されている場合には、測定対象材である試料Sとして、予備測定工程(S230)で測定した試料と同じ種類の試料を新たにグロー放電発光分析装置1に設置した上で、測定を行なう。この本測定工程(S240)での測定の条件は、基本的に予備測定工程(S230)での図4に示した工程(S232)での条件と同様である。
【0047】
すなわち、この本測定工程(S240)では、先ずグロー放電管2に供給したアルゴンガスから生じたアルゴンイオンが、試料Sの表面に衝突することでスパッタリングが起こる。その結果、試料Sの表面からイオンを含む粒子が飛び出す。次に、この粒子がプラズマ中で励起されてから基底状態に戻る際に元素固有の発光が生じる。さらに、図1に示すように、この発光による光Lを分光器7で分光する。この分光した各光の強度を、光電子増倍管7dにより測定する。その測定値を分析制御部8が光電子増倍管7dから(つまり分光器7から)取得する。
【0048】
得られた測定値の時系列での変化は、試料Sの表面から上述のように粒子が飛び出すことによって、当該試料の表面層が徐々に除去されていくため、試料Sの表面からの深さ方向における成分元素の濃度分布の変化を示すことになる。つまり、上述のような測定方法によって、試料Sの深さ方向元素分析(定性分析:取得した測定値に基づく、試料Sの各成分が表面からどのような深さで分布しているかの分析)を行なうことができる。また、金属材料等に対する定量分析では、分析制御部8が取得した測定値に基づき試料Sに含まれる元素の濃度を分析する。このように分析した結果を分析制御部8は外部に出力する。たとえば、分析制御部8は、モニタ装置8eで分析結果の表示等を行なう。
【0049】
このようにすれば、時間的な変動(周期的な変動)の無い(あるいは極めて小さい)波長の光について発光強度を測定することになるので、試料Sが極めて薄い薄膜(従来の測定方法では周期的な発光強度の変動が起きるものの、測定結果としては変動の1周期分以下のデータしか測定できないような薄い薄膜)を有するような場合に、発光強度を正確に測定することができる。
【0050】
[実施例1]
本発明の効果を確認するため、以下のような実験を行なった。具体的には、まず、グロー放電発光分析における測定結果の波長依存性を確認する実験を行なった。
【0051】
(試料)
試料としては、サファイア基板上に、厚みが2.2μmのGaNからなるバッファ層、および当該バッファ層上に形成された厚み150nmのAlGaN層が形成されたエピタキシャル基板を準備した。AlGaN層におけるアルミニウムの濃度は9原子%である。また、サファイア基板としては直径が5.08cmであって平面形状が円形状の基板を用いた。なお、ここで準備したエピタキシャル基板のAlGaN層のバンドギャップエネルギーは3.65eVであり、GaNからなるバッファ層のバンドギャップエネルギーは3.4eVである。
【0052】
(実験内容)
第1段階として、準備した試料を本発明に従ったグロー放電発光分析装置にセットし、ガリウム(Ga)およびアルミニウム(Al)についてグロー放電により得られる光の波長毎の強度を計測した。そして、この計測結果から、グロー放電発光分析を行なう測定波長の候補となる波長(候補波長)を複数選択した。なお、このときの測定条件としては、グロー放電管の内部でのアルゴン(Ar)ガスの圧力を400Pa、試料に印加される電力の出力(RF出力)を40W、給電方式としてRF断続給電方式を用いた。
【0053】
さらに、第2段階として、当該試料について、グロー放電発光分析を行ない、上記候補波長の光について測定強度のデータを取得した。なお、測定条件は上述した第1段階での測定条件と同様とした。
【0054】
(結果)
第1段階としての測定の結果、Gaについては、通常のグロー放電発光分析に用いられる417nmという波長のほか、403nmおよび294nmという2つの波長が、417nmに対して検出される発光強度は1桁程度小さくなるが、他の波長に比べて比較的高い測定強度を示す波長として検出された。このため、Gaについては、候補波長として417nm、403nmおよび294nmという3つの波長を選択した。なお、これらの候補波長の光のエネルギーは、それぞれ2.97eV、3.08eV、および4.22eVである。
【0055】
また、Alについては、通常のグロー放電発光分析に用いられる396nmという波長のほか、394nm、309nmおよび308nmという3つの波長が、波長396nmに対して検出される発光強度は1桁程度小さくなるものの、他の波長に比べて比較的高い測定強度を示す波長として検出された。このため、Alについては、候補波長として上記396nm、394nm、309nmおよび308nmという4つの波長を選択した。なお、これらの候補波長の光のエネルギーは、それぞれ3.13eV、3.15eV、4.01eV、および4.03eVである。
【0056】
第2段階としての測定の結果について、Gaについての測定結果を図5および図6に示す。図5および図6は、上述した試料について、実施例1でのGaのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。図5および図6では、横軸が測定時間(単位:秒(s))を示し、縦軸が検出された出力としての発光強度(単位:出力電圧(V))を示す。また、図5および図6において、Ga417とはGaについての波長417nmの光の出力を示す。また、Nとは窒素(N)についての波長149nmの光の出力を示す。また、Alとはアルミニウム(Al)についての波長396nmの光の出力を示す。また、Ga403とはGaについての波長403nmの光の出力を示す。また、Ga294とはGaについての波長294nmの光の出力を示す。
【0057】
図5および図6から分かるように、Gaについて、波長417nmの光の測定強度にはある程度のばらつき(周期的変動)が見られるのに対して、波長403nmの光および波長294nmの光の測定強度は相対的に周期的変動が小さくなっている。特に、波長294nmの光を用いた測定強度は、図6に示すように波長417nmの光を用いた測定強度のデータに比べて周期的変動が低減されている。このため、Gaについては波長294nmの光を用いてグロー放電発光分析を行なうことで、周期的変動の影響を受けない正確なデータを得ることが可能である。
【0058】
また、第2段階としての測定の結果について、Alについての測定結果を図7〜図9に示す。図7〜図9は、上述した試料について、実施例1でのAlのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。図7〜図9では、上述した図5および図6と同様に横軸が測定時間(単位:秒(s))を示し、縦軸が検出された出力としての発光強度(単位:出力電圧(V))を示す。また、図7〜図9において、GaとはGaについての波長417nmの光の出力を示す。また、Nとは窒素(N)についての波長149nmの光の出力を示す。また、Al396とはアルミニウム(Al)についての波長396nmの光の出力を示す。また、Al394とはAlについての波長394nmの光の出力を示す。また、Al309とはAlについての波長309nmの光の出力を示す。また、Al308とはAlについての波長308nmの光の出力を示す。
【0059】
図7〜図9から分かるように、Alについて、波長396nmの光の測定強度にはある程度の周期的変動が見られるのに対して、波長309nmの光および波長308nmの光の測定強度は相対的に周期的変動が小さくなっている。特に、波長309nmの光を用いた測定強度は、図8に示すように波長396nmの光を用いた測定強度のデータに比べて周期的変動が低減され、また、その測定強度も安定している。このため、Alについては波長309nmの光を用いてグロー放電発光分析を行なうことで、周期的変動の影響を受けない正確なデータを得ることが可能である。
【0060】
[実施例2]
上記実施例1における実験に加えて、インジウム(In)についてもグロー放電発光分析における測定結果の波長依存性を確認する実験を行なった。
【0061】
(試料)
試料としては、サファイア基板上に、厚みが2.2μmのGaNからなるバッファ層、および当該バッファ層上に形成された厚み150nmのInGaN層が形成されたエピタキシャル基板を準備した。InGaN層におけるインジウムの濃度は15原子%である。また、サファイア基板としては直径が5.08cmであって平面形状が円形状の基板を用いた。なお、ここで準備したエピタキシャル基板のInGaN層のバンドギャップエネルギーは2.75eVであり、GaNからなるバッファ層のバンドギャップエネルギーは3.4eVである。
【0062】
(実験内容)
第1段階として、準備した試料を本発明に従ったグロー放電発光分析装置にセットし、インジウム(In)についてグロー放電により得られる光の波長毎の強度を計測した。そして、この計測結果から、グロー放電発光分析を行なう測定波長の候補となる波長(候補波長)を複数選択した。なお、このときの測定条件としては、グロー放電管の内部でのアルゴン(Ar)ガスの圧力を400Pa、試料に印加される電力の出力(RF出力)を40W、給電方式としてRF断続給電方式を用いた。
【0063】
さらに、第2段階として、当該試料について、グロー放電発光分析を行ない、上記候補波長の光について測定強度のデータを取得した。なお、測定条件は上述した第1段階での測定条件と同様とした。
【0064】
(結果)
第1段階としての測定の結果、Inについて、通常のグロー放電発光分析に用いられる451nmという波長のほか、325nmおよび303nmという2つの波長が、451nmに対して検出される発光強度はある程度小さくなるが、他の波長に比べて比較的高い測定強度を示す波長として検出された。このため、Inについては、候補波長として451nm、325nmおよび303nmという3つの波長を選択した。なお、これらの候補波長の光のエネルギーは、それぞれ2.75eV、3.81eV、および4.09eVである。
【0065】
第2段階としての測定の結果について、Gaについての測定結果を図10および図11に示す。図10および図11は、上述した試料について、実施例2でのInのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。図10および図11では、横軸が測定時間(単位:秒(s))を示し、縦軸が検出された出力としての発光強度(単位:出力電圧(V))を示す。また、図10および図11において、In451とはInについての波長451nmの光の出力を示す。また、Nとは窒素(N)についての波長149nmの光の出力を示す。また、Alとはアルミニウム(Al)についての波長396nmの光の出力を示す。また、In303とはInについての波長303nmの光の出力を示す。In325とはInについての波長325nmの光の出力を示す。また、GaとはGaについての波長417nmの光の出力を示す。
【0066】
図10および図11から分かるように、Inについて、波長451nmの光の測定強度には変動(測定時間の経過とともにその測定強度のレベルが大きく変動する状態)が見られるのに対して、波長303nmの光および波長325nmの光の測定強度は相対的に測定強度の時間的な変動が小さくなっている。このため、Inについては波長303nmまたは波長325nmの光を用いてグロー放電発光分析を行なうことで、従来用いられていた波長451nmの光による測定の場合より正確なデータを得ることが可能であると考えられる。
【0067】
[実施例3]
本発明の効果を確認するため、以下のような試料を準備して本発明に従ったグロー放電発光分析を行なった。以下、説明する。
【0068】
(試料)
試料として、図12に示す断面構造の発光素子を準備した。図12は、実施例3において測定対象材とした発光素子の構成を示す断面模式図である。図12を参照して、準備した試料としての発光素子を説明する。
【0069】
発光素子では、厚みが400μmでありサファイアからなる基板31上に、MOCDV法を用いて厚みが5μmのn型GaN層32が形成されている。n型GaN層32のn型不純物としてはSiを用いた。n型GaN層32上には発光層34が形成されている。発光層34は、厚みが15nmでIn0.01GaNからなるバリア層34aと、厚みが3nmでIn0.14GaNからなる井戸層34bとをMOCVD法により交互に6周期積層し、合計厚みが123nmの多量子井戸構造とした。発光層34上には、MOCVD法により厚みが10nmのGaNからなるアンドープGaN層35が形成されている。アンドープGaN層35上には、MOCVD法により、Mgを不純物としたp型Al0.09Ga0.91N層36が形成されている。p型Al0.09Ga0.91N層36の厚みは20nmとした。p型Al0.09Ga0.91N層36上には、MOCVD法により、Mgを不純物として混入したp型GaN層37が形成されている。
【0070】
(実験内容)
上述した実施例1において、まず、GaおよびAlのそれぞれについて、薄膜についての測定が比較的正確に実施できた波長(Gaについては294nm、Alについては309nm)を用いて、上述した試料に対してグロー放電発光分析を行なった。また、GaおよびAlについては、従来一般的に用いられていた波長(Gaについては417nm、Alについては396nm)を用いた測定も同時に実施した。また、上述したGaおよびAlについての分析の際に、NおよびInについては、それぞれ波長149nm、451nmの光の測定強度を示している。なお、測定装置としては実施例1と同様のグロー放電発光分析装置を用い、このときの測定条件としては、グロー放電管の内部でのアルゴン(Ar)ガスの圧力を400Pa、試料に印加される電力の出力(RF出力)を40W、給電方式としてRF断続給電方式を用いた。
【0071】
また、上述した実施例2において、Inについて、薄膜についての測定が比較的正確に実施できた波長(303nmおよび325nm)を用いて、上述した試料に対してグロー放電発光分析を行なった。また、このInについての測定の際、Ga、AlおよびNについては、従来一般的に用いられていた波長(Gaについては417nm、Alについては396nm、Nについては149nm)を用いた測定も同時に実施した。なお、このInについての測定において用いた測定装置および測定条件は、上述したGaおよびAlの測定において用いた測定装置および測定条件と同様とした。
【0072】
(結果)
測定結果を、図13〜図16を参照して説明する。図13〜図16は、上述した試料について、実施例3でのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【0073】
図13〜図16では、横軸が測定時間(単位:秒(s))を示し、縦軸が検出された出力としての発光強度(単位:出力電圧(V))を示す。図13〜図16では、Ga、窒素(N)、インジウム(In)、Alのそれぞれの元素について測定結果が示されている。また、図13には、Alについて波長309nmおよび波長396nmの光に関する測定結果が示されている。また、図14には、Gaについて波長294nmおよび417nmの光に関する測定結果が示されている。また、図15には、Inについて波長303nmおよび波長451nmの光に関する測定結果が示されている。また、図16には、Inについて波長325nmおよび451nmの光に関する測定結果が示されている。
【0074】
図13において、Al396およびAl309とは、それぞれAlについての波長396nmおよび波長309nmの光の出力を示す。また、図14において、Ga417およびGa294とは、それぞれGaについての波長417nmおよび波長294nmの光の出力を示す。また、図15において、In303およびIn451とは、それぞれInについての波長303nmおよび波長451nmの光の出力を示す。また、図16において、In325およびIn451とは、それぞれInについての波長325nmおよび波長451nmの光の出力を示す。
【0075】
図13を参照して、Alについて波長309nmの光の出力の方が、波長396nmの光の出力より大きな値を示していた。また、波長309nmの光の出力は、特に周期的変動などは示していなかった。
【0076】
また、図14を参照して、Gaについて波長417nmの光の出力では周期的変動が見られたものの、波長294nmの光の出力では周期的変動は見られず、安定した出力データを得ることができた。
【0077】
また、図15および図16を参照して、Inについて波長451nmの光の出力より、波長303nmまたは波長325nmの光の出力の方が、データの変動が少なくなっており、安定したデータを得られている。なお、図15および図16ではInの出力データが周期的な変動を示しているが、当該変動は測定対象とした素子の構造(多重量子井戸構造)を反映したものであると考えられる。
【0078】
以下、上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本発明の特徴的な構成を要約すれば、本発明に従った測定方法は、図2に示すように測定対象材である基板(試料S)を準備する工程(基板準備工程(S100))と、測定工程(S200)とを備える。測定工程(S200)では、グロー放電発光分析法を用いて、試料Sの表面からの深さ方向における成分元素の濃度分布を測定する。具体的には、試料Sに給電することによりグロー放電による発光を発生させ、当該発光を波長ごとに分光して分光した光の強度を測定することにより、試料Sの成分分析(深さ方向における成分元素の濃度分布の測定)を行なう。測定工程(S200)において、強度を測定する光のエネルギーは試料Sのバンドギャップエネルギーより大きい。また、より好ましくは、強度を測定する光の波長は、グロー放電発光分析法による事前測定を行なうことにより得られた光の強度データの時間的変化(周期的変化)が相対的に小さい波長を選択する。選択の基準としては、たとえば強度データの値と測定時間とのグラフを出力し、当該グラフから目視により判別してもよいし、強度データの数値から演算することにより所定の判別値を算出し、当該判別値と基準値とを比較して所定の基準を満たす光の波長を選択してもよい。たとえば、Gaについての測定に用いる波長294nmの光のエネルギーは4.22eVであり、Alについての測定に用いる波長309nmの光のエネルギーは4.01eVである一方、試料Sとしてのエピタキシャル基板のエピタキシャル膜であるAlGaN膜のバンドギャップエネルギーは、9%AlのAlGaN膜については3.65eVであり、18%AlのAlGaN膜については3.83eVである。また、Inについての測定に用いる波長303nmおよび波長325nmの光のエネルギーはそれぞれ4.09eVおよび3.82eVである一方、試料としてのエピタキシャル基板のエピタキシャル膜であるInGaN膜のバンドギャップエネルギーは、15%InのInGaN膜については2.75eVである。
【0079】
このようにすれば、強度を測定する光のエネルギーが試料Sのバンドギャップエネルギーより大きいため、グロー放電発光分析法において強度を測定する光のうち、試料Sに入射する光の成分の少なくとも一部が試料Sに吸収される。このため、試料Sの表面に薄いエピタキシャル膜が形成されている場合に、グロー放電に起因する光のうち、試料Sとしてのエピタキシャル基板の表面で反射するものと、当該エピタキシャル基板における最表面のエピタキシャル膜とその直下の別の膜(あるいはベース基板)との界面で反射するものとの干渉現象によって測定強度が周期的に変化することになる光の成分の割合を低減できる。この結果、測定される光の強度データが上記干渉によって周期的変動を起こすことを抑制できる。このため、測定する光の強度データの変動が1周期以上観測されないような薄いエピタキシャル膜を有する試料Sについて、当該膜に関して正確な光の強度データを得ることができる。したがって、試料Sの深さ方向における成分元素の濃度分布の正確な情報を得ることができる。
【0080】
本発明に従った測定方法は、図3および図4に示すように、測定準備工程(準備工程(S210)および予備測定工程(S230))と本測定工程(S240)とを備える。測定準備工程は、測定対象材準備工程(準備工程(S210))と、決定工程(図4の抽出工程(S231))と、予備測定工程(図4の工程(S232))と、波長決定工程(図4の工程(S233))とを含む。準備工程(S210)では、予備測定用の測定対象材であるエピタキシャル基板(試料S)を準備する。抽出工程(S231)では、試料Sに給電することによりグロー放電による発光を発生させ、当該発光を波長ごとに分光して測定可能な強度を示す光の複数の波長(候補波長)を決定する。たとえば、上述した実施例1では、Gaについて候補波長は417nm、403nmおよび294nmという3つの波長である。また、Alについて候補波長は396nm、394nm、309nmおよび308nmという4つの波長である。また、上述した実施例2では、Inについての候補波長は303nm、305nmおよび451nmという3つの波長である。予備測定工程(S232)では、試料Sに給電することによりグロー放電による発光を発生させ、当該発光を波長ごとに分光した後、決定工程で決定した複数の波長のそれぞれの光について強度を測定する。波長決定工程(S233)では、予備測定工程(S232)において測定された複数の波長の光のそれぞれの強度データのうち、相対的に時間的な変化(周期的変動)が少ないデータを示す光の波長を、本測定工程(S240)において測定に用いる測定波長として決定する。たとえば、上述した実施例におけるGaについての294nm、Alについての309nm、Inについての303nmまたは325nmという波長がそれぞれ測定に用いる波長(測定波長)に相当する。また、波長決定工程(S233)において、「相対的に時間的な変化が少ないデータを示す光の波長」とは、複数の候補波長の光の測定データのうち、時間的な出力の変動の相対的に少ないものを意味する。そして、「相対的に時間的な変化が少ないデータを示す光の波長」の判別方法としては、たとえば候補波長の光の測定データを時系列的に表示したグラフを目視で確認して判別してもよいが、測定データについて数値的演算を行ない、所定の判別値を算出して当該算出値と予め設定しておいた基準値とを対比することにより、判別を行なってもよい。たとえば、発光強度のデータのある期間(たとえば5秒)における平均値に対して、当該期間中でのデータの変動量(最大値−最小値の値)の割合がたとえば5%以下となっていること、といった基準を用いることができる。
【0081】
また、このように決定された波長の光では、特に薄膜を有する試料Sに関して、グロー放電発光分析を行なうときに試料Sから反射してから観測される光における当該薄膜表面で反射するものと、薄膜と薄膜下の別の膜やベース基板との界面で反射するものとの干渉現象によって測定強度が周期的に変化することになる光の成分の割合が低減される。そして、結果的に観測波長の光のエネルギーは、試料Sを構成する材料のバンドギャップエネルギーより大きくなっている。
【0082】
本測定工程(S240)は、本測定工程用に準備された測定対象材(試料S)に給電することによりグロー放電による発光を発生させ、当該発光を波長ごとに分光して当該分光した光の強度を測定することにより、試料Sの成分分析を行なうグロー放電発光分析法によって、強度を測定する光の波長として波長決定工程(S233)において決定された測定波長(たとえばGaについて294nm、Alについて309nm、Inについて303nmまたは325nm)を用いることにより、試料Sの表面からの深さ方向における成分元素の濃度分布を測定する測定工程を含む。
【0083】
このようにすれば、波長決定工程(S233)において測定に用いる測定波長を決定した後、当該測定波長を用いて本測定工程(S240)での測定対象材の測定を実施するので、構成材料の種類などが正確に分かっていないような試料Sについても、測定データの変動、たとえば試料Sからの反射光の存在に起因する光の干渉に基づく周期的変動を抑制できる。このため、光の正確な強度データを得ることができるので、薄膜を有する試料Sの深さ方向における成分元素の濃度分布を正確に測定できる。
【0084】
本発明に従った測定装置(グロー放電発光分析装置1)は、測定対象材(試料S)の表面の少なくとも一部が内部に露出する反応室(グロー放電管2)と、ガス供給部材(ガス供給部6)と、励起部材(電源部3)と、計測部材(分光器7)と、測定波長設定部材(測定波長設定部20)と、出力部材(分析制御部8)とを備える。ガス供給部6は、グロー放電管2の内部に測定用ガスを供給する。電源部3は、グロー放電管2の内部で測定用ガスをプラズマ化する。分光器7は、プラズマ化した測定用ガスの原子が試料Sの表面に入射することにより、試料Sから放出された原子が励起された後放出する光について、複数の波長ごとに強度を測定する。測定波長設定部20は、分光器7において強度が測定される光の波長を設定する。分析制御部8は、分光器7により測定される複数の波長ごとの光の強度データについて、特定の波長の光について当該強度データを時系列データとして出力する。分析制御部8から時系列データとして強度データが出力される光のエネルギーは、試料Sのバンドギャップエネルギーより大きい。
【0085】
このようにすれば、当該測定装置において上述した図2〜図4で説明したような本発明に従ったグロー放電発光分析法を容易に実施することができる。すなわち、時系列データとして強度データが出力される光のエネルギーが試料Sのバンドギャップエネルギーより大きいので、当該光のうち試料Sに入射した成分の少なくとも一部が試料Sに吸収される。このため、試料Sの表面に薄い膜が形成されている場合に、グロー放電に起因する光のうち、試料Sとしてのエピタキシャル基板の表面で反射するものと、当該エピタキシャル基板における最表面のエピタキシャル膜とその直下の別の膜(あるいはベース基板)との界面で反射するものとの干渉現象によって測定強度が周期的に変化することになる光の成分の割合を低減できる。したがって、測定される光の強度データが当該干渉によって変動する程度を小さくできる。このため、測定する光の強度データの変動が1周期以上観測されないような薄い膜を有する試料Sについて、正確な光の強度データを得ることができる。この結果、試料Sの深さ方向における成分元素の濃度分布の正確な情報を得ることができる。また、分光測定のタイミングとスパッタリングのタイミングとを最適化してシンクロナイズさせることにより、さらに定量の際のリニアリティを向上させることができる。
【0086】
本発明に従ったエピタキシャル基板は、上記グロー放電発光分析法を用いて、表面からの深さ方向における成分元素の濃度分布が測定されている。このようにすれば、成分元素の深さ方向における分布を正確に特定されたエピタキシャル基板を得ることができる。なお、当該エピタキシャル基板では、その表面の一部のみにおいて上述した測定方法(グロー放電発光分析法)を実施することにより、当該エピタキシャル基板の深さ方向の濃度分布を保障することができる。たとえば、上述した測定方法を実施する場所を、基板の端部などデバイスを形成しない部分などに設定すれば、エピタキシャル基板でのデバイスの採取個数を減らすことなく、確実に品質が保証されたエピタキシャル基板を得ることができる。
【0087】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に従った測定装置の構成を示す構成模式図である。
【図2】図1の測定装置を用いた測定方法を説明するフローチャートである。
【図3】図2における測定工程の内容を説明するフローチャートである。
【図4】図3の予備測定工程の内容を説明するフローチャートである。
【図5】実施例1でのGaのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【図6】実施例1でのGaのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【図7】実施例1でのAlのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【図8】実施例1でのAlのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【図9】実施例1でのAlのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【図10】実施例2でのInのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【図11】実施例2でのInのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【図12】実施例3において測定対象材とした発光素子の構成を示す断面模式図である。
【図13】実施例3でのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【図14】実施例3でのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【図15】実施例3でのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【図16】実施例3でのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0089】
1 グロー放電発光分析装置、2 グロー放電管、3 電源部、4 ジェネレータ、5 マッチングボックス、6 ガス供給部、7 分光器、7a,7c スリット、7b 回折格子、7d 光電子増倍管、8 分析制御部、8a 内部バス、8b CPU 8c ハードディスク、8d メモリ、8e モニタ装置、9 試料押圧部材、16 第1基板、17 第2基板、20 測定波長設定部、31 基板、32 n型GaN層、34 発光層、34a バリア層、34b 井戸層、35 アンドープGaN層、36 p型Al0.09Ga0.91N層、37 p型GaN層。
【技術分野】
【0001】
この発明は、測定方法、測定装置およびエピタキシャル基板に関し、より特定的には、グロー放電発光分析法を用いた測定方法、測定装置およびエピタキシャル基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象材に電力を供給することによりグロー放電による発光を発生させ、その発光を波長ごとに分光して当該分光した光の強度を測定することにより、測定対象材の成分分析を行なうグロー放電発光分析法および当該グロー放電発光分析方法を実施する測定装置が知られている。そして、測定対象材として基板などのベース材上に薄膜が形成されたものを用いる場合、測定時間に対する所定の波長の光の測定強度に周期的な変化(波状の波形)が見られることが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
このような光の測定強度の周期的な変化は、グロー放電に起因する光のうち、薄膜表面で反射するものと、ベース材表面で反射するものとの干渉現象によって発生する。そして、この光の測定強度を正確に測定するためには、このような周期的な変化の影響を測定結果から除去する必要がある。上述した測定強度の周期的な変化の影響を測定結果から除去する方法として、上述した測定強度の周期的な変化の周期などを利用した演算を行なうことが提案されている。たとえば、特許文献1に開示されたグロー放電発光分析方法では、以下のような測定方法を用いている。
【0004】
すなわち、特許文献1では、基板上に薄膜が形成された測定対象材に関し、周期的に変化する測定強度のデータから平均周期を算出する。そして、測定時刻を中心とする平均周期内における測定強度の平均値を算出し、当該測定時刻における補正後の(周期的な変化の影響を除去した)測定強度としている。
【特許文献1】特願2000−28530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の測定方法では、以下のような問題があった。すなわち、測定対象材の薄膜の厚みが、エピタキシャル基板のエピタキシャル膜のようにナノメートルオーダー程度と極めて薄くなる場合、測定強度が上述した周期的な変化を示さなくなる。この結果、測定対象材の薄膜の厚みが薄くなると、上述のように測定強度の周期的変化の周期といったデータに基づいて測定強度を補正することができなくなっていた。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、この発明の目的は、従来のグロー放電発光分析方法では正確に測定強度を測定することが困難な薄膜を有する測定対象材についての測定を行なうことが可能な測定方法、測定装置および当該測定方法によって測定された薄膜を備えるエピタキシャル基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従った測定方法は、測定対象材を準備する工程と、測定工程とを備える。測定工程では、グロー放電発光分析法を用いて、測定対象材の表面からの深さ方向における成分元素の濃度分布を測定する。グロー放電発光分析法とは、測定対象材に給電することによりグロー放電による発光を発生させ、当該発光を波長ごとに分光して分光した光の強度を測定することにより、測定対象材の成分分析を行なう分析方法である。測定工程において、強度を測定する光のエネルギーは測定対象材のバンドギャップエネルギーより大きい。
【0008】
このようにすれば、強度を測定する光のエネルギーが測定対象材のバンドギャップエネルギーより大きいため、グロー放電発光分析法において強度を測定する光のうち、測定対象材に入射する光の成分の少なくとも一部が測定対象材に吸収される。このため、測定対象材の表面に薄い膜が形成されている場合に、グロー放電に起因する光のうち、当該薄い膜表面で反射するものと、ベース材表面で反射するものとの干渉現象によって測定強度が周期的に変化することになる光の成分の割合を低減できる。この結果、測定される光の強度データが変動する程度を小さくすることができる。このため、測定する光の強度データの変動が1周期以上観測されないような薄い膜を有する測定対象材について、当該膜に関して正確な光の強度データを得ることができる。したがって、測定対象材の深さ方向における成分元素の濃度分布の正確な情報を得ることができる。
【0009】
本発明に従った測定方法は、測定準備工程と本測定工程とを備える。測定準備工程は、測定対象材準備工程と、決定工程と、予備測定工程と、波長決定工程とを含む。測定対象材準備工程では、予備測定用の測定対象材を準備する。決定工程では、測定対象材に給電することによりグロー放電による発光を発生させ、当該発光を波長ごとに分光して測定可能な強度を示す光の複数の波長を決定する。予備測定工程では、測定対象材に給電することによりグロー放電による発光を発生させ、当該発光を波長ごとに分光した後、決定工程で決定した複数の波長のそれぞれの光について強度を測定する。波長決定工程では、予備測定工程において測定された複数の波長の光のそれぞれの強度データのうち、相対的に時間的な変化が少ないデータを示す光の波長を、本測定工程において測定に用いる測定波長として決定する。
【0010】
本測定工程は、本測定工程用に準備された測定対象材に給電することによりグロー放電による発光を発生させ、当該発光を波長ごとに分光して当該分光した光の強度を測定することにより、測定対象材の成分分析を行なうグロー放電発光分析法によって、強度を測定する光の波長として波長決定工程において決定された測定波長を用いることにより、測定対象材の表面からの深さ方向における成分元素の濃度分布を測定する測定工程を含む。
【0011】
このようにすれば、測定準備工程において測定に用いる測定波長を決定した後、当該測定波長を用いて本測定工程での測定対象材の測定を実施するので、構成材料の種類などが正確に分かっていないような測定対象材についても、測定データの時間的な変動(たとえば測定対象材からの反射光の存在に起因する光の干渉に基づく周期的変動)を抑制できる。このため、光の正確な強度データを得ることができるので、測定対象材の深さ方向における成分元素の濃度分布を正確に測定できる。
【0012】
本発明に従った測定装置は、測定対象材の表面の少なくとも一部が内部に露出する反応室と、ガス供給部材と、励起部材と、計測部材と、測定波長設定部材と、出力部材とを備える。ガス供給部材は、反応室の内部に測定用ガスを供給する。励起部材は、反応室の内部で測定用ガスをプラズマ化する。計測部材は、プラズマ化した測定用ガスの原子が測定対象材の表面に入射することにより、測定対象材から放出された原子が励起された後放出する光について、複数の波長ごとに強度を測定する。測定波長設定部材は、計測部材において強度が測定される光の波長を設定する。出力部材は、計測部材により測定される複数の波長ごとの光の強度データについて、特定の波長の光について当該強度データを時系列データとして出力する。出力部材から時系列データとして強度データが出力される光のエネルギーは、測定対象材のバンドギャップエネルギーより大きい。
【0013】
このようにすれば、当該測定装置において上述した本発明に従った測定方法を容易に実施することができる。すなわち、時系列データとして強度データが出力される光のエネルギーが測定対象材のバンドギャップエネルギーより大きいので、当該光のうち測定対象材に入射した成分の少なくとも一部が測定対象材に吸収される。このため、測定対象材の表面に薄い膜が形成されている場合に、グロー放電に起因する光のうち、薄膜表面で反射するものと、ベース材表面で反射するものとの干渉現象によって測定強度が周期的に変化することになる光の成分の割合を低減できる。この結果、測定される光の強度データが変動する程度を小さくできる。このため、測定する光の強度データの変動が1周期以上観測されないような薄い膜を有する測定対象材について、正確な光の強度データを得ることができる。したがって、測定対象材の深さ方向における成分元素の濃度分布の正確な情報を得ることができる。
【0014】
本発明に従ったエピタキシャル基板は、上記測定方法を用いて、表面からの深さ方向における成分元素の濃度分布が測定されている。このようにすれば、成分元素の深さ方向における分布を正確に特定されたエピタキシャル基板を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来の方法では正確なデータを得ることができなかった薄い膜を有する測定対象材について、グロー放電発光分光測定法を用いて深さ方向での成分元素の濃度分布のデータを正確に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0017】
図1は、本発明に従った測定装置の構成を示す構成模式図である。図2は、図1の測定装置を用いた測定方法を説明するフローチャートである。図3は、図2における測定工程の内容を説明するフローチャートである。図4は、図3の予備測定工程の内容を説明するフローチャートである。図1〜図4を参照して、本発明に従った測定装置および測定方法を説明する。
【0018】
図1を参照して、本発明に従った測定装置としてのグロー放電発光分析装置1は、グロー放電管2と、電源部3と、ガス供給部6と、分光器7と、分析制御部8と、測定波長設定部20と、図示しない排気部材とを備える。グロー放電管2は、測定対象材である試料Sに対しグロー放電を発生させる。電源部3は、グロー放電管2に高周波電力を供給する。ガス供給部6は、測定に必要なガスをグロー放電管2に供給する。排気部材としては、ガス供給部6からのガス供給前に、グロー放電管2の内部の空気を吸引、排出することにより、グロー放電管2の内部を所定の圧力状態(真空)にする真空引き装置を用いることができる。排気部材の構成としては、任意の構成を採用することができる。
【0019】
分光器7は、グロー放電管2から生じる光Lを分光すると共に、各分光の強度を測定する。分析制御部8は、測定された各分光の強度に基づき各測定対象材の成分分析に係る演算、並びに電源部3とガス供給部6とに対する制御等を行なう。なお、電源部3は交流電源AC(たとえば出力電圧220Vの交流電源)に接続されて高周波電力を生成するジェネレータ4と、可変コンデンサを含むマッチングボックス5とを備える。ここでジェネレータ4は電源装置に相当する。
【0020】
グロー放電管2は、任意の構成を採用することができる。たとえば、グロー放電管2として、以下のような構成を採用してもよい。すなわち、グロー放電管2として、内部に貫通孔を形成したランプボディに、当該貫通孔の一方端部側に絶縁材を介在させて陽極およびセラミックスを押圧ブロックにより取り付けた構成にしてもよい。当該貫通孔は試料の正面に配置され、ガス供給部6からの不活性ガスが導かれる。また、当該貫通孔の他方端部(試料に面する側の一方端部と反対側の端部)は分光器7に繋がっていてもよい。貫通孔の他方端部側には集光レンズを配置してもよい。また上記セラミックスには試料Sが試料押圧部材により押圧された状態で取り付けられる。試料押圧部材は電圧印加電極を兼ねてもよい。試料押圧部材は、電源部3と電源線Dにより接続され、電源部3から供給される高周波電力を試料Sに印加して試料Sへの給電を行なってもよい。
【0021】
電源部3を構成するジェネレータ4は、第1接続コードS1により分析制御部8と接続され、任意の構成を採用することができる。たとえば、ジェネレータ4の構成として、高周波電力生成部、制御部および電力計測部を備える構成を採用してもよい。ジェネレータ4の高周波電力生成部は、交流電源ACと接続されて電圧が正(+)および負(−)に変化する交流の高周波電力を生成する。また、高周波電力生成部は制御部と接続され、制御部の制御により高周波電力の出力形態(たとえば分析開始から分析終了まで連続して高周波電力を供給する連続給電モードや電力供給および電力供給停止を交互にパルス的に切り替えることにより断続的に高周波電力が給電される断続給電モードなどの出力形態)および電力値等を調整する。高周波電力生成部はたとえば13.56MHzの高周波電力を生成する。
【0022】
ジェネレータ4の制御部は給電切替手段としても機能し、上述した連続給電モードと断続給電モードなどの出力形態の切替を分析制御部8の指示に基づき行なう。さらに、制御部は断続給電モードでは回数設定手段としても機能する。この場合、第1接続コードS1を通じて分析制御部8から出力されてきた信号により、制御部は断続給電モードでの単位時間(1秒間)当たりの給電回数である給電周波数を約30Hz〜3000Hzの範囲で調節可能としてもよい。また、給電周波数は、たとえば好ましくは50Hz以上200Hz以下、より好ましくは100Hz程度に調節してもよい。
【0023】
さらに、また、制御部は、分析制御部8から出力された信号に基づいて、各出力形態の条件を設定する設定手段としての機能を有していてもよい。たとえば、制御部は断続給電モードに関して、断続給電モード中の1回分の給電時間を設定する時間設定手段としての機能を有していてもよい。たとえば、断続給電モードで交互に繰返される給電と電力供給停止とについて、給電時間T1と、給電および電力供給停止の1サイクルに要するサイクル時間T2とを考えた場合に、ジェネレータ4の制御部は給電時間T1とサイクル時間T2との比(給電占有率)を分析制御部8からの信号に基づいて設定してもよい。なお、給電占有率(T1/T2)は、たとえば10%程度に設定することができる。
【0024】
なお、上述した断続給電モードでは給電周波数の調節により1秒間当たり30〜3000回、電力供給と電力供給停止が交互に繰返されるが、この繰返しに従来のマッチングボックス5の可変コンデンサの駆動が機構的に追従できない場合がある。このため、ジェネレータ4の制御部がスパッタリングによる試料Sのインピーダンス値の変動に対応する調整を行なうようにすることが好ましい。このようにジェネレータ4の制御部が調整を行なうことで、断続給電モードであってもスパッタリングによる試料Sのインピーダンス値の変動に対応して適切な給電を行なえる。なお、制御部が試料Sのインピーダンス値の変動に対応した調整を行なうのは断続給電モードの場合であり、連続給電モードでは後述するように電源部3のマッチングボックス5が調整を行なう。
【0025】
ジェネレータ4の電力計測部は、2本の内部接続線により制御部および高周波電力生成部と接続されていてもよい。電力計測部は、高周波電力生成部で生成されて図1に示す試料押圧部材9へ向かう高周波電力の進行波の電力値である出力値Pfを検出する第1検出手段、および、試料Sから反射して戻ってくる反射波の電力値である反射値Prを検出する第2検出手段として機能している。電力計測部は、断続給電モードにおける制御部での上述した試料Sのインピーダンス値の変動に対応した調整のため、検出した出力値Pfおよび反射値Prを制御部へ伝送している。
【0026】
また、第2接続コードS2により分析制御部8と接続されている電源部3のマッチングボックス5の構成としては、任意の構成を採用することができる。たとえば、マッチングボックス5は、上述した連続給電モードにおいて、ジェネレータ4で生成された高周波電力の出力形態を調整する可変コンデンサ、当該可変コンデンサの電気容量を調整する調整部材としてのモータ、およびモータの駆動等の制御を行なうコンデンサ制御部を備えていてもよい。
【0027】
可変コンデンサはモータの駆動に応じて自身の電気容量を変更できるようになっていてもよい。マッチングボックス5のコンデンサ制御部は、たとえば第2接続コードS2により分析制御部8と接続されていてもよい。後述するように分析制御部8からマッチングボックス5へ伝送されてくる断続給電モードに設定されているかを伝える通知信号に基づいて、コンデンサ制御部はモータの駆動を制御してもよい。具体的には、コンデンサ制御部が断続給電モードの通知信号を受け付けた場合、当該コンデンサ制御部は可変コンデンサの電気容量が一定に固定されるようにモータを一定の状態に維持する制御を行なう。この場合、断続給電モードではマッチングボックス5で高周波電力のモジュールおよびフェーズは調整されない。
【0028】
一方、マッチングボックス5が(上述のようにたとえばコンデンサ制御部が)断続給電モードの通知信号を分析制御部8から受け付けていない場合、即ち、連続給電モードが設定されているときには、マッチングボックス5では試料Sからの反射値Prが最小となるようにモータの駆動が制御されることにより可変コンデンサの電気容量が変更される。なお、反射値Prが最小であれば、コンデンサ制御部は可変コンデンサの電気容量を変更する制御は行なわない。このように、連続給電モードでは、試料のインピーダンス値の変動はマッチングボックス5で対処される。
【0029】
また、図1に示すガス供給部6は、アルゴンガスのような不活性ガス又は不活性ガスの混合ガス等を充填したボンベ(図示せず)、および、第3接続線S3と接続された電磁弁(図示せず)を備える。電磁弁は、分析制御部8の第2基板17の制御により開閉されることにより、上記ボンベからの不活性ガスの供給を制御する。
【0030】
グロー放電管2からの光Lを測定する分光器7はポリクロメータによるもので、第1スリット7a、回折格子7b、第2スリット7c、および複数の光電子増倍管(フォトマルチプライヤ)7dを備えている。第1スリット7aは、図1に示すようにグロー放電管2から入射する光Lを透過させる。回折格子7bは、第1スリット7aを透過した光Lを分光する。第2スリット7cは、各測定対象成分に相当する波長に分光された光を透過させる。複数の光電子増倍管7dは、第2スリット7cを透過したそれぞれの光の強度を検出する。なお、各光電子増倍管7dは、複数のコードを束ねた接続線束S4により分析制御部8に接続されている。分析制御部8は、光電子増倍管7dが検出した光の強度を、測定値データとして接続線束S4を介して取得する。
【0031】
図1に示す測定波長設定部20は、後述する成分分析を行なうための特定の波長を設定するもので、たとえば、回折格子7bの角度を制御することにより所定の測定波長の光がスリット7cを通過し、光電子増倍管7dにより測定されるようにするためのものであり、任意の構成を採用することができる。たとえば、測定波長設定部20は、回折格子7bの角度を変更するための駆動部材の一例であるモータと、当該モータの動作を制御するための制御部とを備えていてもよい。当該制御部は、第6接続コードS6を介して分析制御部8と接続されている。制御部は、分析制御部8からの制御信号に基づいて、モータの動作を制御することにより、回折格子7bの角度を調整する。モータとしては、たとえばステッピングモータなどを用いてもよい。この場合、回折格子7bの回転軸にステッピングモータの駆動軸を接続し、回折格子7bの角度を当該ステッピングモータの回転により直接的に制御することができる。
【0032】
なお、分光器7をモノクロメータによって構成してもよい。また、回折格子を回転させずに各波長のスペクトル分布をフォトダイオードアレイ等の検出器を用いて、同時測光できるポリクロメータを用いることもできる。この場合、測定波長設定部は、たとえば角度が固定された回折格子と、当該回折格子と検出器との間に位置するスリット7cなどの光制限部材とから構成される。測定波長設定部20はさらにたとえば光制限部材の位置を移動可能な構成を採用することができる。具体的には、光制限部材の配置を機械的に移動させるためのシリンダやモータなどの動作を測定波長設定部20にて制御するようにしてもよい。また、分光器7としてポリクロメータを用いる場合、同時測光した各波長の光の一部の必要な波長の光についての測定データを電気的に抽出する、といった制御を後述の出力部材で行なってもよい。
【0033】
図1に示す分析制御部8としては、たとえばコンピュータを用いることができる。出力部材としての分析制御部8は、第1基板16、第2基板17、CPU8b、記憶装置としてのハードディスク8c、一次記憶装置としてのメモリ8dおよびこれらの機器を接続するための内部バス8aを備える。第1基板16には、光電子増倍管7dから延在する接続線束S4が接続される。第2基板17には、ジェネレータ4から延在する第1接続コードS1、マッチングボックス5から延在する第2接続コードS2、ガス供給部6から延在する第3接続コードS3および測定波長設定部20から延在する第6接続コードS6が接続される。また、各基板16、17は、上述した内部バス8aを介してCPU8b、ハードディスク8c、およびメモリ8dに接続される。なお、内部バス8aには外部接続線S5を介してモニタ装置8eも接続されている。さらに、第2基板17には図示していない排気部材としての真空引き装置も接続されている。
【0034】
第2基板17は、CPU8bの制御により測定波長を示す信号がCPU8bから伝送されると、測定波長を示す指示信号を測定波長設定部20へ出力する。指示信号としては、測定波長の値を示す信号であってもよいし、当該測定波長の値に対応した回折格子7bの角度を示す信号であってもよい。指示信号として測定波長の値を示す信号が第2基板17から測定波長設定部20に送出される場合、測定波長設定部20において当該信号に基づき回折格子7bの角度を決定し、当該決定された角度の値に基づいてモータなどの駆動部材が制御されてもよい。また、指示信号として回折格子7bの角度を示す信号が第2基板17から測定波長設定部20に送出される場合、測定波長設定部20において受け取った信号により示される角度の値に基づいて、モータなどの駆動部材が制御されてもよい。
【0035】
また、第2基板17は、CPU8bの制御により設定されたモードを示す信号がCPU8bから伝送されると、モード切替の指示信号をジェネレータ4へ出力する。また、第2基板17は、各モードにおける制御パラメタを示す指示信号を、電源部3に向けて送出する。制御パラメタとしては、たとえば断続給電モードにおける給電周波数および給電占有率、高周波電力のピーク電力値、変動するインピーダンス値に対応した調整に用いられる基準電力値(基準値)等が挙げられる。なお、第2基板からは、ガス供給部6および排気部材に対する制御に係る指示信号も送出される。ガス供給部6および排気部材に対する制御に係る指示信号は上述した給電モードに関係なく同様となっていてもよい。
【0036】
本発明の出力部材を構成するCPU8bは、ハードディスク8cに記憶された制御用のプログラムに基づいて各種処理を行なう。例えば、ユーザによる測定波長の設定を受け付けて、設定された測定波長に対応する信号を第2基板17に伝送する処理を行なう。また、CPU8bは、ハードディスク8cに記憶された測定値分析用のプログラムをメモリ8dにロードし、当該プログラムに従って演算処理を行なう。この演算処理により、分光器7の光電子増倍管7dから取得した測定値に基づき試料Sの成分の濃度等に係る分析が行なわれる。なお、測定値分析用のプログラムには、各光電子増倍管7dが測定した光の強度に基づき試料Sの成分分析をCPU8bに行なわせる処理が規定されており、また、分析結果を種々のグラフの形態でモニタ装置8e等に出力する処理も規定されている。つまり、測定される複数の波長ごとの光の強度データについて、特定の波長の光について当該強度データを時系列データとしてモニタ装置8eなどの出力装置に出力する処理もCPU8bにより行なわれる。また、CPU8bはユーザによる基準時間の設定を受け付けて、基準時間と分析時間とを比較しながら測定する、測定時間設定機能(タイマ機能)のような各種機能を備えていてもよい。
【0037】
ハードディスク8cは記憶部として、上述した各種プログラム、さらにユーザにより設定された基準電力値(基準値)のような各種パラメタ、および測定値および分析値に係る各種データを記憶する。ハードディスク8cに記憶される制御用のプログラムは、起動するとモニタ装置8eに各種入力あるいは出力用画面を表示してもよい。分析制御部8には、図示しないキーボードなどの入力装置が接続されている。分析制御部8には、上述したモニタ装置8eにおける表示などを利用しながら、ユーザが測定周波数の設定、モード選択、給電周波数の設定、給電占有率の設定などを行なった結果として、信号が入力装置から入力される。
【0038】
次に、上述した構成のグロー放電発光分析装置1による分析方法を、図2〜図4を参照して説明する。
【0039】
図2に示すように、まず測定対象材である基板を準備する基板準備工程(S100)を実施する。基板としては、たとえば表面にエピタキシャル膜が形成されたエピタキシャル基板を準備する。
【0040】
次に、測定工程(S200)を実施する。測定工程(S200)では、図3に示すようにまず準備工程(S210)を実施する。具体的には、基板準備工程(S100)で準備された試料Sとしての基板を、グロー放電発光分析装置1のグロー放電管2にセットする。その後、グロー放電管2の内部の真空引きを排気部材としての真空引き装置で行なう。
【0041】
次に、測定波長が決定済であるか否かを判断する判断工程(S220)を実施する。この判断工程(S220)では、試料Sについて光電子増倍管7dで測定する光の波長がすでに決定されているかどうかを判断する。判断工程(S220)において、測定波長がすでに決定されている場合(判断工程(S220)でYESと判断された場合)には、後述するように当該試料Sに対して本測定工程(S240)を実施する。本測定工程(S240)の内容は後述する。
【0042】
一方、判断工程(S220)において測定波長が決定されていないと判断された場合(判断工程(S220)でNOと判断された場合)には、当該試料Sについて測定波長を決定するための予備測定工程(S230)が実施される。予備測定工程(S230)では、図4に示すように、まず測定可能な波長の抽出工程(S231)を実施する。具体的には、ガス供給部6より測定に必要な不活性ガス(アルゴンガス)をグロー放電管2の内部に供給する。その状態で、試料Sに給電することによりグロー放電による発光を発生させ、当該発光を波長ごとに分光して波長ごとの光の強度データを得る。そして、当該強度データに基づいて、分析に用いることが可能な発光強度を示す波長(測定波長の候補となり得る波長)を複数抽出する。この測定波長の候補となり得る波長は、測定対象の元素ごとに複数抽出することが好ましい。ここで、分析に用いることが可能な波長について、一義的に規定することは難しいが、分光強度や分光の干渉の有無や程度などをパラメータとして決定し得る。
【0043】
次に、抽出された波長の光を用いて、試料Sについて分析(グロー放電発光分析法)を、所定時間予備的に行なう工程(S232)を実施する。この工程(S232)では、抽出工程(S231)で抽出した複数の波長について、それぞれ所定時間だけグロー放電発光分析法による分析を行なう。つまり、先ずグロー放電管2に供給したアルゴンガスから生じたアルゴンイオンが、試料Sの表面に衝突することでスパッタリングが起こる。その結果、試料Sの表面からイオンを含む粒子が飛び出す。次に、この粒子がプラズマ中で励起されてから基底状態に戻る際に元素固有の発光が生じる。さらに、図1に示すように、この発光による光Lを分光器7で分光する。この分光した各光の強度を、光電子増倍管7dにより測定する。その測定値を分析制御部8が光電子増倍管7dから(分光器7から)取得する。
【0044】
この結果、たとえば数msec間隔で検出された複数のデータが連なった、各波長の光について発光強度の時系列データ(実際には試料Sの表面から深さ方向における成分濃度分布に対応するデータ)が得られる。この工程(S232)において、各波長の光についての発光強度のデータを取得する上記所定時間としては、試料Sの構成などに応じて、適宜設定することができる。
【0045】
次に、測定結果に基づき、本測定に用いる光の波長を決定する工程(S233)を実施する。この工程(S233)では、上述した工程(S232)で得られた各波長の光の発光強度のデータを比較し、時間的な変動の相対的に少ないものを測定波長として決定する。判断基準としては、たとえば発光強度の時間的な変動(周期的な変動)が相対的に少ない波長を目視で判断してもよいが、所定の判定値を算出してその判定値を用いて判断してもよい。たとえば、発光強度のデータのある期間(たとえば5秒)における平均値に対して、当該期間中でのデータの変動量(最大値−最小値の値)の割合がたとえば5%以下となっていること、といった基準を用いることができる。このようにして、測定波長を決定することができる。なお、測定波長は測定対象の元素ごとに決定する。なお、この工程(S233)は、上述のような数値基準を利用して分析制御部で自動的に行なうようにしてもよい。
【0046】
上述のように図3で示した予備測定工程(S230)が実施された後、あるいは工程(S220)でYESと判断された後、本測定工程(S240)が実施される。当該本測定工程(S240)では、上記予備測定工程(S230)で決定された測定波長を用いて、試料Sについてグロー放電発光分析法を用いた成分分析を行なう。なお、先に予備測定工程(S230)が実施されている場合には、測定対象材である試料Sとして、予備測定工程(S230)で測定した試料と同じ種類の試料を新たにグロー放電発光分析装置1に設置した上で、測定を行なう。この本測定工程(S240)での測定の条件は、基本的に予備測定工程(S230)での図4に示した工程(S232)での条件と同様である。
【0047】
すなわち、この本測定工程(S240)では、先ずグロー放電管2に供給したアルゴンガスから生じたアルゴンイオンが、試料Sの表面に衝突することでスパッタリングが起こる。その結果、試料Sの表面からイオンを含む粒子が飛び出す。次に、この粒子がプラズマ中で励起されてから基底状態に戻る際に元素固有の発光が生じる。さらに、図1に示すように、この発光による光Lを分光器7で分光する。この分光した各光の強度を、光電子増倍管7dにより測定する。その測定値を分析制御部8が光電子増倍管7dから(つまり分光器7から)取得する。
【0048】
得られた測定値の時系列での変化は、試料Sの表面から上述のように粒子が飛び出すことによって、当該試料の表面層が徐々に除去されていくため、試料Sの表面からの深さ方向における成分元素の濃度分布の変化を示すことになる。つまり、上述のような測定方法によって、試料Sの深さ方向元素分析(定性分析:取得した測定値に基づく、試料Sの各成分が表面からどのような深さで分布しているかの分析)を行なうことができる。また、金属材料等に対する定量分析では、分析制御部8が取得した測定値に基づき試料Sに含まれる元素の濃度を分析する。このように分析した結果を分析制御部8は外部に出力する。たとえば、分析制御部8は、モニタ装置8eで分析結果の表示等を行なう。
【0049】
このようにすれば、時間的な変動(周期的な変動)の無い(あるいは極めて小さい)波長の光について発光強度を測定することになるので、試料Sが極めて薄い薄膜(従来の測定方法では周期的な発光強度の変動が起きるものの、測定結果としては変動の1周期分以下のデータしか測定できないような薄い薄膜)を有するような場合に、発光強度を正確に測定することができる。
【0050】
[実施例1]
本発明の効果を確認するため、以下のような実験を行なった。具体的には、まず、グロー放電発光分析における測定結果の波長依存性を確認する実験を行なった。
【0051】
(試料)
試料としては、サファイア基板上に、厚みが2.2μmのGaNからなるバッファ層、および当該バッファ層上に形成された厚み150nmのAlGaN層が形成されたエピタキシャル基板を準備した。AlGaN層におけるアルミニウムの濃度は9原子%である。また、サファイア基板としては直径が5.08cmであって平面形状が円形状の基板を用いた。なお、ここで準備したエピタキシャル基板のAlGaN層のバンドギャップエネルギーは3.65eVであり、GaNからなるバッファ層のバンドギャップエネルギーは3.4eVである。
【0052】
(実験内容)
第1段階として、準備した試料を本発明に従ったグロー放電発光分析装置にセットし、ガリウム(Ga)およびアルミニウム(Al)についてグロー放電により得られる光の波長毎の強度を計測した。そして、この計測結果から、グロー放電発光分析を行なう測定波長の候補となる波長(候補波長)を複数選択した。なお、このときの測定条件としては、グロー放電管の内部でのアルゴン(Ar)ガスの圧力を400Pa、試料に印加される電力の出力(RF出力)を40W、給電方式としてRF断続給電方式を用いた。
【0053】
さらに、第2段階として、当該試料について、グロー放電発光分析を行ない、上記候補波長の光について測定強度のデータを取得した。なお、測定条件は上述した第1段階での測定条件と同様とした。
【0054】
(結果)
第1段階としての測定の結果、Gaについては、通常のグロー放電発光分析に用いられる417nmという波長のほか、403nmおよび294nmという2つの波長が、417nmに対して検出される発光強度は1桁程度小さくなるが、他の波長に比べて比較的高い測定強度を示す波長として検出された。このため、Gaについては、候補波長として417nm、403nmおよび294nmという3つの波長を選択した。なお、これらの候補波長の光のエネルギーは、それぞれ2.97eV、3.08eV、および4.22eVである。
【0055】
また、Alについては、通常のグロー放電発光分析に用いられる396nmという波長のほか、394nm、309nmおよび308nmという3つの波長が、波長396nmに対して検出される発光強度は1桁程度小さくなるものの、他の波長に比べて比較的高い測定強度を示す波長として検出された。このため、Alについては、候補波長として上記396nm、394nm、309nmおよび308nmという4つの波長を選択した。なお、これらの候補波長の光のエネルギーは、それぞれ3.13eV、3.15eV、4.01eV、および4.03eVである。
【0056】
第2段階としての測定の結果について、Gaについての測定結果を図5および図6に示す。図5および図6は、上述した試料について、実施例1でのGaのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。図5および図6では、横軸が測定時間(単位:秒(s))を示し、縦軸が検出された出力としての発光強度(単位:出力電圧(V))を示す。また、図5および図6において、Ga417とはGaについての波長417nmの光の出力を示す。また、Nとは窒素(N)についての波長149nmの光の出力を示す。また、Alとはアルミニウム(Al)についての波長396nmの光の出力を示す。また、Ga403とはGaについての波長403nmの光の出力を示す。また、Ga294とはGaについての波長294nmの光の出力を示す。
【0057】
図5および図6から分かるように、Gaについて、波長417nmの光の測定強度にはある程度のばらつき(周期的変動)が見られるのに対して、波長403nmの光および波長294nmの光の測定強度は相対的に周期的変動が小さくなっている。特に、波長294nmの光を用いた測定強度は、図6に示すように波長417nmの光を用いた測定強度のデータに比べて周期的変動が低減されている。このため、Gaについては波長294nmの光を用いてグロー放電発光分析を行なうことで、周期的変動の影響を受けない正確なデータを得ることが可能である。
【0058】
また、第2段階としての測定の結果について、Alについての測定結果を図7〜図9に示す。図7〜図9は、上述した試料について、実施例1でのAlのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。図7〜図9では、上述した図5および図6と同様に横軸が測定時間(単位:秒(s))を示し、縦軸が検出された出力としての発光強度(単位:出力電圧(V))を示す。また、図7〜図9において、GaとはGaについての波長417nmの光の出力を示す。また、Nとは窒素(N)についての波長149nmの光の出力を示す。また、Al396とはアルミニウム(Al)についての波長396nmの光の出力を示す。また、Al394とはAlについての波長394nmの光の出力を示す。また、Al309とはAlについての波長309nmの光の出力を示す。また、Al308とはAlについての波長308nmの光の出力を示す。
【0059】
図7〜図9から分かるように、Alについて、波長396nmの光の測定強度にはある程度の周期的変動が見られるのに対して、波長309nmの光および波長308nmの光の測定強度は相対的に周期的変動が小さくなっている。特に、波長309nmの光を用いた測定強度は、図8に示すように波長396nmの光を用いた測定強度のデータに比べて周期的変動が低減され、また、その測定強度も安定している。このため、Alについては波長309nmの光を用いてグロー放電発光分析を行なうことで、周期的変動の影響を受けない正確なデータを得ることが可能である。
【0060】
[実施例2]
上記実施例1における実験に加えて、インジウム(In)についてもグロー放電発光分析における測定結果の波長依存性を確認する実験を行なった。
【0061】
(試料)
試料としては、サファイア基板上に、厚みが2.2μmのGaNからなるバッファ層、および当該バッファ層上に形成された厚み150nmのInGaN層が形成されたエピタキシャル基板を準備した。InGaN層におけるインジウムの濃度は15原子%である。また、サファイア基板としては直径が5.08cmであって平面形状が円形状の基板を用いた。なお、ここで準備したエピタキシャル基板のInGaN層のバンドギャップエネルギーは2.75eVであり、GaNからなるバッファ層のバンドギャップエネルギーは3.4eVである。
【0062】
(実験内容)
第1段階として、準備した試料を本発明に従ったグロー放電発光分析装置にセットし、インジウム(In)についてグロー放電により得られる光の波長毎の強度を計測した。そして、この計測結果から、グロー放電発光分析を行なう測定波長の候補となる波長(候補波長)を複数選択した。なお、このときの測定条件としては、グロー放電管の内部でのアルゴン(Ar)ガスの圧力を400Pa、試料に印加される電力の出力(RF出力)を40W、給電方式としてRF断続給電方式を用いた。
【0063】
さらに、第2段階として、当該試料について、グロー放電発光分析を行ない、上記候補波長の光について測定強度のデータを取得した。なお、測定条件は上述した第1段階での測定条件と同様とした。
【0064】
(結果)
第1段階としての測定の結果、Inについて、通常のグロー放電発光分析に用いられる451nmという波長のほか、325nmおよび303nmという2つの波長が、451nmに対して検出される発光強度はある程度小さくなるが、他の波長に比べて比較的高い測定強度を示す波長として検出された。このため、Inについては、候補波長として451nm、325nmおよび303nmという3つの波長を選択した。なお、これらの候補波長の光のエネルギーは、それぞれ2.75eV、3.81eV、および4.09eVである。
【0065】
第2段階としての測定の結果について、Gaについての測定結果を図10および図11に示す。図10および図11は、上述した試料について、実施例2でのInのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。図10および図11では、横軸が測定時間(単位:秒(s))を示し、縦軸が検出された出力としての発光強度(単位:出力電圧(V))を示す。また、図10および図11において、In451とはInについての波長451nmの光の出力を示す。また、Nとは窒素(N)についての波長149nmの光の出力を示す。また、Alとはアルミニウム(Al)についての波長396nmの光の出力を示す。また、In303とはInについての波長303nmの光の出力を示す。In325とはInについての波長325nmの光の出力を示す。また、GaとはGaについての波長417nmの光の出力を示す。
【0066】
図10および図11から分かるように、Inについて、波長451nmの光の測定強度には変動(測定時間の経過とともにその測定強度のレベルが大きく変動する状態)が見られるのに対して、波長303nmの光および波長325nmの光の測定強度は相対的に測定強度の時間的な変動が小さくなっている。このため、Inについては波長303nmまたは波長325nmの光を用いてグロー放電発光分析を行なうことで、従来用いられていた波長451nmの光による測定の場合より正確なデータを得ることが可能であると考えられる。
【0067】
[実施例3]
本発明の効果を確認するため、以下のような試料を準備して本発明に従ったグロー放電発光分析を行なった。以下、説明する。
【0068】
(試料)
試料として、図12に示す断面構造の発光素子を準備した。図12は、実施例3において測定対象材とした発光素子の構成を示す断面模式図である。図12を参照して、準備した試料としての発光素子を説明する。
【0069】
発光素子では、厚みが400μmでありサファイアからなる基板31上に、MOCDV法を用いて厚みが5μmのn型GaN層32が形成されている。n型GaN層32のn型不純物としてはSiを用いた。n型GaN層32上には発光層34が形成されている。発光層34は、厚みが15nmでIn0.01GaNからなるバリア層34aと、厚みが3nmでIn0.14GaNからなる井戸層34bとをMOCVD法により交互に6周期積層し、合計厚みが123nmの多量子井戸構造とした。発光層34上には、MOCVD法により厚みが10nmのGaNからなるアンドープGaN層35が形成されている。アンドープGaN層35上には、MOCVD法により、Mgを不純物としたp型Al0.09Ga0.91N層36が形成されている。p型Al0.09Ga0.91N層36の厚みは20nmとした。p型Al0.09Ga0.91N層36上には、MOCVD法により、Mgを不純物として混入したp型GaN層37が形成されている。
【0070】
(実験内容)
上述した実施例1において、まず、GaおよびAlのそれぞれについて、薄膜についての測定が比較的正確に実施できた波長(Gaについては294nm、Alについては309nm)を用いて、上述した試料に対してグロー放電発光分析を行なった。また、GaおよびAlについては、従来一般的に用いられていた波長(Gaについては417nm、Alについては396nm)を用いた測定も同時に実施した。また、上述したGaおよびAlについての分析の際に、NおよびInについては、それぞれ波長149nm、451nmの光の測定強度を示している。なお、測定装置としては実施例1と同様のグロー放電発光分析装置を用い、このときの測定条件としては、グロー放電管の内部でのアルゴン(Ar)ガスの圧力を400Pa、試料に印加される電力の出力(RF出力)を40W、給電方式としてRF断続給電方式を用いた。
【0071】
また、上述した実施例2において、Inについて、薄膜についての測定が比較的正確に実施できた波長(303nmおよび325nm)を用いて、上述した試料に対してグロー放電発光分析を行なった。また、このInについての測定の際、Ga、AlおよびNについては、従来一般的に用いられていた波長(Gaについては417nm、Alについては396nm、Nについては149nm)を用いた測定も同時に実施した。なお、このInについての測定において用いた測定装置および測定条件は、上述したGaおよびAlの測定において用いた測定装置および測定条件と同様とした。
【0072】
(結果)
測定結果を、図13〜図16を参照して説明する。図13〜図16は、上述した試料について、実施例3でのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【0073】
図13〜図16では、横軸が測定時間(単位:秒(s))を示し、縦軸が検出された出力としての発光強度(単位:出力電圧(V))を示す。図13〜図16では、Ga、窒素(N)、インジウム(In)、Alのそれぞれの元素について測定結果が示されている。また、図13には、Alについて波長309nmおよび波長396nmの光に関する測定結果が示されている。また、図14には、Gaについて波長294nmおよび417nmの光に関する測定結果が示されている。また、図15には、Inについて波長303nmおよび波長451nmの光に関する測定結果が示されている。また、図16には、Inについて波長325nmおよび451nmの光に関する測定結果が示されている。
【0074】
図13において、Al396およびAl309とは、それぞれAlについての波長396nmおよび波長309nmの光の出力を示す。また、図14において、Ga417およびGa294とは、それぞれGaについての波長417nmおよび波長294nmの光の出力を示す。また、図15において、In303およびIn451とは、それぞれInについての波長303nmおよび波長451nmの光の出力を示す。また、図16において、In325およびIn451とは、それぞれInについての波長325nmおよび波長451nmの光の出力を示す。
【0075】
図13を参照して、Alについて波長309nmの光の出力の方が、波長396nmの光の出力より大きな値を示していた。また、波長309nmの光の出力は、特に周期的変動などは示していなかった。
【0076】
また、図14を参照して、Gaについて波長417nmの光の出力では周期的変動が見られたものの、波長294nmの光の出力では周期的変動は見られず、安定した出力データを得ることができた。
【0077】
また、図15および図16を参照して、Inについて波長451nmの光の出力より、波長303nmまたは波長325nmの光の出力の方が、データの変動が少なくなっており、安定したデータを得られている。なお、図15および図16ではInの出力データが周期的な変動を示しているが、当該変動は測定対象とした素子の構造(多重量子井戸構造)を反映したものであると考えられる。
【0078】
以下、上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本発明の特徴的な構成を要約すれば、本発明に従った測定方法は、図2に示すように測定対象材である基板(試料S)を準備する工程(基板準備工程(S100))と、測定工程(S200)とを備える。測定工程(S200)では、グロー放電発光分析法を用いて、試料Sの表面からの深さ方向における成分元素の濃度分布を測定する。具体的には、試料Sに給電することによりグロー放電による発光を発生させ、当該発光を波長ごとに分光して分光した光の強度を測定することにより、試料Sの成分分析(深さ方向における成分元素の濃度分布の測定)を行なう。測定工程(S200)において、強度を測定する光のエネルギーは試料Sのバンドギャップエネルギーより大きい。また、より好ましくは、強度を測定する光の波長は、グロー放電発光分析法による事前測定を行なうことにより得られた光の強度データの時間的変化(周期的変化)が相対的に小さい波長を選択する。選択の基準としては、たとえば強度データの値と測定時間とのグラフを出力し、当該グラフから目視により判別してもよいし、強度データの数値から演算することにより所定の判別値を算出し、当該判別値と基準値とを比較して所定の基準を満たす光の波長を選択してもよい。たとえば、Gaについての測定に用いる波長294nmの光のエネルギーは4.22eVであり、Alについての測定に用いる波長309nmの光のエネルギーは4.01eVである一方、試料Sとしてのエピタキシャル基板のエピタキシャル膜であるAlGaN膜のバンドギャップエネルギーは、9%AlのAlGaN膜については3.65eVであり、18%AlのAlGaN膜については3.83eVである。また、Inについての測定に用いる波長303nmおよび波長325nmの光のエネルギーはそれぞれ4.09eVおよび3.82eVである一方、試料としてのエピタキシャル基板のエピタキシャル膜であるInGaN膜のバンドギャップエネルギーは、15%InのInGaN膜については2.75eVである。
【0079】
このようにすれば、強度を測定する光のエネルギーが試料Sのバンドギャップエネルギーより大きいため、グロー放電発光分析法において強度を測定する光のうち、試料Sに入射する光の成分の少なくとも一部が試料Sに吸収される。このため、試料Sの表面に薄いエピタキシャル膜が形成されている場合に、グロー放電に起因する光のうち、試料Sとしてのエピタキシャル基板の表面で反射するものと、当該エピタキシャル基板における最表面のエピタキシャル膜とその直下の別の膜(あるいはベース基板)との界面で反射するものとの干渉現象によって測定強度が周期的に変化することになる光の成分の割合を低減できる。この結果、測定される光の強度データが上記干渉によって周期的変動を起こすことを抑制できる。このため、測定する光の強度データの変動が1周期以上観測されないような薄いエピタキシャル膜を有する試料Sについて、当該膜に関して正確な光の強度データを得ることができる。したがって、試料Sの深さ方向における成分元素の濃度分布の正確な情報を得ることができる。
【0080】
本発明に従った測定方法は、図3および図4に示すように、測定準備工程(準備工程(S210)および予備測定工程(S230))と本測定工程(S240)とを備える。測定準備工程は、測定対象材準備工程(準備工程(S210))と、決定工程(図4の抽出工程(S231))と、予備測定工程(図4の工程(S232))と、波長決定工程(図4の工程(S233))とを含む。準備工程(S210)では、予備測定用の測定対象材であるエピタキシャル基板(試料S)を準備する。抽出工程(S231)では、試料Sに給電することによりグロー放電による発光を発生させ、当該発光を波長ごとに分光して測定可能な強度を示す光の複数の波長(候補波長)を決定する。たとえば、上述した実施例1では、Gaについて候補波長は417nm、403nmおよび294nmという3つの波長である。また、Alについて候補波長は396nm、394nm、309nmおよび308nmという4つの波長である。また、上述した実施例2では、Inについての候補波長は303nm、305nmおよび451nmという3つの波長である。予備測定工程(S232)では、試料Sに給電することによりグロー放電による発光を発生させ、当該発光を波長ごとに分光した後、決定工程で決定した複数の波長のそれぞれの光について強度を測定する。波長決定工程(S233)では、予備測定工程(S232)において測定された複数の波長の光のそれぞれの強度データのうち、相対的に時間的な変化(周期的変動)が少ないデータを示す光の波長を、本測定工程(S240)において測定に用いる測定波長として決定する。たとえば、上述した実施例におけるGaについての294nm、Alについての309nm、Inについての303nmまたは325nmという波長がそれぞれ測定に用いる波長(測定波長)に相当する。また、波長決定工程(S233)において、「相対的に時間的な変化が少ないデータを示す光の波長」とは、複数の候補波長の光の測定データのうち、時間的な出力の変動の相対的に少ないものを意味する。そして、「相対的に時間的な変化が少ないデータを示す光の波長」の判別方法としては、たとえば候補波長の光の測定データを時系列的に表示したグラフを目視で確認して判別してもよいが、測定データについて数値的演算を行ない、所定の判別値を算出して当該算出値と予め設定しておいた基準値とを対比することにより、判別を行なってもよい。たとえば、発光強度のデータのある期間(たとえば5秒)における平均値に対して、当該期間中でのデータの変動量(最大値−最小値の値)の割合がたとえば5%以下となっていること、といった基準を用いることができる。
【0081】
また、このように決定された波長の光では、特に薄膜を有する試料Sに関して、グロー放電発光分析を行なうときに試料Sから反射してから観測される光における当該薄膜表面で反射するものと、薄膜と薄膜下の別の膜やベース基板との界面で反射するものとの干渉現象によって測定強度が周期的に変化することになる光の成分の割合が低減される。そして、結果的に観測波長の光のエネルギーは、試料Sを構成する材料のバンドギャップエネルギーより大きくなっている。
【0082】
本測定工程(S240)は、本測定工程用に準備された測定対象材(試料S)に給電することによりグロー放電による発光を発生させ、当該発光を波長ごとに分光して当該分光した光の強度を測定することにより、試料Sの成分分析を行なうグロー放電発光分析法によって、強度を測定する光の波長として波長決定工程(S233)において決定された測定波長(たとえばGaについて294nm、Alについて309nm、Inについて303nmまたは325nm)を用いることにより、試料Sの表面からの深さ方向における成分元素の濃度分布を測定する測定工程を含む。
【0083】
このようにすれば、波長決定工程(S233)において測定に用いる測定波長を決定した後、当該測定波長を用いて本測定工程(S240)での測定対象材の測定を実施するので、構成材料の種類などが正確に分かっていないような試料Sについても、測定データの変動、たとえば試料Sからの反射光の存在に起因する光の干渉に基づく周期的変動を抑制できる。このため、光の正確な強度データを得ることができるので、薄膜を有する試料Sの深さ方向における成分元素の濃度分布を正確に測定できる。
【0084】
本発明に従った測定装置(グロー放電発光分析装置1)は、測定対象材(試料S)の表面の少なくとも一部が内部に露出する反応室(グロー放電管2)と、ガス供給部材(ガス供給部6)と、励起部材(電源部3)と、計測部材(分光器7)と、測定波長設定部材(測定波長設定部20)と、出力部材(分析制御部8)とを備える。ガス供給部6は、グロー放電管2の内部に測定用ガスを供給する。電源部3は、グロー放電管2の内部で測定用ガスをプラズマ化する。分光器7は、プラズマ化した測定用ガスの原子が試料Sの表面に入射することにより、試料Sから放出された原子が励起された後放出する光について、複数の波長ごとに強度を測定する。測定波長設定部20は、分光器7において強度が測定される光の波長を設定する。分析制御部8は、分光器7により測定される複数の波長ごとの光の強度データについて、特定の波長の光について当該強度データを時系列データとして出力する。分析制御部8から時系列データとして強度データが出力される光のエネルギーは、試料Sのバンドギャップエネルギーより大きい。
【0085】
このようにすれば、当該測定装置において上述した図2〜図4で説明したような本発明に従ったグロー放電発光分析法を容易に実施することができる。すなわち、時系列データとして強度データが出力される光のエネルギーが試料Sのバンドギャップエネルギーより大きいので、当該光のうち試料Sに入射した成分の少なくとも一部が試料Sに吸収される。このため、試料Sの表面に薄い膜が形成されている場合に、グロー放電に起因する光のうち、試料Sとしてのエピタキシャル基板の表面で反射するものと、当該エピタキシャル基板における最表面のエピタキシャル膜とその直下の別の膜(あるいはベース基板)との界面で反射するものとの干渉現象によって測定強度が周期的に変化することになる光の成分の割合を低減できる。したがって、測定される光の強度データが当該干渉によって変動する程度を小さくできる。このため、測定する光の強度データの変動が1周期以上観測されないような薄い膜を有する試料Sについて、正確な光の強度データを得ることができる。この結果、試料Sの深さ方向における成分元素の濃度分布の正確な情報を得ることができる。また、分光測定のタイミングとスパッタリングのタイミングとを最適化してシンクロナイズさせることにより、さらに定量の際のリニアリティを向上させることができる。
【0086】
本発明に従ったエピタキシャル基板は、上記グロー放電発光分析法を用いて、表面からの深さ方向における成分元素の濃度分布が測定されている。このようにすれば、成分元素の深さ方向における分布を正確に特定されたエピタキシャル基板を得ることができる。なお、当該エピタキシャル基板では、その表面の一部のみにおいて上述した測定方法(グロー放電発光分析法)を実施することにより、当該エピタキシャル基板の深さ方向の濃度分布を保障することができる。たとえば、上述した測定方法を実施する場所を、基板の端部などデバイスを形成しない部分などに設定すれば、エピタキシャル基板でのデバイスの採取個数を減らすことなく、確実に品質が保証されたエピタキシャル基板を得ることができる。
【0087】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に従った測定装置の構成を示す構成模式図である。
【図2】図1の測定装置を用いた測定方法を説明するフローチャートである。
【図3】図2における測定工程の内容を説明するフローチャートである。
【図4】図3の予備測定工程の内容を説明するフローチャートである。
【図5】実施例1でのGaのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【図6】実施例1でのGaのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【図7】実施例1でのAlのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【図8】実施例1でのAlのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【図9】実施例1でのAlのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【図10】実施例2でのInのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【図11】実施例2でのInのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【図12】実施例3において測定対象材とした発光素子の構成を示す断面模式図である。
【図13】実施例3でのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【図14】実施例3でのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【図15】実施例3でのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【図16】実施例3でのグロー放電発光分析を行なった結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0089】
1 グロー放電発光分析装置、2 グロー放電管、3 電源部、4 ジェネレータ、5 マッチングボックス、6 ガス供給部、7 分光器、7a,7c スリット、7b 回折格子、7d 光電子増倍管、8 分析制御部、8a 内部バス、8b CPU 8c ハードディスク、8d メモリ、8e モニタ装置、9 試料押圧部材、16 第1基板、17 第2基板、20 測定波長設定部、31 基板、32 n型GaN層、34 発光層、34a バリア層、34b 井戸層、35 アンドープGaN層、36 p型Al0.09Ga0.91N層、37 p型GaN層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象材を準備する工程と、
前記測定対象材に給電することにより、グロー放電による発光を発生させ、前記発光を波長ごとに分光して当該分光した光の強度を測定することにより、前記測定対象材の成分分析を行なうグロー放電発光分析法を用いて、前記測定対象材の表面からの深さ方向における成分元素の濃度分布を測定する測定工程とを備え、
前記測定工程において、強度を測定する光のエネルギーが前記測定対象材のバンドギャップエネルギーより大きい、測定方法。
【請求項2】
測定準備工程と、
本測定工程とを備え、
前記測定準備工程は、
予備測定用の測定対象材を準備する測定対象材準備工程と、
前記測定対象材に給電することにより、グロー放電による発光を発生させ、前記発光を波長ごとに分光して測定可能な強度を示す光の複数の波長を決定する決定工程と、
前記測定対象材に給電することにより、グロー放電による発光を発生させ、前記発光を波長ごとに分光した後、前記決定工程で決定した複数の波長のそれぞれの光について強度を測定する予備測定工程と、
前記予備測定工程において測定された複数の波長の光のそれぞれの強度データのうち、相対的に時間的な変化が少ないデータを示す光の波長を、前記本測定工程において測定に用いる測定波長として決定する波長決定工程とを含み、
前記本測定工程は、前記本測定工程用に準備された測定対象材に給電することによりグロー放電による発光を発生させ、前記発光を波長ごとに分光して当該分光した光の強度を測定することにより、前記測定対象材の成分分析を行なうグロー放電発光分析法によって、前記強度を測定する光の波長として前記波長決定工程において決定された前記測定波長を用いることにより、前記測定対象材の表面からの深さ方向における成分元素の濃度分布を測定する測定工程を含む、測定方法。
【請求項3】
測定対象材の表面の少なくとも一部が内部に露出する反応室と、
前記反応室の内部に測定用ガスを供給するガス供給部材と、
前記反応室の内部で前記測定用ガスをプラズマ化する励起部材と、
前記プラズマ化した測定用ガスの原子が前記測定対象材の表面に入射することにより、前記測定対象材から放出された原子が励起された後放出する光について、複数の波長ごとに強度を測定する計測部材と、
前記計測部材において強度が測定される光の波長を設定する測定波長設定部材と、
前記計測部材により測定される前記複数の波長ごとの光の強度データについて、特定の波長の光について当該強度データを時系列データとして出力する出力部材とを備え、
前記出力部材から前記時系列データとして前記強度データが出力される光のエネルギーは、前記測定対象材のバンドギャップエネルギーより大きい、測定装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の測定方法を用いて、表面からの深さ方向における成分元素の濃度分布が測定されたエピタキシャル基板。
【請求項1】
測定対象材を準備する工程と、
前記測定対象材に給電することにより、グロー放電による発光を発生させ、前記発光を波長ごとに分光して当該分光した光の強度を測定することにより、前記測定対象材の成分分析を行なうグロー放電発光分析法を用いて、前記測定対象材の表面からの深さ方向における成分元素の濃度分布を測定する測定工程とを備え、
前記測定工程において、強度を測定する光のエネルギーが前記測定対象材のバンドギャップエネルギーより大きい、測定方法。
【請求項2】
測定準備工程と、
本測定工程とを備え、
前記測定準備工程は、
予備測定用の測定対象材を準備する測定対象材準備工程と、
前記測定対象材に給電することにより、グロー放電による発光を発生させ、前記発光を波長ごとに分光して測定可能な強度を示す光の複数の波長を決定する決定工程と、
前記測定対象材に給電することにより、グロー放電による発光を発生させ、前記発光を波長ごとに分光した後、前記決定工程で決定した複数の波長のそれぞれの光について強度を測定する予備測定工程と、
前記予備測定工程において測定された複数の波長の光のそれぞれの強度データのうち、相対的に時間的な変化が少ないデータを示す光の波長を、前記本測定工程において測定に用いる測定波長として決定する波長決定工程とを含み、
前記本測定工程は、前記本測定工程用に準備された測定対象材に給電することによりグロー放電による発光を発生させ、前記発光を波長ごとに分光して当該分光した光の強度を測定することにより、前記測定対象材の成分分析を行なうグロー放電発光分析法によって、前記強度を測定する光の波長として前記波長決定工程において決定された前記測定波長を用いることにより、前記測定対象材の表面からの深さ方向における成分元素の濃度分布を測定する測定工程を含む、測定方法。
【請求項3】
測定対象材の表面の少なくとも一部が内部に露出する反応室と、
前記反応室の内部に測定用ガスを供給するガス供給部材と、
前記反応室の内部で前記測定用ガスをプラズマ化する励起部材と、
前記プラズマ化した測定用ガスの原子が前記測定対象材の表面に入射することにより、前記測定対象材から放出された原子が励起された後放出する光について、複数の波長ごとに強度を測定する計測部材と、
前記計測部材において強度が測定される光の波長を設定する測定波長設定部材と、
前記計測部材により測定される前記複数の波長ごとの光の強度データについて、特定の波長の光について当該強度データを時系列データとして出力する出力部材とを備え、
前記出力部材から前記時系列データとして前記強度データが出力される光のエネルギーは、前記測定対象材のバンドギャップエネルギーより大きい、測定装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の測定方法を用いて、表面からの深さ方向における成分元素の濃度分布が測定されたエピタキシャル基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−267829(P2008−267829A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107364(P2007−107364)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(507125310)
【氏名又は名称原語表記】HORIBA JOBIN YVON S.A.S.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(507125310)
【氏名又は名称原語表記】HORIBA JOBIN YVON S.A.S.
【Fターム(参考)】
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